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特許7407309CSF-1R阻害剤としての置換{5-メトキシ-6-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]ピリジン-3-イル}メチル化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】CSF-1R阻害剤としての置換{5-メトキシ-6-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]ピリジン-3-イル}メチル化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/14 20060101AFI20231221BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
C07D401/14 CSP
A61K31/506
A61P25/28
A61P21/00
A61P25/16
A61P25/04
A61P29/00
A61P25/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022567251
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 US2021028773
(87)【国際公開番号】W WO2021225798
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-11-15
(31)【優先権主張番号】63/020,093
(32)【優先日】2020-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】リチャーズ,サイモン ジェイムズ
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-521654(JP,A)
【文献】国際公開第2011/150198(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式の化合物、
【化1】
又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
以下である、請求項1に記載の化合物。
【化2】
【請求項3】
請求項1若しくは2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、アルツハイマー病の治療剤。
【請求項4】
請求項1若しくは2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、軽度認知障害からアルツハイマー病への進行を予防するための剤。
【請求項5】
請求項1若しくは2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、進行性核上麻痺の治療剤。
【請求項6】
請求項1若しくは2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、タウ媒介性神経変性障害の治療剤。
【請求項7】
請求項1若しくは2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、ミクログリア媒介性炎症を伴う疾患又は障害の治療剤。
【請求項8】
請求項1若しくは2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、原発性側索硬化症、末梢神経因性疼痛、中枢神経因性疼痛、及び加齢性サルコペニアから選択される疾患又は障害の治療剤。
【請求項9】
アルツハイマー病の治療剤の製造における、請求項1若しくは2に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項10】
軽度認知障害からアルツハイマー病への進行の予防剤の製造における、請求項1若しくは2に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項11】
進行性核上麻痺の治療剤の製造における、請求項1若しくは2に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項12】
タウ媒介性神経変性障害の治療剤の製造における、請求項1若しくは2に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項13】
ミクログリア媒介性炎症を伴う疾患又は障害の治療剤の製造における、請求項1若しくは2に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項14】
パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、原発性側索硬化症、末梢神経因性疼痛、中枢神経因性疼痛、及び加齢性サルコペニアから選択される疾患又は障害の治療剤の製造における、請求項1若しくは2に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項15】
請求項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とともに含む、医薬組成物。
【請求項16】
医薬組成物を調製するためのプロセスであって、請求項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と混合することを含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、新規の置換{5-メトキシ-6-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]ピリジン-3-イル}メチル化合物、当該化合物を含む医薬組成物、及び当該化合物を使用して生理学的障害を治療する方法に関する。
【0002】
本発明は、アルツハイマー病並びにミクログリア媒介性炎症を伴う他の疾患及び障害の治療の分野におけるものである。
【0003】
アルツハイマー病は、世界中で何百万人もの患者が罹患している壊滅的な神経変性障害である。現在認可されている市販の薬剤が患者に一時的な対症効果しかもたらしていないことを考慮すると、アルツハイマー病の治療において著しい未だ満たされていない必要性が存在する。
【0004】
ミクログリア発現の上昇及び関連する神経炎症は、アルツハイマー病の発症及び進行の両方で重要な役割を果たしていると考えられている(Hemonnot et al.,Frontiers in Aging Neuroscience,11,233,1-19(2019))。コロニー刺激因子-1受容体(CSF-1R)は、2つのホモ二量体糖タンパク質リガンドであるCSF-1及びIL-34によって活性化されるクラスIII受容体チロシンキナーゼである。それは全てのミクログリアに発現し、それらの発生及び維持を直接制御する(Chitu et al.,Trends Neurosci.,39(6),378-393(2017))。最近の研究(Olmos-Alonso et al.,Brain,139,891-907(2016))では、CSF-1Rの阻害によるミクログリア増殖の阻害がアルツハイマー病のAPP/PS1モデルにおける疾患進行を改善することが示されている。アルツハイマー病の5xFADモデルでは、CSF-1R阻害剤PLX3397の投与により、神経内アミロイド、神経突起斑形成、並びに前原線維オリゴマー及び原線維オリゴマーの減少と、それに伴う認知機能の改善が観察された(Sosna et al.,Molecular Neurodegen.,13,11,1-11(2018))。加えて、P301Sマウスタウオパチーモデルでは、CSF-1R阻害剤JNJ-40346527がタウのリン酸化及び凝集を阻害することが示されている(Mancuso et al.,Brain,142,3243-3264(2019))。したがって、CSF-1R阻害剤は、動物モデルにおける斑形成の予防及びタウの病理学的過リン酸化形態の蓄積の減少のための認められているアプローチである。
【0005】
更に、ミクログリア媒介性炎症は、進行性核上麻痺(PSP)(Fernandez-Botran et al.,Parkinsonism Relat.Disord.,17,9,683-688(2011))、パーキンソン病(PD)(Tansey and Goldberg,Neurobiol.Dis.,37,3,510-518(2010))、筋萎縮性側索硬化症(ALS)(Liu et al.,Front.Immunol.,8,1005,1-12(2017))、原発性側索硬化症(PLS)(Paganoni et al.,NeuroImage:Clinical,17,347-353(2018))、多発性硬化症(MS)(Beckmann et al.,Acta Neuropathologica Commun.,6:9,1-17(2018))、末梢神経因性疼痛(Inoue et al.,Nat.Rev.Neurosci.,19,138-152(2018))、中枢神経因性疼痛(Lee et al.,Mol.Pain,14,1-12(2018)、並びに高齢者における加齢性サルコペニア及び運動障害(Giorgetti et al.,Cell Reports,29,1539-1554(2019))などの障害に関連している。歴史的に、CSF-1R阻害剤は、様々なタイプのがん及び自己免疫疾患の治療における使用について研究されている(Kumari et al.,Biomed.Pharmacother.,103,662-679(2018))。
【0006】
Meyers et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.,20,1543-1547(2010)は、CSF-1Rキナーゼ阻害剤として3-アミノ-6-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピラジン-2-オール誘導体を開示している。
【0007】
したがって、ヒトにおけるアルツハイマー病又はミクログリア媒介性炎症を伴う疾患及び障害の治療のための、強力な、選択的な、かつ/又は脳浸透性のCSF-1R阻害剤が必要とされている。
【0008】
本発明は、CSF-1Rの阻害剤である、ある特定の新規の化合物を提供する。
【0009】
したがって、本発明は、式Iの化合物、
【化1】
又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0010】
一実施形態では、本発明は、式Iの化合物を更に提供する。
【化2】
【0011】
本発明は、アルツハイマー病の治療を必要とする患者におけるアルツハイマー病を治療する方法であって、患者に、有効量の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法も提供する。
【0012】
本発明は、軽度認知障害からアルツハイマー病への進行の治療を必要とする患者における軽度認知障害からアルツハイマー病への進行を予防する方法であって、患者に、有効量の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法を更に提供する。
【0013】
本発明は、患者における進行性核上麻痺を治療する方法であって、かかる治療を必要とする患者に、有効量の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法も提供する。
【0014】
本発明は、患者におけるタウ媒介性神経変性障害を治療する方法であって、かかる治療を必要とする患者に、有効量の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法も提供する。
【0015】
本発明は、ミクログリア媒介性炎症を伴う疾患又は障害を治療する方法であって、かかる治療を必要とする患者に、有効量の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法を更に提供する。
【0016】
本発明は、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、原発性側索硬化症、末梢神経因性疼痛、中枢神経因性疼痛、及び加齢性サルコペニアから選択される疾患又は障害を治療する方法であって、かかる治療を必要とする患者に、有効量の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法も提供する。
【0017】
更に、本発明は、療法に使用するための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0018】
本発明は、アルツハイマー病の治療に使用するための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩も提供する。
【0019】
本発明は、軽度認知障害からアルツハイマー病への進行の予防に使用するための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を更に提供する。
【0020】
本発明は、進行性核上麻痺の治療に使用するための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩も提供する。
【0021】
本発明は、タウ媒介性神経変性障害の治療に使用するための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩も提供する。
【0022】
本発明は、ミクログリア媒介性炎症を伴う疾患又は障害の治療に使用するための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を更に提供する。
【0023】
本発明は、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、原発性側索硬化症、末梢神経因性疼痛、中枢神経因性疼痛、及び加齢性サルコペニアから選択される疾患又は障害の治療に使用するための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩も提供する。
【0024】
なお更に、本発明は、アルツハイマー病の治療用の薬剤又は軽度認知障害からアルツハイマー病への進行の予防用の薬剤の製造のための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。加えて、本発明は、進行性核上麻痺の治療に使用するための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩の使用も提供する。更に、本発明は、タウ媒介性神経変性障害の治療用の薬剤の製造のための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。加えて、本発明は、ミクログリア媒介性炎症を伴う疾患又は障害の治療に使用するための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩の使用も提供する。更に、本発明は、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、原発性側索硬化症、末梢神経因性疼痛、中枢神経因性疼痛、及び加齢性サルコペニアから選択される疾患又は障害の治療に使用するための式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩の使用も提供する。
【0025】
本発明は、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤とともに含む、医薬組成物を更に提供する。本発明は、医薬組成物を調製するためのプロセスであって、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と混合することを含む、プロセスを更に提供する。
【0026】
一実施形態では、本発明は、患者におけるがんを治療する方法であって、かかる治療を必要とする患者に、有効量の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法を提供する。一実施形態では、がんは、神経膠腫、膵臓がん、乳がん、又は急性骨髄性白血病から選択される。一実施形態では、神経膠腫は、多形神経膠芽腫である。更なる一実施形態では、本発明は、患者における自己免疫疾患を治療する方法であって、かかる治療を必要とする患者に、有効量の式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法を提供する。一実施形態では、自己免疫疾患は、リウマチ性関節炎である。
【0027】
軽度認知障害は、経時的に軽度認知障害からアルツハイマー認知症への進行を呈する患者の臨床所見及び進行に基づいてアルツハイマー病に関連する認知症の潜在的な前駆期として定義されている。「軽度認知障害からアルツハイマー病への進行を予防すること」又は「軽度認知障害からアルツハイマー病への進行の予防」という用語は、患者における軽度認知障害からアルツハイマー病への進行を抑制すること、遅延させること、止めること、又は逆転させることを含む。
【0028】
本明細書で使用される場合、「治療する」又は「治療すること」という用語は、既存の症状又は障害の進行又は重症度を抑制すること、遅延させること、止めること、又は逆転させることを含む。
【0029】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、ヒトを指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、患者に単回又は複数回投与すると、診断中又は治療中の患者に所望の効果をもたらす、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩の量又は用量を指す。
【0031】
有効量は、既知の技法を使用して当業者によって容易に決定され得る。患者の有効量を決定する際に、患者の人種、患者のサイズ、年齢、及び全般的な健康状態、関与する特定の疾患又は障害、疾患又は障害の関与度又は重症度、個々の患者の応答、投与される特定の化合物、投与様式、投与される調製物のバイオアベイラビリティ特性、選択される投薬レジメン、併用薬の使用、並びに他の関連状況を含むが、これらに限定されない、いくつかの要因が考慮される。
【0032】
本発明の化合物は、概して、幅広い投薬量範囲にわたって有効である。例えば、1日当たりの投薬量は、通常、約0.1~約15mg/kg体重の範囲内である。いくつかの事例では、前述の範囲の下限よりも低い投薬量レベルが十分以上であり得る一方で、他の事例では、許容される副作用を伴って、更に多い用量が用いられてもよく、したがって、上記の投薬量範囲は決して本発明の範囲を限定するようには意図されていない。
【0033】
本発明の化合物は、好ましくは、経口経路及び経皮経路を含む、化合物を生物学的に利用可能にする任意の経路によって投与される医薬組成物として製剤化される。より好ましくは、かかる組成物は、経口投与用である。かかる医薬組成物及びそれを調製するためのプロセスは、当該技術分野で周知である(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,L.V.Allen,Editor,22nd Edition,Pharmaceutical Press,2012を参照されたい)。
【0034】
本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩は、当該技術分野で周知であり、かつ理解されている方法による以下の調製物及び実施例に従って調製され得る。これらの調製物及び実施例のステップに好適な反応条件は、当該技術分野で周知であり、溶媒及び共試薬の適切な置き換えは、当該技術分野の技術の範囲内である。同様に、合成中間体が必要に応じて又は所望どおりに様々な周知の技法によって単離及び/又は精製され得、かつ多くの場合、様々な中間体をほとんど又は全く精製することなくその後の合成ステップで直接使用することが可能であることが当業者に理解されるであろう。一例として、調製物及び実施例の化合物は、例えば、シリカゲル精製によって単離され得る、濾過によって直接単離され得る、又は結晶化によって単離され得る。更に、当業者であれば、いくつかの状況下で、部分(moieties)が導入される順序が重要ではないことを認識するであろう。本発明の化合物を製造するのに必要なステップの特定の順序は、合成される特定の化合物、出発化合物、及び置換部分の相対的な不利益に依存し、熟練の化学者に十分に理解されている。全ての置換基は、別途指示されない限り、既定のとおりであり、全ての試薬は、当該技術分野で周知であり、理解されている。
【0035】
ある特定の略語は以下のように定義される:「BSA」はウシ血清アルブミンを指し、「CSF-1R」はコロニー刺激因子-1受容体を指し、「DCM」はジクロロメタン又は塩化メチレンを指し、「DMEM」はダルベッコ改変イーグル培地を指し、「DMF」はN,N-ジメチルホルムアミドを指し、「DMSO」はジメチルスルホキシドを指し、「EGTA」はエチレングリコール四酢酸を指し、「ES/MS」は、エレクトロスプレーイオン化質量分析を指し、「EtOAc」は酢酸エチルを指し、「EtOH」はエチルアルコール又はエタノールを指し、「FBS」はウシ胎児血清を指し、「HEPES」は4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸を指し、「hCSF-1R」はヒトコロニー刺激因子1受容体を指し、「IC50」は、薬剤の濃度であって、その薬剤に可能な最大阻害応答の50%をもたらす濃度(相対IC50)、又はプラセボ対照と比較して標的活性の50%阻害をもたらす薬剤の濃度(絶対IC50)を指し、「IPTG」はイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシドを指し、「LC/MS」は液体クロマトグラフィー質量分析を指し、「M-CSF」はマクロファージコロニー刺激因子を指し、「MeOH」はメタノール又はメチルアルコールを指し、「MP-TMT」は2,4,6-トリメルカプトトリアジンの樹脂結合等価物であるマクロポーラスポリスチレン結合トリメルカプトトリアジンを指し、「m/z」は質量対電荷比を指し、「PBS」はリン酸緩衝生理食塩水を指し、「pCSF-1R」はリン酸化コロニー刺激因子1受容体を指し、「PDGFRβ」は血小板由来増殖因子受容体ベータを指し、「PDGF-BB」は血小板由来増殖因子-2Bサブユニットを指し、「RT」は室温を指し、「SCX」は強陽イオン交換クロマトグラフィーを指し、「SFC」は超臨界流体クロマトグラフィーを指し、「TEA」はトリエチルアミンを指し、「TFA」はトリフルオロ酢酸を指し、「THF」はテトラヒドロフランを指す。
【0036】
任意選択的なステップでは、式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、標準条件下で、式Iの適切な遊離塩基と好適な溶媒中の適切な薬学的に許容される酸との反応によって形成され得る。加えて、かかる塩の形成は、窒素保護基の脱保護と同時に起こり得る。かかる塩の形成は、当技術分野で周知であり、理解されている。例えば、Gould,P.L.,“Salt selection for basic drugs,”International Journal of Pharmaceutics,33:201-217(1986)、Bastin,R.J.,et al.“Salt Selection and Optimization Procedures for Pharmaceutical New Chemical Entities,”Organic Process Research and Development,4:427-435(2000)、及びBerge,S.M.,et al.,“Pharmaceutical Salts,”Journal of Pharmaceutical Sciences,66:1-19,(1977)、“Salt selection for basic drugs,”International Journal of Pharmaceutics,33:201-217(1986)を参照されたい。当業者であれば、式Iの化合物が薬学的に許容される塩に容易に変換され、かつ薬学的に許容される塩として分離され得ることを理解するであろう。
【0037】
調製物及び実施例
以下の調製物及び実施例は、本発明を更に例証する。
【0038】
調製物1
【化3】
【0039】
塩化オキサリル(309mL、3557mmol)を2-クロロピリミジン-4-カルボン酸(470.0g、2964.6mmol)のDCM(5L)及びDMF(10mL)混合物懸濁液に1時間かけて緩徐に添加する。懸濁液を周囲温度で1時間撹拌し、その後、0℃に冷却する。EtOH(1.05L)のDCM(1.4L)溶液を緩徐に添加し、混合物を10℃で30分間撹拌する。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(2.5L)を緩徐に添加し、層を分離する。水溶液をDCM(5L)で抽出し、有機抽出物を合わせ、ブライン(2×4L)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、蒸発させて、固体残渣を得る。残渣をn-ヘプタン(2.5L)中でスラリー化し、濾過し、真空下で乾燥させて、黄色の固体として表題化合物を得る(493.5g、89%)。ES/MS m/z(35Cl/37Cl)187.0/189.0[M+H]
【0040】
調製物2
【化4】
【0041】
2-クロロ-4-メチル-ピリミジン(20g、155.57mmol)、1-メチル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピラゾール(40g、182.633mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)二塩化パラジウム(II)(2.7g、3.8mmol)、炭酸カリウム(87g、616.89mmol)、1,4-ジオキサン(250mL)、及び水(80mL)を窒素雰囲気下で一緒に添加する。溶液を窒素/真空パージし(3回)、20時間撹拌しながら100℃に加熱する。反応物を飽和塩化アンモニウム(約500mL)に注ぎ、生成物をEtOAc(約3×200mL)で抽出する。有機抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、真空内で濃縮して黒色の油を得て、その後、これを100%ヘキサン-100%EtOAcの勾配で溶出するシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、オレンジ色の固体として表題化合物を得る(26.379g、収率97%、151.43mmol)。ES/MS m/z 175(M+H)。
【0042】
調製物3
【化5】
【0043】
2-クロロピリミジン-4-カルボン酸エチル(493.0g、2642.0mmol)、1-メチル-4-(4,4,5,5テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピラゾール(770.0g、3700mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)二塩化パラジウム(II)(55.63g、79.26mmol)、及びフッ化カリウム(465.0g、7924.0mmol)を1,4-ジオキサン(5L)及び水(1.23L)中で合わせ、窒素で20分間パージする。混合物を19時間かけて82℃(内部温度)に加熱する。混合物を周囲温度に冷却し、EtOAc(5L)で希釈する。層を分離し、有機層を水(5L)で洗浄する。水層をEtOAc(5L)で抽出し、有機抽出物を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させて、淡黄色の固体を得る。残渣をヘプタン(2.5L)中でスラリー化し、濾過し、ヘプタン(2.5L)で洗浄し、真空下で乾燥させて、淡黄色の固体として表題化合物を得る(455.0g、73%)。ES/MS m/z 233.0(M+H)。
【0044】
調製物4
【化6】
水素化ホウ素ナトリウム(109.0g、2881.1mmol)を、内部温度を25℃未満に維持しながら、2-(1-メチルピラゾール-4-イル)ピリミジン-4-カルボン酸エチル(452.0g、1926.8mmol)のEtOH(6.3L)及びTFA(1.35L)溶液に少量ずつに分けて添加し、LC/MSが完全な反応を示すまで混合物を撹拌する。15%硫酸水素カリウム水溶液(6L)を添加し、その後、tert-ブチルメチルエーテル(5L)を添加し、あらゆる沈殿した固体を濾過により除去する。層を分離し、水溶液をtert-ブチルメチルエーテル(5L)で抽出する。有機抽出物を合わせ、約2L体積になるまで濃縮する。生成物が有機相から完全に抽出されるまでこの混合物を15%硫酸水素カリウム水溶液で抽出する。固体炭酸カリウムを少量ずつに分けて添加してpHをpH12に調整する。含水物質を2-メチルテトラヒドロフラン(4×7.5L)で抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させて、淡黄色の固体として表題化合物を得る(251.0g、67%)。ES/MS m/z 191.0(M+H).表題化合物の2つの他のバッチを同様の様式で調製して、淡黄色の固体として表題化合物を得る(18.0g及び114.3g)。合わせた物質をヘプタン(2.5L)で粉砕し、濾過し、ハウス真空下で乾燥させて、淡黄色の固体として表題生成物を得る(371g、1911.6mmol)。MS(m/z)191(M+H)。
【0045】
調製物5
【化7】
【0046】
[2-(1-メチルピラゾール-4-イル)ピリミジン-4-イル]メタノール(100g、525.76mmol)を窒素下でDCM(1L)に添加して、白色のスラリーを得る。スラリーを0℃に冷却し、TEA(144mL、1030mmol)を3分間かけて滴加する。塩化メタンスルホニル(60mL、773mmol)を50分間かけて滴加し、発熱を観察する。内部温度を8℃未満で維持する。添加中、反応混合物が徐々に赤色になり、添加の最後には黄色になった。添加が完了した後、反応混合物をN下で5時間かけて38℃に加熱する。反応混合物を窒素下で8℃に冷却し、TEA(25mL、179mmol)を添加し、その後、塩化メタンスルホニル(10mL、129mmol)を5分間かけて滴加する(穏やかな発熱が観察される)。その後、反応混合物を一晩還流させる。混合物を冷却し、水(1L)で処理する。相を分離し、水相をDCM(0.5L)で抽出する。有機抽出物を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を蒸発させて、茶色の油を得る。粗油をDCM(250ml)中に溶解させ、シリカパッドに通して濾過し、EtOAc(1L)で洗浄する。濾液を蒸発させて、茶色の固体を得る(92.6g、444mmol、84.4%)。MS(m/z)209(M+H)。
【0047】
調製物6
【化8】
【0048】
4-メチル-2-(1-メチルピラゾール-4-イル)ピリミジン(10.00g、57.41mmol)、二酸化セレン(7.6g、66mmol)、1,4-ジオキサン(110mL)、及び水(5.7mL)を一緒に添加する。混合物を20時間撹拌しながら100℃に加熱して、黒色の溶液を得る。反応物を冷却し、珪藻土に通して濾過し、THF(約100mL)で洗浄する。濾液と洗浄物を合わせ、真空内で濃縮する。クロロホルム(約150mL)を添加し、結果として得られた固体を濾過し、収集する。固体をクロロホルム(約50mL)で更に洗浄し、濾過する。合わせた濾液を約30mL体積になるまで濃縮し、100%ヘキサン-100%EtOAcの勾配で溶出するシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物として薄黄色の固体を得る(4.550g、収率42%、24.18mmol)。ES/MS m/z 189/207(M+H/M+18)。
【0049】
調製物7
【化9】
【0050】
2-(1-メチルピラゾール-4-イル)ピリミジン-4-カルバルデヒド(4.550g、24.18mmol)をMeOH(60mL)、続いて、4-メチルベンゼンスルホンヒドラジド(5.05g、26.6mmol)に添加し、混合物を2時間撹拌する。混合物を0℃に冷却し、濾過し、結果として得られた固体をMeOH(約20mL)で洗浄する。固体を真空内で乾燥させて、白色の固体として表題化合物を得る(7.229g、収率84%、20.28mmol)。ES/MS m/z 357(M+H)。
【0051】
調製物8
【化10】
【0052】
5-ブロモ-2-クロロ-3-メトキシ-ピリジン(14.5g、65.2mmol)、フェニルメタノール(7.4mL、72mmol)、及びカリウムtert-ブトキシド(9.5g、85mmol)を1,4-ジオキサン(200mL)と一緒に窒素下で添加し、2時間かけて50℃に加熱する。反応混合物を室温に冷却し、飽和塩化アンモニウム水溶液(350mL)に注ぐ。生成物をEtOAc(2×300mL)で抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、真空内で濃縮する。粗残渣を100%ヘキサン-50%EtOAcで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーCombiflash(登録商標)により精製して、白色の固体として表題化合物を得る(16.53g、56.19mmol、86%)。ES/MS m/z(79Br/81Br 294/296(M+H)
【0053】
調製物9
【化11】
【0054】
以下の手順は、J.Org.Chem.2008,73,6425-6428に記載の手順に基づく。カリウムtert-ブトキシド(212g、1851.50mmol)を少量ずつに分けて5-ブロモ-2-クロロ-3-メトキシ-ピリジン(323g、1422.8mmol)及び(5-メトキシ-2-ピリジル)メタノール(200g、1422.9mmol)の1,4-ジオキサン(4L)溶液に窒素雰囲気下で、20℃で添加する。混合物を1時間かけて50℃に加熱し、その後、周囲温度に冷却した後、飽和塩化アンモニウム水溶液(500mL)を添加する。結果として得られた沈殿物を濾過により除去し、EtOAcで洗浄し、濾液を蒸発させて、眉毛(brow)残渣を得る。残渣をDCM中に溶解させ、シリカゲルプラグ(1kg)に通し、EtOAc/n-ヘプタン(1:1)で溶出する。所望の画分を単離し、蒸発乾固させ、n-ヘプタン(5L)中でスラリー化する。スラリーを80℃に加熱し、その後、周囲温度に冷却する。結果として得られた固体を濾過により収集し、n-ヘプタンで洗浄し、45℃の真空オーブン内で乾燥させて、オフホワイトの固体として表題化合物を得る(413.5g、88%)。ES/MS m/z 325.0/327.0[M+H]。
【0055】
調製物10
【化12】
【0056】
トルエン(300mL)を窒素下で-78℃に冷却し、温度を-65℃未満に維持しながらN-ブチルリチウム(2.5mol/L)のヘキサン(40mL、100mmol)溶液を滴加する。温度を確実に-60℃未満に維持しながら2-ベンジルオキシ-5-ブロモ-3-メトキシ-ピリジン(25.7g、87mmol)のトルエン(150mL)溶液を滴加し、溶液を40分間撹拌する。温度を-60℃未満に維持しながらTHF(150mL)を反応物に滴加し、混合物を10分間撹拌する。ホウ酸トリイソプロピル(25mL、108mmol)を2分間かけて滴加し、反応物を撹拌しながら10℃に加温させる。反応物を飽和塩化アンモニウム溶液(500mL)に注ぎ、EtOAc(2×200mL)で抽出する。抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、真空内で濃縮する。ジエチルエーテル(200mL)を残渣に添加し、混合物を5分間超音波処理し、その後、濾過する。固体を更にジエチルエーテル(100mL)で洗浄し、真空内で乾燥させて、白色の固体として表題化合物を得る(8.99g、34.71mmol、40%)。ES/MS m/z 260[M+H]。
【0057】
調製物11
【化13】
【0058】
1,4-ジオキサン(6.15L)、5-ブロモ-3-メトキシ-2-[(5-メトキシ-2-ピリジル)メトキシ]ピリジン(413.5g、1259mmol)、4,4,5,5-テトラメチル-2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1,3,2-ジオキサボロラン(360.2g、1390mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)二塩化パラジウム(II)(8.9g、13mmol)、酢酸カリウム(376g、3792.88mmol)を窒素雰囲気下で一緒に添加し、溶液に窒素を15分間スパージする。LCMSが出発材料の完全な変換を示すまで反応混合物を100℃に加熱する。溶液を25℃に冷却し、反応混合物を珪藻土プラグに通して濾過し、EtOAc(2.5L)で溶出し、溶媒を蒸発させて、黒色の固体を得る。残渣を1:1 EtOAc/n-ヘプタン(10L)、続いて、EtOAc(10L)で溶出するシリカプラグ(1kg)に通して精製し、精製した物質を蒸発乾固させる。精製した物質をシクロペンチルメチルエーテル/n-ヘプタン(1:1、5L)中で30℃でスラリー化し、結果として得られた沈殿物を濾過により収集して、灰色の固体として表題化合物を得る(393.9g、83%)。ES/MS m/z 373.2[M+H]。
【0059】
調製物12
【化14】
【0060】
(6-ベンジルオキシ-5-メトキシ-3-ピリジル)ボロン酸(4.00g、15.4mmol)、4-メチル-N-[(E)-[2-(1-メチルピラゾール-4-イル)ピリミジン-4-イル]メチレンアミノ]ベンゼンスルホンアミド(5.5g、15mmol)、リン酸カリウム(8.3g、39mmol)、及び1,2-ジクロロベンゼン(120mL)を一緒に添加する。混合物に窒素を流し、10時間撹拌しながら150℃に加熱し、その後、一晩かけて室温に冷却する。その後、反応物を5時間かけて170℃に加熱し、飽和塩化アンモニウム溶液(約250mL)に注ぐ。混合物をEtOAc(2×200cm3)で抽出し、有機抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、真空内で濃縮する。残渣を100%DCM-50%DCM/THFで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーCombiflash(登録商標)により精製して、黄色の固体として表題化合物を得る(3.15g、8.12mmol、53%)。ES/MS m/z 388[M+H]。
【0061】
調製物13
【化15】
【0062】
4-[(6-ベンジルオキシ-5-メトキシ-3-ピリジル)メチル]-2-(1-メチルピラゾール-4-イル)ピリミジン(3.147g、8.123mmol)をDCM(15mL)に添加し、その後、TFA(15mL)を添加する。反応物を150分間撹拌し、その後、真空内で濃縮する。反応物を飽和重炭酸ナトリウム溶液(約80mL)に慎重に注ぎ、2:1 CHCl/EtOH(約6×30mL)で抽出する。有機抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、真空内で濃縮する。残渣を100%DCM-85%DCM/MeOHで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーCombiflash(登録商標)により精製して、薄黄色の固体として表題化合物を得る(2.523g、8.486mmol、100%)。ES/MS m/z 298[M+H]。
【0063】
実施例1
【化16】
【0064】
3-メトキシ-5-[[2-(1-メチルピラゾール-4-イル)ピリミジン-4-イル]メチル]ピリジン-2-オール(0.1g、0.336mmol)、(5-メトキシ-2-ピリジル)メタノール(0.1g、0.719mmol)、及びTHF(3.5mL)を一緒に添加する。トリフェニルホスフィン(0.18g、0.160mL、0.686mmol)及びアゾジカルボン酸ジイソプロピル(0.13mL、0.656mmol)を反応物に添加する。容器を密封し、窒素を流し、1時間撹拌する。反応物をMeOHで希釈し、SCX2カラムに注ぐ。カラムに1カラム体積のMeOHを流し、1カラム体積の2Mメタノールアンモニアを流して溶出し、その後、真空内で濃縮する。残渣を、55℃でカラムPPU内径3cm×15cm(5μ)を使用し、かつ100mL/分で4分間(6分間方法)かけて15-25%MeOH(40mMアンモニア)の勾配で溶出するSFCにより精製して、黄色の油として表題化合物を得る(0.0097g、0.023mmol、7%)。ES/MS m/z 419[M+H]。
【0065】
代替調製物実施例1
【化17】
【0066】
3-メトキシ-2-[(5-メトキシ-2-ピリジル)メトキシ]-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン(150g、399.0mmol)の1,4-ジオキサン(375mL、4392mmol)及びTHF(1.075L)溶液に窒素をスパージし、窒素雰囲気下で4-(クロロメチル)-2-(1-メチルピラゾール-4-イル)ピリミジン(83.4g、396mmol)、ジクロロ[1,1’-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)(5.25g、8.06mmol)、リン酸カリウム一水和物(386.4g、1594mmol)の1,4-ジオキサン(1.2L)及び水(300mL)溶液に添加し、80℃に加熱する(合計添付時間80分間)。更に15分経った後、反応物を周囲温度に冷却し、水(2.5L)及び2-メチルテトラヒドロフラン(2.5L)で希釈する。有機層を分離し、水(2×2.5L)で洗浄する。水層を2-メチルテトラヒドロフラン(2.5L)で抽出し、有機抽出物を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、蒸発させて、ゴム状の残渣を得る。残渣を、EtOAc、続いて、5%MeOH/DCMで溶出するシリカゲル(1kg)に通して濾過する。所望の画分を収集し、蒸発乾固させ、DCM中に溶解させ、窒素雰囲気下でMP-TMT(25g)と25℃で撹拌する。樹脂を濾過により除去し、0-5%MeOH/DCMの勾配で溶出するシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製する。精製した生成物を含む画分を蒸発させ、THF(1.15L)中に溶解させる。溶液を50℃に加温し、溶液が濁るまでn-ヘプタン(1.5L)を緩徐に添加する。溶液を65℃に加熱し、THF(500mL)を緩徐に添加してスラリーを溶解させて、透明な溶液を得る。混合物を0℃に冷却し、結果として得られた固体を真空濾過により収集し、乾燥させて、白色の固体として表題化合物を得る(101.7g、60%)。ES/MS m/z 419.0[M+H]。
【0067】
実施例2
【化18】
【0068】
4-({5-メトキシ-6-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]ピリジン-3-イル}メチル)-2-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリミジン(257mg)をアセトン(5mL)中に溶解させて、透明な淡黄色の溶液を得る。混合物に塩酸(1.4mL、1M EtOAc溶液)を導入して白色の固体を沈殿させる。懸濁液を15分間撹拌し、アセトン(10mL)で希釈する。反応混合物を濾過し、固体を窒素気流下で、周囲温度で乾燥させて、結晶性固体として表題化合物を得る。ES/MS m/z 419[M+H]。
【0069】
実施例3
【化19】
【0070】
EtOAc(250mL)及び4-({5-メトキシ-6-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]ピリジン-3-イル}メチル)-2-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリミジン(10g)をフラスコに装填する。反応物を40~50℃に加熱し、4~6時間撹拌する。反応混合物を濾過し、EtOAcで希釈する。混合物を10℃に冷却し、12時間撹拌し、濾過し、固体をEtOAcですすぐ。固体を50℃以下の温度で乾燥させて、結晶性固体として表題化合物を得る(収率90%)。ES/MS m/z 419.0[M+H]。
【0071】
実施例4
【化20】
【0072】
4-({5-メトキシ-6-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]ピリジン-3-イル}メチル)-2-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリミジン(83.5mg)を周囲温度で25%(v/v)アセトン(3.5mL)水溶液中に2週間懸濁させる。結果として得られた懸濁液を濾過し、単離した固体を空気乾燥させて、結晶性固体として表題化合物を得る。ES/MS m/z 419[M+H]。
【0073】
実施例5
【化21】
【0074】
4-({5-メトキシ-6-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]ピリジン-3-イル}メチル)-2-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリミジン(82.3mg)を周囲温度で50%(v/v)MeOH(2.7mL)水溶液中に2週間懸濁させる。結果として得られた懸濁液を濾過し、単離した固体を空気乾燥させて、結晶性固体として表題化合物を得る。ES/MS m/z 419[M+H]。
【0075】
実施例6
【化22】
【0076】
4-({5-メトキシ-6-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]ピリジン-3-イル}メチル)-2-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリミジン(59.9mg)を65℃で44%(v/v)THF(3.6mL)ヘプタン溶液中に溶解させる。この溶液を氷水浴中で冷却した過剰量のヘプタンに添加する。結果として得られたTHFのヘプタンに対するv/v比を、それぞれ、17:83と推定する。固体を沈殿させて懸濁液を得て、これを濾過する。単離した固体を空気乾燥させて、結晶性固体として表題化合物を得る。ES/MS m/z 419[M+H]。
【0077】
実施例7
【化23】
【0078】
4-({5-メトキシ-6-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]ピリジン-3-イル}メチル)-2-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)ピリミジン(52.3mg)を65℃でシクロペンチルメチルエーテル(4mL)中に溶解させて、溶液を得る。その後、熱溶液を氷水浴中で冷やしたガラス容器に通して濾過し、固体を沈殿させる。その後、結果として得られた懸濁液を0℃未満の温度で一晩撹拌した後、固体を濾過により単離し、空気乾燥させて、結晶性固体として遊離塩基形態Eの表題化合物を得る。ES/MS m/z 419[M+H]。
【0079】
結晶性形態のX線粉末回折(XRPD)
結晶性固体のXRPDパターンを、40kV及び40mAで動作する、CuKα(1.5418Å)線源及びLinxeye検出器又はOptix長距離高精度焦点線源のいずれかを装備した、Bruker D8 Endeavor X線粉末回折計、PANalytical X’Pert PRO MPD、又はEmpyrean回折計で得る。試料を、4~42 2θ°で、0.009 2θ°のステップサイズ及び0.5秒/ステップの走査速度で、0.3°の一次スリット開口及び3.9°のPSD開口を使用して走査する。乾燥粉末を石英試料ホルダーに充填し、ガラススライドを使用して滑らかな表面を得る。結晶形態回折パターンを周囲温度及び相対湿度で収集する。結晶ピーク位置を、8.853及び26.774 2θ°でピークを有する内部NIST675標準に基づいて全パターンをシフトした後にMDI-Jadeで決定する。任意の所与の結晶形態に関して、結晶形態及び晶癖などの要因から生じる優先配向に起因して、回折ピークの相対強度が変動し得ることが結晶学分野で周知である。優先配向の効果が存在する場合、ピーク強度は変化するが、多形体の特徴的なピーク位置は不変である。例えば、The United States Pharmacopeia#23,National Formulary#18,pages1843-1844,1995を参照されたい。更に、任意の所与の結晶形態に関して、角度ピーク位置がわずかに変動し得ることも結晶学分野で周知である。例えば、ピーク位置は、試料が分析される温度の変動、試料変位、又は内部標準の存在若しくは不在に起因してシフトすることができる。この場合、±0.2 2θ°のピーク位置変動性は、示される結晶形態の明確な特定を妨げることなく、これらの潜在的な変動を考慮に入れると推定される。結晶形態の確認を特徴的なピークの任意の固有の組み合わせに基づいて行うことができる。
【0080】
したがって、実施例2の試料は、以下の表1に記載の回析ピーク(2θ値)を有するものとしてCuKa放射線を使用したXRDパターンを特徴とする。具体的には、このパターンは、0.2度の回折角を許容する、12.8°、26.6°、22.1°からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて、4.2°のピークを有する。
【0081】
実施例3(結晶性形態A)の試料は、以下の表2に記載の回析ピーク(2θ値)を有するものとしてCuKa放射線を使用したXRDパターンを特徴とする。具体的には、このパターンは、0.2度の回折角を許容する、20.4°、17.2°、5.7°からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて、12.5°のピークを有する。
【0082】
実施例4(結晶性形態B)の試料は、以下の表3に記載の回析ピーク(2シータ値)を有するものとしてCuKa放射線を使用したXRDパターンを特徴とする。具体的には、このパターンは、0.2度の回折角を許容する、11.4°、21.1°、24.4°からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて、27.2°のピークを有する。
【0083】
実施例5(結晶性形態C)の試料は、以下の表4に記載の回析ピーク(2シータ値)を有するものとしてCuKa放射線を使用したXRDパターンを特徴とする。具体的には、このパターンは、0.2度の回折角を許容する、19.5°、20.3°、23.3°からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて、12.4°のピークを有する。
【0084】
実施例6(結晶性形態D)の試料は、以下の表5に記載の回析ピーク(2シータ値)を有するものとしてCuKa放射線を使用したXRDパターンを特徴とする。具体的には、このパターンは、0.2度の回折角を許容する、14.2°、24.4°、24.7°からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて、12.8°のピークを有する。
【0085】
実施例7(結晶性形態E)の試料は、以下の表6に記載の回析ピーク(2シータ値)を有するものとしてCuKa放射線を使用したXRDパターンを特徴とする。具体的には、このパターンは、0.2度の回折角を許容する、14.2°、24.2°、26.0°からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて、23.9°のピークを有する。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0086】
生物学的アッセイ
hCSF-1R結合アッセイ
試験化合物の段階希釈物をDMSOで調製して3倍希釈して、10点応答曲線を得る。10点化合物滴定液(15nL)を、音響分注を使用して対応するアッセイプレート(ProxiPlate(商標)-384 Plus F、ブラック)の行A~P、列3~12及び13~22の各ウェルに添加する。その後、アッセイ対照としてDMSO(15nL)を行A~P、列1~2及び23~24に添加する。アッセイ緩衝液(HEPES 62.5mM、pH7.5、0.01%Brij(商標)35、12.5 MgCl、及び1.25mM EGTA)を使用して、全てのアッセイ試薬を調製する。CSF-1R LanthaScreen(商標)Eu Kinase Binding Assayを、本質的に供給業者(LanthaScreen(商標)Eu Kinase Binding Assay Validation Packet、Invitrogen)に推奨されるとおりに実行する。LanthaScreen(商標)Eu-anti-His Antibody(PV5596、Thermo Fisher)及びKinase Tracer236(PV5592、Thermo Fisher)を含む溶液(7.5μL)をプレート全体に添加し、それぞれ、最終濃度を2nM及び200nMにする。その後、組換えヒトCSF-1R(7.5μL、aa 538-919、バキュロウイルス発現系で発現させたもの)を行A~P、列1~22に添加し、5nMの最終酵素濃度を得る。アッセイ緩衝液(7.5μL)を列23及び24に添加する。アッセイプレートを短時間振盪し、室温で1時間インキュベートし、ユーロピウムベースのLanthaScreen(商標)アッセイ(励起340nm、発光665nm、発光615nm、遅延時間100μs)に適切なフィルター及び機器設定を使用してプレートリーダーで読み取る。各ウェルの発光比(665/615)を計算し、相対活性を列1及び2(100%活性)並びに列23及び24(0%活性)に基づいて決定する。10点応答曲線をプロットし、4パラメータロジスティック方程式に当てはめて、IC50値を得る。実施例1は、80.47nM+15.53(n=6)のIC50を示す。このデータは、実施例1がキナーゼ結合アッセイにおいて組換え切断型CSF-1Rに対して活性であることを示す。
【0087】
DiscoverX(登録商標)PathHunter Receptor Tyrosine Kinase(RTK)細胞ベースの機能アッセイ
インビトロPDGFRβ(受入NM_002609、品番93-0493C3)及びc-Kit(受入NM_000222、品番93-0853C3)細胞アッセイの場合、試験化合物をDMSOで調製して、10mMストック溶液を作製する。ストック溶液をDMSOで2倍に段階希釈して、最終化合物濃度が20.0μM~0.019nMの範囲である20点曲線を得る。
【0088】
DiscoverX(登録商標)PathHunter Receptor Tyrosine Kinase(RTK)細胞ベースの機能アッセイを、ヒトPDGFRβ U2OS細胞及びヒトc-Kit U2OS細胞を用いたEnzyme Fragment Complementation技術を使用して化合物のプロファイリングするために利用する。細胞を、500μg/mLのG418及び250μg/mLのハイグロマイシンを含むAssayComplete(商標)Cell Culture Kit-103(DiscoverX(登録商標)、92-3103G)培地で、細胞継代5から細胞継代30まで連続して培養する。培地(DiscoverX(登録商標)、93-0563R16B)中のPDGFRβ又はc-Kit細胞(27μL)を、1.5×10細胞/ウェルで、Corning384ポリ-d-リジンコーティング白色プレートの全てのウェルに播種する。その後、細胞プレートを37℃、5.0%COで一晩インキュベートする。その後、化合物段階希釈物を行A~P、列3~22に添加する。DMSO及び阻害剤対照を、それぞれ、行A~P、列1~2及び23~24に添加する。化合物又は対照を含む細胞プレートを37℃、5.0%COで1時間インキュベートする。インキュベートした後、EC80用量の3nM組換えヒトPDGF-BB(カタログ番号100-14B)又は10nM組換えヒト幹細胞因子(DiscoverX(登録商標)、番号300-07)アゴニストを対応するPDGFRβ又はc-Kit細胞プレートにスタンプし、23℃、5.0%COで3時間インキュベートする。その後、化学発光試薬(DiscoverX(登録商標)、番号93-0001XL)を各細胞プレートに添加し、室温で1時間インキュベートする。1時間後、細胞プレートを化学発光可能なプレートリーダーで読み取る。20点曲線をプロットし、4パラメータロジスティック方程式に当てはめて、阻害剤(0%活性)及びDMSO(100%活性)対照ウェルに対する各ウェルの活性に基づくIC50値を得る。実施例1は、それぞれ、PDGFRβ及びc-Kitに対して、20,000nM(n=4)及び5,615nM+881(n=4)のIC50を示す。このデータは、実施例1がhCSF-1Rと比較してPDGFRβ又はc-Kitに関して薬理学的に関連する活性を有しないことを示す。
【0089】
DiscoverX(登録商標)KINOMEscan(商標)インビボキナーゼ競合結合アッセイ
KINOMEscan(商標)スクリーニングプラットフォームは、新規かつ専売の活性部位特異的競合結合アッセイを、試験化合物と450を超えるヒトキナーゼ及び疾患関連変異体バリアントとの間の相互作用を定量的に測定するために用いる。KINOMEscan(商標)アッセイはATPを必要とせず、それ故に、真の熱力学的相互作用親和性を報告する。キナーゼ活性部位に結合して固定化リガンドへのキナーゼの結合を直接(立体的に)又は間接的に(アロステリックに)阻害する化合物は、固体支持体に捕捉されるキナーゼの量を減らすであろう。しかしながら、キナーゼに結合しない化合物は、固体支持体に捕捉されるキナーゼの量に影響を及ぼさない。化合物活性(結合%)を、会合したDNA標識を検出するqPCR法を使用して対照試料と比較して試験試料に捕捉されたキナーゼの量を測定することによって監視する。結合活性を阻害%に変換し、IC50値をCSF-1R倍率選択性評価のために決定する。
【0090】
468キナーゼパネルへの結合を監視するためのアッセイをDiscoverX(登録商標)Corporation(Fremont,CA)で行う。試験化合物を100%DMSO中10mMストックとして提供し、20nM、2nM、及び0.2nMの最終濃度で評価する。キナーゼをqPCR検出のためにDNAでタグ付けする。ストレプトアビジンコーティング磁気ビーズをビオチン化低分子リガンドで室温で30分間処理して、キナーゼアッセイ用のアフィニティー樹脂を得る。リガンドビーズを過剰量のビオチンでブロックし、ブロッキング緩衝液(Pierce SeaBlock、1%BSA、0.05%Tween20、及び1mM DTT)で洗浄して結合していないリガンドを除去し、非特異的結合を減少させる。結合反応物を、1×結合緩衝液(20%Pierce SeaBlock、0.17×PBS、0.05%Tween20、及び6mM DTT)中で、キナーゼ、リガンド結合アフィニティービーズ、及び試験化合物を組み合わせることによって構築する。試験化合物を100%DMSO中40倍ストックとして調製し、アッセイに直接希釈する。全ての反応を、0.02mLの最終体積でポリプロピレン384ウェルプレートで行う。アッセイプレートを振盪しながら室温で1時間インキュベートし、アフィニティービーズを洗浄緩衝液(1×PBS及び0.05%Tween20)で洗浄する。その後、ビーズを溶出緩衝液(1×PBS、0.05%Tween20、及び0.5μM非ビオチン化親和性リガンド)中に再懸濁し、振盪しながら室温で30分間インキュベートする。溶出液中のキナーゼ濃度をqPCRによって測定する。一次スクリーニング結合相互作用の結果を「対照に対する%」として報告し、ここで、数値が小さいほど、マトリックス内のヒットが強いことを示す。
【0091】
対照に対するパーセント(対照に対する%)の計算:
【数1】
試験化合物=Eli Lilly and Companyが提出した化合物
陰性対照=DMSO(100%対照)
陽性対照=対照化合物(0%対照)
【0092】
続いて、阻害パーセント値及び3点濃度応答データを決定し、NGRソフトウェアで分析し、非標準IC50値を結果として得られた曲線当てはめから計算する。最大外挿範囲の3 log単位を使用して、NSIC50が選択した範囲でマスクされないようにする。また、有効ポイントの最小数は3である。
【0093】
フィットモデル:ヒルフィット
4パラメータロジスティックモデル又はシグモイド用量反応モデル。
【0094】
fit=(A+((B-A)/(1+((C/x)^D))))
inv=(C/((((B-A)/(y-A))-1)^(1/D)))
res=(y-fit)
式中、Aがゼロに固定した下限値であり、
Bが100に固定した上限値であり、
Cが効力であり、
Dが1に固定したヒル値である。
【0095】
IC50値から、他のキナーゼとの関係でCSF-1Rに対する化合物倍率選択性を決定する。このデータは、実施例1が2μMの化合物濃度でパネル中の468個のタンパク質キナーゼに対して優れた選択性を有し、3個のキナーゼのみが35%未満の制御活性(又は65%超の阻害)を示したことを示す(CSF1R 99%、CSF1R自己阻害98.9%、KIT 99.4%、KIT V559D 99.5%、KIT L576P 96.4%、KIT V559D V654A 84%、及びPDGFRB 90.8%阻害)。このデータは、実施例1が、hKIT(62倍の選択性)、hPDGFRβ(258倍の選択性)、及びhTRKB(700倍の選択性)を除いて、パネル中の全てのキナーゼとの関係でCSF-1Rに対して1000倍超の選択性を有することも示す。加えて、hKIT変異体V559D、V559D、V654A、及びL576Pは、CSF-1Rに対して59~500倍の選択性を示した。
【0096】
pCSF-1R細胞イメージングアッセイ
ヒトCSF-1R過剰発現NIH-3T3細胞(内部で生成された細胞株、クローンH2S-25-20)を、10%FBSを補充したDMEM培地(50mL)を含むT225組織培養フラスコで増殖させる。無血清DMEM培地を使用して、細胞を384ウェルのポリ-d-リジンコーティング黒色プレートに5,000細胞/ウェルでプレーティングする。細胞ストック溶液は1.67x10細胞/mLであり、30μlのプレーティング体積を使用する。プレートを室温で0.5時間、その後、37℃、5%COで一晩インキュベートする。細胞を、0.1%DMSOを含む無血清DMEM中に溶解させた化合物(6μlの6×段階希釈ストック溶液)で処理し、37℃で2時間インキュベートする。組換えヒトM-CSF(4μlの200ng/mLストック溶液、T7 RNAポリメラーゼ-IPTG誘導系を使用してE.coliで発現させたもの)を無血清DMEM培地に添加する。M-CSF刺激剤を添加した直後に、プレートを1,000×gで1分間遠心分離する。プレートを37℃で20分間インキュベートする。細胞を新鮮な16%パラホルムアルデヒド(12μl)で固定し、プレートを室温で30分間インキュベートする。パラホルムアルデヒドを除去し、PBS(30μl)を添加する。PBSを除去し、0.1%トリトン-100を補充したPBS(30μl)を添加する。プレートを室温で20分間インキュベートする。プレートをPBS(2×50μl/ウェル)で洗浄する。1%BSAを補充したPBS(30μl/ウェル)で1:9,000に希釈した一次抗体ウサギ抗pCSF-1R(6.4mg/mL、Invitrogen、カタログ番号MA5-15151、Phospho-CSF1R(Tyr723)モノクローナル抗体(F.540.2))を添加し、プレートを室温で2時間インキュベートする。プレートをPBS(2×50μl/ウェル)で洗浄する。PBS(30μl/ウェル)で1:1,000に希釈した二次抗体抗ウサギAlexa488(Invitrogen、番号A11034)を添加する。プレートをPBS(2×50μl/ウェル)で洗浄する。RNase(50μg/ml)のPBS溶液と混合した核染色剤ヨウ化プロピジウム(2μg/ml)を添加し(30μl/ウェル)、プレートを黒色のテープで密封して、Acumen機器でpCSF-1Rをイメージングする。10点化合物曲線をプロットし、4パラメータロジスティック方程式に当てはめて、参照CSF-1R阻害剤(PLX3397、Plexicon、0%活性)及びDMSO(100%活性)対照ウェルに対する各ウェルの活性に基づくIC50値を得る。実施例1は、52.31nM+18.14(n=4)のIC50を示す。このデータは、実施例1が細胞ベースのCSF-1Rリン酸化イメージングアッセイにおいて内因性全長CSF-1Rに対して活性であることを示す。