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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】電池用途向けのアノード電極組成物
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20231221BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20231221BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20231221BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20231221BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20231221BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20231221BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20231221BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20231221BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/13
H01M4/131
H01M4/36 A
H01M4/36 E
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/485
H01M4/587
H01M4/62 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021557069
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-03
(86)【国際出願番号】 US2020019195
(87)【国際公開番号】W WO2020197670
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-22
(31)【優先権主張番号】62/822,101
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391010758
【氏名又は名称】キャボット コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100212509
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 知子
(72)【発明者】
【氏名】コルシェフ アンドリー
(72)【発明者】
【氏名】ジラード ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】デュパスキエ オーレリアン エル
(72)【発明者】
【氏名】オリャチャ ミオドラグ
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-063955(JP,A)
【文献】特表2015-510666(JP,A)
【文献】特表2014-534626(JP,A)
【文献】特表2015-506062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/139
H01M 4/13
H01M 4/131
H01M 4/36
H01M 4/38
H01M 4/48
H01M 4/485
H01M 4/587
H01M 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性アノード材料、および
カーボンナノ構造体、カーボンナノ構造体の断片および破砕した多層カーボンナノチューブからなる群から選択される少なくとも1種の材料
を含む、電極組成物であって、
活性アノード材料が、グラファイト、ケイ素、SiOx、ケイ素-グラファイトコンポジットまたはチタン酸リチウムを含み、
カーボンナノ構造体またはカーボンナノ構造体の断片が、分岐している、互いに入り込む、絡んでいるおよび/または共通の壁を共有することによって、ポリマー構造を形成する複数の多層カーボンナノチューブをモノマー単位として含み、
破砕した多層カーボンナノチューブが、カーボンナノ構造体に由来し、分岐しており、互いに共通の壁を共有している、電極組成物。
【請求項2】
下記条件のうち1以上を満たす、請求項1に記載の電極組成物
多層カーボンナノチューブの少なくとも1つが、SEMにより決定される場合、2μm以上の長さを有する
多層カーボンナノチューブの少なくとも1つが、200~1000の範囲内の長さ対直径のアスペクト比を有する
SEMにより決定される場合、多層カーボンナノチューブの少なくとも1つの2マイクロメートルの長さに沿って、少なくとも2つの分岐が存在する
少なくとも1つの多層カーボンナノチューブが、分岐点の前の領域に比べて、分岐点の後の領域において観察される壁の数が非対称であることを示す
TEMにより決定される場合、触媒粒子が分岐点またはその近傍に存在しない
【請求項3】
多層ナノチューブが、壁の数を計数するのに十分な倍率においてTEMにより決定される場合、2~30個の共軸ナノチューブを含む、請求項1または2に記載の電極組成物。
【請求項4】
カーボンナノチューブの少なくとも1%が、SEMにより決定される場合、2μm以上の長さを有しており、
長さ対直径のアスペクト比が、200~1000の範囲内にある、かつ/または分岐点の一方の側に比べて、分岐点の他方の側に観察される壁の数が非対称であることを示す、請求項1~3のいずれかに記載の電極組成物。
【請求項5】
ペースト、スラリーまたは固体である、請求項1~4のいずれかに記載の電極組成物。
【請求項6】
乾燥すると、カーボンナノ構造体、カーボンナノ構造体断片および/または破砕した多層ナノチューブを5質量%以下の量で含有する、請求項1~5のいずれかに記載の電極組成物。
【請求項7】
カーボンナノ構造体が、コーティングされているカーボンナノ構造体である、請求項1~6のいずれかに記載の電極組成物。
【請求項8】
コーティングされているカーボンナノ構造体が、ポリウレタンコーティングされているナノ構造体またはポリエチレングリコールコーティングされているカーボンナノ構造体である、請求項7に記載の電極組成物。
【請求項9】
コーティングされているカーボンナノ構造体の質量に対して、コーティング剤の質量が、0.1%~10%の範囲内にある、請求項7に記載の電極組成物。
【請求項10】
乾燥すると、コーティングされているカーボンナノ構造体、コーティングされているカーボンナノ構造体の断片、および/またはコーティングされているカーボンナノ構造体に由来する破砕した多層カーボンナノチューブを5質量%以下の量で含有する、請求項7に記載の電極組成物。
【請求項11】
活性アノード材料を80~99質量%の量で含む、請求項1~10のいずれかに記載の電極組成物。
【請求項12】
カーボンブラック、カーボンナノチューブ、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される、炭素導電性添加物をさらに含む、請求項1~11のいずれかに記載の電極組成物。
【請求項13】
200m2/g以下のBET面積、および少なくとも130mL/100gのOANを有するカーボンブラックを含む、請求項12に記載の電極組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載の組成物を含む電池。
【請求項15】
リチウム遷移金属化合物、ならびにカーボンナノ構造体、カーボンナノ構造体の断片および破砕した多層カーボンナノチューブからなる群から選択される少なくとも1種の材料を含むカソードをさらに備える請求項14に記載の電池であって、
カーボンナノ構造体またはカーボンナノ構造体の断片が、分岐している、互いに入り込む、絡んでいるおよび/または共通の壁を共有することによって、ポリマー構造を形成する複数の多層カーボンナノチューブをモノマー単位として含み、
破砕した多層カーボンナノチューブが、カーボンナノ構造体に由来し、分岐しており、互いに共通の壁を共有している、
電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、35USC119(e)の下、代理人案件番号2018613Pにおいて、その全体がこの参照により本明細書に組み込まれている、2019年3月22日出願の、Anode Electrode Compositions for Battery Applicationsと題する米国仮特許出願第62/822,101号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、一般に、電子デバイスから電気自動車に及ぶ多数の用途向けの電気エネルギー源に使用されている。リチウム-イオン電池は、通常、充電中および放電中にリチウムイオンおよび電子が電極を出入りすることが可能となる配置にある負極および正極を含む。電極に摂食する電解質溶液は、イオンが移動可能な導電性媒体を供給する。両電極間の直接的な反応を防止するため、イオン透過性セパレータを使用して、両電極を物理的かつ電気的に隔離する。稼働中に、電気的接触が両電極に行われて、電子がデバイスを流れて電力を供給し、リチウムイオンは一方の電極から他方の電極に向かって電解質を移動することが可能となる。
正極は、通常、少なくとも1種の電気活性材料および結合材を有する混合物(例えば、ペーストとして施用される)を支持する導電性基材を含む。電気活性材料(例えば、リチウム遷移金属酸化物)は、リチウムイオンを受容および放出することが可能である。結合材であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)は、例えば、電極への機械的完全性および安定性を実現するために使用される。一部の場合、正極はまた、導電性添加物を含む。
大部分の市販のリチウムイオン電池は、インターカレーション機構によってリチウムを取り込むことが可能な材料である、グラファイトを含むアノードを有する。通常、リチウムは、充電サイクルの間にグラファイトアノードに添加されて、電池が使用される際に取り除かれる。グラファイトの考えられる代替物は、チタン酸リチウム、酸化スズ、SiOx(xは、通常、1.04、1.06などである)、およびケイ素などの材料を含んでいる。
アノード組成物は、活性アノード構成成分(グラファイト、ケイ素、SiOxなど)に加えて、結合材構成成分、および電気導電性添加物、例えば、活性材料とは異なる粉末をさらに含むことができる。公知の1種の炭素導電性添加物(carbon conductive additive:CCA)は、カーボンブラック(CB)である。
【発明の概要】
【0003】
進歩がなされているにもかかわらず、既存のアノード組成物は、問題を起こし得る。例えば、重要な充電条件下でグラファイト負極表面への金属リチウム(Li)の被膜形成は、性能劣化を加速し、LIBに対する安全上の問題をもたらす。Li+イオンのグラファイトへのインターカレーションが遅くなると、アノードへのLiの被膜形成が起こり、アノードの分極の増大を引き起こすと考えられている。検討により、リチウムイオンのインターカレーションプロセスは、3つの連続工程:溶媒和されたLi+イオンの電解質中での拡散、界面電荷移動プロセス、および固体電極材料中のLiの拡散を含むことが示されていると思われる。これらの工程のうちのいずれかが減速すると、アノードへのリチウムの被膜形成をもたらす恐れがある。リチウムイオンのインターカレーションプロセスに影響を及ぼして、アノードへのリチウムの被膜形成をもたらす因子には、例えば、低温充電、過充電、高速充電、一様でない電流および電位分布、ならびに長期にわたるサイクル繰り返しが挙げられる。
合金型のアノードは、多くの場合、比較的乏しいサイクル寿命およびクローン効率を示す。これらの効果は、リチウム化および脱リチウム化の間の二相領域の形成に関連し得ると考えられる。この二相領域は、1つの相がもう一方の相よりも大きな体積変化を受けた場合、アノード材料内に内部応力をもたらす恐れがある。この内部応力は、経時的なアノード材料の崩壊をもたらし得る。体積変化はまた、活性アノード材料、導電性粒子および結合材の間の電気的接触の劣化をもたらす恐れもある。ひいては、電気的接触の劣化は、アノードのサイクル寿命にわたり、容量(すなわち、活性アノード材料の単位質量あたりに組み込まれ得るリチウムの量)の低下をもたらし得る。
【0004】
具体例では、ケイ素またはSiOxなどの容量アノード材料は、構造変化および異常な程の大きな体積膨張に関連する、高い非可逆的な容量損失、ならびに放電不良および再充電サイクル繰り返し不良を伴う。構造変化および大きな体積変化は、電極の構造完全性を破壊する恐れがあり、これによりサイクル繰り返し効率が低下する。SiOx-および特にケイ素グラファイトアノードは、サイクル繰り返し時に、大きな寸法変化を示す恐れがあり、これにより、活性材料とCCAとの間の接触の喪失がもたらされる。
改善されたリチウムイオン電池(lithium ion battery:LIB)が継続的に必要とされている。例えば、既存のアノードおよびアノード組成物に関連する欠陥の1つまたは複数に対処するように構成されている負極を有する電池の設計が望ましい。例えば、Li被膜形成に例えば関連する、アノードの劣化を制御し得る、例えばCCAなどの導電性添加物が必要とされている。同様に、とりわけ、低いロード量レベルで供給されると、電池のサイクル繰り返し寿命を改善することができ、かつ総合的なアノード性能に寄与することができる導電性添加物に関心が高い。
【0005】
性能を増強し、電池の不具合を回避する可能性を有するいくつかのCCA材料には、例えば房状の幾何形状を有する導電性カーボンブラック(CB)、およびカーボンナノチューブ(CNT)が挙げられる。
一般に、CCAおよび結合材は、電気エネルギーを発生する電気化学反応に関与しないので、これらの材料により、所与の体積に含まれ得る活性材料の量が効果的に減ると、これらの材料は、電池のある性能特徴(例えば、容量およびエネルギー密度)に負に影響を及ぼし得る。しかし、ある性能レベルを実現するため、CBなどのCCAが、比較的多い量で必要となることがある(例えば、少なくとも1質量%(wt%)のグラファイトアノード)。
CNTは、アノード組成にとって魅力的な添加物材料と考えられ得る。しかし、CNTを用いて操作する場合、いくつかの難事に遭遇し得る。これらには、一部の媒体中での分散の制限および不適切な純度が挙げられる。これらの問題の少なくとも一部は、個々のカーボンナノチューブ同士の間に起こる強力なファンデルワールス力によって引き起こされ、カーボンナノチューブの束状またはロープ状の凝集を引き起こすと考えられる。このような兆候は、期待未満の特性増強および/または一貫性の欠く性能をもたらす恐れがある。多くの場合、カーボンナノチューブの束を個々の十分に分離された部材に解くために利用可能な技法は、元の状態のカーボンナノチューブを用いた場合に予期される強化に比べると、望ましい特性強化に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
リチウムイオン(Li+)電池向けのアノード組成物を調製するためのカーボンナノ構造体(CNS)の使用は、アノード性能に正の影響を及ぼし、上で議論した課題の少なくとも一部に対処することが発見された。本明細書で使用する場合、用語「カーボンナノ構造体」または「CNS」とは、多くの場合、相互に入り込む、分岐している、架橋している、および/または互いに共通の壁を共有することによるポリマー構造として存在し得る、複数のカーボンナノチューブ(CNT)、多層(多層化とも呼ばれる)カーボンナノチューブ(MWCNT)を指す。したがって、CNSは、例えば、そのポリマー構造の基本モノマー単位としてMWCNTなどのCNTを有すると考えることができる。通常、CNSは、CNS成長条件下で、基材(例えば、繊維材料)表面で成長させる。このような場合、CNSにおけるCNTの少なくとも一部は、従来のカーボンナノチューブの森に見られる平行なCNT配列にかなり似た、互いに実質的に平行に並び得る。
【0007】
CNSの使用は、非常に低いレベル(例えば、1質量%未満、および多くの場合、約0.5質量%以下、または0.1質量%以下でさえ)で供給されると、積極的な充電の間に、グラファイトアノード表面のLi被膜形成が低減されるもしくはなくなる、かつ/または電池のサイクル繰り返し寿命が著しく改善されたことが見出された。一部の場合、CNSの使用はまた、低温でのサイクルを改善し得る。グラファイト自体が、良好な電気特性を有することを考慮すると、グラファイトアノード組成物を用いることにより、少量のCNSでさえも観察される改善は、驚くべきことである。特定の説明によって拘泥されることを望むものではないが、この効果は、少なくとも一部は、分岐を維持する断片の形成のためであり、これにより、断片間の優れた接続および強化された導電性接続の生成が可能になったと考えられる。CNSは、グラファイト周辺での電解質保持を増強することがやはり可能であり、これは、低温性能および長期サイクル繰り返しにとって重要である。ケイ素またはSiOx(グラファイトよりも導電性の低い材料)を含有するアノード組成物を用いることにより、CNSの使用に伴う利益の少なくとも一部は、導電性、接続性、およびケイ素の膨張管理の改善によることができる。
【0008】
本明細書に記載されているような導電性添加物は、例えばカーボンブラック(CB)などの従来の添加物を使用すると、一層高いロード量で通常、実現されるアノード特性(例えば、サイクル繰り返しに伴う容量保持)をもたらすことがはやり見出された。比較電極組成物(例えば、導電性添加物としてCBを含有する)に比べると、本明細書に記載されている原理による電極添加物は、同じまたは実質的に同じ電気特性を実現するために一層多い量の使用を通常、必要としない。多くの場合、CNSをベースとする添加物の必要なレベルは、慣用的な炭素添加物の場合に必要なレベルよりも少ない。
別の言い方をすると、CNS出発原料から調製した組成物を使用すると、CBなどの従来の炭素添加物を同じレベルのロード量で配合された比較電極組成物に比べると、少なくとも同じ電気特性、多くの場合、改善された電気特性を示す電極をもたらすであろう。
CNSは、CCAとして使用すると、可能性としてCNS特有の構造のために、元々のCNTよりもいくつかの利点を示すことがある。同様に、CNTとは対照的に、CNSは、工業的規模での取り扱いが用意かつ安全な形態(例えば、粉末)で供給され得る。一部の場合、CNSは、所望の溶媒中で安定な分散液を形成する。
【0009】
したがって、その態様の一部では、本発明は、カーボンナノ構造体を使用することにより調製される組成物に関する。一実施形態では、本組成物は、活性アノード材料、およびカーボンナノ構造体、カーボンナノ構造体の断片および破砕した多層カーボンナノチューブからなる群から選択される少なくとも1種の材料を含む。カーボンナノ構造体またはカーボンナノ構造体の断片は、分岐している、互いに入り込む、絡んでいるおよび/または共通の壁を共有することによって、ポリマー構造において架橋されている、複数の多層カーボンナノチューブを含む。破砕した多層カーボンナノチューブは、カーボンナノ構造体から誘導され、分岐しており、互いに共通の壁を共有している。活性アノード材料は、グラファイト、ケイ素、SiOx、ケイ素グラファイトコンポジットまたはチタン酸リチウムを含むことができる。特定のインプリメンテーションでは、本組成物は、ペースト、スラリーまたは固体の形態にある。
本発明の他の態様は、カーボンナノ構造体、カーボンの断片、および/または例えば、破砕した多層化カーボンナノチューブなどの破砕したカーボンナノチューブを含む、電極および/または電池に関する。
本発明のさらなる態様では、カーボンナノ構造体は、組成物、アノード電極および/または電池を調製するために使用される。
一部の実施形態では、CNS、CNS断片および/または破砕したCNT、例えばMWCNTのうちの1種または複数を含む導電性添加物は、該添加物が、比較的少ない量、例えば1質量%(wt%)未満、および多くの場合、0.5質量%以下、またはさらには0.1質量%以下で組み込まれた場合でさえも、所望の電気特性を付与する。この効果は、少なくとも一部は、分岐を維持する断片の形成のためであり、これにより、断片間の優れた接続および強化された導電性接続の生成が可能になると考えられる。
【0010】
本発明の態様の実施により、ある種の性能を実現するために必要な導電性添加物の量が低減され得、所与の電極体積中に一層多い量の活性電極材料を含有する電極の生成が可能となる。一部の実施形態では、例えば、使用されるCNSは、断片(部分的に断片化されたCNSを含む)および/または破砕したCNT、MWCNTを生じる。これらの構造体は、互いの間の接続の改善をもたらすことができ、これにより電極の導電性が増強される。
構成および部分の組合せの様々な詳細、および他の利点を含めた、本発明の上記の特徴および他の特徴を、これより、添付の図面を参照しながらより具体的に記載され、特許請求の範囲において指摘される。本発明を具現化する特定の方法およびデバイスが、本発明の限定としてではなく、例示として示されていることが理解されよう。本発明の原理および特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々かつ多数の実施形態において使用され得る。
添付の図では、参照文字は、異なる図形全体にわたり同じ部分を指す。図は必ずしも一定の縮尺ではない。代わりに、本発明の原理を例示する際に強調がなされている。図は以下の通りである:
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A-1B】非カーボンナノ構造、または非カーボンナノ構造由来のY形状のMWCNT(図2A)と、カーボンナノ構造の分岐MWCNT(図2B)との間の差異を例示する図である。
図2A-2B】カーボンナノ構造に見出される多層カーボンナノチューブを特徴付ける特徴を示すTEM画像である。
図2C-2D】多数の分岐の存在を示すカーボンナノ構造のSEM画像である。
図3A】成長基材からのカーボンナノ構造の単離後のカーボンナノ構造フレーク材料の例示的描写である。
図3B】フレーク材料として得た例示的カーボンナノ構造のSEM画像である。
図4A】CNS顆粒の一連の光学画像およびSEM画像である。
図4B】CNSを使用して調製したグラファイトアノードの、様々な倍率における、一連のSEM画像である。
図5】実施例1に従って調製したグラファイトだけのアノードを用いるセルに関する、2C充電およびC/2放電速度における、最初の100回のサイクルの場合の電圧放電プロファイルを示す一連のプロットである。
図6】CNSを使用して調製した(実施例3)グラファイトアノードを含むセルに関する、2C充電およびC/2放電速度の場合の、100回のサイクルに関する電圧放電プロファイルを示す。
図7】実施例1~3に従い調製したセルに関する、サイクル繰り返しを伴う容量保持、およびその外挿を示す。セルの各タイプに関する最初の100回のサイクルに関する実際のデータが、黒丸(図5の下側部分)で示されている。
図8】SiOx含有アノードを備えており、かつ(A)0.55質量%のCNSおよび(B)1.5質量%のMWCNT、ならびに導電性添加物として1%のSuper(登録商標)P-Liを含む、セルの場合の容量保持を比較する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、これより、本発明の例示的な実施形態が示されている添付の図面を参照しながら、本発明のこれ以降に一層完全に説明される。しかし、本発明は、多数の異なる形態で具現化されることができ、本明細書において説明されている実施形態への限定と解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が、網羅的かつ完全になるよう、および当業者に本発明の範囲を十分に伝えるよう提供される。
一般に、本発明は、電池用の電極を生成するために使用することができる組成物、該組成物を作製する方法、ならびに電極(例えば、アノード)および電池における組成物の応用に関する。その態様の多くでは、本発明は、リチウムイオン電池に好適な組成物に関する。一例において、目的の電池は再充電可能なLIBである。
【0013】
様々なタイプのリチウムイオン電池の例(カソードを形成するために使用される電気活性材料、多くの場合、インターカレーション化合物の頭字語に準拠する)としては、LCO(コバルト酸リチウム)、LMO(酸化マンガンリチウム)、NCM(リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物)、NCA(リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物)、LCP(リン酸コバルトリチウム)、LFP(リン酸鉄リチウム)、LFSF(フルオロ硫酸リチウム鉄)、LTS(リチウムチタン硫化物)、および当分野で公知であるかまたは今後開発される他のものが挙げられる。これらなどの材料は、本明細書において、「リチウム遷移金属化合物」、例えば、「リチウム遷移金属酸化物」と一般に称される。
一部の実施形態は、導電性添加物からなる、これから実質的になる、またはこれを含む組成物に関する。本組成物は、結合材を含めてまたはこれを含めないで典型的な活性アノード材料と一緒にして、例えば、集電体に適用してアノードを形成することができる、スラリーまたはペーストの形態の、負極組成物を形成することができる。転じて、このアノードは電池を生成するために使用することができる。
【0014】
本組成物は、例えばデンドリマー形状で分岐している、互いに入り込む、絡んでいる、および/または互いに共通の壁を共有することによるポリマー構造で架橋されている、複数のカーボンナノチューブ(CNT)を本明細書において指す用語である、カーボンナノ構造体(CNS、単一のCNS)を使用して調製される。本明細書に記載されている組成物、電極および/または電池を調製するために行われる操作により、CNS断片および/または破砕したCNTが生成し得る。CNSの断片はCNSから誘導され、より大きなCNSと同様に、分岐状をしている、互いに入り込む、絡んでいる、および/または共通の壁を共有することによって、ポリマー構造で架橋されている複数のCNTを含む。破砕したCNTは、CNSに由来し、分岐しており、互いに共通の壁を共有している。
高度に絡んだCNSは、肉眼で見えるサイズであり、そのポリマー構造の基本モノマー単位として、カーボンナノチューブ(CNT)を有すると考えることができる。CNS構造体における多数のCNTの場合、CNT側壁の少なくとも一部は、別のCNTと共有されている。CNSにおける各カーボンナノチューブは、必ずしも、分岐している、架橋されている、または他のCNTと共通の壁を共有する必要はないことが一般に理解されるが、カーボンナノ構造体中のCNTの少なくとも一部は、相互に、かつ/またはカーボンナノ構造体の残部において分岐状の、架橋しているもしくは共通の壁のカーボンナノチューブと互いに入り込むことができる。
【0015】
当分野で公知の通り、カーボンナノチューブ(CNT(単数または複数))は、互いに結合したsp2混成炭素原子からなる少なくとも1つのシートを含んで、円筒形構造または管状構造を形成するハニカム格子を形成する炭素系材料である。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)または多層カーボンナノチューブ(MWCNT)とすることができる。SWCNTは、フラーレンに類似した、sp2混成炭素の同素体と考えることができる。この構造は、6員の炭素環を含む、円筒形の管である。一方、類似のMWCNTは、同心円筒のいくつかの管を有する。これらの同心壁の数は、様々となり得、例えば、2~25またはそれ超となり得る。通常、MWNTの直径は、典型的なSWNTの場合に0.7~2.0nmであることに比べると、10nm以上とすることができる。
【0016】
本発明において使用されるCNSの多くでは、CNTは、例えば、少なくとも2つの共軸カーボンナノチューブを有するMWCNTである。特定の場合において、壁の数を分析するために十分な倍率で、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)により決定される場合、存在する壁の数は、2~30など、例えば:4~30;6~30;8~30;10~30;12~30;14~30;16~30;18~30;20~30;22~30;24~30;26~30;28~30;または2~28;4~28;6~28;8~28;10~28;12~28;14~28;16~28;18~28;20~28;22~28;24~28;26~28;または2~26;4~26;6~26;8~26;10~26;12~26;14~26;16~26;18~26;20~26;22~26;24~26;または2~24;4~24;6~24;8~24;10~24;12~24;14~24;16~24;18~24;20~24;22~24;または2~22;4~22;6~22;8~22;10~22;12~22;14~22;16~22;18~22;20~22;または2~20;4~20;6~20;8~20;10~20;12~20;14~20;16~20;18~20;または2~18;4~18;6~18;8~18;10~18;12~18;14~18;16~18;または2~16;4~16;6~16;8~16;10~16;12~16;14~16;または2~14;4~14;6~14;8~14;10~14;12~14;または2~12;4~12;6~12;8~12;10~12;または2~10;4~10;6~10;8~10;または2~8;4~8;6~8;または2~6;4-6;または2~4の範囲内にあることができる。
【0017】
CNSはポリマーであり、CNTの高度に分岐された架橋したネットワークであるので、個別化されたCNTの場合に観察される化学の少なくとも一部はまた、CNSに対して行われてもよい。さらに、CNTを使用することに多くの場合に伴う魅力的な特性の一部はまた、CNSを組み込んでいる材料において示される。これらには、いくつかの例を挙げると、例えば、導電性、熱可塑性または熱硬化性化合物などのコンポジットに一体化されると良好な引張強度、熱的安定性(時として、ダイヤモンド結晶または面内グラファイトシートの熱的安定性と比べる)および/または化学的安定性を含めた物理特性が含まれる。
しかし、本明細書で使用する場合、用語「CNS」は、「モノマー状」フラーレンなどの個別化された互いに絡んでいない構造に対する同義語ではない(用語「フラーレン」は、中空球体、楕円体、管、例えばカーボンナノチューブおよび他の形状の形態にある炭素の同素体を幅広く指す)。実際に、本発明の多くの実施形態は、そのCNTビルディングブロックの使用とは対照的に、CNSの使用の場合に観察される、または予期される差異および利点を強調している。特定の解釈に拘束されることを望むものではないが、CNSにおけるカーボンナノチューブ間での分岐、架橋および壁の共有を組み合わせると、個々のカーボンナノチューブを同様に使用した場合に問題となることが多いファンデルワールス力が低下または最小化すると考えられる。
【0018】
性能属性に加えて、またはその代替として、CNSの一部である、またはCNSから誘導されるCNTは、いくつかの特徴によって特徴付けることができ、その特徴の少なくとも一部は、上記のCNTを、例えば、普通のCNT(すなわち、CNSから誘導されないCNT、および個別の元の状態のまたは新しいCNTとして供給され得るCNT)などの他のナノ材料と区別することに依存し得る。
多くの場合、CNSに存在するまたはこれから誘導されるCNTは、例えば、約5~約100ナノメートル(nm)の範囲内、例えば、約10~約75nm、約10~約50nm、約10~約30nm、約10~約20nmの範囲内などの、100nm以下という典型的な直径を有する。
特定の実施形態では、CNTの少なくとも1つは、SEMにより決定される場合、2μm以上の長さを有する。例えば、CNTの少なくとも1つは、2~2.25μm;2~2.5μm;2~2.75μm;2~3.0μm;2~3.5μm;2~4.0μm;または2.25~2.5μm;2.25~2.75μm;2.25~3μm;2.25~3.5μm;2.25~4μm;または2.5~2.75μm;2.5~3μm;2.5~3.5μm;2.5~4μm;または3~3.5μm;3~4μm;3.5~4μm、またはそれより高い範囲内の長さを有する。一部の実施形態では、SEMにより決定される場合、CNTの1つ超、例えば、少なくとも約0.1%、少なくとも約1%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40、少なくとも約45%、少なくとも約50%の、または半分を超えることさえある割合などの一部は、2μm超、例えば、上で指定した範囲内の長さを有することができる。
【0019】
CNS中、CNSの断片中、またはCNSに由来する破砕したCNT中に存在するCNTの幾何形状は、高いアスペクト比によって多くの場合、特徴付けられ、長さは、通常、直径の100超であり、ある種の場合、かなり一層高い。例えば、CNS(またはCNS断片)において、CNTの長さ対直径であるアスペクト比は、例えば、200~300;200~400;200~500;200~600;200~700;200~800;200~900;または300~400;300~500;300~600;300~700;300~800;300~900;300~1000;または400~500;400~600;400~700;400~800;400~900;400~1000;または500~600;500~700;500~800;500~900;500~1000;または600~700;600~800;600~900;600~1000;700~800;700~900;700~1000;または800~900;800~1000;または900~1000などの約200~約1000の範囲内にあり得る。
【0020】
CNS、およびCNSから誘導される構造(例えば、CNSの断片または破砕したCNTS)において、CNTの少なくとも1つは、ある「分岐密度」によって特徴付けられることが見出された。本明細書で使用する場合、用語「分岐」とは、単一カーボンナノチューブが、多層(2層以上)の連結した多層カーボンナノチューブへと分岐している特徴を指す。一実施形態は、SEMにより決定される場合、2マイクロメートルの長さのカーボンナノ構造体に沿って、少なくとも2つの分岐が存在することによる分岐密度を有する。3つ以上の分岐も起こり得る。
さらなる特徴(例えば、TEMまたはSEMを使用して検出される)は、CNSから誘導されないY形状CNTなどの構造に比べて、CNSに見出される分岐タイプを特徴付けるために使用することができる。例えば、Y形状のCNTは、分岐の領域(点)において、またはその近傍に触媒粒子を有する一方、このような触媒粒子は、CNS、CNSの断片または破砕したCNTにおいて起こる分岐の領域またはその近傍には存在しない。
【0021】
さらにまたは代替として、CNS、CNSの断片または破砕したCNTにおける分岐の領域(点)において観察される壁の数は、分岐の1つの側(例えば、分岐点の前)からこの領域の他の側(例えば、分岐点の後またはこれを過ぎる)で異なる。本明細書において、壁の数の「非対称性」とも称される、壁の数のこのような変化は、普通のY形状CNTの場合(この場合、分岐点の前の領域と分岐点を過ぎた領域の両方において、同じ数の壁が観察される)には観察されない。
これらの特徴を例示する略図は、図1Aおよび1Bに提示されている。図1Aには、CNSから誘導されない、例示的なY形状CNT11が示されている。Y形状CNT11は、分岐点15またはその近傍に触媒粒子13を含む。領域17および19は、それぞれ、分岐点15の前およびその後に位置している。Y形状のCNT11などのY形状CNTの場合、領域17と19の両方が、図面中、同じ数の壁によって、すなわち2つの壁によって特徴付けられる。
対照的に、CNS(図1B)では、分岐点115において分岐しているCNTビルディングブロック111は、触媒のない領域113において観察される通り、この点またはこの近傍において触媒粒子を含まない。さらに、分岐点115の前、すなわちその先に位置する(または分岐点115の第1の側にある)領域117に存在する壁の数は、領域119(これは、分岐点115に比べて、他の側を過ぎて、この後またはその表面に位置する)における壁の数とは異なる。さらに詳細には、領域117に見出される3つの壁のある特徴は、領域119(図1Bの略図では、これは、2つの壁しか有していない)まで持ち越されず、上記の非対称が生じる。
【0022】
これらの特徴は、図2Aおよび2BのTEM画像、および図2C~2DのSEM画像に強調されている。
一層詳細には、図2AのTEM領域40におけるCNSの分岐は、いかなる触媒粒子も存在しないことを示している。図2BのTEMにおいて、第1のチャネル50および第2のチャネル52は、分岐したCNSに特徴付けられる壁の数が非対称であることを指している一方、矢印54は、壁の共有を示す領域を指す。図2Cおよび2DのSEM領域60および62にそれぞれ、複数の分岐が見られる。
これらの属性の1つ、複数またはすべてが、本明細書に記載されている組成物(例えば、分散液、スラリー、ペースト、固体または乾燥組成物など)、電極および/または電池に遭遇され得る。
一部の実施形態では、CNSは、互いに絡んだおよび/または連結したCNSのネットワークの部分として存在する。このような連結されたネットワークは、CNS間に架橋を含むことができる。
【0023】
CNSを調製するための好適な技法は、例えば、2014年4月3日に公開された、米国特許出願公開第2014/0093728号、米国特許第8,784,937号B2;同第9,005,755号B2;同第9,107,292号B2;および同第9,447,259号B2に記載されている。これらの書類の内容の全体がこの参照により本明細書に組み込まれている。
これらの書類に記載されている通り、CNSは、好適な基材表面に、例えば触媒処理された繊維材料表面で成長させることができる。生成物は、繊維含有CNS材料とすることができる。一部の場合、CNSは、基材から分離されて、フレークを形成する。
【0024】
US2014/0093728に見られるように、フレーク材料(すなわち、有限寸法を有する離散性粒子)として得られるカーボンナノ構造体は、その高度に配列したカーボンナノチューブの絡み合いおよび架橋により、三次元マイクロ構造体として存在する。配列した幾何形状は、迅速なカーボンナノチューブ成長条件(例えば、約2μm/秒~約10μm/秒などの数μm/秒)下で、成長用基材表面でのカーボンナノチューブの形成に反映され、これにより、成長用基材から実質的に垂直なカーボンナノチューブの成長が誘導される。いかなる理論または機構によって拘泥されないが、成長用基材表面でのカーボンナノチューブの成長速度が速いことが、少なくとも一部、カーボンナノ構造体の複雑な構造上の幾何形状となる一因となり得ると考えられる。さらに、CNSのバルク密度は、例えば、カーボンナノチューブ成長を開始するための成長用基材に配設されている、遷移金属ナノ粒子の触媒粒子の濃度を変えることによることを含めた、カーボンナノ構造体の成長条件を調節することによってある程度モジュレートすることができる。
フレークは、例えば、裁断するまたは綿状にする(機械式ボールミル粉砕、磨砕、ブレンドなどを含むことができる操作)化学プロセスまたはそれらの任意の組合せによってさらに加工され得る。
一部の実施形態では、使用されるCNSは、「サイジングされた」または「カプセル封入された」CNSとも本明細書において称される、「コーティングされている」。典型的なサイジングプロセスでは、コーティング剤は、CNSを形成するCNT表面に施用される。このサイジングプロセスは、CNTに非共有結合により結合している部分コーティングまたは完全コーティングを形成することができ、一部の場合、結合材として作用することができる。さらにまたは代替として、サイズは、コーティング(またはカプセル封入)プロセスの後において、既に形成されたCNSに適用され得る。例えば、結合特性を有するサイズを用いることにより、CNSから、より大きな構造体、顆粒またはペレットが形成され得る。他の実施形態では、サイジングに応じた顆粒またはペレットが独立して形成される。
【0025】
コーティング剤の量は様々となり得る。例えば、コーティング剤は、コーティングされたCNS材料の総質量に対して、約0.1質量%~約10質量%(例えば、質量基準で、約0.1%~約0.5%;約0.5%~約1%;約1%~約1.5%;約1.5%~約2%;約2%~約2.5%;約2.5%~約3%;約3%~約3.5%;約3.5%~約4%;約4%~約4.5%;約4.5%~約5%;約5%~約5.5%;約5.5%~約6%;約6%~約6.5%;約6.5%~約7%;約7%~約7.5%;約7.5%~約8%;約8%~約8.5%;約8.5%~約9%;約9%~約9.5%;または約9.5%~約10%の範囲内)の範囲内となり得る。
【0026】
多くの場合、コーティング剤の量(またはサイズ)の制御は、CNS材料自体の特性に及ぼす望ましくない影響を低減または最小限にする。例えば、低いコーティングレベルは、カソード組成物中のCNSまたはCNSにより誘導される(例えば、破砕したCNTのCNS断片)の組み込みにより引き起こされる電気特性を保存する可能性が一層高い。
様々なタイプのコーティング剤が選択され得る。多くの場合、炭素繊維またはガラス繊維をコーティングする際に一般に使用されるサイジング用溶液もまた、CNSをコーティングするために利用することができる。コーティング材料の具体例には、以下に限定されないが、ポリ(ビニルジフルオロエチレン)(PVDF)、ポリ(ビニルジフルオロエチレン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)などのフッ素化ポリマー、ポリイミド、およびポリ(エチレン)オキシド、ポリビニル-アルコール(PVA)、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)などの水溶性結合材、ならびにそれらのコポリマーおよび混合物が含まれる。多くの実装形態では、使用されるCNSは、ポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)またはポリエチレングリコール(PEG)により処理される。
【0027】
例えば、エポキシ、ポリエステル、ビニルエステル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンケトン、ポリフタルアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、フェノール-ホルムアルデヒド、ビスマレイミド、アクリロニトリル-ブタジエンスチレン(ABS)、ポリカーボネート、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、例えば、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブチルゴム、ニトリルゴム、エチレン-酢酸ビニルポリマー、シリコーンポリマーおよびフルオロシリコーンポリマーなどのエラストマー、それらの組合せ物、または他のポリマーもしくはポリマーブレンドなどのポリマーもまた、一部の場合、使用され得る。導電性を増強するため、例えば、ポリアニリン、ポリピロールおよびポリチオフェンなどの導電性ポリマーも使用することができる。
一部の実装形態は、溶媒中のCNS分散液の安定化を支援することができるコーティング材料を使用する。一例において、コーティング剤は、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン、好適なアルコール、水またはそれらの任意の組合せを含む、これらから実質的になる、またはこれらからなる媒体中で、CNSの分散を促進および/または安定化するように選択される。
本明細書に記載されている多くの実施形態は、97%以上のCNT純度を有するCNS材料を使用する。通常、陰イオン性、陽イオン性または金属不純物は、例えば、百万分率(ppm)と非常に低い。多くの場合、本明細書において使用されるCNSは、ファンデルファールス力を和らげるためのさらなる添加物を必要としない。
【0028】
CNSは、緩い粒子材料(例えば、CNSフレーク、顆粒、ペレットなど)の形態で、または液状媒体、例えば分散液、スラリー、ペーストをやはり含む配合物中に、または他の形態で供給され得る。多数のインプリメンテーションでは、使用されるCNSは、いかなる成長用基材も含まない。
一部の実施形態では、CNSは、カーボンナノ構造体が最初に形成される際に、成長用基材から除去した後に、フレーク材料の形態で供給される。本明細書で使用する場合、用語「フレーク材料」とは、有限寸法を有する離散性粒子を指す。図3Aには、例えば、成長用基材からCNSを単離した後の、CNSフレーク材料の例示図が示されている。フレーク構造体100は、約1nm~約35μmの厚さ、特に、約1nm~約500nm(間の任意の値、およびそれらの任意の分数を含む)の範囲にある第1の寸法110を有することができる。フレーク構造100は、約1μm~約750μmの高さ(間の任意の値、およびそれらの任意の分数を含む)の範囲にある第2の寸法120を有することができる。フレーク構造体100は、約1μm~約750μm(間の任意の値、およびそれらの任意の分数を含む)の範囲にあり得る第3の寸法130を有することができる。寸法110、120および130のうちの2つまたはすべてが、同じとすることができるか、または異なることができる。
【0029】
例えば、一部の実施形態では、第2の寸法120および第3の寸法130は、独立して、約1μm~約10μm、または約10μm~約100μm、または約100μm~約250μm、約250~約500μm、または約500μm~約750μmの程度とすることができる。
CNS内部のCNTの長さは、約10ナノメートル(nm)~約750μm(μm)、またはそれより長く様々となり得る。したがって、CNTは、10nm~100nm、10nm~500nm;10nm~750nm;10nm~1μm;10nm~1.25μm;10nm~1.5μm;10nm~1.75μm;10nm~2μm;または100nm~500nm、100nm~750nm;100nm~1μm;100~1.25μm;100~1.5μm;100~1.75μm、100~2μm;500nm~750nm;500nm~1μm;500nm~1μm;500nm~1.25μm;500nm~1.5μm;500nm~1.75μm;500nm~2μm;750nm~1μm;750nm~1.25μm;750nm~1.5μm;750nm~1.75μm;750nm~2μm;1μm~1.25μm;1.0μm~1.5μm;1μm~1.75μm;1μm~2μm;または1.25μm~1.5μm;1.25μm~1.75μm;1μm~2μm;または1.5~1.75μm;1.5~2μm;または1.75~2μmとすることができる。
【0030】
特定の実施形態では、CNTの少なくとも1つは、SEMによって求めると、2μm以上の長さを有する。例えば、CNTの少なくとも1つは、2~2.25μm;2~2.5μm;2~2.75μm;2~3.0μm;2~3.5μm;2~4.0μm;または2.25~2.5μm;2.25~2.75μm;2.25~3μm;2.25~3.5μm;2.25~4μm;または2.5~2.75μm;2.5~3μm;2.5~3.5μm;2.5~4μm;または3~3.5μm;3~4μm;3.5~4μm、またはそれより長い範囲内の長さを有する。
図3Bには、フレーク材料として得られた例示的なカーボンナノ構造体のSEM画像が示されている。図3Bに示されているカーボンナノ構造体は、その高度に配列したカーボンナノチューブの絡み合いおよび架橋により、三次元マイクロ構造体として存在する。配列した幾何形状は、迅速なカーボンナノチューブ成長条件(例えば、約2μm/秒~約10μm/秒などの数μm/秒)下で、成長用基材表面でのカーボンナノチューブの形成に反映し、これにより、成長用基材から実質的に垂直なカーボンナノチューブの成長が誘導される。いかなる理論または機構によって拘泥されないが、成長用基材表面でのカーボンナノチューブの成長速度が速いことが、少なくとも一部、カーボンナノ構造体の複雑な構造上の幾何形状となる一因となり得ると考えられる。さらに、カーボンナノ構造体のバルク密度は例えば、カーボンナノチューブの成長を開始するための成長用基材に配設されている、遷移金属ナノ粒子の触媒粒子の濃度を変えることによることを含めた、カーボンナノ構造体の成長条件を調節することによってある程度モジュレートすることができる。
【0031】
フレーク構造体は、約15,000g/mol~約150,000g/mol(間のすべての値およびその任意の分数を含む)の範囲の分子量を有する、カーボンナノチューブポリマー(すなわち、「カーボンナノポリマー」)の形態のカーボンナノチューブのクモの巣状のネットワークを含むことができる。一部の場合、約200,000g/mol、約500,000g/molまたは約1,000,000g/molを含めて、分子量範囲の上端はさらに一層高くなり得る。より高い分子量は、寸法が長いカーボンナノ構造体に関連し得る。分子量はまた、カーボンナノチューブの主要な直径、およびカーボンナノ構造体内に存在するカーボンナノチューブの壁の数の関数となり得る。カーボンナノ構造体の架橋密度は、約2mol/cm3~約80mol/cm3の間の範囲となり得る。通常、架橋密度は、成長用基材の表面のカーボンナノ構造体の成長密度、カーボンナノ構造体の成長条件などの関数である。開放したクモの巣のような配置で保持されている、多くのCNTを含有する典型的なCNS構造体は、ファンデルワールス力を解除するか、またはその作用を低減することに留意すべきである。この構造体は、一層容易に剥離されることができ、これにより、CNTを分離する、またはCNTを元のCNTとは異なる固有の分岐構造体に分割するという多数の追加の工程が必要となる。
【0032】
カーボンナノ構造体は、クモの巣のような幾何形状である場合、比較的低いバルク密度を有することができる。生成したままのカーボンナノ構造体は、約0.003g/cm3~約0.015g/cm3の範囲の初期バルク密度を有することができる。カーボンナノ構造体のフレーク材料または同様の幾何形状物を生成するためのさらなる強化および/またはコーティングは、バルク密度を約0.1g/cm3~約0.15g/cm3の間の範囲まで押し上げることができる。一部の実施形態では、カーボンナノ構造体の任意選択のさらなる修飾を行い、バルク密度、および/またはカーボンナノ構造体の別の特性をさらに改変することができる。一部の実施形態では、カーボンナノ構造体のバルク密度は、カーボンナノ構造体のカーボンナノチューブ表面にコーティングを形成することによって、および/または様々な材料を含むカーボンナノ構造体の内部に浸透することによってさらに修飾され得る。カーボンナノチューブのコーティングおよび/またはカーボンナノ構造体の内部への浸透は、様々な用途において使用するための、カーボンナノ構造体の特性をさらに調節することができる。さらに、カーボンナノチューブ表面にコーティングを形成すると、望ましくは、カーボンナノ構造体の取り扱いが容易になり得る。さらなる圧縮により、バルク密度を約1g/cm3である上限値まで高めることができ、カーボンナノ構造体への化学修飾により、バルク密度は約1.2g/cm3という上限値まで高まる。
【0033】
CNS材料は、上記のフレークに加えて、顆粒、ペレットとして、または約1mm~約1cm、例えば、約0.5mm~約1mm、約1mm~約2mm、約2mm~約3mm、約3mm~約4mm、約4mm~約5mm、約5mm~約6mm、約6mm~約7mm、約7mm~約8mm、約8mm~約9mmまたは約9mm~約10mmの範囲内の典型的な粒子サイズを有する、緩い粒子材料の他の形態で供給され得る。
使用することができるCNS材料を特徴付けるバルク密度は、約0.005g/cm3~約0.1g/cm3、例えば、約0.01g/cm3~約0.05g/cm3の範囲内とすることができる。
商業的には、利用することができるCNS材料の例は、Applied Nanostructured Solutions,LLC(ANS)(Massachusetts、米国)によって開発されたものである。
【0034】
本明細書において使用されるCNSは、様々な技法によって特定および/または特徴付けることができる。透過型電子顕微鏡(TEM)および走査型電子顕微鏡(SEM)などの技法を含む電子顕微鏡法は、例えば、存在する壁の指定数の度数、分岐、触媒粒子の存在などの特徴に関する情報を提供することができる。例えば、図2A~2Dを参照されたい。
ラマン分光法は、不純物に関連するバンドに注意を向けることができる。例えば、Dバンド(約1350cm-1)は、アモルファス炭素に関連する。Gバンド(約1580cm-1)は、結晶性グラファイトまたはCNTに関連する。G’バンド(約2700cm-1)は、Dバンドの周波数の約2Xで起こることが予期される。一部の場合、熱質量分析(TGA)によってCNSとCNTと間の構造を区別することが可能となり得る。
一部の実施形態では、CNSは、例えばCBおよび/または個別化された元の状態のCNT、すなわち、例えば加工中にCNSから生成もしくは誘導されないCNTなどの別のCCAと連携して利用される。
【0035】
多くの場合、使用されるCB粒子は、約200、180、160、140、120、100、80、60または50m2/g以下のブルナウアー-エメット-テラー(BET)表面積を有する。具体例では、CB粒子は、約200~約180m2/g;約200~約160m2/g;200~約140m2/g;約200~約120m2/g;約200~約100m2/g、約200~約80m2/g;約200~約60m2/g;約200~約50m2/g;または約180~約160m2/g;約180~約140m2/g;約180~約120m2/g;約180~約100m2/g、180~約80m2/g;約180~約60m2/g;180~約50m2/g;または約160~約140m2/g;約160~約120m2/g;約160~約100m2/g、160~約80m2/g;約160~約60m2/g;160~約50m2/g;または約140~約120m2/g;または約140~約100m2/g、140~約80m2/g;約140~約60m2/g;140~約50m2/g;または約120~約100m2/g、120~約80m2/g;約120~約60m2/g;120~約50m2/g;または約100~約80m2/g;約100~約60m2/g;100~約50m2/g;または約80~約60m2/g;80~約50m2/g;または約60~約50m2/gの範囲内にあるBETを有する。本明細書において開示されているBET表面積の値はすべて、「BET窒素表面積」を指し、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、ASTM D6556-10によって決定される。
【0036】
好適なCBは、少なくとも130mL/100g、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240または250mL/100gの油吸着数(OAN)を有することができる。例示的なCBは、約130~約150mL/100g;約130~約170mL/100g;約130~約190mL/100g;約130~約210mL/100g;約130~約230mL/100g;130~約250mL/100gもしくはそれより高い;または約150~約170、約150~約190;約150~約210;約150~約230mL/100g;約150~約250mL/100gもしくはそれより高い;または170~約190mL/100g;約170~約210;約170~約230mL/100g;約170~約250mL/100gもしくはそれより高い;または約190~約210mL/100g;約190~約230mL/100g;約190~約250mL/100gもしくはそれより高い、または約210~約230mL/100g;約210~約250mL/100gもしくはそれより高い;または約230~約250mL/100gもしくはそれより高い範囲内のOANを有する。本明細書において引用されているOAN値はすべて、ASTM D2414-16に記載されている方法によって決定される。
カーボンブラック粒子はまた、ASTM D6556-10によって決定することができる特性である、その統計学的厚さ比表面積(STSA)によって特徴付けることができる。所与のカーボンブラックに関すると、一部の場合、そのSTSAとそのBET表面積との比(STSA:BET比)を指定することも興味深いものとなり得る。この用途の目的に関すると、カーボンブラック粒子のSTSA:BET比は、約0.3~約1の範囲内にあり得る。
【0037】
結晶性ドメインは、ラマン分光法によって決定される、La晶子サイズによって特徴付けることができる。Laは、43.5×(Gバンドの領域/Dバンドの領域)と定義される。晶子サイズは、黒鉛化の程度の指標をもたらすことができ、この場合、高いLa値ほど、黒鉛化の程度が高いことに相関する。Laのラマン測定は、Gruber et al., "Raman studies of heat-treated carbon blacks," Carbon Vol. 32 (7), pp. 1377-1382, 1994に基づいた。炭素のラマンスペクトルは、それぞれ、「D」バンドおよび「G」バンドとして表される、約1340cm-1および1580cm-1に2つの主要な「共鳴」バンドを含む。Dバンドは、無秩序なsp2炭素に起因し、Gバンドは、グラファイト炭素または「秩序のある」sp2炭素に起因すると一般に考えられている。経験的手法を使用して、G/DバンドとX線回折(XRD)により測定されるLaの比は高度に相関し、回帰分析により、経験的関係がもたらされる:
a=43.5×(Gバンドの領域/Dバンドの領域)
(式中、Laは、オングストロームで計算される)。したがって、より高いLa値ほど、一層秩序のある結晶性構造であることに相当する。
【0038】
一部の実施形態では、カーボンブラックは、35Å以下、例えば、25Å~35ÅのLa晶子サイズを有する。La晶子サイズは、例えば、以下の範囲:25~33Å、または25~31Å、または25~29Å、または25~27Å、または27~35Å、または27~33Å、または27~31Å、または27~29Å、または29~35Å、または29~33Å、または29~31Å、または31~35Å、または31~33Å、または33~35Åの1つを有することができるか、またはこれを含むことができる。ある種の実施形態では、La晶子サイズは、33Å以下、または31Å以下、または29Å以下、または27Å以下とすることができる。
【0039】
結晶性ドメインは、Lc晶子サイズによって特徴付けることができる。Lc晶子サイズは、銅管を用いるX線回折計(PANalytical X’Pert Pro、PANalytical B.V.)、45kVの管電圧、および40mAの管電流を使用する、X線回折により決定した。カーボンブラック粒子の試料は、試料ホルダー(回折計の付属品)に詰め、測定は、0.14°/分の速度で、10°~80°の角度(2θ)範囲にわたり行った。ピーク位置および半値全幅の値は、回折計のソフトウェアによって計算した。測定角度の較正のため、六ホウ化ランタン(LaB6)をX線標準品として使用した。得られた測定値から、Lc晶子サイズはシェラーの式を使用して決定した:Lc(Å)=K*λ/(β*cosθ)(式中、Kは、形状因子定数(0.9)であり、λは、Cu Kα1の特徴的なX線の波長(1.54056Å)であり、βは、ラジアンでのピーク半値幅であり、θは、測定角度のピーク位置(2θ)の半分を採用することにより決定される)。
一部の実施形態では、カーボンブラックは、27Å以下、例えば、15Å~27ÅのLc晶子サイズを有する。Lc晶子サイズは、例えば、以下の範囲:15~25Å、または15~23Å、または15~21Å、または15~19Å、または15~17Å、または17~27Å、または17~25Å、または17~23Å、または17~21Å、または17~19Å、または19~27Å、または19~25Å、または19~23Å、または19~21Å、または21~27Å、または21~25Å、または21~23Å、または23~27Å、または23~25Å、または25~27Åの1つを有することができるか、またはこれを含むことができる。ある種の実施形態では、Lc晶子サイズは、25Å以下、または23Å以下、または21Å以下、または19Å以下、または17Å以下とすることができる。
【0040】
カーボンブラック粒子は、高い%結晶化度によって示される通り、高い黒鉛化度を有することができ、結晶化度は、ラマン測定からGバンドの領域とGおよびDバンドの領域との比(IG/IG+D)として得られる。ある種の実施形態では、カーボンブラック粒子は、ラマン分光法により決定される場合、約25%~約45%の範囲の結晶化度(IG/IG+D)を有する。%結晶化度(IG/IG+D)は、例えば、以下の範囲:25%~43%、25%~41%、25%~37%、25%~39%、25%~35%、25%~30%、25%~28%;または30%~45%、30%~43%、30%~39%、30%~35%;または35%~45%、35%~41%、35%~39%;または37%~45%、37%~43%、37%~41%;または39%~45%、39%~43%;または41%~45%または41%~43%の1つを有することができるか、またはこれを含むことができる。
これらの公知の特性および/または他の特性によって特徴付けられる、ならびに当業者によって認識されるいくつかのCBの規格が、表1中の規格A~Fとして示されている。
【0041】
【表1】

【0042】
利用することができる好適なCB粒子は、市販の粒子とすることができる。例には、Cabot Corporationから入手可能なLITX(登録商標)50、LITX(登録商標)66、LITX(登録商標)200、LITX(登録商標)300、LITX(登録商標)HPおよびLITX(登録商標)500カーボンブラック粒子;Imerys製のC-NERGY(商標)C45、C-NERGY(商標)C65およびSUPER P(登録商標)製品;Denka製のLi-400、Li-250、Li-100およびLi-435製品;ならびにKetje製のEC300製品が含まれる。
【0043】
CNSと連携して使用することができる他の材料は、例示的なCNTを記載している規格L-N(以下の表2)によって例示されている。
【表2】


表2に提示されている値は、通常、CBに関して上で記載した技法を使用して決定される。
【0044】
多くの状況では、CNS材料(例えば、フレーク、ペレット、顆粒の形態)は、液体媒体と組み合わされて、またはその存在下で供給される。一般に、液体媒体は、任意の液体、例えば、本明細書に記載されている組成物の構成物質を用いて使用するのに好適であり、かつ所期の電極を製造するために使用することが可能な溶媒とすることができる。溶媒は、無水、極性および/または非プロトン性とすることができる。一部の実施形態では、溶媒は、高い揮発性を有し、したがって、製造の間、溶媒を容易に除去することができ(例えば、溶媒蒸発させる)、これにより、乾燥時間および製造費用を低減することができる。好適な例には、以下に限定されないが、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン、好適なアルコール、水またはそれらの任意の組合せが含まれる。
一部の場合、本組成物は、例えば、1種もしくは複数の分散剤(例えば、セルロース系分散剤)、および/または1種もしくは複数の添加物、通常、無水マレイン酸ポリマーなどの電気的に非導電性の添加物をさらに含む。
【0045】
分散剤は、例えば、電池の電極を製造するため、組成物の実用的な加工を可能にするほど十分に低い粘度に組成物を維持すると同時に、溶媒中でCNSの分散を促進することができる材料(例えば、立体障害機構および/または静電気帯電機構による)を一般に含む。一部の実施形態では、CNSを含む組成物の場合、分散剤、ポリマーおよび溶媒は、レオメータによって求めると、450s-1のせん断速度において200センチポアズ(cP)以下、例えば、450s-1のせん断速度において少なくとも30cP、または450s-1のせん断速度において50cP~140cPの粘度を有する。様々な実施形態では、製造中に効率よく適用されるには濃厚すぎるまたは粘度が高すぎる泥状物とは対照的に、本組成物は、電極を形成するために導電性基材に容易に塗布することができるか、またはコーティングすることができる、スラリーまたはペーストとして記載することができる。分散剤は、CNS材料を分散させるその能力に加えて、好ましくは、熱的に安定である、電気化学的に不活性である、および/またはCNS材料の導電性と最小限に相互作用する。熱的に安定なまたは非揮発性の分散剤は、分散剤を除去および/または分解することなく、電極製造の間に溶媒(例えば、N-メチルピロリドン、水など)を除去および再利用することが可能である。「電気化学的に不活性」とは、分解が電池の性能に負に影響を及ぼす恐れがあるので、分散剤が、電池の通常の使用の間、安定である(例えば、電池の作動電圧以下において、上記のような分解または酸化を受けない)ことを意味する。さらに、分散剤は、CNSフレーク、顆粒、ペレットなどの少なくとも一部をコーティングして粒子を分散させるので、分散剤は、粒子に利用可能な導電性接触表面を妨害するか、またはこれを低下させる。CNS粒子の導電性を最小限に妨害する分散剤を選択することが好ましい。好適な分散剤の例には、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(プロピレンカーボネート)、セルロース系分散剤(メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースなど);ポリ(カルボン酸)(ポリ(アクリル酸)など)、ポリアクリレート、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(アクリルアミド)、アミドワックス、スチレン無水マレイン酸樹脂、オクチルフェノールエトキシレート、および当分野で公知の他のものが含まれる。本組成物は、分散剤のうちの1種の組成物、または分散剤の複数の様々な組成物を含むことができる。
【0046】
組成物中の分散剤の濃度は、使用される分散剤の組成、ならびにCNS、ポリマーおよび溶媒の特定のタイプおよび濃度に応じて、様々になり得る。一部の実施形態では、分散剤の濃度は、質量基準で、分散剤とCNS材料の比として最良に表される。この質量比は、3:100~50:100の範囲とすることができ、例えば、以下の範囲:3:100~40:100、または3:100~30:100、または3:100~20:100、または3:100~10:100、または10:100~50:100、または10:100~40:100、または10:100~30:100、または10:100~20:100、または20:100~50:100、または20:100~40:100、または20:100~30:100、または30:100~50:100、または30:100~40:100、または40:100~50:100のうちの1つを有することができるか、またはそれを含むことができる。
【0047】
CNS材料は、例えば、従来の混合装置を使用する好適な混合技法によって、分散剤が存在してもよい状態で、液体と一緒にされ得る。特定の実施形態では、構成物質はブレンドされて、例えば、組成物、溶液または分散液を形成する。本組成物は、溶媒中、例えば、約0.25~約5質量%、例えば、約0.25~約2.5質量%またはそれより高いCNSの濃度によって特徴付けることができる。例示的な例では、質量%での濃度は、約0.25~約0.5、約0.5~約0.75、約0.75~約1.0、約1.0~約1.25、約1.25~約1.50、約1.50~約1.75、約1.75~約2.0、約2.0~約2.25、約2.25~約2.5、約2.5~約2.75、約2.75~約3.0、約3.0~約3.25、約3.25~約3.5、約3.5~約3.75、約3.75~約4.0、約4.0~約4.25、約4.25~約4.5、約4.5~約4.75または約4.75~約5の範囲内にある。溶媒中のCNSの他の濃度を使用することができる。
【0048】
例えば元の形態の、普通の個別化されたCNTを使用する普通の溶液または分散液とは異なり、CNSは、特に、顆粒またはペレットの形態のコーティング後のCNSとして供給されると、安定な分散液を生じることができる。一部の実施形態では、安定な分散液は、溶媒として水を用いた場合でさえも、安定化界面活性剤の非存在下で実現することができる。他の実施形態は、湿式加工の間、溶媒を水と組み合わせて利用する。使用することができる溶媒の例には、以下に限定されないが、イソプロパノール(IPA)、エタノール、メタノールおよび水が含まれる。
一部の場合、分散液を調製するために使用される技術は、個別化した形態で分散液全体にわたり(例えば、均一に)分配されるCNS由来の種、例えば、「CNS断片」および/または「破砕したCNT」を生成する。これらのサイズがより小さいことを除いて、CNS断片(用語は部分的に断片化されたCNSも含む)は、無処理のCNSの特性を一般的に共有し、上に記載されているように、電子顕微鏡法および他の技術で同定することができる。破砕したCNTは、CNS内でのCNT間の架橋が、例えばせん断の施用下で破壊された場合に形成され得る。CNS由来(生成または調製される)の、破砕したCNTは分岐であり、共通の壁を互いに共有する。
【0049】
CNS材料、またはCNSから調製された組成物、例えば上記のような分散液からなる、または実質的になる組成物は、他の成分と一緒にされる。この組成物は、例えば、リチウムイオン電池などの、いくつかの数のエネルギー貯蔵デバイスの生成に使用することができる。一例として、本組成物は、リチウム-イオン電池用の電極(例えば、アノード)組成物を生成するために使用される。例えば、本組成物は、特定のタイプのアノードに特異的な電気活性材料(構成成分)と一緒にされ得る。
多くのインプリメンテーションでは、活性アノード材料は、グラファイト、例えば天然グラファイト、人工グラファイト、または両者のブレンドである。使用することができる市販のタイプのグラファイトは、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチベースの炭素繊維(MCF)、蒸気成長炭素繊維(VGCF)、塊状人造黒鉛(MAG)、天然グラファイトなどを含む。他のインプリメンテーションでは、使用される活性アノード化合物は、ケイ素を含む、これから実質的になる、またはこれからなる。一例では、活性アノード材料は、ケイ素-グラファイトコンポジット、すなわちナノケイ素(Si)またはSiOx粒子を含有するグラファイトである。
【0050】
本明細書に記載されている原理はまた、例えば、公知のまたは現在、探索されているもの、または今後開発されることになるものなどの、他の活性アノード材料と共に使用され得る。例として、これらに限定されないが:(a)インターカレーション/デインターカレーション材料(例えば、炭素ベース材料、多孔質炭素、カーボンナノチューブ、グラフェン、TiO2、Li4Ti512など);(b)合金/脱成分腐材料(例えば、Si、SiOx、ドープしたSi、Ge、Sn、Al、Bi、SnO2、など);および(c)変換材料(例えば、遷移金属酸化物(Mnxy、NiO、Fexy、CuO、Cu2O、MoO2、など)、金属硫化物、金属リン化物および式Mxy、(式中、X=S、P、Nである)で表される金属窒化物)が挙げられる。
活性のあるアノード材料、例えば、グラファイト、ケイ素、チタン酸リチウム(Li4Ti512は、多くの場合「LTO」とも呼ばれる)、SiOx、ケイ素グラファイト複合体、などの濃度は、エネルギー蓄積デバイスの特定のタイプに応じて変動し得る。例示的な例では、活性アノード構成成分は、電極組成物中に、(ドライ)電極組成物の総質量に対して、少なくとも80質量%、例えば、少なくとも85、90または95質量%の量で、例えば、電極組成物の総質量に対して80質量%~99質量%の範囲、例えば、約80~約85質量%、約85~約88質量%、約88~約90質量%、約90~約92質量%、約92~約95質量%約95~約97質量%、または約97~約99質量%の範囲の量で存在する。
【0051】
一部の実施形態では、電極組成物は、例えば、形成された電極の機械的特性を増強するために使用される1種または複数の結合剤を含有する。例示的な結合剤材料として、これらに限定されないが、フッ化ポリマー、例えば、ポリ(ビニルジフルオロエチレン)(PVDF)、ポリ(ビニルジフルオロエチレン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)、ポリイミド、および水溶性結合剤、例えば、ポリ(エチレン)オキシド、ポリビニル-アルコール(PVA)、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、およびコポリマーおよびこれらの混合物が挙げられる。他の可能な結合剤として、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、ならびにフルオロゴムおよびコポリマー、ならびにこれらの混合物が挙げられる。例示的な例では、活性のあるアノード材料は、グラファイトであり、結合剤はSBRを有するPVDFまたはCMCのいずれかである。
結合剤は、アノード組成物中に約1~約20質量%、例えば、約1~2、2~3、3~4、4~5、5~6、6~7、7~8、8~9、9~10、10~11、11~12、12~13、13~14、15~16、16~17、17~18、18~19または19~20質量%の量で存在することができる。
【0052】
一部のインプリメンテーションでは、LIB向けのグラファイト負極に使用するなどのドライ電極組成物に関するCNSロード量は、例えば、約5質量%以下、多くの場合、約2質量%以下、例えば、1.9、1.8、1.7または1.6質量%未満である。他の実施形態では、例えば、LIB用のグラファイトアノードに使用されているドライ電極組成物に対して、CNSロード量は、例えば、1.5質量%以下、例えば、少なくとも1.4、1.3、1.2、1.2、1.0、0.95、0.90、0.85、0.80、0.75、0.70、0.65、0.60、0.55、0.50、0.45、0.40、0.35、0.30、0.25、0.20、0.15または0.10質量%である。多くのインプリメンテーションでは、リチウム電池向けのグラファイトアノードに使用するなどのドライ電極組成物に関するCNSロード量は、0.5質量%以下、例えば、約0.1~約0.2、約02~約0.3、約0.3~約0.4または約0.4~約0.5質量%の範囲内などの約0.5質量%~0.1質量%の範囲内にある。他の実施形態は、約2~約5質量%の範囲内のロード量、例えば少なくとも約2.25、2.5、2.75、3.0、3.25、3.5、3.75、4.0、4.25、4.5または4.75となるロード量を使用する。
【0053】
多くのLIBの場合、CNSロード量は、例えば、他のCCA、CBの場合に必要なロード量よりも少ない。多くの場合では、電極におけるCCAとして使用され、比較試料を調製するために使用することができるCB粒子は、50m2/gより大きなBrunauer-Emmett-Teller(BET)表面積、および150mL/100gより大きな油吸着数(OAN)を有する。当業者によって公知のおよび認識されるこれらの特性ならびに他の特性によって特徴付けられるCBの規格が、表3中の規格I~IVとして示されている。アノード組成物において使用することができる別のタイプのCCAは、規格V(例示的なCNTを記載している)によって例示される。
【0054】
【表3】


比較試料を調製するためにCCAとして使用することができる好適なCB粒子は、例えば、市販の粒子とすることができる。例には、Cabot Corporationから入手可能なLITX(登録商標)50、LITX(登録商標)66、LITX(登録商標)200、LITX(登録商標)300およびLITX(登録商標)HPカーボンブラック粒子;Imerys製のC-NERGY(商標)C45、C-NERGY(商標)C65およびSUPER P(登録商標)製品;Denka製のLi-400、Li-250、Li-100およびLi-435製品;ならびにKetjen製のEC300製品が含まれる。
【0055】
電極組成物は、上記の構成物質を一緒にすることによって(例えば、一様に混合することによって)調製することができ、これは、混合物、特に均一な混合物を得るよう設計された任意の順序で添加され得る。好適な混合技法は、機械式撹拌、振とう、撹拌などを含む。
一例では、電極(例えば、アノード)組成物は、CNS、またはCNS出発原料を使用して調製される組成物からなる、これから実質的になる、またはこれらを含む組成物を、電気活性なアノード構成成分、例えばグラファイトと共に均一に散在させることによって(例えば、一様に混合することによって)作製される。別の例において、結合材は、CNS含有組成物およびグラファイトまたは別の好適な活性アノード構成成分と共に均一に散在させる。
CNSは、例えば、顆粒、ペレットまたはフレークなどの緩い粒子材料として、ある形態で供給されると、活性電極材料(例えば、グラファイト、ケイ素、SiOxなど)を含有するスラリーに直接、組み込まれ得る。
【0056】
他の実施形態では、緩いCNS粒子からなるペレット、顆粒、フレークまたは他の形態は、液体媒体、例えばPVDF中、またはCMCおよび/もしくはSBRの水性配合物中で最初に分散されて、CNS断片(部分断片化CNSを含む)および/または破砕したCNTが生成する。分散液は、例えば、コーティングされていないCNS、PUもしくはPEGコーティングされているCNS、または任意の他のポリマー結合材のコーティングを有するCNSなどの出発原料から調製することができる。一インプリメンテーションでは、例えば、電気活性材料であるグラファイトは、例えば、CMCの水性結合材配合物、および/もしくはSBR、またはNMPをベースとする配合物(PVDFを含む)などの液状結合材の存在下で、CNC顆粒、ペレット、フレークなどの混合物に添加される。
分散液中に存在する例示的CNS断片サイズは、約0.5~約20μmの範囲内、例えば、約0.5~約1μm;約1~約5μm;約5~約10μm;約10~約15μm;または約15~約20μmの範囲内にあることができる。一部の場合、断片サイズを過多に、例えば、0.5μm未満まで減少させることは、利用するCNSに関連する電気的特性を落とす可能性がある。
【0057】
得られた電極組成物は、アノード電気活性材料、CNSベースの導電性添加物、分散剤(存在する場合)、非導電性添加物(存在する場合)、溶媒および結合材(存在する場合)を一緒にしたペーストまたはスラリーの形態をとることができる。他の実施形態では、電極組成物は、ペーストまたはスラリーから溶媒を除去することによって形成した固体である。使用することができる乾燥技法には、空気乾燥、加熱(例えば、好適なオーブン中)などが含まれる。
電池電極は、電極組成物、例えば、上記に記載されているアノード組成物を、例えば、ペーストの形態で、導電性基材(例えば、アルミニウムまたは銅集電体)に施用し、これに続いて溶媒を除去することにより形成することができる。ペーストは、例えば、ドクターブレードコーティング、リバースコンマバーコーティングまたは押出しなどの技法により施用することができる。
一部のインプリメンテーションでは、ペーストは、粘度がそれほど高くないペースト(例えば、一層少ない固体ロード量を有する)を用いた場合にもたらされ得る、固有の欠損(例えば、割れ)の形成を最小限にしながら、基材表面に堆積することが可能な程十分に多い固体ロード量(すなわち、高濃度の固体)を有する。さらに、一層多い固体ロード量により、必要な溶媒およびその除去の量が低減される。
溶媒は、周囲温度、または低熱条件下、例えば、20℃~100℃の範囲の温度のどちらか一方で、ペーストを乾燥することによって除去される。堆積させた電極/集電体は、所望の寸法へと裁断することができ、次いで、カレンダー加工されてもよい。
【0058】
調製プロセスに関する1つの例示的な手法は、以下の工程:CNSを湿潤して均一にすること;任意に湿潤CNSを事前分散化すること;湿潤したまたは事前に分散させたCNSをグラファイトと一緒にして、分散液を形成すること;CNS-グラファイト分散液を結合材と一緒にして、CNS、グラファイトおよび結合材を含有する最終分散液(例えば、ペーストまたはスラリーの形態)を調製すること;この分散液をコレクタ(ホイル)表面でキャストし、その後に乾燥することの一部またはすべてを含むことができる。
一具体例では、14mg/cm2となるコーティング面積のロード量を目標とするアノードであって、0.5質量%のCNS(CNS断片および/または破砕したCNTなどのCNS由来構成成分を含む)、95.5質量%のグラファイトおよび4%のCMC/SBR(2:1)結合材を含有する上記のアノードは、以下のプロトコールにより生成される。CNSは、カルボキシメチルセルロース(CMC)の水溶液と一緒にして、数(例えば、12)分間、混合して(例えば、Thinkyプラネタリーミキサーの使用)ミル粉砕し、次いで、グラファイトを加え、同じThinkyミキサーを使用してさらに混合(例えば、数(例えば、12)分間)する。次に、SBRを加え、次いで、Thinkyミキサー中で数分間(例えば、12分間)、さらに混合する。この組成物を金属(例えば、Cu)ホイルに塗布し、乾燥する。
【0059】
電極の形成をもたらすプロセスは、使用される最初のCNSの一部の完全性を保存することができ、CNSは無傷のままとなろう。しかし、一部のプロセス操作および/または条件は、使用した最初のCNSの少なくとも一部を改変する可能性がある。上に記載されているように、このような作業および/または条件を含む1つの例は、例えば、CNS出発材料から乳剤を調製する際に遭遇するようなせん断力の施用である。
一部の状況では、最初のCNSは、より小さなCNS単位または断片へと破壊される。これらのサイズの減少を除いて、これらの断片は無処理のCNの特性を一般的に共有し、上に記載されているような電子顕微鏡法および他の技法により同定することができる。
CNSの最初のナノ構造形態が変化する可能性もある。例えば、施用されたせん断は、CNS内のCNT間の架橋を破壊して、電極組成物中に個々のCNTとして通常分散しているCNTを形成することができる。分岐および壁の共有という構造的特徴は、架橋が除去された後でもこれらのCNTの多くに対して保持されることが判明している。CNSから誘導され(調製した)、CNTの分岐および壁の共有という構造的特徴を保持するCNTは、本明細書で「破砕した」CNTと呼ばれる。これらの種は、改善された相互接続性(CNT単位間の)を付与することが可能であり、より低い濃度でより良い導電率をもたらす。
【0060】
よって、普通の、個別化したCNTを利用する、例えば、純粋な形態の電極または電極組成物と比較して、本明細書に記載されている電極および電極組成物は、多くの場合、破砕したCNTを含む。これらの破砕したCNTは、例えば、標準的カーボンナノチューブ分析技術、例えば、SEMを介して普通のカーボンナノチューブから容易に分化することができる。遭遇するすべてのCNTが、分岐し、共通の壁を共有する必要があるわけではなく、むしろこれらの特徴を全体として保有するのは複数の破砕したCNTであることがさらに指摘される。
形成された電極は、当技術分野で公知の方法、例えば、“Lithium Ion Batteries Fundamentals and Applications”, by Yuping Wu, CRC press, (2015)に記載されているような方法に従いリチウムイオン電池に組み込むことができる。一部の実施形態では、電池は、コインタイプ、例えば、2032コインセル、18650円柱状セル、パウチセル、およびその他である。例えば、上に記載されているようなCNS材料を含有するアノードに加えて、電池は、他の構成成分、例えば、単一の電子を移動させる化学反応を通常含むインターカレーション化学に基づくカソード材料で作製されたカソードなどを含む。他のタイプのカソード材料(例えば、リチウムイオンがFeF3nに挿入されたもの)は、変換反応と呼ばれるより複雑な反応機序を介して多数の電子を移動させることができる。
【0061】
好適なカソード電気活性材料の例として、これらに限定されないが、当技術分野で公知のまたは将来開発される、LCO、LMO、NCM、NCA、LCP、LFP、LFSF、LTSおよびその他が挙げられる。一部の実施形態では、上記に記載されているCNS含有アノード組成物は、NCMまたはNCAカソード組成物と併せて使用される。NCM(「NMC」とも呼ばれる)およびNCAは電池の当技術分野の当業者には一般的に公知である。
より詳細には、NCMは、式Li1+x(NiyCo1-y-zMnz1-x2(式中、xは0~1の範囲であり、yは0~1(例えば、0.3~0.8)の範囲であり、zは0~1(例えば、0.1~0.3)の範囲である))で表すことができる。NCMの例として、Li1+x(Ni0.33Co0.33Mn0.331-x2、Li1+x(Ni0.4Co0.3Mn0.31-x2、Li1+x(Ni0.4Co0.2Mn0.41-x2、Li1+x(Ni0.4Co0.1Mn0.51-x2、Li1+x(Ni0.5Co0.1Mn0.41-x2、Li1+x(Ni0.5Co0.3Mn0.21-x2、Li1+x(Ni0.5Co0.2Mn0.31-x2、Li1+x(Ni0.6Co0.2Mn0.21-x2、およびLi1+x(Ni0.8Co0.1Mn0.11-x2が挙げられる。
【0062】
NCAは、式Li1+x(NiyCo1-y-zAlz1-x2(式中、xは0~1の範囲であり、yは0~1の範囲であり、zは0~1の範囲である)で表すことができる。NCAの例はLi1+x(Ni0.8Co0.15Al0.051-x2である。
電極組成物中のNCMまたはNCAの濃度は、エネルギー蓄積デバイスの特定のタイプに応じて変動することができる。一部の場合、NCMまたはNCAは、電極組成物中に、電極組成物の総質量に対して、少なくとも90質量%の量で、例えば、95質量%より大きい量で、例えば、電極組成物の総質量に対して、90質量%~99質量%の範囲の量で存在する。
カソード電気活性材料に加えて、カソード組成物は、多くの場合、結合剤、例えば、ポリ(ビニルジフルオロエチレン)(PVDF)を含む。他の結合剤、例えば、上記に記載されているものなどもカソード組成物を調製するために利用することができる。
一部の実施形態では、カソード組成物はまた導電性添加物、例えば、CCAを含有する。例として、CB、CNT、グラファイト、グラフェンなどが挙げられる。
【0063】
インプリメンテーションでは、カソード組成物は、CNS、CNS断片および/または破砕したCNTを含む。このようなカソード組成物、これらの調製物および使用は、2019年3月22日に出願した、米国仮特許出願第62/822,097号、「Cathode Electrode Compositions for Battery Applications」および本出願と同時に代理人案件番号2018609で出願した、米国非仮出願、表題「Cathode Electrode Compositions for Battery Applications」に記載されている。両方の全内容はこの参照により本明細書に組み込まれる。多くの場合、カソード組成物を調製するために利用されるCNSはコーティングされており、例えば、PUコーティングまたはPEGコーティングされている。乾燥した場合、例示的カソード組成物は、カーボンナノ構造、カーボンナノ構造断片および/または破砕したナノチューブを約1質量%以下の量で含有する。よって、本発明の特定の実施形態では、アノードとカソードの両方がCNS、CNSの断片および/または破砕したCNTを含有する。
2個の電極に加えて、Liイオン電池は好適な電解質を含む。例として、例えば、エチレンカーボネート-ジメチルカーボネート-エチルメチルカーボネート(EC-DMC-EMC)、ビニレンカーボネート(VC)、LiPF6;エチレンカーボネート-ジエチルカーボネート(diethlycarbonate)(EC-DEC、LiPF6;または(EC-DMC)、LiPF6が挙げられる。さらに、電解質組成物は、アノードを含むSiOxまたはケイ素、例えば、フッ化カーボネート、例えば、フルオロエチレンカーボネートおよびその他の性能を増強することが公知の特別な添加物を含有してもよい。好適なガラス繊維ミクロフィルター(例えば、WhatmanGF/A)またはポリプロピレン/ポリエチレン膜(例えば、Celgard2300)は、Liイオンの拡散を許容しながら、電解質を吸収し、電極間の電気的接触を阻止する分離体として使用される。
【0064】
他の実施形態では、本明細書に記載されている組成物は、他のエネルギー蓄積デバイス、例えば、1次アルカリ電池、1次リチウム電池、ニッケル金属水素化物電池、ナトリウム電池、リチウム硫黄電池、リチウム空気電池、およびスーパーコンデンサーの電極に使用される(例えば、組み込まれる)。このようなデバイスを作製する方法は当技術分野で公知であり、例えば、“Battery Reference Book”, TR Crompton, Newness (2000)に記載されている。
本明細書に記載されている電極組成物、電極および電池を特徴付け、および/またはCNSの存在を同定するために、様々な技法を利用することができる。例として、これらに限定されないが、電子顕微鏡法、例えば、TEM、SEM、ラマン分光分析、または他の好適な定性的または定量的分析法が挙げられる。例えば、CNS顆粒の光学画像および走査電極顕微鏡(SEM)画像(図4A)、およびCNSを含有するグラファイトアノード(図4B)が、様々な倍率で示されている。白色の矢印は、グラファイト中のCNSをより低い倍率で示している一方、右下の画像は、グラファイトアノード中のCNSをより高い分解能で示している。
【0065】
電極性能および/または特性は、当技術分野で公知の手順、または適応もしくは開発された技法により評価することができる。好適な技法として、例えば、面内および面を介した電極導電率、電気化学的インピーダンス分光法(EIS)、定電流充放電、ハイブリッドパルスパワー能力(HPPC)、サイクル繰り返しが挙げられる。一部の例は以下に記載されている。
CNS、ならびに/またはCNS断片および/もしくは破砕したCNTなどのCNS由来構成成分は、比較的低いレベルでさえ、電極中の導電性ネットワークを実現することが可能に思われる。CNSを使用して調製されたアノードは、導電性添加物を含まないアノードよりも多くの場合、優れた性能を発揮する。一例において、グラファイトのみのアノードの2Cサイクル繰り返しおよび0.5放電によるサイクル繰り返し(サイクル1→100)の間の電圧プロファイルは、急速な容量悪化を示す。対照的に、本明細書に記載されているCNSを使用して調製したグラファイトアノードは、0.1質量%(ドライアノード組成物の質量に対する)という低いCNSロード量でさえもほとんどいかなる変化を示さなかった。
【0066】
一部の実施形態では、CNSを含有する電極は、CBを高いロード量で含有する比較電極(同じ活性電極材料、例えばグラファイト、結合材、および使用する場合、他の成分、例えば分散剤を用いて作製されたもの)と同様に性能を発揮する。例えば、ドライアノードの約0.5質量%(一部の場合、ちょうど0.1質量%)以下のロード量のCNSを使用して調製したアノードは、少なくとも、1質量%以上のCBを含有する電極と同じぐらい良好な性能をもたらす。他のインプリメンテーションでは、例えば、0.5質量%以下のある種のCNSロード量を含有するアノードは、同じ量のCBを含有する比較電極の性能と少なくとも同じ程度に良好な、および多くの場合、比較電極の性能よりもかなり優れた性能(サイクル繰り返しに伴う容量保持として表される)を示す。
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに例示される。
【実施例
【0067】
(比較例1)
完全コインセル中のグラファイトアノードの調製および試験
48gのグラファイト(グレードBTR-918、BTR(中国)から入手可能)を測定し、Thinkyミキサー(モデルARE-310)から150mlの容器に入れた。予め調製した、N-メチル-2-ピロリドン(NMP、Sigma Aldrich>99%HPLCグレード)中の、20グラムの10質量%のKynar(登録商標)HSV900ポリフッ化ビニリデンベースの樹脂(PVDF)(Arkema製)をグラファイトと一緒にして、次に32gの未希釈NMPを加えた。2・1/4インチの直径の炭化タングステン媒体をこの容器に注意深く入れて、密閉した。
Thinkyプラネタリーミキサー(モデルARE-310)を使用して、以下の手順によって、アノードコーティング用スラリーを調製した。最初に、この混合物に2000rpmで30秒間の操作を行い、すべての物質が組み込まれたかどうかを判定するため確認を行った。次に、この容器を密閉し、2000rpmで4分間、3分間の休止、2000rpmで4分間、4分間の休止、および2000rpmで4分間を含む標準プログラム法を稼働させた。スラリーの組成物は、乾燥基準で、96質量%のグラファイト:4質量%のPVDF結合材であった。
【0068】
得られたアノードスラリーを、自動化ドクターブレードコーター(MTI Corp.製のモデルMSK-AFA-III)を使用して、14.5mg/cm2のコーティング面積ロード量を目標にして銅ホイル上にコーティングした。80℃に設定した対流オーブン中でNMPを20分間、蒸発させた。さらに、電極を真空下、110℃で最低で4時間、乾燥した。16ミリメートルの直径のディスクに、MTI Precision Disc Cutter(モデルMSK-T-06)を使用することによって穿孔し、マニュアルローリングプレス(MTI Corp製のMR-100)を使用して1.35g/ccにカレンダー加工した。
【0069】
すべての実施例に使用したカソードには、以下の組成:NCM622活性材料;表3中の試料IIIの特性を有するCB導電性添加物;HSV 900 PVDF結合材を96.5:2:1.5の比で使用して調製したカソード電極を含んだ。具体的には、カソードは、NMP(Sigma Aldrich>99%HPLCグレード)中の10質量%のKynar(登録商標)HSV 900 PVDF(Arkema、分子量900,000を有する)を適量、NMP中75質量%の全固体でCB導電性添加物およびNCM622(ShanShan(中国)から入手可能)を混合することによって調製した。このスラリーを30分間、Thinkyミキサー(モデルARE-310)と混合した。この電極スラリーを、25mg/cm2のコーティング面積のロード量を目標とする、自動化ドクターブレードコーター(MTI Corp.製のモデルMSK-AFA-III)を使用してアルミニウムホイル上にコーティングした。80℃に設定された対流式オーブン内でNMPを20分間蒸発させた。コインセルの調製のため、直径15ミリメートルのディスクを穿孔し、真空下、110℃で最低4時間乾燥させた。MTI Manual Rolling Press(Model MR-100)を用いて、ディスクを3.5g/ccの密度にカレンダー加工した。
【0070】
アルゴン充填グローブボックス(M-Braun)内で、上記に記載されているカソードおよびアノードディスクを合わせて、アノード/カソード容量比1.25の2032コイン-セルを組み立てた。直径17mmのガラス繊維ミクロフィルター(Whatman GF/A)を分離体として使用した。電解質は、200マイクロリットルのエチレンカーボネート-ジメチルカーボネート-エチルメチルカーボネート(EC-DMC-EMC)、ビニレンカーボネート(VC)1%、LiPF6 1M(BASF)とした。4枚のコインセルを試験する各配合物について組み立てた。コインセルは、2.8~4.2電圧ウィンドウで2×C/10充放電形成サイクルを使用してMaccorシリーズ4000電池サイクラーを使用して形成し、C/20まで、次にC/2の充電の一定電圧での充電工程、C/20までの一定電圧充電工程とした。
【0071】
(比較例2)
カーボンブラックを含むグラファイトアノードの調製
47.5gのグラファイト(グレードBTR-918、BTR(中国)から入手可能)、および表3中の規格Iの特性を有する0.5gの導電性カーボンブラックを秤量し、150mLの容器において、NMP溶液中の10質量%のPVDF20gグラムと一緒にした。32gの無希釈NMPを加えた。スラリーの組成物は、乾燥基準で、95質量%のグラファイト:1質量%のCB:4質量%のPVDFとした。アノード、カソードおよび完全コインセル集合体の調製プロトコールの残りは、実施例1と同じとした。
【0072】
(実施例3)
様々な量のCNSを含むグラファイトアノードの調製
乾燥量基準で、0.1質量%~0.5質量%の範囲の、様々な量のCNSを含む、いくつかのアノードスラリー(A~C)を調製した。構成成分(乾燥基準)の詳述した組成および質量が、表4にまとめられている。アノード、カソードおよび完全コインセル集合体の調製プロトコールは、実施例1におけるものと同じとした。
【表4】

【0073】
性能特徴
実施例1に記載されているセル(グラファイトだけのアノード)に関する、2C充電およびC/2放電での最初の100回のサイクルに関する電圧放電プロファイルが、図5に提示されている。試験は25℃で行った。
かなり積極的な条件を選択して、グラファイトアノードにおけるリチウム被膜形成を意図的に促進させた。充電速度は2Cとし、アノードの厚さは14.5mg/cm2とした。図5に示されている通り、セル容量は最初の100回のサイクルと共に急速に低下した。このセルは、100回のサイクル後に完全に放電され、アルゴングローブボックスに入れて、注意深く開いた。アノードは、リチウム金属の被膜形成を示す、目立つ不規則な黄色を有した。
実際例3に記載されているセル(グラファイトアノード中にCNSが存在する)に関して、2C充電およびC/2放電速度で100回のサイクルに関する電圧放電プロファウルを図6に示す。試験は25℃で行った。
グラファイトだけのアノードを含むセルの場合のサイクル繰り返し結果とは対照的に、アノード中にCNSを含むセルの場合のサイクル繰り返しデータは、同じ条件で安定な電圧となることを示した。驚くべきことに、非常に少量のCNS(0.1質量%)でさえも、アノード表面のLi被膜形成を最小化するかまたは低減するのに有効であった。リチウム被膜形成の明白な兆候は、0.25質量%のCNSを含むセルの1つを開口すると観察された。
【0074】
恐らく、サイクル寿命に及ぼすCNSの影響を例示する良好な方法は、y=a+b*exp{c*サイクル数}などの単純指数関数を用いて、実施例1~3の既存のデータを外挿することである。
サイクル繰り返し寿命を外挿する3つのパラメータ指数関数を適用した結果が図7にまとめられている。図は、実施例1~3に従い調製したセルに関する、サイクル繰り返しを伴う容量保持、およびその外挿を示す。各実施例に関する最初の100回のサイクルに関する実際のデータは、黒丸(図7の下側部分)で示されている。サイクル繰り返し条件は、25℃における2C充電、C/2放電とした。3パラメータの単純指数関数(%保持=a+b*exp{c*サイクル数})をすべての実施例に関するデータの外挿に使用した。
結果から明白な通り、グラファイトに導電性添加物(CBなど)の添加は、サイクル寿命を延長する一助となる(実施例2)が、一層のすばらしい結果が、CNS添加物を用いた場合に得られた(実施例3)。最初の容量劣化に基づいたデータのモデル化により、積極的なサイクル繰り返し条件であるにもかかわらず、CNSを含むアノードを用いると、1000+サイクル寿命が可能となり得ることを示した。
【0075】
(比較例4)
MWCNTおよびSuper(登録商標)P-Liを含むアノード電極の調製
乾燥基準で、以下の組成:94.5質量%グラファイト/SiOx(グラファイト対SiOx=95:5の比を有する):1.5質量%のMWCNT:1質量%のSuper(登録商標)P-Li:2質量%のCMC:1質量%のSBRを用いて、多層カーボンナノチューブ(LB217、CNT(Jiangsu Cnano Technology Co.Limitedから入手可能)の5%水性分散液)とSuper(登録商標)P-Li導電性炭素粉末(Imerysから入手可能)の両方を含むアノード電極を上記と同じように調製した。電極は、5.2mg/cm2のロード量を有した。
アノードは、110℃において120分間、オーブン中で事前乾燥した。さらに、電極を真空下、110℃で一晩、乾燥した。16ミリメートルの直径のディスクに、MTI Precision Disc Cutter(モデルMSKT-06)を使用することによって穿孔し、マニュアルローリングプレス(MR-100、MTI Corp)を使用して1.2g/ccにカレンダー加工した。
【0076】
カソードは、乾燥基準で、96.5:2:1.5の比で以下の組成-NCM622活性材料:LITX(登録商標)HP炭素導電性添加物:HSV 900 PVDF結合材を用いて配合した。
具体的には、カソードスラリーを、NMP(Sigma Aldrich >99%HPLCグレード)中の10質量%のKynar(登録商標)HSV 900 PVDF(Arkema)を適量混合することによって調製し、NMP中75質量%の全固体で炭素導電性添加物LITX(登録商標)HP(Cabot Corporationから入手)をNCM622(ShanShan(中国)から入手可能)と共に加えた。このスラリーを30分間、Thinkyミキサー(モデルARE-310)と混合した。この電極スラリーを、14mg/cm2の面積ロード量を目標とする、自動化ドクターブレードコーター(MTI Corp.製のモデルMSK-AFA-III)を使用してアルミニウムホイル上にコーティングした。80℃に設定した対流オーブン中でNMPを20分間、蒸発させた。15ミリメートルの直径のディスクに、コインセル調製のために穿孔し、最低で4時間、真空下、110℃で乾燥した。MTIマニュアルローリングプレス(モデルMR-100)を使用して、ディスクを3.5g/ccの密度にカレンダー加工した。
【0077】
アルゴン充填グローブボックス(M-Braun)中、1.25のアノード/カソードの容量比で、上記のカソードおよびアノードのディスクを2032コインセルへと組み立てた。17mmの直径を有するガラス繊維ミクロフィルター(Whatman GF/A)をセパレータとして使用した。電解質組成物は、エチレンカーボネート-ジメチルカーボネート(EC:DMC、1:1)とし、1M LiPF6(Sigma Aldrich)を含む10質量%のモノ-フルオロエチレンカーボネート(FEC、Solvay Fluorides)を含んだ。4種のコインセルを試験した各配合物に対して組み立てた。2.8~4.2ボルトウィンドウの2×C/10充放電形成サイクルを使用するMaccorシリーズ4600A電池サイクラーを使用して、コインセルを形成した。c率容量評価後、室温でCC-CV(1C~4.2V、C/20)/1D充電/放電率を使用して、コインセルのサイクル繰り返しを行った。
【0078】
(実施例5)
CNSを使用するアノードスラリーおよびアノード電極の調製
17.64グラムの水性2質量%のカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(CMC)と16.16グラムのグラファイト(BTR-918、BTR(中国)から入手可能)との組合せ物を50mlの鋼製のジャケット付き炭化タングステンバイアル(モデル8004SS)に入れて、穏やかに混合した。次に、0.1グラムのカプセル封入したCNS顆粒(Cabot Corporation)を6・1/4インチの直径の炭化タングステン媒体と共に加えた。このバイアルを閉じて、80分間、Spex試料調製ミキサー(モデル8000M)を使用することによって混合した。このミキサーを20分毎に停止し、すべての物質が組み込まれているかどうかを判定した。混合して80分後、0.85グラムのSiOx/C粉末(KSC-1265、信越化学工業株式会社から入手可能)をこの混合物に加えて、さらに3分間、混合した。その後、0.353グラムのスチレン-ブタジエン(Butadience)ゴム(TD105A、JSR)を上記の混合物と一緒にして、1分間、混合した。最後に、脱イオン水14.35グラムをこのスラリーに加え、このバイアルをさらに10分間、混合した。このスラリーの組成は、乾燥基準で、96.45質量%のグラファイト/SiOx(グラファイト対SiOx=95:5の比を有する):0.55質量%のカプセル封入したCNS:2質量%のCMC:1質量%のSBRとした。
【0079】
生成したアノードスラリーを、5.2mg/cm2の面積ロード量を目標とする、自動化ドクターブレードコーター(MTI Corp.製のモデルMSK-AFA-III)を使用して銅ホイル上にコーティングした。アノードは、110℃において120分間、オーブン中で事前乾燥した。さらに、電極を真空下、110℃で一晩、乾燥した。16ミリメートルの直径のディスクに、MTI Precision Disc Cutter(モデルMSKT-06)を使用することによって穿孔し、マニュアルローリングプレス(MR-100、MTI Corp)を使用して1.2g/ccにカレンダー加工した。
カソードおよびコインセル集合体は、比較例4に記載されているプロトコールに従い調製した。
実施例5に記載されている通りに調製した、CNSを含むアノードを用いた完全セルに関する1C/1Cサイクル繰り返しにより容量保持のプロット(Aと記されている)、および比較例4に記載されている通りに調製したMWCNT+Super(登録商標)P添加物(Bとして記されている)の組合せ物が図8に示されている。グラフから明白な通り、CNSを含有するアノードを備える電池セルは、サイクル寿命性能を著しく延びた。MWCNTと、導電性添加物としてのSuper(登録商標)P-Liとの組合せ物は、これらのサイクル繰り返し条件において、最大で約250サイクルまで唯一有効であった(約80%保持)。さらに重要なことに、このような性能を必要とするカプセル封入したCNSの量は、比較例(MWCNT+Super(登録商標)P-Liの場合、合計で0.55質量%のCNS対2.5質量%)に使用される全炭素添加物の約1/4~1/5しかなかった。この実施例は、SiOx-グラファイトアノードベースのセルに関する、良好なサイクル繰り返し性能を可能にする、CNS幾何形状の特有の特徴を明確に強調している。
【0080】
本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1種または複数の任意のおよびすべての組合せを含む。さらに、単数形および冠詞「a」、「an」および「the」は、他に明示的に述べられていない限り、複数の形態も含むことを意図する。含む(include)、含む(comprise)、含んでいる(including)および/または含んでいる(comprising)という用語は、この明細書で使用される場合、述べられているその特徴、整数、ステップ、作業、要素、および/または構成成分の存在を特定するが、1種または複数の他の特徴、整数、ステップ、作業、要素、構成成分、および/または群の存在または添加を妨げないことをさらに理解されたい。さらに、構成成分またはサブシステムを含む要素が、別の要素と連結もしくはカップリングされたと言及および/または示されている場合、他の要素と直接連結もしくはカップリングされていてもよいし、または介入する要素が存在してもよいことを理解されたい。
【0081】
例えば「第1」および「第2」などの用語は、様々な要素について記載するために本明細書で使用されるが、これらの要素はこれらの用語に限定されてはならないことを理解されたい。これらの用語は1つの要素を別の要素から区別するために使用されているにすぎない。よって、以後に論じられる要素を第2の要素と呼ぶことができるが、同様に、第2の要素は、本発明の教示から逸脱することなく、第1の要素と呼ばれてもよい。
他に定義されない限り、本明細書で使用されているすべての用語(技術的および科学的用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者により共通して理解されている意味と同じ意味を有する。用語、例えば、一般的に使用される辞書に定義されたものなどは、関連する技術との関連でこれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的にそのように定義されていない限り、理想的なまたはあまりにも正式な意味で解釈されないことをさらに理解されたい。
本発明はその好ましい実施形態を参照して特に示され、記載されているが、添付の特許請求の範囲に包含されている本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細における様々な変化がその中に生じ得ることは当業者により理解されている。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕活性アノード材料、および
カーボンナノ構造体、カーボンナノ構造体の断片および破砕した多層カーボンナノチューブからなる群から選択される少なくとも1種の材料
を含む、電極組成物であって、
活性アノード材料が、グラファイト、ケイ素、SiO x 、ケイ素-グラファイトコンポジットまたはチタン酸リチウムを含み、
カーボンナノ構造体またはカーボンナノ構造体の断片が、分岐している、互いに入り込む、絡んでいるおよび/または共通の壁を共有することによって、ポリマー構造において架橋されている、複数の多層カーボンナノチューブを含み、
破砕した多層カーボンナノチューブが、カーボンナノ構造体から誘導され、分岐しており、互いに共通の壁を共有している、電極組成物。
〔2〕多層カーボンナノチューブの少なくとも1つが、SEMにより決定される場合、2μm以上の長さを有しており、
多層カーボンナノチューブの少なくとも1つが、200~1000の範囲内の長さ対直径のアスペクト比を有しており、
SEMにより決定される場合、多層カーボンナノチューブの少なくとも1つの2マイクロメートルの長さに沿って、少なくとも2つの分岐が存在し、
少なくとも1つの多層カーボンナノチューブが、分岐点の前の領域に比べて、分岐点の後の領域において観察される壁の数が非対称であることを示し、かつ/または
TEMにより決定される場合、触媒粒子が分岐点またはその近傍に存在しない、前記〔1〕に記載の電極組成物。
〔3〕多層ナノチューブが、壁の数を計数するのに十分な倍率においてTEMにより決定される場合、2~30個の共軸ナノチューブを含む、前記〔1〕または〔2〕に記載の電極組成物。
〔4〕カーボンナノチューブの少なくとも1%が、SEMにより決定される場合、2μm以上の長さを有しており、
長さ対直径のアスペクト比が、200~1000の範囲内にある、かつ/または分岐点の前の領域に比べて、分岐点より後の領域に観察される壁の数が非対称であることを示す、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の電極組成物。
〔5〕結合材をさらに含む、前記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の電極組成物。
〔6〕結合材が、二フッ化ポリビニリデンまたはカルボキシメチルセルロースおよびスチレンブタジエンゴムである、前記〔5〕に記載の化合物。
〔7〕ペースト、スラリーまたは固体である、前記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の電極組成物。
〔8〕溶媒をさらに含む、前記〔7〕に記載の電極組成物。
〔9〕溶媒が、N-メチルピロリドン、アセトン、アルコール、水およびそれらの任意の組合せである、前記〔8〕に記載の電極組成物。
〔10〕乾燥すると、カーボンナノ構造体、カーボンナノ構造体断片および/または破砕した多層ナノチューブを約5質量%以下の量で含有する、前記〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の電極組成物。
〔11〕カーボンナノ構造体が、コーティングされているカーボンナノ構造体である、前記〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の電極組成物。
〔12〕コーティングされているカーボンナノ構造体が、ポリウレタンコーティングされているナノ構造体またはポリエチレングリコールコーティングされているカーボンナノ構造体である、前記〔11〕に記載の電極組成物。
〔13〕コーティングされているカーボンナノ構造体の質量に対して、コーティング剤の質量が、約0.1%~約10%の範囲内にある、前記〔11〕に記載の電極組成物。
〔14〕乾燥すると、コーティングされているカーボンナノ構造体、コーティングされているカーボンナノ構造体の断片、および/またはコーティングされているカーボンナノ構造体に由来する破砕した多層カーボンナノチューブを約5質量%以下の量で含有する、前記〔11〕に記載の電極組成物。
〔15〕活性アノード材料を80~99質量%の量で含む、前記〔1〕~〔14〕のいずれかに記載の電極組成物。
〔16〕カーボンブラック、元の状態の形態の個別化したカーボンナノチューブ、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される、炭素導電性添加物をさらに含む、前記〔1〕~〔15〕のいずれかに記載の電極組成物。
〔17〕カーボンブラックをさらに含む、前記〔1〕~〔16〕のいずれかに記載の電極組成物であって、カーボンブラックが、200m 2 /g以下のBET面積、および少なくとも130mL/100gのOANを有する、電極組成物。
〔18〕前記〔1〕~〔17〕のいずれかに記載の組成物、および電極組成物に接触する集電体を含む電極。
〔19〕前記〔1〕~〔18〕のいずれかに記載の組成物または電極を含む電池。
〔20〕リチウム遷移金属化合物、ならびにカーボンナノ構造体、カーボンナノ構造体の断片および破砕した多層カーボンナノチューブからなる群から選択される少なくとも1種の材料を含むカソードをさらに備える前記〔19〕に記載の電池であって、
カーボンナノ構造体またはカーボンナノ構造体の断片が、分岐している、互いに入り込む、絡んでいるおよび/または共通の壁を共有することによって、ポリマー構造において架橋されている、複数の多層カーボンナノチューブを含み、
破砕した多層カーボンナノチューブが、カーボンナノ構造体から誘導され、分岐しており、互いに共通の壁を共有している、
電池。
〔21〕前記〔1〕~〔20〕のいずれかに記載の組成物、電極(単数または複数)を含む、再充電可能なリチウムイオン電池。
〔22〕カーボンナノ構造体、カーボンナノ構造体の断片および破砕した多層カーボンナノチューブからなる群から選択される少なくとも1種の材料と、活性アノード材料とを一緒にして、電極組成物を形成するステップ
を含む、電極組成物を調製する方法であって、
カーボンナノ構造体またはカーボンナノ構造体の断片が、分岐している、互いに入り込む、絡んでいるおよび/または共通の壁を共有することによって、ポリマー構造において架橋されている、複数の多層カーボンナノチューブを含み、
破砕した多層カーボンナノチューブが、カーボンナノ構造体から誘導され、分岐しており、互いに共通の壁を共有しており、
活性アノード材料が、グラファイト、ケイ素、SiO x 、ケイ素-グラファイトコンポジットまたはチタン酸リチウムを含む、
方法。
〔23〕多層カーボンナノチューブの少なくとも1つが、SEMによって求めると、2μm以上の長さを有しており、
多層カーボンナノチューブの少なくとも1つが、200~1000の範囲内の長さ対直径のアスペクト比を有しており、
SEMによって求めると、2マイクロメートルの長さの少なくとも1つの多層カーボンナノチューブに沿って、少なくとも2つの分岐が存在し、
多層カーボンナノチューブの少なくとも1つが、分岐点の前の領域に比べて、分岐点の後の領域に観察される壁の数が非対称であることを示し、かつ/または
TEMによって求めると、分岐点またはその近傍に触媒粒子が存在しない、
前記〔22〕に記載の方法。
〔24〕多層ナノチューブが、壁の数を計数するのに十分な倍率においてTEMによって求めると、2~30個の共軸ナノチューブを含む、前記〔22〕または〔23〕に記載の方法。
〔25〕カーボンナノチューブの少なくとも1%が、SEMによって求めると、2μm以上の長さを有しており、長さ対直径のアスペクト比が、200~1000の範囲内にある、かつ/または分岐点の前の領域に比べて、分岐点より後の領域に観察される壁の数が非対称であることを示す、
前記〔22〕~〔24〕のいずれかに記載の方法。
〔26〕分散液が、N-メチルピロリドン、アセトン、アルコール、水およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される液体を含有する、前記〔22〕~〔25〕のいずれかに記載の方法。
〔27〕電極組成物が結合材をさらに含む、前記〔22〕~〔26〕のいずれかに記載の方法。
〔28〕結合材が、二フッ化ポリビニリデンまたはスチレンブタジエンゴムおよびカルボキシメチルセルロースである、前記〔27〕に記載の方法。
〔29〕電極組成物を乾燥するステップをさらに含む、前記〔22〕~〔28〕のいずれかに記載の方法。
〔30〕活性アノード材料が、80~99質量%の量で供給される、前記〔22〕~〔29〕のいずれかに記載の方法。
〔31〕電極組成物を集電体に塗布するステップをさらに含む、前記〔22〕~〔30〕のいずれかに記載の方法。
〔32〕電極組成物が、乾燥される場合、カーボンナノ構造体、カーボンナノ構造体の断片、および/または破砕した多層カーボンナノチューブを約5質量%以下の量で含む、前記〔22〕~〔31〕のいずれかに記載の方法。
〔33〕カーボンナノ構造体が、コーティングされているカーボンナノ構造体である、前記〔22〕~〔32〕のいずれかに記載の方法。
〔34〕カーボンナノ構造体が、ポリウレタンコーティングされているナノ構造体またはポリエチレングリコールコーティングされているカーボンナノ構造体である、前記〔33〕に記載の方法。
〔35〕コーティングされているカーボンナノ構造体の質量に対して、コーティング剤の質量が、約0.1%~約10%の範囲内にある、前記〔33〕に記載の方法。
〔36〕コーティングされているカーボンナノ構造体が、乾燥される場合、組成物の質量に対して、約5質量%以下の量で供給される、前記〔33〕に記載の方法。
〔37〕分散液が、カーボンブラック、元の状態の形態の個別化されたカーボンナノチューブ、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される、炭素導電性添加物をさらに含む、前記〔22〕~〔36〕のいずれかに記載の方法。
〔38〕カーボンブラックをさらに含む、前記〔22〕~〔37〕のいずれかに記載の方法であって、カーボンブラックが、200m 2 /g以下のBET面積、および少なくとも130mL/100gのOANを有する、方法。
〔39〕分散液が、カーボンナノ構造体と液体とを一緒にすることによって調製される、前記〔22〕~〔38〕のいずれかに記載の方法。
〔40〕カーボンナノ構造体が、緩い粒子材料の形態で供給される、前記〔39〕に記載の方法。
〔41〕液体が、N-メチルピロリドン、アセトン、アルコール、水およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される、前記〔40〕に記載の方法。
〔42〕活性アノード材料を含むスラリー中にカーボンナノ構造体を組み込んで、電極組成物を形成するステップを含む、電極組成物を調製する方法であって、
活性アノード材料が、グラファイト、ケイ素、SiO x 、ケイ素-グラファイトコンポジットまたはチタン酸リチウムを含み、
カーボンナノ構造体が、分岐している、互いに入り込む、絡んでいるおよび/または共通の壁を共有することによって、ポリマー構造において架橋されている、複数の多層カーボンナノチューブを含む、
方法。
〔43〕多層カーボンナノチューブの少なくとも1つが、SEMにより決定される場合、2μm以上の長さを有しており、
多層カーボンナノチューブの少なくとも1つが、200~1000の範囲内の長さ対直径のアスペクト比を有しており、
SEMにより決定される場合、多層カーボンナノチューブの少なくとも1つの2マイクロメートルの長さに沿って、少なくとも2つの分岐が存在し、
少なくとも1つの多層カーボンナノチューブが、分岐点の前の領域に比べて、分岐点の後の領域において観察される壁の数が非対称であることを示し、かつ/または
TEMにより決定される場合、触媒粒子が分岐点またはその近傍に存在しない、前記〔42〕に記載の方法。
〔44〕多層ナノチューブが、壁の数を計数するのに十分な倍率においてTEMにより決定される場合、2~30個の共軸ナノチューブを含む、前記〔42〕または〔43〕に記載の方法。

〔45〕カーボンナノチューブの少なくとも1%が、SEMにより決定される場合、2μm以上の長さを有しており、長さ対直径のアスペクト比が、200~1000の範囲内にある、かつ/または分岐点の前の領域に比べて、分岐点より後の領域に観察される壁の数が非対称であることを示す、前記〔42〕~〔44〕のいずれかに記載の方法。
〔46〕カーボンナノ構造体が、フレーク、ペレットまたは顆粒として供給される、前記〔42〕~〔45〕のいずれかに記載の方法。
〔47〕活性アノード材料が、80~99質量%の量で供給される、前記〔42〕~〔46〕のいずれかに記載の方法。
〔48〕電極組成物を集電体に塗布するステップをさらに含む、前記〔42〕~〔46〕のいずれかに記載の方法。
〔49〕電極組成物を乾燥するステップをさらに含む、前記〔42〕~〔48〕のいずれかに記載の方法。
〔50〕電極組成物が、乾燥される場合、カーボンナノ構造体、カーボンナノ構造体の断片、および/または破砕した多層カーボンナノチューブを約5質量%以下の量で含む、前記〔42〕~〔49〕のいずれかに記載の方法。
〔51〕カーボンナノ構造体が、コーティングされているカーボンナノ構造体である、前記〔42〕~〔50〕のいずれかに記載の方法。
〔52〕コーティングされているカーボンナノ構造体が、ポリウレタンコーティングされているカーボンナノ構造体またはポリエチレングリコールコーティングされているカーボンナノ構造体である、前記〔51〕に記載の方法。
〔53〕コーティングされているカーボンナノ構造体の質量に対して、コーティング剤の質量が、約0.1%~約10%の範囲内にある、前記〔51〕に記載の方法。
〔54〕コーティングされているカーボンナノ構造体が、乾燥される場合、組成物の質量に対して、約5質量%以下の量で供給される、前記〔51〕に記載の方法。
〔55〕電極組成物が結合材をさらに含む、前記〔42〕~〔54〕のいずれかに記載の方法。
〔56〕結合材が、二フッ化ポリビニリデンまたはスチレンブタジエンゴムおよびカルボキシメチルセルロースである、前記〔55〕に記載の方法。
〔57〕電極組成物が液体をさらに含む、前記〔42〕~〔56〕のいずれかに記載の方法。
〔58〕液体が、N-メチルピロリドン、アセトン、アルコール、水およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される、前記〔57〕に記載の方法。
〔59〕電極組成物が、カーボンブラック、元の状態の形態の個別化されたカーボンナノチューブ、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される、炭素導電性添加物をさらに含む、前記〔42〕~〔58〕のいずれかに記載の方法。
〔60〕スラリーがカーボンブラックをさらに含み、カーボンブラックが、200m 2 /g以下のBET面積、および少なくとも130mL/100gのOANを有する、前記〔42〕~〔59〕のいずれかに記載の方法。
〔61〕カーボンナノ構造体の断片および/または破砕した多層カーボンナノチューブを生成する、前記〔22〕~〔60〕のいずれかに記載の方法であって、
カーボンナノ構造体またはカーボンナノ構造体の断片が、分岐している、互いに入り込む、絡んでいるおよび/または共通の壁を共有することによって、ポリマー構造において架橋されている、複数の多層カーボンナノチューブを含み、
破砕した多層カーボンナノチューブが、カーボンナノ構造体から誘導され、分岐しており、互いに共通の壁を共有している、
方法。
〔62〕リチウム遷移金属化合物、ならびにカーボンナノ構造体、カーボンナノ構造体の断片および破砕した多層カーボンナノチューブからなる群から選択される材料を含む、カソード、および
活性アノード材料、ならびにカーボンナノ構造体、カーボンナノ構造体の断片および破砕した多層カーボンナノチューブからなる群から選択される材料を含むアノード
を備える、リチウム電池であって、
カーボンナノ構造体またはカーボンナノ構造体の断片が、分岐している、互いに入り込む、絡んでいるおよび/または共通の壁を共有することによって、ポリマー構造において架橋されている、複数の多層カーボンナノチューブを含み、
破砕した多層カーボンナノチューブが、カーボンナノ構造体から誘導され、分岐しており、互いに共通の壁を共有している、
リチウム電池。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8