(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】脊椎手術用器具、システム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/88 20060101AFI20231221BHJP
A61B 17/92 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
A61B17/88
A61B17/92
(21)【出願番号】P 2022512054
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2021012453
(87)【国際公開番号】W WO2021200524
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2020067708
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】長井 一弘
(72)【発明者】
【氏名】中田 文也
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/056125(WO,A1)
【文献】特表2010-533556(JP,A)
【文献】特表2011-509712(JP,A)
【文献】特表2006-518657(JP,A)
【文献】特表2005-508694(JP,A)
【文献】特表2000-511453(JP,A)
【文献】特表2017-510380(JP,A)
【文献】特開2017-056014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/88
A61B 17/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端と第2端とを有し、ロッドを脊椎用インプラントに設けられた収容溝に固定するための押圧部材を前記第1端に保持可能な棒形状の保持部と、
前記保持部が配された貫通部を有した、管形状のガイド部と、
前記ガイド部より前記第2端に近い位置に配され、前記保持部が中を貫通する管形状のロック部と、を備え、
前記ガイド部は、前記保持部から前記第1端に向かう軸方向に沿って突出し、前記収容溝の対向する一対の側壁部に当接可能な突出部を含み、
前記保持部は、前記ロック部と当接可能な第2当接部を備え、
前記第2当接部が前記ロック部に当接した状態で、前記ロック部は前記ガイド部を前記軸方向に付勢する、
脊椎手術用器具。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記側壁部の頂部に当接可能な第1当接部をさらに有している、
請求項
1に記載の脊椎手術用器具。
【請求項3】
前記第1当接部は、周縁部を有し、前記ガイド部は、前記第1当接部と前記周縁部とにより形成された空間に前記側壁部を収容可能である、
請求項2に記載の脊椎手術用器具。
【請求項4】
前記保持部は、前記第1当接部が前記側壁部の頂部に当接した状態で、前記ガイド部に対して前記軸方向に沿って変位可能である、
請求項
2または3に記載の脊椎手術用器具。
【請求項5】
前記突出部は、前記一対の側壁部の、たがいに対向する一対の面の両方に同時に当接可能である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の脊椎手術用器具。
【請求項6】
前記第2当接部は、弾性部材を備えている、
請求項
1から5のいずれか1項に記載の脊椎手術用器具。
【請求項7】
前記第2当接部が前記ロック部に当接しており、かつ、前記ガイド部が前記第1端から前記第2端に向かう軸方向への力を受けていない状態において、前記保持部に保持された前記押圧部材は、前記ガイド部に向けられ、前記側壁部の頂部に当接可能な第1当接部より前記第2端に近い位置にある、
請求項
1から6のいずれか1項に記載の脊椎手術用器具。
【請求項8】
前記突出部は、板形状を有している第1突出部と、前記第1突出部と略平行な板形状を有している第2突出部とから成る、
請求項1から7のいずれか1項に記載の脊椎手術用器具。
【請求項9】
前記押圧部材の側面には雄ネジが形成されており、前記収容溝を形成する側壁部の内側の面の少なくとも一部には、前記雄ネジと螺合する雌ネジが形成されており、
前記保持部は、前記第2端と前記第1端とを結ぶ線を回転軸とする回転が可能であり、
前記保持部に保持された前記押圧部材は、前記回転によって前記収容溝内へねじ込まれる、
請求項1から8のいずれか1項に記載の脊椎手術用器具。
【請求項10】
前記保持部は、前記第2端の近傍に、操作者が把持するための把持部を有する、
請求項1から9のいずれか1項に記載の脊椎手術用器具。
【請求項11】
前記保持部は、前記押圧部材を固定可能な固定部を前記第1端に有する、
請求項1から10のいずれか1項に記載の脊椎手術用器具。
【請求項12】
複数の脊椎用インプラントと、ロッドと、複数の押圧部材と、脊椎手術用器具を備え、
前記脊椎用インプラントは、前記ロッドを収容する収容溝を備え、
前記押圧部材は、前記ロッドを前記収容溝に固定するために前記脊椎手術用器具を用いて取り付けることができ、
前記脊椎手術用器具は、
第1端と第2端とを有し、前記押圧部材を前記第1端に保持可能な棒形状の保持部と、
前記保持部が配された貫通部を有した管形状のガイド部と、
前記ガイド部より前記第2端に近い位置に配され、前記保持部が中を貫通する管形状のロック部と、を備え、
前記ガイド部は、前記保持部から前記第1端に向かう軸方向に沿って突出し、前記収容溝の対向する一対の側壁部に当接可能な突出部を含み、
前記保持部は、前記ロック部と当接可能な第2当接部を備え、
前記第2当接部が前記ロック部に当接した状態で、前記ロック部は前記ガイド部を前記軸方向に付勢する、
システム。
【請求項13】
前記ガイド部は、前記側壁部の頂部に当接可能な第1当接部を有しており、
前記第1当接部は、周縁部を有し、前記ガイド部は、前記第1当接部と前記周縁部とに
より形成された空間に前記側壁部を収容可能である、
請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記複数の脊椎用インプラントは、ペディクルスクリュー、および/または、脊椎用ラミナーフックを含む、
請求項12または13に記載のシステム。
【請求項15】
前記複数の脊椎用インプラントは、前記ロッドを連結するコネクタを含む、
請求項12から14のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は脊椎手術用器具、ならびに脊椎用インプラントおよび脊椎手術用器具のシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の脊椎を互いに固定する固定ロッドを保持する脊椎用インプラントが知られている。脊椎用インプラントには、固定ロッド、脊椎用スクリュー、コネクタ、および押圧部材が含まれる。押圧部材は、固定ロッドを固定するための部材であり、セットスクリューまたはクロージャートップなどと呼称される。
【0003】
脊椎用インプラントを患者の体内に設置するための手術を円滑に実施できるように工夫された機構・構造を備えるさまざまな脊椎手術用器具が考案されている。公知のものとしては、延設部材を備えるツールアセンブリがある。
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様に係る脊椎手術用器具は、第1端と第2端とを有し、ロッドを脊椎用インプラントに設けられた収容溝に固定するための押圧部材を前記第1端に保持可能な棒形状の保持部と、前記保持部が配された貫通部を有した、管形状のガイド部と、を備え、前記ガイド部は、前記保持部から前記第1端に向かう軸方向に沿って突出し、前記収容溝の対向する一対の側壁部に当接可能な突出部を含む。
【0005】
本開示の一様態に係るシステムは、複数の脊椎用インプラントと、ロッドと、複数の押圧部材と、脊椎手術用器具を備え、前記脊椎用インプラントは、前記ロッドを収容する収容溝を備え、前記押圧部材は、前記ロッドを前記収容溝に固定するために前記脊椎手術用器具を用いて取り付けることができ、前記脊椎手術用器具は、第1端と第2端とを有し、前記押圧部材を前記第1端に保持可能な棒形状の保持部と、前記保持部が配された貫通部を有した管形状のガイド部と、を備え、前記ガイド部は、前記保持部から前記第1端に向かう軸方向に沿って突出し、前記収容溝の対向する一対の側壁部に当接可能な突出部を含む。
【0006】
本開示の一様態によれば、脊椎用スクリューおよびコネクタのいずれの収容部に対しても、押圧部材を正確に取り付けることが可能な脊椎手術用器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の実施形態に係る脊椎手術用器具を含むシステムの一例を示す模式図である。
【
図2】脊椎用インプラントの一例を示す外観図である。
【
図7】保持部が押圧部材を保持する機構の一例を示す模式図である。
【
図10】標準スクリューへの押圧部材の取り付けの様子を示す模式図である。
【
図11】リダクションスクリューへの押圧部材の取り付けの様子を示す模式図である。
【
図12】コネクタへの押圧部材の取り付けの様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
固定ロッドは、脊椎用スクリューおよび/またはコネクタの収容部に収容された状態で、押圧部材によって固定される。脊椎用スクリューには、例えば、標準スクリューおよびリダクションスクリュー等がある。
【0009】
標準スクリューとリダクションスクリューとでは、収容部が形成されているスクリューヘッドの形状が異なっている。一方、コネクタには、収容部を複数備えたもの、および、ロッド状部分を備えたもの等がある。コネクタは、脊椎用スクリューとは異なる形状を有している。従来、押圧部材を収容部に取り付ける場合、医師は、押圧部材を取り付ける対象に応じて、使用する器具を変更したり、使用する器具の先端部を交換したりする必要があった。
【0010】
本開示の一態様は、脊椎用スクリューおよびコネクタのいずれの収容部に対しても、押圧部材を正確に取り付けることが可能な脊椎手術用器具を提供する。
【0011】
〔実施形態〕
以下、本開示の一実施形態について、詳細に説明する。
【0012】
(システム100)
まず、本開示の一実施形態に係るシステム100について、
図1を用いて説明する。
図1は、脊椎手術用器具1を含むシステム100の一例を示す模式図である。
【0013】
システム100は、脊椎用インプラント60および脊椎手術用器具1のシステムである。システム100は、複数の脊椎用インプラント60、固定ロッド70(ロッド)、複数の押圧部材50、および脊椎手術用器具1を含んでいる。
【0014】
<脊椎用インプラント60>
各脊椎用インプラント60は、固定ロッド70を収容する収容溝63を備えている。
図1には、脊椎用インプラント60が標準スクリューである場合を例に挙げて図示している。脊椎用インプラント60は、標準スクリューに限定されず、リダクションスクリューであってもよい。脊椎用インプラント60は、さらにペディクルスクリュー、リダクションヘッド付きペディクルスクリュー、および/または、脊椎用ラミナーフックを含んでいてもよい。また、脊椎用インプラント60は、さらに固定ロッド70を連結するコネクタ67を含んでもよい。脊椎手術用器具1は、いずれの脊椎用インプラント60に対しても押圧部材50を取り付ける際にも、使用可能である。ここで、リダクションスクリューは、リダクション処理(脊椎すべり症の患者の患部であって人体の前側にずれた椎骨を後方へ引っ張って正常な位置へ戻すための処理)を行うのに適している脊椎用インプラント60である。コネクタ67は、例えば、複数の固定ロッド70同士が並列して継がれる箇所に用いられる脊椎用インプラント60である。
【0015】
図2は、脊椎用インプラント60の一例を示す外観図である。脊椎用インプラント60の材質としては、例えば、純チタン、チタン合金、コバルト合金、コバルト-クロム合金またはステンレスなどの金属が挙げられる。チタン合金としては、例えば、Ti-6Al-4V、Ti-15Mo-5Zr-3AlまたはTi-6Al-2Nb-1Taなどが挙げられる。
【0016】
脊椎用インプラント60は、台部61および側壁部62を有していてもよい。台部61の、脊椎と対向する側には、脊椎にねじ込まれるネジ部(
図1参照)が配されていてもよい。脊椎にねじ込まれるネジ部は、システム100に直接関係しない。それゆえ、以降の図に示す脊椎用インプラント60では、脊椎にねじ込まれるネジ部の図示を省略している。
【0017】
台部61は、脊椎と対向する側の第1面と、脊椎と対向する面と反対側の面であって、側壁部62が形成されている側の第2面とを有している。
【0018】
側壁部62は、台部61の第2面から突出している。一例において、一対の側壁部62が略平行に第2面から突出して形成される。一対の側壁部62のそれぞれは、頂部69を有している。
【0019】
収容溝63は、台部61および側壁部62とで囲まれた溝である。収容溝63は、互いに向かい合う側壁部62の間に形成される溝であってもよい。例えば、収容溝63は、底面を台部61によって形成されていてもよい。収容溝63は、側面を台部61の第2面から突出した1対の側壁部62により形成されていてもよい。収容溝63には、固定ロッド70が収容され得る。また収容溝63には、押圧部材50が取り付けられる。
【0020】
<固定ロッド70>
固定ロッド70は、互いに隣り合う脊椎用インプラント60同士を接続する部材である。すなわち、本実施形態の脊椎用インプラント60は、その複数がスクリュー部を介して患者の椎骨に係合される。そして、椎骨に係合された複数の脊椎用インプラント60のうち、互いに隣り合う脊椎用インプラント60同士が、固定ロッド70によって接続される。例えば、
図1に示すように、脊椎用インプラント60aと脊椎用インプラント60bとを接続する固定ロッド70は、脊椎用インプラント60aの収容溝63に収容され、かつ、脊椎用インプラント60bの収容溝63にも収容される。
【0021】
例えば、第1腰椎と第2腰椎とを固定する場合、固定ロッド70は、片端を第1腰椎に設置された脊椎用インプラント60に固定され、他端を第2腰椎に設置された脊椎用インプラント60に固定される。
【0022】
<押圧部材50>
押圧部材50の構成について、
図3を用いて説明する。
図3は、本開示の実施形態に係る押圧部材50の一例を示す斜視図である。
【0023】
押圧部材50は、固定ロッド70を脊椎用インプラント60に設けられた収容溝63に固定する部材である。押圧部材50は、セットスクリューまたはクロ―ジャートップであってよい。
【0024】
押圧部材50は、
図3に示すように、環形状または筒形状であってもよい。すなわち、押圧部材50は、外側面53および内側面54を有している。押圧部材50は、外側面53に雄ネジ51が形成されてよい。押圧部材50の側面に形成されている雄ネジ51は、収容溝63の側壁部62に形成された雌ネジ64と螺合可能である(
図1、
図2参照)。この構成によれば、押圧部材50は、収容溝63へねじ込まれることによって固定され得る。
【0025】
<脊椎手術用器具1>
脊椎手術用器具1を構成する各部材について、
図4および
図5を用いて説明する。
図4は、脊椎手術用器具1の一例を示す外観図である。
図5は、
図4と同様、脊椎手術用器具1の一例を示す外観図である。
図5は、説明の簡略化のために、後述するロック部30およびガイド部20の一部(例えば、第1ガイド部21)の図示が省略されている。また、
図5は、ガイド部20の一部が断面で示されている。
【0026】
脊椎手術用器具1は、押圧部材50を各脊椎用インプラント60の収容溝63に取り付ける(仮固定する)ための器具である。脊椎手術用器具1は、例えば、押圧部材50を収容溝63に仮固定するためのインサーターであってもよい。あるいは、脊椎手術用器具1は、脊椎用インプラントの収容溝63に仮固定された押圧部材50を、所定の強度で収容溝63にねじ込んで固定するためのドライバーであってもよい。
【0027】
脊椎手術用器具1は、例えば、金属、高分子あるいはそれらの複合体から構成される。脊椎手術用器具1を構成する金属は、SUS316鋼等であってもよい。
【0028】
脊椎手術用器具1は、保持部10およびガイド部20を有していてもよい。
図4に示すように、脊椎手術用器具1は、さらに、ロック部30を備えていてもよい。
【0029】
[保持部10]
保持部10について、
図6を用いて説明する。
図6は、保持部10の一例を示す外観図である。保持部10は、押圧部材50を保持可能な部材である。保持部10は、
図6に示すように第1端11と第2端12とを有する円柱状の棒形状である。ここで、第1端11は、保持部10におけるガイド部20が配置される側の端部を意図しており、第2端12は、第1端11の反対側の端部を意図している。
【0030】
本明細書では、保持部10として略円柱状の棒形状の部材を用いる場合を例に挙げて説明するが、保持部10の形状は円柱状に限定されず、楕円柱状、四角柱状、および三角柱状などであってもよい。
【0031】
保持部10は、
図4および
図5に示すように、第2端12近傍に、把持部40を有していてもよい。把持部40は、例えば、脊椎手術用器具1を用いる医師(操作者)によって把持されるハンドルである。医師は、把持部40を把持して、脊椎手術用器具1を自在に操作することができる。例えば、医師は、保持部10の第2端12と第1端11とを結ぶ線を回転軸として回転させることができる。この回転により、医師は、保持部10の第1端11に保持されている押圧部材50を収容溝63に容易にねじ込むことができる。
【0032】
保持部10において押圧部材50が保持される機構について、
図7を用いて説明する。
図7は、保持部10が押圧部材50を保持する機構の一例を示す模式図である。
図7では、押圧部材50が第1端11近傍に配置された場合における、押圧部材50近傍の断面を模式的に示している。
【0033】
保持部10は、押圧部材50を保持するために、第1端11に形成された固定部14を備える。固定部14は、ネジ14aおよび板バネ部材14bを含む。ネジ14aは、板バネ部材14bの第2端12に近い部位を保持部10に固定する部材である。板バネ部材14bの第1端11に近い部位は、保持部10の中心から外側に向かう方向に付勢されている。板バネ部材14bの第1端11に近い部位が押圧部材50に当接し、摩擦力によって押圧部材50を固定することにより、保持部10に押圧部材50を保持する。このように、保持部10は、押圧部材50を固定可能な固定部14を第1端11に有していてもよい。
【0034】
なお、固定部14は、板バネ部材14bを複数備える構成であってもよい。また、固定部14は、板バネ部材14bとネジ14aとの組み合わせた構成に限定されない。例えば、固定部14は、ボールプランジャーを含む構成であってもよい。
【0035】
保持部10は、後述するロック部30と当接可能な第2当接部13をさらに備えてもよい。
【0036】
第2当接部13は、ロック部30を付勢する部材を含んでいてもよい。第2当接部13は、弾性部材を備えていてもよい。弾性部材は、例えば、コイルばねであってもよい。第2当接部13およびロック部30については後に説明する。
【0037】
[ガイド部20]
続いて、ガイド部20について、
図8を用いて説明する。
図8は、ガイド部20の一例を示す外観図である。
【0038】
ガイド部20は、保持部10の第1端11の近傍に配置されていてもよい。ガイド部20は、保持部10が中を貫通する管形状を有している。すなわち、ガイド部20は、
図7に示すように、保持部10が配された貫通部28を有する管形状である。ガイド部20は、例えばガイドシリンダーである。
【0039】
ガイド部20は、第1当接部23および突出部24を有している。ガイド部20は、さらに、第1ガイド部21および第2ガイド部22を有していてもよい。
【0040】
第1当接部23は、脊椎用インプラント60に形成された側壁部62の頂部69(
図2参照)と当接可能である。第1当接部23が脊椎用インプラント60に形成された収容溝63の開口側の端部(すなわち、側壁部62の頂部69)と当接することにより、押圧部材50を安定して収容溝63に取り付けることができる。ここで、第1方向は、保持部10から第1端11に向かう軸方向を意図している。すなわち、第1方向は、第2端12から第1端11に向かう軸方向を意図している。一方、第1方向とは反対の方向を以後「第2方向」と記す場合がある。すなわち、第2方向は、第1端11から第2端12に向かう軸方向を意図している。
【0041】
この構成によれば、第1当接部23が側壁部62における収容溝63の開口側の端部に当接することで、押圧部材50を安定して収容溝63に取り付けることができる。
【0042】
突出部24は、板形状を有している第1突出部24aと、第1突出部24aと略平行に配置される、板形状を有している第2突出部24bとから成る。また、第1突出部24aおよび第2突出部24bは側壁部62に当接できる。すなわち、突出部24は、一対の側壁部62の、たがいに対向する一対の面の両方に同時に当接可能であってもよい。この構成によれば、突出部24が側壁部62に当接し、さらに側壁部62に係合することで、脊椎手術用器具1を安定して収容溝63に保持できる。以下、第1突出部24aと第2突出部24bとを区別しない場合、単に突出部24と記す。
【0043】
突出部24は、凹部27を有していてもよい。凹部27は、収容溝63に収容されている固定ロッド70と当接可能な凹部である。この構成によれば、ガイド部20の第1当接部23が側壁部62に当接し、突出部24が収容溝63の壁の間に係合し、さらに、突出部24の凹部27が固定ロッド70と当接する。これにより、脊椎手術用器具1を操作する医師は、突出部24によって固定ロッド70を収容溝63の内部へ抑え込むことができる。よって、医師は脊椎手術用器具1を用いて、押圧部材50によって固定ロッド70を脊椎用インプラント60に設けられた収容溝63に簡便かつ円滑に固定することができる。
【0044】
貫通部28は、ガイド部20の第1方向から第2方向へ貫通する穴である。貫通部28は、その中を、保持部10が貫通する。
【0045】
保持部10は、第1当接部23が脊椎用インプラント60に形成された側壁部62の頂部69と当接した状態で、ガイド部20に対して軸方向に沿って変位できる。軸方向とは、保持部10の第1端と第2端とを結ぶ線に平行な方向を意図している。この構成によれば、第1当接部23が側壁部62の頂部69に当接した状態を保ちつつ、保持部10がガイド部20に対して軸方向に動くことができる。これにより、脊椎手術用器具1を用いて手術する医師は、押圧部材50を収容溝63に正確に取り付けることができる。
【0046】
第1当接部23が脊椎用インプラント60に形成された側壁部62の頂部69と当接した状態で、脊椎手術用器具1に第1方向への力が加えられた場合、ガイド部20は第2方向へ後退する。ガイド部20が、第2方向へ後退することによって、保持部10において保持された押圧部材50は、収容溝63に向けて移動する。
【0047】
このようなガイド部20を有する脊椎手術用器具1を用いて手術を行う医師は、保持部10に保持されている押圧部材50の位置決めを容易に行い、押圧部材50を収容溝63に正確に取り付けることができる。
【0048】
従来の器具は、収容溝63の壁を形成する側壁部62の外側に係合するガイド部が適用されていた。それゆえ、従来の器具のガイド部は、脊椎用インプラント60の一対の側壁部62を覆うことが可能な大きさよりも小さくすることができなかった。脊椎手術用器具1は、上記のようなガイド部20を採用することによって、ガイド部20のサイズを従来の器具に比べて小さくすることができる。よって、患者への負担がより軽い低侵襲手術に適した脊椎手術用器具1を提供することができる。
【0049】
収容溝63の幅、すなわち一対の側壁部62の間の距離は、固定ロッド70の直径に合わせて設計されていてもよい。それゆえ、使用される固定ロッド70の太さが同じであれば、標準スクリュー、リダクションスクリュー、およびコネクタ67における収容溝63の幅、すなわち一対の側壁部62の間の距離は略同じである。
【0050】
ガイド部20は、一対の側壁部62の間に突出部24が係合する構成を有している。それゆえ、ガイド部20は、脊椎用インプラント60が同じ直径の固定ロッド70を用いる場合は、標準スクリュー、リダクションスクリュー、およびコネクタ67のいずれに対しても適合し得る。
【0051】
第1ガイド部21は、略円筒形状であってもよい。一方、手術時に脊椎用インプラントに近い位置に配される第2ガイド部22は、保持部10が中を貫通する多角形柱形状の管であってよい。一例において、第2ガイド部22は、形状が四角柱形状の管であってもよい。また、第2ガイド部22は、第1ガイド部21よりも細く形成されていてもよい。これにより、ガイド部20の太さを細くすることができる。よって、患者への負担がより軽い低侵襲手術に適した脊椎手術用器具1を提供できる。また、ガイド部を細くすることによって、脊椎手術用器具1を用いて手術を行う医師の視界をできるだけ広く確保することができる。
【0052】
また、第2ガイド部22は、第1開口部25および第2開口部26が形成されていてもよい。第1開口部25および第2開口部26は、第2ガイド部22の中を貫通する保持部10の様子を第2ガイド部22の外側から視認可能な窓として機能する。押圧部材50は、傾斜させずに、正しい姿勢で収容溝63にねじ込まれる必要がある。第1開口部25および第2開口部26が形成されていることにより、医師は、保持部10に保持された押圧部材50の姿勢を容易に確認することができる。
【0053】
[ロック部30]
次に、ロック部30の構成および機能について、
図9を用いて説明する。
図9は、ロック部30の一例を示す斜視図である。
【0054】
ロック部30は、保持部10が中を貫通する管形状を有している。ロック部30は、例えばロックシリンダーである。ロック部30は、ガイド部20より第2端12に近い位置に配される。ロック部30は、ガイド部20が保持部10から離脱することを防ぐ。
【0055】
ここで、ロック部30および、ロック部30に当接可能な第2当接部13について、
図4を用いて説明する。第2当接部13は、ロック部30に当接した状態で、ガイド部20を第1方向に付勢する。医師は把持部40を操作することにより、ガイド部20を保持部10に対して第2方向に移動させることができる。
【0056】
ロック部30が第2当接部13と当接した状態でガイド部20が第2方向への力を受けていない状態では、保持部10に保持された押圧部材50は、ガイド部20の第1当接部23より第2端12に近い位置に配置される。これにより、保持部10にて保持された押圧部材50の位置が正しく決められるまで、押圧部材50が側壁部62と当接しない。よって、医師は脊椎手術用器具1を用いて押圧部材50を収容溝63に円滑に取り付けることができる。
【0057】
(さまざまな脊椎用インプラント60への押圧部材50の取り付け)
以下では、さまざまな脊椎用インプラント60への押圧部材50の取り付けについて、
図10~
図12を用いて説明する。
図10は、標準スクリュー68への押圧部材50の取り付けの様子を示す模式図である。
図11は、リダクションスクリュー66への押圧部材50の取り付けの様子を示す模式図である。
図12は、コネクタ67への押圧部材50の取り付けの様子を示す模式図である。なお、
図10~
図12では、押圧部材50の配置をわかりやすくするため、第2ガイド部22を簡略化した断面にて示している。また、
図10~
図12では、簡略化のために、第1開口部25および第2開口部26の図示は省略されている。
【0058】
図10に示すように、標準スクリュー68は、側壁部62において収容溝63の開口の方向において第1当接部23と当接可能である。換言すれば、側壁部62は、当該側壁部の第2方向で第1当接部23と当接する。第1当接部23は、収容溝63の頂部で側壁部62と当接する。ここで頂部とは、側壁部62の台部61から最も突出した場所のことであり、側壁部62により形成される面または点のいずれでもよい。第1当接部23は側壁部62の頂部69に当接し、突出部24は収容溝63に当接し、さらに側壁部62に係合する。
【0059】
このような構成を備える脊椎手術用器具1を用いることによって、押圧部材50を安定して、標準スクリュー68の収容溝63に取り付けることができる。側壁部62は、収容溝63の壁面を形成する面に、雌ネジ64が形成されてもよい。
【0060】
図11に示すように、リダクションスクリュー66は、標準スクリュー68に比べ、側壁部62の第2方向の長さが長い。このような場合であっても、収容溝63の幅に突出部24が係合することで側壁部62の長さに関係なく脊椎用インプラント60とガイド部20とを固定できる。
【0061】
第1当接部23は側壁部62の頂部69に当接し、突出部24は収容溝63に当接し、さらに側壁部62に係合する。このような構成を備える脊椎手術用器具1を用いることによって、押圧部材50を安定して、リダクションスクリュー66の収容溝63に取り付けることができる。
【0062】
また、ガイド部20は、さらに周縁部23aを有していてもよい。これにより、ガイド部20は、第1当接部23と周縁部23aとにより形成された空間に側壁部62を収容できる。周縁部23aは、リダクションスクリュー66の側壁部62が変形したり、一対の側壁部62の間隔が広がったりすることを抑制する。周縁部23aを備えるガイド部20を適用した脊椎手術用器具1を用いることによって、押圧部材50をリダクションスクリュー66の収容溝63に好適に取り付けることができる。
【0063】
図12に示すように、コネクタ67は、標準スクリュー68またはリダクションスクリュー66と異なり、別の固定ロッド70を収容する収容溝を形成する第2側壁部65を備えている。
【0064】
コネクタ67の側壁部62において、脊椎手術用器具1と接する箇所の形状は、標準スクリュー68およびリダクションスクリュー66と同様の形状である。このため、コネクタ67に対しても本開示の脊椎手術用器具1を用いることができる。
【0065】
すなわち、第1当接部23は側壁部62の頂部69に当接し、突出部24は収容溝63に当接し、さらに側壁部62に係合する。このような構成を備える脊椎手術用器具1を用いることによって、押圧部材50を安定して、コネクタ67の収容溝63に取り付けることができる。
【0066】
以上、本開示に係る発明について、諸図面および実施例に基づいて説明してきた。しかし、本開示に係る発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。すなわち、本開示に係る発明は本開示で示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示に係る発明の技術的範囲に含まれる。つまり、当業者であれば本開示に基づき種々の変形または修正を行うことが容易であることに注意されたい。また、これらの変形または修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。
【符号の説明】
【0067】
1 脊椎手術用器具
10 保持部
13 第2当接部
14 固定部
20 ガイド部
21 第1ガイド部
22 第2ガイド部
23 第1当接部
23a 周縁部
24 突出部
24a 第1突出部
24b 第2突出部
25 第1開口部
26 第2開口部
30 ロック部
40 把持部
50 押圧部材
51 雄ネジ
60 脊椎用インプラント
61 台部
62 側壁部
63 収容溝
69 頂部
70 固定ロッド(ロッド)
100 システム