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特許7407166結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエン及びそれの調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエン及びそれの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 205/12 20060101AFI20231221BHJP
   C07C 201/16 20060101ALI20231221BHJP
   C07D 213/75 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
C07C205/12 CSP
C07C201/16
C07D213/75
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021500471
(86)(22)【出願日】2019-07-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2019067894
(87)【国際公開番号】W WO2020011626
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】18182368.3
(32)【優先日】2018-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514312790
【氏名又は名称】エッフェ・イ・エッセ - ファッブリカ・イタリアーナ・シンテテイチ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】F.I.S. - Fabbrica Italiana Sintetici S.p.A.
(73)【特許権者】
【識別番号】500203709
【氏名又は名称】アムジェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ブラゾーラ, エレーナ
(72)【発明者】
【氏名】ディ シルヴェストロ, マルコ
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-513683(JP,A)
【文献】国際公開第2007/091736(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第101177400(CN,A)
【文献】犬飼 鑑ら,ジフルオル置換マラカイトグリーンに関する研究,工業化学雑誌,1956年,59(10),pp. 1160-1163,ISSN: 0368-5462
【文献】山野 光久,医薬品のプロセス研究における結晶多形現象への取り組み,有機合成化学協会誌,2007年,65(9),pp. 907-913
【文献】長沢 弘志,医薬品有効成分(原薬)製造における晶析操作,化学工学会第39回秋季大会 研究発表講演要旨集,2007年,H119
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化11】

-フルオロ-3-ニトロトルエンの結晶であって、25.0及び26.0℃の間の値においてDSC開始ピークを有するか又は26.0及び27.5℃の間の値においてDSC最大ピークを有するか又は14.3±0.2において2-シータ値(2θ)で表される特性ピークを持った特徴的なX線粉末回折パターンを有する、結晶
【請求項2】
25.0及び26.0℃の間の値においてDSC開始ピーク並びに/又は26.0及び27.5℃の間の値においてDSC最大ピークを有し、且つ、14.3±0.2において2-シータ値(2θ)で表される特性ピークを持った特徴的なX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の結晶
【請求項3】
25.0及び26.0℃の間の値においてDSC開始ピークを有する並びに14.3±0.2において2-シータ値(2θ)で表される特性ピークを持った特徴的なX線粉末回折パターンを有する、請求項1~2のいずれか一項に記載の結晶
【請求項4】
11.3±0.2において2-シータ値(2θ)で表される特徴的なX線粉末回折パターンで更なるピークを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の結晶
【請求項5】
25.0及び25.5℃の間の値においてDSC開始ピークを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の結晶
【請求項6】
26.5及び27.2℃の間の値においてDSC最大ピークを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の結晶
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に定義されるような式(I):
【化12】

-フルオロ-3-ニトロトルエンの結晶の調製方法であって、前記方法が、水とC~Cアルコールから選択される溶媒との混合物からの式(I)の前記2-フルオロ-3-ニトロトルエンの結晶化を含む方法。
【請求項8】
前記方法が、2-フルオロ-3-ニトロトルエンをC~Cアルコールから選択される溶媒に溶解させ、次いで反溶媒としての水を添加することによって実施される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記C~Cアルコールがメタノール又はエタノールである、請求項7~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒と水との間の体積比が1:1である、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記C~Cアルコールがメタノール又はエタノールであり、前記溶媒と水との間の前記体積比が1:1である、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
撹拌工程を更に含む、請求項7~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記撹拌工程が0℃~30℃の温度で実施される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
式(II):
【化13】

の化合物又はそれの塩の合成方法であって、
前記方法が、
- 請求項7~13のいずれか一項に定義されるような方法に従って請求項1~6のいずれか一項に定義されるような式(I):
【化14】

-フルオロ-3-ニトロトルエンの結晶を調製する工程と;
- 前記-フルオロ-3-ニトロトルエンの結晶を式(II)の前記化合物へ転化する工程と
を含む方法。
【請求項15】
式(II):
【化15】

の化合物又はそれの塩の合成のための請求項1~6のいずれか一項に定義されるような式(I)の-フルオロ-3-ニトロトルエンの結晶の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I):
【化1】
の結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエン(略記されるFNT)化合物及びそれの調製方法に言及する。更に、本発明は、式(II):
【化2】
の化合物又はそれの塩の合成方法及び式(II)の化合物又はそれの塩の合成のための結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
液体の物理的状態での化合物2-フルオロ-3-ニトロトルエンの調製方法は、当技術分野において公知であり、そのような液体生成物は、商業的に入手可能である。一般に、そのような液体化合物は、蒸留によって精製される。
【0003】
特に、(特許文献1)(国際特許出願(特許文献2)に対応する)は、ジメチルスルホキシド中でフッ化セシウムを使って2-クロロ-3-ニトロトルエンから出発するFNTの調製方法を開示している。最終FNT生成物は、黄色のオイルとして得られ、減圧蒸留によって精製される(沸点:118℃~122℃/0.0197気圧)。
【0004】
(特許文献3)は、ジメチルスルホキシド中で塩化セシウムを使ったFNTの調製方法を開示しており、最終生成物は、減圧蒸留によって精製される黄色のオイルとして得られる(沸点:118℃~122℃/0.0197気圧)。
【0005】
(非特許文献1)は、アミルナイトライトを使って砂入りの3-ニトロ-ジアゾニウムフルオロボレートを経由して2-ニトロ化合物から2-フルオロ-3-ニトロトルエンを得るための方法を開示している(20~23%収率)。
【0006】
しかしながら、液体生成物の取扱い及び、一般に蒸留による、液体形態での物質の精製プロセスは、複雑であり、且つ、関係している物質のニトロトルエン性(nitrotoluenic nature)のために潜在的に危険有害であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許出願公開第2172198号明細書
【文献】国際公開第2009/014100号
【文献】国際公開第2007/091736号
【非特許文献】
【0008】
【文献】Julius,V.et al.,Berichte der Deutschen Chemichen Gesellschaft[Abteilung]B:Abhandlungen,Volume:64B,Pages 2465-73,(1931)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
それ故、本発明によって対処される課題は、容易に精製できる、且つ、取扱い可能である結晶形態の2-フルオロ-3-ニトロトルエン(FNT)であって、そのような結晶形態がまた高収率で得られる2-フルオロ-3-ニトロトルエン(FNT)を提供することである。
【0010】
この課題は、結晶形態の2-フルオロ-3-ニトロトルエン及び特定の精製プロセスによるそれの調製方法によって解決される。
【0011】
結晶形態及び本発明による対応する調製方法の更なる特徴及び利点は、非限定的な例として示される、好ましい実施形態の以下に報告される説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】結晶性固体形態の2-フルオロ-3-ニトロトルエン(FNT)のXPRDディフラクトグラムを示す。
図2】結晶性固体形態の2-フルオロ-3-ニトロトルエン(FNT)の光学顕微鏡法写真(4×)である。
図3】サンプルA1800449(分析B)についてのDSCを示す。
図4】それぞれ、A1800450(分析A及びB)についてのDSCを示す。
図5】それぞれ、A1800451(分析A及びB)についてのDSCを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1態様によれば、本発明は、式(I):
【化3】
の結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエンであって、25.0及び26.0℃の間の値においてDSC開始ピークを有するか、又は26.0及び27.5℃の間の値においてDSC最大ピークを有するか、又は14.3±0.2において2-シータ値(2θ)で表される特性ピークを持った特徴的なX線粉末回折パターンを有する結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエンに関する。
【0014】
有利にも、本出願人は、結晶化の精製プロセスによって結晶性固体として2-フルオロ-3-ニトロトルエンを得ると、その調製の複雑さが大幅に減少し、並びに結晶形態それ自体の取扱いが大幅に改善されることを意外にも見出した。更に、そのような新しい結晶形態は、高収率(すなわち、90%超)で得られる。実際に、本方法は、より高い純度の生成物を提供するので、それは、十分により高い融点を示し、したがって生成物の容易な取扱いを可能にする。
【0015】
更なる利点として、本発明の方法に従って調製された式(I)の化合物は、それがFNTと類似の沸点を有するので蒸留によって除去するのが特に困難であり、且つ、それがFNTと同様に反応するので、それがFNTから出発して調製される生成物中へ異性体不純物を生み出す式:
【化4】
の異性体不純物2-フルオロ-4-ニトロトルエンの量が減少している。特に、本発明の方法は、実施例4において例示されるように前記不純物の量を減らす。前記目的のために、体積比メタノール/HO 1:1又はメタノール/水 2:1が好ましい。
【0016】
好ましい実施形態によれば、結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエンは、25.0及び26.0℃の間の値においてDSC開始ピーク並びに/又は26.0及び27.5℃の間の値においてDSC最大ピークを有し、且つ、14.3±0.2において2-シータ値(2θ)で表される特性ピークを持った特徴的なX線粉末回折パターンを有する。
【0017】
別の好ましい実施形態によれば、結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエンは、25.0及び26.0℃の間の値においてDSC開始ピーク並びに26.0及び27.5℃の間の値においてDSC最大ピークを有し、且つ、14.3±0.2において2-シータ値(2θ)で表される特性ピークを持った特徴的なX線粉末回折パターンを有する。
【0018】
別の好ましい実施形態によれば、結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエンは、25.0及び26.0℃の間の値においてDSC開始ピーク並びに14.3±0.2において2-シータ値(2θ)で表される特性ピークを持った特徴的なX線粉末回折パターンを有する。
【0019】
好ましくは、結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエンは、26.0及び27.5℃の間の値においてDSC最大ピーク並びに14.3±0.2において2-シータ値(2θ)で表される特性ピークを持った特徴的なX線粉末回折パターンを有する。
【0020】
好ましくは、結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエンは、25.0及び26.0℃の間の値においてDSC開始ピーク並びに26.0及び27.5℃の間の値においてDSC最大ピークを有する。
【0021】
更に、結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエンは、11.3±0.2において2-シータ値(2θ)で表される特徴的なX線粉末回折パターンにおいて更なるピークを有し得る。
【0022】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエンは、25.0及び25.5℃の間の値においてDSC開始ピークを有する。
【0023】
好ましくは、結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエンは、26.5及び27.2℃の間の値においてDSC最大ピークを有する。
【0024】
用語DSC開始ピークの平均に関して、当業者によって一般に公知であるように、外挿開始温度(DIN EN ISO 11357-1:2010-03に従って)は、外挿ベースラインと、溶融又は結晶化ピークの開始における変接線とのデザインされた交点である。ベースライン及び変接線は、温度依存性熱流量シグナルから決定される。純粋な及び均質な物質の場合には、開始温度は、溶融温度として示すことができる。ピーク温度と対照的に、開始温度は、加熱速度及びサンプル質量への依存性が少ない。更に、開始温度は、通常、DSCの温度較正のために用いられる。
【0025】
更なる態様によれば、本発明は、上で定義されたような式(I):
【化5】
の結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエンの調製方法であって、前記方法が、水とC~Cアルコールから選択される溶媒との混合物からの式(I)の2-フルオロ-3-ニトロトルエンの結晶化を含む方法に関する。
【0026】
本明細書で意図するところでは、表現C~Cアルコールは、それぞれ、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノールを意味する。
【0027】
好ましい実施形態によれば、本方法は、撹拌工程を更に含む。有利には、撹拌工程を含むと、式(I)の生成物を含有する懸濁液のより速い濾過を可能にする、より高い粒径の結晶を得ることが可能である。
【0028】
好ましくは、水と溶媒、好ましくはC~Cアルコール、より好ましくはメタノール又はエタノール、更により好ましくはメタノールとの混合物は、10分超、より好ましくは30分超の期間撹拌される。好ましくは水と溶媒との混合物は、30分~4時間、より好ましくは1時間~3時間、更により好ましくは約2時間の期間撹拌される。好ましくは撹拌は、0℃~30℃、好ましくは5℃~25℃、更により好ましくは10℃~20℃の温度で実施される。
【0029】
別の好ましい実施形態によれば、水と溶媒、好ましくはC~Cアルコール、より好ましくはメタノール又はエタノール、更により好ましくはメタノールとの混合物は、0℃~30℃、好ましくは5℃~25℃、より好ましくは10℃~20℃の温度で、30分~4時間、好ましくは1時間~3時間、より好ましくは約2時間の期間撹拌される。
【0030】
別の好ましい実施形態によれば、混合物は、水とメタノールとの混合物であり、5℃~25℃、好ましくは10℃~20℃の温度で、1時間~3時間の期間撹拌される。
【0031】
それが当業者にとって明らかであろうように、本発明の結晶形態の調製及び取扱いは、液体形態(例えば、オイル、油状稠度の液体)での化合物などの、他の物理的形状のものと比較して有利にもより容易である。更に、本発明の精製プロセスは結晶化それ自体によって代表されるので、例えば、蒸留などの複雑な精製工程を回避することができる。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によれば、本方法は、2-フルオロ-3-ニトロトルエンを、C~Cアルコールから選択される溶媒、好ましくはメタノール及びエタノール、更により好ましくはメタノールへ溶解させ、次いで反溶媒としての水を添加することによって実施される。
【0033】
溶媒と水との間の体積比に関して、3:1~1:3の比率を提供することができる。好ましくは、溶媒と水との間の体積比は、1:1又は2:1であり、1:1がより好ましい。
【0034】
別の特に好ましい実施形態によれば、C~Cアルコールは、メタノール又はエタノール、好ましくは、メタノールであり、溶媒と水との間の体積比は1:1である。
【0035】
本明細書で意図するところでは、用語体積は、生成物の1単位当たりの溶媒の体積を意味し、したがって、例えば、1体積は、1キロ当たり1リットル、又は1グラムに対して1mL、又は1ミリグラム当たり1マイクロリットルである。したがって、10体積は、例えば、物質の1キログラム当たり10リットルの、この場合に、式(I)の結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエンの調製に使用される溶媒と水との混合物に使用される溶媒及び水を意味する。
【0036】
式(I)の結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエンの調製に使用される溶媒と水との混合物に使用される各溶媒及び水の体積に関する限りは、好ましくは1~10体積、より好ましくは1~5体積、更により好ましくは2体積を使用することができる。
【0037】
本発明の代わりの実施形態によれば、上で定義されたような式(I):
【化6】
の結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエンは、
- 液体としての式(I)の化合物を、上で定義されたような水と溶媒C~Cアルコールとの混合物に添加する工程と;
- 前記混合物を完全な均質化を達成するまで加熱する工程と;
- 結果として生じた溶液を冷却する工程と
を含む方法に従って調製することができる。冷却工程後に、式(I)の化合物の懸濁液の撹拌及び濾過の更なる工程を実施することができる。
【0038】
更なる態様によれば、本発明は、式(II):
【化7】
の化合物又はそれの塩の合成方法であって、
前記方法が、
- 上で明示されたような方法に従って、上で定義されたような式(I):
【化8】
の結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエンを調製する工程と;
- 前記結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエンを式(II)の化合物へ転化する工程と
を含む方法に関する。
【0039】
結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエンから式(II)の化合物への転化工程は、国際公開第2014/152270号パンフレットのページ15~18及び21~28の教示に従って実施することができる。
【0040】
更なる態様によれば、上で定義されたような式(I)の結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエンは、式(II):
【化9】
の化合物又はそれの塩の合成のために使用することができる。
【実施例
【0041】
原材料は全て、例えばSigma-Aldrichによって商業的に入手可能である。
【0042】
本発明の方法によって結晶化される2-フルオロ-3-ニトロトルエンの合成のためには、当技術分野において公知の任意の方法を用いることができる。例えば、それは、中国特許出願公開第101177400A号明細書、国際公開第2009014100号パンフレット(段落657)に開示された手順に従って調製することができる。
【0043】
実施例1-結晶化による精製
4口丸底フラスコに、国際公開第2009014100号パンフレットに開示された方法によって得られた式:
【化10】
の150gの2-フルオロ-3-ニトロトルエン(FNT)を装入し、30℃の温度でメタノール300ml(2V)に溶解させた。均一溶液を17/18℃に冷却した。水300ml(2V)を17℃~19℃で2hにわたって添加した。溶液を15℃で2時間撹拌し、このようにして生成物の懸濁液を得、それは、15℃での濾過(急速濾過及び無色透明の液体)並びにその後の洗浄(MeOH/HO(0.5V/0.5V))並びに真空下の乾燥時に、90%収率で結晶固体化合物(I)を提供し、ここで、固体形態のXPRDディフラクトグラムを図1に報告し、対応するデータを次の表1にまた報告する。
【0044】
【表1】
【0045】
得られた2-フルオロ-3-ニトロトルエン(FNT)の結晶性固体を、光学顕微鏡法写真(4×)が報告される、図2に示す。
【0046】
実施例2-結晶化による精製
同じ全体体積の溶媒及び水を使用すること並びに2:1及び1:2のメタノールと水との間の体積比を有することによって実施例1を繰り返し、このようにして、それぞれ、80%及び88%の収率を得た。
【0047】
実施例3-結晶化による精製
メタノールの代わりにエタノールを使用することによって実施例1を繰り返し、88%の収率を得た。
【0048】
実施例4-精製と溶媒/水体積比との間の相互関係
得られる生成物の純度と精製と用いられる溶媒/水体積比との間の対応を評価するために、実験テストを実施した。次の表2は、得られた結果を示す。
【0049】
【表2】
【0050】
実施例5-DSC分析
2-フルオロ-3-ニトロトルエンのサンプル(A1800449、A1800450及びA1800451)を、DSC分析の前に4℃で保管した。固形分を4℃で穏やかにミルにかけてDSC分析に好適な均質粉末を得た。次いで、DSCサンプル調製を、いかなる可能なサンプル溶融も回避するために17.0±0.5℃での温度制御クールチャンバー中で行った。DSC分析は、Mettler Toledo DSC2で記録した。NF-Tolサンプルを約17℃で、ピンホール蓋付きの40μLのアルミニウム坩堝中へ秤取し、窒素(50mL/分)下に5℃から40℃まで10K/分で加熱した。各バッチについて、二重反復分析を行った(A及びB)。サンプルをまた、窒素(50mL/分)下に5℃から40℃まで5K/分で分析して加熱速度のあり得る影響をチェックしたが、類似のDSCプロフィールが得られた。これらの分析の結果を、下の次の表3にまとめる。行われたDSCを、図3、4A、4B、5A及び5Bに報告する。
【0051】
【表3】
【0052】
実施例6-XPRD方法
XPRD方法に関する限り、用いられた機器、機器パラメーター及び他のパラメーターを下の表4に報告する。得られたFNTのXPRDディフラクトグラムを図1に報告する。
【0053】
【表4】

例えば、本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
式(I):
【化11】

の結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエンであって、25.0及び26.0℃の間の値においてDSC開始ピークを有するか又は26.0及び27.5℃の間の値においてDSC最大ピークを有するか又は14.3±0.2において2-シータ値(2θ)で表される特性ピークを持った特徴的なX線粉末回折パターンを有する、結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエン。
(項目2)
25.0及び26.0℃の間の値においてDSC開始ピーク並びに/又は26.0及び27.5℃の間の値においてDSC最大ピークを有し、且つ、14.3±0.2において2-シータ値(2θ)で表される特性ピークを持った特徴的なX線粉末回折パターンを有する、項目1に記載の結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエン。
(項目3)
25.0及び26.0℃の間の値においてDSC開始ピークを有する並びに14.3±0.2において2-シータ値(2θ)で表される特性ピークを持った特徴的なX線粉末回折パターンを有する、項目1~2のいずれか一項に記載の結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエン。
(項目4)
11.3±0.2において2-シータ値(2θ)で表される特徴的なX線粉末回折パターンで更なるピークを有する、項目1~3のいずれか一項に記載の結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエン。
(項目5)
25.0及び25.5℃の間の値においてDSC開始ピークを有する、項目1~4のいずれか一項に記載の結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエン。
(項目6)
26.5及び27.2℃の間の値においてDSC最大ピークを有する、項目1~5のいずれか一項に記載の結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエン。
(項目7)
項目1~6のいずれか一項に定義されるような式(I):
【化12】

の結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエンの調製方法であって、前記方法が、水とC ~C アルコールから選択される溶媒との混合物からの式(I)の前記2-フルオロ-3-ニトロトルエンの結晶化を含む方法。
(項目8)
前記方法が、2-フルオロ-3-ニトロトルエンをC ~C アルコールから選択される溶媒に溶解させ、次いで反溶媒としての水を添加することによって実施される、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記C ~C アルコールがメタノール又はエタノールである、項目7~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記溶媒と水との間の体積比が1:1である、項目7~9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記C ~C アルコールがメタノール又はエタノールであり、前記溶媒と水との間の前記体積比が1:1である、項目7~10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
撹拌工程を更に含む、項目7~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記撹拌工程が0℃~30℃の温度で実施される、項目12に記載の方法。
(項目14)
式(II):
【化13】

の化合物又はそれの塩の合成方法であって、
前記方法が、
- 項目7~13のいずれか一項に定義されるような方法に従って項目1~6のいずれか一項に定義されるような式(I):
【化14】

の結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエンを調製する工程と;
- 前記結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエンを式(II)の前記化合物へ転化する工程と
を含む方法。
(項目15)
式(II):
【化15】

の化合物又はそれの塩の合成のための項目1~6のいずれか一項に定義されるような式(I)の結晶性2-フルオロ-3-ニトロトルエンの使用。
図1
図2
図3
図4
図5