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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】車両用灯具および車両システム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/14 20060101AFI20231221BHJP
   B60Q 1/00 20060101ALI20231221BHJP
   B60Q 1/24 20060101ALI20231221BHJP
   B60Q 11/00 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B60Q1/14 H
B60Q1/00 C
B60Q1/24 Z
B60Q11/00 620A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021513531
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(86)【国際出願番号】 JP2020011158
(87)【国際公開番号】W WO2020209005
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2019074914
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019074915
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019074916
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019088133
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019088134
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019088135
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】村松 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】アハメド サイード ファヒン
(72)【発明者】
【氏名】後藤 旬
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-224317(JP,A)
【文献】特開2016-088283(JP,A)
【文献】国際公開第2019/021914(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/14
B60Q 1/00
B60Q 1/24
B60Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺に可視光を照射する第一光源と、
前記車両の周辺の情報を取得するために赤外光を照射する第二光源と、
前記第一光源から出射された前記可視光と前記第二光源から出射された前記赤外光を反射しながら回転し、前記車両から所定距離の位置に配置される仮想鉛直スクリーン上における水平方向に沿って前記可視光および前記赤外光を走査する回転リフレクタと、
前記赤外光が前記車両の周辺の対象物により反射された戻り光を、所定のフレームレートにより受光する受光部と、
前記第一光源、前記第二光源、前記回転リフレクタ、および前記受光部を制御する制御部と、を備え、
前記仮想鉛直スクリーン上における前記第二光源から出射された前記赤外光の像が所定の照射範囲を有し、前記赤外光は、前記仮想鉛直スクリーン上における該赤外光の像が直前に出射された赤外光の像と一部重なるように前記水平方向に沿って走査され、
前記制御部は、前記戻り光の光強度に基づいて、前記対象物の位置情報を取得するように構成されている、車両用灯具。
【請求項2】
前記制御部は、前記位置情報に基づいて、前記第一光源から照射された前記可視光により前記仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを制御するように構成されている、請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
車両に搭載された車両用灯具と、
前記車両の周辺環境の情報である車両周辺情報を取得する情報取得部と、
前記車両を制御する車両制御部と、
を備え、
前記車両用灯具は、
前記車両の周辺に可視光を照射する第一光源と、
前記車両の周辺の情報を取得するために赤外光を照射する第二光源と、
前記第一光源から出射された前記可視光と前記第二光源から出射された前記赤外光を反射しながら回転し、前記車両から所定距離の位置に配置される仮想鉛直スクリーン上における水平方向に沿って前記可視光および前記赤外光を走査する回転リフレクタと、
前記赤外光が前記車両の周辺の対象物により反射された戻り光を、所定のフレームレートにより受光する受光部と、
前記第一光源、前記第二光源、前記回転リフレクタ、および前記受光部を制御する灯具制御部と、を有し、
前記仮想鉛直スクリーン上における前記第二光源から出射された前記赤外光の像が所定の照射範囲を有し、前記赤外光は、前記仮想鉛直スクリーン上における該赤外光の像が直前に出射された赤外光の像と一部重なるように前記水平方向に沿って走査され、
前記車両制御部および前記灯具制御部のいずれか一方は、前記情報取得部で取得された前記車両周辺情報に基づいて取得された前記車両の外部の対象物の位置情報を、前記戻り光の光強度に基づいて補正するように構成されている、車両システム。
【請求項4】
前記車両制御部および前記灯具制御部のいずれか一方は、補正後の前記位置情報に基づいて、前記第一光源から照射される前記可視光により前記仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンの配光を補正するように構成されている、請求項3に記載の車両システム。
【請求項5】
車両の周辺に赤外光を照射する第一光源と、
前記第一光源から出射された前記赤外光を反射しながら回転し、前記車両から所定距離の位置に配置される仮想鉛直スクリーン上において前記赤外光を走査する回転リフレクタと、
前記第一光源および前記回転リフレクタを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記車両の周辺を撮像した撮像画像を取得し、
外光の照度が所定値以上の場合に前記撮像画像のうち輝度値が所定値以下の領域に対応する前記車両の周辺の領域に前記赤外光を照射するように前記第一光源を制御する、車両用灯具。
【請求項6】
前記制御部は、
前記撮像画像に基づいて、前記車両の周辺の対象物に関する対象物情報を取得し、
前記撮像画像のうち輝度値が所定値以下の領域に対応する前記車両の周辺の領域に照射された前記赤外光が前記対象物により反射された反射光に基づいて、前記対象物情報を補正する、請求項5に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記車両の周辺に可視光を照射する第二光源を備え、
前記回転リフレクタは、前記第一光源から出射された前記赤外光と前記第二光源から出射された前記可視光を反射しながら回転し、前記車両から所定距離の位置に配置される仮想鉛直スクリーン上において前記赤外光および前記可視光を走査する、請求項5または6に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動車などの車両に用いられる車両用灯具および車両システムに関する。
【背景技術】
【0002】
可視光源からの可視光および赤外光源からの赤外光をそれぞれ別個の光学部材によって反射して、可視光および赤外光を車両前方に照射する車両用照明装置が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2009-154615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、高精度な対象物位置情報を取得可能な車両システムを提供することを目的の一つとする。
【0005】
本開示は、車両周囲の状況により可変する照明用の配光を簡便な構成で高精細化することが可能な車両用灯具および車両システムを提供することを目的の一つとする。
【0006】
本開示は、赤外光を用いたセンシング機能が向上した車両用灯具を提供することを目的の一つとする。
【0007】
本開示は、照明機能を有するとともに、高精度な対象物位置情報を取得可能な車両用灯具および車両システムを提供することを目的の一つとする。
【0008】
本開示は、車両周囲の状況により可変する照明用の配光に関する性能を維持することが可能な車両用灯具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様の車両システムは、
車両に搭載された車両用灯具と、
前記車両の周辺環境の情報である車両周辺情報を取得する情報取得部と、
前記車両を制御する車両制御部と、
を備え、
前記車両用灯具は、
前記車両の周辺に可視光を照射する第一光源と、
前記車両の周辺に赤外光を照射する第二光源と、
前記第一光源から出射された前記可視光と前記第二光源から出射された前記赤外光を反射しながら回転し、前記車両から所定距離の位置に配置される仮想鉛直スクリーン上における水平方向に沿って前記可視光および前記赤外光を走査する回転リフレクタと、
前記第二光源から出射されて前記車両の周辺から反射された赤外光の戻り光を受光する受光部と、
前記第一光源、前記第二光源、前記回転リフレクタ、および前記受光部を制御する灯具制御部と、を有し、
前記車両制御部および前記灯具制御部のいずれか一方が、前記情報取得部で取得された前記車両周辺情報に基づいて前記車両の外部の対象物の位置情報を取得し、前記受光部で受光された前記戻り光の情報に基づいて前記位置情報を補正するように構成されている。
【0010】
この構成によれば、高精度な対象物位置情報を取得可能な車両システムを提供することができる。
【0011】
また、前記車両制御部および前記灯具制御部のいずれか一方は、補正後の前記位置情報に基づいて、前記第一光源から照射される前記可視光により前記仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンの配光を補正するように構成されていてもよい。
【0012】
この構成によれば、可視光源による配光パターンの高精細化を実現することができる。
【0013】
本開示の一態様の車両用灯具は、
車両の周辺に可視光を照射する第一光源と、
前記車両の周辺に赤外光を照射する第二光源と、
前記第一光源から出射された前記可視光と前記第二光源から出射された前記赤外光を反射しながら回転し、前記車両から所定距離の位置に配置される仮想鉛直スクリーン上における水平方向に前記可視光および前記赤外光を走査する回転リフレクタと、
前記第一光源、前記第二光源、および前記回転リフレクタを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記車両の周辺環境情報を取得し、取得した前記車両の周辺環境情報に基づいて前記第一光源から出射された前記可視光により前記仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンの配光を調整し、前記調整された配光により可視光が照射されない非照射領域に前記第二光源からの赤外光を照射させるように構成されている。
【0014】
この構成によれば、車両周囲の状況により可変する照明用の配光を簡便な構成で高精細化することが可能な車両用灯具を提供することができる。
【0015】
また、前記制御部は、前記非照射領域に照射されて対象物により反射された前記赤外光に関する情報を取得し、取得した前記赤外光に関する情報に基づいて、前記配光パターンを修正するように構成されてもよい。
【0016】
この構成によれば、照明用の配光をより高精細化することができる。
【0017】
また、前記第二光源から出射され前記対象物により反射された前記赤外光の反射光を受光する受光部をさらに備えてもよい。
【0018】
この構成によれば、制御部は、受光部から赤外光の反射光に関する精度の高い情報を取得することができる。
【0019】
本開示の一態様の車両システムは、
上記の車両用灯具と、
前記車両の周辺環境情報を取得可能な情報取得部と、
前記車両用灯具と前記情報取得部とを制御可能な車両制御部と、を備えていてもよい。
【0020】
この構成によれば、車両周囲の状況により可変する照明用の配光を簡便な構成で高精細化することが可能な車両システムを提供することができる。
【0021】
本開示の一態様の車両用灯具は、
車両の周辺に可視光を照射する第一光源と、
前記車両の周辺に赤外光を照射する第二光源と、
前記第一光源から出射された前記可視光と前記第二光源から出射された前記赤外光を反射しながら回転し、前記車両から所定距離の位置に配置される仮想鉛直スクリーン上における水平方向に前記可視光および前記赤外光を走査する回転リフレクタと、
前記第一光源、前記第二光源、および前記回転リフレクタを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記車両の周辺環境情報または前記車両の走行情報に基づいて前記第二光源から出射される赤外光の走査範囲を調整し、
前記調整された赤外光の走査範囲の大きさに応じて、前記赤外光の光強度を変更するように構成されている。
【0022】
この構成によれば、赤外光を用いたセンシング機能が向上した車両用灯具を提供することができる。
【0023】
また、前記車両の走行情報は、前記車両の速度であり、
前記制御部は、前記車両の速度に応じて、前記走査範囲の大きさを調整してもよい。
【0024】
この構成によれば、赤外光によるセンサ対象領域のうち車両の速度に応じて変化する最もセンシングが必要な領域を重点的にセンシングすることができる。
【0025】
また、前記制御部は、前記取得した前記車両の周辺環境情報に基づいて前記第一光源から出射される前記可視光により前記仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンの配光を調整し、前記調整された配光により可視光が照射されない非照射領域に前記第二光源からの赤外光が照射されるように、前記走査範囲の大きさを調整してもよい。
【0026】
この構成によれば、可視光が照射されない非照射領域の車両の周辺の情報を取得することができる。これにより、車両周囲の状況により可変する照明用の配光を簡便な構成で高精細化することができる。
【0027】
また、前記制御部は、前記走査範囲が小さいほど、前記赤外光の光強度を強くするように構成されてもよい。
【0028】
この構成によれば、より正確な車両の周辺の情報を取得することができる。
【0029】
本開示の一態様の車両用灯具は、
車両の周辺に可視光を照射する第一光源と、
前記車両の周辺の情報を取得するために赤外光を照射する第二光源と、
前記第一光源から出射された前記可視光と前記第二光源から出射された前記赤外光を反射しながら回転し、前記車両から所定距離の位置に配置される仮想鉛直スクリーン上における水平方向に沿って前記可視光および前記赤外光を走査する回転リフレクタと、
前記赤外光が前記車両の周辺の対象物により反射された戻り光を、所定のフレームレートにより受光する受光部と、
前記第一光源、前記第二光源、前記回転リフレクタ、および前記受光部を制御する制御部と、を備え、
前記仮想鉛直スクリーン上における前記第二光源から出射された前記赤外光の像が所定の照射範囲を有し、前記赤外光は、前記仮想鉛直スクリーン上における該赤外光の像が直前に出射された赤外光の像と一部重なるように前記水平方向に沿って走査され、
前記制御部は、前記戻り光の光強度に基づいて、前記対象物の位置情報を取得するように構成されている。
【0030】
この構成によれば、照明機能を有するとともに、高精度な対象物位置情報を取得可能な車両用灯具を提供することができる。
【0031】
また、前記制御部は、前記位置情報に基づいて、前記第一光源から照射された前記可視光により前記仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを修正するように構成されていてもよい。
【0032】
この構成によれば、可視光源による配光パターンの高精細化を実現することができる。
【0033】
また、本開示の一態様の車両システムは、
車両に搭載された車両用灯具と、
前記車両の周辺環境の情報である車両周辺情報を取得する情報取得部と、
前記車両を制御する車両制御部と、
を備え、
前記車両用灯具は、
前記車両の周辺に可視光を照射する第一光源と、
前記車両の周辺の情報を取得するために赤外光を照射する第二光源と、
前記第一光源から出射された前記可視光と前記第二光源から出射された前記赤外光を反射しながら回転し、前記車両から所定距離の位置に配置される仮想鉛直スクリーン上における水平方向に沿って前記可視光および前記赤外光を走査する回転リフレクタと、
前記赤外光が前記車両の周辺の対象物により反射された戻り光を、所定のフレームレートにより受光する受光部と、
前記第一光源、前記第二光源、前記回転リフレクタ、および前記受光部を制御する灯具制御部と、を有し、
前記仮想鉛直スクリーン上における前記第二光源から出射された前記赤外光の像が所定の照射範囲を有し、前記赤外光は、前記仮想鉛直スクリーン上における該赤外光の像が直前に出射された赤外光の像と一部重なるように前記水平方向に沿って走査され、
前記車両制御部および前記灯具制御部のいずれか一方は、前記情報取得部で取得された前記車両周辺情報に基づいて取得された前記車両の外部の対象物の位置情報を、前記戻り光の光強度に基づいて補正するように構成されている。
【0034】
この構成によれば、照明機能を有するとともに、高精度な対象物位置情報を取得可能な車両システムを提供することができる。
【0035】
また、前記車両制御部および前記灯具制御部のいずれか一方は、補正後の前記位置情報に基づいて、前記第一光源から照射される前記可視光により前記仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンの配光を補正するように構成されていてもよい。
【0036】
この構成によれば、可視光源による配光パターンの高精細化を実現することができる。
【0037】
本開示の一態様の車両用灯具は、
車両の周辺に赤外光を照射する第一光源と、
前記第一光源から出射された前記赤外光を反射しながら回転し、前記車両から所定距離の位置に配置される仮想鉛直スクリーン上において前記赤外光を走査する回転リフレクタと、
前記第一光源および前記回転リフレクタを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記車両の周辺を撮像した撮像画像を取得し、
外光の照度が所定値以上の場合に前記撮像画像のうち輝度値が所定値以下の領域に対応する前記車両の周辺の領域に前記赤外光を照射するように前記第一光源を制御する。
【0038】
この構成によれば、赤外光を用いたセンシング機能が向上した車両用灯具を提供することができる。
【0039】
また、前記制御部は、
前記撮像画像に基づいて、前記車両の周辺の対象物に関する対象物情報を取得し、
前記撮像画像のうち輝度値が所定値以下の領域に対応する前記車両の周辺の領域に照射された前記赤外光が前記対象物により反射された反射光に基づいて、前記対象物情報を補正してもよい。
【0040】
この構成によれば、撮像画像の輝度値が低い領域において正確な対象物情報を得ることができる。
【0041】
また、前記車両の周辺に可視光を照射する第二光源を備え、
前記回転リフレクタは、前記第一光源から出射された前記赤外光と前記第二光源から出射された前記可視光を反射しながら回転し、前記車両から所定距離の位置に配置される仮想鉛直スクリーン上において前記赤外光および前記可視光を走査してもよい。
【0042】
この構成によれば、照明用の配光パターンの形成とセンシング用の配光の形成とをより簡便な構成で両立させることができる。
【0043】
本開示の一態様の車両用灯具は、
車両の周辺に可視光を照射する第一光源と、
前記車両の周辺に赤外光を照射する第二光源と、
前記第一光源から出射された前記可視光と前記第二光源から出射された前記赤外光を反射しながら回転し、前記車両から所定距離の位置に配置される仮想スクリーン上における水平方向に前記可視光および前記赤外光を走査する回転リフレクタと、
前記車両の周辺環境情報を取得し、取得した前記車両の周辺環境情報に基づいて前記第一光源から出射される前記可視光の照射領域を調整し、前記第一光源から出射された前記可視光を前記調整された照射領域に対応した走査領域に走査させる制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第一光源に異常があると判断した場合には、前記可視光の走査領域に対応して前記第二光源から出射される前記赤外光の走査領域を設定するように構成されている。
【0044】
この構成によれば、車両周囲の状況により可変する照明用の配光に関する性能を維持することが可能な車両用灯具を提供することができる。
【0045】
また、前記第一光源は、可視光を出射する複数の発光素子を有し、
前記制御部は、前記複数の発光素子のうち異常があると判断された発光素子の走査領域に対応する領域を前記赤外光により照射してもよい。
【0046】
この構成によれば、制御部は各発光素子の走査領域に対応して制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0047】
本開示に係る車両システムによれば、高精度な対象物位置情報を取得することができる。
【0048】
本開示に係る車両用灯具および車両システムによれば、車両周囲の状況により可変する照明用の配光を簡便な構成で高精細化することができる。
【0049】
本開示に係る車両用灯具によれば、赤外光を用いたセンシング機能を向上させることができる。
【0050】
本開示に係る車両用灯具および車両システムよれば、照明機能を有するとともに、高精度な対象物位置情報を取得することができる。
【0051】
本開示に係る車両用灯具によれば、車両周囲の状況により可変する照明用の配光に関する性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本開示の実施形態の一例に係る車両用灯具が搭載された車両システムの構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態に係る車両システムの一部の構成を模式的に示したブロック図である。
図3】本実施形態に係るハイビーム用灯具ユニットの上面図である。
図4図3のハイビーム用灯具ユニットの一部拡大図である。
図5】ハイビーム用灯具ユニットが備える第一配線基板の正面図である。
図6】ハイビーム用灯具ユニットが備える第二配線基板の正面図である。
図7】第一配線基板に設けられた各可視光発光素子から照射される可視光により、仮想鉛直スクリーン上に形成されるスポット光の像を示す図である。
図8】第一配線基板に設けられた各可視光発光素子から照射された可視光が回転リフレクタの回転により走査された状態での仮想鉛直スクリーン上の配光パターンを示す図である。
図9】第二配線基板に設けられた各可視光発光素子から照射される可視光により、仮想鉛直スクリーン上に形成されるスポット光の像を示す図である。
図10】第二配線基板に設けられた各可視光発光素子から照射された可視光が回転リフレクタの回転により走査された状態での仮想鉛直スクリーン上の配光パターンを示す図である。
図11】ロービーム用灯具ユニットおよびハイビーム用灯具ユニットから前方に照射される可視光により、仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを示す図である。
図12】第一配線基板に設けられた各赤外光発光素子から照射された赤外光により、仮想鉛直スクリーン上に形成される赤外光のスポット光の像を示す図である。
図13】各赤外光発光素子から照射される赤外光が、回転リフレクタの回転により走査された状態での配光パターンを示す図である。
図14】第一実施形態に係る、車両周辺情報から取得された対象物の位置情報の補正処理の一例を示すフローチャートである。
図15】車両前方に対象物が検知されていない状態での配光パターンを示す図である。
図16】対象物が検知された状態での配光パターンを示す図である。
図17】対象物の補正後の位置情報に基づいて配光パターンが補正された状態を示す図である。
図18】第二実施形態に係る、ロービーム用灯具ユニットおよびハイビーム用灯具ユニットから前方に照射される可視光および赤外光により、仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを示す図である。
図19A】第三実施形態に係る、ヘッドランプから照射される赤外光の照射範囲を示す図である。
図19B図19Aに示す照射範囲で照射される赤外光の強度を示す図である。
図20】第四実施形態に係る、対象物の位置情報に基づく配光パターンの制御処理の一例を示すフローチャートである。
図21】赤外光の出射タイミング、仮想鉛直スクリーン上の赤外光の像、および対象物により反射された戻り光の光強度の関係を説明するための図である。
図22】第四実施形態の変形例に係る、対象物の位置情報に基づく配光パターンの制御処理の一例を示すフローチャートである。
図23】第五実施形態に係る、ランプ制御部の光源制御の一例を説明するためのフローチャートである。
図24】第六実施形態に係る、第一配線基板に設けられた可視光発光素子の一部に異常がある場合に仮想鉛直スクリーン上に形成されるスポット光の像を示す図である。
図25】第一配線基板に設けられた可視光発光素子の一部に異常がある場合に仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを示す図である。
図26】第一配線基板に設けられた可視光発光素子の一部に異常がある場合のハイビーム用灯具ユニットから前方に照射される可視光および赤外光により、仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを示す図である。
図27】第六実施形態の変形例に係るハイビーム用灯具ユニットの上面図である。
図28】ハイビーム用灯具ユニットが備える第一配線基板の正面図である。
図29】ハイビーム用灯具ユニットが備える第二配線基板の正面図である。
図30】第二配線基板に設けられたIR-LEDから照射された赤外光により、仮想鉛直スクリーン上に形成される赤外光のスポット光の像を示す図である。
図31】第二配線基板に設けられたIR-LEDから照射される赤外光が、回転リフレクタの回転により走査された状態での配光パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本開示を実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述される全ての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0054】
図1は、車両1に搭載される車両システム2のブロック図を示している。
図1に示すように、車両システム2は、車両制御部3と、ヘッドランプ4と、センサ5と、カメラ6と、レーダ7と、HMI(Human Machine Interface)8と、GPS(Global Positioning System)9と、無線通信部10と、地図情報記憶部11とを備えている。さらに、車両システム2は、ステアリングアクチュエータ12と、ステアリング装置13と、ブレーキアクチュエータ14と、ブレーキ装置15と、アクセルアクチュエータ16と、アクセル装置17とを備えている。
【0055】
車両制御部3は、車両1の走行を制御するように構成されている。車両制御部3は、例えば、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)により構成されている。電子制御ユニットは、プロセッサとメモリを含むマイクロコントローラと、その他電子回路(例えば、トランジスタ等)を含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)及び/又はGPU(Graphics Processing Unit)である。メモリは、各種車両制御プログラム(例えば、自動運転用の人工知能(AI)プログラム等)が記憶されたROM(Read Only Memory)と、各種車両制御データが一時的に記憶されるRAM(Random Access Memory)を含む。プロセッサは、ROMに記憶された各種車両制御プログラムから指定されたプログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されている。
【0056】
ヘッドランプ4は、車両1の前部に搭載された照明装置であり、車両1の周囲の道路へ向けて光を照射するランプユニット42と、ランプ制御部43(制御部の一例、灯具制御部の一例)とを備えている。ランプユニット42およびランプ制御部43の詳細な構成については後述する。
【0057】
例えば、車両制御部3は、所定の条件を満たした場合にランプユニット42の点消灯を制御するための指示信号を生成して、当該指示信号をランプ制御部43に送信する。ランプ制御部43は、受信した指示信号に基づいて、ランプユニット42の点消灯を制御する。
【0058】
センサ5は、加速度センサ、速度センサ、ジャイロセンサ等を備える。センサ5は、車両1の走行状態を検出して、走行状態情報を車両制御部3に出力するように構成されている。センサ5は、運転者が運転席に座っているかどうかを検出する着座センサ、運転者の顔の方向を検出する顔向きセンサ、外部天候状態を検出する外部天候センサ及び車内に人がいるかどうかを検出する人感センサ等をさらに備えてもよい。さらに、センサ5は、車両1の周辺環境の照度を検出する照度センサを備えてもよい。
【0059】
カメラ6は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(相補型MOS)等の撮像素子を含むカメラである。カメラ6の撮像は、車両制御部3から送信される信号に基づいて制御される。例えば、カメラ6は、ランプユニット42の点消灯の周波数に合わせたフレームレートにより画像を撮像し得る。これにより、カメラ6は、ランプユニット42の点灯時の画像と消灯時の画像の双方を取得することができる。
【0060】
レーダ7は、ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ又はレーザーレーダ等である。レーダ7は、LiDAR(Light Detection and RangingまたはLaser Imaging Detection and Ranging)を備えていてもよい。LiDARは、一般にその前方に非可視光を出射し、出射光と戻り光とに基づいて、物体までの距離、物体の形状、物体の材質などの情報を取得するセンサである。カメラ6とレーダ7(情報取得部の一例)は、車両1の周辺環境(他車、歩行者、道路形状、交通標識、障害物等)を検出し、周辺環境情報を車両制御部3に出力するように構成されている。
【0061】
HMI8は、運転者からの入力操作を受付ける入力部と、走行情報等を運転者に向けて出力する出力部とから構成される。入力部は、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダル、車両1の運転モードを切替える運転モード切替スイッチ等を含む。出力部は、各種走行情報を表示するディスプレイである。
【0062】
GPS9は、車両1の現在位置情報を取得し、当該取得された現在位置情報を車両制御部3に出力するように構成されている。無線通信部10は、車両1の周囲にいる他車に関する情報(例えば、走行情報)を他車から受信すると共に、車両1に関する情報(例えば、走行情報)を他車に送信するように構成されている(車車間通信)。また、無線通信部10は、信号機や標識灯等のインフラ設備からインフラ情報を受信すると共に、車両1の走行情報をインフラ設備に送信するように構成されている(路車間通信)。地図情報記憶部11は、地図情報が記憶されたハードディスクドライブ等の外部記憶装置であって、地図情報を車両制御部3に出力するように構成されている。
【0063】
車両1が自動運転モードで走行する場合、車両制御部3は、走行状態情報、周辺環境情報、現在位置情報、地図情報等に基づいて、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号のうち少なくとも一つを自動的に生成する。ステアリングアクチュエータ12は、ステアリング制御信号を車両制御部3から受信して、受信したステアリング制御信号に基づいてステアリング装置13を制御するように構成されている。ブレーキアクチュエータ14は、ブレーキ制御信号を車両制御部3から受信して、受信したブレーキ制御信号に基づいてブレーキ装置15を制御するように構成されている。アクセルアクチュエータ16は、アクセル制御信号を車両制御部3から受信して、受信したアクセル制御信号に基づいてアクセル装置17を制御するように構成されている。このように、自動運転モードでは、車両1の走行は車両システム2により自動制御される。
【0064】
一方、車両1が手動運転モードで走行する場合、車両制御部3は、アクセルペダル、ブレーキペダル及びステアリングホイールに対する運転者の手動操作に従って、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号を生成する。このように、手動運転モードでは、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号が運転者の手動操作によって生成されるので、車両1の走行は運転者により制御される。
【0065】
次に、車両1の運転モードについて説明する。運転モードは、自動運転モードと手動運転モードとからなる。自動運転モードは、完全自動運転モードと、高度運転支援モードと、運転支援モードとからなる。完全自動運転モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御及びアクセル制御の全ての走行制御を自動的に行うと共に、運転者は車両1を運転できる状態にはない。高度運転支援モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御及びアクセル制御の全ての走行制御を自動的に行うと共に、運転者は車両1を運転できる状態にはあるものの車両1を運転しない。運転支援モードでは、車両システム2がステアリング制御、ブレーキ制御及びアクセル制御のうち一部の走行制御を自動的に行うと共に、車両システム2の運転支援の下で運転者が車両1を運転する。一方、手動運転モードでは、車両システム2が走行制御を自動的に行わないと共に、車両システム2の運転支援なしに運転者が車両1を運転する。
【0066】
また、車両1の運転モードは、運転モード切替スイッチを操作することで切り替えられてもよい。この場合、車両制御部3は、運転モード切替スイッチに対する運転者の操作に応じて、車両1の運転モードを4つの運転モード(完全自動運転モード、高度運転支援モード、運転支援モード、手動運転モード)の間で切り替える。また、車両1の運転モードは、自動運転車が走行可能である走行可能区間や自動運転車の走行が禁止されている走行禁止区間についての情報または外部天候状態についての情報に基づいて自動的に切り替えられてもよい。この場合、車両制御部3は、これらの情報に基づいて車両1の運転モードを切り替える。さらに、車両1の運転モードは、着座センサや顔向きセンサ等を用いることで自動的に切り替えられてもよい。この場合、車両制御部3は、着座センサや顔向きセンサからの出力信号に基づいて、車両1の運転モードを切り替える。
【0067】
次に、車両システム2の具体的構成について図2等を参照して説明する。図2は、車両システム2の一部の構成を模式的に示したブロック図である。車両システム2に搭載されるヘッドランプ4は、車両前部の左側と右側にそれぞれ設けられるが、図面の簡略化のため、図2では、左右のヘッドランプのうち左側のヘッドランプのみを図示している。
【0068】
図2に示すように、車両システム2は、カメラ6として、可視光により車両1の周辺を撮像可能な可視光カメラ6Aと、赤外光により車両1の周辺を撮像可能な赤外線カメラ6Bとを備えている。なお、可視光カメラ6Aと赤外線カメラ6Bとを設ける代わりに、可視光と赤外光の両方を使用してカラー画像と赤外線画像とを同時に撮像可能な撮像素子を用いた単一のカメラを備えていてもよい。また、車両システム2は、画像処理部18と、モニタ19とを備えている。赤外線カメラ6Bは、赤外線(赤外光)の検出により特に夜間でも車両周囲の撮影が可能なカメラである。画像処理部18は、可視光カメラ6Aや赤外線カメラ6Bにより撮影された映像を処理し、車両制御部3やモニタ19に処理された映像信号を送信する。
【0069】
ヘッドランプ4のランプユニット42は、ロービーム用配光パターンを形成するロービーム用灯具ユニット42Lと、ハイビーム用配光パターンを形成するハイビーム用灯具ユニット42H(車両用灯具の一例)とを備えている。ロービーム用灯具ユニット42Lは、パラボラ型あるいはプロジェクタ型の灯具ユニットである。ロービーム用灯具ユニット42Lは、光源としてハロゲンランプ等のフィラメントを有する白熱灯や、メタルハライドランプ等のHID(High Intensity Discharge)ランプ、LED(Light Emitting Diode)等を用いている。
【0070】
ハイビーム用灯具ユニット42Hは、可視光源44(第一光源、第三光源の一例)と、赤外光源45(第二光源の一例)と、光学部材46と、フォトダイオード47(受光部の一例)と、を備えている。
【0071】
ヘッドランプ4のランプ制御部43は、電子制御ユニット(ECU)により構成されており、車両1の自動運転に係る情報に応じて、ランプユニット42の照明状態を所定の照明状態に設定するように構成されている。ここでいう照明状態とは、ランプユニット42を構成する各発光素子の点消灯や点滅周期等を含む。ランプ制御部43は、図示しない電源に電気的に接続されており、CPUやMPU等のプロセッサとROM及びRAM等のメモリとを含むマイクロコントローラ50と、LEDドライバ51,52と、モータドライバ53と、フォトダイオード47用の電流-電圧変換・増幅回路54と、計測回路55とを含んでいる。LEDドライバ51,52は、可視光源44および赤外光源45を構成する各発光素子(LED)をそれぞれ駆動するためのドライバである。モータドライバ53は、光学部材46(具体的には、後述の回転リフレクタ65)を駆動するためのドライバである。電流-電圧変換・増幅回路54は、フォトダイオード47から出力された電流信号(センサ信号)を電圧信号へと変換し、電圧信号を増幅するための回路である。計測回路55は、赤外光源45を駆動するLEDドライバ52から赤外光源45の駆動信号を受信するとともに、フォトダイオード47からの電流信号が電流-電圧変換・増幅回路54により電圧信号に変換された信号を受信する。そして、計測回路55は、これらの受信信号から、赤外光源45からの赤外光の発光タイミングとフォトダイオード47による赤外光の反射光の受光タイミングとの差分を計測し、その結果をマイクロコントローラ50へ送信する。マイクロコントローラ50は、これらのドライバ51~53や各回路54,55をそれぞれ制御する。なお、本実施形態では、車両制御部3とランプ制御部43は、別個の構成として設けられているが、一体的に構成されてもよい。つまり、ランプ制御部43と車両制御部3は、単一の電子制御ユニットにより構成されていてもよい。
【0072】
図3は、ハイビーム用灯具ユニット42Hの上面図である。図4は、ハイビーム用灯具ユニット42Hの一部拡大図である。
図3に示すように、ハイビーム用灯具ユニット42Hは、各構成部品を取り付けるためのブラケット60を備えている。ブラケット60は、ハイビーム用灯具ユニット42Hの不図示のハウジングに取り付けられている。ブラケット60には、可視光源44の一部および赤外光源45が設けられた第一配線基板61が取り付けられている。第一配線基板61の右方には、ランプ制御部43の構成部品が収容された制御ボックス63が配置されている。また、ブラケット60の第一配線基板61が取り付けられた箇所とは離隔した箇所には、可視光源44の他の一部が設けられた第二配線基板62が取り付けられている。また、制御ボックス63の一部(ここでは、灯具前方側)には、フォトダイオード47が配置されている。
【0073】
図3および図4に示すように、ブラケット60の第一配線基板61および第二配線基板62と対向する位置には、光学部材46の一部品である回転リフレクタ65が取り付けられている。さらに、ブラケット60には、光学部材46の他の一部品であるレンズ66が取り付けられている。レンズ66は、回転リフレクタ65よりも灯具前方側に設けられている。レンズ66は、図3および図4の右側に図示された第一レンズ部67と、第一レンズ部67の左側において第一レンズ部67と連続して形成された第二レンズ部68とから構成されている。第一レンズ部67および第二レンズ部68は、それぞれ、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズとして構成されている。可視光源44および赤外光源45から出射された光は、回転リフレクタ65により反射され、第一レンズ部67または第二レンズ部68を透過して灯具前方へ照射される。
【0074】
回転リフレクタ65は、モータドライバ53(図2参照)により回転軸Rを中心に一方向に回転する。回転リフレクタ65は、可視光源44から出射された可視光を回転しながら反射し、灯具前方に所望の配光パターンを形成するように構成されている。また、回転リフレクタ65は、赤外光源45から出射された赤外光を回転しながら反射し、灯具前方に照射するように構成されている。
【0075】
回転リフレクタ65は、反射面として機能する、形状の同じ2枚のブレード65aが筒状の回転部65bの周囲に設けられている。回転リフレクタ65の回転軸Rは、第一レンズ部67の光軸Ax1および第二レンズ部68の光軸Ax2に対して斜めになっている。回転リフレクタ65のブレード65aは、回転軸Rを中心とする周方向に向かうにつれて、光軸Ax1,Ax2と反射面とが成す角が変化するように捩られた形状を有している。これにより、ブレード65aが、可視光源44や赤外光源45から出射された光を回転しながら反射することで、各光源の光を用いた走査が可能となる。
【0076】
図5は、第一配線基板61の正面図であり、図6は、第二配線基板62の正面図である。
図5に示すように、第一配線基板61には、可視光源44として可視光を出射可能な複数(本例では、9つ)の発光素子(以下、可視光LEDと称す)44-1~44-9が配置されている。可視光LED44-1~44-9は、第一配線基板61の正面視において、可視光LED44-1から順に逆U字状となるように配列されている。これらの可視光LED44-1~44-9から出射された光により、ハイビーム用配光パターンのうち集光部が形成される。
【0077】
また、第一配線基板61には、赤外光源45として赤外光を出射可能な複数(本例では、2つ)の赤外光発光素子(以下、IR-LEDと称す)45-1,45-2が配置されている。IR-LED45-1は、第一配線基板61の正面視において、可視光LED44-3の左側に配置されている。IR-LED45-2は、第一配線基板61の正面視において、可視光LED44-7の右側に配置されている。
【0078】
図6に示すように、第二配線基板62上には、可視光源44として可視光を出射可能な複数(本例では、2つ)の可視光LED44-10,44-11が並列配置されている。これら可視光LED44-10,44-11から出射された光により、ハイビーム用配光パターンのうち拡散部が形成される。
【0079】
可視光源44としての各可視光LED44-1~44-11は、例えば可視光を照射可能な白色LEDから構成されている。可視光源44および赤外光源45としては、LEDの代わりに、EL素子やLD素子などの半導体発光素子を光源として用いることも可能である。特に後述するハイビーム用配光パターンの一部を非照射とするための制御には、点消灯が短時間に精度良く行える光源が好ましい。
【0080】
レンズ66のうち右側の第一レンズ部67は、第一配線基板61上に配置された可視光LED44-1~44-9から出射されて回転リフレクタ65で反射された可視光、およびIR-LED45-1,45-2から出射されて回転リフレクタ65で反射された赤外光が透過可能な位置に配置されている。すなわち、ハイビーム用配光パターンの集光部を形成するための可視光と、赤外光とが、第一レンズ部67を透過して灯具前方に照射される。また、レンズ66のうち左側の第二レンズ部68は、第二配線基板62上に配置された可視光LED44-10,44-11から出射され、回転リフレクタ65で反射された可視光が透過可能な位置に配置されている。すなわち、ハイビーム用配光パターンの拡散部を形成するための可視光が、第二レンズ部68を透過して灯具前方に照射される。なお、レンズ66の形状は、要求される配光パターンや照度分布などの配光特性に応じて適宜選択すればよいが、非球面レンズに代えて、例えば、自由曲面レンズが用いられてもよい。
【0081】
図7は、第一配線基板61に設けられた各可視光LED44-1~44-9から照射される可視光により、例えば車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるスポット光の像を示す図である。図8は、各可視光LED44-1~44-9から照射された可視光が回転リフレクタ65の回転により走査された状態での仮想鉛直スクリーン上の配光パターンP1を示す図である。
【0082】
各可視光LED44-1~44-9から出射された可視光は、回転リフレクタ65により反射されて、第一レンズ部67を透過することで上下左右に反転して、仮想鉛直スクリーン上に図7に示すようなスポット光の像を形成する。図7において、像S1が可視光LED44-1から照射されたスポット光の像であり、像S2が可視光LED44-2から照射されたスポット光の像であり、像S3が可視光LED44-3から照射されたスポット光の像であり、像S4が可視光LED44-4から照射されたスポット光の像であり、像S5が可視光LED44-5から照射されたスポット光の像であり、像S6が可視光LED44-6から照射されたスポット光の像であり、像S7が可視光LED44-7から照射されたスポット光の像であり、像S8が可視光LED44-8から照射されたスポット光の像であり、像S9が可視光LED44-9から照射されたスポット光の像である。像S1~S9は、仮想鉛直スクリーン上においてU字状となるように配列されて照射される。このうち、像S3,S4,S5,S6,S7が仮想鉛直スクリーン上の水平線H-H上に照射される。
【0083】
回転リフレクタ65の回転により、各可視光LED44-1~44-9から出射された可視光のスポット光の像S1~S9が左右方向に走査されると、図8に示すような配光パターンP1が形成される。配光パターンP1は、後述のハイビーム用配光パターンの集光部として形成される。配光パターンP1のうち、複数の可視光LEDから出射された可視光が重複して照射される箇所が特に照度が高くなる。具体的には、配光パターンP1は、仮想鉛直スクリーン上の垂直線V-Vと水平線H-Hとが交差する箇所が最も照度が高くなるように形成されている。
【0084】
図9は、第二配線基板62に設けられた各可視光LED44-10,44-11から照射される可視光により、仮想鉛直スクリーン上に形成されるスポット光の像を示す図であり、図10は、各可視光LED44-10,44-11から照射された可視光が回転リフレクタ65の回転により走査された状態での仮想鉛直スクリーン上の配光パターンP2を示す図である。
【0085】
可視光LED44-10および可視光LED44-11から出射された可視光は、回転リフレクタ65により反射されて、第二レンズ部68を透過することで上下左右に反転して、仮想鉛直スクリーン上に図9に示すようなスポット光の像を形成する。図9において、像S10が可視光LED44-10から照射されたスポット光の像であり、像S11が可視光LED44-11から照射されたスポット光の像である。像S10および像S11のサイズは、図7に示す各可視光LED44-1~44-9から出射された可視光のスポット光の像S1~S9のサイズよりも大きくなるように形成されている。左側ヘッドランプに搭載される可視光LED44-10,44-11により形成される像S10および像S11は、仮想鉛直スクリーン上において垂直線V-Vの左側において水平線H-Hに沿って並列して照射される。なお、図示は省略するが、右側ヘッドランプに搭載される可視光LED44-10,44-11により形成される像S10および像S11は、仮想鉛直スクリーン上において垂直線V-Vの右側において水平線H-Hに沿って並列して照射される。
【0086】
回転リフレクタ65の回転により、可視光LED44-10および可視光LED44-11から出射された可視光のスポット光の像S10,S11が左右方向に走査されると、図10に示すような配光パターンP2が形成される。配光パターンP2は、後述のハイビーム用配光パターンの拡散部の一部として形成される。上述の通り、左側ヘッドランプに搭載される可視光LED44-10,44-11により形成される像S10および像S11は、仮想鉛直スクリーン上において垂直線V-Vの左側に照射されるため、拡散部の一部を形成する配光パターンP2は、集光部を形成する配光パターンP1の照射領域のうち左側の部分に形成される。なお、図示は省略するが、右側ヘッドランプに搭載される可視光LED44-10,44-11により形成される像S10および像S11は、仮想鉛直スクリーン上において垂直線V-Vの右側に照射されるため、拡散部の他の一部は、集光部用配光パターンP1の照射領域のうち右側の部分に形成される。
このように、左側ヘッドランプの可視光LED44-10,44-11の配光(配光パターンP2)と右側ヘッドランプの可視光LED44-10,44-11の配光とが合成されることで、拡散部用配光パターンが形成される。そして、集光部用配光パターンP1と拡散部用配光パターンとが合成されることで図11に示されるハイビーム用配光パターンが形成される。
【0087】
図11は、ロービーム用灯具ユニット42Lおよびハイビーム用灯具ユニット42Hから前方に照射される可視光により、仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンP3を示している。
【0088】
図11に示される可視光の配光パターンP3は、ロービーム用灯具ユニット42Lおよびハイビーム用灯具ユニット42Hから照射される可視光の合成によって形成される。すなわち、配光パターンP3は、ロービーム用灯具ユニット42Lから照射される可視光のロービーム用配光パターンP4と、ハイビーム用灯具ユニット42Hから照射される可視光のハイビーム用配光パターンP1,P2との合成によって形成される。配光パターンP3は、例えば車両前方の領域のうち対向車100の上部(対向車100の運転者の位置)およびその周辺領域には光が照射されないように、各可視光LED44-1~44-11をその領域に対応するタイミングで消灯することにより、その配光が制御されている。これにより、対向車100の運転者へのグレア光を抑制することができる。
【0089】
図12は、第一配線基板61に設けられた各IR-LED45-1,45-2から照射された赤外光により、仮想鉛直スクリーン上に形成される赤外光のスポット光の像を示す図である。図13は、各IR-LED45-1,45-2から照射される赤外光が、回転リフレクタ65の回転により走査された状態での配光パターンP5を示す図である。
【0090】
各IR-LED45-1,45-2から出射された赤外光は、回転リフレクタ65により反射されて、第一レンズ部67を透過することで上下左右に反転して、仮想鉛直スクリーン上に図12に示すようなスポット光の像を形成する。図12において、像SIR1がIR-LED45-1から照射された赤外光のスポット光の像であり、像SIR2がIR-LED45-2から照射された赤外光のスポット光の像である。像SIR1,SIR2は、仮想鉛直スクリーン上の水平線H-H上に一定距離離隔して照射される。
【0091】
回転リフレクタ65の回転により、IR-LED45-1,45-2から出射された赤外光のスポット光の像SIR1,SIR2が左右方向に走査されると、図13に示すような配光パターンP5が形成される。配光パターンP5は、水平線H-H上に形成されている。なお、非可視光である赤外光については、対向車の運転者へのグレア光を考慮する必要はない。そのため、配光パターンP5は、可視光のハイビーム用配光パターンP1,P2の制御に関わらず水平線H-Hの領域の全体を略均一に照射するような配光となっている。
【0092】
配光パターンP5のように水平線H-Hに沿って照射される赤外光は、車両前方に存在する物体(対象物)により反射される。ハイビーム用灯具ユニット42Hが備えるフォトダイオード47は、物体により反射された赤外光を受光して電流信号として出力する。出力された赤外光の電流信号は、電流-電圧変換・増幅回路54により電圧信号へと変換されて更に増幅されて、計測回路55へと送信される。計測回路55は、電流-電圧変換・増幅回路54から送信された電圧信号に基づいて、赤外光の反射光の受光タイミングや当該反射光の光強度に関する信号をマイクロコントローラ50へ送信する。マイクロコントローラ50は、計測回路55から受信した赤外光に関する信号(出射光と戻り光に関する信号)に基づいて、物体までの距離、物体の形状、物体の材質などの情報を取得する。これにより、マイクロコントローラ50は、車両前方の歩行者や対向車の存在を検出することができる。そして、マイクロコントローラ50は、赤外光信号に基づいて検出された車両前方の歩行者や対向車へグレアを与えないように、可視光源44(可視光LED44-1~44-11)の点消灯を制御する。また、マイクロコントローラ50は、赤外光信号に基づいて検出された車両周囲の情報に関する信号を、車両制御部3へ送信する。車両1が自動運転モードで走行する場合、車両制御部3は、マイクロコントローラ50から取得した周辺環境情報に基づいて、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号のうち少なくとも一つを自動的に生成することができる。
【0093】
(第一実施形態)
次に、第一実施形態に係る、車両の周辺環境情報である車両周辺情報から取得された対象物の位置情報の補正処理の一例について、図14図17を参照して説明する。図14は、対象物の位置情報の補正処理の一例を示すフローチャートである。図15は、車両前方に対象物が検知されていない状態での仮想鉛直スクリーン上での配光パターンを示す図である。図16は、対象物である対向車100が検知された状態での配光パターンを示す図である。図17は、対向車100の補正後の位置情報に基づいて配光パターンが補正された状態を示す図である。
【0094】
図14に示すように、まず、第一実施形態に係る車両制御部3は、ユーザからの入力操作、またはセンサ5やレーダ7等により取得された車両周辺情報に基づいて、ランプユニット42(ハイビーム用灯具ユニット42H)に搭載された可視光源44を点灯させるための指示信号である点灯指示信号を生成する(ステップS1)。次に、車両制御部3は、生成した可視光源44の点灯指示信号をランプ制御部43へ送信する(ステップS2)。
【0095】
続いて、ランプ制御部43は、車両制御部3から受信した点灯指示信号に基づいて、ハイビーム用灯具ユニット42Hに搭載された可視光源44を点灯させる(ステップS3)。上述の通り、可視光源44から照射された可視光が回転リフレクタ65の回転により左右方向に走査されることで、図8に示すような配光パターンP1と図10に示すような配光パターンP2と合成されて、ハイビーム用配光パターンP1,P2が形成される。このハイビーム用配光パターンP1,P2が、ロービーム用灯具ユニット42Lから照射される可視光により形成されるロービーム用配光パターンP4と合成されて、図15に示す配光パターンP3が形成される。
【0096】
続いて、車両制御部3は、可視光源44により照射された車両1の周辺領域(本例では、車両1の前方領域)をカメラ6により撮像した撮像画像をカメラ6から取得する(ステップS4)。次に、車両制御部3は、取得した撮像画像を解析して、対象物が存在するか否かを検知する(ステップS5)。対象物が存在すると検知された場合には(ステップS5のYes)、車両制御部3は、検知された対象物の位置情報を取得する(ステップS6)。例えば、車両制御部3は、対象物として対向車100(図16参照)の存在を検知した場合には、その検知された対向車100の位置情報を取得する。対向車100の位置情報には、例えば、撮像画像において対向車100に対応する領域の位置や大きさが含まれる。次に、車両制御部3は、取得した対象物の位置情報をランプ制御部43へ送信する(ステップS7)。
【0097】
続いて、ランプ制御部43は、車両制御部3から取得した対象物の位置情報に基づいて、ハイビーム用配光パターンP1,P2の配光を制御する(ステップS8)。具体的には、ランプ制御部43は、上述の通り、車両前方の領域のうち対向車100の上部(対向車100の運転者の位置)およびその周辺領域には光が照射されないように可視光源44(各可視光LED44-1~44-11)をその領域に対応するタイミングで消灯して、図16に示すようにハイビーム用配光パターンP1,P2の配光を制御する。
【0098】
続いて、ランプ制御部43は、ハイビーム用灯具ユニット42Hに搭載された赤外光源45を点灯させる(ステップS9)。上述の通り、赤外光源45から照射された赤外光が回転リフレクタ65の回転により左右方向に走査されることで、図13に示すような水平線H-H上の配光パターンP5が形成される。
【0099】
次に、ランプ制御部43は、赤外光源45から照射された赤外光が車両周囲の対象物により反射された戻り光に関する情報(戻り光情報)をフォトダイオード47から取得する(ステップS10)。そして、ランプ制御部43は、戻り光情報を車両制御部3へ送信する(ステップS11)。
【0100】
続いて、車両制御部3は、ランプ制御部43から受け取った赤外光の戻り光情報に基づいて、対象物の位置情報を補正する(ステップS12)。具体的には、車両制御部3は、戻り光情報に基づいて対向車100までの距離や対向車100の形状などの情報を取得する。例えば、図16に示すように、ハイビーム用配光パターンP1,P2のうち対向車100に対応する領域を照射しないための非照射部NLが、対向車100が存在する領域よりもやや大きめに形成されてしまう場合がある。すなわち、カメラ6により取得された撮像画像に基づいて取得された対向車100の位置や大きさに関する情報が、実際の対向車100の位置や大きさと完全に一致しない場合がある。このような場合に、車両制御部3は、戻り光情報に基づいて、対向車100の位置情報を補正する。そして、車両制御部3は、対向車100の補正後の位置情報をランプ制御部43へ送信する(ステップS13)。
【0101】
続いて、ランプ制御部43は、車両制御部3から受け取った対向車100の補正後の位置情報に基づいて、ハイビーム用配光パターンP1,P2の配光を補正する(ステップS14)。具体的には、図17に示すように、ランプ制御部43は、対向車100の補正後の位置情報に基づいて、図16に示すハイビーム用配光パターンP1,P2よりも可視光の非照射部(遮光部)NLを狭めるように、ハイビーム用配光パターンP1,P2を補正する。
【0102】
ところで、例えば、いわゆるADB(Adaptive Driving Beam)システムを搭載した車両では、車両に搭載されたカメラにより車両の周囲の対象物(歩行者、前走車、対向車など)の位置情報を取得し、取得した対象物の位置情報に基づいて、当該対象物の少なくとも一部の領域へは可視光を照射しないようにハイビーム用配光パターンの配光を制御している。しかしながら、非照射領域(例えば、図16図17の非照射部NL)内に対象物が存在する場合には、カメラで撮像した撮像画像からのみでは、対象物の位置情報を正確に把握できない可能性がある。
【0103】
これに対して、上記で説明したように、第一実施形態に係る車両システム2においては、車両制御部3が、カメラ6(情報取得部の一例)で取得された車両周辺情報に基づいて車両1の外部の対象物の位置情報を取得するとともに、赤外光源45から照射された赤外光が対象物により反射されてフォトダイオード47で受光された赤外光の戻り光の情報に基づいて対象物の位置情報を補正するように構成されている。上述の通り、非可視光である赤外光については対向車のドライバへのグレア光を考慮する必要はないため、赤外光の配光パターンP5(図13参照)は、可視光のハイビーム用配光パターンP1,P2の制御に関わらず、水平線H-Hの領域の全体を略均一に照射するような配光となっている。そのため、例えば、図15図16に示す可視光の非照射領域NL内において対象物である対向車100の位置や大きさが変化した場合であっても、赤外光の戻り光情報を用いることで対象物の位置や大きさの変化を認識することができる。そのため、対象物の位置情報を適切に補正することができる。このように第一実施形態に係る構成によれば、高精度な対象物位置情報を取得することができる。
【0104】
また、車両システム2において、ランプ制御部43は、補正後の対象物位置情報に基づいて、ハイビーム用配光パターンP1,P2の配光を補正するように構成されている。このように、赤外光の戻り光を用いて対象物の位置情報を補正することにより、ハイビーム用配光パターンP1,P2の配光を適切に補正することができる。そのため、本実施形態に係る車両システム2によれば、可視光源44によるハイビーム用配光パターンP1,P2の高精細化を実現することができる。
【0105】
また、ランプユニット42のハイビーム用灯具ユニット42Hは、車両の周辺に可視光を照射するための可視光源44と、車両の周辺の情報を取得するために赤外光を出射する赤外光源45と、可視光源44から照射された可視光を反射しながら回転し、車両から所定距離の位置に配置される仮想鉛直スクリーン上における水平方向に可視光を走査する回転リフレクタ65と、を備えている。これにより、車両周囲を照明するための可視光の配光パターンP1,P2に加えてセンシング用の赤外光の配光パターンP5を簡便な構成で実現することができる。
【0106】
また、可視光源44と赤外光源45とフォトダイオード47とが単一のハイビーム用灯具ユニット42H内に搭載されているため、可視光の照射と赤外光の照射とを両立しながらハイビーム用灯具ユニット42Hの小型化を実現することができる。
【0107】
なお、上記第一実施形態においては、車両制御部3が、赤外光源45から照射された赤外光が対象物により反射されてフォトダイオード47で受光された赤外光の戻り光の情報に基づいて対象物の位置情報を補正するように構成されている。しかしながら、ランプ制御部43において赤外光の戻り光の情報に基づいて対象物の位置情報を補正するようにしてもよい。
【0108】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態に係る、可視光の配光パターンP3の非照射領域に対する赤外光の照射制御の一例について、図18などを参照して説明する。図18は、ロービーム用灯具ユニット42Lおよびハイビーム用灯具ユニット42Hから前方に照射される可視光および赤外光により、仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンP6を示す図である。
【0109】
ランプ制御部43は、上述のように、カメラ6やレーダ7等が取得した車両1の周辺環境情報を車両制御部3から取得し、車両前方にグレア光を抑制すべき物体(対象物)が存在する場合には、その物体の所定の領域には可視光が照射されないように、配光パターンP3の配光(照射領域)を調整する。ランプ制御部43は、可視光源44から出射された可視光を調整した配光(調整した照射領域)に対応した走査領域に走査させる。これにより、配光パターンP3は、配光が調整されたことにより可視光が照射されない領域(以下、非照射領域という)を含む配光パターンとして形成される。
【0110】
赤外光の配光パターンP5は、IR-LED45-1,45-2から出射された赤外光のスポット光の像SIR1,SIR2が回転リフレクタ65により左右方向に最大範囲(赤外光によるセンサ対象領域)で走査された場合には、図13に示す配光パターンとなる。これに対して、第二実施形態に係る配光パターンP5は、可視光の配光パターンP3における配光の調整により形成された非照射領域に赤外光源45からの赤外光が照射されるように、その配光が制御される。具体的には、第二実施形態に係るランプ制御部43は、車両1の周辺環境情報に基づいて配光パターンP3の非照射領域を決定する。そして、ランプ制御部43は、決定した非照射領域に赤外光源45からの赤外光が照射されるように、配光パターンP5の配光を調整する。配光パターンP5は、例えば各IR-LED45-1,45-2を非照射領域に対応するタイミングで点灯することにより、その配光が制御される。
【0111】
図18に示すように、可視光および赤外光により形成される配光パターンP6は、ロービーム用灯具ユニット42Lから照射される可視光のロービーム用配光パターンP4と、ハイビーム用灯具ユニット42Hから照射される可視光のハイビーム用配光パターンP1,P2および赤外光の配光パターンP5(クロスハッチングで示した領域)との合成によって形成される。配光パターンP5は、車両前方の領域のうち可視光が照射されていない対向車100の下部を照射するように形成される。
【0112】
配光パターンP5のように水平線H-Hに沿って照射されて車両前方に存在する物体(対象物)により反射された赤外光は、フォトダイオード47により受光される。マイクロコントローラ50は、計測回路55から受信した赤外光に関する信号(出射光と戻り光に関する信号)に基づいて、物体までの距離、物体の形状、物体の材質などの情報を取得する。これにより、マイクロコントローラ50は、車両前方の非照射領域における物体(歩行者や対向車)の存在を検出することができる。そして、マイクロコントローラ50は、赤外光信号に基づいて検出された車両前方の歩行者や対向車へグレアを与えないように、可視光源44(可視光LED44-1~44-11)の点消灯を制御する。すなわち、マイクロコントローラ50は、赤外光信号に基づいて検出された非照射領域における物体の情報に基づいて可視光の配光パターンP3を修正する。これにより、車両周囲の状況により可変する可視光の配光パターンP3の配光を高精細化することができる。また、マイクロコントローラ50は、赤外光信号に基づいて検出された非照射領域の情報に関する信号を、車両制御部3へ送信してもよい。
【0113】
以上説明したように、第二実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット42Hにおいて、ランプ制御部43は、車両1の周辺環境情報に基づいて可視光源44から出射された可視光により形成される配光パターンP3の配光を調整し、可視光の非照射領域に赤外光源45からの赤外光を照射させる。これにより、非照射領域における対向車等の対象物の位置を精度よく検出できる。したがって、車両周囲の状況により可変する照明用の配光を簡便な構成で高精細化することができる。例えば図11に示したグレア光を抑制した配光パターンを精度よく形成することができる。
【0114】
ハイビーム用灯具ユニット42Hは、車両の周辺に可視光を照射するための可視光源44と、車両の周辺の情報を取得するために赤外光を出射する赤外光源45と、可視光源44から照射された可視光および赤外光源45から照射された赤外光を反射しながら回転し、車両から所定距離の位置に配置される仮想鉛直スクリーン上における水平方向に可視光を走査する回転リフレクタ65とを備えている。これにより、可視光の配光パターンP1,P2に加えて赤外光の配光パターンP5を簡便な構成で実現することができる。
【0115】
また、可視光源44と赤外光源45とフォトダイオード47とが単一のハイビーム用灯具ユニット42H内に搭載されているため、可視光の照射と赤外光の照射とを両立しながらハイビーム用灯具ユニット42Hの小型化を実現することができる。
【0116】
また、ハイビーム用灯具ユニット42Hにおいては、ランプ制御部43は、赤外光源45から出射され対象物により反射された赤外光に関する情報を取得し、取得した赤外光に関する情報に基づいて、可視光による配光パターンP3を修正する。これにより、照明用の配光をより高精細化することができる。
【0117】
また、ランプ制御部43が、ハイビーム用灯具ユニット42H内に搭載されたフォトダイオード47から赤外光の反射光に関する情報を取得する。赤外光が出射された位置付近において、対象物により反射された当該赤外光の反射光を受光することができるため、出射光に対する戻り光の角度が小さくなる。これにより、対象物の方向(角度座標)や距離を検出する精度を向上させることができる。ランプ制御部43は、受光部から赤外光の反射光に関する精度の高い情報を取得することができる。
【0118】
また、車両システム2は、ハイビーム用灯具ユニット42Hと、車両の周辺環境情報を取得可能なカメラ6やレーダ7と、車両制御部3と、を備えている。これにより、車両周囲の状況により可変する照明用の配光を簡便な構成で高精細化することが可能な車両システムを提供することができる。
【0119】
なお、上記第二実施形態においては、可視光源44を構成する可視光LED44-1~44-11を消灯することにより非照射領域を形成している。また、非照射領域に対応するタイミングで赤外光源45を構成するIR-LED45-1,45-2を点灯することにより配光パターンP5を形成している。しかしながら、例えば、非照射領域に対応するタイミングで可視光源44から出射された可視光を遮光する部材を設けてもよい。また、非照射領域以外の領域に対応するタイミングで赤外光源45から出射された赤外光を遮光する部材を設けてもよい。
【0120】
上記第二実施形態においては、車両の周辺環境情報として、車両1に搭載されたカメラ6やレーダ等により取得された周辺環境情報を用いている。しかしながら、例えば、車両1に搭載された他のセンサ等により取得された周辺環境情報を用いてもよい。また、ハイビーム用灯具ユニット42Hに車両の周辺環境情報を取得する可視光カメラ等を搭載してもよい。
【0121】
(第三実施形態)
次に、第三実施形態に係る、赤外光の光強度変更処理の一例について、図19Aおよび図19Bなどを参照して説明する。図19Aは、赤外光源45から出射された赤外光が走査される範囲を示す模式図である。図19Aは、赤外光源45を上方から視た時の走査範囲を示しており、図中の矢印Fは車両の前方方向を示している。図19Bは、図19Aに示す走査範囲で走査される赤外光の光強度を示す図である。縦軸は赤外光の光強度、横軸は赤外光の走査角度を示している。
【0122】
第三実施形態に係るランプ制御部43は、赤外光の配光パターンP5の大きさに応じて配光パターンP5の照度を変化させる。すなわち、ランプ制御部43は、赤外光源45から出射される赤外光が走査される範囲の大きさに応じて赤外光の光強度を変更する。例えば、ランプ制御部43は、LEDドライバ52から各IR-LED45-1,45-2へ出力される駆動電流の値を変化させることにより、赤外光の光強度を制御する。
【0123】
ランプ制御部43は、例えば、図19Aおよび図19Bに示すように、赤外光源45から出射された赤外光を、車両前方方向を基準として-θMAX(マイナスθMAX)から+θMAX(プラスθMAX)の走査角度の範囲(最大走査範囲)で走査する場合には、所定の値(図19Bのa)となるように赤外光の光強度を制御する。これにより図13の配光パターンP5が形成される。一方、例えば非照射領域を形成するように可視光の配光パターンP3の配光が調整される場合は、ランプ制御部43は、赤外光源45から出射された赤外光を、車両前方方向を基準として-θ1(マイナスθ1)から+θ1(プラスθ1)の走査角度の範囲で走査する。また、ランプ制御部43は、赤外光源45から出射された赤外光の光強度が第一の値よりも大きい第二の値(図19Bのb)になるように赤外光の光強度を変更する。これにより、図13の配光パターンP5と比べて、照射範囲が狭く(例えば、図18)且つ照度が高い配光パターンP5を形成することができる。なお、a、bの値は、車両の周辺環境や走査領域等により適宜設定可能である。また、図19Aでは各走査範囲は車両前方方向を基準として左右対称範囲に設定されているが、これに限られない。
【0124】
配光パターンP5のように水平線H-Hに沿って照射されて車両前方に存在する物体(対象物)により反射された赤外光は、フォトダイオード47により受光される。マイクロコントローラ50は、計測回路55から受信した赤外光に関する信号(出射光と戻り光に関する信号)に基づいて、物体までの距離、物体の形状、物体の材質などの情報を取得する。これにより、マイクロコントローラ50は例えば、走査範囲が小さくなるほど赤外光の光強度を強くすることにより、より正確な車両周囲の情報を取得することができる。マイクロコントローラ50は、例えば、赤外光信号に基づいて検出された非照射領域における物体の情報に基づいて可視光の配光パターンP3を修正することにより、車両周囲の状況により可変する可視光の配光パターンP3の配光を高精細化することができる。また、マイクロコントローラ50は、赤外光信号に基づいて検出された非照射領域の情報に関する信号を、車両制御部3へ送信してもよい。
【0125】
以上説明したように、第三実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット42Hにおいて、ランプ制御部43は、車両の周辺環境情報に基づいて赤外光源45から出射される赤外光の走査範囲を調整し、調整された赤外光の走査範囲の大きさに応じて、赤外光の光強度を変更するように構成されている。これにより、赤外光を用いたセンシング機能が向上する。
【0126】
ハイビーム用灯具ユニット42Hは、可視光源44Lと、赤外光源45Lと、可視光源44Lから照射された可視光および赤外光源45Lから照射された赤外光を反射しながら回転し、車両から所定距離の位置に配置される仮想鉛直スクリーン上における水平方向に可視光および赤外光を走査する回転リフレクタ65Lを備える。これにより、可視光の配光パターンP1,P2に加えて赤外光の配光パターンP5を簡便な構成で実現することができる。
【0127】
また、可視光源44と赤外光源45とフォトダイオード47とが単一のハイビーム用灯具ユニット42H内に搭載されているため、可視光の照射と赤外光の照射とを両立しながらハイビーム用灯具ユニット42Hの小型化を実現することができる。
【0128】
また、ハイビーム用灯具ユニット42Hにおいて、ランプ制御部43は、周辺環境情報に基づいて可視光源44から出射される可視光により仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンの配光を調整し、調整された配光により可視光が照射されない非照射領域に赤外光源45からの赤外光が照射されるように、走査範囲の大きさを調整している。これにより、可視光が照射されない非照射領域の車両周辺情報を取得することができ、車両周囲の状況により可変する照明用の配光を簡便な構成で高精細化することができる。したがって、例えば図11に示したグレア光を抑制した配光パターンを精度よく形成することができる。
【0129】
また、ハイビーム用灯具ユニット42Hにおいては、ランプ制御部43は、走査範囲が小さいほど、赤外光の光強度を強くするように構成されている。これにより、より正確な車両周辺情報を取得することができる。
【0130】
なお、上記第三実施形態においては、ランプ制御部43は、二つの走査範囲に対応して光強度を二つの値の間で変化させていた。しかしながら、例えば、ランプ制御部43は、光強度が走査範囲の増減に応じて連続的または段階的に増減するよう制御してもよい。
【0131】
上記第三実施形態では、ランプ制御部43は、可視光の配光パターンP3において可視光が照射されない非照射領域に応じて赤外光の走査範囲の大きさを調整している。しかしながら、ランプ制御部43は、車両の速度に応じて、走査範囲の大きさを調整してもよい。例えば、図19Aにおいて、所定速度未満の場合には赤外光を最大走査範囲で走査し、所定速度以上(例えば、高速走行時)には赤外光を最大走査範囲よりも狭い範囲(左右の実線に挟まれた範囲)で走査してもよい。あるいは、車両が停止または徐行している場合には赤外光を最大走査範囲で走査し、車速が速くなるにつれて走査範囲を連続的または段階的に小さくしてもよい。この場合には、走査範囲が小さくなるにつれて赤外光の強度を連続的または段階的に高くしてもよい。この変形例についても、赤外光を用いたセンシング機能を向上させることができる。また、赤外光によるセンサ対象領域のうち車両の速度に応じて変化する最もセンシングが必要な領域を重点的にセンシングすることができる。
【0132】
上記第三実施形態においては、ランプ制御部43は、IR-LED45-1,45-2に入力される駆動電流の値を変更することにより、赤外光の光強度を変更している。しかしながら、例えば、回転リフレクタ65およびレンズ66の少なくとも一方を可動式にし、回転リフレクタ65とレンズ66との距離を変更することにより、スポット光の像の面積(走査幅)を調整して赤外光の光強度(照度)を変えてもよい。
【0133】
上記第三実施形態においては、赤外光の走査範囲の大きさを走査角度の大きさで表現している。しかしながら、例えば、1回の走査時間の長さに応じて、光強度を変化させてもよい。
【0134】
(第四実施形態)
次に、第四実施形態に係る、対象物の位置情報に基づく配光パターンの制御処理の一例について、図11図15図20図21を参照して説明する。図20は、対象物の位置情報に基づく配光パターンの制御処理の一例を示すフローチャートである。図21は、赤外光の出射タイミング、仮想鉛直スクリーン上の赤外光の像、および対象物により反射された戻り光の光強度の関係を説明するための図である。図21中の(a)領域は、赤外光の出射タイミングを示すタイミングチャートを示している。図21中の(b)領域は、各出射タイミングにおける仮想鉛直スクリーン上の赤外光の像を示す模式図を示している。図21中の(c)領域は、対象物により反射された戻り光の光強度を示す図を示している。
【0135】
図20に示すように、まず、第四実施形態に係るランプ制御部43は、車両制御部3からランプユニット42(ハイビーム用灯具ユニット42H)に搭載された可視光源44を点灯させるための指示信号である点灯指示信号を受信する(ステップS21)。次に、ランプ制御部43は、車両制御部3から受信した点灯指示信号に基づいて、ハイビーム用灯具ユニット42Hに搭載された可視光源44を点灯させる(ステップS22)。上述の通り、可視光源44から照射された可視光が回転リフレクタ65の回転により左右方向に走査されることで、図8に示すような配光パターンP1と図10に示すような配光パターンP2とが合成されて、ハイビーム用配光パターンP1,P2が形成される。このハイビーム用配光パターンP1,P2が、ロービーム用灯具ユニット42Lから照射される可視光により形成されるロービーム用配光パターンP4と合成されて、図15に示す配光パターンP3が形成される。
【0136】
続いて、ランプ制御部43は、ハイビーム用灯具ユニット42Hに搭載された赤外光源45を点灯させる(ステップS23)。上述の通り、赤外光源45から照射された赤外光が回転リフレクタ65の回転により左右方向に走査されることで、図13に示すような水平線H-H上の配光パターンP5が形成される。ここで、フォトダイオード47は、赤外光が対象物により反射された戻り光を、所定のフレームレートにより受光している。
次に、ランプ制御部43は、赤外光源45から照射された赤外光が車両周囲の対象物により反射された戻り光に関する情報(戻り光情報)をフォトダイオード47から取得する(ステップS24)。
【0137】
次に、ランプ制御部43は、取得した戻り光情報を解析して、対象物が存在するか否かを検知する(ステップS25)。対象物が存在するか否かは、例えば、赤外光源45からの赤外光の出射タイミングとフォトダイオード47による赤外光の受光タイミングとの差分から検知され得る。
【0138】
ステップS5において、対象物が存在すると検知された場合には(ステップS25のYes)、ランプ制御部43は、戻り光の光強度に基づいて対象物の位置情報を取得する(ステップS26)。本例では、赤外光源45は、所定の周期で赤外光を出射している。例えば、図21の(a)領域に示すように、赤外光源45は、出射タイミングt1~t9で赤外光を出射している。図21の(b)領域に示すように、各出射タイミングt1~t9で赤外光源45から出射された赤外光の像Sz1~9は、仮想鉛直スクリーン上において所定の照射範囲を有している。また、赤外光源45から出射された赤外光は、ある出射タイミングで形成される赤外光の像が、その出射タイミングの直前の出射タイミングに出射された赤外光の像と一部重なるように水平線H-Hに沿って走査される。例えば、第二出射タイミングt2で形成された赤外光の像Sz2は、第二出射タイミングt2の直前の第一出射タイミングt1で形成された赤外光の像Sz1と一部重なるように走査される。
【0139】
ランプ制御部43は、所定の周期で出射された赤外光の戻り光の光強度に関する情報を、フォトダイオード47から取得する。例えば、対象物として対向車100の存在を検知した場合には、ランプ制御部43は、対向車100により反射された戻り光の光強度を取得する。上述の通り、各出射タイミングt1~t9に形成される赤外光の像Sz1~Sz9のそれぞれは、仮想鉛直スクリーン上において所定の照射範囲を有している。そのため、対向車100と赤外光の像Sz1~Sz9のいずれかとが少しでも重なった場合には、対向車100と赤外光の像Sz1~Sz9とが重なっていない場合から光強度が変化する。ランプ制御部43は、図21の(c)領域に示すように光強度の変化をプロットして、当該光強度の変化から対向車100の位置及び大きさを算出する。
【0140】
本例では、図21の(c)領域に示すように、第一出射タイミングt1および第二出射タイミングt2では光強度は変化せずに、第三出射タイミングt3で光強度が大きくなる。そして、第四出射タイミングt4での光強度は第三出射タイミングt3での光強度よりもさらに大きくなり、第五出射タイミングt5で光強度のピークを迎える。その後、第六出射タイミングt6、第七出射タイミングt7と徐々に光強度が小さくなり、第八出射タイミングt8で第一および第二出射タイミングt1,t2と同等の光強度となる。ランプ制御部43は、このような光強度の変化から、対向車100の中心部は第五出射タイミングt5で形成される赤外光の像Sz5の範囲内にあることを特定することができる。また、ランプ制御部43は、第三出射タイミングt3で形成される赤外光の像Sz3の範囲内であって、第二出射タイミングt2で形成される赤外光の像Sz2とは重複しない範囲に対向車100とそれ以外の領域との境界があることを特定することができる。同様に、ランプ制御部43は、第七出射タイミングt7で形成される赤外光の像Sz7の範囲内であって、第八出射タイミングt8で形成される赤外光の像Sz8とは重複しない範囲に、対向車100とそれ以外の領域との境界があることを特定することができる。このようにして、ランプ制御部43は、図21の(b)領域に示す赤外光の像Sz1~Sz9の領域のうち、斜線で示される領域(像Sz5の領域)内に対向車100の全体が位置することを算出し得る。
【0141】
続いて、ランプ制御部43は、戻り光の光強度情報から算出した対象物の位置情報に基づいて、ハイビーム用配光パターンP1,P2の配光を制御する(ステップS27)。具体的には、ランプ制御部43は、上述の通り、車両前方の領域のうち対向車100の上部(対向車100の運転者の位置)およびその周辺領域には光が照射されないように可視光源44(各可視光LED44-1~44-11)をその領域に対応するタイミングで消灯して、ハイビーム用配光パターンP1,P2の配光を制御する(図11参照)。
【0142】
以上説明したように、第四実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット42Hにおいては、仮想鉛直スクリーン上における赤外光源45から出射された赤外光の像が所定の照射範囲を有し、赤外光は、仮想鉛直スクリーン上における該赤外光の像が直前に出射された赤外光の像と一部重なるように水平方向に沿って走査される。そして、ランプ制御部43(灯具制御部の一例)は、赤外光の戻り光の光強度に基づいて、対象物の位置情報を取得するように構成されている。このように、赤外光の戻り光の光強度情報を用いることで、対象物の位置や大きさを適切に認識することができる。そのため、本実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット42Hの構成によれば、高精度な対象物位置情報を取得することができる。
【0143】
また、ハイビーム用灯具ユニット42Hにおいて、ランプ制御部43は、光強度情報から算出した対象物位置情報に基づいて、ハイビーム用配光パターンP1,P2の配光を制御するように構成されている。このように、戻り光の光強度を用いて対象物の位置情報を取得することにより、ハイビーム用配光パターンP1,P2の配光を適切に制御することができる。そのため、本実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット42Hによれば、可視光源44によるハイビーム用配光パターンP1,P2の高精細化を実現することができる。
【0144】
なお、赤外光の光強度による対象物の位置情報の検知精度をさらに高める、すなわち、分解能を上げるためには、各出射タイミングt1~t9で形成される赤外光の像Sz1~Sz9を図21の(b)領域で示されるものよりも細かく重複させることが好ましい。
【0145】
(変形例)
次に、第四実施形態の変形例に係る対象物の位置情報に基づく配光パターンの制御処理の一例について図16図17図22を参照して説明する。図22は、変形例に係る、対象物の位置情報に基づく配光パターンの制御処理の一例を示すフローチャートである。
【0146】
図22に示すように、まず、車両制御部3は、ユーザからの入力操作、またはセンサ5やレーダ7等により取得された車両周辺情報に基づいて、ランプユニット42(ハイビーム用灯具ユニット42H)に搭載された可視光源44を点灯させるための指示信号である点灯指示信号を生成する(ステップS31)。次に、車両制御部3は、生成した可視光源44の点灯指示信号をランプ制御部43へ送信する(ステップS32)。
【0147】
続いて、ランプ制御部43は、車両制御部3から受信した点灯指示信号に基づいて、ハイビーム用灯具ユニット42Hに搭載された可視光源44を点灯させる(ステップS33)。これにより、図15に示す配光パターンP3が形成される。
【0148】
続いて、車両制御部3は、可視光源44により照射された車両1の周辺領域(本例では、車両1の前方領域)をカメラ6により撮像した撮像画像をカメラ6から取得する(ステップS34)。次に、車両制御部3は、取得した撮像画像を解析して、対象物が存在するか否かを検知する(ステップS35)。対象物が存在すると検知された場合には(ステップS35のYes)、車両制御部3は、検知された対象物の位置情報を取得する(ステップS36)。例えば、車両制御部3は、対象物として対向車100の存在を検知した場合には、その検知された対向車100の位置情報を取得する。対向車100の位置情報には、例えば、撮像画像において対向車100に対応する領域の位置や大きさが含まれる。次に、車両制御部3は、取得した対象物の位置情報をランプ制御部43へ送信する(ステップS37)。
【0149】
続いて、ランプ制御部43は、車両制御部3から取得した対象物の位置情報に基づいて、ハイビーム用配光パターンP1,P2の配光を制御する(ステップS38)。具体的には、ランプ制御部43は、上述の通り、車両前方の領域のうち対向車100の上部(対向車100の運転者の位置)およびその周辺領域には光が照射されないように可視光源44(各可視光LED44-1~44-11)をその領域に対応するタイミングで消灯して、図16に示すようにハイビーム用配光パターンP1,P2の配光を制御する。
【0150】
続いて、ランプ制御部43は、ハイビーム用灯具ユニット42Hに搭載された赤外光源45を点灯させる(ステップS39)。これにより、図13に示すような水平線H-H上の配光パターンP5が形成される。
【0151】
次に、ランプ制御部43は、赤外光源45から照射された赤外光の戻り光情報から光強度に関する情報を取得する(ステップS40)。続いて、ランプ制御部43は、取得した光強度情報に基づいて、対象物の位置情報を補正する(ステップS41)。上記の実施形態と同様に、ランプ制御部43は、光強度情報に基づいて対向車100の位置情報を取得することができる。例えば、図16に示すように、ハイビーム用配光パターンP1,P2のうち対向車100に対応する領域を照射しないための非照射部NLが、対向車100が存在する領域よりもやや大きめに形成されてしまう場合がある。すなわち、カメラ6の撮像画像に基づいて取得された対向車100の位置や大きさに関する情報が、実際の対向車100の位置や大きさと完全に一致しない場合がある。このような場合に、ランプ制御部43は、光強度情報に基づいて、対向車100の位置情報を補正する。
【0152】
続いて、ランプ制御部43は、光強度情報に基づいて補正された対向車100の位置情報に基づいて、ハイビーム用配光パターンP1,P2の配光を補正する(ステップS42)。具体的には、図17に示すように、ランプ制御部43は、対向車100の補正後の位置情報に基づいて、図16に示すハイビーム用配光パターンP1,P2よりも可視光の非照射部(遮光部)NLを狭めるように、ハイビーム用配光パターンP1,P2を補正する。
【0153】
ところで、例えば、いわゆるADB(Adaptive Driving Beam)システムを搭載した車両では、車両に搭載されたカメラにより車両の周囲の対象物(歩行者、前走車、対向車など)の位置情報を取得し、取得した対象物の位置情報に基づいて、当該対象物の少なくとも一部の領域へは可視光を照射しないようにハイビーム用配光パターンの配光を制御している。しかしながら、非照射領域(例えば、図16図17の非照射部NL)内に対象物が存在する場合には、カメラで撮像した可視光の撮像画像からのみでは、対象物の位置情報を正確に把握できない可能性がある。
【0154】
これに対して、上記で説明したように、変形例に係る車両システム2においては、ランプ制御部43が、カメラ6(情報取得部の一例)の撮像画像から取得された車両周辺情報に基づいて取得された車両1の外部の対象物の位置情報を、赤外光源45から照射された赤外光が対象物により反射されてフォトダイオード47で受光された赤外光の戻り光の光強度情報に基づいて補正するように構成されている。上述の通り、非可視光である赤外光については対向車のドライバへのグレア光を考慮する必要はないため、赤外光の配光パターンP5(図13参照)は、可視光のハイビーム用配光パターンP1,P2の制御に関わらず、水平線H-Hの領域の全体を略均一に照射するような配光となっている。そのため、例えば、図16図17に示す可視光の非照射領域NL内において対象物である対向車100の位置や大きさが変化した場合であっても、赤外光の戻り光の光強度情報を用いることで対象物の位置や大きさを正確に認識し、対象物の位置情報を適切に補正することができる。このように本変形例に係る車両システム2の構成によれば、高精度な対象物位置情報を取得することができる。
【0155】
なお、上記変形例においては、ランプ制御部43が、赤外光の戻り光の光強度情報に基づいて対象物の位置情報を補正するように構成されている。しかしながら、車両制御部3が、ランプ制御部43から戻り光の光強度情報を取得し、当該光強度情報に基づいて対象物の位置情報を補正するようにしてもよい。
【0156】
また、ランプユニット42のハイビーム用灯具ユニット42Hは、車両の周辺に可視光を照射するための可視光源44と、車両の周辺の情報を取得するために赤外光を出射する赤外光源45と、可視光源44から照射された可視光を反射しながら回転し、車両から所定距離の位置に配置される仮想鉛直スクリーン上における水平方向に可視光を走査する回転リフレクタ65と、を備えている。これにより、車両周囲を照明するための可視光の配光パターンP1,P2に加えてセンシング用の赤外光の配光パターンP5を簡便な構成で実現することができる。また、可視光源44と赤外光源45とフォトダイオード47とが単一のハイビーム用灯具ユニット42H内に搭載されているため、可視光の照射と赤外光の照射とを両立しながらハイビーム用灯具ユニット42Hの小型化を実現することができる。
【0157】
(第五実施形態)
次に、第五実施形態に係る、赤外光により形成される配光パターンP5の配光制御処理の一例について、図23などを参照して説明する。図23は、ランプ制御部43の光源制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【0158】
第五実施形態に係る配光パターンP5は、カメラ6(可視光カメラ6A)により取得された可視光の撮像画像のうち輝度値が所定値以下の領域に対応する車両の周辺の領域に赤外光が照射されるように、各IR-LED45-1,45-2をその領域に対応するタイミングで点灯することにより、その配光が制御される。これにより、可視光の撮像画像のうち輝度値が所定値以下の領域に対応する車両の周辺の領域に存在する物体の情報を取得することができる。
【0159】
配光パターンP5のように水平線H-Hに沿って照射されて車両前方に存在する物体(対象物)により反射された赤外光は、フォトダイオード47により受光される。マイクロコントローラ50は、計測回路55から受信した赤外光に関する信号(出射光と戻り光に関する信号)に基づいて、物体までの距離、物体の形状、物体の材質などの情報を取得する。これにより、マイクロコントローラ50は、可視光の撮像画像の輝度値が小さいために撮像画像からは判別することが難しい車両前方の歩行者や対向車の存在を検出することができる。マイクロコントローラ50は、赤外光信号に基づいて検出された車両周囲の情報に関する信号を、車両制御部3へ送信する。また、マイクロコントローラ50は、車両制御部3から取得したカメラ6の可視光の撮像画像に基づいて、車両の周辺の物体に関する物体情報(対象物情報)を取得してもよい。そして、マイクロコントローラ50は赤外光信号に基づいて検出された車両周囲の情報に基づいて物体情報を補正し、補正された物体情報を車両制御部3へ送信してもよい。車両1が自動運転モードで走行する場合、車両制御部3は、マイクロコントローラ50から取得した周辺環境情報(赤外光信号に基づいて検出された車両周囲の情報や補正された物体情報)に基づいて、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号のうち少なくとも一つを自動的に生成することができる。
【0160】
次に、図23を用いて、第五実施形態に係るランプ制御部43による配光パターンP5の配光制御について説明する。第五実施形態に係るランプ制御部43が、外光の照度が所定値以上の場合に、カメラ6により取得された可視光の撮像画像のうち輝度値が所定値以下の領域に対応する車両の周辺の領域に赤外光が照射されるように赤外光源45を制御する。外光の照度が所定値以上の場合とは、例えば、昼間において、太陽光の照度が高くなることにより、可視光源44からの可視光の照射がなくても、車両周辺の物体を認識できる程度の輝度値を有する撮像画像が得られる場合である。本明細書では、「昼間」とは日の出から日没の間である。撮像画像のうち輝度値が所定値以下の領域とは、物体を判断することが難しい程度に輝度値が小さい領域である。例えば、太陽と車両周辺に位置する物体(例えば、高い建物)との位置関係により、車両前方に建物の影が形成された場合には、影の部分に対応する撮像画像の領域は輝度値が小さくなり、物体を判断することが難しくなる。特に、冬場では、夏場よりも太陽の位置が低いため、車両前方において影が形成される範囲、すなわち、撮像画像において輝度値が小さくなる領域が大きくなる。
【0161】
まず、ランプ制御部43は、図23のステップS51において、車両制御部3から外光の照度に関する情報を取得し、外光の照度が所定値以上であるかを判断する。外光の照度に関する情報は、例えば、無線通信部10を介して外部から取得することができる。または、車両に搭載された照度センサから外光の照度に関する情報を取得してもよい。ランプ制御部43は、外光の照度が所定値以上である場合(ステップS51においてYES)、ステップS52において、カメラ6により撮像された車両周辺の可視光の撮像画像を車両制御部3から取得する。なお、外光の照度が所定値以上の場合は、可視光源44の点灯が不要となるため、ランプ制御部43は、可視光源44が点灯している場合には、ステップS51とステップS52の間で可視光源44の消灯制御を行う。外光の照度が所定値未満の場合(ステップS51においてNO)、ランプ制御部43は本制御を終了する。
【0162】
ランプ制御部43は、ステップS53において、取得した可視光の撮像画像のうち輝度値が所定値以下の領域が存在するか否かを判断する。撮像画像のうち輝度値が所定値以下の領域が存在する場合(ステップS53においてYES)、ランプ制御部43は、ステップS54において、該当する領域に対応する車両の周辺の領域に赤外光が照射されるように赤外光源45を制御する。撮像画像のうち輝度値が所定値以下の領域が存在しない場合(ステップS53においてNO)、ランプ制御部43は本制御を終了する。
【0163】
なお、ランプ制御部43は、ステップS51およびステップS52において、外光の照度が所定値以上であると判断した後に、撮像画像を取得しているが、これに限られない。ランプ制御部43は、撮像画像を取得した後に、外光の照度が所定値以上であるかを判断してもよい。
【0164】
また、ランプ制御部43は、ステップS53において、撮像画像のうち輝度値が所定値以下の領域が存在しない場合に、また、ステップS54において、車両の周辺の所定の領域に赤外光を照射した後に、本制御を終了していたが、これに限られない。外光の照度が所定値未満になるまで(そして可視光源44が点灯されるまで)、ステップS52からステップS54の処理を繰り返し行ってもよい。または、HMI8等を介して運転者から可視光源44の点灯指示を受け取った場合は、本制御を終了してもよい。
【0165】
また、ランプ制御部43は、カメラ6の撮像領域に可視光を照射する可視光源44が消灯している状態でステップS52からステップS54の処理を行っているが、可視光源44とは別に設けられている他の可視光ランプ(例えば、デイタイムランニングライト)は点灯していてもよい。
【0166】
また、ランプ制御部43は、ステップS51において、外光の照度が所定値以上であるか否かを判断していたが、これに限られない。車両制御部3が外光の照度が所定値以上であるか判断して、所定値以上である場合に、その旨を示す信号をランプ制御部43へ送信する構成としてもよい。この場合、ステップS51は、ランプ制御部43は、車両制御部3から外光の照度が所定値以上を示す信号を受信した場合に、外光の照度が所定値以上であると判断する。
【0167】
以上説明したように、第五実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット42Hにおいて、ランプ制御部43は、車両1の周辺を撮像した撮像画像を取得し、外光の照度が所定値以上の場合に撮像画像のうち輝度値が所定値以下の領域に対応する車両1の周辺の領域に赤外光を照射するように赤外光源45を制御する。これにより、赤外光を用いたセンシング機能が向上した車両用灯具を提供することができる。例えば、車両1が自動運転モードで走行する場合、車両制御部3は、マイクロコントローラ50から取得した赤外光信号に基づいて検出された周辺環境情報に基づいて、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号のうち少なくとも一つを自動的に生成することができる。
【0168】
また、ハイビーム用灯具ユニット42Hは、車両1の周辺に可視光を照射するための可視光源44を備え、回転リフレクタ65は、赤外光源45から照射された赤外光と可視光源44から照射された可視光を反射しながら回転し、車両1から所定距離の位置に配置される仮想鉛直スクリーン上において赤外光および可視光を走査する。これにより、車両周囲を照明するための可視光の配光パターンP1,P2に加えてセンシング用の赤外光の配光パターンP5を簡便な構成で実現することができる。
【0169】
また、可視光源44と赤外光源45とフォトダイオード47とが単一のハイビーム用灯具ユニット42H内に搭載されているため、可視光の照射と赤外光の照射とを両立しながらハイビーム用灯具ユニット42Hの小型化を実現することができる。
【0170】
また、ハイビーム用灯具ユニット42Hにおいては、ランプ制御部43は、可視光の撮像画像に基づいて、車両1の周辺の対象物に関する対象物情報を取得し、可視光の撮像画像のうち輝度値が所定値以下の領域に対応する車両1の周辺の領域に照射された赤外光が対象物により反射された反射光に基づいて、対象物情報を補正している。これによれば、可視光の撮像画像の輝度値が低い領域において正確な対象物情報を得ることができる。
【0171】
なお、上記第五実施形態においては、ランプ制御部43は、車両制御部3を介して外光の照度に関する情報を取得しているが、これに限られない。例えば、ハイビーム用灯具ユニット42H内に照度センサが配置され、ランプ制御部43は、この照度センサより外光の照度に関する情報を取得してもよい。
【0172】
(第六実施形態)
次に、第六実施形態に係る、可視光源44に異常がある場合のランプ制御部43の制御について図24から図26を参照して説明する。図24は、第一配線基板61に設けられた可視光LED44-7に異常がある場合に第一配線基板61に設けられた可視光LEDにより仮想鉛直スクリーン上に形成されるスポット光の像を示す図である。図25は、可視光LED44-7に異常がある場合に第一配線基板61に設けられた可視光LEDから出射された可視光が回転リフレクタ65の回転により走査された状態での仮想鉛直スクリーン上の配光パターンP1Aを示す図である。図26は、可視光LED44-7に異常がある場合に、ハイビーム用灯具ユニットから前方に照射される可視光および赤外光により、仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンP7を示す図である。なお、図26において、可視光のロービーム用配光パターンP4の図示は省略している。
【0173】
可視光源44が正常に機能している場合、可視光源44から出射された可視光が回転リフレクタ65により所定の走査領域に走査されることにより、仮想鉛直スクリーン上に可視光による所定の配光パターンP1,P2(図8,10)が形成される。車両前方にグレア光を抑制すべき物体(対象物)が存在する場合は、対象物の存在により可視光が照射されない非照射領域を含んだ配光パターンP3(図11)が形成される。これに対して、可視光源44に異常がある場合(正常に機能していない場合)、可視光源44から可視光が出射されず、可視光を所定の走査領域に走査することができず、それにより仮想鉛直スクリーン上に可視光による所定の配光パターンが形成されない状態となる。例えば、電源に接続された電源線の断線やLEDドライバ51に接続された信号線の断線等により、可視光源44から可視光が出射されない状態となる。
【0174】
第六実施形態に係るランプ制御部43は、可視光源44に異常があると判断すると、正常に機能している場合に可視光源44の可視光が本来走査されるべき走査領域(すなわち、異常により可視光が走査されない走査領域)に対応して赤外光源45から出射される赤外光を走査する走査領域を設定する。例えば、異常により可視光源44から可視光が出射されない場合、可視光が本来走査されるべき走査領域に対応する仮想鉛直スクリーン上の領域には可視光が照射されない。ランプ制御部43は、異常により可視光が走査されない走査領域に対応する領域に赤外光が照射されるように、赤外光源45の赤外光の走査領域を設定する。そして、赤外光源45から出射された赤外光は設定された走査領域に走査される。なお、以下において、可視光源44の異常により可視光が走査されない領域を「未走査領域」という。また、所定の配光パターンにおいて可視光源44の異常により可視光が照射されない領域を「未走査領域に対応する領域」という。
【0175】
以下に、ランプ制御部43の可視光源44の異常時の動作について説明する。まず、ランプ制御部43は、可視光源44が異常であることを示す信号を受信すると、可視光源44を構成する可視光LED44-1~44-11のうち異常である可視光LEDを特定する。例えば、ランプ制御部43は、各可視光LEDから送信される状態信号(例えば、断線状態を示す信号)に基づいて可視光LEDが異常であるかを判断する。また、車両制御部3が車両1に搭載されたセンサ5等からの周辺環境情報に基づいて可視光LEDの異常を判断し、ランプ制御部43へ異常信号を送信してもよい。
【0176】
図24は、第一配線基板61に設けられた可視光LED44-7が異常である場合、第一配線基板61に設けられた可視光LED44-1~44-9により仮想鉛直スクリーン上に形成されるスポット光の像を示している。可視光LED44-7のスポット光の像S7を除く、スポット光の像S1~S6およびS8~S9が仮想鉛直スクリーン上に形成されている。回転リフレクタ65の回転により走査された状態での仮想鉛直スクリーン上の配光パターンP1Aは、図25に示すように、水平線H-H上の一部(すなわち、スポット光の像S7が走査される部分)が、図8の配光パターンP1と比較して、照度が低くなっている。特にスポット光の像S7のみが照射される部分は可視光が照射されない状態となる。
【0177】
次に、ランプ制御部43は、特定した異常である可視光LEDからの可視光が本来走査されるべき走査領域(すなわち、異常である可視光LEDの可視光の未走査領域)および配光パターンにおいて可視光が本来照射される領域(すなわち、未走査領域に対応する領域)を特定する。ランプ制御部43は、例えば、各可視光LEDの走査領域およびそれにより照射される領域のデータについてはメモリ等に予め記憶している。そして、ランプ制御部43は、特定した未走査領域に対応する領域に赤外光源45から出射された赤外光が照射されるように、赤外光源45からの赤外光の走査領域を設定する。配光パターンに可視光の非照射領域が含まれている場合には、ランプ制御部43は、未走査領域に対応する領域および非照射領域に赤外光源45からの赤外光が照射されるように、赤外光源45からの赤外光の走査領域を設定する。そして、ランプ制御部43は、赤外光源45から出射された赤外光が設定した走査領域に走査されるように、LEDドライバ52を制御する。例えば、ランプ制御部43は、各IR-LED45-1,45-2が、未走査領域に対応する領域および非照射領域に対応するタイミングで点灯するように、LEDドライバ52を制御する。
【0178】
図26は、スポット光の像S7の未走査領域に対応する領域に赤外光源45を構成する各IR-LED45-1,45-2から赤外光が照射されている例を示している。配光パターンP7は、ロービーム用灯具ユニット42Lから照射される可視光のロービーム用配光パターンP4(図示せず)と、ハイビーム用灯具ユニット42Hから照射される可視光のハイビーム用配光パターンP1,P2および赤外光の配光パターンP8(斜めハッチングで示した領域)との合成によって形成される。図26の例では、配光パターンP8は、可視光の非照射領域と未走査領域に対応する領域に照射された赤外光により形成されている。すなわち、配光パターンP8は、車両前方の領域のうち可視光が照射されていない対向車100の下部および水平線H-H上のスポット光の像S7の未走査領域に対応する領域を照射するように形成されている。
【0179】
赤外光源45から出射された赤外光は、車両前方に存在する物体(対象物)により反射されてフォトダイオード47により受光される。マイクロコントローラ50は、電流-電圧変換・増幅回路54を介して計測回路55から受信した赤外光に関する信号(出射光と戻り光に関する信号)に基づいて、物体の情報を取得する。これにより、マイクロコントローラ50は、車両前方の非照射領域および未走査領域に対応する領域における物体(歩行者や対向車)の存在を検出することができる。そして、マイクロコントローラ50は、赤外光信号に基づいて検出された車両前方の対象物(歩行者や対向車)へグレアを与えないように、可視光源44の配光を修正することができる。また、マイクロコントローラ50は、赤外光信号に基づいて検出された車両周囲の情報に関する信号を、車両制御部3へ送信する。車両1が自動運転モードで走行する場合、車両制御部3は、マイクロコントローラ50から取得した周辺環境情報に基づいて、ステアリング制御信号、アクセル制御信号及びブレーキ制御信号のうち少なくとも一つを自動的に生成することができる。また、車両制御部3は、HMI8のディスプレイやモニタ19に赤外光信号に基づいて検出された車両周囲の情報を表示してもよい。これにより、車両1の運転者は、車両前方(未走査領域に対応する領域および非照射領域)の対象物の存在を確認することができる。
【0180】
以上説明したように、第六実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット42Hにおいて、ランプ制御部43は、可視光源44に異常があると判断した場合には、可視光の走査領域に対応して赤外光源45から出射される赤外光の走査領域を設定する。これにより、赤外光源を利用して異常により可視光が照射されない領域の対象物の情報を得ることができる。したがって、車両周囲の状況により可変する照明用の配光に関する性能を維持することができる。
【0181】
ハイビーム用灯具ユニット42Hは、車両の周辺に可視光を照射するための可視光源44と、車両の周辺の情報を取得するために赤外光を出射する赤外光源45と、可視光源44から照射された可視光および赤外光源45から照射された赤外光を反射しながら回転し、車両から所定距離の位置に配置される仮想鉛直スクリーン上における水平方向に可視光を走査する回転リフレクタ65とを備えている。これにより、可視光の配光パターンP1,P2に加えて赤外光の配光パターンP5を簡便な構成で実現することができる。
【0182】
また、ハイビーム用灯具ユニット42Hにおいては、可視光源44の複数の可視光LED44-1~44-11のうち異常があると判断された可視光LED44-7の走査領域に対応する領域に赤外光が照射される。これにより、各可視光LEDの走査領域に対応して制御を行うことができる。
【0183】
(変形例)
次に、第六実施形態の変形例について、図27から図31を参照して説明する。図27は、第六実施形態の変形例に係るハイビーム用灯具ユニット42Hの上面図である。図28は、ハイビーム用灯具ユニット42Hが備える第一配線基板の正面図である。図29は、ハイビーム用灯具ユニット42Hが備える第二配線基板の正面図である。図30は、第二配線基板62に設けられたIR-LED45-3から照射された赤外光により、仮想鉛直スクリーン上に形成される赤外光のスポット光の像を示す図である。図31は、第二配線基板62に設けられたIR-LED45-3から照射される赤外光が、回転リフレクタ65の回転により走査された状態での配光パターンP9を示す図である。尚、変形例の説明では、第六実施形態の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、説明の便宜上、その説明は省略する。
【0184】
第六実施形態では、赤外光源45を構成するIR-LED45-1,45-2により車両前方の対象物に対応した可視光源44の非照射領域に赤外光を照射すると共に可視光源44の異常により可視光が照射されない未走査領域に対応する領域に赤外光を照射している。これに対して、変形例では、赤外光源45は、車両前方の対象物に対応した可視光源44の非照射領域に赤外光を照射するIR-LED45-1,45-2と、可視光源44の異常により可視光が照射されない未走査領域に対応する領域に赤外光を照射するIR-LED45-3とを有している。
【0185】
すなわち、変形例に係る赤外光源45は、図27から図29に示すように、第一配線基板61に設けられたIR-LED45-1,45-2と、第二配線基板62に設けられたIR-LED45-3とを有する。IR-LED45-3は、第二配線基板62の正面視において、可視光LED44-10の左側且つ上方に配置されている。IR-LED45-3から出射された赤外光は回転リフレクタ65で反射されて第二レンズ部68を透過して車両前方に照射される。第一配線基板61に設けられたIR-LED45-1,45-2は、可視光源44の非照射領域に赤外光を照射するように構成されている。第二配線基板62に設けられたIR-LED45-3は、可視光源44の異常により可視光が照射されない未走査領域に対応する領域に赤外光を照射するように構成されている。
【0186】
図30において、像SIR3はIR-LED45-3から照射された赤外光のスポット光の像である。像SIR3は、仮想鉛直スクリーン上の垂直線V-Vの左側に水平線H-Hに沿って照射される。像SIR3のサイズは、図9に示す同じ第二配線基板62に形成された可視光LED44-10,44-11から照射されたスポット光の像S10および像S11のサイズと同じであり、図12に示す像SIR1,SIR2のサイズよりも大きくなるように形成されている。なお、図示は省略するが、右側ヘッドランプに搭載されるIR-LED45-3により形成される像SIR3は、仮想鉛直スクリーン上において垂直線V-Vの右側において水平線H-Hに沿って照射される。回転リフレクタ65の回転により、IR-LED45-3から出射された赤外光のスポット光の像SIR3が左右方向に走査されると、図31に示すような配光パターンP9が形成される。
【0187】
配光パターンP9は、IR-LED45-3から出射された赤外光のスポット光の像SIR3が回転リフレクタ65により左右方向に最大範囲で走査された場合に形成される配光パターンである。本実施形態の配光パターンP9は、可視光の配光パターンP1A(図25)における異常である可視光LEDの可視光の未走査領域に対応する領域に赤外光が照射されるように、その配光が制御されている。
【0188】
なお、未走査領域に対応する領域が非照射領域と重なる場合には、未走査領域に対応する領域において非照射領域とは重ならない部分にIR-LED45-3から出射された赤外光が照射されるように制御してもよい。
【0189】
以上説明したように、第六実施形態の変形例に係るハイビーム用灯具ユニット42Hは、第六実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット42Hと同様の効果を得ることができる。また、第二実施形態に係るハイビーム用灯具ユニット42Hは、非照射領域を照射するIR-LED45-1,45-2と未走査領域に対応する領域を照射するIR-LED45-3とを有している。これにより、非照射領域および未走査領域に対応する領域への赤外光の照射を独立して制御することができる。
【0190】
また、第六実施形態の変形例に係るハイビーム用灯具ユニット42Hでは、IR-LED45-3から照射されたスポット光の像SIR3のサイズは、可視光LED44-10,44-11から照射されたスポット光の像S10および像S11のサイズと同じサイズである。これにより、可視光の照射範囲と略同じ範囲に赤外光を照射することができる。
【0191】
なお、上記第六実施形態およびその変形例においては、可視光源に異常がある例として、電源線の断線等により可視光源から可視光が出射されない場合について説明した。しかしながら、例えば、可視光源44の可視光の出射方向のずれ等により可視光が所定の領域に走査されなかったり、可視光源44から所定の光量の可視光が出射されない場合にも、その状態を可視光カメラ6A等により検出して、可視光源に異常があると判断してもよい。
【0192】
上記第六実施形態およびその変形例においては、赤外光源45は、可視光源44の非照射領域に赤外光を照射すると共に、可視光源の異常により可視光が照射されない未走査領域に対応する領域に赤外光を照射するように構成とされている。しかしながら、赤外光源45は、可視光源44の異常により可視光が照射されない未走査領域に対応する領域にのみ赤外光を照射するように構成されてもよい。この場合でも、赤外光源45により、可視光源の異常により可視光が照射されない未走査領域に対応する領域に赤外光が照射されるため、第一および第二実施形態と同様の効果を有することができる。
【0193】
上記第六実施形態およびその変形例においては、IR-LED44-7の可視光の未走査領域に対応する領域に赤外光源45の赤外光を照射している。しかしながら、IR-LED44-7の可視光の未走査領域に対応する領域において、他のIR-LEDの可視光にも照射されていない領域のみに、赤外光を照射してもよい。
【0194】
上記第六実施形態およびその変形例においては、可視光源44を構成するLEDを消灯することにより非照射領域を形成している。また、非照射領域および未走査領域に対応する領域に対応するタイミングで赤外光源45を構成するLEDを点灯することにより配光パターンP8を形成している。しかしながら、例えば、非照射領域に対応するタイミングで可視光源44から出射された可視光を遮光する部材を設けてもよい。非照射領域および未走査領域に対応する領域以外の領域に対応するタイミングで赤外光源45から出射された赤外光を遮光する部材を設けてもよい。
【0195】
上記第六実施形態およびその変形例においては、車両の周辺環境情報として、車両1に搭載されたカメラ6やレーダ等により取得された周辺環境情報を用いている。しかしながら、例えば、車両1に搭載された他のセンサ等により取得された周辺環境情報を用いてもよい。また、ハイビーム用灯具ユニット42Hに車両の周辺環境情報を取得する可視光カメラ等を搭載してもよい。
【0196】
上記変形例では、IR-LED45-1,45-2は可視光源44の非照射領域に赤外光を照射し、IR-LED45-3は可視光源の異常により可視光が照射されない未走査領域に対応する領域に赤外光を照射する構成とされている。しかしながら、IR-LED45-3が可視光源44の非照射領域に赤外光を照射し、IR-LED45-1,45-2が可視光源の異常により可視光が照射されない未走査領域に対応する領域に赤外光を照射する構成としてもよい。
【0197】
上記変形例では、赤外光源45を構成するIR-LED45-1,45-2は、可視光源44の非照射領域に赤外光を照射する構成とされている。しかしながら、赤外光源45を構成するIR-LED45-1,45-2は、図13に示す配光パターンP5を形成するように赤外光を照射するように構成でもよい。この場合でも、赤外光源45を構成するIR-LED45-3により、可視光源の異常により可視光が照射されない未走査領域に対応する領域に赤外光が照射されるため、第二実施形態と同様の効果を有することができる。
【0198】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0199】
上記の第二、第三、第五実施形態においては、左右それぞれのランプユニット42に設けられたハイビーム用灯具ユニット42Hにおいて、IR-LED45-1およびIR-LED45-2から出射された赤外光の像が水平線H-H上において可視光LED45-1~45-9から出射された可視光の像を挟むようにIR-LED45-1,45-2が配置されているが、この例に限られない。例えば、左側のヘッドランプを構成するランプユニットにおいては、仮想鉛直スクリーン上においてIR-LEDから照射された赤外光が可視光LEDから照射された可視光よりも左側に照射されるように少なくとも一つのIR-LEDが配置され、右側のヘッドランプを構成するランプユニットにおいては、仮想鉛直スクリーン上においてIR-LEDから照射された赤外光が可視光LEDから照射された可視光よりも右側に照射されるように少なくとも一つのIR-LEDが配置されるようにしてもよい。
【0200】
上記の第一から第五実施形態においては、可視光源44や赤外光源45を構成する各LEDの位置は、図3に図示されているものに限られず、図3とは異なる位置に配置されていてもよい。例えば、赤外光源45のIR-LEDは、第二配線基板62に設けられたり、第一配線基板61および第二配線基板62の両方に設けられてもよい。第二配線基板62に設けられたIR-LEDから出射される光は、第一配線基板61に設けられたIR-LEDによるスポット光の像よりも、図9に示すような上下左右に広がったスポット光の像を形成する。このため、上下方向により広い範囲に赤外光を照射することができる。
【0201】
上記の第六実施形態および第六実施形態の変形例においては、可視光源44や赤外光源45を構成する各LEDの位置は、図3および図27に図示されているものに限られず、図3および図27とは異なる位置に配置されていてもよい。また、第一配線基板61および第二配線基板62に配置されている各LEDの数および配置は、図5図6および図28図29に図示されているものに限られず、図5図6および図28図29とは異なる数および配置でもよい。
【0202】
上記の第一から第六実施形態および第六実施形態の変形例においては、非可視光用光源として赤外光を照射する赤外光源45を例にとって説明したが、この例に限られない。例えば、非可視光用光源として、紫外線やX線などの赤外光以外の非可視光線を照射する光源を採用してもよい。
【0203】
上記の第一から第六実施形態および第六実施形態の変形例においては、灯具の一例としてヘッドランプ4に備わるハイビーム用灯具ユニット42Hを例にとって説明した。しかしながら、車両後方に設けられたストップランプやテールランプ等の標識灯として構成されていてもよい。この構成によれば、ストップランプやテールランプとしての配光機能と車両後方の対象物の検知機能とを単一の灯具ユニットで両立することができる。
【0204】
上記の第一から第六実施形態および第六実施形態の変形例においては、ハイビーム用灯具ユニット42H内に、回転リフレクタ65により反射された可視光および赤外光を透過させるレンズ66が設けられている。しかしながら、ハイビーム用灯具ユニット42H内に、必ずしもレンズ66を設ける必要はない。回転リフレクタ65により反射された可視光および赤外光が、レンズを介することなくハイビーム用灯具ユニット42Hの前方に直接照射される構成としてもよい。
【0205】
上記の第一から第六実施形態および第六実施形態の変形例においては、車両前方に照射される赤外光が車両前方に存在する物体に反射された場合の戻り光がハイビーム用灯具ユニット42Hに搭載されたフォトダイオード47により受光されている。しかしながら、赤外光の戻り光を、ヘッドランプ4とは別の箇所に設けられた赤外線カメラ6Bにより撮影し、撮影された赤外光による白黒映像を画像処理部18で処理することにより、車両制御部3は、車両前方の歩行者や対向車の存在を検出するようにしてもよい。また、赤外線カメラ6Bにより撮影された映像を車内に設けられたモニタ19に表示することで、車両1の運転者が車両前方の歩行者や対向車の存在を確認することもできる。
【0206】
本出願は、2019年4月10日出願の日本特許出願2019-74914号、2019年4月10日出願の日本特許出願2019-74915号、2019年4月10日出願の日本特許出願2019-74916号、2019年5月8日出願の日本特許出願2019-88133号、2019年5月8日出願の日本特許出願2019-88134号、2019年5月8日出願の日本特許出願2019-88135号に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
図1
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