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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】シンバイオティクス組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20231221BHJP
   C07K 5/062 20060101ALI20231221BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20231221BHJP
   A61K 35/742 20150101ALI20231221BHJP
   A61K 38/05 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 31/51 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 31/525 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 31/455 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 31/4415 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 31/4188 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 31/714 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 31/375 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 31/592 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 31/355 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 31/11 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 31/197 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 33/04 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 33/26 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 33/20 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 33/06 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 33/34 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 33/30 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 33/32 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 33/18 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20231221BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20231221BHJP
   A23K 10/16 20160101ALI20231221BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20231221BHJP
   A23K 20/142 20160101ALI20231221BHJP
   A23K 20/147 20160101ALI20231221BHJP
   A23K 20/163 20160101ALI20231221BHJP
   A23K 20/174 20160101ALI20231221BHJP
   A23K 20/20 20160101ALI20231221BHJP
【FI】
C12N1/20 E
C07K5/062 ZNA
A23L33/135
A61K35/742
A61K38/05
A61K31/198
A61P1/04
A61P35/00
A61P9/10
A61P1/16
A61P3/06
A61P3/04
A61P3/10
A61P29/00
A61P37/08
A61K9/48
A61K31/51
A61K31/525
A61K31/455
A61K31/4415
A61K31/4188
A61K31/519
A61K31/714
A61K31/375
A61K31/592
A61K31/355
A61K31/11
A61K31/197
A61K31/122
A61K33/04
A61K33/26
A61K33/20
A61K33/06
A61K33/34
A61K33/30
A61K33/32
A61K33/18
A61K47/36
A61K47/26
A61K47/46
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/34
A61K47/42
A23K10/16
A23K10/30
A23K20/142
A23K20/147
A23K20/163
A23K20/174
A23K20/20
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020554108
(86)(22)【出願日】2019-04-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 EP2019060158
(87)【国際公開番号】W WO2019206820
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】18168783.1
(32)【優先日】2018-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イネス オークロンブル
(72)【発明者】
【氏名】ボド スペックマン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ペルツァー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル シュワーム
(72)【発明者】
【氏名】ワルター プフェッファーレ
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-506735(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105639191(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0042972(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0017144(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0208153(US,A1)
【文献】特開平05-236909(JP,A)
【文献】特表2014-507946(JP,A)
【文献】特表2013-529193(JP,A)
【文献】国際公開第2017/207371(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/207372(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/083196(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A23L
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Bacillus subtilis DSM32315、Bacillus licheniformis DSM32314、およびBacillus amyloliquefaciens CECT5940から選択される少なくとも1つのプロバイオティクス株、ならびに
グリシン-グルタミン、グリシン-グルタミン酸、およびアラニン-グルタミンから選択される少なくとも1つのジペプチドを含み
プロバイオティクス株およびアミノ酸またはオリゴペプチドの総量が、調製物の総重量の少なくとも40重量%である
調製物。
【請求項2】
前記プロバイオティクス株がBacillus subtilis DSM32315であり、前記ジペプチドがアラニン-グルタミンである、請求項1に記載の調製物。
【請求項3】
調製物が腸溶コーティングを含み、腸溶コーティングが以下の、メチルアクリレート-メタクリル酸コポリマー、セルロースアセテートフタレート(CAP)、セルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(ヒプロメロースアセテートスクシネート)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、メチルメタクリレート-メタクリル酸コポリマー、シェラック、セルロースアセテートトリメリテート、アルギン酸ナトリウム、ゼイン、のうちの1つまたは複数を含む、請求項1又は請求項2に記載の調製物。
【請求項4】
飼料または食品サプリメントとしての、請求項1からのいずれか一項に記載の調製物の使用。
【請求項5】
飼料または食品中のシンバイオティクス成分としての、請求項1からのいずれか一項に記載の調製物の使用。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載の調製物、ならびにタンパク質、炭水化物、脂肪、さらなるプロバイオティクス、プレバイオティクス、酵素、ビタミン、免疫調節物質、代用乳、ミネラル、アミノ酸、抗コクシジウム剤、酸ベースの製品、医薬品、およびそれらの組合せから選択される少なくとも1つのさらなる飼料もしくは食品成分を含む飼料または食料品組成物。
【請求項7】
請求項1からのいずれか一項に記載の調製物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項8】
下痢、便秘、過敏性腸症候群、クローン病、潰瘍性大腸炎、大腸がん、腸がん、心血管疾患、動脈硬化症、脂肪肝疾患、脂質異常症、高コレステロール血症、肥満、脂肪過多症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、慢性炎症性疾患、およびアレルギー性疾患の予防または治療に使用するための請求項6または7に記載の組成物。
【請求項9】
Bacillus subtilis DSM32315、Bacillus licheniformis DSM32314、およびBacillus amyloliquefaciens CECT5940から選択される少なくとも1つのプロバイオティクス株、ならびにグリシン-グルタミン、グリシン-グルタミン酸、アラニン-グルタミンから選択される少なくとも1つのジペプチド、を含み、
プロバイオティクス株およびジペプチドの量が、カプセル充填物の総重量の少なくとも40重量%であるカプセル。
【請求項10】
1×10から2×1010CFUの間のプロバイオティクス株、および50mgから800mgの間のジペプチドを含む、請求項に記載のカプセル。
【請求項11】
ビタミンA(all-trans-レチノール、all-trans-レチニルエステル、ならびにall-trans-β-カロテンおよび他のプロビタミンAカロテノイドとして)、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB6(ピリドキシン)、ビタミンB7(ビオチン)、ビタミンB9(葉酸または葉酸塩)、ビタミンB12(コバラミン)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンD(カルシフェロール)、ビタミンE(トコフェロールおよびトコトリエノール)、およびビタミンK(キノン)から選択される1つまたは複数のビタミンをさらに含む、請求項9または10に記載のカプセル。
【請求項12】
硫黄、鉄、塩素、カルシウム、クロム、コバルト、銅、亜鉛、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ヨウ素およびセレンから選択される1つまたは複数のミネラルをさらに含む、請求項9から11のいずれか一項に記載のカプセル。
【請求項13】
イヌリン、フラクトオリゴ糖(FOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、デンプン、ペクチン、β-グルカンおよびキシロオリゴ糖から選択される1つまたは複数のプレバイオティクスをさらに含む、請求項9から12のいずれか一項に記載のカプセル。
【請求項14】
1つまたは複数の植物抽出物をさらに含む、請求項9から13のいずれか一項に記載のカプセル。
【請求項15】
腸溶コーティングを含み、腸溶コーティングが以下の、メチルアクリレート-メタクリル酸コポリマー、セルロースアセテートフタレート(CAP)、セルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(ヒプロメロースアセテートスクシネート)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、メチルメタクリレート-メタクリル酸コポリマー、シェラック、セルロースアセテートトリメリテート、アルギン酸ナトリウム、ゼイン、のうちの1つまたは複数を含む、請求項9から14のいずれか一項に記載のカプセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのプロバイオティクス株、およびグルタミン、グルタミン酸もしくはその塩、抱合型グルタミン、または長さ2~10アミノ酸単位のオリゴペプチドから選択される少なくとも1つのアミノ酸もしくはその誘導体を含み、前記アミノ酸単位は天然アミノ酸であり、少なくとも1つのアミノ酸単位はグルタミンまたはグルタミン酸単位である、シンバイオティクス調製物に関する。
【背景技術】
【0002】
消化管微生物叢は健康を調節するので、ヒトと動物の健康を改善するための介入の標的として浮上してきた。微生物叢を標的とした戦略には、プレバイオティクス、プロバイオティクスの適用が含まれ、さらには微生物叢の組成と活性を改変する目的での糞便移植が含まれることがある。プロバイオティクスは生きた微生物であり、適切な量を投与した場合に宿主に健康上の利益をもたらす[1]。最も一般的に研究され、市販されているプロバイオティクスは、主にLactobacillus属およびBifidobacterium属の種の微生物である。さらに、Propionibacterium属、Streptococcus属、Bacillus属、Enterococcus属、Escherichia coli、酵母などのいくつかの他のものも使用されている。同属および同種の異なる細菌株は、宿主に対して異なる作用を発揮する場合がある。
【0003】
定義によれば、プロバイオティクスは、ヒト体内でのその活性を通じて宿主に利益を与えるものであり、提案されている作用機構は、宿主の微生物叢の正常化、病原体の阻害、免疫系との相互作用、およびそれら自身の代謝活性を含む。より具体的には、微生物叢組成に対する正の効果は、両群ともに厳格な極限環境微生物嫌気性菌の群に属する、Clostridium群IV(Clostridium leptum群としても知られている)およびClostridium群XIVa(Clostridium Coccoides群としても知られている)に属する分類群の増加、およびClostridium群XIの分類群の減少を含むことができる。例えば、Clostridium soredelli群は、クラスターXIに属し、肺炎、心内膜炎、関節炎、腹膜炎、および筋壊死などを引き起こす。
【0004】
ClostridiumクラスターXIVaは、Clostridium属、Eubacterium属、Ruminococus属、Coporococcus属、Dorea属、Lachnospira属、Roseburia属、およびButyrivibrio属に属する種を含む。ClostridiumクラスターIVは、Clostridium属、Eubacterium属、Ruminococcus属、およびAnaerofilum属によって構成されている[2]。ClostridiumクラスターXIは、Clostridium difficileのような病原性種を有する。ClostridiumクラスターXIVaおよびIVは、腸内微生物叢の全細菌のかなりの部分(10~40%)を占めており[3]、防御機構や感染症に対する抵抗力に不可欠な役割を果たしている。
【0005】
微生物叢の機能性は、有機酸、ジアセチル、短鎖脂肪酸、バイオサーファクタント、ガス、改変胆汁酸、ファイトケミカル、ならびにバクテリオシンおよび過酸化水素のような抗菌物質などの物質産生によって説明される。好ましい短鎖脂肪酸(SCFA)としては、特に酢酸とn-酪酸が挙げられる。例えば、酢酸は、腸内病原体を阻害することにより健康を改善させる。
【0006】
食餌へのいくつかの食品成分の追加は、有益な細菌を促進し得る。いわゆるプレバイオティクスは、選択的に発酵させた成分として定義されており、その結果、消化管微生物叢の組成および/または活性の特定の変化をもたらし、それによって、宿主の健康に利益を与えるものである。プレバイオティクスは多くの場合、消化管通過中にマトリックスを捕捉する役割を果たし、さらに腸内において微生物を放出し、発酵性基質として機能する[4]。大部分のプレバイオティクスは植物由来の複雑な炭水化物である。プレバイオティクスおよびプロバイオティクスは、後者の生存と代謝活性を助けるために組み合わせることができ、結果として得られる産物はシンバイオティクスのクラスに属する。シンバイオティクスとは、プロバイオティクスとプレバイオティクスとを相乗効果の形で組み合わせた食品成分または栄養補助食品のことであり、それゆえにシンバイオティクスと呼ばれている[5]。プレバイオティクスという用語の更新された定義は、「健康上の利益をもたらす、宿主微生物によって選択的に利用される基質」[6]であり、このように特定の炭水化物だけでなく、例えばアミノ酸やペプチドも指している。
【0007】
食品サプリメントとは、通常の食餌を補うことを目的とした、栄養学的または生理学的効果を持つ栄養素または他の物質の濃縮供給源のことである(www.efsa.europa.eu/en/topics/topic/food-supplements)。例えば、L-グルタミンについては、経口補給が体重過多のヒトの腸内微生物叢の組成を変化させ、Firmicutes門とBacteriodetes門の比率を減少させることが記載されており、これは減量プログラムでも観察されている[7]。微生物叢の活性に有利な効果は、酢酸とn-酪酸の産生を増加させ、イソ酪酸やイソ吉草酸などの分岐鎖短鎖脂肪酸の産生を減少させることであり得る。n-酪酸は、いわゆる大腸の燃料として脂質生合成に導入され、腸内ホルモンの産生が行われる。さらに、酪酸は、抗炎症性および抗腫瘍性を有する大腸環境の生理的構成成分であり[8]、非伝染性疾患の形成を予防するためにヒトの体の多くの付加的な機能を支持している[9、10]。酪酸と吉草酸のアイソフォームが減少することは、腸内でのタンパク質発酵が減少し、有害な発酵産物が減少することを示している。
【0008】
いくつかのプロバイオティクスは、調査研究で有望な結果を示しているが、ほとんどの健康状態のためにプロバイオティクスの特定の使用を支持する強力な科学的証拠が不足している。米国食品医薬品局(FDA)と欧州食品安全機関(EFSA)は、これまでのところ、健康問題を予防または治療するためのいかなるプロバイオティクスも承認していない。微生物は消化管内における生存とコロニー形成が貧弱なことが多いので、いくつかのプロバイオティクス戦略は成功していない。制限要因は、胃の低pHだけでなく、胆汁および消化酵素の存在、低酸素含有量、ならびに腸内の他の微生物の存在を含む。さらに、プロバイオティクスの機能性には、菌株の生存率だけでなく、代謝活性の維持も重要である[11]。
【0009】
プロバイオティクス治療は、多くの障害と関連しているいくつかのケース、および腸内に常駐する有益な微生物と病原性の微生物の調節の欠如においては、腸内毒素症に十分な影響を与えることができない。さらに、サプリメントとして使用するためのいくつかの有益な微生物(例えば、Faecalibacterium prausnitziiおよびその他の微生物)の入手可能性が不足している。細菌療法としても知られる糞便微生物叢移植(FMT)のような方法は、複雑であり、意図しない有害な結果のリスクを含む。
【0010】
腸管病原体の減少はしばしばプレバイオティクスの有益な効果に属すると提案されてきたが、これは結論的には実証されていない。他の難消化性炭水化物と同様に、プレバイオティクスは腸内細菌によって発酵され、その結果生じるSCFAはその健康促進特性で知られている。実際には、SCFAの産生は、食物摂取量および腸内微生物叢組成に影響される。これらの分子は、宿主細胞や腸管微生物叢のエネルギー源であるだけでなく、異なる宿主シグナリングメカニズムに関係しているため、腸内環境や大腸の生理を形成することに関与している[12]。酢酸、プロピオン酸、および酪酸は腸内に豊富に存在するSCFAである。プロピオン酸は奇数鎖脂肪酸の合成によって糖新生に組み込まれる。SCFA形成の前駆体は乳酸である。
【0011】
したがって、プレバイオティクス戦略は、主に、発酵性オリゴ糖、二糖類、単糖類、およびポリオール(FODMAP)を含み、これらの代謝物の産生を増加させるとともに、有益な微生物の存在量を増加させることを目的としている。しかし、これらの炭水化物はしばしば望ましくない副作用、例えば下痢、便秘、および鼓腸などを引き起こす。低FODMAP食は、過敏性腸症候群の患者のこれらの症状を効果的に軽減する[13]。
【0012】
結論として、宿主の健康に有益な効果をもたらすためには、消化管微生物叢を標的とし、その組成と活性の好ましいシフトを誘導する戦略が必要である。このような概念は、腸内恒常性の維持の主要な担い手であるので、クロストリジウムへの効果に特に焦点を当てるべきである[14]。これらのFirmicutes門の桿状細菌はグラム陽性であり、腸内微生物叢の全細菌のかなりの部分を占めている。これらの細菌は、生後1ヶ月の間に母乳で育てられた乳児の腸にコロニー形成し始め、腸管細胞と密接な関係を保ちながら腸粘膜の特定の領域に生息している。他の常在微生物集団との相互作用によって、また、特定かつ本質的な機能を提供することによっても、この位置は、細菌が全生涯にわたって腸内の生理学的、代謝および免疫プロセスを調節する上で重要な因子として加わることができる。
【0013】
様々なプロバイオティクス株および飼料および食品添加物としてのそれらの使用は以前に記載されている(例となる参考文献はWO2017/207371A1およびWO2017/207372A1のみである)。しかし、既知のプロバイオティクス株については、腸内微生物叢の組成に対する効果は、特定の細菌株およびそれらの分布に関して、そのように詳細には、これまで記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】WO2017/207371A1
【文献】WO2017/207372A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、プロバイオティクス株の組成、特にクロストリジウムに関連した好ましいシフトを誘導し、消化管内の酢酸およびn-酪酸のような好ましいSCFAの産生を促進することにより、消化管微生物叢に正の効果を示す新規なプロバイオティクス株の組合せを提供することである。
【0016】
したがって、本発明の主題は、Bacillus subtilis、Bacillus licheniformis、Bacillus amyloliquefaciens、およびBacillus pumilusから選択される少なくとも1つのプロバイオティクス株、ならびにグルタミン、グルタミン酸もしくはその塩、抱合型グルタミン、または長さ2~10アミノ酸単位のオリゴペプチドから選択される少なくとも1つのアミノ酸を含み、前記アミノ酸単位は天然アミノ酸であり、前記少なくとも1つのアミノ酸単位はグルタミンもしくはグルタミン酸単位である、シンバイオティクス調製物である。
【0017】
細菌株とグルタミンまたはグルタミンの誘導体を含むこの新しいシンバイオティクス調製物は、腸内でのn-酪酸産生分類群およびn-酪酸のレベルの増加を促進する。
【0018】
特に、Bacillus属の細菌がこの効果に適していることが判明した。したがって、本発明の好ましい構成において、プロバイオティクス株は、Bacillus属の細菌株を含む。特に、Bacillus subtilis、Bacillus licheniformis、およびBacillus amyloliquefaciens種の細菌株は、腸内のclostridium群XIVaメンバーの割合を効果的に増加させると同時に、腸内のclostridium群XI分類群を減少させる。この効果は、乳酸、酢酸およびn-酪酸の増加を伴うが、同時にイソ酪酸およびイソ吉草酸のレベルを減少させる。意外なことに、L-グルタミンとグルタミン酸およびその誘導体は、clostridium群XIVaを強く誘導し、clostridium群XI分類群を阻害することがわかった。この微生物叢の効果はBacillus subtilisの効果と同様に、酢酸とn-酪酸の増加、イソ酪酸とイソ吉草酸の減少と関連していた。酢酸およびn-酪酸のレベルの増加は、特定のClostridiaによって使用されるグルタミン酸発酵経路によって説明することができる[15]。さらに、グルタミンまたはその誘導体とBacillus subtilis株との組合せは、相乗的に作用し、単一構成成分よりもクロストリジウムクラスターおよび短鎖脂肪酸の産生に対してより強い効果を発揮する。プロバイオティクスおよび/またはシンバイオティクス食品サプリメントとしてのBacillus株の使用は、例えば非胞子形成乳酸菌には不可能な耐熱性および耐酸性胞子の適用が可能であるという付加的な利点を有する。
【0019】
抗生物質と比較して、プロバイオティクスの大きな利点は、細菌を無差別に破壊しないこと、および抗生物質に耐性を持つ病原性細菌の菌株を生じさせないことである。通常、それらは特定の有効性を有する抗菌性物質の産生によって病原性細菌と選択的に競合することができ、同時に有益な腸内細菌叢の成長と生存率を高めることができるのが理想的である。さらに、それらは、好ましくは、処置された動物またはヒトにおいて、全身性の免疫応答を刺激することができる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
好ましい実施形態では、プロバイオティクス株は、以下の、Bacillus subtilis DSM32315(WO2017/207372A1に詳細に記載されている)、Bacillus subtilis DSM32540、およびBacillus amyloliquefaciens CECT5940、Bacillus subtilis DSM32592、Bacillus pumilus DSM32539、Bacillus licheniformis DSM32314(WO2017/207371A1に詳細に記載されている)のうちの1つから選択される。
【0021】
本発明によれば、アミノ酸もしくはその誘導体は、グルタミン、グルタミン酸もしくはその塩、抱合型グルタミン、または長さ2~10アミノ酸単位のオリゴペプチドから選択され、前記アミノ酸単位は天然アミノ酸であり、少なくとも1つのアミノ酸単位はグルタミンもしくはグルタミン酸単位である。
【0022】
グルタミンの正の効果は文献でも知られており、例えば、壊死性腸炎を誘発するメソトレキセートの投与によって処置したモルモットにおいて、グルタミンを経口補給することで死亡率が低下することが示されている[16]。さらに、術後麻酔をかけた犬の後肢バランス試験では、注入したアラニルグルタミンのアミノ酸は、アラニンとグルタミンの混合物とほぼ同様に骨格筋から抽出されることが示されている[17]。
【0023】
本発明の文脈では、「アミノ酸」とは、それぞれのアミノ酸に特異的な側鎖と併せて、アミノ官能基(-NH2)とカルボン酸官能基(-COOH)とを含む分子として理解される。本発明の文脈では、α-アミノ酸およびβ-アミノ酸の両方が含まれる。本発明の好ましいアミノ酸は、α-アミノ酸であり、特に以下の20の「天然アミノ」酸である。
アラニン(Ala/A)
アルギニン(Arg/R)
アスパラギン(Asn/N)
アスパラギン酸(Asp/D)
システイン(Cys/C)
グルタミン酸(Glu/E)
グルタミン(Gln/Q)
グリシン(Gly/G)
ヒスチジン(His/H)
イソロイシン(Ile/I)
ロイシン(Leu/L)
リジン(Lys/K)
メチオニン(Met/M)
フェニルアラニン(Phe/F)
プロリン(Pro/P)
セリン(Ser/S)
トレオニン(Thr/T)
トリプトファン(Trp/W)
チロシン(Tyr/Y)
バリン(Val/V)
【0024】
本発明の文脈では、「天然アミノ酸」という表現は、上記の20個のアミノ酸のL型およびD型の両方を含むものと理解される。しかし、L型が好ましい。一実施形態では、「アミノ酸」という用語はまた、それらのアミノ酸のアナログまたは誘導体を含む。
【0025】
本発明によれば、「遊離アミノ酸」は、そのアミノおよびその(α-)カルボン酸官能基を遊離形態で有する、すなわち、他の分子に共有結合していないアミノ酸、例えば、ペプチド結合を形成していないアミノ酸であると理解される。遊離アミノ酸はまた、塩として、または水和物の形態で存在してもよい。オリゴペプチドの一部として、またはオリゴペプチド中のアミノ酸を指す場合、これは、生化学およびペプチド生合成の既知のメカニズムにしたがって、それぞれのアミノ酸に由来するそれぞれのオリゴペプチド構造のその部分を指すものとして理解されるものとする。
【0026】
本発明に記載の「オリゴペプチド」は、2~20個のアミノ酸からなるペプチド化合物であると理解されるものとする。本発明のより好ましいオリゴペプチドは、2~10個のアミノ酸、2~6個のアミノ酸、2~5個のアミノ酸、2~4個のアミノ酸、または2~3個のアミノ酸からなるオリゴペプチドである。本発明に記載の最も好ましいオリゴペプチドは、ジペプチドである。
【0027】
より小さいペプチドが好まれることは、若い動物の研究より、ジペプチド輸送が初期の成長期には遊離アミノ酸輸送よりも大きな量的意義が示唆されることを示す初期の文献と一致している[18、19]。さらに、ヒトの腸管灌流研究では、ジペプチドおよびトリペプチドの取り込みは、2週間の飢餓後の遊離アミノ酸の取り込みほどには阻害されなかった[20]。
【0028】
「ペプチド」とは、ペプチド結合(R1-CO-NH-R2)によって互いに共有結合的にカップリングした少なくとも2つのアミノ酸を含む分子であると理解されるものとする。
【0029】
本発明の代替の実施形態では、オリゴペプチドは、アラニンまたはグリシンをさらに含む。
【0030】
さらなる代替の実施形態では、オリゴペプチドは、グリシン-グルタミン、グリシン-グルタミン酸、アラニン-グルタミン、アラニン-グルタミン酸およびそのアセチル化型から選択されるジペプチドである。
【0031】
本発明の好ましい実施形態によれば、ジペプチドアラニン-グルタミン(Ala-Gln)が特に好ましい。
【0032】
本発明によれば、プロバイオティクス株およびアミノ酸またはオリゴペプチドの総量は、調製物の総重量の少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、最も好ましくは少なくとも70重量%である。
【0033】
調製物が本発明に記載の腸溶コーティングをさらに含む場合、シンバイオティクス組成物を個体の結腸に直接送達することが特に好ましい。腸溶コーティング組成物は、以下の、メチルアクリレート-メタクリル酸コポリマー、セルロースアセテートフタレート(CAP)、セルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(ヒプロメロースアセテートスクシネート)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、メチルメタクリレート-メタクリル酸コポリマー、シェラック、セルロースアセテートトリメリテート、アルギン酸ナトリウム、ゼイン、のうちの1つまたは複数を含んでもよい。
【0034】
腸溶コーティングとしては、メチルメタクリレート10~30重量%、メチルアクリレート50~70重量%、およびメタクリル酸5~15重量%が重合したポリマーを用いることが好ましい。
【0035】
開示されたポリマー分散体は、好ましくは、メチルメタクリレート20~30重量%、メチルアクリレート60~70重量%、およびメタクリル酸8~12重量%が重合した15~50重量%のポリマーを含んでもよい。ポリマーは、メチルメタクリレート25重量%、メチルアクリレート65重量%、およびメタクリル酸10重量%が重合していることが最も好ましい。
【0036】
メチルメタクリレート25重量%、メチルアクリレート65重量%、およびメタクリル酸10重量%が重合したポリマーの30重量%水性分散体は、市販品のEUDRAGUARD(登録商標)バイオティクスに相当する。
【0037】
モノマーの百分率は合計して100%になる。機能性ポリマーは、2~30mg/cm、好ましくは5~20mg/cmの量で塗布する。
【0038】
本発明の1つの主題は、飼料または食品サプリメントとしての、本発明に記載の調製物の使用である。
【0039】
本発明のさらなる主題はまた、飼料または食品中のシンバイオティクス成分としての、本発明の調製物の使用である。本発明によれば、「シンバイオティクス」という用語は、プレバイオティクスとプロバイオティクス成分とを含む組成物を指すものとする。さらに、本発明は、「プレバイオティクス」という用語の更新された定義を指し、これは、微生物によって選択的に利用され、健康上の利点をもたらす基質を意味し、アミノ酸およびペプチドも含むものとする。したがって、本発明に記載のシンバイオティクス組成物は、プロバイオティクス株と、プレバイオティクスとしてのアミノ酸またはオリゴペプチドとを含む組成物である。
【0040】
本発明に記載の好ましい食料品は、乳製品、特にヨーグルト、チーズ、牛乳、バターおよびクワルクである。
【0041】
本発明の菌株の細胞は、特に本発明の組成物において、胞子(休眠状態にある)として、栄養細胞(成長状態にある)として、遷移状態細胞(成長段階から胞子形成段階に移行している)として、または少なくとも2つの組合せ、特にこれらのタイプの細胞のすべてとして存在してもよい。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、主に、または胞子のみを含む。
【0042】
本発明のさらなる主題は、本発明に記載の調製物、ならびに好ましくはタンパク質、炭水化物、脂肪、さらなるプロバイオティクス、プレバイオティクス、酵素、ビタミン、免疫調節物質、代用乳、ミネラル、アミノ酸、抗コクシジウム剤、酸ベースの製品、医薬品、およびそれらの組合せから選択される少なくとも1つのさらなる飼料もしくは食品成分を含む飼料または食料品組成物である。
【0043】
本発明に記載の飼料または食料品組成物は、丸剤、カプセル、錠剤または液体の形態の栄養補助食品も含む。
【0044】
本発明の組成物、特に飼料、食品および医薬組成物は、好ましくは本発明の菌株を含み、約1×10~約2×1012CFU/gの飼料/食品またはmlの水の割合で、特に、約1×10、または約1×10、または約1×10、または約1×10、または約1×10、または約1×10、または約1×10、または約1×1010、または約1×1011、または約1×1012CFU/gの飼料/食品またはmlの水の割合で、好ましくは、約1×10~約1×1010CFU/gの飼料/食品またはmlの水の量で、より好ましくは、1×10~1×10CFU/gの飼料/食品またはmlの水の量で、動物またはヒトに投与される。
【0045】
それに対応して、本発明の飼料または食品組成物中の本発明の調製物の好ましい量は、好ましくは0.1重量%~10重量%、より好ましくは0.2重量%~5重量%、特に0.3重量%~3重量%の範囲である。
【0046】
本発明のさらなる主題は、本発明に記載の調製物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物である。
【0047】
本発明に記載の調製物は、動物またはヒトに投与される場合、好ましくは、動物またはヒトの健康状態、特に腸の健康、心血管の健康、健康的な体重管理または免疫の健康を改善する。
【0048】
本発明のさらなる主題は、したがって、下痢、便秘、過敏性腸症候群、クローン病、潰瘍性大腸炎、大腸がん、腸がん、心血管疾患、動脈硬化症、脂肪肝疾患、脂質異常症、高コレステロール血症、肥満、脂肪過多症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、慢性炎症性疾患、およびアレルギー性疾患の予防または治療に使用するための本発明に記載の組成物である。
【0049】
本発明に記載の有利な構成は、次の、
- 腸内マイクロバイオームにおけるClostridium群XIVaの細菌の総量を増加させること、
- 腸内マイクロバイオームにおけるClostridium群XIの細菌の総量を減少させること、
- 短鎖脂肪酸、好ましくはn-酪酸、プロピオン酸、酢酸および乳酸の産生を増加させること、ならびに
- 分岐鎖短鎖脂肪酸、好ましくはイソ酪酸およびイソ吉草酸の形成を阻害すること、
の1つまたは複数によって動物またはヒトの腸の健康状態を改善するための組成物である。
【0050】
本発明のさらなる主題は、Bacillus subtilis、Bacillus licheniformis、Bacillus amyloliquefaciens、Bacillus pumilusから選択される少なくとも1つのプロバイオティクス株、ならびにグリシン-グルタミン、グリシン-グルタミン酸、アラニン-グルタミン、アラニン-グルタミン酸およびそのアセチル化型から選択される少なくとも1つのジペプチド、を含むカプセルである。
【0051】
好ましい実施形態では、プロバイオティクス株は、Bacillus subtilisであり、好ましくはBacillus subtilis DSM32315、Bacillus subtilis DSM32540、Bacillus subtilis DSM32592である。
【0052】
カプセルは、好ましくは、1×10から2×1010CFUの間のプロバイオティクス株、および50mgから800mgの間のジペプチドを含む。
【0053】
また、プロバイオティクス株およびジペプチドの量が、カプセル充填物の総重量の少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、最も好ましくは少なくとも70重量%である場合が好ましい。
【0054】
カプセルは、さらに追加のビタミンまたはミネラルを含んでもよい。好ましくは、ビタミンは、ビタミンA(all-trans-レチノール、all-trans-レチニルエステル、ならびにall-trans-β-カロテンおよび他のプロビタミンAカロテノイドとして)、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB6(ピリドキシン)、ビタミンB7(ビオチン)、ビタミンB9(葉酸または葉酸塩)、ビタミンB12(コバラミン)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンD(カルシフェロール)、ビタミンE(トコフェロールおよびトコトリエノール)、およびビタミンK(キノン)から選択される。
【0055】
好ましくは、ミネラルは、硫黄、鉄、塩素、カルシウム、クロム、コバルト、銅、亜鉛、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ヨウ素およびセレンから選択される。
【0056】
カプセルは、好ましくは、イヌリン、フラクトオリゴ糖(FOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、デンプン、ペクチン、β-グルカンおよびキシロオリゴ糖から選択される1つまたは複数のプレバイオティクス成分をさらに含んでもよい。
【0057】
カプセルは、好ましくは、1つまたは複数の植物抽出物をさらに含んでもよく、植物は、好ましくは、ブロッコリー、オリーブ果実、ザクロ、カシス、ブルーベリー、ビルベリー、シーバックソーン、カムカム、ボイセンベリー、ウコン、ショウガ、ニンニク、グレープシード、アサイーベリー、アロニア、クコ、ホースラディッシュ、ボスウェリアセラータ、スピルリナ、チョウセンニンジン、カンナビジオール、ローズヒップ、プーアール、煎茶、エキナセア、および緑茶の葉、から選択される。
【0058】
好ましい構成では、カプセルは、腸溶コーティングを含み、腸溶コーティングが以下の、メチルアクリレート-メタクリル酸コポリマー、セルロースアセテートフタレート(CAP)、セルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(ヒプロメロースアセテートスクシネート)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、メチルメタクリレート-メタクリル酸コポリマー、シェラック、セルロースアセテートトリメリテート、アルギン酸ナトリウム、ゼイン、のうちの1つまたは複数を含む。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1A】16S rRNAコード領域遺伝子のV4高頻度可変領域のMiSeq配列決定に基づくi-screen発酵サンプルの属レベルを示す円グラフである。検出された属とそれらの相対的存在量を陰影部分で示す。何も添加せずに0時間インキュベーション。
図1B】何も添加せずに24時間インキュベーション後。
図1C】Bacillus subtilis DSM32315栄養細胞添加後0時間。
図1D】Bacillus subtilis DSM32315栄養細胞添加後24時間。
図1E】Bacillus subtilis DSM32540栄養細胞添加後0時間。
図1F】Bacillus subtilis DSM32540栄養細胞添加後24時間。
図1G】Bacillus licheniformis DSM32314栄養細胞添加後0時間。
図1H】Bacillus licheniformis DSM32314栄養細胞添加後24時間。
図1I】Bacillus amyloliquefaciens CECT5940栄養細胞添加後0時間。
図1J】Bacillus amyloliquefaciens CECT5940栄養細胞添加後24時間。
図2】SIEM中で24時間インキュベーション後、SIEM中で、ならびにBacillus subtilis DSM32315、Bacillus subtilis DSM32540、Bacillus licheniformis DSM32314およびBacillus amyloliquefaciens CECT5940をそれぞれ含む結腸微生物叢の存在下で測定した乳酸濃度をmg/mlで示した図である。乳酸の検出限界は0.02mg/mlであった。
図3】SIEM中で24時間インキュベーション後、SIEM中で、ならびにBacillus subtilis DSM32315、Bacillus licheniformis DSM32314およびBacillus amyloliquefaciens CECT5940をそれぞれ含む結腸微生物叢の存在下で測定した酢酸濃度をmMで示した図である。
図4】SIEM中で24時間インキュベーション後、SIEM中で、ならびにBacillus subtilis DSM32315、Bacillus subtilis DSM32540、Bacillus licheniformis DSM32314およびBacillus amyloliquefaciens CECT5940をそれぞれ含む結腸微生物叢の存在下で測定したプロピオン酸濃度をmMで示した図である。
図5】SIEM中で24時間インキュベーション後、Bacillus subtilis DSM32315、Bacillus licheniformis DSM32314およびBacillus amyloliquefaciens CECT5940をそれぞれ含む結腸微生物叢の存在下で測定したn-酪酸濃度をmMで示した図である。
図6】SIEM中で24時間インキュベーション後、Bacillus subtilis DSM32315、およびBacillus subtilis DSM32540をそれぞれ含む結腸微生物叢の存在下で測定したイソ酪酸、およびイソ吉草酸の濃度をmMで示した図である。
図7】16S rRNAコード領域遺伝子のV4高頻度可変領域のMiSeq配列決定に基づくi-screen発酵サンプルの属レベルを示す棒グラフである。斜線の棒は、検出されたClostridium XI属およびClostridium XIVa属とその相対的存在量を表している。
図8】16S rRNAコード領域遺伝子のV4高頻度可変領域のMiSeq配列決定に基づくi-screen発酵サンプルの属レベルを示す棒グラフである。斜線の棒は、検出されたClostridium XI属およびClostridium XIVa属とその相対的存在量を表している。
図9】ヒト微生物叢と共にSIEM中で24時間インキュベーション後、異なるアミノ酸またはジペプチドを含む結腸微生物叢の存在下で、それぞれB.subtilis DSM32315細胞の組合せの有無で測定したn-酪酸濃度をmMで示した図である。
図10】ヒト微生物叢と共にSIEM中で24時間インキュベーション後、異なるアミノ酸またはジペプチドを含む結腸微生物叢の存在下で、それぞれB.licheniformis(DSM32314)細胞またはB.amyloliquefaciens(CECT 5940)細胞の組合せの有無で測定したn-酪酸濃度をmMで示した図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0060】
Bacillus subtilis DSM32315株、Bacillus subtilis DSM32540株、Bacillus licheniformis DSM32314株、およびBacillus amyloliquefaciens CECT5940株は、結腸ヒト微生物叢内で生存し続けることができる
腸管スクリーニングモデル
プロバイオティクス株Bacillus subtilis DSM32315、Bacillus subtilis DSM32540、Bacillus licheniformis DSM32314およびBacillus amyloliquefaciens CECT5940の成人の結腸微生物叢に対する効果を決定するために、腸管スクリーニングモデルを使用した(i-screen、TNO、the Netherlands)。したがって、i-screenモデルに、6人の健康な成人ボランティア(白人、ヨーロッパ人のライフスタイルと栄養)由来のプールされた糞便提供からなる標準的なヒト成人糞便微生物叢材料を接種した。この糞便材料を混合し、フェッドバッチ発酵槽で40時間培養して、先に記載されているような標準化された微生物叢を作成した[21]。これらの標準成人腸内微生物叢セットを、-80℃で12%グリセロール中に保存した。
【0061】
腸管微生物叢を、改変標準回腸排出培地(SIEM)中でインビトロ培養し、その組成を[22]に記載し、以下のように改変した。0.047g/lペクチン、0.047g/lキシラン、0.047g/lアラビノガラクタン、0.047g/lアミロペクチン、0.392g/lデンプン、24.0g/lカゼイン、24.0Bactoペプトン、0.4牛胆汁、および0.2g/lシステイン。すべての構成成分は、Trititium Microbiology(Veldhoven、The Netherlands)により供給した。培地のpHは5.8に調整した。
【0062】
i-screen発酵については、前培養した標準化糞便接種材料を1350μlの改変SIEMで50倍に希釈した。すべての実験は、3連で行った。Bacillus subtilis(DSM32315)株、Bacillus subtilis DSM32540株、Bacillus licheniformis DSM32314株、およびBacillus amyloliquefaciens CECT5940株を50mlのLBKelly培地[23]中で約16時間、別々に前培養した。インキュベーションは、振盪フラスコ中、37℃、好気的条件下で行った。インキュベーション後、600nmでの吸光度測定により細菌密度を測定した。1mlの緩衝液(0.1mM MES pH6)中に、1×1010細胞/mlの最終ストック溶液を調製した。各菌株の懸濁液を、それぞれ約10細胞/mlの最終レベルになるようにi-screenに導入した。
【0063】
i-screenのインキュベーションは、0.2%O、0.2%CO、10%H、89.6%N、のガス条件下で行った。
【0064】
DNA単離
16S rRNAをコードする遺伝子の配列決定のためのDNA抽出は、Ladiratら(2013)に記載されているように、いくつかの若干の変更を加えて行った。ウェルあたり300μlの溶解緩衝液(Mag Mini DNA Isolation Kit、LGCltd、UK)、500μlのジルコニウムビーズ(0.1mm;BioSpec products、Bartlesville、OK、USA)、および500μlのトリス-HCl(pH8.0;Carl Roth GMBH、Germany)で飽和させたフェノールを含む96ウェルプレートのウェルに、約100μlの培養物を添加した。96ウェルプレートを、Mini-BeadBeater-96(BioSpec products、Bartlesville、OK、USA)に2100振動/分で2分間置いた。続いて、製造業者の推奨にしたがって、Agowa Mag Mini DNA Isolation Kitを用いてDNAを精製した。抽出されたDNAを、最終容量60μlの緩衝液で溶出した。
【0065】
V4 16S rRNA遺伝子配列決定
微生物叢組成を、V4高頻度可変領域の16S rRNA遺伝子アンプリコン配列決定により解析した。これは、一連のステップによって達成された。
【0066】
i-screenDNAサンプル中の細菌DNA量は、細菌16S rRNA遺伝子に特異的なプライマー、フォワードプライマー:CGAAAGCGTGGGGAGCAAA、リバースプライマー:GTTCGTACTCCCCAGGCGG、プローブ:6FAM-ATTAGATACCCTGGTAGTCCA-MGBを用いた定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)により測定した。
【0067】
その後、F515/R806プライマー[25]を用いて、[24](2013)に記載された、500pgのDNAを増幅することにより、16S rRNA遺伝子のV4高頻度可変領域のPCRアンプリコンを個々のサンプルについて生成した。プライマーには、Illuminaアダプターおよび固有の8ntサンプルインデックス配列キーが含まれていた[24]。技術的な品質管理のためにモックコントロールが含まれていた。サンプルあたりの増幅されたDNAの量は、Fragment Analyzer(Advanced Analytical)上のdsDNA 910 Reagent Kitを用いて定量した。アンプリコンライブラリーを等モル量でプールし、Gel Extraction Kit(Qiagen)を用いて1.2%アガロースゲルから精製した。ライブラリーは、Quant-iT(商標)PicoGreen(登録商標)dsDNA Assay Kit(Thermo Fisher Scientific)を用いて定量した。アンプリコンのペアエンド配列決定は、Illumina MiSeqプラットフォーム(Illumina、Eindhoven、The Netherlands)を用いて実施した。
【0068】
配列データは、mothur MiSeq SOP[24]に沿ってMothur v.1.36.1[26]で処理した。リードペアを結合する前に、Btrim[27]を用いて、スライディングウィンドウサイズを5nt、および平均品質スコアを25で、低品質領域をトリミングした。結合後、配列を長さでフィルタリングしたが、曖昧な塩基は許容しなかった。固有の配列を、細菌のSILVA SEEDリファレンスアライメントリリース102(http://www.mothur.org/wiki/Silva_reference_filesで入手可能)にアラインメントし、短すぎる配列はscreen.seqsを用いて、パラメーター「optimize=start-end, criteria=90」で除去した。キメラ配列は、de novoモードでUCHIME[28]を用いてサンプルごとに同定し、除去した。次に、データセット全体で10回未満出現する配列を除去した。リボソームデータベースプロジェクト(RDP)の単純ベイズ分類器を用いて、信頼度閾値60%および1000回反復[29]およびRDPトレーニングセットv.9(trainset9_032012)のmothurフォーマット版を用いて、すべての配列に分類学的名称を割り当てた。
【0069】
16S rRNA遺伝子アンプリコンを敏感にクラスタリングする最小エントロピー分解(MED)アルゴリズムを用いて配列をグループ化した[30]。ノイズをフィルタリングするために、「最小実質的存在量」フィルターを200に設定した。
【0070】
また、i-screenの結腸ヒト微生物叢には、各プロバイオティクス株の生育可能なBacillus spp.栄養細胞を補充した。
【0071】
16S rRNAコード遺伝子のV4高頻度可変領域のMiSeq配列決定に基づいて、個々の菌株に関連する微生物叢組成に特異的な影響を可視化することができた。
【0072】
配列のリード数に基づいて、i-screen実験開始時に桿菌の存在量が高く(約10cfu/ml)、したがって、Bacillus subtilis DSM32315は、t=0時間で、全細菌集団の約91%に寄与し(図1C)、Bacillus subtilis DSM32540はt=0時間で全細菌集団の約87%に寄与し(図1E)、Bacillus licheniformis DSM32314はt=0時間で全細菌集団の約94%に寄与し(図1G)、Bacillus amyloliquefaciens CECT5940はt=0時間で全細菌集団の約88%に寄与した(図1I)。
【0073】
Bacillus spp.株を添加していないコントロールは、0時間(図1A)と24時間インキュベーション後(図1B)の時点で示されている。24時間インキュベーションでは、糞便微生物叢は桿菌の相対的な存在を犠牲にして回復することができた。DSM32315細胞は、24時間インキュベーション後のi-screenに41%のレベルで存在が持続しているように見え(図1D)、DSM32540細胞は、24時間インキュベーション後のi-screenに19%のレベルで存在が持続しているように見え(図1F)、DSM32314細胞は24時間インキュベーション後のi-screenに4%のレベルで存在が持続しているように見え(図1H)、CECT5940細胞は24時間インキュベーション後のi-screenに7%のレベルで存在が持続しているように見えた(図1J)。
【実施例2】
【0074】
プロバイオティクス株Bacillus subtilis DSM32315、Bacillus subtilis DSM32540、Bacillus licheniformis DSM32314、およびBacillus amyloliquefaciens CECT5940は、有意なレベルの乳酸を産生する
開始時のSIEMでは、約0.04mg/mlの低レベルの乳酸が検出され、これは24時間後に<0.02mg/mlの乳酸含有量を有する微生物叢の存在下で完全に消失した(図2)。Bacillus株は、24時間後に結腸群落のないSIEMにおいて有意なレベルの乳酸を産生した。DSM32315の細胞は0.35mg/mlを産生し、DSM32540の細胞は0.31mg/mlを産生し、DSM32314の細胞は0.19mg/mlを産生し、CECT5940の細胞は0.11mg/mlを産生した。
【0075】
ヒト腸内微生物叢との24時間インキュベーション後も、乳酸の量は、DSM32315またはDSM32540細胞の存在下では0.12mg/mlに、DSM32314の存在下では0.15g/mlに、それぞれ有意に増加した。
【0076】
したがって、これらのプロバイオティクス株は、ヒト腸内微生物叢による有意な乳酸の形成を生じさせる。乳酸は健康を促進するSCFAに変換することができるので、これは、有益な効果として解釈することができる。
【実施例3】
【0077】
プロバイオティクス株Bacillus subtilis DSM32315、Bacillus licheniformis DSM32314、およびBacillus amyloliquefaciens CECT5940は、それぞれヒト微生物叢群落による酢酸産生を支持している
Bacillus DSM32315株、DSM32314株およびCECT5940株は、腸内微生物叢の酢酸産生の実質的な増加を引き起こす。図3は、プロバイオティクス株を添加せずに24時間曝露した後のi-screenでは約44mMの平均酢酸レベルを示すが、酢酸はSIEMではほとんど検出できない3.4mMであることを示している。
【0078】
24時間インキュベーション後、DSM32315株、DSM32314株、およびCECT5940株の存在下で、酢酸濃度がそれぞれ10.4mM、43.7mM、および3.3mM増加することが観察された(図3)。
【0079】
すべてのデータのp値は0.05未満であり、これは統計的に有意であることを意味する。したがって、プロバイオティクス株DSM32315、DSM32314、およびCECT5940は、ヒトの腸に有益な効果がある酢酸産生を支持している。
【実施例4】
【0080】
プロバイオティクス株Bacillus subtilis DSM32315、Bacillus subtilis DSM32540、Bacillus licheniformis DSM32314、およびBacillus amyloliquefaciens CECT5940は、それぞれヒト微生物叢によるプロピオン酸の産生を支持している
Bacillus DSM32315株、DSM32540株、DSM32314株およびCECT5940株は、SIEM中ではプロピオン酸を産生しないが、ヒト微生物叢によるプロピオン酸の産生を有意に(p値<0.05)促進する(図4)。これらの菌株は、コントロールと比較して、腸内微生物叢によるプロピオン酸の産生を有意に支持している。図4は、プロバイオティクス株を添加せずに24時間曝露した後のi-screenでは約11.5mMの平均プロピオン酸レベルを示すが、プロピオン酸はSIEMではほとんど検出できない2.7mMであることを示している。Bacillus subtilis DSM32315栄養細胞の存在下では、プロピオン酸の量は24時間後のコントロールよりも15.1mM高かった。Bacillus subtilis DSM32540栄養細胞の存在下では、プロピオン酸の量は12.2mM高かった。DSM32314の存在下では、プロピオン酸の量は13.4mM高く、CECT5940の存在下ではプロピオン酸の量は7.1mM高かった。
【0081】
プロピオン酸は、糖新生に組み込むことができるため、ヒトの腸の健康状態に有益である。
【実施例5】
【0082】
プロバイオティクス株Bacillus subtilis DSM32315、Bacillus licheniformis DSM32314、およびBacillus amyloliquefaciens CECT5940は、それぞれヒト微生物叢組成におけるn-酪酸の産生を支持している
プロバイオティクス株Bacillus subtilis DSM32315、Bacillus licheniformis DSM32314、およびBacillus amyloliquefaciens CECT5940は、SIEM中で24時間曝露した後に検出可能なレベルのn-酪酸を産生しないが、ヒト微生物叢によるn-酪酸産生のレベルに有意な正の影響(p値<0.05)を及ぼす(図5)。図5は、プロバイオティクス株を添加せずに24時間曝露した後のi-screenでは約5.4mMの平均n-酪酸レベルを示すが、プロピオン酸はSIEMではほとんど検出できない0.3mMであることを示している。Bacillus subtilis DSM32315栄養細胞の存在下では、n-酪酸の量は24時間後のコントロールよりも2.0mM高かった。DSM32314栄養細胞の存在下では、n-酪酸の量は1.0mM高く、CECT5940栄養細胞の存在下ではn-酪酸の量は4.8mM高かった。より高いn-酪酸の量の生成は、脂質生合成、例えば腸内ホルモンの産生に有益である。
【実施例6】
【0083】
Bacillus subtilis DSM32315株およびDSM32540株は、ヒト微生物叢組成中のイソ酪酸およびイソ吉草酸の形成をそれぞれ減少させる
図6は、プロバイオティクス株を添加せずに24時間曝露した後のi-screenでは約0.73mMの平均イソ酪酸レベルおよび約2.2mMの平均イソ吉草酸レベルを示すが、SIEMではイソ酪酸は検出されず、イソ吉草酸の含有量は0.24mMであったことを示している。
【0084】
特に、DSM32315株およびDSM32540株は、ヒト腸内微生物叢によるイソ酪酸およびイソ吉草酸産生を有意に減少させる(p値<0.05)。24時間インキュベーション後、コントロールと比較して、イソ酪酸含有量は、それぞれDSM32315の細胞の存在下では0.5mM低く、DSM32540の細胞の存在下では0.4mM低かった。
【0085】
Bacillus DSM32315株および DSM32540株もまた、ヒト微生物叢に添加した場合、イソ吉草酸産生のレベルに負の影響を及ぼす。コントロールと比較して、i-screenでは、それぞれ0.7mMおよび0.8mMの値で有意に(p値<0.05)濃度が低下している。
【0086】
i-screenの腸内微生物叢にBacillus DSM32315株を導入すると、細胞はn-酪酸の産生を支持し、イソ酪酸およびイソ吉草酸の形成を阻害する。これは、腸内のタンパク質発酵プロセスが低下していることを示しており、有害な副産物の産生が減少していることも示していると考えられる。
【実施例7】
【0087】
Bacillus subtilis DSM32315、Bacillus subtilis DSM32540、Bacillus licheniformis DSM32314、およびBacillus amyloliquefaciens CECT5940の存在は、それぞれClostridium XIクラスターの存在量を減少させる。DSM32315株、DSM32314株およびCECT5940株は、それぞれClostridium XIVaクラスターの存在量を増加させる。
開始時点0時間(図1)におけるコントロールと、24時間後の微生物叢の発達を比較すると、DSM32315株、DSM32540株、DSM32314株、およびCECT5940株の存在は、Clostridium XIクラスターを6%から、全微生物群落の3%未満の値にまで減少させる(図7)。Clostridium XIVaクラスターは、24時間後に、コントロールの5%からプロバイオティクス細胞の存在下では、それぞれ、全群落の少なくとも8%まで増加した。i-screenのインキュベーションは、0.2%O、0.2%CO、10%H、89.6%N、のガス条件下で行った。
【0088】
したがって、これらのプロバイオティクス株の存在下では、ヒト微生物叢組成は、より健康的な群落にシフトされる。
【実施例8】
【0089】
グルタミンまたはその誘導体の添加は、ヒトの微生物群落を著しく変化させる
グルタミンまたはグルタミン酸含有ジペプチドの存在は、除菌されたClostridium群XIおよび増加したClostridium群XIVaへのシフトによって微生物群落に影響を及ぼす(図8)。単一アミノ酸を3.5mMの濃度まで、ジペプチドを7mMの濃度まで添加した。i-screenの曝露は、0%O2、0.2%CO、10%H、90%N、のガス条件下で、実施例1に記載したように行った。さらに、Ala-GlnおよびGly-GluはClostridia XI群をほぼ完全に減少させ、これは腸の健康に対する強力な有益な効果と関連している。コントロールとして、いかなるグルタミンまたはグルタミン酸も含まないジペプチドGly-Tyr、ならびに単一アミノ酸グルタミン(Gln)およびグルタミン酸(Glu)をテストしたが、微生物群落に正の効果はなかった。
【実施例9】
【0090】
Bacillus subtilis(DSM32315)、Bacillus licheniformis(DSM32314)またはBacillus amyloliquefaciens(CECT5940)とグルタミンまたはその誘導体との組み合わせた添加は、単一成分よりも微生物群落の変化およびその短鎖酸産生に相乗効果を示す
いくつかのグルタミンおよびグルタミン酸含有ペプチドと一緒に、異なるプロバイオティクス株を組み合わせた効果を、実施例7に記載の方法で詳細に分析した。コントロールとして、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)、および非Glu/非Glnジペプチドであるグリシン-チロシン(Gly-Tyr)の単独およびプロバイオティクス株との組合せの効果を分析した。単一アミノ酸を3.5mMの濃度まで、ジペプチドを7mMの濃度まで添加した。
【0091】
24時間インキュベーション後の微生物叢組成を分析した。アミノ酸またはジペプチド、およびプロバイオティクス細胞の単独添加と比較して、Clostridium XIVa群の百分率のより大きな増加およびClostridium XI群のより大きな減少によって明らかにされるように、微生物群落組成に対する、いくつかの組合せの相乗的な正の効果が観察された。この相乗効果は、B.subtilis(DSM32315)にはAla-Gln、Gly-Glu、およびGly-Glnを、B.licheniformis(DSM32314)にはAla-Gln、Gly-Glu、およびGly-Glnを、B.amyloliquefaciens(CECT5940)にはAla-Gln、Gln、Gly-Glu、およびGly-Glnを組み合わせた場合に観察された(表1)。
【0092】
したがって、グルタミンまたはグルタミン酸含有ジペプチドと組み合わせたこれらのプロバイオティクス株の存在下では、ヒト微生物叢組成は、より健康的な群落にシフトされる。
【0093】
【表1】
【実施例10】
【0094】
B.subtilis(DSM32315)、B.licheniformis(DSM32314)またはB.amyloliquefaciens(CECT5940)とグルタミン、またはグルタミンもしくはグルタミン酸含有ジペプチドとの組み合わせた添加は、微生物群落のn-酪酸産生に対して相乗効果を示す
グルタミン、またはグルタミンもしくはグルタミン酸含有ジペプチドを含有するペプチドと一緒に、異なるプロバイオティクス株を組み合わせたことの、微生物群落のn-酪酸産生に対する効果を、実施例1および5に記載のように、B.subtilis(DSM32315)株について分析した。単一アミノ酸を3.5mMの濃度まで、ジペプチドを7mMの濃度まで添加した。
【0095】
24時間インキュベーション後のn-酪酸含有量を分析した。B.subtilis(DSM32315)とGln、Gly-Gln、Ala-Gln、Glu、またはGly-Gluとの組合せについて、n-酪酸濃度に対する相乗的な正の効果が観察された(図9)。これは、このプロバイオティクス株がグルタミン、またはグルタミン酸、またはグルタミン含有ペプチドとの組合せで、微生物群落の有益なn-酪酸産生を促進する効果を有することを示している。ネガティブコントロールとして、いかなるグルタミンまたはグルタミン酸も含まないジペプチドGly-Tyrをテストしたが、n-酪酸産生に正の効果はなかった。
【実施例11】
【0096】
B.licheniformis(DSM32314)細胞またはB.amyloliquefaciens(CECT5940)細胞とグルタミン、グルタミンまたはグルタミン酸含有ジペプチドとの組み合わせた添加は、微生物群落のn-酪酸産生に対して相乗効果を示す
グルタミン、またはグルタミンもしくはグルタミン酸含有ジペプチドを含有するペプチドと一緒に、異なるプロバイオティクス株を組み合わせたことの、微生物群落のn-酪酸産生に対する効果を、実施例1、5、および10に記載のように、B.licheniformis(DSM32314)およびB.amyloliquefaciens(CECT5940)株について分析した。単一アミノ酸を3.5mMの濃度まで、ジペプチドを7mMの濃度まで添加した。
【0097】
24時間インキュベーション後のn-酪酸含有量を分析した。B.licheniformis(DSM32314)とGly-Gln、Ala-Gln、およびGly-Gluとの組合せについて、n-酪酸濃度に対する相乗的な正の効果が観察された(図10)。また、B.amyloliquefaciens(CECT5940)とGln、およびGly-Glnとの組合せについても同様であった。
【0098】
これは、このプロバイオティクス株がグルタミン、またはグルタミン酸、またはグルタミン含有ペプチドとの組合せで、微生物群落の有益なn-酪酸産生を促進する効果を有することを示している。ネガティブコントロールとして、いかなるグルタミンまたはグルタミン酸も含まないジペプチドGly-Tyrをテストしたが、n-酪酸産生に正の効果はなかった。
【実施例12】
【0099】
Bacillus subtilisおよびプレバイオティクスとしてのジペプチドを含むカプセル
以下の構成成分をHPMCカプセル(サイズ3)に充填した。
【0100】
【表2】
【0101】
カプセルは、さらにイヌリン、フラクトオリゴ糖(FOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、デンプン、ペクチン、β-グルカンおよびキシロオリゴ糖から選択されるプレバイオティクス成分をさらに含んでもよい。
【0102】
カプセルは、ブロッコリー、オリーブ果実、ザクロ、カシス、ブルーベリー、ビルベリー、シーバックソーン、カムカム、ボイセンベリー、ウコン、ショウガ、ニンニク、グレープシード、アサイーベリー、アロニア、クコ、ホースラディッシュ、ボスウェリアセラータ、スピルリナ、チョウセンニンジン、カンナビジオール、ローズヒップ、プーアール、煎茶、エキナセア、緑茶の葉、から選択される、1つまたは複数の植物抽出物をさらに含んでもよい。
【0103】
カプセルは、ビタミンA、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB9(葉酸または葉酸塩)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンD(カルシフェロール)、ビタミンE(トコフェロールおよびトコトリエノール)、およびビタミンK(キノン)から選択されるビタミン、または硫黄、鉄、塩素、カルシウム、クロム、コバルト、銅、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ヨウ素、およびセレンから選択されるミネラル、をさらに含んでもよい。
【実施例13】
【0104】
Bacillus subtilisおよびプレバイオティクスとしてのジペプチドおよび腸溶コーティングを含むカプセル
実施例12で調製したカプセルを腸溶コーティング組成物でコーティングした。
【0105】
【表3】
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図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図1J
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
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