(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】種子アレルギーの治療および防止
(51)【国際特許分類】
A61K 36/48 20060101AFI20231221BHJP
A23J 3/14 20060101ALI20231221BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20231221BHJP
A23L 33/185 20160101ALI20231221BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20231221BHJP
A61K 39/35 20060101ALI20231221BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20231221BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20231221BHJP
C07K 14/415 20060101ALI20231221BHJP
A21D 2/26 20060101ALN20231221BHJP
A23L 25/00 20160101ALN20231221BHJP
A61K 38/02 20060101ALN20231221BHJP
A61K 131/00 20060101ALN20231221BHJP
A23C 9/152 20060101ALN20231221BHJP
【FI】
A61K36/48
A23J3/14
A23L33/105
A23L33/185
A61K39/00 H
A61K39/35
A61P37/06
A61P37/08
C07K14/415
A21D2/26
A23L25/00
A61K38/02
A61K131:00
A23C9/152
(21)【出願番号】P 2020538672
(86)(22)【出願日】2019-01-16
(86)【国際出願番号】 IL2019050067
(87)【国際公開番号】W WO2019142189
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2022-01-14
(32)【優先日】2018-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509316512
【氏名又は名称】シェバ インパクト リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHEBA IMPACT LTD.
【住所又は居所原語表記】The Chaim Sheba Medical Center, Tel HaShomer, 1 Emek HaEla Street, Gertner Building, 1st Floor, Ramat-Gan, Israel
(73)【特許権者】
【識別番号】509219903
【氏名又は名称】ザ ステイト オブ イスラエル ミニストリー オブ アグリカルチャー アンド ルーラル ディベロップメント アグリカルチュラル リサーチ オーガニゼイション (エー.アール.オー.) (ボルカニ インスティテュート)
【氏名又は名称原語表記】THE STATE OF ISRAEL, MINISTRY OF AGRICULTURE & RURAL DEVELOPMENT, AGRICULTURAL RESEARCH ORGANIZATION (ARO)(VOLCANI INSTITUTE)
【住所又は居所原語表記】Volcani Center, P.O. Box 15159, Rishon-LeZion, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キドン モナ
(72)【発明者】
【氏名】ホワフ ラン
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-500321(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0022718(US,A1)
【文献】Si-Yin Chung et al.,Linking Peanut Allergenicity to the Processes of Maturation, Curing, and Roasting,Journal of Agricultural and Food Chemistry,2003年06月18日,Vol.51, No.15,p.4273-4277
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレルギーの対象において落花生の種子に対する脱感作を誘導するための医薬の製造における
組成物の使用であって、前記組成物は、落花生の複数の未成熟の種子の抽出物を含む組成物であって、前記落花生の種子は、鞘体積の40~60%を種子が占める状態の生長段階にあり、前記落花生の種子のアレルゲン性タンパク質は前記抽出物中で、温度が50~500℃の間の調理または加熱によって変性されており、前記組成物は、完熟した前記落花生の種子の未変性アレルゲン性タンパク質を実質的に含まない組成物である、使用。
【請求項2】
前記組成物が加熱製品である、
請求項1に記載の使用。
【請求項3】
対象の前記落花生の種子に対するアレルギー性を防止するための医薬の製造における、
組成物の使用であって、前記組成物は、落花生の複数の未成熟の種子の抽出物を含み、前記落花生の種子は、鞘体積の40~60%を種子が占める状態の生長段階にあり、前記落花生の種子のアレルゲン性タンパク質は前記抽出物中で、温度が50~500℃の間の調理または加熱によって変性されており、前記組成物は、完熟した前記落花生の種子の未変性アレルゲン性タンパク質を実質的に含まない組成物である、使用。
【請求項4】
前記対象が乳幼児である、
請求項3に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は2018年1月16日に出願した米国仮出願第62/617,642の優先権を主張し、その内容は本参照を持って本願に完全に組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、食用植物の種子、具体的には、これに限定されるものではないが、落花生に対するアレルギーの治療および防止のための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
食物アレルギーは、「21世紀の疫病」と呼ばれ、アレルギー流行の「第2波」として出現したものである。食物アレルギーは、特定の食品に暴露された際に繰り返し生じる特異的免疫応答による望ましくない健康への影響である。最近の研究によると、いくつかの発展途上国における就学前児童の臨床(OFCで立証済みの)食物アレルギー蔓延率は、今では10%にも達している。中国などの、アジアの大きく、急速に発展する国では、乳幼児の食物アレルギー蔓延率は今では約4%であり、そして食物アレルギー率は経済自由化の急勾配に沿っている。
【0004】
アレルギー食品による流行性疾患(epidemic)の一部であり、よりやっかいな問題は、落花生アレルギーが過去20年間に、子供の1.5~3%に影響を及ぼす国際的な公衆衛生上の問題となったことである。これは、食物アレルギーの中でも最も「危険」なものの1つと考えられており、著しい偶発的な暴露と、生命に危険を及ぼす反応と、死亡者数を伴う。大部分の子供において、自発的に解消することはない、即ち、一生涯にわたる脅威であり、それ故に、よりよい治療的選択の発見は、国際的に満たされていない要求である。この命を脅かす急性疾患の現状の対処方法、即ち、落花生を含む食品の完全な排除およびエピネフリン自動注射を常に準備しておくことは、患者およびその家族の生活の質を非常に低い状態とし、偶発的な暴露によって発生する顕著な罹患率のみならず、稀ではあるが顕著な死亡例をも解決してはいない。
【0005】
過去数年において、落花生による経口免疫療法(OIT)が、アレルギー患者の治療の選択肢のとして出現した。落花生OITの種々のプロトコルが出版されており、それらの成功率は様々である[Sun J, et al., Allergy Asthma Proc 2014;35:171-7]。しかし、それらの全てが、治療の全ての段階で重篤な副作用を伴い、脱感作の状態、即ち、子供が服用量の落花生の摂取を毎日継続したときに一時的に抗原に対して低応答性となる状態を達成するに過ぎず、大部分の子供が恒常的な寛容を達成することができない。服用を中断または中止すると、脱感作による防御効果は失われ、さらに治療の途中であっても、ウイルス感染や運動といった増幅因子が、以前には耐性のあった維持用量に対して反応を引き起こす場合がある[Nurmatov U, et al., Allegy, 2017;72:1133-47]。この方法に偏在する副作用は、大部分のOITプログラムが4~6歳以下の子供を対象としないため、アレルギーを発症した患者の中で最も若く、最も弱い患者を排除している点にある。脱感作の正確なメカニズムは不明であるが、関連する免疫学的変化には、(皮膚プリックテストの反応性で測定した)マスト細胞および好塩基球の反応性の低下、血清中および唾液中の食品特異的IgG4およびIgA抗体の増加、および初期には増加するが徐々に低下する、血清中の食品特異的IgE抗体が挙げられる。
【0006】
観察データおよび盲目試験の結果は、牛乳アレルギー(CMA)または卵アレルギー(EA)であるが、十分に加熱および焼成した乳/卵タンパク質を安全に摂取できる子供は、顕著な量のこれらタンパク質を食事に取り入れると、アレルギーからより迅速に回復することが示された[Nowak-Wegrzyn A, et al., J Allergy Clin Immunol 2008;122:342-7, 7 e1-2]。恒久的な寛容のメカニズムは不明であるが、アレルギーに続く調節性T細胞の発生、および/またはエフェクターT細胞の除去を含み得る。以前はアレルゲン性であった食品に対する寛容の突発的な発生を経験している患者には、食品特異的IgEの緩やかな減少、特異的IgGの増加およびアレルゲン特異的T調節細胞のサブセットの増加が見られ、CMAおよびEAの自然履歴の過程で徐々に寛容が発生した。典型的には、動物由来のアレルゲン性タンパク質の熱変性は、アレルギー患者における特異的IgEの大部分の種によって認識される立体性アレルギーエピトープの廃棄をもたらし、そのような食品に対するアレルギー性応答を著しく減少させた[Burton OT, et al., Immunity 2014;41:141-51]。この熱処理の効果は、小麦マトリックスの存在、即ち、クッキーやワッフルとして調製したときに増強され、特異的タンパク質に対して差動的に作用するようである[Bloom KA, et al., Pediatr Allergy Immunol 2014;25:740-6]。しかし、アレルゲン特異的T細胞は、加熱または調理によって変化しない同じタンパク質由来の短い直鎖状エピトープを認識する能力を有する。アレルゲン摂取の際のIgE仲介アレルギー性応答の阻害は、確立された食物アレルギーおよび調節性T細胞の誘導の逆転につながる[Burton OT, et al., Immunity 2014;41:141-51]。
【0007】
動物性食品と比べて、落花生を含む種子のアレルゲン性タンパク質は、比較的熱変性に対して安定である。ある種の状況、例えば、落花生の焙煎においては、主要なアレルゲンのアレルゲン性は実際には増強され、減少しない[Vissers YM, et al., Clin Exp Allergy 2011;41:1631-42]。煮沸/調理さえも、主要な落花生アレルゲンであるAra h1およびAra h2の可溶性を低下させるものの、落花生から低アレルゲン性材料を作製することはできない[Comstock SS., et al., PLoS One 2016;11:e0157849]。
【0008】
さらなる従来技術としては、米国特許願第2015/0173406号および米国特許第9,198,869号が挙げられる。
【発明の概要】
【0009】
本発明の1つの態様によると、目的の食用植物の複数の未成熟の種子の抽出物を含む組成物であって、前記種子は、前記植物の完熟種子に対するアレルギーによって特徴づけられる対象の少なくとも25%において、前記植物の完熟種子の処理後抽出物が示すアレルゲン性と比べて、その処理後抽出物の示すアレルゲン性が低い生長段階(developmental stage)にあり、前記生長段階において、前記種子は、少なくとも1種のアレルゲン性タンパク質を、前記完熟種子に含まれる量の少なくとも50%含み、前記組成物は、前記食用植物の前記完熟種子を実質的に含まず、前記アレルゲン性は、前記対象に対する局所投与後のアレルギー反応の測定によって評価したものである、組成物が提供される。
【0010】
本発明の1つの態様によると、目的の食用植物の複数の未成熟の種子の抽出物を含む組成物であって、前記種子は、完熟種子中の少なくとも1種のアレルゲン性タンパク質が処理後に変性する傾向と比べて、前記種子中の前記少なくとも1種の貯蔵タンパク質が処理後により多く変性する傾向を示す生長段階にあり、前記種子の前記少なくとも1種のアレルゲン性タンパク質は前記抽出物中で変性されており、前記組成物は、前記完熟種子の未変性アレルゲン性タンパク質を実質的に含まない、組成物が提供される。
【0011】
本発明の1つの態様によると、本願に記載の組成物を含む食品が提供される。
【0012】
本発明の1つの態様によると、食用植物の種子の抽出物を含む組成物の作製方法であって、
(a)食用植物の種子を選択する工程であって、前記種子は、そこに含まれる少なくとも1種のアレルゲン性タンパク質が処理後に示すアレルゲン性が、前記食用植物の完熟種子に対するアレルギーによって特徴づけられる対象の少なくとも25%において、前記植物の完熟種子が処理後に示すアレルゲン性と比べて低い生長段階にあり、前記生長段階において、前記種子は、少なくとも1種のアレルゲン性タンパク質を、前記完熟種子に含まれる量の少なくとも50%含む工程と、
(b)工程(a)において選択した種子を単離し、前記食用植物の成熟種子を含まない種子回収物を作製する工程と、
(c)前記種子回収物を乾燥させて、組成物を作製する工程と
を含む、方法が提供される。
【0013】
本発明の1つの態様によると、食用植物の種子の抽出物を含む組成物の作製方法であって、
(a)食用植物の種子を選択する工程であって、前記種子は、そこに含まれる少なくとも1種のアレルゲン性タンパク質が処理後に変性する傾向が、前記食用植物の完熟種子中の少なくとも1種のアレルゲン性タンパク質が処理後に変性する傾向と比べて低い生長段階にある工程と、
(b)工程(a)において選択した種子を単離し、前記食用植物の成熟種子を含まない種子回収物を作製する工程と、
(c)前記少なくとも1種のアレルゲン性タンパク質が変性する時間にわたり前記種子回収物を処理し、組成物を作製する工程と
を含む、方法が提供される。
【0014】
本発明の1つの態様によると、本願に記載の方法で作製した組成物が提供される。
【0015】
本発明の1つの態様によると、アレルギーの対象において種子に対する脱感作を誘導するための方法であって、アレルギーの対象において種子に対する脱感作を誘導する治療計画を用いて、本願に記載の組成物をアレルギーの対象に提供し、前記アレルギーの対象において種子に対する脱感作を誘導することを含む方法が提供される。
【0016】
本発明の1つの態様によると、種子に対する脱感作治療を受ける対象を選択するための方法であって、
(a)対象の皮膚を本願に記載の組成物と接触させる工程と、
(b)前記対象の皮膚上の前記組成物に対するアレルギー性応答を計測する工程と、
(c)前記工程(b)で計測したアレルギー性応答と、食用植物の成熟種子抽出物を含む組成物に対する前記対象のアレルギー性応答とを比較し、前記対象におけるアレルギー反応の減少を、前記対象が種子に対する脱感作治療のために選ばれるべきであることの指標とする工程と
を含む方法が提供される。
【0017】
本発明の1つの態様によると、対象が種子アレルギーであるか否かを決定するための方法であって、
(a)対象の皮膚を本願に記載の組成物と接触させる工程と、
(b)前記対象の皮膚を分析し、前記対象における非アレルギー反応を、前記対象が種子アレルギーではないことの指標とする工程と
を含む方法が提供される。
【0018】
本発明の1つの態様によると、対象の種子に対するアレルゲン性を防止するための方法であって、対象の種子に対するアレルゲン性を防止する条件下において、本願に記載の組成物を前記対象に提供する方法が提供される。
【0019】
本発明の1つの態様によると、植物種子の単離した変性貯蔵タンパク質が提供される。
【0020】
本発明の実施形態において、種子の少なくとも1種のアレルゲン性タンパク質は、抽出物中で変性されている。
【0021】
本発明の実施形態において、生長段階は、種子が、少なくとも1種のアレルゲン性タンパク質を前記完熟種子に含まれる量の少なくとも50%を含む状態である。
【0022】
本発明の実施形態において、アレルゲン性タンパク質は貯蔵タンパク質を含む。
【0023】
本発明の実施形態において、処理は熱処理を含む。
【0024】
本発明の実施形態において、目的の食用植物は鞘をつける植物である。
【0025】
本発明の実施形態において、目的の食用植物は樹木である。
【0026】
本発明の実施形態において、種子は落花生の種子である。
【0027】
本発明の実施形態において、種子は胡桃の種子である。
【0028】
本発明の実施形態において、生長段階は鞘体積の30~70%を種子が占める状態である。
【0029】
本発明の実施形態において、生長段階は鞘体積の40~60%を種子が占める状態である。
【0030】
本発明の実施形態において、落花生は、植え付け後75日以内に収穫したものである。
【0031】
本発明の実施形態において、少なくとも1種のアレルゲン性タンパク質はArah 1、Arah 2、およびArah 3からなる群より選ばれるものである。
【0032】
本発明の実施形態において、組成物は滅菌済みである。
【0033】
本発明の実施形態において、組成物は粉末状である。
【0034】
本発明の実施形態において、組成物は、未変性(native)の少なくとも1種の貯蔵タンパク質に対するアレルギーを有する対象において低アレルゲン性である。
【0035】
本発明の実施形態において、対象におけるアレルゲン性は、前記組成物の局所投与後に測定されたものである。
【0036】
本発明の実施形態において、食品は加熱済み(cooked)である。
【0037】
本発明の実施形態において、食品は小麦をさらに含む。
【0038】
本発明の実施形態において、食品は非加熱(raw)である。
【0039】
本発明の実施形態において、食品は乳児食または育児用調製乳である。
【0040】
本発明の実施形態において、乾燥後に、少なくとも1種のアレルゲン性タンパク質のアレルゲン性を減少させる時間にわたり種子を処理する工程をさらに含む。
【0041】
本発明の実施形態において、工程(a)の後で、且つ工程(b)の前に、乾燥種子を作製するための工程をさらに含む。
【0042】
本発明の実施形態において、工程(b)の前に、前記乾燥種子を粉砕する工程をさらに含む。
【0043】
本発明の実施形態において、処理は加熱を含む。
【0044】
本発明の実施形態において、選択を手動で行う。
【0045】
本発明の実施形態において、選択をX線技術を用いて行う。
【0046】
本発明の実施形態において、種子の3%超が上記生長段階のときに収穫する。
【0047】
本発明の実施形態において、組成物を経口で投与する。
【0048】
本発明の実施形態において、治療計画は、初めは組成物を加熱製品として投与することを含む。
【0049】
本発明の実施形態において、治療計画は、対象が加熱製品に対して寛容を示す場合、次に組成物を非加熱製品として投与することをさらに含む。
【0050】
本発明の実施形態において、組成物の局所投与に対する反応を評価することで、治療対象の対象を選択する。
【0051】
本発明の実施形態において、組成物は、タンパク質量で0.1~2gを週当たり提供する。
【0052】
本発明の実施形態において、対象は乳幼児である。
【0053】
本発明の実施形態において、組成物は育児用調製乳または乳児食である。
【0054】
特に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術および/または科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様のまたは等価な方法および材料を、本発明の実施形態の実践または試験に使用することができるが、例示的な方法および/または材料を下記に記載する。矛盾する場合、定義を含む特許明細書が優先する。加えて、材料、方法、および実施例は単なる例示であり、必ずしも限定を意図するものではない。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態について、その例示のみを目的として添付の図面を参照して本明細書に記載する。以下、特に図面を詳細に参照して示す細部は、例示を目的とし、また本発明の実施形態の詳細な説明を目的とすることを強調する。同様に、図面と共に説明を見ることで、本発明の実施形態をどのように実践し得るかが当業者には明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】
図1は、落花生種子の生長段階を図示する(栽培品種:Hanoch)。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に基づく、プロナッツ構造化段階的暴露(Pronut Structured Gradual Exposure)(ProSGEP)プロトコルの4つの段階を図示する。
【
図3A】
図3Aは、種子ステージの開発(seed stage development)におけるX線の使用を示す。
【
図3B】
図3Bは、(X線写真から算出した)種子の比率と、手動で求めた種子のステージとの相関関係を図示する。
【
図4】
図4は、未成熟落花生抽出物を用いたアレルゲン性試験と、血中AraH2に対する特異的抗体レベルによるアレルゲン性試験との相関関係を図示するグラフである。
【
図5】
図5は、チャレンジにより立証されている落花生アレルギーがあり(TrueAllergy=1)の就学前児童および無し(TrueAllergy=0)の就学前児童における、市販の落花生(A)またはR5落花生(B)を用いた皮膚プリックテスト(SPT)。テスト結果は、膨疹径(wheal size)により示す(mm)。カットオフ値は赤線で示す。
【
図6】
図6は、就学前の落花生アレルギー児童のアレルギー診断における、市販の落花生によるSPT対プロナッツ(R5)によるテストを比較したROCである。
【
図7A】
図7Aは、就学前の落花生アレルギー児童のアレルギー診断における、プロナッツ(R5)によるSPTと、落花生特異的IgEの血清レベルとを比較したROCである。
【
図7B】
図7Bは、就学前の落花生アレルギー児童のアレルギー診断における、プロナッツ(R5)によるSPTと、Ara h2特異的IgEの血清レベルとを比較したROCである。
【
図8】
図8のA~Cは、2種の落花生品種(Mona、Hanoch)における、総鞘収穫量(
図8のA、グラム/栽培地)、R5種子収穫量(
図8のB、栽培地当たりのチューブの数)およびR5収穫効率(
図6のC;%)を図示するグラフである。各品種を2つの日付、即ち、植え付け後71日目と77日目、に収穫した(D)。さらに各品種を、エスレル(Ethrel)(350cc/D)で処理または未処理(対照)とした。
【
図9】
図9は、2種の落花生品種(MonaおよびHanoch)のX線像である。上部および下部の種子における種子生長は、HanochよりもMonaにおいてより均一であった。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、食用植物の種子、具体的には、これに限定されるものではないが、落花生に対するアレルギーの治療および防止のための方法に関する。
【0058】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の記載に示す/または実施例で例示する用途に必ずしも限定されるものではないことを理解するべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、また、さまざまな手段で実施または実行することが可能である。
【0059】
落花生アレルギーは命に係わる結果を招き得ることから、感受性の高い患者において落花生に対するアレルギー反応の危険性および重症度を減少させることのできる治療的手法の開発には多大なる関心が寄せられている。
【0060】
臨床現場において、極めて少量のアレルゲン性タンパク質の高度に制御された投与を伴う経口免疫(OIT)は、近頃、ある種のアレルギー患者の脱感作をもたらし、偶然摂取したアレルゲン性食品に対する命に係わる可能性のあるアナフィラキシー反応を弱めることを約束する結果を示した。しかしながらOITは、消化器系の問題、喘鳴、さらにはアナフィラキシーショックまでもの顕著な危険性および副作用を有する。こういった障壁は当該技術の高度に制御された臨床環境を超えた迅速な普及を排除するものである。
【0061】
種々の処理に基づく戦略として、アレルギータンパク質のアレルゲン性プロファイルを修飾/改善する可能性について研究されている。一例には、熱誘導性凝集、酵素加水分解、および制御されたメイラード型修飾が挙げられる。
【0062】
動物性食品とは異なり、種子(例えば落花生)のアレルゲン性タンパク質は、比較的熱変性に安定である。状況によっては、例えば、落花生の乾燥焼成(dry roasting)においては、主要なアレルゲンのアレルゲン性は、消失するどころか、実際には増強される。煮沸/調理でさえも、主要な落花生アレルゲンであるArah1およびArah2の可溶性を低下させることができるが、落花生から低アレルゲン性材料を製造することはできない。
【0063】
本願発明者らは、主要な落花生タンパク質アレルゲンのみならず、ゴマや木の実といった種子の主要なタンパク質アレルゲンも、成熟植物においては、変性のための手順に対する耐性を増強する機能性構造を取っているという知見にたどり着いた。論理に縛られるものではないが、本願発明者らは、タンパク質アレルゲンの構造的エピトープを排除することができれば、アレルゲン-特異的IgE種の90%超がこれらの非線状構造を認識するため、「排除済」材料による処置は安全かつ効果的であると推測した。こうするために、本願発明者らは、アレルゲン性タンパク質がまだ煮沸、調理および焼成の際の熱変性を受ける、特定の栽培品種の種子(例えば落花生)を特定の未成熟生長段階で使用することを提案する。本願発明者らは、このような戦略によって、種子アレルギーの個人のための、小さな子供の治療も可能にする免疫療法用の安全なプロトコルの開発が可能になると提案する。これは、寛容の発達に近い、免疫系におけるより恒久的な変化につながると考えられる。
【0064】
本発明を実施するにあたり、本願発明者らは、落花生の栽培品種において、測定可能な物理的特性に基づき、落花生のアレルゲン性タンパク質の熱変性が可能な生長段階を同定した(
図1)。
【0065】
さらに本発明を実施するにあたり、本願発明者らは、これらタンパク質を含む乾燥粉末組成物を製造し、立証済みの落花生アレルギーを有する子供たちへの安全な投与を可能せしめる、これら未成熟落花生の煮沸、加熱および調理のための方法を開発した(
図2)。
【0066】
臨床研究において、参加した15人の落花生アレルギー児童のそれぞれが、当該組成物の経口免疫療法によって、種々の程度の改善された落花生に対するアレルギー性応答を示した-実施例4参照。
【0067】
本願発明者らは、当該組成物が落花生アレルギーの正しい診断にも有用であることを示した。当該組成物を用いた皮膚プリックアレルギー反応、即ち、食物アレルギーの即診断のための標準的試験は、成熟落花生由来の組成物を用いた皮膚プリック反応よりも、Arah2抗体のレベルとより相関していた。
【0068】
これらを総合すると、本願明細書の教示によれば、特定の生長段階の食用植物の種子を含む組成物は、植物関連食物アレルギーの正確な診断およびアレルギー患者の治療、即ち、食物アレルギー免疫療法の実施に使用することができる。本願の教示は、さらにこのような組成物が、食用種子に対する寛容の形成に有用であり、その結果、乳児および/または幼児の植物由来食物アレルギーの発達を防止する可能性も示唆している。
【0069】
したがって、本発明の第1の態様によると、以下の組成物が提供される。目的の食用植物の複数の未成熟の種子の抽出物を含む組成物であって、前記種子は、前記植物の完熟種子に対するアレルギーによって特徴づけられる対象の少なくとも25%において、前記植物の完熟種子の処理後抽出物が示すアレルゲン性と比べて、その処理後抽出物の示すアレルゲン性が低い生長段階にあり、前記生長段階において、前記種子は、少なくとも1種のアレルゲン性タンパク質を、前記完熟種子に含まれる量の少なくとも50%含み、前記組成物は、前記食用植物の前記完熟種子を実質的に含まず、前記アレルゲン性は、前記対象に対する局所投与後のアレルギー反応の測定によって評価したものである、組成物。
【0070】
本発明の別の態様によると、以下の組成物が提供される。目的の食用植物の複数の未成熟の種子の抽出物を含む組成物であって、前記種子は、完熟種子中の少なくとも1種の貯蔵タンパク質が処理後に変性する傾向と比べて、前記種子中の少なくとも1種のアレルギー性タンパク質が処理後により多く変性する傾向を示す生長段階にあり、前記組成物は、前記完熟種子の未変性アレルゲン性タンパク質を実質的に含まない、組成物。
【0071】
本願において「抗原」という用語は、それに暴露された動物(例えばヒト)の免疫系における免疫応答を発動、誘導、刺激、または増強する、分子またはその部分、通常はタンパク質を意味する。
【0072】
本願において「アレルゲン」という用語は、特異的免疫応答の誘導、即ち、抗原に対する増強された感受性または過敏症を発達させる抗原であって、典型的には、抗原自体は本来は危険ではないものを意味する。よって、アレルゲンは、対象における増強または増加された感受性または過敏症を発達させることのできる特定の種類の抗原である。例えば、アレルゲンは、予め暴露された対象においてIgE抗体の産生を発動させることができる。
【0073】
本願において「アレルギー」という用語は、免疫系の過敏性疾患を意味する。
【0074】
本願において「アレルゲン性」という用語は、アレルゲンがアレルギー反応を起こす能力を意味する。
【0075】
アレルギー性応答としては、アレルギー反応、過敏症、炎症性応答または炎症が挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態においてアレルギー性応答は、細胞浸潤、抗体の産生、サイトカイン、リンホカイン、ケモカイン、インターフェロンおよびインターロイキン、細胞生長および成熟因子(例えば、分化因子)の産生、細胞増殖、細胞分化、細胞の蓄積または遊走(化学遊走)、ならびに細胞、組織または臓器の破壊または再構築の1種または複数種を含んでもよい。
【0076】
アレルギー性応答は全身に生じる場合もあるし、いかなる領域、臓器、組織または細胞で局所的に生じる場合もある。特定の態様において、アレルギー性応答は皮膚、上気道、下気道、膵臓、胸腺、腎臓、肝臓、脾臓、筋肉、神経系、骨関節、眼、粘膜組織、胃または腸で発生する。
【0077】
本願において「抽出物」という用語は、種子の可食部分から誘導された組成物(即ち、種子の非可食部分、例えば殻から誘導したものではない)を意味する。未成熟ステージにある植物においては、非可食部分(即ち、殻)となる部分と、その中の種子となる部分との間に明確な境界がなく、抽出物は種子全体に対するものであることが理解されよう。
【0078】
ある実施形態において、抽出物は極性抽出物(即ち、極性溶媒を用いて抽出したもの)である。タンパク質の極性または水性の抽出は、ゴマおよび落花生といった種の植物においては、過敏症/アレルギーの発症において主要な役割を担う脂溶性タンパク質を含まない点で有利である。
【0079】
別の実施形態においては、抽出物は非極性抽出物(即ち、非極性溶媒を用いて抽出したもの)である。
【0080】
さらに別の実施形態においては、抽出物はタンパク質抽出物である。
【0081】
さらに別の実施形態においては、抽出物は種子全体の抽出物である。
【0082】
さらなる他の実施形態においては、抽出物は殻を含まない。
【0083】
本願において「植物」という用語は、もっとも広い定義で使用する。木本植物、草本植物、多年生植物、または一年生植物を含むが、これらに限定されるものではない。植物のいかなる生長段階に存在する構造のほとんどが分化する複数の植物細胞をも意味する。このような構造としては、根、茎、芽、葉、花、花びら、果実、いかなる貯蔵器官(例えば、塊茎、球根、球茎、仮茎、葉等)も含むが、これらに限定されるものではない。「植物組織」という用語には、分化または未分化の植物組織が含まれ、根、芽、葉、花粉、種子および腫瘍のみならず、培養細胞(例えば、単細胞、プロトプラスト、胚、カルス等)が挙げられる。植物組織は、植物内、培養器官内、培養組織内、または培養細胞でもよい。本願において「植物の部分」とは、植物器官または植物組織を意味する。
【0084】
「食用植物」という用語は、哺乳類による摂取に適したいかなる植物またはその部分を意味する。
【0085】
典型的に植物は、その特定の品種および種子の生長に適した条件下で栽培する。生長を促すために、植物をホルモンまたはホルモン放出化合物で処理することもできる点を理解されたい。このようなホルモンには、オーキシン、ジベレリン、サイトキニン、エチレンおよびアブシジン酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特定の実施形態においては、ホルモンはエチレンである。
【0086】
本願において「種子」という用語は、アレルゲン(ヒトに対してアレルギー反応を生じる分子、限定されるものではないが主として貯蔵タンパク質等のタンパク質)を含む、樹木の種子(即ち、堅果類)、鞘植物(即ち、マメ科植物)の種子、または果実の種子(ゴマ等)を意味する。木の実の例としては胡桃、ピーカンナッツ、アーモンド、ヘーゼルナッツ、カシューナッツ、ピスタチオ、ブラジルナッツが挙げられるが、これらに限定されるものではない。他のマメ科植物の例としては、アルファルファ、シロツメクサ、グリーンピース(peas)、豆類、ひよこ豆、レンズマメ、ハウチワマメ、メスキート、イナゴマメ、大豆、落花生、タマリンドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0087】
本発明において想定されるその他の種子には、栗、カカオ豆、綿実、アマニ種子、マカダミアナッツ、マスタード、松の実、けしの実、カボチャの種およびヒマワリの種が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
特定の実施形態において、種子は落花生-例えば、Arachis hypogaeaに属するものである。
【0089】
本発明において考えられるArachis hypogaeaの亜種および品種には、亜種であるfastigiata Waldron(例示的な品種としては、var. aequatoriana Krapov. & W. C. Greg;var. fastigiata (Waldron) Krapov. & W. C. Greg;var. peruviana Krapov. & W. C. Greg;およびvar. vulgaris Harzと亜種hypogaea L.(例示的な品種としては、hirsuta J. Kohlerおよびvar. hypogaea L)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0090】
特定の実施形態においては、品種はHanochの品種である(Gupta et al., Plant Sci. 2016 Jul;248:116-27. doi: 10.1016/j.plantsci.2016.04.014. Epub 2016 Apr 28を参照)。
【0091】
本発明の当該態様における組成物は、1種以上の種の種子の抽出部を含んでもよいことを理解されたい。よって、例えば、本発明は、2つの異なる種類の落花生の抽出物、あるいは全く異なる2種の種子、例えば、落花生とアーモンド、落花生と胡桃、落花生とカシューナッツ、の抽出物を含む組成物を想定している。
【0092】
「成熟していない種子」または「未成熟種子」という表現は代替的に使用され、種子が占める体積が完熟状態で占める鞘体積よりも低い体積である生長段階を示す。ある実施形態において、未成熟種子とは、室温で24時間で分解の兆候を示すものである。
【0093】
組成物中の種子の正確な生長段階は、アレルギー患者においてアレルゲン性を測定したときに、植物の完熟種子の処理後抽出物に対するアレルゲン性と比べて、処理後抽出物の示すアレルゲン性の方が低下するように選択する。
【0094】
したがって、例えば、ある実施形態においては、組成物に使用する種子(例えば落花生)は、特定の品種または栽培品種にもよるが、種子が鞘体積に占める体積が80%未満、70%未満、例えば、鞘体積の30~90%、鞘体積の30~80%、鞘体積の30~70%、鞘体積の40~70%、鞘体積の30~60%、より詳細には鞘体積の40~90%のステージにあるものである。
【0095】
落花生については、本願発明者らは、最適な生長段階はR5またはR5.5であることを見出した。例えば、Boote, Peanut Science (1982) 9, 35-40を参照、本文献の内容は本参照をもって本願に組み込まれるものとする。
【0096】
論理に縛られるものではないが、本願発明者らは、このステージの種子に含まれるアレルゲン性タンパク質は、成熟ステージのものよりも変性されやすいことを提案する。
【0097】
このような感受性は、特定の品種または栽培品種にもよるが、収穫期が植え付け後60日以内、植え付け後65日以内、植え付け後70日以内、植え付け後75日以内、さらには植え付け後80日以内であることと、相関し得る。
【0098】
種子の1%、2%、3%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%を超える量が必要な生長段階にあるときに収穫することが好ましい。
【0099】
生長段階は、アレルギー患者において脱感作を誘導するのに十分な量のアレルゲン性分子(例えばタンパク質)が存在する状態に対応するべきであることも理解されたい。よって生長段階としては、例えば、成熟種子に含まれる少なくとも1種のアレルゲン性タンパク質の量に対して少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%であるステージを選択すべきである。
【0100】
いくつかの実施形態において、アレルゲン性タンパク質は、1または複数の個体においてアレルギーまたは特異的過敏症を誘導するか、誘導すると推測されるタンパク質ファミリーに属するものである。特定の実施形態においては、アレルゲン性タンパク質は貯蔵タンパク質である。1または複数の個体においてアレルギーまたは特異的過敏症を誘導するか、誘導すると推測されるタンパク質ファミリーとしては、プロラミンスーパーファミリー、クピンスーパーファミリー、プロフィリン類、およびBet v-1関連タンパク質が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アレルゲン性タンパク質およびそれらのファミリーに関する他の情報は、Middletons Allergy 2013, Chapter 81, Reactions to Food、第1310-1339頁を参照することができる。
【0101】
本発明の当該態様の組成物を調製する際には、組成物が成熟種子によって汚染されないように注意しなければならない。ある実施形態においては、組成物は完熟種子を実質的に含まない。別の実施形態においては、組成物は完熟種子の未変性アレルゲン性タンパク質を実質的に含まない。
【0102】
特定の実施形態において、組成物中の種子の100%が必要な生長段階にあり、組成物中の種子の少なくとも99%が必要な生長段階にあり、組成物中の種子の少なくとも98%が必要な生長段階にあり、組成物中の種子の少なくとも97%が必要な生長段階にあり、組成物中の種子の少なくとも96%が必要な生長段階にあり、組成物中の種子の少なくとも95%が必要な生長段階にあり、組成物中の種子の少なくとも94%が必要な生長段階にあり、組成物中の種子の少なくとも93%が必要な生長段階にあり、組成物中の種子の少なくとも92%が必要な生長段階にあり、組成物中の種子の少なくとも91%が必要な生長段階にあり、組成物中の種子の少なくとも90%が必要な生長段階にある。
【0103】
抽出物が成熟種子を含まないことを保証するために、収穫後に目視によって(即ち、可視光を用いて)種子を手動で仕分けしてもよいし、他の形態の電磁放射および画像化技術(鞘を透過するマイクロ波、赤外線、紫外線、X線、ガンマ線等であるが、これらに限定されない)を用いて仕分けすれば、殻を割る必要がない。1つの実施形態においては、X線技術が使用される。
【0104】
別の実施形態においては、1つの鞘の中の複数の種子が同じ生長段階となる傾向の強い品種の植物を使用する。よって、例えば、特定の時期に、植物の鞘の50%超が必要なステージの種子を2つ含む、植物の鞘の60%超が必要なステージの種子を2つ含む、植物の鞘の70%超が必要なステージの種子を2つ含む、植物の鞘の80%超が必要なステージの種子を2つ含む、植物の鞘の90%超が必要なステージの種子を2つ含む、落花生植物の品種を使用することができる。
【0105】
1つの実施形態において、本明細書に記載の組成物を作製するために、種子を収穫し、種子の分解の速度および/または量に影響しない条件下で非可食部分である殻から種子を分離する。よって、例えば、種子は、10℃未満の温度で殻をむき、所望により保存する(例えば、4℃で殻をむき、所望により-20℃で保存する)。
【0106】
所望により、種子を後述するアレルゲン性低下技法に付す前に、前処理技法に付してもよい。この前処理技法としては、計測量(例えば、総タンパク質が約1~10g、総タンパク質が1~4g、総タンパク質が2g)への分注、乾燥(例えばフリーズドライ(freeze-drying)、除湿または凍結乾燥(lyophlization))、および/または粉末への粉砕が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0107】
1つの実施形態において、乾燥工程を50℃未満で実施する。別の実施形態においては、乾燥工程を40℃未満で実施する。乾燥は、種子が水分量の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%またはそれ以上を失うように実施し得る。
【0108】
よって本発明は、必要なステージの種子回収物の作製を想定している。このような回収物は、必要なステージよりも後期の種子を実質的に含まない。回収物は、必要なステージよりも前期の種子を実質的に含まない。種子は殻付きおよび/または乾燥品でもよい。種子の数は50超、100、200超、3000超、4000超、または500超でもよい。種子は粉末状でもよい。回収物を容器(例えば、袋、箱、かご、ビンなど)に入れることもできる。
【0109】
本願発明者らの想定する他の前処理技法としては、凍結乾燥、切断、みじん切り、均質化および液状化、ならびに洗浄、加熱殺菌といった、食品工業から誘導された、タンパク質部分に干渉しない、他の手法が挙げられる。
【0110】
1つの実施形態において、組成物は以下の方法で作製される。
(a)示した生長段階の種子を富化するために、最適な時期に植物を収穫する工程、
(b)直ちに種子を冷却(例えば、低環境湿度下で冷蔵)する工程、
(c)殻を剥く工程、
(d)必要な生長段階の種子を選択する工程、
(e)生物材料から水分を(例えば、凍結乾燥またはフリーズドライで)分離する工程、
(f)その後の使用のために微粉体/粉状に粉砕する工程。
種子の分注はどの工程で行ってもよく、例えば、工程(d)と(e)の間、または工程(f)の後に行うことができる。
【0111】
選別および任意の処理後の種子は、公知の方法で特徴づけしてもよい。公知の方法としては、高速液体クロマトグラフィー、酵素結合免疫吸着検定法、およびタンパク質含有量の解析が挙げられるが、これらに限定されるものではない。解析対象となり得る例示的なタンパク質としては、Ara h1抗原、Ara h2抗原、およびAra h6抗原が挙げられる。解析対象となり得るさらなるタンパク質としては、Ara h3およびAra h8が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0112】
正しいステージの種子の(目視または上述した技術を用いた)選択および任意の処理に続いて、後述するように、種子は、典型的にはアレルゲン性を減少させるための(例えば、アレルゲン性タンパク質の変性による)処理に付される。
【0113】
よって、本発明のさらなる態様によると、以下の組成物が提供される。目的の食用植物の複数の未成熟の種子の抽出物を含む組成物であって、前記種子は、前記植物の完熟種子に対するアレルギーによって特徴づけられる対象の少なくとも25%において、前記植物の完熟種子の処理後抽出物が示すアレルゲン性と比べて、その処理後抽出物の示すアレルゲン性が低い生長段階にあり、前記生長段階において、前記種子は、少なくとも1種のアレルゲン性タンパク質を、前記完熟種子に含まれる量の少なくとも50%含み、前記組成物は、前記食用植物の前記完熟種子を実質的に含まず、前記アレルゲン性は、前記対象に対する局所投与後のアレルギー反応の測定によって評価したものであり、前記種子中の少なくとも1種のアレルゲン性タンパク質は、前記抽出物中で変性されている、組成物。
【0114】
本発明のさらに別の態様によると、以下の組成物が提供される。目的の食用植物の複数の未成熟の種子の抽出物を含む組成物であって、前記種子は、完熟種子中の少なくとも1種の貯蔵タンパク質が処理後に変性する傾向と比べて、前記種子中の前記少なくとも1種の貯蔵タンパク質が処理後により多く変性する傾向を示す生長段階にあり、前記種子の前記少なくとも1種のアレルゲン性タンパク質は前記抽出物中で変性されており、前記組成物は、前記完熟種子の未変性アレルゲン性タンパク質を実質的に含まない、組成物。
【0115】
アレルゲン性の減少は、公知のいかなる方法で実施してもよい。1つの実施形態においては、アレルゲン性の減少を種子の加熱によって実施する。別の実施形態においては、アレルゲン性の減少を種子に圧力をかけることで実施する。さらに他の実施形態においては、アレルゲン性の減少を酵素的タンパク質分解によって実施する。これら工程の組み合わせも考えられる。工程によって種子中のアレルゲン性タンパク質(例えば貯蔵タンパク質)が変性されることが好ましい。
【0116】
「変性」という用語は、タンパク質またはペプチド配列の3Dおよび/または4D構造の変化を意味する。1つの実施形態において、タンパク質またはペプチドは、3D構造から2D構造へと変化する、即ち、直鎖状になる。
【0117】
落花生のアレルゲン性貯蔵タンパク質の例としては、Arah 1、Arah 2、およびArah 3が挙げられる。
【0118】
落花生について、本願発明者らは、完熟落花生に対するアレルギーを有すると特徴づけられた対象の少なくとも25%において、(例えば、皮膚プリックアレルギー反応によって測定した)アレルゲン性を減少させるのに、95℃で2時間の加熱工程が十分であることを示した。
【0119】
他の加熱プロトコル、例えば、温度が50~500℃の間またはそれ以上で、1~24時間の間、またはそれ以上も想定されることを理解されたい。
【0120】
すでに述べたように、技法は、完熟落花生に対するアレルギーを有すると特徴づけられた対象において、アレルゲン性を減少させるものとすべきである。
【0121】
「完熟落花生に対するアレルギーを有すると特徴づけられた対象」とは、成熟種子の摂取、または直接、ときには間接的な接触によって、IgE仲介過敏症の臨床症状を示す対象を意味する。1つの実施形態において、落花生アレルギーを有する対象は、落花生特異的血清IgE、即ち、落花生タンパク質に特異的に結合するIgEを提示しうる。しかし、個体が(血清中からいかなる方法で測定したもの、または対象の皮膚においてin vivoで測定した陽性即SPTが)検出可能なレベルの落花生特異的IgEを示さなかったとしても、食物への暴露によって即アレルギー反応が発生した場合には、アレルギーであるという定義の範囲に含まれることを理解されたい。
【0122】
1つの実施形態において、アレルギーの対象とは、標準的臨床基準に従ってアレルギーと特徴づけられたものである。標準的臨床基準としては、例えば、アレルゲン(例えば落花生)の摂取に一時的に関連する1型過敏症反応(例えば、蕁麻疹、膨張、喘鳴、腹痛、嘔吐、呼吸困難)の病歴、および陽性皮膚プリックテスト(膨疹径≧3、4または5mm)またはImmunoCap血清IgE>0.35kU/lである、アレルゲン特異的IgEの存在が挙げられる。
【0123】
本発明の当該態様における組成物(変性前または変性後のもの)はいかなる形態でもよい-例えば、乾燥型(例えば、粉末状または粉体)、液状、または半固体状―例えば、バターやチューインガムでもよい。
【0124】
好ましい実施形態において、組成物は滅菌済みである。
【0125】
1つの実施形態において、本願に記載の組成物は、経口投与用、例えば、カプセル、錠剤、小錠剤、粉剤または噴霧剤(sprinkle)に処方する。
【0126】
別の実施形態において、組成物は、噴霧用または舌下用の用途、あるいは皮膚の保湿剤用の用途、あるいは食用未成熟植物種子から誘導した組成物を個体の免疫系に提供することのできる他の用途として提供される。
【0127】
特定の実施形態において、(変性前または変性後の)組成物は、適切な担体若しくは賦形剤と混合された医薬組成物として、投与することができる。
【0128】
本明細書において「医薬組成物」とは、本明細書に記載の活性成分の1種以上と、生理学的に適切な担体及び賦形剤などの別の化学成分との製剤を指す。医薬組成物の目的は、生物体への化合物の投与を容易にすることである。
【0129】
ここでは「活性成分」という用語は、生物学的効果を担う種子組成物を指す。
【0130】
以下、区別なく使用される「生理学的に許容される担体」と「薬学的に許容される担体」という句は、代替的に使用することができ。生物に顕著な刺激を起こさず、投与化合物の生物活性及び性質を抑制しない担体又は希釈剤を指す。アジュバントはこれらの句に含まれる。
【0131】
ここでは「賦形剤」という用語は、医薬組成物に添加して、活性成分の投与を更に容易にする不活性物質を指す。賦形剤の非限定的例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖及びいろいろな種類のデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、並びにポリエチレングリコールが挙げられる。
【0132】
薬物の処方及び投与の技術は、参照により本明細書に援用する"Remington's Pharmaceutical Sciences", Mack Publishing Co., Easton, PA、最新版に記載されている。
【0133】
適切な投与経路としては、例えば、経口、直腸、経粘膜、特に経鼻、腸又は非経口送達が挙げられ、筋肉内、皮下及び髄内注射、並びに髄腔内、直接の脳室内、心臓内、例えば、右若しくは左心室腔、一般的な冠動脈、静脈内、腹腔内、鼻腔内、又は眼内注射を含む。
【0134】
上記の代わりに、医薬組成物を全身ではなく、局所的に、例えば、対象の組織周辺に直接医薬組成物を注射することもできる。
【0135】
本発明の一部の実施形態の医薬組成物は、当該技術分野で周知のプロセスによって、例えば、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠剤製造、研和、乳化、カプセル化、封入又は凍結乾燥プロセスによって、製造することができる。
【0136】
本発明の一部の実施形態に従って使用する医薬組成物は、活性成分の製剤化を容易にする、薬学的に使用可能な賦形剤や助剤を含む、1種類以上の生理学的に許容される担体を用いて、従来様式で処方することができる。適切な処方は、選択する投与経路に依存する。
【0137】
注射の場合、医薬組成物の活性成分を、水溶液として、好ましくはハンクス液、リンゲル液、生理学的塩緩衝剤などの生理適合性緩衝液として、処方することができる。経粘膜投与の場合、通過すべき関門に適切な浸透剤を処方に使用する。こうした浸透剤は、一般に当該技術分野で公知である。
【0138】
経口投与の場合、医薬組成物は、活性化合物を当該技術分野で周知の薬学的に許容される担体と組み合わせることによって、容易に処方することができる。こうした担体によって、患者による経口摂取用の錠剤、丸剤、糖衣錠剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などとして医薬組成物を処方することができる。経口用薬理学的製剤は、固体賦形剤を用いて製造することができ、場合によっては、生成した混合物を粉砕し、必要に応じて適切な助剤を添加後、顆粒混合物を加工して、錠剤、又は糖衣錠剤の核を得ることができる。適切な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール又はソルビトールを含めた糖などの充填剤、セルロース製剤、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容されるポリマーである。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸又はアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤を添加することができる。
【0139】
糖衣錠剤の核は、適切なコーティングが施されている。この目的のために、濃縮糖液を使用することができ、濃縮糖液は、場合によっては、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、Carbopolゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液、及び適切な有機溶媒又は溶媒混合物を含むことができる。識別のために、又は活性化合物用量の異なる組合せを特徴づけるために、色素又は顔料を錠剤又は糖衣錠剤コーティングに添加することができる。
【0140】
経口的に使用することができる医薬組成物としては、ゼラチン製押しばめ式カプセル剤、及びゼラチンと、グリセロール、ソルビトールなどの可塑剤とでできた密封軟カプセル剤が挙げられる。押しばめ式カプセル剤は、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、タルク、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、及び場合によっては安定剤との混合物中に、活性成分を含むことができる。軟カプセルでは、活性成分を脂肪油、流動パラフィン、液状ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解又は懸濁させることができる。さらに、安定剤を添加することもできる。経口投与用製剤はすべて、選択される投与経路に適切な投与量にすべきである。
【0141】
口腔投与の場合、組成物は、従来の様式で処方された錠剤又は舐剤の形をとり得る。
【0142】
経鼻吸入投与の場合、本発明の一部の実施形態に従って使用される活性成分は、加圧容器又は噴霧器から、適切な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン又は二酸化炭素を使用して、エアロゾル噴霧の形で好都合に送達される。加圧エアロゾルの場合には、計量された量を送達するための弁を備えることによって、単位用量を決定することができる。化合物とラクトース、デンプンなどの適切な粉末基剤との混合粉末を含む、分注器用の(例えばゼラチン製の)カプセル剤及びカートリッジ剤を処方することができる。
【0143】
本明細書に記載の医薬組成物は、例えば大量瞬時投与又は持続注入による、非経口投与用に処方することができる。注射用製剤は、場合によっては添加された防腐剤と共に、単位剤形で、例えば、アンプル又は複数回投与容器中に存在することができる。組成物は、懸濁剤、溶液剤又は油性又は水性ビヒクル中の乳濁液剤とすることができ、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤などの調合剤を含むことができる。
【0144】
非経口投与用医薬組成物は、水溶性の形態の活性製剤の水溶液を含む。さらに、必要に応じて、活性成分の懸濁液を油性又は水性の注射用の懸濁剤として調製することができる。適切な親油性溶媒又はビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油、オレイン酸エチルなどの合成脂肪酸エステル、トリグリセリド、リポソームが挙げられる。水性注射用懸濁剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、デキストランなど、懸濁剤の粘度を増加させる物質を含むことができる。場合によっては、懸濁剤は、適切な安定剤、又は活性成分の溶解性を高めて高濃縮溶液の調製を可能にする薬剤を含むこともできる。
【0145】
あるいは、活性成分は、使用前に適切なビヒクル、例えば、発熱物質を含まない無菌の水溶液で構成するために、粉末状とすることができる。
【0146】
本発明の一部の実施形態の医薬組成物は、例えばカカオ脂、他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を用いて、坐剤、保留浣腸などの直腸組成物に処方することもできる。
【0147】
本発明の一部の実施形態における使用に適切な医薬組成物としては、意図した目的を達成するのに有効な量で活性成分が含まれる組成物が挙げられる。
【0148】
本発明の一部の実施形態の組成物は、必要に応じて、活性成分を含む単位剤形を1つ以上含む、分包又は分注装置(FDAによって認可されたキットなど)として提供することができる。分包は、例えば、ブリスターパックなどのように、金属又はプラスチック箔を含むことができる。分包又は分注装置には、投与説明書を添付することができる。分包又は分注装置は、医薬品の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって規定された形式で容器に付随した通知を添付することもでき、この通知は、ヒトまたは動物への投与用の組成物の形態を政府機関が認可したことを示す。こうした通知は、例えば、処方薬に対して米国食品医薬品局が認可したラベル、又は認可された製品折込みとすることができる。更に、適合性の薬剤担体中に処方された本発明の製剤を含む組成物を調製し、適切な容器に入れ、上述した適応症の処置用であるというラベルを付すこともできる。
【0149】
別の実施形態においては、(変性前または変性後の)組成物を食品として提供する。
【0150】
食品には、本明細書に記載の組成物の味を隠すための香味成分が添加されていてもよい。適切な食品用の香味成分は当業界で広く知られており、砂糖、ミント、バニラ、オレンジエッセンスが挙げられる。
【0151】
食品には、標準的な食品技術に基づく、保存料、安定化剤、充填剤、着色料および甘味料が添加されていてもよい。
【0152】
食品は加熱済み(cooked)(例えば、オーブン調理済(baked)、フライパン調理済(fried)、グリル調理済(grilled))または非加熱(raw)でもよい。
【0153】
例示的な食品としては、育児用調製乳、乳児食、プロテインバーおよびプロテイン飲料が挙げられる。
【0154】
例示的なオーブン調理食品としては、ビスケット、クッキーまたはケーキが挙げられる。例示的なフライパン調理食品としては、パンケーキまたはワッフルが挙げられる。例示的な非加熱食品としては、スプレッドが挙げられる。
【0155】
1つの実施形態において、食品は小麦も含む。別の実施形態においては、食品は小麦を含まない。
【0156】
本願における組成物は多様な用途を有し、そのそれぞれについて後述する。
【0157】
1.脱感作
本発明の1つの態様によると、アレルギーの対象において種子に対する脱感作を誘導するための方法であって、アレルギーの対象において種子に対する脱感作を誘導する治療計画を用いて本明細書に記載した(変性または未変性の)組成物をアレルギーの対象に提供し、前記アレルギーの対象において種子に対する脱感作を誘導することを含む方法が提供される。
【0158】
本願において「脱感作」という用語は、種子に対するアレルギーを有すると分類された対象において、1種または複数種のアレルゲンに対する寛容を増加させることを意味する。
【0159】
本願において使用するように、「寛容」という用語は、a)(少なくとも部分的に抗体によって仲介されると考えられる、)特異的免疫学的応答レベルの低下または減少、b)特異的免疫学的応答の開始または進行の遅延、あるいはc)抗原またはアレルゲンに対する特異的免疫学的応答の開始または進行の危険度の減少を意味する。「特異的」免疫学的寛容は、他の抗原(アレルゲン)に対するよりも、特定の抗原(アレルゲン)に対して、寛容が好ましく発生するときに生じる。寛容は活性抗原依存性のプロセスであり、非特異的免疫抑制および免疫不全とは異なる。
【0160】
「寛容」の増加、改善、増強又は誘導は、抗原に対する前回の暴露時の反応性と比べて、今回の同じ抗原に対する特異的免疫学的反応が低下、減少、阻害、緩和、抑制、あるいは限定、または制御または除去されることを意味する。よって、ある実施形態においては、対象においてアレルゲンに対する寛容の誘導のための方法及び使用は、アレルゲンに対する対象のアレルギー反応の排除を含む。アレルゲンに対する対象の免疫学的寛容は、抗原またはアレルゲンに対する対象のアレルギー反応の発症率、頻度、重症度、進行、期間の低下にも反映される。
【0161】
寛容は抗原またはアレルゲンに対する非反応性を意味し得るが、寛容は完全な非反応性である必要はなく、部分的でもよく、いずれにせよ、抗原またはアレルゲン(またはそのエピトープ)に対する前回の暴露時の反応性と比べて、今回の同じ抗原またはアレルゲンに対する反応性が低下、阻害、抑制、または減少することによって反映される。よって、別の実施形態においては、対象における免疫学的寛容の誘導のための方法および使用は、アレルゲンに対する対象のアレルギー反応を安定化し、そのレベルを維持することを含む。
【0162】
治療の対象は、典型的にはヒト等の哺乳類の対象である。1つの実施形態において、対象は18歳未満である。組成物の局所投与に対する応答に基づき、対象を選択することもできる。よって、例えば、組成物の局所投与に対する応答を、成熟種子組成物の局所投与に対する応答と比較し、膨疹径の減少を治療が対象に対して有効であることの指標とすることができる。膨疹径の減少は、未成熟種子組成物の局所投与と、その後の成熟種子組成物の局所投与とを比べたときに、少なくとも10%、20%、30%、40%またはそれ以上減少することが好ましい。
【0163】
上述したように、本願に記載した使用するための組成物は、規定量の抗原タンパク質を含む単位剤形に処方することができる。
【0164】
個体に投与する組成物の初期用量は、タンパク質として1週間に約2mg以下とすることができる。例えば、初期用量は、1週間に0.1mg、0.5mg、1mg、2mgであるが、個体に応じてより高用量を選択することもできる。
【0165】
対象に組成物を毎日、例えば、1日1回、1日2回又はそれ以上投与することが好ましい。さらに、対象への組成物の投与は、脱感作の段階、初期応答、および選択したベヒクルに応じて、週3回、週1回、または月1回のように、規則的に行うこともできる。投与量は、推奨される1週間の総用量を超えなければ、1日量がいかなる分量になるように分割してもよいことを理解されたい。
【0166】
1つの実施形態において、組成物の用量は、治療計画にわたり段階的に増加させる。例えば、1日のまたは1週間の組成物の経口投与量を、少なくとも2週間、4週間、6週間、8週間、12週間、または16週間の間隔で、一連の特定の増加率で増加させることができる。別の実施形態においては、組成物の用量を治療計画にわたり一定に固定し、少なくとも2週間、4週間、6週間、8週間、12週間、または16週間等の間隔で、処置回数のみを段階的に減少させる。
【0167】
1日または1週間の経口用量は、増加量の投与中に患者が副次的なアレルギー反応を発症したり、抗アレルギー治療を必要としたり、疾患を併発したり、ワクチン接種を受けない限り、増加させてもよい。
【0168】
対象が副次的なアレルギー反応を発症したり、抗アレルギー治療を必要としたり、または疾患を併発したら、さらに用量を増加させる前に、以前の用量をさらに少なくとも1、2、3または4週間維持することができる。
【0169】
別の実施形態においては、一連の処理操作を通じて、アレルゲン性タンパク質の立体構造を変化させてもよい。よって、例えば、初期の組成物を、フライパン調理およびオーブン調理後のもの(例えばクッキー)として提供することができる。フライパン調理は適切な油脂(例えば、植物油)を用いて行うことができる。オーブン調理は、150~200℃で5分から1時間実施することができる。例示的な処理は、180℃で20分である。さらに後期には、フライパン調理のみの組成物を(例えばパンケーキやワッフルとして)提供することができる。さらに後期には、調理済みスプレッドとして組成物を提供し、最後には未調理スプレッド(即ち、生のもの)を提供することができる。
【0170】
別の実施形態においては、組成物を70~100℃の温度に60~360分暴露し、さらに(例えば小麦を含む)マトリックス中で150~250℃に15~60分暴露したものを初期に提供する。次に、組成物を70~100℃の温度に60~360分暴露し、さらにマトリックス中で150~250℃に2~10分暴露したものを提供する。次に、組成物を70~100℃の温度に60~360分暴露ししたものを提供する。次に、さらなる加熱または処理なしで、マトリックスと共に提供する。
【0171】
各段階は2~16週間、例えば、2週間、4週間、6週間、8週間、12週間、または16週間にわたり、実施することができる。
【0172】
対象が治療計画の次の段階の投与中に副次的なアレルギー反応を発症したり、抗アレルギー治療を必要としたり、疾患を併発したり、ワクチン接種を受けない限り、組成物中のアレルゲン性タンパク質の状態を先に進めてもよい。
【0173】
対象が副次的なアレルギー反応を発症したり、抗アレルギー治療を必要としたり、または疾患を併発したら、タンパク質の状態をさらに変化させる前に、タンパク質を同じ状態に少なくとも1、2、3または4週間またはそれ以上の期間維持してもよい。
【0174】
経口食物チャレンジ手順に記載/推奨されるように、アレルゲン性タンパク質用量の増加/アレルゲン性タンパク質の立体構造変化のそれぞれ最初の投与の後には、対象の副作用についてモニタリングしてもよい。例えば、投与の前に、対象に対して心拍、血圧、1秒当たりの最大呼気流量および酸素飽和度といったパラメーターの測定を行ってもよい。次に、増加させた増分用量または構造を変化させたタンパク質を投与し、対象におけるアレルギー兆候および/または測定したパラメーターの変化をモニタリングする。必要に応じて、公知薬でアレルギー兆候の処置を行ってもよい。
【0175】
増分用量または特定形態のアレルゲン性タンパク質の投与に続いて、少なくとも1回、2回、3回またはそれ以上の顕著なアレルギー兆候が生じた場合、対象は増分用量または特定形態のアレルゲン性タンパク質を寛容しないと考えられる。顕著なアレルギー兆候としては、20分以上継続する腹痛、喘鳴、のどの締め付け、むかつき/嘔吐、膨疹またはそう痒が挙げられる。
【0176】
最大用量または最終形態のアレルゲン性タンパク質は、毎日、1日おき、週3回、または他の規則的な間隔ごとに、少なくとも1年、少なくとも1.5年、または少なくとも2年間投与することができる。最終用量または最終形態のアレルゲン性タンパク質を、持続的な非応答性が確立されるまで、定期的に数年にわたり投与し続けることもできる。
【0177】
対象が、上記期間にわたり毎日最大用量または最終形態のアレルゲン性タンパク質を摂取し、そして1日用量に対して良好な寛容(例えば、過去3カ月間にアレルギー反応なし)を示した場合、最大用量のアレルゲン性タンパク質または最終形態のアレルゲン性タンパク質の投与を、週次計画に切り替えてもよい。例えば、最終用量または最終形態のアレルゲン性タンパク質をその後少なくとも2年間、少なくとも2.5年間、または少なくとも3年間等にわたり、毎週投与してもよい。
【0178】
治療前の対象における抗アレルゲン性タンパク質IgEのレベルは、起こりうる脱感作の予測となり得る。抗アレルゲン性タンパク質IgEのレベルは、治療の用量増加期/状態変化期および/または維持期に測定することができる。
【0179】
抗アレルゲン性タンパク質IgEを、臨床アレルゲン性タンパク質の反応性に対する代用マーカーとして使用すると、治療効率の指標となりうる。典型的には、抗アレルゲン性タンパク質IgEのレベルは、本願に記載の治療の初期には増加し、その後、徐々に低レベルに下がる。治療後には、抗アレルゲン性タンパク質IgEのレベルは減少または消失する。
【0180】
上記に変えて、または上記に加えて、組成物(即ち、未成熟種子を含む組成物)の局所投与に対する応答を、臨床アレルゲン性タンパク質の反応性に対する代用マーカーとして使用することもできる。
【0181】
組成物による治療の継続は、必ずしも食物特異的IgEの測定または存在に依存するものではないが、持続的な非応答性の確立、即ち、1カ月、2カ月、またはそれ以上にわたる非暴露期間後のアレルゲン性食品に対する寛容状態の継続の確立に依存する。
【0182】
例えば、抗アレルゲン性タンパク質IgEのレベルはゼロ、実質的にゼロ、または非常に低レベルまで減少し得る。
【0183】
2.防止/予防
本発明の別の態様によると、種子に対するアレルギーの発生を防止する条件下で(例えば、第1の暴露として)、本願に記載の(変性または未変性の)組成物を子供に提供することで、アレルギーの発生を防止する方法が提供される。
【0184】
典型的には、本発明のこの態様における対象は、18歳未満のヒト対象である。特定の実施形態において、対象は3歳未満である。別の実施形態においては、対象は6カ月~3歳である。本願に記載の組成物は、典型的には、乳幼児に適した形式-例えば、調製乳、乳児食、ドロップなどに含まれる状態で、経口で与える。対象は、一定時間にわたり、アレルゲン性を防止する用量、組成物を与えられる。想定される時間枠としては、少なくとも3カ月、4カ月、6カ月、9カ月、1年、1.5年、2年、3年、またはそれ以上である。組成物中の抗原性タンパク質の想定される週当たりの用量は、週当たり0.05~2mg、例えば、週当たり0.1mg、0.5mg、1mgまたは2mgである。
【0185】
抗原タンパク質または(上述した)立体構造の抗原性タンパク質の量は、防止手順の全工程にわたり増加/変化させることもできる。
【0186】
アレルギーテスト
本発明の別の態様によると、下記工程を含む、対象が種子アレルギーであるか否かを決定するための方法、即ち、アレルギー診断法が提供される。
(a)対象の皮膚に(変性または未変性の)組成物を接触させる(例えば、皮膚の同じ領域内に小さな擦り傷を作る)工程と、
(b)前記対象の皮膚を分析し、前記対象における非アレルギー反応(膨疹および発赤反応の不在)を、前記対象が種子アレルギーではないことの指標とする工程。
【0187】
本願において、「非アレルギー反応」という用語は、膨疹径が事前に設定した値よりも小さいことを意味し、例えば、直径3mm、4mmまたは5mmを非アレルゲン性とする。
【0188】
アレルギーテストに使用する組成物の量は、典型的には、1または2滴の、またはタンパク質抽出物の1:10wt/volの調整物である。
【0189】
組成物はアレルギーの対象を特定するのにも、非アレルギーの対象を除くのにも使用することができることを理解されたい。よって、例えば、膨疹径が前もって決定した値(例えば、直径3mm、4mmまたは5mm)よりも大きい対象をアレルギー性の対象に含めることができる。本願において「約」という用語は、±10%を意味する。
【0190】
本発明は、さらに他の伝統的な方法、例えば、 Kallestad Allercoat EASTシステム(米国、Sanofi-Pasteur Diagnostics社)の使用による診断と組み合わせることが考えられる。代わりに、EAST社、Pharmacia社またはUniCap社のシステム、あるいはアレルゲン皮膚プリックテストを使用して、試験を進行させることもできる。
【0191】
用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」およびそれらの活用形は、「限定されるものではないが、含む(including but not limited to)」を意味する。
【0192】
「からなる」という用語は、「含み、限定される」ことを意味する。
【0193】
「から実質的になる」という用語は、組成物、方法または構造が追加の成分、工程および/または部分を含み得ることを意味する。但しこれは、追加の成分、工程および/または部分が、請求項に記載の組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特性を実質的に変更しない場合に限られる。
【0194】
本明細書において、単数形を表す「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数をも対象とする。例えば、「化合物(a compound)」または「少なくとも1種の化合物」には、複数の化合物が含まれ、それらの混合物をも含み得る。
【0195】
本願全体を通して、本発明のさまざまな実施形態は、範囲形式にて示され得る。範囲形式での記載は、単に利便性および簡潔さのためであり、本発明の範囲の柔軟性を欠く制限ではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、可能な下位の範囲の全部、およびその範囲内の個々の数値を具体的に開示していると考えるべきである。例えば、1~6といった範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等の部分範囲のみならず、その範囲内の個々の数値、例えば1、2、3、4、5および6も具体的に開示するものとする。これは、範囲の大きさに関わらず適用される。
【0196】
本明細書において数値範囲を示す場合、それは常に示す範囲内の任意の引用数(分数または整数)を含むことを意図する。第1の指示数と第2の指示数「との間の範囲」という表現と、第1の指示数「から」第2の指示数「までの範囲」という表現は、本明細書で代替可能に使用され、第1の指示数および第2の指示数と、それらの間の分数および整数の全部を含むことを意図する。
【0197】
本明細書で使用する「方法」という用語は、所定の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を意味し、化学、薬理学、生物学、生化学および医療の各分野の従事者に既知のもの、または既知の様式、手段、技術および手順から従事者が容易に開発できるものが含まれるが、これらに限定されない。
【0198】
本明細書で使用する「治療する」という用語は、病態の進行の抑止、実質的な阻害、遅延または逆転、病態の臨床的または審美的な症状の実質的な寛解、あるいは病態の臨床的または審美的な症状の悪化の実質的な予防を含む。
【0199】
明確さのために別個の実施形態に関連して記載した本発明の所定の特徴はまた、1つの実施形態において、これら特徴を組み合わせて提供され得ることを理解されたい。逆に、簡潔さのために1つの実施形態に関連して記載した本発明の複数の特徴はまた、別々に、または任意の好適な部分的な組み合わせ、または適当な他の記載された実施形態に対しても提供され得る。さまざまな実施形態に関連して記載される所定の特徴は、その要素なしでは特定の実施形態が動作不能でない限り、その実施形態の必須要件であると捉えてはならない。
【0200】
上述したように、本明細書に記載され、特許請求の範囲に請求される本発明のさまざまな実施形態および態様は、以下の実施例によって実験的に支持されるものである。
【実施例】
【0201】
ここで、上記の記載と共に本発明を限定することなく説明する以下の実施例に参照する。
【0202】
一般に、本明細書で使用する命名法及び本発明で利用する実験手順は、分子的技術、生化学的技術、微生物学的技術及び組換えDNA技術を含む。こうした技術は、文献に十分に説明されている。例えば、「Molecular Cloning: A laboratory Manual」Sambrook et al., (1989);「Current Protocols in Molecular Biology」Volumes I-III Ausubel, R. M., ed. (1994);Ausubel et al., 「Current Protocols in Molecular Biology」, John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1989);Perbal, 「A Practical Guide to Molecular Cloning」, John Wiley & Sons, New York (1988);Watson et al., 「Recombinant DNA」, Scientific American Books, New York;Birren et al. (eds) 「Genome Analysis: A Laboratory Manual Series」, Vols. 1-4, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1998);米国特許第4,666,828号、同4,683,202号、同4,801,531号、同5,192,659号及び同5,272,057号に記載の方法;「Cell Biology: A Laboratory Handbook」, Volumes I-III Cellis, J. E., ed. (1994);「Culture of Animal Cells - A Manual of Basic Technique」by Freshney, Wiley-Liss, N. Y. (1994), Third Edition;「Current Protocols in Immunology」Volumes I-III Coligan J. E., ed. (1994);Stites et al. (eds), 「Basic and Clinical Immunology」(8th Edition), Appleton & Lange, Norwalk, CT (1994);Mishell and Shiigi (eds), 「Selected Methods in Cellular Immunology」, W. H. Freeman and Co., New York (1980)を参照されたい。利用可能な免疫測定法は、特許及び科学文献に広範に記載されており、例えば、米国特許第3,791,932号、同3,839,153号、同3,850,752号、同3,850,578号、同3,853,987号、同3,867,517号、同3,879,262号、同3,901,654号、同3,935,074号、同3,984,533号、同3,996,345号、同4,034,074号、同4,098,876号、同4,879,219号、同5,011,771号及び同5,281,521号、「Oligonucleotide Synthesis」Gait, M. J., ed. (1984);「Nucleic Acid Hybridization」Hames, B. D., and Higgins S. J., eds. (1985);「Transcription and Translation」Hames, B. D., and Higgins S. J., eds. (1984);「Animal Cell Culture」Freshney, R. I., ed. (1986);「Immobilized Cells and Enzymes」IRL Press, (1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」Perbal, B., (1984) and 「Methods in Enzymology」Vol. 1-317, Academic Press;「PCR Protocols: A Guide To Methods And Applications」, Academic Press, San Diego, CA (1990);Marshak et al., 「Strategies for Protein Purification and Characterization - A Laboratory Course Manual」CSHL Press (1996)を参照されたい。これらすべてを本明細書に完全に記載されたが如く参照により本明細書に援用する。他の一般的な参考文献がこの文書全体を通して提供される。その中の手順は、当該技術分野でよく知られていると考えられ、読者の便宜のために提供される。その中に含まれるすべての情報を参照により本明細書に援用する。
【実施例1】
【0203】
未成熟種子の収穫最適時期の決定
材料と方法
植物材料および栽培条件: 栽培品種“Hanoch”を低アレルゲン性落花生として使用した(本明細書において、「プロナッツ」製造と称する)。Hanochはバージニア系の落花生の栽培品種であり、開花特性が不特定な、後期成熟型の広く知られる品種である。「巨大」な種子サイズ(>1.25g/種子)によって特徴付けられる。その種子は比較的ゆっくりと生長し、種子の生長段階をよりよく見分けることを可能にする(下記参照)。イスラエル国、西ネゲブ地方の約0.3ヘクタールの商業農地で植物を栽培した。植物は5植物/m2の間隔で、機械的に植え付けた。栽培条件は、[Gupta et al., Journal of Agricultural Science 2014 7(1)]に記載の、落花生栽培の標準的手法に基づくものとした。
【0204】
生長段階の同定: プロナッツ製造のための正確な種子の生長段階は、種子径と果皮平均厚みとの比の計算に基づき決定した(
図1)。これは、落花生が天然で鞘を埋める過程に基づくものであり、生長初期には受精胚珠は非常に小さく、全鞘体積の5%未満を占める。その後の種子の生長段階では、全鞘体積の90%以上を種子が占める完熟になるまで徐々に膨らんでゆく。この段階では、種子の外皮(「種皮」)がピンク色になる。よって、落花生の生長を5つのステージに分けた(
図1)。R3/R4:0~20%の種子充填、R5:30~50%の種子充填、R5.5:50~60%の種子充填、R6:70~80%の種子充填/白い種皮、R7:<80%の種子充填/ピンク色の種皮。
【0205】
プロナッツの調製
1.収穫、仕分け、保存および貯蔵:
植え付け後日数(DPP)71日で、Hanoch植物を根から抜いた。この時点で、ステージ(R5,R5.5)の種子画分がサンプル中に最も多いが、他の全ての生長段階も存在していた。鞘は手で収穫した。これらの鞘は痛みやすいため、さらなる種子の処理のために生のまま維持した。従って、直ちに4℃のコールドルームに移動した。その後、生の種子を手で果皮(生の殻)から分離し、各生長段階(R4~R7)に振り分け、直ちに-20℃で保存した。
【0206】
2.タンパク質含有量の決定、サンプルの調製および保存:
2g/週/対象を臨床試験に用いた。各生長段階について、そのタンパク質含有量をKjeldahl法(AOAC981.10)により、サンプル中の窒素量に基づき決定した。臨床長期処置には、28gの未成熟R5/R5.5(2gの総タンパク質に相当)を50mlのチューブに移した。このチューブを各対象の1週間の処置単位として使用した。チューブをGamma 2-20乾燥機(Christ社)で48時間のフリーズドライ工程に付した。乾燥後、種子を滅菌済みの乳棒と乳鉢ですりつぶし、同じ50mlのチューブに戻した。このフリーズドライ粉末を、熱処理まで4℃で保存した。方法のこの工程では、組成物をプロナッツと称する。
【0207】
プロナッツの熱処理: 2グラムの落花生タンパク質に相当する乾燥プロナッツ粉体を含有する50mlのチューブに、20mlの滅菌水を加え、最終的に1:10wt/volの濃度とした。チューブを密閉し、緩やかに震盪する95℃の温浴中に120分間放置した。チューブが冷めたら、患者に提供するまで、-3℃の冷凍庫で保存した。
【0208】
皮膚テスト: 皮膚プリックテストは、特異的IgE抗体の存在による皮膚マスト細胞反応の間接的な測定である。皮膚テストは、マスト細胞に結合したアレルゲン特異的IgEを検出する。アレルゲンは、マスト細胞に結合したアレルゲン特異的IgEと架橋し、これが既に形成されていた、ヒスタミンおよびトリプターゼを含むメディエーターの脱顆粒化を引き起こす。ヒスタミンの放出は、プリック部における蕁麻疹およびその周辺の膨疹および発赤と呼ばれる紅斑を引き起こす主要なメディエーターである。全ての皮膚テストには、1mg/mlのヒスタミン基材を含む陽性対照と、通常はグリセリンを含む生理食塩水である陰性対照とを同時に投与する評価が必要である。陽性テストは、陰性対照よりも3mm以上大きな膨疹と考える。本研究においては、アレルゲン性抽出物の液滴を突き刺す皮膚テスト装置を含むプリック/穿刺技術を使用した。15~20分後に膨疹および発赤を測定し、最も大きな径をミリメートルで測定し、CRFに記録した。
【0209】
皮膚テストには、米国、ALK Abello社の製造した落花生アレルゲン抽出物の、上述した熱処理前後のもの、および粉体から1:10wt/volに再構成した種々の成熟ステージの未成熟落花生の、上述した熱処理前後のものを使用した。
【0210】
血清中の、落花生特異的および成分特異的なIgEおよびIgGの測定(Phadia社): 血清中の落花生特異的抗体および成分特異的抗体の測定は、すべての子供の初期評価のみならず、プロナッツ処置の途中および終了後に、固相免疫アッセイ(Immunocap 100、Thermo Fisher Scientific Inc.製)で実施し、さらに同じシステム成分により、落花生特異的アレルゲン性タンパク質Ara h1、Ara h2、Ara h3、Ara h6およびAra h8に対する特異的IgEおよびIgGも測定した。
【0211】
プロナッツ構造的段階暴露プロトコル(ProSGEP): ProSGEPは4相からなるプロトコルである(
図2)。各相は、アレルギー専門医の監督下でのテスト食物による観察下食物チャレンジ(OFC)から始まり、アレルギー反応が発生しない場合に、患者は、チャレンジによって安全と立証された用量および形態のプロナッツを毎日消費する、10~12週の家庭内治療相を開始した。研究のすべての相において、プロトコルが終了するまで、患者は他の落花生製品を継続して避けるよう指導された。すべての経口食物チャレンジ(OFC)は、アレルギー診断が確立された後に、アレルギークリニックのみおいて、その監督下で実施した。成功したOFCの後に、家庭で子供が同じ製品を摂取するように、分量および加熱温度を詳細に示した厳密なレシピに従って患者の保護者によって調製されたプロナッツ製品によるOFCを実施した。子供達があるOFCのある段階を失敗した場合は、アレルギー反応なしで消費することのできた最後のプロナッツ製品に戻ることができる。最初のOFCが失敗した場合は、ラボでのテストおよびアレルギー履歴を考慮した後に、初期プロナッツ用量の半量を含むレシピを用いて子供達は再度挑戦することができる。
【0212】
第1のOFC プロナッツ・クッキーのレシピ
材料:
セルフライジングフラワー 1と1/4カップ
卵 2個
牛乳 1カップ(200ml)
砂糖(白糖/ブラウンシュガー)1カップ
植物油 1/2
2gの加熱済みプロナッツ(登録商標)を含むチューブ 1本分
【0213】
作り方:
1.オーブンを180℃に予熱する。
2.全ての材料を1つのボウルで混ぜる。
3.フライパンに流し入れる。
4.両面をきつね色になるまで焼く。
5.オーブンで20分焼く。
6.使用するまでは冷蔵または冷凍で保存する。
【0214】
第2のOFC プロナッツ・パンケーキのレシピ
材料:
セルフライジングフラワー 1と1/4カップ
卵 2個
牛乳 1カップ(200ml)
砂糖(白糖/ブラウンシュガー)1カップ
植物油 1/2
2gの加熱済みプロナッツ(登録商標)を含むチューブ 1本分
【0215】
作り方:
1.全ての材料を1つのボウルで混ぜる。
2.標準的なパンケーキパンに流す。
3.両面をきつね色になるまで焼く。
4.使用するまでは冷蔵または冷凍で保存する。
【0216】
第3の製品OFC プロナッツ・スプレッドのレシピ(加熱済)
材料:
2gの加熱済みプロナッツ(登録商標)を含むチューブ 1本分
乳製品を含まないチョコレートスプレッドまたはミンス・デーツスプレッド 50g
【0217】
作り方:
1.材料を均一になるまで混ぜる。
2.冷蔵で保存する。
さらなる調理不要。加熱済プロナッツは、アレルギーチームにより提供された。この段階までの全てのプロナッツは、タンパク質2gに相当する量を、封止された50mlバイアル中の20CCの滅菌水と混合し、95℃で2時間加熱し、冷却して-3℃で保存したものである。
【0218】
第4のOFC プロナッツ・スプレッドのレシピ(非加熱)
材料:
2gの非加熱プロナッツ(登録商標)を含むチューブ 1本分
乳製品を含まないチョコレートスプレッドまたはミンス・デーツスプレッド 50g
【0219】
作り方:
1.材料を均一になるまで混ぜる。
2.使用するまで冷蔵で保存する。
【0220】
チャレンジ方法: 全てのOFCを、救急施設および薬品を備えた、適切な設備を有するクリニックまたは病院において、経験豊富なアレルギーチームによって実施した。アレルギーの専門医はSGEPの最中および完了後の患者の追跡調査の責任を個人的に担い、且つ全ての段階で両親と連絡を取り、必要に応じて反応または問題の発生時、あるいは質問に対してアドバイスした。落花生の段階的チャレンジの各段階のタイムテーブルを、下記表1~3に示した。
【0221】
【0222】
【0223】
【0224】
参加基準:
1.患者は1歳を超え、落花生に対して即アレルギーの既往歴を有する。
2.1gまたはそれ以下の落花生タンパク質の摂取後の、即アレルギー反応を伴う陽性経口食物チャレンジ(陰性の2グラムチャレンジは、アレルギーがないことの証拠となる)。
3.最初の研究のための来院時に、書面による同意が得られている。
4.プロナッツによる皮膚テストにおいて、標準落花生皮膚テストと比べて、膨疹径が少なくとも30%減少。
5.患者とその家族が、研究プロトコルに従うこと、および研究期間にわたり、必要な時間クリニックに在院することを望み且つ約束していなければならない。
【0225】
排除基準
下記基準の1またはそれ以上に該当する場合、本研究への参加を認めない。
1.落花生含有食物に対する以前のアレルギー反応がグレード4のアナフィラキシーに該当する、即ち、患者が長期入院、挿管、昇圧性アミン類などの静脈内注入等を必要とした。
2.患者がアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎またはぜんそくを含むアトピー関連慢性疾患以外の、区別の難しい他の基礎慢性疾患(好中球性胃腸炎、炎症性腸疾患、(心臓、肺、神経系等の)重度の慢性基礎疾患)を有する。担当医がぜんそくを管理することができない場合には、管理のための投薬が開始され、研究に参加する前にぜんそくの制御を行う。
3.スクリーニングのための来院時に、アレルギー反応の証拠を示すことなく、200mg以上の落花生タンパク質を摂取した患者。
4.研究対象製品の投与、研究手順および来院の遵守が難しいと考えられる患者。
【0226】
結果
未成熟種子の収穫のための最適時期の決定: 未成熟種子の収穫に最も効率的な時期を決定した(表4)。栽培品種Hanochの植物を畑で栽培した。植え付け後日数(DPP)が57日のときから植物を収穫し、3~4日おきに調査した。各日に5つの植物をサンプリングした。鞘と種子とを植物から分離し、生長段階に応じて仕分けした。もっとも回収に適しているのは約70DPPであると判明した。このステージでは、未成熟種子(R5、R5.5)のパーセンテージが最も高かった(表4に太字で示した)。
【0227】
【実施例2】
【0228】
プロナッツ種子の製造の効率を上げるためのX線技術の使用
プロナッツの製造における限定因子の1つは、比較的低い胚性種子の製造効率である。落花生においては、畑から収穫した材料の2%のみが適切なステージ(R5)にある。さらに胚性種子は成熟種子よりもはるかに弱く、直ちに冷蔵保存する必要がある。各鞘を手で開けることの必要性は、種子の製造および仕分けを非常に手間と費用のかかる手順とする。よって、プロナッツの利益性を高めるためには、新しい製造方法が必要である。ここでは、鞘を剥くことなくR5/R5.5ステージの落花生種子を迅速かつ容易に決定するためのX線技術の使用の蓋然性を示す初期研究を提供する。
【0229】
実験のために、71PPDに収穫した栽培品種Hanochの新鮮な鞘100個をX線暴露に付した(
図3A)。その後、各X線写真を種子/鞘面積計算のために解析した。鞘を手で剥き、実際の種子の生長段階を決定した。非常に有意な相関が、計算した種子/鞘比と実際の種子生長段階とに見られ(p<0.001)、プロナッツ製造のツールとしてのX線技術の蓋然性を示した(
図3B)。
【実施例3】
【0230】
落花生アレルギーの診断における、プロナッツ皮膚テストの的中率
市販の落花生抽出物および非加熱プロナッツの1:10溶液を用いた皮膚テストの結果を、落花生による経口食物チャレンジの結果と比較した。
【0231】
膨疹径が5mmを超えるプロナッツ皮膚テストの陽性的中率は85%であり、これは、市販の落花生抽出物の陽性的中率に対して有意な改善であった。
【実施例4】
【0232】
落花生アレルギー児童の処置におけるプロナッツを用いたSGEPの安全性と効能
落花生/Bamba(登録商標)(Osem Investments Ltd)による経口チャレンジで観察される即アレルギー反応の誘導によって立証された15人の落花生アレルギー児童を、ProSGEPによる落花生脱感作の前向きなオープンラベルの第I/II相臨床試験に付した。参加した子供全員が1歳を超えており、中央年齢は3.8歳であった。子供たちは、Bamba(登録商標)(Osem社)の形態の落花生タンパク質として600mg以下の摂取量の落花生チャレンジに対して反応した。この群の子供たちにアレルギー反応を誘導した落花生タンパク質用量の中央値は115mg(1と1/2のBamba(登録商標))であった。参加した全15人の子供が、チャレンジのときまたは家庭でのアレルギー反応なしに、第I相のProSGEP(プロナッツ・クッキー)を通過した。参加した15人のうちの12人の子供が、チャレンジのときまたは家庭でのアレルギー反応なしに、第II相のProSGEP(プロナッツ・パンケーキクッキー)を通過した。参加した15人のうちの3人の子供が、チャレンジによるまたは家庭でのアレルギー反応なしに、第III相のProSGEP(加熱済みプロナッツ・スプレッド)を通過した。
【0233】
第III相のSGEPを通過した3人の子供に対して実施した皮膚テストは、落花生皮膚テストの膨疹径の有意な減少を示した。
【実施例5】
【0234】
未成熟落花生の診断ツールとしての用途の予備報告
(成熟落花生抽出物を用いた)標準皮膚テストに対して陽性反応を示した、適切な既往歴の子供24人に対して皮膚テストを実施した。皮膚テストは、ステージ(R5)の落花生抽出物による試験を含んでいた。試験結果は、膨疹径に基づき分けられ、5mm未満を非アレルギー性、5mm超をアレルギー性とした。24人の子供の内、8人の子供からなる群はPharmacia/ThermoFisher社製の診断用immunocap 100システムを用いた場合、AraH2に対する抗体レベルが非常に低くかった(
図4)。言い換えれば、これら8人の子供は、標準的な方法ではアレルギー性と間違って同定され、一方、未成熟落花生組成物を用いると、非アレルギー性であると示された。これら子供の内の3人は既に問題なく落花生チャレンジを通過した。
【0235】
臨床試験は1年以上継続され、総勢73人の就学前の対象が臨床試験に参加した。平均年齢は37カ月であった。すべての対象が、落花生含有食品に対する1つ以上の顕著なアレルギー反応の既往歴を有するのみならず、皮膚および血液試験において、落花生アレルギーと適合する陽性結果を示し、常に自動エピネフリン注射を携帯していた。患者は、Bamba(TM)スナック菓子から最大2000mgの落花生タンパク質を摂取するまで、またはアレルギー反応の客観的症状が形成されるまで、段階的落花生食物テストによるチャレンジを受けた。症状が形成される前の最後の積算許容用量を記録した。患者を、食物チャレンジの結果に基づき、アレルギー性群/寛容群とに分けた(1=真のアレルギーと立証、0=寛容)。各患者は、「通常」の市販の落花生テスト(alk abello 1:10w/v落花生抽出物)対R5種子落花生テストを含む皮膚プリックテスト(SPT)にも付された。R5テストバイアルは、1:10タンパク質w/vとなるように5ccのH2O(HPLCグレード)を0.5gの凍結乾燥R5種子粉末に加えることで作製した。R5サンプル中の総タンパク質レベルは、Kjeldahl法(AOAC 981.10)(イスラエル国、レホヴォト、AminoLab社)で決定した。落花生に対するSPT膨疹径は15分後に記録した。SPTに対する落花生感度の閾値地は、国際推奨基準に従い、膨疹径3mmとし、さらに試験の至適ROCに従ってを膨疹径を5mmとした試験も行った。SPTの結果を食物チャレンジテストならびに特異的落花生IgEおよび抗Ara h2特異的IgEの結果と比較した。
【0236】
結果
落花生アレルギーであると予想される対象に対して皮膚プリックテスト(SPT)を使用し、R5種子の診断価値を市販の落花生診断キット(成熟種子)のそれと比較した。SPTの結果は、「標準」落花生アレルギー感度に基づき記録し、食物チャレンジテストにより決定した(
図5A-B)。そこに示されるように、すべての子供たちが、実際のアレルギー状態とは関係なく、標準的落花生SPTテストでは感受性(膨疹径の閾値3mm)と診断されたが(
図5A)、その33%(24人の対象)は、落花生食物チャレンジによって実際には寛容である立証された。一方、R5処置はより信頼性が高いことが示され(
図5B)、(24人中)3人の患者のみが落花生アレルギーと診断され(膨疹径の閾値:5mm)、落花生食物チャレンジによってアレルギーと立証された。
【実施例6】
【0237】
皮膚プリックテストによる、落花生アレルギーの試験
平均年齢1.8歳の落花生アレルギーを有する42人の子供たちを試験した。予想通り、アレルギーを有する幼い子どからなる群においては、47%がアトピー性皮膚炎を有し、33%が喘息を有していた。大部分の子供における落花生に対するアレルギー反応は皮膚反応(80%)、呼吸器応答(24%)、消化器系反応(21%)であった。
【0238】
標準的落花生テストに対する平均的反応は8.9mmであった(3mmを超える反応を陽性反応とした)。加熱後の標準的落花生テストに対する皮膚反応は初期反応と変わらなかった。R7ステージの「Hanoch」種の落花生への暴露に対する反応は、標準応答(平均12.9mm)よりも大きく、熱処理の前後で変わらなかった。R5ステージの「Hanoch」種の落花生への暴露に対する反応は、熱処理前は7mmであり、熱処理後には平均5.8mmに低下した。
【0239】
平均として、成熟落花生を用いた標準的テストと比べて、熱処理後の未成熟落花生による皮膚テストは33%の減少を示し、熱処理なしの未成熟落花生による皮膚テストは15%の減少を示した。この実験は、熱処理後の未成熟落花生が、皮膚反応の直径の少なくとも30%の有意な減少をもたらす、弱いアレルゲンとなりうる子供の集団の同定が可能であることを示す。
【0240】
よって、これまでに試験した42人の子供から得られた本結果では、その62%が、プロナッツ組成物に対して減少したアレルギー反応を示した。
【実施例7】
【0241】
R5の収穫率に対する品種および植物ホルモンの影響を調べるための野外研究
野外試験には2つの品種を使用した。1つは、イスラエルで最も一般的な落花生栽培品種である「Hanoch」である。2つ目は(ここではMonaと呼ぶ)房状になる生長習性を有する品種を使用した。この品種における花および鞘の付き方は、一時的にHanochよりも集中するが、どちらにおいても鞘の中の種子は同じ生長段階にあった。以前の観察では、植え付け後70日目に収穫すると、Monaの方がHanochよりも有意に多くのR5種子を産生した。
【0242】
各品種について、10か所のそれぞれが長さ12メートルの反復(栽培地)に植え付けた。5つの栽培地は、濃度350cc/Dunhamのホルモンであるエスレル(Ethephon 39 SL(39%w/w))で処理した。他の5つの栽培地は未処理の対照として使用した。さらに各栽培地を2つの等しい(6メートルの)副栽培地に分けて、1つ目からは植え付け後71日で収穫し、2つ目からは植え付け後77日で収穫した。各栽培地について、収穫時の総鞘収穫量(g)を得た。その後、鞘を手で剥き、R5種子を50mlのチューブに回収した。R5収穫量を、「1栽培地から得られる殻なしR5種子の入った50mlチューブの平均数」として測定した。R5の回収効率は、R5収穫量と、総鞘収穫量との比として計算した。
【0243】
結果
各株/ホルモン処理/収穫時期の平均鞘収穫量、R5チューブの数、およびR5製造効率を
図8A~Cに示した。どちらの収穫日(71および77DPA)にも、MonaおよびHanochの間で、総鞘重量の違いは見られなかった。しかしMonaは、収穫時期またはホルモン処理に関わらず、Hanochよりも有意に高いR5収穫量および有意に高い収穫効率を示した。Monaの最良の処理(77DPA、エスレル 350cc/D)では、Hanochの最良の処理(77DPA、エスレル 50cc/D)よりもR5収穫量は55%多かった(それぞれ70対560チューブ/D)。エスレル処理は両方の品種に対して陽性の効果を示した。
【0244】
図9は、上部および下部の種子における種子生長は、HanochよりもMonaにおいてより均一であることを示す。
【実施例8】
【0245】
R5種子を用いた経口脱感作プロトコル
客観的なアレルギー兆候を発生する前は、積算用量として350mg未満の落花生タンパク質しか寛容することのできなかった落花生アレルギー児童12人の内の12人が、今では、アレルギー兆候なしに1~4グラムの落花生タンパク質を食し、毎日/週3回のペースで1~2グラムを消費しながら、落花生の脱感作を維持している。この脱感作の過程において、いずれのR5処置患者においても、家庭または観察下の経口食物チャレンジ中の副作用の報告はなかった。
【実施例9】
【0246】
他の植物誘導アレルゲン(胡桃-uglandacea)の診断および考えられる処置における未成熟種子の使用
胡桃アレルギーがわかっている患者10人について、非加熱成熟堅果による「ピン-プリック」を用いた皮膚テスト(SPT)で測定した膨疹径は、3~20mm(中央値8mm)であった。同じ患者群において、加熱成熟胡桃を用いた試験のSPT結果は、膨疹径の減少を示さず、3~22mm(中央値10mm)だった。青い加熱済み胡桃による皮膚テストは、膨疹径の有意な減少を示し、0~5mm(中央値2mm)だった。
【0247】
本発明をその特定の実施形態との関連で説明したが、多数の代替、改変および変種が当業者には明らかであろう。したがって、そのような代替、改変および変種の全ては、添付の特許請求の範囲の趣旨および広い範囲内に含まれることを意図するものである。
【0248】
本明細書で言及した全ての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許および特許出願のそれぞれについて具体的且つ個別の参照により本明細書に組み込む場合と同程度に、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。加えて、本願におけるいかなる参考文献の引用または特定は、このような参考文献が本発明の先行技術として使用できることの容認として解釈されるべきではない。また、各節の表題が使用される範囲において、必ずしも限定として解釈されるべきではない。