(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】物品識別の手段を備える、エアロゾル発生物品と使用するためのエアロゾル発生装置
(51)【国際特許分類】
A24F 40/40 20200101AFI20231221BHJP
A24F 40/20 20200101ALI20231221BHJP
A24F 40/51 20200101ALI20231221BHJP
【FI】
A24F40/40
A24F40/20
A24F40/51
(21)【出願番号】P 2021507782
(86)(22)【出願日】2019-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2019071994
(87)【国際公開番号】W WO2020035586
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-08-15
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ミロノフ オレク
(72)【発明者】
【氏名】クルバ ジェローム クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ストゥラ エンリコ
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-521124(JP,A)
【文献】特表2012-513750(JP,A)
【文献】特表2017-501682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生物品と使用するための電気加熱式のエアロゾル発生装置であって、
前記エアロゾル発生物品は、前記エアロゾル発生物品の所にまたは前記エアロゾル発生物品内に配設されたインジケータを含み、
前記装置が、
前記エアロゾル発生物品の少なくとも一部分を受容するための前記装置の近位部分内に受容くぼみを含む装置ハウジングと、
前記装置の前記近位部分内の前記受容くぼみを前記装置の遠位部分から分離する前記受容くぼみの遠位端部分に隣接して配設された分離壁と、
前記物品が前記受容くぼみに受容されたときに、前記物品内のエアロゾル形成基体を加熱するための少なくとも一つの電気加熱装置と、
電界発生器を備える感知回路であって、前記電界発生器が、前記分離壁内にまたは前記分離壁の周囲または外周の周りに円周方向に、前記受容くぼみの近位端部分と反対側の前記受容くぼみの遠位端部分に隣接して配設され、前記感知回路が、前記受容くぼみに前記物品が受容されたときに
前記インジケータの存在によって引き起こされる前記電界発生器の少なくとも一つの特性の変化を測定するように構成されている、感知回路と、を備える、装置。
【請求項2】
前記分離壁が円周の凹部を備え、前記電界発生器が前記円周の凹部に配設されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電界発生器が誘導コイル、特にらせん状コイル、またはフラットスパイラルコイル、特にパンケーキコイルもしくはフラット湾曲スパイラルコイルである、請求項1~2のいずれか一項に記載の装置。
【請求項4】
前記電界発生器の前記少なくとも一つの特性が前記電界発生器のインダクタンスである、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記感知回路と動作可能に結合されたコントローラをさらに備え、前記コントローラが、前記電界発生器の前記少なくとも一つの特性の測定された変化と、前記電界発生器の前記少なくとも一つの特性の変化の一つ以上の所定の値との比較に基づいて、前記加熱装置の動作を制御するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の電気加熱式のエアロゾル発生装置と、前記装置と使用するためのエアロゾル発生物品とを備えるエアロゾル発生システムであって、前記エアロゾル発生物品が、
エアロゾル形成基体と、
前記エアロゾル形成基体の少なくとも一部分を囲むラッパーであって、特定の透磁率および特定の電気抵抗率を有するインジケータを含むラッパーと、を含む、システム。
【請求項7】
前記インジケータが、前記ラッパーの内表面の少なくとも一部分に適用される導電性材料で作られた薄膜または箔を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記インジケータが前記物品の周囲の周りに閉ループ導電経路を形成する、請求項6または7のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品識別の手段を備える、エアロゾル発生物品と使用するための電気加熱式のエアロゾル発生装置に関する。
【0002】
エアロゾル形成基体の電気加熱に基づくエアロゾル発生システムは、先行技術から一般的に周知である。典型的には、これらのシステムは、加熱されるエアロゾル形成基体を含むエアロゾル発生物品と、エアロゾル発生装置との二つの構成要素を備え、装置は、物品を受容するための受容くぼみと、物品が受容くぼみに挿入された時に物品内の基体を加熱するための電気ヒーター(例えば、抵抗ヒーターまたは誘導ヒーター)とを備える。
【0003】
典型的には、各電気加熱式のエアロゾル発生装置は、特定のタイプのエアロゾル発生物品と使用するために設計されている。これは、特定のタイプの基体および十分に制御された加熱プロセスのための特定の要件によって定義される、各エアロゾル発生システムに固有の設計のためである。そうでなければ、その物品のために明示的に設計されていないエアロゾル発生装置で物品を使用すると、ユーザーに異なる喫煙の体験を提供しうる。特に、不適当な物品を使用すると、エアロゾル形成基体の過熱につながり、よって、基体の望ましくない燃焼を引き起こしうる。さらに、特定のタイプの装置と不適合な物品を使用すると、システムに損傷を与える可能性もある。
【0004】
適合性のある物品を識別し、不適合な物品の使用を防止するように構成された手段を備えるエアロゾル発生システムが存在するが、こうした手段は過誤、特に、実際には適切な物品が正しく認識または識別されないような過誤検出の影響をしばしば受けやすい。また、意図的・非意図的を問わず、容易に回避されうる物品識別手段がある。
【0005】
従って、特に、不適合または偽造物品を装置と使用することの困難さを増大させるような、物品識別のための改善された手段を含むエアロゾル発生物品と使用するためのエアロゾル発生装置を有することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0006】
本発明によれば、エアロゾル発生物品と使用するための電気加熱式のエアロゾル発生装置が提供されており、物品は、装置によって加熱されるエアロゾル形成基体を含む。装置は、エアロゾル発生物品の少なくとも一部分を受容するための装置の近位部分内の受容くぼみを含む装置ハウジングを備える。装置はさらに、物品が受容くぼみ内に受容されたときに物品内のエアロゾル形成基体を加熱するための少なくとも一つの電気加熱装置を備える。さらに、装置は、電界発生器を備える感知回路を備える。感知回路は、物品が受容くぼみに受容されたときに、物品の所にまたは物品内に配設されたインジケータの存在によって引き起こされる電界発生器の少なくとも一つの特性の変化を測定するように構成されている。本発明によれば、電界発生器は、受容くぼみの近位端部分と反対側の受容くぼみの遠位端部分内に、またはそれに隣接して配設されている。
【0007】
本発明によれば、先行技術で周知の多くのエアロゾル発生装置について、過誤物品検出は装置内の識別手段の不利な配設によって引き起こされることが認識されてきた。例えば、識別手段が受容くぼみ(これは典型的には、装置の最も近位端に位置する)の入口の周りに配設されている場合、物品識別は、装置の周囲の寄生電界源に由来する漂遊磁界など、外部の影響を受けやすい可能性が高い。これは、電磁誘導に基づく識別手段に特に当てはまる。これらは、例えば、物品が受容くぼみに受容されたときに物品内の誘導インジケータの存在によって引き起こされるインダクタンスの変化を測定するように構成された誘導コイルを含む識別手段であってもよい。こうした手段を使用すると、寄生電磁場は誘導コイルに有害な誘導効果をもたらし、適切な物品であっても物品識別を失敗させる可能性がある。これに関して、誘導コイルがこうした寄生電界源に曝されるほど、物品識別の信頼性が低下する。
【0008】
この理由のため、本発明による電界発生器は、受容くぼみの近位端部分と反対側の受容くぼみの遠位端部分内またはそれに隣接して配設されている。有利なことに、この配設は、装置自体による漂遊磁界から電界発生器を十分に遮蔽する。従って、物品が受容くぼみに導入されたとき、電界発生器によって発生する電界の攪乱は、安定した、すなわち再現可能な電磁条件下で、十分に遮蔽された領域で発生する。
【0009】
結果として、本発明によるエアロゾル発生装置は、先行技術で周知の他の装置と比較して著しく改善された物品識別を可能にする。
【0010】
一般に、電界発生器は、任意のタイプであってもよく、物品が受容くぼみに導入されたときに、物品の所または物品内に配設されたインジケータの存在を感知するのに適切な、装置ハウジング内の任意の構成、形状および配設を有してもよい。電界発生器は、受容くぼみの遠位端の周りに配設されることが好ましい。
【0011】
本明細書で使用される「電界発生器」という用語は、電界の源として作用することができる装置を指し、すなわち、電界発生器は電界を発生するように構成されうる。従って、電界発生器は電界源としても示されうる。電界は、電界、磁場、または電磁場であってもよい。電界発生器は、例えば、誘導コイル、アンテナ、または磁石、特に電磁石または永久磁石を含みうる。
【0012】
電界発生器は、誘導コイルであることが好ましい。この場合、誘導コイルは、らせん状コイルまたはフラットスパイラルコイル、特にパンケーキコイルまたはフラット湾曲スパイラルコイルであってもよい。フラットスパイラルコイルの使用は、頑丈でかつ製造が安価なコンパクトな設計を可能にする。らせん誘導コイルの使用は有利なことに、コイルの内部に実質的に均質な電界構成を提供する。本明細書で使用される「フラットスパイラルコイル」は、一般的に平面状のコイルであり、コイルの巻線の軸がコイルのある表面に対して垂直であるコイルを意味する。フラットスパイラル誘導はコイルの平面内で任意の所望の形状を有することができる。例えば、フラットスパイラルコイルは円形の形状を有してもよく、または概して楕円形もしくは長方形の形状を有してもよい。しかしながら、本明細書で使用される「フラットスパイラルコイル」という用語は、平面状のコイルと、曲面に適合するように成形されたフラットスパイラルコイルとの両方を網羅する。例えば、誘導コイルは、好ましくは円筒状のコイル支持体(例えば、フェライトコア)の周囲に配設された「湾曲した」平面状コイルであってもよい。さらに、フラットスパイラルコイルは、例えば4回巻きフラットスパイラルコイルの二層、または4回巻きフラットスパイラルコイルの単層を備えてもよい。誘導コイルへの堆積および/または腐食の可能性を防止するために、誘導コイルは保護カバーまたは層を備えてもよい。
【0013】
インジケータが電界発生器の近くにあると、電界発生器によって発生した電界に攪乱が引き起こされる。電界の攪乱は電界発生器に影響を与え、電界発生器の少なくとも一つの特性の変化につながる。特性の変化は、電界発生器のパラメータの変化を測定することによって観察されうる。パラメータは、直接的または間接的に測定されうる。インジケータの存在、従って物品は、パラメータを測定し、パラメータがインジケータの存在下ではインジケータの不在下の値と比較して異なる値を有することを観察することによって判定されうる。
【0014】
インジケータの存在によって生じる電界発生器によって発生する電界の攪乱は、電界とインジケータの間の相互作用に起因しうる。
【0015】
エアロゾル発生物品内のインジケータは、特定の透磁率および特定の電気抵抗率を有してもよい。すなわち、インジケータは、特定の透磁率および特定の電気抵抗率を有する材料を含みうる。インジケータは導電性材料を含むことが好ましい。例えば、インジケータは金属材料を含んでもよい。金属材料は、例えば、アルミニウム、ニッケル、鉄、またはその合金、例えば、炭素鋼またはフェライト系ステンレス鋼のうちの一つであってもよい。アルミニウムは、室温(20℃)で測定したとき、約2.65×10E-08オーム-メートルの電気抵抗率を有し、約1.256×10E-06ヘンリー/メートルの透磁率を有する。同様に、フェライト系ステンレス鋼は、室温(20℃)で測定した時、約6.9×10E-07オーム-メートルの電気抵抗率を有し、1.26×10E-03ヘンリー/メートル~2.26×10E-03ヘンリー/メートルの範囲の透磁率を有する。
【0016】
電界発生器の少なくとも一つの特性は、インジケータの不在下の値と比較してインジケータの存在下では異なる値を有する関連パラメータを有する任意の特性でありうる。例えば、少なくとも一つの特性は、電界発生器の電流、電圧、抵抗、周波数、位相シフト、磁束、およびインダクタンスでありうる。特性は、電界発生器のインダクタンスであることが好ましい。
【0017】
インジケータは誘導インジケータであってもよい。
【0018】
インダクタンスは、一般的に、外部電磁気の影響を受けやすい電気回路の特性を含む。本明細書で使用される、感知回路によって測定される「インダクタンス」という用語は、測定されたAC電流に対する供給AC電圧の比として定義される複素インピーダンスの虚数部を指す。
【0019】
一態様によれば、電界発生器は、受容くぼみの内周に沿って、好ましくは、受容くぼみの遠位端部分の内周に沿って、装置ハウジング内に円周方向に配設されうる。この構成は、有利なことに、優れた感度、また装置ハウジング内の利用可能な空間の有益な利用を提供し、一方でなお漂遊磁界から電界発生器を十分に遮蔽する。この特定の構成では、電界発生器は、受容くぼみの内周、特に、受容くぼみの遠位端部分の内周に配設されたらせん状コイルまたは湾曲平面コイルであることが好ましい。
【0020】
加えて、電界発生器は、電界発生器支持体に取り付けられてもよい。例えば、電界発生器支持体は、電界発生器が誘導コイルである場合、コイル支持体であってもよい。電界発生器支持体は、受容くぼみの内周、特に受容くぼみの遠位端部分の内周に沿って、円周方向に配設されうる。こうした電界発生器支持体の使用は、有利なことに、受容くぼみ内の電界発生器の取付けを容易にする。
【0021】
電界発生器支持体はリング形状であることが好ましい。例えば、電界発生器支持体は、回転軸の周りのC型またはU型の回転から生じる回転体であってもよい。回転軸は、受容くぼみの中心軸と同軸であることが好ましい。
【0022】
電界発生器支持体は、フェライト(フェライト金属)、プラスチック、またはセラミックを含むか、またはそれから成ってもよい。さらに、電界発生器支持体は、受容くぼみの底部に沈めるかまたは埋め込まれてもよい。底部部分は、エアロゾル発生装置の近位端にある受容くぼみの近位開放端と反対側の、受容くぼみの遠位端部分内にある。
【0023】
装置は、受容くぼみの遠位端部分(または底部部分)に隣接して配設された分離壁をさらに備えてもよい。分離壁は、装置の近位部分を装置の遠位部分から分離し、近位部分は受容くぼみを含みうる。分離壁は、受容くぼみの中心軸に沿った方向または装置の全長延長に沿った方向に見られるような、長方形の断面または楕円形断面または円形断面を有してもよい。分離壁の断面は、受容くぼみの断面形状または加熱装置の全体断面に対応することが好ましい。
【0024】
分離壁は、受容くぼみを装置の遠位部分から密封して分離することが好ましい。このために、装置は、分離壁の周囲または外周に沿って配設されたガスケット、特にOリングなどの密封手段を備えうる。分離壁は、ブッシング(電気ブッシング)、すなわち、絶縁部材であってもよく、電気伝導体の部分、例えば、電気加熱装置の部分を保持または通過するのを可能にすることが好ましい。
【0025】
さらなる態様によれば、電界発生器、例えば誘導コイルは、分離壁の外周または周囲に沿って円周方向に配設されうる。この構成は、受容くぼみの近位端部分と反対側の受容くぼみの遠位端部分に隣接した電界発生器の配設に対応する。
【0026】
これに関して、電界発生器は、受容くぼみの中心軸または装置の全長延長に関して半径方向外向きに面する分離壁の周辺側に配設されて(位置して)もよい。同様に、電界発生器は、装置の近位部分に向かって、すなわち、受容くぼみに向かって面する分離壁の前面に、周辺的に配設されて(位置して)もよい。別の方法として、電界発生器は、装置の遠位部分に向かって面する分離壁の後側に周辺的に配設されて(位置して)もよい。これらの構成は、装置の非常にコンパクトな設計に関して有利である。
【0027】
分離壁は、周辺的に外周に沿って延びる円周の凹部、例えば、円周の溝を備えうることが、さらにより好ましい。有利なことに、電界発生器、例えば誘導コイルは、この凹部に配設されうる。従って、この構成は、電界発生器を凹部の中に沈ませ、よって密封することを可能にする。また、凹部内の電界発生器のこの配設は侵襲性が最小である。電界発生器の位置付けに関して上述したように、凹部は、分離壁の周辺側に配設されて(位置して)もよい。この周辺凹部は、受容くぼみの中心軸または装置の全長延長に関して半径方向外向きに開いていることが好ましい。別の方法として、凹部は、分離壁の前側または後側に周辺的に配設されてもよい。この構成では、凹部は、受容くぼみの中心軸または装置の全長延長に関して軸方向に開いている、すなわち、装置の近位部分、特に受容くぼみに向かって、または装置の遠位部分に向かって開いていることが好ましい。凹部は、長方形の断面または湾曲した、特に半楕円形または半円形の断面を有してもよい。この構成では、電界発生器は、一つ以上の曲がりおよび一つ以上の層を有するらせん誘導コイルであることが好ましい。
【0028】
さらなる態様によれば、電界発生器は、分離壁内に配設されてもよく、特に分離壁内に統合されてもよい。有利なことに、この構成はまた、電界発生器が密封され、よって受容くぼみ内の加熱プロセスから発生する煙および粉塵から保護することを可能にする。この構成では、電界発生器は、平坦なパンケーキコイルであることが好ましい。
【0029】
また別の態様によれば、電界発生器は、装置ハウジングの壁の一部分内に、好ましくは受容くぼみを囲むまたは形成する装置ハウジングの壁の一部分内に配設されてもよい。この構成はまた、受容くぼみに、特に受容くぼみの近位端部分の反対側の受容くぼみの遠位端部分に隣接した電界発生器の配設に対応する。
【0030】
電界発生器は、軸が電界発生器の巻線によって画定される平面に対して垂直であるように、例えば誘導コイルが受容くぼみの中心軸に直交するように、装置ハウジングの壁の一部分内に配設されうることが好ましい。
【0031】
電界発生器を含む壁の部分は、サイズが限定されていることが好ましい。特に、電界発生器、よって電界発生器を含む壁の部分は、受容くぼみの周囲の一部分に沿って、および受容くぼみの軸方向長さ延長の一部分に沿ってのみ延びる。
【0032】
この構成では、電界発生器は、装置ハウジングの壁の一部分を形成する電界発生器支持体に取り付けられていることが好ましい。特に、電界発生器支持体は、受容くぼみに対して横方向に配設されている。例えば、電界発生器支持体は、装置ハウジングの対応する開口部に挿入された入口であってもよい。電界発生器支持体は、誘導コイルの巻線によって画定される平面に垂直である軸が、くぼみの中心軸に直交するように構成されてもよい。
【0033】
本発明のさらなる態様によれば、装置は、感知回路と動作可能に結合されたコントローラを備えてもよい。コントローラは、インダクタンスなどの電界発生器の少なくとも一つの特性の測定された変化と、少なくとも一つの特性の変化の一つ以上の所定の値との比較に基づいて、加熱装置の動作を制御するように構成されうる。従って、加熱装置の動作は、少なくとも一つの特性の測定値が、所定の値に対応するか、または少なくとも所定の値の周りのそれぞれの予め定義された許容範囲内にある場合にのみ、コントローラによって起動される。そうでなければ、少なくとも一つの特性が確認されない場合、加熱装置の動作は起動されない。よって、不適合な物品の使用が効果的に防止されうる。
【0034】
感知回路は、少なくとも二つの特性、特に物品が受容くぼみに受容されたときに、物品のインジケータの存在によって引き起こされる、電界発生器の二つの特性の変化を測定するようにさらに構成されていることが好ましい。感知回路は、等価抵抗の変化、ならびに物品のインジケータの存在によって引き起こされる電界発生器のインダクタンスの変化を測定するように構成されてもよい。本明細書で使用される「等価抵抗」という用語は、測定されたAC電流に対する供給AC電圧の比として定義される複素インピーダンスの実数部を指す。
【0035】
この構成では、コントローラは、有利なことに、電界発生器の少なくとも二つの特性(例えば、電界発生器のインダクタンスおよび抵抗)の測定された変化と、それぞれの特性の変化の一つ以上の所定の値との比較に基づいて、加熱装置の動作を制御するように構成されている。これに関して、(一つの特性のみではなく)インジケータの存在によって引き起こされる電界発生器の少なくとも二つの特性の変化を測定および確認することによって、すなわち、電界発生器に対するインジケータの少なくとも二つのパラメータの効果を測定および確認することによって、不適合または偽造物品の望ましくない使用に対する保護をさらに高めることができることが認識されている。ゆえに、加熱装置の動作は、電界発生器の少なくとも二つの測定された特性全てのそれぞれの変化が確認された場合、すなわち、それぞれの所定の値に同時に対応する場合、または少なくとも所定の値の周りのそれぞれの予め定義された許容範囲内である場合にのみ、コントローラによって起動される。そうでなければ、測定された変化のうちの少なくとも一つが確認されない場合、加熱装置の動作は起動されない。電界発生器の少なくとも二つの特性の測定された変化、例えば、等価インダクタンスの変化および等価抵抗の変化は、よって、同時に確認される特性のセット、例えば特性対を形成する。
【0036】
特性のセットは、物品との特定のインジケータの使用に固有であることが好ましい。特に、インジケータは、特定の透磁率および特定の電気抵抗率を有しうる。従って、特定の透磁率および特定の電気抵抗率は、そのインダクタンスおよび等価抵抗の所定の変化など、好ましくは電界発生器の特性の所定の変化を排他的に誘導することができる、これらのパラメータの特定値を呈する一つのみのインジケータ材料があるように、固有のパラメータセットを形成しうる。電界発生器の特性の所定の変化は、較正測定に起因し、一般に、例えば、その透磁率および電気抵抗率などのインジケータの物理的特性に加えて、インジケータおよび電界発生器の幾何学的構成、ならびに電界発生器に対するインジケータの配設に従属する。ゆえに、インジケータおよび電界発生器の幾何学的形状および相対配設とは別に、電界発生器の特定の特性の特徴的な変化に対するインジケータの物理的特性による固有の効果があることが好ましい。例えば、電界発生器のインダクタンスおよび等価抵抗に対して、インジケータの透磁率および電気抵抗率による固有の効果がありうる。従って、透磁率および電気抵抗率などのインジケータの物理的特性のパラメータセットと、電界発生器のインダクタンスの変化および等価抵抗の変化などの電界発生器の特性のセットとの間には、固有の関係があることが好ましい。この固有の関係は、有利なことに、本物のエアロゾル発生物品の識別または認識をより信頼できるものにする。
【0037】
本明細書で使用される「エアロゾル発生装置」という用語は、基体を加熱することによってエアロゾルを発生するように、少なくとも一つのエアロゾル形成基体と相互作用する能力、特にエアロゾル発生物品内に提供されたエアロゾル形成基体と相互作用する能力を有する電気的に作動する装置を記述するために使用される。エアロゾル発生装置は、ユーザーによってユーザーの口を通して直接吸入可能なエアロゾルを発生するための吸煙装置であることが好ましい。特に、エアロゾル発生装置は手持ち式のエアロゾル発生装置である。
【0038】
本明細書で使用される「エアロゾル発生物品」という用語は、エアロゾルを形成することができる揮発性化合物を、加熱された時に放出する少なくとも一つのエアロゾル形成基体を含む物品を指す。エアロゾル発生物品は、加熱式エアロゾル発生物品であることが好ましい。すなわち、エアロゾルを形成することができる揮発性化合物を放出するために、燃焼ではなく加熱されることが意図されている少なくとも一つのエアロゾル形成基体を含む、エアロゾル発生物品である。エアロゾル発生物品は、消耗品、特に単回使用後に廃棄される消耗品であってもよい。例えば、物品は、加熱される液体エアロゾル形成基体を含むカートリッジであってもよい。別の方法として、物品は従来の紙巻たばこに似ているロッド状の物品(特にたばこ物品)であってもよい。
【0039】
本明細書で使用される「エアロゾル形成基体」という用語は、エアロゾル形成基体の加熱に伴いエアロゾルを形成することができる揮発性化合物を放出する能力を有する基体に関する。エアロゾル形成基体はエアロゾル発生物品の一部である。エアロゾル形成基体は固体エアロゾル形成基体であってもよく、または液体エアロゾル形成基体であってもよい。両方の場合において、エアロゾル形成基体は固体成分および液体成分のうちの少なくとも一つを含んでもよい。エアロゾル形成基体は、加熱に伴い基体から放出される揮発性のたばこ風味化合物を含有するたばこ含有材料を含んでもよい。別の方法として、または追加的に、エアロゾル形成基体は非たばこ材料を含んでもよい。エアロゾル形成基体はエアロゾル形成体をさらに含んでもよい。適切なエアロゾル形成体の例はグリセリンおよびプロピレングリコールである。エアロゾル形成基体はまた、その他の添加物および成分(ニコチンまたは風味剤など)を含んでもよい。エアロゾル形成基体はまた、ペースト様の材料、エアロゾル形成基体を含む多孔性材料のサシェ、または例えばゲル化剤または粘着剤と混合されたルースたばこであってもよく、これはグリセリンなどの一般的なエアロゾル形成体を含むことができ、これはプラグへと圧縮または成形される。
【0040】
電界発生器を含む感知回路は、発振器回路であってもよい。
【0041】
電気加熱装置は、抵抗発熱体を含む抵抗加熱装置であることが好ましい。抵抗発熱体は、内在するその電気抵抗または抵抗負荷に起因して電流が通過するときに加熱する。抵抗発熱体は、抵抗加熱ワイヤ、抵抗加熱トラック、抵抗加熱グリッド、または抵抗加熱メッシュのうちの少なくとも一つを備えてもよい。加熱装置は、受容くぼみ内に固定的に配設され、実質的に受容くぼみの中心軸に沿って延びる加熱用ブレードを備えることが好ましい。ブレードは、装置の近位端にある受容くぼみの開口部に向かって面するその近位端に先細りした近位先端部分を備えうる。よって、物品を受容くぼみに挿入すると、加熱用ブレードは物品のエアロゾル形成基体の中に容易に貫通しうる。基体を加熱するために、加熱用ブレードの少なくとも一方の側は、金属トラック(例えば、白金で作られ、抵抗発熱体の役割を果たす)で被覆されてもよい。よって、駆動電流を金属トラックに通すとき、加熱用ブレードは加熱し、エアロゾルを形成するように、エアロゾル形成基体中の揮発性化合物を加熱して放出させる。
【0042】
加熱プロセスを制御するために使用されるエアロゾル発生装置のコントローラは、全体的なコントローラであってもよい。特に、コントローラは、エアロゾル形成基体の温度を制御するように、特にエアロゾル形成基体の温度を目標温度に調整するように構成されてもよい。これに関して、コントローラは加熱装置への電流の供給を調節するように構成されてもよい。電流はシステムの起動後、加熱装置に連続的に供給されてもよく、断続的に供給(例えば、吸煙するごとに供給)されてもよい。
【0043】
コントローラは、マイクロプロセッサ、例えばプログラマブルマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、または特定用途向け集積回路チップ(ASIC)もしくは制御を提供する能力を有するその他の電子回路を備えてもよい。コントローラは、少なくとも一つのDC/ACインバータおよび/または電力増幅器(例えば、クラスDまたはクラスE電力増幅器)など、さらなる電子構成要素を備えてもよい。
【0044】
特に、コントローラは感知回路を含んでもよい。これに関して、コントローラは、感知回路を動作させて読み出すように構成されうる。
【0045】
エアロゾル発生装置は有利なことに、電源、好ましくはリン酸鉄リチウム電池などの電池を備える。代替として、電源は別の形態の電荷蓄積装置(コンデンサーなど)であってもよい。電源は再充電を必要とする場合があり、また一回以上のユーザー体験のために十分なエネルギーの貯蔵を可能にする容量を有する場合がある。例えば、電源は約六分間、または六分の倍数の時間にわたるエアロゾルの連続的な発生を可能にするのに十分な容量を有してもよい。別の実施例において、電力供給源は、所定の回数の吸煙、または加熱装置の不連続的な起動を可能にするのに十分な容量を有してもよい。エアロゾル発生装置は、受容くぼみと流体連通する少なくとも一つの空気吸込み口を備えることが好ましい。従って、エアロゾル発生システムは、少なくとも一つの空気吸込み口から受容くぼみの中に延び、おそらくはさらに物品内のエアロゾル形成基体およびマウスピースを通ってユーザーの口の中に延びる空気経路を備えてもよい。
【0046】
使い果たした後に、エアロゾル形成基体またはエアロゾル発生物品を取り外すためには、エアロゾル発生装置はさらに、エアロゾル発生装置に受容されたエアロゾル形成基体またはエアロゾル発生物品を抜き取るために、例えば国際特許公開公報第2013/076098 A2号に記載の抜き取り具を備えてもよい。電界発生器が、受容くぼみの近位端部分と反対側の受容くぼみの遠位端部分内に配設されている場合、特に、電界発生器が、受容くぼみの内周に沿って円周方向に配設されている場合、特に、電界発生器が、受容くぼみの(例えば、受容くぼみの遠位端部分の)内周に沿って円周方向に配設されたリング形状の電界発生器支持体に取り付けられている場合、電界発生器およびコイル支持体は、抜き取り具、特に抜き取り具の遠位端部分を囲んでもよく、またはそれを囲むように配設されてもよい。
【0047】
本発明によれば、本発明による電気加熱式のエアロゾル発生装置および本明細書に記載されたように、装置と使用するためのエアロゾル発生物品を含むエアロゾル発生システムが提供されている。
【0048】
エアロゾル発生物品は、物品が装置の受容くぼみに挿入されたときに装置によって加熱されるエアロゾル形成基体を含む。さらに、物品は、物品が受容くぼみに受容されたとき、少なくとも一つ、好ましくは少なくとも二つの特性の変化、例えば、電界発生器のインダクタンスの変化および好ましくはまた等価抵抗の変化を引き起こすように構成されているインジケータを含む。
【0049】
上述のように、インジケータは、特定の透磁率および特定の電気抵抗率を有する材料を含みうる。インジケータは金属インジケータ材料を含むことが好ましい。金属インジケータは、例えば、アルミニウム、ニッケル、鉄、またはその合金、例えば、炭素鋼またはフェライト系ステンレス鋼のうちの一つであってもよい。アルミニウムは、室温(20℃)で測定したとき、約2.65×10E-08オーム-メートルの電気抵抗率を有し、約1.256×10E-06ヘンリー/メートルの透磁率を有する。同様に、フェライト系ステンレス鋼は、室温(20℃)で測定したとき、約6.9×10E-07オーム-メートルの電気抵抗率を有し、1.26×10E-03ヘンリー/メートル~2.26×10E-03ヘンリー/メートルの範囲の透磁率を有する。
【0050】
インジケータは、任意の形状および/または構成を有しうる。例えば、インジケータは、電界発生器によって発生される電界に攪乱を引き起こす材料のワイヤ、粒子、パッチ、リング、断片、フィラメント、および細片のうちの少なくとも一つを含んでもよい。インジケータは、物品の外表面の近くに配設されることが好ましい。例えば、インジケータは、エアロゾル形成基体の少なくとも一部分を囲むスリーブまたはラッパーまたはエンベロープであってもよい。
【0051】
インジケータは、好ましくはマウスピース、特にフィルタープラグを含む物品の近位部分と反対側の、少なくとも物品の遠位部分内に配設されることが好ましい。当然ながら、インジケータは、物品の全長延長に沿って、またはもっぱら物品の遠位部分内のみに配設されてもよい。
【0052】
一般に、物品は、実質的にロッドの形状を有してもよく、従来の紙巻たばこの形状に似ていることが好ましい。
【0053】
物品は、異なる部分、特に物品の近位端部分にあるエアロゾル形成基体、中央空気通路を有する支持要素、エアロゾル冷却要素、およびマウスピースとして機能する物品の遠位端にあるフィルタープラグを備えてもよい。
【0054】
物品は、それらを一緒に保持し、物品の望ましい断面形状を維持するように、エアロゾル形成基体の少なくとも一部分を囲む、または上述の異なる部分を囲む、ラッパーをさらに備えてもよい。ラッパーは、物品の外表面の少なくとも一部分を形成することが好ましい。例えば、ラッパーは、紙ラッパー、特に紙巻たばこ用紙で作製された紙ラッパーであってもよい。別の方法として、ラッパーは、例えばプラスチックで作製された箔であってもよい。ラッパーは、気化されたエアロゾル形成基体が物品から放出されることを可能にするように、または空気がその周囲を通って物品の中に引き込まれることを可能にするように、流体透過性でありうる。さらに、ラッパーは、加熱に伴い活性化されてラッパーから放出される少なくとも一つの揮発性物質を含んでもよい。例えば、ラッパーは風味揮発性物質で含浸されてもよい。
【0055】
ラッパーはインジケータを含むか、またはインジケータがラッパーの所に配設されるか、もしくはラッパーに取り付けられることが好ましい。特に、インジケータ自体が、物品の外表面の少なくとも一部を形成するラッパーに取り付けられたラッパーであってもよい。インジケータは、こうしたラッパーの内表面に配設されるかまたは取り付けられることが好ましい。例えば、インジケータは、インジケータ材料を含むスリーブを備えてもよく、これは、エアロゾル形成基体の少なくとも一部分を囲む、および/または物品の長さ延長の少なくとも一部分に沿って延びる。同様に、インジケータは、物品の外表面の少なくとも一部分を形成するラッパーの内表面の少なくとも一部分に適用されるインジケータ材料で作られた薄膜または箔を含んでもよい。金属インジケータ材料は、ラッパーの内表面、例えば、物品の遠位部分内の紙ラッパーに適用されることが好ましい。インジケータ材料は、例えば、アルミニウムなどの金属であってもよい。この構成では、ラッパーは、金属化ラッパーとして、特にアルミ化ラッパーとして見なされうる。
【0056】
さらに、インジケータは、物品の周囲の周りに閉ループ導電性経路を形成することが好ましい。例えば、インジケータは、物品の少なくとも一部分を完全に包囲するラッパーを形成しうる。有利なことに、これは、インダクタンスおよび抵抗の測定された変化をより顕著にさせ、よって、物品識別の信頼性を高める。有利なことに、これはまた、インジケータによって引き起こされる電界発生器によって発生する電界の攪乱、および少なくとも一つの特性の対応する変化が、装置に対する物品の軸方向の回転配向から独立することを可能にする。
【0057】
本発明を、添付図面を参照しながら、例証としてのみであるがさらに記載する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】
図1は、エアロゾル発生装置およびエアロゾル発生システムを含む、本発明の第一の実施形態によるエアロゾル発生システムの概略図である。
【
図2】
図2は、
図1によるエアロゾル発生物品の詳細図である。
【
図3】
図3は、本発明によるエアロゾル発生システムによって測定される識別パラメータを示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の第二の実施形態によるエアロゾル発生システムの詳細な概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の第二の実施形態によるエアロゾル発生装置のハウジング壁の一部分を形成するコイル支持体の例示的実施形態を示す。
【
図6】
図6は、本発明の第二の実施形態によるエアロゾル発生装置のハウジング壁の一部分を形成するコイル支持体の例示的実施形態を示す。
【0059】
図1は、エアロゾルを発生するように、エアロゾル形成基体91を電気的に加熱するように構成されている、本発明の第一の実施形態によるエアロゾル発生システム1を概略的に図示する。システム1は、加熱されるエアロゾル形成基体91を含むエアロゾル発生物品90と、物品90を受容するための受容くぼみ20、および受容くぼみ20の中に挿入されたときに物品90内のエアロゾル形成基体91を加熱するように構成された電気加熱装置30を備える、物品90と使用するためのエアロゾル発生装置10との二つの構成要素を備える。
【0060】
図1から分かるように、装置10は、実質的に円筒形の装置ハウジング11によって形成される実質的にロッド状の装置本体を備える。遠位部分13内に、装置10は、例えばリチウムイオン電池などの電源16、ならびに装置10の動作を制御するため、特に基体加熱を制御するためのコントローラ18を含む電気回路17を備える。遠位部分13と反対側の近位部分14内に、装置10は受容くぼみ20を備える。受容くぼみ20は、装置10の近位端12で開放しており、よって、物品90を受容くぼみ20の中に容易に挿入することができる。
【0061】
図1からさらに分かるように、装置10は、装置ハウジング11内に配設された分離壁40を備える。分離壁40は、装置10の近位部分14の受容くぼみ20を、装置10の遠位部分13の電子部品から持続的に分離する。本実施形態では、分離壁40はまた、電気加熱装置30の部分を保持して通過するように構成されたブッシングとして機能する。これに関して、分離壁40は電気絶縁材料で作製されている。分離壁40の材料はまた、受容くぼみ20から装置10の遠位部分13の電子部品への熱伝達を防止するように断熱性であることが好ましい。従って、分離壁40は、例えば、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などの断熱性プラスチック材料で作られてもよい。
【0062】
装置10の遠位部分13の電子部品を埃および湿度から適切に保護することを確実にするために、装置10は、分離壁40の周囲に沿って配設されたガスケットなどの密封手段45をさらに備える。
【0063】
本実施形態による加熱装置30は、抵抗加熱装置である。
図1を参照すると、加熱装置30は、二つのセラミックカバー部材の間に挟まれた金属コアを含む加熱用ブレード31を備える。ブレードは分離壁40に取り付けられ、よって、装置ハウジング11内に固定的に配設されている。分離壁40から、ブレード31は、実質的に受容くぼみ20の中心軸に沿って受容くぼみ20の中に延びる。加熱用ブレード31の近位端にある先細りした近位先端部分33は、装置10の近位端12にあるくぼみ20の開口部に向かって面している。よって、物品90を受容くぼみ20に挿入すると、加熱用ブレード31は物品90の遠位先端部分のエアロゾル形成基体91の中に容易に貫通しうる。基体を加熱するために、少なくとも一つのカバー部材の外表面は、例えば、白金で作られ、抵抗加熱プロセスに電力供給して制御するために、電源16およびコントローラ17に動作可能に結合された抵抗発熱体として機能する金属トラック32で被覆されている。よって、駆動電流を金属トラック32に通すと、加熱用ブレード31は加熱し、エアロゾルを形成するように、エアロゾル形成基体91中の揮発性化合物を加熱して放出させる。
【0064】
使い果たした後に、エアロゾル発生物品90を取り外すために、エアロゾル発生装置10は、受容くぼみ20内に配設され、加熱用ブレード31から物品90の抜き取りを容易にするように構成された抜き取り具60(例えば、WO2013/076098A2に記載されるような抜き取り具)をさらに備える。
【0065】
図2は、
図1によるエアロゾル発生物品90をより詳細に図示している。物品90は実質的に、従来の紙巻たばこの形状に似ているロッドの形状を有する。物品90は、同軸配列に配設された、物品90の近位端98のエアロゾル形成基体91、中央空気通路93を有する支持要素92、エアロゾル冷却要素94、およびマウスピースとして機能する物品90の遠位端99にあるフィルタープラグ95の四つの構成要素を備える。エアロゾル形成基体91は、例えば、エアロゾル形成体としてグリセリンを含む均質化したたばこ材料の捲縮したシートを含みうる。支持要素92は、中央空気通路93を形成する中空コアを備える。フィルタープラグ95は、セルロースアセテート繊維であってもよい。四つの要素すべては実質的に円筒形の要素であり、実質的に同一の直径を有する。これらの四つの要素は連続的に配設され、円筒形のロッドを形成するように紙巻たばこ用紙で作られた外側ラッパー96によって包囲されている。この特定のエアロゾル発生物品、特にこの四つの要素のさらなる詳細は、国際特許公開公報第2015/176898 A1号に開示されている。
【0066】
しかしながら、国際公開第2015/176898 A1号に開示されている物品とは対照的に、本発明による物品は、物品の認識のため、すなわち、物品の真正性を識別するため、および不適合または偽造物品の使用を防止するために使用されるインジケータ材料97を含む。本実施形態では、金属インジケータ材料97は、紙ラッパー96の内表面に適用されるアルミニウムで作られた薄膜である。よって、ラッパー96はまた、アルミ化紙ラッパーと見なされてもよい。
【0067】
物品の真正性を識別するため、および不適合または偽造物品の使用を防止するために、エアロゾル発生装置10は、誘導コイル51の形態の電界発生器52を含む感知回路50を備える。感知回路50は、物品が受容くぼみ20の中に挿入された後、誘導コイル51の近くに位置付けられたときに、エアロゾル発生物品90内のインジケータ材料91の存在を検出するように構成されている。
【0068】
本発明によれば、感知回路50は、受容くぼみ20にエアロゾル発生物品90を挿入したときに、インジケータ材料91によって誘導または引き起こされる誘導コイル50の等価インダクタンス△L_eqの変化ならびに等価抵抗△R_eqの変化の両方を測定するように構成されている。典型的には、感知回路50は、両方のパラメータを測定するための発振器回路を含みうる。
【0069】
図3に図示するように、誘導コイル50は、感知回路50の一部として、等価インダクタンスL1_eqを有し、これはエアロゾル発生物品90を受容くぼみ20の中に挿入すると、より低い値L2_eqに減少する。この減少は、インジケータ材料97の特定の透磁率が、導電コイル51の近傍の空間体積内の有効な透磁率を変えることによる。同様に、誘導コイル50は、エアロゾル発生物品90を受容くぼみ20の中に挿入すると、R1_eqからの等価抵抗の増加を経験する。この増加は、誘導コイル51に適用される抵抗負荷を表すインジケータ材料97の特定の抵抗率によるものである。上述のように、誘導コイル51は、発振器回路50の一部であることが好ましい。抵抗インジケータ材料97が誘導コイル51の近傍に位置付けられると、感知回路のQ値(品質係数)が減少する。これは、無効負荷における損失の増加を補償するように、感知回路の測定可能な電圧および電流の増加を引き起こす。
【0070】
本発明よれば、感知回路50はコントローラ17と動作可能に結合されている。本実施形態では、感知回路50は、コントローラ17の一部でもある。本発明によれば、コントローラは、等価インダクタンスおよび等価抵抗の測定された変化と、等価インダクタンスおよび等価抵抗の変化の一つ以上の所定の値との比較に基づいて、加熱装置30の動作を制御するように構成されている。特に、加熱装置30の動作は、計測されたパラメータ△L_eqおよび△R_eqの両方がそれぞれの所定の値に同時に対応するか、または少なくとも同時に所定の値の周りのそれぞれの予め定義された許容範囲差△L_tol~△R_tol内である場合にのみ、コントローラ17によって起動される。そうでなければ、測定されたパラメータΔL_eqまたはΔR_eqのうちの少なくとも一つが確認されない場合、加熱装置30の動作は起動されない。よって、等価インダクタンスの変化△L_eqおよび等価抵抗の変化△R_eqは両方とも、特定の透磁率および特定の電気抵抗率を有する特定のインジケータ材料97の使用に固有の、確認されるパラメータ対を形成する。
【0071】
図1に示すように、誘導コイル50は、装置ハウジング11内の受容くぼみ22の遠位端部分21に配設されている。特に、誘導コイル50は、抜き取り具60の遠位端部分を囲む受容くぼみ22の内周に沿って円周方向に配設されている。誘導コイル50は、コイル支持体55に取り付けられたらせん状コイルである。コイル支持体55は、受容くぼみ20の中心軸と同軸の回転軸の周りのU型の回転から生じる回転体である。この構成は、有利なことに、良好な感度を提供し、また装置ハウジング11内の利用可能な空間の有益な利用も提供する。
【0072】
図4は、本発明によるエアロゾル発生システム101の第二の実施形態(詳細のみ)を概略的に図示する。
図4に示すシステム101は、エアロゾル発生物品90、190およびエアロゾル発生装置10、110の両方に関して、
図1に示すシステム1に非常に類似している。エアロゾル発生物品90、190は同一でさえある。従って、同様または同一の特徴は、
図1と同一の参照符号に100を加えた参照符号で示されている。また、
図1によるエアロゾル発生装置1とは対照的に、
図4による装置110は、受容くぼみ内に誘導コイルを備えていない。代わりに、誘導コイル151は、分離壁140の外周に沿って周辺的に延びる円周の凹部141内に配設されている。有利なことに、この構成は、誘導コイル151が凹部内に沈められ、また密封手段145によって確実に密封されることを可能にする。加えて、分離壁140の凹部141における誘導コイル151の配設は侵襲性が最小である。ここで、誘導コイル151は、三つの曲がりおよび四つの層を持つらせん状コイルである。
【0073】
図5および
図6は、誘導コイルの別の代替的配設を示す。この構成では、システムは、受容くぼみの隣に横方向に配設されることになる、装置ハウジングの壁の一部を形成するように構成されたコイル支持体255を備える。特に、コイル支持体255は、受容くぼみの周りの装置ハウジングの対応する開口部に挿入可能な入口であってもよい。コイル支持体255は、コイル支持体255が装置に取り付けられたときに、誘導コイルの巻線によって画定される平面に垂直である軸Nがくぼみの中心軸に直交するように、誘導コイル(図示せず)を受容するための円周の凹部259を備える。よって、誘導コイルは、受容くぼみを囲むまたは形成する装置ハウジングの壁の一部分内に配設されている。この構成では、誘導コイルは、受容くぼみの円周の一部分に沿ってのみ、受容くぼみの軸方向長さの延長に沿ってのみ延びる。