IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイスの特許一覧

<>
  • 特許-時計器の表示機構 図1
  • 特許-時計器の表示機構 図2
  • 特許-時計器の表示機構 図3
  • 特許-時計器の表示機構 図4
  • 特許-時計器の表示機構 図5
  • 特許-時計器の表示機構 図6
  • 特許-時計器の表示機構 図7
  • 特許-時計器の表示機構 図8
  • 特許-時計器の表示機構 図9
  • 特許-時計器の表示機構 図10
  • 特許-時計器の表示機構 図11
  • 特許-時計器の表示機構 図12
  • 特許-時計器の表示機構 図13
  • 特許-時計器の表示機構 図14
  • 特許-時計器の表示機構 図15
  • 特許-時計器の表示機構 図16
  • 特許-時計器の表示機構 図17
  • 特許-時計器の表示機構 図18
  • 特許-時計器の表示機構 図19
  • 特許-時計器の表示機構 図20
  • 特許-時計器の表示機構 図21
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】時計器の表示機構
(51)【国際特許分類】
   G04B 31/00 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
G04B31/00 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022534202
(86)(22)【出願日】2020-10-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2020078684
(87)【国際公開番号】W WO2021121707
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】19216640.3
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ドゥレヴォー,ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】ビジャール,イバン
(72)【発明者】
【氏名】クリスタン,ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】カタン,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス,アンネ
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】実公昭61-33588(JP,Y2)
【文献】英国特許出願公告第870989(GB,A)
【文献】特開2020-169987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 - 99/00
G01D 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計器の表示機構(100)であって、軸(3)を含み、前記軸(3)を支えてガイドするための少なくとも1つのガイドデバイス(1)を支える、少なくとも1つのプレート(101)および/またはブリッジ(102)を含む、少なくとも1つの表示部(10)を備え、前記少なくとも1つのガイドデバイス(1)は、表示部(10)の軸(3)を通すために配置された、または表示部(10)を支えるために配置された、ハウジング(2)を含み、前記軸(3)を軸線(D)の周りにガイドするための少なくとも1つのガイド軸受(4)を含み、前記少なくとも1つのガイド軸受(4)は、平行面を備えたプラットフォームであり、前記軸線(D)の第1の側に、V字形またはパッドを含む支持体表面(5)であって、前記支持体表面(5)の二等分平面P上に前記軸(3)の回転軸を中心に置くように配置された、支持体表面(5)を含み、前記支持体表面(5)は、前記軸線(D)を通る前記二等分平面(P)に対して対称であり、前記第1の側とは反対側の、前記軸線(D)の第2の側に、前記支持体表面(5)と実質的に直径方向に対向して配列された少なくとも1つの保持要素(6)を含み、すべての前記保持要素(6)は、前記軸(3)に、前記軸線(D)に向けられた、結果として生じる弾性復帰力を及ぼし、前記少なくとも1つのガイド軸受(4)から、この同じガイド軸受(4)において前記軸線(D)の方向の軸方向に挿入された軸(3)の半径方向の出口を阻止し、少なくとも1つの前記ガイド軸受(4)は、取り外し可能であり、少なくとも、前記軸線(D)に対して垂直な平面において、前記プレート(101)または前記ブリッジ(102)に含まれるチャンバ(201、202)もしくはボアと相補的に協働するように配置された周面である、少なくとも1つの外面(7)を含むことを特徴とする、時計器の表示機構(100)。
【請求項2】
各前記保持要素(6)は、前記軸(3)の外周に静止するように配置された板ばねであることを特徴とする、請求項1に記載の表示機構(100)。
【請求項3】
少なくとも1つの前記ガイド軸受(4)は、単一の前記保持要素(6)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の表示機構(100)。
【請求項4】
前記ガイドデバイス(1)は、前記軸線(D)の方向の軸方向に分離された複数の前記ガイド軸受(4)を含み、それらのうちの少なくとも2つは、異なる前記二等分平面(P)を有することを特徴とする、請求項1に記載の表示機構(100)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの外面(7)は、記軸線(D)の周りの回転面であることを特徴とする、請求項1に記載の表示機構(100)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの外面(7)は、前記プレート(101)または前記ブリッジ(102)に含まれるインデキシング要素と相補的に協働するように配置された、少なくとも1つの突出した、または凹んだ起伏(75)を含み、前記ガイド軸受(4)の単一の角度配向が前記少なくとも1つの外面(7)を前記インデキシング要素対して支えることを特徴とする、請求項1に記載の表示機構(100)。
【請求項7】
前記ガイド軸受(4)は、少なくとも1つの前記外面(7)を含む、少なくとも1つの剛性周辺部を備えることを特徴とする、請求項1に記載の表示機構(100)。
【請求項8】
前記ガイド軸受(4)は、少なくとも1つの前記外面(7)を含む、少なくとも1つの弾性周辺部を備えることを特徴とする、請求項1に記載の表示機構(100)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの前記外面(7)を支える前記ガイド軸受(4)は、前記ガイド軸受(4)を受容するための前記プレート(101)または前記ブリッジ(102)に含まれるチャンバ(201、202)またはボアに弾性的に保持するための少なくとも1つの弾性ブレード(9)を備え、1の軸方向当接面(71)は、前記軸線(D)の方向のそのすぐ軸方向近傍に配列された少なくとも1つの前記弾性ブレード(9)の軸方向変形を制限するように配置されていることを特徴とする、請求項8に記載の表示機構(100)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの弾性ブレード(9)を支える前記ガイド軸受(4)は、前記プレート(101)の、または前記ブリッジ(102)の円筒形チャンバ(201、202)またはボア内に前記ガイド軸受(4)を支持するための同じ円筒の2つのセクター(701、702)を含み、前記弾性ブレード(9)は、その遠位端において、前記ブレード(9)の弾性によって十分に維持された前記プレート(101)または前記ブリッジ(102)において完璧な中心を確保するために、前記2つのセクター(701、702)と同一の第3の円筒形セクター(703)を支えることを特徴とする、請求項9に記載の表示機構(100)。
【請求項11】
前記ガイド軸受(4)は、境界領域において収容された少なくとも1つのピン(105)によって前記プレート(101)または前記ブリッジ(102)に保持され、前記プレート(101)または前記ブリッジ(102)に対する前記ガイド軸受(4)の正確な角度配向を保証することを特徴とする、請求項1に記載の表示機構(100)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの外面(7)は、前記プレート(101)もしくは前記ブリッジ(102)、または前記プレート(101)もしくは前記ブリッジ(102)に装着されるように配置されたカボション(103)に含まれる支持体表面(1020、1021)と、前記軸線(D)の方向において、軸方向当接支持で協働するように配置された少なくとも1つの第1の軸方向当接面(71)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の表示機構(100)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの外面(7)は、前記第1の軸方向当接面(71)の反対側にある、前記プレート(101)または前記ブリッジ(102)に含まれる支持体表面と、前記軸線(D)の方向において、軸方向当接支持で協働するように配置された第2の軸方向当接面(72)をさらに含むことを特徴とする、請求項12に記載の表示機構(100)。
【請求項14】
少なくとも1つの弾性ブレード(9)は、前記第1の軸方向当接面(71)と前記第2の軸方向当接面(72)との間に軸方向に介在されていることを特徴とする、請求項13に記載の表示機構(100)。
【請求項15】
少なくとも1つの前記ガイド軸受(4)は、一体で作られ、同じ部品上に、その前記支持体表面(5)およびすべてのその前記保持要素(6)の両方を含むことを特徴とする、請求項1に記載の表示機構(100)。
【請求項16】
少なくとも1つの前記ガイド軸受(4)は、微細機械加工可能材料で作られていることを特徴とする、請求項15に記載の表示機構(100)。
【請求項17】
前記表示機構(100)は、前記プレート(101)または前記ブリッジ(102)と共に取り外しのできない組立体を形成する、少なくとも1つの前記ガイド軸受(4)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の表示機構(100)。
【請求項18】
前記表示機構(100)は、前記プレート(101)または前記ブリッジ(102)に対して取り外し可能な少なくとも1つの前記ガイド軸受(4)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の表示機構(100)。
【請求項19】
請求項1に記載の少なくとも1つの表示機構(100)を備える、時計器(1000)。
【請求項20】
腕時計であることを特徴とする、請求項19に記載の時計器(1000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸を含み、この軸を支えてガイドするための少なくとも1つのガイドデバイスを支える、少なくとも1つのプレートおよび/またはブリッジを含む、少なくとも1つの表示部を備える、時計器の表示機構に関する。
【0002】
また、本発明は、少なくとも1つのそのような時計器の表示機構、および/または少なくとも1つのそのようなガイドデバイスを備える、時計器に関する。
【0003】
本発明は、時計器の表示機構の分野に関する。
【背景技術】
【0004】
時計ムーブメントでは、一般に、時、分、および秒の値が針を使用して表示される。これらの針は、互いに接触してはならず、また文字盤、またはムーブメントの部品、あるいは時計のカバーにも接触してはならない。
【0005】
針間の安全性には、いくつかの要因が影響を及ぼす。
-各針の軸受の揺れ、
-プレートまたはブリッジに関して、位置、真円度、ガイドの形状の欠陥に起因する軸の傾き、
-ガイドピボットにおける間隙に起因する軸の傾き、
-公差の連鎖、
-形状公差、特に軸上に打ち込まれる針の平面度および垂直度。
【0006】
当然ながら、表示部が針ではなく、ディスク、リングなどであっても、問題は同様である。
【0007】
また、針が互いに接触するという問題は、肩部間の距離、つまり、針を支える軸のガイド肩部間の隙間が比較的短いという事実にも関係している。このレバーアーム効果により、針の端部において、軸ガイドのうちの1つにおける任意の不具合がかなり増幅される。この場合、針間の安全性を低下させる主な寄与は、ピボットにおける間隙に起因する傾き(50%超)であることがわかる。
【0008】
本明細書では特に、1拍に相当する一回転における秒針の傾きの変化に注目される。
【0009】
針が屈曲して互いに接触するのを防止するために、通常、針を支える軸上に少なくとも1つのホイルばねが配設されている。このホイルによって生成される摩擦トルクは、制御が非常に難しく、てん輪の振幅、時計の性能、および機構の効率に直接影響を及ぼす。いくつかの板ばねを含む機構が知られており、それらの機能は、摩擦によるガイドおよび制動の両方を同時に提供することである。軸の平衡位置は、これらのばね要素の剛性に由来し、ばね要素は、軸がその平衡位置から外れたときに復帰力を発揮するブレードまたはストリップである。
【0010】
重力の分野においてそのような軸のランダム配向は、時計器が、ユーザが身に着ける腕時計のときに、プレートまたはブリッジに対して軸を垂直に維持することがますます難しくなるだけである。
【0011】
NIVAROX社名義の文献EP2781971には、枢動輪軸を受容しガイドするための時計器の機構構造について記載されており、この機構構造は、そのような枢動輪軸の枢動を受容するために対で整列された枢動点を含む取り外しのできない一体構造を含む。
【0012】
JUNGHANS社名義の文献CH358383には、時計のアラーム設定軸を保持するためのデバイスについて記載されており、このデバイスは、軸に摩擦を与える半径方向の動作要素である。
【0013】
CITIZEN社名義の文献JPS54-13758には、レーザーによる局所的な融着によって基板に支持石または枢動石を取り付けることに関する改善について記載されている。
【0014】
ETA Manufacture Horlogere Suisse社名義の文献EP2977829には、軸に枢動自在に装着された輪の第2の表面と枢動ガイドする際に協働する第1の表面を含む軸を備える時計器の制動輪軸組立体について記載されており、この第2の表面は、輪と一体になって弾性復帰手段の動作を受け、当該第1の表面上に枢動軸線に対する半径方向の力を働かせるように配置された弾底板の制動面を含む。この組立体は、第1の表面上の制動面が摩擦を与える離散値で調整するための固有の手段を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】EP2781971
【文献】CH358383
【文献】JPS54-13758
【文献】EP2977829
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、表示部の、特に表示針の浮き上がりの問題を解決することと、小さい秒針、もしくはパワーリザーブインジケータなどの表示部が、例えば、時針などの別の表示部に接触すること、および/または文字盤あるいは半径方向のガイドによるムーブメントまたは外部部品の固定部品に接触するのを防止することと、を提案するものである。
【0017】
また、本発明は、一回転における表示部の傾きの変化をできる限り制限することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
チャタリング現象など、ユーザにとって不快な光学現象を回避するために、本発明は、間隙、特に歯車の間隙に起因する表示部の浮き上がりを制限するか、あるいは排除することを提案するものである。
【0019】
時計の特性を制御するには、軸に対するばねの摩擦によって引き起こされる振幅の任意の損失を制御することも重要である。
【0020】
この目標を達成するために、本発明は、請求項1に記載の時計器の表示機構に関する。
【0021】
また、本発明は、少なくとも1つのそのようなガイドデバイスを含む時計ムーブメントに関する。
【0022】
また、本発明は、少なくとも1つのそのような時計ムーブメント、および/または少なくとも1つのそのようなガイドデバイスを含む、時計器、特に腕時計に関する。
【0023】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照しながら、以下に続く詳細な説明を読むことによって、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明による、2つのガイド軸受によってガイドされる表示部、本明細書では針を支える軸のガイドを示す、本発明による表示機構を概略的に、部分的に、透視して示しており、各ガイド軸受は、軸に接触し、軸の上にごくわずかな制動をかける、本明細書ではV字形からなる二重支持体表面とは異なる弾性ブレードを含み、これらの支持体表面は、軸の理論的な回転軸線を通る二等分平面を各々有し、有利なことに、これら2つの二等分平面は、互いに角度オフセットされている。
図2図1のガイド軸受のうちの1つを概略的に、平面図で示している。
図3図2と同様に、同様の配置で、カボションまたは構造物に固定するためのラグを外周に含む別のガイド軸受を示している。
図4図2と同様に、境界領域においてピンによって構造物に取り付けられているガイド軸受を示している。
図5】軸の回転軸線に対して垂直な平面において、軸と支持体表面との間の円筒平面接続を非常に概略的に示している。
図6】軸の回転軸線に対して垂直な平面において、軸と支持体表面との間の円筒凹面接続を非常に概略的に示している。
図7】軸の回転軸線に対して垂直な平面において、軸と支持体表面との間の円筒凸面接続を非常に概略的に示している。
図8】軸の回転軸線に対して垂直な平面において、軸と弾性ブレードとの間の円筒平面接続を非常に概略的に示している。
図9】軸の回転軸線に対して垂直な平面において、軸と弾性ブレードとの間の円筒凸面接続を非常に概略的に示している。
図10】軸の回転軸線に対して垂直な平面において、軸と弾性ブレードとの間の円筒凹面接続を非常に概略的に示している。
図11図2と同様に、同様の配置で、カボションまたは構造物を良好に保持するために、実質的に円筒形の支持体表面を外周に、ならびに外部弾性ブレードを含む、別のガイド軸受を示している。
図12】そのような単一のガイド軸受を含むガイドデバイスを、概略的に、部分的に、軸の回転軸線を通る断面図で示している。
図13】カボションに装着された、図3によるガイド軸受、および別の従来の軸受を含むガイドデバイスを、概略的に、部分的に、軸の回転軸線を通る断面図で示している。
図14図13のガイドデバイスの別の断面平面の図である。
図15】そのようなガイドデバイスまたはガイド軸受の異なる組立体の変形例を、軸の回転軸線を通る平面における断面図で、非常に概略的に示している。
図16】そのようなガイドデバイスまたはガイド軸受の異なる組立体の変形例を、軸の回転軸線を通る平面における断面図で、非常に概略的に示している。
図17】ガイド軸受の各横方向外面が軸方向と平行であるすべての図1図16とは異なり、ガイド軸受が当接部を形成する肩部を含む、特定の事例を示している。
図18】ガイド軸受の各横方向外面が軸方向と平行であるすべての図1図16とは異なり、ガイド軸受が当接部を形成する肩部を含む、特定の事例を示している。
図19】ガイド軸受の各横方向外面が軸方向と平行であるすべての図1図16とは異なり、ガイド軸受が当接部を形成する肩部を含む、特定の事例を示している。
図20】ガイド軸受の各横方向外面が軸方向と平行であるすべての図1図16とは異なり、ガイド軸受が当接部を形成する肩部を含む、特定の事例を示している。
図21】そのようなガイドデバイスを備えた表示機構を含む腕時計を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、軸3を含み、そのような軸3を支えてガイドするための少なくとも1つのガイドデバイス1を支える、少なくとも1つのプレート101および/またはブリッジ102を含む、少なくとも1つの表示部10を備える、時計器の表示機構100に関する。この時計器の表示部10は、特に、非限定的に、針、ディスクなどであり、軸3を含むか、または軸3に装着されている。
【0026】
このガイドデバイス1は、表示部10の軸3を通すために配置された、または表示部10を直接支えるために配置された、ハウジング2を含む。ガイドデバイス1は、そのような軸3を軸線Dの周りにガイドするための少なくとも1つのガイド軸受4を含む。
【0027】
本発明によれば、この少なくとも1つのガイド軸受4は、軸線Dの第1の側に、V字形またはパッドなどを含む支持体表面5を含み、これは、支持体表面5の二等分平面P上に軸3の回転軸を中心に置くように配置されている。この支持体表面5は、軸線Dを通る二等分平面Pに対して対称である。同じガイド軸受4は、軸線Dの第1の側とは反対側の第2の側に、支持体表面5と実質的に直径方向に対向して配列された少なくとも1つの保持要素6を含む。その二等分平面Pに対して対称的な支持体表面5は、実際には、いくつかの図において参照される51および52の2つの基本支持体表面を含むことが理解される。
【0028】
本発明によれば、すべての保持要素6は、軸3に、軸線Dに向けられた、結果として生じる弾性復帰力を及ぼし、この少なくとも1つのガイド軸受4から、この同じガイド軸受4において軸線Dの方向の軸方向に挿入された軸3の半径方向の出口を阻止するように配置されている。
【0029】
各保持要素6によって軸に及ぼされるわずかな摩擦は、表示部10のチャタリングおよび浮き上がりの現象を回避することができる制動を保証する。特に、表示部10が小さい秒針またはパワーリザーブ表示針などのように直径が小さく、慣性が低い表示部のとき、軸の直径は非常に小さく、この摩擦によって引き起こされる時計ムーブメントの性能の変化はほとんど無視できるものである。この摩擦が一定であれば、時計の特性は、ほとんど影響を受けない。
【0030】
より具体的には、各保持要素6は、軸3の外周に静止するように配置された板ばねである。
【0031】
より具体的には、少なくとも1つのガイド軸受4は、単一の保持要素6を含む。図には、各ガイド軸受4が単一の保持要素を含む、特定の非限定的な事例が示されている。
【0032】
軸3とガイド軸受4との間の接触面は、支持体表面5とその反対側の接触面60との両方で、単純な点接触から相補的な表面間の非常に包絡的な接触まで、異なる形状にすることができ、点接触は、摩擦を少なくするが、摩耗および動きの汚染を発生させ、包絡的な接触は、高摩擦ならびに機構の効率損失に対応する。表示部への特定の用途では、実質的に線形接触が良好な妥協点である。各接触面は、直線分の周りに展開される。本発明は、これらの直線分がすべて相互に平行で、軸3の理論的な回転軸Dに平行である特定の事例について図に示されており、この解決策は、摩耗が少なく、摩擦が低く制御され、効率にほとんど影響を与えないので好ましい。
【0033】
しかしながら、例えば、円錐形の直線母線上に、実質的に線形だが平行でない接触面が、例えば、間隙調整のために軸をある特定の方向に押す傾向があると想像することは可能だが、当然のことながら効率は変化する。
【0034】
これらの接触は、図5および図8に象徴されるような円筒平面タイプの接触だけでなく、図6および図10に見られるような雄円筒雌円筒タイプ、あるいは図7および図9に見られるような雄円筒雄円筒タイプの接触とすることもでき、円筒形の構成は、より一般的な凹面または凸面を実現するのに有利な特定の事例に過ぎない。従って、平凸タイプ、凹凸タイプ、凸凹タイプの接続が可能であることに留意されたい。
【0035】
したがって、3つの実質的に線形接触面を含む図示の好ましい事例は、これらの表示用途に最も有利である、特定の非限定的な事例である。
【0036】
この少なくとも1つのガイド軸受4は、平行面を備えたプラットフォームである。
【0037】
より具体的には、軸方向に制限するこれら2つの平行表面以外の平行表面を含む他のすべての表面は、同じ軸方向に対して平行(2つの平行面に対して垂直)である。ガイド軸受4は、押し出し成形、型打ち成形、あるいは単純な2Dコンタリング加工でフライス加工することができ、これにより、コストを抑えて製造することができる。加えて、ガイド軸受4は、その機能を確保しつつ、可逆的に装着することができる。
【0038】
特定の安価な変形例では、外面7は、特異であり、軸線Dの周りの回転面である。
【0039】
図1図2図4図16では、ガイド軸受4が、このガイド軸受4の2つの平行面に対して垂直な円筒形である、本明細書では外側面と呼ばれる外面7を含む非常に単純な実施形態を示している。
【0040】
図3図13、および図14では、この外面7が、本明細書では突出して図示されているが、そのような円筒面に対して同様に凹むことができる起伏75を含み、これらは、プレート101またはブリッジ102に形成され、このガイド軸受4を受容するように配置されたハウジングに含まれる、相補的に凹み、それぞれ突出している起伏と協働することが意図されている変形例を例示しており、この例では、ガイド軸受4は、互いに120°の3つの位置で組み立てることができる。本明細書におけるガイド軸受4は、星の形状を有する。
【0041】
当然ながら、ガイド軸受4と、プレート101またはブリッジ102との間の接続も、具体的には図13または図14に例示されているようにカボション103を介して間接的である。
【0042】
図示されていない変形例では、ガイド軸受4はまた、強制平面における軸3の軸線の可動性を可能にするために、プレート101またはブリッジ102に対してガイド軸受4の単一の角度配向を得るために単一の相補的な起伏と協働するように配置された単一の起伏75を含み得る。さらに他の変形例では、起伏75の数および角度配置、またはプレート101の、もしくはブリッジ102の相補的な起伏の数および角度配置は、これらの構成要素間の他の相対的な角度の組み合わせを可能にする。
【0043】
図11図12、および図15は、ガイド軸受4が、ガイド軸受4をチャンバまたはハウジング内にしっかりと保持するための少なくとも1つの弾性ブレード9を含む変形例を例示しており、図11は、円筒形チャンバまたはボア内にガイド軸受4を支持するための同じ円筒の2つのセクター701、702を含むガイド軸受4、およびその遠位端において、ブレード9の弾性によって十分に維持された完璧な中心を確保するために、上記と同一の第3の円筒形セクター703を支えるそのような弾性ブレード9を示している。
【0044】
図17図20は、外面7が肩出しされている別の変形例を示している。
【0045】
より具体的には、ガイドデバイス1は、軸線Dの方向の軸方向に分離された複数のガイド軸受4を含み、これは、例えば、図1に見られるように、下部軸受41および上部軸受42による従来の装着である。より具体的には、これらのガイド軸受のうちの少なくとも2つは、図1に見られるように、異なる二等分平面Pを有し、下部軸受41の下部V字形支持体表面5の二等分平面P1は、上部軸受42の上部V字形支持体表面5の二等分平面P2と、ゼロでない角度か、または平坦な角度を形成している。この配置により、非同一面上に反力が生じ、力が単一の方向に集中するのを回避するという利点が得られる。
【0046】
また、ガイドデバイス1は、図12および図15の例に見られるように、そのような単一のガイド軸受4のみを含んでもよい。
【0047】
より具体的には、少なくとも1つのガイド軸受4は、取り外し可能であり、少なくとも1つの外面7を含み、外面7は、少なくとも、軸線Dに対して垂直な平面において、プレート101の、またはブリッジ102のハウジング20、201、202、もしくは任意の同様の構造物あるいは支持要素と相補的に協働するように配置されている。
【0048】
そのようなハウジング20、201、202の最も安価な実装形態は、穿孔であり、図4では、ピン105を収容するためのオリフィスを穿孔した後に作られた円形ハウジング201のこの単純で非限定的な例を示しており、軸受4は、外周に、このオリフィスの相補的な部分を含み、境界領域において収容されたピン105は、プレート101またはブリッジ102に対するガイド軸受4の正確な角度配向を保証する。当然ながら、例えば、軸受4の外周に配向プレートを設けるなど、他の多くの実装形態が可能であり、それらの選択は、寸法および加工コストによって導かれる。
【0049】
より具体的には、この少なくとも1つの外面7は、少なくとも1つの第1の軸方向当接面71を含み、これは、プレート101もしくはブリッジ102、またはプレート101もしくはブリッジ102に装着されるように配置されたカボション103などに含まれる相補的な支持体表面1020、1021と、軸線Dの方向において、軸方向当接支持で協働するように配置されている。
【0050】
より具体的には、この少なくとも1つの外面7は、第1の軸方向当接面71の反対側にある、プレートまたはブリッジに含まれる相補的な支持体表面1012、1022と、軸線Dの方向において、軸方向当接支持で協働するように配置された第2の軸方向当接面72をさらに含む。図9は、そのような構成を、2つの部品42、43で作られた軸受で示したものである。一体型の実装態様の場合、部品43は、有利なことに、ブリッジ102のハウジング202におけるこの軸受4の軸方向の挿入と、このリップを解放した後のこのブリッジへのクリッピングとを可能にする、変形可能な弾性リップである。
【0051】
より具体的には、この少なくとも1つの外面7を支えるガイド軸受4は、図18に見られるように、このガイド軸受4を受容するためのプレート101またはブリッジ102に含まれるチャンバ20、201、202、またはボアに弾性的に保持するための少なくとも1つの弾性ブレード9を含む。また、第1の軸方向当接面71は、有利なことに、軸線Dの方向のそのすぐ軸方向近傍に配列された少なくとも1つの弾性ブレード9の軸方向変形を制限するように配置されており、第1の軸方向当接面71を衝撃から保護する。当然ながら、この弾性ブレード9は、プレートの、またはブリッジのチャンバ20、201、202および外側面1011、1012、1021、1022と協働するように配置することもできる。さらに別の変形例では、同じ軸受4は、いくつかのそのような弾性ブレード9を含み、具体的には、少なくとも1つはボアと半径方向に協働し、1つは軸線Dに対して垂直な当接支持体表面と軸方向に協働する。図11のガイド軸受4は、そのような弾性ブレード9、ならびにその外周7に実質的に円筒形の支持体表面701、702、703を含む。
【0052】
より具体的には、少なくとも1つの弾性ブレード9は、図19に見られるように、第1の軸方向当接面71と第2の軸方向当接面72との間に軸方向に介在されている。
【0053】
本発明によるガイド軸受4の実装形態のタイプは、所望の組立体の形態に従って可変である。
【0054】
第1の変形例では、ガイド軸受4は、少なくとも1つのそのような外面7を含む、少なくとも1つの剛性周辺部を備える。
【0055】
第2の変形例では、ガイド軸受4は、少なくとも1つのそのような外面7を含む、少なくとも1つの弾性周辺部を含む。
【0056】
より具体的には、少なくとも1つのガイド軸受4は、一体で作られ、同じ部品上に、この軸受の支持体表面5およびすべての保持要素6の両方を含む。さらにより具体的には、ガイド軸受が1つ以上の弾性ブレード9を含むとき、このガイド軸受4は、有利なことに、一体で作られ、同じ部品上に、この軸受の支持体表面5およびすべての保持要素6の両方、ならびにすべての弾性ブレード9を含む。
【0057】
より具体的には、少なくとも1つのガイド軸受4は、微細機械加工可能材料で作られている。具体的には、「LIGA」または「MEMS」タイプなどの方式によって、「ダイヤモンドライクカーボン」DLCなどのシリコンおよび/または二酸化シリコンで作ることができる。
【0058】
別の代替実施形態では、少なくとも1つのガイド軸受4は、弾性金属合金で作られている。
【0059】
別の変形実施形態では、少なくとも1つのガイド軸受4は、腕時計の通常の温度および湿度範囲において弾性ブレードを作製することができるプラスチックまたは複合材料で作られている。
【0060】
より具体的には、ガイド軸受4の外面7は、少なくとも1つの突出した、または凹んだ起伏75を含み、これは、この少なくとも1つの外面7をこのインデキシング要素に対して支えるガイド軸受4の単一の角度配向のために、プレートまたはブリッジに含まれるインデキシング要素と相補的に協働するように配置されている。この変形例は、図3に例示されており、ガイド軸受4は、120°で分配された3つのラグ75を含む。そのようなガイド軸受を装着するための特定の方法は、以下の通りである。
-ブレーキガイド軸受4は、キャップヘッドまたはカボションに予め装着されており、
-このキャップまたはカボションは、ブランクに装着され、締め付けられ、この締め付けは、キャップのハウジング内のブレーキガイド軸受4を締め付ける際に、キャップの締め付けによって引き起こされる。この周辺ラグにより、ハウジング内のブレーキに過大応力がかかり、保持要素6の破損を引き起こさないようにすることができる。これらのラグは、キャップの中に入り込み、ブレーキガイド軸受4は、最終的にラグを介して圧着される。
【0061】
この解決策の利点は、ブランクからキャップを取り外すことによって、ブレーキガイド軸受4を取り外すことができることである。実際、ブレーキガイド軸受4のリベット打ちまたは打ち込みをブランクに直接行うことは可能だが、より繊細である。中間キャップまたはカボションを使用することで、ブレーキのキャップへの打ち込み/リベット打ちのこの動作を遠隔で行うことができる。打ち込み/リベット打ち動作に不具合があった場合、切り離される部品はキャップに含まれるブレーキのみであり、より高価な完全なブランクは切り離されることはない。図13および図14は、中間カボション103を有するそのような組立体を例示している。
【0062】
図2図4は、本発明によるガイド軸受4を例示しており、この軸受4は、識別目的のために、1つ以上の穴49を含むが、これらの軸受の寸法が非常に小さいため、他のタイプの識別マークを付けることはできない。
【0063】
有利には、プレート101および/またはブリッジ102は、少なくとも1つのチャンバ201、202を含み、これらは、軸線Dの方向に軸3をガイドするためのガイドデバイス1のそのようなガイド軸受4を受容するように配置されている。
【0064】
より具体的には、この機構100は、軸線Dの方向の軸方向に離間されているプレート101およびブリッジ102を含む。
【0065】
第1の変形例では、この機構100は、プレート101またはブリッジ102と共に取り外しのできない組立体を形成する少なくとも1つのガイド軸受4を含む。軸受4は、プレート101またはブリッジ102などに、特にレーザーはんだ付け、および/またはろう付け、および/またはリベット打ちによって、とりわけ打ち込まれる、および/または接着される、および/またははんだ付けされる。
【0066】
第2の変形例では、機構100は、プレート101またはブリッジ102に対して取り外し可能な少なくとも1つのガイド軸受4を含む。ある変形例では、ガイド軸受4は、この目的のために、少なくとも1つの弾性要素、具体的には弾性ブレード9を含み、別の変形例では、そのような弾性要素を含むのは、プレート101またはブリッジ102であり、さらに別の変形例では、ガイド軸受およびプレート101の両方、またはブリッジ102が、少なくとも1つのそのような弾性要素を各々含む。
【0067】
また、本発明は、少なくとも1つのそのような時計器の表示機構100、および/または少なくとも1つのそのようなガイドデバイス1を含む時計ムーブメント1000に関する。
【0068】
また、本発明は、少なくとも1つのそのような時計器の表示機構100、および/または少なくとも1つのそのようなガイドデバイス1を含む時計器1000に関する。より具体的には、この時計器1000は、腕時計である。
【0069】
要するに、本発明は、支持体表面5、例えば、V字形の支持体表面を、時計ムーブメント、具体的にはプレートまたはブリッジ、もしくは他の構造要素において、剛性的に位置決めすることを可能にし、その結果、輪軸の軸の位置が、この支持体表面5の位置によって強いられ、半径方向のガイダンスを提供する。
【0070】
この支持体表面5を含むガイド軸受4は、様々な方法で、特に、非限定的な方法で取り付けることができる。
-取り外しのできない、または少なくとも非常に取り外しにくい取り付けによって、例えば、打ち込み、リベット打ちになどよって取り付けるか、あるいは、レーザーはんだ点、ろう付けなどによって止めることができる。特定の実装態様は、例えば、リベット打ちによってブランクに取り付けられた円形のブレーキ:キャップヘッドまたはカボション103、ブレーキの実装形態である。このブレーキは、円形の外周を有する。これは、その外周の周りのブランクにリベット打ちされており、したがって、軸を位置決めするための各V字形は、時計ムーブメントと一体になっている。揺れは、プレートのキャップヘッドまたはカボション103と、ブリッジ、例えば、カレンダープラットフォームに取り付けられたブレーキとの間で起こる。また、この構成は、表示部、特に針を取り外すときに軸を保持することができる。
-サークリップと同様に、可逆的な弾性取り付けによって取り付けることができる。この変形例により、変形によって、または任意の取り外しのできない取り付けによって、不可逆的に取り付けられたガイド軸受の任意の変形を回避することができる。サークリップなどで少なくとも1つの弾性ブレードを使用することにより、ブレーキ機能付きガイド軸受4をブランクに自律的に保持することを保証することができる。したがって、ブランク内での保持、半径方向および軸方向のガイダンス、および制動の機能を確保することが可能である。
【0071】
図は、いくつかの特定の構成のみを例示しており、限定的なものではない。
【0072】
特に、ブレーキ機能を有する本発明によるガイド軸受は、従来、ブランクの間に挟まれて装着されていた代わりに、文字盤側に装着することができ、その後、図15に見られるように、揺れは、キャップヘッド、またはカボション103と、隣接するブランクとの間で起こる。
【0073】
本発明は、いくつかの利点をもたらす。
-特にガイド軸受54が再現性の高い「LIGA」方式によって作製されるときの摩擦による制動トルクの制御、
-次いで、摩擦トルクが、表示部の軸に取り付けられたピニオンの直径の変化にのみ依存し、これにより、表示部、特に腕時計のユーザが見やすい針の浮き上がりの改善を確実にすること、
-表示部、特に針を「平らに」、つまり、プレートとブリッジに平行に保持し、別の表示部、別の針もしくは文字盤、または腕時計の構造要素に接触するのを防止すること、
-サークリップタイプの弾性ブレードを備えた代替品が、取り外し可能であること。
【0074】
これらの小型部品は、最小必要スペースに簡単に組み込むことができ、パワーリザーブ位置、軸間スペースが可変である小さい秒針などに取り付けることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21