(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】高意匠建築材及び天井材
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
E04F13/08 E
(21)【出願番号】P 2022037049
(22)【出願日】2022-03-10
【審査請求日】2022-09-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小谷 卓矢
(72)【発明者】
【氏名】原 光平
(72)【発明者】
【氏名】内海 春佳
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-081417(JP,A)
【文献】特開平10-102743(JP,A)
【文献】特開2007-146563(JP,A)
【文献】特開2017-155521(JP,A)
【文献】特表2021-532291(JP,A)
【文献】特開2021-142743(JP,A)
【文献】特開2016-135967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00-13/30
E04F 15/00-15/22
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体の厚さが一定の基材の平面状の表面に、同じ色相でかつ凹凸のない平面状の表面模様が塗装により設けられている高意匠建築材であって、
上記平面状の表面模様は、凹部を表す複数の第1模様部と、凸部を表す複数の第2模様部とが交互に並んで配置されたものであり、
上記第2模様部の明度は第1模様部よりも高く、該第1及び第2模様部の間の色差ΔEはΔE=3~9の範囲にあることを特徴とする高意匠建築材。
【請求項2】
基材の表面の中央部を含む全体に亘り、互いに平行に延びる複数の凹溝と、該複数の凹溝間に位置し、互いに平行に延びる複数の凸条とが交互に並んで配置されている高意匠建築材であって、
上記凹溝は、平面状の底面及び傾斜した側面を有し開口側から該底面に向かって溝幅が小さくなる断面台形状でかつ上記底面が互いに同じ高さ位置に位置する一方、
上記凸条は、互いに同じ高さ位置の平面状の頂面を有し基部側から該頂面に向かって幅が小さくなる断面台形状とされ、
上記各
凹溝の底面及び側面に第1模様部が、また各凸条の頂面には、第1模様部と同じ色相でかつ第1模様部よりも高い明度を有する第2模様部がそれぞれ塗装により、該第1及び第2模様部の間の色差ΔEがΔE=3~9の範囲になるように設けられていることを特徴とする高意匠建築材。
【請求項3】
請求項1又は2の高意匠建築材において、
第1及び第2模様部は、インクジェット印刷により形成されていることを特徴とする高意匠建築材。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つの高意匠建築材において、
基材が吸音性能を有することを特徴とする高意匠建築材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つの高意匠建築材からなることを特徴とする天井材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高意匠建築材及び天井材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の建築材として、例えば特許文献1に示されるように、基材の表面に複数の凸部を並べて形成し、その一部の凸部の頂面を断面円弧状の凹面に形成する一方、他の凸部の頂面を平面にし、基材表面にインクジェット印刷による模様柄を形成するようにした建築材が提案されている。
【0003】
この建築材では、インクジェット印刷による意匠性を向上させるため、凸部間の溝部を挟んで塗料の塗り分けを行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば室内の天井に施工される天井材において、その表面(室内に対向する下面)に複数の凹部を掘り込みによって形成することで、その凹部と凹部以外の凸部とによって凹凸感を有する意匠性の高い天井材を得ることができるので好ましい。
【0006】
その場合、凹部と凸部とを一般的な天井材のように同じ色で塗装すると、凹凸部が形成されているにも拘わらず、それらの間の段差が識別し難く、凹凸部ないし陰影感のない平面状の模様にしか見えないことがあり、目の高さから離れた位置にある天井材では顕著となる。
【0007】
凹部の掘り込み量(その深さ)を深くして凸部との段差を大きくすれば、その段差を離れた位置でも視認できるようになる。しかし、凹部の深さを大きくすれば、その凹部の底部で天井材の厚さが部分的に薄くなってその強度が低下し、施工後に吸湿等により変形して撓む原因を招来することとなる。
【0008】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的は、表面に凹凸部のある天井材に限らず、表面に凹凸部のない建築材においても、その表面に形成する模様の色に工夫を加えることにより、建築材表面の凹凸感ないし陰影感を明確に視認できるようにして、建築材の意匠性の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明では、表面に形成する凹凸模様の色差に着目し、凹部の模様部と凸部の模様部との間に所定範囲の色差を形成して、その色差により凹凸感を確保できるようにした。
【0010】
具体的には、第1の発明は、全体の厚さが一定の基材の平面状の表面に、同じ色相でかつ凹凸のない平面状の表面模様が塗装により設けられている高意匠建築材であって、上記平面状の表面模様は、凹部を表す複数の第1模様部と、凸部を表す複数の第2模様部とが交互に並んで配置されたものであり、上記第2模様部の明度は第1模様部よりも高く、該第1及び第2模様部の色差ΔEはΔE=3~9の範囲にあることを特徴とする。
【0011】
また、第2の発明は、基材の表面の中央部を含む全体に亘り、互いに平行に延びる複数の凹溝と、該複数の凹溝間に位置し、互いに平行に延びる複数の凸条とが交互に並んで配置されている高意匠建築材であって、上記凹溝は、平面状の底面及び傾斜した側面を有し開口側から該底面に向かって溝幅が小さくなる断面台形状でかつ上記底面が互いに同じ高さ位置に位置する一方、上記凸条は、互いに同じ高さ位置の平面状の頂面を有し基部側から該頂面に向かって幅が小さくなる断面台形状とされている。そして、上記各凹溝の底面及び側面に第1模様部が、また各凸条の頂面には、第1模様部と同じ色相でかつ第1模様部よりも高い明度を有する第2模様部がそれぞれ塗装により、該第1及び第2模様部の色差ΔEがΔE=3~9の範囲になるように設けられていることを特徴とする。
【0012】
この第1及び第2の発明では、高意匠建築材の基材表面に第1及び第2模様部が設けられ、それらの模様部は、同じ色相ではあるが、凹部を表す、又は凹溝の底面及び側面に位置する第2模様部の明度が、凸部を表す、又は凸条の頂面に位置する第1模様部よりも高く、第1及び第2模様部の色差ΔEがΔE=3~9の範囲にある。このことから、第1の発明のように、全体の厚さが一定の基材の平面状の表面に凹凸のない平面状の第1及び第2模様部が塗装により形成されている建築材、或いは、第2の発明のように、基材の表面に複数の凹溝と、それら凹溝間に位置する複数の凸条とが交互に並んで配置され、その基材表面の凹溝の同じ高さ位置の平面状底面及び側面に第1模様部が、また凸条の同じ高さ位置の平面状頂面に第2模様部がそれぞれ塗装により形成されている建築材のいずれであっても、それら2つの模様部が明確に区別され、凹部を表す又は凹溝内面の第1模様部は、凸部を表す又は凸条頂面の第2模様部に対して明度の差と、ΔE=3~9の範囲にある色差ΔEとの違いによって凹部らしく見え、逆に言えば第2模様部は第1模様部に対して凸部らしく見えることとなる。そのため、高意匠建築材は離れた位置から見たとしても、その表面の模様部が明確な凹凸感ないし陰影感を呈するようになり、その凹凸感を明確に視認することができる。そのため、特に第2の発明のように、基材の表面に凹溝及び凸条を形成する場合であっても、その凹溝の掘り込み深さを深くせずとも済み、その凹溝の深さを大きくせずに凹溝及び凸条による凹凸感ないし陰影感を明確に視認することができるとともに、基材ないし高意匠建築材の強度を大に確保することができる。
【0013】
第3の発明は、第1又は第2の発明の高意匠建築材において、第1及び第2模様部は、インクジェット印刷により形成されていることを特徴とする。
【0014】
この第3の発明では、インクジェット印刷による塗装により基材表面の第1及び第2模様部に対し必要な色のインクを塗り分けることができる。このことにより、凹凸感、陰影感や素材感を容易に表現することができる。
【0015】
第4の発明は、第1~第3の発明のいずれか1つの高意匠建築材において、基材が吸音性能を有することを特徴とする。
【0016】
この第4の発明では、高意匠建築材の基材が吸音性能を有するので、表面の凹凸感ないし陰影感が明確に現れる吸音性能を持った高意匠建築材が容易に得られる。
【0017】
第5の発明は天井材に係り、この天井材は、第1~第4の発明のいずれか1つの高意匠建築材からなることを特徴とする。このことで、表面の凹凸感ないし陰影感が明確に現れる天井材が容易に得られる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明した如く、第1の発明では、全体の厚さが一定の基材の平面状の表面に同じ色相で凹凸のない平面状の表面模様が塗装により設けられている高意匠建築材として、平面状の表面模様は、凹部を表す複数の第1模様部と、凸部を表す複数の第2模様部とが交互に並んで配置されたものとした。また、第2の発明では、基材の表面の中央部を含む全体に亘り、底面及び傾斜した側面を有し該底面が同じ高さ位置に位置する複数の断面台形状の凹溝と、同じ高さ位置の頂面を有する複数の断面台形状の凸条とが互いに交互に並んで平行に配置されている高意匠建築材として、凹溝の底面及び側面に第1模様部が、また凸条の頂面には、第1模様部と同じ色相を有する第2模様部がそれぞれ塗装により設けられているものとした。そして、第1及び第2の発明では、第2模様部の明度は第1模様部よりも高くするとともに、第1及び第2模様部の色差ΔEをΔE=3~9の範囲にした。このことにより、離れた位置から見ても建築材表面の模様部が明確な凹凸感ないし陰影感を呈するようになり、その凹凸感を明確に視認して意匠性の向上を図ることができる。特に、基材の表面に凹溝及び凸条を形成する場合には、その凹溝の掘り込み深さを深くせずとも済み、建築材の強度を大に確保しながらその高意匠化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る高意匠建築材としての天井材の平面図である。
【
図3】
図3は、凸条の幅が小さい天井材のサンプルのうち明度の高い「Light」を示す平面図である。
【
図4】
図4は、サンプルのうち明度が中程度の「Medium」を示す平面図である。
【
図5】
図5は、サンプルのうち明度の低い「Dark」を示す平面図である。
【
図6】
図6は、凸条の幅が大きい天井材のサンプルのうち明度の高い「Light」を示す
図3相当図である。
【
図7】
図7は、凸条の幅が大きい天井材のサンプルのうち明度が中程度の「Medium」を示す
図4相当図である。
【
図8】
図8は、凸条の幅が大きい天井材のサンプルのうち明度の低い「Dark」を示す
図5相当図である。
【
図9】
図9は、3つのサンプルにインクジェット印刷で塗布した塗料の色特性を示す図である。
【
図10】
図10は、3つのサンプルに塗布された塗料の色差を示す図である。
【
図11】
図11は、実施例の天井材のサンプルを示す写真である。
【
図12】
図12は、比較例1の天井材のサンプルを示す写真である。
【
図13】
図13は、比較例2の天井材のサンプルを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0021】
図1~
図8は、いずれも本発明の実施形態に係る高意匠建築材としての2種類の天井材A1,A2(天井板)を示す。各天井材A1,A2は、図示しないが、例えば室内の天井部に互いに直交するメインバー及びクロスバーで形成された格子構造の空間部に配置されるように施工される。
【0022】
図1及び
図2に示すように、上記各天井材A1,A2は、例えば600mm角の正方形の板状の基材1を備えている。この基材1は例えば吸音性能を有するロックウール板からなり、このことで天井材A1,A2は吸音天井材となっている。
【0023】
上記基材1は厚さが例えば15mmの板材であり、その施工時に下面となる表面1aには、その表面1aに掘り込み加工をすることで、基材1の対向する1対の辺に沿って平行に延びる複数の凹部としての凹溝3,3,…が互いに等間隔を空けて形成され、凹溝3,3,…以外の基材1の表面1aには、凸部としての複数の凸条6,6,…が設けられている。このことで、基材1の表面1aに複数の凹溝3,3,…(凹部)と複数の凸条6,6,…(凸部)とが交互に並んで配置されている。
【0024】
具体的に、
図1~
図5に示される天井材A1はいずれも同じ構造のものであり、その表面1aに11本の凹溝3,3,…と、12本の凸条6,6,…とが形成されている。一方、
図6~
図8も互いに同じ構造の天井材A2を示し、その表面1aに6本の凹溝3,3,…と、6本の凸条6,6,…とが形成されている。
【0025】
図1~
図5に示す構造の天井材A1と、
図6~
図8に示す構造の天井材A2とはいずれも各凹溝3の構造が同じである。すなわち、
図2に示すように、各凹溝3は、開口側から底部3a側に向かって溝幅が徐々に小さくなる断面台形状のものであり、各凸条6も、基部側(凹溝3の底部3a側)から頂面6a側(凹溝3の開口側)に向かって幅が徐々に大きくなる断面台形状のものである。このことで、各凹溝3の両側の溝側面つまり各凸条6の両側の側面は、基材1の表面1aと直交する直交面ではなく、該直交面に対し傾斜したテーパ面となっている。また、各凹溝3の深さは例えば3mm、各凹溝3の底部3aの溝幅は例えば15.6mmである。
【0026】
これに対し、
図1~
図5に示す構造の天井材A1と、
図6~
図8に示す構造の天井材A2とは、基材1の表面1aの凹溝3の掘り込み数が異なるのに伴い、各凸条6の頂面6a(トップ面)の幅が異なり、
図1~
図5に示す構造の天井材A1の各凸条6の頂面6aの幅は、例えば32.2mmで細幅であるのに対し、
図6~
図8に示す構造の天井材A2の各凸条6の頂面6aの幅は、天井材A1よりも大きい例えば82.2mmで太幅である。
【0027】
各天井材A1,A2の基材1の表面1aには表面模様10として第1及び第2模様部11,12がインクジェット印刷によって設けられ、第1模様部11は上記各凹溝3の内部つまり凹溝3の底部3aないし溝側面に、また第2模様部12は各凸条6の頂面6aにそれぞれ形成されている。各凹溝3の内部に形成される第1模様部11と、各凸条6の頂面6aに形成される第2模様部12とは同じ色相であって同系色であるが、明度が異なっており、各凸条6の頂面6aの第2模様部12の明度は、各凹溝3内の第1模様部11の明度よりも高く、明るい色となっている。
【0028】
そして、上記第1模様部11と第2模様部12との間に色差ΔEがあり、その色差ΔEはΔE=3~9の範囲にある(3≦ΔE≦9)。この色差ΔEは、当該範囲を超えると、色の差が違和感となって発現するので、ΔE=3~9の範囲にあることが必要となる。上記色差ΔEは次式のように定義される。
【0029】
ΔE={(ΔL
*)
2+(Δa
*)
2+(Δb
*)
2}
1/2
ΔL
*:2つの模様部11,12の黒白色間の指数の差
Δa
*:2つの模様部11,12の緑赤色間の指数の差
Δb
*:2つの模様部11,12の青黄色間の指数の差
例えば、
図3~
図8は、いずれも600mm角の正方形板材の天井材A1,A2についてのサンプルを示し、
図3~
図5に示す天井材A1と、
図6~
図8に示す天井材A2とは、上記したように各凹溝3の溝幅が同じであるが、凹溝3,3間の凸条6の幅(頂面6aの幅)が異なり、
図6~
図8の天井材A2の凸条6の幅は、
図3~
図5の天井材A1よりも大きくなっている。この凸条6の幅が大小に異なる2種類のサンプルに対し、各種類毎にサンプルの明度(サンプル全体の明度)が異なる「Light」、「Medium」及び「Dark」の塗装がインクジェット印刷により施され、「Light」のサンプルの明度は「Medium」のサンプルよりも大きく、「Medium」のサンプルの明度は「Dark」のサンプルよりも大きくなっている(
図9参照)。また、この塗装により各サンプルの凹溝3内に第1模様部11が、また凸条6の頂面6aに第2模様部12がそれぞれ形成され、
図9に示すように、第1及び第2模様部11,12について塗料の色相H、明度V、彩度C、黒白色間の指数L
*、緑赤色間の指数a
*、青黄色間の指数b
*という色特性が異なっている。明度Vは色の属性の一つで、白(光の反射率100%)を10とし、黒(光の反射率0%)を0として表したものである。彩度Cも色の属性の一つで、無彩色を0とし、色みの割合が多くなると数値も大きくなる。尚、
図9では、凸条6の頂面6aはトップ面と記載している。
【0030】
指数L*(エルスター)は、「黒」を0とし、「白」を100として0~100をとり得る指数、指数a*(エースター)は、補色関係にある「緑」及び「赤」の間のうち「緑」を-60とし、「赤」を+60として-60~+60をとり得る指数、指数b*(ビースター)は、補色関係にある「青」及び「黄」の間のうち「青」を-60とし、「黄」を+60として-60~+60をとり得る指数である。
【0031】
このとき、
図10に示すように、凹溝3内の第1模様部11と凸条6の頂面6aの第2模様部12との間の指数L
*の差ΔL
*、指数b
*の差Δa
*、及び指数b
*の差Δb
*が求められ、これらの差から上記式により色差ΔEが得られる。具体的に、第1模様部11と第2模様部12との間の色差ΔEは、例えば「Light」のサンプルではΔE=7.45989、「Medium」のサンプルではΔE=8.94986、「Dark」のサンプルではΔE=3.04302となる。これらの結果、第1模様部11と第2模様部12との間の色差ΔEがΔE=3~9の範囲とされている。また、
図10に示すように、第1及び第2模様部11,12の間の色差ΔEは、両模様部11,12による天井材A1,A2全体の明度が低くなるのに連れて小さくなっている。
【0032】
尚、本実施形態では、凹溝3の深さは例えば3mmであるが、凹溝3の深さが深くなるほど色差ΔEを上記範囲内で小さくすればよく、基材1表面の好ましい凹凸感が容易に得られる。
【0033】
したがって、この実施形態においては、基材1の表面1aに複数の凹溝3,3,…と、それらの間に位置する複数の凸条6,6,…とが交互に並んで配置されている天井材A1,A2に対し、各凹溝3の内部に第1模様部11が、また各凸条6の頂面6aに、第1模様部11と同じ色相の第2模様部12がそれぞれ塗布により形成され、両模様部11,12は同じ色相ではあるが、凹溝3内の第2模様部12の明度が凸条6の頂面6aの第1模様部11よりも高く、第1及び第2模様部11,12の色差ΔEはΔE=3~9の範囲にある。このことから、それら凹溝3内の第1模様部11と凸条6の頂面6aの第2模様部12とは互いに明確に区別され、凹溝3内の第1模様部11は、凸条6の頂面6aの第2模様部12に対して明度の差と、ΔE=3~9の範囲にある色差ΔEとの違いによって明確に凹溝3と見え、逆に言えば第2模様部12は第1模様部11に対して凸条6と見えることとなる。このことにより、天井部に施工される天井材A1,A2は、天井部から離れた例えば床部上の位置から見たとしても、その表面1aの表面模様10が明確な凹凸感ないし陰影感を呈するようになり、その凹凸感を明確に視認することができる。そのため、基材1の表面1aに複数の凹溝3,3,…がそれらの間に凸条6,6,…を残して掘り込み形成されている天井材A1,A2であっても、その凹溝3の掘り込み深さを深くすることなく、表面1aに明確な凹凸感ないし陰影感を視認できるようになり、基材1が吸音性能のあるロックウール板であっても、凹溝3の深さの低減によって天井材A1,A2(基材1)の強度を大に確保することができ、施工状態での吸湿等による撓み変形を抑制することができる。すなわち、吸音性能を有するロックウール板等の基材1により、表面1aの凹凸感ないし陰影感が明確に現れ、かつ吸音性能を持った撓み変形し難い天井材A1,A2が容易に得られることとなる。
【0034】
また、基材1の表面1aの第1及び第2模様部11,12は、インクジェット印刷により形成されているので、このインクジェット印刷による塗装により基材1の表面1aに第1及び第2模様部11,12に対し必要な色のインクを塗り分けることができ、凹凸感、陰影感や素材感を容易に表現することができる。
【0035】
さらに、上記第1及び第2模様部11,12の間の色差ΔEは、両模様部11,12による天井材A1,A2全体の明度が低くなるのに連れて小さくなっているので、両模様部11,12の間の明度が変化しても、それに応じて色差も範囲内で変化することになり、上記した天井材A1,A2表面の凹凸感ないし陰影感を安定して表現することができる。
【0036】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、基材1の表面1aに複数の凹溝3,3,…及び凸条6,6,…を形成して、その各凹溝3の内面に第1模様部11を、また各凸条6の頂面6aに第2模様部12をそれぞれ設けているが、凹溝3及び凸条6に限定されず、基材1の表面1aに複数の凹部と複数の凸部とが交互に並んで配置されているものであってもよく、凹部や凸部の平面視の形状は問わない。その各凹部の内面に第1模様部11を、また各凸部の頂面に第2模様部12をそれぞれインクジェット印刷によって設ければよい。
【0037】
また、第1及び第2模様部11,12を形成するために、インクジェット印刷により塗装するのは必須ではなく、他の印刷方法や塗装方法によっても形成することができる。
【0038】
さらに、上記実施形態では、基材1の表面1aに複数の凹溝3,3,…(凹部)及び凸条6,6,…(凸部)を形成し、各凹溝3の内面に第1模様部11を、また各凸条6の頂面6aに第2模様部12をそれぞれ設けているが、基材1が表面1aに凹部及び凸部のない平面であってもよい。その平面の表面1aに表面模様10として、凹部を表す複数の第1模様部11,11,…と、凸部を表す複数の第2模様部12,12,…とを交互に並んで塗装し、そのとき、第2模様部12の明度を第1模様部11よりも高くし、第1及び第2模様部11,12の色差ΔEをΔE=3~9の範囲にすればよい。こうすれば、基材1の表面1aに凹凸部を形成せずとも、その表面模様10の第1及び第2模様部11,12のみで、見掛け上、明確な凹凸感ないし陰影感が得られるようになり、凹凸部の加工が不要で、高意匠建築材を低コストで作製することができる。
【0039】
また、上記実施形態は、本発明を吸音性能のあるロックウール等の天井材A1,A2に適用したものであるが、本発明は、吸音性能を備えていない天井材や、天井材以外の例えば壁材等、その他の内装材や建築材に高意匠の外観を付与するために適用することができる。また、基材1の材料や種類についても限定されることはない。
【実施例】
【0040】
次に、本発明者が具体的に実施した例について説明する。上記実施形態のように、基材の表面に互いに平行に延びる複数の凹溝(深さは3mm)及び凸条が交互に等間隔を空けて形成された天井材のサンプルを3枚用意した。そのうちの実施例となる1つは、各凸条の頂面の幅を細幅とし、他の比較例となる2つは各頂面の幅を太幅とした。各サンプルの表面にインクジェット印刷により表面模様として第1及び第2模様部11,12を印刷した。各サンプルの表面模様の明度は「Light」とし、第1及び第2模様部11,12の間の色差ΔEを変更することで、「実施例」、「比較例1」及び「比較例2」を作製した。実施例1の写真を
図11に、また比較例1の写真を
図12に、さらに比較例2の写真を
図13にそれぞれ示している。
【0041】
(実施例)
第1及び第2模様部11,12間の色差ΔEは、本発明で特定した範囲であった(3≦ΔE≦9)。
【0042】
(比較例1)
両模様部11,12間の色差ΔEはΔE=約1であった(ΔE<3)。
【0043】
(比較例2)
両模様部11,12間の色差ΔEはΔE=9よりも大きい例である(ΔE>9)。
【0044】
これら実施例及び比較例1,2について表面の凹凸感について観察したところ、模様部11,12間の色差ΔEが3よりも小さい比較例1では、
図12に示すように凹凸部分の差が不明確となっているのに対し、実施例では、
図11に示すように凹凸部分の差がはっきりしている。一方、比較例2のように模様部11,12間の色差ΔEが9よりも大きいと、
図13に示すように、凹凸部分の差異が顕著となり違和感が生じている。
【0045】
これらの結果、第1及び第2模様部11,12間の色差ΔEがΔE=3~9の範囲であれば、凹部の掘り込み深さを深くせずとも、凹凸感を明確に視認して意匠性の向上を図り得ることが明らかであった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、建築材表面の模様部が明確な凹凸感ないし陰影感を呈し、その凹凸感を明確に視認して意匠性の向上を図ることができるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0047】
A1,A2 天井材(高意匠建築材)
1 基材
1a 表面
3 凹溝(凹部)
6 凸条(凸部)
6a 頂面
10 表面模様
11 第1模様部
12 第2模様部