(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】立坑用スライドフォームおよび立坑の覆工方法
(51)【国際特許分類】
E04G 11/22 20060101AFI20231221BHJP
E04G 3/00 20060101ALI20231221BHJP
E02D 17/08 20060101ALI20231221BHJP
E02D 29/05 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
E04G11/22 Z
E04G3/00 Q
E02D17/08 A
E02D29/05 A
(21)【出願番号】P 2022068123
(22)【出願日】2022-04-18
【審査請求日】2023-07-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕介
(72)【発明者】
【氏名】小杉 勝之
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-285783(JP,A)
【文献】特開平04-007434(JP,A)
【文献】特開2010-090646(JP,A)
【文献】特開2015-094086(JP,A)
【文献】特開昭60-115797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 11/22
E04G 3/00
E02D 17/08
E02D 29/05
E21D 5/00
E21D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立坑を覆工するための立坑用スライドフォームであって、
前記立坑の周方向に延在する型枠と、当該型枠に固定された足場と、を有する型枠足場部材を備え、
前記型枠足場部材は、前記周方向に分割され、互いに回動可能に連結された複数の分割ピースと、前記分割ピースの間に設けられた変形ピースとを備え、
前記型枠は、複数の前記分割ピースと前記変形ピースの形状に応じて、周方向に分割されており、
前記足場は、複数の前記分割ピースの形状に応じて周方向に分割され、前記型枠の内側にそれぞれ固定されており、
周方向に隣り合う前記足場同士は、前記分割ピースの回動時に干渉しない間隔をあけて配置されている
ことを特徴とする立坑用スライドフォーム。
【請求項2】
前記足場は、前記型枠を補強する水平材である補強材と、上下方向に配置された前記補強材を連結する縦材である柱材と、前記型枠の内側から径方向内側に張り出す足場部材とを備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の立坑用スライドフォーム。
【請求項3】
前記変形ピースを挟んで配置された一対の前記分割ピースの間には、一対の前記分割ピースを外周位置と内側位置との間で回動させるための分割ピース回動手段が掛け渡されている
ことを特徴とする請求項1に記載の立坑用スライドフォーム。
【請求項4】
前記分割ピースは、ベースピースと、前記ベースピースの両端部に連結された一対の回動ピースとを有している
ことを特徴とする請求項1に記載の立坑用スライドフォーム。
【請求項5】
前記変形ピースは、前記分割ピースに対して回動可能に連結されており、
前記分割ピースと前記変形ピースとの間には、前記変形ピースを固定位置と退避位置との間で移動させるための変形ピース移動手段が掛け渡されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の立坑用スライドフォーム。
【請求項6】
請求項1に記載の立坑用スライドフォームを用いて立坑を覆工する立坑の覆工方法であって、
前記型枠足場部材を前記立坑の内側のコンクリート打設位置に設置する型枠足場部材設置工程と、
前記型枠と前記立坑の内面との間にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、
前記コンクリートの硬化後に、
前記型枠足場部材の前記変形ピースを変形させて前記型枠と前記足場とを備えた複数の前記分割ピースを内側に回動させることで前記型枠足場部材を内側に縮めて次のコンクリート打設高さまで上昇させる型枠足場部材上昇工程と、を順次繰り返す
ことを特徴とする立坑の覆工方法。
【請求項7】
前記型枠足場部材上昇工程では、トラバーサを介してクレーンで前記型枠足場部材を上昇させる
ことを特徴とする請求項6に記載の立坑の覆工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立坑用スライドフォームおよび立坑の覆工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立坑を覆工するに際しては、従来は覆工コンクリートの構築個所まで内足場を組み立てて、その後に内足場を囲うように木製の型枠を設置して、コンクリートを打設する工法が一般的であった。その他には、特許文献1に記載された工法もあった。
特許文献1の工法は、掘削岩盤に施工したロックアンカーを介して覆工コンクリートの構築位置に型鋼を立設させると共に、型鋼に接合させたライニング板に上下移動可能なスライド足場を固定させ、ライニング板を型枠板としてコンクリートを打設し、打設コンクリートの硬化後に、型鋼に継ぎ足した型鋼にライニング板を接合させ、次に、スライド足場を上方に移動させて、上段のライニング板上に固定し、この上段ライニング板を型枠板として次のコンクリートの打設を行う工程を、順次、繰り返す構築方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の工法および特許文献1の構築方法では、足場と型枠が別々に設けられているので、足場と型枠との間に隙間(開口)が発生してしまい、資機材・工具による飛来落下や墜落災害防止のための開口部養生などの対応に手間を要するという問題があった。また、従来の工法では、足場を組み立てた後に型枠を設置するので、施工手間を要し、施工時間が長くなってしまう。
このような観点から、本発明は、施工性が良好で、施工手間と時間を低減できる立坑用スライドフォームおよび立坑の覆工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するための第一の本発明は、立坑を覆工するための立坑用スライドフォームであって、前記立坑の周方向に延在する型枠と、当該型枠に固定された足場と、を有する型枠足場部材を備えている。前記型枠足場部材は、前記周方向に分割され、互いに回動可能に連結された複数の分割ピースと、前記分割ピースの間に設けられた変形ピースとを備え、前記型枠は、複数の前記分割ピースと前記変形ピースの形状に応じて、周方向に分割されており、前記足場は、複数の前記分割ピースの形状に応じて周方向に分割され、前記型枠の内側にそれぞれ固定されており、周方向に隣り合う前記足場同士は、前記分割ピースの回動時に干渉しない間隔をあけて配置されていることを特徴とする。
本発明に係る立坑用スライドフォームによれば、足場が型枠に固定されているので、足場と型枠との隙間(開口)を小さくできる。一方、型枠足場部材は、変形ピースを変形させて分割ピースを立坑の内側に回動させると、立坑との固定状態が解除される。これによって、型枠足場部材の上昇移動が可能となる。さらに、型枠および足場を同時に上昇させることができるので、上段のコンクリート打設の準備までの時間が短くなり、施工手間と時間を低減できる。
本発明の立坑用スライドフォームにおいて、前記足場は、前記型枠を補強する水平材である補強材と、上下方向に配置された前記補強材を連結する縦材である柱材と、前記型枠の内側から径方向内側に張り出す足場部材とを備えているものが好ましい。
本発明の立坑用スライドフォームにおいて、前記変形ピースを挟んで配置された一対の前記分割ピースの間には、一対の前記分割ピースを外周位置と内側位置との間で回動させるための分割ピース回動手段が掛け渡されているものが好ましい。このような構成によれば、分割ピース回動手段を作動させることで分割ピースの回動を容易に行うことができる。
また、本発明の立坑用スライドフォームにおいて、前記分割ピースは、ベースピースと、前記ベースピースの両端部に連結された一対の回動ピースとを有しているものが好ましい。このような構成によれば、ベースピースを固定したまま回動ピースを回動することで、安定した状態で分割ピースを回動させることができる。
さらに、本発明の立坑用スライドフォームにおいて、前記変形ピースは、前記分割ピースに対して回動可能に連結されており、前記分割ピースと前記変形ピースとの間には、前記変形ピースを固定位置と退避位置との間で移動させるための変形ピース移動手段が掛け渡されているものが好ましい。このような構成によれば、変形ピースを退避位置に移動させることで分割ピースが回動可能となる。変形ピース移動手段を作動させることで変形ピースの移動を容易に行うことができる。
【0006】
前記課題を解決するための第二の本発明は、請求項1に記載の立坑用スライドフォームを用いて立坑を覆工する立坑の覆工方法である。立坑の覆工方法は、前記型枠足場部材を前記立坑の内側のコンクリート打設位置に設置する型枠足場部材設置工程と、前記型枠と前記立坑の内面との間にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、前記コンクリートの硬化後に、前記型枠足場部材の前記変形ピースを変形させて前記型枠と前記足場とを備えた複数の前記分割ピースを内側に回動させることで前記型枠足場部材を内側に縮めて次のコンクリート打設高さまで上昇させる型枠足場部材上昇工程と、を順次繰り返すことを特徴とする。
本発明に係る立坑の覆工方法によれば、型枠に足場を固定してなる型枠足場部材を用いているので、足場と型枠との隙間(開口)を小さくできる。一方、型枠足場部材を内側に縮めることで、立坑との固定状態が解除される。これによって、型枠足場部材上昇工程での型枠足場部材の上昇移動が可能となる。型枠と足場を同時に上昇させると、上段のコンクリート打設の準備までの時間が短くなり、施工手間と時間を低減できる。
本発明の立坑の覆工方法において、前記型枠足場部材上昇工程では、トラバーサを介してクレーンで前記型枠足場部材を上昇させることが好ましい。このような方法によれば、型枠足場部材を、水平状態を保持した状態で円滑に上昇させることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の立坑用スライドフォームおよび立坑の覆工方法によれば、立坑覆工コンクリートの構築において、施工性を良好にできるとともに、施工手間と時間を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る立坑用スライドフォームの分割ピースが外周位置にある状態を示した平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る立坑用スライドフォームの分割ピースが内側位置にある状態を示した平面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る立坑用スライドフォームを示した縦方向断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る立坑用スライドフォームと覆工コンクリートとの取り合いを示した拡大断面図である。
【
図8】(a)はトラバーサを示した平面図、(b)本発明の実施形態に係る立坑用スライドフォームをクレーンで吊り上げた状態を示した断面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る立坑の覆工方法の型枠足場部材設置工程において、立坑用スライドフォームを立坑の底部のコンクリート打設位置に設置した状態を示した断面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る立坑の覆工方法の型枠足場部材設置工程において、立坑用スライドフォームを立坑の底部から二段目のコンクリート打設位置に設置した状態を示した断面図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る立坑の覆工方法の型枠足場部材設置工程において、立坑用スライドフォームを立坑の底部から複数段上方のコンクリート打設位置に設置した状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係る立坑用スライドフォームおよび立坑の覆工方法について、添付した図面を参照しながら説明する。まず、立坑用スライドフォームの構成を説明する。かかる立坑用スライドフォームは、立坑を覆工する(立坑の覆工コンクリートを構築する)ための型枠と作業足場を備えている。
図1は、立坑用スライドフォームの分割ピースが外周位置にある状態を示した平面図、
図2は、立坑用スライドフォームの分割ピースが内側位置にある状態を示した平面図、
図3は、立坑用スライドフォームを示した縦方向断面図である。なお、
図1乃至
図3では、足場板の図示を省略している。
図1乃至
図3に示すように、立坑用スライドフォーム1は、型枠足場部材10を備えている。型枠足場部材10は、立坑2の周方向に延在する型枠20と、型枠20に固定された足場30とを備えている。型枠足場部材10は、立坑2の周方向に分割され、分割ピース11と変形ピース12とを備えている。
【0010】
分割ピース11は、複数(本実施形態では三つ)設けられており、互いに回動可能に連結されている。三つの分割ピース11は、一つのベースピース13と二つの回動ピース14,14とで構成されている。ベースピース13は、二つの回動ピース14,14の間に配置されている。ベースピース13の端部と回動ピース14の基端部とはピン結合されており、ベースピース13と回動ピース14とが鉛直軸であるピンP1を中心に回動可能になっている。回動ピース14は、外周位置と内側位置との間で回動する。外周位置は、回動ピース14がベースピース13と同一円周上となる位置であって、コンクリートを打設する際の位置である。内側位置は、外周位置よりも立坑2の中心寄りの位置であって、立坑用スライドフォーム1を移動する際の位置である。
【0011】
変形ピース12は、一対の回動ピース14,14の先端部間(分割ピース11,11の間)に設けられている。変形ピース12は、分割ピース11が内側に回動するスペースを確保するためのものであり、本実施形態では、回動ピース14の先端部に回動可能に連結されている。変形ピース12は、第一ピース15と第二ピース16とを備えている。第一ピース15の基端部は、一方の回動ピース14の先端部にピン結合されており、第一ピース15が一方の回動ピース14に対して鉛直軸であるピンP2を中心に回動可能になっている。第二ピース16の基端部は、他方の回動ピース14の先端部にピン結合されており、第二ピース16が他方の回動ピース14に対してピンP2を中心に回動可能になっている。第一ピース15および第二ピース16は、固定位置と退避位置との間で回動する。固定位置は、第一ピース15および第二ピース16がベースピース13と同一円周上となる位置であって、コンクリートを打設する際の位置である。第一ピース15および第二ピース16が固定位置に位置するには、一対の回動ピース14,14が外周位置に位置する必要がある。第一ピース15および第二ピース16が共に固定位置に位置すると、第一ピース15の先端部と第二ピース16の先端部とが突き合わせられ、一対の回動ピース14,14が外周位置で固定される。退避位置は、固定位置よりも立坑2の中心寄りの位置である。第二ピース16を先行して回動させ、次に第一ピース15を回動させて、共に退避位置に位置すると、第一ピース15の先端部と第二ピース16の先端部との間に隙間が生じ、一対の回動ピース14,14が内側位置に回動可能となる。
【0012】
型枠20は、覆工コンクリート3の内周面を区画するものであり、立坑2の内面(掘削面や土留壁の壁面等)から所定間隔をあけて配置される。型枠20は、例えば強化繊維プラスチック製の板材にて構成されている。板材の表面(外側表面)には、剥離剤が塗布されている。剥離剤は、型枠20がコンクリートから剥離し易くするために塗布されている。型枠20は、分割ピース11および変形ピース12の形状に応じて、周方向に分割されている。分割された複数の分割型枠21は、それぞれ平面視円弧形状を呈している。ベースピース13と回動ピース14,14の分割型枠21の円弧形状は、それぞれ同等の周方向長さとなっており、中心角が100°程度となっている。第一ピース15と第二ピース16の分割型枠21の円弧形状は、互いに同等の周方向長さとなっており、中心角が30°程度となっている。全ての分割型枠21,21・・が合わさって、型枠20が立坑2の全周に亘る円筒形状を呈している(
図1参照)。
【0013】
足場30は、配筋作業やコンクリート打設作業等を行うための作業足場であり、型枠20の内側(立坑2の中心側)に固定されている。足場30は、補強材31と柱材32と足場部材33とを備えている。補強材31は、型枠20を補強する水平材であり、型枠20の板材の裏面(内側表面)に沿って敷設されている。補強材31は、例えばH型鋼にて構成されており、ウエブが横向きになるように配置されている。補強材31は、型枠20(分割型枠21)の曲面に沿って湾曲しており、フランジが型枠20の裏面に当接している。補強材31は、上下方向に間隔をあけて複数段設けられている。ベースピース13と回動ピース14,14の補強材31の周方向両端部は、分割型枠21の周方向端部より短くオフセットされている。さらに、第一ピース15および第二ピース16の基端部の補強材31の周方向端部は、分割型枠21の周方向端部より短くオフセットされている。オフセットされて形成された補強材31,31間の隙間には、補強材31のウエブの端部からブラケット34が延出している。向かい合う補強材31,31の端部からそれぞれ延出したブラケット34,34の先端部同士は重なっており、ピンP1またはピンP2にて接合されている。第一ピース15および第二ピース16の先端部の補強材31の周方向端部同士は、突き合わせられている。この突合せ線Lは、立坑2の径方向に対して傾斜している。第二ピース16の先端部の補強材31の周方向端部の径方向内側部分が第一ピース15側に張り出している。つまり、第二ピース16の先端部の補強材31が、第一ピース15の先端部の補強材31を径方向内側から係止している。
【0014】
柱材32は、上下の補強材31を連結する縦材であり、補強材31の内側のフランジに溶接固定されている。柱材32は、例えば溝形鋼を背中合わせに組み合わせて構成されている。溝形鋼は、ウエブが立坑2の径方向に沿って広がっており、ウエブ同士が隙間をあけて配置されている。一対の溝形鋼は、径方向内側のフランジ同士にプレート(後記するアンカーボルト固定ブラケット35,36)を掛け渡して一体化されている。ベースピース13と回動ピース14,14の柱材32は、補強材31の周方向に間隔をあけて複数(本実施形態では、各ピースごとに4本ずつ)設けられている。第一ピース15と第二ピース16の柱材32は、補強材31の周方向中間部に1本ずつ設けられている。
柱材32の上部には、アンカーボルト固定ブラケット35が設けられている。アンカーボルト固定ブラケット35は、背中合わせの一対の溝形鋼を連結するプレートにて構成されており、ボルト挿通孔(図示せず)を備えている。アンカーボルト固定ブラケット35には、シーボルトB2が挿通される。シーボルトB2は、コンクリート打設位置に配筋されたアンカーボルトB1の先端に取り付けられており、アンカーボルト固定ブラケット35から突出した部分には、ナットが螺合されている。アンカーボルト固定ブラケット35にシーボルトB2を介してアンカーボルトB1を固定することで、コンクリート打設時にアンカーボルトB1がずれるのを防止でき、さらに型枠20を補強することができる。
【0015】
図4は、立坑用スライドフォームと覆工コンクリートとの取り合いを示した拡大断面図である。
図4に示すように、柱材32の下端部は、型枠20の下端よりも下方に突出している。柱材32の下方に突出した部分には、アンカーボルト固定ブラケット36が設けられている。アンカーボルト固定ブラケット36は、上方のアンカーボルト固定ブラケット35と同形状である。アンカーボルト固定ブラケット36には、シーボルトB2が挿通される。シーボルトB2は、下段の打設済みコンクリート(覆工コンクリート)3に埋設されたアンカーボルトB1の先端に取り付けられており、アンカーボルト固定ブラケット36から内側に突出した部分には、ナットが螺合されている。アンカーボルト固定ブラケット36にシーボルトB2を介してアンカーボルトB1を固定することで、立坑用スライドフォーム1を下段の打設済みコンクリート(覆工コンクリート3)に固定することができる。アンカーボルトB1は、各柱材32の設置位置に対応して配置されており、周方向に所定間隔をあけて複数本(本実施形態では14本)設けられている。
【0016】
アンカーボルト固定ブラケット36の下方には、立ち調整手段37が設けられている。立ち調整手段37は、柱材32の立ち角度を調整するものであって、柱材32の下端部から打設済みコンクリート(覆工コンクリート3)の内周面に向かって延在する長尺ボルト38を備えている。長尺ボルト38は、固定ブラケット39に固定されたナット40に挿通されており、軸回りに回転することで打設済みコンクリートの内周面に対して進退するようになっている。長尺ボルト38の外側端部には、パット状の押え部材41が設けられている。長尺ボルト38を回転させて、押え部材41を打設済みコンクリートの内周面に押圧させることで、柱材32の立ち角度が垂直に調整される。これによって、型枠20の設置角度が所望の角度となる。
【0017】
アンカーボルト固定ブラケット36より上方には、落下防止金具43が設けられている。落下防止金具43は、アンカーボルト固定ブラケット36からシーボルトB2が万一外れた際に型枠足場部材10を支持する部位である。落下防止金具43は、支持フレーム44と固定ブラケット45とを備えている。支持フレーム44は、側面視コ字形状に形成されており、柱材32の下端部の径方向外側面に溶接されている。支持フレーム44は、打設済みコンクリート(覆工コンクリート3)に向かって延出しており、外側の先端面は型枠20の外側表面と面一になっている。固定ブラケット45は、支持フレーム44の先端部材に取り付けられた板状部材であり、ボルト挿通孔(図示せず)を備えている。固定ブラケット45のボルト挿通孔には、打設済みコンクリート(覆工コンクリート3)に埋設された内ねじアンカーB3に接続されるボルトB4が挿通される。
【0018】
図5は、上段の足場を示した図であり、
図3のv-v線矢視図である。
図6は、中段の足場を示した図であり、
図3のvi-vi線矢視図である。
図7は、下段の足場を示した図であり、
図3のvii-vii線矢視図である。
図3に示すように、足場部材33は、作業者が乗る部分であり、型枠20の内側から径方向内側に張り出している。足場部材33は、ベースピース13と回動ピース14,14とに設けられている。第一ピース15と第二ピース16には、足場部材33は設けられていない。足場部材33は、上段足場部材33aと、中段足場部材33bと、下段足場部材33cと、吊下足場部材33dとを備えている。
【0019】
図1乃至
図3および
図5乃至
図7に示すように、上段足場部材33a、中段足場部材33bおよび下段足場部材33cは、それぞれ支持フレーム50と足場板51(
図5乃至
図7参照)とを備えている。支持フレーム50は、足場板51を支持するフレームであって、例えばH型鋼にて構成されている。
図1および
図2に示すように、支持フレーム50は、一対の斜辺フレーム53,53と内側先端辺フレーム54とを備えている。斜辺フレーム53の基端部は、補強材31の周方向端部に溶接されている。斜辺フレーム53は、径方向に略沿って立坑2の中心側に直線状に延在している。斜辺フレーム53の内側先端部は立坑2の中心まで届かず、斜辺フレーム53は型枠20の半径寸法よりも短く形成されている。ベースピース13と回動ピース14との間で、隣り合う斜辺フレーム53,53同士は、間隔をあけて配置されており、回動ピース14がベースピース13に対して回動しても干渉しないように構成されている。
【0020】
内側先端辺フレーム54は、斜辺フレーム53,53の先端部同士を結ぶ直線状に形成されている。内側先端辺フレーム54の径方向外側面には、補強フレーム55が設けられている。補強フレーム55は、内側先端辺フレーム54と補強材31との間に適宜掛け渡されている。補強フレーム55には、斜辺フレーム53の先端部に至る斜材56が適宜接続されている。内側先端辺フレーム54の径方向内側面には、連結材57が設けられている。連結材57は、例えばH型鋼にて構成されており、縦方向に延在している。連結材57は、上段足場部材33aの内側先端辺フレーム54と、中段足場部材33bの内側先端辺フレーム54と、下段足場部材33c上下の内側先端辺フレーム54とに掛け渡され、それぞれ溶接されている。
【0021】
左右の回動ピース14の間には、分割ピース回動手段70が掛け渡されている。本実施形態では、内側先端辺フレーム54の先端部(ベースピース13から遠い側の一端部)に分割ピース回動手段70の一端が接続されている。分割ピース回動手段70は、分割ピースを外周位置と内側位置との間で回動させるための部材であって、伸縮可能な連結部材にて構成されている。分割ピース回動手段70は、例えば長尺のターンバックルにて構成されており、中央のネジ部を回転させることで、ターンバックルの全体長さを伸縮させる。ターンバックルの軸部の端部は、連結材57に取り付けられた固定ブラケット58にピン結合されている。分割ピース回動手段70は、連結材57の上端部の上段足場部材33aの下方と、連結材57の下端部の下段足場部材33cの上方の二か所に設けられている。ターンバックルが伸長したときは、回動ピース14,14の周方向先端部同士が押し広げられて、回動ピース14,14が外周位置に配置される。ターンバックルが縮退したときは、回動ピース14,14の周方向先端部同士が引き寄せられて、回動ピース14,14が内側位置に配置される。
【0022】
回動ピース14と第一ピース15(または第二ピース16)との間には、変形ピース移動手段71が掛け渡されている。本実施形態では、内側先端辺フレーム54のうち、ベースピース13から遠い側の一端部に変形ピース移動手段71の一端が接続され、第一ピース15(または第二ピース16)のうち、ピンP2から離れた位置に変形ピース移動手段71の他端が接続されている。変形ピース移動手段71は、変形ピース12を固定位置と退避位置との間で移動させるための部材であって、伸縮可能な連結部材にて構成されている。変形ピース移動手段71は、分割ピース回動手段70と同様に、例えば長尺のターンバックルにて構成されており、中央のネジ部を回転させることで、ターンバックルの全体長さを伸縮させる。ターンバックルの一端部は、固定ブラケット58にピン結合されている。ターンバックルの他端部は、第一ピース15(または第二ピース16)の柱材32に取り付けられた固定ブラケット73にピン結合されている。変形ピース移動手段71は、連結材57の上端部の上段足場部材33aの下方と、連結材57の下端部の下段足場部材33cの上方の二か所に設けられている。ターンバックルが伸長したときは、第一ピース15(または第二ピース16)の周方向先端部が径方向外側に押し出されて、第一ピース15(または第二ピース16)が固定位置に配置される。ターンバックルが縮退したときは、第一ピース15(または第二ピース16)の周方向先端部が径方向内側に引き寄せられて、第一ピース15(または第二ピース16)が退避位置に配置される。
【0023】
図5乃至
図7に示すように、足場板51は、支持フレーム50の内側空間を覆うように支持フレーム50上に敷設されている。足場板51の外側縁部は、補強材31の上方位置まで延在している。足場板51は、例えばメッシュプレートにて構成されている。なお、柱材32が配置された位置には、切欠き部59が形成されており、足場板51と柱材32とが干渉しないようになっている。足場板51の内側部分の周縁部は、支持フレーム50に沿って延在している。
図5に示すように、上段足場部材33aでは、回動ピース14の先端部側の足場板51が、変形ピース12の上方に張り出している。回動ピース14,14が外周位置にあるときは、回動ピース14,14の間(より具体的には、一方の回動ピース14の先端部側の足場板51の張出部51aの先端部と、他方の回動ピース14の先端部側の足場板51の張出部51aの先端部との間)には、隙間が形成される。この隙間上には、隙間形状に沿って平面視台形に形成された小型足場板60が敷設される。一方、ベースピース13と回動ピース14との間の隙間上には、この隙間を覆うように平面視長方形に形成された小型足場板61が敷設される。小型足場板60,61の表面は、足場板51と面一になるように構成されている。ベースピース13の足場板51と、回動ピース14,14の足場板51,51との間には、平面視台形の開口部62が形成されている。開口部62は、立坑用スライドフォーム1の固定後に、下方に設けられる仮設足場90(
図11参照)を搬入するための空間である。仮設足場90の搬入後には、開口部62を覆う蓋状足場板(図示せず)が設置される。蓋状足場板の表面は、足場板51と面一になるように構成されている。足場板51の外周側の周縁部と、内側の周縁部(内側先端辺フレーム54の上方)には、手摺り部材63が立設されている。蓋状足場材を設置する際には、内側の周縁部の手摺り部材63は取り外される。ベースピース13の足場板51には、蓋板部64が形成されている。蓋板部64は、片側ヒンジ構造の蓋であって、上方に回動することで開く。蓋板部64の下方には、中段足場部材33bに繋がる階段部材65が設けられている。蓋板部64を開位置に回動することで階段部材65を使用可能となる。なお、蓋板部64と階段部材65の設置位置は、ベースピース13に限定されるものではなく、回動ピース14であってもよい。
【0024】
図6に示すように、中段足場部材33bでは、ベースピース13の足場板51と、回動ピース14の足場板51とは、ともに、内側部分の周縁部が、支持フレーム50に沿って延在している。つまり、中段足場部材33bの足場板51は、上段足場部材33aの足場板51のように変形ピース12の上方に張り出していない。回動ピース14,14が外周位置にあるときは、一方の回動ピース14の足場板51と、他方の回動ピース14の足場板51との間(変形ピース12の上方の空間)には、平面視長方形の一般的な足場板66が掛け渡される。ベースピース13と回動ピース14との間には、隙間を覆うように平面視矩形に形成された小型足場板61が敷設される。足場板51の内側の周縁部(内側先端辺フレーム54の上方)には、手摺り部材63が立設されている。一方の回動ピース14の足場板51には、蓋板部64が形成されている。蓋板部64の下方には、下段足場部材33cに繋がるタラップ68が設けられている。蓋板部64を開位置に回動することでタラップ68を使用可能となる。なお、蓋板部64とタラップ68の設置位置は、回動ピース14に限定されるものではなく、ベースピース13であってもよい。
【0025】
図7に示すように、下段足場部材33cでは、中段足場部材33bと同様に、ベースピース13の足場板51と、回動ピース14の足場板51とは、ともに、内側部分の周縁部が、支持フレーム50に沿って延在している。回動ピース14,14が外周位置にあるときは、一方の回動ピース14の足場板51と、他方の回動ピース14の足場板51との間(変形ピース12の上方の空間)には、平面視長方形の一般的な足場板66が掛け渡される。ベースピース13と回動ピース14との間には、隙間を覆うように平面視矩形に形成された小型足場板61が敷設される。足場板51の内側の周縁部(内側先端辺フレーム54の上方)には、手摺り部材63が立設されている。ベースピース13の足場板51には、下段足場部材33cと下部の仮設足場90(
図11参照)との間で移動するときに用いるタラップ69の上端部が係止される。なお、タラップ69が係止される位置は、ベースピース13に限定されるものではなく、回動ピース14であってもよい。
【0026】
図3に示すように、吊下足場部材33dは、下段足場部材33cの下方に設けられる足場であって、ベースピース13および回動ピース14,14の下方に設けられている。吊下足場部材33dは、柱材32の下端部に、後付け可能となっている。吊下足場部材33dは、吊材75と張出材76と足場板(図示せず)と斜材77と手摺り部材63とを備えている。吊材75は、柱材32の下端部に接続されている。吊材75は、立坑2内での現場施工にて接合される。張出材76は、吊材75の下端部から径方向内側に向かって張り出しており、周方向に所定間隔をあけて放射状に配置されている。斜材77は、吊材75と張出材76間に傾斜して掛け渡されており、張出材76の支持荷重を大きくしている。図示しない足場板は、隣り合う張出材76,76間に掛け渡されており、ベースピース13および回動ピース14,14に沿って周方向に配置されている。
【0027】
図8の(a)はトラバーサを示した平面図、(b)は立坑用スライドフォームをクレーンで吊り上げた状態を示した断面図である。
図8に示すように、立坑用スライドフォーム1は、トラバーサ80を介してクレーンにて吊り上げられる。トラバーサ80は、型枠足場部材10を水平に保持しながらクレーンのワイヤ83で吊り上げるための部材であって、フレーム部材81と係止ブラケット82とを備えている。フレーム部材81は、例えば金属製の角パイプを、立坑用スライドフォーム1の外周円の内側に収まる八角形に組み付けて構成されている。フレーム部材81の内側には、適宜補強部材が掛け渡されている。係止ブラケット82は、フレーム部材81を吊り下げるワイヤ83を係止するためのものであって、フレーム部材81の外周に沿ってバランスよく複数設けられている。係止ブラケット82は、フレーム部材81の上面と下面の両面に設けられている。上側の係止ブラケット82には、クレーンから伸びるワイヤ83の先端に設けられたフック84に係止された複数のワイヤ83aが係止される。ワイヤ83aは、フック84から広がって傾斜している。フック84からは、型枠足場部材10に伸びるワイヤ83bも係止されている。下側の係止ブラケット82には、型枠足場部材10の柱材32の上端部に係止されるワイヤ83cが係止される。トラバーサ80と型枠足場部材10間のワイヤ83cは、垂下している。このようにトラバーサ80を介してクレーンで型枠足場部材10を吊り下げることで、立坑用スライドフォーム1を、水平状態を保持しつつ上昇させることができる。
【0028】
次に、
図9乃至
図11を参照しながら、本実施形態に係る立坑の覆工方法を説明する。
図9は、立坑の覆工方法の型枠足場部材設置工程において、立坑用スライドフォームを立坑の底部のコンクリート打設位置に設置した状態を示した断面図、
図10は、立坑用スライドフォームを立坑の底部から二段目のコンクリート打設位置に設置した状態を示した断面図、
図11は、立坑用スライドフォームを立坑の底部から複数段上方のコンクリート打設位置に設置した状態を示した断面図である。
立坑の覆工方法は、型枠足場部材設置工程と配筋工程とコンクリート打設工程と型枠足場部材上昇工程とを備え、各工程を順次繰り返す方法である。
【0029】
型枠足場部材設置工程は、型枠足場部材10を立坑2の内側のコンクリート打設位置に設置する工程である。立坑2の底部における型枠足場部材設置工程では、立坑用スライドフォーム1を、トラバーサ80を介してクレーンのワイヤ83で吊り下げ(
図8参照)、立坑2の底部2a上に載置する。
図9に示すように、立坑2の底部2aに設置する際には、吊下足場部材33dは設けられておらず、下段足場部材33cが底部2a上に載置される。立坑用スライドフォーム1は、型枠20に足場30が予め固定されているので、型枠足場部材10を所定位置に設置することで、型枠20と足場30とが同時に設置される。
配筋工程は、覆工コンクリート3の鉄筋を配筋する工程である。配筋工程では、覆工コンクリート3の配筋の他に、アンカーボルトB1およびシーボルトB2、内ねじアンカーB3、水抜きパイプ(図示せず)等を所定位置に設置する。アンカーボルトB1およびシーボルトB2、内ねじアンカーB3および水抜きパイプは、覆工コンクリート3の打設位置の上部に相当する位置に放射状に配置される。
【0030】
コンクリート打設工程は、型枠20と立坑2の掘削面との間にコンクリートを打設する工程である。コンクリート打設工程では、作業員が上段足場部材33aの上に乗って、コンクリート打設を行う。
型枠足場部材上昇工程は、打設したコンクリートの硬化後に、型枠足場部材を内側に縮めて次のコンクリート打設高さまで上昇させる工程である。型枠足場部材上昇工程では、
図2に示すように、まず、一方の変形ピース移動手段71を縮退させ、第二ピース16を固定位置から退避位置へ回動させる。その後、変形ピース移動手段71を縮退させ、第一ピース15を固定位置から退避位置へ回動させる。これによって、回動ピース14,14の回動スペースが確保される。そして、分割ピース回動手段70を縮退させ、回動ピース14,14の先端部同士を引き寄せることで、回動ピース14,14が外周位置から内側位置に配置される。これによって、型枠20と覆工コンクリート3の内周面との間に隙間が生じ、立坑用スライドフォーム1がコンクリートの内周面から離反する。そして、立坑用スライドフォーム1を上昇することが可能となる。このとき、型枠20の表面に剥離剤が塗布されているので、型枠20がコンクリートから剥離し易い。また、型枠20の表面にコンクリートが付着し難くなっているので、型枠20の洗浄作業を省略できる。
そして、
図10に示すように、トラバーサ80を介してクレーンのワイヤ83,83a,83b,83cで立坑用スライドフォーム1を吊り下げて、所定の高さまで上昇させる。型枠足場部材10を上昇させた後、吊下足場部材33dを柱材32の下端部に設置する。
【0031】
その後、二段目より上方の型枠足場部材設置工程では、覆工コンクリート3の上部から突出したシーボルトB2をアンカーボルト固定ブラケット36に仮固定し、立坑用スライドフォーム1を所定の高さで固定する。そして、立ち調整手段37で柱材32の立ち角度を調整した後にシーボルトB2をアンカーボルト固定ブラケット36に固定する。
このようにアンカーボルトB1を介して立坑用スライドフォーム1を支持しているので、立坑用スライドフォーム1を所定の高さで容易に固定できるとともに、型枠設置に要する時間を短縮できる。具体的には、従来の工法では、2~3日の型枠設置期間を要していたところを、1日の型枠設置期間に短縮できる。そして、立ち調整手段37で、型枠足場部材10の立ち角度を調整して、柱材32を垂直にする。さらに、落下防止金具43のボルトB4を覆工コンクリート3の上部の内ねじアンカーB3に接続する。
【0032】
その後、配筋工程およびコンクリート打設工程を行い、覆工コンクリート3を構築する。次工程の型枠足場部材上昇工程では、上昇作業の前に、アンカーボルトB1および内ねじアンカーB3との接続を解除する。以上の工程を繰り返し行うことで、覆工コンクリート3が所定の高さごとに段階的に構築される。
立坑用スライドフォーム1が複数段上昇した後には、
図11に示すように、立坑用スライドフォーム1の下方に仮設足場90を組み立てる。仮設足場90の資材は、ベースピース13の足場板51と、回動ピース14,14の足場板51,51との間の開口部62を通してクレーンにて吊り下げる。仮設足場90の搬送後には、開口部62に蓋状足場板を設置して、開口部62を塞ぐ。これによって、上段の足場が広くなり、作業性が大幅に向上する。
【0033】
以上説明した立坑用スライドフォーム1および立坑の覆工方法によれば、以下の作用効果を奏する。つまり、本発明の実施形態に係る立坑用スライドフォーム1によれば、足場30が型枠20に固定されているので、足場30と型枠20との隙間を小さくできる。これにより、型枠20が足場30の側壁の役目を果たし施工性が良好となる。また、足場板51の径方向外側の周縁部は、補強材31の上に位置しているので、万一作業者が足場板51の外側の周縁部から物を落としても、補強材31で受け止められる。また、開口部62は蓋状足場部材で覆われるとともに、分割ピース11,11間の隙間は小型足場板60,61で覆われるので、上段足場部材33aの足場全体が覆われ、施工性が大幅に良好となる。
【0034】
一方、型枠足場部材10は、変形ピース12を変形させて分割ピース11を立坑2の内側に回動させること、立坑2の覆工コンクリート3との固定状態が解除される。これによって、型枠足場部材10(立坑用スライドフォーム1)の上昇が可能となる。このとき、足場30が型枠20に固定されているので、型枠足場部材10として一体で上昇を行うことができる。さらに、型枠20を上昇すると同時に足場30も上昇して設置された状態となるので、型枠20と同一高さまでの足場組立が不要となる。したがって、配筋等の次工程をすぐに開始することができ、上段のコンクリート打設の準備までの時間が短くなり、施工手間と時間を低減できる。
【0035】
また、本実施形態の立坑用スライドフォーム1においては、回動ピース14,14の間に分割ピース回動手段70が掛け渡されているので、分割ピース回動手段70を伸縮させることで容易に回動ピース14を回動させることができる。
さらに、ベースピース13の両端に一対の回動ピース14,14が設けられているので、ベースピース13を固定した状態で回動ピース14,14を安定した状態で回動させることができる。
また、型枠20は、強化繊維プラスチック製の板材にて構成されているので、軽量化が達成されている。
【0036】
本実施形態に係る立坑の覆工方法によれば、型枠20に足場30を固定してなる型枠足場部材10を用いているので、足場30と型枠20との隙間を小さくできる。これにより、型枠20が足場30の側壁の役目を果たし施工性が良好となる。
一方、型枠足場部材10の回動ピース14,14を内側に回動させることで、立坑2の覆工コンクリート3との固定状態が容易に解除される。これによって、型枠足場部材上昇工程での型枠足場部材10の上昇が可能となる。このとき、足場30が型枠20に固定されているので、型枠足場部材10として一体で上昇を行うことができる。さらに、型枠20を上昇すると同時に足場30も上昇して設置された状態となるので、上段のコンクリート打設の準備までの時間が短くなり、施工手間と時間を低減できる。
型枠足場部材上昇工程では、トラバーサ80を介してクレーンで型枠足場部材10を上昇させることで、型枠足場部材10を、水平状態を保持した状態で円滑に上昇させることができる。
【0037】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明を前記実施形態に限定する趣旨ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。たとえば、前記実施形態では、変形ピース12を、第一ピース15と第二ピース16の二つのピースにて構成しているが、これに限定されるものではない。変形ピースを一つのピースにて構成して、一端を中心に回動させて回動ピース14の移動スペースを確保するようにしてもよい。
【0038】
また、本実施形態では、分割ピース回動手段70と、変形ピース移動手段71は、ターンバックルにて構成されているが、これに限定されるものではなく、伸縮ジャッキ等の他の手段を用いてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 立坑用スライドフォーム
2 立坑
3 覆工コンクリート
10 型枠足場部材
11 分割ピース
12 変形ピース
13 ベースピース
14 回動ピース
15 第一ピース
16 第二ピース
20 型枠
21 分割型枠
30 足場
50 支持フレーム
51 足場板
70 分割ピース回動手段
71 変形ピース移動手段
80 トラバーサ