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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20231221BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20231221BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20231221BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H01L29/78 652S
H01L29/78 652F
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652M
H01L29/78 652K
H01L29/78 657D
H01L29/78 652C
H01L29/78 652D
H01L29/78 658F
H01L29/78 658A
H01L29/78 652T
H01L29/78 655A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022147350
(22)【出願日】2022-09-15
(62)【分割の表示】P 2018564636の分割
【原出願日】2018-01-25
(65)【公開番号】P2022168307
(43)【公開日】2022-11-04
【審査請求日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2017011609
(32)【優先日】2017-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂口 拓生
(72)【発明者】
【氏名】明田 正俊
(72)【発明者】
【氏名】中野 佑紀
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/130783(WO,A1)
【文献】特開2014-127555(JP,A)
【文献】国際公開第2014/162969(WO,A1)
【文献】特開2007-035736(JP,A)
【文献】特開2015-162577(JP,A)
【文献】特開2004-047923(JP,A)
【文献】国際公開第2014/155651(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/136272(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/002057(WO,A1)
【文献】特開2005-285913(JP,A)
【文献】国際公開第2011/033550(WO,A1)
【文献】特開2015-173290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 29/12
H01L 29/739
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側の第1主面および他方側の第2主面を有する半導体層と、
前記半導体層の前記第1主面の表層部に形成された第1導電型のダイオード領域、前記半導体層の前記第1主面の表層部において前記ダイオード領域の周縁に沿って形成された第2導電型のウェル領域、および、前記ウェル領域の表層部に形成された第1導電型の不純物領域を含む単位セルと、
ゲート絶縁層を挟んで前記ウェル領域および前記不純物領域と対向し、前記不純物領域の上に位置する側壁を有するゲート電極層と、
前記ゲート電極層を被覆する絶縁層と、
前記半導体層の前記第1主面の上において前記ダイオード領域および前記不純物領域に電気的に接続された第1主面電極であって、前記ダイオード領域との間でショットキー接合を形成する前記第1主面電極と、を含み、
前記半導体層の前記第1主面は、前記ゲート電極層の側方に位置する領域において前記不純物領域の少なくとも一部を露出させるように前記第2主面側に向けて窪んだリセス部を含み、
前記絶縁層は、前記ゲート電極層の前記側壁から前記第1主面に沿う水平方向に延出し、前記リセス部を被覆する部分を有する第1部分、および、前記ゲート電極層の前記側壁に沿って延びるように前記第1部分の上部に形成され、前記ゲート電極層の前記側壁を被覆する第2部分を含み、
前記ゲート電極層の前記側壁を基準とする前記水平方向に係る前記第1部分の距離(長さ)は、前記ゲート電極層の前記側壁を基準とする前記水平方向に係る前記第2部分の距離(長さ)よりも大きい、半導体装置。
【請求項2】
前記第1部分は、前記ゲート絶縁層よりも厚い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1部分は、前記ゲート電極層の上端部よりも前記第1主面側の領域で前記ゲート電極層の前記側壁から前記水平方向に延出している、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ウェル領域は、前記ダイオード領域とpn接合部を形成している、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ウェル領域は、平面視において前記ダイオード領域を取り囲んでいる、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記単位セルは、前記ウェル領域の表層部において前記ダイオード領域および前記不純物領域の間の領域に形成され、前記ウェル領域の第2導電型不純物濃度よりも高い第2導電型不純物濃度を有する第2導電型のコンタクト領域を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記コンタクト領域は、前記ダイオード領域とpn接合部を形成している、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
複数の前記単位セルが、前記半導体層の前記第1主面の表層部に形成されており、
前記ゲート電極層は、各前記単位セルの前記ウェル領域の一部に対向している、請求項1~7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
複数の前記単位セルは、任意の第1方向および前記第1方向に交差する第2方向に間隔を空けて配列されている、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
複数の前記単位セルは、行列状または千鳥状に配列されている、請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
複数の前記単位セルは、任意の一方方向に互いに隣接して配列されることにより、一つのライン状セルを形成している、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記ライン状セルが、前記一方方向に交差する交差方向に間隔を空けて複数配列されている、請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記単位セルは、平面視において四角形状に形成されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記単位セルは、互いに交差する方向に延びる第1辺および第2辺を有し、
前記第1辺の長さに対する前記第2辺の長さの比で定義される前記単位セルのアスペクト比が、1以上4以下である、請求項1~13のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記単位セルの平面面積に対する前記ダイオード領域の平面面積の比が、0.005以上0.01以下である、請求項1~14のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記半導体層は、半導体基板およびエピタキシャル層を含む積層構造を有し、
前記第1主面は、前記エピタキシャル層によって形成されており、
前記第2主面は、前記半導体基板によって形成されている、請求項1~15のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記エピタキシャル層は、5μm以上の厚さを有している、請求項16に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記エピタキシャル層は、前記半導体基板の不純物濃度未満の不純物濃度を有している、請求項16または17に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記半導体層に設定されたデバイス領域と、
前記半導体層において前記デバイス領域外に設定された外側領域と、をさらに含み、
前記単位セルは、前記デバイス領域に形成されている、請求項1~18のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項20】
前記半導体層の前記第2主面を被覆し、前記半導体層とオーミック接合を形成する第2主面電極をさらに含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図14には、ゲートトレンチが形成されたSiCエピタキシャル層と、ゲートトレンチによって互いに分離されるようにSiCエピタキシャル層に形成されたショットキーセルおよびpnダイオードセルとを含む半導体装置が開示されている。
【0003】
この半導体装置では、ショットキーセルを利用して、ショットキーバリアダイオードが形成されている。また、pnダイオードセルを利用して、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)が形成されている。
【0004】
SiCエピタキシャル層には、1つのショットキーセルと、当該1つのショットキーセルを取り囲む複数のpnダイオードセルにより1つのセル群が形成されている。SiCエピタキシャル層には、このような構造のセル群が行列状に複数配列されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2012/105611A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者らは、特許文献1に係る半導体装置について鋭意検討した結果、ショットキーバリアダイオードの導通損失を低減できる余地が存在していることを突き止めた。ショットキーバリアダイオードの導通損失は、順方向電圧の増加率に対する順方向電流の増加率が大きくなる程、小さくなる。
【0007】
特許文献1に係る半導体装置は、ショットキーセルおよびpnダイオードセルが互いに作り分けられた構造を有している。このような構造では、ショットキーセル用の電流経路およびpnダイオードセル用の電流経路が、半導体層内で分散する。
【0008】
そのため、順方向電圧を増加させたとしても順方向電流が期待通りに上昇しない。このような問題は、ショットキーバリアダイオードの導通損失の低減を図る上での弊害になっている。
【0009】
そこで、本発明の一実施形態は、ショットキーバリアダイオードの導通損失の低減を図ることができる半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態は、一方側の第1主面および他方側の第2主面を有する半導体層と、前記半導体層の前記第1主面の表層部に形成された第1導電型のダイオード領域、前記半導体層の前記第1主面の表層部において前記ダイオード領域の周縁に沿って形成された第2導電型のウェル領域、および、前記ウェル領域の表層部に形成された第1導電型領域を含む単位セルと、ゲート絶縁層を挟んで前記ウェル領域および前記第1導電型領域と対向するゲート電極層と、前記半導体層の前記第1主面の上において前記ダイオード領域および前記第1導電型領域を被覆し、前記ダイオード領域との間でショットキー接合を形成し、前記第1導電型領域との間でオーミック接合を形成する第1主面電極と、を含む、半導体装置を提供する。
【0011】
この半導体装置によれば、第1主面電極は、ダイオード領域との間でショットキー接合を形成し、トランジスタの第1導電型領域との間でオーミック接合を形成している。これにより、一つの単位セルの中に、ショットキーバリアダイオードおよび絶縁ゲート型のトランジスタが形成されている。
【0012】
したがって、ショットキーバリアダイオード用の電流経路およびトランジスタ用の電流経路は、半導体層において単位セルの直下の領域に形成される。これにより、ショットキーバリアダイオード用の電流経路およびトランジスタ用の電流経路が、半導体層内で分散することを抑制できる。その結果、順方向電圧の増加率に対する順方向電流の増加率を高めることができるから、ショットキーバリアダイオードの導通損失の低減を図ることができる。
【0013】
本発明における上述の、またはさらに他の目的、特徴および効果は、添付図面を参照して次に述べる実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の平面図である。
図2図2は、図1に示す領域IIの拡大図であって、半導体層の第1主面よりも上の構造が取り除かれた図である。
図3図3は、図2のIII-III線に沿う断面図である。
図4図4は、図3の要部の拡大図である。
図5図5は、図1の半導体装置の電気的構造を示す回路図である。
図6図6は、参考例に係る半導体装置の構造を電気的な観点から説明するための図である。
図7図7は、図1の半導体装置の構造を電気的な観点から説明するための図である。
図8図8は、SBDの電流-電圧特性の測定結果を示すグラフである。
図9図9は、図1の半導体装置の要部における電流密度の分布をシミュレーションにより求めた結果を示す図である。
図10図10は、図2に対応する部分の平面図であって、単位セルのアスペクト比が「2」である構造を示す図である。
図11図11は、図2に対応する部分の平面図であって、単位セルのアスペクト比が「3」である構造を示す図である。
図12図12は、SBDの電流-電圧特性の測定結果を示すグラフである。
図13図13は、デバイス形成領域の一部を示す平面図であって、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の平面図である。
図14図14は、デバイス形成領域の一部を示す平面図であって、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の平面図である。
図15図15は、本発明の第4実施形態に係る半導体装置の平面図である。
図16図16は、図15から表面電極を取り除いた平面図であって、半導体層の第1主面の上の構造を説明するための図である。
図17図17は、図16に示す領域XVIIの拡大図であって、半導体層の第1主面よりも上の構造が取り除かれた図である。
図18図18は、図17のXVIII-XVIII線に沿う断面図である。
図19図19は、図18に示す領域XIXの拡大図である。
図20図20は、不純物濃度プロファイルを示すグラフである。
図21A図21Aは、図15に示す半導体装置の製造方法の一例を説明するための断面図である。
図21B図21Bは、図21Aの後の工程を示す断面図である。
図21C図21Cは、図21Bの後の工程を示す断面図である。
図21D図21Dは、図21Cの後の工程を示す断面図である。
図21E図21Eは、図21Dの後の工程を示す断面図である。
図21F図21Fは、図21Eの後の工程を示す断面図である。
図21G図21Gは、図21Fの後の工程を示す断面図である。
図21H図21Hは、図21Gの後の工程を示す断面図である。
図21I図21Iは、図21Hの後の工程を示す断面図である。
図21J図21Jは、図21Iの後の工程を示す断面図である。
図21K図21Kは、図21Jの後の工程を示す断面図である。
図21L図21Lは、図21Kの後の工程を示す断面図である。
図21M図21Mは、図21Lの後の工程を示す断面図である。
図21N図21Nは、図21Mの後の工程を示す断面図である。
図21O図21Oは、図21Nの後の工程を示す断面図である。
図21P図21Pは、図21Oの後の工程を示す断面図である。
図22図22は、図19に対応する部分の断面図であって、本発明の第5実施形態に係る半導体装置の断面図である。
図23図23は、デバイス形成領域の一部を示す平面図であって、本発明の第6実施形態に係る半導体装置の平面図である。
図24図24は、デバイス形成領域の一部を示す平面図であって、本発明の第7実施形態に係る半導体装置の平面図である。
図25図25は、本発明の第8実施形態に係る半導体装置の平面図である。
図26図26は、図25から表面電極を取り除いた平面図であって、半導体層の第1主面の上の構造を説明するための図である。
図27図27は、図18に対応する部分の断面図であって、本発明の第9実施形態に係る半導体装置の断面図である。
図28図28は、デバイス形成領域の一部を示す平面図であって、本発明の第10実施形態に係る半導体装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置1の平面図である。
【0016】
半導体装置1は、チップ状の半導体層2を含む。半導体層2は、一方側の第1主面3と、他方側の第2主面4と、第1主面3および第2主面4を接続する4つの側面5A,5B,5C,5Dとを含む。
【0017】
半導体層2の第1主面3および第2主面4は、それらの法線方向から見た平面視(以下、単に「平面視」という。)において、四角形状に形成されている。側面5Aおよび側面5Cは、互いに対向している。側面5Bおよび側面5Dは、互いに対向している。
【0018】
半導体層2には、デバイス形成領域6および外側領域7が設定されている。デバイス形成領域6は、SBD(Schottky Barrier Diode:ショットキーバリアダイオード)8および絶縁ゲート型のトランジスタの一例であるMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)9が形成された領域である。デバイス形成領域6は、アクティブ領域とも称される。
【0019】
デバイス形成領域6は、平面視において、半導体層2の周縁から当該半導体層2の内方領域に間隔を空けて半導体層2の中央領域に設定されている。デバイス形成領域6は、この形態では、平面視において半導体層2の側面5A~5Dに平行な4辺を有する四角形状に設定されている。
【0020】
外側領域7は、半導体層2の周縁およびデバイス形成領域6の周縁の間の領域に設定されている。外側領域7は、平面視においてデバイス形成領域6を取り囲む無端状(四角環状)に設定されている。
【0021】
半導体層2の第1主面3の平面面積SEに対するデバイス形成領域6の平面面積SFの比SE/SFは、70%以上85%以下であってもよい。半導体層2の第1主面3の平面面積SEは、16mm以上25mm以下であってもよい。外側領域7の幅WOは、0.1mm以上0.3mm以下であってもよい。外側領域7の幅WOとは、外側領域7が延びる方向に直交する方向の幅で定義される。
【0022】
半導体層2の第1主面3の上には、ゲート電極10と、ソース電極11(第1主面電極)とが形成されている。ゲート電極10は、ゲートパッド12およびゲートフィンガー13を含む。
【0023】
ゲートパッド12は、平面視において任意の一つの側面(この形態では側面5A)に沿って形成されている。ゲートパッド12は、平面視において側面5Aの中央領域に形成されている。ゲートパッド12は、この形態では、外側領域7およびデバイス形成領域6の境界を横切るように、外側領域7からデバイス形成領域6に引き出されている。
【0024】
ゲートパッド12は、この形態では、平面視において四角形状に形成されている。ゲートパッド12は、平面視において互いに交差(直交)する方向に沿って延びる2つの側面5A~5Dを接続する1つの角部に沿って形成されていてもよい。
【0025】
ゲートフィンガー13は、デバイス形成領域6の周縁に沿うようにゲートパッド12から帯状に引き出されている。ゲートフィンガー13は、この形態では、平面視においてデバイス形成領域6を取り囲む無端状(四角環状)に形成されている。ゲートフィンガー13は、デバイス形成領域6を3方向から区画するように形成されていてもよい。
【0026】
ソース電極11は、平面視においてゲート電極10の内縁によって区画されたC字状の領域に形成されている。ソース電極11は、この形態では、平面視においてゲート電極10の内縁に沿うC字状に形成されている。
【0027】
ソース電極11は、デバイス形成領域6の大部分を被覆している。ソース電極11は、互いに分割された複数の電極部分を有し、当該複数の電極部分によってデバイス形成領域6を被覆する構造を有していてもよい。
【0028】
ゲートパッド12には、この形態では、ゲート用の第1ボンディングワイヤが接続される。第1ボンディングワイヤは、アルミニウムワイヤであってもよい。ソース電極11には、この形態では、ソース用の第2ボンディングワイヤが接続される。第2ボンディングワイヤは、アルミニウムワイヤであってもよい。
【0029】
図2は、図1に示す領域IIの拡大図であって、半導体層2の第1主面3よりも上の構造が取り除かれた図である。
【0030】
図2を参照して、デバイス形成領域6には、SBD8およびMISFET9を形成する単位セル15が形成されている。図2では、複数の単位セル15が行列状に配列された例が示されている。
【0031】
複数の単位セル15は、任意の第1方向Xおよび第1方向Xに交差する第2方向Yに沿って間隔を空けて形成されている。第1方向Xは、この形態では、半導体層2の側面5A~5Dのうちの任意の側面(この形態では側面5B,5D)に沿う方向である。第2方向Yは、前記任意の側面に直交する側面(この形態では側面5A,5C)に沿う方向である。第2方向Yは、この形態では、第1方向Xに直交する方向である。
【0032】
単位セル15は、平面視において四角形状に形成されている。単位セル15のアスペクト比L2/L1は、ここでは「1」である。アスペクト比L2/L1は、単位セル15の第1方向Xに沿う一辺の長さL1に対する単位セル15の第2方向Yに沿う一辺の長さL2の比で定義される。
【0033】
つまり、単位セル15は、この形態では、平面視において正方形状に形成されている。単位セル15の一辺の長さL1,L2は、それぞれ、5μm以上15μm以下(たとえば10μm程度)であってもよい。
【0034】
半導体層2の第1主面3には、第1ライン部16、第2ライン部17および交差部18が形成されている。第1ライン部16、第2ライン部17および交差部18は、いずれも単位セル15から露出する半導体層2の第1主面3によって形成されている。
【0035】
第1ライン部16は、複数の単位セル15の間の領域を第1方向Xに沿って延び、かつ、第2方向Yに隣り合う複数の単位セル15の間の領域を区画している。第2ライン部17は、複数の単位セル15の間の領域を第2方向Yに沿って延び、かつ、第1方向Xに隣り合う複数の単位セル15の間の領域を区画している。交差部18は、第1ライン部16および第2ライン部17が交差する部分である。
【0036】
第1ライン部16の第2方向Yの幅W1は、0.8μm以上3.0μm以下であってもよい。第2ライン部17の第1方向Xの幅W2は、0.8μm以上3.0μm以下であってもよい。
【0037】
交差部18において半導体層2の第1主面3の表層部には、不純物領域19が形成されている。不純物領域19は、半導体層2の第1主面3の表層部、とりわけ隣り合う単位セル15の間で生じる電界を緩和する。不純物領域19は、半導体装置1の耐圧の低下を抑制する。
【0038】
不純物領域19は、この形態では、p型不純物領域またはp型不純物領域を含む。不純物領域19は、半導体層2(後述するn型エピタキシャル層22)との間でpn接合部を形成している。
【0039】
図3は、図2のIII-III線に沿う断面図である。図4は、図3の要部の拡大図である。以下では、必要に応じて図2も参照する。
【0040】
図3を参照して、半導体層2は、n型半導体基板21と、n型半導体基板21の上に形成されたn型エピタキシャル層22とを含む積層構造を有している。n型エピタキシャル層22によって半導体層2の第1主面3が形成されている。n型半導体基板21によって半導体層2の第2主面4が形成されている。
【0041】
型半導体基板21は、この形態では、ワイドバンドギャップ半導体を含む。n型半導体基板21は、SiC、ダイヤモンドまたは窒化物半導体を含んでいてもよい。n型半導体基板21のオフ角は、4°であってもよい。
【0042】
型エピタキシャル層22は、この形態では、ワイドバンドギャップ半導体を含む。n型エピタキシャル層22は、SiC、ダイヤモンドまたは窒化物半導体を含んでいてもよい。SiCは、4H-SiCであってもよい。窒化物半導体は、GaNであってもよい。
【0043】
型エピタキシャル層22は、n型半導体基板21と同一の材料種によって形成されていてもよい。n型エピタキシャル層22は、n型半導体基板21とは異なる材料種によって形成されていてもよい。
【0044】
以下では、n型半導体基板21およびn型エピタキシャル層22がいずれもSiC(4H-SiC)を含む例について説明する。すなわち、n型半導体基板21は、[0001]面から<11-20>方向に対して10°以内のオフ角が設けられた主面を有している。オフ角は、より具体的には、2°または4°である。
【0045】
型エピタキシャル層22は、n型半導体基板21の主面からSiCをエピタキシャル成長することによって形成されている。したがって、n型エピタキシャル層22は、[0001]面から<11-20>方向に対して10°以内のオフ角が設けられた主面を有している。オフ角は、より具体的には、2°または4°である。
【0046】
第1方向Xは、この形態では、<11-20>方向に直交する方向に設定されており、第2方向Yは、<11-20>方向に設定されている。したがって、複数の単位セル15は、<11-20>方向および<11-20>方向に直交する方向に沿って間隔を空けて配列されている。
【0047】
10℃以内のオフ角を有する4H-SiC基板を用いて複数の単位セル15を<11-20>方向に沿って配列させた場合、互いに隣り合う複数の単位セル15において、電界および結晶方位の関係が互いに等しくなる。
【0048】
単位セル15の耐圧強度は、局所的な電界集中によって低下する。そのため、複数の単位セル15のうちの或る単位セル15において電界が局所的に集中した場合には、或る単位セル15によって複数の単位セル15全体としての耐圧強度が制限される。
【0049】
したがって、電界および結晶方位の関係が互いに等しくなるように複数の単位セル15を配列することによって、複数の単位セル15のうちの或る単位セル15において電界が局所的に集中することを抑制できる。これにより、各単位セル15の耐圧強度を均等に近づけることができるから、半導体装置1の耐圧の低下を抑制できる。
【0050】
半導体層2の第2主面4にはドレイン電極23(第2主面電極)が接続されている。ドレイン電極23は、半導体層2の第2主面4を被覆し、n型半導体基板21との間でオーミック接合を形成している。
【0051】
半導体層2において、n型半導体基板21は、低抵抗領域(ドレイン領域)として形成されている。半導体層2において、n型エピタキシャル層22は、高抵抗領域(ドリフト領域)として形成されている。
【0052】
型エピタキシャル層22の厚さは、5μm以上30μm以下であってもよい。n型エピタキシャル層22の厚さを大きくすることによって、半導体装置1の耐圧を向上できる。
【0053】
たとえば、n型エピタキシャル層22の厚さを5μm以上に設定することにより、600V以上の耐圧を得ることができる。たとえば、n型エピタキシャル層22の厚さを20μm以上に設定することにより、3000V以上の耐圧を得ることができる。
【0054】
図2および図3を参照して、半導体層2の第1主面3の表層部には、複数の単位セル15が形成されている。各単位セル15は、n型ダイオード領域24、p型ウェル領域25、n型ソース領域26(第1導電型領域)およびp型コンタクト領域27を含む。
【0055】
型ダイオード領域24は、半導体層2の第1主面3の表層部に形成されている。n型ダイオード領域24は、平面視において四角形状に形成されている。n型ダイオード領域24は、この形態では、n型エピタキシャル層22の一部の領域をそのまま利用して形成されている。したがって、n型ダイオード領域24は、n型エピタキシャル層22のn型不純物濃度とほぼ等しいn型不純物濃度を有している。
【0056】
型ダイオード領域24は、n型エピタキシャル層22の表層部に対してn型不純物をさらに注入することによって形成されていてもよい。この場合、n型ダイオード領域24の表層部は、n型エピタキシャル層22のn型不純物濃度よりも高いn型不純物濃度を有していてもよい。
【0057】
単位セル15の平面面積SCに対するn型ダイオード領域24の平面面積SDの面積比SD/SCは、0.005以上0.015以下(たとえば0.01程度)であってもよい。以下では、面積比SD/SCを「単位セル15に対するn型ダイオード領域24の面積比SD/SC」という。
【0058】
型ダイオード領域24のアスペクト比L4/L3は、「1」以上であってもよい。アスペクト比L4/L3は、n型ダイオード領域24の第1方向Xに沿う一辺の長さL3に対するn型ダイオード領域24の第2方向Yに沿う一辺の長さL4の比で定義される。
【0059】
ここでは、n型ダイオード領域24のアスペクト比L4/L3が「1」である例が示されている。したがって、n型ダイオード領域24は、ここでは平面視において正方形状に形成されている。n型ダイオード領域24の一辺の長さL3,L4は、それぞれ、1μm以上1.5μm以下(たとえば1.2μm程度)であってもよい。
【0060】
p型ウェル領域25は、半導体層2の第1主面3の表層部において、n型ダイオード領域24の周縁に沿って形成されている。p型ウェル領域25は、より具体的には、平面視においてn型ダイオード領域24を取り囲む無端状(四角環状)に形成されている。
【0061】
p型ウェル領域25の外周縁は、単位セル15の外周縁を形成している。p型ウェル領域25は、n型ダイオード領域24およびn型エピタキシャル層22の間で第1pn接合部を形成している。
【0062】
図4を参照して、第1pn接合部により、p型ウェル領域25をアノードとし、n型ダイオード領域24(ドレイン電極23)をカソードとする第1ダイオード28が形成されている。
【0063】
型ソース領域26は、p型ウェル領域25の表層部に形成されている。n型ソース領域26は、n型ダイオード領域24のn型不純物濃度よりも高いn型不純物濃度を有している。
【0064】
型ソース領域26は、p型ウェル領域25の内周縁および外周縁から間隔を空けて形成されている。n型ソース領域26は、この形態では、平面視においてp型ウェル領域25に沿う無端状(四角環状)に形成されている。
【0065】
型コンタクト領域27は、p型ウェル領域25の表層部に形成されている。p型コンタクト領域27は、p型ウェル領域25の表層部においてn型ダイオード領域24およびn型ソース領域26の間の領域に形成されている。p型コンタクト領域27は、p型ウェル領域25のp型不純物濃度よりも高いp型不純物濃度を有している。
【0066】
型コンタクト領域27は、この形態では、平面視においてp型ウェル領域25の内周縁に沿う無端状(四角環状)に形成されている。p型コンタクト領域27は、この形態では、p型ウェル領域25の内周縁から露出しており、n型ダイオード領域24との間で第2pn接合部を形成している。
【0067】
図4を参照して、p型コンタクト領域27は、第1領域29および第2領域30を含む。p型コンタクト領域27の第1領域29は、p型ウェル領域25内に形成されている。p型コンタクト領域27の第2領域30は、第1領域29からn型ダイオード領域24内に引き出されている。
【0068】
型コンタクト領域27の第2領域30は、p型ウェル領域25およびn型ダイオード領域24の境界領域を横切っている。p型コンタクト領域27の第2領域30は、n型ダイオード領域24との間で第2pn接合部を形成している。第2pn接合部により、p型コンタクト領域27をアノードとし、n型ダイオード領域24(ドレイン電極23)をカソードとする第2ダイオード31が形成されている。
【0069】
各単位セル15は、JBS(Junction Barrier Schottky)構造を有している。JBS構造は、n型ダイオード領域24およびp型ウェル領域25の間に形成された第1pn接合部を含む。また、JBS構造は、n型ダイオード領域24およびp型コンタクト領域27の間に形成された第2pn接合部を含む。
【0070】
さらに、n型エピタキシャル層22の表層部には、各単位セル15を利用してJFET(Junction Field Effect Transistor)構造が形成されている。
【0071】
JFET構造は、第1pnp構造および第2pnp構造を含む。第1pnp構造は、n型エピタキシャル層22の第1ライン部16と、第1ライン部16を挟んで互いに隣り合うp型ウェル領域25とによって形成されている。第2pnp構造は、n型エピタキシャル層22の第2ライン部17と、第2ライン部17を挟んで互いに隣り合うp型ウェル領域25とによって形成されている。
【0072】
図3を参照して、半導体層2の第1主面3の上には、プレーナゲート構造が形成されている。プレーナゲート構造は、ゲート絶縁層32およびゲート電極層33を含む積層構造を有している。プレーナゲート構造は、この形態では、平面視において第1ライン部16および第2ライン部17に沿う格子状に形成されている。
【0073】
ゲート電極層33は、ゲート電極10に電気的に接続されている。ゲート電極層33は、ゲート絶縁層32を挟んで、p型ウェル領域25、n型ソース領域26およびn型エピタキシャル層22に対向している。
【0074】
ゲート電極層33は、より具体的には、第1ライン部16、第2ライン部17および交差部18の上の領域から各単位セル15の上の領域に延び、各単位セル15のp型ウェル領域25およびn型ソース領域26を選択的に被覆している。
【0075】
半導体層2の第1主面3の上には、絶縁層34が形成されている。絶縁層34は、ゲート電極層33を被覆している。絶縁層34には、n型ダイオード領域24、n型ソース領域26およびp型コンタクト領域27を露出させるコンタクト孔35が選択的に形成されている。
【0076】
ソース電極11は、絶縁層34の上に形成されている。ソース電極11は、絶縁層34の上からコンタクト孔35に入り込んでいる。ソース電極11は、コンタクト孔35内において、n型ダイオード領域24、n型ソース領域26およびp型コンタクト領域27を一括して被覆している。
【0077】
ソース電極11は、n型ダイオード領域24との間でショットキー接合を形成している。これにより、図4を参照して、ソース電極11をアノードとし、n型ダイオード領域24(ドレイン電極23)をカソードとするSBD8が形成されている。
【0078】
ソース電極11は、n型ソース領域26およびp型コンタクト領域27との間でオーミック接合を形成している。これにより、半導体層2、p型ウェル領域25、n型ソース領域26、p型コンタクト領域27、ゲート絶縁層32、ゲート電極10(ゲート電極層33)、ソース電極11およびドレイン電極23を含むMISFET9が形成されている。
【0079】
図5は、図1の半導体装置1の電気的構造を示す回路図である。
【0080】
図5を参照して、半導体装置1は、SBD8、MISFET9、第1ダイオード28および第2ダイオード31を含む。SBD8、第1ダイオード28および第2ダイオード31は、MISFET9のフリーホイールダイオードを形成している。
【0081】
SBD8は、MISFET9に対して並列に接続されている。SBD8のアノードは、MISFET9のソース電極11に接続されている。SBD8のカソードは、MISFET9のドレイン電極23に接続されている。
【0082】
第1ダイオード28は、MISFET9に対して並列に接続されている。第1ダイオード28のアノードは、MISFET9のソース電極11に接続されている。第1ダイオード28のカソードは、MISFET9のドレイン電極23に接続されている。
【0083】
第2ダイオード31は、MISFET9に対して並列に接続されている。第2ダイオード31のアノードは、MISFET9のソース電極11に接続されている。第2ダイオード31のカソードは、MISFET9のドレイン電極23に接続されている。
【0084】
MISFET9のソース電極11は、SBD8のアノード電極、第1ダイオード28のアノード電極および第2ダイオード31のアノード電極を兼ねている。MISFET9のドレイン電極23は、SBD8のカソード電極、第1ダイオード28のカソード電極および第2ダイオード31のカソード電極を兼ねている。
【0085】
図6は、参考例に係る半導体装置41の構造を電気的な観点から説明するための図である。以下では、半導体装置1とは異なる点についてのみ説明し、その他の点の説明は省略する。
【0086】
参考例に係る半導体装置41は、単位セル15を含まない点で半導体装置1とは異なる構造を有している。より具体的には、参考例に係る半導体装置41は、SBD8用のSBDセル42と、MISFET9用のMISFETセル43とが互いに隣接して配列された構造を有している。
【0087】
SBDセル42には、n型ダイオード領域24が形成されている。MISFETセル43には、p型ウェル領域25、n型ソース領域26およびp型コンタクト領域27が形成されている。
【0088】
図6には、シミュレーションにより求められた電流密度の分布が示されている。ゲート電極10およびソース電極11の間の電圧VGSは、18Vであった。ドレイン電極23およびソース電極11の間の電圧VDSは、1Vであった。
【0089】
参考例に係る半導体装置41では、MISFETセル43に電流が集中している。したがって、SBDセル42用の電流経路およびMISFETセル43用の電流経路は、半導体層2内で分散している。また、SBDセル42用の電流経路およびMISFETセル43用の電流経路の共通部分は、半導体層2の底部側に形成され、かつ、比較的小さい。
【0090】
したがって、参考例に係る半導体装置41では、順方向電圧VFを増加させたとしても順方向電流IFが期待通りに上昇しない。このような問題は、SBD8の導通損失の低減を図る上での弊害になっている。
【0091】
図7は、半導体装置1の構造を電気的な観点から説明するための図である。
【0092】
図7には、シミュレーションにより求められた半導体装置1の電流密度の分布が示されている。ゲート電極10およびソース電極11の間の電圧VGSは、18Vであった。ドレイン電極23およびソース電極11の間の電圧VDSは、1Vであった。
【0093】
図7を参照して、半導体装置1では、SBD8用の電流経路およびMISFET9用の電流経路の共通部分が、参考例に係る半導体装置41の共通部分よりも大きくなっている。
【0094】
半導体装置1では、一つの単位セル15を利用してMISFET9およびSBD8が作り込まれた構造を有している。したがって、SBD8用の電流経路およびMISFET9用の電流経路は、単位セル15の直下の領域に形成される。
【0095】
これにより、SBD8用の電流経路およびMISFET9用の電流経路が、半導体層2内で分散することを抑制できる。また、SBD8用の電流経路およびMISFET9用の電流経路の共通化を図ることができる。よって、順方向電圧VFの増加率に対する順方向電流IFの増加率を高めることができるから、SBD8の導通損失の低減を図ることができる。
【0096】
図8は、SBD8の電流-電圧特性の測定結果を示すグラフである。
【0097】
図8において、縦軸はドレイン電流ID[A]であり、横軸はドレイン電極23およびソース電極11の間の電圧VDS[V]である。ドレイン電流IDは、SBD8の順方向電流IFでもある。ドレイン電極23およびソース電極11の間の電圧VDSは、SBD8の順方向電圧VFでもある。
【0098】
図8には、第1特性Aおよび第2特性Bが示されている。第1特性Aは、半導体装置1のSBD8の電流-電圧特性を示している。第2特性Bは、参考例に係る半導体装置41のSBD8の電流-電圧特性を示している。
【0099】
第1特性Aおよび第2特性Bを参照して、第1特性Aのドレイン電極23およびソース電極11の間の電圧VDSの増加率に対するドレイン電流IDの増加率は、第2特性Bのドレイン電流IDの増加率よりも高くなっている。このように、半導体装置1によれば、参考例に係る半導体装置41の導通損失よりも小さい導通損失を実現できた。
【0100】
また、半導体装置1によれば、単位セル15は、p型ウェル領域25およびn型ダイオード領域24の間に形成された第1pn接合部を含むJBS構造を有している。したがって、第1pn接合部から拡がる第1空乏層によって、n型ダイオード領域24における電流の集中や電界の集中を抑制できる。
【0101】
さらに、このJBS構造は、第1pn接合部に加えて、p型コンタクト領域27およびn型ダイオード領域24の間に形成された第2pn接合部を含む。したがって、第2pn接合部から拡がる第2空乏層によっても、n型ダイオード領域24における電流の集中や電界の集中を抑制できる。
【0102】
とりわけ、第2pn接合部は、n型ダイオード領域24およびp型コンタクト領域27の第2領域30の間の境界領域に形成されている。これにより、第2pn接合部から第2空乏層を確実に拡げることができる。その結果、n型ダイオード領域24における電流の集中や電界の集中を適切に抑制できる。
【0103】
図9は、図1の半導体装置1の要部における電流密度の分布をシミュレーションにより求めた結果を示す図である。ゲート電極10およびソース電極11の間の電圧VGSは、18Vであった。ドレイン電極23およびソース電極11の間の電圧VDSは、1Vであった。
【0104】
図9を参照して、半導体装置1ではJBS構造による電流や電界の集中の抑制が図られているが、それでもなお、n型ダイオード領域24に電流が集中している。つまり、n型ダイオード領域24では、電流の集中に起因して抵抗値が増加していることが理解される。
【0105】
したがって、n型ダイオード領域24において、電流の集中に起因する抵抗値の増加を抑制し、電流を流れ易くすることにより、SBD8の導通損失をさらに低減できると考えられる。
【0106】
そこで、図2に示す単位セル15を基準にアスペクト比L2/L1等を調整し、SBD8の電流-電圧特性を調べた。
【0107】
図10は、図2に対応する部分の平面図であって、単位セル15のアスペクト比L2/L1が「2」である構造を示す図である。アスペクト比L2/L1が「2」であるとは、アスペクト比L2/L1が、図2に示す単位セル15のアスペクト比L2/L1(=「1」)の2倍であることを意味している。
【0108】
より具体的には、図10を参照して、各単位セル15は、平面視において長方形状に形成されている。各単位セル15は、第2方向Y、つまり、<11-20>方向に沿って延びる長方形状に形成されることが好ましい。このような構造によれば、単位セル15に対する局所的な電界集中を抑制できるから、半導体装置1の耐圧の低下を抑制する上で有効である。
【0109】
単位セル15の短辺の長さL1は、5μm以上15μm以下(たとえば12μm程度)であってもよい。単位セル15の長辺の長さL2は、10μm以上30μm以下(たとえば24μm程度)であってもよい。
【0110】
型ダイオード領域24は、平面視において長方形状に形成されている。単位セル15に対するn型ダイオード領域24の面積比SD/SCは、0.05以上0.06以下(たとえば0.055程度)であってもよい。
【0111】
型ダイオード領域24の短辺の長さL3は、1μm以上1.5μm以下(たとえば1.2μm程度)であってもよい。n型ダイオード領域24の長辺の長さL4は、10μm以上15μm以下(たとえば13.2μm程度)であってもよい。比率だけについてみると、n型ダイオード領域24のアスペクト比L4/L3は、単位セル15のアスペクト比L2/L1よりも大きい。
【0112】
図11は、図2に対応する部分の平面図であって、単位セル15のアスペクト比L2/L1が「3」である構造を示す図である。アスペクト比L2/L1が「3」であるとは、アスペクト比L2/L1が、図2に示す単位セル15のアスペクト比L2/L1(=「1」)の3倍であることを意味している。
【0113】
より具体的には、図11を参照して、各単位セル15は、平面視において長方形状に形成されている。各単位セル15は、第2方向Y、つまり、<11-20>方向に沿って延びる長方形状に形成されることが好ましい。このような構造によれば、単位セル15に対する局所的な電界集中を抑制できるから、半導体装置1の耐圧の低下を抑制する上で有効である。
【0114】
単位セル15の短辺の長さL1は、5μm以上15μm以下(たとえば12μm程度)であってもよい。単位セル15の長辺の長さL2は、15μm以上45μm以下(たとえば36μm程度)であってもよい。
【0115】
型ダイオード領域24は、平面視において長方形状に形成されている。単位セル15に対するn型ダイオード領域24の面積比SD/SCは、0.065以上0.075以下(たとえば0.07程度)であってもよい。
【0116】
型ダイオード領域24の短辺の長さL3は、1μm以上1.5μm以下(たとえば1.2μm程度)であってもよい。n型ダイオード領域24の長辺の長さL4は、20μm以上30μm以下(たとえば25.2μm程度)であってもよい。比率だけについてみると、n型ダイオード領域24のアスペクト比L4/L3は、単位セル15のアスペクト比L2/L1よりも大きい。
【0117】
図12は、SBD8の電流-電圧特性の測定結果を示すグラフである。図12において、縦軸はドレイン電流ID[A]であり、横軸はドレイン電極23およびソース電極11の間の電圧VDS[V]である。ドレイン電流IDは、SBD8の順方向電流IFでもある。ドレイン電極23およびソース電極11の間の電圧VDSは、SBD8の順方向電圧VFでもある。
【0118】
図12には、第1特性Aおよび第2特性Bに加えて、第3特性Cおよび第4特性Dが示されている(図8も併せて参照)。
【0119】
第3特性Cは、アスペクト比L2/L1が「2」である単位セル15を含む半導体装置1のSBD8の電流-電圧特性を示している(図10も併せて参照)。第4特性Dは、アスペクト比L2/L1が「3」である単位セル15を含む半導体装置1のSBD8の電流-電圧特性を示している(図11も併せて参照)。
【0120】
第1特性Aおよび第3特性Cを参照して、第3特性Cのドレイン電極23およびソース電極11の間の電圧VDSの増加率に対するドレイン電流IDの増加率は、第1特性Aのドレイン電流IDの増加率よりも高くなっている。
【0121】
また、第1特性Aおよび第4特性Dを参照して、第4特性Dのドレイン電極23およびソース電極11の間の電圧VDSの増加率に対するドレイン電流IDの増加率は、第1特性Aのドレイン電流IDの増加率よりも高くなっている。
【0122】
また、第3特性Cおよび第4特性Dを参照して、ドレイン電極23およびソース電極11の間の電圧VDSの増加率に対するドレイン電流IDの増加率は、第3特性Cおよび第4特性Dの間においてそれほど大きな差はない。
【0123】
第1特性A、第3特性Cおよび第4特性Dより、単位セル15のアスペクト比L2/L1を大きくすることにより、ドレイン電極23およびソース電極11の間の電圧VDSの増加率に対するドレイン電流IDの増加率を向上できることが分かった。つまり、単位セル15のアスペクト比L2/L1を大きくすることにより、SBD8の導通損失を低減できることが分かった。
【0124】
一方で、第3特性Cに対する第4特性Dのドレイン電流IDの増加率は、第1特性Aに対する第3特性Cのドレイン電流IDの増加率に比べて小さい。したがって、アスペクト比L2/L1には、上限が存在していることが分かった。
【0125】
単位セル15のアスペクト比L2/L1は、「1」以上「4」以下の範囲で調整されてもよい。単位セル15に対するn型ダイオード領域24の面積比SD/SCは、0.005以上0.01以下の範囲で調整されてもよい。
【0126】
前記範囲のアスペクト比L2/L1および前記範囲の面積比SD/SCの任意の組み合わせによれば、SBD8の導通損失の低減を図ることができ、設計の自由度を高めることができる。
【0127】
図13は、デバイス形成領域6の一部を示す平面図であって、本発明の第2実施形態に係る半導体装置51の平面図である。以下では、半導体装置1に対して述べた構造に対応する構造については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0128】
図13に示されるように、複数の単位セル15は、この形態では、アスペクト比L2/L1が比較的大きい複数の単位セル15Aおよびアスペクト比L2/L1が比較的小さい複数の単位セル15Bを含む。
【0129】
複数の単位セル15Aは、それぞれ、第2方向Y、つまり、<11-20>方向に沿って帯状に延びている。複数の単位セル15Aのアスペクト比L2/L1は、「2」である。つまり、図11に示す単位セル15が、複数の単位セル15Aとして適用されている。
【0130】
このような構造によれば、単位セル15に対する局所的な電界集中を抑制できるから、半導体装置1の耐圧の低下を抑制する上で有効である。複数の単位セル15Aは、平面視において行列状の配列に代えて平面視において千鳥状の配列で形成されている。
【0131】
複数の単位セル15Bのアスペクト比L2/L1は、「2」未満である。複数の単位セル15Bは、デバイス形成領域6の周縁に沿って形成されている。複数の単位セル15Bは、デバイス形成領域6の周縁と複数の単位セル15Aとによって区画された領域に形成されていてもよい。
【0132】
以上、半導体装置51によっても、半導体装置1に対して述べた効果と同様の効果を奏することができる。また、デバイス形成領域6の周縁と複数の単位セル15Aとによって区画された領域に複数の単位セル15Bが形成されている。これにより、デバイス形成領域6内に、無駄なく複数の単位セル15A,15Bを形成できるので、電流経路を適切に増加させることができる。
【0133】
図14は、デバイス形成領域6の一部を示す平面図であって、本発明の第3実施形態に係る半導体装置52の平面図である。以下では、半導体装置1に対して述べた構造に対応する構造については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0134】
図14に示されるように、複数の単位セル15は、第2方向Y、つまり、<11-20>方向に沿って互いに接続されるように配列されている。これにより、複数(2つ以上)の単位セル15は、第2方向Yに沿って帯状に延びる一つのライン状セル53を形成している。このような構造によれば、ライン状セル53に対する局所的な電界集中を抑制できるから、半導体装置1の耐圧の低下を抑制する上で有効である。
【0135】
ライン状セル53は、第1方向Xに沿って間隔を空けて複数配列されていてもよい。図14では、図11に示されたアスペクト比L2/L1が「2」である単位セル15が適用された構造が示されている。
【0136】
第2方向Yに沿って互いに隣り合う複数のn型ダイオード領域24の間には、第2方向Yに沿って互いに隣接する一方および/または他方の単位セル15のp型ウェル領域25が介在している。各ライン状セル53は、複数のn型ダイオード領域24が第2方向Yに沿って互いに間隔を空けて配列された構造を有している。
【0137】
以上、半導体装置52によっても、半導体装置1に対して述べた効果と同様の効果を奏することができる。
【0138】
複数の単位セル15は、第2方向Yに代えて第1方向Xに沿って、互いに接続されるように配列されていてもよい。したがって、複数の単位セル15は、第1方向Xに沿って延びる一つのライン状セルを形成していてもよい。さらに、このような構造のライン状セルが、第2方向Yに沿って間隔を空けて複数配列されていてもよい。
【0139】
図15は、本発明の第4実施形態に係る半導体装置61の平面図である。以下では、半導体装置1に対して述べた構造に対応する構造については、同一の参照符号を付して説明する。
【0140】
半導体装置61は、チップ状の半導体層2を含む。半導体層2は、一方側の第1主面3と、他方側の第2主面4と、第1主面3および第2主面4を接続する4つの側面5A,5B,5C,5Dとを含む。
【0141】
第1主面3および第2主面4は、それらの法線方向から見た平面視(以下、単に「平面視」という。)において、四角形状に形成されている。側面5Aおよび側面5Cは、互いに対向している。側面5Bおよび側面5Dは、互いに対向している。
【0142】
半導体層2には、デバイス形成領域6および外側領域7が設定されている。デバイス形成領域6は、SBD8およびMISFET9が形成された領域である。デバイス形成領域6は、アクティブ領域とも称される。
【0143】
デバイス形成領域6は、平面視において、半導体層2の周縁から半導体層2の内方領域に間隔を空けて半導体層2の中央領域に設定されている。デバイス形成領域6は、この形態では、平面視において半導体層2の側面5A~5Dに平行な4辺を有する四角形状に設定されている。
【0144】
外側領域7は、半導体層2の周縁およびデバイス形成領域6の周縁の間の領域に設定されている。外側領域7は、平面視においてデバイス形成領域6を取り囲む無端状(四角環状)に設定されている。
【0145】
半導体層2の第1主面3の平面面積SEに対するデバイス形成領域6の平面面積SFの比SE/SFは、70%以上85%以下であってもよい。半導体層2の第1主面3の平面面積SEは、16mm以上25mm以下であってもよい。外側領域7の幅WOは、0.1mm以上0.3mm以下であってもよい。外側領域7の幅WOとは、外側領域7が延びる方向に直交する方向の幅で定義される。
【0146】
半導体層2の第1主面3の上には、ゲート電極10と、ソース電極11(第1主面電極)とが形成されている。図15では、明瞭化のため、ゲート電極10およびソース電極11がハッチングによって示されている。ゲート電極10は、ゲートパッド12、ゲートフィンガー13およびゲートライン62を含む。
【0147】
ゲートパッド12は、平面視において任意の一つの側面(この形態では側面5A)に沿って形成されている。ゲートパッド12は、平面視において側面5Aの中央領域に形成されている。ゲートパッド12は、この形態では、外側領域7およびデバイス形成領域6の境界を横切るように、外側領域7からデバイス形成領域6に引き出されている。
【0148】
ゲートパッド12は、この形態では、平面視において四角形状に形成されている。ゲートパッド12は、平面視において互いに交差(直交)する方向に沿って延びる2つの側面5A~5Dを接続する1つの角部に沿って形成されていてもよい。
【0149】
ゲートフィンガー13は、デバイス形成領域6の周縁に沿うようにゲートパッド12から帯状に引き出されている。ゲートフィンガー13は、この形態では、平面視においてデバイス形成領域6を取り囲む無端状(四角環状)に形成されている。ゲートフィンガー13は、デバイス形成領域6を3方向から区画するように形成されていてもよい。
【0150】
ゲートライン62は、ゲートパッド12の引き出し端部からデバイス形成領域6の中央部に向けて引き出されている。ゲートライン62は、この形態では、平面視においてゲートパッド12から半導体層2の側面5Cに向けて一直線に延びる帯状に形成されている。
【0151】
ソース電極11は、平面視においてゲート電極10の内縁によって区画されたC字状の領域に形成されている。ソース電極11は、この形態では、平面視においてゲート電極10の内縁に沿うC字状に形成されている。
【0152】
ソース電極11は、デバイス形成領域6の大部分を被覆している。ソース電極11は、互いに分割された複数の電極部分を有し、複数の電極部分によってデバイス形成領域6を被覆する構造を有していてもよい。
【0153】
ゲートパッド12には、この形態では、ゲート用の第1ボンディングワイヤが接続される。第1ボンディングワイヤは、アルミニウムワイヤであってもよい。ソース電極11には、この形態では、ソース用の第2ボンディングワイヤが接続される。第2ボンディングワイヤは、アルミニウムワイヤであってもよい。
【0154】
図16は、図15からゲート電極10およびソース電極11を取り除いた平面図であって、半導体層2の第1主面3の上の構造を説明するための図である。
【0155】
半導体層2の第1主面3の上には、ゲートパッド層63、ゲートフィンガー層64およびゲートライン層65が形成されている。図16では、明瞭化のため、ゲートパッド層63、ゲートフィンガー層64およびゲートライン層65がハッチングによって示されている。
【0156】
ゲートパッド層63は、ゲートパッド12の直下の領域に形成されている。ゲートパッド層63は、ゲートパッド12に電気的に接続されている。図示はしないが、ゲートパッド12は、絶縁層34に形成されたコンタクト孔を介してゲートパッド層63に電気的に接続されている。
【0157】
ゲートパッド層63は、この形態では、外側領域7およびデバイス形成領域6の境界を横切るように、外側領域7からデバイス形成領域6に引き出されている。ゲートパッド層63は、この形態では、平面視において四角形状に形成されている。
【0158】
ゲートフィンガー層64は、ゲートフィンガー13の直下の領域に形成されている。ゲートフィンガー層64は、ゲートフィンガー13に電気的に接続されている。図示はしないが、ゲートフィンガー13は、絶縁層34に形成されたコンタクト孔を介してゲートフィンガー層64に電気的に接続されている。ゲートフィンガー層64は、デバイス形成領域6の周縁に沿うようにゲートパッド層63から帯状に引き出されている。
【0159】
ゲートフィンガー層64は、この形態では、平面視においてデバイス形成領域6を取り囲む無端状(四角環状)に形成されている。ゲートフィンガー層64は、デバイス形成領域6を3方向から区画するように形成されていてもよい。
【0160】
ゲートライン層65は、ゲートライン62の直下の領域に形成されている。ゲートライン層65は、ゲートライン62に電気的に接続されている。図示はしないが、ゲートライン62は、絶縁層34に形成されたコンタクト孔を介してゲートライン層65に電気的に接続されている。
【0161】
ゲートライン層65は、ゲートパッド層63の引き出し端部からデバイス形成領域6の中央部に向けて引き出されている。ゲートライン層65は、この形態では、平面視においてゲートパッド層63から半導体層2の側面5Cに向けて一直線に延びる帯状に形成されている。
【0162】
ゲートパッド層63、ゲートフィンガー層64およびゲートライン層65によって区画されたC字状の領域には、ゲート電極層33(プレーナゲート構造)が形成されている。ゲート電極層33は、この形態では、平面視において格子状に形成されている。
【0163】
図16では、ゲート電極層33が格子状のラインによって示されている。ゲート電極層33は、ゲートパッド層63、ゲートフィンガー層64およびゲートライン層65から引き出されている。
【0164】
ゲート電極層33は、ゲートパッド層63、ゲートフィンガー層64およびゲートライン層65を介して、ゲートパッド12、ゲートフィンガー13およびゲートライン62に電気的に接続されている。
【0165】
図17は、図16に示す領域XVIIの拡大図であって、半導体層2の第1主面3よりも上の構造が取り除かれた図である。
【0166】
図17を参照して、デバイス形成領域6には、SBD8およびMISFET9を形成する単位セル15が形成されている。図17では、複数の単位セル15が行列状に配列された例が示されている。
【0167】
複数の単位セル15は、任意の第1方向Xおよび第1方向Xに交差する第2方向Yに沿って間隔を空けて形成されている。第1方向Xは、この形態では、半導体層2の側面5A~5Dのうちの任意の1つの側面(この形態では側面5B,5D)に沿う方向である。第2方向Yは、前記任意の1つの側面に直交する側面(この形態では側面5A,5C)に沿う方向である。第2方向Yは、この形態では、第1方向Xに直交する方向である。
【0168】
単位セル15は、平面視において四角形状に形成されている。単位セル15は、平面視において外側に向かって凸状に湾曲した角部15aを有している。これにより、単位セル15の角部15aにおける電界の集中を緩和できる。
【0169】
単位セル15のアスペクト比L2/L1は、前述の図10および図11に示されたように、「1」以上の値(たとえば「1」以上「4」以下)を採り得るが、ここでは「1」である例について説明する。アスペクト比L2/L1は、単位セル15の第1方向Xに沿う一辺の長さL1に対する単位セル15の第2方向Yに沿う一辺の長さL2の比で定義される。
【0170】
単位セル15は、この形態では、平面視において正方形状に形成されている。単位セル15の一辺の長さL1,L2は、それぞれ、5μm以上15μm以下(たとえば10μm程度)であってもよい。
【0171】
半導体層2の第1主面3には、第1ライン部16、第2ライン部17および交差部18が形成されている。第1ライン部16、第2ライン部17および交差部18は、いずれも単位セル15から露出する半導体層2の第1主面3によって形成されている。
【0172】
第1ライン部16は、複数の単位セル15の間の領域を第1方向Xに沿って延び、かつ、第2方向Yに隣り合う複数の単位セル15の間の領域を区画している。第2ライン部17は、複数の単位セル15の間の領域を第2方向Yに沿って延び、第1方向Xに隣り合う複数の単位セル15の間の領域を区画している。交差部18は、第1ライン部16および第2ライン部17が交差する部分である。
【0173】
第1ライン部16の第2方向Yの幅W1は、0.8μm以上3.0μm以下(たとえば1.2μm程度)であってもよい。第2ライン部17の第1方向Xの幅W2は、0.8μm以上3.0μm以下(たとえば1.2μm程度)であってもよい。
【0174】
交差部18において半導体層2の第1主面3の表層部には、不純物領域19が形成されている。不純物領域19は、半導体層2の第1主面3の表層部、とりわけ隣り合う単位セル15の間で生じる電界を緩和する。不純物領域19は、半導体装置61の耐圧の低下を抑制する。
【0175】
不純物領域19は、この形態では、p型不純物領域またはp型不純物領域を含む。
不純物領域19は、半導体層2(後述するn型エピタキシャル層22)との間でpn接合部を形成している。不純物領域19は、平面視において外側に向かって凸状に湾曲した角部19aを有している。
【0176】
不純物領域19は、交差部18において単位セル15に重なっている。より具体的には、不純物領域19の角部19aが、単位セル15の角部15aに重なっている。さらに具体的には、1つの不純物領域19の4つ角部19aが、交差部18において、互いに隣り合う4つの単位セル15の角部15aに重なっている。これにより、各単位セル15の角部15aにおける電界の集中を適切に緩和できる。
【0177】
図18は、図17のXVIII-XVIII線に沿う断面図である。図19は、図18に示す領域XIXの拡大図である。以下では、必要に応じて図17も参照する。
【0178】
図18を参照して、半導体層2は、n型半導体基板21と、n型半導体基板21の上に形成されたn型エピタキシャル層22とを含む積層構造を有している。n型エピタキシャル層22によって半導体層2の第1主面3が形成されている。n型半導体基板21によって半導体層2の第2主面4が形成されている。
【0179】
型半導体基板21は、この形態では、ワイドバンドギャップ半導体を含む。n型半導体基板21は、SiC、ダイヤモンドまたは窒化物半導体を含んでいてもよい。n型半導体基板21のオフ角は、4°であってもよい。
【0180】
型エピタキシャル層22は、この形態では、ワイドバンドギャップ半導体を含む。n型エピタキシャル層22は、SiC、ダイヤモンドまたは窒化物半導体を含んでいてもよい。SiCは、4H-SiCであってもよい。窒化物半導体は、GaNであってもよい。
【0181】
型エピタキシャル層22は、n型半導体基板21と同一の材料種によって形成されていてもよい。n型エピタキシャル層22は、n型半導体基板21とは異なる材料種によって形成されていてもよい。以下では、n型半導体基板21およびn型エピタキシャル層22がいずれもSiC(4H-SiC)を含む例について説明する。
【0182】
すなわち、n型半導体基板21は、[0001]面から<11-20>方向に対して10°以内のオフ角が設けられた主面を有している。オフ角は、より具体的には、2°または4°である。
【0183】
型エピタキシャル層22は、n型半導体基板21の主面からSiCをエピタキシャル成長することによって形成されている。したがって、n型エピタキシャル層22は、[0001]面から<11-20>方向に対して10°以内のオフ角が設けられた主面を有している。オフ角は、より具体的には、2°または4°である。
【0184】
第1方向Xは、この形態では、<11-20>方向に直交する方向に設定されており、第2方向Yは、<11-20>方向に設定されている。したがって、複数の単位セル15は、<11-20>方向および<11-20>方向に直交する方向に沿って間隔を空けて配列されている。
【0185】
10℃以内のオフ角を有する4H-SiC基板を用いて複数の単位セル15を<11-20>方向に沿って配列させた場合、互いに隣り合う複数の単位セル15において、電界および結晶方位の関係が互いに等しくなる。
【0186】
単位セル15の耐圧強度は、局所的な電界集中によって低下する。そのため、複数の単位セル15のうちの或る単位セル15において電界が局所的に集中した場合には、或る単位セル15によって複数の単位セル15全体としての耐圧強度が制限される。
【0187】
したがって、電界および結晶方位の関係が互いに等しくなるように複数の単位セル15を配列することによって、複数の単位セル15のうちの或る単位セル15において電界が局所的に集中することを抑制できる。これにより、各単位セル15の耐圧強度を均等に近づけることができるから、半導体装置1の耐圧の低下を抑制できる。
【0188】
半導体層2の第2主面4にはドレイン電極23(第2主面電極)が接続されている。ドレイン電極23は、半導体層2の第2主面4を被覆し、n型半導体基板21との間でオーミック接合を形成している。
【0189】
半導体層2において、n型半導体基板21は、低抵抗領域(ドレイン領域)として形成されている。半導体層2において、n型エピタキシャル層22は、高抵抗領域(ドリフト領域)として形成されている。
【0190】
型エピタキシャル層22の厚さは、5μm以上70μm以下であってもよい。n型エピタキシャル層22の厚さを大きくすることによって、半導体装置61の耐圧を向上できる。
【0191】
たとえば、n型エピタキシャル層22の厚さを5μm以上に設定することにより、600V以上の耐圧を得ることができる。たとえば、n型エピタキシャル層22の厚さを20μm以上に設定することにより、3000V以上の耐圧を得ることができる。たとえば、n型エピタキシャル層22の厚さを40μm以上に設定することにより、6000V以上の耐圧を得ることができる。
【0192】
図17図19を参照して、半導体層2の第1主面3の表層部には、複数の単位セル15が形成されている。各単位セル15の表面には、半導体層2の第2主面4側に向かって窪んだリセス部71が形成されている。
【0193】
つまり、半導体層2の第1主面3には、複数のリセス部71が、第1方向Xおよび第2方向Yに沿って間隔を空けて行列状に配列されている。そして、このリセス部71に沿って、単位セル15が形成されている。リセス部71の深さは、0.5μm以上5μm以下であってもよい。
【0194】
リセス部71は、側壁72、底壁73、ならびに、側壁72および底壁73を接続するエッジ部74を有している。リセス部71は、この形態では、平面視において単位セル15の各辺に平行な4辺を有する四角形状に設定されている。
【0195】
リセス部71の底壁73は、半導体層2の第1主面3の面粗さZs以上の面粗さZrを有している(Zr≧Zs)。リセス部71の底壁73の面粗さZrは、より具体的には、半導体層2の第1主面3の面粗さZsよりも大きい(Zr>Zs)。面粗さZr,Zsは、それぞれ算術平均粗さであってもよい。
【0196】
リセス部71の底壁73には、各単位セル15を形成するn型ダイオード領域24、p型ウェル領域25、n型ソース領域26およびp型コンタクト領域27が形成されている。
【0197】
型ダイオード領域24は、リセス部71の底壁73の中央部に形成されている。n型ダイオード領域24は、平面視において四角形状に形成されている。n型ダイオード領域24は、平面視において外側に向かって凸状に湾曲した角部24aを有している。
【0198】
型ダイオード領域24は、この形態では、n型エピタキシャル層22の一部の領域をそのまま利用して形成されている。したがって、n型ダイオード領域24は、n型エピタキシャル層22のn型不純物濃度とほぼ等しいn型不純物濃度を有している。
【0199】
型ダイオード領域24は、n型エピタキシャル層22の表層部に対してn型不純物をさらに注入することによって形成されていてもよい。この場合、n型ダイオード領域24の表層部は、n型エピタキシャル層22のn型不純物濃度よりも高いn型不純物濃度を有していてもよい。
【0200】
単位セル15の平面面積SCに対するn型ダイオード領域24の平面面積SDの面積比SD/SCは、0.005以上0.015以下(たとえば0.01程度)であってもよい。
【0201】
型ダイオード領域24のアスペクト比L4/L3は、「1」であってもよい。アスペクト比L4/L3は、n型ダイオード領域24の第1方向Xに沿う一辺の長さL3に対するn型ダイオード領域24の第2方向Yに沿う一辺の長さL4の比で定義される。
【0202】
したがって、n型ダイオード領域24は、この形態では、平面視において正方形状に形成されている。n型ダイオード領域24の一辺の長さL3,L4は、それぞれ、0.8μm以上3.0μm以下(たとえば1.2μm程度)であってもよい。
【0203】
半導体層2の耐圧は、n型ダイオード領域24において最も狭い部分の幅(長さL3,L4)、第1ライン部16の幅W1または第2ライン部17の幅W2によって制限される。したがって、n型ダイオード領域24において最も狭い部分の幅(長さL3,L4)は、第1ライン部16の幅W1および第2ライン部17の幅W2と、ほぼ等しいことが好ましい。
【0204】
たとえば、第1ライン部16および第2ライン部17に対してn型ダイオード領域24が小さい場合、半導体層2の耐圧は、n型ダイオード領域24によって制限される。反対に、n型ダイオード領域24に対して第1ライン部16および/または第2ライン部17が小さい場合、半導体層2の耐圧は、第1ライン部16および/または第2ライン部17によって制限される。
【0205】
したがって、n型ダイオード領域24において最も狭い部分の幅(長さL3,L4)を、第1ライン部16の幅W1および第2ライン部17の幅W2とほぼ等しく形成することによって、半導体層2の耐圧が、n型ダイオード領域24、第1ライン部16または第2ライン部17によって制限されることを抑制できる。
【0206】
p型ウェル領域25は、リセス部71の底壁73において、n型ダイオード領域24の周縁に沿って形成されている。p型ウェル領域25は、より具体的には、リセス部71の底壁73においてn型ダイオード領域24を取り囲む無端状(四角環状)に形成されている。
【0207】
p型ウェル領域25は、リセス部71の底壁73からエッジ部74を介して側壁72を被覆している。つまり、リセス部71の底壁73は、p型ウェル領域25の底部よりも半導体層2の第1主面3側に位置している。
【0208】
p型ウェル領域25の外周縁は、単位セル15の外周縁を形成している。したがって、p型ウェル領域25は、平面視において外側に向かって凸状に湾曲した角部25aを有している。p型ウェル領域25の角部25aは、単位セル15の角部15aに対応している。これにより、p型ウェル領域25の角部25aにおける電界の集中を緩和できる。
【0209】
p型ウェル領域25の底部は、半導体層2の第1主面3に対して平行に形成されている。つまり、p型ウェル領域25の底部は、半導体層2の[0001]面に対して平行に形成されている。このような構造によれば、結晶の性質に起因するp型ウェル領域25に対する電界集中を緩和できる。
【0210】
p型ウェル領域25は、n型ダイオード領域24およびn型エピタキシャル層22の間でpn接合部を形成している。このpn接合部により、p型ウェル領域25をアノードとし、n型ダイオード領域24(ドレイン電極23)をカソードとする第1ダイオード28が形成されている。
【0211】
型ソース領域26は、p型ウェル領域25の表層部に形成されている。n型ソース領域26は、n型ダイオード領域24のn型不純物濃度よりも高いn型不純物濃度を有している。
【0212】
型ソース領域26は、リセス部71の底壁73において、p型ウェル領域25の内周縁および外周縁から間隔を空けて形成されている。n型ソース領域26は、リセス部71の底壁73からエッジ部74を介して側壁72を被覆している。
【0213】
型ソース領域26は、この形態では、平面視においてp型ウェル領域25に沿う無端状(四角環状)に形成されている。n型ソース領域26は、平面視において外側に向かって凸状に湾曲した角部26aを有している。
【0214】
型コンタクト領域27は、p型ウェル領域25の表層部に形成されている。p型コンタクト領域27は、p型ウェル領域25のp型不純物濃度よりも高いp型不純物濃度を有している。
【0215】
型コンタクト領域27は、リセス部71の底壁73において、p型ウェル領域25の内周縁およびn型ソース領域26の間の領域に形成されている。p型コンタクト領域27およびn型ソース領域26の間の境界領域は、リセス部71の底壁73に接している。
【0216】
型コンタクト領域27は、この形態では、平面視においてp型ウェル領域25の内周縁に沿う無端状(四角環状)に形成されている。p型コンタクト領域27は、平面視において外側に向かって凸状に湾曲した角部27aを有している。
【0217】
図20は、p型ウェル領域25、n型ソース領域26およびp型コンタクト領域27の各不純物濃度プロファイルを示すグラフである。図20において、縦軸は不純物濃度[cm-3]であり、横軸は半導体層2の第1主面3からの深さ[μm]である。
【0218】
図20には、第1曲線L1、第2曲線L2および第3曲線L3が示されている。第1曲線L1は、p型ウェル領域25の不純物濃度プロファイルを示している。第2曲線L2は、n型ソース領域26の不純物濃度プロファイルを示している。第3曲線L3は、p型コンタクト領域27の不純物濃度プロファイルを示している。
【0219】
第1曲線L1を参照して、p型ウェル領域25のp型不純物濃度は、その深さ方向途中部にピーク値(極大値)を有している。p型ウェル領域25のp型不純物濃度は、ピーク値から半導体層2の第1主面3および第2主面4に向けて減少している。
【0220】
第2曲線L2を参照して、n型ソース領域26のn型不純物濃度は、p型ウェル領域25のp型不純物濃度よりも高い。n型ソース領域26のn型不純物濃度は、半導体層2の第1主面3(リセス部71の底壁73)から第2主面4に向けて漸減する濃度プロファイルを有している。
【0221】
第2曲線L2の破線部を参照して、n型ソース領域26のn型不純物濃度は、実際には、p型ウェル領域25のように、その深さ方向途中部にピーク値(極大値)を有している。
【0222】
リセス部71は、n型ソース領域26においてn型不純物濃度が比較的小さい表層部の領域を除去することによって形成されている。このようにして、半導体層2の第1主面3から第2主面4に向けてn型不純物濃度が漸減する濃度プロファイルを有するn型ソース領域26が形成されている。
【0223】
第3曲線L3を参照して、p型コンタクト領域27のp型不純物濃度は、p型ウェル領域25のp型不純物濃度よりも高い。p型コンタクト領域27のp型不純物濃度は、半導体層2の第1主面3(リセス部71の底壁73)から第2主面4に向けて漸減する濃度プロファイルを有している。
【0224】
第3曲線L3の破線部を参照して、p型コンタクト領域27のp型不純物濃度は、実際には、p型ウェル領域25のように、その深さ方向途中部にピーク値(極大値)を有している。
【0225】
リセス部71は、p型コンタクト領域27においてp型不純物濃度が比較的小さい表層部の領域を除去することによって形成されている。このようにして、半導体層2の第1主面3(リセス部71の底壁73)から第2主面4に向けてp型不純物濃度が漸減する濃度プロファイルを有するp型コンタクト領域27が形成されている。
【0226】
このように、リセス部71の底壁73には、p型ウェル領域25、n型ソース領域26およびp型コンタクト領域27において、比較的不純物濃度の高い部分が露出している。これにより、各半導体領域に対するソース電極11の電気的な接続が良好になるので、SBD8およびMISFET9を適切に形成できる。
【0227】
各単位セル15は、JBS構造を有している。JBS構造は、n型ダイオード領域24およびp型ウェル領域25の間に形成されたpn接合部を含む。また、n型エピタキシャル層22の表層部には、各単位セル15を利用してJFET構造が形成されている。
【0228】
JFET構造は、第1pnp構造および第2pnp構造を含む。第1pnp構造は、n型エピタキシャル層22の第1ライン部16と、第1ライン部16を挟んで互いに隣り合うp型ウェル領域25とによって形成されている。第2pnp構造は、n型エピタキシャル層22の第2ライン部17と、第2ライン部17を挟んで互いに隣り合うp型ウェル領域25とによって形成されている。
【0229】
図18を再度参照して、半導体層2の第1主面3の上には、プレーナゲート構造が形成されている。プレーナゲート構造は、ゲート絶縁層32およびゲート電極層33を含む積層構造を有している。プレーナゲート構造は、平面視において第1ライン部16および第2ライン部17に沿う格子状に形成されている。
【0230】
ゲート絶縁層32は、酸化膜を含んでいてもよい。酸化膜は、酸化シリコンを含んでいてもよい。図19を参照して、ゲート絶縁層32には、リセス部71に連通したゲート貫通孔75が形成されている。ゲート貫通孔75の内壁は、リセス部71の側壁72に対して面一に形成されている。
【0231】
ゲート電極層33は、ゲート絶縁層32を挟んで、p型ウェル領域25、n型ソース領域26およびn型エピタキシャル層22に対向している。ゲート電極層33は、第1ライン部16、第2ライン部17および交差部18の上の領域から各単位セル15の上の領域に延び、各単位セル15のp型ウェル領域25およびn型ソース領域26を選択的に被覆している。
【0232】
ゲート電極層33は、より具体的には、本体部76および張り出し部77を含む。ゲート電極層33の本体部76は、ゲート絶縁層32の上に位置している。ゲート電極層33の張り出し部77は、ゲート電極層33の本体部76から単位セル15の上の領域に張り出している。
【0233】
ゲート電極層33の張り出し部77は、空間を挟んで、リセス部71の底壁73に対向する対向部78を有している。ゲート電極層33の張り出し部77は、より具体的には、空間を挟んで、n型ソース領域26に対向している。
【0234】
ゲート電極層33の上面の上には、上面絶縁層79が形成されている。上面絶縁層79は、ゲート電極層33の上面のほぼ全域を被覆している。上面絶縁層79は、ゲート電極層33の上の領域の平坦性を高めるために形成されている。上面絶縁層79は、窒化膜を含んでいてもよい。窒化膜は、窒化シリコンを含んでいてもよい。
【0235】
半導体層2の第1主面3の上には、絶縁層34が形成されている。絶縁層34は、ゲート電極層33を被覆している。絶縁層34は、図示はしないが、ゲートパッド層63、ゲートフィンガー層64およびゲートライン層65も被覆している。
【0236】
絶縁層34は、ゲート電極層33の張り出し部77およびリセス部71の底壁73の間の空間を埋めて、ゲート電極層33の外面を被覆している。絶縁層34は、空間に埋め込まれた埋設部80を含む。絶縁層34の埋設部80は、空間においてゲート絶縁層32と接している。
【0237】
ゲート電極層33の張り出し部77は、絶縁層34の埋設部80を挟んでn型ソース領域26に対向している。したがって、絶縁層34の埋設部80は、ゲート絶縁層32の一部として機能する。
【0238】
絶縁層34の埋設部80の厚さは、ゲート絶縁層32の厚さ以上であってもよい。つまり、絶縁層34は、ゲート電極層33の内方部(本体部76)に接する薄膜部、および、薄膜部の厚さよりも大きい厚さを有し、ゲート電極層33の周縁部(張り出し部77)に接する厚膜部を有していると見なせる。
【0239】
絶縁層34は、この形態では、複数の絶縁膜が積層された積層構造を有している。複数の絶縁膜は、より具体的には、半導体層2の第1主面3側からこの順に積層された絶縁膜81および絶縁膜82を含む。絶縁膜82は、絶縁膜81の絶縁材料とは異なる性質の絶縁材料を含む。
【0240】
絶縁膜81は、USG(Undoped Silica Glass)を含んでいてもよい。絶縁膜82は、PSG(Phosphosilicate Glass)を含んでいてもよい。絶縁膜82は、PSGに代えてBPSG(Borophosphosilicate Glass)を含んでいてもよい。
【0241】
絶縁膜81は、ゲート電極層33を被覆するように、半導体層2の第1主面3の上に形成されている。絶縁膜81は、リセス部71の底壁73からゲート電極層33の外面を被覆している。絶縁膜81は、より具体的には、リセス部71の底壁73を被覆する第1被覆部83、および、ゲート電極層33の外面を被覆する第2被覆部84を含む。
【0242】
絶縁膜81の第1被覆部83は、リセス部71の底壁73に沿って膜状に形成されている。絶縁膜81の第1被覆部83は、ゲート電極層33の張り出し部77およびリセス部71の底壁73の間の空間に埋め込まれている。絶縁膜81の第1被覆部83によって、絶縁層34の埋設部80が形成されている。
【0243】
絶縁膜81の第2被覆部84は、ゲート電極層33の外面に沿って膜状に形成されている。絶縁膜81の第2被覆部84は、上面絶縁層79を挟んでゲート電極層33の上面に対向している。
【0244】
絶縁膜81には、n型ダイオード領域24、n型ソース領域26およびp型コンタクト領域27を露出させる第1コンタクト孔85が形成されている。第1コンタクト孔85は、より具体的には、絶縁膜81の第1被覆部83に形成されている。
【0245】
第1コンタクト孔85の内壁は、n型ソース領域26の直上に形成されている。第1コンタクト孔85の開口エッジ部は、外側に向かって凸状に湾曲した凸湾曲面を有している。
【0246】
絶縁膜82は、絶縁膜81を被覆している。絶縁膜82は、絶縁膜81の第1被覆部83の上から絶縁膜81の第2被覆部84を被覆している。絶縁膜82には、第1コンタクト孔85に連通する第2コンタクト孔86が形成されている。
【0247】
第2コンタクト孔86は、この形態では、第1コンタクト孔85との間で一つのコンタクト孔35を形成している。第2コンタクト孔86の開口エッジ部は、外側に向かって凸状に湾曲した凸湾曲面を有している。
【0248】
第2コンタクト孔86の開口幅は、第1コンタクト孔85の開口幅以上である。第2コンタクト孔86の内壁は、第1コンタクト孔85の内壁を取り囲んでいる。第2コンタクト孔86の内方領域に第1コンタクト孔85の内壁が位置している。第1コンタクト孔85の内壁および第2コンタクト孔86の内壁の間の領域には、第1コンタクト孔85の開口エッジ部を含む段部87が形成されている。
【0249】
ソース電極11は、絶縁層34の上に形成されている。ソース電極11は、絶縁層34の上からコンタクト孔35に入り込んでいる。ソース電極11は、コンタクト孔35内において、n型ダイオード領域24、n型ソース領域26およびp型コンタクト領域27を一括して被覆している。
【0250】
ソース電極11は、n型ダイオード領域24との間でショットキー接合を形成している。これにより、ソース電極11をアノードとし、n型ダイオード領域24(ドレイン電極23)をカソードとするSBD8が形成されている。
【0251】
ソース電極11は、n型ソース領域26およびp型コンタクト領域27との間でオーミック接合を形成している。これにより、半導体層2、p型ウェル領域25、n型ソース領域26、p型コンタクト領域27、ゲート絶縁層32、ゲート電極10(ゲート電極層33)、ソース電極11およびドレイン電極23を含むMISFET9が形成されている。
【0252】
ソース電極11は、この形態では、電極層91および電極層92を含む積層構造を有している。
【0253】
電極層91は、膜状に形成されており、絶縁層34の上からコンタクト孔35に入り込んでいる。電極層91は、コンタクト孔35内において、第1コンタクト孔85の開口エッジ部を含む段部87を被覆している。電極層91は、コンタクト孔35内において、n型ダイオード領域24、n型ソース領域26およびp型コンタクト領域27を一括して被覆している。
【0254】
電極層91は、比較的大きい面粗さZrを有するリセス部71の底壁73を被覆する。これにより、リセス部71の底壁73に対する電極層91(ソース電極11)の密着力が高められている。その結果、電極層91(ソース電極11)およびn型ダイオード領域24の間の領域においてSBD8を適切に形成できる。
【0255】
電極層91は、この形態では、第1バリア電極膜93および第2バリア電極膜94を含む積層構造を有している。第1バリア電極膜93は、Ti(チタン)膜を含む。第2バリア電極膜94は、TiN(窒化チタン)膜を含む。電極層91は、Ti(チタン)膜およびTiN(窒化チタン)膜のいずれか一方だけを含む単層構造を有していてもよい。
【0256】
電極層92は、電極層91の上に形成されている。電極層92の厚さは、電極層91の厚さ以上である。電極層92は、電極層91に沿って膜状に形成されており、絶縁層34の上からコンタクト孔35に入り込んでいる。
【0257】
電極層91は、コンタクト孔35内において、電極層91を挟んで、n型ダイオード領域24、n型ソース領域26およびp型コンタクト領域27を一括して被覆している。電極層92は、アルミニウムを含んでいてもよい。
【0258】
図18および図19を参照して、ソース電極11は、絶縁層34を被覆する第1被覆部95およびリセス部71の底壁73を被覆する第2被覆部96を含む。第1被覆部95は、絶縁層34の上から上方に向かって膨出している。第2被覆部96は、第1被覆部95以下の厚さを有している。
【0259】
第2被覆部96の上面は、第1被覆部95の上面に対してリセス部71の底壁73側に位置している。第2被覆部96の上面および第1被覆部95の上面は、電極層92によって形成されている。
【0260】
第2被覆部96の上面は、この形態では、絶縁層34の上面と同程度の高さ位置に位置している。これにより、ソース電極11には、第1被覆部95および第2被覆部96によってリセスが区画されている。
【0261】
ソース電極11において第2被覆部96の上面の隅部には、窪み97が形成されている。第2被覆部96の隅部は、より具体的には、第1被覆部95および第2被覆部96を接続する接続部分である。
【0262】
窪み97は、半導体層2の第1主面3側に向かって窪んでいる。窪み97は、絶縁層34(絶縁膜82)の角部に向かって窪んでいてもよい。窪み97は、リセス部71の底壁73に対向している。窪み97は、n型ソース領域26に対向している。窪み97は、p型コンタクト領域27に対向している。
【0263】
この窪み97によって、第2被覆部96の中央部に、他の領域の厚さ以上の厚さを有する厚膜部98が形成されている。厚膜部98は、第2被覆部96においてn型ダイオード領域24を被覆する部分に形成されている。
【0264】
厚膜部98の幅WTは、n型ダイオード領域24の長さL3,L4以上(WT≧L3,L4)であってもよい。厚膜部98によって、第2被覆部96の上面には、窪み97よりも上方に向かって突出した突出部99が形成されている。
【0265】
突出部99の頂部は、ゲート電極層33の上面よりも上方に位置している。突出部99の頂部は、絶縁層34の上面および第1被覆部95の上面の間の領域に位置していてもよい。突出部99の頂部は、絶縁層34の上面に対してリセス部71の底壁73側に位置していてもよい。
【0266】
図示はしないが、絶縁層34には、ゲートパッド層63、ゲートフィンガー層64およびゲートライン層65を露出させる複数のコンタクト孔が選択的に形成されている。
【0267】
ゲートパッド12、ゲートフィンガー13およびゲートライン62は、それぞれ、絶縁層34の上から対応するコンタクト孔(図示せず)に入り込んでいる。ゲートパッド12、ゲートフィンガー13およびゲートライン62は、それぞれ、対応するコンタクト孔内において、ゲートパッド層63、ゲートフィンガー層64およびゲートライン層65に電気的に接続されている。
【0268】
ゲートパッド12、ゲートフィンガー13およびゲートライン62は、それぞれ、ソース電極11のように、電極層91および電極層92を含む積層構造を有していてもよい。
【0269】
半導体装置61において、前述の図10および図11に示されたように、複数の単位セル15のアスペクト比L2/L1は、「1」以上「4」以下の範囲で調整されてもよい。単位セル15に対するn型ダイオード領域24の面積比SD/SCは、0.005以上0.01以下の範囲で調整されてもよい。
【0270】
前記範囲のアスペクト比L2/L1および前記範囲の面積比SD/SCの任意の組み合わせによれば、半導体装置1に対して述べたように、SBD8の導通損失の低減を図ることができ、設計の自由度を高めることができる。
【0271】
アスペクト比L2/L1が「1」以上「4」以下である複数の単位セル15の具体的な構造は、図10および図11等において説明した通りであるので、説明を省略する。
【0272】
以上、半導体装置61によっても、半導体装置1に対して述べた効果と同様の効果を奏することができる。
【0273】
図21A図21Pは、図15に示す半導体装置61の製造方法の一例を説明するための断面図である。図21A図21Pは、図18に対応する部分の断面図である。
【0274】
図21Aを参照して、半導体層2が用意される。半導体層2は、n型半導体基板21を用意する工程と、n型半導体基板21の主面の上にn型エピタキシャル層22を形成する工程とを経て形成される。n型エピタキシャル層22は、n型半導体基板21の主面からSiCをエピタキシャル成長させることによって形成される。
【0275】
次に、図21Bを参照して、半導体層2の第1主面3の表層部にp型ウェル領域25が形成される。p型ウェル領域25を形成する工程では、まず、半導体層2の第1主面3の上に、所定パターンを有するイオン注入マスク101が形成される。イオン注入マスク101は、p型ウェル領域25を形成すべき領域を露出させる複数の開口102を有している。
【0276】
次に、イオン注入マスク101を介して、半導体層2の第1主面3の表層部にp型不純物が導入される。これにより、半導体層2の第1主面3の表層部にp型ウェル領域25が形成される。p型ウェル領域25の形成工程後、イオン注入マスク101は除去される。
【0277】
次に、図21Cを参照して、p型ウェル領域25の表層部にn型ソース領域26が形成される。n型ソース領域26を形成する工程では、まず、半導体層2の第1主面3の上に、所定パターンを有するイオン注入マスク103が形成される。イオン注入マスク103は、n型ソース領域26を形成すべき領域を露出させる複数の開口104を有している。
【0278】
次に、イオン注入マスク103を介して、p型ウェル領域25の表層部にn型不純物が導入される。これにより、p型ウェル領域25の表層部にn型ソース領域26が形成される。n型ソース領域26の形成工程後、イオン注入マスク103は除去される。
【0279】
次に、図21Dを参照して、p型ウェル領域25の表層部にp型コンタクト領域27が形成される。p型コンタクト領域27を形成する工程では、まず、半導体層2の第1主面3の上に、所定パターンを有するイオン注入マスク105が形成される。イオン注入マスク105は、p型コンタクト領域27を形成すべき領域を露出させる複数の開口106を有している。
【0280】
次に、イオン注入マスク105を介して、p型ウェル領域25の表層部にp型不純物が導入される。これにより、p型ウェル領域25の表層部にp型コンタクト領域27が形成される。p型コンタクト領域27の形成工程後、イオン注入マスク105は除去される。
【0281】
p型ウェル領域25の形成工程(図21B参照)、n型ソース領域26の形成工程(図21C参照)およびp型コンタクト領域27の形成工程(図21C参照)の順序は任意であり、前記順序に限定されない。
【0282】
次に、図21Eを参照して、半導体層2の第1主面3の上に、ゲート絶縁層32のベースとなるベース絶縁層107が形成される。ベース絶縁層107は、熱酸化処理法またはCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって形成されてもよい。ベース絶縁層107は、酸化シリコンを含んでいてもよい。
【0283】
次に、ベース絶縁層107の上にゲート電極層33のベースとなるベース電極層108が形成される。ベース電極層108は、CVD法によって形成されてもよい。ベース電極層108は、ポリシリコンを含んでいてもよい。
【0284】
次に、ベース電極層108の上に上面絶縁層79のベースとなる上面ベース絶縁層109が形成される。上面ベース絶縁層109は、CVD法によって形成されてもよい。上面ベース絶縁層109は、窒化シリコンを含んでいてもよい。
【0285】
次に、図21Fを参照して、所定パターンを有するレジストマスク110が、上面ベース絶縁層109の上に形成される。レジストマスク110は、ゲート電極層33を形成すべき領域を選択的に被覆している。
【0286】
次に、図21Gを参照して、上面ベース絶縁層109の不要およびベース電極層108の不要な部分が除去される。上面ベース絶縁層109の不要およびベース電極層108の不要な部分は、レジストマスク110を介するエッチング法によって除去されてもよい。エッチング法は、RIE(Reactive Ion Etching)法等のドライエッチング法であってもよい。これにより、ゲート電極層33および上面絶縁層79が形成される。
【0287】
次に、図21Hを参照して、上面ベース絶縁層109の不要な部分が除去される。上面ベース絶縁層109の不要な部分は、レジストマスク110を介するエッチング法によって除去されてもよい。エッチング法は、RIE法等のドライエッチング法であってもよい。これにより、ゲート絶縁層32が形成される。
【0288】
次に、図21Iを参照して、ゲート絶縁層32から露出する半導体層2の第1主面3の表層部が選択的に除去される。半導体層2の第1主面3の不要な部分は、レジストマスク110を介するエッチング法によって除去されてもよい。エッチング法は、RIE法等のドライエッチング法であってもよい。
【0289】
半導体層2の第1主面3の不要な部分は、n型ソース領域26においてn型不純物濃度がピーク値(極大値)となる領域が露出するまで除去されてもよい。半導体層2の第1主面3の不要な部分は、p型コンタクト領域27においてn型不純物濃度がピーク値(極大値)となる領域が露出するまで除去されてもよい。
【0290】
この工程では、半導体層2の第1主面3の表層部においてゲート電極層33の直下に位置する領域がゲート絶縁層32と共に除去される。これにより、リセス部71が形成されると同時に、本体部76および張り出し部77を含むゲート電極層33がゲート絶縁層32の上に形成される。
【0291】
また、この工程では、ドライエッチングによる作用によって、リセス部71の底壁73の面粗さZrが、半導体層2の第1主面3の面粗さZs以上になる(Zr≧Zs)。
【0292】
リセス部71の構造およびゲート電極層33の構造については、前述した通りであるので、具体的な説明は省略する。リセス部71が形成された後、レジストマスク110は除去される。
【0293】
次に、図21Jを参照して、半導体層2の第1主面3の上に、絶縁膜81が形成される。絶縁膜81は、CVD法によって形成されてもよい。絶縁膜81は、USG(Undoped Silica Glass)を含んでいてもよい。絶縁膜81は、ゲート電極層33の張り出し部77およびリセス部71の底壁73の間の空間を埋めて、ゲート電極層33を被覆するように形成される。
【0294】
次に、図21Kを参照して、絶縁膜81の上に、絶縁膜82が形成される。絶縁膜82は、CVD法によって形成されてもよい。絶縁膜82は、絶縁膜81の絶縁材料とは異なる性質の絶縁材料を含む。絶縁膜82は、PSG(Phosphosilicate Glass)を含んでいてもよい。絶縁膜81および絶縁膜82によって、絶縁層34が形成される。
【0295】
次に、図21Lを参照して、所定パターンを有するレジストマスク111が、絶縁膜82の上に形成される。レジストマスク111は、ゲート電極10用のコンタクト孔(図示せず)やソース電極11用のコンタクト孔35を形成すべき領域を選択的に露出させている。
【0296】
次に、図21Mを参照して、絶縁膜82の不要な部分および絶縁膜81の不要な部分が除去される。絶縁膜82の不要な部分および絶縁膜81の不要な部分は、レジストマスク111を介するエッチング法によって除去される。
【0297】
エッチング法は、RIE法等のドライエッチング法であってもよい。これにより、ゲート電極10用のコンタクト孔(図示せず)やソース電極11用のコンタクト孔35が形成される。
【0298】
次に、図21Nを参照して、絶縁膜81および絶縁膜82に対して熱処理法が実施される。これにより、絶縁膜81および絶縁膜82の成膜性および強度が高められる。
【0299】
また、これと同時に、絶縁膜81の角部および絶縁膜82の角部が丸められる。絶縁膜81および絶縁膜82の具体的な形状については、前述した通りであるので、具体的な説明は省略する。
【0300】
次に、図21Oを参照して、半導体層2の第1主面3の上に、ゲート電極10およびソース電極11のベースとなる電極層91が形成される。電極層91を形成する工程では、まず、Tiを含む第1バリア電極膜93が形成される(図19も併せて参照)。
【0301】
第1バリア電極膜93は、スパッタ法によって形成されてもよい。第1バリア電極膜93は、半導体層2の第1主面3(リセス部71の底壁73)や、絶縁層34の外面に沿って膜状に形成される。
【0302】
次に、TiNを含む第2バリア電極膜94が、第1バリア電極膜93の上に形成される(図19も併せて参照)。第2バリア電極膜94は、スパッタ法によって形成されてもよい。第2バリア電極膜94は、第1バリア電極膜93の表面に沿って膜状に形成される。
【0303】
次に、図21Pを参照して、電極層91の上に、ゲート電極10およびソース電極11のベースとなる電極層92が形成される。電極層92は、アルミニウムを含んでいてもよい。電極層92は、電界めっき法(より具体的には電界アルミニウムめっき法)によって形成されてもよい。
【0304】
次に、電極層91および電極層92が、ゲート電極10およびソース電極11となるように一括してパターニングされる。その後、半導体層2の第2主面4にドレイン電極23が形成される。以上を含む工程を経て、半導体装置61が形成される。
【0305】
図22は、図19に対応する部分の断面図であって、本発明の第5実施形態に係る半導体装置121の断面図である。以下では、半導体装置61に対して述べた構造に対応する構造については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0306】
図22を参照して、p型コンタクト領域27は、半導体装置1と同様に、第1領域29および第2領域30を含む。p型コンタクト領域27の第1領域29は、p型ウェル領域25内に形成されている。p型コンタクト領域27の第2領域30は、第1領域29からn型ダイオード領域24内に引き出されている。
【0307】
型ダイオード領域24は、この形態では、p型コンタクト領域27の第2領域30によって区画されている。したがって、n型ダイオード領域24の一辺の長さL3,L4は、この形態では、p型コンタクト領域27の第2領域30によって取り囲まれた領域の寸法となる。
【0308】
型コンタクト領域27の第2領域30は、p型ウェル領域25およびn型ダイオード領域24の境界領域を横切っている。p型コンタクト領域27の第2領域30は、n型ダイオード領域24との間でpn接合部を形成している。このpn接合部により、p型コンタクト領域27をアノードとし、n型ダイオード領域24(ドレイン電極23)をカソードとする第2ダイオード31が形成されている。
【0309】
各単位セル15のJBS構造は、この形態では、n型ダイオード領域24およびp型ウェル領域25の間に形成された第1pn接合部に加えて、n型ダイオード領域24およびp型コンタクト領域27の第2領域30の間に形成された第2pn接合部を含む。
【0310】
以上、半導体装置121によれば、単位セル15は、第1pn接合部および第2pn接合部を含むJBS構造を有している。したがって、第1pn接合部から拡がる第1空乏層によって、n型ダイオード領域24における電流の集中や電界の集中を抑制できる。また、第2pn接合部から拡がる第2空乏層によっても、n型ダイオード領域24における電流の集中や電界の集中を抑制できる。
【0311】
とりわけ、第2pn接合部は、n型ダイオード領域24およびp型コンタクト領域27の第2領域30の間の境界領域に形成されている。これにより、第2pn接合部から第2空乏層を確実に拡げることができる。その結果、n型ダイオード領域24における電流の集中や電界の集中を適切に抑制できる。
【0312】
図23は、デバイス形成領域6の一部を示す平面図であって、本発明の第6実施形態に係る半導体装置131の平面図である。以下では、半導体装置61に対して述べた構造に対応する構造については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0313】
図23に示されるように、複数の単位セル15は、この形態では、アスペクト比L2/L1が比較的大きい複数の単位セル15Aおよびアスペクト比L2/L1が比較的小さい複数の単位セル15Bを含む。
【0314】
複数の単位セル15Aは、第2方向Y、つまり、<11-20>方向に沿って帯状に延びていることが好ましい。複数の単位セル15Aのアスペクト比L2/L1は、「2」である。つまり、図11に示された単位セル15が、複数の単位セル15Aとして適用されている。
【0315】
このような構造によれば、単位セル15Aに対する局所的な電界集中を抑制できるから、半導体装置1の耐圧の低下を抑制する上で有効である。複数の単位セル15Aは、平面視において行列状の配列に代えて平面視において千鳥状の配列で形成されている。
【0316】
複数の単位セル15Bのアスペクト比L2/L1は、「2」未満である。複数の単位セル15Bは、デバイス形成領域6の周縁に沿って形成されている。複数の単位セル15Bは、デバイス形成領域6の周縁と複数の単位セル15Aとによって区画された領域に形成されていてもよい。
【0317】
以上、半導体装置131によっても、半導体装置61に対して述べた効果と同様の効果を奏することができる。また、デバイス形成領域6の周縁と複数の単位セル15Aとによって区画された領域に複数の単位セル15Bが形成されている。これにより、デバイス形成領域6内に、無駄なく複数の単位セル15A,15Bを形成できるので、電流経路を適切に増加させることができる。
【0318】
図24は、デバイス形成領域6の一部を示す平面図であって、本発明の第7実施形態に係る半導体装置141の平面図である。以下では、半導体装置61に対して述べた構造に対応する構造については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0319】
図24に示されるように、複数の単位セル15は、第2方向Y、つまり、<11-20>方向に沿って互いに接続されるように配列されている。これにより、複数(2つ以上)の単位セル15は、第2方向Yに沿って帯状に延びる一つのライン状セル53を形成している。
【0320】
ライン状セル53は、第1方向Xに沿って間隔を空けて複数配列されていてもよい。図14では、図11に示されたアスペクト比L2/L1が「2」である単位セル15が適用された構造が示されている。このような構造によれば、ライン状セル53に対する局所的な電界集中を抑制できるから、半導体装置1の耐圧の低下を抑制する上で有効である。
【0321】
第2方向Yに沿って互いに隣り合う複数のn型ダイオード領域24の間には、第2方向Yに沿って互いに隣接する一方および/または他方の単位セル15のp型ウェル領域25が介在している。各ライン状セル53は、複数のn型ダイオード領域24が第2方向Yに沿って互いに間隔を空けて配列された構造を有している。
【0322】
以上、半導体装置141によっても、半導体装置61に対して述べた効果と同様の効果を奏することができる。
【0323】
図25は、本発明の第8実施形態に係る半導体装置151の平面図である。以下では、半導体装置61に対して述べた構造に対応する構造については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0324】
図25を参照して、半導体装置151において、ゲート電極10は、ゲートパッド12、ゲートフィンガー13および複数(この形態では4つ)のゲートライン62A,62B,62C,62Dを含む。
【0325】
ゲートパッド12は、平面視において半導体層2の第1主面3の中央部に形成されている。ゲートパッド12は、この形態では、平面視において半導体層2の側面5A,5B,5C,5Dに平行な4つの側面12A,12B,12C,12Dを有する四角形状に形成されている。
【0326】
ゲートフィンガー13は、外側領域7においてデバイス形成領域6の周縁に沿って延びる帯状に形成されている。ゲートフィンガー13は、この形態では、平面視においてデバイス形成領域6を取り囲む無端状(四角環状)に形成されている。ゲートフィンガー13は、デバイス形成領域6を3方向から区画するように形成されていてもよい。
【0327】
複数のゲートライン62A~62Dは、いずれも、対応するゲートパッド12の側面12A~12Dから半導体層2の側面5A~5Dに向けて引き出されている。複数のゲートライン62A~62Dは、いずれも、半導体層2の側面5A~5Dに向けて一直線に延びる帯状に形成されている。
【0328】
複数のゲートライン62A~62Dは、より具体的には、ゲートパッド12の側面12Aから引き出されたゲートライン62A、ゲートパッド12の側面12Bから引き出されたゲートライン62B、ゲートパッド12の側面12Cから引き出されたゲートライン62C、および、ゲートパッド12の側面12Dから引き出されたゲートライン62Dを含む。
【0329】
複数のゲートライン62A~62Dのうちのゲートライン62Aは、この形態では、ゲートフィンガー13に接続されている。これにより、平面視においてデバイス形成領域6には、ゲート電極10の内縁によってC字状の領域が区画されている。
【0330】
ソース電極11は、ゲート電極10の内縁によって区画されたC字状の領域に形成されている。ソース電極11は、この形態では、ゲート電極10の内縁に沿うC字状に形成されている。
【0331】
図26は、図25からゲート電極10およびソース電極11を取り除いた平面図であって、半導体層2の第1主面3の上の構造を説明するための図である。
【0332】
半導体層2の第1主面3の上には、ゲートパッド層63、ゲートフィンガー層64および複数(この形態では4つ)のゲートライン層65A,65B,65C,65Dが形成されている。
【0333】
ゲートパッド層63は、ゲートパッド12の直下の領域に形成されている。ゲートパッド層63は、ゲートパッド12に電気的に接続されている。図示はしないが、ゲートパッド12は、絶縁層34に形成されたコンタクト孔を介してゲートパッド層63に電気的に接続されている。
【0334】
ゲートパッド層63は、平面視において半導体層2の第1主面3の中央部に形成されている。ゲートパッド層63は、この形態では、平面視において半導体層2の側面5A~5Dに平行な4つの側面63A,63B,63C,63Dを有する四角形状に設定されている。
【0335】
ゲートフィンガー層64は、ゲートフィンガー13の直下の領域に形成されている。ゲートフィンガー層64は、ゲートフィンガー13に電気的に接続されている。図示はしないが、ゲートフィンガー13は、絶縁層34に形成されたコンタクト孔を介してゲートフィンガー層64に電気的に接続されている。
【0336】
ゲートフィンガー層64は、デバイス形成領域6の周縁に沿うようにゲートパッド層63から帯状に引き出されている。ゲートフィンガー層64は、この形態では、平面視においてデバイス形成領域6を取り囲む無端状(四角環状)に形成されている。ゲートフィンガー層64は、デバイス形成領域6を3方向から区画するように形成されていてもよい。
【0337】
複数のゲートライン層65A~65Dは、複数のゲートライン62A~62Dの直下の領域にそれぞれ形成されている。複数のゲートライン層65A~65Dは、対応するゲートライン62A~62Dに電気的に接続されている。図示はしないが、ゲートライン62A~62Dは、絶縁層34に形成されたコンタクト孔を介してゲートライン層65A~65Dに電気的に接続されている。
【0338】
複数のゲートライン層65A~65Dは、いずれも、対応するゲートパッド層63の側面63A~63Dから半導体層2の側面5A~5Dに向けて引き出されている。複数のゲートライン層65A~65Dは、いずれも、半導体層2の側面5A~5Dに向けて一直線に延びる帯状に形成されている。
【0339】
複数のゲートライン層65A~65Dは、より具体的には、ゲートパッド層63の側面63Aから引き出されたゲートライン層65A、ゲートパッド層63の側面63Bから引き出されたゲートライン層65B、ゲートパッド層63の側面63Cから引き出されたゲートライン層65C、ゲートパッド層63の側面63Dから引き出されたゲートライン層65Dを含む。
【0340】
複数のゲートライン層65A~65Dのうちのゲートライン層65Aは、この形態では、ゲートフィンガー層64に接続されている。これにより、平面視においてデバイス形成領域6には、ゲート電極10の内縁によってC字状の領域が区画されている。
【0341】
ゲートパッド層63、ゲートフィンガー層64および複数のゲートライン層65A~65Dによって区画されたC字状の領域には、ゲート電極層33(プレーナゲート構造)が形成されている。
【0342】
ゲート電極層33は、平面視において格子状に形成されている。図26では、ゲート電極層33が格子状のラインによって示されている。ゲート電極層33は、ゲートパッド層63、ゲートフィンガー層64および複数のゲートライン層65A~65Dから引き出されている。
【0343】
これにより、ゲート電極層33は、ゲートパッド層63、ゲートフィンガー層64および複数のゲートライン層65A~65Dを介して、ゲートパッド12、ゲートフィンガー13および複数のゲートライン62A~62Dに電気的に接続されている。
【0344】
以上、半導体装置151によっても、半導体装置61に対して述べた効果と同様の効果を奏することができる。
【0345】
図27は、図18に対応する部分の断面図であって、本発明の第9実施形態に係る半導体装置161の断面図である。以下では、半導体装置61に対して述べた構造に対応する構造については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0346】
図27を参照して、ソース電極11は、この形態では、電極層92の上にこの順に積層されたニッケル層162、金層163および半田層164を含む。金層163および半田層164の間の領域には、パラジウム層が介在されていてもよい。
【0347】
図示はしないが、ゲート電極10も、ソース電極11と同様に、電極層92の上にこの順に積層されたニッケル層162、金層163および半田層164を含む。また、金層163および半田層164の間の領域には、パラジウム層が介在されていてもよい。
【0348】
以上、半導体装置161によっても、半導体装置61に対して述べた効果と同様の効果を奏することができる。
【0349】
また、半導体装置161によれば、ゲート電極10およびソース電極11は、半田層164をそれぞれ含む。これにより、半導体層2の第1主面3を接続対象に対向させた姿勢で、半導体装置161を接続対象に実装できる。
【0350】
図28は、デバイス形成領域6の一部を示す平面図であって、本発明の第10実施形態に係る半導体装置171の平面図である。図28において、A-A線に沿う断面図は、図18に示す断面図に対応している。以下では、半導体装置61に対して述べた構造に対応する構造については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0351】
図28を参照して、単位セル15は、この形態では、第2方向Yに沿って延びる有端の帯状に形成されている。この形態では、複数の単位セル15が第1方向Xに沿って間隔を空けて形成されている。
【0352】
これにより、複数の単位セル15は、平面視においてストライプ状に形成されている。互いに隣り合う複数の単位セル15の間の領域は、第2方向Yに沿って延びるライン部172によって区画されている。ライン部172は、半導体装置61の第2ライン部17に相当する(図17も併せて参照)。
【0353】
各単位セル15は、半導体装置61と同様に、n型ダイオード領域24、p型ウェル領域25、n型ソース領域26およびp型コンタクト領域27を含む。n型ダイオード領域24、p型ウェル領域25、n型ソース領域26およびp型コンタクト領域27は、それぞれ、平面視において第2方向Yに沿って有端の帯状に延びている。
【0354】
p型ウェル領域25は、この形態では、一方のp型ウェル領域25Aおよび他方のp型ウェル領域25Bを含む。一方のp型ウェル領域25Aは、n型ダイオード領域24の第1方向X側の一端部に沿って有端の帯状に延びている。
【0355】
他方側のp型ウェル領域25Bは、n型ダイオード領域24の第1方向X側の他端部に沿って有端の帯状に延びている。n型ダイオード領域24は、この形態では、一方のp型ウェル領域25Aおよび他方のp型ウェル領域25Bによって区画されている。
【0356】
型ソース領域26は、各p型ウェル領域25の表層部に形成されている。n型ソース領域26は、p型ウェル領域25の内周縁および外周縁から間隔を空けて形成されている。n型ソース領域26は、平面視においてp型ウェル領域25に沿って有端の帯状に延びている。
【0357】
型コンタクト領域27は、各p型ウェル領域25の表層部に形成されている。p型コンタクト領域27は、p型ウェル領域25の表層部においてn型ダイオード領域24およびn型ソース領域26の間の領域に形成されている。p型コンタクト領域27は、この形態では、平面視においてp型ウェル領域25に沿って有端の帯状に延びている。
【0358】
以上、半導体装置171によっても、半導体装置61に対して述べた効果と同様の効果を奏することができる。
【0359】
半導体装置171では、耐圧等の電気的特性の調整を図るうえで、単位セル15の第1方向Xに沿う幅を調整できる。一方、半導体装置61では、電気的特性の調整を図るうえで単位セル15の第1方向Xに沿う幅および第2方向Yに沿う幅の両方を細かく調整できる。したがって、半導体装置61の設計の自由度の方が、半導体装置171の設計の自由度よりも高いといえる。
【0360】
半導体装置171には、前述の半導体装置121の構造(図22参照)が適用されてもよい。つまり、第1領域29および第2領域30を含むp型コンタクト領域27が、半導体装置171に適用されてもよい。
【0361】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、さらに他の形態で実施することもできる。
【0362】
前述の各実施形態では、平面視において三角形状、六角形状、八角形状等の多角形状の単位セル15が形成されていてもよい。また、前述の各実施形態では、平面視において円形状や楕円形状の単位セル15が形成されていてもよい。
【0363】
前述の各実施形態では、平面視において三角形状、六角形状、八角形状等の多角形状のn型ダイオード領域24が形成されていてもよい。また、前述の各実施形態では、平面視において円形状や楕円形状のn型ダイオード領域24が形成されていてもよい。
【0364】
前述の各実施形態において、不純物領域19は、半導体層2(n型エピタキシャル層22)に選択的に導入された結晶欠陥(Crystal defects)を含む結晶欠陥領域を含んでいてもよい。結晶欠陥は、格子間原子や原子空孔等に代表される格子欠陥(Lattice defects)を含んでいてもよい。
【0365】
結晶欠陥領域は、n型エピタキシャル層22のn型不純物密度N1よりも高い結晶欠陥密度N2を有していてもよい(n型不純物密度N1<結晶欠陥密度N2)。
【0366】
前述の各実施形態において、不純物領域19は、高抵抗領域を含んでいてもよい。高抵抗領域は、半導体層2(n型エピタキシャル層22)の比抵抗ρ1よりも高い比抵抗ρ2を有していてもよい(比抵抗ρ1<比抵抗ρ2)。高抵抗領域は、半導体層2(n型エピタキシャル層22)に選択的に導入された結晶欠陥(Crystal defects)を含む結晶欠陥領域によって形成されていてもよい。
【0367】
前述の各実施形態において、交差部18において不純物領域19が形成されていない構造の半導体層2が採用されてもよい。
【0368】
前述の各実施形態において、ワイドバンドギャップ半導体に代えてシリコン(Si)からなるn型半導体基板21が適用されてもよい。
【0369】
前述の各実施形態において、ワイドバンドギャップ半導体に代えてシリコン(Si)からなるn型エピタキシャル層22が適用されてもよい。
【0370】
前述の各実施形態において、半導体層2は、FZ法により製造されたn型半導体基板を含んでいてもよい。この場合、n型半導体基板によって、前述のn型エピタキシャル層22に相当する高抵抗領域(ドリフト領域)が形成される。また、半導体層2の第2主面4に対するn型不純物の注入によって、前述のn型半導体基板に相当する低抵抗領域(ドレイン領域)が形成される。
【0371】
前述の各実施形態において、第1方向Xおよび第2方向Yは、半導体層2の側面5A~5Dに沿う方向に限定されるものではない。たとえば、前述の各実施形態において、第1方向Xおよび第2方向Yの関係が入れ替わってもよい。つまり、第1方向Xが<11-20>方向に設定され、第2方向Yが<11-20>方向に直交する方向に設定されていてもよい。
【0372】
この場合、複数の単位セル15は、<11-20>方向に沿って間隔を空けて配列されることが好ましい。また、単位セル15が平面視において長方形状に形成される場合には、<11-20>方向に沿って延びる長方形状に形成されることが好ましい。
【0373】
また、前述の各実施形態において第1方向Xおよび第2方向Yは、半導体層2の対角方向に沿う方向であってもよい。この場合も、複数の単位セル15は、<11-20>方向に沿って間隔を空けて配列されることが好ましい。また、単位セル15が平面視において長方形状に形成される場合には、<11-20>方向に沿って延びる長方形状に形成されることが好ましい。
【0374】
前述の各実施形態において、プレーナゲート構造に代えて、トレンチゲート構造が採用されてもよい。トレンチゲート構造は、単位セル15を区画するように前述の第1ライン部16および第2ライン部17に沿って形成されていてもよい。
【0375】
トレンチゲート構造は、半導体層2の第1主面3の表層部に形成されたゲートトレンチに、ゲート絶縁層32を挟んで埋め込まれたゲート電極層33を含んでいてもよい。ゲートトレンチの側壁は、半導体層2の第1主面3に対して垂直に形成されていてもよい。ゲートトレンチは、開口面積が、底壁の面積よりも大きい断面視テーパ状に形成されていてもよい。
【0376】
ゲート絶縁層32は、ゲートトレンチ内において凹状の空間を区画するようにゲートトレンチの側壁および底壁に沿って形成されていてもよい。ゲート電極層33は、ゲート絶縁層32によって区画された凹状の空間に埋め込まれていてもよい。
【0377】
型エピタキシャル層22の一部、p型ウェル領域25およびn型ソース領域26は、ゲート絶縁層32を挟んでゲート電極層33に対向するように形成されていてもよい。この場合、p型ウェル領域25において、n型エピタキシャル層22の一部およびn型ソース領域26に挟まれた部分が、MISFET9のチャネルとなる。
【0378】
このように、トレンチゲート構造が採用された構造によっても、前述の実施形態において述べた効果と同様の効果を奏することができる。
【0379】
前述の各実施形態において、n型半導体基板21に代えてp型半導体基板が採用されてもよい。つまり、前述の各実施形態において、MISFET9に代えて絶縁ゲート型のトランジスタの一例であるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が形成されてもよい。
【0380】
この場合、MISFET9の「ソース」が、IGBTの「エミッタ」と読み替えられる。また、MISFET9の「ドレイン」が、IGBTの「コレクタ」と読み替えられる。
【0381】
この出願は、2017年1月25日に日本国特許庁に提出された特願2017-011609号に対応しており、この出願の全開示はここに引用により組み込まれるものとする。
【0382】
本発明の実施形態について詳細に説明してきたが、これらは本発明の技術的内容を明らかにするために用いられた具体例に過ぎず、本発明はこれらの具体例に限定して解釈されるべきではなく、本発明の範囲は添付の請求の範囲によってのみ限定される。
【0383】
以下、この明細書および図面から抽出される特徴例が示される。
【0384】
[A1]一方側の第1主面および他方側の第2主面を有する半導体層と、前記半導体層の前記第1主面の表層部に形成された第1導電型のダイオード領域、前記半導体層の前記第1主面の表層部において前記ダイオード領域の周縁に沿って形成された第2導電型のウェル領域、および、前記ウェル領域の表層部に形成された第1導電型領域を含む単位セルと、ゲート絶縁層を挟んで前記ウェル領域および前記第1導電型領域と対向するゲート電極層と、前記半導体層の前記第1主面の上において前記ダイオード領域および前記第1導電型領域を被覆し、前記ダイオード領域との間でショットキー接合を形成し、前記第1導電型領域との間でオーミック接合を形成する第1主面電極と、を含む、半導体装置。
【0385】
[A2]前記ウェル領域は、前記ダイオード領域との間でpn接合部を形成しており、前記単位セルは、前記ウェル領域および前記ダイオード領域の間に形成された前記pn接合部を含むJBS(Junction Barrier Schottky)構造を有している、A1に記載の半導体装置。
【0386】
[A3]前記ウェル領域は、平面視において前記ダイオード領域を取り囲んでいる、A1またはA2に記載の半導体装置。
【0387】
[A4]前記単位セルは、前記ウェル領域の表層部において前記ダイオード領域および前記第1導電型領域の間の領域に形成され、前記ウェル領域の第2導電型不純物濃度よりも高い第2導電型不純物濃度を有する第2導電型のコンタクト領域を含む、A1~A3のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0388】
[A5]前記コンタクト領域は、前記ダイオード領域との間でpn接合部を形成しており、前記単位セルは、前記コンタクト領域および前記ダイオード領域の間に形成された前記pn接合部を含むJBS(Junction Barrier Schottky)構造を有している、A4に記載の半導体装置。
【0389】
[A6]前記単位セルが、前記半導体層の前記第1主面の表層部に複数形成されており、前記ゲート電極層は、各前記単位セルの前記ウェル領域の一部に対向している、A1~A5のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0390】
[A7]前記複数の単位セルは、任意の第1方向および前記第1方向に交差する第2方向に沿って間隔を空けて配列されている、A6に記載の半導体装置。
【0391】
[A8]前記複数の単位セルは、行列状に配列されている、A7に記載の半導体装置。
【0392】
[A9]前記複数の単位セルは、千鳥状に配列されている、A7に記載の半導体装置。
【0393】
[A10]前記複数の単位セルは、任意の一方方向に互いに隣接して配列されることにより、一つのライン状セルを形成している、A6に記載の半導体装置。
【0394】
[A11]前記ライン状セルが、前記一方方向に交差する交差方向に沿って間隔を空けて複数配列されている、A10に記載の半導体装置。
【0395】
[A12]前記単位セルは、平面視において四角形状に形成されている、A1~A11のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0396】
[A13]前記単位セルは、平面視において長方形状に形成されている、A1~A12のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0397】
[A14]前記単位セルは、互いに交差する方向に沿って延びる第1辺および第2辺を有し、前記第1辺の長さに対する前記第2辺の長さの比で定義される前記単位セルのアスペクト比が、1以上4以下である、A1~A13のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0398】
[A15]前記単位セルの平面面積に対する前記ダイオード領域の平面面積の比が、0.005以上0.01以下である、A1~A14のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0399】
[A16]前記半導体層は、半導体基板、および、前記半導体基板の上に形成されたエピタキシャル層を含み、前記半導体層の前記第1主面は、前記エピタキシャル層により形成されており、前記半導体層の前記第2主面は、前記半導体基板により形成されている、A1~A15のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0400】
[A17]前記エピタキシャル層は、5μm以上の厚さを有している、A16に記載の半導体装置。
【0401】
[A18]前記エピタキシャル層は、20μm以上の厚さを有している、A16またはA17に記載の半導体装置。
【0402】
[A19]前記半導体層には、デバイス形成領域、および、前記デバイス形成領域の外側の領域である外側領域が設定されており、前記単位セルは、前記デバイス形成領域に形成されており、前記半導体層の平面面積に対する前記デバイス形成領域の平面面積の比が、70%以上である、A1~A18のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0403】
[A20]前記半導体層の前記第2主面を被覆し、前記半導体層との間でオーミック接合を形成する第2主面電極をさらに含む、A1~A19のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0404】
[B1]一方側の第1主面および他方側の第2主面を有する半導体層と、前記半導体層の前記第1主面の表層部に形成された第1導電型のダイオード領域、前記半導体層の前記第1主面の表層部において前記ダイオード領域の周縁に沿って形成された第2導電型のウェル領域、および、前記ウェル領域の表層部に形成された第1導電型領域を含む単位セルと、ゲート絶縁層を挟んで前記ウェル領域および前記第1導電型領域と対向し、前記第1導電型領域の上に位置する側壁を有するゲート電極層と、前記ゲート電極層を被覆する絶縁層と、前記半導体層の前記第1主面の上において前記ダイオード領域および前記第1導電型領域に電気的に接続された第1主面電極であって、前記ダイオード領域との間でショットキー接合を形成する前記第1主面電極と、を含み、前記半導体層の前記第1主面は、前記ゲート電極層の側方に位置する領域において前記第1導電型領域の少なくとも一部を露出させるように前記第2主面側に向けて窪んだリセス部を含み、前記絶縁層は、前記ゲート電極層の前記側壁から前記リセス部に沿って延びるように前記リセス部を被覆する第1部分、および、前記ゲート電極層の前記側壁に沿って延びるように前記ゲート電極層の前記側壁を被覆する第2部分を含み、前記半導体層の前記第1主面に平行な平行方向に沿う前記第1部分の厚さは、前記平行方向に沿う前記第2部分の厚さよりも大きい、半導体装置。
【0405】
[B2]前記ウェル領域は、前記ダイオード領域との間でpn接合部を形成しており、前記単位セルは、前記ウェル領域および前記ダイオード領域の間に形成された前記pn接合部を含むJBS(Junction Barrier Schottky)構造を有している、B1に記載の半導体装置。
【0406】
[B3]前記ウェル領域は、平面視において前記ダイオード領域を取り囲んでいる、B1またはB2に記載の半導体装置。
【0407】
[B4]前記単位セルは、前記ウェル領域の表層部において前記ダイオード領域および前記第1導電型領域の間の領域に形成され、前記ウェル領域の第2導電型不純物濃度よりも高い第2導電型不純物濃度を有する第2導電型のコンタクト領域を含む、B1~B3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0408】
[B5]前記コンタクト領域は、前記ダイオード領域との間でpn接合部を形成しており、前記単位セルは、前記コンタクト領域および前記ダイオード領域の間に形成された前記pn接合部を含むJBS(Junction Barrier Schottky)構造を有している、B4に記載の半導体装置。
【0409】
[B6]前記単位セルが、前記半導体層の前記第1主面の表層部に複数形成されており、前記ゲート電極層は、各前記単位セルの前記ウェル領域の一部に対向している、B1~B5のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0410】
[B7]前記複数の単位セルは、任意の第1方向および前記第1方向に交差する第2方向に沿って間隔を空けて配列されている、B6に記載の半導体装置。
【0411】
[B8]前記複数の単位セルは、行列状に配列されている、B7に記載の半導体装置。
【0412】
[B9]前記複数の単位セルは、千鳥状に配列されている、B7に記載の半導体装置。
【0413】
[B10]前記複数の単位セルは、任意の一方方向に互いに隣接して配列されることにより、一つのライン状セルを形成している、B6に記載の半導体装置。
【0414】
[B11]前記ライン状セルが、前記一方方向に交差する交差方向に沿って間隔を空けて複数配列されている、B10に記載の半導体装置。
【0415】
[B12]前記単位セルは、平面視において四角形状に形成されている、B1~B11のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0416】
[B13]前記単位セルは、平面視において長方形状に形成されている、B1~B12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【0417】
[B14]前記単位セルは、互いに交差する方向に沿って延びる第1辺および第2辺を有し、前記第1辺の長さに対する前記第2辺の長さの比で定義される前記単位セルのアスペクト比が、1以上4以下である、B1~B13のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0418】
[B15]前記単位セルの平面面積に対する前記ダイオード領域の平面面積の比が、0.005以上0.01以下である、B1~B14のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0419】
[B16]前記半導体層は、半導体基板、および、前記半導体基板の上に形成されたエピタキシャル層を含み、前記半導体層の前記第1主面は、前記エピタキシャル層により形成されており、前記半導体層の前記第2主面は、前記半導体基板により形成されている、B1~B15のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0420】
[B17]前記エピタキシャル層は、5μm以上の厚さを有している、B16に記載の半導体装置。
【0421】
[B18]前記エピタキシャル層は、20μm以上の厚さを有している、B16またはB17に記載の半導体装置。
【0422】
[B19]前記半導体層には、デバイス形成領域、および、前記デバイス形成領域の外側の領域である外側領域が設定されており、前記単位セルは、前記デバイス形成領域に形成されており、前記半導体層の平面面積に対する前記デバイス形成領域の平面面積の比が、70%以上である、B1~B18のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0423】
[B20]前記半導体層の前記第2主面を被覆し、前記半導体層との間でオーミック接合を形成する第2主面電極をさらに含む、B1~B19のいずれか一つに記載の半導体装置。
【符号の説明】
【0424】
1 半導体装置
2 半導体層
3 半導体層の第1主面
4 半導体層の第2主面
6 デバイス形成領域
7 外側領域
8 SBD
9 MISFET
11 ソース電極(主面電極)
15 単位セル
21 n型半導体基板
22 n型エピタキシャル層
24 n型ダイオード領域
25 p型ウェル領域
26 n型ソース領域(第1導電型領域)
27 p型コンタクト領域
32 ゲート絶縁層
33 ゲート電極層
51 半導体装置
52 半導体装置
60 ライン状セル
61 半導体装置
121 半導体装置
131 半導体装置
141 半導体装置
151 半導体装置
161 半導体装置
L1 単位セルの長さ
L2 単位セルの長さ
SE 半導体層の第1主面の平面面積
SF デバイス形成領域の平面面積
SC 単位セルの平面面積
SD n型ダイオード領域の平面面積
図1
図2
図3
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図5
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