(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20231221BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H01L21/30 562
H01L21/304 648G
H01L21/304 643A
(21)【出願番号】P 2022175381
(22)【出願日】2022-11-01
(62)【分割の表示】P 2018042838の分割
【原出願日】2018-03-09
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】深津 英司
(72)【発明者】
【氏名】橋本 光治
(72)【発明者】
【氏名】藤木 博幸
(72)【発明者】
【氏名】井上 正史
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-156261(JP,A)
【文献】特開2010-040921(JP,A)
【文献】特開2011-211092(JP,A)
【文献】特開2012-049153(JP,A)
【文献】特開2013-074090(JP,A)
【文献】特開2015-191895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバ内において基板を保持する基板保持部と、
前記チャンバ内において、前記基板保持部に保持された基板に処理液を供給する処理液供給部と、
前記チャンバ内の、前記基板周辺に位置する所定の対象領域の温度を測定する第1温度測定部と、
前記処理液供給部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記チャンバ内の温度環境を安定させるための処理であって、前記基板と同一形状のダミー基板
を前記基板保持部に保持させ、当該ダミー基板に対して処理液を供給することを含む第1処理を実行し、前記第1処理中または前記第1処理後に前記第1温度測定部から取得される、前記対象領域の温度情報である測定温度情報に基づいて、前記基板に対して前記処理液を供給することを含む第2処理の開始の可否を判断し、
前記対象領域は、前記チャンバの壁面、前記基板保持部の表面、前記処理液供給部の表面、前記基板保持部を包囲する環状のカップの表面、前記処理液供給部から吐出される処理液の液柱の内の一部または全部であり、
前記制御部は、
前記第2処理を開始可能と判断した場合、前記ダミー基板を前記基板保持部から搬出する処理を実行し、
前記第2処理を開始できないと判断した場合、前記基板保持部に保持された前記ダミー基板に対して前記第1処理を再度実行し、
前記第1処理中または前記第1処理後に前記第1温度測定部から取得される前記対象領域の測定温度情報に基づいて、前記第2処理の開始の可否を再度判断する、基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記制御部は、前記第2処理を開始できると判断した場合、前記ダミー基板を前記基板保持部から搬出する処理を実行した後に、前記基板を前記基板保持部に保持させ、前記基板に対して前記第2処理を実行する、基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記第1処理は、前記第2処理と同一の処理である、基板処理装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記第1処理は、前記第2処理の一部を省略した処理、または前記第2処理の一部を短縮した処理である、基板処理装置。
【請求項5】
請求項1
から請求項4までのいずれか1項に記載の基板処理装置であって、
前記制御部は、前記測定温度情報と、前記制御部内に記憶された基準温度情報とに基づいて、前記第2処理の開始の可否を判断する、基板処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項
5までのいずれか1項に記載の基板処理装置であって、
前記対象領域は、前記チャンバ内の互いに異なる役割を果たす2つ以上の部位を含む、基板処理装置。
【請求項7】
請求項1から請求項
6までのいずれか1項に記載の基板処理装置であって、
前記対象領域は、前記基板保持部の少なくとも一部を含む、基板処理装置。
【請求項8】
請求項1から請求項
7までのいずれか1項に記載の基板処理装置であって、
前記対象領域は、前記処理液供給部の少なくとも一部を含む、基板処理装置。
【請求項9】
請求項1から請求項
8までのいずれか1項に記載の基板処理装置であって、
前記基板保持部を包囲する環状のカップ
をさらに備え、
前記対象領域は前記カップの少なくとも一部を含む、基板処理装置。
【請求項10】
請求項1から請求項
9までのいずれか1項に記載の基板処理装置であって、
前記処理液供給部は、基板に向けて処理液を吐出するノズルを有し、
前記対象領域は、前記ノズルから吐出される処理液の液柱を含む、基板処理装置。
【請求項11】
請求項
10に記載の基板処理装置であって、
前記ノズルへ供給される処理液の配管内における温度を測定する第2温度測定部
をさらに備え、
前記制御部は、前記第1温度測定部から取得される前記対象領域の測定温度情報と、前記第2温度測定部から取得される測定温度情報とに基づいて、前記第2処理の開始の可否を判断する、基板処理装置。
【請求項12】
請求項1から請求項
11までのいずれか1項に記載の基板処理装置であって、
前記第1温度測定部は、サーモグラフィカメラである、基板処理装置。
【請求項13】
請求項1から請求項
11までのいずれか1項に記載の基板処理装置であって、
前記第1温度測定部は、
放射温度計と、
前記放射温度計の向きを変化させる揺動機構と、
を有する、基板処理装置。
【請求項14】
請求項1から請求項
11までのいずれか1項に記載の基板処理装置であって、
前記第1温度測定部は、前記対象領域に配置された熱電対である、基板処理装置。
【請求項15】
チャンバ内において
基板保持部に保持された基板を処理する基板処理方法であって、
a)
前記チャンバ内において前記チャンバ内の温度環境を安定させるための処理であって、前記基板と同一形状のダミー基板
を前記基板保持部に保持させ、当該ダミー基板に対して
処理液供給部から処理液を供給することを含む第1処理を実行する工程と、
b)前記第1処理中または前記第1処理後に、前記チャンバ内の、前記基板周辺に位置する所定の対象領域の温度を測定する工程と、
c)前記工程b)において取得される前記対象領域の測定温度情報に基づいて、前記基板に対して前記処理液を供給することを含む第2処理の開始の可否を判断する工程と、
d)前記工程c)において、前記第2処理を開始可能と判断した場合に、
前記ダミー基板を前記基板保持部から搬出する工程と、
e)前記工程c)において、前記第2処理を開始できないと判断した場合、前記基板保持部に保持された前記ダミー基板に対して前記第1処理を再度実行し、前記第1処理中または前記第1処理後に再度測定された前記対象領域の測定温度情報に基づいて、前記第2処理の開始の可否を再度判断する工程と、
を有し、
前記対象領域は、前記チャンバの壁面、前記基板保持部の表面、前記処理液供給部の表面、前記基板保持部を包囲する環状のカップの表面、前記処理液供給部から吐出される処理液の液柱の内の一部または全部であ
る、基板処理方法。
【請求項16】
請求項15に記載の基板処理方法であって、
前記工程c)において、前記第2処理を開始可能と判断した場合、前記ダミー基板を前記基板保持部から搬出する工程を実行した後に、前記基板を前記基板保持部に保持させ、前記基板に対して前記第2処理を実行する、基板処理方法。
【請求項17】
請求項15または請求項16に記載の基板処理方法であって、
前記第1処理は、前記第2処理と同一の処理である、基板処理方法。
【請求項18】
請求項15または請求項16に記載の基板処理方法であって、
前記第1処理は、前記第2処理の一部を省略した処理、または前記第2処理の一部を短縮した処理である、基板処理方法。
【請求項19】
請求項15から請求項18までのいずれか1項に記載の基板処理方法であって、
前記工程c)では、前記測定温度情報と、予め記憶された基準温度情報とに基づいて、前記第2処理の開始の可否を判断する、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャンバ内において基板を処理する基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェハの製造工程においては、基板に対して処理液を供給する基板処理装置が用いられる。基板処理装置は、チャンバの内部において基板を保持しつつ、当該基板に対して、フォトレジスト液、エッチング液、洗浄液、純水等の処理液を供給する。このような基板処理装置では、基板の処理品質を一定に保つために、チャンバの内部において、種々の計測がなされる。
【0003】
例えば、特許文献1の装置では、基板に対する処理液の吐出の有無を、カメラにより撮影している。また、特許文献2の装置では、基板表面の温度分布を、放射温度計により検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-316080号公報
【文献】特開平11-165114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、基板処理装置のチャンバ内において処理される基板の周囲には、基板を保持するベース、基板へ処理液を吐出するノズル、基板を包囲するカップ、チャンバの内壁面等の、種々の部材が存在する。これらの各部の表面温度は、基板の処理品質に影響を及ぼす場合がある。このため、複数の基板を順次に処理する過程で、チャンバ内の各部の表面温度が変化すると、複数の基板に対する処理品質にばらつきが生じる場合がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、チャンバ内の温度環境に起因する処理のばらつきを抑えることができる、基板処理装置および基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、チャンバと、前記チャンバ内において基板を保持する基板保持部と、前記チャンバ内において、前記基板保持部に保持された基板に処理液を供給する処理液供給部と、前記チャンバ内の、前記基板周辺に位置する所定の対象領域の温度を測定する第1温度測定部と、前記処理液供給部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記チャンバ内の温度環境を安定させるための処理であって、前記基板と同一形状のダミー基板を前記基板保持部に保持させ、当該ダミー基板に対して処理液を供給することを含む第1処理を実行し、前記第1処理中または前記第1処理後に前記第1温度測定部から取得される、前記対象領域の温度情報である測定温度情報に基づいて、前記基板に対して前記処理液を供給することを含む第2処理の開始の可否を判断し、前記対象領域は、前記チャンバの壁面、前記基板保持部の表面、前記処理液供給部の表面、前記基板保持部を包囲する環状のカップの表面、前記処理液供給部から吐出される処理液の液柱の内の一部または全部であり、前記制御部は、前記第2処理を開始可能と判断した場合、前記ダミー基板を前記基板保持部から搬出する処理を実行し、前記第2処理を開始できないと判断した場合、前記基板保持部に保持された前記ダミー基板に対して前記第1処理を再度実行し、前記第1処理中または前記第1処理後に前記第1温度測定部から取得される前記対象領域の測定温度情報に基づいて、前記第2処理の開始の可否を再度判断する。
本願の第2発明は、第1発明の基板処理装置であって、前記制御部は、前記第2処理を開始できると判断した場合、前記ダミー基板を前記基板保持部から搬出する処理を実行した後に、前記基板を前記基板保持部に保持させ、前記基板に対して前記第2処理を実行する。
本願の第3発明は、第1発明または第2発明の基板処理装置であって、前記第1処理は、前記第2処理と同一の処理である。
本願の第4発明は、第1発明または第2発明の基板処理装置であって、前記第1処理は、前記第2処理の一部を省略した処理、または前記第2処理の一部を短縮した処理である。
【0008】
本願の第5発明は、第1発明から第4発明までのいずれか1発明の基板処理装置であって、前記制御部は、前記測定温度情報と、前記制御部内に記憶された基準温度情報とに基づいて、前記第2処理の開始の可否を判断する。
【0011】
本願の第6発明は、第1発明から第5発明までのいずれか1発明の基板処理装置であって、前記対象領域は、前記チャンバ内の互いに異なる役割を果たす2つ以上の部位を含む。
【0012】
本願の第7発明は、第1発明から第6発明までのいずれか1発明の基板処理装置であって、前記対象領域は、前記基板保持部の少なくとも一部を含む。
【0013】
本願の第8発明は、第1発明から第7発明までのいずれか1発明の基板処理装置であって、前記対象領域は、前記処理液供給部の少なくとも一部を含む。
【0014】
本願の第9発明は、第1発明から第8発明までのいずれか1発明の基板処理装置であって、前記基板保持部を包囲する環状のカップをさらに備え、前記対象領域は前記カップの少なくとも一部を含む。
【0015】
本願の第10発明は、第1発明から第9発明までのいずれか1発明の基板処理装置であって、前記処理液供給部は、基板に向けて処理液を吐出するノズルを有し、前記対象領域は、前記ノズルから吐出される処理液の液柱を含む。
【0016】
本願の第11発明は、第10発明の基板処理装置であって、前記ノズルへ供給される処理液の配管内における温度を測定する第2温度測定部をさらに備え、前記制御部は、前記第1温度測定部から取得される前記対象領域の測定温度情報と、前記第2温度測定部から取得される測定温度情報とに基づいて、前記第2処理の開始の可否を判断する。
【0017】
本願の第12発明は、第1発明から第11発明までのいずれか1発明の基板処理装置であって、前記第1温度測定部は、サーモグラフィカメラである。
【0018】
本願の第13発明は、第1発明から第11発明までのいずれか1発明の基板処理装置であって、前記第1温度測定部は、放射温度計と、前記放射温度計の向きを変化させる揺動機構と、を有する。
【0019】
本願の第14発明は、第1発明から第11発明までのいずれか1発明の基板処理装置であって、前記第1温度測定部は、前記対象領域に配置された熱電対である。
【0020】
本願の第15発明は、チャンバ内において基板保持部に保持された基板を処理する基板処理方法であって、a)前記チャンバ内において前記チャンバ内の温度環境を安定させるための処理であって、前記基板と同一形状のダミー基板を前記基板保持部に保持させ、当該ダミー基板に対して処理液供給部から処理液を供給することを含む第1処理を実行する工程と、b)前記第1処理中または前記第1処理後に、前記チャンバ内の、前記基板周辺に位置する所定の対象領域の温度を測定する工程と、c)前記工程b)において取得される前記対象領域の測定温度情報に基づいて、前記基板に対して前記処理液を供給することを含む第2処理の開始の可否を判断する工程と、d)前記工程c)において、前記第2処理を開始可能と判断した場合に、前記ダミー基板を前記基板保持部から搬出する工程と、e)前記工程c)において、前記第2処理を開始できないと判断した場合、前記基板保持部に保持された前記ダミー基板に対して前記第1処理を再度実行し、前記第1処理中または前記第1処理後に再度測定された前記対象領域の測定温度情報に基づいて、前記第2処理の開始の可否を再度判断する工程と、を有し、前記対象領域は、前記チャンバの壁面、前記基板保持部の表面、前記処理液供給部の表面、前記基板保持部を包囲する環状のカップの表面、前記処理液供給部から吐出される処理液の液柱の内の一部または全部である。
本願の第16発明は、第15発明の基板処理方法であって、前記工程c)において、前記第2処理を開始可能と判断した場合、前記ダミー基板を前記基板保持部から搬出する工程を実行した後に、前記基板を前記基板保持部に保持させ、前記基板に対して前記第2処理を実行する。
本願の第17発明は、第15発明または第16発明の基板処理方法であって、前記第1処理は、前記第2処理と同一の処理である。
本願の第18発明は、第15発明または第16発明の基板処理方法であって、前記第1処理は、前記第2処理の一部を省略した処理、または前記第2処理の一部を短縮した処理である。
【0021】
本願の第19発明は、第15発明から第18発明までのいずれか1発明の基板処理方法であって、前記工程c)では、前記測定温度情報と、予め記憶された基準温度情報とに基づいて、前記第2処理の開始の可否を判断する。
【発明の効果】
【0022】
本願の第1発明~第19発明によれば、チャンバ内の対象領域の温度が安定した状態で、基板に対する第2処理を開始することができる。これにより、複数の基板に対して、第2処理を均一に行うことができる。
【0023】
また、本願の第1発明~第19発明によれば、第2処理を開始可能な状態に達していない場合、第1処理を追加で実行する。これにより、チャンバ内の温度環境を、第2処理を開始可能な状態に近付けることができる。
【0025】
特に、本願の第6発明によれば、互いに異なる役割を果たす2つ以上の部位を、温度測定の対象領域に含めることで、第2処理の開始の可否を、より精度よく判断できる。
【0026】
特に、本願の第11発明によれば、第1温度測定部から取得される測定温度情報と、第2温度測定部から取得される測定温度情報とを用いることで、第2処理の開始の可否を、より精度よく判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図4】第1ノズルヘッドに接続される給液部の一例を示した図である。
【
図5】サーモグラフィカメラによる温度測定の様子を、概念的に示した図である。
【
図6】制御部と処理ユニット内の各部との接続を示したブロック図である。
【
図7】第1実施形態に係る第1処理および第2処理の流れを示したフローチャートである。
【
図8】第2実施形態に係る第1処理および第2処理の流れを示したフローチャートである。
【
図9】変形例に係る処理ユニットの縦断面図である。
【
図10】変形例に係る処理ユニットの縦断面図である。
【
図11】変形例に係る処理ユニットの縦断面図である。
【
図12】サーモグラフィカメラおよび液温センサによる温度測定の様子を、概念的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0029】
<1.第1実施形態>
<1-1.基板処理装置の全体構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置100の平面図である。この基板処理装置100は、半導体ウェハの製造工程において、円板状の基板W(シリコン基板)の表面に処理液を供給して、基板Wの表面を処理する装置である。
図1に示すように、基板処理装置100は、インデクサ101と、複数の処理ユニット102と、主搬送ロボット103とを備えている。
【0030】
インデクサ101は、処理前の基板Wを外部から搬入するとともに、処理後の基板Wを外部へ搬出するための部位である。インデクサ101には、複数の基板Wを収容するキャリアが、複数配置される。また、インデクサ101は、図示を省略した移送ロボットを有する。移送ロボットは、インデクサ101内のキャリアと、処理ユニット102または主搬送ロボット103との間で、基板Wを移送する。なお、キャリアには、例えば、基板Wを密閉空間に収納する公知のFOUP(front opening unified pod)またはSMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッド、或いは、収納基板Wが外気と接するOC(open cassette)が用いられる。
【0031】
処理ユニット102は、基板Wを1枚ずつ処理する、いわゆる枚様式の処理部である。複数の処理ユニット102は、主搬送ロボット103の周囲に配置されている。本実施形態では、主搬送ロボット103の周囲に配置された4つの処理ユニット102が、高さ方向に3段に積層されている。すなわち、本実施形態の基板処理装置100は、全部で12台の処理ユニット102を有する。複数の基板Wは、各処理ユニット102において、並列に処理される。ただし、基板処理装置100が備える処理ユニット102の数は、12台に限定されるものではなく、例えば、24第、8台、4台、1台などであってもよい。
【0032】
主搬送ロボット103は、インデクサ101と複数の処理ユニット102との間で、基板Wを搬送するための機構である。主搬送ロボット103は、例えば、基板Wを保持するハンドと、ハンドを移動させるアームとを有する。主搬送ロボット103は、インデクサ101から処理前の基板Wを取り出して、処理ユニット102へ搬送する。また、処理ユニット102における基板Wの処理が完了すると、主搬送ロボット103は、当該処理ユニット102から処理後の基板Wを取り出して、インデクサ101へ搬送する。
【0033】
<1-2.処理ユニットの構成>
続いて、処理ユニット102の構成について説明する。以下では、基板処理装置100が有する複数の処理ユニット102のうちの1つについて説明するが、他の処理ユニット102も同等の構成を有する。
【0034】
図2は、処理ユニット102の平面図である。
図3は、処理ユニット102の縦断面図である。
図2および
図3に示すように、処理ユニット102は、チャンバ10、基板保持部20、回転機構30、処理液供給部40、処理液捕集部50、遮断板60、サーモグラフィカメラ70、および制御部80を備えている。
【0035】
チャンバ10は、基板Wを処理するための処理空間11を内包する筐体である。チャンバ10は、処理空間11の側部を取り囲む側壁12と、処理空間11の上部を覆う天板部13と、処理空間11の下部を覆う底板部14と、を有する。基板保持部20、回転機構30、処理液供給部40、処理液捕集部50、遮断板60、およびサーモグラフィカメラ70は、チャンバ10の内部に収容される。側壁12の一部には、チャンバ10内への基板Wの搬入およびチャンバ10から基板Wの搬出を行うための搬入出口と、搬入出口を開閉するシャッタとが、設けられている(いずれも図示省略)。
【0036】
図3に示すように、チャンバ10の天板部13には、ファンフィルタユニット(FFU)15が設けられている。ファンフィルタユニット15は、HEPAフィルタ等の集塵フィルタと、気流を発生させるファンとを有する。ファンフィルタユニット15を動作させると、基板処理装置100が設置されるクリーンルーム内の空気が、ファンフィルタユニット15に取り込まれ、集塵フィルタにより清浄化されて、チャンバ10内の処理空間11へ供給される。これにより、チャンバ10内の処理空間11に、清浄な空気のダウンフローが形成される。
【0037】
また、側壁12の下部の一部には、排気ダクト16が接続されている。ファンフィルタユニット15から供給された空気は、チャンバ10の内部においてダウンフローを形成した後、排気ダクト16を通ってチャンバ10の外部へ排出される。
【0038】
基板保持部20は、チャンバ10の内部において、基板Wを水平に(法線が鉛直方向を向く姿勢で)保持する機構である。
図2および
図3に示すように、基板保持部20は、円板状のスピンベース21と、複数のチャックピン22とを有する。複数のチャックピン22は、スピンベース21の上面の外周部に沿って、等角度間隔で設けられている。基板Wは、パターンが形成される被処理面を上側に向けた状態で、複数のチャックピン22に保持される。各チャックピン22は、基板Wの周縁部の下面および外周端面に接触し、スピンベース21の上面から僅かな空隙を介して上方の位置に、基板Wを支持する。
【0039】
スピンベース21の内部には、複数のチャックピン22の位置を切り替えるためのチャックピン切替機構23が設けられている。チャックピン切替機構23は、複数のチャックピン22を、基板Wを保持する保持位置と、基板Wの保持を解除する解除位置と、の間で切り替える。
【0040】
回転機構30は、基板保持部20を回転させるための機構である。回転機構30は、スピンベース21の下方に設けられたモータカバー31の内部に収容されている。
図3中に破線で示したように、回転機構30は、スピンモータ32と支持軸33とを有する。支持軸33は、鉛直方向に延び、その下端部がスピンモータ32に接続されるとともに、上端部がスピンベース21の下面の中央に固定される。スピンモータ32を駆動させると、支持軸33がその軸芯330を中心として回転する。そして、支持軸33とともに、基板保持部20および基板保持部20に保持された基板Wも、軸芯330を中心として回転する。
【0041】
処理液供給部40は、基板保持部20に保持された基板Wの上面に、処理液を供給する機構である。
図2および
図3に示すように、処理液供給部40は、第1上面ノズル41、第2上面ノズル42、第3上面ノズル43、および下面ノズル44を有する。
【0042】
第1上面ノズル41は、第1ノズルアーム411と、第1ノズルアーム411の先端に設けられた第1ノズルヘッド412と、第1ノズルモータ413とを有する。第2上面ノズル42は、第2ノズルアーム421と、第2ノズルアーム421の先端に設けられた第2ノズルヘッド422と、第2ノズルモータ423とを有する。第3上面ノズル43は、第3ノズルアーム431と、第3ノズルアーム431の先端に設けられた第3ノズルヘッド432と、第3ノズルモータ433とを有する。
【0043】
各ノズルアーム411,421,431は、ノズルモータ413,423,433の駆動により、
図2中の矢印のように、各ノズルアーム411,421,431の基端部を中心として、水平方向に個別に回動する。これにより、各ノズルヘッド412,422,432を、基板保持部20に保持された基板Wの上方の処理位置と、処理液捕集部50よりも外側の退避位置との間で、移動させることができる。
【0044】
各ノズルヘッド412,422,432には、処理液を供給するための給液部が個別に接続されている。
図4は、第1ノズルヘッド412に接続される給液部45の一例を示した図である。
図4では、処理液として、硫酸と過酸化水素水との混合液であるSPM洗浄液を供給する場合の例を示している。
【0045】
図4の給液部45は、第1配管451、第2配管452、および合流配管453を有する。第1配管451の上流側の端部は、硫酸供給源454に流路接続されている。第2配管452の上流側の端部は、過酸化水素水供給源455に流路接続されている。第1配管451および第2配管452の下流側の端部は、いずれも合流配管453に流路接続されている。また、合流配管453の下流側の端部は、第1ノズルヘッド412に流路接続されている。第1配管451の経路途中には、第1バルブ456が介挿されている。第2配管452の経路途中には、第2バルブ457が介挿されている。
【0046】
第1ノズルヘッド412を処理位置に配置した状態で、第1バルブ456および第2バルブ457を開放すると、硫酸供給源454から第1配管451へ供給される硫酸と、過酸化水素水供給源455から第2配管452へ供給される過酸化水素水とが、合流配管453で合流して、SPM洗浄液となる。また、SPM洗浄液は、図示を省略したヒータにより加熱されて、高温(例えば、150~200℃)となる。そして、その高温のSPM洗浄液が、第1ノズルヘッド412から、基板保持部20に保持された基板Wの上面に向けて吐出される。
【0047】
第1ノズルヘッド412、第2ノズルヘッド422、および第3ノズルヘッド432は、互いに異なる処理液を吐出する。処理液の例としては、上述したSPM洗浄液の他に、SC-1洗浄液(アンモニア水、過酸化水素水、純水の混合液)、SC-2洗浄液(塩酸、過酸化水素水、純水の混合液)、DHF洗浄液(希フッ酸)、純水(脱イオン水)などを挙げることができる。
【0048】
なお、第1ノズルヘッド412、第2ノズルヘッド422、および第3ノズルヘッド432のうちの一部のノズルヘッドは、処理液と加圧した気体とを混合して液滴を生成し、その液滴と気体との混合流体を基板Wに噴射する、いわゆる二流体ノズルであってもよい。また、処理ユニット102に設けられる上面ノズルの数は、3本に限定されるものではなく、1本、2本、または4本以上であってもよい。
【0049】
下面ノズル44は、スピンベース21の中央に設けられた貫通孔の内側に配置されている。下面ノズル44の吐出口は、基板保持部20に保持された基板Wの下面に対向する。下面ノズル44も、処理液を供給するための給液部に接続されている。給液部から下面ノズル44に処理液が供給されると、当該処理液が、下面ノズル44から基板Wの下面に向けて吐出される。
【0050】
処理液捕集部50は、使用後の処理液を捕集する部位である。
図3に示すように、処理液捕集部50は、内カップ51、中カップ52、および外カップ53を有する。内カップ51、中カップ52、および外カップ53は、図示を省略した昇降機構により、互いに独立して昇降移動することが可能である。
【0051】
内カップ51は、基板保持部20の周囲を包囲する円環状の第1案内板510を有する。中カップ52は、第1案内板510の外側かつ上側に位置する円環状の第2案内板520を有する。外カップ53は、第2案内板520の外側かつ上側に位置する円環状の第3案内板530を有する。また、内カップ51の底部は、中カップ52および外カップ53の下方まで広がっている。そして、当該底部の上面には、内側から順に、第1排液溝511、第2排液溝512、および第3排液溝513が設けられている。
【0052】
処理液供給部40の各ノズル41,42,43,44から吐出された処理液は、基板Wに供給された後、基板Wの回転による遠心力で、外側へ飛散する。そして、基板Wから飛散した処理液は、第1案内板510、第2案内板520、および第3案内板530のいずれかに捕集される。第1案内板510に捕集された処理液は、第1排液溝511を通って、処理ユニット102の外部へ排出される。第2案内板520に捕集された処理液は、第2排液溝512を通って、処理ユニット102の外部へ排出される。第3案内板530に捕集された処理液は、第3排液溝513を通って、処理ユニット102の外部へ排出される。
【0053】
このように、この処理ユニット102は、処理液の排出経路を複数有する。このため、基板Wに供給された処理液を、種類毎に分別して回収できる。したがって、回収された処理液の廃棄や再生処理も、各処理液の性質に応じて別々に行うことができる。
【0054】
遮断板60は、乾燥処理などの一部の処理を行うときに、基板Wの表面付近における気体の拡散を抑制するための部材である。遮断板60は、円板状の外形を有し、基板保持部20の上方に、水平に配置される。
図3に示すように、遮断板60は、昇降機構61に接続されている。昇降機構61を動作させると、遮断板60は、基板保持部20に保持される基板Wの上面から上方へ離れた上位置と、上位置よりも基板Wの上面に接近した下位置との間で、昇降移動する。昇降機構61には、例えば、モータの回転運動をボールねじにより直進運動に変換する機構が用いられる。
【0055】
また、遮断板60の下面の中央には、乾燥用の気体(以下「乾燥気体」と称する)を吹き出す吹出口62が設けられている。吹出口62は、乾燥気体を供給する給気部(図示省略)と接続されている。乾燥気体には、例えば、加熱された窒素ガスが用いられる。
【0056】
第1上面ノズル41、第2上面ノズル42、または第3上面ノズル43から、基板Wに対して処理液を供給するときには、遮断板60は、上位置に退避する。処理液の供給後、基板Wの乾燥処理を行うときには、昇降機構61により、遮断板60が下位置に降下する。そして、吹出口62から基板Wの上面に向けて、乾燥気体が吹き付けられる。このとき、遮断板60により、気体の拡散が防止される。その結果、基板Wの上面に乾燥気体が効率よく供給される。
【0057】
サーモグラフィカメラ70は、チャンバ10内の所定の対象領域Aの温度を測定して、測定温度情報T1を取得する装置(第1温度測定部)である。サーモグラフィカメラ70は、例えば、チャンバ10の側壁12の内面に近接した位置に設置されている。
図5は、サーモグラフィカメラ70による温度測定の様子を、概念的に示した図である。サーモグラフィカメラ70は、対象領域Aに含まれる各部材から放射される赤外線を検出し、その検出結果に基づいて、対象領域Aの温度分布が画像化された測定温度情報T1を取得する。サーモグラフィカメラ70により取得される測定温度情報T1は、サーモグラフィカメラ70から制御部80へ送信される。
【0058】
対象領域Aには、チャンバ10(例えば、側壁12の内表面)、基板保持部20(例えば、スピンベース21の表面および複数のチャックピン22の各表面)、回転機構30(例えば、モータカバー31の表面)、処理液供給部40(例えば、第1上面ノズル41、第2上面ノズル42、および第3上面ノズル43の各表面)、処理液捕集部50(例えば、内カップ51、中カップ52、および外カップ53の各表面)、および遮断板60の表面を含めることができる。対象領域Aは、これらの一部であっても全部であってもよい。また、対象領域Aは、互いに離れた複数の領域を含んでいてもよい。
【0059】
対象領域Aは、チャンバ10内の互いに異なる役割を果たす2つ以上の部位を含んでいることが望ましい。例えば、対象領域Aに、基板Wを保持する役割を果たす基板保持部20と、処理液を供給する役割を果たす処理液供給部40とを、対象領域Aに含めることが望ましい。このようにすれば、基板Wの処理に影響を及ぼす複数の部位の温度を、サーモグラフィカメラ70により測定できる。したがって、後述するステップS6において、第2処理の開始の可否を、精度よく判断できる。
【0060】
また、チャンバ10内に存在する複数の部位のうち、比較的基板Wの近傍に位置する部位を、対象領域Aに含めることが望ましい。例えば、基板保持部20の少なくとも一部、処理液供給部40の少なくとも一部、および処理液捕集部50の少なくとも一部を、対象領域Aに含めるとよい。このようにすれば、基板Wの処理に対する影響が大きい部位の温度を、サーモグラフィカメラ70により測定できる。したがって、後述するステップS6において、第2処理の開始の可否を、より精度よく判断できる。
【0061】
また、対象領域Aには、第1上面ノズル41、第2上面ノズル42、または第3上面ノズル43から吐出される処理液の液柱が含まれていてもよい。基板Wの処理に直接影響する吐出直後の処理液の温度を、サーモグラフィカメラ70により測定できる。
【0062】
制御部80は、処理ユニット102内の各部を動作制御するための手段である。
図6は、制御部80と、処理ユニット102内の各部との接続を示したブロック図である。
図6中に概念的に示したように、制御部80は、CPU等の演算処理部81、RAM等のメモリ82、およびハードディスクドライブ等の記憶部83を有するコンピュータにより構成される。記憶部83内には、処理ユニット102における基板Wの処理を実行するためのコンピュータプログラムPが、インストールされている。
【0063】
また、
図6に示すように、制御部80は、上述したファンフィルタユニット15、チャックピン切替機構23、スピンモータ32、ノズルモータ413,423,433、処理液供給部40のバルブ456,457、処理液捕集部50の昇降機構、遮断板60の昇降機構61、およびサーモグラフィカメラ70と、それぞれ有線または無線により通信可能に接続されている。制御部80は、記憶部83に記憶されたコンピュータプログラムPやデータをメモリ82に一時的に読み出し、当該コンピュータプログラムPに基づいて、演算処理部81が演算処理を行うことにより、上記の各部を動作制御する。これにより、後述するステップS1~S13の処理が進行する。
【0064】
<1-3.処理ユニットの動作>
上記の処理ユニット102では、製品としての基板W(以下「製品基板Wp」と称する)に対する処理(以下「第2処理」と称する)を行う前に、処理ユニット102内の温度環境を安定させるための事前処理(以下「第1処理」と称する)が行われる。以下では、これらの第1処理および第2処理の流れについて、
図7のフローチャートを参照しつつ、説明する。
【0065】
本実施形態では、まず、主搬送ロボット103が、製品基板Wpと同一形状かつ同一サイズの事前処理用の基板W(以下「ダミー基板Wd」と称する)を、チャンバ10内に搬入する(ステップS1)。チャンバ10内に搬入されたダミー基板Wdは、基板保持部20により水平に保持される。そして、このダミー基板Wdに対して、第1処理が実行される(ステップS2~S4)。
【0066】
第1処理においては、まず、回転機構30のスピンモータ32を駆動させることにより、ダミー基板Wdの回転を開始させる(ステップS2)。具体的には、支持軸33、スピンベース21、複数のチャックピン22、およびチャックピン22に保持されたダミー基板Wdが、支持軸33の軸芯330を中心として回転する。
【0067】
続いて、処理液供給部40からの処理液の供給を行う(ステップS3)。ステップS3では、ノズルモータ413,423,433の駆動により、第1ノズルヘッド412、第2ノズルヘッド422、および第3ノズルヘッド432が、ダミー基板Wdの上面に対向する処理位置へ、順次に移動する。そして、処理位置に配置されたノズルヘッドから、処理液が吐出される。制御部80内の記憶部83には、第1処理における処理液の供給の順序や、各処理液の供給時間が、予め設定されている。制御部80は、当該設定に従って、各上面ノズル41,42,43からの処理液の吐出動作を実行する。
【0068】
なお、ステップS3では、各上面ノズル41,42,43から処理液を吐出しつつ、当該上面ノズル41,42,43を、処理位置において水平に揺動させてもよい。また、必要に応じて、下面ノズル44からの処理液の吐出を行ってもよい。
【0069】
ステップS3の処理液供給工程の間、遮断板60は、上面ノズル41,42,43よりも上方の上位置に配置されている。ダミー基板Wdへの種々の処理液の供給が完了し、全ての上面ノズル41,42,43が退避位置に配置されると、制御部80は、昇降機構61を動作させて、遮断板60を上位置から下位置へ移動させる。そして、スピンモータ32の回転数を上げてダミー基板Wdの回転を高速化するとともに、遮断板60の下面に設けられた吹出口62からダミー基板Wdへ向けて、乾燥気体を吹き付ける。これにより、ダミー基板Wdの表面を乾燥させる(ステップS4)。
【0070】
ステップS2~S4の第1処理が完了すると、サーモグラフィカメラ70が、対象領域Aの温度を測定する(ステップS5)。具体的には、サーモグラフィカメラ70が、対象領域Aに含まれる各部材から放射される赤外線を検出し、その検出結果に基づいて、対象領域Aの温度分布が画像化された測定温度情報T1を取得する。そして、サーモグラフィカメラ70により取得された測定温度情報T1が、サーモグラフィカメラ70から制御部80へ送信される。
【0071】
サーモグラフィカメラ70から測定温度情報T1を受信すると、制御部80は、受信した測定温度情報T1に基づいて、第2処理の開始の可否を判断する(ステップS6)。制御部80の記憶部83内には、第2処理の開始に適した温度分布を示す基準温度情報T2が、予め記憶されている。制御部80は、この基準温度情報T2と、サーモグラフィカメラ70から受信した測定温度情報T1とを比較する。そして、基準温度情報T2と測定温度情報T1との差が、許容範囲から外れている場合には、第2処理を開始できないと判断する(ステップS6:no)。
【0072】
この場合、チャンバ10内において、上述した第1処理(ステップS2~S4)が、追加で実行される。これにより、対象領域Aの温度分布を、第2処理の開始に適した温度分布に近づける。その後、サーモグラフィカメラ70により、対象領域Aの温度を再度測定する(ステップS5)。そして、制御部80が、得られた測定温度情報T1に基づいて、第2処理の開始の可否を再度判断する(ステップS6)。
【0073】
ステップS6において、基準温度情報T2と測定温度情報T1との差が、予め設定された許容範囲内になると、制御部80は、第2処理を開始可能と判断する(ステップS6:yes)。この場合、基板保持部20によるダミー基板Wdの保持が解除される。そして、主搬送ロボット103が、基板保持部20からダミー基板Wdを取り出して、チャンバ10の外部へ搬出する(ステップS7)。
【0074】
続いて、主搬送ロボット103が、製品基板Wpを、チャンバ10内に搬入する(ステップS8)。チャンバ10内に搬入された製品基板Wpは、基板保持部20により水平に保持される。そして、この製品基板Wpに対して、第2処理が実行される(ステップS9~S11)。
【0075】
第2処理においては、まず、回転機構30のスピンモータ32を駆動させることにより、製品基板Wpの回転を開始させる(ステップS9)。具体的には、支持軸33、スピンベース21、複数のチャックピン22、およびチャックピン22に保持された製品基板Wpが、支持軸33の軸芯330を中心として回転する。
【0076】
続いて、処理液供給部40からの処理液の供給を行う(ステップS10)。ステップS10では、ノズルモータ413,423,433の駆動により、第1ノズルヘッド412、第2ノズルヘッド422、および第3ノズルヘッド432が、製品基板Wpの上面に対向する処理位置へ、順次に移動する。そして、処理位置に配置されたノズルヘッドから、処理液が吐出される。制御部80内の記憶部83には、第2処理における処理液の供給の順序や、各処理液の供給時間が、予め設定されている。制御部80は、当該設定に従って、各上面ノズル41,42,43からの処理液の吐出動作を実行する。
【0077】
なお、ステップS10では、各上面ノズル41,42,43から処理液を吐出しつつ、当該上面ノズル41,42,43を、処理位置において水平に揺動させてもよい。また、必要に応じて、下面ノズル44からの処理液の吐出を行ってもよい。
【0078】
ステップS10の処理液供給工程の間、遮断板60は、上面ノズル41,42,43よりも上方の上位置に配置されている。製品基板Wpへの種々の処理液の供給が完了し、全ての上面ノズル41,42,43が退避位置に配置されると、制御部80は、昇降機構61を動作させて、遮断板60を上位置から下位置へ移動させる。そして、スピンモータ32の回転数を上げて製品基板Wpの回転を高速化するとともに、遮断板60の下面に設けられた吹出口62から製品基板Wpへ向けて、乾燥気体を吹き付ける。これにより、製品基板Wpの表面を乾燥させる(ステップS11)。
【0079】
1枚の製品基板Wpに対する第2処理が終了すると、基板保持部20による当該製品基板Wpの保持が解除される。そして、主搬送ロボット103が、基板保持部20から製品基板Wpを取り出して、チャンバ10の外部へ搬出する(ステップS12)。
【0080】
その後、制御部80は、次に処理すべき製品基板Wpがあるか否かを判断する(ステップS13)。そして、次に処理すべき製品基板Wpがある場合には(ステップS13:yes)、当該製品基板Wpをチャンバ10内に搬入する(ステップS8)。チャンバ10内に搬入された製品基板Wpは、基板保持部20により水平に保持される。そして、この製品基板Wpに対して、上記と同様に、第2処理を実行する(ステップS9~S11)。
【0081】
やがて、未処理の製品基板Wpが無くなると、制御部80は、次に処理すべき製品基板Wpが無いと判断する(ステップS13:no)。以上をもって、処理ユニット102における複数の製品基板Wpに対する第2処理が終了する。
【0082】
以上のように、本実施形態では、ダミー基板Wdに対する第1処理を行った後に、サーモグラフィカメラ70により、チャンバ10内の所定の対象領域Aの温度を測定する。そして、取得された測定温度情報T1に基づいて、製品基板Wpに対する第2処理の開始の可否を判断する。このため、チャンバ10内の対象領域Aの温度が安定した状態で、製品基板Wpに対する第2処理を開始することができる。これにより、複数の製品基板Wpに対して、第2処理を均一に行うことができる。
【0083】
特に、本実施形態では、第1処理の後、第2処理を開始可能な状態に達していない場合には、第1処理を追加で実行する。これにより、チャンバ10内の温度環境を、第2処理を開始可能な状態に近付けることができる。
【0084】
また、本実施形態では、ダミー基板Wdに対する第1処理と、製品基板Wpに対する第2処理とが、同一の処理である。すなわち、回転機構30、処理液供給部40、および遮断板60が、ダミー基板Wdに対して第1処理を行う第1処理部と、製品基板Wpに対して第2処理を行う第2処理部と、の双方として機能する。このようにすれば、第2処理を実行する前に、予め同内容の第1処理を実行することとなるため、チャンバ10内の温度環境が、より安定する。ただし、第1処理と第2処理とは、別々の処理であってもよい。例えば、第1処理は、第2処理の一部を省略または短縮したものであってもよい。また、第1処理部と第2処理部とは、チャンバ10内に設けられた別々の機構であってもよい。
【0085】
<2.第2実施形態>
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、基板処理装置100の構成自体は、第1実施形態と同一であり、処理手順も、一部を除いて同一である。以下では、第1実施形態と同一の内容については、重複説明を省略する。
【0086】
図8は、第2実施形態に係る第1処理および第2処理の流れを示したフローチャートである。
【0087】
この第2実施形態では、第1実施形態と同様に、ステップS1~S6を行う。すなわち、まず、チャンバ10内にダミー基板Wdを搬入する(ステップS1)。次に、チャンバ10内のダミー基板Wdに対して、第1処理が実行される(ステップS2~S4)。第1処理が終了すると、サーモグラフィカメラ70が、対象領域Aの温度を測定する(ステップS5)。そして、制御部80が、受信した測定温度情報T1に基づいて、第2処理の開始の可否を判断する(ステップS6)。
【0088】
ステップS6において、基準温度情報T2と測定温度情報T1との差が、許容範囲から外れている場合、制御部80は、第2処理を開始できないと判断する(ステップS6:no)。この場合、本実施形態では、第1処理(ステップS2~S4)を追加で実行するのではなく、第1処理とは異なる挿入処理を実行する(ステップSi)。
【0089】
挿入処理は、例えば、軸芯330を中心としてダミー基板Wdを回転させつつ、ダミー基板Wdの上面に、処理液を供給する処理とされる。ただし、供給される処理液の種類、順序、または供給時間が、第1処理とは異なるものとされる。例えば、挿入処理は、回転するダミー基板Wdの上面に、加熱された純水を供給する処理のみとしてもよい。これにより、対象領域Aの温度分布を、第2処理の開始に適した温度分布に近づける。
【0090】
本実施形態では、処理液供給部40が、第1処理部および第2処理部として機能するとともに、挿入処理を行う挿入処理部としても機能する。しかしながら、処理ユニット102は、処理液供給部40とは別に、挿入処理を行う挿入処理部を有していてもよい。
【0091】
その後、サーモグラフィカメラ70により、対象領域Aの温度を再度測定する(ステップS5)。そして、制御部80が、得られた測定温度情報T1に基づいて、第2処理の開始の可否を再度判断する(ステップS6)。
【0092】
ステップS6において、基準温度情報T2と測定温度情報T1との差が、予め設定された許容範囲内になると、制御部80は、第2処理を開始可能と判断する(ステップS6:yes)。この場合、ダミー基板Wdがチャンバ10の外部へ搬出される(ステップS7)。その後、第1実施形態と同様に、複数の製品基板Wpを順次にチャンバ10内に搬入し、各製品基板Wpに対して、順次に第2処理を実行する(ステップS8~S13)。
【0093】
以上のように、本実施形態においても、ダミー基板Wdに対する第1処理を行った後に、サーモグラフィカメラ70によって、チャンバ10内の所定の対象領域Aの温度を測定する。そして、取得された測定温度情報T1に基づいて、製品基板Wpに対する第2処理の開始の可否を判断する。このため、チャンバ10内の対象領域Aの温度が安定した状態で、製品基板Wpに対する第2処理を開始することができる。これにより、複数の製品基板Wpに対して、第2処理を均一に行うことができる。
【0094】
特に、本実施形態では、第1処理の後、第2処理を開始可能な状態に達していない場合には、挿入処理を実行する。これにより、チャンバ10内の温度環境を、第2処理を開始可能な状態に近付けることができる。挿入処理を、第1処理よりも簡略化した処理にすれば、挿入処理にかかる時間や、処理液の消費量を抑えることができる。
【0095】
<3.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0096】
上記の実施形態では、第1処理の終了後に、対象領域Aの温度を測定していた。しかしながら、第1処理の実行中に、対象領域Aの温度を随時測定してもよい。そして、制御部80は、第1処理の実行中にサーモグラフィカメラ70から取得される測定温度情報T1に基づいて、第2処理の開始の可否を判断してもよい。また、挿入処理を行う場合には、挿入処理の実行中に、対象領域Aの温度を随時測定してもよい。そして、制御部80は、挿入処理の実行中にサーモグラフィカメラ70から取得される測定温度情報T1に基づいて、第2処理の開始の可否を判断してもよい。
【0097】
また、上記の実施形態では、第1温度測定部として、サーモグラフィカメラ70が使用されていた。しかしながら、第1測定部として、放射温度計を使用してもよい。
図9は、放射温度計71を用いる場合の、処理ユニット102の縦断面図である。
図9の例では、放射温度計71が、揺動機構72に接続されている。揺動機構72を動作させると、放射温度計71の向きが変化する。放射温度計71は、揺動機構72によりその向きを変化させながら、対象領域Aの温度を測定して、測定温度情報T1を取得する。取得された測定温度情報T1は、放射温度計71から制御部80へ送信される。
【0098】
一般的に、放射温度計71は、サーモグラフィカメラ70よりも測定可能領域が狭い。しかしながら、
図9のような揺動機構72を設けることにより、放射温度計71を用いて、広い対象領域Aの温度を測定できる。
【0099】
なお、
図10のように、第1ノズルアーム411に放射温度計71を取り付けてもよい。同様に、第2ノズルアーム421および第3ノズルアーム431にも、放射温度計71を取り付けてもよい。このようにすれば、ノズルアーム411,421,431の旋回運動を利用して、放射温度計71を揺動させることができる。したがって、ノズルアーム411,421,431とは別に、揺動機構を設ける必要がない。
【0100】
また、第1測定部として、熱電対を使用してもよい。
図11は、熱電対73を用いる場合の、処理ユニット102の断面図である。
図11の例では、対象領域Aに含まれる各部材の表面に、熱電対73が配置されている。そして、熱電対73は、各部材の表面の温度を測定して、測定温度情報T1を取得する。取得された測定温度情報T1は、熱電対73から制御部80へ送信される。制御部80は、各熱電対73から得られる測定温度情報T1に、基板Wへの影響の大きさに応じた係数を掛けて、足し合わせた評価値を算出し、その評価値に基づいて、第2処理の開始の可否を判断してもよい。
【0101】
また、処理ユニット102は、第1測定部とは別に、処理液の配管内における温度を測定する第2測定部を、さらに備えていてもよい。例えば、
図12のように、第1ノズルヘッド412に接続された合流配管453の経路上に、第2測定部としての液温センサ74を設けてもよい。液温センサ74は、合流配管453を流れる処理液(
図12の例ではSPM洗浄液)の温度を測定して、測定温度情報T3を取得する。取得された測定温度情報T3は、液温センサ74から制御部80へ送信される。
【0102】
この場合、制御部80は、サーモグラフィカメラ70から取得される測定温度情報T1と、液温センサ74から取得される測定温度情報T3とに基づいて、第2処理の開始の可否を判断する。例えば、測定温度情報T1,T3の双方が、予め設定された許容範囲に入った場合に、第2処理を開始可能と判断する。これにより、第2処理の開始の可否を、より精度よく判断できる。
【0103】
また、上記の実施形態では、ダミー基板Wdに対して第1処理を行っていた。しかしながら、第1処理は、ダミー基板Wdを用いることなく行う処理であってもよい。例えば、第1処理は、基板保持部20のスピンベース21に対して、処理液を直接供給する処理であってもよい。また、第1処理は、各ノズルヘッド412,422,432が、退避位置において、所定の容器に対して処理液を吐出する処理であってもよい。挿入処理も、同様に、ダミー基板Wdを用いることなく行う処理であってもよい。また、第1処理および挿入処理は、製品基板Wpに対して、第2処理を行う前に実行される処理であってもよい。
【0104】
また、上記の実施形態では、処理対象となる基板Wが半導体用のシリコンウェハであった。しかしながら、本発明において処理対象となる基板は、シリコンウェハに限定されるものではなく、液晶表示装置等のフラットパネルディスプレイ用のガラス基板、フォトマスク用のガラス基板、太陽電池用のガラス基板などの、他の精密電子装置用の基板であってもよい。
【0105】
また、基板処理装置の細部の形状については、本願の各図に示された形状と、相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0106】
10 チャンバ
11 処理空間
12 側壁
13 天板部
14 底板部
20 基板保持部
21 スピンベース
22 チャックピン
23 チャックピン切替機構
30 回転機構
31 モータカバー
32 スピンモータ
33 支持軸
40 処理液供給部
41,42,43,44 上面ノズル
45 給液部
50 処理液捕集部
51 内カップ
52 中カップ
53 外カップ
60 遮断板
61 昇降機構
70 サーモグラフィカメラ
71 放射温度計
72 揺動機構
73 熱電対
74 液温センサ
80 制御部
100 基板処理装置
101 インデクサ
102 処理ユニット
103 主搬送ロボット
A 対象領域
T1 測定温度情報
T2 基準温度情報
T3 測定温度情報
W 基板