(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】低pH医薬抗体製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20231221BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231221BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20231221BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20231221BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20231221BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K9/08
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/68 ZNA
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2020542273
(86)(22)【出願日】2019-02-08
(86)【国際出願番号】 US2019017294
(87)【国際公開番号】W WO2019157340
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2022-02-07
(32)【優先日】2018-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500203709
【氏名又は名称】アムジェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン, トゥインクル アール.
(72)【発明者】
【氏名】シャン, ダシャン
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/129585(WO,A1)
【文献】特表2009-534390(JP,A)
【文献】特表2010-513522(JP,A)
【文献】国際公開第2017/091656(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/029908(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/021356(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)CD3に結合するヘテロ二量体抗体、
(b)10~50mMの量の
グルタミン酸塩、
(c)0.004~0.01%(w/V)の量の界面活性剤
であって、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、又はこれらの組合せである界面活性剤、及び
(d)9~12%(w/V)の量の
スクロースを含む
液体医薬組成物であって、前記医薬組成物のpHが、
4.0~5.0の範囲であり、
前記ヘテロ二量体抗体が、Fab、Fc及びscFvを含む、
液体医薬組成物。
【請求項2】
前記
グルタミン酸塩が、10~
30mMの濃度範囲で存在する、請求項1に記載の
液体医薬組成物。
【請求項3】
前記
スクロースが、
9~11%(w/V)の範囲の濃度で存在する、請求項1または2に記載の
液体医薬組成物。
【請求項4】
前記
スクロースが、
9~10.5%(w/V)の範囲の濃度で存在する、請求項1または2に記載の
液体医薬組成物。
【請求項5】
前記
スクロースが、9~
10%(w/V)の範囲の濃度で存在する、請求項4に記載の
液体医薬組成物。
【請求項6】
前記界面活性剤が、0.00
5~0.
01%(w/V)の範囲の濃度で存在する、請求項1または2に記載の
液体医薬組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤が、0.00
7~0.01%(w/V)の範囲の濃度で存在する、請求項1または2に記載の
液体医薬組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種の界面活性剤が
、0.01%(w/V
)の濃度で存在する、請求項6に記載の
液体医薬組成物。
【請求項9】
前記
液体医薬組成物のpHが、
4.2~4.6の範囲である、請求項1または2に記載の
液体医薬組成物。
【請求項10】
前記
液体医薬組成物のpHが、4.2である、請求項9に記載の
液体医薬組成物。
【請求項11】
150~500mOsmの範囲のモル浸透圧濃度を有する、請求項1または2に記載の
液体医薬組成物。
【請求項12】
ポリオール及びアミノ酸からなる群から選択される賦形剤をさらに含む、請求項1または2に記載の
液体医薬組成物。
【請求項13】
前記賦形剤が、0.1~15%(w/V)の濃度範囲で存在する、請求項12に記載の
液体医薬組成物。
【請求項14】
CD3に結合するヘテロ二量体抗体であって、Fab、Fc及びscFvを含むヘテロ二量体抗体、10mMグルタミン酸塩、9%(w/V)スクロース及び0.01%(w/V)ポリソルベート80を含
む、液体医薬組成物であって、
前記液体医薬組成物のpHが、4.2である、
液体医薬組成物。
【請求項15】
前記ヘテロ二量体抗体が、0.1~8mg/mlの濃度範囲で存在する、請求項1または2に記載の
液体医薬組成物。
【請求項16】
前記ヘテロ二量体抗体が、0.1~20mg/mLの濃度範囲で存在する、請求項1または2に記載の
液体医薬組成物。
【請求項17】
前記ヘテロ二量体抗体が、50μg~200mgの範囲の量で存在する、請求項1または2に記載の
液体医薬組成物。
【請求項18】
前記ヘテロ二量体抗体が、1mg/mLで存在する、請求項1または2に記載の
液体医薬組成物。
【請求項19】
前記ヘテロ二量体抗体が、5mg/mLで存在する、請求項1または2に記載の
液体医薬組成物。
【請求項20】
前記ヘテロ二量体抗体が、20mg/mLで存在する、請求項1または2に記載の
液体医薬組成物。
【請求項21】
前記ヘテロ二量体抗体が、10mg/mLで存在する、請求項1または2に記載の
液体医薬組成物。
【請求項22】
対象において癌を治療するための、請求項1または2に記載の
液体医薬組成物。
【請求項23】
前記癌が、多発性骨髄腫である、請求項
22に記載の
液体医薬組成物。
【請求項24】
前記癌が、前立腺癌である、請求項
22に記載の
液体医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年2月8日に出願された米国仮特許出願第62/628,267号明細書及び2019年1月31日に出願された米国仮特許出願第62/799,577号明細書の優先権の利益を主張し、これら開示は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
参照による援用
本出願は、参照により2015年11月25日に出願された国際公開第2016/086196号パンフレット;2015年11月25日に出願された米国特許出願公開第20160215063号明細書;2016年11月23日に出願された国際公開第2017/091656号パンフレット;及び2015年3月30日に出願された米国特許第9,822,186号明細書を援用し、これらは、それらの全体、特にその中の図面、説明文及び請求項に関して参照により本明細書に明示的に援用される。
【0003】
本明細書と同時に提出されたコンピューター可読のヌクレオチド/アミノ酸配列表は、その全体が参照によって援用され、当該表は、以下のとおりに特定される:2019年2月5日に作成された756,646バイトの「52588P_Seqlisting.txt」と命名されたASCII(テキスト)ファイル。
【背景技術】
【0004】
タンパク質系医薬品は、(前)臨床開発において及び市販製品として最も成長著しい治療薬に含まれる。低分子化学薬剤と比較して、タンパク質医薬品は、比較的低い濃度で高い特異性及び活性を有し、通常、種々の癌、自己免疫疾患及び代謝障害などの大きい影響のある疾患の療法を提供する(Roberts,Trends Biotechnol.2014 Jul;32(7):372-80,Wang,Int J Pharm.1999 Aug 20;185(2):129-88)。
【0005】
商業規模での精製プロセスの進歩により、現在、組換え体タンパク質などのタンパク質系医薬品は、最初の製造時に高い純度で得ることができる。しかしながら、タンパク質は、わずかに安定であるにすぎず、化学的にも物理的にも非常に劣化しやすい。化学的劣化は、脱アミド、酸化、新たなジスルフィド架橋の切断若しくは形成、加水分解、異性化又は脱グリコシルなどの共有結合を伴う修飾を指す。物理的劣化には、タンパク質のアンフォールディング、表面への望ましくない吸着及び凝集が含まれる。これらの物理的及び化学的な不安定性への対処は、タンパク質医薬品の開発において最も難しい課題の1つである(Chi et al.,Pharm Res,Vol.20,No.9,Sept 2003,pp.1325-1336、Roberts,Trends Biotechnol.2014 Jul;32(7):372-80)。
【0006】
タンパク質凝集は、タンパク質の物理的不安定性の主要な現象に相当するものであり、溶媒と疎水性タンパク質残基との間の熱力学的に不利な相互作用を最小化する固有の傾向に起因して生じる。タンパク質凝集は、リフォールディング、精製、滅菌、輸送及び保管のプロセス中に日常的に起こるため、特に問題がある。凝集は、タンパク質の天然状態が熱力学的に極めて有利な(例えば、中性pH及び37℃)溶液条件下であっても、ストレスの不在下であっても生じる場合がある(Chi et al.,Pharm Res,Vol.20,No.9,Sept 2003,pp.1325-1336、Roberts,Trends Biotechnol.2014 Jul;32(7):372-80,Wang,Int J Pharm.1999 Aug 20;185(2):129-88,Mahler J Pharm Sci.2009 Sep;98(9):2909-34.)。
【0007】
また、Fc分子などの半減期延長様式を含む二重特異性T細胞エンゲージャーなどの半減期延長抗体コンストラクトは、タンパク質凝集及び/又は他の劣化現象から保護されるべきである。タンパク質凝集が問題となるのは、治療用タンパク質の生物活性を弱めることがあるためである。さらに、タンパク質の凝集は、薬物製品の望ましくない外観をもたらし、また最終産物から凝集体を除去するために必要とされる綿密な精製工程により産物収率を低下させる。より最近では、凝集したタンパク質の存在により(ヒト化タンパク質又は完全なヒトタンパク質であっても)、患者は、活性タンパク質単量体に対する免疫反応を起こすことになり、その結果、中和抗体及び薬物耐性の形成又は他の有害な副作用がもたらされるというリスクが顕著に増大する可能性があるといった懸念及びエビデンスも増加している(Mahler J Pharm Sci.2009 Sep;98(9):2909-34)。
【0008】
概して、文献において、様々な機構によってタンパク質凝集を最小化するいくつかの試みが報告されている。タンパク質を、それらの一次構造を改変して、それにより内部の疎水性を増大させ、且つ外部の疎水性を低減することによって安定化し、こうして凝集体形成及び他の化学的変化から保護することができる。しかしながら、タンパク質の遺伝子操作は、機能性の喪失及び/又は免疫原性の増大をもたらす場合がある。別の手法は、凝集体の解離(「脱凝集」と呼ばれる)に着目し、温度、圧力、pH及び塩などの様々な機構を使用することによって機能的な天然単量体を回復させる。現時点では、タンパク質凝集体は、主に下流処理のプロセシング工程において不純物として除去される。しかしながら、高分子量(HMW)のレベルが高い場合、顕著な量のHMW除去により、実質的な収率損失がもたらされるだけでなく、堅牢な下流プロセスの設計が困難なものとなる(Chi et al.,Pharm Res,Vol.20,No.9,Sept 2003,pp.1325-1336)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
生物学及びバイオテクノロジー用途におけるタンパク質の安定性及び活性の維持は、深刻な課題を提起する。治療用タンパク質の安定化を増強し、製剤、充填、輸送、保管及び投与中の凝集並びに変性又は劣化を低減することにより、機能喪失及び有害な免疫原性反応を防止する最適化された医薬組成物が当技術分野において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様では、本明細書では、本明細書に記載される抗原結合タンパク質、少なくとも1種の緩衝剤、少なくとも1種の界面活性剤及び少なくとも1種の糖類を含む医薬組成物が記載され、その医薬組成物のpHは、3.5~5の範囲である。
【0011】
いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質は、抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、CD3に結合する二重特異性抗体などの二重特異性抗体である。
【0012】
いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質は、CD3に結合するヘテロ二量体抗体である。いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体抗体は、a)第1のFcドメイン並びに(i)配列番号15に記載されるvlCDR1、配列番号16に記載されるvlCDR2、及び配列番号17に記載されるvlCDR3を含むscFv可変軽鎖ドメイン、並びに(ii)配列番号11に記載されるvhCDR1、配列番号12に記載されるvhCDR2、及び配列番号13に記載されるvhCDR3を含むscFv可変重鎖ドメインを含む抗CD3 scFvを含む第1の単量体であって、前記scFvが、ドメインリンカーを使用して前記FcドメインのN末端に共有結合される第1の単量体;b)i)配列番号65に記載されるvhCDR1、配列番号66に記載されるvhCDR2、及び配列番号67に記載されるvhCDR3を含む抗CD38重鎖可変ドメイン、並びにii)第2のFcドメインを含む重鎖定常ドメインを含む第2の単量体;並びにc)定常ドメイン並びに配列番号69に記載されるvlCDR1、配列番号70に記載されるvlCDR2、及び配列番号71に記載されるvlCDR3を含む抗CD38可変軽鎖ドメインを含む軽鎖を含み、医薬組成物のpHは、3.5~5の範囲である。
【0013】
いくつかの実施形態では、抗CD3 scFvは、配列番号18に記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%又は100%同一なアミノ酸配列を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、抗CD38可変軽鎖ドメインは、配列番号68に記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%又は100%同一なアミノ酸配列を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、抗CD38重鎖可変ドメインは、配列番号64に記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%又は100%同一なアミノ酸配列を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、第1の単量体は、配列番号335に記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%又は100%同一なアミノ酸配列を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、第2の単量体は、配列番号337に記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%又は100%同一なアミノ酸配列を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、軽鎖は、配列番号336に記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%又は100%同一なアミノ酸配列を含む。
【0019】
様々な態様において、抗原結合タンパク質は、a)1)第1の可変重鎖ドメイン;2)第1のCH1ドメイン及び第1のFcドメインを含む第1の定常重鎖;並びに3)ヒトCD3に結合し、且つ(i)配列番号387に記載されるvlCDR1、配列番号388に記載されるvlCDR2、及び配列番号389に記載されるvlCDR3を含むscFv可変軽鎖ドメイン、(ii)scFvリンカー、並びに(iii)配列番号383に記載されるvhCDR1、配列番号384に記載されるvhCDR2、及び配列番号385に記載されるvhCDR3を含むscFv可変重鎖ドメインを含むscFvであって;前記scFvが、ドメインリンカーを使用して前記CH1ドメインのC末端と前記第1のFcドメインのN末端の間で共有結合されるscFvを含む第1の重鎖を含む第1の単量体を含むヘテロ二量体抗体である。ヘテロ二量体抗体はさらに、b)第2の可変重鎖ドメイン及び第2のFcドメインを含む第2の定常重鎖を含む第2の重鎖を含む第2の単量体;並びにc)可変軽鎖ドメイン及び定常軽鎖ドメインを含む共通の軽鎖を含む。第1の可変重鎖ドメイン及び可変軽鎖ドメインは、ヒトSTEAP1に結合し、且つ第2の可変重鎖ドメイン及び可変軽鎖ドメインは、ヒトSTEAP1に結合する。第1の可変重鎖ドメイン及び第2の可変重鎖ドメインは、配列番号360に記載されるvhCDR1、配列番号361又は363に記載されるvhCDR2、及び配列番号362に記載されるvhCDR3を含む重鎖CDRを含み、且つ可変軽鎖ドメインは、配列番号357に記載されるvlCDR1、配列番号358に記載されるvlCDR2、及び配列番号359に記載されるvlCDR3を含む軽鎖CDRを含む。或いは、第1の可変重鎖ドメイン及び第2の可変重鎖ドメインは、配列番号368に記載されるvhCDR1、配列番号369に記載されるvhCDR2、及び配列番号370に記載されるvhCDR3を含む重鎖CDRを含み、且つ可変軽鎖ドメインは、配列番号371に記載されるvlCDR1、配列番号372に記載されるvlCDR2、及び配列番号373に記載されるvlCDR3を含む軽鎖CDRを含む。様々な実施形態において、第1の可変重鎖ドメイン及び第2の可変重鎖ドメインは、配列番号377又は379と少なくとも90%同一(例えば、少なくとも95%同一又は100%同一)なアミノ酸配列を含み、且つ/又は可変軽鎖ドメインは、配列番号378と少なくとも90%同一(例えば、少なくとも95%同一又は100%同一)なアミノ酸配列を含む。或いは、第1の可変重鎖ドメイン及び第2の可変重鎖ドメインは、配列番号380と少なくとも90%同一(例えば、少なくとも95%同一又は100%同一)なアミノ酸配列を含み、且つ/又は可変軽鎖ドメインは、配列番号381と少なくとも90%同一(例えば、少なくとも95%同一又は100%同一)なアミノ酸配列を含む。scFvは任意選択により、配列番号382及び配列番号383の可変重鎖領域及び可変軽鎖領域を含む。scFvリンカーは任意選択により、配列番号391を含む。様々な態様において、scFvは、配列番号390の配列を含む。様々な態様において、a)第1の単量体は、配列番号366又は配列番号367の配列を含み、第2の単量体は、配列番号365の配列を含み、且つ共通の軽鎖は、配列番号364の配列を含むか;又はb)第1の単量体は、配列番号376の配列を含み、第2の単量体は、配列番号375の配列を含み、且つ共通の軽鎖は、配列番号374の配列を含む。
【0020】
本開示の医薬組成物は、少なくとも1種の緩衝剤を含む。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、酢酸塩、グルタミン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ヒスチジン、リン酸塩、及び2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸塩又はこれらの組合せからなる群から選択される酸である。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の緩衝剤は、約5mM~約200mM(又は約10mM~約50mM)の範囲の濃度で組成物中に存在する。
【0021】
本開示の医薬組成物は、少なくとも1種の糖類を含む。いくつかの実施形態では、糖類は、単糖、二糖、環状多糖、糖アルコール、線状分岐デキストラン、及び線状非分岐デキストランからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、糖類は、糖アルコール(例えば、ソルビトール)である。いくつかの実施形態では、糖類は、スクロース、トレハロース、マンニトール、及びソルビトール又はこれらの組合せからなる群から選択される二糖である。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の糖類は、約1~約15%(w/V)(又は約9~約12%(w/V)又は約5%~約12%(w/V)又は約7%~約12%(w/V))の範囲の濃度で組成物中に存在する。
【0022】
本開示の医薬組成物は、少なくとも1種の界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ポロクサマー188、プルロニック(登録商標)F68、トリトンX-100、ポリオキシエチレン3、及びPEG3350、PEG4000、又はこれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の界面活性剤は、0.004~約0.5%(w/V)(又は約0.001~約0.01%(w/V)、又は約0.001%~約0.5%(w/V)又は約0.004%~約0.01%(w/V))の範囲の濃度で組成物中に存在する。
【0023】
いくつかの実施形態では、組成物のpHは、4.0~5.0の範囲である。いくつかの実施形態では、組成物のpHは、4.2である。
【0024】
いくつかの実施形態では、組成物は、約150~約500mOsmの範囲のモル浸透圧濃度を有する。
【0025】
本開示の医薬組成物は任意選択によりさらに、ポリオール及びアミノ酸からなる群から選択される賦形剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、賦形剤は、約0.1~約15%(w/V)の範囲の濃度で存在する。
【0026】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、10mMグルタミン酸塩、9%(w/V)スクロース及び0.01%(w/V)ポリソルベート80を含み、且つ液体医薬組成物のpHは、4.2である。いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体抗体は、約0.1mg/mL~約8mg/mLの範囲の濃度で組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体抗体は、約0.1mg/mL~約20mg/mLの範囲の濃度で組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体抗体は、1mg/mL、5mg/mL、10mg/mL又は20mg/mLの濃度で組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体抗体は、約50μg~約200mgの範囲の量で組成物中に存在する。
【0027】
本開示の医薬組成物は、凍結乾燥組成物又は液体組成物であり得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、凍結乾燥組成物又は再構成された凍結乾燥組成物である。
【0028】
別の態様では、本明細書では、本開示の組成物を必要とする対象に投与することを含む、対象において癌を治療する方法が記載される。いくつかの実施形態では、癌は、多発性骨髄腫である。いくつかの実施形態では、癌は、前立腺癌である。
【0029】
本明細書中の様々な実施形態は、様々な状況下で「含む」という語を使用して提示される一方、関連する実施形態はまた、「~からなる」又は「本質的に~からなる」という語を使用して記載され得ると理解されるべきである。本開示は、ある特徴を「含む」と記載された実施形態が、その特徴「からなる」実施形態を含むことを意図する。用語「a」又は「an」は、1つ以上を指し、例えば、「免疫グロブリン分子」は、1つ以上の免疫グロブリン分子を表すと理解されることに留意されたい。そのため、用語「a」(又は「an」)、「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」は、本明細書で互換的に使用され得る。
【0030】
値の範囲を記載するとき、記載されている特徴は、その範囲内に見出される個々の値であり得ることもまた理解されるべきである。例えば、「約pH4~約pH6のpH」は、限定されないが、pH4、4.2、4.6、5.1、5.5など、及びそのような値の間にある任意の値であり得る。さらに、「約pH4~約pH6のpH」は、目的の製剤のpHが、保管中にpH4~pH6の範囲において2pH単位で変動するという意味で解釈されるべきではなく、むしろ、溶液のpHについてその範囲内で値を選んでもよく、pHはそのpH付近で緩衝されたままであることを意味する。いくつかの実施形態では、用語「約」が使用される場合、列挙された数に対してその列挙された数の5%、10%、15%又はそれ以上を足すか又は引くことを意味する。意図される実際の変動は、文脈から決定できる。
【0031】
本明細書に記載される範囲のいずれかにおいて、範囲の端点は、その範囲に含まれる。しかしながら、この説明はまた、小さい方の端点及び/又は大きい方の端点が除外された同じ範囲も意図する。本発明の追加の特徴及び変形形態は、図面及び詳細な説明を含む本出願の全体から当業者には明らかであろうが、そのような特徴は全て本発明の態様として意図される。同様に、本明細書に記載される本発明の特徴を組み換えて、特徴の組合せが本発明の態様又は実施形態として上記に具体的に記載されているかどうかにかかわらず、本発明の態様としても意図される追加の実施形態にすることができる。また、本発明にとって不可欠なものとして本明細書に記載されるそのような限定のみが、そのようにみなされるべきであり;本明細書に不可欠なものとして記載されていない限定を欠く本発明の変形形態は、本発明の態様として意図される。
【0032】
本明細書に引用される全ての参考文献は、参照により本明細書によって援用される。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
抗原結合タンパク質、少なくとも1種の緩衝剤、少なくとも1種の界面活性剤、及び少なくとも1種の糖類を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物のpHが、3.5~5の範囲である、医薬組成物。
(項目2)
前記抗原結合タンパク質が、抗体である、項目1に記載の医薬組成物。
(項目3)
前記抗体が、CD3に結合するヘテロ二量体抗体である、項目2に記載の医薬組成物。
(項目4)
前記ヘテロ二量体抗体が、
a)第1のFcドメイン及び
(i)配列番号15に記載されるvlCDR1、配列番号16に記載されるvlCDR2、及び配列番号17に記載されるvlCDR3を含むscFv可変軽鎖ドメイン、並びに(ii)配列番号11に記載されるvhCDR1、配列番号12に記載されるvhCDR2、及び配列番号13に記載されるvhCDR3を含むscFv可変重鎖ドメインを含む抗CD3 scFvを含む第1の単量体であって、前記scFvが、ドメインリンカーを使用して前記FcドメインのN末端に共有結合される第1の単量体;
b)
i)配列番号65に記載されるvhCDR1、配列番号66に記載されるvhCDR2、及び配列番号67に記載されるvhCDR3を含む抗CD38重鎖可変ドメイン、並びにii)第2のFcドメインを含む重鎖定常ドメインを含む第2の単量体;並びに
c)定常ドメイン及び配列番号69に記載されるvlCDR1、配列番号70に記載されるvlCDR2、及び配列番号71に記載されるvlCDR3を含む抗CD38可変軽鎖ドメインを含む軽鎖を含む、項目3に記載の医薬組成物。
(項目5)
前記抗CD3 scFvが、配列番号18に記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む、項目4に記載の医薬組成物。
(項目6)
前記抗CD3 scFvが、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含む、項目4に記載の医薬組成物。
(項目7)
前記抗CD38可変軽鎖ドメインが、配列番号68に記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む、項目4~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目8)
前記抗CD38可変軽鎖ドメインが、配列番号68に記載されるアミノ酸配列を含む、項目7に記載の医薬組成物。
(項目9)
前記抗CD38重鎖可変ドメインが、配列番号64に記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む、項目4~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目10)
前記抗CD38重鎖可変ドメインが、配列番号64に記載されるアミノ酸配列を含む、項目9に記載の医薬組成物。
(項目11)
前記第1の単量体が、配列番号335に記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む、項目4~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目12)
前記第1の単量体が、配列番号335に記載されるアミノ酸配列を含む、項目11に記載の医薬組成物。
(項目13)
前記第2の単量体が、配列番号337に記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む、項目4~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目14)
前記第2の単量体が、配列番号337に記載されるアミノ酸配列を含む、項目13に記載の医薬組成物。
(項目15)
前記軽鎖が、配列番号336に記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む、項目4~14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目16)
前記軽鎖が、配列番号336に記載されるアミノ酸配列を含む、項目15に記載の医薬組成物。
(項目17)
前記ヘテロ二量体抗体が、
a)
1)第1の可変重鎖ドメイン;
2)第1のCH1ドメイン及び第1のFcドメインを含む第1の定常重鎖
;並びに
3)ヒトCD3に結合し、且つ
(i)配列番号387に記載されるvlCDR1、配列番号388に記載されるvlCDR2、及び配列番号189に記載されるvlCDR3を含むscFv可変軽鎖ドメイン、(ii)scFvリンカー、並びに
(iii)配列番号383に記載されるvhCDR1、配列番号384に記載されるvhCDR2、及び配列番号385に記載されるvhCDR3を含むscFv可変重鎖ドメインを含むscFvであって、前記scFvが、前記CH1ドメインのC末端と前記第1のFcドメインのN末端の間でドメインリンカーを使用して共有結合されるscFvを含む第1の重鎖を含む第1の単量体;
b)第2の可変重鎖ドメイン及び第2のFcドメインを含む第2の定常重鎖を含む第2の重鎖を含む第2の単量体;並びに
c)可変軽鎖ドメイン及び定常軽鎖ドメインを含む共通の軽鎖を含み;
前記第1の可変重鎖ドメイン及び前記可変軽鎖ドメインがヒトSTEAP1に結合し、前記第2の可変重鎖ドメイン及び前記可変軽鎖ドメインがヒトSTEAP1に結合し、且つ(i)前記第1の可変重鎖ドメイン及び前記第2の可変重鎖ドメインが、配列番号360に記載されるvhCDR1、配列番号361又は363に記載されるvhCDR2、及び配列番号362に記載されるvhCDR3を含む重鎖CDRを含み、且つ前記可変軽鎖ドメインが、配列番号357に記載されるvlCDR1、配列番号358に記載されるvlCDR2、及び配列番号359に記載されるvlCDR3を含む軽鎖CDRを含むか;
又は
(ii)前記第1の可変重鎖ドメイン及び前記第2の可変重鎖ドメインが、配列番号368に記載されるvhCDR1、配列番号369に記載されるvhCDR2、及び配列番号370に記載されるvhCDR3を含む重鎖CDRを含み、且つ前記可変軽鎖ドメインが、配列番号371に記載されるvlCDR1、配列番号372に記載されるvlCDR2、及び配列番号373に記載されるvlCDR3を含む軽鎖CDRを含む、項目3に記載の医薬組成物。
(項目18)
前記第1の可変重鎖ドメイン及び前記第2の可変重鎖ドメインが、配列番号377又は379と少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む、項目17に記載の医薬組成物。
(項目19)
前記第1の可変重鎖ドメイン及び前記第2の可変重鎖ドメインが、配列番号377又は379のアミノ酸配列を含む、項目18に記載の医薬組成物。
(項目20)
前記可変軽鎖ドメインが、配列番号378と少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む、項目17~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目21)
前記可変軽鎖ドメインが、配列番号378のアミノ酸配列を含む、項目20に記載の医薬組成物。
(項目22)
前記第1の可変重鎖ドメイン及び前記第2の可変重鎖ドメインが、配列番号380と少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む、項目17に記載の医薬組成物。
(項目23)
前記第1の可変重鎖ドメイン及び前記第2の可変重鎖ドメインが、配列番号380のアミノ酸配列を含む、項目22に記載の医薬組成物。
(項目24)
前記可変軽鎖ドメインが、配列番号381と少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む、項目22又は項目23に記載の医薬組成物。
(項目25)
前記可変軽鎖ドメインが、配列番号381のアミノ酸配列を含む、項目24に記載の医薬組成物。
(項目26)
前記scFvが、配列番号382及び配列番号383の可変重鎖領域及び可変軽鎖領域を含む、項目17~25のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目27)
前記scFvリンカーが、配列番号391を含む、項目17~25のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目28)
前記scFvが、配列番号390の配列を含む、項目17~25のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目29)
a)前記第1の単量体が、配列番号366又は配列番号367の配列を含み、前記第2の単量体が、配列番号365の配列を含み、且つ前記共通の軽鎖が、配列番号364の配列を含むか;又は
b)前記第1の単量体が、配列番号376の配列を含み、前記第2の単量体が、配列番号375の配列を含み、且つ前記共通の軽鎖が、配列番号374の配列を含む、項目17~28のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目30)
前記少なくとも1種の緩衝剤が、酢酸塩、グルタミン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ヒスチジン、リン酸塩、及び2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸塩又はこれらの組合せからなる群から選択される酸である、項目1~29のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
(項目31)
前記少なくとも1種の緩衝剤が、5~200mMの濃度範囲で存在する、項目30に記載の医薬組成物。
(項目32)
前記少なくとも1種の緩衝剤が、10~50mMの濃度範囲で存在する、項目30に記載の医薬組成物。
(項目33)
前記少なくとも1種の糖類が、単糖、二糖、環状多糖、糖アルコール、線状分岐デキストラン、及び線状非分岐デキストランからなる群から選択される、項目1~32のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目34)
前記二糖が、スクロース、トレハロース、マンニトール、及びソルビトール又はこれらの組合せからなる群から選択される、項目33に記載の医薬組成物。
(項目35)
前記糖アルコールが、ソルビトールである、項目33に記載の医薬組成物。
(項目36)
前記少なくとも1種の糖類が、1~15%(w/V)の範囲の濃度で存在する、項目1~35のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目37)
前記少なくとも1種の糖類が、5~12%(w/V)の範囲の濃度で存在する、項目1~35のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目38)
前記少なくとも1種の糖類が、7~12%(w/V)の範囲の濃度で存在する、項目1~37のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目39)
前記少なくとも1種の糖類が、9~12%(w/V)の範囲の濃度で存在する、項目38に記載の医薬組成物。
(項目40)
前記少なくとも1種の界面活性剤が、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ポロクサマー188、プルロニック(登録商標)F68、トリトンX-100、ポリオキシエチレン3、及びPEG3350、PEG4000、又はこれらの組合せからなる群から選択される、項目1~39のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目41)
前記少なくとも1種の界面活性剤が、0.001~0.5%(w/V)の範囲の濃度で存在する、項目1~40のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目42)
前記少なくとも1種の界面活性剤が、0.004~0.5%(w/V)の範囲の濃度で存在する、項目1~41のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目43)
前記少なくとも1種の界面活性剤が、0.001~0.01%(w/V)の範囲の濃度で存在する、項目41に記載の医薬組成物。
(項目44)
前記少なくとも1種の界面活性剤が、0.004~0.01%(w/V)の範囲の濃度で存在する、項目42に記載の医薬組成物。
(項目45)
前記組成物のpHが、4.0~5.0の範囲である、項目1~44のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目46)
前記組成物のpHが、4.2である、項目45に記載の医薬組成物。
(項目47)
150~500mOsmの範囲のモル浸透圧濃度を有する、項目1~46のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目48)
ポリオール及びアミノ酸からなる群から選択される賦形剤をさらに含む、項目1~47のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目48)
前記賦形剤が、0.1~15%(w/V)の濃度範囲で存在する、項目44に記載の医薬組成物。
(項目49)
前記組成物が、10mMグルタミン酸塩、9%(w/V)スクロース及び0.01%(w/V)ポリソルベート80を含み、且つ液体医薬組成物のpHが、4.2である、項目1~45のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目50)
前記ヘテロ二量体抗体が、0.1~8mg/mlの濃度範囲で存在する、項目4~49のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目51)
前記ヘテロ二量体抗体が、0.1~20mg/mLの濃度範囲で存在する、項目4~49のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目52)
前記ヘテロ二量体抗体が、50μg~200mgの範囲の量で存在する、項目4~51のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目53)
前記ヘテロ二量体抗体が、1mg/mLで存在する、項目1~16及び30~52のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目54)
前記ヘテロ二量体抗体が、5mg/mLで存在する、項目1~16及び30~52のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目55)
前記ヘテロ二量体抗体が、20mg/mLで存在する、項目1~16及び30~52のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目56)
前記ヘテロ二量体抗体が、10mg/mLで存在する、項目1~3及び17~52のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目57)
凍結乾燥組成物である、項目1~56のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目58)
液体組成物である、項目1~57のいずれか一項に記載の医薬組成物。
(項目59)
再構成された凍結乾燥組成物である、項目58に記載の医薬組成物。
(項目59)
必要とする対象において癌を治療する方法であって、項目1~59のいずれか一項に記載の前記組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
(項目60)
前記癌が、多発性骨髄腫である、項目59に記載の方法。
(項目61)
前記癌が、前立腺癌である、項目59に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1A】ヘテロ二量体抗体のいくつかの形式を示す。「ボトルオープナー」形式の2つの形態が示され、1つはscFvを含む抗CD3抗原結合ドメイン及びFab(抗原結合ドメインの例として)を含む抗CD38抗原結合ドメインを有し、1つはこれらの逆を有する。mAb-Fv、mAb-scFv、中央-scFv(又は「XmAb
2+1形式」)及び中央-Fv形式が全て示される。加えて、1つの単量体が単にFcドメインを含む「1アーム」形式が示され、1アーム中央-scFv及び1アーム中央-Fvの両方が示される。二重scFv形式もまた示される。
【
図2】可変重鎖及び軽鎖ドメイン(下線のCDR)を含む「高-中間#1」の抗CD3_H1.32_L1.47コンストラクト、及び個々のvlCDR及びvhCDR、並びに荷電リンカー(二重下線)を有するscFvコンストラクトの配列を示す。図面で示される配列全てに当てはまることであるが、この荷電リンカーは、必要に応じて非荷電リンカー又は異なる荷電リンカーに置き換えられてもよい。
【
図3】中間CD38:可変重鎖及び軽鎖ドメイン(下線のCDR)を含むOKT10_H1L1.24コンストラクト、及び個々のvlCDR及びvhCDR、並びに荷電リンカー(二重下線)を有するscFvコンストラクトの配列を示す。
【
図4】低CD38:可変重鎖及び軽鎖ドメイン(下線のCDR)を含むOKT10_H1L1コンストラクト、及び個々のvlCDR及びvhCDR、並びに荷電リンカー(二重下線)を有するscFvコンストラクトの配列を示す。
【
図5】XENP18971の配列を示す。CDRには下線が引かれている。
【
図6】XENP18969の配列を示す。CDRには下線が引かれている。
【
図7】ヒトCD3εの配列を示す(配列番号130)。
【
図8】ヒトCD38タンパク質の全長(配列番号131)及び細胞外ドメイン(ECD;配列番号132)を示す。
【
図9A】ヘテロ二量体化変異体セット(非対称及びpI変異体を含む)の有用な対を示す。
【
図10】等配電子変異体の抗体定常領域及びそれらの対応する置換のリストを示す。pI_(-)は、pIの低い変異体を示し、pI_(+)は、pIの高い変異体を示す。これらは、任意選択的且つ独立して本発明のヘテロ二量体化変異体(及び同様に本明細書で概説されるとおりの他の変異体型)と組み合わせることができる。
【
図11】FcγR結合を切断する有用な切断変異体を示す(「ノックアウト」又は「KO」変異体と称される場合がある)。
【
図13A】成分として1つ以上のscFvを利用するヘテロ二量体抗体のpIを上げるか又は下げる際に用途を見出すいくつかの荷電scFvリンカーを示す。単一の電荷を有する単一の先行技術のscFvリンカーは、Whitlow et al.,Protein Engineering 6(8):989-995(1993)から「Whitlow」として参照される。このリンカーはscFvの凝集を減少させ、且つタンパク分解安定性を高めるために使用されたことに留意すべきである。
【
図14】ヘテロ二量体の収量(HPLC-CIEXによって決定される)及び熱安定性(DSCによって決定される)とともに操作されたヘテロ二量体-非対称Fc変異体のリストを示す。決定されなかった熱安定性は、「n.d.」によって示される。
【
図15A】安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvを示す。置換は、H1_L1.4 scFv配列に対してなされる。アミノ酸付番は、Kabat付番である。
【
図16A】安定性が最適化されたヒト化抗CD3変異体scFvのアミノ酸配列を示す。CDRには下線が引かれている。各重鎖/軽鎖の組合せに関して、4つの配列が列挙される:(i)C末端6xHisタグを有するscFv、(ii)scFv単独、(iii)VH単独、(iv)VL単独。
【
図17】XENP18971の配列を示す。CDRには下線が引かれている。
【
図18】XENP18969の配列を示す。CDRには下線が引かれている。
【
図19】実施形態の可能な組合せの行列を示す。「A」は、参照されるCD3配列のCDRを、左側のCD38コンストラクトのCDRと組み合わせることができることを意味する。すなわち、例えば、左の一番上のセルについては、可変重鎖CD3H1.30配列のvhCDR及びCD3 L1.47配列の可変軽鎖のvlCDRを、CD38 OKT10 H1.77配列のvhCDR及びOKT10L1.24配列のvlCDRと組合せることができる。「B」は、CD3コンストラクトに由来するCDRを、CD38コンストラクトに由来する可変重鎖及び軽鎖ドメインと組み合わせることができることを意味する。すなわち、例えば、左の一番上のセルについては、可変重鎖CD3H1.30配列のvhCDR及びCD3 L1.47配列の可変軽鎖のvlCDRを、可変重鎖ドメインCD38 OKT10 H1.77配列及びOKT10L1.24配列と組み合わせることができる。「C」は、CD3配列に由来する可変重鎖ドメイン及び可変軽鎖ドメインが、CD38配列のCDRとともに使用されるように反転される。「D」は、各々に由来する可変重鎖及び可変軽鎖の両方が組み合わせられる場合である。「E」は、CD3のscFvがCD38抗原結合ドメインコンストラクトのCDRとともに使用される場合であり、「F」は、CD3のscFvがCD38抗原結合ドメインの可変重鎖ドメイン及び可変軽鎖ドメインとともに使用される場合である。
【
図20】抗体Aとしても本明細書で参照されるXmAb18968の配列を示し、CDRに下線が引かれている。
【
図21-1】様々なCDR配列、可変領域配列、重鎖及び軽鎖配列、scFv配列、骨格配列などを関連付ける表であり、本出願に添付されている配列表に記載される配列識別子を伴う。記載されたいくつかのボトルオープナー形式の骨格(配列番号347~354)に関して、配列は、Fv配列(例えば、scFv並びにFab側のvh及びvl)を伴わずに提供される。当業者によって認識されることになり且つ下に概説されるとおり、これらの配列は、本明細書で概説されるいずれかのvhとvlの対とともに使用することができ、一方の単量体はscFv(任意選択により荷電scFvリンカーを含む)を含み、他方の単量体はFab配列(例えば、「Fab側の重鎖」に結合されたvh及び「定常軽鎖」に結合されたvl)を含む。scFvは、抗CD3又は抗CD38であってもよく、Fabが他方である。(「Fab」は、VH、CH1、VL、及びCL免疫グロブリンドメインを含む部分を指す。)すなわち、例えば、CD3及びCD38について本明細書で概説されるいずれかのFv配列を、任意の組合せでこれらの骨格に組み込むことができる。
【
図22A】SE-UHPLCによって決定される、製剤A(
図22A)及び製剤B(
図22B)において製剤化される場合の抗体Aのメインピークの減少を示す。
【
図23】SE-UHPLCによって決定される、製剤Cにおいて製剤化される場合の抗体Aのメインピークの減少を示す。
【
図24A】CE-HPLCによって決定される、製剤A(
図24A)及び製剤B(
図24B)において製剤化される場合の抗体Aのメインピークの減少を示す。
【
図25】CE-HPLCによって決定される、製剤Cにおいて製剤化される場合の抗体Aのメインピークの減少を示す。
【
図26】rCEによって決定される、製剤Aにおいて製剤化される場合の-30℃での抗体Aのメインピークの減少を示す。
【
図27】rCEによって決定される、製剤Bにおいて製剤化される場合の40℃での抗体Aのメインピークの減少を示す。
【
図28】rCEによって決定される、製剤Cにおいて製剤化される場合の抗体Aのメインピークの減少を示す。
【
図29】MAMによって決定される、製剤B及びCにおいて製剤化される場合の3ヶ月間の4℃、2℃、及び40℃での抗体Aの脱アミドのパーセントを示す。
【
図30-1】MAMによって決定される、製剤Dにおいて製剤化される場合の0週間、2週間及び4週間の40℃での抗体Aの脱アミドのパーセントを示す。
【
図31】MAMによって決定される、製剤B及びCにおいて製剤化される場合の1ヶ月間の40℃での抗体Aの脱アミドのパーセントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示は、CD3に結合する抗原結合タンパク質を含む低pH製剤を記載する。
【0035】
いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質は、二重特異性抗体(例えば、CD3に結合する二重特異性抗体)などの抗体である。いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質は、悪性細胞をT細胞と一過的に結びつけ、それにより結合された悪性細胞のT細胞に媒介される死滅を誘導するために、そのような様式でCD3とCD38を共結合させるヘテロ二量体抗体である。他の実施形態では、抗原結合タンパク質は、CD3及びSTEAP1に共結合するヘテロ二量体抗体である。
【0036】
特定のタンパク質系医薬品は、長期間にわたって液体製剤中で安定ではなく、特に、4℃以上の冷蔵温度で安定ではない。本発明の基盤となる普遍的なコンセプトは、本発明による抗原結合タンパク質を含む液体医薬組成物のコロイド安定性が低pHで向上するという発見である。
【0037】
製剤の様々な態様は、以下に記載される。節見出しの使用は単に読み物の便宜のためであり、それ自体を限定することは意図されない。本明細書全体は、統一された開示として見なされることが意図されており、本明細書に記載される特徴の全ての組合せが企図されることを理解すべきである。
【0038】
一態様では、本明細書では、本明細書に記載される抗原結合タンパク質、少なくとも1種の緩衝剤、少なくとも1種の界面活性剤及び少なくとも1種の糖類を含む医薬組成物が記載され、その医薬組成物のpHは、3.5~5の範囲である。
【0039】
緩衝剤
本発明の医薬組成物は、酢酸塩、グルタミン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ヒスチジン、リン酸塩、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸塩、リン酸カリウム、酢酸/酢酸ナトリウム、クエン酸/クエン酸ナトリウム、コハク酸/コハク酸ナトリウム、酒石酸/酒石酸ナトリウム、ヒスチジン/ヒスチジンHCl、グリシン、トリス、グルタミン酸塩、及びこれらの組合せからなる群から任意選択的に選択され得る緩衝剤を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、酢酸塩、グルタミン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ヒスチジン、リン酸塩、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸塩及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の緩衝剤を含む。
【0040】
緩衝剤は、製剤においてpHを制御するために利用される場合が多い。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、約3.5~5、又は約4~5、又は約4.2の製剤のpHを維持する濃度で加えられる。製剤に対するpHの影響は、加速安定性試験及び熱量測定スクリーニング試験などのいくつかの手法のうちのいずれか1つ以上を使用して特徴付けられ得る(Remmele R.L.Jr.,et al.,Biochemistry,38(16):5241-7(1999))。
【0041】
有機酸、リン酸塩及びトリスは、タンパク質製剤中の好適な緩衝剤である(表1)。緩衝剤種の緩衝能はpHがpKaと等しいときに最大になり、pHがこの値から増加又は低下すると低下する。緩衝能の90パーセントはそのpKaの1pH単位内に存在する。緩衝能はまた、緩衝剤濃度の増加とともに比例して増加する。
【0042】
緩衝剤を選択する際、通常、いくつかの要因が検討される。例えば、緩衝剤種及びその濃度は、そのpKa及び所望の製剤pHに基づいて定義されるべきである。緩衝剤が、タンパク質薬物、他の製剤賦形剤と相溶性であり、且ついずれかの分解反応を触媒しないことを保証することもまた重要である。近年、クエン酸塩及びコハク酸塩などのポリアニオンのカルボン酸塩緩衝剤が、タンパク質の側鎖残基と共有結合性の付加体を形成することが示されている。検討されることになる第3の態様は、緩衝剤が誘導し得る刺痛及び刺激の感覚である。例えば、クエン酸塩は、注射時に刺痛を引き起こすことが知られる(Laursen T,et al.,Basic Clin Pharmacol Toxicol.,98(2):218-21(2006))。製剤が投与時に血液に迅速に希釈されるIV経路によって投与されるときよりも、薬物溶液が比較的長い期間当該部位に残存するSC又はIM経路を介して投与される薬物にとって、刺痛及び刺激の可能性は、より大きい。直接的なIV注入によって投与される製剤に関して、緩衝剤(及び任意の他の製剤成分)の総量がモニターされる必要がある。例えば、リン酸カリウム緩衝剤の形態で投与されるカリウムイオンは、患者において心血管作用を誘導する可能性があることが報告されている(Hollander-Rodriguez JC,et al.,Am.Fam.Physician.,73(2):283-90(2006))。
【0043】
【0044】
製剤中に存在する緩衝系は、生理的に適合性であり且つ所望のpHを維持するものから選択される。
【0045】
緩衝剤は、既定のレベルで製剤のpHを維持するのに好適な任意の量で存在し得る。緩衝剤は、約0.1mMと約1000mM(1M)の間、又は約5mMと約200mMの間、又は約5mMと約100mMの間、又は約10mMと約50mMの間の濃度で存在し得る。好適な緩衝剤濃度は、約200mM以下の濃度を包含する。いくつかの実施形態では、製剤中の緩衝剤は、約190mM、約180mM、約170mM、約160mM、約150mM、約140mM、約130mM、約120mM、約110mM、約100mM、約80mM、約70mM、約60mM、約50mM、約40mM、約30mM、約20mM、約10mM又は約5mMの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、緩衝剤の濃度は、少なくとも0.1、0.5、0.7、0.8、0.9、1.0、1.2、1.5、1.7、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、500、700、又は900mMである。いくつかの実施形態では、緩衝剤の濃度は、1、1.2、1.5、1.7、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、又は90mMと100mMの間である。いくつかの実施形態では、緩衝剤の濃度は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、又は40mMと50mMの間である。いくつかの実施形態では、緩衝剤の濃度は、約10mMである。
【0046】
本明細書で述べられるとおりの製剤を緩衝するために使用される他の例示的なpH緩衝剤としては、グリシン、グルタミン酸塩、コハク酸塩、リン酸塩、酢酸塩、及びアスパラギン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。ヒスチジン及びグルタミン酸などのアミノ酸もまた、緩衝剤として使用され得る。
【0047】
界面活性剤
本明細書に記載される医薬組成物は、少なくとも1種の界面活性剤を含む。界面活性剤は、表面誘起分解を防ぐために、タンパク質製剤中で一般的に使用される。界面活性剤は、界面位置に関してタンパク質に打ち勝つ能力を有する両親媒性の分子である。界面活性剤分子の疎水性部分は界面位置(例えば、空気/液体)を占めるのに対し、分子の親水性部分はバルク溶媒の方向に配向された状態を保つ。十分な濃度(典型的には、洗剤の臨界ミセル濃度付近)において、界面活性剤分子の表面層は、タンパク質分子が界面において吸着するのを防ぐ役割を果たす。これにより、表面誘起分解は最小化される。界面活性剤としては、例えば、ソルビタンポリエトキシレートの脂肪酸エステル、すなわち、ポリソルベート20及びポリソルベート80(例えば、Avonex(登録商標)、Neupogen(登録商標)、Neulasta(登録商標)を参照のこと)が挙げられる。2つは、分子C-12及びC-18にそれぞれ疎水性特性を付与する脂肪族鎖の長さのみが異なる。したがって、ポリソルベート-80は、ポリソルベート-20よりも界面活性が高く、且つより低い臨界ミセル濃度を有する。界面活性剤ポロクサマー188も、Gonal-F(登録商標)、Norditropin(登録商標)、及びOvidrel(登録商標)などのいくつかの市販液体製品中に使用されてきた。
【0048】
洗剤はまた、タンパク質の熱力学的配座安定性にも影響を及ぼし得る。ここでも、所定の賦形剤の効果は、タンパク質特異的である。例えば、ポリソルベートは、一部のタンパク質の安定性を低下させ、その他の安定性を向上させることが示されている。洗剤のタンパク質不安定化は、部分的又は全体的にアンフォールドしたタンパク質状態との特異的な結合に関与し得る洗剤分子の疎水性尾部の点で理にかなっている。これらの種類の相互作用は、より拡張したタンパク質状態への配座平衡の移行を引き起こし得る(すなわち、結合するポリソルベートを補完してタンパク質分子の疎水性部分の露出を増加させる)。或いは、タンパク質の天然状態がいくつかの疎水性表面を示す場合、天然状態に結合する洗剤はその立体配座を安定化させ得る。
【0049】
ポリソルベートの別の態様は、これらが本質的に酸化分解を起こしやすい点である。これらは、タンパク質残基側鎖、特にメチオニンの酸化を引き起こすのに十分な量の過酸化物を原材料として含有する場合が多い。安定剤の添加から生じる酸化損傷の可能性のために、最低有効濃度の賦形剤が製剤中に使用されるべきであるという点が強調される。界面活性剤の場合、所定のタンパク質の有効濃度は、安定化機構によって決まる。界面活性剤の安定化機構が表面変性の防止に関連する場合、有効濃度は洗剤の臨界ミセル濃度付近になることが想定されている。反対に、安定化機構が特定のタンパク質-洗剤相互作用と関連する場合、有効な界面活性剤濃度は、タンパク質濃度及び相互作用の化学量論に関連付けられることになる(Randolph T.W.,et al.,Pharm Biotechnol.,13:159-75(2002))。
【0050】
また、凍結及び乾燥中の表面関連凝集現象を防止するために、界面活性剤を適量で添加してもよい(Chang,B,J.Pharm.Sci.85:1325,(1996))。例示的な界面活性剤としては、天然に存在するアミノ酸に由来する界面活性剤を含む、アニオン性、カチオン性、非イオン性、双性イオン性、及び両性界面活性剤が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム及びスルホン酸ジオクチルナトリウム、ケノデオキシコール酸、N-ラウロイルサルコシンナトリウム塩、ドデシル硫酸リチウム、1-オクタンスルホン酸ナトリウム塩、コール酸ナトリウム水和物、デオキシコール酸ナトリウム、並びにグリコデオキシコール酸ナトリウム塩が挙げられるがこれらに限定されない。カチオン性界面活性剤としては、塩化ベンザルコニウム又は塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム一水和物、及び臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムが挙げられるがこれらに限定されない。双性イオン性界面活性剤としては、CHAPS、CHAPSO、SB3-10、及びSB3-12が挙げられるがこれらに限定されない。非イオン性界面活性剤としては、ジギトニン、Triton X-100、Triton X-114、TWEEN(登録商標)-20、及びTWEEN(登録商標)-80が挙げられるがこれらに限定されない。別の実施形態では、界面活性剤としては、ラウロマクロゴール400;ステアリン酸ポリオキシル40;ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油10、40、50、及び60;モノステアリン酸グリセロール;ポリソルベート40、60、65、及び80;大豆レシチン及び他のリン脂質、例えば、DOPC、DMPG、DMPC、及びDOPG;スクロース脂肪酸エステル;メチルセルロース、並びにカルボキシメチルセルロースが挙げられる。
【0051】
本明細書に記載される医薬組成物は、様々な比率において個別に又は混合物のいずれかとして、少なくとも1種の界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約0.001%~約5%w/v(又は約0.004~約0.5%w/v若しくは約0.001~約0.01%w/v若しくは約0.004~約0.01%w/v)の濃度の界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも0.001、少なくとも0.002、少なくとも0.003、少なくとも0.004、少なくとも0.005、少なくとも0.007、少なくとも0.01、少なくとも0.05、少なくとも0.1、少なくとも0.2、少なくとも0.3、少なくとも0.4、少なくとも0.5、少なくとも0.6、少なくとも0.7、少なくとも0.8、少なくとも0.9、少なくとも1.0、少なくとも1.5、少なくとも2.0、少なくとも2.5、少なくとも3.0、少なくとも3.5、少なくとも4.0、又は少なくとも4.5%w/vの濃度で界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約0.004%~約0.5%w/vの濃度で界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約0.004~約0.5%w/vの濃度で界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約0.001~約0.01%w/vの濃度で界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約0.004~約0.01%w/vの濃度で界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約0.004、約0.005、約0.007、約0.01、約0.05、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4%w/v~約0.5%w/vの濃度で界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約0.001%~約0.01%w/vの濃度で組み入れられた界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤はポリソルベート80であり、ポリソルベート80は約0.01%w/vの濃度で存在する。
【0052】
糖類
本明細書に記載される医薬組成物は、少なくとも1種の糖類を含む。糖類は、安定剤又は充填剤として添加され得る。本明細書で使用する場合、用語「安定剤」は、水性及び固体状態での、凝集又はその他の物理的劣化及び化学的劣化(例えば、自己分解、脱アミド、酸化など)を防ぐことができる賦形剤を意味する。医薬組成物中で使用される安定剤としては、スクロース、トレハロース、マンノース、マルトース、ラクトース、グルコース、ラフィノース、セロビオース、ゲンチオビオース、イソマルトース、アラビノース、グルコサミン、フルクトース、マンニトール、ソルビトール、グリシン、アルギニンHCL、デキストラン、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、シクロデキストリン、N-メチルピロリデン、セルロース及びヒアルロン酸などの多糖類を含むポリヒドロキシ化合物、並びに塩化ナトリウムが挙げられるがこれらに限定されない(Carpenter et al.,Develop.Biol.Standard 74:225,(1991))。
【0053】
いくつかの実施形態では、少なくとも1種の糖類は、単糖、二糖、環状多糖、糖アルコール、線状分岐デキストラン、及び線状非分岐デキストラン、並びにこれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の糖類は、スクロース、トレハロース、マンニトール、及びソルビトール又はこれらの組合せからなる群から選択される二糖である。
【0054】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.01%~約40%w/v、又は約00.1%~約20%w/v、又は約1%~約15%w/vの濃度で少なくとも1種の糖類を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、少なくとも0.5、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも30、又は少なくとも40%w/vの濃度で少なくとも1種の糖類を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14%~約15%w/vの濃度で少なくとも1種の糖類を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1%~約15%w/vの濃度で少なくとも1種の糖類を含む。さらなる実施形態では、医薬組成物は、約9%、約9.5%、約10%、約10.5%、約11%、約11.5%、又は約12%w/vの濃度で少なくとも1種の糖類を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約9%~約12%w/vの濃度で少なくとも1種の糖類を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の糖類は、約9%w/vの濃度で組成物中にある。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の糖類は、スクロース、トレハロース、マンニトール、及びソルビトール又はこれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、糖類はソルビトールであり、約9%~約12%w/vの範囲で組成物中に存在する。
【0055】
必要があれば、製剤はまた、凍結乾燥「ケーキ」を形成するのに好適な糖類などの、適切な量の充填剤及びモル浸透圧濃度調節剤を含む。
【0056】
好ましい実施形態では、医薬組成物は、10mMグルタミン酸塩、9%(w/V)スクロース及び0.01%(w/V)ポリソルベート80を含み、医薬組成物のpHは、4.2である。
【0057】
他の考慮事項
本明細書で使用する場合、用語「医薬組成物」は、それを必要とする患者への投与に好適な組成物に関する。用語「対象」、又は「個体」、又は「動物」、又は「患者」は、本明細書では互換的に使用され、本発明の医薬組成物の投与が望ましい任意の対象、特に哺乳動物対象を指す。哺乳動物対象には、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、乳牛などが含まれ、ヒトが好ましい。本発明の医薬組成物は、安定であり、且つ薬学的に許容されるものであり、すなわち、医薬組成物が投与される対象において著しく望ましくない局所的又は全身的な作用を引き起こすことなく所望の治療効果を引き出すことができる。本発明の薬学的に許容される組成物は、無菌であり、且つ/又は薬学的に不活性であり得る。具体的には、用語「薬学的に許容される」は、動物における使用及びより特定するとヒトにおける使用のための、規制当局又は他の一般に認識されている薬局方によって承認されていることを意味し得る。
【0058】
本開示によって提供される製剤は、本明細書に記載される抗原結合タンパク質(例えば、ヘテロ二量体抗体)を含む。いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体抗体は、治療有効量で提供される。「治療有効量」は、所望の治療効果を引き出す前記ヘテロ二量体抗体の量を意味する。治療効果及び毒性は、細胞培養又は実験動物における標準的な医薬的手順、例えばED50(集団の50%において治療上有効な用量)及びLD50(集団の50%において致死的な用量)によって決定することができる。治療効果と毒性作用との間の用量比は、治療指数であり、ED50/LD50の比として表現することができる。大きい治療指数を示す製剤が一般に好ましい。
【0059】
タンパク質製剤は一般に、非経口投与される。非経口で与えられる場合、それらは無菌でなければならない。無菌希釈剤は、薬学的に許容され(ヒトへの投与のために安全且つ非毒性)、且つ凍結乾燥後に再構成される製剤などの液体製剤の調製に有用である液体を含む。例示的な希釈剤としては、滅菌水、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水溶液、リンゲル液又はデキストロース溶液が挙げられる。希釈剤は、塩及び/又は緩衝剤の水溶液を含み得る。
【0060】
賦形剤は、それらが薬物製品の安定性、送達及び製造性を与えるか又は高めるため、製剤中に含まれる添加剤である。賦形剤を含有する理由にかかわらず、賦形剤は、薬物製品の不可欠な成分であり、したがって、安全且つ患者によって十分に耐容性を示される必要がある。タンパク質薬物に関して、賦形剤の選択は、それらが薬物の有効性及び免疫原性に影響を及ぼす可能性があるため特に重要である。したがって、タンパク質製剤は、好適な安定性、安全性、及び市場性を与える賦形剤の適切な選択とともに開発される必要がある。
【0061】
本明細書に記載される賦形剤は、それらの化学種又はそれらの製剤中における機能的役割のいずれかによって整理される。各賦形剤の種類を議論する際、安定化の様式についての簡単な説明が提供される。本明細書で提供される教示及び手引きがあれば、当業者は、粘度を望ましくないレベルまで増大させることなく賦形剤の量又は範囲を容易に変動させることができるであろう。賦形剤は、最終溶液の所望の重量オスモル濃度(すなわち、等張性、低張性又は高張性)、pH、所望の安定性、凝集若しくは分解若しくは沈殿に対する耐性、凍結、凍結乾燥若しくは高温条件下での保護、又は他の特性を実現するために選択され得る。様々な種類の賦形剤が当技術分野で知られている。例示的な賦形剤としては、塩、アミノ酸、他の等張化剤、界面活性剤、安定剤、充填剤、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、抗酸化剤、金属イオン、キレート剤及び/又は保存剤が挙げられる。
【0062】
さらに、製剤中に特定の賦形剤が、例えばパーセント(%)w/vで報告される場合、当業者は、その賦形剤の等モル濃度も意図されることを認識するであろう。
【0063】
他の安定剤及び充填剤
安定剤としては、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、及びガラス形成剤としての役割を果たし得る化合物の一部類が挙げられる。凍結保護剤は、低温での凍結中又は凍結状態においてタンパク質を安定化するために作用する。凍結乾燥保護剤は、フリーズドライの脱水段階中にタンパク質の天然様立体配座特性を保存することによって、タンパク質をフリーズドライされた固形剤形で安定化させる。ガラス状態特性は、温度に応じたそれらの緩和特性に応じて、「頑丈」又は「脆弱」に分類されている。安定性を与えるためには、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、及びガラス形成剤が、タンパク質と同じ相に留まることが重要である。糖、ポリマー、及びポリオールはこのカテゴリに入り、場合によっては3つの役割の全てを果たすことができる。
【0064】
ポリオールは、糖(例えば、マンニトール、スクロース、又はソルビトール)、及び他の多価アルコール(例えば、グリセロール及びプロピレングリコール)を含む賦形剤の一部類を包含する。ポリエチレングリコール(PEG)ポリマーはこのカテゴリに含まれる。ポリオールは、液状及び凍結乾燥非経口タンパク質製剤の両方において、安定化賦形剤及び/又は等張化剤として一般的に使用される。ポリオールは、タンパク質を物理的分解経路及び化学的分解経路の両方から保護することができる。
【0065】
例示的なC3~C6ポリオールとしては、プロピレングリコール、グリセリン(グリセロール)、トレオース、トレイトール、エリトロース、エリスリトール、リボース、アラビノース、アラビトール、リキソース、マルチトール、ソルビトール、ソルボース、グルコース、マンノース、マンニトール、レヴロース、デキストロース、マルトース、トレハロース、フルクトース、キシリトール、イノシトール、ガラクトース、キシロース、フルクトース、スクロース、1,2,6-ヘキサントリオールなどが挙げられる。高次糖としては、デキストラン、プロピレングリコール、又はポリエチレングリコールが挙げられる。フルクトース、マルトース又はガラクトースなどの還元糖は、非還元糖より容易に酸化する。糖アルコールのさらなる例は、グルシトール、マルチトール、ラクチトール又はイソ-マルツロースである。さらなる例示的な凍結乾燥保護剤としては、グリセリン及びゼラチン、並びに糖であるメリビオース、メレチトース、ラフィノース、マンノトリオース及びスタキオースが挙げられる。還元糖の例としては、グルコース、マルトース、ラクトース、マルツロース、イソ-マルツロース及びラクツロースが挙げられる。非還元糖の例としては、糖アルコール及び他の直鎖ポリアルコールから選択されるポリヒドロキシ化合物の非還元グリコシドが挙げられる。モノグリコシドとしては、ラクトース、マルトース、ラクツロース及びマルツロースなどの二糖類の還元によって得られる化合物が挙げられる。
【0066】
アミノ酸
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物はさらに、1種以上のアミノ酸を含む。アミノ酸は、緩衝剤、充填剤、安定剤及び抗酸化剤としてタンパク質製剤において多用途に使用されている。ヒスチジン及びグルタミン酸は、それぞれ5.5~6.5及び4.0~5.5のpH範囲においてタンパク質製剤を緩衝するために利用される。ヒスチジンのイミダゾール基は、pKa=6.0を有し、グルタミン酸側鎖のカルボキシル基は、4.3のpKaを有し、このことがそれらを、それらの対応するpH範囲で緩衝するのに好適にしている。グルタミン酸は、一部の製剤(例えば、Stemgen(登録商標))において見出される。ヒスチジンは一般に、市販タンパク質製剤(例えば、Xolair(登録商標)、Herceptin(登録商標)、Recombinate(登録商標))において見出される。それは、注射時に痛むことで知られる緩衝剤であるクエン酸塩に代わる良好な選択肢を提供する。興味深いことに、ヒスチジンはまた、液体及び凍結乾燥された体裁の両方において高濃度で使用されるとき、安定化効果を有することが報告されている(Chen B,et al.,Pharm Res.,20(12):1952-60(2003))。ヒスチジン(最大60mM)はまた、抗体の高濃度製剤の粘度を低減することが観察された。しかしながら、同じ試験において、その著者らは、ステンレス鋼容器中での抗体の凍結融解試験の間、ヒスチジンを含有する製剤において凝集の増加及び変色を観察した。その著者らは、これを鋼容器の腐蝕から浸出した鉄イオンの影響が原因であるとした。ヒスチジンを用いる際のもう1つの注意事項は、金属イオンの存在下で光酸化を受けることである(Tomita M,et al.,Biochemistry,,8(12):5149-60(1969))。製剤中の抗酸化剤としてのメチオニンの使用は、有望なように見える;それは、いくつかの酸化ストレスに対して有効であることが観察されている(Lam XM,et al.,J Pharm Sci.,86(11):1250-5(1997))。
【0067】
アミノ酸のグリシン、プロリン、セリン及びアラニンは、タンパク質を安定化する。グリシンはまた、凍結乾燥製剤(例えば、Neumega(登録商標)、Genotropin(登録商標)、Humatrope(登録商標))中で一般的に使用される充填剤である。アルギニンは、凝集を阻害する際に有効な薬剤であることが示されており、液体及び凍結乾燥製剤(例えば、Activase(登録商標)、Avonex(登録商標)、Enbrel(登録商標)液体))の両方で使用されてきた。
【0068】
抗酸化剤
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物はさらに、1種以上の抗酸化剤を含む。タンパク質残基の酸化は、いくつかの異なる原因から生じる。特定の抗酸化剤の添加の他に、酸化的なタンパク質の損傷の防止には、大気中の酸素、温度、光への曝露、及び化学的汚染などの製品の製造工程及び保管中のいくつかの要因を慎重に制御する必要がある。最も一般的に使用される医薬用抗酸化剤は、還元剤、酸素/フリーラジカルスカベンジャー、又はキレート剤である。治療用タンパク質製剤中の抗酸化剤は水溶性でなければならず、生成物の貯蔵寿命全体を通して活性を維持しなければならない。還元剤及び酸素/フリーラジカルスカベンジャーは、溶液中の活性酸素種を切断することによって機能する。EDTAなどのキレート剤は、フリーラジカル形成を促進する微量金属夾雑物を結合することによって効果を発揮し得る。例えば、EDTAを、酸性線維芽細胞増殖因子の液体製剤中で利用して、金属イオンに触媒されるシステイン残基の酸化を阻害した。EDTAは、Kineret(登録商標)及びOntak(登録商標)などの市販製品に使用されている。
【0069】
しかしながら、抗酸化剤それら自体は、タンパク質に対して他の共有結合性又は物理的変化を誘導する場合がある。いくつかのこのような事例が、文献において報告されている。還元剤(グルタチオンのような)は、ジスルフィドシャッフリングを引き起こす可能性がある分子内ジスルフィド結合の破壊をもたらすことができる。遷移金属イオンの存在下で、アスコルビン酸及びEDTAは、いくつかのタンパク質及びペプチドにおいてメチオニン酸化を促進することが示されている(Akers MJ,and Defelippis MR.Peptides and Proteins as Parenteral Solutions.In:Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins.Sven Frokjaer,Lars Hovgaard,editors.Pharmaceutical Science.Taylor and Francis,UK(1999));Fransson J.R.,J.Pharm.Sci.86(9):4046-1050(1997);Yin J,et al.,Pharm Res.,21(12):2377-83(2004))。チオ硫酸ナトリウムは、rhuMab HER2において光と温度によって誘導されるメチオニン酸化のレベルを低下させることが報告されているが;チオ硫酸塩-タンパク質付加体の形成もまた、この研究において報告された(Lam XM,Yang JY,et al.,J Pharm Sci.86(11):1250-5(1997))。適切な抗酸化剤の選択は、タンパク質の特定のストレス及び感受性に応じてなされる。
【0070】
金属イオン
いくつかの実施形態では、医薬組成物はさらに、1種以上の金属イオンを含む。一般に、遷移金属イオンはタンパク質中で物理的及び化学的分解反応を触媒し得るため、タンパク質製剤中の遷移金属イオンは望ましくない。しかしながら、特定の金属イオンは、それらがタンパク質に対する補助因子である場合に製剤中に含まれ、またそれらが配位化合物を形成するタンパク質の懸濁製剤(例えば、インスリンの亜鉛懸濁剤)中に含まれる。近年、アスパラギン酸がイソアスパラギン酸に異性化することを阻害するためのマグネシウムイオン(10~120mM)の使用が提案されている(国際公開第2004/039337号パンフレット)。
【0071】
金属イオンがタンパク質において安定性又は活性の増大を付与する2つの例は、ヒトデオキシリボヌクレアーゼ(rhDNase、Pulmozyme(登録商標))及び第VIII因子である。rhDNaseの場合、Ca+2イオン(最大100mM)は、特異的結合部位を通じて、酵素の安定性を増大させた(Chen B,et al.,J Pharm Sci.,88(4):477-82(1999))。実際に、EGTAによって溶液からカルシウムイオンを除去することで、脱アミド及び凝集の増加が生じた。しかしながら、この効果は、Ca+2イオンでのみ観察され;その他の二価のカチオン(Mg+2、Mn+2、及びZn+2)は、rhDNaseを不安定化させることが観察された。同様の効果が、第VIII因子において観察された。Ca+2及びSr+2イオンはタンパク質を安定化させた一方で、Mg+2、Mn+2及びZn+2、Cu+2及びFe+2などのその他のものは酵素を不安定化させた(Fatouros,A.,et al.,Int.J.Pharm.,155,121-131(1997)。第VIII因子を用いた別の研究では、Al+3イオンの存在下で凝集速度の顕著な増加が観察された(Derrick TS,et al.,J.Pharm.Sci.,93(10):2549-57(2004))。著者らは、緩衝剤塩のような他の賦形剤にはAl+3イオンが混入していることが多いことを指摘しており、配合製品中で適切な品質の賦形剤を使用することの必要性を例示している。
【0072】
保存剤
いくつかの実施形態では、医薬組成物はさらに、1種以上の保存剤を含む。保存剤は、同じ容器からの2回以上の取り出しを伴う複数回使用非経口製剤を開発する際に必要となる。その主な機能は、薬物製品の貯蔵寿命又は使用期間にわたって微生物の増殖を阻害し、製品の無菌性を確保することである。一般的に使用される保存剤としては、フェノール、ベンジルアルコール、メタ-クレゾール、メチルパラベン又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンゼトニウムが挙げられる。抗菌保存剤活性を有する化合物の他の例としては、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ヘキサメトニウムクロリドが挙げられる。他の種類の保存剤としては、ブチルアルコール、フェノール、ベンジルアルコールなどの芳香族アルコール;アテコール(atechol)、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノールが挙げられる。保存剤は長い使用の歴史を有するが、保存剤を含むタンパク質製剤の開発は困難であり得る。保存剤は、ほぼ常に、タンパク質に対する不安定化効果(凝集)を有しており、これが複数回用量のタンパク質製剤における使用を制限する主要な要因となっている(Roy S,et al.,J Pharm Sci.,94(2):382-96(2005))。
【0073】
複数回使用の注射ペンの体裁は、保存製剤を含む。例えば、hGHの保存製剤は現在、市場で入手可能である。Norditropin(登録商標)(液体、Novo Nordisk)、Nutropin AQ(登録商標)(液体、Genentech)及びGenotropin(凍結乾燥-デュアルチャンバーカートリッジ、Pharmacia&Upjohn)は、フェノールを含有する一方、Somatrope(登録商標)(Eli Lilly)は、m-クレゾールにより製剤化される。
【0074】
保存処理された剤形の製剤開発中に、いくつかの態様が検討される。保存剤濃度の最適化は、タンパク質安定性を損なうことなく抗微生物有効性を付与する濃度範囲を有する剤形において所与の保存剤を試験することが必要となる。例えば、3つの保存剤が、インターロイキン-1受容体(I型)に対する液体製剤の開発において、示差走査熱量測定(DSC)を用いて成功裏にスクリーニングされた。保存剤は、市販されている製品中で一般に使用されている濃度での安定性に対する影響に基づいて、順位付けされた(Remmele RL Jr.,et al.,Pharm Res.,15(2):200-8(1998))。
【0075】
一部の保存剤は、注射部位反応を引き起こす場合があり、これは、保存剤を選択する際の考慮事項についての別の要素である。Norditropin中の保存剤及び緩衝剤の評価に焦点を当てた臨床試験において、m-クレゾールを含有する製剤と比べて、フェノール及びベンジルアルコールを含有する製剤中では、疼痛の知覚がより低いことが観察された(Kappelgaard A.M.,Horm Res.62 Suppl 3:98-103(2004))。興味深いことに、一般的に使用される保存剤のうち、ベンジルアルコールは麻酔特性を有する(Minogue SC,and Sun DA.,Anesth Analg.,100(3):683-6(2005))。
【0076】
しかしながら、本開示はまた、いずれの保存剤も含まない医薬組成物を企図する。
【0077】
抗原結合タンパク質
「抗原結合タンパク質」は、指定された標的抗原(CD3及び/又はCD38など)に結合する部分を含むタンパク質である。抗原結合タンパク質は、抗原結合部分が、抗原結合タンパク質の抗原への結合を促進する立体構造をとることを可能にする骨格又はフレームワーク部分を含む。例示的な態様では、抗原結合タンパク質は、抗体若しくは免疫グロブリン、又は抗原結合抗体断片、又は抗体タンパク質製品である。
【0078】
用語「抗体」は、インタクトな抗原結合免疫グロブリンを指す。「抗体」は、抗原結合タンパク質の一種である。抗体は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のいずれか1つを含む、IgA、IgD、IgE、IgG、又はIgMの抗体であり得る。様々な実施形態において、インタクトな抗体は、2つの全長重鎖及び2つの全長軽鎖を含む。抗体は可変領域及び定常領域を有する。IgG形式において、可変領域は一般に、約100~110以上のアミノ酸であり、3つの相補性決定領域(CDR)を含み、抗原認識に主に関与し、且つ異なる抗原に結合する他の抗体間で実質的に変動する。可変領域は通常、少なくとも3つの重鎖又は軽鎖のCDRを含み(Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest, Public Health Service N.I.H.,Bethesda,Md.;Chothia and Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901-917;Chothia et al.,1989,Nature 342:877-883も参照のこと)、それらはフレームワーク領域(Kabat et al.,1991によってフレームワーク領域1~4、FR1、FR2、FR3、及びFR4と呼ばれている;Chothia and Lesk,1987,前掲も参照のこと)の内側にある。定常領域は、抗体が免疫系の細胞及び分子を動員することを可能にする。
【0079】
様々な態様において、抗体は、モノクローナル抗体である。ある種の態様では、抗体は、ヒト抗体である。ある種の態様では、抗体(又は他の抗原結合タンパク質)は、キメラであるか又はヒト化されている。用語「キメラ」は、2つ以上の異なる抗体に由来するドメインを含有する抗体を指す。キメラ抗体は、例えば、1つの種に由来する定常ドメイン及び第2の種に由来する可変ドメインを含有することができるか、又はより一般的には、少なくとも2つの種に由来する一続きのアミノ酸配列を含有することができる。「キメラ」及び「ヒト化」の両方が、2つ以上の種に由来する領域を組み合わせる抗原結合タンパク質を指す場合が多い。キメラ抗体はまた、同じ種の中の2つ以上の異なる抗体のドメインを含有することもできる。一実施形態では、キメラ抗体は、CDR移植抗体である。
【0080】
用語「ヒト化」は、抗原結合タンパク質に関して使用される場合、元の供給源の抗体よりも真のヒト抗体に類似した構造及び免疫機能を有するように操作された、非ヒト供給源に由来するCDR領域を少なくとも有する抗原結合タンパク質(例えば、抗体)を指す。例えば、ヒト化は、マウス抗体などの非ヒト抗体に由来するCDRをヒトフレームワーク領域に移植することを伴い得る。一般的に、ヒト化抗体において、CDRを除く抗体の全体は、ヒト起源のポリヌクレオチドによってコードされるか、又はそのCDRの範囲内を除いてそのような抗体と同一である。一部又は全てが非ヒト生物に起源をもつ核酸によってコードされるCDRがヒト抗体可変領域のβシートフレームワークに移植されて抗体を生成し、その特異性は、移植されたCDRによって決定される。そのような抗体の作製は、例えば、国際公開第92/11018号パンフレット、Jones,1986,Nature 321:522-525;及びVerhoeyen et al.,1988,Science 239:1534-1536において記載されており、これらは全て、全体として参照により援用される。対応するドナー残基に対して選択されたアクセプターフレームワーク残基の「復帰変異」が、初期移植コンストラクトにおいて失われる親和性を回復するために利用されることが多い(例えば、全てが全体として参照により援用される、米国特許第5530101号明細書;同第5585089号明細書;同第5693761号明細書;同第5693762号明細書;同第6180370号明細書;同第5859205号明細書;同第5821337号明細書;同第6054297号明細書;及び同第6407213号明細書を参照のこと)。ヒト化抗体は、免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部も最適に含み、これは通常、ヒト免疫グロブリンのものであり、したがって、通常、ヒトFc領域を含むことになる。
【0081】
任意選択により、組成物の抗体は、二重特異性抗体、すなわち、2つの異なる標的(例えば、CD3及び第2の異なる標的)に結合する抗体である。様々な態様において、組成物の抗体は、ヘテロ二量体抗体である。
【0082】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、第1のFcドメイン及び抗CD3 scFvを含む第1の単量体を含むヘテロ二量体抗体を含む。ヘテロ二量体抗体はさらに、抗CD38重鎖可変ドメイン及び第2のFcドメインを含む重鎖定常ドメインを含む第2の単量体を含む。ヘテロ二量体抗体はまた、定常ドメイン及び抗CD38可変軽鎖ドメインを含む軽鎖を含む。単量体の特徴はさらに下に記載される。
【0083】
scFvは、可変重鎖、scFvリンカー、及び可変軽鎖ドメインを含む。任意選択により、可変軽鎖のC末端は、scFvリンカーのN末端に結合され、そのC末端は、可変重鎖のN末端に結合されるが(N-vh-リンカー-vl-C)、配置は切り換えることができる(N-vl-リンカー-vh-C)。したがって、scFvの描写及び説明において、いずれかの向きのscFvが特定的に含まれる。様々な態様において、scFvドメインリンカーは、荷電リンカーである。いくつかの好適なscFvリンカーが使用されてもよく、多くは図面に記載される。荷電scFvリンカーは、第1と第2の単量体の間のpIで分離を促進するために利用され得る。すなわち、正又は負(又は異なる単量体上でscFvを使用する骨格の場合、両方)のいずれかの荷電scFvリンカーを組み込むことによって、荷電リンカーを含む単量体が、Fcドメイン中にさらなる電荷を生じさせることなくpIを変化させることを可能にする。
【0084】
scFvは、ドメインリンカーを使用してFcドメインのN末端に共有結合される。「ドメインリンカー」は、本明細書に概説されるいずれかの2つのドメインをともに連結する。必要があれば、荷電ドメインリンカーが使用され得る。荷電ドメインリンカーはまた、例えば、本開示の単量体のpI分離を増加させることができ、したがって、図面に含まれるものは、リンカーが利用される本明細書のいずれの実施形態において使用することができる。
【0085】
リンカーペプチドは、次のアミノ酸残基を主に含み得る:Gly、Ser、Ala、又はThr。リンカーペプチドは、2つの分子を、それらが互いに対して妥当な立体構造をとり、その結果、所望の活性を保持するように連結するのに十分である長さを有するべきである。一実施形態では、リンカーは、約1~50アミノ酸長、好ましくは、約1~30アミノ酸長である。一実施形態では、1~20アミノ酸長のリンカーを、いくつかの実施形態で用途を見出す約5~約10個のアミノ酸とともに使用してもよい。有用なリンカーとしては、グリシン-セリン重合体、例えば、(GS)n、(GSGGS)n(配列番号332)、(GGGGS)n(配列番号333)、及び(GGGS)n(配列番号334)(nは、少なくとも1(及び通常3~4)の整数である)、グリシン-アラニン重合体、アラニン-セリン重合体、並びに他の可動性リンカーが挙げられる。或いは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、又はポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体を含むがこれらに限定されない様々な非タンパク質性の重合体が、リンカーとして用途を見出され得る。
【0086】
他のリンカー配列は、CL/CH1ドメインの任意の長さの任意の配列を含んでもよいが、CL/CH1ドメインの全ての残基ではない;例えば、CL/CH1ドメインの最初の5~12個のアミノ酸残基。リンカーは、免疫グロブリン軽鎖、例えば、Cκ又はCλに由来し得る。リンカーは、例えば、Cγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4、Cα1、Cα2、Cδ、Cε、及びCμを含む任意のアイソタイプの免疫グロブリン重鎖に由来し得る。リンカー配列はまた、Ig様タンパク質などの他のタンパク質(例えば、TCR、FcR、KIR)、ヒンジ領域由来の配列、及び他のタンパク質由来の他の天然配列に由来してもよい。
【0087】
抗CD3 scFvは、(i)配列番号15に記載されるvlCDR1、配列番号16に記載されるvlCDR2、及び配列番号17に記載されるvlCDR3を含むscFv可変軽鎖ドメイン、並びに(ii)配列番号11に記載されるvhCDR1、配列番号12に記載されるvhCDR2、及び配列番号13に記載されるvhCDR3を含むscFv可変重鎖ドメインを含む。任意選択により、抗CD3 scFvは、配列番号10に記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含む可変重鎖ドメインを含む。また任意選択により、抗CD3 scFvは、配列番号14に記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインを含む。これに関して、抗CD3 scFvは、様々な実施形態において、配列番号10の可変重鎖ドメイン及び配列番号14の可変軽鎖ドメインを含む。任意選択により、可変重鎖及び可変軽鎖ドメインは、配列GKPGSGKPGSGKPGSGKPGS(配列番号158)を含むscFvドメインリンカーによって連結される。これに関して、抗CD3 scFvは、様々な実施形態において、配列番号18(抗体AのscFv)に記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含む。様々な態様において、参照配列に対して100%未満の同一性パーセントを生じる配列変異は、CDR配列の外部の改変を表す。様々な態様において、scFvは、抗CD3_H1.32_L1.47(抗体Aに相当する)に属するものとして本明細書に記載される配列を含む。
【0088】
「Fc」又は「Fc領域」又は「Fcドメイン」は、最初の定常領域免疫グロブリンドメイン、及び場合によりヒンジの一部を除く抗体の定常領域を含むポリペプチドを指す。したがって、「Fcドメイン」は、IgA、IgD、及びIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメインを指し、IgE及びIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメインを指し、且つこれらのドメインに対する可動性ヒンジN末端を指す。IgA及びIgMに関して、Fcは、J鎖を含んでもよい。IgGに関して、Fcドメインは、免疫グロブリンドメインCγ2及びCγ3(Cγ2及びCγ3)並びにCγ1(Cγ1)とCγ2(Cγ2)の間の下位のヒンジ領域を含む。ヘテロ二量体抗体は、好ましくはIgG抗体である(IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含むがこれらに限定されない、いくつかのサブクラスを含む)。Fc領域の境界は異なる場合があるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、残基C226又はP230からそのカルボキシル末端までを含むと定義され、付番は、Kabatに記載されるようなEUインデックスに従う。いくつかの実施形態では、アミノ酸改変がFc領域に対してなされて、例えば、1つ以上のFcγR受容体又はFcRn受容体への結合を変化させる。
【0089】
様々な態様において、第1の単量体(すなわち、第1のFcドメイン及び抗CD3 scFv)は、配列番号335に記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一(例えば、配列番号335(抗体Aに相当する)に記載されるアミノ酸配列と91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含む。
【0090】
ヘテロ二量体抗体はさらに、任意選択により、i)抗CD38重鎖可変ドメイン及びii)第2のFcドメインを含む重鎖定常ドメインを含む第2の単量体を含む。抗CD38重鎖可変ドメインは、以下のCDR配列を含む:配列番号65に記載される可変重鎖(vh)CDR1、配列番号66に記載されるvhCDR2、及び配列番号67に記載されるvhCDR3。任意選択により、抗CD38重鎖可変ドメインは、配列番号64に記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一(例えば、配列番号64に記載されるアミノ酸配列と91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含む。様々な態様において、第2の単量体(すなわち、抗38重鎖可変ドメイン及び第2のFcドメインを含む重鎖定常ドメイン)は、配列番号82に記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一(例えば、配列番号82(抗体Aに相当する)に記載されるアミノ酸配列と91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含む。
【0091】
様々な態様において、ヘテロ二量体抗体はさらに、定常ドメイン及び抗CD38可変軽鎖(vl)ドメインを含む軽鎖を含む。抗CD38可変軽鎖ドメインは、以下のCDRを含む:配列番号69に記載されるvlCDR1、配列番号70に記載されるvlCDR2、及び配列番号71に記載されるvlCDR3。任意選択により、抗CD38可変軽鎖ドメインは、配列番号68に記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一(例えば、配列番号68(抗体Aに相当する)に記載されるアミノ酸配列と91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、軽鎖(定常ドメイン及び抗CD38可変軽鎖ドメインを含む)は、配列番号84に記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一(例えば、配列番号84(抗体Aに相当する)に記載されるアミノ酸配列と91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含む。
【0092】
好ましい実施形態では、ヘテロ二量体抗体は、抗体Aであり、且つ配列番号14のアミノ酸配列を含む抗CD3可変軽鎖ドメイン及び配列番号10のアミノ酸配列を含む抗CD3可変重鎖ドメインを含む抗CD3 scFvを含む第1の単量体、配列番号64のアミノ酸配列を含む抗CD38可変重鎖ドメインを含む第2の単量体、並びに配列番号68のアミノ酸配列を含む可変軽鎖ドメインを含む軽鎖を含む。例えば、一実施形態では、ヘテロ二量体抗体は、配列番号335のアミノ酸配列を含む第1の単量体、配列番号82のアミノ酸配列を含む第2の単量体、並びに配列番号84のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、CD3及びSTEAP1に結合するヘテロ二量体抗体を含む。STEAP1は、3つの細胞外ループ及び2つの細胞内ループをもたらす6つの膜貫通ドメインを含む339アミノ酸のタンパク質である。ヒトSTEAP1のアミノ酸配列は、配列番号356として本明細書に記載される。細胞外ループの推定される位置は、アミノ酸92~118(細胞外ループ1)、アミノ酸185~217(細胞外ループ2)、及びアミノ酸279~290(細胞外ループ3)である。STEAP1は、正常組織と比較して前立腺癌において差次的に発現され、骨及びリンパ節前立腺癌転移巣における発現の増加が、原発性前立腺癌試料と比較して観察された。STEAP1は、例えば、T細胞依存性の細胞傷害活性又は前立腺癌細胞のリダイレクト溶解を誘発するための二重特異性抗STEAP1/抗CD3 T細胞リクルート抗体などの、診断及び抗体に基づく治療薬のための理想的な標的となる。本開示の抗原結合タンパク質は任意選択により、第2の細胞外ループの外側の領域でSTEAP1に結合する。抗原結合タンパク質は、少なくとも1つの実施形態において、アミノ酸92~118(細胞外ループ1)及び/又はアミノ酸279~290(細胞外ループ3)内にあるSTEAP1の領域に結合する。また、任意選択により、抗原結合タンパク質は、STEAP2(UniProtKB No.Q8NFT2;配列番号177)に結合しない。本開示は、本明細書に記載される形式、任意選択により
図1Aの「ボトルオープナー」又は
図1Bの中央-scFv形式(「XmAb
2+1」形式とも呼ばれる)のいずれかでSTEAP1及びCD3に結合する抗原結合タンパク質を含む組成物を提供する。
【0094】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、第1のFcドメイン及び抗CD3 scFvを含む第1の単量体並びにさらに抗STEAP1重鎖可変ドメイン及び第2のFcドメインを含む重鎖定常領域を含む第2の単量体を含むヘテロ二量体抗体を含む。ヘテロ二量体抗体はまた、定常ドメイン及び抗STEAP1可変軽鎖ドメインを含む軽鎖を含む。骨格を成す単量体の例示的な態様は、上に記載される。この実施形態において、ヘテロ二量体抗体はさらに、i)抗STEAP1重鎖可変ドメイン及びii)第2のFcドメインを含む重鎖定常ドメインを含む第2の単量体を含む。抗STEAP1重鎖可変ドメインは、任意選択により、配列番号360に記載される可変重鎖(vh)CDR1、配列番号361又は配列番号363に記載されるvhCDR2、及び配列番号362に記載されるvhCDR3を含む。軽鎖の抗STEAP1可変軽鎖ドメインは、配列番号357に記載されるvlCDR1、配列番号358に記載されるvlCDR2及び配列番号359に記載されるvlCDR3を含む。或いは、抗STEAP1可変重鎖ドメインは、配列番号368に記載されるvhCDR1、配列番号369に記載されるvhCDR2、及び配列番号370に記載されるvhCDR3を含み;且つ可変軽鎖ドメインは、配列番号371に記載されるvlCDR1、配列番号372に記載されるvlCDR2、及び配列番号373に記載されるvlCDR3を含む。
【0095】
任意選択により、抗STEAP1重鎖可変ドメインは、配列番号377又は配列番号379に記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一(例えば、配列番号377又は配列番号379に記載されるアミノ酸配列と91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含む。任意選択により、抗STEAP1可変軽鎖ドメインは、配列番号378に記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一(例えば、配列番号378に記載されるアミノ酸配列と91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、抗STEAP1可変重鎖ドメインは、配列番号380又は配列番号379を含み、抗STEAP1可変軽鎖ドメインは、配列番号378を含む。
【0096】
また、任意選択により、抗STEAP1重鎖可変ドメインは、配列番号380に記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一(例えば、配列番号380に記載されるアミノ酸配列と91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含む。任意選択により、抗STEAP1可変軽鎖ドメインは、配列番号381に記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一(例えば、配列番号381に記載されるアミノ酸配列と91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、抗STEAP1可変重鎖ドメインは、配列番号380を含み、抗STEAP1可変軽鎖ドメインは、配列番号381を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質が、CD3及びSTEAP1に結合するヘテロ二量体抗体であり、且つCD3結合ドメイン(任意選択により、上に記載されるとおりのscFv)が、配列番号383に記載されるvhCDR1、配列番号384に記載されるvhCDR2、及び配列番号385に記載されるvhCDR3を含む重鎖CDRを含む可変重鎖ドメイン、並びに配列番号387に記載されるvlCDR1、配列番号388に記載されるvlCDR2、及び配列番号389に記載されるvlCDR3を含む軽鎖CDRを含む可変軽鎖ドメインを含む実施形態などがある。例えば、本開示は、配列番号382と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含む抗CD3可変重鎖ドメイン及び/又は配列番号386と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含む抗CD3可変軽鎖ドメインを含む多重特異性(例えば、二重特異性)コンストラクトを含む組成物を提供する。様々な態様において、ヘテロ二量体抗体は、配列番号390を含む抗CD3 scFvを含む。scFvは、上により詳細に記載され、且つ上記のscFvの特徴もまた本明細書で適用される。
【0098】
様々な実施形態において、抗原結合タンパク質は、
図1Bに示される中央-scFv又は「XmAb
2+1」形式のヘテロ二量体抗体である。その形式は、第3の抗原結合ドメインを形成する挿入されたscFvドメインの使用に依拠し、ここで、2つの単量体のFab部分は1つの標的に結合し、且つ「追加の」scFvドメインは別のもう1つの標的に結合する。scFvドメインは、単量体の1つのFcドメインとCH1-Fv領域の間に挿入され、それにより第3の抗原結合ドメインをもたらす。この実施形態において、一方の単量体は、第1の可変重鎖ドメイン、CH1ドメイン(及び任意選択のリンカー/ヒンジ)及びFcドメインを含む第1の重鎖を、scFv可変軽鎖ドメイン、scFvリンカー及びscFv可変重鎖ドメインを含むscFvとともに含む。scFvは、重鎖定常ドメインのCH1ドメインのC末端と第1のFcドメインのN末端の間で任意選択のドメインリンカーを使用して共有結合される(VH1-CH1-[任意選択のドメインリンカー]-VH2-scFvリンカー-VL2-[ヒンジを含む任意選択のドメインリンカー]-CH2-CH3、又はscFvに関して反対の向き、VH1-CH1-[任意選択のドメインリンカー]-VL2-scFvリンカー-VH2-[ヒンジを含む任意選択のドメインリンカー]-CH2-CH3)。いくつかの実施形態では、第1の単量体は、VH1-CH1-ドメインリンカー-VH2-scFvリンカー-VL2ドメインリンカー-CH2-CH3である。他方の単量体は、標準的なFab側(すなわち、VH1-CH1-ドメインリンカー(例えば、ヒンジ)-CH2-CH3)である。この実施形態はさらに、標的に結合する2つの同一のFabを形成する重鎖に関連する可変軽鎖ドメイン及び定常軽鎖ドメインを含む共通の軽鎖を利用する。本明細書の実施形態の多くに関して、これらのコンストラクトは、本明細書及び国際公開第2017/21870号パンフレットにおいて所望され記載される非対称変異体、pI変異体、切断変異体、追加Fc変異体などを含む。
【0099】
いくつかの態様では、抗原結合タンパク質は、CD3及びSTEAP1に結合する「XmAb2+1」形式のヘテロ二量体抗体であり、且つCD3結合ドメイン(任意選択により、上に記載されるとおりのscFv)は、配列番号383に記載されるvhCDR1、配列番号384に記載されるvhCDR2、及び配列番号385に記載されるvhCDR3を含む重鎖CDRを含む可変重鎖ドメイン、並びに配列番号387に記載されるvlCDR1、配列番号388に記載されるvlCDR2、及び配列番号389に記載されるvlCDR3を含む軽鎖CDRを含む可変軽鎖ドメインを含む。例えば、コンストラクトは、任意選択により、配列番号380と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含む抗CD3可変重鎖ドメイン及び/又は配列番号381と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含む抗CD3可変軽鎖ドメインを含む。様々な態様において、scFvリンカーは、配列番号391のアミノ酸配列を含む。様々な態様において、ヘテロ二量体抗体は、配列番号390を含む抗CD3 scFvを含む。
【0100】
様々な態様において、抗原結合タンパク質は、STEAP1に結合する2つのFabを含むXmAb2+1形式ヘテロ二量体抗体である。これに関して、いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体抗体の第1の可変重鎖ドメイン及び第2の可変重鎖ドメインは、配列番号360に記載されるvhCDR1、配列番号361又は配列番号363に記載されるvhCDR2、及び配列番号362に記載されるvhCDR3を含み;且つ可変軽鎖ドメインは、配列番号357に記載されるvlCDR1、配列番号358に記載されるvlCDR2、及び配列番号359に記載されるvlCDR3を含む。或いは、第1の可変重鎖ドメイン及び第2の可変重鎖ドメインは、配列番号368に記載されるvhCDR1、配列番号369に記載されるvhCDR2、及び配列番号370に記載されるvhCDR3を含み;且つ可変軽鎖ドメインは、配列番号371に記載されるvlCDR1、配列番号372に記載されるvlCDR2、及び配列番号373に記載されるvlCDR3を含む。好ましい実施形態では、第1の可変重鎖ドメイン及び第2の可変重鎖ドメインは、配列番号377(抗体Bに相当する)又は配列番号379と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含み、且つ/又は可変軽鎖ドメインは、配列番号378(抗体Bに相当する)と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含む。或いは、第1の可変重鎖ドメイン及び第2の可変重鎖ドメインは、配列番号380と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含み、且つ/又は可変軽鎖ドメインは、配列番号381と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含む。上記のとおり、参照配列と比較して100%未満の配列同一性をもたらす本明細書に記載されるいずれかの可変ドメイン配列(又は全長単量体配列)における変異は、好ましくはCDR領域の外部に存在する。
【0101】
したがって、本開示は、(a)1)第1の可変重鎖ドメイン;2)第1のCH1ドメイン及び第1のFcドメインを含む第1の定常重鎖;並びに3)ヒトCD3に結合するscFvを含む第1の重鎖を含む第1の単量体を含むヘテロ二量体抗体を含む医薬組成物を提供する。scFvは、(i)配列番号387に記載されるvlCDR1、配列番号388に記載されるvlCDR2、及び配列番号389に記載されるvlCDR3を含むscFv可変軽鎖ドメイン、(ii)scFvリンカー、並びに(iii)配列番号383に記載されるvhCDR1、配列番号384に記載されるvhCDR2、及び配列番号385に記載されるvhCDR3を含むscFv可変重鎖ドメインを含む。scFvは、前記CH1ドメインのC末端と前記第1のFcドメインのN末端の間でドメインリンカーを使用して共有結合される。ヘテロ二量体抗体はさらに、b)第2の可変重鎖ドメイン及び第2のFcドメインを含む第2の定常重鎖を含む第2の重鎖を含む第2の単量体並びにc)可変軽鎖ドメイン及び定常軽鎖ドメインを含む共通の軽鎖を含み;第1の可変重鎖ドメイン及び可変軽鎖ドメインはヒトSTEAP1に結合し、且つ第2の可変重鎖ドメイン及び可変軽鎖ドメインはヒトSTEAP1に結合する。いくつかの態様では、第1の可変重鎖ドメイン及び第2の可変重鎖ドメインは、配列番号360に記載されるvhCDR1、配列番号361又は配列番号363に記載されるvhCDR2、及び配列番号362に記載されるvhCDR3を含む重鎖CDRを含む。可変軽鎖ドメインは、任意選択により、配列番号357に記載されるvlCDR1、配列番号358に記載されるvlCDR2、及び配列番号359に記載されるvlCDR3を含む軽鎖CDRを含む。或いは、第1の可変重鎖ドメイン及び第2の可変重鎖ドメインは、配列番号368に記載されるvhCDR1、配列番号369に記載されるvhCDR2、及び配列番号370に記載されるvhCDR3を含む重鎖CDRを含む。可変軽鎖ドメインは、任意選択により、配列番号371に記載されるvlCDR1、配列番号372に記載されるvlCDR2、及び配列番号373に記載されるvlCDR3を含む軽鎖CDRを含む。任意選択により、第1の可変重鎖ドメイン及び第2の可変重鎖ドメインは、配列番号377(抗体Bに相当する)又は379と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含み、且つ/又は可変軽鎖ドメインは、配列番号378(抗体Bに相当する)と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含む。scFvは、任意選択により、それぞれ配列番号382及び配列番号386と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を有する可変重鎖領域及び可変軽鎖領域を含み、且つscFvリンカーは、任意選択により、配列番号391を含む。様々な実施形態において、scFvは、配列番号390の配列を含む。
【0102】
本開示の様々な態様において、抗CD3/抗STEAP1抗原結合タンパク質は、配列番号366又は367と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含む第1の単量体、配列番号365と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含む第2の単量体、及び配列番号364と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含む共通の軽鎖を含むXmAb2+1形式のヘテロ二量体抗体である。いくつかの実施形態では、抗CD3/抗STEAP1抗原結合タンパク質は、配列番号366と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含む第1の単量体、配列番号365と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含む第2の単量体、及び配列番号364(抗体Bに相当する)と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含む共通の軽鎖を含むXmAb2+1形式のヘテロ二量体抗体である。或いは、抗CD3/抗STEAP1抗原結合タンパク質は、配列番号376と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含む第1の単量体、配列番号375と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含む第2の単量体、及び配列番号374と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一)なアミノ酸配列を含む共通の軽鎖を含むXmAb2+1形式のヘテロ二量体抗体である。
【0103】
様々な態様において、抗原結合タンパク質は、VH1-CH1-[ドメインリンカー]-VH2-scFvリンカー-VL2-[ドメインリンカー(任意選択によりヒンジを含む)]-CH2-CH3を含む第1の重鎖;VH1-CH1-ドメインリンカー-CH2-CH3を含む第2の重鎖;及びVL1を含む共通の軽鎖を含み;VH1及びVL1はSTEAP1に結合し、且つVH2及びVL2はCD3に結合する。この形式において、VH2は、任意選択により、配列番号383(CDR1)、配列番号384(CDR2)、及び配列番号385(CDR3)のCDR配列を含むが、VL2は、配列番号387(CDR1)、配列番号388(CDR2)、及び配列番号389(CDR3)のCDR配列を含む。VH1は、配列番号360(CDR1)、配列番号361又は363(CDR2)、及び配列番号362(CDR3)のCDR配列を含み;且つVL1は、配列番号357(CDR1)、配列番号358(CDR2)、及び配列番号359(CDR3)のCDR配列を含む。或いは、VH1は、配列番号368(CDR1)、配列番号369(CDR2)、及び配列番号370(CDR3)のCDR配列を含み;且つVL1は、配列番号371(CDR1)、配列番号372(CDR2)、及び配列番号373(CDR3)のCDR配列を含む。任意選択により、抗原結合タンパク質は、E233P、delL234、L235V、G236A、S267K、r292c、n297g、v302c、E357Q、及びS364K(EU付番、小文字は本明細書でさらに記載されるSEFL2置換を参照する)を含むがこれらに限定されない第1の重鎖における改変を含み、且つ第2の重鎖は、N208D、E233P、delL234、L235V、G236A、S267K、r292c Q295E、n297g、v302c、L368D、K370S、N384D、Q418E、及びN421D(EU付番、小文字は本明細書でさらに記載されるSEFL2置換を参照する)を含むがこれらに限定されない改変を含む。この実施形態の文脈における使用のためのリンカーは、任意選択により、GKPGSGKPGSGKPGSGKPGS(配列番号391)である。
【0104】
中央scFv形式のFcドメインは、任意選択により、非対称変異体(例えば、S364K/E357Q:L368D/K370S;L368D/K370S:S364K;L368E/K370S:S364K;T411T/E360E/Q362E:D401K;L368D/K370S:S364K/E357L、K370S:S364K/E357Q、T366S/L368A/Y407V:T366W及びT366S/L368A/Y407V/Y349C:T366W/S354Cからなる群から選択される)、任意選択により切断変異体、任意選択により荷電scFvリンカーを含み、且つ重鎖はpI変異体を含む。いくつかの実施形態では、中央scFv形式は、非対称変異体、pI変異体、及び切断変異体を含む。したがって、いくつかの実施形態は、a)非対称変異体S364K/E357Q、切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267K、及び軽鎖の第1の可変軽鎖ドメインとともに第1の標的に結合するFvを構成する第1の可変重鎖ドメイン、並びに第2の可変重鎖ドメインを含む第1の単量体;b)非対称変異体L368D/K370S、pI変異体N208D/Q295E/N384D/Q418E/N421D、切断変異体E233P/L234V/L235A/G236del/S267K、及び第1の可変軽鎖ドメインとともに第1の標的に結合するFvを構成する第1の可変重鎖ドメイン、並びに第2の可変重鎖とともに第2の標的に結合するFvを形成する第2の可変軽鎖を含む第2の単量体;並びにc)第1の可変軽鎖ドメイン及び定常軽鎖ドメインを含む軽鎖を含む形式を含む。
【0105】
多重特異性抗原結合タンパク質の異なる結合領域は、独立して、10-4M以下、10-5M以下、10-6M以下、10-7M以下、10-8M以下、10-9M以下、10-10M以下、10-11M以下、又は10-12M以下、又は10-13M以下(例えば、10-7M~10-12M)のそれらの対応する抗原(例えば、CD3及びSTEAP1又はCD3及びCD38)に関するKDを示し、ここで、KDは、特異的な抗体-抗原相互作用の解離速度を指す。STEAP1結合領域(又はCD38結合領域)は、例えば、CD3結合領域がCD3に結合する際と同じ親和性を有してSTEAP1(又はCD38)に結合する必要はない。
【0106】
いくつかの実施形態では、製剤は、約50μg~約200mg(又は約500μg~約150mg、又は約50mg~約200mg、又は約50mg~約150mg、又は約50mg~約100mg、又は約50mg~約75mg)の範囲の量で本明細書に記載される抗原結合タンパク質(例えば、抗体)を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、約50μg、約100μg、約150μg、約200μg、約250μg、約300μg、約350μg、約400μg、約450μg、約500μg、約550μg、約600μg、約650μg、約700μg、約750μg、約800μg、約850μg、約900μg、約950μg、約1mg、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95、mg、約100mg、約105mg、約110mg、約115mg、約120mg、約125mg、約130mg、約135mg、約140mg、約145mg、約150mg、約155mg、約160mg、約165mg、約170mg、約175mg、約180mg、約185mg、約190mg、約195mg又は約200mgの量で抗体を含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、製剤は、約0.1~約20mg/mL(又は約0.5~約10mg/mL、又は約1~約10mg/mL又は約1~約20mg/mL、又は約10~約20mg/mL)の範囲の濃度で抗原結合タンパク質(例えば、抗体)を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、約0.1mg/mL、約0.5mg/mL、約1mg/mL、約2mg/mL、約3mg/mL、約4mg/mL、約5mg/mL、約6mg/mL、約7mg/mL、約8mg/mL、約9mg/mL、約10mg/mL、約11mg/mL、約12mg/mL、約13mg/mL、約14mg/mL、約15mg/mL、約16mg/mL、約17mg/mL、約18mg/mL、約19mg/mL、又は約20mg/mLの濃度で抗原結合タンパク質(例えば、本明細書に記載されるヘテロ二量体抗体のいずれかなどの抗体)を含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、製剤は、約0.1~約8mg/mL(又は約0.5~約5mg/mL又は約1~約5mg/mL、又は約3~約6mg/mL)の範囲の濃度で抗原結合タンパク質(例えば、抗体)を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、約0.1mg/mL、約0.5mg/mL、約1mg/mL、約2mg/mL、約3mg/mL、約4mg/mL、約5mg/mL、約6mg/mL、約7mg/mL、又は約8mg/mLの濃度で抗原結合タンパク質(例えば、本明細書に記載されるヘテロ二量体抗体のいずれかなどの抗体)を含む。
【0109】
ヘテロ二量体抗体形式はさらに、全体として及び特に図面及び図面の説明文に関して参照により本明細書に援用される、国際公開第2017/218707号パンフレットにおいて記載される。好ましい態様では、ヘテロ二量体抗体は、
図1Aにおいて「ボトルオープナー」と呼ばれる構造をとる。「ボトルオープナー」形式の1つ重鎖はscFvを含有し、他の重鎖は、従来の重鎖及び軽鎖を含む「通常の」Fab形式である。2つの重鎖は、ヘテロ二量体抗体の形成を促進する定常領域(例えば、Fcドメイン、CH1ドメイン及び/又はヒンジ領域)におけるアミノ酸変異体の使用によって結びつけられる。「ボトルオープナー」形式にはいくつかの明確な利点がある。2つのscFvコンストラクトに依拠する抗体類似体は、安定性及び凝集の問題を有する場合が多く、これは、「通常の」重鎖と軽鎖の対形成の追加により本開示において軽減される。加えて、2つの重鎖及び2つの軽鎖に依拠する形式とは対照的に、重鎖と軽鎖の不適切な対形成(例えば、軽鎖2と対形成する重鎖1など)による問題はない。
【0110】
ヘテロ二量体抗体は、様々な態様において、野生型抗体ドメイン配列と比較して、ヘテロ二量体抗体形成を促進し(すなわち、ホモ二量体化を減少させ)、抗体の機能性を調整するなどの改変を含む。改変は一般に、Fcドメインに集中する(これが要求されるわけではないが)。改変は、天然配列に対する置換、欠失、又は挿入のアミノ酸位置によって参照される。例えば、N434S又は434Sは、親Fcポリペプチドに対する434位でのセリンのFcドメイン置換であり、付番はEUインデックスに従う。同様に、M428L/N434Sは、親Fcポリペプチドに対して置換M428L及びN434Sを有するFc改変を定義する。野生型アミノ酸の同一性は、特定されていなくてもよく、その場合、前述の変異体は、428L/434Sと称される。置換がもたらされる順序は任意であり、すなわち、例えば、428L/434Sは、M428L/N434Sと同じであるなどである。抗体に関して検討される全ての位置に関して、特に断りのない限り、アミノ酸位置の付番はEUインデックスに従う。EUインデックス又はKabat若しくはEU付番スキームのようなEUインデックスは、EU抗体の付番を指す(参照により全体として本明細書に援用される、Edelman et al.,1969,Proc Natl Acad Sci USA 63:78-85)。改変は、付加、欠失、又は置換であり得る。置換は、天然に存在するアミノ酸、及び場合により合成アミノ酸を含んでもよい。例としては、全てが全体として参照により援用される米国特許第6,586,207号明細書;米国特許出願公開第2004-0214988A1号明細書;国際公開第98/48032号パンフレット;国際公開第03/073238号パンフレット;国際公開第05/35727A2号パンフレット;国際公開第05/74524A2号パンフレット;国際公開第17/218707号パンフレット;J.W.Chin et al.,(2002),Journal of the American Chemical Society 124:9026-9027;J.W.Chin,&P.G.Schultz,(2002),ChemBioChem 11:1135-1137;J.W.Chin,et al.,(2002),PICAS United States of America 99:11020-11024;及びL.Wang,&P.G.Schultz,(2002),Chem.1-10が挙げられる。
【0111】
ヘテロ二量体タンパク質を生成するために使用され得るいくつかの機構が存在する。ヘテロ二量体の生成をもたらすアミノ酸変異体は、「ヘテロ二量体化変異体」と呼ばれる。ヘテロ二量体化変異体は、立体変異体(例えば、下記の「ノブ・アンド・ホール」又は「非対称」変異体及び下記の「電荷対」変異体)並びにヘテロ二量体からのホモ二量体の精製を可能にする「pI変異体」を含み得る。全体として及び具体的には「ヘテロ二量体化変異体」の議論について参照により本明細書に援用される国際公開第2014/145806号パンフレット及び国際公開第2017/218707号パンフレットに一般に記載されるとおり、ヘテロ二量体化についての有用な機構には、「ノブ・アンド・ホール」(「KIH」;本明細書において「非対称」変異体と呼ばれる場合がある)、国際公開第2014/145806号パンフレットに記載される「静電ステアリング」又は「電荷対」、国際公開第2014/145806号パンフレットに記載されるpI変異体、及び国際公開第2014/145806号パンフレット及び本明細書に概説される一般的な追加Fc変異体が含まれる。
【0112】
ヘテロ二量体抗体の精製を容易にすることができるいくつかの基本的な機構が存在する;あるものはpI変異体の使用に依拠し、その結果、各単量体が異なるpIを有し、それにより、A-A、A-B、及びB-B二量体タンパク質の等電点精製が可能になる。或いは、「ボトルオープナー」形式などの一部の骨格形式は、サイズに基づく分離も可能にする。ヘテロ二量体の形成がホモ二量体を上回るように「非対称にする」ことも可能である。したがって、立体二量体化変異体及びpI又は電荷対変異体の組合せは、本発明において、特定の用途を見出す。
【0113】
A.pI(等電点)変異体
pI変異体に関して、単量体ポリペプチドの一方又は両方にアミノ酸改変を導入することができ;すなわち、単量体の一方(単純化のために本明細書では「単量体A」と呼ぶ)のpIを、単量体Bから離れるように操作することができるか、又は単量体A及びBの両方を変えることができ、単量体AのpIが上昇し、単量体BのpIが低下する。一方又は両方の単量体のpI変化は、荷電残基を取り除くか、又は付加すること(例えば、中性アミノ酸を正又は負に荷電したアミノ酸残基によって置き換える、例えば、グリシンをグルタミン酸に置き換える)、荷電した残基を正又は負の電荷から反対の電荷に変える(アスパラギン酸からリジンに)こと、又は荷電した残基を中性残基に変える(例えば、電荷の消失;リジンからセリンに)ことによって行われ得る。いくつかのこれらの変異体が図面において示される。これらの改変は、ヘテロ二量体がホモ二量体から分離できるように、単量体の少なくとも1つにおいてpIの十分な変化を生じさせる。当業者によって理解されるとおり、これは、「野生型」重鎖定常領域及びそのpIを上げるか又は下げるように(wtA-+B又はwtA--B)操作されている変異領域を用いること、又は一方の領域を上げ、他方の領域を下げる(A+-B-又はA-B+)ことによって達成され得る。
【0114】
したがって、様々な態様において、ヘテロ二量体抗体は、二量体タンパク質の両方でなければ少なくとも一方の単量体の等電点(pI)を変えて、アミノ酸置換(「pI変異体」又は「pI置換」)を一方又は両方の単量体に組み込むことによって「pI抗体」を形成する定常領域における1つ以上の改変を含む。2つのホモ二量体からのヘテロ二量体の分離は、2つの単量体のpIが、わずか0.1pH単位でも異なれば達成することができ、0.2、0.3、0.4、及び0.5以上の差は全て好適である。
【0115】
良好な分離を得るために各々又は両方の単量体に含まれることになるpI変異体の数は、成分の出発pI、例えば、抗CD3 scFv及び抗CD38 Fabの出発pIに部分的に依存することになる。すなわち、どの単量体を操作するか、又はどの「方向」(例えば、正側若しくは負側)にするかを決定するために、2つのドメインのFv配列が計算され、そこから決定がなされる。異なるFvは、利用され得る異なる出発pIを有することになる。いくつかの実施形態では、pIの変化は、米国特許出願公開第2014/0370013号明細書の
図19におけるチャートを使用して、変異体重鎖定常ドメインに基づいて計算される。或いは、各単量体のpIが比較され得る。一般に、pIを操作して、少なくとも約0.1logの各単量体の総pI差をもたらすが、0.2~0.5が好ましい。
【0116】
pI変異体の好ましい組合せは、
図10において示される。これらの変化はIgG1に対して示されるが、アイソタイプハイブリッドだけでなく全てのアイソタイプをこの方法で改変することができる。重鎖定常ドメインがIgG2~4である場合、R133E及びR133Qもまた使用され得る。
【0117】
一実施形態では、Fab単量体(負側)は、置換208D/295E/384D/418E/421D(N208D/Q295E/N384D/Q418E/N421D(ヒトIgG1に対して)を含み、且つscFv単量体(正側)は、(GKPGS)4を含む正に荷電したscFvリンカーを含む。
【0118】
pIを調整するための改変は、軽鎖においてもなされ得る。軽鎖のpIを下げるためのアミノ酸置換としては、K126E、K126Q、K145E、K145Q、N152D、S156E、K169E、S202E、K207E及び軽鎖のC末端でのペプチドDEDEの付加が挙げられるが、これらに限定されない。定常ラムダ軽鎖に基づくこのカテゴリにおける変化は、R108Q、Q124E、K126Q、N138D、K145T及びQ199Eでの1つ以上の置換を含む。加えて、軽鎖のpIを上げてもよい。
【0119】
B.非対称/立体変異体
ヘテロ二量体化非対称変異体のセットのいくつかの好適な対がある。これらの変異体は、「セット」の「対」でもたらされる。すなわち、対の一方のセットは、第1の単量体に組み込まれ、対のもう一方のセットは、第2の単量体に組み込まれる。これらのセットは、一方の単量体上の残基ともう一方の単量体上の残基との間の1対1の対応を有する「ノブ・イン・ホール」変異体として必ずしもふるまわず;すなわち、これらのセットの対は、ヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二量体形成を妨げる2つの単量体の間での界面を形成し、生物学的条件下で自発的に形成するヘテロ二量体のパーセンテージが、予想された50%よりもむしろ90%を超えることを可能にする(25%のホモ二量体 A/A:50%のヘテロ二量体 A/B:25%のホモ二量体 B/B)ことに留意するべきである。
【0120】
いくつかの実施形態では、ヘテロ二量体の形成は、立体変異体の追加によって促進される。すなわち、各重鎖においてアミノ酸を変えることによって、異なる重鎖が、同じFcアミノ酸配列を有するホモ二量体を形成するよりも、ヘテロ二量体構造を形成するように会合する可能性が高くなる。立体変異体の好適な例は、
図9において含まれる。
【0121】
1つの機構は、当技術分野において、「ノブ・アンド・ホール」と一般に称されるものであり、立体的な影響を生じさせて、ヘテロ二量体形成に有利に働き、ホモ二量体形成を抑制するアミノ酸操作を指し、任意選択により使用されてもよい。これはさらに、全てがそれらの全体として参照により援用される米国特許出願公開第20130205756号明細書、Ridgway et al.,Protein Engineering 9(7):617(1996);Atwell et al.,J.Mol.Biol.1997 270:26;米国特許第8,216,805号明細書において記載される。図面は、「ノブ・アンド・ホール」に依拠するいくつかの「単量体A-単量体B」の対を特定する。加えて、Merchant et al.,Nature Biotech.16:677(1998)において記載されるとおり、これらの「ノブ・アンド・ホール」変異をジスルフィド結合と組み合わせて、ヘテロ二量体化の形成を非対称にすることができる。
【0122】
ヘテロ二量体の生成において用途を見出すさらなる機構は、全体として参照により本明細書に援用されるGunasekaran et al.,J.Biol.Chem.285(25):19637(2010)において記載されるとおり、「静電ステアリング」と呼ばれる場合がある。これは、本明細書で「電荷対」と呼ばれる場合がある。この実施形態において、静電気は、ヘテロ二量化に向けて形成を非対称にするために使用される。当業者が理解するとおり、これらはまた、pI、したがって、精製に対して影響を有する場合があり、したがって、場合によっては、pI変異体であるとも見なされ得る。しかしながら、これらはヘテロ二量体化を強制するために生成され、精製ツールとしては使用されなかったため、それらは「立体変異体」として分類される。これらには、D221R/P228R/K409Rと対形成するD221E/P228E/L368E(すなわち、これらは単量体の対応するセットである)及びC220R/E224R/P228R/K409Rと対形成するC220E/P228E/368Eが挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
本明細書で概説されるpI変異体又は図面及び説明文並びに配列番号が参照により本明細書に明示的に援用される米国特許出願公開第2012/0149876号明細書の
図37で示される他の立体変異体などの他の変異体と任意選択により且つ独立して任意の量で組み合わせることができる追加の単量体A及び単量体Bの変異体。
【0124】
いくつかの実施形態では、本明細書で概説される立体変異体は、任意のpI変異体(又はFc変異体、FcRn変異体などの他の変異体)とともに任意選択により且つ独立して一方又は両方の単量体に組み込むことができ、且つ独立して且つ任意選択により本発明のタンパク質に含まれ得るか、又はそれから除外され得る。
【0125】
好適な非対称変異体のリストは、
図9及び
図12において見出される。S364K/E357Q:L368D/K370S;L368D/K370S:S364K;L368E/K370S:S364K;T411T/E360E/Q362E:D401K;L368D/K370S:S364K/E357L及びK370S:S364K/E357Qを含むがこれらに限定されないセットの対は、多くの実施形態において特に有用である。命名法の用語において、対「S364K/E357Q:L368D/K370S」は、単量体の一方が二重変異体セットS364K/E357Qを有し、もう一方が二重変異体セットL368D/K370Sを有することを意味する。
【0126】
C.機能性を調整するための追加Fc変異体
1つ以上のFcγR受容体への結合を変えること、FcRn受容体への変化した結合などを含むが、これらに限定されない様々な理由で作製され得るいくつかの有用なFcアミノ酸の改変がある。
【0127】
FcγR受容体の1つ以上に対する結合を変えるために作製され得るいくつかの有用なFc置換がある。結合の増加及び結合の減少をもたらす置換が有用であり得る。例えば、FcγRIIIaに対する結合の増加は一般に、ADCC(抗体依存性細胞性細胞傷害;FcγRを発現する非特異的細胞傷害性細胞が、標的細胞上で結合された抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす細胞性反応)の増加をもたらす。同様に、FcγRIIb(抑制性受容体)に対する結合の減少は、いくつかの状況において同様に有益であり得る。本発明において用途を見出すアミノ酸置換としては、全てが全体として及び特に開示される変異体に関して参照により本明細書に明示的に援用される米国特許出願公開第2006/0024298号明細書(特に、
図41)、同第2006/0121032号明細書、同第2006/0235208号明細書、同第2007/0148170号明細書において列挙されるものが挙げられる。用途を見出す特定の変異体としては、236A、239D、239E、332E、332D、239D/332E、267D、267E、328F、267E/328F、236A/332E、239D/332E/330Y、239D、332E/330L、243A、243L、264A、264V及び299Tが挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
加えて、434S、434A、428L、308F、259I、428L/434S、259I/308F、436I/428L、436I又はV/434S、436V/428L及び259I/308F/428Lを含むがこれらに限定されない、全体として参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2009/0163699号明細書において具体的に開示されるとおりの、FcRn受容体に対する結合の増加及び血清半減期の増大において用途を見出す追加Fc置換がある。
【0129】
機能性変異体の別のカテゴリは、「FcγR切断変異体」又は「Fcノックアウト(FcKO又はKO」変異体である。一部の治療応用のために、Fcγ受容体(例えば、FcγR1、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIaなど)の1つ以上又は全てに対するFcドメインの通常の結合を低減するか又は除去して、さらなる作用機序を回避することが望ましい。すなわち、例えば、特に、CD3に一価で結合する二重特異性抗体の使用において、ADCC活性を消去するか又は著しく低減するためにFcγRIIIa結合を切断することが望ましい場合がある。いずれかの低減のレベルが考えられる(例えば、結合又は活性における50%、60%、70%、80%、90%、又は100%の低減)。切断変異体の改変の例は
図11に示され、各々が、独立して且つ任意選択により含まれてもよいし、又は除外されてもよく、G236R/L328R、E233P/L234V/L235A/G236del/S239K、E233P/L234V/L235A/G236del/S267K、E233P/L234V/L235A/G236del/S239K/A327G、E233P/L234V/L235A/G236del/S267K/A327G及びE233P/L234V/L235A/G236delからなる群から選択される切断変異体を利用する好ましい態様を有する。本明細書で参照される切断変異体は、FcγR結合を切断するが、一般にFcRn結合は切断しないことが留意されるべきである。
【0130】
D.追加の抗体の考慮事項
本開示は、本明細書に記載される製剤における他のヘテロ二量体抗体の使用を企図する。例えば、上記の可変重鎖及び軽鎖配列、並びにscFv配列(及びこれらの可変重鎖及び軽鎖配列を含むFab配列)は、図面、形式及び説明文が参照により本明細書に明示的に援用される国際公開第2014/145806号パンフレットの
図2又は国際公開第2017/218707号パンフレットの
図1、並びに
図1A及び1Bにおいて示されるものなどの他の形式において使用され得る。さらに、CD3結合領域及びCD38結合領域のアミノ酸配列(例えば、CDR配列、可変軽鎖及び可変重鎖配列、並びに/又は全長重鎖及び軽鎖配列)は、本明細書とともに提供され且つ
図21において要約される配列表において提供される。得られるヘテロ二量体抗体がCD3及びCD38の両方と結合する限り、
図21において参照される配列の任意の組合せが本明細書において企図される。抗CD3/抗CD38抗体はさらに、全体として及び特に抗CD3/抗CD38抗体の説明並びにそれらのアミノ酸及び核酸配列、配列表、及び図面に関して参照により本明細書に援用される、参照文献の国際公開第2016/086196号パンフレット;米国特許出願公開第20160215063号明細書;国際公開第2017/091656号パンフレット;及び米国特許第9,822,186号明細書において記載される。
【0131】
CD3結合に関して、ヘテロ二量体抗体は、CD3に対して中間の又は「中程度の」親和性を有する抗CD3抗原結合ドメインを含み得る。これに関して、ヘテロ二量体抗体は、参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第20160215063号明細書及び国際公開第2017/091656号パンフレットにおいて記載されるアッセイを使用して任意選択により測定される約15~50nM(例えば、16~50nM、15~45nM、約20~40nM、約25~40nM、又は約30~40nM)の親和性(KD)を有してCD3に結合する。
【0132】
別の態様では、本方法のヘテロ二量体抗体は、CD3に対する「強力な」又は「高親和性」結合体である抗CD3抗原結合ドメイン(例えば、1つの例は、(適宜荷電リンカーを任意選択により含む)H1.30_L1.47として示される重鎖及び軽鎖可変ドメインである)を含む。様々な実施形態において、抗体コンストラクトは、参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第20160215063号明細書及び国際公開第2017/091656号パンフレットにおいて記載されるアッセイを使用して任意選択により測定される約3~15nM(例えば、3~10nM又は約4~7nM)の親和性(KD)を有してCD3に結合する。他の実施形態では、方法は、CD3に対する「軽い」又は「低親和性」結合体である抗CD3抗原結合ドメインを含むヘテロ二量体抗体を利用する。これに関して、ヘテロ二量体抗体は、任意選択により、参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第20160215063号明細書及び国際公開第2017/091656号パンフレットにおいて記載されるアッセイを使用して任意選択により測定される約51nM以上(例えば、51~100nM)の親和性(KD)を有してCD3に結合する。ヘテロ二量体抗体はまた、例えば、CD38又はSTEAP1にも結合する。
【0133】
二重特異性抗体のCD38に関する親和性はまた、CD38を発現する細胞を標的化する際の抗体の有効性に影響を及ぼす。CD38に対して「中程度」又は「低」親和性を有する二重特異性抗体は、低減された毒性プロファイルを有してインビトロ及びインビボで標的細胞を効率的に殺滅することができる。様々な実施形態において、CD38に対して「高」親和性を示す二重特異性抗体は、例えば1nM未満の親和性(KD)を有してCD38に結合し;CD38に対して「中程度」又は「中間」の親和性を示す二重特異性抗体は、例えば、約1~10nM(例えば、2~8nM又は3~7nM)の親和性(KD)を有してCD38に結合し;CD38に対して「低」又は「軽い」親和性を示す二重特異性抗体は、例えば、約11nM以上(例えば、11~100nM)の親和性(KD)を有してCD38に結合し、全ては、参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第20160215063号明細書及び国際公開第2017/091656号パンフレットに記載される方法を使用して任意選択により測定される。
【0134】
一般に、特異的な結合は、例えば、抗原に対して少なくとも約10-4M、少なくとも約10-5M、少なくとも約10-6M、少なくとも約10-7M、少なくとも約10-8M、少なくとも約10-9M、或いは少なくとも約10-10M、少なくとも約10-11M、少なくとも約10-12M以上のKDを有する抗体によって示されてもよく、ここで、KDは、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指す。通常、抗原に特異的に結合する抗体は、抗原に対して対照分子の20倍、50倍、100倍、500倍、1000倍、5,000倍、10,000倍以上であるKDを有することになる。また、特定の抗原に対する特異的な結合は、例えば、対照と比較して抗原に関して少なくとも20倍、50倍、100倍、500倍、1000倍、5,000倍、10,000倍以上の抗原又はエピトープに対するKA又はKaを有する抗体によって示されてもよく、ここで、KA又はKaは、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度を指す。抗体に関する開示はまた、抗原結合タンパク質にも適用されることが理解されるであろう。
【0135】
任意選択により、ヘテロ二量体抗体は、220位のシステインのセリンによる置換を含み;一般にこれは、ヘテロ二量体抗体の「scFv単量体」側上にあるが、それはまたジスルフィド形成を減少させるために「Fab単量体」側、又は両方に対してあってもよい。これらの置換されたシステイン(C220S)の一方又は両方が本明細書の配列内に具体的に含まれる。
【0136】
E.断片
本開示はまた、抗体断片(scFvなどの任意選択の追加の抗原結合ドメインと並んでFab及びFcドメインを一般に含む、可変及び定常領域を含む抗体の天然の生物学的形態を成す全長抗体から区別される)の使用を企図する。抗体断片は、pI操作など、ヘテロ二量体を生成するように操作され得る少なくとも1つの定常ドメインを含有する。使用され得る他の抗体断片は、pI操作された本発明のCH1、CH2、CH3、ヒンジ及びCLドメインの1つ以上を含有する断片を含む。
【0137】
F.キメラ/ヒト化
ヘテロ二量体抗体は、異なる種の混合物、例えば、キメラ抗体及び/又はヒト化抗体であってもよい。一般に、「キメラ抗体」及び「ヒト化抗体」の両方は、2つ以上の種に由来する領域を組み合わせている抗体を指す。例えば、「キメラ抗体」は、慣例上マウス(又は場合によってはラット)由来の可変領域及びヒト由来の定常領域を含む。「ヒト化抗体」は一般に、可変ドメインのフレームワーク領域がヒト抗体において見出される配列と交換された非ヒト抗体を指す。一般的に、ヒト化抗体において、CDRを除く抗体の全体は、ヒト起源のポリヌクレオチドによってコードされるか、又はそのCDRの範囲内を除いてそのような抗体と同一である。一部又は全てが非ヒト生物に起源をもつ核酸によってコードされるCDRがヒト抗体可変領域のβシートフレームワークに移植されて抗体を生成し、その特異性は、移植されたCDRによって決定される。そのような抗体の作製は、例えば、国際公開第92/11018号パンフレット、Jones,1986,Nature 321:522-525、及びVerhoeyen et al.,1988,Science 239:1534-1536において記載されており、これらは全て、全体として参照により援用される。対応するドナー残基に対して選択されたアクセプターフレームワーク残基の「復帰変異」が、初期移植コンストラクトにおいて失われる親和性を回復するために必要であることが多い(全てが全体として参照により援用される、米国特許第5530101号明細書;同第5585089号明細書;同第5693761号明細書;同第5693762号明細書;同第6180370号明細書;同第5859205号明細書;同第5821337号明細書;同第6054297号明細書;及び同第6407213号明細書)。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでもよく、これは通常、ヒト免疫グロブリンのものであり、したがって、通常、ヒトFc領域を含むことになる。ヒト化抗体はまた、遺伝子操作された免疫系を有するマウスを使用して作製され得る。全体として参照により援用されるRoque et al.,2004,Biotechnol.Prog.20:639-654。非ヒト抗体のヒト化及び再構築のための様々な技術及び方法が、当技術分野でよく知られている(全てが全体として参照により援用される、Tsurushita&Vasquez,2004,Humanization of Monoclonal Antibodies,Molecular Biology of B Cells,533-545,Elsevier Science(USA)、及びそこで引用される参考文献を参照のこと)。ヒト化の方法としては、全てが全体として参照により援用されるJones et al.,1986,Nature 321:522-525;Riechmann et al.,1988;Nature 332:323-329;Verhoeyen et al.,1988,Science,239:1534-1536;Queen et al.,1989,Proc Natl Acad Sci,USA 86:10029-33;He et al.,1998,J.Immunol.160:1029-1035;Carter et al.,1992,Proc Natl Acad Sci USA 89:4285-9,Presta et al.,1997,Cancer Res.57(20):4593-9;Gorman et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:4181-4185;O’Connor et al.,1998,Protein Eng 11:321-8において記載される方法が挙げられるが、これらに限定されない。非ヒト抗体可変領域の免疫原性を低減するヒト化又は他の方法は、例えば、全体として参照により援用されるRoguska et al.,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:969-973において記載されるとおりのリサーフェシング方法を含んでもよい。
【0138】
投与量
用語「有効用量」又は「有効投与量」は、所望の効果を達成するか又は少なくとも部分的に達成するのに十分な量と定義される。用語「治療有効用量」は、疾患にすでに罹患している患者の疾患及びその合併症を治癒するか又は少なくとも部分的に抑止するのに十分な量と定義される。この用途に効果的な量又は用量は、治療される病態(適応症)、送達される抗体コンストラクト、治療の内容及び目的、疾患の重症度、前治療、患者の病歴及び治療薬に対する反応性、投与経路、体格(体重、体表面積又は臓器サイズ)及び/又は患者の状態(年齢及び全身健康状態)並びに患者自身の免疫系の全身状態に依存することになる。適当な用量は、1回の投与又は複数回にわたる投与で患者に投与できるように、また最適な治療効果を得るために主治医の判断に従って調整することができる。
【0139】
治療有効量の抗原結合タンパク質(例えば、抗体)は、好ましくは、疾患症状の重症度を低下させるか、疾患症状がない期間の頻度若しくは期間を増加させるか、又は疾患の苦痛に起因する機能障害若しくは能力障害の予防をもたらす。標的細胞の抗原発現腫瘍の治療に関して、治療有効量の抗原結合タンパク質(例えば、抗体)、例えば抗標的細胞抗原/抗CD3抗体コンストラクトは、好ましくは、細胞増殖又は腫瘍増殖を未治療の患者と比較して少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%阻害する。腫瘍増殖を阻害する分子の能力は、有効性を予測する動物モデルにおいて評価され得る。
【0140】
用語「有効且つ非毒性用量」は、重大な毒性作用を生じさせずに又は本質的に生じさせずに、病的細胞の激減、腫瘍の除去、腫瘍の縮小又は疾患の安定化をもたらすのに十分高い、抗原結合タンパク質(例えば、抗体)の許容用量を指す。そのような有効且つ非毒性用量は、例えば、当技術分野で記載される用量漸増試験によって決定されてもよく、その用量は、重篤な有害副事象(用量制限毒性、DLT)を誘発する用量未満であるべきである。
【0141】
本明細書で使用する場合、用語「毒性」は、有害事象又は重篤な有害事象として現れる薬物の毒性作用を指す。これらの副事象は、全身的な薬物忍容性の欠如及び/又は投与後の局所的な忍容性の欠如を指す場合がある。毒性は、その薬物によって引き起こされる催奇性作用又は発癌性作用も含み得る。
【0142】
用語「安全性」、「インビボ安全性」又は「忍容性」は、投与直後に(局所耐性)及びより長期の薬物適用期間中に重篤な有害事象を誘発しない薬物の投与と定義される。「安全性」、「インビボ安全性」又は「忍容性」は、例えば、治療中及び経過観察期間中に定期的に評価することができる。測定値は、臨床評価、例えば臓器の所見及び臨床検査値異常のスクリーニングを含む。臨床評価が実施され、NCI-CTC及び/又はMedDRA標準に従って正常所見からの逸脱が記録/コード化され得る。臓器の所見は、例えば、Common Terminology Criteria for adverse events v3.0(CTCAE)に示される、アレルギー/免疫学、血液/骨髄、心不整脈、凝固などの基準を含み得る。試験され得る検査パラメータは、例えば、血液学、臨床化学、凝固プロファイル及び尿検査並びに他の体液、例えば血清、血漿、リンパ液又は脊髄液、髄液などの検査を含む。したがって、安全性は、例えば、身体検査、画像化技術(すなわち超音波、x線、CTスキャン、磁気共鳴画像法(MRI)、技術的デバイスを用いた他の計測(すなわち心電図)、バイタルサインにより、検査パラメータを測定し、有害事象を記録することにより評価することができる。例えば、本発明による使用及び方法において、チンパンジーではない霊長類における有害事象は、組織病理学的方法及び/又は組織化学的方法により試験され得る。
【0143】
上記の用語は、例えば、1997年7月16日のPreclinical safety evaluation of biotechnology-derived pharmaceuticals S6;ICH Harmonised Tripartite Guideline;ICH Steering Committee meetingでも参照されている。
【0144】
典型的な投与量は、上記の要因に応じて約0.1μg/kg~最大約30mg/kg以上の範囲であり得る。特定の実施形態では、投与量は、1.0μg/kg~最大約20mg/kg、任意選択的に10μg/kg~最大約10mg/kg又は100μg/kg~最大約5mg/kgの範囲であり得る。製剤は、ヘテロ二量体抗体が、例えば、体重のキログラム当たり0.1~50mgの範囲の抗体(化学修飾を伴わないタンパク質単独の質量を計算する)の用量を達成する単位用量で提供されるように提供され得る。
【0145】
製剤の治療上の使用
本明細書に記載される製剤は、それを必要とする患者において、本明細書に記載される病的な医学的状態を治療、改善及び/又は予防する医薬組成物として有用である。用語「治療」は、治療的治療及び予防的又は抑止的手段の両方を指す。治療は、疾患、疾患の症状又は疾患素因を治癒する、治す、軽減する、緩和する、変化させる、矯正する、改善する、好転させる又は影響を与えることを目的とした、疾患/障害、疾患/障害の症状又は疾患/障害の素因を有する患者の身体、単離された組織又は細胞に対する製剤の適用又は投与を含む。
【0146】
本明細書で使用する場合、用語「改善」は、本明細書に記載される抗原結合タンパク質を含む組成物のそれを必要とする対象への投与による、本明細書の以下に示す腫瘍又は癌若しくは転移性癌を有する患者の疾患状態のあらゆる好転を指す。そのような好転は、患者の腫瘍又は癌若しくは転移性癌の進行の緩徐化又は停止として見られる場合もある。本明細書で使用する場合、用語「予防」は、本明細書に記載される抗原結合タンパク質(すなわち、抗体コンストラクト)を含む組成物のそれを必要とする対象への投与による、本明細書の以下に示す腫瘍又は癌若しくは転移性癌を有する患者の発症又は再発の回避を意味する。
【0147】
一実施形態では、本発明は、増殖性疾患、腫瘍性疾患、ウイルス性疾患又は免疫障害の治療又は改善のための方法であって、それを必要とする対象に本明細書に記載される製剤を投与する工程を含む方法を提供する。用語「疾患」は、本明細書に記載される医薬組成物による治療から利益を得ることになる任意の状態を指す。これには、哺乳類において問題の疾患の素因になる病理学的状態を含めた慢性及び急性障害又は疾患が含まれる。用語「ウイルス性疾患」は、対象のウイルス感染の結果である疾患を表す。用語「免疫障害」は、自己免疫疾患、過敏症、免疫不全などの免疫障害を含むこの用語の一般的な定義に沿って本明細書で使用される。
【0148】
「新生物」は、必ずというわけではないが、通常、腫瘤を形成する組織の異常な増殖である。腫瘤も形成する場合、それは、一般に「腫瘍」と称される。新生物又は腫瘍は、良性、潜在性悪性(前癌性)又は悪性であり得る。悪性新生物は、一般に癌と呼ばれる。それらは、通常、周囲の組織に侵入してそれを破壊し、転移を形成し得、すなわち、それらは、身体の他の部分、組織又は臓器に広がる。したがって、用語「転移性癌」は、原発腫瘍のもの以外の他の組織又は臓器への転移を包含する。リンパ腫及び白血病は、リンパ系新生物である。本発明の目的において、それらは、用語「腫瘍」又は「癌」にも包含される。用語「必要とする対象」又は「治療を必要とする」対象は、すでにその障害を有する対象及びその障害を予防しようとする対象を含む。必要とする対象又は「患者」は、予防的治療又は治療的治療のいずれかを受けるヒト及び他の哺乳動物対象を含む。
【0149】
投与経路
例示的な投与経路としては、局所経路(例えば、皮膚上、吸入、鼻、点眼、耳介/耳、膣、粘膜);経腸経路(例えば、経口、胃腸、舌下、唇下、頬側、直腸);及び非経口経路(例えば、静脈内、動脈内、骨内、筋肉内、脳内、脳室内、硬膜外、髄腔内、皮下、腹腔内、羊膜外、関節内、心臓内、皮内、病巣内、子宮内、膀胱内、硝子体内、経皮、鼻腔内、経粘膜、滑液嚢内、管腔内)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、医薬製剤は、非経口、例えば、静脈内、皮下、又は筋肉内投与される。非経口投与は、ボーラス注射などの注射、又は持続注入などの注入によって実現され得る。投与は、長期間放出のためのデポーを介して実現され得る。いくつかの実施形態では、製剤は、初回のボーラス後に持続注入によって静脈内投与されて、薬物製品の治療上の循環レベルを維持する。いくつかの実施形態では、製剤は、1回用量として投与される。医薬組成物は、医療装置を使用して投与され得る。医薬組成物の投与用医療装置の例については、米国特許第4,475,196号明細書;同第4,439,196号明細書;同第4,447,224号明細書;同第4,447,233号明細書;同第4,486,194号明細書;同第4,487,603号明細書;同第4,596,556号明細書;同第4,790,824号明細書;同第4,941,880号明細書;同第5,064,413号明細書;同第5,312,335号明細書;同第5,312,335号明細書;同第5,383,851号明細書;及び同第5,399,163号明細書に記載されている。
【0150】
特に、本発明は、好適な組成物の中断のない投与を実現する。非限定的な例として、中断のない又は実質的に中断のない、すなわち連続的な投与は、患者体内への治療薬の流入を調整するための、患者が装着した小型ポンプシステムによって実現され得る。医薬組成物は、前記ポンプシステムを使用することによって投与することができる。そのようなポンプシステムは、一般に当技術分野で知られており、通常、注入する治療薬を含有するカートリッジの定期交換に依拠する。そのようなポンプシステムでカートリッジを交換する際、交換時以外には中断しない患者体内への治療薬の流入に一時的な中断が結果として生じる場合がある。そのような場合でも、カートリッジ交換前の投与段階及びカートリッジ交換後の投与段階は、依然として、ともにこのような治療薬の「中断のない投与」を構成する本発明の医薬的手段及び方法の意味の範囲内と見なされるであろう。
【0151】
製剤の連続投与又は中断のない投与は、流体をレザバーから送り出すための流体送出機構及び送出機構を駆動するための駆動機構を含む、流体送達デバイス又は小型ポンプシステムによる静脈内又は皮下投与であり得る。皮下投与のためのポンプシステムは、患者の皮膚に穿通し、好適な組成物を患者体内に送達するための針又はカニューレを含み得る。前記ポンプシステムを、静脈、動脈又は血管を問わず、患者の皮膚に直接固定又は装着することでポンプシステムと患者の皮膚とを直接接触させることが可能になる。このポンプシステムは、患者の皮膚に24時間~数日間装着することができる。レザバーの容積が小さい小型のポンプシステムの場合もある。非限定的な例として、投与される好適な医薬組成物のためのレザバーの容積は、0.1~50mlであり得る。
【0152】
連続投与は、皮膚に装着され時折交換されるパッチによって経皮的でもあり得る。当業者は、この目的に好適な薬物送達のためのパッチシステムを認識している。経皮投与は、例えば、第1の使用済みパッチの直接隣の皮膚表面に、第1の使用済みパッチを除去する直前に、新しい第2のパッチを装着すると同時に第1の使用済みパッチの交換を完了できる有利さがあることから、中断のない投与に特に適していることに注目されたい。流入の中断又は電池故障の問題は生じない。
【0153】
医薬組成物が凍結乾燥されている場合、まず凍結乾燥材料を投与前に適切な液体で再構成する。凍結乾燥材料を、例えば注射用静菌水(BWFI)、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)又は凍結乾燥前にタンパク質が存在した同じ製剤で再構成し得る。医薬組成物は、1回の治療で投与するか、又は必要に応じて抗癌療法などの追加の療法、例えば他のタンパク質性及び非タンパク質性薬物と併用して投与することができる。これらの薬物は、本明細書で定義される本発明の組成物と同時に投与され得るか、又は前記製剤の投与前若しくは投与後に既定の時間間隔及び用量で別々に投与され得る。
【0154】
キット
さらなる態様として、本明細書に記載されるのは、対象への投与のためのそれらの使用を容易にする様式でパッケージ化された本明細書に記載される1つ以上の医薬組成物を含むキットである。一実施形態では、そのようなキットは、任意選択により容器に貼付されたラベルを伴って密封ボトル、容器、単回使用若しくは複数回使用用バイアル、プレフィルドシリンジ、又はプレフィルド注射デバイスなどの容器にパッケージ化されるか、又は方法を実践する際の化合物又は組成物の使用を記載するパッケージに含まれる、本明細書に記載される製剤(例えば、本明細書に記載される抗体を含む組成物)を含む。一態様では、組成物は、単位剤形にパッケージ化される。キットはさらに、特定の投与経路に従う組成物を投与するのに好適なデバイスを含んでもよい。好ましくは、キットは、本明細書に記載される抗体又は本明細書に記載される製剤の使用を記載するラベルを含有する。
【0155】
本明細書に記載される医薬組成物は、様々な形態、例えば固体、液体、凍結、気体又は凍結乾燥の形態で製剤化することができ、とりわけ軟膏、クリーム、経皮パッチ、ゲル、粉末、錠剤、溶液、エアロゾル、顆粒剤、丸剤、懸濁液、エマルジョン、カプセル、シロップ剤、液体、エリキシル剤、抽出物、チンキ又は流エキスの形態であり得る。
【0156】
一般に、本発明の医薬組成物に関して、すなわち、意図される投与経路、送達形式及び所望の投与量に応じて様々な保管形態及び/又は剤形が考えられる(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,22nd edition,Oslo,A.,Ed.,(2012)を参照されたい)。当業者であれば、このような特定の剤形の選択は、例えば、抗体の物理的状態、安定性、インビボでの放出速度及びインビボでのクリアランス速度に影響を及ぼし得ることを認識するであろう。
【0157】
例えば、医薬組成物中の主なビヒクル又は担体は、本質的に水性又は非水性であり得る。好適なビヒクル又は担体は、注射用水、生理食塩水溶液又は人工脳脊髄液であり得、場合により非経口投与用組成物で一般的な他の材料が補充される。中性緩衝生理食塩水又は血清アルブミンを混合した生理食塩水もさらなる例示的なビヒクルである。
【実施例】
【0158】
材料及び方法
SE-UHPLC:サイズ排除超高速液体クロマトグラフィーは、組換え体モノクローナル抗体(mAb)又はX-mAbの定量的分析のための方法である。SE-UHPLCは、流体力学的体積の違いに基づいて、タンパク質を分離する。より大きい流体力学的体積を有する分子は、より小さい体積を有する分子よりも早く溶出する。試料は、SE-UHPLCカラム(BEH200、4.6x300mm、(Waters Corporation、186005226))上にロードされ、均一濃度で分離され、溶出液はUV吸光度によってモニターされる。積分された総面積と比較した分離された各成分のパーセンテージを計算することによって純度が決定される。SE-UHPLCの設定は以下のとおりである:流速:0.4mL/分、実行時間:12分、UV検出:280nm、カラム温度:周囲温度、標的タンパク質負荷:6μg、タンパク質適合性フローセル:5mm。
【0159】
カチオン交換高速液体クロマトグラフィー(CEX)は、荷電変異体分布に対する定量的純度分析のための方法である。移動相A:1xCX-1 pH勾配緩衝剤A、pH5.6(10xCX-1 pH勾配緩衝剤A、pH5.6、250mL及び移動相B:1xCX-1 pH勾配緩衝剤、pH10.2。
【0160】
CE-HPLC:カチオン交換高速液体クロマトグラフィーは、荷電変異体分布に対する定量的純度分析のための方法である。移動相A:25mMリン酸ナトリウム、10%アセトニトリル、pH6.7及び移動相B:25mMリン酸ナトリウム、500mM塩化ナトリウム、10%アセトニトリル、pH6.7。抗体AのCE-HPLCのために使用されるカラムは、Bio Mab NP-5、4.6x250mm、5μm(Agilent Technology、5190-2407)である。CE-HPLC法の設定は、以下のとおりである:流速:0.75mL/分、実行時間:60分、カラム温度設定点:30℃±5℃、検出波長:280nm、標的タンパク質負荷:20μg。抗体BのCE-HPLC法のために使用されるカラムは、YMC BioPro SP-F、4.6x100mm、5μm(YMC Co.,Ltd.、SF00S05-1046WP)である。CE-HPLC法の設定は、以下のとおりである:流速:1.0mL/分、実行時間:45分、オートサンプラー温度設定点:5±3℃、カラム温度設定点:30±2℃、検出波長:280nm、標的タンパク質負荷:70±10ug。
【0161】
rCE-SDS:還元キャピラリー電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウムは、変性及び還元条件下での定量的純度分析のための方法である。
【0162】
MAM:多属性法は、Thermo Scientificのオービトラップ型質量分析計及びChromeleaonソフトウェアを使用する複数の製品品質属性(PQA)(酸化、異性化、脱アミド及び糖化)のための方法である。熱ストレス(40℃でのインキュベーション)時の化学修飾は、ペプチドマッピングを使用して測定された。タンパク質を酵素的に消化し、得られたペプチドを、逆相クロマトグラフィーを使用して分離した。タンパク質をグアニジンHClで変性させ、続いてジチオトレイトール(DTT)で還元した。DTT中でのインキュベーション後、遊離システイン残基をヨード酢酸の添加によってアルキル化した。次に、試料を、消化のために50mM トリス-HCl、20mMメチオニン、pH7.8に緩衝剤交換した。トリプシン及びエラスターゼを、別々の反応チューブに加えた(酵素対タンパク質比 1:20)。試料を、それぞれ37℃で60分間及び37℃で30分間消化した。グアニジンHCl、250mM酢酸塩、pH4.7を添加することによって、消化を抑えた。
【0163】
凍結乾燥された薬物製品の含水量は、オーブンによる熱量滴定によって決定された。凍結乾燥された薬物製品についての含水限界は、2%である。カール・フィッシャー法の原理は、熱量滴定によって決定された試料中の含水量に基づく。水は、オーブン中の試料を加熱することによって放出される。乾燥空気又は窒素などの不活性ガスが蒸発した水分を滴定装置に運んだ。存在する水の量は、滴定中に生成したクーロン(電流/時間)の量を測定することによって決定される。全ての水が滴定によって消費されたとき、過剰のヨウ素が発生する。終点は、一定の強さの交流を2つのPt電極にかけることによって容積に関して示される。これは、最小限の量の遊離ヨウ素の存在下で大幅に低下する指標電極のPt線間の電圧差をもたらす。この電圧差を使用して、滴定の終点を決定する。
【0164】
実施例1-低pH製剤中の抗体安定性
以下の実施例は、様々なタンパク質濃度(すなわち、1mg/mL及び5mg/mL)の液体製剤又は凍結乾燥製剤のいずれかにおいて、様々な異なる温度(4℃、25℃、40℃、-30℃及び-40℃)で最大3年間、本明細書に記載されるヘテロ二量体抗体の安定性を検証するためのアッセイを記載する。ヘテロ二量体抗体の安定性は、以下のアッセイを使用して分析された:外観(各時点での20個のバイアルの目視検査を介する)、pH、重量オスモル濃度、CE-HPLC、rCE、MAM(多属性法)及びカール・フィッシャー(含水量)。検証試験の試料は、5ccのバイアル中に充填された1.3mLであった。ヘテロ二量体抗体DS(ポリソルベート80を含まない材料)は、10.6mg/mLであり、5mg/mL及び1mg/mLに達するまで緩衝剤(G42Su)で希釈された。製剤は、326mOsm/kgの重量オスモル濃度値を有するG42SuT製剤中において等張であった。
【0165】
ヘテロ二量体抗体の安定性は、以下の製剤において評価された:
製剤A:10mM L-グルタミン酸、9%(w/v)スクロース、0.01%(w/v)ポリソルベート80、pH4.2中の1mg/mL ヘテロ二量体抗体の凍結乾燥製剤;
製剤B:10mM L-グルタミン酸、9%(w/v)スクロース、0.01%(w/v)ポリソルベート80、pH4.2中の5mg/mL ヘテロ二量体抗体の凍結乾燥製剤;
製剤C:10mM L-グルタミン酸、9%(w/v)スクロース、0.01%(w/v)ポリソルベート80、pH4.2中の5mg/mL ヘテロ二量体抗体の液体製剤;及び
製剤D:10mM 酢酸塩、9%(w/v)スクロース、0.01%(w/v)ポリソルベート80、pH5.2中の1mg/mL ヘテロ二量体抗体の液体製剤。
【0166】
結果:
抗体Aは、製剤C中で製剤化された場合、40℃で3ヶ月後にSE-UHPLCを介して13.4%のメインピークの減少を有することが決定された。
図23を参照されたい。対照的に、抗体Aは、製剤A(
図22A)及び製剤B(
図22B)中で製剤化された場合、同じ条件下でのSE-UHPLCを介して、それぞれ0.2%及び0.0%のメインピークの減少を有することが決定された。抗体Aは、製剤C中で製剤化された場合、40℃で3ヶ月後にCE-HPLCを介して58.2%のメインピークの減少を有することが決定された。
図25を参照されたい。対照的に、抗体Aは、製剤A(
図24A)及び製剤B(
図24B)中で製剤化された場合、同じ条件下でのCE-HPLCを介して、それぞれ10.5%及び0.5%のメインピークの減少を有することが決定された。
【0167】
抗体Aは、製剤A中で製剤化された場合、-30℃で3ヶ月後にrCEを介して2.9%のメインピークの減少を示した(
図26)。抗体Aは、製剤C中で製剤化された場合、40℃で3ヶ月後にrCEを介して19.9%のメインピークの減少を示した。
図28を参照されたい。しかしながら、抗体Aは、製剤Aにおいて(
図26)、40℃で3ヶ月後にrCEを介して0.6%のメインピークの減少を示し、製剤B中で製剤化された場合、rCEを介して0.0%のメインピークの減少を示した。
図27を参照されたい。
【0168】
抗体Aは、製剤C中で製剤化された場合、40℃で3ヶ月後にMAMを介してN103(CD3 scFv-FC)にて9.1%の脱アミドを示した。
図29の最後の列を参照されたい。対照的に、抗体Aは、製剤B中で製剤化された場合、MAMを介して0.3%の脱アミドを示した。
図29の右から2番目の列を参照されたい。抗体Aは、製剤D中で製剤化された場合、40℃で4週間後にMAMを介してN103(CD3 scFv-FC)にて13.8%の脱アミドを示し(
図30を参照のこと)、製剤C中で製剤化された場合、40℃で1ヶ月後にMAMを介してN103(CD3 scFv-FC)にて3.7%の脱アミドを示した。
図31を参照されたい。対照的に、抗体Aは、製剤B中で製剤化された場合、40℃で1ヶ月後にMAMを介して0.4%の脱アミドを示した。
図31を参照されたい。
【0169】
本明細書に提供されるデータは、凍結乾燥製剤A及び凍結乾燥製剤Bが、液体製剤中の脱アミドのリスクが高いために液体製剤C及び液体製剤Dより安定であることを実証している。
【0170】
実施例2-低pH製剤中の抗体安定性
以下の実施例は、様々なタンパク質濃度(例えば、1mg/mL、5mg/mL及び20mg/mL)の液体製剤又は凍結乾燥製剤において、様々な異なる温度(4℃、25℃、40℃、-30℃及び-40℃)で様々な時点にて、本明細書に記載されるヘテロ二量体抗体の安定性を検証するためのアッセイを記載する。ヘテロ二量体抗体の安定性は、以下の製剤において評価された:
製剤E:10mM L-グルタミン酸、9%(w/v)スクロース、0.01%(w/v)ポリソルベート80、pH4.2中の1mg/mL ヘテロ二量体抗体の凍結乾燥製剤;
製剤F:10mM L-グルタミン酸、9%(w/v)スクロース、0.01%(w/v)ポリソルベート80、pH4.2中の5mg/mL ヘテロ二量体抗体の凍結乾燥製剤;
製剤G:10mM L-グルタミン酸、9%(w/v)スクロース、0.01%(w/v)ポリソルベート80、pH4.2中の20mg/mL ヘテロ二量体抗体の凍結乾燥製剤;
製剤H:10mM L-グルタミン酸、9%(w/v)スクロース、0.01%(w/v)ポリソルベート80、pH4.2中の1mg/mL ヘテロ二量体抗体の液体製剤;
製剤I:10mM L-グルタミン酸、9%(w/v)スクロース、0.01%(w/v)ポリソルベート80、pH4.2中の5mg/mL ヘテロ二量体抗体の液体製剤;及び
製剤J:10mM L-グルタミン酸、9%(w/v)スクロース、0.01%(w/v)ポリソルベート80、pH4.2中の20mg/mL ヘテロ二量体抗体の液体製剤。
【0171】
凍結乾燥製剤E~Gの安定性は、液体液体製剤H~Jの安定性と比較された。
【0172】
ヘテロ二量体抗体の安定性は、以下のアッセイを使用して分析された:外観(各時点での20個のバイアルの目視検査を介する)、pH、重量オスモル濃度、CE-HPLC、rCE、MAM(多属性法)及びカール・フィッシャー(含水量)。検証試験の試料は、5ccのバイアル中に充填された1.3mLであった。製剤E~Gは、それぞれ314mOsm/kg及び311mOsm/kgの重量オスモル濃度値を有して等張であった。試験された製剤のいずれにおいてもタンパク質性粒子は観察されなかった。
【0173】
ヘテロ二量体抗体の安定性は、以下の製剤において評価された:
結果:
抗体Aは、製剤J中で製剤化された場合、40℃で3ヶ月後にCEXを介して34.7%のメインピークの減少を有することが決定された。対照的に、抗体Aは、製剤G中で製剤化された場合、同じ条件下でCEXを介して2.8%のメインピークの減少を有することが決定された。表2を参照されたい。
【0174】
【0175】
抗体Aは、製剤J中で製剤化された場合、40℃で3ヶ月後にSE-UHPLCを介して15.3%のメインピークの減少を有することが決定された。対照的に、抗体Aは、製剤G中で製剤化された場合、同じ条件下でSE-UHPLCを介して1.6%のメインピークの減少を有することが決定された。表3を参照されたい。
【0176】
【0177】
抗体Aは、製剤J中で製剤化された場合、40℃で3ヶ月後にrCEを介して3.7%のメインピークの減少を示した。しかしながら、抗体Aは、製剤G中において40℃で3ヶ月後にrCEを介して0.0%のメインピークの減少を示した。表4を参照されたい。
【0178】
【0179】
製剤G中で製剤化された場合、抗体Aは、実施例1において上に記載される製剤Bと同じ%脱アミドを示すと予想される。
【0180】
本明細書に提供されるデータは、凍結乾燥製剤Gが、試験された時点で製剤Gにおいて観察されたメインピークの減少の減少%によって実証されるとおり、液体製剤Jより安定であることを実証している。また、ヘテロ二量体抗体濃度20mg/mLの濃度を有する製剤Jが、製剤A(ヘテロ二量体抗体1mg/mL)及びB(ヘテロ二量体抗体5m/mL)と同様のメインピークの減少の%を有することが決定され、これは、製剤J(20mg/mL)中においてより高い濃度で存在するヘテロ二量体抗体のために驚くべきことであると判断された。
【0181】
実施例3-低pH製剤中の抗体安定性
以下の実施例は、10mg/mLのタンパク質濃度の液体製剤又は凍結乾燥製剤において、様々な異なる温度(4℃、25℃、40℃、-30℃及び-40℃)で最大3年間、本明細書に記載されるヘテロ二量体抗体の安定性を検証するためのアッセイを記載する。ヘテロ二量体抗体の安定性は、以下の製剤において評価された:
製剤K:10mM L-グルタミン酸、9%(w/v)スクロース、0.01%(w/v)ポリソルベート80、pH4.2中の10mg/mL ヘテロ二量体抗体の凍結乾燥製剤;及び
製剤L:10mM L-グルタミン酸、9%(w/v)スクロース、0.01%(w/v)ポリソルベート80、pH4.2中の10mg/mL ヘテロ二量体抗体の液体製剤。
【0182】
凍結乾燥製剤Kの安定性は、液体製剤Lの安定性と比較された。この試験において、抗体Bが利用された。
【0183】
ヘテロ二量体抗体の安定性は、以下のアッセイを使用して分析された:外観(各時点での20個のバイアルの目視検査を介する)、pH、重量オスモル濃度、SE-HPLC、rCE、MAM(多属性法)及びカール・フィッシャー(含水量)。検証試験の試料は、5ccのバイアル中に充填された1.3mLであった。製剤Kは、305mOsm/kgの重量オスモル濃度値を有して等張であった。試験された製剤のいずれにおいてもタンパク質性粒子は観察されなかった。
【0184】
ヘテロ二量体抗体の安定性は、以下の製剤において評価された:
結果:
抗体Bは、製剤L中で製剤化された場合、40℃で3ヶ月後にCEXを介して34.5のメインピークの減少を有することが決定された。対照的に、抗体Bは、製剤K中で製剤化された場合、同じ条件下でCEXを介して0.7%のメインピークの減少を有することが決定された。表5を参照されたい。
【0185】
【0186】
抗体Bは、製剤L中で製剤化された場合、40℃で3ヶ月後にSE-HPLCを介して22.5%のメインピークの減少を有することが決定された。対照的に、抗体Bは、製剤K中で製剤化された場合、同じ条件下でCEXを介して0.7%のメインピークの減少を有することが決定された。SE-HPLCデータに関しては、表6を参照されたい。
【0187】
【0188】
抗体Bは、製剤L中で製剤化された場合、40℃で3ヶ月後にMAMを介して6.8%の脱アミドを示した。表7を参照されたい。対照的に、抗体Bは、製剤K中で製剤化された場合、MAMを介して<0.6%の脱アミドを示した。
【0189】
【0190】
本明細書に提供されるデータは、凍結乾燥製剤Kが、液体製剤中の脱アミドのリスクが高いために液体製剤Lより安定であることを実証している。
【配列表】