(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】チップホルダ搬送装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20231221BHJP
G01N 35/04 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G01N35/10 G
G01N35/04 D
(21)【出願番号】P 2020202126
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 光祐
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-200604(JP,A)
【文献】特開2017-009600(JP,A)
【文献】特開2020-034513(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02803412(EP,A2)
【文献】特開2002-311035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/10
G01N 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルチップを収容し
、前記ノズルチップが挿通される複数の挿通孔を有する板状の部材であるチップホルダを、直接、移動可能に支持する搬送レールと、
前記搬送レールに支持された前記チップホルダを押し込むことで、前記搬送レールに沿って前記チップホルダを搬送させるプッシャーと、
を備え
、
前記搬送レールは、水平面において平行に並ぶ2本の支持レールであって前記チップホルダを下から支持する支持レールと、前記支持レールに支持された前記チップホルダの両側方において前記支持レールと平行に設けられる2本のガイドレールとを含む、
ことを特徴とするチップホルダ搬送装置。
【請求項2】
前記チップホルダは、その下側面から下方に突出する下方突出部を有し、
前記支持レールは、前記支持レールの伸長方向に沿って伸びる、その上側面から上方に突出する上方突条を有し、
前記支持レールが前記チップホルダを支持している状態において、前記上方突条は、前記下方突出部よりも前記搬送レールの内側に位置している、
ことを特徴とする請求項
1に記載のチップホルダ搬送装置。
【請求項3】
前記チップホルダの側面が前記ガイドレールに当接した状態において、当該チップホルダに収容された前記ノズルチップが前記支持レールに接触しない、
ことを特徴とする請求項
1に記載のチップホルダ搬送装置。
【請求項4】
前記ガイドレールの内側面から、当該ガイドレールと同じ側にある前記支持レールの内側面までの、前記搬送レールの伸長方向に直交する直交方向の水平距離が、当該ガイドレールに対向する前記チップホルダの側面から前記挿通孔までの前記直交方向の水平距離よりも小さい、
ことを特徴とする請求項
3に記載のチップホルダ搬送装置。
【請求項5】
前記搬送レールの下流側端部に位置する前記チップホルダに当接して前記チップホルダの下流側への移動を抑制するストッパ部材を含むストッパ機構と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載のチップホルダ搬送装置。
【請求項6】
前記搬送レールの下流側端から移載された前記チップホルダを保持して前記搬送レールの伸長方向とは異なる方向に移動するトラバーサであって、前記ストッパ機構に作用するストッパ作用部材を含むトラバーサと、
をさらに備え、
前記ストッパ機構は、前記ストッパ部材を支持する可動支持部であって、前記トラバーサが前記搬送レールの下流側端の先に位置する場合、前記ストッパ作用部材の作用によって、前記ストッパ部材が前記チップホルダへ当接しないように前記ストッパ部材を移動させる可動支持部を有する、
ことを特徴とする請求項
5に記載のチップホルダ搬送装置。
【請求項7】
前記搬送レールの下流側端から移載された前記チップホルダを保持して前記搬送レールの伸長方向とは異なる方向に移動し、前記ノズルチップがノズルに装着されるエリアである装着エリアまで前記チップホルダを移動させるトラバーサと、
前記装着エリアに移動された前記チップホルダを固定する固定機構であって、前記トラバーサの前記装着エリアへの移動に伴って、前記チップホルダの固定状態を形成する固定機構と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載のチップホルダ搬送装置。
【請求項8】
複数のノズルチップを収容したチップホルダを、直接、移動可能に支持する搬送レールと、
前記搬送レールに支持された前記チップホルダを押し込むことで、前記搬送レールに沿って前記チップホルダを搬送させるプッシャーと、
を備え、
前記搬送レールは、第1搬送レール及び第2搬送レールを含み、
前記プッシャーは、前記第1搬送レールに支持された前記チップホルダを押し込む第1押し込み部と、前記第2搬送レールに支持された前記チップホルダを押し込む第2押し込み部とを備え、前記第1押し込み部が前記チップホルダに当接し前記第2押し込み部が前記チップホルダに当接しない第1状態と、前記第1押し込み部が前記チップホルダに当接せず前記第2押し込み部が前記チップホルダに当接する第2状態との間で状態遷移する、
ことを特徴とす
るチップホルダ搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のノズルチップを収容したチップホルダを搬送するチップホルダ搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野においては、容器に入れられた液体試料を他の容器へ分注する分注装置が用いられている。分注装置では、ノズルによって容器から液体試料を吸引し、吸引した液体資料を他の容器へ吐出する分注処理が行われる。
【0003】
分注処理において、意図しない液体が液体試料に混入するのは望ましくない。したがって、ノズルの先端にノズルチップと呼ばれるディスポーザブル(使い捨て)部材が装着された上で分注処理が行われ、分注処理の度にノズルチップが交換される場合がある。よって、分注装置が新品のノズルチップを供給するノズルチップ供給装置を備える、あるいはノズルチップ供給装置が分注装置に併設される場合がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、複数のノズルチップを支持する板状の支持部材をラック本体に載置し、支持部材とラック本体とからなるチップラックを搬送することで、ノズルチップを搬送するノズルチップ供給装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば特許文献1のように、ノズルチップを1本1本搬送するのではなく、複数のノズルチップを収容したチップホルダ(特許文献1ではチップラック)を搬送するチップホルダ搬送装置が従来から提案されていた。ここで、従来のチップホルダ搬送装置においては、複数のノズルチップを収容したチップホルダを直接搬送せずに、チップホルダを支持するための搬送用台座部材(例えば特許文献1のラック本体など)に当該チップホルダをセットした上で搬送していた。
【0007】
したがって、従来、チップホルダをチップホルダ搬送装置に供給する作業者としては、チップホルダを搬送用台座部材にセットする作業が必要となっていた。これにより、作業者の手間あるいは作業時間が大きくなってしまうという問題があった。
【0008】
本発明の課題は、チップホルダ搬送装置にチップホルダを投入するまでの作業量を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係るチップホルダ搬送装置は、複数のノズルチップを収容し、前記ノズルチップが挿通される複数の挿通孔を有する板状の部材であるチップホルダを、直接、移動可能に支持する搬送レールと、前記搬送レールに支持された前記チップホルダを押し込むことで、前記搬送レールに沿って前記チップホルダを搬送させるプッシャーと、を備え、前記搬送レールは、水平面において平行に並ぶ2本の支持レールであって前記チップホルダを下から支持する支持レールと、前記支持レールに支持された前記チップホルダの両側方において前記支持レールと平行に設けられる2本のガイドレールとを含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、チップホルダ搬送装置にチップホルダを投入するまでの作業量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係るチップホルダ搬送装置の斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るチップホルダ搬送装置の簡易平面図である。
【
図7】複数のノズルチップが収容されたチップホルダが搬送レールに支持された状態を示す斜視図である。
【
図8】搬送レールを搬送方向上流から見た図である。
【
図10】第1搬送レールに支持されたチップホルダを押し込み可能なプッシャーの第1状態を示す、搬送方向下流から見た図である。
【
図11】第2搬送レールに支持されたチップホルダを押し込み可能なプッシャーの第2状態を示す、搬送方向下流から見た図である。
【
図15】ストッパ部材のロック解除状態を示す、搬送方向下流から見た図である。
【
図17】固定機構によりチップホルダが固定される前の状態を示す平面図である。
【
図18】固定機構によりチップホルダが固定された状態を示す平面図である。
【
図19】空のチップホルダの回収エリアへの経路を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<チップホルダ搬送装置10の概要>
図1は本実施形態に係るチップホルダ搬送装置10の斜視図であり、
図2はチップホルダ搬送装置10の平面図である。チップホルダ搬送装置10は、容器に入れられた液体試料を他の容器へ分注する分注装置のノズルに取り付けられるノズルチップ12を搬送する装置である。後述するように、チップホルダ搬送装置10は、複数のノズルチップ12を収容したチップホルダ14を搬送する。チップホルダ搬送装置10は、分注装置に組み込まれるか、あるいは分注装置に併設して設けられる。
【0013】
チップホルダ搬送装置10は、チップホルダ14を直接支持する搬送レール20、及び、搬送レール20の伸長方向に沿って設けられるプッシャーレール22(
図2参照)に沿って移動可能であり、搬送レール20に支持されたチップホルダ14を押し込むことで、搬送レール20に沿ってチップホルダ14を搬送させるプッシャー24とを含んで構成される。
【0014】
本実施形態では、搬送レール20は一方向に伸長するレールとなっている。また、本実施形態では、搬送レール20は、それぞれの伸長方向が平行となるように並設された第1搬送レール20Aと第2搬送レール20Bとを含んで構成される。なお、第1搬送レール20Aと第2搬送レール20Bとを特に区別しない場合、単に搬送レール20と記載する。
【0015】
本明細書においては、
図1又は2に示されるように、搬送レール20の伸長方向であり、チップホルダ14の搬送方向でもある水平方向がX軸で表され、X軸の負方向を「上流」又は「左」、X軸の正方向を「下流」又は「右」と呼ぶ。また、搬送レール20の伸長方向(X軸)に直交する水平方向である直交方向がY軸で表され、Y軸の正方向を「奥」、Y軸の負方向を「手前」と呼ぶ。また、チップホルダ搬送装置10の高さ方向(すなわち鉛直方向)がZ軸で表され、Z軸の正方向を「上」、Z軸の負方向を「下」と呼ぶ。
【0016】
作業者により、複数のノズルチップ12を収容したチップホルダ14が搬送レール20に載置される。構造上、作業者は搬送レール20の任意の位置にチップホルダ14を載置することができるが、一般に、作業者は搬送レール20の上流側端にチップホルダ14を載置する。搬送レール20に載置されたチップホルダ14は、プッシャー24によって下流側へ押し込まれることで、搬送レール20に沿って下流側に搬送される。
【0017】
また、チップホルダ搬送装置10は、好適には、チップホルダ14が搬送レール20の下流側端から脱落することを抑制すべく、搬送レール20の下流側端部に位置するチップホルダ14に当接して当該チップホルダ14の下流側への移動を抑制するストッパ機構26(
図1及び
図2にはその一部のみが示されている)を含んで構成される。
【0018】
また、チップホルダ搬送装置10は、好適には、搬送レール20の伸長方向とは異なる方向(本実施形態ではY軸方向)に伸長するフレームベース27に敷設されたトラバーサレール28に沿って移動可能であり、搬送レール20から移載されたチップホルダ14を保持し、当該チップホルダ14に収容されたノズルチップ12が分注装置のノズルに装着されるエリアである装着エリア30までチップホルダ14を移動させるトラバーサ32を含んで構成される。
【0019】
また、チップホルダ搬送装置10は、好適には、装着エリア30に移動されたチップホルダ14を固定する固定機構34を含んで構成される。さらに、チップホルダ搬送装置10は、分注装置のノズルによりノズルチップ12が装着されたことで空となったチップホルダ14を回収する回収エリア36を含んで構成される。
【0020】
以下、ノズルチップ12、チップホルダ14、及び、チップホルダ搬送装置10の各部の詳細について説明する。
【0021】
<ノズルチップ及びチップホルダ>
図3は、ノズルチップ12の側面図である。ノズルチップ12は、一方向に伸長した筒状の部材である。ノズルチップ12は、先端が先細形状となっている胴体部12Aと、胴体部12Aの基端側にある基部12Bとを含んで構成されている。基部12B側からノズルがノズルチップ12に挿入されることで、ノズルにノズルチップ12が装着される。ノズルチップ12の基部12Bの径は胴体部12Aの径よりも大きくなっている。これにより、胴体部12Aの側面と基部12Bの側面との間に段差があり、基部12Bの下側面に顎部12Baが形成されている。
【0022】
図4はチップホルダ14の平面図であり、
図5は
図4のA-A断面におけるチップホルダ14の断面図である。チップホルダ14は、ポリスチレンなどのポリマーで形成される。本実施形態では、チップホルダ14は平面視で略長方形の板状の部材である。チップホルダ14は、上側面と下側面とを貫通する複数の挿通孔40を有している。各挿通孔40には、ノズルチップ12が挿通される。ノズルチップ12が上側から挿通孔40に挿通されると、ノズルチップ12の顎部12Ba(
図3参照)が挿通孔40の縁に引っかかることで、ノズルチップ12はチップホルダ14に収容される。チップホルダ14に収容された状態において、ノズルチップ12は上下方向に起立した姿勢となる。なお、本実施形態では、チップホルダ14には、96個の挿通孔40が設けられている。したがって、1つのチップホルダ14は96個のノズルチップ12を収容することが可能となっている。
【0023】
本実施形態では、ノズルチップ12の製造業者から納入された状態において、複数の挿通孔40に複数のチップホルダ14が挿通された状態、すなわち、チップホルダ14に複数のノズルチップ12が収容された状態となっている。
【0024】
チップホルダ14は、その下側面14A(
図5参照)から下方に突出する下方突出部42を有している。下方突出部42は、従来、搬送用台座部材にチップホルダ14をセットする際に、搬送用台座部材に対するチップホルダ14の位置決めをするために用いられていたものである。本実施形態に係るチップホルダ搬送装置10においては、後述するように、下方突出部42は別の用途で用いられる。下方突出部42は、下側面14Aの縁部に設けられている。本実施形態では、下方突出部42は、チップホルダ14の短手方向の略中央の、長手方向の両端部に設けられる。
【0025】
なお、本実施形態では、チップホルダ14は板状となっているが、搬送レール20に直接載置可能であり、且つ、プッシャー24に押し込まれることで搬送レール20に沿って搬送可能であれば、その他の形状であってもよい。
【0026】
<搬送レール>
上述のように、チップホルダ搬送装置10は、第1搬送レール20A及び第2搬送レール20Bを有しているが、第1搬送レール20A及び第2搬送レール20Bは同様の構造を有しているため、ここでは代表的に片方の搬送レール20について説明する。なお、本実施形態において、搬送レール20が第1搬送レール20A及び第2搬送レール20Bを有しているのは、搬送レール20に載置可能なチップホルダ14の数を増やすためである。搬送レール20に載置可能なチップホルダ14の数を増やすことで、作業者は、一度に多くのチップホルダ14を搬送レール20に投入することができるため、作業者の作業効率を向上させることができる。また、搬送レール20に載置可能なチップホルダ14を増やすには、1本の搬送レール20の搬送方向の長さを長くすることが考えられる。しかしながら、搬送レール20の長さを長くすると、搬送レール20の撓みが生じやすくなり、搬送レール20に沿ったチップホルダ14の円滑な搬送ができない場合が生じ得るため、本実施形態では複数の搬送レール20を設けている。
【0027】
図6は、搬送レール20の斜視図である。搬送レール20は、水平面において平行に並ぶ2本の支持レール50と、支持レール50のすぐ上方において支持レール50と平行に設けられる2本のガイドレール52とを含んで構成される。支持レール50及びガイドレール52は、溶接構造のレールフレーム53により支持される。本実施形態では、支持レール50及びガイドレール52は、いずれもX軸方向に伸長するように設けられている。2本の支持レール50と2本のガイドレール52は、いずれも離間して設けられるが、2本のガイドレール52の方が2本の支持レール50よりも大きく離間している。本実施形態では、2本の支持レール50は、チップホルダ14の長手方向の長さよりも少し短い距離離間して設けられ、2本のガイドレール52は、チップホルダ14の長手方向の長さよりも少し長い距離離間して設けられる。
【0028】
複数のノズルチップ12を収容したチップホルダ14は、作業者によって支持レール50の上に載置される。
図7に、複数のノズルチップ12を収容したチップホルダ14が支持レール50の上に載置された状態が示されている。具体的には、チップホルダ14は、その短手方向と支持レール50の伸長方向が一致する向きで支持レール50に載置される。これにより、支持レール50は、チップホルダ14を下から支持する。本実施形態では、上述のように、2本の支持レール50はチップホルダ14の長手方向の長さよりも少し短い距離離間して設けられているから、2本の支持レール50は、チップホルダ14の下側面14Aの長手方向端部を下から支持する。なお、
図6及び7に示されている通り、2本の支持レール50の間の下方には空間が形成されている。これは、チップホルダ14に収容されたノズルチップ12の胴体部12Aがチップホルダ14の下方に突出するため、支持レール50に支持されたチップホルダ14から下方に突出したノズルチップ12の胴体部12Aが他の部材に干渉(接触)しないようにするためである。
【0029】
このように、搬送レール20(具体的には支持レール50)は、チップホルダ14を直接支持することが可能となっている。したがって、作業者は、従来のように、チップホルダ14を搬送用台座部材にセットする必要なく、チップホルダ14を直接支持レール50に載置することができる。これにより、少なくとも搬送用台座部材にセットされたチップホルダ14を搬送する場合に比して、チップホルダ14を搬送レール20に投入するまでの作業量が低減される。すなわち、チップホルダ14を搬送レール20に投入する際の作業者の手間が軽減され、且つ、作業時間も短縮される。
【0030】
特に、本実施形態では、上述のように、ノズルチップ12の製造業者から納入された状態において、チップホルダ14に複数のノズルチップ12が収容された状態となっている。したがって、チップホルダ14を搬送レール20に投入する際には、作業者は、チップホルダ14の開封と、チップホルダ14を支持レール50に載置させる作業のみを行えばよい。換言すれば、搬送レール20は、ノズルチップ12が収容されたチップホルダ14を納入状態のまま直接支持することができる。
【0031】
本実施形態では、上述のように、2本のガイドレール52は、支持レール50のすぐ上方においてチップホルダ14の長手方向の長さよりも少し長い距離離間して設けられているから、2本のガイドレール52は、支持レール50に支持されたチップホルダ14の手前側と奥側の両側方に位置することになる。これにより、2本のガイドレール52は、支持レール50によって支持されたチップホルダ14が手前側又は奥側に移動すること、あるいは、チップホルダ14の短手方向の向きが搬送レール20の伸長方向からずれるように傾くことを抑制する機能を発揮する。当該機能により、プッシャー24によりチップホルダ14が押し込まれた際に、チップホルダ14をより円滑に搬送することが可能になる。また、支持レール50に支持されたチップホルダ14が手前側方向又は奥側方向に脱落することが防止される。
【0032】
図8は、チップホルダ14を支持した2本の支持レール50のうちの手前側の支持レール50と、2本のガイドレール52のうちの当該支持レール50と同じ側、つまり手前側のガイドレール52を上流側から見た図である。なお、以下の説明において、Y軸方向であって、搬送レール20の中心線(つまり離間した2本の支持レール50又は2本のガイドレール52の中間にある線)側を「内側」と、その反対方向を「外側」と記載する。
【0033】
図8に示す通り、支持レール50は、支持レール50の伸長方向に沿って伸びる、その上側面50Aから上方に突出する上方突条54を有する。本実施形態では、上方突条54は、上側面50Aの内側端部に設けられている。支持レール50がチップホルダ14を支持している状態において、上方突条54は、チップホルダ14の下側面14Aの手前側端部に設けられた下方突出部42よりも内側に位置している。なお、
図8に示す通り、下方突出部42の側面は、下側面14A側に向かうにつれ、その径が大きくなるように傾斜しているため、下方突出部42の傾斜した側面に対向するように、上方突条54の外側面は上側を向くように傾斜している。
【0034】
また、
図8には、手前側の支持レール50のみが示されているが、反対側、つまり奥側の支持レール50も同様に上方突条54を有している。また、チップホルダ14の奥側端部にも下方突出部42が設けられていることは上述の通りである。
【0035】
チップホルダ14の長手方向両端部に設けられた下方突出部42及び2本の支持レール50の上方突条54は、ガイドレール52と共に、支持レール50によって支持されたチップホルダ14が手前側又は奥側に移動すること、あるいは、チップホルダ14の短手方向の向きが搬送レール20の伸長方向からずれるように傾くことを抑制する機能を発揮する。詳しくは、まず、上方突条54と下方突出部42との協働によりチップホルダ14の手前側又は奥側への移動あるいは傾きが抑制され、より強い力がチップホルダ14に加わって、上方突条54に下方突出部42が乗り上げてしまうような場合であっても、チップホルダ14の手前面又は奥側面がガイドレール52の内側面52Aに当接することで、チップホルダ14の移動あるいは傾きが強く抑制される。
【0036】
なお、上方突条54の高さ(上側面50Aからの上方への突出長)は、下方突出部42の長さ(下側面14Aからの下方への突出長)よりも大きくなっている。したがって、支持レール50がチップホルダ14を支持している状態において、上方突条54の上端がチップホルダ14の下側面14A(特に下側面14Aのうち下方突出部42よりも内側)に当接し、下方突出部42の下端は支持レール50の上側面50Aには当接していない。つまり、上方突条54の上端部が下側面14Aに当接することで、チップホルダ14が支持レール50に支持されていることになる。これにより、搬送レール20に沿ってチップホルダ14が搬送される際における下方突出部42の破損が防止される。
【0037】
ノズルチップ12の損傷を防止する観点から、搬送レール20にチップホルダ14が支持された状態において、ノズルチップ12と搬送レール20(特に支持レール50)が接触しないようになっている。特に、搬送レール20においては、チップホルダ14が最も手前側又は奥側に移動したとき、換言すれば、チップホルダ14の側面がガイドレール52に当接した状態において、当該チップホルダ14に収容されたノズルチップ12が支持レール50に接触しないようになっている。
図8を参照して、例えば、チップホルダ14の手前側の側面14Bがガイドレール52の内側面52Aに当接した状態が、チップホルダ14が最も手前側に移動した状態であるが、この状態において、ノズルチップ12の胴体部12A(特に胴体部12Aの手前側の側面12Aa)が支持レール50の内側面50Bに接触しない。
【0038】
本実施形態では、ガイドレール52の内側面52Aから、当該ガイドレール52と同じ側にある支持レール50の内側面50BまでのY軸方向の距離L1が、当該ガイドレール52に対向するチップホルダ14の側面14Bから挿通孔40までのY軸方向の距離L2よりも小さくなっている。ここで、当該ガイドレール52と同じ側にある支持レール50とは、当該ガイドレール52が手前側にあれば手前側の支持レール50、当該ガイドレール52が奥側にあれば奥側の支持レール50を意味する。また、当該ガイドレール52に対向するチップホルダ14の側面14Bとは、当該ガイドレール52が手前側にあれば手前側面、当該ガイドレール52が奥側にあれば奥側面を意味する。また、挿通孔40とは、チップホルダ14の側面14Bに最も近い挿通孔40であって、特に、当該挿通孔40のチップホルダ14の側面14B側端を意味する。これにより、チップホルダ14の側面14Bがガイドレール52の内側面52Aに当接した状態において、当該チップホルダ14に収容されたノズルチップ12が支持レール50に接触することが防止されている。
【0039】
<プッシャー>
図9は、プッシャー24の斜視図である。プッシャー24は、プッシャーレール22に設けられたモータ60の作用によりプッシャーレール22に沿って移動する基部62と、基部62に支持され、基部62から手前側及び奥側に伸びる腕部64とを含んで構成される。基部から手前側に伸びる腕部64である手前側腕部64Aの手前側先端には、第1搬送レール20Aに支持されたチップホルダ14の上流側面に当接する当接部66Aが設けられる。
図9に示すように、当接部66AはY軸方向に沿って複数(本実施形態では2つ)設けられている。なお、複数の当接部66Aは1つの部材の下流側端部に形成されてもよい。また、基部から奥側に伸びる腕部64である奥側腕部64Bの奥側先端には、第2搬送レール20Bに支持されたチップホルダ14の上流側面に当接する当接部66Bが設けられる。当接部66BもY軸方向に沿って複数(本実施形態では2つ)設けられている。複数の当接部66Bも1つの部材の下流側端部に形成されてもよい。
【0040】
腕部64は基部62に支持されているから、基部62がプッシャーレール22に沿って(つまりX軸方向に)移動することで、腕部64もX軸方向に移動する。これにより、当接部66Aに当接した、第1搬送レール20Aに支持されたチップホルダ14が当接部66Aによって押し込まれ、チップホルダ14が第1搬送レール20Aに沿って押し込まれる。このように、当接部66Aは、第1搬送レール20Aに支持されたチップホルダ14を押し込む第1押し込み部として機能する。なお、第1搬送レール20Aが複数のチップホルダ14を支持している場合、当接部66Aは、最も上流側にあるチップホルダ14を押し込む。これにより、第1搬送レール20Aが支持している全てのチップホルダ14が押し込まれ、下流側に搬送される。
【0041】
また、基部62がプッシャーレール22に沿って移動することで、当接部66Bに当接した、第2搬送レール20Bに支持されたチップホルダ14が当接部66Bによって押し込まれ、チップホルダ14が第2搬送レール20Bに沿って押し込まれる。このように、当接部66Bは、第2搬送レール20Bに支持されたチップホルダ14を押し込む第2押し込み部として機能する。なお、第2搬送レール20Bが複数のチップホルダ14を支持している場合、当接部66Bは、最も上流側にあるチップホルダ14を押し込む。これにより、第2搬送レール20Bが支持している全てのチップホルダ14が押し込まれ、下流側に搬送される。
【0042】
また、Y軸方向に並んで複数設けられた当接部66Aは、チップホルダ14をX軸に平行に押し込むことができるように、そのX軸方向位置(詳しくは下流側端の位置)が調整可能となっている。複数設けられた当接部66Bも同様に、そのX軸方向位置が調整可能となっている。
【0043】
腕部64は、基部62に設けられたモータ68の作用によって、基部62を通りX軸に平行な回転軸AX1を中心として鉛直面(YZ平面)において、一定の角度範囲内において回動可能となっている。
【0044】
図10には、手前側腕部64Aが下側に、奥側腕部64Bが上側になるように腕部64が回動した状態が示されている。この状態においては、第1搬送レール20Aが支持しているチップホルダ14に当接部66Aが当接可能であり、つまり当該チップホルダ14を押し込むことができる。その一方で、当接部66Bは、第2搬送レール20Bが支持しているチップホルダ14よりも上方に位置しており、当該チップホルダ14に当接することができず、つまり当該チップホルダ14を押し込むことができない。つまり、腕部64が
図10に示すように回動した状態は、プッシャー24が第1搬送レール20Aに支持されたチップホルダ14のみを押し込むことができる第1状態である。
【0045】
図11には、手前側腕部64Aが上側に、奥側腕部64Bが下側になるように腕部64が回動した状態が示されている。この状態においては、第2搬送レール20Bが支持しているチップホルダ14に当接部66Bが当接可能であり、つまり当該チップホルダ14を押し込むことができる。その一方で、当接部66Aは、第1搬送レール20Aが支持しているチップホルダ14よりも上方に位置しており、当該チップホルダ14に当接することができず、つまり当該チップホルダ14を押し込むことができない。つまり、腕部64が
図11に示すように回動した状態は、プッシャー24が第2搬送レール20Bに支持されたチップホルダ14のみを押し込むことができる第2状態である。
【0046】
このように、プッシャー24は、第1状態と第2状態との間で状態遷移可能であり、すなわち、プッシャー24は、第1搬送レール20Aに支持されているチップホルダ14と、第2搬送レール20Bに支持されているチップホルダ14との両方を同時には押し込まず、そのいずれかを押し込むように動作する。
【0047】
<ストッパ機構>
図12は、ストッパ機構26の斜視図である。ストッパ機構26は、
図1及び
図2に示されているように、2つの搬送レール20それぞれの下流側端に設けられる。ストッパ機構26は、フレームベース27(
図1及び2参照)、及び、搬送レール20を支持するレールフレーム53(
図6参照)に固定される固定部70、固定部70に対して上下方向に移動可能な可動支持部72、及び、可動支持部72に支持されるストッパ部材74を含んで構成される。具体的には、固定部70の底面70Xがフレームベース27に固定され、固定部70のやや上部に位置する側面70Yがレールフレーム53に固定される。固定部70がフレームベース27のみならず、溶接構造のレールフレーム53にも固定されることでより強固に固定部70が固定される(固定部70の剛性が向上される)。
【0048】
固定部70は、上下方向に立設した立設板部70Aを有しており、可動支持部72は、立設板部70Aに沿って上下方向に移動可能に立設板部70Aに取り付けられる。可動支持部72の立設板部70Aへの取り付け方法は既知の方法を採用することができる。例えば、立設板部70Aに上下方向に伸長する長孔を設け、可動支持部72に挿通されたビスなどを当該長孔に挿通させて可動支持部72を固定部70に取り付けるようにしてもよい。
【0049】
また、立設板部70Aの可動支持部72の可動域の下方には、Y軸方向(
図12の例では奥側)に突出するスプリング固定部70Bが設けられている。スプリング固定部70Bには、その上端が可動支持部72に固定されたスプリング76の下端が固定される(
図12ではスプリング76の下端はスプリング固定部70Bから外された状態が示されている)。これにより、可動支持部72は、スプリング76によって常に下方に向かって付勢されている。
【0050】
可動支持部72は、搬送レール20の伸長方向(つまりチップホルダ14の搬送方向)と直交する鉛直面(YZ平面)において延伸する鉛直板部72Aを含んでいる。鉛直板部72Aは、可動支持部72の下流側端部、特に、ストッパ機構26の下流側端部に設けられる。鉛直板部72Aの下流側面には、X軸方向から見た側面視の形状が円であって、当該円の中心を通りX軸に平行な回転軸AX2を中心に回転可能な、円柱形状のローラ78が設けられている。本実施形態では、ローラ78は、鉛直板部72Aの手前側端に設けられている。ローラ78の側面はウレタンなどの樹脂で形成されている。ローラ78は可動支持部72に取り付けられているため、可動支持部72と共に上下に移動する。
【0051】
本実施形態では、ストッパ部材74は可動支持部72の上端に取り付けられている。ストッパ部材74も可動支持部72に取り付けられているため、可動支持部72と共に上下に移動する。ストッパ部材74は、搬送レール20の伸長方向と直交する鉛直面(YZ平面)において延伸するストッパ板74Aを含んで構成される。ストッパ板74Aは、搬送レール20の下流側端部に位置するチップホルダ14の下流側面に当接する。これにより、当該チップホルダ14の下流側への移動を抑制する。具体的には、可動支持部72がスプリング76の付勢力によって下側に下げられている場合には、搬送レール20の下流側端部に位置するチップホルダ14の下流側面にストッパ板74Aが当接する。この状態において、当該チップホルダ14の下流側への移動が抑制されるから、この状態をロック状態と呼ぶ。一方、後述する仕組みにより、可動支持部72(つまりストッパ部材74)が上側に上げられている場合には、搬送レール20の下流側端部に位置するチップホルダ14にはストッパ板74Aが当接しない。この状態においては、当該チップホルダ14の下流側への移動が許容されるから、この状態をロック解除状態と呼ぶ。
【0052】
<トラバーサ>
図13はトラバーサ32の斜視図であり、
図14はトラバーサ32の左側面図である。上述の通り、トラバーサ32は、搬送レール20の伸長方向とは異なる方向(本実施形態ではY軸方向)に伸長するトラバーサレール28に沿って移動可能であるが、トラバーサ32の移動経路には、第1搬送レール20Aの下流側端の先(第1搬送レール20Aの下流側の延長上)、第2搬送レール20Bの下流側端の先、及び、装着エリア30が含まれる(
図2参照)。なお、トラバーサ32は、不図示のモータの作用によってトラバーサレール28に沿って移動する。
【0053】
トラバーサ32が第1搬送レール20Aの下流側端の先にある場合に、プッシャー24によって第1搬送レール20Aに支持されたチップホルダ14が押し込まれると、第1搬送レール20Aの下流側端部にある(つまり第1搬送レール20Aの最も下流側にある)チップホルダ14が第1搬送レール20Aから押し出され、トラバーサ32に移載される。このとき、後述の通り、ストッパ機構26はロック解除状態となっている。なお、本実施形態では、トラバーサ32には2つのチップホルダ14を左右に並べて載置することが可能となっているから、第1搬送レール20Aから2つのチップホルダ14が移載される。その後、トラバーサ32はトラバーサレール28に沿って移動し、当該2つのチップホルダ14を装着エリア30まで移動させる。
【0054】
同様に、トラバーサ32が第2搬送レール20Bの下流側端の先にある場合に、プッシャー24によって第2搬送レール20Bに支持されたチップホルダ14が押し込まれると、第2搬送レール20Bの下流側端部にある2つのチップホルダ14が第2搬送レール20Bから押し出され、トラバーサ32に移載される。その後、トラバーサ32はトラバーサレール28に沿って移動し、当該2つのチップホルダ14を装着エリア30まで移動させる。
【0055】
図13及び
図14に示される通り、トラバーサ32は、手前側壁80、手前側壁80と同一の高さの奥側壁82、手前側壁80及び奥側壁82よりかなり低い高さの左側壁84、及び、右側壁86を含み、上側が開口した略箱型の形状を有している。なお、左側壁84の高さがかなり低いのは、後述のように、複数のノズルチップ12を収容したチップホルダ14が搬送レール20から移載される際に、チップホルダ14の下方に突出したノズルチップ12に接触しないようにするためである。
【0056】
手前側壁80の上端部には、トラバーサ32が搬送レール20の先にある場合に当該搬送レール20の支持レール50と連通するX軸方向に伸びるトラバーサ側支持レール88、トラバーサ側支持レール88の伸長方向に沿って伸びる、その上側面50Aから上方に突出するトラバーサ側上方突条90、及び、トラバーサ側ガイドレール92が設けられる。奥側壁82の上端部にも、同様に、トラバーサ側支持レール88、トラバーサ側上方突条90、及び、トラバーサ側ガイドレール92が設けられる。
【0057】
トラバーサ32が搬送レール20の先にある場合に、支持レール50とトラバーサ側支持レール88が連通するから、支持レール50に支持されたチップホルダ14がプッシャー24により下流側に押し込まれることで、当該チップホルダ14はトラバーサ側支持レール88の上に移載される。つまり、トラバーサ32に移載されたチップホルダ14はトラバーサ側支持レール88によって下から支持される。
【0058】
トラバーサ側上方突条90は、支持レール50の上方突条54と同等の機能を発揮する。すなわち、トラバーサ側支持レール88がチップホルダ14を支持している状態において、トラバーサ側上方突条90は、チップホルダ14の下側面14Aに設けられた下方突出部42よりも内側(Y軸方向におけるトラバーサ32の中央側)に位置している。これにより、トラバーサ側支持レール88によって支持されたチップホルダ14が手前側又は奥側に移動すること、あるいは、チップホルダ14の短手方向の向きがトラバーサ側支持レール88の伸長方向からずれるように傾くことを抑制する機能を発揮する。
【0059】
また、トラバーサ側支持レール88がチップホルダ14を支持している状態において、トラバーサ側ガイドレール92は、当該チップホルダ14の手前側及び奥側の側方に位置していることになる。したがって、トラバーサ側ガイドレール92は、ガイドレール52同様、トラバーサ側支持レール88によって支持されたチップホルダ14が手前側又は奥側に移動すること、あるいは、チップホルダ14の短手方向の向きがトラバーサ側支持レール88の伸長方向からずれるように傾くことを抑制する機能を発揮する。なお、トラバーサ側上方突条90には切り欠き90Aが設けられており、トラバーサ側ガイドレール92には、切り欠き90Aと左右方向(X軸方向)において一致する位置に挿通孔92Aが設けられている。切り欠き90A及び挿通孔92Aには、固定機構34が有する受け部(後述)が挿入される。
【0060】
トラバーサ32の左側壁84には、台形板金94が設けられている。
図14に示される通り、台形板金94は、手前側にある手前側板金94A、手前側板金94Aの奥側に隣接する中央板金94B、及び、中央板金94Bの奥側に隣接する奥側板金94Cとから構成される。手前側板金94A、中央板金94B、及び奥側板金94Cは、いずれも、鉛直方向に立設する鉛直板と、当該鉛直板に直交する突出板とから構成されるL字金具となっている。手前側板金94A、中央板金94B、及び奥側板金94Cの鉛直板が左側壁84にビス止めされることで、各板金の突出板が左側壁84から左側に突出する形となっている。
【0061】
手前側板金94Aは、その突出板94Aaが奥側へ向かう程上側となるように傾斜して取り付けられる。中央板金94Bは、その突出板94Baが手前側板金94Aの突出板94Aaの奥側端(上端と言ってもよい)に連接して水平となるように取り付けられる。奥側板金94Cは、その突出板94Caが奥側へ向かう程下側となるように傾斜し、且つ、その手前側端(上端と言ってもよい)が中央板金94Bの突出板94Baの奥側端に連接するように取り付けられる。
【0062】
突出板94Aa,94Ba,及び94Caから形成される側面視で台形型の板部は、ストッパ機構26に設けられたローラ78(
図12参照)が通過する経路となる。すなわち、トラバーサ32と共に台形板金94もY軸方向に沿って移動することとなるが、台形板金94の移動経路上に、第1搬送レール20Aに設けられたストッパ機構26のローラ78、及び、第2搬送レール20Bに設けられたストッパ機構26のローラ78がある。以下、
図15を参照して、ローラ78と台形板金94との作用について説明する。
【0063】
図15は、台形板金94及びストッパ機構26を下流側(右側)から見た側面図である。
図15においては、トラバーサ32の台形板金94以外の大部分の図示は省略されている。まず、
図15に図示されたストッパ機構26が第1搬送レール20Aに設けられたものであり、矢印AR1に示すように、トラバーサ32が装着エリア30側から手前側に移動してきた場合を考える。ストッパ機構26のローラ78が台形板金94に作用していない場合は、上述のように、ストッパ機構26の可動支持部72はスプリング76の付勢力により下側に下げられており、ストッパ部材74のストッパ板74Aが第1搬送レール20Aの下流端部にあるチップホルダ14に当接しているロック状態となっている。
【0064】
トラバーサ32が手前側に移動してくると、ローラ78は手前側板金94Aの突出板94Aaに乗り上げる。突出板94Aaは奥側へ向かう程上側となるように傾斜しているから、トラバーサ32(すなわち台形板金94)の手前側への移動に伴って(換言すればローラ78が台形板金94に対して相対的に奥側へ移動することで)、ローラ78は傾斜した突出板94Aaにより上側へと押し上げられる。これに伴い、矢印AR2が示すように、可動支持部72も上側に押し上げられる。そして、トラバーサ32が第1搬送レール20Aの下流側端の先に位置した状態(支持レール50とトラバーサ側支持レール88が連通した状態)において、ローラ78は中央板金94Bの突出板94Baに乗った状態となる。この状態において、ローラ78は最も高い位置に押し上げられており、これに伴い可動支持部72及びストッパ部材74も最も高い位置に押し上げられる。この状態が、ストッパ板74Aが第1搬送レール20Aの下流端部にあるチップホルダ14に当接しないロック解除状態である。
【0065】
矢印AR3に示すように、トラバーサ32が奥側へ移動すると、当該トラバーサ32の移動に伴って、ローラ78は台形板金94に対して相対的に手前側に移動し、傾斜した突出板94Aaを下っていく。これに伴い、可動支持部72は、スプリング76の付勢力により下側に下がっていく。可動支持部72がある程度下がると再度ロック状態が形成される。
【0066】
次いで、
図15に図示されたストッパ機構26が第2搬送レール20Bに設けられたものであり、矢印AR3に示すように、トラバーサ32が第1搬送レール20A側から奥側に移動してきた場合を考える。
【0067】
トラバーサ32が奥側に移動してくると、ローラ78は奥側板金94Cの突出板94Caに乗り上げる。突出板94Caは手前側へ向かう程上側となるように傾斜しているから、トラバーサ32の奥側への移動に伴って(換言すればローラ78が台形板金94に対して相対的に手前側へ移動することで)、ローラ78は傾斜した突出板94Caにより上側へと押し上げられる。これに伴い、矢印AR2が示すように、可動支持部72も上側に押し上げられる。そして、トラバーサ32が第2搬送レール20Bの下流側端の先に位置した状態(支持レール50とトラバーサ側支持レール88が連通した状態)において、ローラ78は中央板金94Bの突出板94Baに乗った状態となる。この状態において、ローラ78は最も高い位置に押し上げられており、これに伴い可動支持部72及びストッパ部材74も最も高い位置に押し上げられる。この状態は、ストッパ板74Aが第2搬送レール20Bの下流端部にあるチップホルダ14に当接しないロック解除状態である。
【0068】
さらに、矢印AR3に示すように、トラバーサ32が装着エリア30に向かって奥側へ移動すると、当該トラバーサ32の移動に伴って、ローラ78は台形板金94に対して相対的に手前側に移動し、傾斜した突出板94Aaを下っていく。これに伴い、可動支持部72は、スプリング76の付勢力により下側に下がっていく。可動支持部72がある程度下がると再度ロック状態が形成される。
【0069】
このように、トラバーサ32に設けられた台形板金94が、ストッパ機構26の可動支持部72に設けられたローラ78に作用することで、ストッパ機構26をロック解除状態とすることができる。すなわち、台形板金94がストッパ機構26に作用するストッパ作用部材としての機能を発揮する。特に、本実施形態では、ローラ78及び台形板金94の協働により、トラバーサ32が搬送レール20の下流側端の先にあるときのみ、すなわち、搬送レール20の下流側端からチップホルダ14が落下するおそれのない場合のみ、ストッパ機構26をロック解除状態とすることができ、トラバーサ32が搬送レール20の下流側端の先にないとき、すなわち、搬送レール20の下流側端からチップホルダ14が落下するおそれのある場合には、ストッパ機構26をロック状態とすることができる。しかも、ストッパ機構26のロック状態とロック解除状態との状態遷移をトラバーサ32の移動によってのみ行うことが可能である。したがって、本実施形態によれば、ストッパ機構26の状態遷移を行うためのモータを用いることなく、好適にストッパ機構26の状態遷移を行うことができる。
【0070】
なお、本実施形態では、台形板金94がストッパ機構26に作用するストッパ作用部材としての機能を発揮していたが、トラバーサ32の移動によってのみストッパ機構26の状態遷移を行うことができる限りにおいて、ストッパ作用部材としてはその他の態様を採用することができる。また、ストッパ機構26の状態遷移に伴うストッパ板74Aの移動方向は上下方向以外の方向であってもよい。
【0071】
<固定機構>
図16は、固定機構34の斜視図である。固定機構34は、トラバーサ32の移動経路の奥側端(すなわちトラバーサレール28の奥側端)近傍に設けられる。固定機構34は、固定的に設けられる基部100と、基部100に取り付けられる左L字部材102及び右L字部材104を含んで構成されている。左L字部材102と右L字部材104は、トラバーサ32の左右方向の中心線を中心にして左右対称に離間して設けられる。
【0072】
左L字部材102は、水平方向の一方向(
図16の姿勢においてはX軸方向)に伸長するベース部102Aと、ベース部102Aに対して略直交する水平方向(
図16の姿勢においては略Y軸方向)に伸長するアーム部102Bから構成されている。アーム部102Bの先端部には、鉛直方向に広がる当接面102Baが形成されている。後述のように、当接面102Baは、装着エリア30に移動されたチップホルダ14の左側面に当接する部分である。また、アーム部102Bの基端部の右側面にはガイド面102Bbが形成されている。ガイド面102Bbは、アーム部102BがY軸方向に伸長した姿勢のときに、当接面102Baよりも少し左側に位置するようになっている。
【0073】
左L字部材102は、ベース部102Aとアーム部102Bとの接合部分(L字の角の部分)を通りZ軸方向に平行な回転軸AX3を中心に水平面において所定の角度内において回動可能に基部100に取り付けられる。具体的には、左L字部材102は、ベース部102AがX軸に平行となる姿勢から、平面視で時計回りに数度~十数度回動可能となっている。左L字部材102が平面視で時計回りに回動する回動方向を「開く方向」と記載し、反時計回りに回動する回動方向を「閉じる方向」と記載する。また、ベース部102AがX軸に平行となる姿勢を左L字部材102が「閉じた状態」と記載し、閉じた状態において、アーム部102B先端の当接面102BaはY軸方向、すなわち、トラバーサ32に保持されて装着エリア30に移動されたチップホルダ14の左側面(本実施形態ではトラバーサ32は2つのチップホルダ14を保持可能であるから、トラバーサ32に保持された左側のチップホルダ14の左側面)と平行となる。
【0074】
ベース部102Aの先端には、手前側に対向して設けられるベアリング105が設けられている。ベアリング105もベース部102A、すなわち左L字部材102と一体となって回動する。また、基部100の奥側端部であって左L字部材102の近傍には、手前側に対応して設けられる受け部106が設けられている。受け部106は、手前側から装着エリア30に向けて移動してきたトラバーサ32に保持されたチップホルダ14の下方突出部42(
図4及び5参照)を受ける部材である。
【0075】
また、
図16では不図示であるが、一端が基部100に取り付けられ、他端が左L字部材102(本実施形態ではアーム部102B)に取り付けられたスプリング108(右L字部材104に取り付けられたスプリング112参照)が設けられる。スプリング108により、左L字部材102は開く方向に常に付勢されている。スプリング108の付勢力により、左L字部材102が最大限に平面視で時計回りに回転した状態を「開いた状態」と記載する。
【0076】
右L字部材104は、左L字部材102と左右対称の構造であるため、詳しい説明は省略する。概略的には、右L字部材104はベース部104Aとアーム部104Bを備え、アーム部104Bには当接面104Ba及びガイド面104Bbが設けられている。右L字部材104は、回転軸AX4を中心に水平面において所定の角度内において回動可能に基部100に取り付けられる。ベース部104Aの先端にはベアリング109が設けられている。また、一端が基部100に取り付けられ、他端が右L字部材104のアーム部104Bに取り付けられたスプリング112が設けられる。さらに、基部100の奥側端部であって右L字部材104の近傍には、手前側に対応して設けられる受け部110が設けられている。右L字部材104が平面視で反時計回りに回動する回動方向を「開く方向」と記載し、時計回りに回動する回動方向を「閉じる方向」と記載する。また、ベース部104AがX軸に平行となる姿勢を右L字部材104が「閉じた状態」と記載し、閉じた状態において、アーム部104B先端の当接面104BaはY軸方向、すなわち、装着エリア30に移動されたチップホルダ14の右側面(トラバーサ32に保持された右側のチップホルダ14の右側面)と平行となる。また、スプリング112の付勢力により、右L字部材104が最大限に平面視で反時計回りに回転した状態を「開いた状態」と記載する。
【0077】
本実施形態では、閉じた状態の左L字部材102の当接面102Baと、閉じた状態の右L字部材104の当接面104Baとの間の水平距離(X軸方向距離)が、チップホルダ14の短手方向の長さの2倍となっている。
【0078】
左L字部材102及び右L字部材104は、トラバーサ32の移動に伴って回動し、これにより、装着エリア30に移動してきたチップホルダ14を保持して固定する。以下、
図17及び
図18を参照しながら、固定機構34の動作について説明する。
【0079】
図17に示すように、チップホルダ14が装着エリア30に移動される前であって、トラバーサ32が左L字部材102及び右L字部材104に当接していない場合、左L字部材102はスプリング108の付勢力により開いた状態となっており、右L字部材104はスプリング112の付勢力により開いた状態となっている。この状態において、左L字部材102の当接面102Baはトラバーサ32に保持された左側のチップホルダ14の左側面14CよりもX軸方向において左側に離間して位置しており、右L字部材104の当接面104Baはトラバーサ32に保持された右側のチップホルダ14の右側面14DよりもX軸方向において右側に離間して位置している。
【0080】
トラバーサ32が奥側へ移動すると、まず、チップホルダ14は、左L字部材102に設けられたガイド面102Bb及び右L字部材104に設けられたガイド面104Bbによって左右方向(X軸方向)におおまかに位置決めされる。おおまかに位置決めされたことで、受け部106及び110(
図17では不図示、
図16参照)がトラバーサ32に設けられた挿通孔92A及び切り欠き90A(
図13参照)に入り込めるようになり、受け部106が左側のチップホルダ14の下方突出部42を受け、受け部109が右側のチップホルダ14の下方突出部42を受けることが可能になる。そして、さらにトラバーサ32が奥側へ移動すると、トラバーサ32(の奥側壁82の上端部に設けられたトラバーサ側ガイドレール92)が、左L字部材102に設けられたベアリング105及び右L字部材104に設けられたベアリング109に当接する。その状態からさらにトラバーサ32が奥側へ移動すると、ベアリング105及び109が奥側へ押し込まれる。すると、左L字部材102及び右L字部材104が閉じる方向に回動する。
【0081】
図18に示すように、トラバーサ32が最奥部まで移動し、すなわちトラバーサ32に保持されたチップホルダ14が装着エリア30まで移動すると、ベアリング105及び109はトラバーサ32により最後まで押し込まれ、左L字部材102のベース部102Aと、右L字部材104のベース部104AとがX軸に平行となる。つまり、左L字部材102及び右L字部材104が閉じた状態となる。この状態において、左L字部材102の当接面102Baがチップホルダ14の左側面14Cに当接し、右L字部材104の当接面104Baがチップホルダ14の右側面14Dに当接し、2つのチップホルダ14を左右から挟み込んで固定する。
【0082】
チップホルダ14が左L字部材102及び右L字部材104により固定された固定状態において、分注装置によって、当該チップホルダ14に収容されたノズルチップ12がノズルに装着される。つまり、ノズルによってチップホルダ14からノズルチップ12が抜き取られる。このとき、チップホルダ14は固定機構34によって固定されているから、分注装置のノズルはより正確にノズルチップ1を装着することができる。
【0083】
チップホルダ14に収容されたノズルチップ12が全て抜き取られると、トラバーサ32は手前側に移動する。これに伴い、トラバーサ32によるベアリング105及び109の奥側への押し込み力が解除される。これにより、左L字部材102はスプリング108の付勢力によって、右L字部材104はスプリング112の付勢力によって、それぞれ開いた状態へと遷移し、つまり、左L字部材102及び右L字部材104による固定状態が解除される。
【0084】
このように、左L字部材102及び右L字部材104は、トラバーサ32の装着エリア30への移動に伴ってチップホルダ14の固定状態を形成することができる。また、トラバーサ32の装着エリア30からの移動に伴ってチップホルダ14の固定状態を解除することができる。したがって、本実施形態によれば、固定機構34によるチップホルダ14の固定状態の形成と固定状態の解除とを、固定機構34を動作させるためのモータを用いることなく行うことができる。
【0085】
<回収エリア>
装着エリア30にて分注装置のノズルによりノズルチップ12が抜き取られ空となったチップホルダ14を保持したトラバーサ32は、搬送レール20の下流側端の先に移動させられる。本実施形態では、トラバーサ32は、第1搬送レール20Aと第2搬送レール20Bのうち、次にプッシャー24によってチップホルダ14が搬送される方の先に移動する。ここでは、
図19に示すように、トラバーサ32は第1搬送レール20Aの先に移動したとする。
【0086】
この状態において、プッシャー24により第1搬送レール20Aに支持されているチップホルダ14が押し込まれると、第1搬送レール20Aの下流側端部にあるチップホルダ14がトラバーサ32に移動すると共に、トラバーサ32が保持していた空のチップホルダ14が、第1搬送レール20Aから移載されてきたチップホルダ14により押し込まれ、トラバーサ32の右側へ押し出される。そうすると、空のチップホルダ14はトラバーサ32の右側から脱落し、
図19の矢印に示すように落下する。空のチップホルダ14が落下する先に回収エリア36が設けられている。なお、
図19に示すように、トラバーサ32から脱落した空のチップホルダ14を回収エリア36への移動を促す案内板120が設けられていてもよい。
【0087】
回収エリア36に回収された空のチップホルダ14は、廃棄される。
【0088】
以上、本発明に係る実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0089】
10 チップホルダ搬送装置、12 ノズルチップ、14 チップホルダ、20 搬送レール、24 プッシャー、26 ストッパ機構、32 トラバーサ、34 固定機構、36 回収エリア、40 挿通孔、42 下方突出部、50 支持レール、52 ガイドレール、62 基部、64 腕部、66A,66B 当接部、72 可動支持部、74 ストッパ部材、78 ローラ、94 台形板金、102 左L字部材、104 右L字部材。