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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】車両システム及び振動発生装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/02 20060101AFI20231221BHJP
   H04R 1/00 20060101ALI20231221BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20231221BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20231221BHJP
   B06B 1/04 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H04R1/02 102B
H04R1/00 310G
G06F3/01 560
G06F3/01 510
B60R11/02 S
B06B1/04 S
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022536148
(86)(22)【出願日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 JP2021018276
(87)【国際公開番号】W WO2022014135
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2020120777
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 邦生
(72)【発明者】
【氏名】太刀岡 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】持田 楓
【審査官】大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/244755(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/02
H04R 1/00
G06F 3/01
B60R 11/02
B06B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシートと、
前記シートに設けられる第1振動発生装置と、を含み、
前記第1振動発生装置は、
第1筐体と、
前記第1筐体に支持される第1振動板と、
前記第1筐体及び前記第1振動板の少なくともいずれか一方に取り付けられる第1アクチュエータと、
第1検出電極を備え、当該第1検出電極への着座者の近接を検出する第1センサと
を有し、
前記第1振動板と、前記第1検出電極とが同一部材である、車両システム。
【請求項2】
前記第1センサの出力に基づいて、前記シートに着座者が密着しているか否かを判定する第1判定部をさらに含む、請求項1に記載の車両システム。
【請求項3】
前記第1判定部は、前記第1センサの出力に基づいて、前記第1センサから所定距離以下の位置に前記着座者がいることを検出すると、前記シートに着座者が密着していると判定する、請求項2に記載の車両システム。
【請求項4】
所定の通知条件が成立した場合に、前記第1判定部によって前記シートに前記着座者が密着していると判定されていれば前記第1振動発生装置の振動によって前記シートを振動させ、前記第1判定部によって前記シートに前記着座者が密着していないと判定されていれば前記第1振動発生装置に音を発生させる第1制御部をさらに含む、請求項2又は3に記載の車両システム。
【請求項5】
前記第1筐体は、前記第1アクチュエータの振動に応じて振動することで前記シートを振動させ、
前記第1振動板は、前記第1アクチュエータの振動に応じて振動することで音を発生する、請求項4に記載の車両システム。
【請求項6】
前記第1判定部は、前記シートの表面に前記着座者が密着しておらず、かつ当該表面に前記着座者が接触している接触状態と、当該表面に前記着座者が接触していない非接触状態とをさらに判定し、
前記第1制御部は、前記所定の通知条件が成立した場合に、前記第1判定部が前記接触状態と判定しているときに、前記第1判定部が前記非接触状態と判定しているときよりも大きな音を前記第1振動発生装置に発生させる、請求項4又は5に記載の車両システム。
【請求項7】
前記シートの座部に設けられる第2振動発生装置をさらに含み、
前記第1振動発生装置は前記シートの背もたれ部に設けられており、
前記第2振動発生装置は、
第2筐体と、
前記第2筐体に支持される第2振動板と、
前記第2筐体及び前記第2振動板の少なくともいずれか一方に取り付けられる第2アクチュエータと、
第2検出電極を備え、当該第2検出電極への前記着座者の近接を検出する第2センサと
を有し、
前記第2センサの出力に基づいて、前記座部に前記着座者が密着しているか否かを判定する第2判定部と、
前記所定の通知条件が成立した場合に、前記第2判定部によって前記座部に前記着座者が密着していると判定されていれば前記第2振動発生装置の振動によって前記座部を振動させ、前記第2判定部によって前記座部に前記着座者が密着していないと判定されていれば前記第2振動発生装置に音を発生させる第2制御部とをさらに含む、請求項6に記載の車両システム。
【請求項8】
前記第2判定部は、前記座部に前記着座者が密着しているか否かのみを判定する、請求項7に記載の車両システム。
【請求項9】
前記第1振動発生装置を複数含み、
前記第1判定部は、前記複数の第1振動発生装置が設けられる前記シートのそれぞれの位置に前記着座者が密着しているか否かを判定する、
請求項2乃至8のいずれか1項に記載の車両システム。
【請求項10】
前記第1振動発生装置は、前記シートの背もたれ部の第1領域に設けられており、
前記背もたれ部の前記第1領域より上方の第2領域に設けられる第3振動発生装置をさらに含み、
前記第3振動発生装置は、
第3筐体と、
前記第3筐体に支持される第3振動板と、
前記第3筐体及び前記第3振動板の少なくともいずれか一方に取り付けられる第3アクチュエータと、
第3検出電極を備え、当該第3検出電極への前記着座者の近接を検出する第3センサと
を有し、
前記第3センサの出力に基づいて、前記背もたれ部の前記第2領域に前記着座者が密着しているか否かを判定する第3判定部と、
前記所定の通知条件が成立した場合に、前記第3判定部によって前記背もたれ部の前記第2領域に前記着座者が密着していると判定されていれば、前記第1判定部の判定結果によらず、前記第3振動発生装置の振動によって前記シートを振動させつつ前記第1制御部に前記第1振動発生装置には音を発生させない、第3制御部と
をさらに含む、請求項4乃至8のいずれか1項に記載の車両システム。
【請求項11】
車両のシートに設けられる振動発生装置であって、
筐体と、
前記筐体に支持される振動板と、
前記筐体及び前記振動板の少なくともいずれか一方に取り付けられるアクチュエータと、
検出電極を備え、当該検出電極への近接を検出するセンサと
を有し、
前記振動板と前記検出電極とが同一部材である、振動発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両システム及び振動発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、少なくとも車室内前方に設置される薄膜振動板と、この薄膜振動板と一体化して若しくは近接して重ねて設けられ、乗員が触れることによって操作される操作部と、この操作部が操作されたことを検出する検出手段と、を備えた車両用操作ユニットがある。このような車両用操作ユニットでは、検出手段により操作部が操作されたことが検出された時に、薄膜振動板の少なくとも操作部の領域を振動させることにより、乗員に操作を受け付けたことを知らせるための確認振動を行い、音響信号が入力された時に、薄膜振動板を振動させることにより音響出力を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-007919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の車両用操作ユニットは、薄膜振動板と検出手段とが別体であるため、検出を行った位置で振動又は音を呈示することはできない。
【0005】
そこで、検出を行った位置で振動又は音を呈示できる車両システム及び振動発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態の車両システムは、車両のシートと、前記シートに設けられる第1振動発生装置と、を含み、前記第1振動発生装置は、第1筐体と、前記第1筐体に支持される第1振動板と、前記第1筐体及び前記第1振動板の少なくともいずれか一方に取り付けられる第1アクチュエータと、第1検出電極を備え当該第1検出電極への着座者の近接を検出する第1センサと、を有し、前記第1振動板と、前記第1検出電極とが同一部材である。
【0007】
一実施形態の振動発生装置は、車両のシートに設けられる振動発生装置であって、筐体と、前記筐体に支持される振動板と、前記筐体及び前記振動板の少なくともいずれか一方に取り付けられるアクチュエータと、検出電極を備え当該検出電極への近接を検出するセンサと、を有し、前記振動板と前記検出電極とが同一部材である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、検出を行った位置で振動又は音を呈示できる車両システム及び振動発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車両10の内部を示す図である。
図2】車両システム300の構成を示す図である。
図3】振動発生装置200の構成を示す図である。
図4】振動発生装置200の構成を示す図である。
図5】振動発生装置200の構成を示す図である。
図6】アクチュエータ220の構成を示す平面図である。
図7図6から可動ヨーク及び永久磁石を除いた平面図である。
図8】アクチュエータ220の構成を示す断面図である。
図9】第1の組み合わせにおける電流の向きと運動の向きとの関係を示す図である。
図10】第2の組み合わせにおける電流の向きと運動の向きとの関係を示す図である。
図11】第3の組み合わせにおける電流の向きと運動の向きとの関係を示す図である。
図12】第4の組み合わせにおける電流の向きと運動の向きとの関係を示す図である。
図13A】非接触状態を説明する図である。
図13B】密着状態を説明する図である。
図13C】接触状態を説明する図である。
図14A】振動発生装置200による振動又は音の発生を説明する図である。
図14B】振動発生装置200による振動又は音の発生を説明する図である。
図14C】振動発生装置200による振動又は音の発生を説明する図である。
図15】制御部322が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図16A】実施形態の変形例の振動発生装置200Dを示す図である。
図16B】実施形態の変形例の振動発生装置200Eを示す図である。
図17A】振動発生装置200M1を示す図である。
図17B】振動発生装置200M2を示す図である。
図18A】振動発生装置200M3を示す図である。
図18B】振動発生装置200M4を示す図である。
図18C】振動発生装置200M4を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の車両システム及び振動発生装置を適用した実施形態について説明する。
【0011】
<実施形態>
図1は、車両10の内部を示す図である。車両10の室内にはシート11が配置されている。シート11は、背もたれ部(シートバック)11Aと座部(シートクッション)11Bとを有する。背もたれ部11Aと座部11Bとは、シート生地11Cに覆われている。本実施形態では、シート11が運転席のシートである例を用いて説明するが、シート11は車両10に設けられるシートであればよく、例えば助手席のシートであってもよいし、後部座席のシートであってもよい。
【0012】
車両10には、本実施形態の車両システム300が搭載されている。車両システム300は、車両用シートシステム300Aとコントローラ320を含む。車両用シートシステム300Aは、シート11と振動発生装置200(200A、200B、200C)を含む。振動発生装置200A、200B、200Cは、同一の構成を有するため、特に区別しない場合には単に振動発生装置200と称す。
【0013】
一例として、背もたれ部11Aには6個の振動発生装置200Aと3個の振動発生装置200Cとが内蔵されており、座部11Bには6個の振動発生装置200Bが内蔵されている。6個の振動発生装置200Aは、背もたれ部11Aに上下方向に3段、左右方向に3個配置される9個の振動発生装置200のうち、中段と下段(最下段)に配置されている。3個の振動発生装置200Cは、6個の背もたれ部11Aの最上段に配置されている。すなわち、振動発生装置200Cは、背もたれ部11Aのうち、振動発生装置200Aが設けられた領域よりも上側の領域に設けられている。
【0014】
振動発生装置200Aは第1振動発生装置の一例であり、振動発生装置200Bは第2振動発生装置の一例であり、振動発生装置200Cは第3振動発生装置の一例である。背もたれ部11Aのうち、振動発生装置200Aが配置される領域は第1領域11A1であり、振動発生装置200Cが配置される領域は第2領域11A2である。
【0015】
振動発生装置200(200A、200B、200C)は、所定の通知条件が成立したときにコントローラ320によって駆動され、振動又は音を発生する装置である。すべての振動発生装置200は、通信ケーブルを介してコントローラ320に接続されており、コントローラ320によって駆動制御が行われる。コントローラ320は、一例としてダッシュボードの裏側に配置されている。通信ケーブルは、一例としてCAN(Controller Area Network)等の規格の通信ケーブルである。なお、振動発生装置200とコントローラ320との間の通信は、通信ケーブルによる有線通信には限定されず、無線通信であってもよい。
【0016】
図2は、車両システム300の構成を示す図である。図2ではシート11を省き、振動発生装置200については平面構成と断面構成の両方を示す。図2に示す振動発生装置200の断面構成は、平面視で円形の振動発生装置200の中心を通る平面に沿って得られる断面である。
【0017】
振動発生装置200及びコントローラ320は通信ケーブル330Aを介して接続されており、コントローラ320には通信ケーブル330Bを介してECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)12が接続されている。図2には1つの振動発生装置200を示すが、実際には複数の振動発生装置200が複数の通信ケーブル330Aを介してコントローラ320に接続されている。
【0018】
図2には振動発生装置200を簡略化して示すが、振動発生装置200は、主な構成要素としてアクチュエータ220、振動板240、及び筐体260を有する。アクチュエータ220は筐体260の内部に配置されており、振動板240は筐体260の上部に設けられている。
【0019】
図1に示す振動発生装置200Aのアクチュエータ220、振動板240、及び筐体260は、それぞれ、第1アクチュエータ、第1振動板、及び第1筐体の一例である。また、図1に示す振動発生装置200Aの振動板240は、第1センサの第1検出電極の一例でもある。図1に示す振動発生装置200Bのアクチュエータ220、振動板240、及び筐体260は、それぞれ、第2アクチュエータ、第2振動板、及び第2筐体の一例である。図1に示す振動発生装置200Bの振動板240は、第2センサの第2検出電極の一例でもある。図1に示す振動発生装置200Cのアクチュエータ220、振動板240、及び筐体260は、それぞれ、第3アクチュエータ、第3振動板、及び第3筐体の一例である。図1に示す振動発生装置200Cの振動板240は、第3センサの第3検出電極の一例でもある。
【0020】
振動板240は、導電体を含む薄板であり、例えばアルミニウム等の金属で構成される。振動発生装置200のアクチュエータ220が駆動すると、振動板240は、アクチュエータ220の駆動に応じて振動することで周囲の空気を振動させて音を発生させる。すなわち、振動板240はスピーカの振動板のように振る舞う。また、振動板240は、例えば自己容量方式の静電容量センサ等のセンサの検出電極でもある。振動板240に人体が接近することによって振動板240と人体との間の静電容量が変化すると、コントローラ320によって着座者がシート11に密着しているかどうか等が判定される。このように、振動板240は、センサの検出電極と兼用である。換言すれば、振動板240とセンサの検出電極とが同一部材である。なお、ここでは、センサは、検出電極としての振動板240によって実現されるが、検出電極としての振動板240以外の構成要素を含む構成であってもよい。
【0021】
振動発生装置200は、コントローラ320によって駆動制御が行われ、振動又は音を発生する。より具体的には、アクチュエータ220が駆動することにより発生する振動が筐体260に伝搬し、筐体260がシート11を振動させる。また、アクチュエータ220が駆動することにより発生する振動が振動板240に伝搬し、振動板240が振動することで周囲の空気を振動させて音を発生する。
【0022】
コントローラ320が振動発生装置200を駆動するのは、ECU12から所定の通知条件が成立したことを表す通知を受けたときである。所定の通知条件は、例えば、着座者に対するアラート等を発報するために必要な条件である。具体的には、例えば、車線逸脱や速度超過等に対するアラートをECU12が発報する際に、コントローラ320に所定の通知条件が成立したことを表す通知を行うようにすればよい。また、車両の利用者が着座したことを着座センサ等で感知している状態や、シート11が運転席のシートであればイグニッションがオンになっている状態であることを前提として、ECU12が所定の通知条件が成立したか否かを判定して、コントローラ320に所定の通知条件が成立したことを表す通知を行ってもよい。なお、振動発生装置200の詳細については図3乃至図12を用いて後述する。
【0023】
また、振動発生装置200にはカバー310が取り付けられている。カバー310は、シート11及び振動発生装置200とともに、車両用シートシステム300A(図1参照)に含まれる。カバー310は、振動発生装置200の表面に取り付けられており、円環状のフレーム311とメッシュ部312を有する。メッシュ部312はフレーム311に取り付けられており、平面的に配置される複数の孔部を有する。メッシュ部312の孔部は、カバー310の両面を連通している。
【0024】
カバー310は、シート11のシート生地11Cに設けられたメッシュ状等の開口部の裏側に配置され、振動発生装置200を保護する。カバー310を介してシート生地11Cの裏面に振動発生装置200を取り付けることにより、シート生地11Cの表側から着座者によって押圧されても、振動板240にシート生地11Cが触れることを抑制できるため、振動板240の振動が遮られることなく、良好な音を発生することができる。
【0025】
コントローラ320は、判定部321、制御部322、及びメモリ323を有する。コントローラ320は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、入出力インターフェース、及び内部バス等を含むコンピュータによって実現される。判定部321及び制御部322は、コントローラ320が実行するプログラムの機能(ファンクション)を機能ブロックとして示したものである。また、メモリ323は、コントローラ320のメモリを機能的に表したものである。
【0026】
判定部321は、振動発生装置200のセンサとしての振動板240の出力に基づいて、シート11に着座者が密着しているか否かを判定する。例えば、振動板240が静電容量センサの検出電極である場合、判定部321は、振動板240の静電容量の変化に基づいて、シート11に着座者が密着しているか否かを判定する。シート11に着座者が密着しているか否かを判定部321が判定する手法については、図13A図13Cを用いて後述する。
【0027】
判定部321のうち、図1に示す振動発生装置200Aの振動板240の静電容量の変化に基づいてシート11の背もたれ部11Aの第1領域11A1に着座者が密着しているか否かを判定する部分は第1判定部の一例である。判定部321のうち、図1に示す振動発生装置200Bの振動板240の静電容量の変化に基づいてシート11の座部11Bに着座者が密着しているか否かを判定する部分は第2判定部の一例である。判定部321のうち、図1に示す振動発生装置200Cの振動板240の静電容量の変化に基づいてシート11の背もたれ部11Aの第2領域11A2に着座者が密着しているか否かを判定する部分は第3判定部の一例である。なお、判定部321は、振動発生装置200A、200B、200Cに対応する部分が分けられて、別々の判定部として構成されていてもよい。
【0028】
制御部322は、判定部321の判定結果に基づいて振動発生装置200の駆動制御を行う。制御部322のうち、振動発生装置200Aの駆動制御を行う部分は第1制御部の一例であり、振動発生装置200Bの駆動制御を行う部分は第2制御部の一例であり、振動発生装置200Cの駆動制御を行う部分は第3制御部の一例である。振動発生装置200A、200B、200Cの駆動制御を行う部分は、1つの制御部322に含まれており、互いのデータを参照可能である。互いのデータが参照可能であれば、他の種類の振動発生装置200についての判定結果を利用した制御等が可能になる。
【0029】
なお、制御部322は、振動発生装置200A、200B、200Cに対応する部分が分けられて、別々の制御部として構成されていてもよい。この場合でも、別々の制御部322が互いのデータを参照可能な構成にしてもよい。他の種類の振動発生装置200についての判定結果を利用した制御等が可能になるからである。なお、制御部322の具体的な制御内容については、図13A図13Cを用いて後述する。
【0030】
メモリ323は、判定部321及び制御部322が制御を行う上で必要なプログラムやデータ等を格納する。
【0031】
ECU12は、一例として車両10の自動運転の制御を行うECUである。なお、ここではECU12が自動運転の制御を行うECUである形態について説明するが、ECU12は自動運転の制御を行うECU以外のECUであってもよい。また、コントローラ320はECU12に含まれていてもよい。
【0032】
次に、振動発生装置200について説明する。図3図4及び図5は、振動発生装置200の構成を示す図である。図3は分解斜視図であり、図4は平面図であり、図5図4中のI-I線に沿った断面図である。なお、各図における方向は、X1を左、X2を右、Y1を前、Y2を後、Z1を上、Z2を下とする。
【0033】
図3図4及び図5に示すように、振動発生装置200は、下ケース210と、アクチュエータ220と、上ケース230と、振動板240と、を有する。下ケース210と、上ケース230とは、筐体260に含まれる。下ケース210は、円板状の底板211と、底板211の縁から上方に延びる円筒状の側板212と、を有する。アクチュエータ220は、例えば両面テープ251により底板211の上面に固定されている。上ケース230は、中央に開口部232が形成された円環状の底板231と、底板231の縁に設けられ、振動板240を案内するガイド部233と、を有する。振動板240は、円板形状を有しており、ガイド部233の内側で円環状の両面テープ252により底板231の上面に固定され、上ケース230に保持されている。例えば、上ケース230は、振動板240が上ケース230よりも上方に位置するようにして下ケース210に固定される。上ケース230が、振動板240が上ケース230よりも下方に位置するようにして下ケース210に固定されてもよい。上ケース230は保持部の一例である。
【0034】
振動板240は筐体260に支持されており、第1の方向(Z1-Z2方向)に振動することで音を発生する。アクチュエータ220は筐体260に取り付けられており、筐体260を振動させる。アクチュエータ220は、筐体260を第1の方向に第1の周波数f1で振動させ、筐体260を第2の方向に第1の周波数f1より低い第2の周波数f2で振動させる。例えば、第2の方向は第1の方向とは異なる方向であり、第1の方向(Z1-Z2方向)に直交する方向(X1-X2方向又はY1-Y2方向)であることが好ましい。
【0035】
例えば、振動板240は筐体260の上ケース230に保持されている。また、例えば、振動板240は金属製であり、筐体260は合成樹脂製である。
【0036】
振動発生装置200においては、筐体260の第1の方向での振動により振動板240が第1の方向に振動し、振動板240が周辺の空気を振動させることで音が発生する。第1の周波数f1は特に限定されず、例えば200Hz以上6kHz以下とすることができ、特にヒトが聴覚で検知しやすい範囲、例えば500Hz以上4kHz以下とすることが好ましい。ヒトが聴覚で検知しやすい範囲の周波数で筐体260が振動しても、ヒトは触覚で検知しにくい。このため、第1の方向の第1の周波数f1での振動により、実質的に振動を感じさせることなくヒトに音を呈示することができる。
【0037】
また、第2の周波数f2は特に限定されず、例えば600Hz以下とすることができ、特にヒトが触覚で検知しやすい範囲、例えば50Hz以上400Hz以下とすることが好ましい。第1の周波数f1が200Hz以上600Hz以下の場合であっても、第2の周波数f2が第1の周波数f1より低ければよい。ヒトの聴覚は、触覚で検知しやすい周波数の音を検知できることもあるが、第2の方向の振動では、振動板240が第1の方向にほとんど振動しないため、振動板240は音を発生しにくい。このため、第2の方向の第2の周波数f2での振動により、実質的に音を感じさせることなくヒトに振動を呈示することができる。
【0038】
次に、アクチュエータ220の一例について説明する。図6は、アクチュエータ220の構成を示す平面図であり、図7は、図6から可動ヨーク及び永久磁石を除いた平面図であり、図8は、アクチュエータ220の構成を示す断面図である。図6図4及び図5中のI-I線に沿った断面図に相当する。
【0039】
本例に係るアクチュエータ220では、Z1-Z2方向が第1の方向の一例であり、Y1-Y2方向が第2の方向の一例である。
【0040】
図6図8に示すように、アクチュエータ220は、固定ヨーク110、可動ヨーク120、第1の励磁コイル130A、第2の励磁コイル130B、第1のラバー140A、第2のラバー140B及び永久磁石160を有する。固定ヨーク110は、平面形状が略矩形の板状の基部111を有する。第1の励磁コイル130A及び第2の励磁コイル130Bの軸心方向はZ1-Z2方向と平行である。可動ヨーク120は第1のヨークの一例であり、固定ヨーク110は第2のヨークの一例であり、第1のラバー140A及び第2のラバー140Bは弾性支持部の一例である。
【0041】
固定ヨーク110は、更に、基部111の中央から上方(Z1側)に突立する中央突出部112と、基部111の長手方向のY1側の端部(前端部)から上方に突立する第1の側方突出部114Aと、基部111の長手方向のY2側の端部(後端部)から上方に突立する第2の側方突出部114Bとを有する。第1の側方突出部114A及び第2の側方突出部114Bは、X1-X2方向において中央突出部112を間に挟む位置に設けられている。固定ヨーク110は、更に、基部111の中央突出部112と第1の側方突出部114Aとの間から上方に突立する第1の鉄心113Aと、基部111の中央突出部112と第2の側方突出部114Bとの間から上方に突立する第2の鉄心113Bとを有する。第1の励磁コイル130Aは、第1の鉄心113Aに巻き付けられ、第2の励磁コイル130Bは、第2の鉄心113Bに巻き付けられている。第1の側方突出部114A上に第1のラバー140Aが設けられ、第2の側方突出部114B上に第2のラバー140Bが設けられている。中央突出部112は第1の突出部の一例であり、第1の側方突出部114A及び第2の側方突出部114Bは第2の突出部の一例である。
【0042】
可動ヨーク120は板状であり、略矩形の平面形状を有する。可動ヨーク120は、その長手方向の端部にて第1のラバー140A及び第2のラバー140Bに接触している。可動ヨーク120の固定ヨーク110側の面に永久磁石160が取り付けられている。永久磁石160は、第1の領域161と、第1の領域161のY1側に位置する第2の領域162と、第1の領域161のY2側に位置する第3の領域163とを有する。例えば、第1の領域161はS極となるように着磁され、第2の領域162及び第3の領域163はN極となるように着磁されている。そして、永久磁石160は、第1の領域161が中央突出部112に対向し、第1の領域161と第2の領域162との境界612が第1の励磁コイル130Aに対向し、第1の領域161と第3の領域163との境界613が第2の励磁コイル130Bに対向するようにして、平面視で可動ヨーク120の略中央に取り付けられている。また、境界612は第1の励磁コイル130Aの軸心よりもY2側に位置し、境界613は第2の励磁コイル130Bの軸心よりもY1側に位置している。すなわち、境界612は第1の鉄心113Aの中心よりもY2側に位置し、境界613は第2の鉄心113Bの中心よりもY1側に位置している。永久磁石160は固定ヨーク110及び可動ヨーク120を磁化し、磁気吸引力により、可動ヨーク120はZ1-Z2方向で固定ヨーク110に接近する向きに付勢される。また、磁気吸引力により、可動ヨーク120の両端は、Y1-Y2方向で第1の側方突出部114A、第2の側方突出部114Bの各々に接近する向きに付勢される。
【0043】
筐体260に振動を発生させる際には、第1の励磁コイル130A、第2の励磁コイル130Bの各々に流れる電流の向きが交互に反転するようにアクチュエータ220が駆動される。すなわち、第1の励磁コイル130A、第2の励磁コイル130Bの各々に流れる電流の向きが交互に反転することにより、第1の鉄心113Aの可動ヨーク120側の面の磁極、第2の鉄心113Bの可動ヨーク120側の面の磁極が、互いに独立して、交互に反転する。この結果、第1の励磁コイル130Aを流れる電流の向きと第2の励磁コイル130Bを流れる電流の向きとに応じて、永久磁石160及び可動ヨーク120がY1-Y2方向又はZ1-Z2方向で往復運動する。電流の向きと運動の向きとの関係については後述する。
【0044】
例えば、第1のラバー140A及び第2のラバー140BはX1-X2方向を長手方向とする矩形の平面形状を有する。第1のラバー140Aは第1の側方突出部114Aと可動ヨーク120との間に挟持され、第2のラバー140Bは第2の側方突出部114Bと可動ヨーク120との間に挟持されている。すなわち、第1のラバー140A及び第2のラバー140Bは固定ヨーク110と可動ヨーク120との間に挟み込まれている。このため、意図的に分解しなければ、第1のラバー140A及び第2のラバー140Bは固定ヨーク110と可動ヨーク120との間に保持される。なお、第1のラバー140Aが第1の側方突出部114Aの上面若しくは可動ヨーク120の下面又はこれらの両方に固着されていてもよく、第2のラバー140Bが第2の側方突出部114Bの上面若しくは可動ヨーク120の下面又はこれらの両方に固着されていてもよい。
【0045】
ここで、電流の向きと運動の向きとの関係について説明する。第1の励磁コイル130Aを流れる電流の向きと第2の励磁コイル130Bを流れる電流の向きとの組み合わせは合計で4種類である。
【0046】
第1の組み合わせでは、Z1側から見たときに、第1の励磁コイル130A及び第2の励磁コイル130Bを反時計回り(CCW)に電流が流れる。図9は、第1の組み合わせにおける電流の向きと運動の向きとの関係を示す図である。第1の組み合わせでは、図9に示すように、第1の鉄心113Aの可動ヨーク120側の面の磁極がN極となり、第2の鉄心113Bの可動ヨーク120側の面の磁極もN極となる。一方、中央突出部112、第1の側方突出部114A及び第2の側方突出部114Bの可動ヨーク120側の面の磁極はS極となる。この結果、中央突出部112と第1の領域161との間に斥力が作用し、第1の鉄心113Aと第2の領域162との間に斥力が作用し、第2の鉄心113Bと第3の領域163との間に斥力が作用する。従って、可動ヨーク120にはZ1を向く力190Uが作用する。
【0047】
第2の組み合わせでは、Z1側から見たときに、第1の励磁コイル130A及び第2の励磁コイル130Bを時計回り(CW)に電流が流れる。図10は、第2の組み合わせにおける電流の向きと運動の向きとの関係を示す図である。第2の組み合わせでは、図10に示すように、第1の鉄心113Aの可動ヨーク120側の面の磁極がS極となり、第2の鉄心113Bの可動ヨーク120側の面の磁極もS極となる。一方、中央突出部112、第1の側方突出部114A及び第2の側方突出部114Bの可動ヨーク120側の面の磁極はN極となる。この結果、中央突出部112と第1の領域161との間に引力が作用し、第1の鉄心113Aと第2の領域162との間に引力が作用し、第2の鉄心113Bと第3の領域163との間に引力が作用する。従って、可動ヨーク120にはZ2を向く力190Dが作用する。
【0048】
従って、第1の励磁コイル130A及び第2の励磁コイル130Bに同方向の電流が流れるように、第1の組み合わせと第2の組み合わせとを繰り返すことにより、可動ヨーク120がZ1-Z2方向で往復運動する。つまり、第1の励磁コイル130A及び第2の励磁コイル130Bへの通電により、可動ヨーク120は初期状態における位置を中立位置としてZ1-Z2方向に振動する。これにより、アクチュエータ220は全体として、Z1-Z2方向に振動する。
【0049】
第3の組み合わせでは、Z1側から見たときに、第1の励磁コイル130Aを反時計回り(CCW)に電流が流れ、第2の励磁コイル130Bを時計回り(CW)に電流が流れる。図11は、第3の組み合わせにおける電流の向きと運動の向きとの関係を示す図である。第3の組み合わせでは、図11に示すように、第1の鉄心113Aの可動ヨーク120側の面の磁極がN極となり、第2の鉄心113Bの可動ヨーク120側の面の磁極がS極となる。また、第1の側方突出部114Aの可動ヨーク120側の面の磁極がS極となり、第2の側方突出部114Bの可動ヨーク120側の面の磁極がN極となる。この結果、第1の側方突出部114Aと第2の領域162との間に引力が作用し、第1の鉄心113Aと第1の領域161との間に引力が作用し、第2の鉄心113Bと第1の領域161との間に斥力が作用し、第2の側方突出部114Bと第3の領域163との間に斥力が作用する。従って、可動ヨーク120にはY1を向く力190Lが作用する。
【0050】
第4の組み合わせでは、Z1側から見たときに、第1の励磁コイル130Aを時計回り(CW)に電流が流れ、第2の励磁コイル130Bを反時計回り(CCW)に電流が流れる。図12は、第4の組み合わせにおける電流の向きと運動の向きとの関係を示す図である。第4の組み合わせでは、図12に示すように、第1の鉄心113Aの可動ヨーク120側の面の磁極がS極となり、第2の鉄心113Bの可動ヨーク120側の面の磁極がN極となる。また、第1の側方突出部114Aの可動ヨーク120側の面の磁極がN極となり、第2の側方突出部114Bの可動ヨーク120側の面の磁極がS極となる。この結果、第1の側方突出部114Aと第2の領域162との間に斥力が作用し、第1の鉄心113Aと第1の領域161との間に斥力が作用し、第2の鉄心113Bと第1の領域161との間に引力が作用し、第2の側方突出部114Bと第3の領域163との間に引力が作用する。従って、可動ヨーク120にはY2を向く力190Rが作用する。
【0051】
従って、第1の励磁コイル130A及び第2の励磁コイル130Bに逆方向の電流が流れるように、第3の組み合わせと第4の組み合わせとを繰り返すことにより、可動ヨーク120がY1-Y2方向で往復運動する。つまり、第1の励磁コイル130A及び第2の励磁コイル130Bへの通電により、可動ヨーク120は初期状態における位置を中立位置としてY1-Y2方向に振動する。これにより、アクチュエータ220は全体として、Y1-Y2方向に振動する。
【0052】
このようなアクチュエータ220は、例えば、固定ヨーク110のZ2側の面を筐体260の底板211に取り付けて使用することができる。以上のようなアクチュエータ220をZ1-Z2方向に振動させることで、筐体260がZ1-Z2方向に振動し、それに伴って振動板240がZ1-Z2方向に振動するので、振動板240が周辺の空気を振動させることで音が発生する。また、アクチュエータ220をY1-Y2方向に振動させることで、筐体260がY1-Y2方向に振動するので、シート11を通じて着座者に振動を呈示できる。
【0053】
図13A図13B図13Cは、それぞれ、非接触状態、密着状態、接触状態を説明する図である。図13A図13B図13Cには、それぞれ、非接触状態、密着状態、接触状態を示す。図13Aに示すように、非接触状態とは、シート11の表面(シート生地11C)に着座者1(人体)が接触していない状態である。シート11に誰も着座していない状態の静電容量値は、シート11に人体が近づいている状態と、シート11に着座者がいる状態とに比べて小さい。このため、シート11に誰も着座していない状態の静電容量の閾値TH1をメモリ323に格納しておき、判定部321は、所定の通知条件が成立した場合に振動板240の静電容量が閾値TH1以下であれば非接触状態と判定すればよい。
【0054】
また、図13Bに示すように、密着状態とは、着座者1の体がシート11に押し付けられている状態である。より具体的には、振動発生装置200が発生する振動が着座者に伝わる程度に着座者がシート11に密着してシート11が弾性変形した状態である。シート11に利用者が着座していれば座部11Bの振動発生装置200Bの振動板240には人体が密着していると考えられる。また、背もたれ部11Aの振動発生装置200Aでは、背もたれ部11Aに人体が寄りかかっている状態と、背中を浮かせている状態とでは振動板240の静電容量が異なる。
【0055】
このため、判定部321が密着状態と判定する際には、次のような距離D1、D2を用いる。距離D1は、第1距離の一例であり、図13Aに示すように誰も着座していない状態における振動板240の表面からシート11の表面までの距離である。また、距離D2は、第2距離の一例であり、距離D1よりも短い。距離D2は、図13Bに示すようにシート11に着座者がいるときの振動板240の表面からシート11の表面までの距離である。密着状態では、シート11の表面と振動板240との距離が非接触状態における距離よりも短く、図13Cに示すようにシート11の表面に人体が接触しているが密着していない状態(接触状態)よりも短い。このため、密着状態での振動板240の静電容量は、非接触状態及び接触状態における静電容量よりも大きくなる。判定部321は、所定の通知条件が成立した場合に振動板240の静電容量が密着状態を表す閾値TH2以上であれば密着状態と判定すればよい。
【0056】
また、接触状態とは、図13Cに示すようにシート11の表面に人体が接触しているが密着していない状態である。接触状態におけるシート11の表面と振動板240の表面との距離Dは、D2よりも長い。このため、判定部321は、所定の通知条件が成立した場合に振動板240の静電容量が静電容量の閾値TH1よりも大きく、かつ、閾値TH2未満であれば、接触状態と判定すればよい。なお、密着状態と接触状態とを判定するには、振動板240の静電容量に基づいて判定する形態に限らず、圧力センサによる圧力と背もたれ部11Aの弾性率等から算出した値に基づいて判定してもよいし、他のセンサを用いてもよい。
【0057】
図14A図14Cは、振動発生装置200による振動又は音の発生を説明する図である。図14A図14B図14Cは、それぞれ、非接触状態、密着状態、接触状態における振動発生装置200の駆動状態を示す。
【0058】
図14Aに示すように非接触状態では、制御部322は振動発生装置200に出力レベルが弱い音を発生させる。非接触状態では、利用者に振動を伝達することができず、また、人体がシート11の表面に接触しておらず、振動板240には人体が覆い被さっていないため、出力レベルの弱い音で情報を伝達可能だからである。
【0059】
図14Bに示すように密着状態では、制御部322は振動発生装置200に振動を発生させる。密着状態では、人体がシート11の表面に密着しているため、振動で情報を伝達可能だからである。
【0060】
図14Cに示すように接触状態では、制御部322は振動発生装置200に出力レベルが強い音(大きな音)を発生させる。接触状態では、人体はシート11の表面に密着してはいないため、振動では情報を伝達しにくく、また、人体が振動板240に覆い被さっていて音が伝わりにくいため、非接触状態よりも音の出力レベルを高くし、より強い音で(大きな音)情報を伝達しやすくするためである。
【0061】
判定部321は、所定の通知条件が成立した場合に、すべての振動発生装置200について別個独立的に非接触状態、密着状態、接触状態のいずれであるかを判定し、制御部322は、判定結果に応じて、すべての振動発生装置200について別個独立的に、出力レベルの弱い音の発生、振動の発生、出力レベルの強い音の発生を行わせればよい。
【0062】
図15は、制御部322が実行する処理の一例を示すフローチャートである。制御部322は処理がスタートすると、所定の通知条件が成立したかどうかを判定する(ステップS1)。所定の通知条件が成立するのは、制御部322がECU12から所定の通知条件が成立したことを表す通知を受けたときである。
【0063】
制御部322は、判定部321に振動板240の静電容量に基づいて状態を判定させる(ステップS2)。この結果、判定部321が振動板240の静電容量に基づいて接触状態、密着状態、接触状態のいずれであるかを判定し、判定結果を制御部322に通知する。
【0064】
制御部322は、判定部321から通知された判定結果が密着状態であるかどうかを判定する(ステップS3)。制御部322は、判定結果が密着状態である(S3:YES)と判定すると、振動発生装置200に振動を発生させる(ステップS4)。
【0065】
また、制御部322は、ステップS3で判定結果が密着状態ではない(S3:NO)と判定すると、接触状態であるかどうかを判定する(ステップS5)。制御部322は、判定結果が接触状態である(S5:YES)と判定すると、振動発生装置200に強い音を発生させる(ステップS6)。
【0066】
また、制御部322は、ステップS5において判定結果が接触状態ではない(S5:NO)と判定すると、振動発生装置200に弱い音を発生させる(ステップS7)。以上で一連の処理が終了する。制御部322は、上述のような処理をすべての振動発生装置200について個別に行う。
【0067】
また、制御部322は、次のような制御を行ってもよい。上述のような3つの状態を判定するのは、特に背もたれ部11Aの振動発生装置200A及び200Cについて有効である。着座者は、背もたれ部11Aに強く寄りかかっている場合と、背もたれ部11Aに軽くもたれている場合と、背もたれ部11Aにもたれていない場合とがある。背もたれ部11Aに強く寄りかかっている場合には密着状態であり、背もたれ部11Aに軽くもたれている場合は接触状態であり、背もたれ部11Aにもたれていない場合は非接触状態である。このように、背もたれ部11Aについては、非接触状態、密着状態、接触状態の3つの状態が生じやすいため、3つの状態を区別して判定し、判定結果に応じて振動発生装置200A、200Cを駆動することは有効である。
【0068】
また、座部11Bに配置される振動発生装置200Bは、必ずしも3つの状態を判定しなくても、密着状態か否かのみを判定する構成であってもよい。座部11Bに対しては、座っている状態と座っていない状態との2つの状態のどちらかが発生しやすいため、制御部322は、密着状態でなければ振動発生装置200Bに音を発生させ、密着状態であれば振動発生装置200Bに振動を発生させればよい。すなわち、振動発生装置200Bは、接触状態と非接触状態とを判定する必要がない。座部11Bに配置される振動発生装置200Bは、判定部321が密着状態であるか否かのみを判定する構成であれば、判定処理を簡易にすることができる。なお、振動発生装置200Bは、密着状態であるか否かを判定することに替えて、密着状態を含む接触状態であるか、非接触状態であるかを判定する構成であってもよい。
【0069】
また、複数の振動発生装置200を含むので、ECU12から受ける通知に次のようなデータを含ませて着座者に方向を知らせる制御を行ってもよい。例えば、車線逸脱が発生して車両の左側が車線を跨いだ場合に、シート11の左側に設けられた振動発生装置200A、200B、200Cを駆動して振動又は音を発生させることで、着座者に左側への車線逸脱が発生したことを知らせてもよい。この場合に、振動発生装置200A、200B、200Cのうち、着座者の体が密着状態の振動発生装置200は振動を発生させ、接触状態の振動発生装置200は音を発生させるようにすれば、着座者の姿勢によらずに方向性を持たせた通知が可能になる。
【0070】
また、背もたれ部11Aの中段と最下段(下方部分)には6個の振動発生装置200Aが配置され、最上段(上方部分)には3個の振動発生装置200Cが配置されている。背もたれ部11Aの上方部分で着座者の背中が密着していれば、下方部分の振動発生装置200Aから音を発生させても背中で遮られて着座者の耳には届かない可能性が高い。このため、振動発生装置200Cの振動板240の静電容量に基づいて判定部321が密着状態を判定した場合には、振動発生装置200Aの振動板240の静電容量に基づく判定結果によらずに、制御部322は振動発生装置200Aには音を発生させないようにしてもよい。振動発生装置200Aに音を発生させないことにより節電が可能である。
【0071】
以上のように、振動発生装置200は、振動板240で着座者の近接を検出した位置において、振動又は音を呈示することができる。したがって、検出を行った位置で振動又は音を呈示できる車両用シートシステム300A、車両システム300、及び振動発生装置200を提供することができる。また、音を発生する振動板240を静電容量センサの検出電極として用いるので、省スペース化が可能である。
【0072】
なお、以上では、アクチュエータ220が振動板240には取り付けられておらず、筐体260にのみ取り付けられている形態について説明したが、アクチュエータ220は振動板240と筐体260とに取り付けられていてもよい。その場合、アクチュエータ220の振動によって振動板240が直接振動することで音を発生することができる。また、アクチュエータ220は、振動板240のみに取り付けられていてもよい。その場合、アクチュエータ220の振動によって振動板240及び筐体260が振動することで、シート11を通じて着座者に振動を呈示することができる。
【0073】
また、以上では、振動発生装置200にカバー310が取り付けられている形態について説明したが、カバー310が取り付けられていなくてもよい。図16Aは、実施形態の変形例の振動発生装置200Dを示す図である。図16Bは、実施形態の変形例の振動発生装置200Eを示す図である。図16Aに示す振動発生装置200Dは、振動板240が筐体260の上面の外側に設けられている。このような構成の振動発生装置200Dは、シート生地11Cを介して着座者の体が振動板240に接触することを許容する構成である。振動板240に着座者の体が触れている状態では音質が変化する可能性があるため、振動板240に着座者の体が触れている状態では振動発生装置200Dに振動を発生させる使い方に適している。
【0074】
図16Bに示す振動発生装置200Eは、振動板240が筐体260の上面の内側に設けられており、振動板240の表面は筐体260の上面よりも筐体260の内側にオフセットしている。このような構成の振動発生装置200Eは、シート生地11Cを介して着座者の体が振動板240に接触しにくい構成である。振動板240は筐体260の厚さの分だけオフセットしているため、非接触で静電容量を検出する構成である。
【0075】
また、以下の他の態様を開示する。図17Aは、振動発生装置200M1を示す図である。図17Bは、振動発生装置200M2を示す図である。図17A及び図17Bには図2と同様に、それぞれ、振動発生装置200M1、200M2の平面構成と断面構成の両方を示す。
【0076】
図17Aに示す振動発生装置200M1は、アクチュエータ220、振動板240M、筐体260A、及び検出電極280Aを含む。アクチュエータ220は、図2に示すアクチュエータ220と同様であるが、筐体260の内部の天面に取り付けられている。振動板240Mは、筐体260Aの下面に設けられた開口部に取り付けられており、音を発生する。振動板240Mは静電容量センサの検出電極としては機能しないため、導電体を含んでいなくてもよく、例えば樹脂等で構成されていてもよい。筐体260Aは、下面に振動板240Mが設けられる開口部を有し、上面に開口部を有しない点が図2に示す筐体260と異なるが、その他の構成は同様である。
【0077】
検出電極280Aは、例えば静電容量センサ等のセンサの検出電極であり、例えば自己容量方式で人体との間の静電容量を検出可能である。検出電極280Aは円板状であり、筐体260Aの上面に設けられている。コントローラ320の判定部321は、検出電極280Aの静電容量に基づいて、密着状態、接触状態、非接触状態を判定可能である。なお、センサは静電容量センサには限定されず、検出電極280Aの代わりに、例えば抵抗式の感圧センサ等を用いて圧力等の物理量を取得することで、着座者の近接を検出してもよい。この場合、判定部321は、センサから出力された物理量のデータに基づいて、密着状態、接触状態、非接触状態を判定してもよい。
【0078】
図17Bに示す振動発生装置200M2は、アクチュエータ220、振動板240M、筐体260、及び検出電極280Bを含む。アクチュエータ220は、図2に示すアクチュエータ220と同様であり、筐体260の内部の底部に設けられている。振動板240Mは、筐体260の上面に設けられた開口部に取り付けられており、音を発生する。振動板240Mは静電容量センサの検出電極としては機能しないため、導電体を含んでいなくてもよく、例えば樹脂等で構成されていてもよい。筐体260は、図2に示す筐体260と同様である。
【0079】
検出電極280Bは、静電容量センサ等のセンサの検出電極であり、例えば自己容量方式で人体との間の静電容量を検出可能である。検出電極280Bは円環状であり、筐体260の上面に設けられている。円環状の検出電極280Bの中央の開口部からは振動板240Mの上面が表出している。コントローラ320の判定部321は、検出電極280Bの静電容量に基づいて、密着状態、接触状態、非接触状態を判定可能である。なお、センサは静電容量センサには限定されず、検出電極280Bの代わりに、例えば抵抗式の感圧センサ等を用いて圧力等の物理量を取得することで、着座者の近接を検出してもよい。この場合、判定部321は、センサから出力された物理量のデータに基づいて、密着状態、接触状態、非接触状態を判定してもよい。
【0080】
図18Aは、振動発生装置200M3を示す図である。図18Bは、振動発生装置200M4を示す図である。図18Cは、振動発生装置200M5を示す図である。図18Aに示す振動発生装置200M3は、図17Bに示す振動発生装置200M2の検出電極280Bを筐体260の上面から、筐体260の内部の天面に移動させた構成を有する。このような振動発生装置200M3では、検出電極280Bがシート生地11Cや人体に直接触れにくい構成にすることができる。
【0081】
図18Bに示す振動発生装置200M4は、図17Bに示す振動発生装置200M2の検出電極280Bの代わりに、光学式センサ280Cを含む。光学式センサ280Cは、例えばIR(赤外線)センサであり、発光部と受光部を有する。光学式センサ280Cは筐体260の上面に設けられており、光学式センサ280Cの位置に合わせてシート生地11Cには孔部11C1が設けられている。光学式センサ280Cは、発光部から孔部11C1を通じて赤外線を発光し、受光部で反射波を受光することによって、受光量に応じた信号を判定部321に出力する。
【0082】
判定部321は、光学式センサ280Cから入力される信号が表す受光量が非着座状態におけるシート生地11Cの表面よりも遠くで反射される受光量である場合には非接触状態と判定する。また、判定部321は、光学式センサ280Cから入力される信号が表す受光量が非着座状態におけるシート生地11Cの表面の位置で反射される受光量である場合には接触状態と判定する。また、判定部321は、光学式センサ280Cから入力される信号が表す受光量が非着座状態におけるシート生地11Cの表面の位置よりも手前の位置で反射される受光量である場合には密着状態と判定する。なお、発光部と受光部は一体型であってもよいし、別々に設けられていてもよい。
【0083】
図18Cに示す振動発生装置200M5は、図18Bに示す振動発生装置200M4の光学式センサ280Cを筐体260Bの内側に設けた構成を有する。振動発生装置200M5の筐体260Bは、上面の振動板240用の開口部の横に開口部260B1を有する。開口部260B1は、光学式センサ280Cの赤外線を通すために設けられている。このような振動発生装置200M5を振動発生装置200M4の代わりに用いてもよい。
【0084】
また、図17及び図18に示す振動発生装置200M1~200M5は振動板240を含まなくてもよい。車両10の室内のスピーカ(音発生部)から通知音等の音を発生させてもよい。また、振動発生装置200M1~200M3が検出電極280A、280Bを含まずに、振動発生装置200M1~200M3とは別に設けられる静電容量センサ等のセンサの検出電極を車両10に設けてもよい。同様に、振動発生装置200M4、200M5が光学式センサ280Cを含まずに、振動発生装置200M4、200M5とは別に設けられる静電容量センサの電極を車両10に設けてもよい。これらの場合には、着座者の姿勢や、振動発生装置200M1~M5と着座者との位置関係によらずに着座者の状態を判定することができる。
【0085】
以上、本発明の例示的な実施形態の車両システム及び振動発生装置について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0086】
例えば、本実施形態では、コントローラ320がダッシュボードの裏側に配置されている例を示したが、コントローラ320が配置される位置は限定されず、例えばコントローラ320がシート11に内蔵されていてもよい。また、コントローラ320が振動発生装置200の外部に配置されることには限定されず、コントローラ320の一部又は全てが振動発生装置200の内部に配置されていてもよい。
【0087】
また、本実施形態では、アクチュエータ220が第1の方向に振動することで振動板240から音が発生し、アクチュエータ220が第2の方向に振動することで筐体260及びシート11を通じて着座者に振動を呈示する例を示したが、アクチュエータ220は一方向のみに振動し、振動周波数の切り替えによって音の発生と振動の呈示とを切り替える構成としてもよい。その場合、アクチュエータ220に替えて、一方向のみに沿って振動可能なアクチュエータを用いてもよい。
【0088】
なお、本国際出願は、2020年7月14日に出願した日本国特許出願2020-120777に基づく優先権を主張するものであり、その全内容は本国際出願にここでの参照により援用されるものとする。
【符号の説明】
【0089】
10 車両
11 シート
11A 背もたれ部
11A1 第1領域
11A2 第2領域
11B 座部
11C シート生地
110 固定ヨーク
111 基部
112 中央突出部
113A 第1の鉄心
113B 第2の鉄心
114A 第1の側方突出部
114B 第2の側方突出部
120 可動ヨーク
130A 第1の励磁コイル
130B 第2の励磁コイル
140A 第1のラバー
140B 第2のラバー
160 永久磁石
200、200A、200B、200C 振動発生装置
210 下ケース
220 アクチュエータ
230 上ケース
240、240M 振動板
260、260A、260B 筐体
300 車両システム
300A 車両用シートシステム
320 コントローラ
321 判定部
322 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図14C
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図18C