(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】介入システム、介入方法、および、介入プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20230101AFI20231221BHJP
【FI】
G06Q10/06
(21)【出願番号】P 2021053936
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 佑子
(72)【発明者】
【氏名】荻野 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】田中 毅
(72)【発明者】
【氏名】黎 子盛
【審査官】太田 龍一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-142258(JP,A)
【文献】特表2020-531982(JP,A)
【文献】国際公開第2017/022013(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の活動生産性を向上させるために、前記対象者に影響を与える要因の改善内容を対象者および/またはユーザーに提案する介入システムであって、
前記対象者に影響を与える予め定めた複数の影響要因の1以上について、前記影響要因の特徴量を表す値を受け取って入力値とし、前記対象者の活動生産性の予測値を出力する、学習済みの学習モデルを含む活動生産性予測部と、
2以上の前記影響要因にそれぞれ予め用意した前記特徴量の改善内容、および/または、1つの前記影響要因について予め用意した前記特徴量の2種類以上の改善内容が、予め格納された改善内容リスト格納部と、
1以上の前記影響要因について計測または入力された、現在および/または現在までの所定期間の前記特徴量を表す値を受け取って、前記学習モデルに前記入力値として入力し、前記学習モデルが出力する前記活動生産性の予測値を取得する介入なし予測結果取得部と、
前記改善内容リスト格納部から前記影響要因について前記特徴量の前記改善内容を読み出し、残りの1以上の前記影響要因については、計測または入力された、現在および/または現在までの所定期間の前記特徴量を表す値を受け取って、前記改善内容と前記特徴量を表す値とを前記学習モデルに前記入力値として入力し、前記学習モデルが出力する活動生産性の予測値を得る処理を、2以上の前記改善内容ごとに行う介入あり予測結果取得部と、
前記介入なし予測結果取得部が得た活動生産性の前記予測値と、前記介入あり予測結果取得部が前記改善内容ごとに得た活動生産性の前記予測値との差分を、介入効果として算出する介入効果算出部と、
2以上の前記改善内容と、前記改善内容ごとの前記介入効果とを対応させて前記対象者および/またはユーザーに通知する結果出力部とを有することを特徴とする介入システム。
【請求項2】
請求項1に記載の介入システムであって、前記介入なし予測結果取得部と、前記介入あり予測結果取得部はそれぞれ、前記現在から所定期間の未来にかけての活動生産性の前記予測値の時間変化を求め、
前記介入効果算出部は、前記介入なし予測結果取得部と前記介入あり予測結果取得部がそれぞれ求めた前記予測値の時間変化の差分を算出することにより、前記介入効果の時間変化を求めることを特徴とする介入システム。
【請求項3】
請求項2に記載の介入システムであって、前記改善内容ごとの前記介入効果を比較し、比較結果に基づいて、前記対象者および/またはユーザーに推奨する前記改善内容を決定する改善内容決定部をさらに有することを特徴とする介入システム。
【請求項4】
請求項3に記載の介入システムであって、前記改善内容決定部は、予め定めた1以上の時点の前記介入効果の大きさ、前記介入効果の時間変化の速さ、および、前記介入効果の時間変化の安定性の少なくとも1つに基づいて、前記改善内容ごとの前記介入効果から、前記対象者および/またはユーザーに推奨する前記改善内容を決定することを特徴とする介入システム。
【請求項5】
請求項1に記載の介入システムであって、前記介入なし予測結果取得部および前記介入あり予測結果取得部は、前記学習モデルの入力層と出力層の間の中間層に、前記対象者の心身状態の特徴量のデータを入力することを特徴とする介入システム。
【請求項6】
請求項1に記載の介入システムであって、前記対象者の心身状態の特徴量は、前記対象者の運動機能、認知機能、および、精神機能のうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする介入システム。
【請求項7】
請求項1に記載の介入システムであって、前記介入なし予測結果取得部および前記介入あり予測結果取得部は、前記影響要因の特徴量のデータを、予め定めた重みに基づいて平滑化処理してから前記学習モデルに入力することを特徴とする介入システム。
【請求項8】
請求項1に記載の介入システムであって、前記介入効果算出部は、前記差分を算出する代わりに、前記介入なし予測結果取得部が得た活動生産性の前記予測値と、前記介入あり予測結果取得部が得た活動生産性の前記予測値との比を、前記介入効果として算出することを特徴とする介入システム。
【請求項9】
請求項1に記載の介入システムであって、前記学習モデルは、リカレントニューラルネットワークまたは隠れマルコフモデルであることを特徴とする介入システム。
【請求項10】
請求項5に記載の介入システムであって、前記学習済みの学習モデルを生成する学習モデル生成部をさらに有し、
前記学習モデル生成部は、前記入力層に、学習モデルに予め用意した学習用環境要因の特徴量のデータを入力層に入力し、前記中間層に、予め用意した学習用心身状態の特徴量のデータを入力し、前記出力層に、前記予め用意した正解データである学習用活動生産性の特徴量のデータを入力して、学習させ、
前記学習モデル生成部は、前記学習用心身状態の特徴量のデータおよび前記学習用活動生産性の特徴量のデータとして、時系列データの最初の値がゼロとなるようにベースライン除去処理がされているものを用いることを特徴とする介入システム。
【請求項11】
請求項3に記載の介入システムであって、波及状態算出部をさらに有し、
前記介入あり予測結果取得部は、前記活動生産性の予測値に加えて、前記対象者の心身状態の予測値を前記学習モデルから取得し、
前記活動生産性の予測値および前記心身状態の予測値は、時系列データであり、
前記波及状態算出部は、前記活動生産性の予測値および前記心身状態の予測値のグラフの時系列的な変化点を抽出し、変化点が生じた順に前記活動生産性の予測値および前記心身状態の予測値のグラフを並べて、前記改善内容の波及状態を示すグラフを生成することを特徴とする介入システム。
【請求項12】
請求項1に記載の介入システムであって、前記影響要因の特徴量を表す値を計測する計測データ収集システムをさらに有することを特徴とする介入システム。
【請求項13】
対象者の活動生産性を向上させるために、前記対象者に影響を与える要因の改善内容を対象者および/またはユーザーに提案する介入方法であって、
前記対象者に影響を与える予め定めた複数の影響要因の1以上について、前記影響要因の特徴量を表す値を受け取って入力値とし、前記対象者の活動生産性の予測値を出力する、学習済みの学習モデルを生成するステップと、
1以上の前記影響要因について計測または入力された、現在および/または現在までの所定期間の前記特徴量を表す値を、前記学習モデルに前記入力値として入力し、前記学習モデルが出力する前記活動生産性の予測値を介入なし予測結果として取得するステップと、
予め作成しておいた改善内容リストの前記特徴量の改善内容と、計測または入力された、現在および/または現在までの所定期間の前記特徴量を表す値とを、前記学習モデルに前記入力値として入力し、前記学習モデルが出力する活動生産性の予測値を得る処理を、2以上の前記改善内容ごとに行って介入あり予測結果を取得するステップと、
前記介入なし予測結果と、前記介入あり予測結果との差分を、介入効果として算出する介入効果算出ステップと、
2以上の前記改善内容と、前記改善内容ごとの前記介入効果とを対応させて前記対象者および/またはユーザーに通知する結果出力ステップとを含むことを特徴とする介入方法。
【請求項14】
対象者の活動生産性を向上させるために、前記対象者に影響を与える要因の改善内容を対象者および/またはユーザーに提案する介入プログラムであって、
コンピュータに、
前記対象者に影響を与える予め定めた複数の影響要因の1以上について、前記影響要因の特徴量を表す値を受け取って入力値とし、前記対象者の活動生産性の予測値を出力する、学習済みの学習モデルを生成するステップと、
1以上の前記影響要因について計測または入力された、現在および/または現在までの所定期間の前記特徴量を表す値を、前記学習モデルに前記入力値として入力し、前記学習モデルが出力する前記活動生産性の予測値を介入なし予測結果として取得するステップと、
予め作成しておいた改善内容リストの前記特徴量の改善内容と、計測または入力された、現在および/または現在までの所定期間の前記特徴量を表す値とを、前記学習モデルに前記入力値として入力し、前記学習モデルが出力する活動生産性の予測値を得る処理を、2以上の前記改善内容ごとに行って介入あり予測結果を取得するステップと、
前記介入なし予測結果と、前記介入あり予測結果との差分を、介入効果として算出する介入効果算出ステップと、
2以上の前記改善内容と、前記改善内容ごとの前記介入効果とを対応させて前記対象者および/またはユーザーに通知する結果出力ステップと
を実行させる介入プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理サービス技術に関する。また、本発明は、介入効果を提示した上で、人の活動生産性を向上させるための最適な介入方法をレコメンドする方法を実現するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生産年齢人口が減少する中で、人手不足は深刻化しており、企業にとっては従業員一人当たりの就労生産性の向上が不可欠となっている。しかしながら、実際は、生活状況や就労環境などが不適切な状態にあるために心身の状態が低下し、その結果として、就労生産性が低下している場合が多い。例えば、人との交流が少なくなってうつ状態となり就労生産性が低下する場合や、長時間のデスク作業によって肩凝りや腰痛が生じて就労生産性が低下する場合等が考えられる。
【0003】
このような就労生産性の低下を防ぐためには、生活状況や就労環境などの影響要因が適切な状態になるように介入する必要がある。しかし、個々の就労者の影響要因や心身状態には多様性があるため、同一の介入を行っても介入の効果が同じように表れる訳ではない。
【0004】
そのため、介入効果が十分得られるように、個々の就労者に適した介入方法をレコメンドする必要がある。この点、特許文献1には、歩数・カロリー等などの健康状態の計測値および目標値から次の推奨すべき健康状態の目標値(例えば目標歩数、目標摂取カロリー)をレコメンドする方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている方法は、個々の就労者に適した目標値(例えば目標歩数、目標摂取カロリー)は示されるものの、その目標を就労者が達成した場合にどのような効果(介入効果)が得られるのかは明示されない。そのため、特許文献1の方法では、就労者が示された目標値を達成しようとするモチベーションを、引き出すことは難しい可能性がある。
【0007】
そこで、就労生産性を高めるために最適な介入方法をレコメンドできる方法が望まれる。
【0008】
本発明の目的は、介入効果を提示した上で、対象者の活動生産性を高めるための改善内容を提案するシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、対象者の活動生産性を向上させるために、対象者に影響を与える要因の改善内容を対象者および/またはユーザーに提案する介入システムを提供する。この介入システムは、
対象者に影響を与える予め定めた複数の影響要因の1以上について、影響要因の特徴量を表す値を受け取って入力値とし、対象者の活動生産性の予測値を出力する、学習済みの学習モデルを含む活動生産性予測部と、
2以上の前記影響要因にそれぞれ予め用意した特徴量の改善内容、および/または、1つの前記影響要因について予め用意した前記特徴量の2種類以上の改善内容が、予め格納された改善内容リスト格納部と、
1以上の影響要因について計測または入力された、現在および/または現在までの所定期間の特徴量を表す値を受け取って、学習モデルに入力値として入力し、学習モデルが出力する活動生産性の予測値を取得する介入なし予測結果取得部と、
改善内容リスト格納部から影響要因について特徴量の改善内容を読み出し、残りの1以上の影響要因については、計測または入力された、現在および/または現在までの所定期間の特徴量を表す値を受け取って、改善内容と特徴量を表す値とを学習モデルに入力値として入力し、学習モデルが出力する活動生産性の予測値を得る処理を、2以上の改善内容ごとに行う介入あり予測結果取得部と、
介入なし予測結果取得部が得た活動生産性の予測値と、介入あり予測結果取得部が改善内容ごとに得た活動生産性の予測値との差分を、介入効果として算出する介入効果算出部と、
2以上の改善内容と、改善内容ごとの介入効果とを対応させて対象者および/またはユーザーに通知する結果出力部と
を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、人の活動生産性を向上させるための最適な介入方法およびその介入効果を提示できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態1の活動生産性改善システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1の介入システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】実施の形態1の計測データDBに含まれる計測データとその特徴量を示す表である。
【
図4】実施の形態1の活動生産性予測モデルの学習フェーズの処理フローを示す流れ図である。
【
図5】実施の形態1のベースライン除去および追加を表す図である。
【
図6】実施の形態1の活動生産性予測モデルの構成を表す図である。
【
図7】実施の形態1の影響要因の特徴量のデータを平滑化する処理を表す図である。
【
図8】実施の形態1の介入システムの予測フェーズ以降の処理フローを示す流れ図である。
【
図9】実施の形態1の活動生産性予測モデルの項目間の波及状態を示す流れ図である。
【
図10】実施の形態1の介入効果を算出する方法を表す図である。
【
図11】実施の形態1の介入方法を決定する方法を表す図である。
【
図12】実施の形態1の表示画面の例として、対象者基礎情報管理画面を示す平面図である。
【
図13】実施の形態1の表示画面の例として、影響要因に関する対象者計測データ取得画面を示す平面図である。
【
図14】実施の形態1の表示画面の例として、心身状態と活動生産性に関する対象者計測データ取得画面を示す平面図である。
【
図15】実施の形態1の表示画面の例として、活動生産性予測画面を示す平面図である。
【
図16】実施の形態1の表示画面の例として、介入効果提示画面を示す平面図である。
【
図17】実施の形態1の表示画面の例として、介入方法候補選択画面を示す平面図である。
【
図18】実施の形態1の表示画面の例として、介入方法決定画面を示す平面図である。
【
図19】実施の形態1の表示画面の例として、初期設定を行う画面を示す平面図である。
【
図20】実施の形態1の対象者基礎情報を表す表である。
【
図22】実施の形態2の活動生産性改善システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態の活動精算性改善システムについて説明する。
【0013】
本実施形態の活動精算性改善システムは、対象者の活動生産性を向上させるために、対象者に影響を与える要因に介入するサービスを介入システムによって提供する。介入システムは、影響要因の特徴を表す値(特徴量)の改善内容(改善方法や改善後の値等)を、改善内容を実施した場合に得られる効果(介入効果)を提示しながら、ユーザに提案(レコメンド)する。
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において同一部には原則として同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0015】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【0016】
同一あるいは同様な機能を有する要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。ただし、複数の要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0017】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数、順序、もしくはその内容を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は文脈毎に用いられ、一つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
【0018】
図面等において示す各構成の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0019】
<<実施の形態1>>
図1~
図20を用いて、本発明の実施の形態1の活動生産性改善システム100について説明する。活動生産性改善システム100は、対象者に影響を与える要因の特徴量を表す値を計測等により取得し、対象者の活動生産性を向上させるための影響を与える要因の特徴量の改善内容(改善方法や改善後の値等)と、その改善内容を実施した場合の効果(介入効果)とを対応させてユーザーに提案(レコメンド)する。これにより、活動生産性改善システム100は、対象者の活動等に介入し、対象者の活動生産性を向上させる。
【0020】
本実施形態では、特に、企業等で雇用されている就労者の就労生産性を向上させるための改善内容の提案(レコメンド)する活動生産性改善システム100について説明するが、「人の活動生産性」の向上に関するものであればこれに限定されない。例えば、介護施設における入居者へのリハビリ方法のレコメンド、病院における患者への治療方法のレコメンド、学校や教育機関や研修施設や家庭における学習者への教育方法のレコメンド、スポーツクラブにおける参加者の運動練習方法のレコメンドなどにも活動生産性改善システム100を適用できる。
【0021】
[活動生産性改善システム100]
図1は、実施の形態1の活動生産性改善システムの全体構成を示す。
図1は、活動生産性改善システム100の全体構成を示す図である。
図2は、活動生産性改善システム100の介入システム1の構成を示す図である。
図3は、活動生産性改善システム100の計測データ収集システム2が収集する、対象者の心身状態に影響を与える影響要因の特徴量、および、対象者の心身状態の特徴量等の一例、および、計測データDB153内のデータの一例を示す図である。
【0022】
図1のように、活動生産性改善システム100は、介入システム1と、計測データ収集システム2とを備えて構成される。上述したように活動生産性改善システム100は、介入システム1と、計測データ収集システム2とを有し、それらが有線又は無線の通信線5を通じて接続されている。
【0023】
介入システム1は、実施の形態1では、企業の人事部門が管理する施設に設置される。計測データ収集システム2は、データ収集が行いやすい場所に設置される。例えば、企業の人事部門が管理する施設内の他、企業内に設けられた対象者の勤務場所、対象者の自宅、サテライトオフィス、対象者の身体への常時装着などが計測データ収集システム2の配置場所として考えられる。
【0024】
なお、介入システム1と計測データ収集システム2が一体型のシステムとして構成されてもよい。
【0025】
[計測データ収集システム2]
計測データ収集システム2は、計測機器3とデータ収集端末4を有し、それらが有線または無線の通信線5を通じて接続された構成である。データ収集機器3とデータ収集端末4は、別々の場所に設置されていても良い。
【0026】
計測データ収集システム2の計測機器3は、生活状況や就労環境など対象者の心身状態に影響を与える影響要因の特徴量を表す値(データ)を収集する。
【0027】
計測機器3にとしては、リストバンド型センサ・タブレット端末・スマートフォン・PC等の機器を用いることができる。これらの機器は、それぞれ一つの特徴量を表す値を収集する構成であってもよいし、予め定めた複数種類のデータの収集を兼ねていても良い。
【0028】
計測機器3で計測されたデータは、データ収集端末4によって収集される。
【0029】
また、一部または全部の影響要因の特徴量を表す値(データ)については、データ収集端末4が表示部に表示する入力画面において、対象者やユーザー(オペレーター)が入力してもよい。その場合データ収集端末4は、入力された値を受け付けることによって特徴量を表す値のデータを収集する。
【0030】
ここでは、
図3に一例を示すように、影響要因として、「対人交流」、「生活習慣」、「不定愁訴」、「食事」、および、「睡眠」の5種類が予め設定されている。それぞれの影響要因ごとに、特徴量(影響要因の特徴を表す値)は、複数種類設定されている。例えば、影響要因の「生活習慣」の特徴量としては、「飲酒量」、「喫煙量」、「運動量」および「運動時間」の4種類が設定されている。運動量および運動時間は、ユーザーが身に着けた運動センサ(リストバンド型センサ)により計測される。飲酒量および喫煙量は、データ収集端末4が表示部に表示する入力画面において、対象者やユーザー(オペレーター)が入力し、データ収集端末4が入力された値を受け付けることによって収集する。
【0031】
なお、
図3には、心身状態および活動生産性についても記載されているが、これらは、学習モデル(活動生産性予測モデル)の学習時には用いられるが、活動生産性予測モデルによる予測時には用いないため、計測データ収集システム2では収集しない。
【0032】
[介入システム1]
介入システム1は、情報処理により、対象者の影響要因に介入するサービスとして、改善内容レコメンドサービスを提供する機能を有する。この機能は、計測データ収集システム2から、影響要因の特徴量の値(データ)を受け取って、それらに基づいて、対象者の活動生産性を向上させるために、対象者に影響を与える要因の改善内容をユーザーに提案(介入)するものである。このとき、改善内容を実施した場合の効果(介入効果)も、改善内容と併せてユーザーに出力する。なお、介入効果の出力先とするユーザーは、オペレーターに限られず、対象者を含む。
【0033】
図2のように、介入システム1は、入力部11、出力部12、通信部13、制御部14および記憶部15等を有し、それらがバス16を介して接続されている。
【0034】
入力部11は、介入システム1の管理者等による操作入力を行う部分である。出力部12は、介入システム1の管理者等に対する画面表示等を行う部分である。通信部13は、通信インタフェースを有し、計測データ収集システム2との通信処理を行う部分である。
【0035】
<制御部14>
制御部14は、データ処理部140を含む。データ処理部140は、対象者基礎情報管理部141、対象者計測データ取得部142、活動生産性予測部143、介入効果算出部144、改善内容決定部145、結果出力部146を有する。これらの各部により、データ処理部140は、計測データ収集システム2からデータを入力する機能、計測データを処理して解析する機能、計測データ収集システム2へ制御指示を出力する機能、データ収集端末4へ表示用のデータを出力する機能等を実現する。また、制御部14は、介入システム1の全体の制御も行う。
【0036】
<記憶部15>
記憶部15は、対象者基礎情報格納部151、対象者計測データ格納部152、計測データDB153、活動生産性予測モデル格納部154、活動生産性予測結果格納部155、波及状態算出結果格納部156、介入効果算出結果格納部157、最適改善内容格納部158、および、管理表格納部159を含む。
【0037】
(計測データDB格納部153)
記憶部15の計測データDB153には、多数の人(被検者)について予め計測しておいた、
図3の影響要因および心身状態の特徴量のデータと、影響要因および心身状態の特徴量の計測時とその後の活動生産性の特徴量を示す値の時間変化を時系列に示すデータとが対応づけて格納されている。
【0038】
活動生産性は、
図3に示すように、ここでは仕事のパフォーマンスであり、例えば、PC(パソコン)のキーボード入力を計測対象とすることにより、特徴量を示す値として「入力頻度」および「入力の誤り率」を計測した結果を用いる。
【0039】
(管理表格納部159)
記憶部15の管理表格納部159には、影響要因について、予め用意した特徴量の改善内容(改善方法および/または改善後の特徴量の値)のリスト(改善内容リスト159C)が格納されている。例えば、影響要因のうち「生活習慣」の特徴量である「運動量」および「運動時間」の改善内容として、1日あたり、(ア)歩行30分、(イ)ランニング30分、(ウ)筋トレ10分の3種類の運動習慣改善メニューを改善内容リスト159Cには含まれている。
【0040】
改善内容リスト159Cには、改善内容が2以上含まれている。これらの改善内容は、2以上の影響要因に1以上の改善内容が用意されていてもよいし、1つの影響要因について2以上の改善内容が用意されていてもよい。
【0041】
(対象者基礎情報管理部141)
制御部14の対象者基礎情報管理部141は、対象者または管理者により入力された対象者の基礎情報を対象者基礎情報格納部151に登録して管理する処理や、対象者のサービス利用の際に、対象者基礎情報格納部151を確認する処理等を行う。
【0042】
対象者基礎情報格納部151に登録される対象者基礎情報には、対象者個人毎の属性値利用履歴情報、対象者設定情報、等が含まれる。属性値には、性別、年齢、所属部署、職位、社歴、人事評価データ等が含まれる。利用履歴情報は、本システムが提供するサービスを対象者が利用した履歴を管理する情報が含まれる。対象者設定情報には、本サービスの機能に関して、対象者または管理者が設定した設定情報が含まれる。
【0043】
(対象者計測データ取得部142)
対象者計測データ取得部142は、通信部13を介して、計測データ収集システム2に対して、対象者の心身状態に影響を与える予め定めた影響要因の特徴量のデータの収集を要求し、計測データ収集システム2が収集したデータを受け取って、対象者計測データ格納部152に格納する。
【0044】
なお、対象者計測データ取得部142は、管理表格納部159に予め格納されている影響要因評価リスト159Aおよび心身状態評価リスト159Bを参照して、計測データ収集システム2から収集するデータの項目を決定する構成としてもよい。
【0045】
(活動生産性予測部143)
活動生産性予測部143は、影響要因の特徴量を表す値を入力値とし、対象者の活動生産性の予測値を出力する学習モデル(予測モデル)を生成する予測モデル生成部143Aと、予測結果算出指示部143Bと、波及状態算出部143Cとを備えて構成される。
【0046】
予測モデル生成部143Aは、記憶部15の計測データDB153に格納されている多数の人の影響要因と心身状態の特徴量のデータと、活動生産性の特徴量の時間変化のデータとを読み出して、影響要因と心身状態の特徴量のデータを入力データとし、活動生産性の特徴量の時間変化のデータを正解データとして、機械学習(AI)の手法を適用して、学習モデルを学習させる。これにより、活動生産性予測モデルを生成し、記憶部15の活動生産性予測モデル格納部154に保存する。
【0047】
活動生産性予測モデルとして学習モデルの種類や構成、学習方法の詳細については、
図4~
図7を用いて、後で詳しく説明する。
【0048】
活動生産性予測部143の予測結果算出指示部143Bは、対象者について計測データ収集システム2が計測等した環境要因の特徴量のデータを、計測データ格納部152から読み出して、活動生産性予測モデル格納部154に保存された活動生産性予測モデルの入力値として入力し、活動生産性の特徴量の現在から未来における時間変化を予測結果として出力させる。予測結果算出指示部143Bは、得られた活動生産性の特徴量の時間変化(時系列データ)を、活動生産性予測結果格納部155に格納する。
【0049】
例えば、活動生産性予測部143は、介入なし予測結果を得るために、計測データ収集システム2が計測等した現在および/または現在までの所定期間の環境要因の特徴量のデータを、活動生産性予測モデルに入力し、活動生産性予測モデルが出力する活動生産性の特徴量の現在から所定期間の未来における時間変化を取得する。得られた活動生産性の特徴量の時間変化を、介入なし予測結果として、活動生産性予測結果格納部155に格納する。
【0050】
また、活動生産性予測部143は、介入あり予測結果を得るために、改善内容リスト格納部から影響要因について特徴量の改善内容を読み出し、残りの影響要因の特徴量については、計測データ収集システム2が計測等した現在および/または現在までの所定期間の特徴量を表す値を受け取って、改善内容と特徴量を表す値とを活動生産性予測モデルに入力値として入力し、活動生産性予測モデルが出力する現在および/または所定期間の未来の活動生産性の特徴量の時間変化を得る。この処理を、2以上の改善内容ごとに行って、それぞれ得られた活動生産性の特徴量の時間変化を、介入あり予測結果として、活動生産性予測結果格納部155に格納する。
【0051】
これらの処理については、
図8を用いて後で詳しく説明する。
【0052】
波及状態算出部143Cは、活動生産性予測モデル内のデータ項目の変化が、他の項目に波及する様子を特定する。具体的には、波及状態算出部143Cは、影響要因から心身状態を介して活動生産性に影響が及ぶ波及状態を算出する。これについては、
図9を用いて後で詳しく説明する。
【0053】
(介入効果算出部144)
介入効果算出部144は、介入なし予測結果取得部144A、介入あり予測結果取得部144Bと、介入有無差分算出部144Cとを備えて構成される。
【0054】
介入なし予測結果取得部144Aは、活動生産性予測結果格納部155に格納されている、介入なし予測結果(活動生産性の特徴量の時間変化)を取得する。
【0055】
介入あり予測結果取得部144Bは、活動生産性予測結果格納部155に格納されている、介入あり予測結果(活動生産性の特徴量の時間変化)を改善内容ごとに取得する。
【0056】
介入有無差分算出部144Cは、介入なし予測結果取得部144Aと介入あり予測結果取得部144Bが取得した予測結果の差分(時間変化)を算出し、介入効果として介入効果算出結果157に格納する。
【0057】
【0058】
(改善内容決定部145)
改善内容決定部145は、複数介入効果取得部145Aと、最適改善内容決定部145Bとを備えて構成される。
【0059】
複数介入効果取得部145Aは、介入効果算出結果157に格納されている2以上の改善内容ごとの介入効果(時系列データ)を取得する。
【0060】
最適改善内容決定部145Bは、算介入効果を比較し、比較結果に基づいて、ユーザーに推奨する改善内容を決定する。
【0061】
例えば、改善内容決定部14Bは、予め定めた1以上の時点の前記介入効果の大きさ、介入効果の時間変化の速さ、介入効果の時間変化の安定性の少なくとも1つ以上に基づいて、ユーザーに推奨する改善内容を決定する。
【0062】
これらの処理は、
図11を用いて後で詳しく説明する。
【0063】
(結果出力部14)
結果出力部146は、算出した改善内容ごとの介入効果、ならびに、推奨する改善内容等をユーザー(対象者やオペレーター)に出力する。具体的には、例えば、出力部12からPCのモニタやタブレット端末などの画面に表示する。また、通信部13を介してデータ収集端末4の画面に表示しても良い。
【0064】
なお、
図2の制御部14は、Central Processing Unit(CPU)、Read Only Memory(ROM)、Random Access Memory(RAM)等により構成され、ROMに予め格納されたソフトウェアプログラムをCPUが実行することにより、データ処理部140内の各部の機能を実現する。
【0065】
[環境要因と心身状態と活動生産性の特徴量]
図3を用いて、計測データDB153に格納されている、多数の被検者の環境要因の特徴量と、心身状態の特徴量と、活動生産性の特徴量について説明する。
【0066】
図3は、計測データDBのデータ取得対象である多数の被検者のうちの一人分の特徴量の項目を示している。なお、計測データ収集システム2が、介入の対象者について収集する環境要因の特徴量も、
図3の環境要因の特徴量と同じ項目である。
【0067】
図3の影響要因の特徴量データと、心身状態の特徴量データと、活動生産性の特徴量のデータはいずれも、
図3に記載された期間にわたって、
図3に記載された頻度で取得される時系列データである。
【0068】
影響要因としては、対人交流・生活習慣・不定愁訴・食事・睡眠のデータが含まれる。
【0069】
対人交流は、Web会議や電話会議中にマイクで録音された相手及び本人の音声から抽出(計測)された、会話頻度・会話量・会話人数、ならびに、メーラーに蓄積されたメールから抽出された、メール頻度・メール送信時間、スケジューラから抽出した打合せ数・空き時間を特徴量とする。
【0070】
生活習慣は、アンケートから得られる、飲酒量・喫煙量、ならびに、リストバンド型加速度センサ等の身体に装着する運動センサから得られる、運動量・運動時間を特徴量とする。運動時間データからは、デスクワークを実施した時間や歩行時間も抽出できる。
【0071】
不定愁訴は、アンケートにより評価される、頭痛・腰痛・肩凝りの強さを特徴量とする。
【0072】
食事は、アンケートから得られる、食事時間・栄養バランスを特徴量とする。アンケートの他に、被検者や対象者に食事内容を写真に撮影してもらい、その内容を画像解析しても良い。
【0073】
睡眠は、上述の運動センサによって計測される睡眠時間・睡眠の質(深さ)を特徴量とする。
【0074】
これらの影響要因の特徴量は、環境に応じて日々変わり得るので、計測頻度は毎日とする。
【0075】
心身状態の特徴量データとしては、認知機能・運動機能・精神機能のデータが含まれる。
【0076】
認知機能は、PCやタブレット端末やスマートフォンなどのアプリケーションによって認知機能検査を行って評価した、処理速度・抑制機能の強さ・記憶力などを特徴量とする。また、MMSEや長谷川式簡易知能評価スケールのような認知機能を評価してスコア付けする質問票を用いて特徴量を評価してもよい。
【0077】
運動機能は、所定の運動を実施している様子を画像解析で計測して、その計測データから抽出される、持久力・バランス・反応速度・筋力などを特徴量とする。画像の代わりに、上述のリストバンド型加速度センサのように装着型のセンサで特徴量を計測してもよい。また、所定の運動でなくても、日常生活の自然な動きを対象に解析しても良い。
【0078】
精神機能は、アンケートによって得られる、ストレス・うつ傾向・自己肯定感などを特徴量とする。心拍数を計測して自律神経を評価してストレス値の特徴量としてもよい。また、対話量やメール量、声のトーン、キーボードの打ち込み頻度をうつ傾向の特徴量としてもよい。
【0079】
これらの心身状態の特徴量は、影響要因から影響を受けて少しずつ変化すると考えられるので、計測頻度は相対的に低くしてもよく、週1回とする。
【0080】
活動生産性は、例えば、仕事のパフォーマンスと定義し、PCのキーボード入力によって計測される、入力頻度や誤り率を特徴量とする。他にも、営業職であれば契約数、事務職であれば事務処理件数など、職種に応じてパフォーマンスの特徴量としてもよい。
【0081】
また、活動生産性は、仕事への熱意や没頭を表すワークエンゲージメントなど主観的な評価結果として定義してもよい。自己評価だけでなく、他者からの評価でもよい。また、人事評価のデータを用いても良い。
【0082】
上記の特徴量は、3ヶ月間などの一定期間に、毎日・週1日など定期的に計測された時系列データとする。各データは計測日時が付与されている。
図3は、一人分の特徴量の計測データだが、計測データDB153には、多数の被検者について特徴量が格納されている。
【0083】
また、計測データ収集システム2は、介入する対象者について、
図3の環境要因の特徴量を、3ヶ月間などの一定期間に、毎日・週1日など定期的に計測された時系列データとして収集して、計測者計測データ格納部152に格納することが望ましいが、現在の特徴量のみを収集する構成としてもよい。
【0084】
[活動生産性予測モデルの生成]
ここで、
図4から
図7を用いて、活動生産性予測モデルとして用いる学習モデルの種類や構成、学習方法の詳細について説明する。
【0085】
図4は、実施の形態1の予測モデル生成部143Aで行われる活動生産性予測モデルの学習フェーズの処理フローである。
図5は、学習に用いる心身状態と活動生産性の特徴量のデータの前処理(ベースライン除去・追加)を説明する図である。
図6は、学習モデルの構造を示す図である。
図7は、環境要因の特徴量データの前処理(平滑化処理)を説明する図である。
【0086】
図4のように、予測モデル生成部143Aは、ステップLS1~LS3により活動生産性予測モデルを生成する。以下、ステップの順に説明する。
【0087】
(ステップLS1)
予測モデル生成部143Aは、活動生産性予測モデルの学習に用いるため、計測データDB153に格納されている影響要因の特徴量データと、心身状態の特徴量データと、活動生産性の特徴量データを読み出す。
【0088】
(ステップLS2)
予測モデル生成部143Aは、ステップLS1で取得された影響要因と心身状態と活動生産性のそれぞれの特徴量のデータを、活動生産性予測モデルに入力するための前処理を行う。
【0089】
まず、予測モデル生成部143Aは、一人分のデータに対して、付与されている計測日時から最初の計測日時を減算することで、計測開始時からの経過日時をタイムスタンプとする。
【0090】
また、計測項目によって計測頻度が異なること、計測の抜け漏れが生じうることから、予測モデル生成部143Aは、最も計測頻度が短いデータに揃えてデータを補間する。例えば、
図3の例では毎日または週1回の頻度で特徴量が計測されているため、予測モデル生成部143Aは、短い計測頻度である方に合わせて、週1回のデータを毎日のデータに補間する。補間処理としては、予測モデル生成部143Aは、例えば、データが連続値であればスプライン補間を行い、離散値であればスプライン補間後に四捨五入して最も近い値に丸める。補間処理は、スプライン補間でなくてもよく、例えば、線形補間、ラグランジュ補間、直前の計測データと同じ値で埋める補間方式などを用いてもよい。
【0091】
≪ベースライン除去≫
また、ステップLS2において、予測モデル生成部143Aは、前処理として、心身状態と活動生産性の特徴量のデータに対して、
図5に示すベースライン除去を行っても良い。これは、活動生産性予測モデルによって予測を行うフェーズ(予測フェーズ)において、個人差による予測誤差を除去して予測精度を向上させるためである。
【0092】
予測フェーズでは、予測結果算出指示部143Bは、活動生産性予測モデルに対して、入力変数(入力値)として影響要因の特徴量データが与えるのみで、心身状態と活動生産性の特徴量データは与えない。このため、活動生産性予測モデルによる予測フェーズにおいては、生活状況や就労環境を表す影響要因の特徴量データが同一であれば、個人の内部状態(心身状態)は考慮されずに、同一の活動生産性の予測結果が出力されることとなる。しかし、実際は、生活状況や就労環境が同一であっても、元々の活動生産性のベースラインが高い人は活動生産性が高く、低い人は活動生産性が低いと考えられる。そのため、活動生産性予測モデルによる活動生産性の予測結果は、個人差の分だけ変動し、精度が低下することとなる。
【0093】
これを防ぐためには、
図5のように、予測モデル生成部143Aは、心身状態の特徴量データと活動生産性の特徴量データに対して、予め計測開始時点の値(ベースライン)がゼロとなるように減算する処理(ベースライン除去)を行ってもよい。これにより、元々の活動生産性の個人差を排除し、活動生産性の変化分のみに着目できる。
【0094】
なお、予測モデル生成部143Aが、心身状態の特徴量データと活動生産性の特徴量データに対して、ベースラインを除去する処理を行った後のデータを用いて、予測モデルを生成することにより、予測結果として、活動生産性の変化分が出力されることとなる。
【0095】
よって、予測後の心身状態の特徴量データおよび活動生産性の特徴量データに、対象者のベースラインを加算または乗算するベースライン追加処理を行う。
【0096】
また、予測結果として、活動生産性の絶対値を得たい場合は、対象者計測データ取得部142は、計測データ収集システム2に、環境要因の特徴量データに加えて、心身状態の特徴量データおよび活動生産性の特徴量データを計測させ、予測結果算出指示部143Bが、これらのデータを予測モデルに入力データとして入力すればよい。
【0097】
(ステップLS3)
予測モデル生成部143Aは、ステップLS2において、前処理を実施済みのデータを用いて、活動生産性予測モデル(学習モデル)を学習させる。
【0098】
予測モデル生成部143Aは、学習モデルとしては、
図6に示すように、リカレントニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network)を一例として用い、入力層(入力変数)には、影響要因の特徴量の時系列データを入力し、出力層(出力変数)は活動生産性の特徴量の時系列データを正解データとして入力する。
【0099】
リカレントニューラルネットワークは、隠れ層が再帰的に自己に入力することで、隠れ層が潜在変数となり時系列データを表現できる。予測モデル生成部143Aは、このモデルに、影響要因の特徴量のデータを入力したときに、活動生産性を精度良く予測(出力)させることができる。
【0100】
ここで、予測モデル生成部143Aは、心身状態の特徴量データを、RNNの隠れ層に入力し、隠れ層の出力がこの心身状態の特徴量データと誤差が小さくなるように学習させる。
【0101】
なお、RNNの中でも、特にLSTM(Long short-term memory)を用いると、活動生産性に長期的な影響を与える影響要因と、短期的な影響を与える影響要因の両方を考慮して、活動生産性の時系列データを予測(出力)させることができる。
【0102】
なお、時系列データを扱える機械学習方法であれば、RNN以外の方法でもよい。例えば、隠れマルコフモデル(HMM:hidden Markov model)を用いることができる。
【0103】
≪影響要因毎の平滑化≫
なお、ステップLS3において、予測モデル生成部143Aは、
図7のように、影響要因の特徴量データを平滑化してから学習モデルに入力層に入力してもよい。そのために、予測モデル生成部143Aは、学習モデルにおいて、平滑化フィルタ処理を実行してもよい。
【0104】
入力層に入れられる影響要因の特徴量データは、その性質に応じて心身状態への影響の及ぼし方が異なる。例えば、うつ状態に影響を及ぼす影響要因は、対人交流と栄養と考えられる。対人交流は、1日毎の変動が鋭敏にうつ状態に影響を及ぼすが、栄養は1日毎の変動は重要ではなく、1か月程度の大きな変動のみがうつ状態に影響を及ぼすと推測される。
【0105】
そのため、対人交流の時系列データは、そのままRNNに入力するのが良いが、栄養の時系列データは、平滑化フィルタをかけて1日~1週間周期の変動成分(高周波成分)は除去した上でRNNに入力するのが望ましいと考えられる。これにより、早期に学習が進み、データが少なくても収束しやすくなると考えられる。
【0106】
このような知見が予め得られている場合に、
図7に示すように、予測モデル生成部143Aは、RNNの入力層の直後に時間軸方向に平滑化を行うフィルタ処理を実施し、影響要因の性質毎に平滑化の強弱を定める。例えば、平滑化の強弱を決める重みを0~1(0が平滑化なし、1が最大の平滑化)として、[対人交流×うつ状態]の組合せに付与する重みは0、[栄養×うつ状態]の組合せに付与する重みは1と定める。例えば
図7に示すように、対人交流の特徴量の時系列データを、時間軸方向に5つの領域に分け、各領域のデータを平滑化する[0,0,1,0,0]という1次元の平滑化フィルタを適応する。同様に、栄養の特徴量の時系列データを、時間軸方向に5つの領域に分け、各領域のデータを平滑化する[0.2,0.2,0.2,0.2,0.2]という平滑化フィルタを適応する。これにより、対人交流のデータは生データと同じとなるが、栄養のデータは高周波成分がなくなった滑らかのデータとなる。
【0107】
なお、上記の重みが0と1の中間値である場合は、上記フィルタ内の数値を重みに応じて比例配分することとする。ここでは平滑化フィルタを用いたが、平滑化できる手法であれば他の手法でもよく、ローパスフィルタ、メディアンフィルタなどを用いても良い。
【0108】
(ステップLS4)
予測モデル生成部143Aは、ステップLS3で得られた学習済みモデルを活動生産性予測モデル格納部154に格納する。
【0109】
[介入システム1の処理フロー]
ここで、
図8を用いて、介入システム1の活動生産性予測モデルを用いた予測から最適な改善内容の表示までの処理フローを説明する。
【0110】
(ステップPS1)
計測データ収集システム2が収集した対象者の環境要因の特徴量データは、対象者計測データ格納部152に格納されている。
【0111】
予測結果算出指示部143Bは、計測データ格納部152から対象者の環境要因の特徴量データを取得する。ここでは、得られるのは入力変数である影響要因の特徴量データのみとする。
【0112】
(ステップPS2)
予測結果算出指示部143Bは、前ステップで取得した影響要因の特徴量のデータに、ステップLS2で行った前処理と同じ前処理を行う。
【0113】
(ステップPS3)
予測結果算出指示部143Bは、活動生産性予測モデル格納部154に格納されている学習済みの活動生産性予測モデルに、前ステップで処理済みの影響要因の特徴量のデータを入力して、予測結果(活動生産性の特徴量の時系列データ)を算出させ、出力させる。
【0114】
また、予測結果算出指示部143Bは、必要に応じて、活動生産性予測モデルの隠れ層から心身状態の特徴量の時系列の変化を出力させる。
【0115】
(ステップPS4)
介入なし予測結果取得部144Aは、活動生産性予測モデルが出力した予測結果を介入なし予測結果として、活動生産性予測結果格納部155に格納する。
【0116】
(ステップPS5)
予測結果算出指示部143Bは、活動生産性予測モデル格納部154に格納されている学習済みの活動生産性予測モデルに、環境要因の改善内容と、前ステップで処理済みの影響要因の特徴量のデータとを入力して、予測結果(活動生産性の特徴量の時系列データ)を算出させ、出力させる。
【0117】
また、予測結果算出指示部143Bは、必要に応じて、活動生産性予測モデルの隠れ層から心身状態の特徴量の時系列の変化を出力させる。
【0118】
(ステップPS6)
介入あり予測結果取得部144Bは、活動生産性予測モデルが出力した予測結果を介入あり予測結果として、活動生産性予測結果格納部155に格納する。
【0119】
(ステップPS7)
予測結果算出指示部143Bと介入あり予測結果取得部144Bは、改善内容リスト159Cから選択した複数の改善内容のすべてについて、ステップPS5およびPS6を繰り返す。
【0120】
(ステップPS8)
介入有無差分算出部144Cは、改善内容ごとに介入効果を算出し、結果出力部146は、改善内容と介入効果を対応させて表示装置等に表示して、対象者やユーザーに提示する。
【0121】
(ステップPS9)
最適改善内容決定部145Bは、介入効果に基づき最適な改善内容を選択し、結果出力部146は、最適な改善内容を表示等して、対象者やユーザーに提示する。
【0122】
このように、本実施形態の介入システム1によれば、介入効果を提示した上で、対象者の活動生産性を高めるための改善内容を提案することができる。
【0123】
[波及状態算出部143Cによる波及状態特定]
つぎに、
図9を用いて、波及状態算出部143Cが、影響要因から心身状態を介して活動生産性に影響が及ぶ波及状態を算出する処理について説明する。この処理を行う場合、
図8のステップPS5の後の所望のタイミングで行う。
【0124】
波及状態算出部143Cでは、活動生産性予測モデル内のデータ項目の変化が、他の項目に波及する様子を特定する。
【0125】
そのため、
図9(a)のように、予測結果算出指示部143Bは、上記ステップPS5において、活動生産性予測モデルから、活動生産性の特徴量を取得するのみならず、心身状態の運動機能と認知機能の特徴量の予測値の時系列の変化を出力させる。
【0126】
波及状態算出部143Cは、運動機能と認知機能量と活動生産性の特徴量の予測値の向上が始まった時点(変化点)902~904を、例えば、各機能の特徴量が初期値から所定割合(例えば10%)が増加した時点を算出することにより求める。変化点は、向上が始まった時点以外にも、向上が終了した時点、最も変化速度が大きい時点などにより定義しても良い。
【0127】
これにより、波及状態算出部143Cは、運動習慣を改善した時点901から3日後の時点902において運動機能の向上が始まり、その1週間後の時点903において認知機能の向上が始まり、さらにその1週間後の時点904において活動生産性の向上が始まったことを把握することができる。
【0128】
波及状態算出部143Cは、算出した変化点902~904の関係性が分かるように、グラフを変化点902~904が起こった順に並ぶように、予測値のグラフを、運動習慣、運動機能、認知機能、活動生産性の順にならべ、ユーザーへ提示するためのグラフを
図9(a)のように生成する。ユーザーは、
図9(a)を見ることにより、影響要因から心身状態を介して活動生産性に影響が及ぶことを把握できる。
【0129】
また、波及状態算出部143Cは、生成したグラフ上に、
図9(a)のように、ユーザーに遅延日数を示す数値等を追加してもよい。
【0130】
なお、波及状態算出部は、
図9(a)のグラフの代わりに、
図9(b)のように、項目間の因果関係と遅延日数を簡単に図示する図表を生成してもよい。
【0131】
[介入効果算出部144の処理]
図10、
図11を参照しながら、
図8のステップPS8の介入効果算出部144の処理をさらに詳しく説明する。
【0132】
介入なし予測結果取得部144Aでは、対象者の心身状態に影響を与える生活状況や就労環境などの影響要因に対して、何も介入を行わなかったときの活動生産性予測結果を得て、介入なし予測結果とする。すなわち、活動生産性予測部143は、計測データ収集システム2が計測等した現在および/または現在までの所定期間の環境要因の特徴量のデータを、活動生産性予測モデルに入力し、活動生産性予測モデルが出力する活動生産性の特徴量の現在から所定期間の未来における時間変化を取得し、活動生産性予測結果格納部155に介入なし予測結果として格納する。介入なし予測結果取得部144Aは、活動生産性予測結果格納部155に格納されている、介入なし予測結果(活動生産性の特徴量の時間変化)を
図10のように取得する。
【0133】
また、介入あり予測結果取得部144Bは、管理表格納部159の改善内容リスト159Cから改善内容を選択し、対象者の心身状態に影響を与える生活状況や就労環境などの影響要因に対して、この改善内容を実施したときの活動生産性予測結果を得て、介入あり予測結果とする。すなわち、活動生産性予測部143は、改善内容リスト格納部から影響要因について特徴量の改善内容を読み出し、残りの影響要因の特徴量については、計測データ収集システム2が計測等した現在および/または現在までの所定期間の特徴量を表す値を受け取って、改善内容と特徴量を表す値とを活動生産性予測モデルに入力値として入力し、活動生産性予測モデルが出力する現在および/または所定期間の未来の活動生産性の特徴量の時間変化を得る。この処理を、2以上の改善内容ごとに行って、それぞれ得られた活動生産性の特徴量の時間変化を、活動生産性予測結果格納部155に介入あり予測結果として格納する。介入あり予測結果取得部144Bは、活動生産性予測結果格納部155に格納されている、介入あり予測結果(活動生産性の特徴量の時間変化)を
図10のように改善内容ごとに取得する。ただし、
図10では、介入あり予測結果を一つの表示している。
【0134】
介入あり予測結果、および、介入なし予測結果は、いずれも上述のように時系列データとなる。
【0135】
介入有無差分算出部144Cは、介入あり予測結果から介入なし予測結果を減算して得られた時系列データを算出し、これを介入効果とする。
【0136】
例えば、
図11のように、環境要因の生活習慣の特徴量である運動量に変化を働きかける改善内容として、1日あたり、(ア)歩行30分、(イ)ランニング30分、(ウ)筋トレ10分について、介入効果を求め、表示することができる。
【0137】
なお、介入効果としてこのように差分を取る代わりに、介入あり予測結果を介入なし予測結果で除算した値を算出し、この時系列データを介入効果としてもよい。上記の介入効果を介入効果算出結果157に格納する。
【0138】
[改善内容決定部145の処理]
図11を参照しながら、ステップPS9において改善内容決定部145が最適な改善内容を決定する処理をさらに説明する。
図11のように、介入効果算出部144により、1日あたり、(ア)歩行30分、(イ)ランニング30分、(ウ)筋トレ10分の3種類の改善内容について、時系列な介入効果が算出されている。
【0139】
改善内容決定部145は、得られた3つの介入効果の字系列データから、所定の基準に基づき、最適な介入効果を選び、最適な介入効果に対応する改善内容を求める。
【0140】
ここで、所定の基準とは、
(1)一時点における介入効果の大きさ、
(2)介入効果の時間変化の速さ、
(3)介入効果の時間変化の安定性
の中で、少なくとも一つ以上を用いる。
【0141】
例えば、(1)の基準を選び、介入(改善内容の実施)を開始してから8週間後の介入効果の大きさが最も大きい改善内容が最適である判断するという基準を定めた場合、(ウ)の筋トレ10分が最適な改善内容となる。
【0142】
また、(2)の基準を選び、介入を開始してから2週間後までの介入効果の立ち上がりが最も大きい改善内容が最適である判断するという基準を定めた場合、(イ)のランニング30分が最適な改善内容となる。
【0143】
また、(3)の基準を選び、介入効果が上限に達した後の安定性が最も大きい改善内容が最適である判断するという基準を定めた場合、(ア)の歩行30分が、最適な改善内容となる。
【0144】
このようにユーザーは、目的に応じて、(1)、(2)および(3)のうちの一つの基準、または、複数の基準の組み合わせにより、予め基準を定めておく。複数を組み合わせる場合は、例えば(1)と(2)の基準を組み合わせる場合は、複数の介入効果の時系列データの中で、最も高い評価が得られたもの介入効果の値を1として、他の介入効果データを正規化する。正規化後の介入効果の値により、その大小を比較すればよい。また、重要度に応じて、介入効果の値を重み付けして、重み付け後の介入効果の値を用いて最適な改善内容を決定してもよい。
【0145】
[基礎情報管理部141の表示画面例]
(
図12の画面例)
図12に、対象者基礎情報管理部141が、対象者または管理者から対象者の基礎情報の入力を受け付けるために、出力部12からPCのモニタやタブレット端末などに表示する画面の例を示す。対象者基礎情報管理部141は、通信部13を介してデータ収集端末4にこの画面に表示しても良い。
【0146】
図12の画面は、対象者情報欄12001と、走査メニュー欄12002を含む。
【0147】
対象者情報欄12001には、対象者ID、氏名、生年月日、性別、所属部署、職位、社歴、人事評価などを入力する欄が用意されている。これらの情報は、管理者または対象者が入力する以外に、人事システムのIDと紐づけて自動で情報を取得してもよい。
【0148】
操作メニュー欄12002には、計測データ取得(影響要因)ボタン12002-1、計測データ取得(心身状態・活動生産性)ボタン12002-2、活動生産性予測ボタン12002-3、介入効果提示ボタン12002-4、改善内容レコメンドボタン12002-5のボタンがある。対象者やユーザー(オペレーター)が各ボタン12002-1~12002-2を押すと、それぞれ
図13~
図17の画面に遷移する。
【0149】
(
図13の画面例)
図13の画面は、
図12の画面において、計測データ取得(影響要因)ボタン12002-1が押された場合に表示される。
図13の画面は、対象者計測データ取得部142が、対象者の影響要因の各特徴量の値を収集する条件や、収集したデータをユーザーに示す画面例である。
【0150】
図13の画面において自動計測と表示されている項目は、対象者計測データ取得部142が、計測データ収集システム2のシステムやセンサからデータを取得し、取得したデータを本画面において対象者に表示する。例えば、
図13のように、対人交流では、計測データ収集システム2のWeb会議または電話会議の音声を自動分析するシステムから、特徴量の会話頻度が「10回/日」、会話量が「1時間/日」、会話人数が「3人/日」というデータを取得し、その結果を表示している。
【0151】
自動計測されない項目は、入力ボタンを押して、対象者やユーザーが手動入力を入力することができるように、
図13の画面は構成されている。例えば、生活習慣の特徴量である飲酒量では、対象者は、複数の選択肢の中から、「1杯/週」を選択することにより入力することができる。対象者は、全て入力し終えたら、保存ボタンを押して、対象者基礎情報管理画面(
図12)に戻る。
【0152】
(
図14の画面例)
図14の画面は、
図12の画面において、計測データ取得(心身状態・活動生産性)ボタン12002-2が押された場合に表示される。
図14の画面は、対象者計測データ取得部142が、対象者の心身状態および活動生産性の各特徴量の値を収集する条件や、収集したデータをユーザーに示す画面例である。上述のステップLS2において、予測モデル生成部143Aが、心身状態と活動生産性の特徴量のデータに対して、前処理として、
図5に示すベースライン除去を行う場合に、
図14の画面により、心身状態と活動生産性の特徴量のデータを収集する。
【0153】
図14の画面において、自動計測と表示されている項目は、対象者計測データ取得部142が、計測データ収集システム2のシステムやセンサからデータを取得し、取得したデータを本画面において対象者に表示する。例えば、心身状態の認知機能では、タブレット端末上で動作する認知機能アプリを用いて、特徴量である処理速度・抑制機能・記憶などの評価値を取得する。また、活動生産性では、PCのキーボード入力から、仕事のパフォーマンスに関する指標として入力頻度や誤り率を取得する。取得した特徴量は、
図14の画面に表示する。
【0154】
自動計測されない特徴量の項目は、入力ボタンを押して、対象者が手動で入力する。例えば、精神機能の特徴量であるストレスの項目では、対象者が、10点満点の0~10の選択肢の中から、「2」を選択する。対象者は、全て入力し終えたら、保存ボタンを押して、対象者基礎情報管理画面に戻る。
【0155】
なお、上述のステップLS2において、予測モデル生成部143Aが、ベースライン除去を行わずに活動生産性の値をそのまま予測すればよい場合、または、ベースライン除去を行っても活動生産性の変化分のみを予測出来ればよい場合は、本画面の入力を実施しなくてもよい。
【0156】
予測モデル生成部143Aによるベースライン除去の実施有無は、管理者向け設定画面でユーザー(管理者)が決められるようにしておく。これは、予測モデル生成部143Aにおけるベースライン除去の実施有無と矛盾のないようにしておく。
【0157】
(
図15の画面例)
図15の画面は、
図12の画面において、活動生産性予測ボタン12002-3が押された場合に表示される。
図15の画面は、活動生産性予測部143の予測結果算出指示部143Bから出力される活動生産性予測結果を表示する画面である。
【0158】
図15の画面には、活動生産性予測結果欄15001と介入波及状態欄15002とが含まれている。
【0159】
活動生産性予測結果欄15001には、予測した活動生産性の特徴量の値が表示される。介入波及状態欄15002には、改善内容(運動習慣の改善)と、それを実施した場合の活動生産性の特徴量の時間変化と、運動機能及び認知機能の特徴量の予測結果の時間変化も併せて表示されている。また、介入波及状態欄14002には、波及状態算出部143Cが算出した変化時点の順に各特徴量の時系列グラフが並べられた表示されている。
【0160】
なお、介入波及状態欄15002には、
図9(b)のようにグラフ構造で簡単に表示してもよい。
【0161】
(
図16の画面例)
図16の画面は、
図12の画面において、介入効果提示ボタン12002-4が押された場合に表示される。
図16の画面は、介入効果算出部144で得られた介入効果の算出結果157を表示する画面である。
【0162】
図16のように、ここで介入効果の値が立ち上がり始めた時点と、上限に達した時点などについて、介入効果の大きさを図示することで、介入効果の推移の概要を示すことができる。
【0163】
(
図17の画面例)
図17の画面は、
図12の画面において、改善内容レコメンドボタン12002-5が押された場合に表示される。
図17の画面は、最適改善内容決定部145Bにて最適な改善内容を決定するために、その候補となる複数の改善内容を選択する画面であり、ここでは、対象者またはユーザー(オペレータ)から複数の改善内容の選択を受け付けることができるように構成されている。
【0164】
図17の画面の例では、運動習慣改善に関する改善内容が選択されているが、運動習慣改善以外の異なる種類の改善内容を含めて選んでも良い。
【0165】
次へボタンを押すと、
図18の改善内容決定結果画面に遷移する。
【0166】
(
図18の画面例)
図18の画面は、最適改善内容決定部145Bにて決定された最適な改善内容を表示する画面例である。
【0167】
図17の画面において、対象者またはユーザーから選ばれた複数の改善内容については、それぞれの改善内容を実施した場合の活動生産性が、予測結果算出指示部143Bにより予測モデル154を用いて予測される。介入効果取得部145Aは、それぞれの改善内容について介入効果を算出する。さらに、最適改善内容決定部145Bは、各改善内容について介入効果を比較し、最適な改善内容を決定する。
【0168】
図18の画面は、最適改善内容欄18001と介入効果比較欄18002を含む。
【0169】
最適改善内容欄18001には、
図17の改善内容候補選択画面で選ばれた改善内容の候補の中から、最適改善内容決定部145Bが決定した最適な改善内容が表示される。
【0170】
介入効果比較欄18002には、複数の改善内容ごとの介入効果の時系列データが重畳表示され、介入効果を容易に比較することができる。また、介入効果比較欄18002には、改善内容を決定した基準を説明する文章も表示される。本例では、介入開始して4週間経過後の介入効果の大きさを決定基準として、グラフ中に4週間経過後の介入効果の大きさを、各改善内容について表示されている。
【0171】
(
図19の画面例)
図19に,本実施形態の活動精算性改善システム100の初期設定を行う画面を示す。これは,本システムの使用開始前に,人事担当者などのシステムの管理者が設定するための画面である。
【0172】
ベースライン除去欄19001では,
図5に示すベースライン除去の実施有無を指定する。
【0173】
影響要因の平滑化強度欄19002では,
図7で示した影響要因の性質毎に平滑化の強弱を指定する(0が平滑化なし,1が最大の平滑化)。
【0174】
波及状態の表示欄19003では,波及状態の表示方法を指定する。つまり,
図15で例示したように影響要因→心身状態→活動生産性の波及状態を表示するか、または、途中経過の心身状態の波及状態を省略して影響要因→活動生産性の波及状態を表示するか、または、波及状態は表示しないかを選択できる。
【0175】
(
図20の画面例)
図20に、対象者基礎情報管理部141で管理する対象者基礎情報格納部151内のデータ構造を示す。
図12の対象者基礎情報管理画面で入力される情報の他、対象者計測データ取得部142で収集され、対象者計測データ格納部152に格納された影響要因と心身状態と活動生産性の特徴量のデータも関連付けられている。
【0176】
[効果]
実施の形態1の活動精算性改善システム100の介入システム1によれば、活動生産性予測部143にて活動生産性予測結果格納部155を算出し、介入効果算出部144にて介入あり予測結果と介入なし予測結果の差分を算出することで介入効果算出結果157を得て、さらに改善内容決定部145にて複数の介入効果の時系列データを比較することで最適な改善内容を決定できる。これによって、対象者および管理者は、対象者の活動生産性を向上させるのに適した改善内容、および、それを実施した時の介入効果を知ることができる。
【0177】
[本実施形態の使用例]
図21に、実施の形態1の活動精算性改善システム100の使用例を示す。顧客は、企業の人事部門であり、顧客の課題は従業員の生産性が低く、企業利益が十分でないことである。人事部門は、従業員の中から生産性が低い従業員を選択して、実施の形態1の活動精算性改善システム100を適用する。具体的には、影響要因・心身状態・活動生産性の特徴量データを取得し、最適な改善内容およびそれを実施したときの介入効果を従業員に提示する。
【0178】
従業員は、介入効果が表示されることにより、改善内容を実施するモチベーションが高まり、提示された改善内容を実施する。生産性が不十分であれば、これを繰り返す。
【0179】
これによって、従業員の生産性は高まり、結果として企業利益が増大すると考えられる。また、生産性向上による業務時間短縮により、従業員の健康維持や仕事満足度向上が実現し、人材定着率が向上すると考えられる。
【0180】
<<実施の形態2>>
図22を用いて、本発明の実施の形態2の活動生産性改善システムについて説明する。実施の形態2の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるが、介入システム1がサービス事業者のサーバ内に配置される点が実施形態1とは異なる。
【0181】
以下、実施の形態2の活動生産性改善システムが、実施の形態1の構成とは異なる部分について説明する。
【0182】
図22のように、実施の形態2の活動生産性改善システムは、介入システム1がサービス事業者のサーバ6内に配置される。計測データ収集システム2は、実施形態1と同様に、対象者自宅または企業内に配置される。介入システム1と計測データ収集システムは、通信網7を介して接続されている。計測データ収集システム2は、対象者毎に複数あっても良いし、企業内の共有の設備であってもよい。通信網7やサーバ6は、クラウドコンピューティングシステムの構成であってもよい。
【0183】
サーバ6は、サービス事業者が管轄している装置である。サーバ6は、情報処理によるサービスとして、対象者及び企業の管理者に対し、実施の形態1の介入システム1と同様の改善内容レコメンドサービスを提供する機能を実現する。サーバ6は、計測システムに対してクライアントサーバ方式でサービス処理を提供する。サーバ6は、そのような機能に加え、対象者管理機能等を有する。対象者管理機能は、複数のシステム2を通じて得られた、対象者群の対象者情報、計測データやレコメンド結果等を、DBに登録、蓄積して管理する機能である。
【0184】
以上、本発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0185】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることが可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の実施形態の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0186】
1…介入システム、2…計測データ収集システム、3…計測機器、4…データ収集端末。