(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】無線通信機における送受信切り替え方法及び無線通信機
(51)【国際特許分類】
H04B 1/44 20060101AFI20231221BHJP
H04B 1/04 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H04B1/44
H04B1/04 C
(21)【出願番号】P 2022128868
(22)【出願日】2022-08-12
【審査請求日】2022-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000234937
【氏名又は名称】八重洲無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089956
【氏名又は名称】永井 利和
(72)【発明者】
【氏名】飯束 嘉庸
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-129691(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0203998(US,A1)
【文献】モトローラ・ソリューションズ、日本市場向けの 新しいデジタル簡易業務用無線機を発売,モトローラ・ソリューションズ プレスリリース [online],モトローラ・ソリューションズ株式会社,2018年03月06日,第1-2頁,[検索日2023.08.09],インターネット:<URL:https://www.motorolasolutions.com/content/dam/msi/docs/ja-jp/MiT5000_190306_release.pdf>
【文献】モトローラ・ソリューションズ株式会社,デジタル簡易業務無線 MiT5000 (免許局) 取扱説明書,取扱説明書,日本,モトローラ・ソリューションズ株式会社,2018年03月06日,第1-4,17,63,73,90頁,[検索日2023.08.09],インターネット:<URL:https://www.motorolasolutions.com/content/dam/msi/docs/ja-jp/MiT5000_OM.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/44
H04B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単信方式による無線通信機能を備えた無線通信機における送受信モードの切り替え方法であって、
受信モードおける操作部の特定キーに対するON操作に基づく信号により送信モードへ切り替える第1の手順と、
前記ON操作に基づく信号により前記特定キーのON状態の継続時間を監視する第2の手順と、
前記第2の手順において前記特定キーのON状態が所定時間より長く継続した場合に、前記特定キーがOFF状態にされた時点で
、自機のマイクロホンへの音声入力の有無に関わらず送信モードから受信モードへの切り替えを行う第3の手順と、
前記第2の手順において前記特定キーのON状態が所定時間以下であった場合に、前記特定キーがOFF状態にされた時点以降、自機のマイクロホンへの入力音声信号が検出されなくなった時点又は前記特定キーに対するON操作に基づく信号が検出された時点で、送信モードから受信モードへの切り替えを行う第4の手順と
を有することを特徴とする無線通信機における送受信切り替え方法。
【請求項2】
受信モードから送信モードへの切り替え時及び送信モードから受信モードへの切り替え時には、それぞれ異なって聴覚される条件にて短音が1回のビープ音又は3回以内で連続したビープ音を、送信モードの継続中には短音が間欠的に出力されるビープ音を再生出力させることとした請求項1に記載の無線通信機における送受信切り替え方法。
【請求項3】
単信方式による無線通信機能を備えた無線通信機において、
操作部に設けられた特定キーと、
前記特定キーのON状態とOFF状態を検出する検出手段と、
自機のマイクロホンに音声が入力されているか否かを判定する判定手段と、
受信モードで前記検出手段が前記特定キーのON状態を検出した場合に、受信モードから送信モードへ切り替える第1の切り替え手段と、
受信モードで前記検出手段が前記特定キーのON状態を検出した場合に、時間の計測を開始するタイマー手段と、
前記第1の切り替え手段による送信モードへの切り替え後、前記タイマー手段が所定時間を計測した時点で前記タイマー手段をリセットし、その後に前記検出手段が前記特定キーのOFF状態を検出した場合に、
前記判定手段による判定結果の如何に関わらず送信モードから受信モードへの切り替えを行う第2の切り替え手段と、
前記第1の切り替え手段による送信モードへの切り替え後、前記タイマー手段が前記所定時間を計測する前に前記検出手段が前記特定キーのOFF状態を検出した場合に、前記タイマー手段をリセットし、その後に前記判定手段が音声入力の無いことを判定した場合又は前記検出手段が前記特定キーのON状態を検出した場合に、送信モードから受信モードへの切り替えを行う第3の切り替え手段と
を備えたことと特徴とする無線通信機。
【請求項4】
受信モードから送信モードへの切り替え時及び送信モードから受信モードへの切り替え時には、それぞれ異なって聴覚される条件にて短音が1回のビープ音又は3回以内で連続したビープ音を、送信モードの継続中には短音が間欠的に出力されるビープ音を再生出力させるビープ音生成手段を備えた請求項3に記載の無線通信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単信方式の通信を行う無線通信機における送受信モードの切り替えに関し、PTT(Press To Talk)方式とセミVOX(Voice Operated Transmission)方式とを合理的に組み合わせた切り替え方法及び同方法を実行する無線通信機に係る。
【背景技術】
【0002】
従来から、単信方式での通信が可能な無線通信機においては、その送受信モードの切り替え方式として次の3つの方式が採用されている。
(1) PTT方式
送信キー(PTTボタン)を押している間だけ送信モードになり、送信キーを押していないときは受信モードになる。
(2) セミVOX方式
送信キーを押すと送信モードになり、音声入力がある間は送信キーを離しても送信モードを維持し、音声入力が無くなると自動的に受信モードに戻る。
(3) フルVOX方式
音声入力が検知されると自動的に送信モードになり、音声入力が検知されなくなると自動的に受信モードに戻る。
【0003】
そして、無線通信機では、例えば、設定キーによって機能設定モードとし、ツマミを回す等の操作で前記(1)から(3)のいずれか一つの方式が選択されるが、実際の動作においてはそれぞれの方式に一長一短がある。
まず、(1)のPTT方式においては、送信キーの手動操作で送受信モードが切り替えられるため、常に手で無線通信機を握持して送信キーを操作できる状態になければならないという不利不便があるが、使用者による送受信モードの選択が確実なされるという利点がある。
【0004】
(2)と(3)のVOX方式においては、音声入力の有無に基づいて送信モードの維持や同モードへの移行や受信モードへの復帰が自動的になされるが、音声入力の有無の判断はマイクロホンからの入力音声信号を予め設定されたしきい値と比較して行われる。
そして、一般的に前記しきい値は調整可能とされ、周囲の騒音環境に応じたレベルが設定できるようになっているが、実際には使用者の意図に反した動作になってしまうことが少なくない。
例えば、フルVOX方式では、無線通信機の使用環境により周囲の騒音が大きいような場合には、a.使用者による音声入力が無いにも拘わらず送信モードへ移行し、逆に、b.音声入力が無くなったにも拘わらず送信モードが継続して受信モードに戻らないというような動作を呈することがあり、また、使用者の音声入力レベルが小さいと、c.送話中であるにも拘わらず受信モードへ戻ってしまうようなことが生じる。
また、セミVOX方式では、前記a.は生じないが、前記b.及びc.の不具合はフルVOX方式と同様に生じる。
【0005】
なお、下記特許文献1においては、音声信号以外の周波数帯域の信号を雑音信号として選択するための周波数選択回路を有し、前記雑音信号のレベルに基づいてしきい値を調整する機能を有する無線通信機が提案されている。
また、下記特許文献2においては、前記しきい値を調整してVOX感度を調整する際に、その調整モードでは音声信号としきい値との比較結果の如何に関わらず送信開始信号を出力させず、実際の運用時での通常モードでは音声信号としきい値との比較結果に基づいて送信開始信号の出力状態と非出力状態が選択されるようにすると共に、しきい値の調整に際しては、報知手段で音声信号としきい値との比較結果を報知するようにした無線通信機を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3056614号公報
【文献】特開2011-77848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
無線通信機におけるセミVOX方式やフルVOX方式での送受信モードの切り替えにおいては、実際の運用面で前記のような使用者の意図に反した動作(上記a.~c.)が発生しやすいという課題があるものの、使用者が音声を発している間はハンズフリーの状態が実現できるという大きな利点がある。
また、セミVOX方式にあっては、送信の開始が送信キーの操作によるため、フルVOX方式で発生する送信音声の頭切れを防止できると共に、送信以外の通常の会話などによる送信動作への移行も防止できるという利点がある。
【0008】
一方、PTT方式は、前記のように手動操作での送受信モードの切り替えであるため、ハンズフリーの状態にはなり得ないが、音声入力の有無や外部の騒音条件等と関係なくON/OFF操作がそのまま送信モードと受信モードに反映されるという確実性がある。
【0009】
そこで、本発明は、従来のように無線通信機を機能設定モードにして送受信モードの切り替え方式を択一的に選択設定するのではなく、単一キーのON操作時間だけでPTT方式とセミVOX方式を選択でき、またセミVOX方式の受信モードへの復帰を強制的に行い得るようにして両方式を統合化し、使い勝手を向上させた無線通信機の送受信切り替え方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、単信方式による無線通信機能を備えた無線通信機における送受信モードの切り替え方法であって、受信モードおける操作部の特定キーに対するON操作に基づく信号により送信モードへ切り替える第1の手順と、前記ON操作に基づく信号により前記特定キーのON状態の継続時間を監視する第2の手順と、前記第2の手順において前記特定キーのON状態が所定時間より長く継続した場合に、前記特定キーがOFF状態にされた時点で、自機のマイクロホンへの音声入力の有無に関わらず送信モードから受信モードへの切り替えを行う第3の手順と、前記第2の手順において前記特定キーのON状態が所定時間以下であった場合に、前記特定キーがOFF状態にされた時点以降、自機のマイクロホンへの入力音声信号が検出されなくなった時点又は前記特定キーに対するON操作に基づく信号が検出された時点で、送信モードから受信モードへの切り替えを行う第4の手順とを有することを特徴とする無線通信機における送受信切り替え方法に係る。
【0011】
この発明では、単信方式により通信を実行する無線通信機において、特定キーのON操作によって受信モードから送信モードに切り替えた後、特定キーのON状態の継続時間を監視し、その時間の長さにより(具体的には特定キーの“短押し”であるかどうかにより)、受信モードへ戻すための切り替え方をPTT方式又はセミVOX方式のいずれかに設定する。
“短押し”でない場合は第3の手順の示すとおりPTT方式での切り替えとなり、“短押し”の場合は第4の手順に示されるセミVOX方式での切り替えとなる。ただし、第4の手順は完全なセミVOX方式という訳ではなく、特定キーがON操作された場合にも受信モードへ切り替えられることになっている。
なお、この発明において、「特定キー」は格別に設けられたキーである必要はなく、無線通信機の機能設定モードなどで操作部にある適当なキーを割り当ててもよく、当然にPTTボタンが特定キーにされてもよい。
また、「所定時間」(“短押し”の時間)は限定していないが、経験的には0.5sec~2sec程度が望ましい。
【0012】
この発明における基本的な考え方は、セミVOX方式ではマイクロホンへの入力音声信号が有ると、特定キーをOFF状態としていても(押圧操作を行っていなくても)送信モードが維持できるため、無線通信機の使用者はハンズフリーの状態になれるという利点があるが、一方、入力音声信号の有無の判定を安定的に行えるかどうかや、無線通信機の周囲の騒音が大きい場合に果たして適正な条件で受信モードへの切り替えが可能かどうかという問題があり、周囲の騒音環境等によってはPTT方式による方が良好な動作状態で使用できることがあり、そのような事情を勘案して、特定キーに対する短押しか否かという簡単な操作条件だけでセミVOX方式又はPTT方式のいずれかを選択して受信モードへの切り替えができるようにしている。
また、セミVOX方式が選択されたが、入力音声信号が無くなっても騒音が大きいために受信モードへ移行できないような場合に備えて、この発明では特定キーのON操作によっても強制的に受信モードへ移行させることができるようにしている。
【0013】
この発明においては、受信モードから送信モードへの切り替え時及び送信モードから受信モードへの切り替え時には、それぞれ異なって聴覚される条件にて短音が1回のビープ音又は3回以内で連続したビープ音を、送信モードの継続中には短音が間欠的に出力されるビープ音を再生出力させることが望ましい。
無線通信機が受信モード又は送信モードのいずれの状態へ切り替わったのかを確認でき、また、セミVOX方式が選択されている場合には、送信モードが継続していることを常時確認できることが望ましいからである。
【0014】
第2の発明は、前記第1の発明に係る無線通信機における送受信切り替え方法が実施される無線通信機であり、単信方式による無線通信機能を備えた無線通信機において、操作部に設けられた特定キーと、前記特定キーのON状態とOFF状態を検出する検出手段と、自機のマイクロホンに音声が入力されているか否かを判定する判定手段と、受信モードで前記検出手段が前記特定キーのON状態を検出した場合に、受信モードから送信モードへ切り替える第1の切り替え手段と、受信モードで前記検出手段が前記特定キーのON状態を検出した場合に、時間の計測を開始するタイマー手段と、前記第1の切り替え手段による送信モードへの切り替え後、前記タイマー手段が所定時間を計測した時点で前記タイマー手段をリセットし、その後に前記検出手段が前記特定キーのOFF状態を検出した場合に、前記判定手段による判定結果に関わらず送信モードから受信モードへの切り替えを行う第2の切り替え手段と、前記第1の切り替え手段による送信モードへの切り替え後、前記タイマー手段が前記所定時間を計測する前に前記検出手段が前記特定キーのOFF状態を検出した場合に、前記タイマー手段をリセットし、その後に前記判定手段が音声入力の無いことを判定した場合又は前記検出手段が前記特定キーのON状態を検出した場合に、送信モードから受信モードへの切り替えを行う第3の切り替え手段とを備えたことと特徴とする無線通信機に係る。
【0015】
なお、この第2の発明の無線通信機においては、受信モードから送信モードへの切り替え時及び送信モードから受信モードへの切り替え時には、それぞれ異なって聴覚される条件にて短音が1回のビープ音又は3回以内で連続したビープ音を、送信モードの継続中には短音が間欠的に出力されるビープ音を再生出力させるビープ音生成手段を備えていることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の無線通信機における送受信切り替え方法及び無線通信機は、単信方式の無線通信において、特定キーのON操作により受信モードから送信モードへ切り替えると共に、周囲の騒音環境等に応じて、単一の特定キーに対するON操作が短押しか否かという簡単な操作条件だけで、セミVOX方式又はPTT方式のいずれかを自動的に選択して受信モードへの切り替えを行うようにしており、無線通信機の使い勝手の向上を図ると共にその合理的運用を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る無線通信機の機能ブロック図である。
【
図2】実施形態に係る無線通信機の送受信切り替え方法を示すフローチャートである。
【
図3】実施形態に係る無線通信機におけるビープ音出力の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の無線通信機における送受信切り替え方法及び送受信切り替え装置の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、
図1は実施形態に係る無線通信機の機能ブロック図である。
この無線通信機は単信方式での通信機能を備えており、その受信再生系は受信アンテナ11と受信復調部12と増幅器13とスピーカ14とからなり、受信アンテナ11で電波受信した信号が受信復調部12で復調され、その復調された音声信号が増幅器13で増幅された後、スピーカ14から音声再生出力される。
【0019】
一方、送信出力系はマイクロホン21と増幅器22と変調送信部23とアンテナ24とからなり、マイクロホン21から得られる音声信号は増幅器22で増幅され、変調送信部23が増幅された音声信号でキャリア信号(搬送波信号)を変調し、変調後の信号を電力増幅して送信アンテナ24から電波放射させる。
【0020】
そして、受信側回路12,13と送信側回路22,23を含むシステム全体はシステム制御部30によって制御される。
すなわち、システム制御部30は、操作部41からの指示信号、また受信復調部12や変調送信部23から得られる各種信号に基づいて、受信復調部12や変調送信部23に対するチャネル設定、動作モードの設定等を行うと共に、タイマー43のスタート/リセットの制御や液晶表示部42に対する使用チャネルや動作モード等の表示制御も実行する。
なお、前記操作部41からの指示信号としては、UP/DOWNボタン、ACCESSキー及びCUEキーの各種操作信号があるが、それらの操作信号もシステム制御部30が受け付けて、内蔵プログラムに基づいてその操作に対応する制御を行う。
【0021】
次に、この無線通信機におけるPTT方式とセミVOX方式を統合化した送受信切り替え方法について、
図2のフローチャートも参照しながら説明する。
まず、通信方式として単信モードが選択されており、変調送信部23がOFF状態で受信復調部12がON状態とされた受信モードにおいて(S1)、操作部41のACCESSキーが押されてON状態になると、これを検知したシステム制御部30は直ちに変調送信部23をON状態、受信復調部12をOFF状態にして送信モードへ切り替えると共に、タイマー43をスタートさせる(S2~S4)。
【0022】
タイマー43をスタートさせた後、システム制御部30はそのカウント値を監視しており、ACCESSキーがそのまま押圧され続けてON状態が維持された状態で前記カウント値が1secを超えると、タイマー43をリセットして、ACCESSキーからの信号が反転してOFF状態になるかどうかを監視する(S4,S5~S7)。
したがって、ACCESSキーが押圧され続けていれば、マイクロホン21からの入力音声信号の有無に関係なく送信モードが維持される。
【0023】
一方、ACCESSキーに対する押圧が解除され、その入力信号のOFF状態への反転が確認されると、それを検知したシステム制御部30は直ちに変調送信部23をOFF状態、受信復調部12をON状態にして、送信モードから受信モードへ切り替えることで元の状態へ戻る(S7,S8→S1)。
【0024】
すなわち、ACCESSキーが押圧されてOFF状態からON状態に切り替えられた時に、その切り替え時から1秒間を超えてそのON状態が維持される場合には、この無線通信機は従来のPTT方式と同様の送受信モードの切り替え動作を行うことになる。
【0025】
ところで、前記のステップS4,S5において、タイマー43のカウント値が1secを超える前にACCESSキーに対する押圧が解除され、その入力信号のOFF状態への反転が確認されると(S5→S9)、システム制御部30は、直ちにタイマー43をリセットすると共に(S10)、送信モードにおいてマイクロホン21から音声信号が継続的に入力されているか否か(S11)及びACCESSキーが再びON操作されるかどうか(S12)を監視する。
【0026】
そして、システム制御部30は、入力音声信号が途絶えて無くなったと判定できた場合、又はACCESSキーが押されてON状態になったことを検知した場合には、直ちに変調送信部23をOFF状態、受信復調部12をON状態にして、送信モードから受信モードへ切り替えて元の状態へ戻すが(S11→S13,S12→S13)、前記いずれの検知もない場合には、送信モードが維持されることになる(S11→S12→S11)。
なお、入力音声信号の有無の判定は、従来からセミVOX方式やフルVOX方式で行われている方法と同様に、マイクロホン21からの入力信号に対してしきい値を設けて判定することになる。
【0027】
この手順は、ステップS2でACCESSキーが押圧されてON状態とされて送信モードへ切り替えられたが(S2,S3)、その後、1sec以内にACCESSキーへの押圧が解除されてOFF状態になった操作条件の下に実行されており、ACCESSキーに対して「短押し」を行った場合の手順である。
【0028】
したがって、ACCESSキーに対して短押しを行った場合には、直ちに送信を開始すると共に、入力音声信号の入力があれば、ACCESSキーへの押圧が解除されていても送信モードが維持されており、短押し操作の条件でセミVOX方式の送受信モードの切り替え動作が行われていることに他ならない。
ただし、この場合の送信モードの維持中においては、ACCESSキーが再度押圧してON状態にすると、強制的に受信モードへ切り替えられるという特有の条件が加味されている。
【0029】
以上から、この実施形態の無線通信機とその動作によれば、ACCESSキーのON操作により受信モードから送信モードへ移行させるが、そのON操作が1sec以内の短押しであればセミVOX方式の送受信モードの切り替え方式が、1secを超えた長押しであればPTT方式の送受信モードの切り替え方式が自動的に選択される。
換言すれば、ACCESSキーという単一のキーに対する時間的操作条件だけで送受信モードの切り替え方式を選択でき、無線通信機の使用場所の騒音環境などに応じて、簡単な操作でセミVOX方式とPTT方式の内のより適応した方を選択することが可能である。
【0030】
より具体的には、無線通信機の使用場所において、周囲の騒音や人の声などが小さい場合には、ACCESSキーを短押しすることでセミVOX方式の状態となり、マイクロホン21に音声入力が継続的になされていればそのまま送信モードが継続され、送話を停止すれば自動的に受信モードへ戻るため、その間はハンズフリーの状態になり、他の業務をこなすことができる。ただ、途中で騒音が大きくなって送話が終わっても自動的に受信モードへ戻らないような事態も想定されるため、ACCESSキーのON操作で強制的に受信モードへ戻す。
【0031】
逆に、周囲の騒音や人の声などが大きい場合、セミVOX方式での送受信モードの切り替えでは前記のとおり送信モードから受信モードへの移行が不安定になるため、ACCESSキーを押圧したままの長押し状態にして、ACCESSキーのON/OFF操作で送信モードと受信モードとを確実に切り替えさせるPTT方式とし、安定した通話を実行させる。
【0032】
ところで、前記のようにACCESSキーを短押ししてセミVOX方式を選択した場合には、入力音声信号の有無を送信モードの継続と受信モードへの切り替えの選択条件としているため(S11)、無線通信機の使用者の意図しないタイミングで送信が終了し、使用者がこれに気付かないことがあり得る。
【0033】
そこで、この実施形態の無線通信機では、受信モードから送信モードへの切り替わり時点、送信モードの継続状態及び送信モードの終了時点(受信モードへの切り替わり時点)にそれぞれ異なるビープ音を発生させて、無線通信機の状態を聴覚的に確認できるようにしている。
【0034】
その具体的手順は
図3に示される。
システム制御部30は常に送受信モードの切り替わりを監視しており、受信モードから送信モードへ切り替わると、第1のビープ音“pi”の音声信号を生成して増幅器13へ出力し、増幅された後、スピーカ14から再生音として出力される(S21~S23)。
この手順は、
図2のフローチャートに対照させるとステップS3の段階に相当する。
【0035】
送信モードへの切り替わり後、システム制御部30は送信モードの継続中においては第2のビープ音“pu…pu…pu…”の音声信号を生成して増幅器13へ出力し、増幅された後、スピーカ14から再生音として出力される(S24,S25)。
また、第2のビープ音の音量は使用者が聴取確認できる程度であればよく、マイクロホン21に向かって話している使用者の送話音声の音量よりも小さく抑制された音量に設定されている。
この手順は、
図2のフローチャートに対照させると、ステップS3で前記第1のビープ音が再生出力された後、PTT方式又はセミVOX方式のいずれが選択された場合でもそれぞれ受信モードへ切り替えられる直前までの段階に相当する。
【0036】
さらに、送信モードから受信モードへ切り替わると、第3のビープ音“pi pi”の音声信号を生成して増幅器13へ出力し、その音声信号は前記と同様にしてスピーカ14から再生音として出力される(S26,S27)。
この手順は、
図2のフローチャートに対照させるとステップS8又はステップS13の段階に相当する。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は単信方式での無線通信を行う無線通信機に適用できる。
【符号の説明】
【0038】
11…アンテナ、12…受信復調部、13…増幅器、14…スピーカ、21…マイクロホン、22…増幅器、23…変調送信部、24…アンテナ、30…システム制御部、41…操作部、42…表示部、43…タイマー。
【要約】
【課題】単信方式で通信する無線通信機では、送受信モードの切り替え方式としてPTT方式、セミVOX方式及びフルVOX方式があるがそれぞれ一長一短がある。
【解決手段】ACCESSキー(特定キー)をON操作して受信モードから送信モード」へ切り替えたときに、そのON操作が短押し(1sec以内)かどうかを監視し、短押しでない場合には、PTT方式を選択してACCESSキーがOFF状態になった時点で受信モードへ切り替え、一方、短押しの場合には、入力音声信号が無くなったとき、又はACCESSキーが再度ON操作されたときに受信モードへ切り替える。周囲の騒音環境等に応じて単一のキーを短押しするかどうかという簡単な操作条件だけでPTT方式とセミVOX方式を選択させ、両方式を統合化して使い勝手が良好な無線通信機を提供する。
【選択図】
図2