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特許7407224製鉄装置の運転方法及び関連する運転装置
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  • 特許-製鉄装置の運転方法及び関連する運転装置 図1
  • 特許-製鉄装置の運転方法及び関連する運転装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】製鉄装置の運転方法及び関連する運転装置
(51)【国際特許分類】
   C21B 5/00 20060101AFI20231221BHJP
   C22B 1/20 20060101ALI20231221BHJP
   C21B 13/00 20060101ALI20231221BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20231221BHJP
   B09B 101/85 20220101ALN20231221BHJP
【FI】
C21B5/00
C22B1/20 Z ZAB
C21B13/00
B09B3/40
B09B101:85
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022074243
(22)【出願日】2022-04-28
(62)【分割の表示】P 2019569363の分割
【原出願日】2018-06-15
(65)【公開番号】P2022110008
(43)【公開日】2022-07-28
【審査請求日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2017/000739
(32)【優先日】2017-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨーリス・ヘーロムス
(72)【発明者】
【氏名】クルト・スペリール
(72)【発明者】
【氏名】ステファーン・ファン・デ・カステル
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-254863(JP,A)
【文献】特開2008-024984(JP,A)
【文献】特開2000-080373(JP,A)
【文献】特開2004-105835(JP,A)
【文献】特開2017-071692(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0103503(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0306386(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 3/00-5/06
C21B 11/00-15/04
C22B 1/00-61/00
C10B 53/00-53/08
B09B 1/00-5/00
B09C 1/00-1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鉄装置の運転方法であって、以下の工程
a.乾燥ガスを用いて廃棄物を乾燥させる工程であって、乾燥ガスは焼結プラントからの排ガスを含む工程、
b.乾燥させた廃棄物を焙焼ガスを用いて焙焼し、炭及び焙焼排ガスを製造する工程、
c.前記焙焼排ガスの少なくとも一部を焼結プラントにリサイクルする工程
を含み、
前記焙焼が、200℃~320℃の間に含まれる温度で行われる、
方法。
【請求項2】
前記乾燥ガスが、少なくとも50%の焼結プラントからの排気ガスを含む、請求項1に記載の運転方法。
【請求項3】
前記乾燥ガスが、少なくとも70℃の温度を有する、請求項1又は2に記載の運転方法。
【請求項4】
前記焼結プラント排ガスが、乾燥ガスを形成するために他の成分と混合されるときには、100~150℃の間に含まれる温度を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項5】
前記焙焼排ガスの少なくとも一部が、乾燥ガスの一部として使用される、請求項1~のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項6】
前記焙焼排ガスが、焙焼工程において焙焼ガスの一部として使用される、請求項1~のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項7】
焙焼工程後に前記炭が、原料として製鉄方法に使用される、請求項1~のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項8】
焙焼工程後に炭が、粉砕工程に供され、粉砕された炭は羽口を通して高炉に注入される、請求項に記載の運転方法。
【請求項9】
前記粉砕された炭が、10μm未満の粒径を有する、請求項に記載の運転方法。
【請求項10】
羽口から注入された固体材料の重量の少なくとも4%が粉砕された炭である、請求項又はに記載の運転方法。
【請求項11】
乾燥工程後に前記乾燥された材料が、10%未満の含水率を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項12】
前記焙焼排ガスが発電所に送られる、請求項1~11のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項13】
前記廃棄物が有機廃棄物である、請求項1~12のいずれか一項に記載の運転方法。
【請求項14】
前記有機廃棄物が廃木材である、請求項13に記載の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄装置の運転方法及び関連する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鉄方法は、高炉又はMIDREX(R)又はCOREX(R)のようなDRI炉のいずれかで行うことができるため、常に原料として炭素含有材料を使用する必要がある。この炭素含有材料は、粉炭、炭、コークス又は他の形態として移動させることができる。
【0003】
近年、CO削減の過程で、これらの炭素含有材料の代替物として炭素含有廃棄物をリサイクルすることを目指した開発が相次いでいる。これらの炭素含有廃棄物は、例えば、建築区域からの木材、農業又は食品の残渣、家庭ごみ又は産業廃棄物である。本文の残りの部分では、「廃棄物」という用語が使われ、炭素含有廃棄物として理解されなければならない。
【0004】
例えば、特許WO2011/052796は、建設由来の木材廃棄物又は農業廃棄物などのバイオマスを、高炉における粉炭の代替物として使用する方法を記載している。この方法では、バイオマスを回転炉で乾燥してバイオマス炭を製造し、バイオマスを炭と共に粉砕し、羽口を通して高炉に吹き込む。回転炉の排ガスを集めてガス加熱器に送り、ガス加熱器はさらに外列の加熱源として廃ガスを回転炉に再注入する。
【0005】
神戸製鋼の特許EP1264901B1は、木材、樹脂、ごみ、産業廃棄物などの有機物含有成分を、熱媒体で使用される酸化鉄と共に炭化炉に投入する還元鉄の製造方法を記載している。その後、この炭化の生成物を凝集させ還元剤として還元炉で利用する。記載した方法では、還元炉からの排ガスを炭化炉への燃焼ガスとして使用し、一方、炭化から生じる蒸留ガスを還元炉の燃料として使用する。
【0006】
特許US2014/0306386には、高炉への燃料として木材を用いる方法が記載されている。この方法では、木材を寸法決めし、乾燥させ、次に、粗い粒子を高炉のスロートに投入し、一方、より微細な粒子を燃焼室に送る。燃焼室から排出された高温ガスは、発電所に送られるか、熱源で使用され、さらに高炉に注入される高温ブラストを予熱する。燃焼のためのガス源としては、高炉から排出される頂部ガスを使用する。
【0007】
特許JP2009-057438は、バイオマスの炭化から生じる粉砕炭素材料の製造方法を提供することを目的としており、当該炭化から得られた生成物は、バイオマス中のエネルギーの高い効率的な回収を達成しつつ、高炉内に送風するのに適した微粉末に容易に変換することができる。
【0008】
この特許のいずれにおいても、廃棄物のばらつきを考慮に入れていない。実際、これらの材料の特性は、湿度及び発熱量に関してバッチごとに異なる可能性がある。その結果、炭化の排ガスの発熱量は焙焼される廃棄物によっても変化し、結果として生じる排ガスが次のバッチの廃棄物を焙焼するのに十分なエネルギーを放出しない場合もある。そのため外部からのエネルギー供給が必要になることもある。
【0009】
特許出願DE19606575A1は、あらゆる種類の残留物及び廃棄物を管理する方法を開示する。この文献では、廃棄物は、高炉頂部ガスのおかげで加熱することができる熱分解反応器で前処理される。次いで、焙焼された材料を第一鉄と非第一鉄の材料とに分離する。次いで、第一鉄材料をミルに送り、羽口を通して高炉に注入する。
【0010】
また、これらの廃棄物は、環境に有害な多くの揮発性化合物を含んでいる可能性がある。したがって、これらの成分を除去し、大気中に放出されないように、排ガスの特定の処理工程が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2011/052796号
【文献】欧州特許第1264901号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0306386号明細書
【文献】特開2009-057438号公報
【文献】独国特許出願公開第19606575号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、製鉄方法で使用される廃棄物の特性に左右されず、かつ専用の装置を必要とせずに汚染物質が大気中に放出されないようにする製鉄装置の運転方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、製鉄方法で使用される化石炭素を有機炭素で代替することにより、全体的な炭素バランスを改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的のために、本発明は、製鉄装置の運転方法に関するものであり、この方法は以下の工程を含む。
a.乾燥ガスを用いて廃棄物を乾燥させる工程であって、乾燥ガスは焼結プラントからの排ガスを含む工程、
b.乾燥させた廃棄物を焙焼ガスを用いて焙焼し、炭及び焙焼排ガスを製造する工程。
本発明による運転方法は、単独又は組合せて取得した以下の特性を含むこともできる。
- 乾燥ガスは少なくとも50%の焼結プラントからの排ガスを含む、
- 該方法は焙焼排ガスの少なくとも一部を焼結プラントにリサイクルする工程をさらに含む、
- 乾燥ガスは少なくとも70℃の温度を有する、
- 焼結プラント排ガスは乾燥ガスを形成するために他の成分と混合されるときには100~150℃の間に含まれる温度を有する、
- 焙焼は200℃~320℃の間に含まれる温度で行われる、
- 焙焼排ガスの少なくとも一部は乾燥ガスの一部として使用される、
- 焙焼排ガスが、焙焼工程において焙焼ガスの一部として使用される、
- 焙焼工程後に炭が原料として製鉄方法に使用される、
- 焙焼工程後に炭が粉砕工程に供され、粉砕された炭は羽口を取って高炉に注入される、
- 粉砕された炭は10μm未満の粒径を有する、
- 羽口から注入された固体材料の重量の少なくとも4%が粉砕された炭である、
- 乾燥工程後に乾燥された材料が10%未満の含水率を有する、
- 焙焼排ガスが製鉄方法に注入される、
- 焙焼排ガスが発電所に送られる、
- 廃棄物は有機廃棄物である、
― 有機廃棄物は廃木材である。
【0015】
本発明はまた、以下を含む装置に関する。
a.乾燥ガスを乾燥手段に注入する注入手段を含み、乾燥ガスを用いて廃棄物を乾燥させることができる乾燥手段、
b.焙焼ガスを用いて200~320℃の間に含まれる温度で、乾燥させた廃棄物を焙焼することができ、炭及び焙焼排ガスを生成する焙焼手段、
c.焼結材料及び焼結排ガスを生成する焼結プラント、
d.焼結排ガスを収集する第1の収集手段、
e.焼結排ガスの一部を乾燥手段に注入するために、第1の収集手段と注入手段を接続するように規定された接続部。
本発明による装置は、乾燥手段としてベルト乾燥機を備えることもできる。
本発明による装置は、焙焼手段としての熱分解反応器を含むこともできる。
【0016】
本発明は、以下の添付図を参照して、以下の記載を読むことにより、より深く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態による方法を実施するための装置の例を示す。
図2】本発明の別の実施形態による方法を実施するための装置の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この装置は、乾燥装置2、焙焼装置3、焼結プラント4及び製鉄装置5を備える。別の実施形態では、設置はさらにミル6を備えることができる。以下の説明では、製鉄装置5は高炉5であるが、直接還元炉又は任意のDRI設置でもよい。
【0019】
例えば廃棄物ごみ、産業廃棄物又は有機廃棄物の中から選ぶことができる廃棄物1を乾燥装置2に投入する。廃棄物1は好ましくは有機廃棄物であり、より好ましくは解体された建物から生じる木材廃棄物である。乾燥装置は、例えば、ベルト乾燥機又は回転炉乾燥機である。
【0020】
乾燥工程の間に、廃棄物1を乾燥させるのに必要な熱をもたらすために、乾燥装置2の内部に乾燥ガス12が注入される。ガス12は、少なくとも70℃の温度を有することが好ましい。
【0021】
乾燥工程が終了したら、好ましくは、廃棄物の含水率が10%未満、最も好ましくは5%未満になったら、乾燥した廃棄物を焙焼装置3に送る。焙焼装置3は、焙焼ガスと乾燥した材料との接触を避けるように設計されていることが好ましい。焙焼装置は、例えば、熱分解反応器又は回転炉である。
【0022】
焙焼工程の間に、焙焼ガス13が、乾燥した廃棄物を加熱するために焙焼装置3の内部に注入される。この熱は、焙焼ガスによって直接、又は燃焼器を通じてもたらされてもよく、燃焼器の燃料は、焙焼ガス13である。焙焼工程は200℃~320℃の間に含まれる温度で好ましくは実施される。焙焼工程は焙焼廃棄物を発生させるが、焙焼排ガス19も発生させる。この焙焼排ガス19は、廃棄物の焙焼から生じるCl、SO又はNOなどの揮発性化合物を含む。この焙焼排ガスは、揮発性化合物を捕捉し、これらが大気中に放出されることを避けるために、特別な処理装置9で処理しなければならない。
【0023】
次いで、炭又はバイオ炭とも呼ばれる焙焼廃棄物を高炉5に注入する。この焙焼廃棄物は炭素源として従来のコークス又は化石炭を代替し、その結果、化石炭素の使用を避けることによって全体的な炭素バランスを改善することができる。
【0024】
任意選択的に、炭又はバイオ炭を最初にミル6に送り、そこで200μm未満の大きさ、及び好ましくは150μm未満の大きさを有する粒子に粉砕する。次いで、既知の粉炭注入(PCI)方法で、微粉炭又はバイオ炭を石炭の代替物として、羽口(表記されていない)を通して、高炉に注入する。
【0025】
本発明によれば、装置はさらに焼結プラント4を備える。焼結プラントでは、鉄鉱石細粒を石灰石又はかんらん石などのフラックス、及びコークスブリーズ又は無煙炭などの固形燃料と高温で凝集させて、高炉5で使用できる製品を作る。基本的には、例示のように、焼結プラントにおいて、材料は多層のホッパーによって環状ベルトに供給され、そこで発火フード7によって発火される。空気及び煙は、焼結機全体を通して、材料床の底部から風箱8によって吸引され、発火処理を助ける。火はベルトに沿って徐々に材料に侵入し、炉床に達する。次いで、微粒子は一緒に溶融し、一度冷却した焼結ケーキ中で凝集する。次に、この焼結ケーキを割って、さらに焼結冷却器(図示せず)で冷却した後、高炉5に投入する。また、焼結冷却器は熱い空気を中心とした排ガスも放出する。
【0026】
風箱8によって吸引された空気及び煙、並びに焼結冷却器によって放出された熱い空気は、焼結排ガス14と呼ばれる。本発明によれば、この焼結排ガス14は、乾燥ガス12の一部として使用されるように乾燥装置に送られる。この乾燥ガス12は、少なくとも50%、より好ましくは80%超の焼結排ガス14を含む。乾燥ガス12はさらに天然ガスで構成されてもよい。焼結排ガス14は、風箱8によって吸引された空気及び煙のみ、又は焼結冷却器によって放出された熱い空気のみ、又はその両方から構成されてもよい。任意選択的に、焼結排ガス14は、乾燥ガス12を形成するために他の成分と混合される前に、まず洗浄工程に供される。この洗浄工程は、例えば、フィルターバッグ装置によって実施されてもよい。
【0027】
焼結排ガス14は、乾燥ガス12を形成するために他の成分と混合されるとき、好ましくは100~150℃の間に含まれる温度を有する。乾燥ガス12は焼結排ガス14のみで構成してもよい。
【0028】
焼結排ガス14は、環状ベルト上の発火材料から生じるので、高い発熱量を有し、そのため乾燥工程において乾燥ガス12の一部又は全部として使用するときには、その特性、特にその含水量の如何にかかわらず、常に廃棄物1を乾燥させるのに十分な熱をもたらす。もはや外部エネルギー源を使用する必要はない。
【0029】
さらなる実施形態では、図2に例示されているように、焙焼排ガス19aは、ガス処理装置9に送られるのではなく、焼結プラント4に送られ、そこで鉄微粉と混合された固体燃料の一部を置き換えることができる。これにより、費用のかかる追加の装置の使用を防ぎ、大気中への汚染物質の放出を回避することができる。
【0030】
別の実施形態では、点線で図2にも例示されているが、焙焼排ガス19bは焙焼装置3にリサイクルされ、そこで焙焼ガス13の一部として働いて乾燥した廃棄物を加熱する。また、焙焼排ガスは、乾燥工程のための乾燥ガス12の一部19cとして用いることもできる。
【0031】
図示されていない別の実施形態では、焙焼排ガスをストーブ内で使用して空気を加熱し、次いで、加熱した空気を高炉内に吹き込むことができる。
【0032】
図示されていない別の実施形態では、焙焼排ガスを発電所に送って電気を発生させることができる。
【0033】
図示されていないさらなる実施形態では、頂部ガス又はコークオーブンガス若しくはコンバーターガスのようなあらゆる製鉄排ガスとも呼ばれる、高炉の排ガスは、乾燥ガス又は焙焼ガスの一部として使用することができる。
【0034】
このように記載された本発明の全ての実施形態は、互いに組み合わせて使用することができる。
図1
図2