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特許7407204流体内の細菌汚染物の存在を特定するための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】流体内の細菌汚染物の存在を特定するための装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20231221BHJP
   G01N 1/04 20060101ALI20231221BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20231221BHJP
   C12M 1/12 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G01N1/10 B
G01N1/04 H
C12M1/34 B
C12M1/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021559446
(86)(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 FR2020000076
(87)【国際公開番号】W WO2020208309
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-01-24
(31)【優先権主張番号】1903807
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】1911739
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】304043936
【氏名又は名称】ビオメリュー
【氏名又は名称原語表記】BIOMERIEUX
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ブティエ, ヨアン
(72)【発明者】
【氏名】ウルトー, エミリ
(72)【発明者】
【氏名】モンテ, マリー-ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ローザンド, クリスティーヌ
(72)【発明者】
【氏名】テブノ, セシル
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-113817(JP,A)
【文献】特表平09-505890(JP,A)
【文献】特表2007-508013(JP,A)
【文献】特開昭51-044973(JP,A)
【文献】米国特許第02879207(US,A)
【文献】国際公開第91/018085(WO,A1)
【文献】特表2020-516288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/10
G01N 1/04
C12M 1/34
C12M 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物による流体の汚染を特定するための装置(1)であって、
- 少なくとも1つの側壁(21)と底部(22)とによって境界が定められた内部空間を有するハウジング(2)と、
- 前記ハウジング(2)を閉鎖している、前記底部(22)に対向して位置付けられたカバー(3)と、
- 前記ハウジング(2)の前記内部空間に向かって開口している、前記カバー(3)に配置された流体入口ポート(11)であって、前記カバー(3)に実質的に交差した、好ましくは前記カバー(3)に対して垂直な軸線に沿って延在している流体入口ポート(11)と、
- 前記内部空間内に配置された少なくとも1つのろ過部材(4)と、
- 微生物培地を備える少なくとも1つの栄養層(5)と
を備える装置(1)において、
前記装置(1)が、
- 前記ハウジング(2)の前記内部空間に向かって開口している、前記ハウジング(2)に配置された流体出口ポート(12)を含んでおり、前記カバー(3)が、前記流体入口ポート(11)を中心として前記カバー(3)の周囲縁部まで径方向に延在している前記内部空間の内側表面(31)有しており、前記内側表面(31)が、前記流体入口ポート(11)に向かって傾斜または湾曲し、集束していることと、
- 前記装置(1)が、前記栄養層(5)を支持するように構成された支持グリルを含んでおり、
前記ハウジング(2)の前記底部(22)が、前記流体出口ポート(12)を中心として前記ハウジング(2)の前記側壁(21)まで径方向に延在している表面(28)を有しており、前記表面(28)が、前記流体出口ポート(12)に向かって傾斜し集束していることと
を特徴とする装置。
【請求項2】
前記カバー(3)の前記内側表面(31)の前記傾斜が、厳密に+4°超であり、前記カバー(3)の前記内側表面(31)の前記傾斜が、好ましくは+5°~+15°であり、より好ましくは実質的に10°である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記底部(22)の前記表面(28)の前記傾斜が、厳密に0°未満であり、前記底部の前記表面の前記傾斜が、好ましくは-5°~-10°であり、より好ましくは-6.5°~-7.5°である、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記流体入口ポート(11)が、前記ハウジング(2)の前記内部空間に向かって前記カバー(3)の前記内側表面(31)よりも突出している、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記ろ過部材(4)が、前記入口ポート(11)から所与の距離hを置いて前記ハウジング(2)に配置されており、前記所与の距離hが、厳密に1mm超である、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記ハウジング(2)が、前記カバー(3)の縁部(33)と相補的に協働するように形成された第1の周方向支承面(23)を有している、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記ハウジング(2)が、前記内部空間内内に延在した、前記ろ過部材(4)の周囲部分(41)を受けるように形成された少なくとも1つの第2の支承面(24)を有しており、前記第2の支承面(24)が、前記カバー(3)の一部分(34)と協働するように形成されており、それにより前記ろ過部材(4)の前記周囲部分(41)が、前記カバー(3)と前記ハウジング(2)との間でクランプ留めされている、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記ハウジング(2)の底部(22)が、前記流体出口ポート(12)に対して径方向に配置された支持リブ(27)を有しており、前記リブ(27)が、前記支持グリル(6)を保持し、前記流体出口ポート(12)に向かって前記流体を案内するように設計されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
少なくとも1つの流体供給部と、請求項1から8のいずれか一項に記載の少なくとも1つの装置(1)であって、前記装置(1)の前記流体入口ポート(11)によって、流体供給部に接続されている装置(1)とを備える、組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物分析の技術分野に関する。より詳細には、本発明は、少なくとも1つの微生物を含有している可能性が高い分析すべき液体を検査するための微生物検査装置に関する。
発明の状況
【0002】
本発明は、地上または宇宙で使用するための、産業、食品、医薬品、化粧品、または獣医学の微生物検査の領域に応用可能である。
【0003】
本発明は、フランス国立宇宙研究センター(CNES)およびINITIAL社によって支援された研究に従って開発されてきたものである。
【背景技術】
【0004】
液体が検査されて、少なくとも1つの微生物の存在が特定されるという状況が往々にして起こるが、通常、これはそのような微生物がいないことを特定することを目的としている。当然ながら、分析すべき液体は生体液(全血、血清、血漿、尿、脳脊髄液、有機分泌物など)とすることができる。しかし、液体は、産業用の液体、特に食用の液体(水、他の飲料、特に果汁、牛乳、清涼飲料など)、または医療用、化粧用、もしくは獣医用の液体(病気の動物から得た乳汁)とすることもできる。
【0005】
分析すべき液体をろ過して、液体に含まれた何らかの微生物を収集し、これらの微生物を培養して、その後、微生物を検出、計数、特徴付け、および/または識別できるようにするための多数の実験技術が知られている。これらの技術は、実験助手にはよく知られている特定の回数の動作や、特定の基本的設備(ろ過ランプ、実験台、培養器)を必要とする。
【0006】
これらの技術では、多くの場合、分析すべき液体を受けるように設計された筐体によって境界が定められた、閉じた内部空間を含むろ過装置を使用する必要がある。このような技術は、特に「膜ろ過」と呼ばれる。微生物ろ過手段、たとえばろ過膜が、閉じた内部空間に配置されており、この閉じた内部空間において、第1の区分を、閉じた内部空間の第2の区分から分離している。装置(フィルタカセット)は、閉じた内部空間の第1の区分に向かって開口した、分析すべき液体用の入口ポートを有している。
【0007】
知られているいくつかのろ過装置では、ろ過手段を回収するために装置が開放され、次いでそのろ過手段が培養装置に搬送されて、微生物が培養される。このような技術は、実験室で容易に実施できる。
【0008】
反対に、このような技術は、地上や国際宇宙ステーションの動作環境、および液体が生産されたり、充填されたり、分配されたり、使用されたりする産業環境で実施するのは困難である。
【0009】
産業環境を含む、微生物実験室から離れた場所で使用または実施することができる、特に簡単な検査操作を可能にする微生物検査装置、および分析すべき液体を検査するための方法が、文献WO2018189478A1から知られている。この文献には、少なくとも1つの微生物を含んでいる可能性が高い分析すべき液体を検査するための微生物検査装置が記載されている。この検査装置は、分析すべき液体を受けるように設計された閉じたハウジングと、閉じた内部空間に配置され、この閉じた内部空間において、第1の区分と、閉じた内部空間の第2の区分とを分離する微生物ろ過手段と、閉じた内部空間の第1の区分に向かって開口している、分析すべき液体用の入口ポートと、微生物培地を含む栄養層とを備えている。この装置の主な欠点は、ろ過後に液体が装置内に残り再利用できないこと、および装置内に残った液体がPADを侵出させ、栄養層を希釈し、偽陰性を生じさせるおそれがあることである。さらに、この装置の製造には、ハウジングを真空内に配置することが必要であり、これはかなりの制約になる。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、上述した装置の改良形態であり、つまりより小型でより実用的な形態である。
【0011】
この目的のために、本発明は、流体の微生物汚染を特定するための装置であって、
- 少なくとも1つの側壁と底部とによって境界が定められた内部空間を有するハウジングと、
- ハウジングを閉鎖している、底部に対向して位置付けられたカバーと、
- 前記ハウジングの内部空間に向かって開口している、カバーに配置された流体入口ポートであって、カバーに実質的に交差した、好ましくはカバーに対して垂直な軸線に沿って延在している流体入口ポートと、
- 内部空間に配置された少なくとも1つのろ過部材と、
- 微生物培地を備える少なくとも1つの栄養層と
を備える装置において、
装置が、
- 前記ハウジングの内部空間に向かって開口している、ハウジングに配置された流体出口ポートを含んでおり、カバーが、流体入口ポートを中心としてカバー(3)の周囲縁部まで径方向に延在している内部空間の内側表面有しており、前記内側表面が、流体入口ポートに向かって傾斜または湾曲し、集束していることと、
- 装置が、栄養層を支持するように構成された支持グリルを含んでおり、
ハウジングの底部が、流体出口ポートを中心としてハウジングの側壁まで径方向に延在している表面を有しており、前記表面が、流体出口ポートに向かって傾斜し集束していることと
を特徴とする装置に関する。
【0012】
有利には、本発明による装置において、流体は装置を通過し、ハウジングの底部およびフィルタ上で停滞せず、これにより、液体が装置を素早く通過し、そのための力をそれほど必要とせず、栄養層の侵出を防止することが確保され、最適な条件下で微生物が収集され、最適な条件下で培養されることが確保される。さらに、カバーの内側表面の傾斜は、装置内で流体の分配を改善するのに役立ち、すべての流体がフィルタ全体に均一に分配されて、微生物がフィルタ上で確実に均一に分配されることを確保し、これにより、偽陰性を生じさせることがあるフィルタ上の微生物凝集の形成が防止される。
【0013】
有利には、装置は、2つの糞便汚染物、たとえば大腸菌およびエンテロコッカス菌を定量および検出するように設計される。
【0014】
本発明において、「ポート」という用語は、長手方向に中央オリフィスが通っている流路を意味する。
【0015】
本発明による装置は、好ましくは垂直方向で、つまり流体入口ポートおよび流体出口ポートが垂直に位置付けられた状態で使用される。
【0016】
本明細書において、垂直方向に位置付けられた物体とは、重力の方向に対して平行な方向に配置された物体のことである。
【0017】
本発明の1つの特徴によれば、流体は液体、たとえば水であるか、流体は気体、たとえば空気である。
【0018】
本発明の別の特徴によれば、カバーの内側表面の傾斜は、厳密に+4°超である。好ましくは、カバーの内側表面の傾斜は、好ましくは+5°~+15°であり、より好ましくは実質的に10°である。
【0019】
本発明の別の特徴によれば、底部の表面の傾斜は、厳密に0°未満である。好ましくは、底部の表面の傾斜は、好ましくは-5°~-10°であり、より好ましくは-6.5°~-7.5°である。
【0020】
本発明の別の特徴によれば、流体入口ポートは、ハウジングの内部空間に向かってカバーの内側表面よりも突出している。
【0021】
好ましくは、流体入口ポートは、カバーの実質的に中心に配置されている。
【0022】
本発明の別の特徴によれば、入口ポートは、ストッパと協働するように設計された、カバーの外側に延在している第1の端部を有している。
【0023】
本発明の別の特徴によれば、流体入口ポートは、内部空間の内側に延在している第2の端部を有しており、第2の端部は、内部空間に向かって開口した少なくとも1つの横方向オリフィスを有している。
【0024】
本発明の別の特徴によれば、少なくとも1つの横方向オリフィスは、カバーの内側表面に向かって流体を少なくとも部分的に噴霧するように配向されている。
【0025】
本発明の別の特徴によれば、入口ポートは、好ましくは互いに対向して配置された少なくとも2つの横方向オリフィスを有している。
【0026】
本発明の別の特徴によれば、流体出口ポートは、ストッパと協働するように設計された、ハウジングの外側に延在している第1の端部を有している。
【0027】
本発明の別の特徴によれば、流体入口ポートは、ハウジングの底部と同一平面上にある第2の端部を有している。
【0028】
本発明によれば、ろ過部材は、流体入口ポートから所与の距離hを置いてハウジングに配置されている。有利には、所与の距離hは、厳密に1mm超であり、好ましくは1.5mm~5mmであり、より好ましくは2.5mm~3.5mmである。装置が培養されるときに、微生物が成長でき、容易に観察可能なコロニーを形成するために、ろ過部材は、所与の距離hになくてはならない。この所与の距離は、前記微生物が成長するのに必要な空気の最小体積に応じて異なる。
【0029】
本発明の別の特徴によれば、入口ポートおよび流体出口ポートがストッパによって遮断されると、本発明による装置は流体密状態になる。
【0030】
本発明の特徴によれば、カバーは透明または半透明であり、それにより、培養後に微生物コロニーを観察することができる。
【0031】
本発明の特徴によれば、ハウジングは実質的に円筒形状または多角形状である。
【0032】
本発明の特徴によれば、ハウジングは、カバーの縁部と相補的に協働するように形成された第1の周方向支承面を有している。有利には、カバーとハウジングは、超音波によって互いに溶接されている。
【0033】
本発明によれば、ハウジングは、内部空間に延在した、ろ過部材の周囲部分を受けるように形成された少なくとも1つの第2の支承面を有しており、前記第2の支承面は、カバーの一部分と協働するように形成されており、それによりろ過部材の周囲部分は、カバーとハウジングの間で、好ましくは流体が装置を通過するときにろ過部材が安定して静止してするように、均一にクランプ留めされて、漏れのないこと、およびすべての流体がろ過部材を通過することが確保される。
【0034】
本発明の別の特徴によれば、ハウジングの底部は、流体出口ポートに対して径方向に配置された支持リブを有している。
【0035】
本発明の特徴によれば、前記リブは、支持グリルを保持し、流体を流体出口ポートに向かって案内するように設計されている。
【0036】
本発明の特徴によれば、支持リブは、底部の表面から突出し、底部の前記表面に対して実質的に垂直方向に延在している。
【0037】
本発明の特徴によれば、地上の条件下で、つまりハウジングに対してカバーを封止する前に減圧が施されないときには、ハウジングの内圧はハウジングの外部の圧力と実質的に等しい。
【0038】
本発明の特徴によれば、支持グリルは、栄養層を支持するように設計されている。
【0039】
本発明の特徴によれば、支持グリルは、ろ過部材を支持するようにも設計されている。
【0040】
本発明の特徴によれば、支持グリルは、栄養層とハウジングの底部との間に配置されている。
【0041】
本発明の特徴によれば、支持グリルは、全体的に円筒形状または多角形状である。
【0042】
本発明の特徴によれば、支持グリルは、グリル全体にわたって分配された複数の貫通穴を有しており、この複数の貫通穴は、栄養層を通過してきた流体を底部の表面全体にわたって分配して、前記液体をより素早く排出するのに役立ち、液体が装置内で停滞することが防止される。
【0043】
本発明の特徴によれば、支持グリルは、好ましくは、ハウジングの底部に配置された支持リブに載っている。
【0044】
本発明の1つの特徴によれば、液体の通過中に栄養層の変形を防止するために、支持グリルは、好ましくは、上に位置付けられる栄養層と同じ大きさおよび形状である。
【0045】
本発明の1つの特徴によれば、支持グリルが摩擦によりハウジングおよび内部空間に保持されるように、支持グリルの周囲は、ハウジングの形状にぴったり嵌まるように形成されている。
【0046】
本発明の1つの特徴によれば、ハウジングは、支持グリルを受けるように設計された、より具体的には支持グリルの周囲縁部を受けるように設計された第3の支承面25を有している。
【0047】
本発明の1つの特徴によれば、第3の支承面は、ハウジングの内部空間の内側に延在しており、ハウジングの外部ショルダである。
【0048】
本発明の1つの特徴によれば、ろ過膜は流体透過性であり、特に気体に対する、または粘性のある液体に対する透過性を有しており、それにより、あらゆる固形粒子のない微生物ろ過が可能になる。
【0049】
本発明の別の特徴によれば、ろ過部材は、微生物、好ましくは細菌に対して不透過性のろ過部材であり、それにより前記少なくとも1つのろ過部材の表面に同微生物を保持することができる。
【0050】
本発明の特徴によれば、ろ過部材は、栄養層とは別個である。
【0051】
本発明の特徴によれば、ろ過部膜は、栄養層に含まれた栄養素および任意の添加物に対して透過性である。
【0052】
本発明の特徴によれば、ろ過部材は多孔質膜であり、たとえばラテックス、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(ビニリデン)フルオライド、ポリカーボネイト、ポリスチレン、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、セルロース、またはセルロースとニトロセルロースの混合物など、これらの材料のうちの1つもしくは複数の材料、またはこれらの材料の誘導体から作られてよい。
【0053】
有利には、ろ過部材は、栄養層の表面の上に表面を有しており、それにより前記栄養層の表面が全体的にろ過部材によって覆われる。
【0054】
好ましくは、ろ過部材は白色か白色と同様の色であり、このことは、ろ過部材の表面の色付きコロニーの区別を最適化するのに役立つ。代替的に、白色またはクリーム色のコロニーを見やすくするために、ろ過部材は暗色であってもよい。
【0055】
有利には、栄養層の再水和後に、その栄養素および任意の添加物がろ過部材の上側表面を通過できるようにし、その通過を最適化するとともに、ろ過された細菌や酵母菌などが、ろ過部材の上側表面に向かって反対方向に移動するのを防止または制限するために、ろ過部材のろ過容量および親水性が利用される。
【0056】
有利には、ろ過部材は、その表面に細菌、酵母菌、およびカビ菌を保持するために、直径が0.01μm~0.8μm、好ましくは0.2μm~0.6μmの孔を有している。特定の実施形態によれば、ろ過手段は、直径が0.25μm~0.6μm、たとえば0.3μm~0.6μm、または0.4μm~0.6μmの孔を有している。代替的に、透析膜など、測定可能な孔を有していない層が使用されてもよい。たとえば、ろ過部材は、米国ペンシルバニア州15275、ピッツバーグ、インダストリドライブ300所在のFisher Scientific Companyにより販売されている「Fisherbrand(商標) General Filtration Membrane Filters」シリーズの膜、または米国フロリダ州34474、オカラ、SW1stレーン5350所在のZefon Internationalにより製造されている「Nitocellulose Membrane Filters」シリーズの膜とすることができる。
【0057】
本発明の特徴によれば、栄養層は、ろ過部材の下に配置され、好ましくは前記ろ過部材に接触している。
【0058】
本発明の特徴によれば、栄養層は、微生物培地を収容した支持体を含んでいる。
【0059】
本発明の特徴によれば、支持体は、レーヨン、綿、天然セルロース繊維、もしくはカルボキシメチルセルロースなどの化学修飾セルロース繊維、ポリアクリレート塩、アクリレート/アクリルアミドのコポリマーなどの吸収性もしくは高吸収性の化学ポリマーといった、好ましくは非常に保水容量の大きい様々な吸収性化合物から作られてよい。
【0060】
本発明の別の特徴によれば、支持体に、液体状の微生物培地が注入されてよい。
【0061】
有利には、微生物培地は、有利には脱水されていてもよく、つまり、微生物の発達に不適合な水分活性(Aw)を有していてもよい。代替的に、支持体は、粉末状の乾いた微生物培地またはその原料で覆われるかそれを注入されてもよい。代替的に、脱水後に粉末を加えることにより、液体の注入が実施されてもよい。
【0062】
微生物培地とは、微生物の生存および/または成長に必要な栄養素、特に、糖を含む炭水化物、ペプトン、成長促進剤、無機塩類、および/またはビタミンなどのうちの1つまたは複数を含む培地のことである。実際、当業者であれば、その当業者にとって利用可能なよく知られた基準に則り、標的微生物に応じて微生物培地を選択するであろう。栄養層は、以下のような添加物を含んでもよい。
- 特定の有機体の1つの種/株の成長および発達を、別の有機体の種/株よりも促進するための阻害剤または抗生物質など、1つまたは複数の選択的添加剤
- 緩衝剤、着色剤。
【0063】
全般的に、栄養層は、直接または間接的に検出可能な信号を用いて標的微生物の酵素活性または代謝活性を検出するために使用される基質も含むことができる。直接検出については、蛍光マーカまたは発色マーカとして作用する部分に、この基質を結合させることができる。間接検出については、本発明による栄養層が、基質の消費により起こるpH変動に対する感応性を有するpHインジケータをさらに含んで、標的微生物の成長を明らかにすることができる。前記pHインジケータは、発色団または発蛍光団とすることができる。例示的な発色団は、ニュートラルレッド、アニリンブルー、およびブロモクレゾールブルーである。4-メチルウンベリフェロン、ヒドロキシクマリンの誘導体、およびレゾルフィンの誘導体は、すべて発蛍光団である。したがって、本発明による方法を実施するために使用されることが好ましいPC-PLC蛍光基質は、4-メチル-ウンベリフェリル-コリンリン酸(4MU-CP)である。
【0064】
本発明による1つの特徴によれば、栄養層の微生物培地は、本発明による装置の使用前の配送構成では脱水されている。この場合、脱水した微生物培地を栄養層の支持体に乾燥注入した後に、栄養層はカレンダ処理操作にかけられてよい。カレンダ処理により発生する圧力および熱によって、栄養層の支持体の脱水された微生物培地が、経時的に保持され安定した状態に維持されて、栄養素および任意の添加物を栄養層に保持することが確保される。また、栄養層のカレンダ処理は、栄養層の表面を平坦で滑らにするのに役立つ。また、カレンダ処理は、結果的に栄養層が圧縮されることから、栄養層の再水和を、カレンダ処理されていない栄養層に比べて加速するのに役立つ。支持体が繊維から作られている場合には、脱水された培地が栄養層に存在することに関連したこの圧縮により、栄養層の毛細管容量が大幅に増大して、ほぼ瞬時の再水和を引き起こす。このことは、栄養層の表面に当接して配置されている別個の微生物ろ過部材の吸引現象にも寄与することができる。こうして、微生物ろ過部材は、栄養層に押し当てられることが可能になり、それによりろ過部材と栄養層との間の空間が除去または縮小され、微生物ろ過手段の表面上で微生物の最適な成長および/または生存が確保される。このことは、微生物ろ過部材と栄養層とが別々の場合に、これらの間の結合手段の必要性(たとえば、結合層の必要性)を不要にするのに役立つ。そのような結合手段は、再水和された栄養層から微生物ろ過手段に存在している微生物への、栄養素および任意の添加物の移動を遅くし、それによりこれらの微生物が成長および/または生存する機会を低減することから、結合手段を不要にすることは大きな利点である。
【0065】
好ましくは、栄養層は、2019年4月8日出願の特許明細書FR19/03751に記載の微生物培養装置とすることができる。
【0066】
本発明の特徴によれば、栄養層は、粉末状の脱水された微生物培地の一部またはすべてを含む微生物培養装置であって、少なくとも実質的に平坦な上側面を有する吸収性のある親水性材料から作られた少なくとも2つの部分を有しており、前記粉末状の脱水された微生物培地が、2つの隣接した部分の間に配置されており、前記微生物培地が粉末状の少なくとも1つのゲル化剤を含んでいる、微生物培養装置である。
【0067】
様々な吸収性材料、親水性材料、および非水溶性材料を使用して、本発明による微生物培養装置の吸収性材料部分を作ることができる。これらの材料は、吸収容量、水溶液を保持できる容量、および水溶液をあらゆる方向に通過させることができる性能に応じて、主に選択される。
【0068】
本発明の特徴によれば、吸収性材料部分は、短い不織繊維の基質から作られて、構造的完全性および機械的硬さを提供する組立体を形成する。特に好適な基質は、天然セルロース繊維(綿など)または合成セルロース繊維(レーヨンなど)、修飾セルロース繊維(たとえば、カルボキシメチルセルロースおよびニトロセルロース)、ならびに吸収性のある化学ポリマー繊維(ポリアクリレート塩およびアクリレート/アクリルアミドのコポリマーなど)から作られる。有利には、吸収性材料部分は、セルロース繊維から作られた不織布から作られる。
【0069】
本発明において、所与の装置の、吸収性のある親水性材料部分は、同じ質量密度を有してもよいし、異なる質量密度を有してもよい。同様に、本発明による所与の微生物培養装置の、吸収性のある親水性材料部分は、同じ厚さを有してもよいし、異なる厚さを有してもよい。
【0070】
本発明の1つの特徴によれば、吸収性のある親水性材料部分は、0.045g/cm~0.10g/cmの質量密度、好ましくは0.05g/cm~0.07g/cmの質量密度を有している。
【0071】
本発明による所与の微生物培養装置の、吸収性のある親水性材料部分は、0.5mm~2mmの厚さを有していてよい。好ましくは、吸収性のある親水性材料部分は、0.8mm~1.8mmの厚さ、より好ましくは1mm~1.5mmの厚さを有している。吸収性のある親水性材料部分の表面は、1cm~40cm、好ましくは10cm~30cm、より好ましくは15cm~25cmである。
【0072】
本発明の特徴によれば、吸収性のある親水性材料部分は、2mL超、好ましくは3mL超の水分量を保持することができる。したがって、カレンダ処理後に25cmの表面および1mmの厚さを有する多孔質支持体は、3mLの水分を保持できることになる。
【0073】
本発明の特徴によれば、微生物培養装置には、カレンダ処理操作を実施済みである。カレンダ処理により発生した圧力および熱により、微生物培養装置内の1つまたは複数のゲル化剤を含んでいる脱水された反応培地が、経時的に保持され、安定した状態に維持されて、栄養素などの様々な要素を、吸収性のある親水性材料部分の間に確実に保持することができるようになる。
【0074】
好ましくは、カレンダ処理は、周囲温度よりも高い温度で、好ましくは30℃~60℃の温度で実施される。60℃を下回る温度により、培地内の易熱性化合物が変性しないことが確保される。
【0075】
また、カレンダ処理により、反応培地が微生物培養装置内に維持され、それによりその取扱いを容易にすること確保される。
【0076】
本発明の別の特徴によれば、培地は、同じく粉末状の少なくとも1つのゲル化剤も含んでいる。分析すべき液体により活性化され再水和されると、1つまたは複数のゲル化剤は、特定の度合いの構造的完全性および機械的硬さを有する統一体を形成するのに役立つ。さらに、培地と接触することにより、1つまたは複数のゲル化剤は、ゼラチン状の硬さを微生物培養装置に与え、これにより微生物の定着が促進され、栄養素または活性剤など、培地を構成する要素が、微生物に可能な限り近づくことができるようになる。
【0077】
本発明の別の特徴によれば、ゲル化剤は、キサンタンガム、アルギン酸、ジェランガム、ガラクトマンナンガム、ローカストビーンガム、デンプン、またはこれらの混合物のうちの1つである。
【0078】
好ましくは、本発明による装置の培地は、少なくとも1つのゲル化剤を0.0030g/cm~0.020g/cm含んでいる。
【0079】
また、本発明は、少なくとも1つの流体供給部と、本発明による少なくとも1つの装置であって、流体入口ポートによって、流体供給部に接続されている装置とを備える組立体に関する。
【0080】
有利には、組立体は、本発明による第1の装置と並列に取り付けられた、本発明による第2の装置も含んでいる。
【0081】
本発明の別の特徴によれば、組立体は、互いに並列に取り付けられた、本発明による複数の装置を含んでいる。
【0082】
有利には、複数の装置は、同一であってもよいし、異なる種類の微生物に専用のものであってもよい。
【0083】
本発明の別の特徴によれば、流体出口ポートは、受け容器に接続されてもよいし、されなくてもよい。
【0084】
本発明の特徴によれば、本発明による1つまたは複数の装置は、産業用配管または他の構造体の区分に据え付けられてもよい。
【0085】
本発明の特徴によれば、装置は、100mLの液体を分析することができる容積を有している。
【図面の簡単な説明】
【0086】
非限定的な例として与えられ、添付の概略図を参照しながら説明される本発明の実施形態の以下の説明から、本発明をより深く理解することができる。添付の概略図は以下の通りである。
【0087】
図1】本発明による、汚染を特定するための装置の斜視図である。
図2図1に示す装置の中央断面図である。
図3図2の詳細図である。
図4】ハウジングに嵌まった支持グリルを示す、本発明による装置の部分斜視図である。
図5】本発明による装置のカバーを示す下方斜視図である。
図6】本発明による装置のハウジングの内側を示す斜視図である。
図7】本発明による装置のカバーおよびろ過部材の断面図である。
図8】本発明による装置のハウジングの断面図である。
図9】本発明による装置の第1の使用モードの第1のステップを示す概略図である。
図10】本発明による装置の第1の使用モードの第2のステップを示す概略図である。
図11】本発明による装置の第1の使用モードの第3のステップを示す概略図である。
図12】本発明による装置の第2の使用モードの第1のステップを示す概略図である。
図13】本発明による装置の第2の使用モードの第2のステップを示す概略図である。
図14】本発明による装置の第2の使用モードの第3のステップを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0088】
本発明による、微生物による流体の汚染を特定するための装置1は、特に図2に示してあるように、ハウジング2と、カバー3と、ろ過部材4と、栄養層5と、グリル6とを含んでいる。
【0089】
図1に示してあるように、外側からはカバー3とハウジング2しか見えない。有利には、カバー3とハウジング2は、超音波によって互いに封止されている。図2の断面図によれば、ろ過部材4は、ハウジング2の内部空間に配置され、栄養層5は、ろ過部材3の下に、好ましくはこのろ過材料と接触して配置され、支持グリル6は、栄養層5とハウジング2の底部22との間に配置されている。
【0090】
本発明によれば、ろ過膜4は流体透過性であり、特に気体に対する、または粘性のある液体に対する透過性を有しており、それにより、あらゆる固形粒子のない微生物ろ過が可能になる。
【0091】
また、装置1は、図1に示してあるように、流体入口ポート11と流体出口ポート12とを含んでいる。流体入口ポート11は、カバー3に位置付けられおり、流体出口ポート12はハウジング2に、好ましくはハウジング2の底部に位置付けられている。流体入口ポート11および流体出口ポート12は、図2に示してあるように、ハウジング2の内部空間に向かって開口している。入口ポートおよび流体出口ポートがストッパによって遮断されると、本発明による装置は流体密状態になる。
【0092】
たとえば、図2に示してあるように、流体入口ポート11は、ハウジング2の内部空間に向かってカバー3の内側表面31よりも突出している。好ましくは、流体入口ポート11は、カバー3の実質的に中心に配置されている。流体入口ポートは、ストッパ(図示せず)と協働するように設計された、カバー3の外側に延在する第1の端部11aと、内部空間の内側に延在する第2の端部11bとを有しており、第2の端部には、内部空間に向かって開口し、カバー3の内側表面31に向かって流体を少なくとも部分的に噴霧するように配向された少なくとも1つの横方向オリフィス11cが設けられている。
【0093】
図2の例に示してあるように、流体出口ポート12は、ストッパと協働するように設計された、ハウジング2の外側に延在している第1の端部12aと、ハウジング2の底部22と同一平面上にある第2の端部12bとを有している。
【0094】
流体入口ポート11および流体出口ポート12は、カバー3またはハウジング2の底部に実質的に交差した、好ましくはそれらに対して垂直な軸線に沿って、それぞれ延在している。図2に示してある例では、流体入口ポート11と流体出口ポート12とは、互いに対向するように位置合わせおよび配置されている。
【0095】
図1図2図6、および図8を参照しながら、装置1のハウジング2について以下でより詳細に説明する。図1に示してあるように、ハウジング2は実質的に円筒形状である。
【0096】
図2に示してあるように、ハウジング2は、少なくとも1つの側壁21と底部22とによって境界が定められた内部空間を有している。
【0097】
図2および図8は、ハウジング2の断面図を示しており、これらの図は、カバー3の縁部33と相補的に協働するように形成された第1の周方向支承面23を示している。さらに、本発明によれば、ハウジング2は、内部空間に延在した、ろ過部材4の周囲部分41を受けるように形成された少なくとも1つの第2の支承面24を有しており、前記第2の支承面24は、カバー3の一部分34と協働するように形成されており、それによりろ過部材4の周囲部分41が、図3に示してあるように、カバー3とハウジング2との間でクランプ留めされる。さらに、ハウジング2は、支持グリル6を受けるように設計された、より具体的には支持グリル6の周囲縁部65を受けるように設計された第3の支承面25を有している。図8に示してあるように、第3の支承面25は、ハウジング2の内部空間の内側に延在しており、ハウジング2の外部ショルダ26である。
【0098】
図8に示してあるように、それぞれの支承面23、24、25は異なる直径を有しており、有利には、第1の支承部分23は、第2の支承部分24よりも大きい直径を有しており、第2の支承部分24は、第3の支承部分25よりも大きい直径を有している。
【0099】
図6に明確に示してあるように、ハウジング2の底部22には、支持グリル6を支持し、流体出口ポート12に向かって流体を案内するように設計された複数の支持リブ27がある。支持リブ27は、流体出口ポート12に対して径方向に配置されている。図8の断面図に示してあるように、支持リブ27は、底部22の表面から突出し、底部22の前記表面に対して実質的に垂直方向に延在している。
【0100】
特に図8に示してあるように、ハウジング2の底部22は、流体出口ポート12を中心としてハウジング2の側壁21まで径方向に延在している表面28を有しており、前記内側表面28は、流体の排出を促進するために、流体出口ポート12に向かって傾斜し集束している。図2および図8に示してある例では、底部22の表面28の傾斜βは、厳密に0°未満であり、-5°~-10°である。底部が平坦な場合には、流体が一部しか排出されないか、全く排出されないことを示す試験を、出願人は実施済みである。
【0101】
図1図2図5、および図7を参照しながら、装置1のカバー3について以下でより詳細に説明する。
【0102】
図1に示してあるように、カバー3は、流体入口ポート11の下にある実質的に円筒形状の基部を有している。カバー3は、ハウジング2の内部空間を閉鎖する内側表面31を有している。カバー3の内側表面は、流体入口ポート11を中心として、カバー3の周囲縁部32まで径方向に延在しており、前記内側表面31は、流体入口ポート11に向かって傾斜し集束している。したがって、内側表面31は、流体入口ポート11から延在してカバー3の周囲縁部32まで広がった、全体的に円錐台形状を有している。図示していない変形形態では、内側表面は湾曲していてもよい。
【0103】
図2および図7に示してある例では、カバー3の内側表面31の傾斜αは、厳密に+4°超であり、+5°~+15°である。カバーの内側表面が4°以下の傾斜を有する場合には、流体がろ過部材4全体にわたって均一に分配されないことを示す試験を、出願人は実施済みである。
【0104】
図7に示してあるように、ろ過部材4は、流体入口ポート11から所与の距離hを置いてハウジング2に配置されている。有利には、所与の距離hは、厳密に1mm超であり、好ましくは1.5mm~5mmである。実際に、出願人が実施した試験では、本発明による装置1が培養されるときに微生物が成長できるようにするためには、ろ過部材4は所与の距離hになくてはならないことが示されている。所与の距離hは、前記微生物が成長するのに必要な空気の最小体積に応じて異なる。図1図2図5、および図7に示してある例では、カバー3は透明または半透明であり、これにより微生物の成長を観察することができる。
【0105】
本発明の特徴によれば、支持グリルは、栄養層およびろ過部材を支持するように設計されている。
【0106】
図2および図4を参照しながら、装置1の支持グリル6について以下でより詳細に説明する。
【0107】
図2に示してあるように、支持グリル6は、栄養層5とハウジング2の底部22との間に配置されている。支持グリル6は、全体的に円筒形状を有しており、栄養層5と同じ大きさである。
【0108】
図4に示してあるように、支持グリル6は、グリル6全体にわたって分配された複数の貫通穴61を有しており、この複数の貫通穴61は、栄養層5を通過してきた流体を底面22の表面28全体にわたって分配して、前記流体を可能な限り素早く排出するのに役立つ。
【0109】
図2に示してあるように、支持グリル6は、ハウジング2の支持リブ27に載っている。図2および図3に示してあるように、支持グリル6は、ハウジング2の第3の支承面25に載った周囲縁部65を有している。
【0110】
図示していない変形形態では、グリルはハウジングの第3の支承面25だけに載っており、支持リブは任意選択である。
【0111】
図9図14を参照しながら、本発明による装置の考えられる2つの使用法を以下で説明する。
【0112】
図9図11に示してある第1の使用法によれば、図9に示してあるように、分析すべき流体を収容した、ピストンを含むシリンジ100または任意の他の要素が、装置1の流体入口ポート11に接続され、収集装置101または別のシリンジが、装置1の流体出口ポート12に接続される。三方弁102が、装置1とシリンジ100との間に位置付けられて、シリンジ100が装置1の流体入口ポート11に間接的に接続される。まず、図9に示してあるように、弁102の第1の入口102aがシリンジ100に接続されて閉鎖され、第2の入口102bが開放されて空気入口に接続され、出口102cも開放されて装置の流体入口ポート11に接続される。これにより、装置が使用される前および分析/ろ過すべき流体が導入される前に、真空を生成することができる。
【0113】
その後、図10に示してあるように、弁102の第1の入口102aが挿入され、流体が装置1に注入されて、シリンジ100のピストンにより、装置1に流体を押し込むことができるようになり、次いで弁の第2の入口102bが閉鎖され、出口102cが開放されて、流体が装置1を通って流れることができるようになる。
【0114】
分析すべき流体がすべて装置1に注入されると、図11に示してあるように、流体は収集装置101に回収される。
【0115】
図12図14に示してある第2の使用法によれば、図12に示してあるように、分析すべき流体を収容したタンク103が、装置1の流体入口ポート11に接続され、ピストンを含む、流体を吸引することが可能なシリンジ104または任意の他の要素が、装置1の流体出口ポート12に接続される。三方弁105が、装置1とシリンジ100との間に位置付けられて、シリンジ100が装置1の流体入口ポート11に間接的に接続される。まず、図12に示してあるように、弁102の第1の入口105aが収集装置103に接続されて閉鎖され、第2の入口105bが開放されて空気入口に接続され、出口105cも開放されて装置1の流体入口ポート11に接続される。
【0116】
その後、図13に示してあるように、弁105の第1の入口105aが開放され、収集装置103に収容された流体が、装置1の下流に位置付けられたシリンジ104によって吸引され、次いで、弁の第2の入口105bが閉鎖され、出口105cが開放されて、流体が装置1を通って流れることができるようになる。
【0117】
分析すべき流体がすべて装置1に吸引されると、図14に示してあるように、流体はシリンジ104に回収される。当然ながら、シリンジおよびタンクまたは収集装置の容量は、分析すべき流体の体積に適したものである。
【0118】
上述した装置の使用法にかかわらず、流体の注入が完了すると(図11および図14)、空気入口110を介して無菌空気を注入して、停滞した水分を装置1のろ過部材4の表面から除去することが有利である。
【0119】
実際に、ろ過部材の表面にわずかでも流体が存在すると、細菌コロニーが広がったり、偽陰性が生じたり、または培養ステップ後のコロニー計数が困難になったりすることがある。このために、シリンジ100またはタンク103により弁102、105を介して無菌空気が吸引され、次いで装置1に注入されて、ろ過部材4の表面が乾かされる。
【0120】
これらの使用法の利点は、これらの使用技術が簡単であること、これらの使用技術に労力が不要であること(特に最初の使用)、ワークフローが全体で1分未満であること、これらの動作を実施するのに実験室設備が不要であること、微生物学の資格を有する人員が不要であること、および動作の再現性が非常に高いことである。
【0121】
当然ながら、本発明は、説明しかつ/または添付図面に図示した実施形態に限定されない。特に、異なる要素の構成という観点から、または技術的等価物との置換により、本発明に修正が加えられてもよいが、それによりこれらの修正が本発明の保護範囲から外れることはない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12-14】