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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】物理量検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/684 20060101AFI20231221BHJP
   G01F 1/00 20220101ALI20231221BHJP
【FI】
G01F1/684 Z
G01F1/00 S
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022563590
(86)(22)【出願日】2021-09-08
(86)【国際出願番号】 JP2021032927
(87)【国際公開番号】W WO2022107426
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2020193614
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五来 信章
(72)【発明者】
【氏名】上ノ段 暁
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 直生
(72)【発明者】
【氏名】三木 崇裕
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-052975(JP,A)
【文献】特開2020-034508(JP,A)
【文献】特開2017-181521(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0263623(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0158546(US,A1)
【文献】特開2021-067510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00
G01F 1/68-1/699
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主通路を流れる被計測気体の物理量を検出する物理量検出装置であって、
前記主通路に配置される筐体と、該筐体に形成された副通路と、該副通路に配置される流量検出部と、該流量検出部に電気的に接続された回路部と、前記筐体に形成されて前記回路部を収容する回路室と、前記副通路に一端が開口し他端が前記回路室に開口して前記副通路と前記回路室との間を連通し、前記副通路から前記回路室に前記被計測気体の圧力を導入可能な第1導入通路と、を備え、
前記流量検出部は、前記副通路にダイアフラム表面が露出し、前記副通路から隔絶された閉塞室にダイアフラム裏面が露出するダイアフラムと、前記回路室に一端が開口し、前記閉塞室に他端が開口して前記回路室と前記閉塞室との間を連通し、前記回路室から前記閉塞室に前記被計測気体の圧力を導入可能な第2導入通路とを有し、
前記回路室は、前記第1導入通路の他端が開口する開口部に対向する位置に少なくとも一つ以上の突起部が設けられていることを特徴とする物理量検出装置。
【請求項2】
前記突起部は、前記開口部と対向する位置に配置される第1突起部と、該第1突起部を間に介して前記開口部から離間する位置に配置される第2突起部とを有していることを特徴とする請求項1に記載の物理量検出装置。
【請求項3】
前記第1突起部は、前記開口部の開口幅と同じ長さを有し、前記開口部の開口幅の全幅に亘って対向して配置され、
前記第2突起部は、前記開口部の開口幅よりも長い長さを有しており、前記第1突起部と平行に並んで配置されていることを特徴とする請求項2に記載の物理量検出装置。
【請求項4】
前記突起部は、それぞれが棒形状を有した複数の第3突起部を有していることを特徴とする請求項1に記載の物理量検出装置。
【請求項5】
前記複数の第3突起部は、前記開口部の開口幅と同じ長さに亘って、互いに所定の間隔をおいて千鳥状に広がるように配置されていることを特徴とする請求項4に記載の物理量検出装置。
【請求項6】
前記第1導入通路は、前記副通路の側壁面から外側にオフセットした位置に導入口が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の物理量検出装置。
【請求項7】
前記副通路は、所定の軸方向に沿って軸方向一方側に向かって延在する往通路部と、該往通路部の端部でUターンして軸方向他方側に向かって延在する復通路部とを有しており、
前記導入口は、前記副通路の前記往通路部から前記復通路部に折り返す折返し部において、半円弧状にカーブする外周側の側壁面でかつ前記折返し部の頂部よりも前記復通路部側に位置する曲がり部分に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の物理量検出装置。
【請求項8】
前記副通路には、前記被計測気体の流量を検出する前記流量検出部が配置されており、 前記導入口は、前記副通路の被計測気体流れ方向において前記流量検出部よりも下流側の位置に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の物理量検出装置。
【請求項9】
前記流量検出部は、前記副通路の前記往通路部に設けられていることを特徴とする請求項8に記載の物理量検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば内燃機関の吸入空気の物理量を検出する物理量検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ダクト内に形成される主流路を流れる空気の一部を取り込むバイパス流路と、バイパス流路から分岐してバイパス流路を流れる空気の一部を取り込むサブバイパス流路とが内部に形成され、サブバイパス流路にセンサが設置された空気流量測定装置の構造が示されている。センサは、流量を検出するダイアフラムを有しており、ダイアフラムのエレメント表面がサブバイパス流路に露出し、換気孔を介して回路室に連通する閉塞室にダイアフラムのエレメント裏面が露出する構成を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-34508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
物理量検出装置は、さまざまな種類の内燃機関に搭載しても、正確に流量信号を測定できる性能が求められている。近年、内燃機関の物理量検出装置より下流に搭載されるターボチャージャによって生じる音圧が、物理量検出装置の流量特性に影響を及ぼすことが分かってきている。ターボチャージャによるダイアフラムのエレメント表面側とエレメント裏面側における音圧の共鳴現象が流量特性に影響を与えて流量の検出誤差を発生させている。上記した従来の構成、つまり、物理量検出装置の換気孔と副通路または主通路との間を連通路で連通するだけの構成では、音圧によって流量の検出誤差が発生するという課題がある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、音圧の共鳴現象による流量特性への影響を抑制できる物理量検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の物理量検出装置は、
主通路を流れる被計測気体の物理量を検出する物理量検出装置であって、
前記主通路に配置される筐体と、該筐体に形成された副通路と、該副通路に配置される流量検出部と、該流量検出部に電気的に接続された回路部と、前記筺体に形成されて前記回路部を収容する回路室と、前記副通路に一端が開口し他端が前記回路室に開口して前記副通路と前記回路室との間を連通し、前記副通路から前記回路室に前記被計測気体の圧力を導入可能な第1圧力導入通路と、を備え、
前記流量検出部は、前記副通路にダイアフラム表面が露出し、前記副通路から隔絶された閉塞室にダイアフラム裏面が露出するダイアフラムと、前記回路室に一端が開口し、前記閉塞室に他端が開口して前記回路室と前記閉塞室との間を連通し、前記回路室から前記閉塞室に前記被計測気体の圧力を導入可能な第2圧力導入通路とを有し、
前記回路室は、前記第1圧力導入通路の他端が開口する開口部に対向する位置に設けられた少なくとも一つ以上の突起部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、音圧の共鳴現象による流量特性への影響を抑制できる物理量検出装置を提供することである。
【0008】
本発明に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】内燃機関制御システムに本発明に係る物理量検出装置を使用した一実施例を示すシステム図。
図2】物理量検出装置の正面図。
図3】物理量検出装置のハウジングからカバーを取り外した状態を示す図。
図4】カバーの裏面を示す斜視図。
図5図2のカバーをハウジングとの接合面で切断した断面図。
図6図5のVI-VI線断面図。
図7】チップパッケージの断面図。
図8図5の要部拡大図。
図9図5のVIII-VIII線断面図。
図10図9の要部拡大図。
図11】発明品と比較例との差を説明する図。
図12】本発明品と比較例の音圧測定結果を示す図。
図13】第1実施形態の変形例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に説明する、発明を実施するための形態(以下、実施例)は、実際の製品として要望されている種々の課題を解決しており、特に車両の吸入空気の物理量を検出する検出装置として使用するために望ましい色々な課題を解決し、種々の効果を奏している。下記実施例が解決している色々な課題の内の一つが、上述した発明が解決しようとする課題の欄に記載した内容であり、また下記実施例が奏する種々の効果のうちの1つが、発明の効果の欄に記載された効果である。下記実施例が解決している色々な課題について、さらに下記実施例により奏される種々の効果について、下記実施例の説明の中で述べる。従って、下記実施例の中で述べる、実施例が解決している課題や効果は、発明が解決しようとする課題の欄や発明の効果の欄の内容以外の内容についても記載されている。
【0011】
以下の実施例で、同一の参照符号は、図番が異なっていても同一の構成を示しており、同じ作用効果を成す。既に説明済みの構成について、図に参照符号のみを付し、説明を省略する場合がある。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、電子燃料噴射方式の内燃機関システム1に、本発明に係る物理量検出装置を使用した一実施例を示す、システム図である。
本実施形態の物理量検出装置は、自動車用の内燃機関システム1に用いられる。内燃機関システム1は、ターボチャージャ15付きのエンジン2を有しており、主通路22には、上流側から順番に、エアクリーナ4、物理量検出装置20、インタークーラ6、スロットルバルブ7、吸気管8が設けられ、排気通路9には排気触媒10が設けられている。そして、吸気管8には、熱式湿度測定装置11と、吸気圧力センサ12と、吸気温度センサ13が取り付けられており、エンジン2に吸入される吸入空気の湿度、圧力、温度を測定する。
【0013】
物理量検出装置20は、エアクリーナ4から取り込まれて主通路22を流れる吸入空気である被計測気体の流量、温度、湿度、圧力などの物理量を検出する。物理量検出装置20によって検出された物理量は、電気信号に変換されて制御装置(ECU)に入力される。制御装置は、物理量検出装置20の出力である吸入空気の物理量を用いてエンジン2の燃料噴射量や点火時期を演算する。
【0014】
図2は、物理量検出装置の正面図である。
物理量検出装置20は、主通路22の通路壁に設けられた取り付け孔から主通路22の内部に挿入して主通路22に固定された状態で使用される。物理量検出装置20は、被計測気体が流れる主通路22に配置される筐体を備えている。物理量検出装置20の筐体は、ハウジング100と、ハウジング100に取り付けられるカバー200を有している。ハウジング100は、例えば合成樹脂製材料を射出成形することによって形成されている。そして、カバー200は、例えば金属材料や合成樹脂材料からなる板状部材によって構成されており、本実施例では、アルミニウム合金あるいは合成樹脂材料の射出成形品によって構成されている。
【0015】
ハウジング100は、物理量検出装置20を主通路22に固定するためのフランジ111と、フランジ111から突出して外部機器との電気的な接続を行うために吸気ボディから外部に露出するコネクタ112と、フランジ111から主通路22の中心に向かって突出するように延びる計測部113を有している。
【0016】
計測部113は、フランジ111から真っ直ぐ延びる薄くて長い形状を成し、幅広な正面121と背面122、及び幅狭な一対の側面123、124を有している。計測部113は、物理量検出装置20を主通路22に取り付けた状態で、主通路22の内壁から主通路22の通路中心に向かって突出する。そして、正面121と背面122が主通路22の中心軸に沿って平行に配置され、計測部113の幅狭な側面123、124のうち計測部113の長手方向一方側の側面123が主通路22の上流側に対向配置され、計測部113の短手方向他方側の側面124が主通路22の下流側に対向配置される。物理量検出装置20を主通路22に取り付けた状態で、計測部113の先端部を下面125とする。
【0017】
計測部113は、側面123に副通路入口131が設けられ、側面124に第1出口132及び第2出口133が設けられている。副通路入口131と第1出口132及び第2出口133は、フランジ111から主通路22の中心方向に向かって延びる計測部113の先端部に設けられている。物理量検出装置20は、計測部113が主通路22の中心線に直交する方向に長く伸びる形状を成しているが、側面123、124の幅は、狭い形状を成している。これにより、物理量検出装置20は、被計測気体に対しては流体抵抗を小さい値に抑えることができる。
【0018】
図3は、物理量検出装置のハウジングからカバーを取り外した状態を示す図、図4は、カバーの背面図、図5は、図2のカバーをハウジングとの接合面で切断した断面図である。なお、以下の説明では、フランジ111から計測部113が延びる方向である計測部113の長手方向をZ軸、計測部113の副通路入口131から第1出口132に向かって延びる方向である計測部113の短手方向をX軸、計測部113の正面121から背面122に向かう方向である計測部113の厚さ方向をY軸と称する場合がある。
【0019】
ハウジング100の計測部113には、流量検出素子である流量センサ411と、吸気温度センサ321と、湿度センサ322が設けられている。流量センサ411は、副通路134の通路途中に配置されている。流量センサ411は、主通路を流れる被計測気体の流量を検出する。吸気温度センサ321は、側面123の副通路入口131近傍に一端が開口し、他端が計測部113の正面121と背面の両方に開口する温度検出通路136の通路途中に配置されている。吸気温度センサ321は、主通路を流れる被計測気体の温度を検出する。湿度センサ322は、計測部113の湿度計測室137に配置されている。湿度センサ322は、計測部113の背面に開口する窓部138から湿度計測室137に取り入れられた被計測気体の湿度を計測する。
【0020】
計測部113には、副通路134と、回路基板300を収容するための回路室135が設けられている。回路室135と副通路134は、計測部113の正面121にカバー200を取り付けることによって覆われて蓋がされ、閉塞される構造となっている。
【0021】
カバー200は、計測部113の正面121を覆う平板形状を有している。カバー200は、図4に示すように、背面にリブ221が設けられている。リブ221は、計測部113との接着部分に沿って形成されている。図5に示すように、計測部113には、正面121に凹溝141が設けられており、リブ221が挿入されるようになっている。カバー200は、計測部113の凹溝141にリブ221を挿入した状態で接着剤により接着される。
【0022】
回路室135は、主通路22において被計測気体の流れ方向上流側の位置となるX軸方向一方側(側面123側)の領域に設けられている。そして、副通路134は、回路室135よりも計測部113のZ軸方向先端側(下面125側)の領域と、回路室135よりも主通路22における被計測気体の流れ方向下流側の位置となるX軸方向他方側(側面124側)の領域に亘って設けられている。
【0023】
副通路134は、第1副通路Aと、第1副通路Aの途中で分岐する第2副通路Bとを有している。第1副通路Aは、計測部113の一方側の側面123に開口する副通路入口131と、計測部113の他方側の側面124に開口する第1出口132との間に亘って、計測部113のX軸方向に沿って延在する構成を有している。第1副通路Aは、副通路入口131から主通路22内における被計測気体の流れ方向に沿って延在し、第1出口132までつながる流路を有する。第1副通路Aは、主通路22内を流れる被計測気体を副通路入口131から取り込み、その取り込んだ被計測気体を第1出口132から主通路22に戻すことができる。第1副通路Aは、計測部113の正面に凹設された第1副通路溝がカバー200の領域201によって覆われることによって形成される。
【0024】
第2副通路Bは、第1副通路Aの途中位置で分岐して計測部113の基端部側(フランジ側)に向かって屈曲され、計測部113のZ軸方向に沿って延在する。そして、計測部113の基端部で計測部113のX軸方向他方側(側面124側)に向かって折れ曲がり、計測部113の先端部に向かってUターンし、再び計測部113のZ軸方向に沿って延在する。そして、第1出口132の手前で計測部113のX軸方向他方側(側面124側)に向かって屈曲され、計測部113の側面124に開口する第2出口133に連続する構成を有している。第2出口133は、主通路22における被計測気体の流れ方向下流側に向かって対向配置される。第2出口133は、第1出口132とほぼ同等若しくは若干大きい開口面積を有しており、第1出口132よりも計測部113の長手方向基端部側に隣接した位置に形成されている。
【0025】
第2副通路Bは、計測部113のZ軸方向に沿って往復する流路を有する。第2副通路Bは、第1副通路Aの途中で分岐して、計測部113の基端部側(第1副通路Aから離れる方向)に向かって延在する往通路部B1と、計測部113の基端部側(離反通路部の端部)で折り返されてUターンし、計測部113の先端部側(第1副通路Aに接近する方向)に向かって延在する復通路部B2を有している。復通路部B2は、副通路入口131よりも主通路22内における被計測気体の流れ方向下流側の位置において被計測気体の流れ方向下流側に向かって開口する第2出口133につながる流路を有する。第2副通路Bは、第1副通路Aから分岐されて流れ込んだ被計測気体を通過させて第2出口133から主通路22に戻すことができる。第2副通路Bは、計測部113の正面に凹設された第2副通路溝152がカバー200の領域202によって覆われることによって形成される。
【0026】
第2副通路Bの通路途中には、第2副通路Bから回路室135に被計測気体の圧力を導入可能な第1導入通路161が設けられている。第1導入通路161は、第2副通路Bに一端が開口し、回路室135に他端が開口して、第2副通路Bと回路室135との間を連通している。第1導入通路161は、第2副通路Bに開口する導入口162を有している。導入口162は、第2副通路Bの側壁面から外側にオフセットした位置に配置されている。
【0027】
第2副通路Bの導入口162は、第2副通路Bの往通路部B1から復通路部B2に折り返す折返し部において、半円弧状にカーブする外周側の側壁面でかつ折返し部の頂部よりも復通路部B2側に位置する曲がり部分に配置されている。第1導入通路161は、導入口162から計測部113のZ軸方向に沿って計測部113の基端部側に向かって進み、計測部113の側面123に向かって略L字状に折曲されてX軸方向に沿って進み、回路室135に開口する開口部163に連続する形状を有する。
【0028】
そして、第2副通路Bの往通路部B1の途中位置には、流量センサ(流量検出部)411が配置されている。導入口162は、第2副通路Bの被計測気体流れ方向において流量センサ411よりも下流側の位置に設けられている。流量センサ411は、センサアセンブリ400に設けられており、センサアセンブリ400は、回路基板300に実装されている。
【0029】
回路基板300は、表側の実装面に、センサアセンブリ400、圧力センサ320、吸気温度センサ321、及び湿度センサ322等の回路部品が実装されており、裏面側の実装面には、チップ抵抗やチップコンデンサなどの回路部品(不図示)が設けられている。回路基板300は、回路基板300の長手方向が計測部113の基端部から先端部に向かって延在し、回路基板300の短手方向が計測部113の側面123から側面124に向かって延在するように計測部113内に配置される。
【0030】
回路基板300は、回路室135内に配置される基板本体301を有しており、温度検出通路136に配置される第1突出部302と、湿度計測室137に配置される第2突出部303と、第2副通路Bの往通路部B1に配置される第3突出部304とがそれぞれ基板本体301から面一に延びるように設けられている。第1突出部302の先端部には、吸気温度センサ321が実装され、第2突出部303には湿度センサ322が実装されている。第3突出部304は、第2副通路Bの往通路部B1においてセンサアセンブリ400と対向して配置される。回路基板300の第3突出部304は、センサアセンブリ400の凹溝404の開放部分を閉塞して第1通路部D1を形成する。また、回路基板300の第3突出部304は、第2副通路溝152の底壁面152aとの間に第2通路部D2を形成する。
【0031】
センサアセンブリ400は、支持体401の基端部が回路室135内で回路基板300に固定され、先端部が第2副通路溝152に突出して配置されており、先端部に流量センサ411が設けられている。流量センサ411は、第2副通路Bの往通路部B1に露出するようにセンサアセンブリ400に支持されている。流量センサ411は、回路室135から突出する回路基板300との間に所定の間隔を有して対向して配置されており、第2副通路Bを通過する被計測気体の流量を測定する。
【0032】
図7は、図6に示すセンサアセンブリ400の拡大図である。
センサアセンブリ400は、流量センサ411とLSI412とリードフレーム413を樹脂でモールドした樹脂パッケージの構造を有している。流量センサ411とLSI412は、リードフレーム413の一方面に実装されている。センサアセンブリ400は、流量センサ411のダイアフラムが露出するように流量センサ411を樹脂で封止することによって形成されている。
【0033】
センサアセンブリ400は、モールド樹脂によって形成された所定の板厚を有する平板形状の支持体401を有している。センサアセンブリ400は、支持体401の基端部401Aが回路室135内に配置され、支持体401の先端部401Bが第2副通路溝152に突出して配置される。センサアセンブリ400は、固定部によって、回路基板300に電気的に接続され、かつ、機械的に固定される。
【0034】
支持体401の先端部には、凹溝404が形成されている。凹溝404は、支持体401の先端部において、支持体401の先端部の幅方向に亘って延在するように形成されており、延在する方向の中間位置に流量センサ411が露出して配置されている。流量センサ411は、ダイアフラム構造のセンサエレメント405を有している。流量センサ411のセンサエレメント405は、第2副通路Bの往通路部B1にダイアフラム表面411aが露出し、副通路134から隔絶された閉塞室421にダイアフラム裏面411bが露出するダイアフラムを有している。
【0035】
ダイアフラム表面411aには、ヒータ部が配置され、ヒータ部を挟んで互いに離れた位置に一対の電気抵抗部が配置されている。流量センサ411は、ダイアフラム表面411aを通過する空気がヒータ部により加熱され、熱分布が空気の流れに応じて変化し、熱分布の変化に応じた電気抵抗の変化に基づいて被計測気体の流量を測定する。
【0036】
閉塞室421は、流量センサ411のセンサエレメント405に設けられている。センサエレメント405は、リードフレーム413の一方面に実装されており、閉塞室421は、リードフレーム413の他方面に貼り付けられるポリイミドテープ414によって閉塞されており、外部から隔絶された閉塞空間を有している。
【0037】
センサアセンブリ400には、回路室135に一端が開口し、閉塞室421に他端が開口して回路室135と閉塞室421との間を連通する換気通路422が設けられている。リードフレーム413の他方面には、開口孔423と閉塞室421との間に亘って連続する凹溝が形成されている。リードフレーム413の他方面には、凹溝の開放部分を塞ぐようにシート状のポリイミドテープ414が貼り付けられており、一端が閉塞室421に開口し、他端が開口孔423に連続する換気通路422が形成されている。換気通路422は、ダイアフラム裏面411bが露出する閉塞室421と回路室135との間を連通している。換気通路422は、回路室135から閉塞室421に被計測気体の圧力を導入可能な第2導入通路を構成する。
【0038】
図8は、図5の要部拡大図、図9は、図5のVIII-VIII線断面図、図10は、図9の要部拡大図である。
【0039】
回路室135には、第1導入通路161の開口部163に対向する位置に少なくとも一つ以上の突起部210が設けられている。突起部210は、複数の凹凸形状によって形成されている。突起部210は、カバー200と一体に形成されている。突起部210は、被計測気体が第1導入通路161を通過して第2副通路Bと回路室135との間を移動できるように、回路室135の側壁との間、及び回路基板300との間に所定の間隙を形成している。
【0040】
突起部210は、例えば図4及び図9に示されるように、第1突起部211と第2突起部212を有している。第1突起部211は、回路室135内において第1導入通路161の開口部163と対向する位置に配置され、第2突起部212は、第1突起部211を間に介して第1導入通路161の開口部163から離間する位置に配置されている。第1突起部211は、開口部163の開口幅W0とほぼ同じ長さW1の直方体形状を有しており、開口部163の開口幅W0の全幅に亘って対向して配置されている。第2突起部212は、開口部163の開口幅W0よりも長い長さW2の直方体形状を有しており、第1突起部211と平行に並んで配置されている。
【0041】
突起部210は、図10に示すように、第1突起部211の先端と回路基板300の基板本体301との間に空間S1を形成し、第1突起部211と第2突起部212の間に空間S2を形成し、第2突起部212の先端と回路基板300の基板本体301との間に空間S3を形成する。空間S1と空間S2は、第1導入通路161の開口部163に近い側の空間S1の方が狭く(断面積が小さく)、第1導入通路161の開口部163から遠い側の空間S2の方が広い(断面積が大きい)という関係を有している(S1<S2)。そして、空間S2と空間S3は、空間S3の方が空間S2よりも狭くなっている。
【0042】
図11は、発明品と比較例との差を説明する図であり、図11(1)は、突起部210を有していない比較例の構造を示し、図11(2)は、突起部210を有する本発明品の構造を示し、図11(3)は、突起部がある場合と突起部がない場合とにおける、音圧と測定点までの距離との関係を示すグラフである。
【0043】
本実施形態における物理量検出装置20は、下流にターボチャージャ15が配置されており、そのターボチャージャによって生じる音波が第2副通路Bから第1導入通路161を通過して回路室135に侵入する。
【0044】
図11(1)に示すように、比較例の場合、第1導入通路161の開口部163から回路室135に侵入した音波SWは、障害物がないので、その音圧がほとんど減衰することなく回路室135の奥まで進み、センサアセンブリ400の開口孔423から換気通路422を通過してダイアフラム裏面が露出する閉塞室421に到達する。したがって、ダイアフラムのエレメント表面側とエレメント裏面側における音圧の共鳴が発生し、ダイアフラムのヒータ部の温度分布が熱音響現象による熱対流により変化し、流量の検出誤差を発生させるおそれがある。
【0045】
一方、図11(2)に示すように、本発明品の場合、第1導入通路161の開口部163から回路室135に侵入した音波SWは、突起部210によって遮られて真っ直ぐに進むことができず、音波SWの音圧は、回折減衰され、小さくなる。例えば、図11(3)に示すように、突起がある場合は、突起がない場合と比較して音圧が小さくなっている。
【0046】
また、第1導入通路161の開口部163から回路室135に侵入した音波SWは、空間S1から空間S2に進んで断面積が大きくなると流体の膨張により、その速度と圧力が減じ、小さくなったエネルギだけが空間S3を通過し、残りのエネルギは、空間S2内での反射により減衰する。音波は、インピーダンスが急変する(急拡大・急縮小)箇所で反射するので、空間S2と空間S1との間である入口及び空間S2と空間S3との間である出口において反射する。この反射により、空間S1、S2、S3で音波の干渉が発生し、音波のエネルギが消費され、音圧が小さくなる。
【0047】
したがって、第2副通路B内の音圧を積極的に減衰させることができ、音波が大きなエネルギを有したまま閉塞室421まで伝達されるのを抑制することができる。したがって、ダイアフラムのエレメント表面側とエレメント裏面側における音圧の共鳴の発生を防ぎ、流量の検出精度を高くすることができる。
【0048】
図12は、本発明品と比較例の音圧測定結果を示す図である。
所定周波数付近の音圧レベル差が、比較例では最大音圧28[dB]であるのに対し、本発明品では最大音圧が25[dB]となっており、本発明品の方が比較例よりも音圧が減されて、改善されていることが理解できる。
【0049】
図13は、図8に対応する本実施形態の変形例を示す図である。
変形例では、突起部210は、複数の第3突起部213を有している。複数の第3突起部213は、それぞれが棒形状を有しており、回路室135内において第1導入通路161の開口部163と対向する位置に配置されている。複数の第3突起部213は、開口部163の開口幅W0とほぼ同じ長さに亘って、互いに所定の間隔をおいて千鳥状に広がるように配置されている。複数の第3突起部213は、第1導入通路161の開口部163から回路室135に侵入した音波SWが真っ直ぐに進むことができないように遮る程度の間隔を有して配置されている。
【0050】
変形例によれば、上述の実施例と同様に、第2副通路B内の音圧を積極的に減衰させることができ、音波が大きなエネルギを有したまま閉塞室421まで伝達されるのを抑制することができる。したがって、ダイアフラムのエレメント表面側とエレメント裏面側における音圧の共鳴の発生を防ぎ、流量の検出精度を高くすることができる。また、第3突起部213の本数を変更することによって音圧の減衰量を任意に調整することができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、前記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0052】
15 ターボチャージャ、20:物理量検出装置、100:ハウジング(筐体)、200:カバー(筐体)、134:副通路、135:回路室、161:第1導入通路、162:導入口、163:開口部、210:突起部、211:第1突起部、212:第2突起部、213:第3突起部、300:回路基板(回路部)、400:センサアセンブリ、411:流量センサ(流量検出部)、411a:ダイアフラム表面、411b:ダイアフラム裏面、422:換気通路、B:第2副通路、B1:往通路部、B2:復通路部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13