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特許7407240ナノパターン化表面を含む基材およびその調製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】ナノパターン化表面を含む基材およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20231221BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022101879
(22)【出願日】2022-06-24
(62)【分割の表示】P 2020055517の分割
【原出願日】2014-12-17
(65)【公開番号】P2022125109
(43)【公開日】2022-08-26
【審査請求日】2022-07-12
(31)【優先権主張番号】61/918,582
(32)【優先日】2013-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500358711
【氏名又は名称】イルミナ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】シェーン エム. ボーウェン
(72)【発明者】
【氏名】バラ ムラリ ベンカテサン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン エム. バーナード
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-184719(JP,A)
【文献】特開2008-260297(JP,A)
【文献】特開2010-258421(JP,A)
【文献】特開2011-253965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の調製方法であって、
複数のマイクロスケールパターンまたはナノスケールパターンを含むテンプレートを、裏当て層と光硬化性ポリマーの層との間に配置された機能化可能な層を含む基材の表面に接触させる工程と、
前記テンプレートまたは前記基材に圧力を加える工程であって、前記マイクロスケールパターンまたは前記ナノスケールパターンを前記光硬化性ポリマーの層に転写する、工程と、
前記光硬化性ポリマーにUV光を照射する工程であって、前記光硬化性ポリマーを硬化させ、パターン化されたUV硬化性ポリマーの層を形成する、工程と、
前記テンプレートを前記基材から分離する工程と
を含み、前記UV硬化性ポリマーの層の少なくとも一部分が貫通されて下にある前記機能化可能な層が露出し、
前記機能化可能な層が、機能化可能なヒドロゲルまたは機能化可能なポリマーを含み、前記機能化可能なヒドロゲルまたは前記機能化可能なポリマーが、生体分子に付着することができる1つまたはそれより多くの官能基を含み、前記1つまたはそれより多くの官能基が、アジド、任意選択的に置換されるアミノ、任意選択的に置換されるアルケニル、任意選択的に置換されるヒドラゾニル、カルボキシル、ハロゲン、ヒドロキシ、任意選択的に置換されるテトラゾリル、任意選択的に置換されるテトラジニル、またはチオール、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、方法。
【請求項2】
前記光硬化性ポリマーにUV光を照射する工程が、前記機能化可能な層の下にある裏当て層を通してUV光を透過させることを含み、前記裏当て層がUV光に対して少なくとも部分的に透過性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記機能化可能な層が、式(Ia)のポリマーまたはヒドロゲルを含み、

は、Hまたは任意選択的に置換されるアルキルであり、
は、アジド、任意選択的に置換されるアミン、任意選択的に置換されるアルケン、任意選択的に置換されるヒドラゾン、カルボン酸、ハロゲン、ヒドロキシ、任意選択的に置換されるテトラゾール、任意選択的に置換されるテトラジン、またはチオールであり、
は、Hまたは任意選択的に置換されるアルキルであり、
-(CH)-pの各々は任意選択的に置換されていてもよく、
pは1~50の範囲の整数であり、
nは1~50,000の範囲の整数であり、
mは1~100,000の範囲の整数である、
請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記機能化可能な層が、ポリ(N-(5-アジドアセトアミジルペンチル)アクリルアミド-co-アクリルアミド)(PAZAM)を含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記光硬化性ポリマーが、ウレタン、アクリレート、シリコーン、エポキシ、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、エポキシシリコーン、エポキシ樹脂、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シルセスキオキサン、アシルオキシシラン、マレイン酸ポリエステル、ビニルエーテル、ビニル基もしくはエチニル基を有するモノマー、またはそのコポリマーまたは組合せを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記光硬化性ポリマーの層または前記機能化可能な層の少なくとも1つが、ナノ粒子、量子ドット、結合受容体、リガンド、核酸、前記機能化可能な層の反応性部分、光学フィルター材料、光吸収材料、発光材料、光散乱材料、電気伝導性材料、および熱伝導性材料、並びにそれらの組み合わせからなる群より選択されるドーパント材料をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記テンプレートを除去した後に、前記基材にシーリング層を付与する工程であって、前記パターン化されたUV硬化性ポリマーの層と前記機能化可能な層を、前記裏当て層と前記シーリング層との間に実質的に密封する、工程をさらに含む、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記シーリング層が、光学的に透明である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記機能化可能な層が、約100μmを超えない厚さである、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマーの層が、約100μmを超えない厚さである、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記マイクロスケールパターンまたは前記ナノスケールパターンの少なくとも一部分が、約500nm未満の平均直径を有するポストである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2013年12月19日に出願された米国仮出願番号第61/918,582号に基づく優先権の利益を主張しており、この仮出願は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【0002】
(分野)
一般に、本出願は、ナノパターン化プロセスおよびナノパターン化表面を備える基材の分野に関する。より詳しくは、本出願は、ナノスケールパターンおよびマイクロスケールパターンを備えたポリマー層を含む少なくとも2つの層、そしていくつかの実施形態では少なくとも3つの層を備える基材に関する。また、レジストフリーの室温UV硬化およびエンボス加工プロセスを使用することによる、これらの基材の調製方法も開示する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
ナノインプリンティング技術は、経済的かつ有効なナノ構造物の作製を可能にする。標準的なナノエンボス加工リソグラフィーは、ナノ構造物を有するスタンプよるレジスト材料の直接的な機械的変形、それに続くエッチングプロセスに依存し、このスタンプからのナノ構造物を基材に転写する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(要旨)
本出願は、複数のマイクロスケールパターンまたはナノスケールパターンを有するポリマー層を形成するためにUV感受性ポリマーを使用する。UV放出プロセスにより、テンプレートへのポリマーの静摩擦が抑制され、分離の間のパターンの任意の変形が抑制され、したがって、ナノスケールであっても強健なパターン転写がもたらされる。本出願の方法は、熱エンボス加工プロセスに相補的であり、マスターテンプレートを加熱することを必要とせず、それにより、材料における熱応力およびテンプレートを横切る熱勾配に関連する問題を回避する。
【0005】
本出願の方法は、低コストでのマイクロパターン化およびナノパターン化が必要であり得る技術に応用することができる。応用は、ナノ製造、医療診断およびグローバルヘルス、フレキシブルディスプレイ技術、ナノ流体工学ならびに新興市場、例えば、ナノパターン化された超疎水性表面(ディウェッティングウィンドウ、防風ガラスなど)を生成するための低コストの方法が勢いを増す建設業および自動車産業を包含する。また、本出願の方法は、低コストのパターン化された消耗品、例えば、パターン化されたプラスチックフローセルおよびシーケンシングデバイスにおける使用のための低コストのマイクロ流体デバイスを生成するためにも応用することができる。
【0006】
医療費の高額化および発展途上国における医療インフラストラクチャーの欠如に伴い、ポイントオブケア(POC)診断および低コストのラボオンチップ(LOC)技術に対する需要が高まっている。このような技術は、より安価で頑健で携帯可能で使い捨て可能なものになれば、その利用可能性が拡大されることになり、最も重要なことには、結果を得るまでの時間が速くなる。このような利点を可能にするためには、低コストのパターン形成およびマイクロ流体工学技術が所望される。ペーパーベースのマイクロ流体工学が潜在的候補の1つとして登場しているが、従来のリソグラフィーに基づくアプローチを用いて製作することは困難であり、多くの被検物の検出のために多重化することは困難であり、そして溶液は容易に逸散し、それにより多くの実施形態では標的被検物の事前の濃縮が必要とされる。本出願の方法は、グローバルな健康適用のためのマイクロ流体工学ベースの総合解析プラットフォームの製作の非常に費用効果の高い代替法を提供する。
【0007】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、1つまたはそれより多くの官能基を含む機能化可能な(functionalizable)層;複数のマイクロスケールパターンもしくはナノスケールパターンまたはそれらの組合せを含むポリマー層;および裏当て(backing)層を備える基材を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、機能化可能な層が裏当て層とポリマー層の間に配置されている。いくつかの実施形態では、ポリマー層が裏当て層と機能化可能な層の間に配置されている。いくつかの実施形態では、基材はさらに、ポリマー層と機能化可能な層を裏当て層とシーリング層の間に実質的に密封するためのシーリング層を備え得る。いくつかのこのような実施形態では、シーリング層が光学的に透明である。
【0009】
いくつかの実施形態では、マイクロスケールパターンまたはナノスケールパターンの少なくとも1つは、試料流体を収容し得る。いくつかの実施形態では、基材はさらに、流体レザーバ、例えば試料レザーバを備え得る。
【0010】
開示される任意の実施形態において、機能化可能な層は、反応性シラン層、機能化可能なヒドロゲルまたは機能化可能なポリマーを含み得る。いくつかのこのような実施形態では、機能化可能な層は、1つまたはそれより多くの官能基を含み得る。いくつかのこのような実施形態では、官能基は、任意選択的に置換されるアルケン、アジド、任意選択的に置換されるアミン、カルボン酸、任意選択的に置換されるヒドラゾン、ハロゲン、ヒドロキシ、任意選択的に置換されるテトラゾール、任意選択的に置換されるテトラジン、チオールおよびそれらの組合せからなる群より選択され得る。
【0011】
開示される任意の実施形態において、機能化可能な層の官能基は、生体分子に付着され得る。いくつかの実施形態では、生体分子は、アミノ酸、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ペプチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、核酸、タンパク質またはそれらの組合せから選択される。いくつかのこのような実施形態では、生体分子は、ポリヌクレオチドまたは核酸である。
【0012】
開示される任意の実施形態において、ポリマー層は、少なくとも1つの光硬化性ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、光硬化性ポリマーは、ウレタン、アクリレート、シリコーン、エポキシ、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、エポキシシリコーン、エポキシ樹脂、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シルセスキオキサン、アシルオキシシラン、マレイン酸ポリエステル、ビニルエーテル、ビニル基もしくはエチニル基を有するモノマー、またはそのコポリマーおよび組合せを含む。
【0013】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、基材を調製するための方法を含み、この方法は:裏当て層と光硬化性ポリマーの層の間に配置された1つまたはそれより多くの官能基を含む機能化可能な層を備える基材を提供する工程;上記光硬化性ポリマーの層の表面を、マイクロスケールウェルもしくはナノスケールウェル、ポストまたはそれらの組合せを有するテンプレートと接触させる工程;上記テンプレートまたは上記基材に圧力を加える工程であって、上記マイクロスケールパターンまたはナノスケールパターンを少なくとも上記光硬化性ポリマーの層に転写する工程を含み、上記接触する工程および上記圧力を加える工程は室温で行なわれ;上記光硬化性ポリマーをUV光で照射する工程であって、上記光硬化性ポリマーを硬化させる工程;ならびに上記テンプレートを上記基材から分離する工程を含み;ここで、上記ポリマー層の少なくとも一部分は貫通され、下にある上記機能化可能な層を露出する、基材の調製方法を含む。いくつかの実施形態では、上記ポリマー層および上記機能化可能な層の少なくとも一部分は貫通され、下にある上記裏当て層は露出する。
【0014】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、基材を調製する方法を含み、この方法は:マイクロスケールウェルまたはナノスケールウェル、チャネルまたはその組合せそれらの組合せを含む複数のマイクロスケールパターンまたはナノスケールパターンをテンプレートの表面上に含むテンプレートを提供する工程;1つまたはそれより多くの官能基を含む官能性層を、上記テンプレートの表面に堆積する工程であって、上記マイクロスケールウェルまたはナノスケールウェル、チャネルまたはそれらの組合せの少なくとも一部分が上記官能性層を含む、工程;過剰の機能化可能な層を上記テンプレートの表面から除去する工程であって、上記機能化可能な層が上記テンプレートの表面の一部分のみに存在する、工程;裏当て層を備える基材を提供する工程であって、この裏当て層が、この裏当て層上に配置された光硬化性ポリマーの層を有する、工程;上記光硬化性ポリマーの層の表面を、上記複数のマイクロスケールパターンまたは上記ナノスケールパターン、および機能化可能な層をその上に有する上記テンプレートの表面と接触させる工程;上記テンプレートまたは上記基材に圧力を加える工程であって、上記マイクロスケールパターンまたは上記ナノスケールパターンを、少なくとも上記光硬化性ポリマーの層に転写する、工程を含み、ここで、上記接触する工程および上記圧力を加える工程は室温で行なわれ、上記光硬化性ポリマーをUV光で照射する工程であって、上記光硬化性ポリマーを硬化させる、工程;ならびに上記テンプレートを上記基材から分離する工程を含み、ここで、上記機能化可能な層の少なくとも一部分は、上記ポリマー層に転写される、基材の調製方法を含む。いくつかの実施形態では、上記ポリマー層の少なくとも一部分は貫通され、上記裏当て層は露出する。いくつかの実施形態では、上記基材は、裏当て層をさらに備え、この裏当て層は、この裏当て層上に光硬化性ポリマーの層を有して、一巻の可撓性ダイシングテープである。
【0015】
開示される方法の任意の実施形態において、上記方法は、上記テンプレートを除去した後の上記基材に、シール層を付与する工程をさらに含み得、上記ポリマー層と上記機能化可能な層とを、上記裏当て層と上記シーリング層との間に実質的に密封する。いくつかの実施形態では、上記シーリング層はさらに、開示される任意の実施形態の方法によって調製される第2の基材を含み、この場合、上記基材の機能化可能な層と光硬化性ポリマーの層とは、上記基材の裏当て層間に配置される。いくつかの実施形態では、上記シーリング層は、光学的に透明である。いくつかの方法の実施形態では、上記方法はロール・ツー・ロール法であり得る。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
1つまたはそれより多くの官能基を含む機能化可能な層;
複数のマイクロスケールパターンもしくはナノスケールパターンまたはそれらの組合せを含むポリマー層;および
裏当て層、を備える基材。
(項目2)
前記ポリマー層のマイクロスケールパターンまたはナノスケールパターンが、チャネル、トレンチ、ウェル、ポストまたはそれらの組合せを含む、項目1に記載の基材。
(項目3)
前記機能化可能な層が、前記裏当て層と前記ポリマー層との間に配置されている、項目1または2に記載の基材。
(項目4)
前記ポリマー層のマイクロスケールパターンまたはナノスケールパターンの少なくとも一部分が、前記ポリマー層を貫通して下にある前記機能化可能な層を露出する、項目3に記載の基材。
(項目5)
前記機能化可能な層が、複数のマイクロスケールパターンもしくはナノスケールパターンまたはそれらの組合せを含み、前記ポリマー層と前記機能化可能な層のマイクロスケールパターンまたはナノスケールパターンの少なくとも一部分が、前記ポリマー層と前記機能化可能な層を貫通して下にある前記裏当て層を露出する、項目4に記載の基材。
(項目6)
前記ポリマー層が、前記裏当て層と前記機能化可能な層との間に配置されている、項目1または2に記載の基材。
(項目7)
前記機能化可能な層が、複数のマイクロスケールパターンもしくはナノスケールパターンまたはそれらの組合せを含み、前記機能化可能な層のマイクロスケールパターンまたはナノスケールパターンの少なくとも一部分が、前記機能化可能な層を貫通して下にある前記ポリマー層を露出する、項目6に記載の基材。
(項目8)
前記機能化可能な層および前記ポリマー層のマイクロスケールパターンまたはナノスケールパターンの少なくとも一部分が、前記機能化可能な層と前記ポリマー層とを貫通して下にある前記裏当て層を露出する、項目7に記載の基材。
(項目9)
前記ポリマー層のマイクロスケールパターンまたはナノスケールパターンの少なくとも一部分が貫通されて、下にある前記裏当て層を露出する、項目6に記載の基材。
(項目10)
前記基材が円筒体形状であり、前記裏当て層が前記基材の機能化可能な層またはポリマー層よりも前記円筒体の外表に近い、項目1~9のいずれか1項に記載の基材。
(項目11)
前記基材が円筒体形状であり、前記裏当て層が前記基材の機能化可能な層またはポリマー層よりも前記円筒体の内表面に近い、項目1~9のいずれか1項に記載の基材。
(項目12)
前記基材がシーリング層をさらに備え、前記ポリマー層と前記機能化可能な層とを前記裏当て層と前記シーリング層との間に実質的に密封する、項目1~11のいずれか1項に記載の基材。
(項目13)
前記シーリング層が、光学的に透明である、項目12に記載の基材。
(項目14)
前記マイクロスケールパターンまたは前記ナノスケールパターンの少なくとも1つが、試料流体を収容し得る、項目1~13のいずれか1項に記載の基材。
(項目15)
流体レザーバをさらに備える、項目1~14のいずれか1項に記載の基材。
(項目16)
前記マイクロスケールパターンまたは前記ナノスケールパターンの少なくとも一部分が、ポストである、項目1~15のいずれか1項に記載の基材。
(項目17)
前記ポストが、約500nm未満の平均直径を有する、項目16に記載の基材。
(項目18)
前記ポストが、約330nmの平均直径を有する、項目17に記載の基材。
(項目19)
前記ポストが、約500nm未満の平均高さを有する、項目16~18のいずれか1項に記載の基材。
(項目20)
前記ポストが、約300nmの平均高さを有する、項目19に記載の基材。
(項目21)
前記裏当て層が、シリカ、プラスチック、石英、金属、金属酸化物、紙およびそれらの組合せからなる群より選択される材料から作製される、項目1~20のいずれか1項に記載の基材。
(項目22)
前記裏当て層が、可撓性のプラスチック材料から作製される、項目21に記載の基材。(項目23)
前記裏当て層が、一巻の可撓性の薄膜から作製される、項目21または22に記載の基材。
(項目24)
前記機能化可能な層が、反応性シラン層、機能化可能なヒドロゲルまたは機能化可能なポリマーを含む、項目1~23のいずれか1項に記載の基材。
(項目25)
前記機能化可能な層が1つまたはそれより多くの官能基を含む、項目1~24のいずれか1項に記載の基材。
(項目26)
前記官能基が、任意選択的に置換されるアルケン、アジド、任意選択的に置換されるアミン、カルボン酸、任意選択的に置換されるヒドラゾン、ヒドロキシ、任意選択的に置換されるテトラゾール、任意選択的に置換されるテトラジン、チオールおよびそれらの組合せからなる群より選択される、項目25に記載の基材。
(項目27)
前記機能化可能な層が、式(Ia)または(Ib):
【化4】


を含むポリマーまたはヒドロゲルを含み、
はHまたは任意選択的に置換されるアルキルであり;
官能基Rは、アジド、任意選択的に置換されるアミン、任意選択的に置換されるアルケン、任意選択的に置換されるヒドラゾン、カルボン酸、ハロゲン、ヒドロキシ、任意選択的に置換されるテトラゾール、任意選択的に置換されるテトラジンおよびチオールからなる群より選択され;
は、Hまたは任意選択的に置換されるアルキルから選択され;
-(CH)-pの各々は任意選択的に置換されていてもよく;
pは1~50の範囲の整数であり;
nは1~50,000の範囲の整数であり;そして
mは1~100,000の範囲の整数である、
項目1~26のいずれか1項に記載の基材。
(項目28)
前記官能基が、アジドを含む、項目25~27のいずれか1項に記載の基材。
(項目29)
前記機能化可能な層の官能基が、生体分子に付着される、項目25~28のいずれか1項に記載の基材。
(項目30)
前記生体分子が、アミノ酸、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ペプチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、核酸、タンパク質またはそれらの組合せから選択される、項目29に記載の基材。
(項目31)
前記生体分子が、ポリヌクレオチドまたは核酸である、項目30に記載の基材。
(項目32)
前記ポリマー層が、少なくとも1つの光硬化性ポリマーを含む、項目1~31のいずれか1項に記載の基材。
(項目33)
前記光硬化性ポリマーが、ウレタン、アクリレート、シリコーン、エポキシ、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、エポキシシリコーン、エポキシ樹脂、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シルセスキオキサン、アシルオキシシラン、マレイン酸ポリエステル、ビニルエーテル、ビニル基もしくはエチニル基を有するモノマー、またはそのコポリマーおよび組合せを含む、項目32に記載の基材。
(項目34)
前記裏当て層が、約1mmを超えない厚さである、項目1~33のいずれか1項に記載の基材。
(項目35)
前記裏当て層が、約100μmを超えない厚さである、項目1~34のいずれか1項に記載の基材。
(項目36)
前記機能化可能な層が、約1mmを超えない厚さである、項目1~35のいずれか1項に記載の基材。
(項目37)
前記機能化可能な層が、約100μmを超えない厚さである、項目1~36のいずれか1項に記載の基材。
(項目38)
前記ポリマー層が、約1mmを超えない厚さである、項目1~37のいずれか1項に記載の基材。
(項目39)
前記ポリマー層が、約100μmを超えない厚さである、項目1~38のいずれか1項に記載の基材。
(項目40)
前記裏当て層、前記ポリマー層または前記機能化可能な層の少なくとも1つが、ドーパント材料でさらにドープされている、項目1~39のいずれか1項に記載の基材。
(項目41)
前記ドーパント材料が、ナノ粒子、量子ドット、結合受容体、リガンド、核酸、前記機能化可能な層の反応性部分、光学フィルター材料、軽量吸収材料、発光材料、光散乱材料、電気伝導性材料または熱伝導性材料から選択される、項目40に記載の基材。
(項目42)
前記ドーパント材料が、主として前記裏当て層、前記ポリマー層または前記機能化可能な層の表面上に、または前記表面上にのみに存在する、項目40または41に記載の基材。
(項目43)
前記ドーパント材料が、前記裏当て層、前記ポリマー層または前記機能化可能な層の体積内に存在する、項目40または41に記載の基材。
(項目44)
前記ドーパント材料が、前記裏当て層、前記ポリマー層または前記機能化可能な層の体積内および表面上の両方に存在する、項目40または41に記載の基材。
(項目45)
前記複数のマイクロスケールパターンもしくは前記ナノスケールパターンまたはそれらの組合せが、室温での機械的エンボス加工によって作製される、項目1~44のいずれか1項に記載の基材。
(項目46)
基材の調製方法であって、
裏当て層と光硬化性ポリマーの層との間に配置された1つまたはそれより多くの官能基を含む機能化可能な層を備える基材を提供する工程;
前記光硬化性ポリマーの層の表面を、マイクロスケールウェルもしくはナノスケールウェル、ポストまたはそれらの組合せを含む、複数のマイクロスケールパターンまたはナノスケールパターン有するテンプレートと接触する工程;
前記テンプレートまたは前記基材に圧力を加える工程であって、前記マイクロスケールパターンまたは前記ナノスケールパターンを少なくとも前記光硬化性ポリマーの層に転写する工程:を含み、前記接触する工程および前記圧力を加える工程は室温で行なわれ、
前記光硬化性ポリマーにUV光を照射する工程であって、前記光硬化性ポリマーを硬化する工程;ならびに
前記テンプレートを前記基材から分離する工程;を含み、
前記ポリマー層の少なくとも一部分が貫通されて下にある前記機能化可能な層が露出する、基材の調製方法。
(項目47)
前記ポリマー層および前記機能化可能な層の少なくとも一部分が貫通されて下にある前記裏当て層を露出する、項目46に記載の方法。
(項目48)
基材の調製方法であって、
マイクロスケールウェルまたはナノスケールウェル、チャネルまたはそれらの組合せを含む複数のマイクロスケールパターンまたはナノスケールパターンを表面上に含むテンプレートを提供する工程;
前記テンプレートの表面上に、1つまたはそれより多くの官能基を含む官能性層を堆積する工程であって、前記マイクロスケールもしくはナノスケールウェル、チャネルまたはそれらの組合せの少なくとも一部分が、前記官能性層を含む、工程;
過剰の機能化可能な層を前記テンプレートの表面から、前記機能化可能な層が前記テンプレートの表面上の一部分のみに存在するように除去する工程;
光硬化性ポリマーの層を有する裏当て層を備える基材を提供する工程であって、前記光硬化性ポリマーの層が前記上面に光硬化性ポリマーの層が配置された裏当て層の上に配置されている、工程;
前記光硬化性ポリマーの層の表面を、前記複数のマイクロスケールパターンまたは前記ナノスケールパターンおよび機能化可能な層をその上に有する前記テンプレートの表面と接触する工程;
前記テンプレートまたは前記基材に圧力を加える工程であって、前記マイクロスケールパターンまたは前記ナノスケールパターンを、少なくとも前記光硬化性ポリマーの層に転写する工程;を含み、前記接触する工程および前記圧力を加える工程は室温で行なわれ、
前記光硬化性ポリマーにUV光を照射する工程であって、前記光硬化性ポリマーを硬化する工程;ならびに
前記テンプレートを前記基材から分離する工程;を含み、
前記機能化可能な層の少なくとも一部分が前記ポリマー層に転写される、基材の調製方法。
(項目49)
前記ポリマー層の少なくとも一部分が貫通されて、前記裏当て層が露出する、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記基材が裏当て層を備え、前記裏当て層が、前記裏当て層上に配置された光硬化性ポリマーの層を有する、一巻の可撓性ダイシングテープである、項目48または49に記載の方法。
(項目51)
前記テンプレートを除去した後に、前記基材にシーリング層を付与する工程をさらに含み、前記ポリマー層と前記機能化可能な層を、前記裏当て層と前記シーリング層との間に実質的に密封する、項目46~50のいずれかに記載の方法。
(項目52)
前記シーリング層が、項目46~49のいずれかに記載の方法によって調製される第2の基材を含み、前記基材の機能化可能な層および光硬化性ポリマーの層が前記基材の裏当て層の間に配置される、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記シーリング層が、光学的に透明である、項目51および52のいずれかに1項に記載の方法。
(項目54)
前記基材を円筒体に形成する工程をさらに含む、項目46~53のいずれか1項に記載の方法。
(項目55)
前記裏当て層が、前記基材の機能化可能な層またはポリマー層より前記円筒体の外表面に近い、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記裏当て層が、前記基材の機能化可能な層またはポリマー層より前記円筒体の内表面に近い、項目54に記載の方法。
(項目57)
前記マイクロスケールパターンまたは前記ナノスケールパターンの少なくとも一部分が、ポストである、項目46~56のいずれか1項に記載の方法。
(項目58)
前記ポストが、約500nm未満の平均直径を有する、項目57に記載の方法。
(項目59)
前記ポストが、約330nmの平均直径を有する、項目58に記載の方法。
(項目60)
前記ポストが、約500nm未満の平均高さを有する、項目57~59のいずれか1項に記載の方法。
(項目61)
前記ポストが、約300nmの平均高さを有する、項目60に記載の方法。
(項目62)
前記裏当て層が、シリカ、プラスチック、石英、金属、金属酸化物、紙およびそれらの組合せからなる群より選択される材料から作製される、項目46~61のいずれか1項に記載の方法。
(項目63)
前記裏当て層が、可撓性のプラスチック材料から作製される、項目62に記載の方法。(項目64)
前記裏当て層が、一巻の可撓性膜から作製される、項目62または63に記載の方法。(項目65)
前記機能化可能な層が、反応性シラン層、機能化可能なヒドロゲルまたは機能化可能なポリマーを含む、項目46~64のいずれか1項に記載の方法。
(項目66)
前記機能化可能な層が、1つまたはそれより多くの官能基を含む、項目46~65のいずれか1項に記載の方法。
(項目67)
前記官能基が、任意選択的に置換されるアルケン、アジド、任意選択的に置換されるアミン、カルボン酸、任意選択的に置換されるヒドラゾン、ヒドロキシ、任意選択的に置換されるテトラゾール、任意選択的に置換されるテトラジン、チオールおよびそれらの組合せからなる群より選択される、項目66に記載の方法。
(項目68)
前記機能化可能な層が、式(Ia)または(Ib):
【化5】


を含むポリマーまたはヒドロゲルを含み、
ここで、RはHまたは任意選択的に置換されるアルキルであり;
官能基Rは、アジド、任意選択的に置換されるアミン、任意選択的に置換されるアルケン、任意選択的に置換されるヒドラゾン、カルボン酸、ハロゲン、ヒドロキシ、任意選択的に置換されるテトラゾール、任意選択的に置換されるテトラジンおよびチオールからなる群より選択され;
は、Hまたは任意選択的に置換されるアルキルから選択され;
-(CH)-pの各々は任意選択的に置換されていてもよく;
pは1~50の範囲の整数であり;
nは1~50,000の範囲の整数であり;そして
mは1~100,000の範囲の整数である、
項目46~67のいずれか1項に記載の方法。
(項目69)
前記官能基がアジドを含む、項目66~68のいずれか1項に記載の方法。
(項目70)
前記機能化可能な層の官能基が生体分子に付着される、項目66~69のいずれか1項に記載の方法。
(項目71)
前記生体分子が、アミノ酸、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ペプチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、核酸、タンパク質またはそれらの組合せから選択される、項目70に記載の方法。
(項目72)
前記生体分子が、ポリヌクレオチドまたは核酸である、項目71に記載の方法。
(項目73)
前記ポリマー層が、少なくとも1つの光硬化性ポリマーを含む、項目46~72のいずれか1項に記載の方法。
(項目74)
前記光硬化性ポリマーが、ウレタン、アクリレート、シリコーン、エポキシ、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、エポキシシリコーン、エポキシ樹脂、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シルセスキオキサン、アシルオキシシラン、マレイン酸ポリエステル、ビニルエーテル、ビニル基もしくはエチニル基を有するモノマー、またはそのコポリマーおよび組合せを含むものである、項目73に記載の方法。
(項目75)
前記裏当て層が、約1mmを超えない厚さである、項目46~74のいずれか1項に記載の方法。
(項目76)
前記裏当て層が、約100μmを超えない厚さである、項目46~75のいずれか1項に記載の方法。
(項目77)
前記機能化可能な層が、約1mmを超えない厚さである、項目46~76のいずれか1項に記載の方法。
(項目78)
前記機能化可能な層が、約100μmを超えない厚さである、項目46~77のいずれか1項に記載の方法。
(項目79)
前記ポリマー層が、約1mmを超えない厚さである、項目46~78のいずれか1項に記載の方法。
(項目80)
前記ポリマー層が、約100μmを超えない厚さである、項目46~79のいずれか1項に記載の方法。
(項目81)
前記裏当て層、前記ポリマー層または前記機能化可能な層の少なくとも1つがさらに、ドーパント材料でドープされている、項目46~80のいずれか1項に記載の方法。
(項目82)
前記ドーパント材料が、ナノ粒子、量子ドット、結合受容体、リガンド、核酸、前記機能化可能な層の反応性部分、光学フィルター材料、軽量吸収材料、発光材料、光散乱材料、電気伝導性材料または熱伝導性材料から選択される、項目81に記載の方法。
(項目83)
前記ドーパント材料が、主に前記裏当て層、前記ポリマー層または前記機能化可能な層の表面上に、または前記表面上のみに存在する、項目81または82に記載の方法。
(項目84)
前記ドーパント材料が、前記裏当て層、前記ポリマー層または前記機能化可能な層の体積内に存在する、項目81または82に記載の方法。
(項目85)
前記ドーパント材料が、前記裏当て層、前記ポリマー層または前記機能化可能な層の体積内および表面上の両方に存在する、項目81または82に記載の方法。
(項目86)
項目46または48に記載の方法の前に、前記裏当て層、前記光硬化性ポリマーの層または前記機能化可能な層の少なくとも1つに、ドーパント材料がドープされる、項目81~85のいずれか1項に記載の方法。
(項目87)
項目46または48に記載の方法によりテンプレートと接触させる前に、前記光硬化性ポリマーの層または前記機能化可能な層の少なくとも一方が、ドーパント材料でドープされる、項目81~86のいずれか1項に記載の方法。
(項目88)
前記テンプレートのマイクロスケールパターンまたはナノスケールパターンの少なくとも一部分が、前記ポリマー層内のドーパント材料に転写される、項目81~87のいずれか1項に記載の方法。
(項目89)
前記テンプレートのマイクロスケールパターンまたはナノスケールパターンの少なくとも一部分が、前記機能化可能な層内のドーパント材料に転写される、項目81~87のいずれか1項に記載の方法。
(項目90)
前記方法が、ロール・ツー・ロール法である、項目46~89のいずれかに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1A~1Cは、機能化可能な層がポリマー層と裏当て層との間に配置されている基材のいくつかの実施形態の断面図である。
【0017】
図2ABC図2A~2Cは、機能化可能な層がポリマー層と裏当て層との間に配置されている基材のいくつかの実施形態の断面図である。
【0018】
図2D図2Dは、機能化可能な層がポリマー層と裏当て層との間に配置されている基材の上面図である。
【0019】
図2E図2Eは、機能化可能な層とポリマー層が裏当て層とシーリング層との間に配置されている基材の断面図である。
【0020】
図3ABC図3A~3Cは、ポリマー層が機能化可能な層と裏当て層との間に配置されている基材のいくつかの実施形態の断面図である。
【0021】
図4AB図4Aおよび4Bは、機能化可能な層がポリマー層と裏当て層の間に配置されている基材のいくつかの実施形態の断面図である。
【0022】
図4C図4Cは、機能化可能な層とポリマー層が裏当て層とシーリング層との間に配置されている基材の断面図である。
【0023】
図5図5Aおよび5Bは、円筒体形状の基材のいくつかの実施形態の断面図である。
【0024】
図6図6Aおよび6Bは、円筒体形状の基材のいくつかの実施形態の断面図である。
【0025】
図7図7Aおよび7Bは、積層されている2つの基材のいくつかの実施形態の断面図であり、これらの基材は他方の上面に、遠位表面(すなわち、それぞれの基層に対して遠位の表面)同士の接触によって積層されているか、または遠位表面同士が近接するように積層されている。
【0026】
図8AB図8A~8Dは、複数のマイクロスケールパターンまたはナノスケールパターンを含むテンプレートを使用する、機能化可能な層がポリマー層と裏当て層との間に配置されている基材の調製方法の一実施形態を示す断面図である。
図8C図8A~8Dは、複数のマイクロスケールパターンまたはナノスケールパターンを含むテンプレートを使用する、機能化可能な層がポリマー層と裏当て層との間に配置されている基材の調製方法の一実施形態を示す断面図である。
図8D図8A~8Dは、複数のマイクロスケールパターンまたはナノスケールパターンを含むテンプレートを使用する、機能化可能な層がポリマー層と裏当て層との間に配置されている基材の調製方法の一実施形態を示す断面図である。
【0027】
図9AB図9A~9Eは、複数のマイクロスケールまたはナノスケールパターンを含むテンプレートを使用する、ポリマー層が機能化可能な層と裏当て層との間に配置されている基材の調製方法の一実施形態を示す断面図である。
図9C図9A~9Eは、複数のマイクロスケールまたはナノスケールパターンを含むテンプレートを使用する、ポリマー層が機能化可能な層と裏当て層との間に配置されている基材の調製方法の一実施形態を示す断面図である。
図9D図9A~9Eは、複数のマイクロスケールまたはナノスケールパターンを含むテンプレートを使用する、ポリマー層が機能化可能な層と裏当て層との間に配置されている基材の調製方法の一実施形態を示す断面図である。
図9E図9A~9Eは、複数のマイクロスケールまたはナノスケールパターンを含むテンプレートを使用する、ポリマー層が機能化可能な層と裏当て層との間に配置されている基材の調製方法の一実施形態を示す断面図である。
【0028】
図10A図10Aは、12個のHi-seqサイズのパターン化フローセルを含む、8インチマスターテンプレートウェハの上面図である。
【0029】
図10B図10Bは、図10Aから切り出したフローセル7の暗視野顕微鏡画像である上面図である。
【0030】
図10CD図10C~10Fは、それぞれ、ポリマーシート上に形成されたナノスケールパターンの1240倍、20k倍、40k倍および80k倍の倍率のSEM画像である上面図である。
図10EF図10C~10Fは、それぞれ、ポリマーシート上に形成されたナノスケールパターンの1240倍、20k倍、40k倍および80k倍の倍率のSEM画像である上面図である。
【0031】
図11図11Aおよび11Bは、それぞれ、ナノスケールパターンの1307倍および5000倍の倍率のSEM画像である上面図である。
【0032】
図12A図12Aは、蛇行性マイクロ流体チャネルおよび接合部の光学画像である上面図である。
【0033】
図12B図12Bは、マイクロ流体フィルターの光学画像である上面図である。
【0034】
図12C図12Cは、時間の関数としての蛇行性マイクロ流体チャネルを通る流体フローである光学画像の上面図である。
【0035】
図12D図12Dは、T字型接合部内への流体フローの光学画像である上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
以下の詳細説明は、本出願の特定の具体的な実施形態に関する。本説明において図面に言及しているが、図面中、全体を通して明瞭性重視のため、同様の部分または工程は同様の数字で表示している場合があり得る。本明細書において “one embodiment(一実施形態)”、“an embodiment(ある実施形態)”または“in
some embodiments(いくつかの実施形態)”への言及は、上記実施形態に関して記載した特定の特徴、構造または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれ得ることを意味する。本明細書中の種々の箇所における句“one embodiment”、“an embodiment”または“in some embodiments”の出現は、必ずしもすべて同じ実施形態に言及しているとは限らず、相互に他の実施形態を排除する別個の実施形態または代替の実施形態でもない。さらに、一部いくつかの実施形態では示されても良くるが、そして他の実施形態では示されなくてもよい種々の特徴が記載される。同様に、いくつかの実施形態には必要条件であってもよいが、他の実施形態にはそうでなくてもよい種々の必要条件が記載される。
【0037】
本明細書で使用しているセクションの見出しは、整理する目的のためにすぎず、記載され主題を限定するものと解釈されるべきでない。
【0038】
(定義)
特に定義していない限り、本明細書で用いる科学技術用語はすべて、当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書で言及した特許、特許出願、公開出願および他の刊行物はすべて、特に記載のない限り、引用によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる場合、単数形「a」、「an」および「the」は、本文中にそうでないことを明記していない限り、複数の指示対象物を包含している。「または(もしくは)」の使用は、特に記載のない限り「および/または」を意味する。さらに、用語“including(~を含む)”または他の形態、例えば、“include”、“includes”および“included”の使用は非制限的である。本明細書で用いる場合、移行句であれ請求項の本文であれ、用語“comprise(s)(~を含む/~を備える)”および“comprising”はオープンエンドの意味を有すると解釈されたい。すなわち、これらの用語は、句“having at least(少なくとも~を有する)」または“including
at least(少なくとも~を含む)”と同義であると解釈されるべきである。方法との関連で用いる場合、用語“comprising”は、この方法が少なくとも記載された工程を“include(含んで)”いるが、さらなる工程を“include”していてもよいことを意味する。化合物、組成物またはデバイスとの関連で用いる場合、用語“comprising”は、これらの化合物、組成物またはデバイスが、少なくとも記載された特徴または成分を“include”しているが、さらなる特徴または成分もまた“include”していてもよいことを意味する。
【0039】
本明細書で用いる場合、一般的な有機化学の略号を以下のとおりに定義する:
PAZAM アザパ(N-(5-(2-アジドアセトアミド)ペンチル)アクリルアミド)に対して任意のアクリルアミドの比のポリ(N-(5-アジドアセトアミジルペンチル)アクリルアミド-コ-アクリルアミド)
SEM 走査型電子顕微鏡
℃ セ氏度での温度
μm マイクロメートル
【0040】
本明細書で用いる場合、用語「アレイ」は、異なるプローブ分子の集団であって、これらの異なるプローブ分子が互いに空間的に識別され得るように、1つまたはそれより多くの基材に付着されている集団をいう。アレイは、各々が基材上のアドレス指定可能な異なる位置に配置された異なるプローブ分子を含み得る。代替的または付加的に、アレイは、各々が異なるプローブ分子を有する別個の基材を含み得、この場合、これらの異なるプローブ分子は、これらの基材が取り付けられる表面上のこれらの基材の位置に従って、または液体中の基材の位置に従って識別され得る。別個々基材が表面上に位置決めされる例示的なアレイとしては、限定されないが、例えば米国特許第6,355,431 B1号、US2002/0102578およびPCT出願公開公報番号WO00/63437に記載のようなウェル内にビーズを含むものが挙げられる。本出願において、液体アレイ中のビーズを、例えばマイクロ流体デバイス(蛍光活性化細胞ソーター(FACS)など)を使用して区別するために使用され得る例示的なフォーマットは、例えば、米国特許第6,524,793号に記載されている。本出願において使用され得るアレイのさらなる例としては、限定されないが、米国特許第5,429,807号;同第5,436,327号;同第5,561,071号;同第5,583,211号;同第5,658,734号;同第5,837,858号;同第5,874,219号;同第5,919,523号;同第6,136,269号;同第6,287,768号;同第6,287,776号;同第6,288,220号;同第6,297,006号;同第6,291,193号;同第6,346,413号;同第6,416,949号;同第6,482,591号;同第6,514,751号および同第6,610,482号;ならびにWO93/17126;WO95/11995;WO95/35505;EP742287;およびEP799897に記載されたものが挙げられる。
【0041】
本明細書で用いる場合、用語“covalently attached(共有結合された)”または“covalently bonded(共有結合された)”は、原子間の電子対の共有を特徴とする化学結合の形成をいう。例えば、「共有結合されたポリマーコーティング」は、基材表面に関して使用している場合、基材の機能化可能な表面と化学結合を形成しているポリマーコーティングをいう(この表面への他の手段、例えば接着または静電的相互作用による結合と比較したとき)。また、表面に共有結合されたポリマーが、共有結合に加えて他の手段によって結合され得ることも認識される。
【0042】
本明細書で用いる場合、「ダイシングテープ」は、裏当て層と接着剤層を含む可撓性基材をいう。接着剤層は、例えば、接着特性を阻害または破壊するために熱処理または光物理学的処理(例えば、UV光)によって処理され得る。ダイシングテープは、ダイを所定の位置に保持するための接着剤を有するPVC、ポリオレフィンまたはポリエチレンの裏当て材料から作製され得る。ダイシングテープは、さまざまな厚さ(例えば、75~150μm)であり得、さまざまな接着強度を有するものであり得る。UVテープは、ダイシング後に接着結合をUV光への曝露によって破壊するダイシングテープである。
【0043】
本明細書で用いる場合、「機能化可能な」層は、1つまたはそれより多くの生体分子を化学反応または分子相互作用によって付着させるために使用され得る反応性部分を含む層またはコーティングをいう。かかる付着は、共有結合または他の結合もしくは相互作用力によるものであり得る。いくつかの実施形態では、分子相互作用はリガンドと受容体との間の特異的結合であり得、そのペアとしては、限定されないが、ストレプトアビジンとビオチン、核酸とその相補物、抗体とリガンド、および当該技術分野で知られた他のものが挙げられる。例えば、機能化可能な層は、目的の生体分子と反応または結合し得る1つまたはそれより多くの官能基を含むヒドロゲルであり得る。非限定的な具体例は、1つまたはそれより多くのアジド官能基を含むPAZAMであり、この官能基は、アルキン基を含むオリゴヌクレオチドと反応し得る。いくつかの場合では、機能化可能な層は、反応性部位が残存している目的の生体分子と反応することにより機能化可能な層になる。
【0044】
本明細書で用いる場合、用語「光硬化性ポリマー」は、化学線放射(UV放射など)に曝露されると重合反応を行ない得るポリマーをいう。
【0045】
本明細書で用いる場合、用語「ロール・ツー・ロール法」は、細長い基材が1つのスプールから別のスプールに移送される操作をいう。例示的なロール・ツー・ロール法は、表面がパターン形成デバイスを通過するとき、1つのロールから巻き取りが解除されて別のロールに巻き取られる間に、マイクロスケールパターンまたはナノスケールパターンを有する表面を連続的にパターン化することである。
【0046】
本明細書で用いる場合、「アルキル」は、完全飽和である(すなわち、二重結合または三重結合を含有していない)直鎖または分枝の炭化水素鎖をいう。アルキル基は1~20個の炭素原子を有するものであり得る(「1~20」などの数値範囲は、本明細書において示されている場合はいつでも、示された範囲内の各整数をいう;例えば、「1~20個の炭素原子」は、アルキル基は1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子など、20個(を含む)までの炭素原子からなるものであり得ることを意味するが、本定義はまた、数値範囲が表示されていない場合の用語「アルキル」の存在も包含している)。アルキル基はまた、1~9個の炭素原子を有する中型のアルキルであってもよい。アルキル基はまた、1~4個の炭素原子を有する低級アルキルである場合もあり得る。このアルキル基は「C1~4アルキル」または同様の表示で表示され得る。ほんの一例として、「C1~4アルキル」は、アルキル鎖内に1~4個の炭素原子が存在すること、すなわち、アルキル鎖が、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチルおよびt-ブチルからなる群より選択されることを示す。典型的なアルキル基としては、なんら限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリーブチル、ペンチル、ヘキシルなどが挙げられる。
【0047】
本明細書で用いる場合、「アルケン」または「アルケニル」は、1つまたはそれより多くの二重結合を含有している直鎖または分枝の炭化水素鎖をいう。アルケニル基は2~20個の炭素原子を有するものであり得るが、本定義はまた、数値範囲が表示されていない場合の用語「アルケニル」の存在も包含している。アルケニル基はまた、2~9個の炭素原子を有する中型のアルケニルであってもよい。アルケニル基はまた、2~4個の炭素原子を有する低級アルケニルである場合もあり得る。このアルケニル基は「C2~4アルケニル」または同様の表示で表示され得る。ほんの一例として、「C2~4アルケニル」は、アルケニル鎖内に2~4個の炭素原子が存在すること、すなわち、アルケニル鎖が、エテニル、プロペン-1-イル、プロペン-2-イル、プロペン-3-イル、ブテン-1-イル、ブテン-2-イル、ブテン-3-イル、ブテン-4-イル、1-メチル-プロペン-1-イル、2-メチル-プロペン-1-イル、1-エチル-エテン-1-イル、2-メチル-プロペン-3-イル、ブタ-1,3-ジエニル、ブタ-1,2,-ジエニルおよびブタ-1,2-ジエン-4-イルからなる群より選択されることを示す。典型的なアルケニル基としては、なんら限定されないが、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニルおよびヘキセニルなどが挙げられる。
【0048】
本明細書で用いる場合、「アルキニル」は、1つまたはそれより多くの三重結合を含有している直鎖または分枝の炭化水素鎖をいう。アルキニル基は2~20個の炭素原子を有するものであり得るが、本定義はまた、数値範囲が表示されていない場合の用語「アルキニル」の存在も包含している。アルキニル基はまた、2~9個の炭素原子を有する中型のアルキニルであってもよい。アルキニル基はまた、2~4個の炭素原子を有する低級アルキニルである場合もあり得る。このアルキニル基は「C2~4アルキニル」または同様の表示で表示され得る。ほんの一例として、「C2~4アルキニル」は、アルキニル鎖内に2~4個の炭素原子が存在すること、すなわち、アルキニル鎖が、エチニル、プロピン-1-イル、プロピン-2-イル、ブチン-1-イル、ブチン-3-イル、ブチン-4-イルおよび2-ブチニルからなる群より選択されることを示す。典型的なアルキニル基としては、なんら限定されないが、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニルおよびヘキシニルなどが挙げられる。
【0049】
「アミノ」基は「-NR」基をいい、式中、RおよびRは各々、独立して、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~7カルボシクリル、C6~10アリール、5~10員のヘテロアリールおよび5~10員のヘテロシクリル(本明細書に定義したとおり)から選択される。非限定的な例としては遊離アミノ(すなわち、-NH)が挙げられる。
【0050】
本明細書で用いる場合、「アリール」は、環骨格内に炭素のみを含有している芳香族の環または環系(すなわち、隣接する2個の炭素原子を共有している2つまたはそれより多くの縮合環)をいう。アリールが環系である場合、系内のどの環も芳香族である。アリール基は6~18個の炭素原子を有するものであり得るが、本定義はまた、数値範囲が表示されていない場合の用語「アリール」の存在も包含している。いくつかの実施形態では、アリール基は6~10個の炭素原子を有する。アリール基は「C6~10アリール」、「CもしくはC10アリール」または同様の表示で表示され得る。アリール基の例としては、限定されないが、フェニル、ナフチル、アズレニルおよびアントラセニルが挙げられる。
【0051】
本明細書で用いる場合、用語「カルボン酸」は本明細書で用いる場合、-C(O)OHをいう。
【0052】
本明細書で用いる場合、「カルボシクリル」は、環系骨格内に炭素原子のみを含有している非芳香族の環式の環または環系を意味する。カルボシクリルが環系である場合、2つまたはそれより多くの環は、縮合様式、架橋様式またはスピロ結合様式で一体に連結されたものであり得る。カルボシクリルは任意の飽和度を有するものであってよいが、環系内の少なくとも1つの環は芳香族でないものとする。したがって、カルボシクリルとしては、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアルキニルが挙げられる。カルボシクリル基は3~20個の炭素原子を有するものであり得るが、本定義はまた、数値範囲が表示されていない場合の用語「カルボシクリル」の存在も包含している。カルボシクリル基はまた、3~10個の炭素原子を有する中型のカルボシクリルであってもよい。カルボシクリル基はまた、3~6個の炭素原子を有するカルボシクリルである場合もあり得る。カルボシクリル基は「C3~6カルボシクリル」または同様の表示で表示され得る。カルボシクリル環の例としては、限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、2,3-ジヒドロ-インデン、ビシクロ[2.2.2]オクタニル、アダマンチルおよびスピロ[4.4]ノナニルが挙げられる。
【0053】
本明細書で用いる場合、用語「ヒドラゾン」または「ヒドラゾニル」は本明細書で用いる場合、
【化1】

基をいい、式中、RおよびRは各々、独立して、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~7カルボシクリル、C6~10アリール、5~10員のヘテロアリールおよび5~10員のヘテロシクリル(本明細書に定義したとおり)から選択される。非限定的な例としては遊離アミノ(すなわち、-NH)が挙げられる。
【0054】
用語「ハロゲン」または「ハロ」は、本明細書で用いる場合、元素の周期表の7列目の放射安定性原子のいずれか1つ、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味し、フッ素および塩素が好ましい。
【0055】
本明細書で用いる場合、「ヘテロアリール」は、環骨格内に1個またはそれより多くのヘテロ原子、すなわち、炭素以外の元素、例えば限定されないが、窒素、酸素およびイオウを含有している芳香族の環または環系(すなわち、隣接する2個の原子を共有している2つまたはそれより多くの縮合環)をいう。ヘテロアリールが環系である場合、系内のどの環も芳香族である。ヘテロアリール基は、5~18の環構成員(すなわち、環骨格を構成している原子、例えば、炭素原子とヘテロ原子の数)を有するものであり得るが、本定義はまた、数値範囲が表示されていない場合の用語「ヘテロアリール」の存在も包含している。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール基は5~10の環構成員または5~7の環構成員を有する。このヘテロアリール基は「5~7員のヘテロアリール」、「5~10員のヘテロアリール」または同様の表示で表示され得る。ヘテロアリール環の例としては、限定されないが、フリル、チエニル、フタラジニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、キノリニル、イソキノリニル(isoquinlinyl)、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、インドリル、イソインドリルおよびベンゾチエニルが挙げられる。
【0056】
本明細書で用いる場合、「ヘテロシクリル」は、環骨格内に少なくとも1個のヘテロ原子を含有している非芳香族の環式の環または環系を意味する。ヘテロシクリルは、縮合様式、架橋様式またはスピロ結合様式で一体に連結されたものであり得る。ヘテロシクリルは任意の飽和度を有するものであってよいが、環系内の少なくとも1つの環は芳香族でないものとする。ヘテロ原子(1個または複数)は環系内の非芳香族環または芳香族環のいずれかに存在し得る。ヘテロシクリル基は、3~20の環構成員(すなわち、環骨格を構成している原子、例えば、炭素原子とヘテロ原子の数)を有するものであり得るが、本定義はまた、数値範囲が表示されていない場合の用語「ヘテロシクリル」の存在も包含している。ヘテロシクリル基はまた、3~10の環構成員を有する中型のヘテロシクリルであってもよい。ヘテロシクリル基はまた、3~6の環構成員を有するヘテロシクリルである場合もあり得る。このヘテロシクリル基は「3~6員のヘテロシクリル」または同様の表示で表示され得る。好ましい6員の単環式ヘテロシクリルでは、ヘテロ原子(1個または複数)は1個から3個までのO、NまたはSから選択され、好ましい5員の単環式ヘテロシクリルでは、ヘテロ原子(1個または複数)はO、NまたはSから選択される1個または2個のヘテロ原子から選択される。ヘテロシクリル環の例としては、限定されないが、アゼピニル、アクリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、ジオキソラニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、モルホリニル、オキシラニル、オキセパニル、チエパニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ジオキソピペラジニル、ピロリジニル、ピロリドニル、ピロリジオニル、4-ピペリドニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、1,3-ジオキシニル、1,3-ジオキサニル、1,4-ジオキシニル、1,4-ジオキサニル、1,3-オキサチアニル、1,4-オキサチイニル、1,4-オキサチアニル、2H-1,2-オキサジニル、トリオキサニル、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジニル、1,3-ジオキソリル、1,3-ジオキソラニル、1,3-ジチオリル、1,3-ジチオラニル、イソオキサゾリニル、イソオキサゾリジニル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、オキサゾリジノニル、チアゾリニル、チアゾリジニル、1,3-オキサチオラニル、インドリニル、イソインドリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロ-1,4-チアジニル、チアモルホリニル、ジヒドロベンゾフラニル、ベンゾイミダゾリジニルおよびテトラヒドロキノリンが挙げられる。
【0057】
本明細書で用いる場合、用語「テトラジン」または「テトラジニル」は、4個の窒素原子を含む6員のヘテロアリール基をいう。テトラジンは任意選択的に置換されていてもよい。
【0058】
本明細書で用いる場合、用語「テトラゾール」または「テトラゾリル」は、4個の窒素原子を含む5員の複素環式基をいう。テトラゾールは任意選択的に置換されていてもよい。
【0059】
本明細書で用いる場合、「ヌクレオチド」は、含窒素複素環式塩基、糖および1つまたはそれより多くのリン酸基を含むものである。これらは核酸配列のモノマー単位である。RNAでは糖はリボースであり、DNAではデオキシリボース、すなわち、リボースの2’位に存在するヒドロキシル基がない糖である。含窒素複素環式塩基はプリンまたはピリミジン塩基であり得る。プリン塩基としては、アデニン(A)およびグアニン(G)ならびにその修飾された誘導体または類似体が挙げられる。ピリミジン塩基としては、シトシン(C)、チミン(T)およびウラシル(U)ならびにその修飾された誘導体または類似体が挙げられる。デオキシリボースのC-1原子がピリミジンのN-1またはプリンのN-9に結合される。
【0060】
本明細書で用いる場合、「ヌクレオシド」はヌクレオチドに構造的に類似しているが、5’位にリン酸部分が全くない。用語「ヌクレオシド」は、本明細書において、当業者に理解されているその通常の意味で用いている。例としては、限定されないが、リボース部分を含むリボヌクレオシドおよびデオキシリボース部分を含むデオキシリボヌクレオシドが挙げられる。修飾ペントース部分は、酸素原子が炭素で置き換えられている、および/または炭素がイオウもしくは酸素原子で置き換えられているペントース部分である。「ヌクレオシド」は、置換される塩基および/または糖部分を有するものであってもよいモノマーである。さらに、ヌクレオシドは、より大きなDNAおよび/またはRNAポリマーおよびオリゴマーに組み込まれ得る。
【0061】
本明細書で用いる場合、用語「ポリヌクレオチド」は、核酸一般、例えば、DNA(例えば、ゲノムDNA cDNA)、RNA(例えば、mRNA)、合成オリゴヌクレオチドおよび合成核酸類似体をいう。ポリヌクレオチドは、天然もしくは非天然の塩基またはそれらの組合せおよび天然もしくは非天然の骨格結合、例えば、ホスホロチオエート、PNAもしくは2’-O-メチル-RNAまたはそれらの組合せを含むものであり得る。
【0062】
本明細書で用いる場合、置換される基は、未置換の親基から誘導され、1個またはそれより多くの水素原子が別の原子または基で交換されている。特に記載のない限り、基が「置換される」とみなす場合、これは、この基が、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~Cヘテロアルキル、C~Cカルボシクリル(ハロ、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~CハロアルキルおよびC~Cハロアルコキシで任意選択的に置換される)、C~C-カルボシクリル-C~C-アルキル(ハロ、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~CハロアルキルおよびC~Cハロアルコキシで任意選択的に置換される)、5~10員のヘテロシクリル(ハロ、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~CハロアルキルおよびC~Cハロアルコキシで任意選択的に置換される)、5~10員のヘテロシクリル-C~C-アルキル(ハロ、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~CハロアルキルおよびC~Cハロアルコキシで任意選択的に置換される)、アリール(ハロ、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~CハロアルキルおよびC~Cハロアルコキシで任意選択的に置換される)、アリール(C~C)アルキル(ハロ、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~CハロアルキルおよびC~Cハロアルコキシで任意選択的に置換される)、5~10員のヘテロアリール(ハロ、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~CハロアルキルおよびC~Cハロアルコキシで任意選択的に置換される)、5~10員のヘテロアリール(C~C)アルキル(ハロ、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~CハロアルキルおよびC~Cハロアルコキシで任意選択的に置換される)、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、C~Cアルコキシ、C~Cアルコキシ(C~C)アルキル(すなわち、エーテル)、アリールオキシ、スルフヒドリル(メルカプト)、ハロ(C~C)アルキル(例えば、-CF)、ハロ(C~C)アルコキシ(例えば、-OCF)、C~Cアルキルチオ、アリールチオ、アミノ、アミノ(C~C)アルキル、ニトロ、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、S-スルホンアミド、N-スルホンアミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、アシル、シアナト、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、スルフィニル、スルホニルならびにオキソ(=O)から独立して選択される1つまたはそれより多くの置換基で置換されることを意味する。基が「任意選択的に置換される」と記載されている場合はいつでも、この基は上記の置換基で置換されたものであり得る。
【0063】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、1つまたはそれより多くの官能基を含む機能化可能な層;複数のマイクロスケールパターンもしくはナノスケールパターンまたはそれらの組合せを含むポリマー層;および裏当て層を備える基材を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、機能化可能な層が裏当て層とポリマー層の間に配置される。いくつかのこのような実施形態では、ポリマー層のマイクロスケールまたはナノスケールパターンの少なくとも一部分は、このポリマー層を貫通して下にある機能化可能な層を露出する。いくつかのこのような実施形態では、機能化可能な層は、複数のマイクロスケールパターンもしくはナノスケールパターンまたはそれらの組合せを含み、上記ポリマー層と上記機能化可能な層のマイクロスケールまたはナノスケールパターンの少なくとも一部分は、上記ポリマー層と上記機能化可能な層とを貫通し、下にある裏当て層を露出する。
【0065】
図1A~1Cは、1つまたはそれより多くの官能基を含む機能化可能な層102;複数のマイクロスケールパターンもしくはナノスケールパターンまたはそれらの組合せを含むポリマー層103;および裏当て層101を備えており、機能化可能な層102が裏当て層101とポリマー層103の間に配置されている、本発明のいくつかの実施形態による基材100の断面図を示す。図1Aに示すように、基材100は、裏当て層101、機能化可能な層102およびポリマー層103の少なくとも3つの層を備える。ポリマー層103は、形状および深さが異なる複数のナノスケールパターン104および105を含んでいる。他のいくつかの実施形態では、ポリマー層のナノスケールパターンは同じであり得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、ポリマー層は、マイクロスケールパターンとナノスケールパターンの両方の組合せを有するものである。図1Bに示すように、ポリマー層103はさらに、複数のマイクロスケールパターン106および107を含んでおり、ナノスケールパターン104および105はマイクロスケールパターン内に形成されている。図1Cに示すように、ナノスケール構造物はナノウェル104およびナノポスト108の両方であってもよい。図1A~1Cでは、下にある機能化可能な層102は露出していない。
【0067】
いくつかの実施形態では、ポリマー層のマイクロスケールまたはナノスケールパターンの少なくとも一部分が上記ポリマー層を貫通して下にある機能化可能な層を露出させている。図2Aは、図1A~1Cに示したものと同じ層構成を有し、ポリマー層203がナノスケールパターン204および205を含む、本発明の一実施形態による基材200の断面図を示す。ナノスケールパターン204はポリマー層203を貫通して下にある機能化可能な層202を露出させている。
【0068】
いくつかの実施形態では、機能化可能な層が複数のマイクロスケールパターンもしくはナノスケールパターンまたはそれらの組合せを含み、このポリマー層とこの機能化可能な層のマイクロスケールまたはナノスケールパターンの少なくとも一部分がこのポリマー層とこの機能化可能な層とを貫通し、下にある裏当て層を露出する。図2Bは、機能化可能な層202が複数のナノスケールパターン204および206を含んでおり、ナノスケールパターン206がポリマー層203と機能化可能な層202を貫通し、下にある裏当て層201を露出している、本発明の別の実施形態による基材200を示す。
【0069】
いくつかの実施形態では、図2Cに示すように、ポリマー層203の各ナノスケールパターン204は、ポリマー層を貫通し、下にある機能化可能な層202を露出する。
【0070】
図2Dは、ナノスケールパターン204が下にある機能化可能な層202を露出させており、ナノスケールパターン206がポリマー層と機能化可能な層を貫通して下にある裏当て層201を露出する、図2Bの基材の上面図を示す。
【0071】
いくつかの実施形態では、基材はさらに、ポリマー層と機能化可能な層を裏当て層とシーリング層の間に実質的に密封するためのシーリング層を備えたものであり得る。図2Eに本発明の一実施形態による基材の断面図として示すように、シーリング層207は、ポリマー層203と機能化可能な層202をシーリング層207と裏当て層201の間に実質的に密封している。
【0072】
いくつかの実施形態では、シーリング層は光学的に透明であり得る。いくつかの実施形態では、シーリング層とポリマー層の間に、試料流体が貫流することが可能ないくらかの空間を存在させてもよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、ポリマー層が裏当て層と機能化可能な層の間に配置されている。
【0074】
図3A~3Cは、1つまたはそれより多くの官能基を含む機能化可能な層302;複数のマイクロスケールパターンもしくはナノスケールパターンまたはそれらの組合せを含むポリマー層303;および裏当て層301を備えており、ポリマー層303が機能化可能な層302と裏当て層301の間に配置されている、本発明のいくつかの実施形態による基材300の断面図を示す。
【0075】
図3Aに示すように、基材300は、裏当て層301、機能化可能な層302およびポリマー層303の少なくとも3つの層を備えており、ポリマー層303は機能化可能な層302と裏当て層301の間に横たわっている。ポリマー層303は、複数のナノスケールパターン304(ナノポスト)および305(ナノウェル)含んでいる。
【0076】
他のいくつかの実施形態では、ポリマー層のナノスケールパターンはサイズおよび形状が均一であり得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、ポリマー層は、マイクロスケールパターンとナノスケールパターンの両方の組合せを有するものである。図3Bに示すように、ポリマー層303はさらに、複数のマイクロスケールパターン306および307を含んでいる。図3Aおよび3Bでは、下にあるポリマー層303は露出していない。
【0078】
図3Cは、過剰の機能化可能な層302を、ナノスケールパターン304および305内に存在するものを除いて除去した場合の図3Aの基材300の断面図を示す。
【0079】
いくつかの実施形態では、機能化可能な層が複数のマイクロスケールパターンもしくはナノスケールパターンまたはそれらの組合せを含み、この官能性層のマイクロスケールパターンまたはナノスケールパターンの少なくとも一部分が、機能化可能な層を貫通して下にあるポリマー層を露出する。図4Aは、ナノスケールパターン404を含む機能化可能な層402を有し、このナノスケールパターン404が機能化可能な層402を貫通して下にあるポリマー層403を露出する、本発明の一実施形態による基材400の断面図を示す。
【0080】
いくつかのこのような実施形態では、機能化可能な層とポリマー層のマイクロスケールまたはナノスケールパターンの少なくとも一部分が、機能化可能な層とポリマー層とを貫通して下にある裏当て層を露出している。図4Bは、機能化可能な層402とポリマー層403が複数のナノスケールパターン406を含み、このパターンがポリマー層403と機能化可能な層402を貫通して下にある裏当て層401を露出しており、その一方、ナノスケールパターン405はポリマー層403を貫通していない、本発明の一実施形態による基材400を示す。いくつかの実施形態では、ポリマー層自体が、貫通しているナノスケールパターンを含むものであり得、下にある裏当て層401を露出する。
【0081】
いくつかの実施形態では、基材はさらに、ポリマー層と機能化可能な層を裏当て層とシーリング層の間に実質的に密封するためのシーリング層を備えたものであり得る。図4Cに示すように、シーリング層407は、ポリマー層403と機能化可能な層402をシーリング層407と裏当て層401の間に実質的に密封している。
【0082】
いくつかの実施形態では、シーリング層は光学的に透明であり得る。いくつかの実施形態では、シーリング層と機能化可能な層の間に、試料流体が貫流することが可能ないくらかの空間を存在させてもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、基材は円筒体形状である。いくつかのこのような実施形態では、裏当て層は、この基材の機能化可能な層またはポリマー層よりも円筒体の外表面により近い。いくつかのこのような実施形態では、裏当て層は、基材の機能化可能な層またはポリマー層よりもこの円筒体の内表面により近い。いくつかの実施形態では、試料流体は、円筒体基材の内側表面をその長手軸に沿って貫流し得る。
【0084】
図5A、5B、6Aおよび6Bは、本発明のいくつかの実施形態による円筒体の形状の基材500および600の半径方向の断面図である。図5Aに示すように、裏当て層501は、基材500の機能化可能な層502またはポリマー層503よりもこの円筒体の外表面により近い。さらに、機能化可能な層502は複数のナノスケールパターン504および505を含む。ナノスケールパターン504はポリマー層503を貫通して下にある機能化可能な層502を露出している。ナノスケールパターン505はポリマー層503と機能化可能な層502を貫通して下にある裏当て層501を露出している。図5Bでは、裏当て層501は、基材500の機能化可能な層502またはポリマー層503よりも円筒体の内表面により近い。
【0085】
同様に、図6Aは、基材600の裏当て層601が機能化可能な層602またはポリマー層603よりも円筒体の外表面により近い、本出願の一実施形態による基材600を示す。さらに、機能化可能な層602は複数のナノスケールパターン604および605を含んでいる。ナノスケールパターン604は機能化可能な層602を貫通して下にあるポリマー層603を露出しており、ナノスケールパターン605はポリマー層603と機能化可能な層602を貫通して下にある裏当て層601を露出している。図6Bでは、本出願の一実施形態による基材600の裏当て層601は、基材600の機能化可能な層602またはポリマー層603よりも円筒体の内表面により近い。
【0086】
図7Aおよび7Bは、2つの基材によって形成されており、ポリマー層703と機能化可能な層702が2つの裏当て層701間に実質的に密封されている、本出願のいくつかの実施形態による基材700の断面図である。図7Aでは、基材700は、基材700aを基材700bの遠位表面上に、2つのポリマー層703の遠位表面同士が互いに接するように積層することにより形成されている(遠位表面は裏当て層を基準にしている)。基材700aおよび700bはどちらも、ポリマー層703内にナノスケールパターン704および705を含んでおり、ナノスケールパターン705はポリマー層703を貫通して下にある機能化可能な層702を露出させている。
【0087】
図7Bでは、基材700は、1つの基材700aを別の基材700aの遠位表面上に、2つの機能化可能な層702の遠位表面同士が互いに近接するように積層することにより形成されている(例えば、多くの実施形態では、遠位表面同士は互いに直接接触している)。ナノスケールパターン706はポリマー層703と機能化可能な層702を貫通して下にある裏当て層701を露出させている。2つの機能化可能な層702間に空間を設けることにより、試料流体が貫流することが可能になり得る。液漏れを回避するために、基材700の1つまたはそれより多くの縁部を実質的に密封してもよい。
【0088】
開示している任意の実施形態において、基材はさらに、ポリマー層と機能化可能な層を裏当て層とシーリング層の間に実質的に密封するためのシーリング層を備えたものであり得る。いくつかのこのような実施形態では、シーリング層が光学的に透明である。
【0089】
開示している任意の実施形態において、マイクロスケールパターンまたはナノスケールパターンの少なくとも1つが試料流体を収容し得るものである。
【0090】
開示している任意の実施形態において、基材はさらに、流体レザーバ、例えば、試料、試薬または廃液のレザーバを備えたものであり得る。
【0091】
開示している任意の実施形態において、ポリマー層のマイクロスケールパターンまたはナノスケールパターンには、チャネル、トレンチ、ウェル、ポストまたはそれらの組合せが包含され得る。いくつかの実施形態では、マイクロスケールまたはナノスケールパターンの少なくとも一部分がポストである。いくつかのこのような実施形態では、ポストが約500nm未満の平均直径を有する。いくつかのかかる実施形態では、ポストが約330nmまたはそれより小さい、例えば、約300nm、200nm、100nmまたは50nm未満などの平均直径を有する。いくつかのこのような実施形態では、ポストが約500nm未満の平均高さを有する。さらなるいくつかの実施形態では、ポストが約300nmまたはそれより小さい、例えば、約300nm、200nm、100nmまたは50nm未満などの平均高さを有する。これらの例示的な上限値に対して代替的または付加的に、ポストの平均直径および/または平均高さは最大1mm、500μm、100μm、1μm、500nm、400nm、300nm、200nmまたは100nmであってもよい。いくつかの実施形態では、上記複数のマイクロスケールもしくはナノスケールパターンまたはそれらの組合せが、室温での機械的エンボス加工によって作製される。
【0092】
機能化可能な層
開示している任意の実施形態において、機能化可能な層は、反応性シラン層、機能化可能なヒドロゲルまたは機能化可能なポリマーを含むものであり得る。いくつかのこのような実施形態では、機能化可能な層は1つまたはそれより多くの官能基を含むものであり得る。いくつかのこのような実施形態では、官能基は、任意選択的に置換されるアルケン、アジド、任意選択的に置換されるアミン、カルボン酸、任意選択的に置換されるヒドラゾン、ハロゲン、ヒドロキシ、任意選択的に置換されるテトラゾール、任意選択的に置換されるテトラジン、チオールおよびそれらの組合せからなる群より選択され得る。さらなるいくつかの実施形態では、機能化可能な層が、式(Ia)または(Ib):
【化2】

を含むポリマーまたはヒドロゲルを含み、
はHまたは任意選択的に置換されるアルキルであり;官能基Rは、アジド、任意選択的に置換されるアミン、任意選択的に置換されるアルケン、任意選択的に置換されるヒドラゾン、カルボン酸、ハロゲン、ヒドロキシ、任意選択的に置換されるテトラゾール、任意選択的に置換されるテトラジンおよびチオールからなる群より選択され;Rは、Hまたは任意選択的に置換されるアルキルから選択され;-(CH)-pの各々は任意選択的に置換されていてもよく;pは1~50の範囲の整数であり;nは1~50,000の範囲の整数であり;mは1~100,000の範囲の整数である。いくつかのこのような実施形態では、官能基がアジドを含む。いくつかの実施形態では、RおよびRの各々が水素である。いくつかの実施形態では、官能基Rがアジドである。いくつかの実施形態では、pが5である。一実施形態では、機能化可能な層内に含まれたポリマーまたはヒドロゲルがPAZAMである。本開示の基材の層に使用され得るPAZAMの作製方法および使用方法ならびに他の機能化可能な材料は、米国特許出願第13/784,368号および同第61/841,647号に記載されている。
【0093】
使用され得る反応性シランの例としては、限定されないが、アクリレート官能性シラン、アルデヒド官能性シラン、アミノ官能性シラン、無水物官能性シラン、アジド官能性シラン、カルボキシレート官能性シラン、ホスホネート官能性シラン、スルホネート官能性シラン、エポキシ官能性シラン、エステル官能性シラン、ビニル官能性シラン、オレフィン官能性シラン、ハロゲン官能性シランおよび上記の官能基のいずれかを有する、または有しないダイポーダル(dipodal)シランが挙げられる。ノルボルネンシランは特に有用であり、例えば、米国特許出願第61/841,647号に記載されている。シラン官能性の選択は、この官能性の反応対象の物質の反応性に基づいて行なわれ得る。例えば、アミノ官能性シランは、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリアミド-イミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルケトン、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリビニルブチラールおよびポリ塩化ビニルなどの熱可塑性物質と反応する。ビニルおよびオレフィン官能性シランは、ポリアセタール、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどの熱可塑性物質と反応する。アクリレート官能性シランは、ポリプロピレンおよびポリスチレンなどの熱可塑性物質と反応する。
【0094】
開示している任意の実施形態において、機能化可能な層の官能基が生体分子に付着される。いくつかの実施形態では、生体分子が、アミノ酸、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ペプチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、核酸、タンパク質またはそれらの組合せから選択される。いくつかのこのような実施形態では、生体分子が核酸である。
【0095】
機能化可能な層-ヒドロゲル
いくつかの実施形態では、機能化可能な層はヒドロゲルを含むものであり得る。本出願において使用され得るヒドロゲルの非限定的な例は本明細書に記載している。
【0096】
WO00/31148には、いわゆるポリアクリルアミドプレポリマーを、好ましくは、アクリルアミドと、アクリル酸またはビニル基含有アクリル酸誘導体から形成する、ポリアクリルアミドヒドロゲルアレイおよびポリアクリルアミドヒドロゲルをベースにしたアレイが開示されている。次いで、プレポリマーの架橋が行なわれ得る。そのようにして作製されたヒドロゲルを固相に、好ましくはガラス上に支持させる。また、固相に支持させたヒドロゲルの機能化も行なわれ得る。
【0097】
WO01/01143には、WO00/31148と同様であるが、生体分子の固定化アレイが形成されるように、ヒドロゲルが生体分子との[2+2]光環付加反応に関与し得る官能性を有するものであるという点で異なる技術が記載されている。ジメチルマレイミド(DMI)が特に好ましい官能性である。ポリアクリルアミドをベースにしたマイクロアレイ技術との関連における[2+2]光環付加反応の使用もまた、WO02/12566およびWO03/014392に記載されている。
【0098】
米国特許第6,465,178号には、核酸のマイクロアレイの調製における使用のための活性化スライドを提供する際の試薬組成物の使用が開示されている;この試薬組成物はアクリルアミドコポリマーを含むものである。
【0099】
WO00/53812には、DNAのポリアクリルアミドをベースにしたヒドロゲルアレイの調製および複製増幅におけるこのようなアレイの使用が開示されている。
【0100】
一旦ヒドロゲルが形成されると、次いで、所望であれば、分子アレイを生成するようにゲルに生体分子が付着され得る。付着は種々の様式で行なわれている。例えば、米国特許第6,372,813号には、ジメチルマレイミド基を有するポリヌクレオチドのヒドロゲルへの固定化が教示されており、担われるジメチルマレイミド基は、2つのジメチルマレイミド基(1つは、固定化対象のポリヌクレオチドに付着されており、1つは、ヒドロゲルからのペンダントである)間での[2+2]光環付加工程を行なうことにより生成される。
【0101】
ヒドロゲルの生成後に分子アレイを形成する場合、この目的を達成するために2つのストラテジーが使用され得る。第1のものでは、ヒドロゲルが、生成後に化学修飾され得る。より一般的である代替法は、アレイされるべき分子と反応するようにプライミングまたは予備活性化された官能性を有するコモノマーとの重合を行なうことである。
【0102】
最初にヒドロゲルを形成した後、続いてこれに分子アレイ作製を行なうことの代替法として、例えば、アレイをヒドロゲルの生成と同時に形成するものが報告されている。これは、例えば、アクリルアミド誘導体化ポリヌクレオチドの直接共重合によって行なわれ得る。このアプローチの一例はWO01/62982に記載されており、この場合、アクリルアミド誘導体化ポリヌクレオチドはアクリルアミド溶液と混合され、重合が直接行なわれる。
【0103】
Mosaic Technologies(Boston,Mass.,USA)によりACRYDITE(商標)(アクリルアミドホスホルアミダイト)が作製され、これをポリヌクレオチドと反応させた後、得られたモノマーとアクリルアミドとの共重合が行なわれ得る。
【0104】
Efimovら(Nucleic Acids Research,1999,27(22),4416-4426)には、ヒドロゲル/アレイの同時形成のさらなる例が開示されており、この場合、アクリルアミドと、反応性アクリル酸誘導体と、5’または3’末端アクリルアミド基を有する修飾ポリヌクレオチドとの共重合が行なわれる。
【0105】
上記に示した組成物および方法ならびに上記に挙げた参考文献に示された組成物および方法は、本明細書に示す組成物および方法に使用され得る。例えば、ヒドロゲルは、本明細書に示す基材の機能化可能な層として使用され得る。
【0106】
機能化可能な層-ポリマー
いくつかの実施形態では、機能化可能な層は、目的の生体分子と反応し得る1つまたはそれより多くの官能基を有するポリマーを含むものであり得る。いくつかのこのような実施形態では、官能基は、任意選択的に置換されるアルケン、アジド、任意選択的に置換されるアミン、カルボン酸、任意選択的に置換されるヒドラゾン、ハロゲン、ヒドロキシ、任意選択的に置換されるテトラゾール、任意選択的に置換されるテトラジン、チオールおよびそれらの組合せからなる群より選択され得る。本出願において使用され得るポリマーの非限定的な例は本明細書に記載しており、例えば、米国特許出願第13/784,368号および米国特許出願公開第2011/0059865号(これらは引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されたものである。
【0107】
PAZAM
いくつかの実施形態では、式(Ia)または(Ib)のポリマーはまた、式(IIa)または(IIb):
【化3】

(式中、nは1~20,000の範囲の整数であり、mは1~100,000の範囲の整数である)
で表される。
【0108】
いくつかの実施形態では、直接連結に使用される機能性分子は、ポリ(N-(5-アジドアセトアミジルペンチル)アクリルアミド-コ-アクリルアミド)(PAZAM)である。PAZAMは、アクリルアミドとアザパ(N-(5-(2-アジドアセトアミド)ペンチル)アクリルアミド)の任意の比率での重合によって調製され得る。いくつかの実施形態では、PAZAMは線状ポリマーである。他のいくつかの実施形態では、PAZAMは軽度に架橋されたポリマーである。いくつかの実施形態では、PAZAMは水溶液として塗布される。他のいくつかの実施形態では、PAZAMは、1種類またはそれより多くの溶媒添加剤(エタノールなど)を含む水溶液として塗布される。種々のPAZAMポリマーの調製方法は、米国特許出願第13/784,368号(これは引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)に詳細に論考されている。
【0109】
ポリマー層-光硬化性ポリマー
開示している任意の実施形態において、ポリマー層は少なくとも1つの光硬化性ポリマーを含むものであり得る。いくつかの実施形態では、光硬化性ポリマーは、ウレタン、アクリレート、シリコーン、エポキシ、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、エポキシシリコーン、エポキシ樹脂、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シルセスキオキサン、アシルオキシシラン、マレイン酸ポリエステル、ビニルエーテル、ビニル基もしくはエチニル基を有するモノマー、またはそれらのコポリマーおよび組合せを含むものである。
【0110】
開示している任意の実施形態において、裏当て層は、例えば、約10nm、50nm、100nm、1μm、10μm、100μm、500μm、1mm、5mm、1cmまたは10cmを超えない厚さであり得る。代替的または付加的に、裏当て層は、約10nm、50nm、100nm、1μm、10μm、100μm、500μm、1mm、5mm、1cmまたは10cmより薄くない厚さである。
【0111】
開示している任意の実施形態において、ポリマー層は、ほぼ炭素-炭素結合の長さ、1nm、10nm、50nm、100nm、1μm、10μm、100μm、500μm、1mm、5mm、1cmまたは10cmを超えない厚さである。いくつかの実施形態では、ポリマー層は約10nm、50nm、100nm、1μm、10μm、100μm、500μm、1mm、5mm、1cmまたは10cmより薄くない厚さである。
【0112】
開示している任意の実施形態において、機能化可能な層は、ほぼ炭素-炭素結合の長さ、1nm、10nm、50nm、100nm、1μm、10μm、100μm、500μm、1mm、5mm、1cmまたは10cmを超えない厚さである。いくつかの実施形態では、機能化可能な層は約10nm、50nm、100nm、1μm、10μm、100μm、500μm、1mm、5mm、1cmまたは10cmより薄くない厚さである。
【0113】
本明細書に示す組成物または方法に使用され得る例示的なダイシングテープとしては、限定されないが、Lintec KL-3225 UVテープ;Ultron Systems,Anti-Static UV Adhesive Plastic Film(p/n:1043R-9.05)、またはAIT UVR250(AI Technology Inc.,Princeton Junction,NJ)が挙げられる。他の有用なダイシングテープは、Semiconductor Equipment Corp.(Moorpark,CA)から市販されているもの、例えば、Low Tack,伸縮性PVC,80um厚(P/N 24213)、Extra High Tack,非伸縮性ポリエチレン,90um厚(P/N 24216)、Super High Tack,伸縮性ポリオレフィン,85um厚(P/N 24339)、またはSuper High Tack,伸縮性ポリオレフィン,170um厚(P/N 24351)である。また、古河電気工業株式会社(東京,日本)から販売されているウェハダイシング用のUCシリーズのUVテープも有用である。
【0114】
裏当て層
開示している任意の実施形態において、裏当て層は、シリカ、プラスチック、石英、金属、金属酸化物、紙およびそれらの組合せからなる群より選択される材料で作製されたものであり得る。いくつかのこのような実施形態では、裏当て層が可撓性プラスチック材料で作製されている。いくつかのこのような実施形態では、可撓性プラスチック材料は、本明細書に示す方法において裏当て層を固相支持体と接触させた場合に、裏当て層が固相支持体上のナノスケール輪郭またはマイクロスケール輪郭に適合することが阻止されるに充分な剛性を有するものである。例えば、固相支持体と裏当て層間の接触は、ナノスケール輪郭またはマイクロスケール輪郭のネガティブレプリカ(replicate)が、裏当て層に付着させた接着剤層に転写されるに充分な圧力下で行なわれ得るが;裏当て層は永続的な変形またはいくつかの場合では一時的な変形にさえ耐えるに充分な剛性を有する。いくつかのこのような実施形態では、裏当て層が一巻の可撓性薄膜で作製されている。本出願において使用され得る裏当て層の非限定的な例は本明細書に記載している。
【0115】
いくつかの実施形態では、本出願において使用される裏当て層は、シリカをベースにした材料、例えば、ガラス、溶融シリカおよび他のシリカ含有材料を含むものである。また、いくつかの実施形態では、シリカをベースにした基材は、シリコン、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、シリコーン水素化物であり得る。いくつかの実施形態では、本出願において使用される裏当て層は、プラスチック材料、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、ポリカーボネートおよびポリ(メチルメタクリレート)を含むものである。好ましいプラスチック材料はポリ(メチルメタクリレート)、ポリスチレンおよび環状オレフィンポリマー基材である。
【0116】
他のいくつかの実施形態では、裏当て層は金属であり得る。いくつかのこのような実施形態では、金属は金である。いくつかの実施形態では、裏当て層は、金属酸化物を含む少なくとも1つの表面を有する。一実施形態では、この表面は酸化タンタルを含むものである。
【0117】
また、アクリルアミド、エノンまたはアクリレートも裏当て層材料として使用され得る。他の裏当て層材料としては、限定されないが、ヒ化(aresnide)ガリウム、リン化インジウム、アルミニウム、セラミック、ポリイミド、石英、樹脂、ポリマーおよびコポリマーが挙げられ得る。前述の列挙は例示を意図しており、本出願に対する限定を意図するものではない。
【0118】
いくつかの実施形態では、裏当て層および/または裏当て層表面は石英であり得る。他のいくつかの実施形態では、裏当て層および/または裏当て層表面は半導体、すなわちGaAsまたはITOであり得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、裏当て層が紙で作製されている。
【0120】
いくつかの実施形態では、裏当て層が可撓性材料で作製されている。いくつかのこのような実施形態では、裏当て層が一巻の可撓性薄膜(例えば、約1mm未満、500μm、100μmまたはそれより薄い厚さを有する)で作製されている。
【0121】
裏当て層は、1種類の材料を含むものであってもよく、複数の異なる材料、例えば、1種類またはそれより多くの材料の2つまたはそれより多くの層を含むものであってもよい。使用される裏当て層の形状は、本出願が実施される用途に応じてさまざまであり得る。
【0122】
ドープ層
本明細書に示す組成物に存在しているか、または本明細書に示す方法に使用される層のうち1つまたはそれより多くが、所望の特性を有する材料をドープしたものであってもよい。例えば、層は、この層の材料中にスバイクされたナノ粒子、量子ドットなどの存在によるプラズモン特性を有するものであり得る。得られるプラズモン特性により、ドープ層内または層上で行なわれるその後の検出工程中においてアンテナ効果が提供され得る。代替的または付加的に、層は、分析用検出用途において結合特異性を提供するための受容体、リガンドもしくは核酸がドープされたもの;またはその後の機能化を提供するための反応性部分、例えば、機能化可能な層との関連において本明細書に示したものがドープされたもの;または層の光学特性を改変する材料(光学フィルター材料など)、特定の波長範囲の光を吸収する材料、特定の波長範囲の光を放出する材料、もしくは光を散乱させる材料がドープされたもの;または伝導特性(導電性など)を付与する材料がドープされたもの;または熱伝導性である材料がドープされたものであり得る。
【0123】
特定の実施形態では、層は、本明細書に示す方法における使用の前にドープされ得る。例えば、基材の1つまたはそれより多くの層が、基材におけるパターン作成の前にドープされ得る。より具体的な一例として、ポリマー層または機能化可能な層が、このポリマー層におけるパターン作成の前にドープされ得る。そのため、ポリマー層内のドーパント材料はパターンの一部を形成構成し、このパターンのある領域から移動してこのパターンの他の領域内に保持される。機能化可能な層内に存在するドーパント材料は、パターンの一部分では露出しているがこのパターンの他の部分では保護され得、その後の基材の使用において露出部分の選択的検出または反応性が可能になり得る。
【0124】
本明細書において示す層の1つまたはそれより多く、例えば、ポリマー層、機能化可能な層または裏当て層などがドープされ得る。ドーパント材料は、主として、層の表面、層の体積内、または層内と層表面上の両方に、またはそれぞれに単独に存在し得る。
【0125】
基材の用途
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の基材は、フローセルの少なくとも一部を形成するか、またはフローセル内に位置される。いくつかのこのような実施形態では、フローセルはさらに、基材の表面に、機能化可能な層(例えばヒドロゲルコーティング)の官能基との反応によって付着させたポリヌクレオチドを備える。いくつかの実施形態では、機能化可能な層がポリマー層と裏当て層の間に配置されており、ポリマー層のマイクロスケールまたはナノスケールパターンの少なくとも一部分が貫通して下にある機能化可能な層を露出する。いくつかの実施形態では、ポリマー層が機能化可能な層と裏当て層の間に配置されており、機能化可能な層のマイクロスケールまたはナノスケールパターンの少なくとも一部分が貫通して下にあるポリマー層を露出する。
【0126】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドはフローセル内にポリヌクレオチドクラスターで存在し、この場合、ポリヌクレオチドクラスターのポリヌクレオチドは、フローセルの表面にヒドロゲルコーティングによって付着させる。クラスターは、固相増幅手法によって、例えば、固相PCR、ブリッジ増幅または当該技術分野で公知であるか、もしくは米国特許第5,641,658号;米国特許出願公開第2002/0055100号;米国特許第7,115,400号;米国特許出願公開第2004/0096853号;米国特許出願公開第2004/0002090号;米国特許出願公開第2007/0128624号;および米国特許出願公開第2008/0009420号(これらは各々、引用により本明細書に組み込まれる)に記載された他の手法によって形成され得る。好ましい実施形態では、フローセルは、複数のレーンまたは複数のセクターに分かれたフローチャンバであり、この場合、この複数のレーンまたは複数のセクターの1つまたはそれより多くが、本明細書に記載の共有結合された機能化可能なヒドロゲルコーティングがコートされた表面を備える。本明細書に記載のフローセルのいくつかの実施形態では、1つのポリヌクレオチドクラスター内の付着ポリヌクレオチドは同じか、または同様のヌクレオチド配列を有する。本明細書に記載のフローセルのいくつかの実施形態では、異なるポリヌクレオチドクラスターの付着ポリヌクレオチドは異なるか、または非類似のヌクレオチド配列を有する。本明細書に示す方法または組成物に使用され得る例示的なフローセルおよびフローセルの製造のための基材としては、限定されないが、Illumina,Inc.(San Diego,CA)から市販されているもの、またはUS2010/0111768 A1もしくはUS2012/0270305(これらは各々、引用により本明細書に組み込まれる)に記載されているものが挙げられる。
【0127】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の基材は、マイクロ流体デバイスの少なくとも一部を構成するか、またはマイクロ流体デバイス内に配置される。例示的なデバイスとしては、核酸シーケンシングおよび他の解析手順に有用なフローセル、例えば、Illumina,Inc.(San Diego,CA)から市販されているフローセル、またはU.S.2010/0111768 A1もしくはU.S.2012/0270305
A1(これらは各々、引用により本明細書に組み込まれる)に記載されているフローセルが挙げられる。他のマイクロ流体デバイスとしては、細胞ソーティングデバイス、ラボオンチップデバイス、キャピラリー型シーケンサー、細胞計数デバイスなどが挙げられ、少なくとも一部が本明細書に記載の基材で調製されたもの、または本明細書に記載の基材を含むものであり得る。
【0128】
基材の調製
本明細書に開示しているいくつかの実施形態は、基材を調製する方法を含み、この方法は:裏当て層と光硬化性ポリマーの層の間に配置された1つまたはそれより多くの官能基を含む機能化可能な層を備える基材を提供する工程;この光硬化性ポリマーの層の表面を、マイクロスケールまたはナノスケールウェル、ポスト、チャネル、接合部またはその組合せそれらの組合せを含む複数のマイクロスケールパターンまたはナノスケールパターンを有するテンプレートと接触させる工程;このテンプレートまたは基材に圧力を加え、このマイクロスケールパターンまたはナノスケールパターンを少なくとも上記光硬化性ポリマーの層に転写する工程:を含み、ここで、上記接触させる工程および圧力を加える工程は室温で行なわれ;上記光硬化性ポリマーにUV光を照射して上記光硬化性ポリマーを硬化させる工程;ならびにこのテンプレートを基材から分離する工程を含み;ここで、このポリマー層の少なくとも一部分は貫通し、下にある機能化可能な層が露出する、基材の調製方法を含む。
【0129】
図8A~8Dは、本発明の一実施形態による基材800を調製するためのUVナノエンボス加工プロセスを示すための断面図である。
【0130】
図8Aにおいて、エンボススタンプ804は、上面に複数のナノスケールパターン805および806、ならびにナノスケールパターン間に複数の溝807を含む。また、裏当て層801、機能化可能な層802および光硬化性ポリマーの層803aを備えた基材800も提供される。
【0131】
次に、図8Bに示すように、エンボススタンプ804を光硬化性ポリマーの層803aの上側表面と接触させ、次いでエンボススタンプ804または基材800に圧力を加える。ナノスケールパターン805および806が基材800の光硬化性ポリマーの層803a内に形成される。
【0132】
次いで、図8Cに示すように、UV光をUV硬化性ポリマー層803a上にエンボススタンプ804を介して照射する。エンボススタンプ804は、UV光の透過を許容し、UV光が光硬化性ポリマーの層803aに達してこの光硬化性ポリマーを硬化させ、ポリマー層803が形成されるような材料で作製されている。あるいはまた、裏当て層801および機能化可能な層802がUV光の透過を許容する材料で作製されている場合は、UV光を裏当て層を介して適用してもよい。
【0133】
次に、図8Dに示すように、エンボススタンプ804をポリマー層803から分離すると、基材800にナノスケールパターン805および806の形成がもたらされる。ナノスケールパターン805はポリマー層803を貫通して下にある機能化可能な層802を露出させる。
【0134】
本明細書に開示しているいくつかの実施形態は、基材を調製する方法を含み、この方法は:マイクロスケールまたはナノスケールウェル、チャネルまたはその組合せそれらの組合せを含む複数のマイクロスケールパターンまたはナノスケールパターンを表面上に含むテンプレートを提供する工程;1つまたはそれより多くの官能基を含む官能性層を上記テンプレートの表面に、上記マイクロスケールウェルまたはナノスケールウェル、チャネルまたはそれらの組合せの少なくとも一部分がこの官能性層を含有するように堆積する工程;過剰の機能化可能な層をこのテンプレートの表面から、この機能化可能な層がテンプレート表面上の一部分のみに存在するように除去する工程;裏当て層を備えている備える基材を準備する工程であって、この裏当て層は、この裏当て層上に配置された光硬化性ポリマーの層を有する、工程;この光硬化性ポリマーの層の表面を、上記複数のマイクロスケールパターンまたはナノスケールパターンおよび機能化可能な層をその上に有するテンプレートの表面と接触させる工程;上記テンプレートまたは基材に圧力を加え、上記マイクロスケールパターンまたはナノスケールパターンを少なくとも上記光硬化性ポリマーの層に転写する工程;を含み、ここで、上記接触させる工程および圧力を加える工程は室温で行なわれ;上記光硬化性ポリマーにUV光を照射して上記光硬化性ポリマーを硬化させる工程;ならびにこのテンプレートを基材から分離する工程を含み;ここで、上記機能化可能な層の少なくとも一部分は上記ポリマー層に転写される、基材の調製方法を含む。
【0135】
図9A~9Eは、本発明の一実施形態による基材900を調製するためのUVナノエンボス加工プロセスを示すための断面図である。
【0136】
図9Aにおいて、エンボススタンプ904は、上面に複数のナノスケールパターン905、およびナノスケールパターン905間に複数の溝906を含む。機能化可能な層902はエンボススタンプ904のナノスケールパターン形成表面上に堆積されている。
【0137】
次に、図9Bにおいて、機能化可能な層902のみがエンボススタンプ904のナノスケールパターン905内に存在するように過剰の機能化可能な層が除去される。裏当て層901および光硬化性ポリマーの層903aを有する基材900aが提供される。
【0138】
次いで、図9Cに示すように、エンボススタンプ904を光硬化性ポリマーの層903aの上面と接触させ、次いでエンボススタンプ904または基材900aに圧力を加える。ナノスケールパターン905が基材900aの光硬化性ポリマーの層903a内に形成される。
【0139】
次に、図9Dに示すように、UV光をUV硬化性ポリマー層903a上にエンボススタンプ904を介して照射する。エンボススタンプ904は、UV光の透過を許容し、UV光が光硬化性ポリマーの層903aに達してこの光硬化性ポリマーを硬化させ、ポリマー層903が形成されるような材料で作製されている。あるいはまた、裏当て層901がUV光の透過を許容する材料で作製されている場合は、UV光を裏当て層901を介して適用してもよい。
【0140】
最後に、エンボススタンプ904をポリマー層903から分離する。機能化可能な層902がポリマー層903の上面に転写される。また、図9Eに示すように、ナノスケールパターン905がポリマー層903内に形成される。
【0141】
いくつかの実施形態では、エンボススタンプは、ポリマー層および機能化可能な層の少なくとも一部分が貫通して下にある裏当て層を露出させることをもたらすマイクロスケールパターンまたはナノスケールパターンを有するものであり得る。
【0142】
いくつかの実施形態では、基材はさらに裏当て層を備え、この裏当て層はこの裏当て層上に配置された光硬化性ポリマーの層を備え、一巻の可撓性ダイシングテープの形態である。
【0143】
開示している方法の任意の実施形態において、この方法はさらに、テンプレートを除去した後の基材に、ポリマー層と機能化可能な層を裏当て層とシーリング層の間に実質的に密封するためのシーリング層を適用する工程を含むものであり得る。
【0144】
いくつかの実施形態では、シーリング層がさらに、開示している任意の実施形態の方法によって調製される第2の基材を含んでいてもよく、この場合、基材の機能化可能な層と光硬化性ポリマーの層は、これら基材の裏当て層間に配置される。いくつかのこのような実施形態では、シーリング層が光学的に透明である。
【0145】
開示している方法の任意の実施形態において、この方法はさらに、基材を円筒体に形成する工程を含むものであり得る。いくつかの実施形態では、この基材の裏当て層が機能化可能な層またはポリマー層よりもこの円筒体の外表面に近い。他のいくつかの実施形態では、この基材の裏当て層が機能化可能な層またはポリマー層よりもこの円筒体の内表面に近い。いくつかの実施形態では、円筒形状の基材は、可撓性裏当て層を使用し、基材を円筒状物体に、例えば、ガラスまたはプラスチックロッドまたはキャピラリーの周囲に巻き付けて形成され得る。
【0146】
開示している方法の任意の実施形態において、この方法はロール・ツー・ロール法であり得る。
【0147】
前述のことから、本開示の種々の実施形態は例示の目的のために本明細書で説明していること、ならびに種々の変形が本開示の範囲および精神から逸脱することなく行なわれ得ることが認識されよう。したがって、本明細書に開示している種々の実施形態は限定を意図したものでなく、真の範囲および思想は以下の特許請求の範囲に示されている。
【実施例
【0148】
さらなる実施形態を以下の実施例にさらに詳細に開示する。本実施例は、なんら特許請求の範囲の範囲を限定することを意図するものではない。
(実施例1)
高忠実度ナノスケールパターン転写
【0149】
12個のHi-seqサイズパターン形成フローセルを含む8インチマスターテンプレートウェハを使用し、UV硬化性接着剤コートポリマーシートに直接エンボス加工した(図10A)。ナノスケールパターン形成構造物を有するテンプレートウェハを、UV硬化性接着剤層がコートされたポリマーシートと、接着剤層がナノパターン形成表面と直に接触するように並べた。機械的な力をポリマーシートの接着のない表面に加えた。次いで、ポリマーシートにUV光を照射して接着剤を硬化させ、ポリマーシートを剥離によって剥がした。その結果、テンプレートからのポリマーシートへの高忠実度パターン転写が観察された。フローセル領域の回折パターンにより大面積のパターン転写が確認される。
【0150】
フローセル7(FC7)を、さらなる顕微鏡検査および電子顕微鏡検査のためにポリマーシートから切り出した。図10Bに示すように、FC7の基準点の暗視野顕微鏡画像によりナノスケールパターン転写が確認される。この場合のマスターテンプレートは350nmのナノウェル特徴を750nmピッチで含むものであった。ポリマーシートに転写されたパターンはテンプレートのパターン(ナノポスト)と反対の極性であった。さらに、FC7の基準点領域の1240倍および20k倍の倍率のSEM画像を図10Cおよび10Dに示す。また、40k倍および80k倍の倍率のポリマーシート上のナノスケールピラーを図10Eおよび10Fに示す。すべての場合で優れたパターン転写がみられ、ポスト直径は約330nmの範囲、ポスト高さは約300nmであった。
(実施例2)
高忠実度逆極性ナノスケールパターン転写
【0151】
マスターテンプレートのナノスケールパターンの極性を、実施例1に記載のマスターテンプレートと比べて逆にした。マスターテンプレートはナノウェル特徴ではなくナノスケールポスト特徴を含むものである。実施例1に記載のものと同じパターン転写プロセスを用いて、反対の極性パターンをポリマーシート上に生成した。物理的エンボス加工およびUV硬化に従うポリマーシートでのナノウェルおよびナノトレンチの形成を図11Aおよび11Bに異なる倍率で示す。高忠実度、高スループットパターン転写が達成された。
(実施例3)
マイクロ流体構造物の高スループットエンボス加工
【0152】
SU-8フォトレジストにパターン形成したマイクロ流体構造物を備えたシリコンマスターテンプレートを調製した。次いで、シリコンマスターウェハをUV硬化性接着剤層を有する透明なポリマーシートに、マイクロ流体パターンが接着剤層と直に接触するようにインプリントした。実施例1に記載のような標準的なUV放射および剥離プロセスの後、マスターウェハの多数の4インチポリマーレプリカが2分未満で形成された。転写されたパターン形成マイクロ流体構造物を図12A~12Dに示す。これらの流体構造物は、市販のダイシングテープ(Lintec KL-3225 UVテープまたはUltron
Systems,Anti-Static UV Adhesive Plastic
Film p/n:1043R-9.05)に形成した。
【0153】
図12Aは、流体混合などの用途のために形成した蛇行性流体チャネルおよび接合部を示す。同様に、マイクロ流体フィルター(図12B)は、細胞の捕捉、分離またはサイズ依存性ソーティングなどの用途のために形成した。さらに、マイクロ流体構造物を、蛇行性マイクロ流体チャネルを貫流する毛細管力駆動流体(赤色色素を有する1M NaCl)を使用することにより試験した。図12Cは、マイクロ流体チャネル中を流れる流体の異なる時点の光学画像を示す(t=5秒およびt=10秒)。図12Dは、流体混合用のT字型接合部に流れ込む流体の光学画像を示す。
図1
図2ABC
図2D
図2E
図3ABC
図4AB
図4C
図5
図6
図7
図8AB
図8C
図8D
図9AB
図9C
図9D
図9E
図10A
図10B
図10CD
図10EF
図11
図12A
図12B
図12C
図12D