(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】蓄電素子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/30 20060101AFI20231221BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20231221BHJP
H01M 50/545 20210101ALI20231221BHJP
H01M 50/552 20210101ALI20231221BHJP
H01M 50/50 20210101ALI20231221BHJP
H01G 11/26 20130101ALI20231221BHJP
H01G 11/12 20130101ALI20231221BHJP
H01G 11/72 20130101ALI20231221BHJP
H01G 11/76 20130101ALI20231221BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20231221BHJP
H01M 50/102 20210101ALN20231221BHJP
【FI】
H01M10/30 Z
H01M10/04 Z
H01M10/04 W
H01M50/545
H01M50/552
H01M50/50 201Z
H01G11/26
H01G11/12
H01G11/72
H01G11/76
H01G11/84
H01M50/102
(21)【出願番号】P 2021570574
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 JP2020001340
(87)【国際公開番号】W WO2021144928
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】西村 和也
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-206659(JP,A)
【文献】特開2018-206575(JP,A)
【文献】国際公開第2014/092031(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/145378(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00-10/39
H01M50/50-50/598
H01G11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定める対向方向に間隔を空けて互いに対向する一対の外側対向壁を有する外側集電体と、
前記一対の外側対向壁の前記対向方向内側に配置され、前記対向方向に間隔を空けて互いに対向する一対の内側対向壁を有する内側集電体と、
前記一対の外側対向壁と前記一対の内側対向壁との間に形成された空間に配置された電極体と、
を備える蓄電素子であって、
前記電極体は、
正極体と、負極体と、これら正極体および負極体の間に介装されたセパレータとを含むシート状の電極積層体によって、前記対向方向に直交する予め定める積層方向に複数積層される単位電極層を形成し、前記積層方向に隣接する単位電極層が、前記対向方向および前記積層方向に垂直な延在方向の端部において屈曲することにより連なるように構成されており、
各前記単位電極層を構成して前記積層方向に並ぶ正極体は、前記外側集電体および前記内側集電体のいずれか一方となる一方集電体にそれぞれ接触することにより、一方集電体に電気的に接続されており、
各前記単位電極層を構成して前記積層方向に並ぶ負極体は、前記外側集電体および前記内側集電体のいずれか他方となる他方集電体にそれぞれ接触することにより、他方集電体に電気的に接続されている、蓄電素子。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電素子において、
前記電極体は、シート状の電極積層体の前記延在方向両端部がそれぞれ屈曲するように、巻回または折り畳みされることにより前記単位電極層が複数積層されるように形成されている、蓄電素子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蓄電素子において、
各単位電極層をそれぞれ構成する正極体および負極体の少なくとも一方は、前記対向方向に並ぶ一対の対向壁の両方に接触して、対応する集電体に電気的に接続されている、蓄電素子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の蓄電素子において、前記電極体の、前記単位電極層が、前記延在方向の所定範囲にわたって、前記対向方向の寸法が同じ長さに形成された部分を有する蓄電素子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の蓄電素子において、前記電極体の各単位電極層が、前記積層方向から見て前記延在方向および前記対向方向に沿う辺をそれぞれ有する矩形形状に形成されている蓄電素子。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の蓄電素子において、
前記電極体は、この電極体を前記単位電極層の積層方向に貫通し、前記内側対向壁が
嵌合する貫通孔が形成されており、
前記貫通孔は、前記延在方向に沿って延びる長孔状に形成されている蓄電素子。
【請求項7】
請求項6に記載の蓄電素子において、前記貫通孔の前記延在方向長さは、前記内側対向壁の延在方向長さよりも大きく形成されている蓄電素子。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の蓄電素子において、前記外側対向壁および前記内側対向壁の少なくともいずれかには、接触する前記電極体の位置ずれを防ぐ凹凸が形成されている蓄電素子。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の蓄電素子において、前記外側対向壁および前記内側対向壁の少なくともいずれかには、前記対向方向の変形を防ぐ補強構造を有する蓄電素子。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の蓄電素子を複数直列に接続してなる蓄電素子モジュー
ルであって、
積層方向に隣接する2つの前記蓄電素子の一方の蓄電素子の外側集電体と他方の蓄電素子の内側集電体とが一体に形成された接続集電体ユニットを有し、
前記接続集電体ユニットは、前記積層方向に隣接する2つの蓄電素子を
嵌合接続する接続構造を有する蓄電素子モジュール。
【請求項11】
正極体と、負極体と、これら正極体および負極体の間に介装されたセパレータとを含んで予め定める積層方向に積層する複数の単位電極層を形成する電極体であって、
予め定める延在方向に延びて、予め定める積層方向に積層される2つの延在部と、
前記2つの延在部の延在方向一端部にそれぞれ連なり、一方の延在部から延在方向一方に進むにつれて延在方向他方に折り返して他方の延在部に連なる屈曲する屈曲部とを備え、
電極体は、積層方向に貫通する貫通孔が形成され、
前記延在方向および前記積層方向に直交する対向方向外側に露出して集電体と電気的に接続される外側露出面と、貫通孔に対向して対向方向内側に露出して集電体と電気的に接続される内側露出面とを備える電極体。
【請求項12】
シート状の正極体、負極体、および2つのセパレータをそれぞれ準備するシート準備工程と、
前記2つのセパレータ間に、前記正極体および負極体の一方を積層配置し、前記2つのセパレータの一方の外側に、前記正極体および負極体の他方を積層配置した単位電極層を有するシート状の電極積層体を形成する積層工程と、
前記電極積層体をその延在方向に巻回することによって、前記単位電極層を積層方向に複数有する電極体を形成する巻回工程と、
前記正極体および前記負極体が、それぞれ、前記電極体から前記積層方向および前記延在方向に直交する対向方向に露出する正極体露出縁部および負極体露出縁部を有するように設定する露出縁部設定工程と、
間隔を空けて互いに対向する一対の外側対向壁を有する外側集電体と、前記一対の外側対向壁の内側において配置された、前記一対の外側対向壁の対向方向に、間隔を空けて互いに対向する一対の内側対向壁を有する内側集電体とを準備する集電体準備工程と、
前記正極体露出縁部を前記外側対向壁および前記内側対向壁のいずれか一方の対向壁に接触させ、前記負極体露出縁部を
前記外側対向壁および前記内側対向壁のいずれか他方の対向壁に接触させて、前記電極体、前記外側集電体および前記内側集電体を組み立てる蓄電素子組み立て工程と、
を含む、蓄電素子の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の製造方法において、
前記露出縁部設定工程が、
前記巻回工程よりも前に、前記
正極体露出縁部および前記
負極体露出縁部が形成されるように前記正極体、負極体およびセパレータ、または前記電極積層体を加工する露出用加工工程を含む、製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の製造方法において、
前記露出用加工工程が、前記正極体、負極体およびセパレータ、または前記電極積層体の幅方向内側において厚み方向に貫通するスリットを形成するスリット加工工程を含み、
前記シート準備工程が、正極用金属基体上に正極活物質を塗布する正極塗布工程と、負極用金属基体上に負極活物質を塗布する負極塗布工程とを含み、これら正極塗布工程および負極塗布工程のそれぞれが、前記スリット加工工程においてスリットが形成されるスリット領域を除くスリット外領域において延在方向に連続的に各活物質を塗布することを含む、製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の製造方法において、前記スリット加工工程が、前記正極塗布工程および前記負極塗布工程の後に行われる、製造方法。
【請求項16】
請求項14または15に記載の製造方法において、
前記スリット加工工程が、前記シート準備工程において、前記正極体、負極体およびセパレータに、それぞれ、前記スリットを形成することを含み、
前記シート準備工程が、前記正極体および前記負極体の一方の前記スリットの幅方向寸法を、他方の前記スリットの幅方向寸法よりも大きく形成し、かつ前記正極体および前記負極体の前記他方の幅方向寸法を、前記一方の幅方向寸法よりも大きく形成することを含む、製造方法。
【請求項17】
請求項12から16のいずれか一項に記載の製造方法において、
前記シート準備工程が、前記正極体および前記負極体の少なくとも一方を圧延する圧延工程を含み、
前記露出縁部設定工程が、圧延された前記正極体および/または前記負極体において、前記正極体露出縁部および/または前記負極体露出縁部を、前記圧延方向に直交する方向に沿って延びるように設定することを含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子の構造およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電素子構造、例えば電池構造の一つとして、内外の二重に配置された円筒状の正極、負極の各集電体の間にドーナツ状の積層構造の電極体を配置したものが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された電池では、ドーナツ状に形成したシート状の正極体、負極体およびセパレータを多数積層することによって電極体を構成している。これらのシート状体をベースとなるベースシートから切り抜く工程や積層する工程が必要になる。また切り抜かれたドーナツ状シートを積層数に応じて準備する必要がある。また例えば切り抜いたシート状体を積層させる工程を手作業で行う場合には、多大な労力、時間を要する。このため、単位時間あたりに製造可能な電極体を増大させにくい。
【0005】
本発明の目的は、上記の課題を解決するために、単位時間あたりに製造可能な電極体の数量を増大することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するために、本発明に係る蓄電素子は、
予め定める対向方向に間隔を空けて互いに対向する一対の外側集電体と、
前記一対の外側集電体の前記対向方向内側に配置され、前記対向方向に間隔を空けて互いに対向する一対の内側集電体と、
前記一対の外側集電体と前記一対の内側集電体との間に形成された空間に配置された電極体と、
を備える蓄電素子であって、
前記電極体は、
正極体と、負極体と、これら正極体および負極体の間に介装されたセパレータとを含むシート状の単位電極層が、前記対向方向に直交する予め定める積層方向に複数積層され、かつ、前記積層方向に隣接する単位電極層が、前記対向方向および前記積層方向に垂直な延在方向の端部において屈曲することにより連なるように構成されており、
各前記単位電極層をそれぞれ構成する各正極体は、前記外側集電体および前記内側集電体のいずれか一方となる一方集電体にそれぞれ接触することにより、一方集電体に電気的に接続されており、
各前記単位電極層をそれぞれ構成する各負極体は、前記外側集電体および前記内側集電体のいずれか他方となる他方集電体に接触することにより、他方集電体に電気的に接続されている。
【0007】
この構成によれば、電極体として、単位電極層が延在方向の端部で連なった屈曲構造に形成されて、複数の単位電極層の積層構造を実現することができる。これによって単位電極層の数に応じてシート状体を切り分ける必要がなく、蓄電素子組み立時において部品点数を削減することができる。また切り分ける作業や切り分けたシート状体を積層させる作業を不要とすることで、作業数を削減することができる。このようにして単位時間あたりに製造可能な電極体の数量を増大することができる。
【0008】
本発明の一実施形態に係る蓄電素子において、シート状の電極積層体の前記延在方向両端部がそれぞれ屈曲するように、巻回または折り畳みされることにより前記単位電極層が複数積層されていてもよい。この構成によれば、積層方向に並ぶ3つ以上の単位電極層を1つのシート状体で形成することができ、部品点数の削減とともに、作業工数を削減することができる。
【0009】
本発明の一実施形態に係る蓄電素子において、各単位電極層をそれぞれ構成する正極体および負極体の少なくとも一方は、前記対向方向に並ぶ一対の対向壁の両方に接触して、対応する集電体に電気的に接続されていてもよい。この構成によれば、一対の対向壁をそれぞれ集電体として機能させることができ、電極体内で電子が負極から正極に移動する距離を短くすることができ、蓄電素子内の内部抵抗を低減することができる。
本発明の一実施形態に係る蓄電素子において、前記電極体の、前記単位電極層が、前記延在方向の所定範囲にわたって、前記対向方向の寸法が同じ長さに形成された部分を有していてもよい。この構成によれば、対向方向の寸法が同じ長さに形成される部分によって、対向方向の端面を直線状に形成することができる。これによって対向壁に電極体を線接触させやすく、電極体と集電体との接触不良を抑えることができる。たとえば積層方向に隣接する複数の単位電極層の対向方向の寸法が同じ長さに形成される部分が形成されることで、集電体の対向方向の端面を平面状に形成することができる。これによって対向壁に電極体を面接触させやすく、電極体と集電体との接触不良をさらに抑えることができる。
【0010】
本発明の一実施形態に係る蓄電素子において、前記電極体の各単位電極層が、前記積層方向から見て前記延在方向および前記対向方向に沿う辺をそれぞれ有する矩形形状に形成されていてもよい。この構成によれば、積層方向から見た形状が円形に形成される場合に比べて、立方空間あたりの密度を高めることができる。
【0011】
本発明の一実施形態に係る蓄電素子において、前記貫通孔は、前記対向方向および積層方向に直交する延在方向に沿って延びる長孔状に形成されていてもよい。この構成によれば、貫通孔を長孔とすることで、貫通孔が円形に形成される場合に比べて、内側接触面を長く形成しやすく、蓄電素子内の内部抵抗を低減することができる。
【0012】
本発明の一実施形態に係る蓄電素子において、前記貫通孔の前記延在方向長さは、前記内側対向壁の前記延在方向長さより大きく形成されていてもよい。この構成によれば、電極体を屈曲させた際に、貫通孔において発生する位置ずれに対して、内側対向壁と確実に接触させるためのマージンを確保することができ、電極体と内側対向壁との接触不良を防ぐことができる。
【0013】
本発明の一実施形態に係る蓄電素子において、前記外側対向壁および前記内側対向壁の少なくともいずれかには、接触する前記電極体の位置ずれを防ぐ凹凸が形成されていてもよい。この構成によれば、電極体と対向壁との接触不良を防ぐことができ、集電効率の低下を防ぐことができる。
【0014】
本発明の一実施形態に係る蓄電素子において、前記外側集電体および前記内側集電体の少なくともいずれかは、前記対向方向の変形を防ぐ補強機構を有していてもよい。この構成によって、集電体の変形を抑えることで、正極体、負極体と対向壁との接触不良を防ぐことができ、集電効率の低下を防ぐことができる。
【0015】
本発明に係る蓄電素子モジュールは、上記いずれかの蓄電素子を複数直列に接続してなる蓄電素子モジュールであって、積層方向に隣接する2つの前記蓄電素子の一方の蓄電素子の外側集電体と他方の蓄電素子の内側集電体とが一体に形成された接続集電体ユニットを有し、前記接続集電体ユニットは、前記積層方向に隣接する2つの蓄電素子を篏合接続する接続構造を有する。この構成によれば、上述した製造コストを低減できる蓄電素子同士を直列接続するための部材や工程が省かれるので、蓄電素子モジュールの低コスト化をさらに実現できる。
【0016】
本発明に係る電極体は、正極体と、負極体と、これら正極体および負極体の間に介装されたセパレータとを含んで予め定める積層方向に積層する複数の単位電極層を形成する電極体であって、予め定める延在方向に延びて、予め定める積層方向に積層される2つの延在部と、前記2つの延在部の延在方向一端部にそれぞれ連なり、一方の延在部から延在方向一方に進むにつれて延在方向他方に折り返して他方の延在部に連なる屈曲する屈曲部とを備え、電極体は、積層方向に貫通する貫通孔が形成され、前記延在方向および前記積層方向に直交する対向方向外側に露出して集電体と電気的に接続される外側露出面と、貫通孔に対向して対向方向内側に露出して集電体と電気的に接続される内側露出面とを備える電極体である。この電極体は、複数積層する場合の部品点数を削減することができるとともに、製造作業を簡単化することができる。これによってこの電極体を用いて構成される蓄電素子についても、製造コストを低減できる。
【0017】
本発明に係る蓄電素子の製造方法は、
シート状の正極体、負極体、および2つのセパレータをそれぞれ準備するシート準備工程と、
前記2つのセパレータ間に、前記正極体および負極体の一方を積層配置し、前記2つのセパレータの一方の外側に、前記正極体および負極体の他方を積層配置した単位電極層を有する帯状の電極積層体を形成する積層工程と、
前記電極積層体をその延在方向に巻回することによって、前記単位電極層を積層方向に複数有する電極体を形成する巻回工程と、
前記正極体および前記負極体が、それぞれ、前記電極体から前記積層方向および前記延在方向に直交する対向方向に露出する正極体露出縁部および負極体露出縁部を有するように設定する露出縁部設定工程と、
間隔を空けて互いに対向する一対の外側対向壁を有する外側集電体と、前記一対の外側対向壁の内側において配置された、前記一対の外側対向壁の対向方向に、間隔を空けて互いに対向する一対の内側対向壁を有する内側集電体とを準備する集電体準備工程と、
前記正極体露出縁部を前記外側対向壁および前記内側対向壁の一方の集電壁に接触させ、前記負極体露出縁部を前記外側対向壁および前記内側対向壁の他方の集電壁に接触させて、前記電極体、前記外側集電体および前記内側集電体を組み立てる蓄電素子組み立て工程と、を含む。
【0018】
この構成によれば、電極体として、単位電極層が延在方向の端部で連なった屈曲構造に形成して、複数の単位電極層の積層構造を実現することができる。これによって単位電極層の数に応じてシート状体を切り分ける必要がなく、蓄電素子組み立時において部品点数を削減することができる。また切り分ける作業や切り分けたシート状体を積層させる作業を不要とすることで、作業数を削減することができる。
【0019】
本発明の一実施形態に係る製造方法において、前記露出縁部設定工程が、前記巻回工程よりも前に、前記正極露出縁部および前記負極露出縁部が形成されるように前記正極体、負極体およびセパレータ、または前記電極積層体を加工する露出用加工工程を含んでいてもよい。この構成によれば。巻回工程後の露出縁部の形成を不要とすることができる。すなわち、巻回された後の電極体に加工を施すと巻きずれ、すなわち構成層の位置ずれが生じやすいが、これを回避することができる。
【0020】
本発明の一実施形態に係る製造方法において、
前記露出用加工工程が、前記正極体、負極体およびセパレータ、または前記電極積層体の幅方向内側において厚み方向に貫通するスリットを形成するスリット加工工程を含み、
前記シート準備工程が、正極用金属基体上に正極活物質を塗布する正極塗布工程と、負極用金属基体上に負極活物質を塗布する負極塗布工程とを含み、これら正極塗布工程および負極塗布工程のそれぞれが、前記スリット加工工程においてスリットが形成されるスリット領域を除くスリット外領域において延在方向に連続的に各活物質を塗布することを含いんでいてもよい。
この構成によれば、電極積層体に、シート準備段階で、スリット外領域に正極および負極の活物質を連続的に塗布するので、単位集電体に切り分けたシート毎に活物質をそれぞれ塗布する場合に比べて、電極体の製造に要する時間を短縮することができる。
【0021】
本発明の一実施形態に係る製造方法において、前記スリット加工工程が、前記正極塗布工程および前記負極塗布工程の後に行われてもよい。この構成によれば、スリット加工を行う段階ですでに各金属基体のスリット外領域に活物質が塗布されているので、スリットの位置決めが容易になる。しかも、活物質によって強度が増しているので、スリット加工を行う際の金属基体の保持が容易になる。したがって、スリット加工工程を効率的に行うことができる。
【0022】
本発明の一実施形態に係る製造方法において、
前記スリット加工工程が、前記シート準備工程において、前記正極体、負極体およびセパレータに、それぞれ、前記スリットを形成することを含み、
前記シート準備工程が、前記正極体および前記負極体の一方の前記スリットの幅方向寸法を、他方の前記スリットの幅方向寸法よりも大きく形成し、かつ前記正極体および前記負極体の前記他方の幅方向寸法を、前記一方の幅方向寸法よりも大きく形成することを含んでいてもよい。この構成によれば、巻回工程後に容易に露出縁部が形成されるので、巻回工程後の電極体に対する加工を省略または簡易化することができる。
【0023】
本発明の一実施形態に係る製造方法において、前記シート準備工程が、前記正極体および前記負極体の少なくとも一方を圧延する圧延工程を含み、前記露出縁部設定工程が、圧延された前記正極体および/または前記負極体において、前記正極体露出縁部および/または前記負極体露出縁部を、前記圧延方向に直交する方向に沿って延びるように設定することを含んでいてもよい。この構成によれば、圧延による正極体,負極体の表面のひび割れや抵抗増大といった影響を低減することができる。
【0024】
請求の範囲および/または明細書および/または図面に開示された少なくとも2つの構成のどのような組合せも、本発明に含まれる。特に、請求の範囲の各請求項の2つ以上のどのような組合せも、本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
この発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施形態の説明から、より明瞭に理解されるであろう。しかしながら、実施形態および図面は単なる図示および説明のためのものであり、この発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。この発明の範囲は添付の請求の範囲によって定まる。添付図面において、複数の図面における同一の符号は、同一または相当する部分を示す。
【
図1】本発明の一実施形態に係る蓄電素子を用いた蓄電素子モジュールを模式的に示す縦断面図である。
【
図2】
図1の蓄電素子モジュールを示す分解斜視図である。
【
図3】
図1の蓄電素子の要部を拡大して示す縦断面図である。
【
図4】
図1の蓄電素子の内部構成を示す横断面図である。
【
図5】
図1の蓄電素子に用いられる電極体の一変形例を模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図1の蓄電素子を製造する方法における、シート準備工程に含まれる正極(負極)塗布工程の一例を示す平面図である。
【
図7】
図1の蓄電素子を製造する方法における、積層工程で作製される電極積層体を示す平面図である。
【
図8】
図1の蓄電素子の鍔に放熱フィンを設けた変形例を模式的に示す側面図である。
【
図9】
図1の蓄電素子の電極体の配置構成の一変形例を示す横断面図である。
【
図10】
図1の蓄電素子に用いられる電極体の一変形例を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る蓄電素子モジュールである電池モジュールBの構造を模式的に示す断面図である。
図2は、電池モジュールBを示す分解斜視図である。本実施の一形態の電池モジュールBは、蓄電素子である単位電池としての電池Cを複数直列に接続して構成される。たとえば電池Cは、水酸化ニッケルを主要な正極活物質とし、水素吸蔵合金を主要な負極活物質とし、アルカリ系水溶液を電解液とするニッケル水素二次電池として構成されている。
【0028】
電池Cは、
図3に示すように、複数の単位電極層13aが積層された電極体13と、単位電極層13aの正極体17にそれぞれ接続される正極側集電体と、単位電極層13aの負極体19にそれぞれ接続される負極側集電体とで構成されている。
【0029】
また、本実施形態では、後述する積層方向Zに対して電池同士が物理的、電気的に接続されることにより、
図1に示す電池モジュールBが構成される。具体的には、電池モジュールは、隣接する2つの電池Cのうち、一方の電池C1の負極側集電体が、他方の電池C2の正極側集電体に電気的に接続されることで、2つの電池が電気的に直列接続される。
【0030】
具体的には、一方の電池C1の負極側集電体と、他方の電池C2の正極側集電体は、連結部分を介して接続される一体構造に形成されている。これによって一方の電池C1の電子が、一方の電池の負極側集電体、連結部分および他方の電池の正極側集電体をそれぞれ介して、他方の電池の電極体13に移動可能となる。また本実施形態の集電体は、一方の電池と、他方の電池とを連結する接続集電体ユニットUとして機能する。
【0031】
本実施形態では、隣接する電池C同士は、同じ構造を有しているので、隣接する電池のうちの一方の電池C1について注目して主に説明し、他方の電池C2について説明を省略することがある。
【0032】
図1に示すように、本実施形態では、電池C1は、正極側集電体を構成する外側集電体1と、負極側集電体を構成する内側集電体3とを備える。外側集電体1は、予め定める対向方向Xに間隔を空けて互いに対向する一対の外側対向壁1aを有する。内側集電体3は、前記対向方向Xに間隔を空けて互いに対向する一対の内側対向壁3aを有する。内側集電体3の一対の内側対向壁3aは、対向方向Xに関して、一対の外側対向壁1aの内側の領域に配置されている。言い換えると、1つの電池C1を構成する内側対向壁3a、同じ電池C1を構成する外側対向壁1aに対して、対向方向Xから見て積層方向Zに重なる位置に構成される。さらに言い換えると、1つの電池C1を構成する内側対向壁3a、同じ電池C1を構成する外側対向壁1aに対して、1つの電池C1を構成する電極体13にそれぞれ接触可能に形成される。
【0033】
本明細書では、このように配置された上記一対の外側対向壁1aの対向方向Xを、単に「対向方向X」と呼ぶ。また本明細書では、単位電極層13aが積層される方向を「積層方向Z」と呼ぶ。対向方向Xは、積層方向Zに直交する方向となる。さらに本明細書では、対向方向Xおよび積層方向Zに直交する方向を、「延在方向Y」と呼ぶ。
【0034】
電池C1の電極体13は、一対の外側対向壁1aと一対の内側対向壁3aとの間に形成された壁間空間11aを含む収容領域11に配置されている。収容領域11には電極体13と共に電解液が収容されている。本実施例では、電極体13は、積層方向Zに延びる軸線まわりに一周するループ状に形成される。これによって電極体13は、対向方向Xに対して外側対向壁に覆われて外側対向壁に対向し、対向方向Xに対して内側対向壁3aを覆って内側対向壁3aに対向する。電極体13は、
図3に示すように、積層方向Zに複数積層されて並ぶ単位電極層13aを形成する。各単位電極層13aは、個別に集電体1,3にそれぞれ接触する。具体的には、単位電極層13aは、対向方向Xに対向する対向壁1a,3aに接触する。これによって各単位電極層13aは、集電体に電気的に並列接続される。したがって本単位電極層13aのそれぞれが、1つの電池C1を構成する外側対向壁1および内側対向壁3aに対して、それぞれ接触可能に形成される。
【0035】
また、上述したように本実施形態では、
図1の隣接する2つの電池C1,C2のうち、一方の電池C1の内側集電体3と他方の電池C2の外側集電体1とが一体に形成されて、接続集電体ユニットUを構成している。接続集電体ユニットUにおいて、一対の外側対向壁1aと内側対向壁3aとが対向方向Xに重ならない位置に配置されている。言い換えると、1つの接続集電体ユニットUを構成する内側対向壁3aは、同じ接続体集電ユニットUを構成する外側対向壁1aに対して、積層方向Zにずれた位置に配置される。さらに言い換えると、1つの接続集電体ユニットUは、積層方向Zに隣接する2つの電池C1,C2のうち、一方の電池C1の電極体13の対向方向X外側部分と、他方の電池C2の電極体13の対向方向Xの内側部分とにそれぞれ接触可能に構成される。
【0036】
より具体的には、
図2に示すように、本実施形態における接続集電体ユニットUは、外囲壁部5と、外囲蓋部7と、内囲壁部9と、内囲蓋部10とを有している。外囲壁部5は、一対の外側対向壁1aを含む。外囲壁部5は、少なくとも対向方向Xに電極体13を覆う形状に形成される。本実施例では、外囲壁部5は、積層方向Zに延びる軸線まわりに一周する筒状に形成される。また外囲壁部5は、上述する外側対向壁と、一対の外側対向壁の延在方向Yの両端部をそれぞれ連結する一対の外側連結壁12とを有する。
【0037】
本実施形態では、外囲壁部5は、矩形筒状に形成される。一対の外側対向壁1aは、対向方向Xに垂直な仮想平面に沿って延びる板状に形成される。また一対の外側連結壁12は、延在方向Yに垂直な仮想平面に沿って延びる板状に形成される。外囲壁部5の外形形状は、積層方向Zから見て延在方向Y寸法が対向方向X寸法に比べて大きい長方形形状に形成される。言い換えると、外側対向壁1aの延在方向Y寸法は、外側連結壁12の対向方向X寸法に比べて、大きく形成される。また外側対向壁1aは、外側連結壁12と積層方向Z寸法が同じに形成され、電極体13の積層方向Z寸法よりも大きく形成される。
【0038】
外囲蓋部7は、積層方向Zの一方側で外側対向壁1aと内側対向壁3aとを連結する連結部分を含む。また外囲壁部5は、積層方向Zの一方側で一対の外側対向壁1aを連結する連結部分を含む。本実施例では、外囲蓋部7は、外囲壁部5の積層方向Zの一方を覆う蓋状に形成される。外囲蓋部7は、外囲壁部5のうちで積層方向Zの一端側の周縁部をその全周にわたって連なる。したがって外囲蓋部7は、積層方向Zから見て外形形状が矩形形状に形成される。
【0039】
内囲壁部9は、一対の内側対向壁3aを含む。内囲壁部9は、外囲蓋部7から積層方向Zの一方側(外囲蓋部7に対して外側対向壁1aと反対側)に突設される。内囲壁部9は、少なくとも対向方向Xに電極体13で覆われる形状に形成される。本実施例では、内囲壁部9は、積層方向Zに延びる軸線まわりに一周する筒状に形成される。また内囲壁部9は、上述する内側対向壁3aと、一対の内側対向壁3aの延在方向Yの両端部をそれぞれ連結する一対の内側連結壁14とを有する。
【0040】
本実施形態では、内囲壁部9は、矩形筒状に形成される。一対の内側対向壁3aは、対向方向Xに垂直な仮想平面に沿って延びる板状に形成される。また一対の内側連結壁14は、延在方向Yに垂直な仮想平面に沿って延びる板状に形成される。内囲壁部9の外形形状は、積層方向Zから見て延在方向Y寸法が対向方向X寸法に比べて大きい長方形形状に形成される。言い換えると、内側対向壁3aの延在方向Y寸法は、内側連結壁14の対向方向X寸法に比べて、大きく形成される。また内側対向壁3aは、内側連結壁14と積層方向Z寸法が同じに形成され、電極体13の積層方向Z寸法よりも大きく形成される。
【0041】
内囲蓋部10は、積層方向Zの一方側で一対の外側対向壁1aと内側対向壁3aとを連結する連結部分を含む。また内囲壁部9は、積層方向Zの一方側で一対の内側対向壁3aを連結する連結部分を含む。本実施例では、内囲蓋部10は、内囲壁部95の積層方向Zの一方を覆う蓋状に形成される。内囲蓋部10は、内囲壁部9のうちで積層方向Zの一端側の周縁部をその全周にわたって連なる。したがって内囲蓋部10は、積層方向Zから見て外形形状が矩形形状に形成される。内囲蓋部10は、積層方向Zに貫通する貫通孔が形成されてもよい。これによって収容空間が密閉されることを防いで、温度変化による収容空間内の充填流体の膨張・縮小による影響を防ぐことができる。
【0042】
このように本実施形態では、外囲壁部5および内囲壁部9は積層方向Z外方から見てほぼ矩形状に形成されている。前記内囲壁部9が一方の電池C1の内側集電体1を構成し、前記外囲壁部5が他方の電池C2の外側集電体3を構成している。なお、本実施形態では、外囲壁部5および内側壁部9はそれぞれほぼ矩形筒状であるので、外側対向壁1a、内側対向壁3a以外にも互いに対向する壁(外側連結壁12、内側連結壁14)を有するが、本明細書では、後述する正極体17、負極体19と接触して集電し得る壁のみを「外側対向壁1a」、「内側対向壁3a」と呼ぶ。
【0043】
図1に示すように、電池モジュールBは、一方の接続集電体ユニットU1の一対の外側対向壁1aの内側で、これら外側対向壁1aに対向するように、他方の接続集電体ユニットU2の一対の内側対向壁3aが位置するように重ねられている。具体的には、電極体13の外側に外側対向壁1aが篏合し、電極体13の内側に内側対向壁3aが篏合することで、電池C同士が接続される接続構造が実現される。
【0044】
このように構成された接続集電体ユニットUを用いることにより、電極体13を介して接続集電体ユニットU同士が接続されることで複数の電池Cを電気的、物理的に接続することができる。その結果、電池C同士を直列接続するための部材が省かれるので、電池モジュールBの小型化および低コスト化を実現できる。
【0045】
本実施形態では、第1接続集電体ユニットU1の一対の外側対向壁1aと、第1接続集電体ユニットU1の外囲蓋部7と、第2接続集電体ユニットU2の一対の内側対向壁3aと、第2接続集電体ユニットU2の外囲蓋部7とによって画定された空間が、収容領域11を形成している。
【0046】
なお、第1接続集電体ユニットU1の外側集電体1と、第2接続集電体ユニットU2の外側集電体1との間には、絶縁性材料からなる絶縁シール部材15が介装されていてもよい。この絶縁シール部材15によって、隣接する電池C間の電気的絶縁が確保される。また絶縁シール部材に代えて、外側集電体同士の接触を防ぐ絶縁性のスペーサが設けられてもよい。
【0047】
図3に示すように、電極体13は、正極体17と、負極体19と、これら正極体17および負極体19の間に介装されたセパレータ21とを含むシート状の電極積層体43(
図7)によって構成される。電極体13は、積層方向Zに隣接する単位電極層13aが、延在方向Yの端部において屈曲することにより連なるように構成される。より具体的には、電極体13は、電極積層体43が巻回された後に、厚み寸法が薄くなるように、かつ対向方向Xに垂直な断面が略長方形状に偏平状に成形されることにより形成されている。
【0048】
本実施形態では、電極体13は、シート状の電極積層体43が巻回されることで、外形が矩形板状に形成される。電極体13は、その厚み方向が積層方向Zに沿うように配置され、厚み方向に垂直な面における長辺が延在方向Yに沿い、厚み方向に垂直な面における短辺が対向方向Xに沿うように配置される。電極体13は、単位電極層13aの重なりが表れる層露出面が対向方向Xに向くように配置される。電極体13の層露出面が外側対向壁1aに接触する外側露出面となる。
【0049】
電極体13は、厚み方向、すなわち積層方向Zに貫通し、前記内側対向壁3aが篏合するための貫通孔23が形成される。貫通孔23は、延在方向Yに沿って延びる長孔状に形成され、電極体13のうち対向方向Xの中間部分、具体的には対向方向Xの中央位置に形成される。電極体13は、貫通孔23に向けて対向方向Xに露出する面が、内側対向壁3aに接触する内側露出面となる。
【0050】
図3に示すように、単位電極層13aは、積層方向Zに並んで対向方向Xに平行に配置されたシート状の正極体17と、シート状の負極体19と、これら正極体17および負極体19の間に介装されたシート状のセパレータ21とを含んで構成されている。壁間空間11aにおいて、複数の単位電極層13aが積層方向Zに並ぶ。言い換えると、単位電極層13aは、電極体13の厚み方向(壁間空間11a、すなわち収容領域11の高さ方向)に複数積層されている。このように形成された電極体13の延在方向Yの両端部13bを除く部分が、単位電極層13aを複数積層した部分となる。
【0051】
図3に示すように、正極体17は、単位電極層13aを構成する残余部分から対向方向X外側に向けて露出する正極体露出部分を有する。負極体19は、単位電極層13aを構成する残余部分から対向方向X内側に向けて露出する負極側露出部分を有する。このように正極体露出部分と負極体19露出部分は、対向方向Xの内側か外側かで反対の向きに露出する。正極体17は、正極体露出縁部17aが外側対向壁1aに接触することによって、外側集電体1に電気的に接続されている。負極体19は、負極体露出縁部19aが内側対向壁3aに接触することによって内側集電体3に電気的に接続されている。
【0052】
このように、正極体17および負極体19にそれぞれ露出縁部17a,19aを設け、露出縁部17a,19aを対向壁1a,3aに接触させることによって電極体13と各集電体1,3との電気的接続が確保される。言い換えると、電極体13に対して、外側対向壁1aおよび内側対向壁3aを篏合させて接触させることで、電池C同士の接続と、集電体1,3と電極体13との電気的接続とを2つの工程で実現することができる。これにより、電極体13と集電体1,3とを接続するために新たな別作業が発生することがなく、電池モジュールBの単位時間当たりの製造数を増大させることができる。
【0053】
電極体13の、積層方向Zに隣接する複数の単位電極層13aは、延在方向Yの寸法が同じ長さに形成された部分を有している。これによって単位電極層13aの対向方向Xの端面を直線状に形成することができる。これによって対向壁に電極体13を面接触させやすく、電極体13と集電体1,3との接触不良を抑えることができる。たとえば積層方向Zに隣接する複数の単位電極層13aの対向方向Xの寸法が同じ長さに形成される部分が形成されることで、集電体1,3の対向方向Xの端面を平面状に形成することができる。これによって対向壁に電極体13を面接触させやすく、電極体13と集電体1,3との接触不良をさらに抑えることができる。
【0054】
より具体的には、電極体13の各単位電極層13aが、積層方向Zから見て(つまり平面視で)、延在方向Yおよび対向方向Xに沿う辺をそれぞれ有する矩形形状に形成されている。これによって立方空間あたりの体積エネルギー密度を高めることができ、出力可能な電力を高めやすくすることができる。また、電極体13の収容領域11を形成する外側集電体1および内側集電体3も、電極体13の形状に対応させて、上述したようにほぼ直方体形状に形成されている。電極体13および集電体1,3の形状をこのように構成することにより、電池Cや電池モジュールBが設置される空間を有効に利用して、電池の大型化を防ぐことができる。
【0055】
本実施形態において、電極体13は、対向方向Xに直交する面が、延在方向Yに直交する面よりも大型に形成される。これによって単位電極層13aにおいて集電体1,3と接触する領域を増大させることができ、電気抵抗を低減することができる。また電極体13の貫通孔23は、延在方向Yに沿って延びる長孔状に形成されている。
図4に示すように、貫通孔23の延在方向Y長さは、内側対向壁3aの延在方向Y長さより大きく形成される。この構成によれば、電極体13を屈曲させた際に、貫通孔23において発生する位置ずれに対して、内側対向壁3aと確実に接触させるためのマージンを確保することができ、電極体13と内側対向壁3aとの接触不良を防ぐことができる。
【0056】
また、同図に示すように、電極体13において、対向方向Xの寸法が、延在方向Yの寸法よりも短く設定されている。電極体13の対向方向Xの寸法を短くすることによって、電極体13内において荷電粒子が集電体まで移動する距離が短くなるので、電池の内部抵抗が低減される。
【0057】
本実施形態では、上述のように外側対向壁1aが正極集電体として形成され、内側対向壁3aが負極集電体として形成されている。本実施形態の電池Cでは、正極体および負極体のうち、内側対向壁3aに接触する方の面積が小さく形成される。したがって、本実施形態のニッケル水素二次電池のように、負極活物質により高価な材料を用いる場合には、この例のように内側対向壁3aを負極集電体とすることにより、電池全体の原料コストを抑えることができる。
【0058】
本実施形態では、電極体13を巻回状としており、正極体17、負極体19およびセパレータ21を巻き取る工程によって形成することができるので、後述する折り畳み式の電極体13に比べて短時間で電極体13を製造することができる。また、巻回状の電極体13では、延在方向Y端面の凹凸形成が防止される。
【0059】
本実施形態では、外囲連結壁によって、一対の外側対向壁1aをそれぞれ連結することで、電極体13を篏合させた場合に、外側対向壁1aの対向方向Xの変形を防ぐことができ、接触不良を防ぎやすい。同様に、外囲蓋部7によって、一対の外側対向壁1aをそれぞれ連結することで、電極体13を篏合させた場合に、外側対向壁1aの対向方向Xの変形を防ぐことができ、接触不良を防ぎやすい。
【0060】
電極体13の延在方向Y端部の屈曲する部分も、外側対向壁1aに接触させることにより、電極体13と集電体との接触面積を増やすことができる。さらに、本実施形態の電極体13と集電体は、平坦面で面接触しているので、曲面に面接触させる場合に比べて、より確実に接触させることができる。
【0061】
また、本実施形態では、シート状の単位電極層13aが延在方向Yの端部において連なるように構成されているので、電極体13を1つのユニットとして取り扱うことができ、故障、劣化が生じた場合に、単位電極層13a毎に離反することが防がれ、電極体13の交換が容易である。分解時には、正極層、負極層、セパレートに分離しやすく、再利用処理などが図りやすい。
【0062】
なお、本実施形態に係る電池Cの電極体13の具体的態様は、上記で説明した巻回式に限らない。例えば、
図5に変形例として示すように、電極体13は、上述の電極積層体43(
図7)を延在方向Yに複数回に折り畳むことによって、隣接する単位電極層13aの正極体17、負極体19およびセパレータ21のそれぞれが、延在方向Yの端部13bにおいて連なることにより屈曲するように構成されていてもよい。あるいは、電極体13は、プリーツ状に折り畳まれたセパレータの間にプレート状の正極体と負極体とが交互に積層された構造を有していてもよい。このような折り畳み式の電極体13の場合も、積層方向Zに貫通する貫通孔23が設けられたループ状に形成されてよい。電極体13を折り畳み構造とすることにより、折り畳みを繰り返して単位電極層13aの積層数を増やす場合も延在方向Yの大型化を防ぎやすい。
【0063】
なお、図示は省略するが、上記の電池Cおよび電池モジュールBは、以下の構成を有していてよい。
【0064】
電池C,電池モジュールBは、絶縁性材料から形成されたケーシングに覆われた状態で設置されていてよい。また、電池モジュールBには、モジュール全体についての正極側端子および負極側端子が設けられてよい。電池モジュールBの正極側端子および負極側端子は、積層されることにより直列に接続された複数の電池Cの、積層方向Zにおける両端に位置する正極集電体および負極集電体にそれぞれ接続される。また、電池モジュールBにおいて、例えばボルトのような締結手段によって、複数の電池Cに対して積層方向Zに押圧力が付与されていてもよい。
【0065】
次に、本実施形態に係る巻回式の電極体13を備える電池Cを製造する方法の例を説明する。
【0066】
本実施形態に係る製造方法は、シート準備工程、積層工程、巻回工程、露出縁部設定工程、集電体準備工程、および電池組み立て工程を含む。
【0067】
シート準備工程では、それぞれ帯状かつシート状の正極体17、負極体19、および2つのセパレータ21を準備する。
【0068】
より具体的には、シート準備工程は、
図6に示すように、正極基体17b上に正極活物質17cを塗布する正極塗布工程と、負極基体19b上に負極活物質19cを塗布する負極塗布工程とを含む。具体的には、同図に示すように、正極塗布工程および負極塗布工程は、ドクターブレード41を備えた塗工装置を用いて、シート状の金属製の基体17b,19bを延在方向Yに搬送しながら、活物質17c,19cを含むスラリーを連続的に添着させることにより行う。
【0069】
このように、本実施形態に係る電池Cにおいて、正極体17は、導電性素材からなる正極基体17bに正極活物質17c(本実施形態では水酸化ニッケル)を付着させて構成されている。負極体19は、導電性の板状部材からなる負極基体19bに負極活物質19c(本実施形態では水素吸蔵合金)を付着させて構成されている。セパレータ21(
図2)は、絶縁性の多孔質膜から形成されている。セパレータ21には電解液が含浸されている。
【0070】
正極基体17bおよび負極基体19bとしては、ニッケルめっきを施した鋼板を箔状に加工したものを用いているが、これに限らず、電気化学的な特性や機械的強度、耐食性などを考慮して、適宜選択することができる。また、正極基体17bと負極基体19bとに、異なる材料を用いてもよい。
【0071】
セパレータ21を形成する素材としては、例えば、ポリエチレン繊維やポリプロピレン繊維などのポリオレフィン系繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリフルオロエチレン系繊維、ポリアミド系繊維などを使用することができる。
【0072】
また、セパレータ21に含浸させる電解液としては、ニッケル水素二次電池で一般的に用いられているアルカリ系水溶液、例えば、KOH水溶液、NaOH水溶液、LiOH水溶液などを用いることができる。特には、アクリル酸カリウムを添加したKOH水溶液に粘性を与えてゲル状としたものを、セパレータ21に含浸させてシート状にしたものを使用することが好適である。
【0073】
図1に示した絶縁シール部材15を形成する絶縁性素材としては、本実施形態ではポリプロピレン樹脂を使用しているが、これに限らず、機械的な強度、耐熱性、耐電解液性などの観点から種々の材料を選択できる。
【0074】
本実施形態において、シート準備工程には、さらに、正極体17および負極体19をそれぞれ圧延する圧延工程が含まれる。この圧延工程により、シート状かつ帯状の正極体17および負極体19が、それぞれ、厚み方向に圧縮されることに起因して、幅方向に伸展する。このような圧延工程を経ることにより、正極体17および負極体19において、活物質が基体から剥がれにくくなる。もっとも、圧延工程は、正極体17および負極体19のいずれか一方のみに対して行われてもよく、圧延工程を省略してもよい。
【0075】
積層工程では、
図7に示すように、2つのセパレータ21間に、前記正極体17および負極体19の一方が積層配置され、前記2つのセパレータ21の一方の外側に、前記正極体17および負極体19の他方が積層配置された単位電極層13aを有する帯状の電極積層体43を形成する。
【0076】
巻回工程では、帯状の電極積層体43をその延在方向Yに巻回することによって、単位電極層13aを積層方向Zに複数有する電極体13(
図2)を形成する。
【0077】
露出縁部設定工程では、正極体17および前記負極体19が、それぞれ、前記電極体13から前記積層方向Zに直交する方向に露出する正極体露出縁部17aおよび負極体露出縁部19aを有するように設定する。
【0078】
本実施形態では、露出縁部設定工程は、前記巻回工程よりも前に、正極露出縁部および負極露出縁部が形成されるように正極体17、負極体19およびセパレータ21、または電極積層体43を加工する露出用加工工程を含んでいてよい。
【0079】
より具体的には、露出用加工工程は、例えば、スリット加工工程を含む。このスリット加工工程では、正極体17、負極体19およびセパレータ21、または電極積層体43の幅方向内側において厚み方向に貫通するスリット45を複数形成する。巻回工程において、正極体17、負極体19およびセパレータ21が、これらに形成された各スリット45が重なるように巻回されて多数積層されることにより、
図2に示すように電極体13に貫通孔23が形成されることになる。
【0080】
スリット加工工程において、正極体17、負極体19およびセパレータ21にスリット45を形成する場合、
図6に示すように、正極塗布工程および負極塗布工程のそれぞれが、スリット加工工程においてスリット45が形成されるスリット領域47を除くスリット外領域において延在方向Yに連続的に正極活物質17cおよび負極活物質19cを塗布することを含む。具体的には、本実施形態では、正極体17における幅方向の中央部に、同図において破線で示すスリット45が形成される。正極体17のスリット45が形成されることになるスリット領域47以外の領域のうち、スリット領域47の幅方向両側からわずかに離間した部分から、両外縁部を除く部分までの幅方向範囲に、延在方向Yに連続的に正極活物質17cを塗布する。負極塗布工程においてもほぼ同様の範囲に連続的に負極活物質19cを塗布する。
【0081】
ただし、上述したように、本実施形態では、完成した電池Cにおいて、外側対向壁1aに接するのが正極体17であり、内側対向壁3aに接触するのが負極体19であることから、正極体17の幅を負極体19の幅よりも大きく設定する。さらに、正極体17のスリット領域47の幅を、負極体19のスリット領域47の幅よりも大きく設定する。また、セパレータ21の幅を正極体17の幅と負極体19の幅の中間の寸法に設定し、セパレータ21のスリットの幅を、正極体17のスリットの幅と負極体19のスリットの幅の中間の寸法に設定する。このように正極体17、負極体19およびセパレータ21の寸法を設定することにより、これらを幅方向の中心が揃うように重ねて巻回することによって、正極体露出縁部17aおよび負極体露出縁部19aが形成される。このような正極体17、負極体19およびセパレータ21のスリット45を含む寸法設定が、露出用加工工程を構成する。
【0082】
なお、このように巻回工程の前にスリット加工工程を行う場合、巻回を繰り返すことにより電極体13の寸法が延在方向Yに増大することを考慮したうえで、複数のスリット45間の延在方向Yの間隔が設定される。
【0083】
また、このように正極体露出縁部17aおよび負極体露出縁部19aを設定した場合、帯状の正極体17および負極体19のそれぞれにおいて、各露出縁部17a,19aは、幅方向に直交する延在方向Y(長手方向)に沿って延びるように設けられることになる。上述のようにシート準備工程がさらに圧延工程を含む場合、各露出縁部17a,19aは、幅方向(対向方向X)である圧延方向に直交するように延びることになる。正極体17や負極体19を圧延することにより、正極体17および負極体19においてこのように露出縁部の延設方向を圧縮方向に直交するように設定し、このように設定された各露出縁部17a,19aを介して集電することにより、圧延によって生じ得る正極体17および負極体19表面のひび割れや、抵抗増大の影響を低減することができる。
【0084】
このような正極塗布工程および負極塗布工程の後に、上述のスリット加工工程が行われる。
【0085】
集電体準備工程では、
図1に示した、間隔を空けて互いに対向する一対の外側対向壁1a,1aを有する外側集電体1と、一対の外側対向壁1a,1aの内側において配置された、一対の外側対向壁1a,1aの対向方向Xに、間隔を空けて互いに対向する一対の内側対向壁3a,3aを有する内側集電体3とを準備する。
【0086】
外側集電体1および内側集電体3を形成する金属材料は、各集電体が接触して集電することになる正極および負極の各活物質の電気化学特性等を考慮して、長期間にわたり安定的に使用できるものを選択する。例えば、本実施形態のように電池Cがニッケル水素二次電池として構成されている場合、外側集電体1および内側集電体3のいずれも、例えばニッケルめっきを施した鋼板から形成することができる。他方、電池Cがリチウムイオン二次電池として構成されている場合、正極側集電体となる集電体(本実施形態では外側集電体1)を、例えばアルミニウム板から形成し、負極側集電体となる集電体(本実施形態では内側集電体3)を銅板またはニッケルめっき鋼板から形成する。
【0087】
また、本実施形態において、集電体準備工程では、より具体的には、
図1に示したように、複数の接続集電体ユニットUを作製する。外側集電体1および内側集電体3のいずれも同一の材料、例えば上述のニッケルめっき鋼板で形成する場合、例えば、ニッケルメッキ鋼板をプレス加工することによって接続集電体ユニットUを作製する。外側集電体1と内側集電体3とを異なる材料、例えば上述のアルミニウム板と銅板とから形成する場合には、これらの板材を重ねた状態でプレス加工することによって接続集電体ユニットUを作製する。
【0088】
電池組み立て工程では、正極体露出縁部17aが外側対向壁1aおよび内側対向壁3aの一方の対向壁に接触し、負極体露出縁部19aが前記外側対向壁1aおよび内側対向壁3aの他方の対向壁に接触するように電極体13、外側集電体1および内側集電体3を組み立てる。
【0089】
電池組み立て工程の後に、収容領域11に電解液を注入する注液工程が行われる。電解液の注入は、例えば、突出壁部9の天壁に設けた注液孔(図示せず。)を介して行われる。
【0090】
本実施形態の電池Cにおいては、外側対向壁1aおよび内側対向壁3aの、電極体13に接触する各面に、正極体17および負極体19の位置ずれを防ぐ凹凸が形成されていることが好ましい。より具体的には、外側対向壁1aの内周面および内側対向壁3aの外周面は、それぞれ、微細な凹凸が形成された粗面として形成されている。このような凹凸は、例えば複合メッキや段プレスによって形成することができる。この構成により、集電体に対する電極体13の位置ずれを防ぐことができ、集電体と電極層との接触不良を防ぐことができる。なお、この位置ずれを防止するための凹凸は、外側対向壁1aおよび内側対向壁3aのいずれか一方のみに設けられていてもよく、省略してもよい。
【0091】
図4に示すように、本実施形態において、集電体1,3には、それぞれ、対向方向Xの変形を防止する補強機構が設けられていてもよい。より具体的には、補強機構として、各対向壁の、正極体17および負極体19に接触しない側の面、すなわち外側対向壁1aの外周面および内側対向壁3aの内周面に、それぞれ、延在方向Yに直交する方向に延びる補強リブ25が等間隔に複数設けられていてもよい。この構成により、各対向壁1a,3aが変形することが防止されるので、外側対向壁1aおよいび内側対向壁3aの変形を防いで、変形に起因する接触不良を防ぐことができる。なお、補強機構は、外側対向壁1aおよび内側対向壁3aの一方のみに設けられていてもよく、省略してもよい。また、補強機構の具体的態様は、この例の補強リブ25に限定されない。
【0092】
本実施形態において、外側集電体1の、接続状態において正極体17と接触する領域以外の領域、すなわち図示の例では外囲壁部5の内周面のうち、外側対向壁1aの内周面以外の領域が絶縁性素材27によって被覆されていてもよい。外側集電体1の上記領域に替えて、または追加して、内側集電体3の、接続状態において負極体19と接触する領域以外の領域、すなわち突出壁部9の外周面のうち、内側対向壁3aの外周面以外の領域が絶縁性素材27によって被覆されていてもよい。このように集電体1,3を被覆することにより、電極体13と各集電体1,3との間の短絡を防止することができる。
【0093】
本実施形態においては、
図1および
図4に示すように、外側集電体1の開口側縁部に、鍔29が設けられている。このように鍔29を設けることにより、縁が冷却フィンの役割をすることで、外側集電体1を含む接続集電体ユニットUの放熱性が向上し、充放電時の電池Cの温度上昇を抑制することができる。さらに、
図8に変形例として示すように、鍔29の一部を切断したうえで折り曲げることにより、放熱フィン31を設けてもよい。放熱フィン31の形状、数、放熱フィン31を設ける場所は、図示の例に限定されない。もっとも、この鍔29を省略してもよい。鍔29を省略した場合には、この電池Cによって構成される電池モジュールB全体としての寸法が小さくなり、体積エネルギー密度を向上させることができる。
【0094】
また、本実施形態では、
図2に示すように、1つの電極体13に貫通孔23が形成される。もっとも、収容領域11に電極体13を配置する態様は上記の例に限定されない。例えば、
図9に変形例として示すように、互いに別個に形成した2つの電極体13を、一対の壁間空間11aのそれぞれに配置してもよい。言い換えると、貫通孔23の延在方向Y外側を除く部分に電極体13が配置されてもよい。また、一対の壁間空間11aのそれぞれに電極体13を配置することは必須ではなく、いずれか一方の収容領域壁間空間11aのみに電極体13を配置してもよい。
【0095】
また、1つの電極体13に貫通孔23を形成する場合、貫通孔23の数は1つに限定されず、延在方向Yに複数の貫通孔23を形成してもよい。この場合、内側対向壁3a,3aは、電極体13の複数の貫通孔23の数および位置に対応して、延在方向Yに間欠的に設けられる。このように複数の貫通孔23を形成した場合、電極体13の延在方向Yの位置ずれを防止することが容易になる。
【0096】
また、本実施形態では、電極体13の形状を平面視でほぼ矩形とし、外側集電体1および内側集電体3の形状もこれに対応させて平面視でほぼ矩形とした例を説明した。しかし、電極体13は、隣接する単位電極層13aの正極体17、負極体19およびセパレータ21のそれぞれが、延在方向Yの端部13bにおいて連なることにより屈曲するように構成されていれば、その形状は上記の例に限定されず、例えば
図10に示すように平面視でほぼ円形であってもよい。
【0097】
また、本実施形態では、外側集電体1が正極側の集電体として形成され、内側集電体3が負極側の集電体として形成されているが、正極側と負極側を入れ替え、外側集電体1が負極側の集電体として形成され、内側集電体3が正極側の集電体として形成されていてもよい。
【0098】
また、本実施形態では、複数の電池C1,C2を直列に接続して電池モジュールBとして構成した例を示したが、電池モジュールBとして使用する必要はなく、単一の電池C単独で使用してもよい。この場合にも、本実施形態について説明した効果を得ることができる。
【0099】
また、本実施形態で示した外囲壁部5、内囲壁部9の形状は一例にすぎず、他の形状であってもよい。例えば、外囲壁部5,内囲壁部9には部分的に貫通孔23が形成されていてもよいし、部分的に設けられていない間欠的な構造を有していてもよい。また、本実施形態では、外囲壁部5,内囲壁部9は積層方向Zに沿って平行に延びる壁によって形成されているが、積層方向Zに進むにつれて対向方向Xに傾斜するテーパ形状であってもよい。
【0100】
また、電池および電池モジュールBのみならず、上述した構成を有する電極体13も本発明の範囲に含まれる。
【0101】
上記の実施形態に係る電池Cおよびその製造方法によれば、複数の電池Cを直列接続する場合に、一方の電池Cの外側集電体1と他方の内側集電体3とを一体形成または電気的に接続することにより、容易にかつコンパクトに接続することができる。このような集電構造の電池Cにおいて、電極体13として、単位電極層13aが延在方向Yの端部13bで連なった屈曲構造の電極体13、例えば巻回構造の電極体13を採用することにより、単位電極層13aの数に応じてシート状体を切り分ける必要がなく、電池組み立時において部品点数を削減することができる。また切り分ける作業や切り分けたシート状体を積層させる作業を不要とすることで、作業数を削減することができる。このようにして単位時間あたりに製造可能な電極体13の数量を増大することができる。
【0102】
なお、上記の実施形態に係る電池モジュールBは、電池Cをニッケル水素二次電池として構成した例を説明したが、本発明は、これに限らず、各種一次電池および二次電池、例えば、ニッケルカドミウム二次電池やリチウムイオン二次電池などに適用することが可能である。
【0103】
また、上記の実施形態においては、蓄電素子の一例として電池を用いているが、本発明は電池以外の蓄電素子、例えばリチウムイオンキャパシタにも適用することができる。
【0104】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0105】
1 外側集電体
1a 外側対向壁
3 内側集電体
3a 内側対向壁
13 電極体
13a 単位電極層
17 正極体
17a 正極体露出縁部
19 負極体
19a 負極体露出縁部
21 セパレータ
23 貫通孔
43 電極積層体
B 電池モジュール(蓄電素子モジュール)
C 電池(蓄電素子)
U 接続集電体ユニット
X 対向方向
Y 延在方向
Z 積層方向