IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オブシュチェストボ・エス・オグラニチェノイ・オトベツトベノスティウ“オベディネナヤ・コンパニヤ・ルサール・インツェネルノ-テフノロギチェスキー・ツェントル”の特許一覧

特許7407295スカンジウム含有材料からスカンジウムを抽出する方法
<>
  • 特許-スカンジウム含有材料からスカンジウムを抽出する方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】スカンジウム含有材料からスカンジウムを抽出する方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 59/00 20060101AFI20231221BHJP
   C22B 3/12 20060101ALI20231221BHJP
   C22B 3/22 20060101ALI20231221BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
C22B59/00
C22B3/12
C22B3/22
C22B3/44 101A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022549351
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-19
(86)【国際出願番号】 RU2020050298
(87)【国際公開番号】W WO2021182998
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】2020109988
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】521365037
【氏名又は名称】オブシュチェストボ・エス・オグラニチェノイ・オトベツトベノスティウ“オベディネナヤ・コンパニヤ・ルサール・インツェネルノ-テフノロギチェスキー・ツェントル”
【氏名又は名称原語表記】OBSHCHESTVO S OGRANICHENNOY OTVETSTVENNOST’YU OBEDINENNAYA KOMPANIYA RUSAL INZHENERNO-TEKHNOLOGICHESKIY TSENTR
【住所又は居所原語表記】UL.POGRANICHNIKOV,D.37,STR.1,G.KRASNOYARSK,660111,RUSSIA
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】コズイレフ、アレクサンドル・ボリーソビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ペトラコバ、オルガ・ビクトロブナ
(72)【発明者】
【氏名】スース、アレクサンドル・ゲンナジエビッチ
(72)【発明者】
【氏名】パノフ、アンドレイ・ウラジミロビッチ
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0161828(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105483383(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0360073(US,A1)
【文献】Borra, C.R. et al.,Recovery of Rare Earths and Other Valuable Metals From Bauxite Residue (Red Mud): A Review,Journal of Sustainable Metallurgy,2016年,volume 2,pages365-386,https://doi.org/10.1007/s40831-016-0068-2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スカンジウム含有材料からスカンジウムを抽出する方法であって、前記方法は
- スカンジウム含有材料のケーキを炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの混合物と共に再スラリー化すること、
- 前記スカンジウム含有材料のスラリーを前記炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの混合物で炭化浸出すること、
- 前記浸出されたスラリーをろ過し、得られたろ液からスカンジウム濃縮物を沈殿させること、
を含み、
前記スラリーの炭化浸出は、濃度130~350g/dmの炭酸ナトリウムと濃度2~100g/dmの炭酸水素ナトリウムを有する混合物を用い、pH9.5~11.0で行われ、
前記スラリーの必要なpHを維持するために、前記スラリーはCO含有ガスと空気の混合物で処理され、かつ、前記スカンジウム濃縮物は、前記スカンジウム含有材料のスラリーのろ過により生じる溶液をpH12~13.5のアルカリ溶液で50~100℃で処理することにより、一段階で沈殿させられる、
方法。
【請求項2】
前記炭化浸出中の前記スラリーの処理に、液状CO及び/又は工業炉からの排出ガスのガス状COを使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スラリーの炭化浸出を固液比1:2~20(S:L)で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記スラリーの炭化浸出を2~10時間行う、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記スラリーの炭化浸出を20~90℃で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記スカンジウム濃縮物を1~3時間沈殿させる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記スカンジウム濃縮物の沈殿から生じる溶液が、必要な炭酸ナトリウム対炭酸水素ナトリウム比を回復させるために、15~50℃のCO含有ガスと空気の混合物で処理し、前記スカンジウム含有材料のケーキの新しいバッチの再スラリー化のために戻す、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記スカンジウム濃縮物を沈殿させる段階で、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化アンモニウムの溶液を前記アルカリ溶液として使用する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、化学並びに非鉄及びレアメタル処理の分野、特に、スカンジウムを抽出し濃縮する方法に関し、さまざまなスカンジウム含有材料、具体的には、アルミナ生産の赤泥、並びに、チタン、ジルコニウム、タングステン、ニッケル、ニオブ及びタンタル含有原料の処理で生じる廃棄物から、スカンジウムの製造に使用可能である。
【0002】
近年、酸化スカンジウム及びスカンジウム含有材料に対する需要が増加し続けている。2028年までには、造船、航空宇宙及び自動車、航空、3Dプリントなどの産業における用途拡大により、スカンジウムに対する需要は300tpy(酸化スカンジウムを基準として)にまで増加すると予測されている。0.1~0.5%のスカンジウムを含有するアルミニウム合金は、強度と腐食特性の独特な組合せを特徴とする。スカンジウム含有合金の幅広い用途は、スカンジウムの高コストによって限定されており、したがって、そのコスト削減を可能とする酸化スカンジウムを製造する技術の開発は、スカンジウム含有材料及びそれに基づく製品の市場を大幅に拡大できる。
【0003】
スカンジウムは典型的な微量元素で、これを採掘できる鉱物がないことは周知である。スカンジウムの主な供給源は、ボーキサイト、ラテライト鉱石、レアメタル鉱石、及びそれらの処理で生じる廃棄物であり、40~500g/tの酸化スカンジウムを含有している。公知のスカンジウム抽出法の大部分は、湿式製錬法(浸出、収着、抽出及び加水分解)による。
【背景技術】
【0004】
関連技術は、赤泥から酸化スカンジウムを製造する方法を開示し、この方法は、焼結炉からの排出ガスのCO含有混合物に赤泥を通過させながら、炭酸ナトリウム溶液と炭酸水素ナトリウム溶液の混合物で赤泥を複数回(7サイクル)逐次浸出すること;分離すること;泥を洗浄して得られた溶液から酸化スカンジウムを更に抽出することを含む。この方法は、前記溶液を高温で静置し、そのような静置の各段階(3段階存在する)後に沈殿物を選択的に分離することを前提としており、ここで、第1の段階では、溶液を80℃以下に加熱して少なくとも1時間静置し、冷却しながら少なくとも2時間更に沈降させ;第2の段階では、溶液を沸騰するまで加熱し、撹拌しながら少なくとも2時間沸騰状態を保持し;第3の段階では、ろ液を蒸発させて体積を50%低減させ、46%の水酸化ナトリウム溶液を更に添加して1.5~2.0kg/mのNacaustic濃度を得、少なくとも2時間沸騰状態を保持し、冷却しながら10~16時間、スカンジウム含有沈殿物を更に沈降させる。目的の生成物、即ち、スカンジウム濃縮物中の酸化スカンジウム含有量は約5.2%のSc(3.40%のSc)で;スカンジウム濃縮物の量(収量)は、処理された赤泥の約290g/tである。この「リサイクル法」の、赤泥の新鮮なバッチからのスカンジウムの炭化浸出のための1サイクルにおいて得られる粗Sc含有溶液の回収を表す第1のサイクル後の酸化スカンジウムの回収率は、泥中の酸化スカンジウム(Sc)の初期含有量の15.8%であり;総抽出率(7サイクル後)は、13.6%であった(特許RU2483131号、公開日:2013年5月27日)。
【0005】
この方法の欠点は、スカンジウムの抽出度が低く、合計で13.6%を超えないことに加え、溶液を蒸発させて体積を50%低減させることを含めてスカンジウム含有溶液を高温で3段階静置することによる、長い処理期間と高い電力消費である。
【0006】
関連技術はまた、赤泥からスカンジウムを抽出する方法を開示し、前記方法は、振動キャビテーション下で赤泥に3.0~6.0atmの圧力でCO含有混合物を通過させながら、85~100g/dmの炭酸水素ナトリウムと20.0~45.0g/dmの炭酸ナトリウムの混合物、又は125g/dmの炭酸水素ナトリウムを含有する炭酸塩溶液で赤泥を複数回逐次浸出すること、高温で貴液を更に2段階静置させることを含み、第1の段階では、90℃以上、pH9.0~9.5で3時間静置した後、形成された低溶性不純物化合物をろ過し、第2の段階では、水酸化ナトリウム溶液をpHが12.5になるまで添加した状態で、100~110℃で3時間静置し、スカンジウム濃縮物を沈殿させる。この方法は、5回のリサイクル段階後に炭化浸出による赤泥からのスカンジウム抽出量を20%まで増加させることができ、目的の生成物中の酸化スカンジウム含有量は、6.5重量%であった(特許RU2562183号、公開日:2015年9月10日)。
【0007】
上記方法の欠点も、スカンジウムの抽出度が低いこと、及び新しい赤泥のバッチを浸出させて溶液中のスカンジウムを濃縮する複数回の溶液の再循環のため、実施には大きなコストがかかることであり、結果的には低品質の生成物が得られ、酸化スカンジウムを得るスカンジウム濃縮物の後処理のための追加費用が発生する。
【0008】
関連技術は、スカンジウム含有原料からスカンジウムを製造する方法を開示し、この方法は、水酸化ナトリウム溶液を用いたスラリー調製によって「スラリー-収着剤」系で収着浸出するための初期原料を調製すること;炭酸ナトリウムを含有する化合物又はCO含有ガスを添加することによりスラリーのpHを9.2~10.4以内に維持しながら、連続向流条件でリン含有イオン交換収着剤を使用して収着浸出することを含む。収着浸出の完了後、収着剤を洗浄し、スラリーから分離して変換し、次いで、炭酸塩溶液でスカンジウムを脱着し、収着に更に使用するために収着剤を洗浄して脱着溶液を除去し、水酸化ナトリウムを使用してSc含有脱着溶液からスカンジウム濃縮物を抽出する(特許RU2694866号、公開日:2019年7月17日)。
【0009】
提案されたスカンジウム含有原料からスカンジウムを抽出する方法は、他の不純物からのスカンジウムの分離を向上させ、抽出率を39%まで増加させることが可能である。しかし、この方法の重大な欠点は、浸出サイクルごとに新しい水酸化ナトリウム溶液が必要であること、及び浸出後の母液を新たな処理サイクルに戻す段階がなく、水酸化ナトリウムや炭酸塩などの試薬の大量消費を招き、結果として、費用が増加することである。
【0010】
関連技術はまた、アルミナ生産の赤泥からスカンジウムを抽出する方法を開示し、この方法は、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの混合物を40~80g/dmの濃度(Natotalを基準として)で含有する溶液で赤泥を再スラリー化すること、連続向流条件、40~90℃、赤泥スラリー中の固液相の質量比1:2.5~5.0(S:L)でリン含有吸着剤上にスラリーからスカンジウムを収着浸出させること、濃度200~450g/dmの炭酸ナトリウム溶液を用いてイオナイト有機相からスカンジウムを脱着させてSc含有脱着溶液を得、そこからスカンジウム濃縮物を抽出することを含む。収着浸出後、スカンジウムが枯渇した赤泥スラリーはろ過され、得られた炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの溶液はCO含有ガスと空気の混合物で処理されてNabicarb対Natotalの比を50~100%に回復させ、新しい赤泥のバッチの収着浸出へと戻される。即ち、浸出溶液はリサイクルされた溶液であり、これは、炭酸ナトリウムの消費を大幅に低減させることを可能にする。この方法は、スカンジウムの抽出率を47~50%まで向上させ、100~270mg/dmの酸化スカンジウムを含有するSc含有脱着溶液を得ることを可能にする(特許RU2692709号、公開日:2019年6月26日)。
【0011】
上記方法の欠点は、通常、研磨性を有するスラリーと吸着剤が直接接触するために吸着剤が機械的に摩耗し、そのため、定期的に吸着剤を再充填しなければならないことである。
【0012】
本発明の方法に最も近い方法は、赤泥を処理してスカンジウム含有濃縮物を製造する方法(特許RU2647398号、公開日:2018年3月15日)であり、前記方法は、赤泥をろ過して液相を分離すること;リサイクルされた炭酸水素ナトリウム溶液で赤泥ケーキを再スラリー化すること;溶液を二酸化炭素でガス処理して9以下のpHを得ること;赤泥を炭酸水素ナトリウム溶液で一段階で浸出させること;ろ過し、フィルター上の赤泥ケーキを水で洗浄すること;ろ液からスカンジウムをリン含有イオナイトに収着させること(その後リサイクルされた溶液は、赤泥ケーキの再スラリー化のために戻される);炭酸ナトリウム溶液でリン含有イオナイトからスカンジウムを脱着してSc含有脱着溶液を得、そこからpH10.5~12.0で不純物の加水分解沈殿を行い、pH12.5~13.5でスカンジウム濃縮物の更なる抽出を行うことを含む。この方法は、スカンジウム抽出率28~29.1%の達成を可能にし、酸化スカンジウムの濃度は、Sc含有脱着溶液中では700mg/dmに達し、スカンジウム濃縮物中では、25~60%となる。したがって、この方法は、従来の方法とは異なり、収着がスラリーではなく溶液から行われるため、高価な吸着剤の消費を削減して、スカンジウム含有量が多いSc含有脱着溶液を得ることができるが、赤泥からのスカンジウムの抽出量は減少する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の目的は、スカンジウム含有材料からスカンジウムを抽出する新しい方法を開発することであり、前記方法は、スカンジウムの浸出のための最適なパラメータを選択して、錯体形成イオンの濃度を上昇させること、及び所与のpH範囲内での浸出中に不溶性水酸化物を形成し、浸出された材料(ケーキ)のろ過によりスカンジウム含有溶液から分離されるアルミニウム、チタン及び鉄の不純物とは対照的に、スカンジウムを選択的に溶解させることにより、スカンジウムと炭酸イオンとの可溶性錯体化合物を形成する反応平衡を確実にシフトさせてスカンジウムの抽出量を増加させ、それにより処理フローを単純化し、製造方法の性能を向上させることを特徴とする。
【0015】
技術的効果は、スカンジウム含有原料からのスカンジウムの抽出を増加させるという目的を達成することにあり、それには、処理フローの単純化、及び高価な試薬、即ち、イオン交換吸着剤、液体及び固体抽出剤の使用の放棄による操業及び設備経費の削減も含まれる。
【0016】
技術的効果は、スカンジウム含有材料からスカンジウムを抽出する方法により達成され、前記方法は、スカンジウム含有材料のケーキを炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの混合物の溶液で再スラリー化すること;スカンジウム含有材料のスラリーを炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの混合物の溶液で炭化浸出すること;スカンジウム濃縮物を沈殿させろ過することを含み、この方法において、炭化浸出は、濃度130~350g/dmの炭酸ナトリウムと濃度2~100g/dmの炭酸水素ナトリウムを有する混合物の溶液を用い、スラリーのpHが9.5~11.0で実施され、スラリーは必要なpHを維持するためにCO含有ガスと空気の混合物で処理され、スカンジウム含有材料のスラリーの浸出及びろ過後に得られる溶液をアルカリ溶液で処理することによりスカンジウム濃縮物を一段階で沈殿させる。
【0017】
提案された方法を以下のように最適化することが好都合である:
スカンジウム含有材料のケーキの再スラリー化は、赤泥スラリー中の固相対液相の質量比1:2~20(S:L)で、2~10時間実施される。スカンジウム含有材料の炭化浸出は、20~90℃で実施される。スカンジウム含有材料を浸出させた後の溶液をアルカリ溶液(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化アンモニウムの溶液)で、pH12~13.5、50~100℃、1~3時間の滞留時間で処理することによりスカンジウム濃縮物を沈殿させ、スカンジウム濃縮物の抽出後に得られた溶液は、必要な炭酸ナトリウム対炭酸水素ナトリウムの比を達成するために15~50℃のCO含有ガスと空気の混合物で処理され、スカンジウム含有材料の新しいバッチの再スラリー化のために戻される。
【0018】
この開示による方法と先行技術の重要な違いは、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの混合物の溶液を用い、高められたpHと、高濃度の浸出剤でスカンジウム含有材料を浸出させ、これにより、鉄、アルミニウム及びチタン不純物の回収を最小限にしながら溶液中へのスカンジウムの最大限の回収を実現することであり、それは、下流でのこれらの不純物(鉄、アルミニウム及びチタン)の除去には、試薬、光熱費及び時間の追加消費を必要とするためである。pH9.5~11.0でのスカンジウム抽出の選択性の向上は、鉄、アルミニウム及びチタンの不溶性ヒドロキソ化合物の形成により達成され、この場合、溶液中に過剰な炭酸及び重炭酸イオンが存在すると、炭酸イオンとスカンジウム錯体化合物を形成する反応平衡がシフトするために、スカンジウムの溶解度と固相から溶液へのその(スカンジウム)溶解が向上する。さらに、処理温度が50℃を超えると、溶液中に存在する炭酸水素ナトリウムが分解して二酸化炭素の超分散気泡を放出し、これ(気泡)もスカンジウムの炭酸塩錯体化合物を形成する反応平衡のシフトを促進し、スカンジウムの抽出度を向上させる。
【0019】
最も近い先行技術として選択された方法は、炭化浸出に続いてSc含有脱着溶液におけるスカンジウムの更なる濃縮を伴う溶液からのスカンジウムのイオナイトへの収着が行われるものであり、それとは対照的に、この開示による方法は、浸出材料のケーキをろ過して得られる浸出溶液を、不純物を予備的に沈殿させることなく、アルカリ溶液で一段階で処理することにより、前記浸出溶液からスカンジウム濃縮物を沈殿させることを予定しており、最適に選択された浸出条件のために不純物の量が少ない。これにより、処理フローを大幅に単純化することが可能となるだけでなく、高価な吸着剤、即ち、イオン交換樹脂の使用を排除し、スカンジウムを濃縮し、スカンジウム濃縮物を精製して酸化スカンジウム生成物を得るための試薬の消費を削減することが可能となる。
【0020】
炭酸ナトリウム含有量が130~350g/dm、炭酸水素ナトリウム含有量が2~100g/dmの溶液を用い、スラリーのpHが9.5~11で、スラリーのCO含有ガスと空気の混合物による処理とスカンジウム含有材料からのスカンジウムの炭化浸出を同時に行うと、鉄、アルミニウム及びチタン不純物の回収を最小限に抑えた状態で、溶液へのスカンジウムの最大限の抽出を達成することが可能である。
【0021】
最適に選択されたパラメータにより、浸出段階でスカンジウムの溶液を選択的に抽出することによって、スカンジウム含有貴液を得ることが可能となり、その組成は、低コストの加水分解法を用いて、即ち、50~100℃で、pH12~13.5のアルカリ溶液で処理することにより、最小限の試薬の消費で、スカンジウムの濃縮と不純物の除去の追加段階を伴うことなく、スカンジウムの更なる濃縮を実施して、最小限の費用で単純な処理フローを使用することによって酸化スカンジウム生成物へと変換可能なスカンジウム濃縮物を得ることが可能となる。
【0022】
15~50℃のCO含有ガスと空気の混合物でスカンジウム濃縮物を抽出した後に得られる溶液を処理することにより、浸出に必要な炭酸ナトリウム対炭酸水素ナトリウムの比を前記溶液において達成し、それ(前記溶液)を使用してスカンジウム含有材料の新しいバッチからスカンジウムを浸出させることが可能となって、浸出剤及びCOの消費が最小限に抑えられると共に、スカンジウム濃縮物の沈殿後の母液と共に、スカンジウムが失われることを防止することが可能となる。工業炉からの排出ガスのCOを使用することで、費用の更なる削減だけでなく、有害排出物の利用による環境負荷の低減も可能となる。
【0023】
浸出されたスラリーのpH、浸出されたスラリーの液相中の炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの濃度、浸出温度、スラリー中の固相対液相の質量比(S:L)、浸出処理の滞留時間、スカンジウム濃縮物の抽出中のpH及び温度を変化させることによる多数の実験に基づき、スカンジウム含有材料からのスカンジウムの炭化浸出とスカンジウム濃縮物の抽出の両者の最適なパラメータが特定された。スカンジウムの炭化浸出後、浸出させたスカンジウム含有材料のスラリーをろ過し、ケーキを水で洗浄し、ケーキとろ液を分析した。得られたろ液からスカンジウム濃縮物を一段階で抽出し、得られた濃縮沈殿物をろ過して水で洗浄し、次いで、スカンジウム濃縮物と母液のサンプルを採取した。
【0024】
本方法は、懸濁液(スラリー)の形態又は固体の形態のいずれかで表わされるスカンジウム含有材料からのスカンジウムの抽出に使用可能である。懸濁液(スラリー)を使用する場合、液相を分離し、スカンジウム含有材料のケーキを得るために予備ろ過する。スカンジウム含有材料からのスカンジウムの抽出に関する調査を、ボーキサイトからアルミナを製造する際の廃棄物である赤泥を使用して行った。赤泥は、世界でも屈指の有望なスカンジウム原料である。赤泥中の酸化スカンジウムの濃度は、初期原料(ボーキサイト)の組成及びその処理方法によって、40~250g/tの範囲で変化し得る。
【0025】
表1は、調査に使用した赤泥の化学組成を示す。アルミナ精製所からの工業用赤泥スラリーを予備ろ過して液相を分離した。赤泥の固相における酸化スカンジウム含有量は、0.019%であった。
【0026】
【表1】
【0027】
赤泥からのスカンジウムの炭化浸出に最適なpH値を判定する実験の結果を表2に示す。スカンジウムの炭化浸出は、炭酸ナトリウム含有量200g/dm、炭酸水素ナトリウム含有量10g/dmの溶液を使用し、目標pHを達成し維持することを可能にする条件でスラリーをCO含有ガスと空気の混合物で処理しながら固液比1:8(S:L)、80℃で3時間行った。
【0028】
【表2】
【0029】
表2から理解できるように、赤泥からのスカンジウムの最大の抽出度は、pH10~11で達成される。前記pHが9.5よりも低くなると、スカンジウムの抽出度は、多量の浸出したチタン及び鉄の不純物の存在により溶液中のその平衡濃度が減少するため、低下する。前記pHが11より高くなると、CO 2-よりもむしろSc3+と錯体化合物を形成する高い能力を示す、溶液中のHCO イオン濃度が減少するため、スカンジウムの抽出度も低下する。
【0030】
浸出剤の最適な組成を判定するため、以下の方法を行った。第1に、炭酸ナトリウム濃度の最適な範囲を判定するために、炭酸水素ナトリウム濃度を5g/dmに固定し、炭酸ナトリウム濃度を変化させてスカンジウムの炭化浸出を実施し;その後、炭酸ナトリウム濃度を固定し、炭酸水素ナトリウム濃度を変化させてスカンジウムの炭化浸出を実施した。実験の他の条件は上記と同じ、即ち、pH10.5;固液比1:8(S:L)、80℃、処理時間3時間、CO含有ガスと空気の混合物での浸出されたスラリーの処理とした。さまざまな炭酸ナトリウム濃度での炭酸水素ナトリウム濃度の選択は、炭酸ナトリウム-炭酸水素ナトリウム-水、三成分系における塩の相互溶解度による[Reference book of experimental data on the solubility of multicomponent aqueous salt systems, Volume 1, Book 1 // Leningrad: Khimiya, 1973, pp. 476-477]。実験の結果を、表3及び表4に示す。得られたデータは、浸出溶液中の最適な炭酸ナトリウム濃度が赤泥からの最大のスカンジウムの抽出度をもたらすものであり、180~250g/dmであることを示している。前記炭酸ナトリウム濃度が低下すると、系内のCO 2-錯体形成イオンの量が減少し、その結果、水溶性錯体の形成により、固相から溶液へのスカンジウムの溶解度が低下する。350g/dmを超える炭酸ナトリウム濃度の使用は、系の不安定さと、NaHCO又はNaCO×NaHCO×2HO(「トロナ」として公知)の結晶化のリスクのため、不合理である。さらに、前記炭酸ナトリウム濃度が300g/dmより高くなると、系の粘度が著しく上昇し、下流のスカンジウム濃縮物の沈降処理が長くなり、ろ過に関する問題が生じる。
【0031】
【表3】
【0032】
表4から理解できるように、炭酸ナトリウム濃度が一定で炭酸水素ナトリウム濃度が上昇すると、炭酸水素イオン又は重炭酸イオンとの可溶性スカンジウム錯体化合物の形成の反応平衡がシフトし、他方、50℃を超える温度では、炭酸水素ナトリウムの熱分解による二酸化炭素の超分散気泡が発生し、それも炭酸錯体化合物の形成を促進するため、赤泥からのスカンジウムの抽出度は上昇する。したがって、炭化浸出による最大スカンジウムの抽出度は、他の条件が同じ場合、溶液中の炭酸水素ナトリウム濃度が10~50g/dm、炭酸ナトリウム濃度が180~250g/dmの場合、及び、溶液中の炭酸水素ナトリウム濃度が2~10g/dm、炭酸ナトリウム濃度が300g/dmの場合に達成される。
【0033】
【表4】
【0034】
表5は、以下の浸出条件で、スカンジウム濃縮物と、主な不純物としてのチタン不純物の抽出度に対する浸出温度の影響を調べた実験の結果を示す:pH10.5;固液比1:8(S:L);浸出溶液の組成:炭酸ナトリウム含有量180g/dm、炭酸水素ナトリウム含有量10g/dm;処理期間:3時間;CO含有ガスと空気の混合物での浸出されたスラリーの処理。この表から、80~90℃まで上昇させると、可溶性スカンジウム化合物の形成反応の反応速度が良好となるためにスカンジウムの抽出度が向上すると共に、不溶性チタン化合物の二次形成のためにチタンの抽出度が低下し、これは、溶液の更なる処理、及びスカンジウム濃縮物の品質に有利に作用することが理解できる。鉄及びアルミニウムの不純物も同様の挙動を示す。スカンジウム含有貴液中の不純物の濃度を低下させると、スカンジウム濃縮物の抽出のためのアルカリの消費が減少すると共に、濃縮物を後処理して酸化スカンジウムを得るための他の試薬の消費も減少する。
【0035】
【表5】
【0036】
表6は、pH10.5;90℃;炭酸ナトリウム含有量180g/dm、炭酸水素ナトリウム含有量10g/dmの浸出溶液;処理期間3時間でのスカンジウムの抽出度に対する赤泥の浸出されたスラリーにおける固液質量比(S:L)の影響を調べた実験の結果に基づく情報を提供する。得られたデータの分析は、最適な固液質量比は、1:6~1:14(S:L)であることを示している。前記固液比を更に増加させることは、スカンジウムに関する溶液の高希釈(並びに、その結果としての溶液の取扱いと加熱のための電力消費の増加)と、スカンジウム濃縮物の抽出のためのアルカリ消費の増加のため、不合理である。
【0037】
【表6】
【0038】
表7は、他の条件が同じ場合、即ち、浸出段階でのpH10.5;90℃;炭酸ナトリウム含有量180g/dm、炭酸水素ナトリウム含有量10g/dmの浸出溶液;及び固液比1:10(S:L)での赤泥からのスカンジウムの炭化浸出の最適な期間を判定した実験の結果を示す。前記浸出期間が1~2時間に短縮されるとスカンジウムの抽出度は著しく減少する。浸出期間を8時間より長くしても、スカンジウムの一部が、浸出した赤泥の表面、又は形成されたチタン及び鉄の不溶性化合物のいずれかに再収着されるため、スカンジウムの抽出度は向上しない。したがって、赤泥からスカンジウムを浸出する段階での溶液とスラリーの最適な接触時間は、2~8時間となる。
【0039】
【表7】
【0040】
赤泥のスカンジウム炭化浸出からのろ液(スカンジウム含有貴液)を使用して、スカンジウム濃縮物の沈殿を検討し、ろ液は、浸出工程で定められた最適なパラメータの下で得られたものであり、以下の組成であった:120g/dmのNatotal、15mg/dmのSc、12mg/dmのZrO、7.6mg/dmのTiO、2.4mg/dmのFe、3.3mg/dmのAl、1.6mg/dmのSiO、13mg/dmのCaO。
【0041】
表8は、スカンジウム濃縮物の沈殿に最適なpH値を判定した実験の結果を示す。pHは、貴液中の水酸化ナトリウム溶液の量を変えることによって調節した。スカンジウム濃縮物の沈殿は、一段階で次のように実施した:貴液を80℃に加熱し、45重量%水酸化ナトリウム溶液を添加し、得られた溶液を撹拌しながら所与の温度で2時間静置した。次いで、ろ過を行いスカンジウム濃縮物のスラリーを沈降させた。表8から理解できるように、10.1~13.8重量%のScを含有する濃縮物を得るための溶液から濃縮物へのスカンジウムの最大抽出は、pH12.5~13で達成された。pHが低下するとスカンジウムの一部が溶液中に残留し、濃度の低い濃縮物が得られる。pHが最適値よりも高くなると、アルカリ消費が増加するが、スカンジウム濃縮物の品質は向上しない。
【0042】
【表8】
【0043】
表9は、pH12.5及び処理期間2時間でのスカンジウム濃縮物の沈殿段階での温度とその沈殿度との相関関係のデータを示す。この表から、濃縮物の沈殿後の母液における最低のスカンジウム濃度は、80~100℃で示されることが理解できる。60℃より低くなると、所与の条件ではスカンジウムの一部が低溶性のヒドロキソ錯体に結合されないため、溶液から濃縮物へのスカンジウムの抽出度は低下する。
【0044】
【表9】
【0045】
先に示した組成の貴液からのスカンジウム濃縮物の抽出の最適な処理時間を、pH12.5、80℃で判定した。表10から理解できるように、スカンジウム濃縮物沈殿工程の最適な時間は1~3時間である。スカンジウム濃縮物沈殿工程の時間が長くなっても、濃縮物の品質には影響しないが、過剰な電力消費を招く。
【0046】
【表10】
【0047】
スカンジウム含有材料からのスカンジウムの炭化浸出、及びスカンジウム濃縮物の抽出の実験結果に基づき、主要な操作の最適な条件が決定された。すなわち:
а)スカンジウム含有材料から浸出のためのスラリーの調製:
- 炭酸ナトリウム含有量130~350g/dm、炭酸水素ナトリウム含有量2~100g/dm、好ましくは炭酸ナトリウム含有量180~250g/dm、炭酸水素ナトリウム含有量10~50g/dmの溶液を使用する、スカンジウム含有原料の再スラリー化;
- スラリーにおける固液比は、1:2~20(S:L)、好ましくは1:6~10;
b)炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの混合物でのスカンジウム含有材料からのスカンジウムの炭化浸出:
- 浸出段階でのpHは、9.5~11、好ましくは10~11;
- 処理温度は、20~90℃、好ましくは80~90℃;
- 滞留時間は、2~10時間、好ましくは2~8時間;
- スラリーをCO含有ガスと空気の混合物で処理することによるスラリーのpHの維持;
c)スカンジウム含有材料のスラリーのろ過後に得られるスカンジウム含有溶液をアルカリ溶液で処理することによるスカンジウム濃縮物の沈殿:
- スカンジウム濃縮物のpHは、12~13.5、好ましくは12.5~13.5;
- 水酸化ナトリウム溶液を用いてスカンジウム濃縮物を一段階で沈殿;
- 処理温度は、50~100℃、好ましくは80~90℃;
- 滞留時間は、1~3時間;
d)必要な炭酸ナトリウム対炭酸水素ナトリウム比を回復させるためのスカンジウム濃縮物を沈殿させた後の母液のガス処理;
- 処理温度は、15~50℃、好ましくは20~40℃;
- CO含有ガスと空気の混合物での処理。
【0048】
図1は、スカンジウム含有材料からスカンジウムを抽出する本発明の方法の基本ブロック図を示し、
- スカンジウム含有材料のケーキを炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの混合物と共に再スラリー化すること;
- スカンジウム含有材料を炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの混合物で炭化浸出すること;
- 浸出させたスラリーをろ過すること;
- スカンジウム含有ろ液をアルカリ溶液で処理することによりスカンジウム濃縮物を沈殿させること;
- スカンジウム濃縮物の沈殿からの母液をCO含有ガスと空気の混合物で処理すること
という複数の工程を含む。
【実施例
【0049】
以下の実施例は、本発明の方法の実施可能性、及び最も近い先行技術と比較した前記方法の利点を確認するものである。
【0050】
実施例1
RUSAL Krasnoturinsk精製所からの未加工の赤泥のスラリーをろ過することにより得られた115gの湿った赤泥のケーキを、濃度230g/dmの炭酸ナトリウムと濃度25g/dmの炭酸水素ナトリウムを有する混合物を使用して1dm反応器において再スラリー化し(水分30.3%、化学組成は表1に示す)、スラリーの総体積を850mLにした。得られたスラリーを加熱ブロックに入れ、85℃に加熱し、連続してpHを監視し、スラリーをシリンダから供給する二酸化炭素でガス処理することにより、pHを10.5に維持したまま、前記温度に4時間静置した。得られた浸出赤泥スラリーを真空下でろ過し;浸出赤泥スラリーのケーキを水(100mL)で洗浄し、分析した。赤泥浸出からのろ液(貴液)中のSc濃度は7.82mg/dmであった。表11は、浸出赤泥のケーキの化学組成(重量%)を示す。
【0051】
【表11】
【0052】
未加工赤泥(表1)及び浸出赤泥のケーキ(表11)中のスカンジウム含有量に関するデータに基づくと、炭化浸出段階でのスカンジウムの抽出度は51.6%であり、先行技術と比較して22.5%高かった。
【0053】
実施例2
実施例1に示した条件の赤泥炭化浸出段階で得られた赤泥浸出段階からのろ液を容積2dmの反応器に注ぎ、80℃に加熱し;次いで、NaOH濃度45%の強アルカリ溶液を添加して、pHを12.5とした。得られたスカンジウム濃縮物のスラリーを前記温度で1時間静置し、スカンジウム濃縮物を4時間沈降させ、次いで、母液の清澄層をデカンテーションし、濃厚となったスラリーを真空下でろ過し、水で洗浄した。表12は、得られたスカンジウム濃縮物の化学組成(重量%)を示す。
【0054】
【表12】
【0055】
最適な条件でのスカンジウムの炭化浸出を含み、スカンジウム濃縮物の一段階での更なる沈殿を含む、スカンジウム含有材料からスカンジウムを抽出する本発明の方法を使用すると、高度なスカンジウムの抽出を達成でき、処理フローを単純化し、試薬の消費を削減し、それにより操業及び設備経費の大幅な削減が可能となる。
以下に、本願の出願当初の請求項を実施の態様として付記する。
[1] スカンジウム含有材料からスカンジウムを抽出する方法であって、前記方法は
- スカンジウム含有材料のケーキを炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの混合物と共に再スラリー化すること、
- 前記スカンジウム含有材料のスラリーを前記炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの混合物で炭化浸出すること、
- 前記浸出されたスラリーをろ過し、得られたろ液からスカンジウム濃縮物を沈殿させること、
を含み、
前記スラリーの炭化浸出は、濃度130~350g/dm の炭酸ナトリウムと濃度2~100g/dm の炭酸水素ナトリウムを有する混合物を用い、pH9.5~11.0で行われ、
前記スラリーの必要なpHを維持するために、前記スラリーはCO 含有ガスと空気の混合物で処理され、かつ、前記スカンジウム濃縮物は、前記スカンジウム含有材料のスラリーのろ過により生じる溶液をアルカリ溶液で処理することにより、一段階で沈殿させられる、
方法。
[2] 前記炭化浸出中の前記スラリーの処理に、液状CO 及び/又は工業炉からの排出ガスのガス状CO を使用する、[1]に記載の方法。
[3] 前記スラリーの炭化浸出を固液比1:2~20(S:L)で行う、[1]に記載の方法。
[4] 前記スラリーの炭化浸出を2~10時間行う、[1]に記載の方法。
[5] 前記スラリーの炭化浸出を20~90℃で行う、[1]に記載の方法。
[6] 前記スカンジウム濃縮物をpH12~13.5のアルカリ溶液で沈殿させる、[1]に記載の方法。
[7] 前記スカンジウム濃縮物を50~100℃で沈殿させる、[1]に記載の方法。
[8] 前記スカンジウム濃縮物を1~3時間沈殿させる、[1]に記載の方法。
[9] 前記スカンジウム濃縮物の沈殿から生じる溶液が、必要な炭酸ナトリウム対炭酸水素ナトリウム比を回復させるために、15~50℃のCO 含有ガスと空気の混合物で処理し、前記スカンジウム含有材料のケーキの新しいバッチの再スラリー化のために戻す、[1]に記載の方法。
[10] 前記スカンジウム濃縮物を沈殿させる段階で、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化アンモニウムの溶液を前記アルカリ溶液として使用する、[1]に記載の方法。
図1