(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】物品識別のための手段を備えるエアロゾル発生物品とともに使用するエアロゾル発生装置
(51)【国際特許分類】
A24F 40/40 20200101AFI20231221BHJP
A24F 40/20 20200101ALI20231221BHJP
A24F 40/51 20200101ALI20231221BHJP
【FI】
A24F40/40
A24F40/20
A24F40/51
(21)【出願番号】P 2021507781
(86)(22)【出願日】2019-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2019071995
(87)【国際公開番号】W WO2020035587
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-08-15
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ミロノフ オレク
(72)【発明者】
【氏名】クルバ ジェローム クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ストゥラ エンリコ
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-513750(JP,A)
【文献】特表2017-515488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生物品とともに使用する電気加熱式のエアロゾル発生装置であって、
前記エアロゾル発生物品は、前記エアロゾル発生物品内に配設された指標を含み、前記エアロゾル発生装置は、
‐前記エアロゾル発生物品の少なくとも一部分を受容するための前記装置の近位部分内に受容空洞を含む装置ハウジングと、
‐前記装置の前記近位部分内の前記受容空洞を前記装置の遠位部分から分離する前記受容空洞の遠位端に隣接して配設された分離壁と、
‐前記物品が前記受容空洞に受容された時に、前記物品内のエアロゾル形成基体を加熱するための少なくとも一つの電気加熱装置と、
‐磁界発生器を備える感知回路であって、前記磁界発生器が、前記分離壁に隣接する前記装置の前記遠位部分内に配設されていて、前記感知回路が、前記物品が前記受容空洞の中に受容されている時に
前記指標の存在によって引き起こされた前記磁界発生器の少なくとも一つの特性の変化を測定するように構成されている、感知回路と、を備える、装置。
【請求項2】
前記装置が、磁束集中器を備え、その少なくとも一部分が前記磁界発生器によって円周方向に包囲されていて、かつ前記分離壁に隣接する前記装置の前記遠位部分内に配設されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記磁束集中器が少なくとも前記分離壁の中に延びる、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記磁束集中器が前記分離壁を通って前記装置の前記近位部分の中に延びる、請求項2または請求項3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記磁束集中器を収容する、または前記磁束集中器に隣接している前記分離壁の一部分の厚さが、前記分離壁の他の部分の厚さより小さい、請求項2~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記磁束集中器がフェリ磁性材料を含むか、またはフェリ磁性材料から成る、請求項2~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記磁束集中器が長方形、四角形、円形、または楕円形の断面を有する円筒形状を有する、請求項2~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記磁束集中器が、前記受容空洞の中心軸に関して中心から外れて配設されている、請求項2~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記磁界発生器が誘導コイル、特にらせん状コイルまたは平坦な湾曲したスパイラルコイルである、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記磁界発生器の前記少なくとも一つの特性が、前記磁界発生器のインダクタンスである、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記感知回路と動作可能に連結されたコントローラをさらに備え、前記コントローラが、前記磁界発生器の前記少なくとも一つの特性の測定された変化と、前記磁界発生器の前記少なくとも一つの特性の変化の一つ以上の所定の値との比較に基づいて、前記加熱装置の動作を制御するように構成されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記感知回路が、前記物品が前記受容空洞の中に受容されている時に前記物品内の前記指標の存在によって引き起こされた前記磁界発生器の少なくとも二つの特性の変化を測定するように構成されていて、かつ前記コントローラが、前記磁界発生器の前記少なくとも二つの特性の測定された変化と、前記磁界発生器の前記少なくとも二つの特性の変化の一つ以上の所定の値との比較に基づいて、前記加熱装置の動作を制御するように構成されている、請求項
11に記載の装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の電気加熱式のエアロゾル発生装置と、前記装置で使用するエアロゾル発生物品とを備えるエアロゾル発生システムであって、前記エアロゾル発生物品が、
‐エアロゾル形成基体と、
‐前記エアロゾル形成基体の少なくとも一部分を包囲するラッパーであって、特定の透磁率および特定の電気抵抗率を有する指標を含むラッパーと、を含む、エアロゾル発生システム。
【請求項14】
前記指標が、前記ラッパーの内表面の少なくとも一部分に塗布されている導電性材料でできた薄膜または箔を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記指標が、前記物品の周囲の周りに閉ループ導電性経路を形成する、請求項13~14のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品識別のための手段を備えるエアロゾル発生物品とともに使用する電気加熱式のエアロゾル発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアロゾル形成基体の電気加熱に基づくエアロゾル発生システムは、先行技術から一般的に周知である。これらのシステムは典型的に、加熱されるエアロゾル形成基体を含むエアロゾル発生物品と、エアロゾル発生装置との二つの構成要素を備え、装置は、物品を受容するための受容空洞と、物品が受容空洞の中に挿入されている時に物品内の基体を加熱するための電気ヒーター(例えば、抵抗ヒーターまたは誘導ヒーター)とを備える。
【0003】
各電気加熱式のエアロゾル発生装置は典型的に、特定のタイプのエアロゾル発生物品とともに使用するために設計されている。これは、特定のタイプの基体、および十分に制御された加熱プロセスのためのその基体の特定の要件によって定義されている、各エアロゾル発生システムの固有の設計に起因する。そうでなければ、物品のために明確に設計されていないエアロゾル発生装置でその物品使用すると、異なる喫煙の体験をユーザーに提供する場合がある。特に、不適切な物品の使用は、エアロゾル形成基体の過熱につながる場合があり、それ故に基体の望ましくない燃焼を引き起こす場合がある。なおさらに、特定のタイプの装置と適合性のない物品を使用すると、システムに損傷を与える場合もある。
【0004】
適合性のある物品を識別し、適合性のない物品の使用を防止するように構成されている手段を備えるエアロゾル発生システムがあるが、こうした手段は誤り、特に、実際に適切な物品が適切に認識または識別されないような誤った検出の影響をしばしば受けやすい。また、意図的・非意図的を問わず、簡単に回避されうる物品識別手段もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、物品識別のための改善された手段を含む、特に不適合物品または偽造物品を装置と使用することの困難さを増大させる、エアロゾル発生物品とともに使用するエアロゾル発生装置を有することが望ましいことになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、エアロゾル発生物品とともに使用する電気加熱式のエアロゾル発生装置が提供されていて、物品は、装置によって加熱されるエアロゾル形成基体を含む。装置は、エアロゾル発生物品の少なくとも一部分を受容するための装置の近位部分内に受容空洞を含む装置ハウジングを備える。装置は、受容空洞の遠位端に隣接して配設された分離壁をさらに備え、分離壁は装置の近位部分内の受容空洞を装置の遠位部分から分離する。装置は、物品が受容空洞の中に受容されている時、物品内のエアロゾル形成基体を加熱するための少なくとも一つの電気加熱装置をさらに備える。さらに、装置は、磁界発生器を備える感知回路を備える。感知回路は、物品が受容空洞の中に受容されている時、物品にて、または物品内に配設された指標の存在によって引き起こされた磁界発生器の少なくとも一つの特性の変化を測定するように構成されている。本発明によると、磁界発生器は、分離壁に隣接する装置の遠位部分内に配設されている。
【0007】
本発明によると、先行技術から周知の数多くのエアロゾル発生装置では、装置内の識別手段の不都合な配設によって、誤った物品検出が引き起こされることが認識されている。例えば、識別手段が受容空洞の入口(典型的に、装置の非常に近位の端に位置する)の周りに配設されている場合、物品識別は、装置の周囲にある寄生磁界源に由来する漂遊電磁界などの、外部の影響を受けやすい可能性が高い。これは、電磁誘導に基づく識別手段に特に当てはまる。これらは、例えば物品が受容空洞の中に受容されている時に物品内の誘導指標の存在によって引き起こされたインダクタンスの変化を測定するように構成された誘導コイルを含む識別手段である場合がある。こうした手段を使用すると、寄生電磁場は誘導コイルに有害な誘導効果を引き起こす場合があり、物品の識別を(適切な物品の識別でさえも)できなくさせる場合がある。これに関して、誘導コイルがこうした寄生磁界源にさらされるほど、物品識別の信頼性が低下する。
【0008】
この理由から、本発明による磁界発生器は、装置の遠位部分の中で、特に分離壁に近接して、または分離壁に隣接して配設されている。有利なことに、この配設は、装置自体による漂遊電磁界からの磁界発生器の十分な遮蔽を提供する。その結果、物品が受容空洞の中に導入された時に磁界発生器によって発生された磁界の乱れは、安定した、すなわち再現可能な電磁条件下で、十分に遮蔽された区域の中で生じる。
【0009】
加えて、装置の遠位部分の中の磁界発生器の配設は、受容空洞の中の過酷な環境、特に高温、湿気、およびエアロゾル粒子から磁界発生器を完全に遮蔽することを可能にする。それ故に、磁界発生器上の堆積物および/または磁界発生器の電気部品の可能性のある腐食を効果的に防止することができる。
【0010】
結果として、本発明によるエアロゾル発生装置は、先行技術からの既知の他の装置と比較して著しく改善された物品識別を可能にする。
【0011】
本発明によると、分離壁は、受容空洞の遠位端部分(または底部分)に隣接して配設されている。その結果、分離壁は、装置の近位部分を装置の遠位部分から分離し、近位部分は受容空洞を含んでもよい。分離壁は、受容空洞の中心軸に沿った方向、または装置の長さ延長部全体に沿った方向で見られる通りの、長方形の断面または楕円形の断面または円形の断面を有してもよい。分離壁の断面は、受容空洞の断面の形状、または加熱装置の全体的な断面に対応することが好ましい。
【0012】
分離壁は、受容空洞を装置の遠位部分から密封的に分離することが好ましい。このために、装置は、分離壁の周辺または外周に沿って配設された密封手段(ガスケットなど、特にOリング)を備えてもよい。分離壁は、ブッシング(電気的なブッシング)、すなわち絶縁部材であってもよく、絶縁部材は、導電体の部分、例えば電気加熱装置の部分を保持または通過することを可能にすることが好ましい。
【0013】
一般に、磁界発生器は、任意のタイプの磁界発生器であってもよく、物品が受容空洞の中に導入された時に物品にて、または物品内に配設された指標の存在を感知するために適切な装置ハウジング内で任意の構成、形状、および配設を有してもよい。
【0014】
本明細書で使用される「磁界発生器」という用語は、磁界の供与源として作用することができる器具を指し、すなわち磁界発生器は磁界を発生するように構成されてもよい。その結果、磁界発生器はまた、磁界源として示されてもよい。磁界は電場、磁場、または電磁場であってもよい。磁界発生器は、例えば誘導コイル、アンテナ、または磁石、特に電磁石または永久磁石を含んでもよい。
【0015】
磁界発生器は、誘導コイルであることが好ましい。その場合、誘導コイルは、らせん状コイルまたはフラットスパイラルコイル、特にパンケーキもしくは平坦な湾曲したスパイラルコイルであってもよい。フラットスパイラルコイルの使用は、頑丈でかつ製造が安価なコンパクトな設計を可能にする。らせん状誘導コイルの使用は有利なことに、コイルの内部に実質的に均質な磁界構成を提供する。本明細書で使用される「フラットスパイラルコイル」は、概して平面状のコイルを意味し、コイルの巻線の軸はコイルが置かれている表面に対して垂直である。フラットスパイラル誘導はコイルの平面内で任意の所望の形状を有することができる。例えば、フラットスパイラルコイルは円形の形状を有してもよく、または概して楕円形もしくは長方形の形状を有してもよい。しかしながら、本明細書で使用される「フラットスパイラルコイル」という用語は、平面状のコイルと、曲面に適合するように成形されたフラットスパイラルコイルとの両方を網羅する。例えば、誘導コイルは、好ましくは円筒状のコイル支持体(例えば、フェライトコア)の周囲に配設された「湾曲した」平面状コイルであってもよい。さらに、フラットスパイラルコイルは、例えば4回巻きフラットスパイラルコイルの二層、または4回巻きフラットスパイラルコイルの単層を備えてもよい。誘導コイル上の堆積および/または腐食の可能性を防止するために、誘導コイルは保護カバーまたは層を備えてもよい。
【0016】
磁界発生器の近くの指標の指標存在は、磁界発生器によって発生した磁界に乱れを引き起こす。磁界の乱れは磁界発生器に影響を与え、これは磁界発生器の少なくとも一つの特性の変化につながる。特性の変化は、磁界発生器のパラメータの変化を測定することによって観察されうる。パラメータは直接的に測定されてもよく、または間接的に測定されてもよい。指標の存在、従って物品の存在は、パラメータを測定することによって、かつパラメータが、指標の不在下での値と比較して、指標の存在下で異なる値を有することを観察することによって決定されてもよい。
【0017】
指標の存在によって引き起こされた磁界発生器によって発生された磁界中の乱れは、磁界と指標の間の相互作用に起因する場合がある。
【0018】
エアロゾル発生物品内の指標は、特定の透磁率および特定の電気抵抗率を有してもよい。すなわち、指標は、特定の透磁率および特定の電気抵抗率を有する材料を含んでもよい。指標は導電性材料を含むことが好ましい。例えば、指標は金属材料を含んでもよい。金属材料は、例えばアルミニウム、ニッケル、鉄、またはその合金(例えば、炭素鋼、またはフェライト系ステンレス鋼)のうちの一つであってもよい。アルミニウムは、室温(20℃)にて測定された約2.65×10E-08オームメートルの電気抵抗率と、約1.256×10E-06ヘンリー/メートルの透磁率とを有する。同様に、フェライト系ステンレス鋼は、室温(20℃)にて測定された時の約6.9×10E-07オームメートルの電気抵抗率と、1.26×10E-03ヘンリー/メートル~2.26×10E-03ヘンリー/メートルの範囲の透磁率とを有する。
【0019】
磁界発生器の少なくとも一つの特性は、指標の不在下での値と比較して、指標の存在下で異なる値を有する関連パラメータを有する任意の特性であってもよい。例えば、少なくとも一つの特性は、磁界発生器の電流、電圧、抵抗、周波数、位相シフト、磁束、およびインダクタンスであってもよい。特性は、磁界発生器のインダクタンスであることが好ましい。
【0020】
指標は誘導指標であってもよい。
【0021】
インダクタンスは一般的に、外部の電磁気の影響を受けやすい電気回路の特性を含む。本明細書で使用される用語であって、感知回路によって測定される「インダクタンス」という用語は、供給AC電圧と測定されたAC電流との比として定義された複素インピーダンスの虚数部を指す。
【0022】
磁界発生器の少なくとも一つの特性に及ぼす指標の効果が最大である体積に磁界発生器の感知場を集中させるために、装置は磁束集中器を備えてもよく、磁束集中器の少なくとも一部分は、磁界発生器の少なくとも一部または一部分によって円周方向に包囲されていて、かつ分離壁に隣接する装置の遠位部分内に配設されている。さらに、磁束集中器を使用することは、少なくとも一つの特性(例えばインダクタンス)の測定に及ぼす乱れ効果を低減するために役立つ場合がある。こうした乱れ効果は特に、装置ハウジングからもたらされる場合がある。
【0023】
好ましくは、磁束集中器は、少なくとも分離壁の中に延びる。有利なことに、これは、物品が受容空洞内に配設されている時に、磁界発生器の感知場を指標に、より近づけることを容易にする。磁束集中器の遠位端は、受容空洞に面する分離壁の表面に到達することなく、分離壁内で終了する場合がある。有利なことに、後者の構成は、受容空洞の中の過酷な環境から、磁界発生器および電子機器を遮蔽することを容易にする。
【0024】
別の方法として、磁束集中器は、分離壁を通して、すなわち分離壁を越えて装置の近位部分の中に延びてもよい。この構成は、物品が受容空洞内に配設されている時に、磁界発生器の感知場を指標に、なおより近づけることを容易にする。
【0025】
磁束集中器を収容する、または磁束集中器に隣接している分離壁の一部分の厚さは、分離壁の他の部分の厚さより小さくてもよい。有利なことに、これは、物品内の指標に対する磁界発生器の感度を改善するのに役立つ場合がある。
【0026】
磁束集中器は、フェリ磁性材料、特に軟鉄またはシリコン、鋼(変圧器用鋼)、またはパーマロイなどの金属フェライトを含むか、またはそれらから成ることが好ましい。磁束集中器は、例えば長方形、四角形、円形、または楕円形の断面を有する円筒であってもよい。
【0027】
さらに、磁束集中器(その少なくとも一部分は、磁界発生器によって円周方向に包囲されている)は、受容空洞の中心軸に対して中心から外れて配設されてもよい。この配設はまた、物品内の指標に対する磁界発生器の感度を改善する場合がある。
【0028】
本発明のさらなる態様によると、装置は、感知回路と動作可能に連結されているコントローラを備えてもよい。コントローラは、磁界発生器の少なくとも一つの特性(インダクタンスなど)の測定された変化と、少なくとも一つの特性の変化の一つ以上の所定の値との比較に基づいて、加熱装置の動作を制御するように構成されてもよい。その結果、加熱装置の動作は、少なくとも一つの特性の測定値が所定の値に対応するか、または少なくとも所定の値の辺りのそれぞれの事前定義された許容可能性の範囲内にある場合にのみ、コントローラによって起動される。そうでなければ、少なくとも一つの特性が確認されない場合、加熱装置の動作は起動されない。それ故に、適合性のない物品の使用を効果的に防止しうる。
【0029】
感知回路は、少なくとも二つの特性の変化、特に物品が受容空洞の中に受容されている時に物品の指標の存在によって引き起こされた磁界発生器の二つの特性を測定するようにさらに構成されていることが好ましい。感知回路は、物品の指標の存在によって引き起こされた磁界発生器の等価抵抗の変化だけでなくインダクタンスの変化も測定するように構成されてもよい。本明細書で使用される「等価抵抗」という用語は、供給AC電圧と測定されたAC電流との比として定義された複素インピーダンスの実数部を指す。
【0030】
この構成において、コントローラは有利なことに、磁界発生器の少なくとも二つの特性(例えば磁界発生器のインダクタンスおよび抵抗)の測定された変化と、それぞれの特性の変化の一つ以上の所定の値との比較に基づいて加熱装置の動作を制御するように構成されている。これに関して、指標の存在によって引き起こされた磁界発生器の少なくとも二つの特性(一つの特性のみではなく)の変化を測定および検証することによって、すなわち指標の少なくとも二つのパラメータが磁界発生器に及ぼす効果を測定および検証することによって、不適合物品または偽造物品の望ましくない使用に対する保護をさらに高めることができることが認識されている。よって、加熱装置の動作は、磁界発生器の少なくとも二つの測定された特性のすべてのそれぞれの変化が確認された場合、すなわちそれぞれの所定の値に同時に対応する、または少なくとも同時に、所定の値の辺りの許容可能性のそれぞれの事前定義された範囲内にある場合にのみ、コントローラによって起動される。そうでなければ、測定された変化のうちの少なくとも一つが確認されない場合、加熱装置の動作は起動されない。磁界発生器の少なくとも二つの特性の測定された変化、例えば等価インダクタンスの変化および等価抵抗の変化は、それ故に、同時に確認される特性の組(例えば特性の対)を形成する。
【0031】
特性の組は、物品を有する特定の指標の使用に固有のものであることが好ましい。特に、指標は、特定の透磁率および特定の電気抵抗率を有してもよい。従って、特定の透磁率および特定の電気抵抗は、そのインダクタンスおよび等価抵抗の所定の変化など、磁界発生器の特性の所定の変化を誘導する能力を排他的に有するこれらのパラメータの特定の値を呈する指標材料が好ましくは一つしかないような、固有のパラメータの組を形成する場合がある。磁界発生器の特性の所定の変化は、較正測定からもたらされる場合があり、指標の物理的特性(例えば、その透磁率および電気抵抗率など)に加えて、指標および磁界発生器の幾何学的構成だけでなく、磁界発生器に対する指標の配設に概して依存する。これ故に、指標および磁界発生器の幾何学的形状および相対的な配設とは別に、磁界発生器の特定の特性の特徴的な変化に対する指標の物理的特性による固有の効果があることが好ましい。例えば、磁界発生器のインダクタンスおよび等価抵抗の変化に及ぼす、指標の透磁率および電気抵抗率による固有の効果がある場合がある。それに応じて、透磁率および電気抵抗率などの指標の物理的特性のパラメータの組と、磁界発生器のインダクタンスの変化および等価抵抗の変化などの磁界発生器の特性の組との間に固有の関係があることが好ましい。この固有の関係は有利なことに、純正のエアロゾル発生物品の識別または認識をより信頼できるものにする。
【0032】
本明細書で使用される「エアロゾル発生装置」という用語は、基体を加熱することによってエアロゾルを発生するように、少なくとも一つのエアロゾル形成基体と相互作用する能力、特にエアロゾル発生物品内に提供されたエアロゾル形成基体と相互作用する能力を有する電気的に作動する装置を記述するために使用される。エアロゾル発生装置は、ユーザーによってユーザーの口を通して直接吸入可能なエアロゾルを発生するための吸煙装置であることが好ましい。特に、エアロゾル発生装置は手持ち式のエアロゾル発生装置である。
【0033】
本明細書で使用される「エアロゾル発生物品」という用語は、エアロゾルを形成することができる揮発性化合物を、加熱された時に放出する少なくとも一つのエアロゾル形成基体を含む物品を指す。エアロゾル発生物品は、加熱式エアロゾル発生物品であることが好ましい。すなわち、エアロゾルを形成することができる揮発性化合物を放出するために、燃焼ではなく加熱されることが意図されている少なくとも一つのエアロゾル形成基体を含む、エアロゾル発生物品である。エアロゾル発生物品は、消耗品、特に単回使用後に廃棄される消耗品であってもよい。例えば、物品は、加熱される液体エアロゾル形成基体を含むカートリッジであってもよい。別の方法として、物品は従来の紙巻たばこに似ているロッド状の物品(特にたばこ物品)であってもよい。
【0034】
本明細書で使用される「エアロゾル形成基体」という用語は、エアロゾル形成基体の加熱に伴いエアロゾルを形成することができる揮発性化合物を放出する能力を有する基体に関する。エアロゾル形成基体はエアロゾル発生物品の一部である。エアロゾル形成基体は固体エアロゾル形成基体であってもよく、または液体エアロゾル形成基体であってもよい。両方の場合において、エアロゾル形成基体は固体成分および液体成分のうちの少なくとも一つを含んでもよい。エアロゾル形成基体は、加熱に伴い基体から放出される揮発性のたばこ風味化合物を含有するたばこ含有材料を含んでもよい。別の方法として、または追加的に、エアロゾル形成基体は非たばこ材料を含んでもよい。エアロゾル形成基体はエアロゾル形成体をさらに含んでもよい。適切なエアロゾル形成体の例はグリセリンおよびプロピレングリコールである。エアロゾル形成基体はまた、その他の添加物および成分(ニコチンまたは風味剤など)を含んでもよい。エアロゾル形成基体はまた、ペースト様の材料、エアロゾル形成基体を含む多孔性材料のサシェ、または例えばゲル化剤または粘着剤と混合されたばらのたばこであってもよく、これはグリセリンなどの一般的なエアロゾル形成体を含むことができ、これはプラグへと圧縮または成形される。
【0035】
磁界発生器を含む感知回路は、発振器回路であってもよい。
【0036】
電気加熱装置は、抵抗発熱体を備える抵抗加熱装置であることが好ましい。抵抗発熱体は、内在するそのオーム抵抗または抵抗負荷に起因して電流が通過する時に加熱する。抵抗発熱体は、抵抗加熱ワイヤ、抵抗加熱トラック、抵抗加熱グリッド、または抵抗加熱メッシュのうちの少なくとも一つを備えてもよい。加熱装置は、受容空洞内に固定的に配設された、実質的に受容空洞の中心軸に沿って延びる加熱ブレードを備えることが好ましい。ブレードは、装置の近位端にて受容空洞の開口の方を向くその近位端にてテーパー付きの近位先端部分を備えてもよい。それ故に、物品を受容空洞の中に挿入するに伴い、加熱ブレードは物品のエアロゾル形成基体の中に容易に貫通しうる。基体を加熱するために、加熱ブレードの少なくとも一方の側は、例えば白金でできた金属トラックで被覆され、抵抗発熱体として機能しうる。それ故に、駆動電流が金属トラックを通過する時、加熱ブレードは加熱してエアロゾル形成基体中の揮発性化合物を加熱および放出させて、それによってエアロゾルを形成する。
【0037】
加熱プロセスを制御するために使用されるエアロゾル発生装置のコントローラは、全体的なコントローラであってもよい。特にコントローラは、特にエアロゾル形成基体の温度を目標温度に調整するために、エアロゾル形成基体の温度を制御するように構成されてもよい。これに関して、コントローラは加熱装置への電流の供給を調節するように構成されてもよい。電流はシステムの起動後、加熱装置に連続的に供給されてもよく、または断続的に(例えば、吸煙するごとに)供給されてもよい。
【0038】
コントローラは、マイクロプロセッサ、例えばプログラマブルマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、または特定用途向け集積回路チップ(ASIC)もしくは制御を提供する能力を有するその他の電子回路を備えてもよい。コントローラは、少なくとも一つのDC/ACインバータおよび/または電力増幅器(例えば、クラスDまたはクラスE電力増幅器)など、さらなる電子構成要素を備えてもよい。
【0039】
特に、コントローラは感知回路を含んでもよい。これに関して、コントローラは感知回路を実行し、かつ読み出すように構成されてもよい。
【0040】
エアロゾル発生装置は有利なことに、電源、好ましくはリン酸鉄リチウム電池などの電池を備える。代替として、電源は別の形態の電荷蓄積装置(コンデンサーなど)であってもよい。電源は再充電を必要とする場合があり、また一回以上のユーザー体験のために十分なエネルギーの貯蔵を可能にする容量を有する場合がある。例えば、電源は約六分間、または六分の倍数の時間にわたるエアロゾルの連続的な発生を可能にするのに十分な容量を有してもよい。別の実施例において、電力供給源は、所定の吸煙回数、または加熱装置の不連続的な起動を可能にするために十分な容量を有してもよい。エアロゾル発生装置は、受容空洞と流体連通する少なくとも一つの空気吸込み口を備えることが好ましい。その結果、エアロゾル発生システムは、少なくとも一つの空気吸込み口から受容空洞の中に延びる、および場合によっては物品内のエアロゾル形成基体とマウスピースを通してユーザーの口の中にさらに延びる空気経路を備えてもよい。
【0041】
エアロゾル形成基体またはエアロゾル発生物品を使い果たした後に取り外すために、エアロゾル発生装置は、エアロゾル発生装置の中に受容されたエアロゾル形成基体またはエアロゾル発生物品を抜き取るために、例えば国際特許公開公報第2013/076098 A2号に記載の通りの抜き取り具をさらに備えてもよい。
【0042】
本発明によると、エアロゾル発生システムも提供されていて、これは本発明による、および本明細書に記載の通りの電気加熱式のエアロゾル発生装置だけでなく、装置で使用するエアロゾル発生物品を備える。
【0043】
エアロゾル発生物品は、装置の受容空洞の中への物品の挿入後に装置によって加熱されるエアロゾル形成基体を含む。さらに、物品は、物品が受容空洞の中に受容されている時に、磁界発生器の少なくとも一つの、好ましくは少なくとも二つの特性の変化(例えば、磁界発生器のインダクタンスの変化、および好ましくはまた等価抵抗の変化)を引き起こすように構成されている指標を含む。
【0044】
上述の通り、指標は、特定の透磁率および特定の電気抵抗率を有する材料を含んでもよい。指標は金属指標材料を含むことが好ましい。金属指標材料は、例えばアルミニウム、ニッケル、鉄、またはその合金(例えば、炭素鋼、またはフェライト系ステンレス鋼)のうちの一つであってもよい。アルミニウムは、室温(20℃)にて測定された約2.65×10E-08オームメートルの電気抵抗率と、約1.256×10E-06ヘンリー/メートルの透磁率とを有する。同様に、フェライト系ステンレス鋼は、室温(20℃)にて測定された時の約6.9×10E-07オームメートルの電気抵抗率と、1.26×10E-03ヘンリー/メートル~2.26×10E-03ヘンリー/メートルの範囲の透磁率とを有する。
【0045】
指標は、任意の形状および/または構成を有してもよい。例えば指標は、磁界発生器によって発生された磁界中に乱れを引き起こすワイヤ、粒子、パッチ、リング、断片、フィラメント、および材料の細片のうちの少なくとも一つを備えてもよい。指標は、物品の外表面に近接して配設されていることが好ましい。例えば、指標は、エアロゾル形成基体の少なくとも一部分を包囲するスリーブまたはラッパーまたはエンベロープであってもよい。
【0046】
指標は、好ましくはマウスピース、特にフィルタープラグを備える物品の近位部分と対向して、少なくとも物品の遠位部分内に配設されていることが好ましい。当然のことながら、指標は、物品の長さ延長部の全体に沿って配設されてもよく、または排他的に物品の遠位部分内に配設されてもよい。
【0047】
一般的に物品は、実質的にロッド状の形状を有してもよく、従来の紙巻たばこの形状に似ていることが好ましい。
【0048】
物品は、異なる部分、特に物品の近位端部分にあるエアロゾル形成基体と、中央空気通路を有する支持要素と、エアロゾル冷却要素と、マウスピースとして機能する、物品の遠位端にあるフィルタープラグとを備えてもよい。
【0049】
物品は、エアロゾル形成基体の少なくとも一部分を包囲する、または上述の異なる部分を包囲するラッパーをさらに備えてもよく、それによってそれらを一緒に保持し、かつ物品の所望の断面形状を維持する。ラッパーは、物品の外表面の少なくとも一部分を形成することが好ましい。例えば、ラッパーは、紙ラッパー、特に紙巻たばこ用紙でできた紙ラッパーであってもよい。別の方法として、ラッパーは、例えばプラスチックでできた箔であってもよい。ラッパーは、気化したエアロゾル形成基体が物品から放出されることを可能にするように、またはその周囲を通して空気が物品の中に引き出されることを可能にするように流体透過性であってもよい。さらに、ラッパーは、加熱に伴い活性化され、かつラッパーから放出される少なくとも一つの揮発性物質を含んでもよい。例えば、ラッパーは風味揮発性物質で含浸されてもよい。
【0050】
ラッパーは指標を含むか、または指標はラッパーにて配設されている、もしくはラッパーに取り付けられることが好ましい。特に、指標自体は、物品の外表面の少なくとも一部分を形成するラッパーに取り付けられたラッパーであってもよい。指標は、こうしたラッパーの内表面に配設されている、または取り付けられていることが好ましい。例えば、指標は、エアロゾル形成基体の少なくとも一部分を包囲する、および/または物品の長さ延長部の少なくとも一部分に沿って延びる指標材料を含むスリーブを備えてもよい。同様に、指標は、物品の外表面の少なくとも一部分を形成するラッパーの内表面の少なくとも一部分に塗布されている指標材料でできた薄膜または箔を備えてもよい。金属指標材料は、物品の遠位部分内のラッパー(例えば紙ラッパー)の内表面に塗布されていることが好ましい。指標材料は金属、例えばアルミニウムであってもよい。この構成において、ラッパーは、金属化されたラッパー、特にアルミニウム被覆したラッパーであると見なされてもよい。
【0051】
さらに、指標は、物品の周囲の周りに閉ループ導電性経路を形成することが好ましい。例えば、指標は、物品の少なくとも一部分を完全に囲むラッパーを形成しうる。有利なことに、これは、インダクタンスおよび抵抗の測定された変化をより顕著にさせ、それ故に物品識別の信頼性がより高くなる。有利なことに、これはまた、指標によって引き起こされた磁界発生器によって発生された磁界の乱れ、および少なくとも一つの特性における対応する変化を、装置に対する物品の軸方向の回転の向きと無関係にすることを可能にする。
【0052】
本発明を、添付図面を参照しながら、例証としてのみであるがさらに記述する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】
図1は、エアロゾル発生装置およびエアロゾル発生システムを備える、本発明の第一の実施形態によるエアロゾル発生システムの概略図である。
【
図2】
図2は、
図1によるエアロゾル発生システムのエアロゾル発生システムの詳細な概略図である。
【
図3】
図3は、
図1によるエアロゾル発生物品の詳細な図である。
【
図4】
図4は、本発明によるエアロゾル発生システムによって測定された識別パラメータを示す線図である。
【
図5】
図5は、本発明の第二の実施形態によるエアロゾル発生システムの詳細な概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1および
図2は、エアロゾルを発生するようにエアロゾル形成基体91を電気加熱するように構成されている、本発明の第一の実施形態によるエアロゾル発生システム1を概略的に図示する。システム1は、加熱されるエアロゾル形成基体91を含むエアロゾル発生物品90と、物品90を受容するための受容空洞20、および受容空洞20の中に挿入されている時に物品90内のエアロゾル形成基体91を加熱するように構成されている電気加熱装置30を備える、物品90とともに使用するエアロゾル発生装置10との二つの構成要素を備える。
【0055】
図1から分かる通り、装置10は、実質的に円筒状の装置ハウジング11によって形成された実質的にロッド状の装置本体を備える。遠位部分13内に、装置10は、電源16(例えばリチウムイオン電池)と、装置10の動作を制御するための、特に基体の加熱を制御するためのコントローラ18を含む電気回路17とを備える。遠位部分13と反対側の近位部分14内に、装置10は受容空洞20を備える。受容空洞20は、装置10の近位端12にて開放していて、それ故に物品90が受容空洞20の中に容易に挿入されることを可能にする。
【0056】
図1からさらに分かる通り、装置10は、装置ハウジング11内に配設されている分離壁40を備える。分離壁40は、装置10の近位部分14中の受容空洞20を、装置10の遠位部分13中の電子部品から持続的に分離する。本実施形態において、分離壁40はまた、電気加熱装置30の部分を保持し、かつ通過することを可能にするブッシングとして機能する。これに関して、分離壁40は電気絶縁材料で作製されている。分離壁40の材料はまた、受容空洞20から装置10の遠位部分13中の電子部品への熱伝達を防止するように断熱性であることが好ましい。それに応じて、分離壁40は、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などの断熱性プラスチック材料で作製されてもよい。
【0057】
装置10の遠位部分13中の電子部品をダストおよび湿気から適切に保護することを確実にするために、装置10は、分離壁40の周辺部に沿って配設されている密封手段45(ガスケットなど)をさらに備える。
【0058】
本実施形態による加熱装置30は抵抗加熱装置である。
図1を参照すると、加熱装置30は、二つのセラミックカバー部材の間に挟まれた金属コアを備える加熱ブレード31を備える。ブレードは分離壁40に据え付けられていて、それ故に装置ハウジング11内に固定的に配設されている。ブレード31は分離壁40から、実質的に受容空洞20の中心軸に沿って、受容空洞20の中に延びる。加熱ブレード31の近位端にあるテーパー付き近位先端部分33は、装置10の近位端12にある空洞20の開口の方を向いている。それ故に、物品90を受容空洞20の中に挿入するに伴い、加熱ブレード31は物品90の遠位先端部分においてエアロゾル形成基体91の中に貫通する。基体を加熱するために、少なくとも一つのカバー部材の外表面は、抵抗加熱プロセスに電力供給し、かつこれを制御するための電源16およびコントローラ17に動作可能に連結されている抵抗発熱体として機能する(例えば白金でできている)金属トラック32で被覆されている。それ故に、駆動電流が金属トラック32を通過する時、加熱ブレード31は加熱してエアロゾル形成基体91中の揮発性化合物を加熱および放出させて、それによってエアロゾルを形成する。
【0059】
エアロゾル発生物品90を使い果たした後に取り外すために、エアロゾル発生装置10は、受容空洞20内に配設されていて、かつ加熱ブレード31からの物品90の抜き取りを容易にするように構成されている抜き取り具60(例えば、国際特許公開公報第2013/076098A2号に記載の通りの抜き取り具)をさらに備える。
【0060】
図3は、
図1および
図2によるエアロゾル発生物品90をより詳細に図示する。物品90は、従来の紙巻たばこの形状に似ているロッド形状を実質的に有する。物品90は、同軸配列で配設された四つの要素、すなわち物品90の近位端98にあるエアロゾル形成基体91と、中央空気通路93を有する支持要素92と、エアロゾル冷却要素94と、マウスピースとして機能する、物品90の遠位端99にあるフィルタープラグ95とを備える。エアロゾル形成基体91は、例えばエアロゾル形成体としてグリセリンを含む均質化したたばこ材料の捲縮したシートを含んでもよい。支持要素92は、中央空気通路93を形成する中空コアを備える。フィルタープラグ95は、例えばセルロースアセテート繊維を含んでもよい。四つの要素すべては実質的に円筒状の要素であり、実質的に同一の直径を有する。これらの四つの要素は連続的に配設されていて、また円筒状のロッドを形成するように紙巻たばこ用紙で作製された外側ラッパー96によって囲まれている。この特定のエアロゾル発生物品、特にこの四つの要素のさらなる詳細は、国際特許公開公報第2015/176898 A1号に開示されている。
【0061】
その上、国際特許公開公報第2015/176898 A1号に開示されている物品とは対照的に、本発明による物品は、物品認識のために、すなわち物品の純正性を識別するために、および不適合物品または偽造物品の使用を防止するために使用される指標材料97を含む。本実施形態において、金属指標材料97は、紙ラッパー96の内表面に塗布されているアルミニウムでできた薄膜である。それ故に、ラッパー96はまた、アルミニウム被覆した紙ラッパーと見なされてもよい。
【0062】
物品の純正性を識別し、かつ不適合物品または偽造物品の使用を防止するために、エアロゾル発生装置10は、誘導コイル51の形態の磁界発生器52を含む感知回路50を備える。感知回路50は、受容空洞20の中への物品の挿入後に誘導コイル51の近くに位置付けられている時に、エアロゾル発生物品90中の指標材料91の存在を検出するように構成されている。
【0063】
本発明によると、感知回路50は、受信空洞20の中へのエアロゾル発生物品90の挿入後に、指標材料91によって誘導された、または引き起こされた誘導コイル50の等価インダクタンス△L_eqの変化と等価抵抗△R_eqの変化の両方を測定するように構成されている。典型的に、感知回路50は、両方のパラメータを測定するための発振器回路を含んでもよい。
【0064】
図4に図示する通り、誘導コイル50は感知回路50の一部として、等価インダクタンスL1_eqを有し、これは受容空洞20の中へのエアロゾル発生物品90の挿入後に、より低い値L2_eqに減少する。この減少は、導電コイル51の近傍の空間体積内の有効な透磁率を変化させる指標材料97の特定の透磁率に起因する。同様に、誘導コイル50は、受容空洞20の中へのエアロゾル発生物品90の挿入後に、R1_eqからの等価抵抗の増大を経験する。この増大は、誘導コイル51にかけられた抵抗負荷を表す指標材料97の特定の抵抗に起因する。上述の通り、誘導コイル51は発振器回路50の一部であることが好ましい。抵抗指標材料97が誘導コイル51の近傍に位置付けられている時、感知回路のQ因子(品質係数)は減少する。これは、無効負荷における損失の増大を補うように、感知回路における測定可能な電圧および電流の増大を引き起こす。
【0065】
本発明によると、感知回路50はコントローラ17と動作可能に連結されている。本実施形態において、感知回路50はコントローラ17の一部でさえもある。本発明によると、コントローラは、等価インダクタンスおよび等価抵抗の測定された変化と、等価インダクタンスおよび等価抵抗の変化の一つ以上の所定の値との比較に基づいて、加熱装置30の動作を制御するように構成されている。特に、加熱装置30の動作は、測定されたパラメータ△L_eqと△R_eqの両方がそれぞれの所定の値に同時に対応するか、または少なくとも同時に所定の値の辺りの許容可能性△L_tolおよび△R_tolのそれぞれの事前定義された範囲内である場合にのみ、コントローラ17によって起動される。そうでなければ、測定されたパラメータΔL_eqまたはΔR_eqのうちの少なくとも一つが確認されない場合、加熱装置30の動作は起動されない。それ故に、等価インダクタンス△L_eqの変化と等価抵抗△R_eqの変化の両方は、特定の透磁率および特定の電気抵抗率を有する特定の指標材料97の使用に固有の確認されるべきパラメータ対を形成する。
【0066】
図1に図示する通り、誘導コイル51は、装置10の遠位部分13内で、分離壁40の近くに配設されている。さらに上述した通り、この配設は、装置10自体による、可能性のある漂遊電磁界からの誘導コイル51の十分な遮蔽を提供する。それに応じて、受容空洞20の中に導入されている時に物品90によって引き起こされる実際の誘導プロセスは、安定した、すなわち再現可能な電磁条件下で、十分に遮蔽された区域中で生じる。有利なことに、これは、先行技術から周知の他の装置と比較して、物品識別の信頼性を著しく改善する。加えて、装置10の遠位部分13における誘導コイル51の配設は、受容空洞の中の過酷な環境から誘導コイルを完全に遮蔽することを可能にする。それ故に、誘導コイル51上の堆積物、および/または誘導コイルの電気部品の可能性のある腐食を効果的に防止することができる。
【0067】
等価抵抗および等価インダクタンスに及ぼす金属指標材料の効果が最大である体積に誘導コイル51の感知場を集中させるために、誘導コイル51は、分離壁40の中に部分的に延びる磁束集中器56上に配設されている。有利なことに、これは、誘導コイル51の感知場を受容空洞20の中の金属指標材料に近づけさせる。
図1および
図2から分かる通り、磁束集中器56の遠位端57は、分離壁40内で終了するが、受容空洞20に面する分離壁40の表面に達しない。
【0068】
代替として、
図5は、本発明によるエアロゾル発生システム101の第二の実施形態(詳細のみ)を概略的に図示する。
図5に示すシステム101は、
図1および
図2に示すシステム1と非常に類似している。エアロゾル発生物品90、190は同一でさえある。従って、同様または同一の特徴は、
図1および
図2と同一の参照符号に100を加えた参照符号で示されている。
図1および
図2によるエアロゾル発生装置1とは対照的に、
図5による装置110は磁束集中器156を備え、その遠位端157は分離壁140を越えて装置110の近位部分114の中に延びる。この構成は、誘導コイル151の感知場を受容空洞140の中の金属指標材料に、なおより近づけることを可能にする。それ以外に、
図5に示すエアロゾル発生システム101の実施形態は、
図1および
図2に示す実施形態と同一である。
【0069】
図1および
図2、ならびに
図5にそれぞれ示す両方の実施形態において、磁束集中器は、円形または楕円形の断面を有する、かつフェリ磁性材料、特に軟鉄などの金属フェライトで作製された円筒である。