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7407271AI制御装置、AI制御装置に接続されるサーバー装置、及びAI制御方法
<図1>
  • -AI制御装置、AI制御装置に接続されるサーバー装置、及びAI制御方法 図1
  • -AI制御装置、AI制御装置に接続されるサーバー装置、及びAI制御方法 図2
  • -AI制御装置、AI制御装置に接続されるサーバー装置、及びAI制御方法 図3
  • -AI制御装置、AI制御装置に接続されるサーバー装置、及びAI制御方法 図4A
  • -AI制御装置、AI制御装置に接続されるサーバー装置、及びAI制御方法 図4B
  • -AI制御装置、AI制御装置に接続されるサーバー装置、及びAI制御方法 図5
  • -AI制御装置、AI制御装置に接続されるサーバー装置、及びAI制御方法 図6
  • -AI制御装置、AI制御装置に接続されるサーバー装置、及びAI制御方法 図7
  • -AI制御装置、AI制御装置に接続されるサーバー装置、及びAI制御方法 図8A
  • -AI制御装置、AI制御装置に接続されるサーバー装置、及びAI制御方法 図8B
  • -AI制御装置、AI制御装置に接続されるサーバー装置、及びAI制御方法 図9
  • -AI制御装置、AI制御装置に接続されるサーバー装置、及びAI制御方法 図10
  • -AI制御装置、AI制御装置に接続されるサーバー装置、及びAI制御方法 図11A
  • -AI制御装置、AI制御装置に接続されるサーバー装置、及びAI制御方法 図11B
  • -AI制御装置、AI制御装置に接続されるサーバー装置、及びAI制御方法 図11C
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】AI制御装置、AI制御装置に接続されるサーバー装置、及びAI制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20231221BHJP
【FI】
G06N20/00 130
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022507979
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2020012393
(87)【国際公開番号】W WO2021186692
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000223182
【氏名又は名称】TOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】河合 祐馬
【審査官】多賀 実
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0170049(US,A1)
【文献】特開2019-067026(JP,A)
【文献】国際公開第2018/142766(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/167607(WO,A1)
【文献】特開2017-142739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/00-99/00
G06Q 50/00-50/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のユーザーから個々のユーザーを識別して入力データを受信し、ユーザー毎に入力データに基づいて学習済モデルを生成するサーバー装置に接続可能なAI制御装置であって、
第1制御部と、
前記サーバー装置に接続される第1通信部と、
を備え、
前記第1制御部は、
入力データを取得し、
前記AI制御装置のユーザーを識別可能な識別情報と前記取得入力データとを対応付けて、前記サーバー装置に前記第1通信部を介して送信し、
送信された前記取得入力データを使用して前記サーバー装置により他のユーザーの学習済モデルとは別に生成された学習済モデルであって、前記取得入力データの特徴を学習して未知の入力データから前記特徴を有する入力データを検知する学習済モデルを実行し、
更に、ユーザーからラベルの入力を受け付けるラベル入力インターフェースを備え、
前記第1制御部は、前記取得入力データに対し、前記ラベル入力インターフェースを介して入力されたラベルを付して、ラベル付き入力データを生成し、当該ラベル付き入力データを前記サーバー装置に送信し、
前記学習済モデルは、前記サーバー装置により、受信した前記ラベル付き入力データとともに、当該ラベルとの関連度が所定値以上の類似ラベルが付された入力データであって前記サーバー装置に保持されている他のユーザーから受信した入力データを使用して生成された学習モデルである、
AI制御装置。
【請求項2】
更に、ユーザーからラベルの入力を受け付けるラベル入力インターフェースを備え、
前記第1制御部は、前記取得入力データに対し、前記ラベル入力インターフェースを介して入力されたラベルを付して、ラベル付き入力データを生成し、当該ラベル付き入力データを前記サーバー装置に送信し、
前記学習済モデルは、前記ラベル付き入力データを使用して前記サーバー装置により生成された学習済モデルである、
請求項1に記載のAI制御装置。
【請求項3】
更に、入力データの入力を受け付ける入力部を備え、
前記第1制御部は、
前記サーバー装置により前記学習済モデルが生成される前は、前記入力部を介して入力される前記取得入力データを前記サーバー装置に送信し、
前記サーバー装置により前記学習済モデルが生成された後は、前記入力部を介して入力される前記未知の入力データに対して前記学習済モデルを実行し、前記特徴を有する入力データの検知を行う、
請求項1に記載のAI制御装置。
【請求項4】
前記AI制御装置は、選択的に第1モード又は第2モードで動作し、
更に、入力データの入力を受け付ける入力部を備え、
前記第1制御部は、前記第1モードでの動作時には、
前記入力部を介して入力される前記取得入力データを前記サーバー装置に送信し、
前記第2モードでの動作時には、前記入力部を介して入力される前記未知の入力データに対して前記学習済モデルを実行し、前記特徴を有する入力データの検知を行う、
請求項1に記載のAI制御装置。
【請求項5】
前記取得入力データは音声データであって、
前記ラベルは、音声を表すキーワードであり、
前記学習済モデルは、前記音声データの特徴を学習して未知の音声から前記特徴を有する音声を検知する学習済モデルである、
請求項又はに記載のAI制御装置。
【請求項6】
前記入力データ及び前記未知の入力データは音声データであって、
前記入力部は前記音声データの入力を受け付けるマイクである、
請求項又はに記載のAI制御装置。
【請求項7】
前記第1制御部は、プロセッサと、学習済モデルを記憶する記憶部とを含み、
前記取得入力データを前記サーバー装置に送信した後、前記第1通信部を介して前記サーバー装置から前記学習済モデルを受信して前記記憶部に記憶し、前記プロセッサが前記記憶部に記憶された前記学習済モデルを実行する、
請求項1に記載のAI制御装置。
【請求項8】
更に、信号の受信に応じて作動する外部の設備機器に信号を送信するための外部インターフェースを備え、
前記第1制御部は、
前記学習済モデルを実行して前記特徴を有する入力データを検知した際に、前記外部インターフェースを介して前記信号を送信することにより前記外部の設備機器を作動させる、
請求項1に記載のAI制御装置。
【請求項9】
複数のユーザーが使用する複数のAI制御装置に接続可能なサーバー装置であって、
第2制御部と、
前記複数のAI制御装置に接続される第2通信部と、
第2記憶部と、
を備え、
前記第2制御部は、
前記複数のユーザーのAI制御装置から、前記第2通信部を介して、各前記ユーザーの識別情報と対応付けた入力データを受信し、
前記受信入力データを前記第2記憶部に記憶し、
前記受信入力データを使用して、前記ユーザー毎に、前記受信入力データの特徴を学習して、未知の入力データから前記特徴を有する入力データを検知する学習済モデルを生成し、
生成された学習済モデルを、前記ユーザー毎に前記第2記憶部に記憶させ、
前記受信入力データは、当該受信入力データの送信者であるユーザーにより入力されたラベルが付されたラベル付き入力データであって、
前記第2制御部は、
前記ラベル付き入力データを、前記ラベルに応じて前記第2記憶部に記憶させ、
第1のユーザーから前記ラベル付き入力データを受信することに応じて、受信した前記ラベル付き入力データとともに、前記第1のユーザーから受信した前記ラベル付き入力データのラベルとの関連度が所定値以上の類似ラベルが付された入力データであって、前記第2記憶部に記憶されている第1のユーザー以外の他のユーザーから以前に受信したラベル付き入力データを使用して、前記学習済モデルを生成する、
サーバー装置。
【請求項10】
前記受信入力データは、当該受信入力データの送信者であるユーザーにより入力されたラベルが付されたラベル付き入力データであって、
前記第2制御部は、
第1のユーザーから前記ラベル付き入力データを受信することに応じて、受信した前記ラベル付き入力データを使用して、前記第1のユーザー用の学習済モデルを生成し、
前記第1のユーザー用の学習済モデルを前記第2通信部を介して前記第1のユーザーのAI制御装置に送信し、当該第1のユーザーのAI制御装置に前記第1のユーザー用の学習済モデルを実行させる、
請求項に記載のサーバー装置。
【請求項11】
前記受信入力データは、当該受信入力データの送信者であるユーザーにより入力されたラベルが付されたラベル付き入力データであって、
前記第2制御部は、
前記ラベル付き入力データを、前記ラベルに応じて前記第2記憶部に記憶させ、
第1のユーザーから前記ラベル付き入力データを受信することに応じて、前記第1のユーザーから受信した前記ラベル付き入力データのラベルとの関連度が所定値以上の類似ラベルが付された入力データであって、前記第2記憶部に記憶されている第1のユーザー以外の他のユーザーから以前に受信したラベル付き入力データを特定し、当該他のユーザーのラベル付き入力データを示す関連度情報を前記第2の通信部を介して前記第1のユーザーのAI制御装置に提示し、
前記関連度情報の提示を受けた前記第1のユーザーのAI制御装置から前記第2の通信部を介して受信する要求に応じて、選択的に、
前記第1のユーザーから受信した前記ラベル付き入力データのみを使用して学習済モデルを生成するか、又は、
前記第1のユーザーから受信した前記ラベル付き入力データとともに、前記関連度情報が示す前記他のユーザーのラベル付き入力データを使用して学習済モデルを生成する、
請求項に記載のサーバー装置。
【請求項12】
前記ラベル付き入力データは、当該ラベル付き入力データの送信者であるユーザーにより入力された使用可否情報であって、他のユーザーによる当該ラベル付き入力データの使用の可否を示す使用可否情報を含み、
前記第2制御部は、
前記第2記憶部に記憶されている前記第1のユーザー以外の他のユーザーから以前に受信したラベル付き入力データのうち、肯定的な使用可否情報を含むラベル付き入力データを使用して、前記学習済モデルを生成する、
請求項に記載のサーバー装置。
【請求項13】
前記ラベル付き入力データは、当該ラベル付き入力データの送信者であるユーザーにより入力された使用可否情報であって、他のユーザーによる当該ラベル付き入力データの使用の可否を示す使用可否情報を含み、
前記第2制御部は、
前記関連度情報が示す前記第1のユーザー以外の他のユーザーのラベル付き入力データのうち、肯定的な使用可否情報を含むラベル付き入力データのみを使用して、前記学習済モデルを生成する、
請求項11に記載のサーバー装置。
【請求項14】
前記第2記憶部は更に、前記第1のユーザーのラベル付き入力データを使用して学習済モデルを生成するための単価と、前記他のユーザーのラベル付き入力データを使用するのに必要な単価とを含む課金テーブルを保持し、
前記第2制御部は、
前記第1のユーザーから受信した前記ラベル付き入力データに応じた前記学習済モデルの生成に伴い、前記課金テーブルを参照して前記第1のユーザーに課金する金額を算出し、前記第2通信部を介して、前記第1のユーザーのAI制御装置に送信する、
請求項又は11に記載のサーバー装置。
【請求項15】
前記第2記憶部は更に、前記第1のユーザーのラベル付き入力データを使用して学習済モデルを生成するための単価と、前記他のユーザーのラベル付き入力データを使用するのに必要な単価と、前記使用可否情報が示す可否に応じて決まる単価と、を含む課金テーブルを保持し、
前記第2制御部は、
前記第1のユーザーから受信した前記ラベル付き入力データに応じた前記学習済モデルの生成に伴い、前記課金テーブルを参照して前記第1のユーザーに課金する金額を算出し、前記第2通信部を介して、前記第1のユーザーのAI制御装置に送信する、
請求項12又は13に記載のサーバー装置。
【請求項16】
複数のユーザーが使用する複数のAI制御装置に接続可能なサーバー装置を用いたAI制御方法であって、
前記複数のユーザーのAI制御装置から、各前記ユーザーの識別情報と対応付けた入力データを受信し、
前記受信入力データを記憶部に記憶し、
前記受信入力データを使用して、前記ユーザー毎に、前記受信入力データの特徴を学習し、未知の入力データから前記特徴を有する入力データを検知する学習済モデルを生成し、
生成された学習済モデルを、前記ユーザー毎に前記記憶部に記憶させ
更に、ユーザーからラベルの入力を受け付け、
前記受信入力データに対し、前記ラベルを付して、ラベル付き入力データを生成し、
前記学習済モデルは、前記ラベル付き入力データとともに、当該ラベルとの関連度が所定値以上の類似ラベルが付された入力データであって前記サーバー装置に保持されている他のユーザーから受信した入力データを使用して生成された学習モデルである
AI制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、AI制御装置、AI制御装置に接続されるサーバー装置、及びAI制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生産装置周辺の音情報を用いて異常検出を行うための学習済モデル構築装置及び異常検出装置が知られている(特許文献1を参照)。特許文献1においては、学習済モデル構築装置は、生産装置の近傍に位置した作業者の音声を含む音声データを取得するとともに、生産ラインに関する異常度をラベルとして取得し、音声データとラベルとの組みを学習データとして教師あり学習を行うことにより、異常度についての学習済モデルを構築する。異常検出装置は、構築された学習済モデルと判定データとを用いて、判定データの異常度を判定する。
【発明の概要】
【0003】
学習済モデルを構築するために十分な学習データを得ることはユーザーには負担が重く、また学習済モデルから得られる出力の精度を上げることが難しい。
【0004】
本開示の目的は、学習済モデルの生成においてユーザーの負担を軽減でき、且つ学習済モデルを使用して任意のイベント検知手段を実現できる、AI制御装置、AI制御装置に接続されるサーバー装置、及びAI制御方法を提供する。
【0005】
本開示の一の観点によれば、AI制御装置は、複数のユーザーから個々のユーザーを識別して入力データを受信し、ユーザー毎に入力データに基づいて学習済モデルを生成するサーバー装置に接続可能なAI制御装置であって、第1制御部と、サーバー装置に接続される第1通信部とを備える。第1制御部は、入力データを取得し、AI制御装置のユーザーを識別可能な識別情報と同取得入力データとを対応付けて、サーバー装置に第1通信部を介して送信する。第1制御部は、送信された取得入力データを使用してサーバー装置により他のユーザーの学習済モデルとは別に生成された学習済モデルであって、取得入力データの特徴を学習して未知の入力データから同特徴を有する入力データを検知する学習済モデルを実行する。
【0006】
本開示の他の観点によれば、サーバー装置は、複数のユーザーが使用する複数のAI制御装置に接続可能なサーバー装置であって、第2制御部と、複数のAI制御装置に接続される第2通信部と、第2記憶部とを備える。第2制御部は、複数のユーザーのAI制御装置から、第2通信部を介して、各ユーザーの識別情報と対応付けた入力データを受信し、同受信入力データを第2記憶部に記憶し、受信入力データを使用して、ユーザー毎に、受信入力データの特徴を学習して、未知の入力データから同特徴を有する入力データを検知する学習済モデルを生成する。第2制御部は、生成された学習済モデルをユーザー毎に第2記憶部に記憶させる。
【0007】
本開示の更に他の観点によれば、AI制御方法は、複数のAI制御装置に接続可能なサーバー装置を用いたAI制御方法であって、複数のユーザーのAI制御装置から、各ユーザーの識別情報と対応付けた入力データを受信すること、同受信入力データを記憶部に記憶すること、受信入力データを使用して、ユーザー毎に、受信入力データの特徴を学習すること、未知の入力データから同特徴を有する入力データを検知する学習済モデルを生成すること、生成された学習済モデルをユーザー毎に記憶部に記憶させること、を含む。
【0008】
本開示に係るAI制御装置、AI制御装置に接続されるサーバー装置、及びAI制御方法によれば、学習済モデルの生成においてユーザーの負担を軽減でき、且つ学習済モデルを使用して任意のイベント検知手段を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1に係るシステムの全体構成を示す。
図2図2は、実施形態1に係るAI制御装置の構成を示す。
図3図3は、実施形態1に係るサーバー装置の構成を示す。
図4A図4Aは、サーバー装置において管理されるユーザー管理テーブルの一例を示す。
図4B図4Bは、サーバー装置において管理される課金テーブルの一例を示す。
図5図5は、AI制御装置による機械学習のための動作を示すフローチャートである。
図6図6は、サーバー装置による機械学習動作を示すフローチャートである。
図7図7は、ユーザーがラベルを入力するための表示インターフェースの一例を示す。
図8A図8Aは、関連情報を示す表示インターフェースの一例を示す。
図8B図8Bは、ラベル名の関連度を算出するための基準情報の例を示す。
図9図9は、課金情報を示す表示インターフェースの一例を示す。
図10図10は、AI制御装置による異常検知の動作を示すフローチャートである。
図11A図11Aは、その他実施形態に係るAI制御装置が参照するマイクの位置情報の例を示す。
図11B図11Bは、その他実施形態に係るAI制御装置が参照するスピーカーの位置情報の例を示す。
図11C図11Cは、その他実施形態に係るAI制御装置が参照する監視カメラの位置情報の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.実施形態1
図1に示すAI制御装置10及びサーバー装置30を含むシステム1は、任意のイベント(異常音等)に反応するセンサーを、ユーザー毎に適するように生成することを可能にする。ユーザーが使用するAI制御装置10を介して、ユーザーが反応させたいイベント、例えば、悲鳴やドアの開閉等の異常音を表すキーワードをラベルとする入力データを収集し、サーバー装置30に送信する。サーバー装置30は、機械学習サーバーであり、ユーザー毎に受信する入力データに基づいて、ユーザー毎に学習済モデルを生成し、管理する。AI制御装置10は、この学習済モデルに基づいて、イベントが発生したときの未知音を含む音に反応するセンサーとして機能する。この結果、各ユーザーが自身に適したセンサーを生成することが可能となる。
【0011】
図1に示すように、AI制御装置10は各ユーザーUserA、UserB・・・が使用する装置である。AI制御装置10は、オフィス、工場、商業施設、公共施設等の施設内に設置された放送装置20、監視カメラ40を含む設備機器に接続される。なお、一つのAI制御装置10が、複数の設備機器に接続されてもよいし、設備機器毎にAI制御装置10が接続されてもよい。また、AI制御装置10は設備機器の中の制御装置として搭載されていてもよい。
【0012】
各設備機器は、後述するようにAI制御装置10から信号を受信する接点入力端子と、接点入力端子から受信した信号に応じて設備機器を作動させるリレー回路とを備える。
【0013】
放送装置20は、少なくとも、接点入力端子と、放送音声を保持する保持部と、スピーカーとを含む。放送装置20は、接点入力端子から受信した信号に応じて、保持部に保持された放送音声をスピーカーから出力し拡声を行う。
【0014】
監視カメラ40は、少なくとも、接点入力端子と録画部とを含む。監視カメラ40は、接点入力端子から受信した信号に応じて、撮像した映像を録画する。
【0015】
以下、本実施形態に係るAI制御装置10及びサーバー装置30を含むシステム1の構成及びその動作について説明する。
【0016】
なお、以下の説明においては、入力データはユーザーが悲鳴をキーワードとしてラベル付けする音声データであり、異常検知としての悲鳴を検知するセンサーを生成する場合を例に挙げる。
【0017】
1-1.構成
1-1-1.AI制御装置10
図2に示すように、AI制御装置10(AI制御装置の一例)は、制御部11、RAM12、ROM14、記憶部13、表示部15、操作部16、通信部17、マイク18、及び接点出力部19を備える。
【0018】
制御部11(第1制御部の一例)は、例えばAIチップにより構成され、高速処理が可能なCPUやGPU、FPGA等のプロセッサを含む。制御部11は、ROM14や記憶部13に記憶されるコンピュータープログラムをRAM12に読み出して実行することにより、AI制御装置10の各機能を実行する。制御部11は、とりわけ、サーバー装置30により生成される学習済モデルによるプログラムを実行して、入力データ取得部111、ラベリング部112、異常検知部113、及び設備機器作動指令部114の機能を実行する。
【0019】
マイク18(入力部の一例)は、AI制御装置10に内蔵された内蔵マイク、又はXLRコネクター等の外部入力端子を介してAI制御装置10に接続された少なくとも1つの外部マイクである(図示省略)。マイク18は、後述するサーバー23による機械学習に用いる入力データ(音声データ)のための音声取得や、後述する異常検知動作のための音声取得に用いられる。マイク18は、個々に異なる外部入力端子を介して接続された複数の外部マイクであってもよい。AI制御装置10が複数の設備機器に接続される場合、複数の設備機器に対応付けて複数の外部マイク18を備えるようにしてもよい。例えば、複数の設備機器がそれぞれ異なるエリアに設置される場合、設備機器と共にこれらのエリアにそれぞれ異なる外部マイク18が配置されるように、各外部マイク18が外部入力端子を介してAI制御装置10に接続されるとよい。
【0020】
入力データ取得部111は、ユーザーにより入力される音声データを取得する。音声データは、ユーザーが「悲鳴」と判断する複数のサンプル音を含む。音声データは、例えば、マイク18を介して入力される。例えば、マイク18を介して繰り返しサンプル音を入力し、後述するラベリング部112により、同一のラベルを付与することにより、ラベル付き音声データを取得する。なお、音声データは、予め取得され記憶部13に記憶された音声ファイルから取得してもよい。また、マイク18を介して収集されたサンプル音は、記憶部13に一旦記憶され、ユーザーは記憶されたサンプル音に対して一括して同一のラベルを付与してもよい。
【0021】
ラベリング部112は、入力データ取得部111により取得された音声データに対して、ラベルを付与する。ラベルの付与は後述する表示インターフェースを用いたユーザーによる入力に応じて実行される。ラベルが付与された音声データ(以下、ラベル付き音声データ、又はラベル付き入力データと呼ぶ)は、通信部17を介して、サーバー装置30に送信される。
【0022】
異常検知部113は、マイク18から収音された音声を取得し、サーバー装置30により生成された学習済モデルに基づき異常を判定する。
【0023】
設備機器作動指令部114は、異常が判定された場合、AI制御装置10が接続される設備機器(放送装置20、監視カメラ40等)を作動させるための信号を生成する。生成された信号は、接点出力部19を介して設備機器に送信される。設備機器においては、信号を受信することにより設備機器のリレー回路の接点がONとなり、設備機器が作動する。例えば、マイク18からの取得した音が「悲鳴」と判定された場合、設備機器をONにするとともに、放送装置20であれば放送音声(警告音声)を出力し、監視カメラ40であれば映像の録画を開始する。
【0024】
AI制御装置10がエリアの異なる複数の設備機器に接続されている場合、設備機器作動指令部114は、異常と判定された音声を取得したマイク18に近い設備機器(マイク18に対応して同じエリアに設置された設備機器)に接続された出力端子から信号を送信し、設備機器を作動させる。
【0025】
記憶部13は、半導体メモリやHDD等により構成される。記憶部13は、AI制御装置10の識別情報を記憶する識別情報記憶部131を有する。記憶部13はまた、後述するように、機械学習により生成され更新されるプログラム及びパラメータを含む学習済モデルを記憶する学習済モデル記憶部132(記憶部の一例)有する。なお、学習済モデルはサーバー装置30において記憶され、AI制御装置10には一時的に記憶されるだけでもよい。この場合、学習済モデル記憶部132は制御部11の一部に含まれていてもよい。また、記憶部13の一部又は全ては、別の記憶装置として備えられていてもよい。
【0026】
表示部15は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイにより構成される。表示部15はタッチパネルを含んでいてもよい。表示部15は、AI制御装置10に接続可能な別体のディスプレイであってもよい。
【0027】
操作部16は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等を備え、表示部15にされた画面にしたがってユーザーにより入力操作される。
【0028】
通信部17(第1通信部の一例)は、ネットワークに接続するためのインターフェースであり、例えば無線通信用のアンテナや有線で接続可能なネットワークカードである。通信部17は、LANやWAN等の内部ネットワーク及びインターネットを介してサーバー装置30に接続される。
【0029】
接点出力部19(外部インターフェースの一例)は、放送装置20、監視カメラ40等の設備機器に接続される出力端子を有し、設備機器作動指令部114が生成した信号を送信する。接点出力部19は複数の出力端子を有し、AI制御装置10は、出力端子毎に、エリアの異なる複数の放送装置20、複数の監視カメラ40のそれぞれに接続されていてもよい。
【0030】
1-1-2.サーバー装置30
サーバー装置30は、インターネットを介して複数のユーザーが使用するAI制御装置10に接続される。サーバー装置30は、設備機器を管理する事業者や機械学習を使用したサービスを提供する事業者によって管理される。
【0031】
図3に示すように、サーバー装置30(サーバー装置の一例)は、制御部31、RAM32、ROM34、記憶部33、及び通信部37を備える。
【0032】
制御部31(第2制御部の一例)は、例えばAIチップにより構成され、高速処理が可能なCPUやGPU等のプロセッサを含む。制御部31は、ROM34や記憶部33に記憶されるコンピュータープログラムをRAM32に読み出して実行することにより、サーバー装置30の各機能を実行する。制御部31は、とりわけ、入力データ管理部311及び学習部312の機能を実行する。
【0033】
入力データ管理部311は、各ユーザーのAI制御装置10から取得する入力データである音声データを記憶部33に記憶する。このとき、入力データ管理部311は、各ユーザーのAI制御装置10から送信されるユーザー識別情報、ラベル付き音声データ、及び使用可否情報に応じて、後述するユーザー管理テーブルを生成したり更新したりする。入力データ管理部311は更に、AI制御装置10からの要求に応じて、後述するユーザー管理テーブルを参照して、課金情報をAI制御装置10に送信する。
【0034】
入力データ管理部311は、各ユーザーのAI制御装置10から取得するラベル付き音声データに基づき、ラベル名間の類似性を判定するための基準情報を生成し、更新する。基準情報は、ラベル名の概念を所定の基準に従って関連付けた情報である。所定の基準は、例えば、一方のラベル名の概念(下位概念)が他方のラベル名の概念(上位概念)を承継する関係であるか否かや、ラベル名の概念同士が同義語や類義語であるか等の基準である。入力データ管理部311は、例えば、図8Bに示すような階層構造により表現される基準情報を生成し、記憶部33に記憶する。入力データ管理部311は、ユーザーのAI制御装置10からラベル付き音声データを取得したとき、例えば新たなラベル名が付されている場合は、当該基準情報を更新する。
【0035】
入力データ管理部311は、ユーザーのAI制御装置10からの要求に応じて関連度情報を生成する。関連度情報は、対象となるラベル付き音声データに対して、関連度の高いラベル付き音声データとその関連度とを含む。入力データ管理部311は、上述した基準情報を参照し、関連度を算出する。例えば、図8A及び図8Bに示すように、「女性の悲鳴」というラベル名を付した音声データに対して、同義語の「女性の悲鳴」(或いは女性の叫び声等)というラベル名を付した音声データの関連度は100%と算出される。また、例えば「女性の悲鳴」というラベル名を付した音声データに対して、「悲鳴」というラベル名を付した音声データの関連度は80%と算出される。一方、例えば「ドア開閉」というラベル名を付した音声データに対して、「悲鳴」というラベル名を付した音声データの関連度は0%と算出される。入力データ管理部311は、このように算出された関連度が比較的高い(例えば、60%以上)音声データを入力データ記憶部334より読み出し、関連度を含め、要求のあったAI制御装置10に送信するための関連度情報を生成する。
【0036】
学習部312は、AI制御装置10からの要求に応じて、取得した音声データに基づいて機械学習を行い、当該ユーザー毎の学習済モデルを構築する。具体的には、取得した音声データの特徴を自律的に学習し、未知音の入力に対して同特徴を有する音声を検知する学習済みモデルを構築する。
【0037】
機械学習は、例えば、教師あり学習の分類を実行する回帰アルゴリズムを用いて行われたり、ディープラーニングのニューラルネットワークを用いて行われる。機械学習は、いわゆる教師あり学習を実行する。ラベル付き音声データは正解データとして機械学習に使用される。なお、機械学習には、予め準備された非正解データ(例えば、「悲鳴」のラベル付け音声データに関し、「悲鳴」でない音声データ)が使用されてもよい。
【0038】
サーバー装置30は、既存のAIプラットフォーム、機械学習エンジン、その他機械学習サービスを使用して、既存の学習済モデルに対しラベル付き音声データを用いて訓練を行い、機械学習を実行してもよい。
【0039】
記憶部33(第2記憶部又は記憶部の一例)は、半導体メモリやHDD等により構成される。記憶部33は、ユーザー管理テーブル記憶部331、課金テーブル記憶部332、ユーザー毎に記憶された学習済モデル記憶部333、及びラベル別に音声データが記憶された入力データ記憶部334を含む。なお、記憶部33の一部又は全ては、データベースを含む別の記憶装置として備えられていてもよい。
【0040】
ユーザー管理テーブル記憶部331は、図4Aに示すようなユーザー管理テーブル331aを記憶する。ユーザー管理テーブル331aは、ユーザーの識別情報と、ラベルと、当該ラベルに対応する音声データの識別情報と、使用可否情報とを対応づけて記憶する。使用可否情報は、当該音声データを他のユーザーが使用することを許可するか否かを示す。なお、使用可否情報は、特定のユーザーのみ許可又は不許可としてもよい。例えば、競合会社を特定して不許可を設定できるようにしてもよい。
【0041】
課金テーブル記憶部332は、図4Bに示すような課金テーブル332aを記憶する。課金テーブル332aは、AI制御装置10がサーバー装置30により学習済モデルを生成する際の利用料金を計算し、AI制御装置10のユーザーに対して課金するためのテーブルである。例えば、課金テーブル332aは、学習済モデルを生成するための単価を示す情報である。例えば、課金テーブル332aは、ラベルを1つ付してラベル付き音声データを使用した機械学習の基本利用料金(図4Bの例では100円)と、機器学習の際に他のユーザーのラベル付き音声データを使用する場合の追加料金(図4Bの例では50円)と、ラベル付き音声データの使用可否情報が「許可」(肯定的な使用可否情報)であるときの追加費用(図4Bの例では-50円、すなわち50円の割引)とを含む。
【0042】
学習済モデル記憶部333は、学習部312により生成された学習済モデルをユーザー毎に記憶する。
【0043】
入力データ記憶部334は、ラベル別に音声データを記憶する。各ユーザーから取得されたラベル付き音声データは、入力データ管理部311により、ラベル別に分類され、入力データ記憶部334に記憶される。なお、音声データのラベル別の分類は、上述した基準情報に応じて行われてもよい。例えば、ラベル名「悲鳴」の場合、図8Bに示すように、上位概念である「悲鳴」の音声データには、下位概念である「女性の悲鳴」、「屋外の悲鳴」、「屋内の悲鳴」のラベル名が付与された音声データも含まれるように分類される。
【0044】
通信部37(第2通信部の一例)は、ネットワークに接続するためのインターフェースであり、例えば無線通信用のアンテナや有線で接続可能なネットワークカードである。通信部37は、LANやWAN等の内部ネットワーク及びインターネットを介して複数のユーザーのAI制御装置10に接続される。
【0045】
1-2.動作
図5から図10を参照しながら、AI制御装置10(図2)及びサーバー装置30の動作について説明する。
【0046】
1-2-1.AI制御装置10による機械学習のための動作
図5は、図2に示すAI制御装置10による機械学習を実行するための動作を示す。AI制御装置10は、入力データである音声データに対するラベルの入力を受け付ける(S101)。このとき、表示部15は、図7に示すような表示インターフェース15aを表示する。表示インターフェース15a(ラベル入力インターフェースの一例)は、ラベルを入力するためのインターフェースと、データの使用可否情報を入力するためインターフェースとを含む。使用可否情報は、当該音声データを他のユーザーが使用することの許可/不許可を示す。AI制御装置10のユーザーは、操作部16を介して、対象の音声データに対するラベルを入力する。例えば、キーワード「女性の悲鳴」というラベルを入力する。なお、ラベルの入力はユーザーにより直接入力されてもよいし、予め設定されたラベルのリストを表示させることによりユーザーが選択できるようにしてもよい。
【0047】
入力データ取得部111により音声データが取得され(S102)、ラベリング部112により、ステップS101で受け付けられたラベルが音声データに付与される(S103)。
【0048】
制御部11は、ユーザーの識別情報に対応づけたラベル付き音声データを、データの使用可否情報とともに、通信部17を介してサーバー装置30に送信する(S104)。
【0049】
サーバー装置30から、上述した関連度情報を受信し、表示部15に表示する(S105)。例えば、表示部15は、図8Aに示すような表示インターフェース15bを表示する。表示インターフェース15bは、当該音声データに対する、他のユーザーの各音声データの関連度(%)や、各音声データのラベル名やサンプル数を表示する。この表示インターフェース15bを介して他のユーザーの音声データを選択入力することにより、当該ユーザーは、他のユーザーの音声データを使用する旨の要求をサーバー装置30に送信する。
【0050】
なお、関連度情報として表示される他のユーザーの音声データは、当該他のユーザーが使用可否情報において許可しているデータに限られる。
【0051】
他のユーザーの音声データを使用するとの入力を受け付けると(S106のYes)、制御部11は、選択された他のユーザーのデータの使用要求を、通信部17を介してサーバー装置30に送信する(S107)。
【0052】
サーバー装置30から課金情報を受信し、表示部15に表示する(S108)。
【0053】
他のユーザーにより収集された音声データを使用する場合(S106のYes)、表示部15は、図9に示すような表示インターフェース15cを表示する。表示インターフェース15cは、サーバー装置30による今回の機械学習を利用するための料金(機械学習利用料金)に加え、要求した他のユーザーの音声データの使用料金を表示する。
【0054】
他のユーザーの音声データを全く使用しない場合(S106のNo)、つまり図8Aの表示インターフェース15bにおいて、「全て使用せず、機械学習を開始する」が選択された場合、表示部15は、機械学習利用料金のみを、課金情報として表示部15に表示する。
【0055】
当該ユーザーは、表示インターフェース15cを介して、提示された課金情報に承諾するか否かを入力する。承諾することが入力されると、制御部11は、サーバー装置30に対し機械学習の開始を要求する(S109)。
【0056】
ステップS106において、他のユーザーの音声データを全く使用しない場合(S106のNo)においては、表示部15は、課金情報を表示しないようにしてもよい。
【0057】
ステップS101~S103の順序は、上記に限定されない。音声データを取得してから、ラベル入力を受け付け、ラベリングを実行してもよい。
【0058】
1-2-2.サーバー装置30による機械学習の動作
図6は、サーバー装置30の動作を示す。制御部31の入力データ管理部311は、AI制御装置10から受信した音声データ及びデータの使用可否情報を取得する(S111)。入力データ管理部311は、受信したユーザーの識別情報を判定し(S112)、受信したラベル付けされた音声データをラベル毎に入力データ記憶部334に分類し記憶すると共に、図4Aに示すユーザー管理テーブル331aを更新する(S113)。
【0059】
入力データ管理部311は、上述した関連度情報を生成し、当該ユーザーの識別情報に対応するAI制御装置10に送信する(S114)。このとき、入力データ管理部311は、他のユーザーの音声データの使用可否情報も参照して、使用不可の他のユーザーの音声データの関連度情報は生成せず、除外する。
【0060】
関連度情報の生成は次のように実行される。入力データ管理部311は、ユーザーからラベル付き音声データのラベル(以下、対象ラベルと呼ぶ)と、入力データ記憶部334において分類され記憶されている複数の音声データのラベル(他のラベル)とを比較する。入力データ管理部311は、対象ラベルに対し、図8Bに示すような基準に基づき対象ラベルに対する他のラベルの関連度(%)を算出する。入力データ管理部311は、他のラベルのうち関連度が所定値以上(例えば、60%以上)のラベルが付与された音声データを特定する。入力データ管理部311は、ラベルの関連度が所定値以上の音声データを、入力データ記憶部334より抽出して、当該音声データと算出した関連度とを含む関連度情報を生成し、AI制御装置10に送信する。
【0061】
関連度情報を参照したAI制御装置10より他のユーザーの音声データの使用要求を受信した場合(S115のYes)、当該他のユーザーの音声データを入力データ記憶部334より取得する(S116)。
【0062】
入力データ管理部311は、課金情報を生成し、AI制御装置10に送信する(S117)。ステップS117では、入力データ管理部311は、ステップS111で取得した使用可否情報が「使用可」であるか「使用不可」に応じて、及びステップS115での使用要求の有無に応じて、課金テーブル332aを参照して課金金額算出し、当該金額を示す課金情報を生成する。図4Bに示す課金テーブル332aを参照すると、1つのラベル(本実施形態の例では「悲鳴」)が付された音声データに基づく学習済モデルを生成する基本料金ある100円をベースとして、ステップS111で取得した使用可否情報が「使用可」である場合には50円が割り引かれ、ステップS115で使用要求を受信した(S115のYes)場合には50円が追加されて、課金金額が算出される。
【0063】
学習部312により機械学習を実行する(S118)。他のユーザーの音声データを使用しない場合(S115のNo)、当該ユーザーから取得した音声データのみに基づき機械学習を実行する。これにより、当該ユーザーから取得した音声データの特徴を学習して、同特徴を有する未知音を検知する学習済モデルが構築される。他のユーザーの音声データを使用する場合(S115のYes)、当該ユーザーから取得した音声データに加えて指定された他のユーザーの音声データに基づき、機械学習を実行する。これにより、当該ユーザーから取得した音声データ及び指定された他のユーザーの音声データの特徴を学習して、同特徴を有する未知音を検知する学習済モデルが構築される。
【0064】
機械学習を終了すると(S119のYes)、生成された学習済モデルを、当該ユーザーの識別情報に対応させて学習済モデル記憶部333に記憶する(S120)。
【0065】
生成された学習済モデルは、対応するユーザーのAI制御装置10に送信され、記憶部13の学習済モデル記憶部132に記憶される。サーバー装置30からAI制御装置10への学習済モデルの送信は、機械学習の終了に応答して自動的に行われてもよいし、AI制御装置10からの要求に応じて行われてもよい。
【0066】
1-2-3.AI制御装置10による異常検知動作
AI制御装置10は、サーバー23により生成された学習済モデルを用いて異常検知を行う。図10は、AI制御装置10による異常検知の動作を示す。AI制御装置10は、マイク18からの音声を受信する(S121)。
【0067】
AI制御装置10の制御部11の異常検知部113は、学習済モデル記憶部132に記憶された学習済モデルを読み出して実行し、受信した音声が、上述した学習済モデルに基づき異常か否かの判定を行う(S122)。すなわち、学習済モデルにより、学習された特徴を有する音声が検知されることで、異常が発生したこと(異常あり)を判定する。これは、もともとユーザーが図5のステップS101~S103にて付したラベル(本実施形態では「悲鳴」)に対応する音声を検知して異常を判定することを意味する。本実施形態では、悲鳴に対応する音声が検知された場合、異常有りと判定する(S123のYes)。設備機器作動指令部114は、異常有りとの判定に応じて、接点出力部19を介して信号を送信する(S124)。上述したように、複数のマイク18が接続されている場合、設備機器作動指令部114は、異常と判定した音声を受信したマイク18に対応する放送装置20や監視カメラ40に、接点出力部19を介して信号を送信する(S124)。
【0068】
設備機器作動指令部114により、指定された設備機器を作動させる(S125)。例えば、当該設備機器をONにするとともに、放送装置20であれば警告音声を出力し、監視カメラ40であれば映像の録画を開始する。
【0069】
AI制御装置10は、機械学習のための動作(図5のステップS101~S109)を実行するモード(機械学習モード)と、異常検知動作(図10のステップS121~S125)を実行するモード(異常検知モード)とを有し、これらのモードを切り替えてそれぞれの動作を実行するようにしてもよい。マイク18は、機械学習モード時には、ラベル付き音声データを取得するために機能し、異常検知モード時には、異常判定のために未知音を取得するために機能する。AI制御装置10は、学習済モデル記憶部132に学習済モデルが記憶されていないときは機械学習モードで動作し、学習済モデル記憶部132に学習済モデルが記憶されたことに応じて自動的に異常検知モードに切り替わるように構成されてもよい。
【0070】
1-3.特徴等
上記実施形態1に係るAI制御装置10は、入力データ(例えば、音声データ)を取得し、入力データを、AI制御装置10のユーザーを識別可能な識別情報と対応付けてサーバー装置30に送信する。AI制御装置10は、サーバー装置30により、他のユーザーの学習済モデルとは別に生成された学習済モデルであって、入力データの特徴を学習して未知の入力データからその特徴を有する入力データを検知する学習済モデルを実行することにより、所定のイベント(例えば、悲鳴)の発生を検知する。このため、学習済モデルの生成においてユーザーの負担を軽減でき、且つ学習済モデルを使用して任意のイベント検知手段を実現できる。
【0071】
上記実施形態1に係るAI制御装置10は、ラベルの入力を受け付けるための表示インターフェース15aを表示部15に表示させ、ラベルの入力に応じて入力データに対しラベルを付ける。このため、ユーザーは簡単に入力データに対してラベリングを実行することができる。
【0072】
上記実施形態1に係るAI制御装置10は、サーバー装置30により算出された、ラベル付き入力データと他のユーザーのラベル付き入力データとの関連度を示す関連度情報を表示部15に表示させる。このため、ユーザーは、他のユーザーの入力データであって且つ関連度の高い入力データを選択的に使用することが可能となり、ユーザーが自ら大量のサンプル音を収集してラベル付き音声データを作成する必要性がなくなる。よって、学習済モデルの生成においてユーザーの負担を更に軽減できると共に、学習済モデルの精度を向上させることができる。
【0073】
上記実施形態1に係るサーバー装置30は、複数のユーザーのAI制御装置10から、各ユーザーの識別情報と対応付けた入力データを受信し、受信した入力データを記憶部33に記憶し、同入力データを使用して、ユーザー毎に、入力データの特徴を学習して、未知の入力データから同特徴を有する入力データを検知する学習済モデルを生成し、生成された学習済モデルを、ラベル別に記憶部33にさせる。このため、複数のユーザー間で入力データをシェアすることが可能となり、学習済モデルの生成においてユーザーの負担を更に軽減できると共に、学習済モデルの精度を向上させることができる。
【0074】
上記実施形態1に係るサーバー装置30は、各ユーザーの入力データの使用可否情報を記憶部33に記憶し、管理する。このため、ユーザーの入力データを他のユーザーが使用することは制限されるため、入力データは保護される。
【0075】
上記実施形態1に係るAI制御装置10及びサーバー装置30は、サーバー装置30により管理される上記使用可否情報と課金情報とに基づき、ユーザーが機械学習を使用する場合の料金がユーザーに提示される。課金は、ユーザーが自身の入力データの使用を許可しているか否かに応じて、或いは、他のユーザーの入力データの使用量に応じて、異なる。よって、ユーザーは、自身の入力データの使用を許可することや、他のユーザーの入力データを使用することに対しインセンティブが与えられ、各ユーザーの機械学習における入力データの使用を促進することができる。
【0076】
上記実施形態1に係るAI制御装置10は、学習済モデルを用いた異常検知に基づいて、接続された放送装置20や監視カメラ40を作動させる。このため、AI制御装置10は汎用的な構成をとることができ、ユーザーとって利便性の高い装置を実現できる。
【0077】
1-4.変形例
上記例においては、AI制御装置10からの入力データの送信時に機械学習を実行していたが、機械学習を実行するか否かは、ユーザーからの入力を待ってから行うようにしてもよい。例えば、ユーザーが複数回にわたって入力データを入力し、ある程度のデータ量が得られたときに機械学習を実行するようにしてもよい。
【0078】
上記例においては、AI制御装置10が異常を判定した場合、設備機器を作動させていたが、これに限定されない。例えば、AI制御装置10は、施設の管理者や警備室に通報を行うようにしてもよい。
【0079】
AI制御装置10は、自身の入力データがなくとも、他のユーザーのデータの使用のみができるようにしてもよい。例えば、図7に示す表示インターフェース15aに対してラベルの入力操作後(図5のS101)、AI制御装置10はサーバー装置30に対し、他のユーザーのデータの使用要求を送信する(同S107)。表示部15には、当該ユーザーが入力したラベルと、他のユーザーのラベル付き入力データとの関連度情報及び課金情報を表示(同S105及びS108)する。ユーザーが関連度情報に基づき他のユーザーのラベル付き入力データを選択し、課金を承諾すると、サーバー装置30に機械学習要求を送信する(同S109)。サーバー装置30は、当該ユーザーについて、指定された他のユーザーの入力データに基づき機械学習を実行する。
【0080】
上記例において、データの使用可否情報は、ラベル付き入力データと共にサーバー装置30に送信していたが、別途送信できるようにしてもよい。また、ユーザーは、入力操作を介して、いつでもデータの使用可否情報を変更できるようにしてもよい。
【0081】
2.その他実施形態
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、各実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略等を行った実施形態にも適用可能である。また、上記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。
【0082】
(1)実施形態1においては、AI制御装置10は、接点出力部19を介しての接点出力により設備機器を作動させたが、これに限定されない。AI制御装置10は、通信部17を介して、設備機器を作動させるようにしてもよい。
【0083】
この場合、各設備機器は、IPアドレスを有するネットワーク接続部を有する。図1に示すAI制御装置10の制御部11の設備機器作動指令部114は、異常が判定された場合、設備機器を作動させるための信号を生成し、通信部17を介して設備機器のIPアドレス宛てに送信し、実施形態1と同様に設備機器を作動させる。更に、上述したように、異なるエリアにわたって複数の設備機器(放送装置20、監視カメラ40)と、これらに対応する複数のマイク18を設置する場合、マイク18もIP化して通信部17を介して接続されるようにしてもよい。このような構成の場合、各マイク18の位置情報と設備機器の位置情報とを登録しておき、異常と判定された音声を取得したマイク18の近傍の設備機器を作動させるように構成してもよい。AI制御装置10(記憶部13)又はAI制御装置10に接続される管理コンピューター(図示省略)は、各マイク18の識別情報(IPアドレス)と施設内における各マイク18が設置された位置情報とを対応付けたマイク情報(図11A)と、各設備機器の識別情報(IPアドレス)と、施設内における設備機器が設置された位置情報とを対応づけた設備機器情報(図11B図11C)を保持する。異常が検知された場合、設備機器作動指令部114は、図11Aに示す情報を参照して、異常と判定された音声を取得したマイク18の位置情報を特定する。設備機器作動指令部114は更に、図11Bに示すスピーカーの位置情報や図11Cに示す監視カメラの位置情報から、当該マイク18に近い設備機器を特定し、当該設備機器に信号を送信して実施形態1と同様に作動させる。例えば、施設内に複数設置される放送装置20がある場合、AI制御装置10は、図11Bに示す位置情報を参照し、「悲鳴」と判定された音を検知したマイク18に近傍にある一つ又は複数の放送装置20のIPアドレスを指定して、信号を送信し、当該放送装置20をONにし、警告音声を出力させる。
【0084】
(2)実施形態1において、入力データは音声データを例にしていたがこれに限定されない。例えば、入力データは画像データであってもよい。この場合、AI制御装置10は、マイク18の代わりに画像を取得するカメラを備えるとよい。また、監視カメラ40から取得される画像データを用いてもよい。画像データにおいて、ユーザーが所望するラベル、例えば、「不審な動作」、「人同士が争っている動作」、「人が倒れた状態」等のキーワードをラベルとする画像データを入力データとして、機械学習を実行し、画像データの特徴を学習して未知の画像(映像)から当該特徴を有する画像を検知する学習済モデルを生成する。また、画像データから異常を検知した場合は、実施形態1と同様に、設備機器のONやその他の作動(例えば、放送装置20のONや警告音声の出力、或いは監視カメラ40による画像の録画開始等)を開始する。
【0085】
(3)実施形態1及び上記例において、サーバー装置30の入力データ管理部311は、ユーザーの入力データのラベル名間の類似度に応じて関連度を算出していたが、これに限定されない。ラベル名間の類似度に加えて或いは代えて、入力データそのものの類似度を算出してもよい。例えば、入力データが音声データである場合、周波数の高さや振幅の大きさ等の音声データの特徴パラメータの数値の近さに応じて算出するようにしてもよい。入力データが画像データの場合、画像中の動作パターンや姿勢パターンの類似度を関連度として算出するようにしてもよい。
【0086】
更に、関連度は、ユーザー間の業態の類似度や、AI制御装置10を使用する施設の種類の類似度等を加味して、算出してもよい。
【0087】
(4)実施形態1及び上記例において、サーバー装置30は、記憶部33にユーザー以外から取得したデータセット(例えば、AIプラットフォームや機械学習サービスを提供する会社から提供されるデータセット)を予め記憶しておき、要求のあったユーザーに当該データセットの使用を許可してもよい。
【0088】
(5)実施形態1及び上記例において、AI制御装置10は、ユーザーがラベルを入力することにより入力データにラベルを付与しているが、これに限定されない。サーバー装置30は、AI制御装置10からラベル付けされていない入力データを取得し、自動的に入力データを解析し、ラベルを付与するようにしてもよい。
【0089】
(6)実施形態1及び上記例において、AI制御装置10は、機械学習のための機能と異常検知機能との双方を備えているが、これに限定されない。ユーザーは、AI制御装置10ではなく、他のコンピュータ端末により入力データにラベル付けしてサーバー装置30に送信し、機械学習を実行するようにしてもよい。AI制御装置10は、学習済モデルをサーバー装置30より取得し、異常検知動作を行うようにしてもよい。
【0090】
(7)本明細書において異常検知とは、危険を伴うような事象の検知に限定されず、ユーザーが検知を所望するあらゆる状態や動作、すなわち所定のイベントの検知を含み得る。
【0091】
(8)AI制御装置10及びサーバー装置30の制御部11、31は、所定の機能を実現するように設計された専用の電子回路で構成されるプロセッサを含んでもよい。また、制御部11,31は、DSP、FPGA、ASIC等の種々のプロセッサで実現してもよい。プロセッサは、1つ又は複数のプロセッサで構成してもよい。
【0092】
(9)図5図6、及び図10に示すフローチャートの処理の実行順序は、必ずしも、上記実施形態の記載に制限されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、実行順序を入れ替えたり、並行して実行されたりすることができる。更に、1つのステップに複数の処理が含まれる場合には、その1つのステップに含まれる複数の処理は、1つの装置で実行する他、複数の装置で分担して実行することができる。
【0093】
(10)AI制御装置10及び/又はサーバー装置30により実行される機械学習方法及び異常検知方法、同方法を実行するコンピュータープログラム、及び同コンピュータープログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、本開示の範囲に含まれる。コンピュータープログラムは電気通信回線、無線又は有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク等を経由して取得されてもよい。
【0094】
(11)本開示によるAI制御装置10及び/又はサーバー装置30の一部又は全ては、1つの機能をネットワークを介して複数の装置で分担、共同して処理するクラウドコンピューティングの構成をとることができる。本明細書において、装置とは、複数の構成要素(装置、モジュール(部品)等)の集合を意味する場合を含み、すべての構成要素が同一筐体中にあるか否かは問わない。また、全て又は一部の構成要素は、施設以外の場所に設置されていてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1…システム,10…AI制御装置,11…制御部,12…RAM,13…記憶部,14…ROM,15…表示部,15a~15c…表示インターフェース,16…操作部,17…通信部,18…マイク,20…放送装置,30…サーバー装置,31…制御部,32…RAM,33…記憶部,34…ROM,37…通信部,40…監視カメラ,111…入力データ取得部,112…ラベリング部,113…異常検知部,114…設備機器作動指令部,131…識別情報記憶部,132…学習済モデル記憶部,311…入力データ管理部,312…学習部,331…ユーザー管理テーブル記憶部,331a…ユーザー管理テーブル,332…課金テーブル記憶部,332a…課金テーブル,333…学習済モデル記憶部,334…入力データ記憶部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0096】
【文献】特許第6527187号明細書
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図11C