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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/10 20060101AFI20231221BHJP
   F04B 49/02 20060101ALI20231221BHJP
   F04B 53/00 20060101ALI20231221BHJP
   H02K 11/25 20160101ALI20231221BHJP
【FI】
F04B49/10 331H
F04B49/02 331F
F04B53/00 J
H02K11/25
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022551135
(86)(22)【出願日】2021-05-14
(86)【国際出願番号】 JP2021018447
(87)【国際公開番号】W WO2022064762
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2020161170
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】宝口 幸生
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-358779(JP,A)
【文献】実開平06-077469(JP,U)
【文献】特開昭63-056145(JP,A)
【文献】特許第6730516(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/10
F04B 49/02
F04B 53/00
H02K 11/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復動ポンピング部材と、
ステータコア及び該ステータコアの周りに巻回されたコイルを有し、該往復動ポンピング部材を電磁力により往復動させるための電磁石と、
該ステータコア上に配置された過熱検知素子と、
該往復動ポンピング部材と該電磁石とを少なくとも部分的に収容するケーシング部材であって、該ステータコアに面する位置に取り付けられた弾性保持部材を有し、該弾性保持部材が該過熱検知素子を保持する溝を有し、該過熱検知素子が、該溝内に収容された状態で該ステータコアと該弾性保持部材との間に挟まれて、該弾性保持部材の弾性力によって該ステータコアに押し付けられるようにする、ケーシング部材と、
を備え、
該ステータコアが所定の温度以上になったことが該過熱検知素子によって検知されたときに、該往復動ポンピング部材の駆動が停止されるようにした、ポンプ。
【請求項2】
該弾性保持部材が、該ケーシング部材の外側と内側を連通する貫通路を有し、該電磁石に電力を供給するための電源線が該貫通路を通って配置されるようにされた、請求項に記載のポンプ。
【請求項3】
該ケーシング部材が該弾性保持部材を保持するための凹部を画定する縁部を有し、該弾性保持部材が該縁部を受け入れるようにされた溝部を有し、該弾性保持部材を前記ケーシング部材に取り付けたときに該溝部が該縁部と係合するようにされた、請求項1又は2に記載のポンプ。
【請求項4】
該往復動ポンピング部材と該電磁石とからなるポンピング駆動部を複数備え、該複数のポンピング駆動部の各ステータコアが相互に連接した一体の部材により構成されている、請求項1乃至の何れか一項に記載のポンプ。
【請求項5】
該過熱検知素子が該一体の部材上に配置された単一の過熱検知素子であり、当該ポンプは該一体の部材上に該単一の過熱検知素子以外の他の過熱検知素子を有しておらず、該ステータコアを構成する該一体の部材が所定の温度以上になったことが該単一の過熱検知素子によって検知されたときに、全ての往復動ポンピング部材の駆動が停止されるようにされた、請求項に記載のポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポンプに関し、より詳細には異常過熱を検知する機能を有するポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁石により発生される磁界によってピストンのような往復動ポンピング部材を往復動させることにより流体を搬送するようにしたポンプがよく知られている(例えば、特許文献1)。電磁石はステータコアとその周囲に巻回されたコイルとを有し、ポンプの駆動中に電磁石はコイルに流れる電流により発熱する。電磁石は正常に動作している間はあまり高温にはならないが、例えばピストンの往復動が何らかの原因により妨げられてピストンが動かなくなった場合や、コイルがショートした場合などには、電磁石のコイルが異常過熱することがある。
【0003】
電磁石の温度が高くなりすぎると、電磁石や他の部品が破損する虞がある。また、ポンプ全体の温度も高くなり周囲に危険が及ぶ虞もある。そのため、電磁石が所定の温度以上にまで発熱したことを検知して、駆動を停止させるようにしたポンプがある(特許文献2)。具体的には、電磁石にサーマルプロテクタや温度ヒューズなどの過熱検知素子が取り付けられており、過熱検知素子によって電磁石が所定の温度以上になったことが検知されたときに、電磁石への電力供給を止めてポンプの駆動を停止させるようにしている。電磁石における発熱源は大きな電流が流れるコイルであるため、過熱検知素子はコイルに直接取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6730516号公報
【文献】特開平8-19222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたポンプにおける電磁石は、1つのステータコア(フィールドコア)に2つのコイルが配置された構成となっている。この電磁石においては、例えば一方のコイルがショートした場合、ショートした方のコイルはもう一方のコイルに比べてより高い温度になる。そのため、2つのコイルの過熱をそれぞれ確実に検知するためには2つのコイルの両方に過熱検知素子を取り付ける必要がある。また特許文献1には2つの駆動部を備えるポンプも開示されており、このポンプは2つの電磁石を備えている。そのため、各電磁石の過熱を確実に検知するためには、過熱検知素子を両方の電磁石に少なくとも1つずつ取り付ける必要がある。すなわち、特許文献1のような構成を有するポンプにおいて特許文献2のような過熱検知素子を設ける場合には、各コイルにそれぞれ過熱検知素子を設けないとコイルの異常過熱を検知できないことが起き得る。すなわち、コイルの数だけ過熱検知素子が必要になる。
【0006】
また、コイルは細線を何重にも巻回したものであるため、その表面は凸凹になっている。そのため過熱検知素子とコイルとの接触状態が安定せず、コイルの過熱検知が適切にできない虞がある。この問題は、特許文献2に示されているように、熱伝導率の高い樹脂で過熱検知素子とコイルとの間の隙間を埋めることで解決することも可能ではあるが、その作業は面倒である。
【0007】
本発明は、上述のような従来技術の問題のうちの少なくとも1つを解決することができるようにしたポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、
往復動ポンピング部材と、
ステータコア及び該ステータコアの周りに巻回されたコイルを有し、該往復動ポンピング部材を電磁力により往復動させるための電磁石と、
該ステータコア上に配置された過熱検知素子と、
を備え、
該ステータコアが所定の温度以上になったことが該過熱検知素子によって検知されたときに、該往復動ポンピング部材の駆動が停止されるようにしたポンプを提供する。
【0009】
当該ポンプにおいては、過熱検知素子がステータコア上に配置されていて、コイルの異常過熱をコイルにより加熱されるステータコアの温度に基づいて検知するようになっている。例えば1つのステータコアに対して複数のコイルが巻回されている場合においては、どのコイルが異常過熱した場合でも、そのことをステータコア上に配置された同一の過熱検知素子で検知することが可能となる。また、ステータコアは平らな表面を有する板状の部材とすることができるため、過熱検知素子は、凹凸のあるコイルの表面上に配置する場合に比べて、ステータコアに対して安定して接触した状態で容易に配置することが可能となる。
【0010】
また、該往復動ポンピング部材と該電磁石とを少なくとも部分的に収容するケーシング部材をさらに備え、該過熱検知素子が該ケーシング部材と該ステータコアとの間に挟まれて保持されるようにすることができる。
【0011】
さらに、該ケーシング部材が、該過熱検知素子を該ステータコアに面するようにして保持する弾性保持部材を有し、該過熱検知素子が該弾性保持部材によって該ステータコアに押し付けられるようにすることができる。
【0012】
このような構成により、過熱検知素子を、より安定した状態で容易にステータコア上に配置することが可能となる。
【0013】
また、該弾性保持部材が、該ケーシング部材の外側と内側を連通する貫通路を有し、該電磁石に電力を供給するための電源線が該貫通路を通って配置されるようにすることができる。
【0014】
さらに、該往復動ポンピング部材と該電磁石とからなるポンピング駆動部を複数備え、該複数のポンピング駆動部の各ステータコアが相互に連接した一体の部材により構成されているようにすることができる。
【0015】
この場合にはさらに、該過熱検知素子が該一体の部材上に配置された単一の過熱検知素子であり、当該ポンプは該一体の部材上に該単一の過熱検知素子以外の他の過熱検知素子を有しておらず、該ステータコアを構成する該一体の部材が所定の温度以上になったことが該単一の過熱検知素子によって検知されたときに、全ての往復動ポンピング部材の駆動が停止されるようにすることができる。
【0016】
以下、本発明に係るポンプの実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係るポンプの斜視図である。
図2図1のポンプの側面図である。
図3図1のポンプの側面断面図である。
図4図1のポンプの、第1ケーシング部材を取り外した状態の分解図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係るポンプの、第1ケーシング部材を取り外した状態の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1の実施形態に係るポンプ101は、図1乃至図4に示すように、ケーシング110と、ケーシング110内に保持された電磁石112及びピストン(往復動ポンピング部材)114とを備える。ケーシング110は、前方の第1ケーシング部材116と、中央の第2ケーシング部材118と、後方の第3ケーシング部材120とからなる。電磁石112は、図3に示すように、複数の電磁鋼板を積層して形成したステータコア122と、ステータコア122の周りに巻回された2つのコイル124とを有する。ピストン114は2つのコイル124の間で水平方向に往復動可能に配置されている。
【0019】
コイル124に交流電圧を印加することによりステータコア122から周期的に磁界が発生される。発生した磁界によりピストン114のアマチャー126がステータコア122の間に引き込まれ、これによりピストン114は図3で見て左方に変位する。周期的な磁界の強度が弱まりそれに伴い引き込む力も弱まると、ピストン114はスプリング128の付勢力により今度は図で見て右方に変位する。再び磁界の強度が強まり引き込む力が大きくなるとピストン114は左方に変位する。このようにして電磁石112の磁界の強度が周期的に変化することにより、ピストン114は図で見て左右に周期的に往復動する。
【0020】
ピストン114と第3ケーシング部材120との間にはポンプ室130が形成されており、ピストン114の往復動に伴いポンプ室130の容積が拡大・縮小する。ポンプ室130の容積が縮小するときにポンプ室130内で圧縮された空気は、逆止弁により閉止されていた開口部(図示しない)からポンプ室130の周囲の吐出室132に吐出され、さらに通路134を通ってバッファ室136に至る。バッファ室136で一時的に貯留された空気は最終的に吐出口138から外部に吐出される。
【0021】
ポンプ101はさらに、図1及び図2に示すように第1ケーシング部材116とステータコア122との間に挟まれてステータコア122上に配置されたサーマルプロテクタ(過熱検知素子)140を備える。第1ケーシング部材116は、ステータコア122に面する位置に取り付けられた弾性保持部材142を有している。第1ケーシング部材116は、ピストン114と電磁石112とを部分的に収容し、第2ケーシング部材118との間にステータコア122を挟んだ状態で、4本のボルト144によって第2ケーシング部材118に固定される。このときに、サーマルプロテクタ140は、弾性保持部材142の溝146(図4)に保持された状態でステータコア122と弾性保持部材142との間に挟まれ、弾性保持部材142の弾性力によってステータコア122に押し付けられる。これによりサーマルプロテクタ140とステータコア122とが密着した状態が維持される。弾性保持部材142にはさらに、第1ケーシング部材116の外側と内側を連通するように貫通した2つの貫通路148が形成されており、電磁石112に電力を供給するための電源線(図示しない)がこれら貫通路148を通して配置されるようになっている。弾性保持部材142がサーマルプロテクタ140を保持する機能だけでなく電源線を通して保持する機能も有しているため、それら機能を別々の部材で実現した場合に比べて部品点数を少なくすることができる。
【0022】
サーマルプロテクタ140は、内部にバイメタルで形成された接点を有しており、所定の温度以上になるとバイメタルが変形して接点が開放されるようになっている。当該ポンプ101は、サーマルプロテクタ140が開放状態になると、電磁石112への電力供給が止まり、ピストン114の駆動が停止されるようになっている。サーマルプロテクタ140は、電磁石112のコイル124が異常過熱したときに想定されるステータコア122の温度で開放状態となるものが選択される。ステータコア122を形成する電磁鋼板は熱伝導率が高いため、コイル124が発熱すると比較的に速くステータコア122の温度も上昇するため、ステータコア122の温度を監視することによりコイル124の異常過熱を迅速に検知することが可能となる。コイル124が異常過熱する原因としては、ピストン114の往復動が何らかの原因により妨げられてコイル124に大きな電流が流れることや、コイル124がショートしていることが考えられる。ピストン114が動かない場合には2つのコイル124が同様に高い温度となるが、ショートした場合にはショートした方のコイル124がより高い温度になる。当該ポンプ101においては、2つのコイル124が巻回されているステータコア122上にサーマルプロテクタ140が配置されているため、2つのコイル124が同時に過熱状態となった場合はもちろんのこと、いずれか一方のコイル124だけが過熱状態となった場合にも同一のサーマルプロテクタ140でその異常過熱を検知することが可能となる。また、サーマルプロテクタ140はステータコア122の平らな表面上に配置されているため、サーマルプロテクタ140とステータコア122との接触状態は安定しており、製造時における接触状態の機器間のバラツキを小さくすることができる。サーマルプロテクタ140とステータコア122との接触状態が安定することにより、ステータコア122からサーマルプロテクタ140への熱伝達が安定し、サーマルプロテクタ140による異常過熱の検知をより安定して行うことが可能となる。
【0023】
本発明の第2の実施形態に係るポンプ201は、図5に示すように、ピストン(図5では見えない)と電磁石212とからなるポンピング駆動部250を3つ備えている。ポンピング駆動部250は水平方向に並んで配置されている。3つのポンピング駆動部250の各電磁石212のステータコア222は相互に連接した一体の部材252により構成されている。当該ポンプ201における弾性保持部材242は、第1の実施形態に係るポンプ101の弾性保持部材142とは形状が異なるが同様な機能を有している。サーマルプロテクタ240は、弾性保持部材242によって保持された状態でステータコア222を構成する一体の部材252上に密着して配置される。なお、電磁石212に電力を供給するための電源線254は、弾性保持部材242の貫通路248を通して配置される。
【0024】
3つのステータコア222が一体の部材252で構成されていることにより、いずれのコイル224が過熱状態となった場合でもそれによって一体の部材252が加熱されることになる。当該ポンプ201においては、ポンピング駆動部250を3つ備えているが、一体の部材252上には単一のサーマルプロテクタ240が設けられており、他のサーマルプロテクタは設けられていない。一体の部材252が所定の温度以上になったことをこの単一のサーマルプロテクタ240が検知したときには、全てのコイル224に対する電力供給が止まり、全てのピストンの往復動が停止されるようになっている。このように、当該ポンプ201においては、複数の電磁石212のうちの1つだけが過熱状態となった場合であっても1つのサーマルプロテクタ240によってそれを検知することが可能となっている。なお、サーマルプロテクタ240を配置する位置は他のポンピング駆動部250の近くの位置としてもよいし、2つ以上のサーマルプロテクタ240を配置してもよい。
【0025】
以上に本発明の実施形態について説明をしたが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。例えば、過熱検知素子として、上述のサーマルプロテクタに代えて、温度ヒューズや、熱電対などの各種温度センサを利用してもよい。また、往復動ポンピング部材は、ピストンに代えて、ダイアフラムなどの他の形態のものとすることもできる。
【符号の説明】
【0026】
101 ポンプ
110 ケーシング
112 電磁石
114 ピストン(往復動ポンピング部材)
116 第1ケーシング部材
118 第2ケーシング部材
120 第3ケーシング部材
122 ステータコア
124 コイル
126 アマチャー
128 スプリング
130 ポンプ室
132 吐出室
134 通路
136 バッファ室
138 吐出口
140 サーマルプロテクタ(過熱検知素子)
142 弾性保持部材
144 ボルト
146 溝
148 貫通路
201 ポンプ
212 電磁石
222 ステータコア
224 コイル
240 サーマルプロテクタ
242 弾性保持部材
248 貫通路
250 ポンピング駆動部
252 一体の部材
254 電源線
図1
図2
図3
図4
図5