(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】椅子式マッサージ機
(51)【国際特許分類】
A61H 15/00 20060101AFI20231221BHJP
A61H 7/00 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
A61H15/00 350F
A61H15/00 350C
A61H7/00 323G
A61H7/00 323K
A61H7/00 322B
(21)【出願番号】P 2022153547
(22)【出願日】2022-09-27
(62)【分割の表示】P 2021064210の分割
【原出願日】2014-07-17
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000136491
【氏名又は名称】株式会社フジ医療器
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水口 隆司
(72)【発明者】
【氏名】大出 健太郎
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-041383(JP,A)
【文献】特開2010-063847(JP,A)
【文献】特開2007-007208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 7/00
A61H 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施療者の尻及び大腿を持ち上げるように膨張する座エアバッグを有する座部と、
前記座部の後側に枢支され、
連動機構により前記座部と連結される傾倒可能な背凭れ部と、
前記座部の前側に枢支され、被施療者の脚を載置する脚載部と、
被施療者の少なくとも背を施療する施療子を含み、かつ、前記背凭れ部に凭れた被施療者に向かって前記施療子を突出させる施療部と、
前記背凭れ部、前記脚載部および前記施療部のそれぞれを制御する制御部と、
を備え、
前記座部は、前記背凭れ部のリクライニング動作に連動して前後方向に移動する前記連動機構に連結され、
前記背凭れ部は、被施療者の両肩を保持する肩保持部を有し、
前記脚載部は、
被施療者の脚を保持する保持手段と、
被施療者の脚を動かす伸長手段と、
を含み、
前記伸長手段は、
前記脚載部を、前記座部に対して水平姿勢から垂直姿勢まで、または前記垂直姿勢から前記水平姿勢まで上下に回動させる回動機構と、
前記脚載部を前記座部に対して伸長および収縮させる伸縮機構と、
を含み、
前記制御部は、
被施療者の脚を保持するように前記保持手段を制御し、その後、前記施療子を突出させるように前記施療部を制御するとともに、前記脚載部を前記水平姿勢で前記座部に対して伸長させるように前記伸縮機構を制御するとともに、被施療者の両肩を保持するように前記肩保持部を制御することにより、
前記施療子が当接する被施療者の腰部を支点として、被施療者の上半身が前記背凭れ部とは反対側に押し出されて反らされるとともに、同時に、被施療者の脚が前記水平姿勢に伸ばされ
、
その後、前記脚載部を下方に回動させるとともに前記背凭れ部を後方に傾倒させるように前記回動機構及び前記背凭れ部を制御することにより、
被施療者の上半身が反らされることで上半身部位を集中的に施療しながら、被施療者の身体全体が反らされる全身ストレッチが可能
であって、
前記背凭れ部の傾倒に連動して、前記座部が前後方向に移動する椅子式マッサージ機。
【請求項2】
前記背凭れ部は、
前記施療部を前記背凭れ部の長手方向に移動させる昇降機構を含み、
前記制御部は、さらに、前記昇降機構を制御し、
前記制御部は、
前記施療子を突出させた状態で、前記施療部を予め定めたマッサージ範囲内において上方に移動させるよう前記昇降機構を制御する、請求項1に記載の椅子式マッサージ機。
【請求項3】
前記背凭れ部は、
前記施療部を前記背凭れ部の長手方向に移動させる昇降機構を含み、
前記制御部は、さらに、前記昇降機構を制御し、
前記制御部は、
前記施療子を間欠的に突出させながら、前記施療部を予め定めたマッサージ範囲内において上方に移動させるよう前記昇降機構を制御する、請求項1に記載の椅子式マッサージ機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座部および背凭れ部を備える椅子式マッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2004-041383号公報(特許文献1)は、椅子型のマッサージ機を開示している。このマッサージ機は、背もたれ部に揉み玉のマッサージユニットを備え、座部の前側に足マッサージ用のエアセルを備えた足載部を連接する。エアセルに給気して膨張させ、足をホールドしている間に足載部を降下させて、足のホールド状態を解除した後に足載部を上昇させるように制御する。
【0003】
特開2003-210270号公報(特許文献2)は、マッサージ椅子の背もたれ部に肩、背中部および腰部をマッサージするためのエアバッグを備え、また足を載せる足載せ台を備える。足載せ台は下脚をマッサージするエアバッグを含み、これを用いて下脚を挟んで拘束した状態で、足載せ台を上下方向に回動させつつ背もたれ部を倒すように制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-041383号公報
【文献】特開2003-210270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のマッサージ機は、足をホールドしている間に足載部を降下させて、足のホールド状態を解除した後に足載部を上昇させることで、足伸ばし効果を生起させている。しかしながら、特許文献1には、足載部の動作に連動させて、揉み玉を備えたマッサージユニットを同時に動作させることが示されていない。すなわち、特許文献1には、足伸ばし効果による下半身ストレッチとともに、背凭れ部に備えられた揉み玉が当接する被施療者の部位を施療しながら、上半身にもストレッチを行わせるという動作が示されていない。このため、特許文献1のマッサージ機では、上半身部位を集中的に施療しながら、被施療者に全身ストレッチを受けさせることができなかった。
【0006】
特許文献2のマッサージ機は、足載せ台を上下方向に回動させつつ、背もたれ部を倒すことでストレッチ効果を得ている。しかしながら、特許文献2には、足載せ台の動きに連動させて、背もたれ部に備えられた各エアバッグを動作させることにより、被施療者の上半身にもストレッチを行わせるという動作は示されていない。このため、特許文献1のマッサージ機では、上半身部位を集中的に施療しながら、被施療者に全身ストレッチを受けさせることができなかった。
【0007】
本発明は、上半身部位を集中的に施療しつつ、全身ストレッチが可能な椅子式マッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態による椅子式マッサージ機は、座部と、前記座部の後側に枢支され、傾倒可能な背凭れ部と、前記座部の前側に枢支され、被施療者の脚を載置する脚載部と、被施療者の少なくとも背を施療する施療子を含み、かつ、前記背凭れ部に凭れた被施療者に向かって前記施療子を突出させる施療部と、前記背凭れ部、前記脚載部および前記施療部のそれぞれを制御する制御部と、を備え、前記背凭れ部は、被施療者の両肩を保持する肩保持部を有し、前記脚載部は、被施療者の脚を保持する保持手段と、被施療者の脚を動かす伸長手段と、を含み、前記伸長手段は、前記脚載部を、前記座部に対して水平姿勢から垂直姿勢まで、または前記垂直姿勢から前記水平姿勢まで上下に回動させる回動機構と、前記脚載部を前記座部に対して伸長および収縮させる伸縮機構と、を含み、前記制御部は、被施療者の脚を保持するように前記保持手段を制御し、その後、前記施療子を突出させるように前記施療部を制御するとともに、前記脚載部を前記水平姿勢で前記座部に対して伸長させるように前記伸縮機構を制御するとともに、被施療者の両肩を保持するように前記肩保持部を制御することにより、前記施療子が当接する被施療者の腰部を支点として、被施療者の上半身が前記背凭れ部とは反対側に押し出されて反らされるとともに、同時に、被施療者の脚が前記水平姿勢に伸ばされることで上半身部位を集中的に施療しながら、被施療者の身体全体が反らされる全身ストレッチが可能である。
【0009】
好ましくは、前記背凭れ部は、前記施療部を前記背凭れ部の長手方向に移動させる昇降機構を含み、前記制御部は、さらに、前記昇降機構を制御し、前記制御部は、前記施療子を突出させた状態で、前記施療部を予め定めたマッサージ範囲内において上方に移動させるよう前記昇降機構を制御する
【0010】
好ましくは、前記背凭れ部は、前記施療部を前記背凭れ部の長手方向に移動させる昇降機構を含み、前記制御部は、さらに、前記昇降機構を制御し、前記制御部は、前記施療子を間欠的に突出させながら、前記施療部を予め定めたマッサージ範囲内において上方に移動させるよう前記昇降機構を制御する。
【0011】
この発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態による椅子式マッサージ機を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示される椅子式マッサージ機の制御ユニットと周辺部を関連付けて示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態による制御部の機能構成を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態による操作パネルの表示部を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態による制御フローチャートである。
【
図6】第1実施例(参考例)に係るストレッチモードのタイムチャートを示す図である。
【
図7】第1実施例(参考例)に係る椅子式マッサージ機の各部の動作を模式的に示す図である。
【
図8】第2実施例に係るストレッチモードのタイムチャートを示す図である。
【
図9】第2実施例に係る椅子式マッサージ機の各部の動作を模式的に示す図である。
【
図10】第3実施例に係るストレッチモードのタイムチャートを示す図である。
【
図11】第3実施例に係る椅子式マッサージ機の各部の動作を模式的に示す図である。
【
図12】変形例1に係るストレッチモードのタイムチャートを示す図である。
【
図13】変形例1に係る椅子式マッサージ機の各部の動作を模式的に示す図である。
【
図14】変形例2に係るストレッチモードのタイムチャートを示す図である。
【
図15】変形例2に係るマッサージ動作Aを模式的に示す図である。
【
図16】変形例2に係るマッサージ動作Bを模式的に示す図である。
【
図17】変形例3に係るストレッチモードのタイムチャートを示す図である。
【
図18】変形例3に係る椅子式マッサージ機の各部の動作を模式的に示す図である。
【
図19】本発明の他の実施形態による椅子式マッサージ機を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。この明細書では、“施療”とは人体に対する治療ではなく、人体に対して“マッサージ”のように外部から力を作用させることを言う。また、本実施の形態では、“脚”とは、下肢のうち膝から下に延びた部分に相当する。この下に延びた部分は、くるぶしから先にのびた足(足の甲および指先)を含む。
【0014】
[椅子式マッサージ機11]
図1を参照して、椅子式マッサージ機11は、座部2と、背凭れ部3と、施療部4と、脚載部5と、肩保持部6と、制御部91と、を備える。
【0015】
以下の説明において、前後方向とは、被施療者が座部2に着座したとき、その被施療者から見た場合の前後方向に相当する。上下方向とは、被施療者が座部2に着座したとき、その被施療者から見た場合の上下方向に相当する。左右方向とは、被施療者が座部2に着座したとき、その被施療者から見た場合の左右方向に相当する。
【0016】
また、垂直姿勢とは、上下方向であって、かつ、着座した被施療者の脚を垂らした状態にする姿勢に相当する。垂直姿勢は、垂直の状態のほか、略垂直の状態をも含む。また、水平姿勢とは、前後方向であって、かつ、着座した被施療者の脚を水平に伸ばした状態にする姿勢に相当する。水平姿勢は、水平の状態のほか、略水平の状態をも含む。
【0017】
座部2は、被施療者を着座させるためのものである。座部2は、複数の座エアバッグ21を備える。複数の座エアバッグ21は、着座した被施療者の大腿部の裏側に対応する位置に設けられる。より具体的には、複数の座エアバッグ21は、大腿部上部に対応する2枚のエアバッグ21a及び21bと、大腿部下部に対応する1枚のエアバッグ21cと、を含む。エアバッグ21a及び21bの各々は、座部2の後側に配置され、左右方向にそれぞれ振り分けて配置される。エアバッグ21cは、座部2の前側に配置される。
【0018】
背凭れ部3は、座部2の後側に枢支される。背凭れ部3は、座部2の後側に傾倒してリクライニング可能となっている。より具体的には、椅子式マッサージ機11に内蔵されるリクライニング用伸縮機構18a(
図2参照)により、背凭れ部3が座部2の後側にリクライニングする。
【0019】
背凭れ部3は、上下方向に延びるガイドレール32を有する。ガイドレール32は、背凭れ部3の長手方向に施療部4を移動させる。
【0020】
施療部4は、被施療者の少なくとも背を施療する左右一対の揉み玉41(施療子に相当)を含み、かつ、背凭れ部3に凭れた被施療者に向かって左右一対の揉み玉41を突出させる。施療部4の詳細については後述する。
【0021】
脚載部5は、被施療者の脚を載置する。脚載部5は、左右一対の溝部51を有する。左右一対の溝部51は、座部2に着座した被施療者のひざから下側の両脚を収める大きさに形成される。
【0022】
脚載部5は、複数の脚エアバッグ52(保持手段に相当)と、伸長機構53(伸長手段に相当)と、を含む。なお、伸長機構53の詳細については後述する。
【0023】
複数の脚エアバッグ52は、被施療者の脚を保持する保持手段としての機能を有する。複数の脚エアバッグ52は、脚の脛部分の左右を挟むように膨張して、脚にマッサージを行なう。複数の脚エアバッグ52は、少なくともエアバッグ52a~52dを有する。エアバッグ52a~52dの各々は、左右一対の溝部51の内側面にそれぞれ配設される。
【0024】
肩保持部6は、背凭れ部3の両側に設けられる。より具体的には、肩保持部6は、背凭れ部3に凭れた被施療者の肩に対向する位置に設けられる。肩保持部6は、隆起部61と、肩エアバッグ62と、を備える。
【0025】
隆起部61は、背凭れ部3の背凭れ面から前方に隆起した形状を有する。隆起部61は、背凭れ部3の両側に設けられる。肩エアバッグ62は、隆起部61に配設される。肩エアバッグ62は、後述するエア分配部94A(
図2参照)からの給気を受けて膨張する。これにより、被施療者の両肩は、左右の肩エアバッグ62から挟み付けられるようにして空圧施療される。隆起部61及び肩エアバッグ62は、背凭れ部3の長手方向に沿って長く形成されるのが好ましい。
【0026】
肩エアバッグ62は、より好ましくは、複数枚のエアバッグを重ねて形成される。これにより、被施療者に対する両肩への保持力を高め、かつ、肩エアバッグ62による空圧施療の効果を高めることができる。
【0027】
制御部91は、椅子式マッサージ機11の動作を制御する。より具体的には、制御部91は、予め内蔵されるプログラムに従って、座部2、背凭れ部3、施療部4、脚載部5、及び肩保持部6を含む各部の動作を制御する。
【0028】
ここで、上述した各エアバッグは、互いに独立して制御される。また、各エアバッグに関し、可撓性中空のエア管の一方端が上述した各エアバッグに接続され、各エア管の他方端が給排気部に相当するエア分配部94A(
図2参照)に接続される。各エアバッグは、エア管を介して、給気により膨張し、また排気により収縮する。
【0029】
[制御ユニット]
図2は、椅子式マッサージ機11の制御ユニット9と周辺部を関連付けて示す図である。制御ユニット9は、制御部91と、操作パネル92と、エア生成部93と、分配器94と、を備える。
【0030】
制御部91は、マイクロコンビュータなどで構成される。制御部91は、CPU(Central Processing Unit)91Aと、タイマ91Bと、を含む。制御部91は、操作パネル92、エア生成部93、分配器94、記憶部95にそれぞれ接続される。制御部91は、各エアバッグ、施療部4、伸長機構53、およびリクライニング用伸縮機構18aを制御する。
【0031】
操作パネル92は、スイッチ部92Aと、表示部92B(
図4参照)と、を含む。スイッチ部92Aは、被施療者が指示を入力するために操作される。表示部92Bは、各種情報を表示するための液晶画面などからなる。
【0032】
エア生成部93は、エアを送出するためのポンプ93Aと、ポンプ93Aを駆動するモータ(図示せず)を含む。
【0033】
分配器94は、エア生成部93からのエアを各エアバッグに分配出力する。エア生成部93および分配器94は、制御部91によって制御され、各エアバッグを独立して膨張/収縮させる。被施療者の各部位は、各エアバッグの膨張により空圧施療される。分配器94は、エア分配部94Aと、信号分配部94Bと、を含む。
【0034】
エア分配部94Aは、各エアバッグのエア管に接続された図示しない電磁弁を、制御部91からの制御信号に従い独立して開閉制御する。これにより、各エアバッグが独立して膨張または収縮するように、エアの供給/排気が行なわれる。
【0035】
信号分配部94Bは、図示しないA/D(Analog/digital)変換部を用いて、制御部91と椅子式マッサージ機11の各部(リクライニング用伸縮機構18a、マッサージ機構42、圧力センサ43、および伸長機構53など)との信号の入出力を制御する。
【0036】
記憶部95は、プログラムおよびデータを記憶する。記憶部95は、揮発性および不揮発性のROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含んで構成される。記憶部95に記憶されるプログラムは、椅子式マッサージ機11を動作させるための施療プログラムを含む。記憶部95に記憶されるプログラムは、制御部91により、操作パネル92から受け付けた操作内容に従って実行される。
【0037】
[施療部4]
次に、
図2を参照して、施療部4は、左右一対の揉み玉41と、マッサージ機構42と、圧力センサ43と、を含む。
【0038】
マッサージ機構42は、揉み機構42aと、叩き機構42bと、突出機構42cと、昇降機構42dと、を含む。
【0039】
揉み機構42aは、ギアおよびモータを有する。揉み機構42aは、制御部91により制御され、左右一対の揉み玉41に揉み動作を行なわせる。叩き機構42bは、ギアおよびモータを有する。叩き機構42bは、制御部91により制御され、左右一対の揉み玉41に叩き動作を行なわせる。
【0040】
突出機構42cは、ギアおよびモータを有する。突出機構42cは、制御部91により制御され、背凭れ部3に凭れた被施療者に向かって左右一対の揉み玉41を突出させる。これにより、被施療者の背を含む上半身に対して、左右一対の揉み玉41の当接度合(施療強度)が適宜調整される。また、突出機構42cが左右一対の揉み玉41を突出させることにより、被施療者の上半身の各部に対して指圧施療を与えることができる。
【0041】
昇降機構42dは、ギアおよびモータを有する。昇降機構42dは、制御部91により制御され、背凭れ部3内で施療部4を移動させる。より具体的には、昇降機構42dは、施療部4をガイドレール32に沿って上下方向に移動させる。
【0042】
また、突出機構42c及び昇降機構42dは、制御部91により同時に制御されることにより、左右一対の揉み玉41に予め定めたマッサージ動作を行なわせる。なお、予め定めたマッサージ動作については後述する。
【0043】
圧力センサ43は、左右一対の揉み玉41に加わる圧力を検出する。制御部91は、この圧力センサ43の検出結果に基づいて、被施療者の背筋ラインを特定する。
【0044】
背筋ラインの特定は、以下のように行なわれる。まず、CPU91Aは、昇降機構42dを制御し、ガイドレール32に沿って、施療部4を背凭れ部3の上方に移動させる。CPU91Aは、圧力センサ43により、上方に移動中の揉み玉41にかかる圧力を検出する。CPU91Aは、圧力センサ43により検出される圧力値と、予め定められた圧力値との比較を行なう。この比較による結果に基づき、被施療者の背筋ラインが特定される。
【0045】
[伸長機構53]
図2を参照して、脚載部5の伸長機構53は、回動機構53aと、伸縮機構53bと、を含む。
【0046】
回動機構53aは、モータ及びギアを有する。回動機構53aは、垂直姿勢から水平姿勢まで、あるいは水平姿勢から垂直姿勢まで、脚載部5を上下方向に回動させる。また、回動機構53aは、脚載部5を所定の角度まで回動させ、その角度による傾斜状態で脚載部5を維持させることもできる。
【0047】
伸縮機構53bは、モータ及びギアを有する。伸縮機構53bは、脚載部5を座部2に対して伸長及び収縮させる。この伸縮機構53bにより、被施療者の脚の長さに合わせて、座部2に対する脚載部5の位置を変えることができる。
【0048】
[制御部91の機能構成]
図3を参照して、制御部91は、後述する第1実施例(参考例)の第1モードによるストレッチ制御を実施するための第1制御部911、後述する第2実施例の第2モードによるストレッチ制御を実施するための第2制御部912、および後述する第3実施例の第3モードによるストレッチ制御を実施するための第3制御部913を有する。第1制御部911、第2制御部912および第3制御部913は、記憶部95に予め格納されたプログラム、または当該プログラムと回路の組み合せに相当する。CPU91Aが、当該プログラムを記憶部95から読出し実行することにより、第1制御部911、第2制御部912および第3制御部913によるストレッチ制御が実現される。
【0049】
[メニュー画面]
図4を参照して、操作パネル92の表示部92Bは、マッサージ内容のメニュー画面を表示する。マッサージ内容のメニューは、揉み玉41によるストレッチ動作を含む複数のストレッチモードを有する。これらのストレッチモードは、後述する第1実施例(参考例)の第1モード、第2実施例の第2モード、および、第3実施例の第3モードを含む。ストレッチモードの各々は、施療部位を特定したストレッチが主となっている。このストレッチは、施療部位ごとに、“首すじストレッチ”、“背ストレッチ”、および“腰ストレッチ”を含む。
【0050】
実施の形態に係るメニュー画面は複数メニュー画面から構成される。被施療者は、スイッチ部92A(
図2参照)を操作してメニュー画面を切替えることができる。
図4のメニュー画面は、施療部位を選択するためのメニューを表示する。被施療者は、当該メニュー画面の“首すじストレッチ”、“背ストレッチ”、および“腰ストレッチ”のいずれかを選択することにより、“首すじ”、“背”および“腰”のいずれかを施療部位として選択することができる。また、他のメニュー画面(図示せず)は、後述の第1実施例(参考例)の第1モード、第2実施例の第2モード、および、第3実施例の第3モードを含む複数のストレッチモードから所望のストレッチモードを選択するための画面を含む。
【0051】
被施療者は、椅子式マッサージ機11に着座し、操作パネル92を操作することにより所望の施療部位とストレッチモードの種類とを選択する。より具体的には、被施療者は、表示部92Bのメニュー画面から所望する施療部位を選択し、次に、他のメニュー画面に切替えてストレッチモード(第1~第3モード)を選択する。その後、スイッチ部92A(
図2参照)のスタートボタンを操作する。これにより、選択した施療部位について、選択したストレッチモードによるマッサージが実施される。
【0052】
なお、椅子式マッサージ機11によるマッサージの実施に際して、各エアバッグは、予め完全に排気されている。また、マッサージの実施前において、背凭れ部3は起立し、かつ、脚載部5は垂直姿勢となっている。
【0053】
[フローチャート]
図5は、施療部位およびストレッチモードが選択された場合における制御フローチャートである。CPU91Aは、記憶部95に記憶されるプログラムを読み出し、
図5に示す制御フローチャートを実行する。
【0054】
以下、
図5を参照して、
図4に示すメニュー画面から“腰ストレッチ”が選択された場合、すなわち施療部位として“腰”が選択された場合を説明する。なお、
図5に示す制御フローチャートの実行前において、脚載部5は、垂直状態に保持されているものとする。
【0055】
CPU91Aは、操作パネル92の操作内容を受け付け、被施療者により選択されたストレッチモードの種類を判定する(ステップS1)。つまり、CPU91Aは、操作内容に基づき、選択された施療部位(すなわち、“腰”)および第1~第3モードのうちから選択されたストレッチモードを判定する。その後、CPU91Aは、脚載部5を垂直状態から水平姿勢まで上方に回動させる(ステップS3)。以下、脚載部5の水平状態を「ストレッチモード初期状態」とも称する。ストレッチモード初期状態において、揉み玉41は、背凭れ部3内における所定の初期位置にセットされる。
【0056】
その後、CPU91Aは、昇降機構42dを制御して、判定したストレッチモードにより特定される部位まで施療部4を移動させる(ステップS5)。本フローチャートでは“腰ストレッチ”が選択されているため、施療部4は腰部まで移動する。
【0057】
ここで、腰部までの施療部4の移動は、以下のように行なわれる。すなわち、CPU91Aは、上述した圧力センサ43により特定した被施療者における背筋ラインの情報と予め定めた演算式から、被施療者の首すじ、肩、肩甲骨、腰などに対応した位置を特定する。この特定により、判定したストレッチモードの施療部位(腰)に対応するガイドレール32上の位置まで施療部4を移動させる。なお、各部位の検出方法は、圧力センサ43を用いた方法に限定されない。例えば、被施療者が、操作パネル92から手動で入力した所望部位の位置情報から、施療部位の位置(所望部位に対応したガイドレール32上の位置)を判定するようにしてもよい。
【0058】
次に、CPU91Aは、エア生成部93およびエア分配部94Aを制御し、各部のエアバッグに給気して膨張させる(ステップS7、ステップS9)。ポンプ93Aのエア供給速度は、一定であることが好ましい。各エアバッグにエア供給を開始後、CPU91Aは、タイマ91Bにより予め定めた時間が経過したと判定したとき(ステップS9でYES)、エア分配部94Aを介して、各エアバッグの電磁弁を“開”から“閉”に切り替える。エアバッグの膨張完了により、身体の保持完了を検出する。
【0059】
一方、予め定めた時間が未だ経過していないと判定したときは(ステップS9でNO)、ステップS7に戻り、エア供給などの以降の処理を繰返す。ステップS7とS9の処理後、被施療者の脚は、ストレッチモード初期状態において、膨張した脚エアバッグ52により固定的に保持される。
【0060】
その後、CPU91Aは、ステップS1で判定したストレッチモードに従うストレッチ制御を実行する(ステップS11)。具体的には、第1モードが選択された場合には、第1制御部911は、後述する第1実施例(参考例)の制御シーケンスに従うストレッチ制御を実行する。また、第2モードが選択された場合には、第2制御部912は、後述する第2実施例の制御シーケンスに従うストレッチ制御を実行する。また、第3モードが選択された場合には、第3制御部913は後述する第3実施例の制御シーケンスに従うストレッチ制御を実行する。ステップS11が終了すると、CPU91Aは、椅子式マッサージ機11の姿勢を予め定めた姿勢(例えば
図1の垂直姿勢)に戻す。
【0061】
[ストレッチ制御]
上述の各ストレッチモードにおけるストレッチ制御(
図5のステップS11)に関して、第1実施例(参考例)、第2実施例、および第3実施例ならびに変形例1~3を例示する。
【0062】
【0063】
また、
図7、
図9、
図11、
図13、及び
図18において、ハッチングで示される部分は、脚エアバッグ52及び肩エアバッグ62が給気された膨張状態を示す。黒塗りの部分は、背凭れ部3の背凭れ面から揉み玉41が突出した状態を示す。
【0064】
[第1実施例(参考例)]
図6及び
図7を参照して、第1実施例(参考例)を説明する。第1実施例(参考例)は本願発明の特許請求の範囲から外れるものであるが、後述する第2実施例および第3実施例との比較のために第1実施例(参考例)を説明する。第1実施例(参考例)は、被施療者が第1モードを選択した場合に、第1制御部911により実行されるストレッチ制御を示す。
図6では、脚載部5の脚エアバッグ52、揉み玉41、及び脚載部5のそれぞれに対応付けて、それらの動作又は制御のシーケンスが時間軸tに示す時間経過に伴って模式的に示されている。
【0065】
第1制御部911は、被施療者の脚を保持するように脚エアバッグ52を膨張させると、その後、第1制御部911は、揉み玉41を突出させるように突出機構42cを制御するとともに、脚載部5を下方に回動させるように回動機構53aを制御する。ここで、揉み玉41の突出と脚載部5の回動は同時に行なわれるのが好ましい。
【0066】
時間T0~T1において、第1制御部911は、エア生成部93およびエア分配部94Aを制御し、水平姿勢にある脚載部5の脚エアバッグ52に給気して膨張させる(
図7(A)→
図7(B)参照)。
【0067】
時間T1~T2において、第1制御部911は、脚エアバッグ52の膨張状態を保持する。これにより、水平姿勢の脚載部5に載せられた被施療者の脚が保持される。
【0068】
時間T2~T3において、第1制御部911は、突出機構42cと回動機構53aを制御する。より具体的には、
図7(B)及び(C)に示すように、第1制御部911は、矢印AR3の方向に揉み玉41が突出するように突出機構42cを制御するとともに、水平姿勢の脚載部5を下方(矢印AR1の方向)に回動させるように回動機構53aを制御する。第1制御部911は、
図7(C)に示すように、脚載部5が所定の傾斜角度で停止するように回動機構53aを制御する。また、時間T2~T3において、第1制御部911は、脚エアバッグ52の膨張状態を保持する。
【0069】
時間T3~T4において、第1制御部911は、揉み玉41が突出した状態を維持するように、突出機構42cを制御する。脚載部5は、垂直状態よりも上方の位置となる所定の傾斜角度で保持される。また、第1制御部911は、脚エアバッグ52の膨張状態を保持する。
【0070】
以上、第1実施例(参考例)では、揉み玉41により当接する被施療者の部位(本実施例では腰)に集中的な指圧を行ないつつ、突出した揉み玉41が当接する被施療者の部位を支点として、被施療者の上半身が背凭れ部2と反対側に押し出されて反らされるとともに、被施療者の脚(膝)が水平姿勢から屈伸させられる。このように、被施療者の背中(腰)が反らされることによって上半身がストレッチされ、かつ、脚(膝)が水平姿勢で屈伸させられることにより下半身がストレッチされる。すなわち、被施療者は、揉み玉41により腰の指圧を受けながら、身体全体が反らされるという全身ストレッチを受けることができる。
【0071】
[第2実施例]
図8及び
図9を参照して、第2実施例を説明する。第2実施例は、被施療者が第2モードを選択した場合に、第2制御部912により実行されるストレッチ制御を示す。
図8では、脚エアバッグ52、揉み玉41、及び脚載部5のそれぞれに対応付けて、それらの動作または制御のシーケンスが時間軸tに示す時間経過に伴って模式的に示されている。
【0072】
第2制御部912は、被施療者の脚を保持するように脚エアバッグ52を膨張させる。その後、第2制御部912は、揉み玉41を突出させるように突出機構42cを制御するとともに、脚載部5を座部2に対して伸長させるように伸縮機構53bを制御する。その後、脚載部5を下方に回動させるように回動機構53aを制御する。ここで、揉み玉41の突出と脚載部5の伸長は同時に実施されるのが好ましい。
【0073】
時間T0~T1において、第2制御部912は、エア生成部93およびエア分配部94Aを制御し、水平姿勢にある脚載部5の脚エアバッグ52に給気して膨張させる(
図9(A)→
図9(B)参照)。
【0074】
時間T1~T2において、第2制御部912は、脚エアバッグ52の膨張状態を保持する。これにより、水平姿勢の脚載部5に載せられた被施療者の脚が保持される。
【0075】
時間T2~T3において、第2制御部912は、突出機構42cと伸縮機構53bを制御する。より具体的には、
図9(B)及び(C)に示すように、第2制御部912は、矢印AR3の方向に揉み玉41が突出するように突出機構42cを制御するとともに、座部2に対して矢印AR2が示す方向に脚載部5を伸長させるように伸縮機構53bを制御する。また、時間T2~T3において、第2制御部912は、脚エアバッグ52の膨張状態を保持する。
【0076】
時間T3~T4において、第2制御部912は、揉み玉41が突出した状態を維持するように、突出機構42cを制御する。さらに、第2制御部912は、揉み玉41の突出状態を維持したまま、水平姿勢の脚載部5を下方(矢印AR1の方向)に回動させるように回動機構53aを制御する(
図9(C)→
図9(D)参照)。CPU91Aは、
図9(D)に示すように、脚載部5が所定の傾斜角度で停止するように回動機構53aを制御する。また、第2制御部912は、脚エアバッグ52の膨張状態を保持する。
【0077】
以上、第2実施例では、揉み玉41により当接する被施療者の部位(本実施例では腰)に集中的な指圧を行ないつつ、突出した揉み玉41が当接する被施療者の部位を支点として、被施療者の上半身が背凭れ部2と反対側に押し出されて反らされるとともに、被施療者の脚が水平姿勢で伸ばされる。さらに、被施療者の脚(膝)が水平姿勢から屈伸させられる。このように、被施療者の背中(腰)が反らされることにより上半身がストレッチされ、かつ、脚が水平姿勢で伸ばされるとともに脚(膝)が屈伸させられることにより下半身がストレッチされる。すなわち、被施療者は、揉み玉41により腰の指圧を受けながら、身体全体が反らされるという全身ストレッチを受けることができる。特に、第2実施例では、脚が水平姿勢で伸ばされた後、脚(膝)が屈伸させられるので、下半身のストレッチ効果がより高まる。
【0078】
[第3実施例]
図10及び
図11を参照して、第3実施例を説明する。第3実施例は、被施療者が第3モードを選択した場合に、第3制御部913により実行されるストレッチ制御を示す。
図10では、脚エアバッグ52、揉み玉41、及び脚載部5のそれぞれに対応付けて、それらの動作または制御のシーケンスが時間軸tに示す時間経過に伴って模式的に示されている。
【0079】
第3制御部913は、被施療者の脚を保持するように脚エアバッグ52を膨張させる。次に、第3制御部913は、脚載部5を伸長させるように伸縮機構53bを制御した後、揉み玉41を突出させるように突出機構42cを制御するとともに、脚載部5を下方に回動させるように回動機構53aを制御する。ここで、揉み玉41の突出と脚載部5の回動は同時に実施されるのが好ましい。
【0080】
時間T0~T1において、第3制御部913は、エア生成部93およびエア分配部94Aを制御し、水平姿勢にある脚載部5の脚エアバッグ52に給気して膨張させる(
図11(A)→
図11(B)参照)。
【0081】
時間T1~T2において、第3制御部913は、脚エアバッグ52の膨張状態を保持する。これにより、水平姿勢の脚載部5に載せられた被施療者の脚が保持される。
【0082】
時間T2~T3において、第3制御部913は、伸縮機構53bを制御する。より具体的には、
図11(B)及び(C)に示すように、第3制御部913は、座部2に対して矢印AR2が示す方向に脚載部5を伸長させるように伸縮機構53bを制御する。また、時間T2~T3において、第3制御部913は、脚エアバッグ52の膨張状態を保持する。
【0083】
時間T3~T4において、第3制御部913は、突出機構42cと回動機構53aを制御する。より具体的には、
図11(C)に示すように、第3制御部913は、矢印AR3の方向に揉み玉41が突出するように突出機構42cを制御するとともに、水平姿勢の脚載部5を下方(矢印AR1の方向)に回動させるように回動機構53aを制御する。第3制御部913は、
図11(D)に示すように、脚載部5が所定の傾斜角度で停止するように回動機構53aを制御する。また、時間T3~T4において、第3制御部913は、脚エアバッグ52の膨張状態を保持する。
【0084】
以上、第3実施例では、はじめに被施療者の脚が水平姿勢で伸ばされ、次に、揉み玉41により当接する被施療者の部位(本実施例では腰)に集中的な指圧を行ないつつ、突出した揉み玉41が当接する被施療者の部位を支点として、被施療者の上半身が背凭れ部2と反対側に押し出されて反らされるとともに、被施療者の脚(膝)が水平姿勢から屈伸させられる。このように、脚が水平姿勢で伸ばされることで下半身のみがストレッチされ、その後、被施療者の背中(腰)が反らされることにより上半身がストレッチされるとともに、脚(膝)が屈伸させられることにより下半身がストレッチされる。すなわち、被施療者は、揉み玉41により腰の指圧を受けながら、身体全体が反らされるという全身ストレッチを受けることができる。特に、第3実施例では、第1実施例(参考例)と比較して、最初に脚が水平姿勢で伸ばされている状態で、脚(膝)が屈伸させられるとともに揉み玉41が突出して上半身が反らされるので、被施療者の腰を中心に一気に被施療者に強いストレッチを与えることができる。
【0085】
[変形例1]
第1実施例(参考例)、第2実施例、および第3実施例に示した第1制御部911、第2制御部912および第3制御部913の制御シーケンスの変形例1として、各制御シーケンスにおける時間T4以降に、揉み玉41を突出させた状態で、予め定めたマッサージ範囲内において、施療部4を上方に移動させる動作を加えてもよい。なお、第1実施例(参考例)、第2実施例、および第3実施例の各制御シーケンスにおける時間T0~T4までの各動作は、上述のとおりであるから説明は繰返さない。以下、第1制御部911、第2制御部912および第3制御部913の変形例1に従う時間T4以降における制御を、CPU91Aによる制御として説明する。
【0086】
図12に示すように、時間T4~T5の間に、CPU91Aは、予め定めたマッサージ範囲内において、施療部4を上方に移動させるよう昇降機構42dを制御する。このとき、第1実施例(参考例)、第2実施例、および第3実施例において、CPU91Aは、時間T4の時点における椅子式マッサージ機11の各部の状態を維持する。すなわち、CPU91Aは、揉み玉41の突出状態を保持するように、突出機構42cを制御する。また、CPU91Aは、脚エアバッグ52の膨張状態を保持するように、エア生成部93及びエア分配部94Aを制御する。さらに、CPU91Aは、脚載部5が所定の傾斜角度で停止した状態を保持するように回動機構53aを制御し、脚載部5の伸長状態を保持するように伸縮機構53bを制御する。
【0087】
ここで、予め定めたマッサージ範囲は、背凭れ部3のガイドレール32に沿った範囲であって、首すじ、肩、腰の各部位に対応した範囲を含み、かつ、施療部4が移動可能な範囲で定められる。
【0088】
例えば、マッサージ動作のメニュー画面(
図4参照)で“腰ストレッチ”が選択された場合、予め定めたマッサージ範囲は、腰から上方に所定の範囲とする。ここで、
図13は、第1実施例(参考例)に変形例1を加えた場合における椅子式マッサージ機の各部の動作を示す。“腰ストレッチ”が選択された場合、
図13(C)に示すように、施療部4は、一点鎖線で示すAR5からAR6の位置まで上方(矢印AR4が示す方向)に移動する。施療部4は、
図13(D)に示すように、AR6の位置で停止する。
【0089】
この変形例1によれば、被施療者の脚が脚載部5に保持された状態で、突出した揉み玉41が所定の範囲で背凭れ部3の上方に移動することにより、被施療者の背筋が伸ばされて上半身ストレッチが促進され、かつ、予め定めたマッサージ範囲にローリングマッサージを与えることができる。その結果、上述した第1実施例(参考例)、第2実施例、および第3実施例における全身ストレッチを行ないつつ、特定の部位に集中的に施療することができる。
【0090】
なお、マッサージ動作のメニュー画面で“腰ストレッチ”が選択された場合、予め定めたマッサージ範囲は、腰から背中央又は肩までの範囲とするのが好ましい。“背ストレッチ”が選択された場合、予め定めたマッサージ範囲は、背中央から肩又は首すじまでの範囲とするのが好ましい。マッサージ動作のメニュー画面で“首すじストレッチ”が選択された場合、予め定めたマッサージ範囲は、首すじから施療部4の上限位置までの範囲とするのが好ましい。ここで、予め定めたマッサージ範囲は、被施療者が操作パネル92を操作して可変に設定できるようにしてもよい。
【0091】
[変形例2]
また、第1実施例(参考例)、第2実施例、および第3実施例に示した第1制御部911、第2制御部912および第3制御部913の制御シーケンスの変形例2として、
図14に示すように、揉み玉41を突出させた後、各制御シーケンスの時間T4以降において、予め定めたマッサージ動作を揉み玉41に行なわせるようにしてもよい。なお、第1実施例(参考例)、第2実施例、および第3実施例における時間T0~T4までの各動作は、上述のとおりであるから説明は繰返さない。以下、第1制御部911、第2制御部912および第3制御部913の変形例2に従う時間T4以降の制御を、CPU91Aによる制御として説明する。
【0092】
図14に示すように、時間T4~T5の間、CPU91Aは、第1実施例(参考例)、第2実施例、および第3実施例における時間T4の各部の状態を維持する。すなわち、CPU91Aは、脚エアバッグ52の膨張状態を保持するように、エア生成部93及びエア分配部94Aを制御する。また、CPU91Aは、脚載部5が所定の傾斜角度で停止した状態を保持するように回動機構53aを制御し、脚載部5の伸長状態を保持するように伸縮機構53bを制御する。
【0093】
この変形例2において、予め定めたマッサージ動作は、マッサージ動作Aと、マッサージ動作Bと、を含む。
【0094】
図15を参照して、マッサージ動作Aを説明する。
図15は、マッサージ動作Aにおける揉み玉41の動きを模式的に示す図である。マッサージ動作Aは、揉み玉41が突出した状態(
図7(C)、
図9(C)、
図11(D)参照)から開始される。
【0095】
図15に示すように、揉み玉41は、昇降機構42dにより矢印DR1の方向に上昇する。次に、揉み玉41は、突出機構42cにより、矢印DR2の方向に後退する。次に、揉み玉41は、昇降機構42dにより、矢印DR3の方向に下降する。最後に、揉み玉41は、突出機構42cにより、矢印DR4の方向に突出する。
【0096】
図15に示すように、揉み玉41は、DR1→DR2→DR3→DR4→DR1…という一連の動作を繰返す。ここで、矢印DR1が示す揉み玉41の移動距離は、矢印DR3が示す揉み玉41の移動距離よりも長い。このため、揉み玉41(施療部4)は、上述の一連の動作により、上方に移動しながらマッサージ動作Aを行なうことになる。
【0097】
このように、変形例2のマッサージ動作Aでは、被施療者が第1~3の実施例による全身ストレッチを受けている時に、揉み玉41を上方に移動させながら、連続的なローリング施療を行なわせることができる。
【0098】
次に、
図16を参照して、マッサージ動作Bを説明する。
図16は、マッサージ動作Bにおける揉み玉41の動きを模式的に示す図である。マッサージ動作Bは、揉み玉41が突出した状態(
図7(C)、
図9(C)、
図11(D)参照)から、揉み玉41を後退させて開始される。
【0099】
図16に示すように、揉み玉41は、昇降機構42dにより、矢印DR1の方向に上昇する。揉み玉41は、上方に移動しながら、突出機構42cにより、矢印AR3の方向に突出する動作と矢印AR3の方向と反対方向に後退する動作を繰返す。
【0100】
このように、変形例2のマッサージ動作Bでは、被施療者が第1~3実施例による全身ストレッチを受けている時に、揉み玉41を上方に移動させながら、連続的な指圧施療を行なわせることができる。
【0101】
なお、変形例2は、上述の変形例1と組み合わせて実施されてもよい。すなわち、上述の変形例1の実施前又は実施後に、変形例2のマッサージ動作A及び/又はマッサージ動作Bを揉み玉41に行なわせてもよい。
【0102】
また、変形例2では、上記マッサージ動作A又はマッサージ動作Bを揉み玉41に行なわせているときに、揉み動作や叩きの動作を適宜加えてもよい。
【0103】
[変形例3]
第1実施例(参考例)、第2実施例、および第3実施例に示した第1制御部911、第2制御部912および第3制御部913による制御シーケンスの更なる変形例として、被施療者の脚を保持するように脚エアバッグ52を膨張させるとともに、被施療者の両肩を保持するように肩エアバッグ62を膨張させるようにしてもよい。なお、
図17及び18は、代表して、第1実施例(参考例)に変形例3を適用した場合における椅子式マッサージ機の各部の動作を示すが、第2実施例または第3実施例であっても同様に変形例3を適用することができる。
【0104】
図17を参照して、時間T0~T1のときに、CPU91Aは、エア生成部93およびエア分配部94Aを制御して、水平姿勢にある脚載部5の脚エアバッグ52に給気して膨張させるとともに、肩エアバッグ62に給気して膨張させる。時間T1以降、CPU91Aは、脚エアバッグ52及び肩エアバッグ62の膨張状態を保持する(
図18(B)及び(C)参照)。
【0105】
この変形例3によれば、被施療者は、両肩が保持された状態で、全身ストレッチを受けることができる。
【0106】
なお、この変形例3は、上述の変形例1及び/又は変形例2と組み合わせて実施されてもよい。
【0107】
[その他の変形例]
上述の第1実施例(参考例)、第2実施例、および第3実施例では、
図4のメニュー画面から“腰ストレッチ”が選択された場合を説明したが、他の部位が選択された場合、すなわち、“背ストレッチ”又は“首すじストレッチ”が選択された場合でも、上述の第1実施例(参考例)、第2実施例、および第3実施例に係る制御を同様に適用することができる。
【0108】
上述の第1実施例(参考例)、第2実施例、および第3実施例の更なる変形例として、背凭れ部3を後方に傾倒させたリクライニング状態で第1実施例(参考例)、第2実施例、および第3実施例のストレッチ制御を実行してもよい。この場合であれば、背凭れ部3がリクライニングした状態で、被施療者の身体全体を水平状態に伸ばすことができ、より大きな全身ストレッチ効果を被施療者に与えることができる。
【0109】
また、上述の第1実施例(参考例)、第2実施例、および第3実施例の更なる変形例として、脚載部5の回動とともに、背凭れ部3のリクライニング動作を組み合わせてもよい。これにより、背凭れ部3のリクライニング動作によって被施療者の上半身が反らされるため、脚が伸長されることに加えて、より大きな全身ストレッチの効果を被施療者に与えることができる。なお、この変形例のみを実施した場合には、本願発明の特許請求の範囲から外れることになるが、例えば第2実施例または第3実施例に加えて、この変形例をオプションとして実施可能にした場合には、本願発明の特許請求の範囲に含まれる。
【0110】
さらに、上述の第1実施例(参考例)、第2実施例、および第3実施例の更なる変形例として、被施療者の脚を保持するように脚エアバッグ52を膨張させるとともに、被施療者の尻及び大腿を持ち上げるように座部2の座エアバッグ21を膨張させるようにしてもよい。あるいは、脚載部5の回動とともに、被施療者の尻及び大腿を持ち上げるように座部2の座エアバッグ21を膨張させるようにしてもよい。これにより、被施療者の脚がより伸長し、下半身のストレッチ効果を大きくすることができる。
【0111】
[その他の実施形態]
本発明の実施形態による椅子式マッサージ機11では、施療部4の施療子として、左右一対の揉み玉41を用いた。しかしながら、この実施形態による施療部4に限定されず、例えば、エアバッグ(施療子)を備える施療部を用いてもよい。この場合、被施療者に対して、エアバッグの膨張・収縮による空圧施療を与えることができる。
【0112】
また、本発明のその他の実施形態として、椅子式マッサージ機11は、座部2と背凭れ部3とを連結する連動機構(図示せず)を備えていてもよい。この連動機構により、座部2は、背凭れ部3のリクライニング動作に連動して、前後方向に移動することができる。
【0113】
さらに、
図19に示すように、本発明のその他の実施形態による椅子式マッサージ機12は、椅子式マッサージ機11の脚載部5に代えて、脚載部500を備える。椅子式マッサージ機12の他の構成は、椅子式マッサージ機11と同様であり、ここでは説明を繰返さない。
【0114】
脚載部500は、レッグレスト部510と、フットレスト部520と、を含む。レッグレスト部510は、左右一対の溝部511と、複数の脚エアバッグ512(保持手段)と、を有する。左右一対の溝部511は、座部2に着座した被施療者のひざ下から足首までのふくらはぎ部分を収める大きさに形成される。複数の脚エアバッグ512は、左右一対の溝部511の内側面及び底面にそれぞれ配設される。
【0115】
フットレスト部520は、左右一対の溝部521と、複数の足エアバッグ522(保持手段)と、を有する。左右一対の溝部521は、座部2に着座した被施療者の足首から足先までの両足部分を収める大きさに形成される。複数の足エアバッグ522は、左右一対の溝部521の内側面及び足裏底面にそれぞれ配設される。
【0116】
以上、椅子式マッサージ機12に着座した被施療者は、エアバッグ512及び522の膨張により、両脚のふくらはぎ部分だけでなく、足首から足先までの両足部分も含めて保持される。このため、本発明のその他の実施形態による椅子式マッサージ機12では、上述の第1実施例(参考例)、第2実施例、および第3実施例による下半身のストレッチ効果が向上し、全身ストレッチの効果をより高めることができる。
【0117】
[技術思想]
本発明の実施形態による技術思想は、以下のとおりである。椅子式マッサージ機は、座部と、座部の後側に枢支され、傾倒可能な背凭れ部と、座部の前側に枢支され、被施療者の脚を載置する脚載部と、被施療者の少なくとも背を施療する施療子を含み、かつ、背凭れ部に凭れた被施療者に向かって施療子を突出させる施療部と、脚載部および施療部のそれぞれを制御する制御部と、を備える。また、脚載部は、被施療者の脚を保持する保持手段と、被施療者の脚を動かす伸長手段と、を含む。制御部は、被施療者の脚を保持するように保持手段を制御し、その後、施療子を突出させるように施療部を制御するとともに(すなわち、制御すると同時に)、被施療者の脚を伸ばすように伸長手段を制御する。
【0118】
本発明の実施形態による椅子式マッサージ機では、施療子により集中的な施療を行ないつつ、突出した施療子が当接する被施療者の部位を支点として、被施療者の上半身が背凭れ部と反対側に押し出されて反らされるとともに、被施療者の脚が伸長する。このように、被施療者の背中が反らされることによって上半身がストレッチされ、かつ、脚が伸長することにより下半身がストレッチされる。すなわち、被施療者は、施療子により施療を受けながら、身体全体が反らされるという全身ストレッチを受けることができる。
【0119】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0120】
11,12 椅子式マッサージ機、2 座部、3 背凭れ部、4 施療部、41 揉み玉、42 マッサージ機構、42a 揉み機構、42b 叩き機構、42c 突出機構、42d 昇降機構、5 脚載部、52 脚エアバッグ、53 伸長機構、53a 回動機構、53b 伸縮機構、6 肩保持部、61 隆起部、62 肩エアバッグ、91 制御部、911 第1制御部、912 第2制御部、913 第3制御部。