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特許7407326モバイル通信システムのための名前解決方法およびDNSサーバ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】モバイル通信システムのための名前解決方法およびDNSサーバ
(51)【国際特許分類】
   H04L 61/4511 20220101AFI20231221BHJP
   H04W 60/00 20090101ALI20231221BHJP
   H04W 88/14 20090101ALI20231221BHJP
【FI】
H04L61/4511
H04W60/00
H04W88/14
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023120428
(22)【出願日】2023-07-25
【審査請求日】2023-07-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397036309
【氏名又は名称】株式会社インターネットイニシアティブ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【弁理士】
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】柿島 純
【審査官】羽岡 さやか
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2022/0345442(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2022/0174032(US,A1)
【文献】特表2023-519995(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113382031(CN,A)
【文献】特表2023-515959(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0280822(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第114598741(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 61/4511
H04W 88/14
H04W 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイル通信システムにおいてユーザ端末が通信するための名前解決方法であって、
前記モバイル通信システムのコアネットワークは、各々が固有の通信エリアを提供するように構成された複数のサブネットワークを備え、前記名前解決方法は、
前記ユーザ端末が、前記複数のサブネットワークのうち当該ユーザ端末の在圏エリアに対応するサブネットワークにおける1または複数のネットワーク装置の識別情報を取得するステップと、
前記ユーザ端末が、DNSサーバに対して、問い合わせ対象のドメイン名と、前記1または複数のネットワーク装置の識別情報とを含む問い合わせを送信するステップであって、前記問い合わせ対象のドメイン名に対応するサーバ装置が複数存在する、ステップと、
前記DNSサーバが、前記問い合わせ対象のドメイン名に対応する前記複数のサーバ装置のIPアドレスのうち、前記問い合わせに含まれる前記1または複数のネットワーク装置の識別情報と対応付けられたIPアドレスを特定するステップと、
前記DNSサーバが、前記特定されたIPアドレスを前記問い合わせに対する回答として前記ユーザ端末へ送信するステップと、
を含み、
前記DNSサーバは、前記複数のサブネットワークのうちの1つのサブネットワークにおける1または複数のネットワーク装置の識別情報を入力とし、当該1または複数のネットワーク装置の識別情報に対応するIPアドレスを出力するように構成された、事前に学習済みの機械学習モデルを備え、
前記DNSサーバは、前記特定するステップにおいて、前記機械学習モデルを用いて、前記問い合わせに含まれる前記1または複数のネットワーク装置の前記識別情報と対応付けられたIPアドレスを特定する、
方法。
【請求項2】
前記特定するステップにおいて特定されるIPアドレスは、前記ユーザ端末の前記在圏エリアに物理的に近い場所に存在するサーバ装置のIPアドレスである、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記サブネットワークは、前記ユーザ端末と前記コアネットワークの外部ネットワークとの間でユーザデータを中継するゲートウェイ装置を含み、
前記1または複数のネットワーク装置の識別情報は、前記ゲートウェイ装置の識別情報を少なくとも含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記サブネットワークは、前記ユーザ端末に関連付けられたユーザに関する情報を保持するユーザ情報管理装置を備え、
前記1または複数のネットワーク装置の識別情報は、前記ユーザ情報管理装置の識別情報を少なくとも含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記コアネットワークは、前記モバイル通信システムにおける前記ユーザ端末の位置登録を制御するための加入者データベース管理装置を備え、
前記ユーザ端末が当該ユーザ端末の在圏エリアに対応するサブネットワークにおける前記1または複数のネットワーク装置の前記識別情報を取得する前記ステップは、
前記ユーザ端末が、前記加入者データベース管理装置に対して位置登録要求信号を送信するステップと、
前記加入者データベース管理装置が、前記ユーザ端末の在圏エリアに対応するサブネットワークにおける前記ゲートウェイ装置を指定することによって、前記ユーザ端末のためのセッションを確立するステップと、
前記加入者データベース管理装置が、前記指定された前記ゲートウェイ装置についての前記識別情報を含む位置登録完了通知を前記ユーザ端末へ送信するステップと、
を含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記コアネットワークは、前記モバイル通信システムにおける前記ユーザ端末の位置登録を制御するための加入者データベース管理装置を備え、
前記ユーザ端末が当該ユーザ端末の在圏エリアに対応するサブネットワークにおける前記1または複数のネットワーク装置の前記識別情報を取得する前記ステップは、
前記ユーザ端末が、前記加入者データベース管理装置に対して位置登録要求信号を送信するステップと、
前記加入者データベース管理装置が、前記ユーザ端末の在圏エリアに対応するサブネットワークにおける前記ユーザ情報管理装置を指定することによって、前記ユーザ端末のためのセッションを確立するステップと、
前記加入者データベース管理装置が、前記指定された前記ユーザ情報管理装置についての前記識別情報を含む位置登録完了通知を前記ユーザ端末へ送信するステップと、
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
モバイル通信システムとともに使用されるDNSサーバであって、
前記モバイル通信システムのコアネットワークは、各々が固有の通信エリアを提供するように構成された複数のサブネットワークを備え、前記DNSサーバは、
ーザ端末から、問い合わせ対象のドメイン名と、前記複数のサブネットワークのうち当該ユーザ端末の在圏エリアに対応するサブネットワークにおける1または複数のネットワーク装置の識別情報とを含む問い合わせであって、前記問い合わせ対象のドメイン名に対応するサーバ装置が複数存在する、問い合わせを受信し、
前記問い合わせ対象のドメイン名に対応する前記複数のサーバ装置のIPアドレスのうち、前記問い合わせに含まれる前記1または複数のネットワーク装置の識別情報と対応付けられたIPアドレスを特定し、
前記特定されたIPアドレスを前記問い合わせに対する回答として前記ユーザ端末へ送信する、
ように構成され
前記DNSサーバは、前記複数のサブネットワークのうちの1つのサブネットワークにおける1または複数のネットワーク装置の識別情報を入力とし、当該1または複数のネットワーク装置の識別情報に対応するIPアドレスを出力するように構成された、事前に学習済みの機械学習モデルを備え、
前記DNSサーバは、前記機械学習モデルを用いて、前記問い合わせに含まれる前記1または複数のネットワーク装置の前記識別情報と対応付けられたIPアドレスを特定する、
DNSサーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モバイル通信システムのための名前解決方法およびDNSサーバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、Webサイト運営者のサーバ群を常時監視し、メインサーバが障害等によりダウンした場合に、稼働中の予備サーバのIPアドレスをWebサイトの訪問者に返答する、DNS(Domain Name System)による負荷分散システムが知られている(例えば非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「IIJ DNSトラフィックマネージメントサービス」、[online]、株式会社インターネットイニシアティブ、[令和5年7月20日検索]、インターネット<https://www.iij.ad.jp/biz/dns-pfm/traffic.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1に示されるような従来の負荷分散システムでは、障害等が発生していないサーバにアクセス先を振り向けることは可能であるが、アクセス元(ユーザ端末等)からの通信遅延時間を短縮することができるサーバのIPアドレスを自動的に選択し提供することは、従来実現されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、モバイル通信システムにおいてユーザ端末が通信するための名前解決方法であって、前記モバイル通信システムのコアネットワークは、各々が固有の通信エリアを提供するように構成された複数のサブネットワークを備え、前記名前解決方法は、前記ユーザ端末が、前記複数のサブネットワークのうち当該ユーザ端末の在圏エリアに対応するサブネットワークにおける1または複数のネットワーク装置の識別情報を取得するステップと、前記ユーザ端末が、DNSサーバに対して、問い合わせ対象のドメイン名と、前記1または複数のネットワーク装置の識別情報とを含む問い合わせを送信するステップであって、前記問い合わせ対象のドメイン名に対応するサーバ装置が複数存在する、ステップと、前記DNSサーバが、前記問い合わせ対象のドメイン名に対応する前記複数のサーバ装置のIPアドレスのうち、前記問い合わせに含まれる前記1または複数のネットワーク装置の識別情報と対応付けられたIPアドレスを特定するステップと、前記DNSサーバが、前記特定されたIPアドレスを前記問い合わせに対する回答として前記ユーザ端末へ送信するステップと、を含む、方法が提供される。
【0006】
また、本発明の一態様によれば、前記DNSサーバは、前記複数のサブネットワークのうちの1つのサブネットワークにおける1または複数のネットワーク装置の識別情報を入力とし、当該1または複数のネットワーク装置の識別情報に対応するIPアドレスを出力するように構成された、事前に学習済みの機械学習モデルを備え、前記DNSサーバは、前記特定するステップにおいて、前記機械学習モデルを用いて、前記問い合わせに含まれる前記1または複数のネットワーク装置の前記識別情報と対応付けられたIPアドレスを特定するのであってよい。
【0007】
また、本発明の一態様によれば、前記特定するステップにおいて特定されるIPアドレスは、前記ユーザ端末の前記在圏エリアに物理的に近い場所に存在するサーバ装置のIPアドレスであるのであってよい。
【0008】
また、本発明の一態様によれば、前記サブネットワークは、前記ユーザ端末と前記コアネットワークの外部ネットワークとの間でユーザデータを中継するゲートウェイ装置を含み、前記1または複数のネットワーク装置の識別情報は、前記ゲートウェイ装置の識別情報を少なくとも含むのであってよい。
【0009】
また、本発明の一態様によれば、前記サブネットワークは、前記ユーザ端末に関連付けられたユーザに関する情報を保持するユーザ情報管理装置を備え、前記1または複数のネットワーク装置の識別情報は、前記ユーザ情報管理装置の識別情報を少なくとも含むのであってよい。
【0010】
また、本発明の一態様によれば、前記コアネットワークは、前記モバイル通信システムにおける前記ユーザ端末の位置登録を制御するための加入者データベース管理装置を備え、前記ユーザ端末が当該ユーザ端末の在圏エリアに対応するサブネットワークにおける前記1または複数のネットワーク装置の前記識別情報を取得する前記ステップは、前記ユーザ端末が、前記加入者データベース管理装置に対して位置登録要求信号を送信するステップと、前記加入者データベース管理装置が、前記ユーザ端末の在圏エリアに対応するサブネットワークにおける前記ゲートウェイ装置または前記ユーザ情報管理装置の少なくとも一方を指定することによって、前記ユーザ端末のためのセッションを確立するステップと、前記加入者データベース管理装置が、前記指定された前記ゲートウェイ装置または前記ユーザ情報管理装置の少なくとも一方についての前記識別情報を含む位置登録完了通知を前記ユーザ端末へ送信するステップと、を含むのであってよい。
【0011】
また、本発明の一態様によれば、モバイル通信システムとともに使用されるDNSサーバであって、前記モバイル通信システムのコアネットワークは、各々が固有の通信エリアを提供するように構成された複数のサブネットワークを備え、前記DNSサーバは、前記ユーザ端末から、問い合わせ対象のドメイン名と、前記複数のサブネットワークのうち当該ユーザ端末の在圏エリアに対応するサブネットワークにおける1または複数のネットワーク装置の識別情報とを含む問い合わせであって、前記問い合わせ対象のドメイン名に対応するサーバ装置が複数存在する、問い合わせを受信し、前記問い合わせ対象のドメイン名に対応する前記複数のサーバ装置のIPアドレスのうち、前記問い合わせに含まれる前記1または複数のネットワーク装置の識別情報と対応付けられたIPアドレスを特定し、前記特定されたIPアドレスを前記問い合わせに対する回答として前記ユーザ端末へ送信する、ように構成される、DNSサーバが提供される。
【0012】
また、本発明の一態様によれば、モバイル通信システムにおいて使用されるユーザ端末であって、前記モバイル通信システムのコアネットワークは、各々が固有の通信エリアを提供するように構成された複数のサブネットワークを備え、前記ユーザ端末は、前記複数のサブネットワークのうち当該ユーザ端末の在圏エリアに対応するサブネットワークにおける1または複数のネットワーク装置の識別情報を取得し、DNSサーバに対して、問い合わせ対象のドメイン名と、前記1または複数のネットワーク装置の識別情報とを含む問い合わせを送信する、ように構成される、ユーザ端末が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アクセス元からの通信遅延時間を最小化することが可能なサーバのIPアドレスを自動的に選択し提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るネットワークシステムの構成の一例を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るDNSサーバに備えられる機械学習モデルの一実装例を示す。
図3】本発明の一実施形態に係るネットワークシステムにおいてDNSサーバによって名前解決が行われる処理の流れを示す例示的なシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るネットワークシステム10の構成の一例を示す図である。ネットワークシステム10は、ユーザ端末100と、ユーザ端末100に対してモバイル通信サービスを提供するように構成されたモバイル通信システム200と、ユーザ端末100がインターネット等のネットワーク500を介して他のコンピュータまたはデバイスと通信する際に必要な名前解決(すなわち通信相手のドメイン名からIPアドレスへの変換)を行うためのDNSサーバ400とを含む。
【0016】
本開示において、ユーザ端末100は、モバイル通信システム200と無線通信する機能を備えたモバイル機器であり、例えば、スマートフォン、携帯電話端末、車載用無線通信機器等の形態で提供し得る。
【0017】
モバイル通信システム200は、コアネットワーク300と、複数の基地局を含む無線アクセスネットワーク(図1において基地局および無線アクセスネットワークは不図示)とから構成される。コアネットワーク300は、ユーザ端末100に外部ネットワーク500へのアクセスを提供するための複数のノード(ネットワーク装置)を備える。具体的に、図1は第5世代(5G)通信規格に準拠したモバイル通信システム200を例示しており、コアネットワーク300は、AMF(Access and Mobility Management Function)310、UDM(Unified Data Management)320、UPF(User Plane Function)330、SMF(Session Management Function)340、PCF(Policy Control Function)(図1において不図示)、およびUDR(Unified Data Repository)350の各ノードを備える。なお、モバイル通信システム200は第4世代(4G)通信規格に準拠するものであってもよい。
【0018】
AMF310は、モビリティ制御機能を提供し、位置登録、ページング、およびハンドオーバ等の移動制御を行うノードである。UDM320は、ユーザの契約情報や認証情報を管理するノード(ユーザ情報管理装置)である。UDR350は、ユーザ端末100の識別番号や在圏情報を保持した加入者データベースを格納するノード(加入者データベース管理装置)である。SMF340は、セッション管理機能を提供し、セッションの保守、確立、変更および解放を行うノードである。PCFは、データ転送速度や遅延時間などの品質に関するポリシー制御機能を提供するノードである。UPF330は、ユーザ端末100と外部ネットワーク500との間でユーザデータを通信するノード(ゲートウェイ装置)である。これら各ノードは、5G通信規格に準拠するものであり、その詳細についての説明はここでは省略する。
【0019】
図1に示されるように、複数の細分化されたサブネットワーク301がコアネットワーク300内に形成される。図1の例では、コアネットワーク300は、第1サブネットワーク301(#1)、第2サブネットワーク301(#2)、…、第Nサブネットワーク301(#N)のN個のサブネットワークを有している。各サブネットワーク301は、コアネットワーク300の一部分を構成するネットワークであり、それぞれ、少なくとも1つのAMF310、少なくとも1つのUDM320、および少なくとも1つのUPF330を含む。
【0020】
各サブネットワーク301の各AMF310および各UPF330は、不図示の1または複数の基地局に接続されている。各サブネットワーク301は、それら1または複数の基地局によって提供される通信エリアに対応する固有の通信エリアを有する。例えば、図1の例において、第1サブネットワーク301(#1)は、地域Aのための通信エリアをカバーし、第2サブネットワーク301(#2)は、地域Bのための通信エリアをカバーし、第Nサブネットワーク301(#N)は、地域Xのための通信エリアをカバーする。ユーザ端末100は、自分が在圏する通信エリアの基地局を通じて、複数のサブネットワークのうちのいずれか1つに接続することができる。例えば、ユーザ端末100は、地域Aに存在している場合は第1サブネットワーク301(#1)に接続し、地域Bに存在している場合は第2サブネットワーク301(#2)に接続する。
【0021】
本実施形態において、ネットワーク(例えばインターネット)500には複数のWebサーバ600が接続される。例えば、図1の例において、第1サブネットワーク301(#1)と物理的に近い場所に第1Webサーバ600(#1)が配置され、第2サブネットワーク301(#2)と物理的に近い場所に第2Webサーバ600(#2)が配置され、…、第Nサブネットワーク301(#N)と物理的に近い場所に第NWebサーバ600(#N)が配置される。これら各Webサーバ600(#1)、600(#2)、…、600(#N)は、同一のコンテンツまたはWebサービスを提供するように構成されている。各Webサーバ600(#1)、600(#2)、…、600(#N)には、それぞれ異なるIPアドレスが割り当てられているが、共通の(同一の)ドメイン名が設定されている。つまり、ユーザ端末100は、ある1つのドメイン名を用いて、これらWebサーバ600(#1)、600(#2)、…、600(#N)のうちのいずれか1つにアクセスする。
【0022】
ここで、Webサーバ600がサブネットワーク301と「物理的に近い」とは、例えば、当該サブネットワーク301のUPF330(ゲートウェイ装置)とWebサーバ600との間のラウンドトリップタイム(RTT)が短いことを意味する。例えば、図1における複数のWebサーバ600(#1)、600(#2)、…、600(#N)のうち、第1サブネットワーク301(#1)のUPF330との間のRTTが一番短いのは第1Webサーバ600(#1)であり、同様に第2サブネットワーク301(#2)のUPF330との間のRTTが一番短いのは第2Webサーバ600(#2)である。したがって、例えばユーザ端末100が地域Aに存在している場合(上述したようにこの場合にユーザ端末100は第1サブネットワーク301(#1)に接続している)は、ユーザ端末100が同一コンテンツまたは同一Webサービスを提供する複数のWebサーバ600のうち第1Webサーバ600(#1)にアクセスするように制御することで、通信遅延時間の最小化を図ることができる。
【0023】
DNSサーバ400は、IPアドレスの問い合わせに対して、当該問い合わせで指定されたドメイン名に対応するIPアドレスを回答するように構成される。本実施形態において、DNSサーバ400はさらに、同一コンテンツまたは同一Webサービスを提供する複数のWebサーバ600に関しては、それら複数のWebサーバ600のうちユーザ端末100が接続しているコアネットワーク300のサブネットワーク301に物理的に一番近いWebサーバ600のIPアドレスを特定して、それを問い合わせに対する回答として提供するように構成される。
【0024】
ユーザ端末100が接続しているサブネットワーク301に物理的に一番近いWebサーバ600のIPアドレスを特定するために、DNSサーバ400は、ユーザ端末100が接続しているサブネットワーク301の1または複数のネットワーク装置の識別情報を利用する。例えば、ユーザ端末100は、Webサーバ600(のいずれか)にアクセスするためにIPアドレスの問い合わせをDNSサーバ400へ送る際、Webサーバ600のドメイン名に加えて、ユーザ端末100が接続しているサブネットワーク301のUPF330(ゲートウェイ装置)とUDM320(ユーザ情報管理装置)の各識別情報を指定する。
【0025】
例えば、ユーザ端末100が地域Aに存在して第1サブネットワーク301(#1)に接続している場合、ユーザ端末100は、アクセスしようとするWebサーバ600のドメイン名と、第1サブネットワーク301(#1)のUPF330の識別情報UPF#1と、第1サブネットワーク301(#1)のUDM320の識別情報UDM#1とを含む問い合わせをDNSサーバ400へ送信する。また、ユーザ端末100が地域Aから地域Bへ移動して第2サブネットワーク301(#2)に接続し、その移動後もWebサーバ600に対するアクセスを続ける場合、ユーザ端末100は、Webサーバ600のドメイン名(ユーザ端末100が地域Aに存在していた時に指定したものと同じドメイン名)と、第2サブネットワーク301(#2)のUPF330の識別情報UPF#2と、第2サブネットワーク301(#2)のUDM320の識別情報UDM#2とを含む問い合わせをDNSサーバ400へ送信する。なお、問い合わせには、UPF330の識別情報とUDM320の識別情報の両方でなく、そのいずれか一方のみを含めるのであってもよい。
【0026】
DNSサーバ400は、IPアドレスの問い合わせに含まれているネットワーク装置の識別情報(例えばUPF330の識別情報および/またはUDM320の識別情報)に基づいて、その問い合わせで指定されたドメイン名が設定されている複数のWebサーバ600のうち、ユーザ端末100が接続しているサブネットワーク301に物理的に一番近いWebサーバ600のIPアドレスを特定する。例えば、DNSサーバ400は、事前に学習済みの機械学習モデルを用いることでこの処理を実現するように構成することができる。
【0027】
図2は、DNSサーバ400に備えられる機械学習モデル410の一実装例を示す。機械学習モデル410は、複数の入力ノード411を有する入力層412と、各々が複数のノード413を有する1または複数の層からなる中間層414と、複数の出力ノード415を有する出力層416とを備えたニューラルネットワークによって構成することができる。各ノードは、重み付けパラメータによって特徴付けられる強度で、当該ノードが属する層に隣接する層の複数のノードと接続されている。入力層412には、例えば、IPアドレスの問い合わせに含まれるUPF330の識別情報とUDM320の識別情報が入力される。また出力層416からは、入力層412に入力された識別情報に対応するIPアドレスが出力される。
【0028】
このように構成されたニューラルネットワーク410を訓練するために、コアネットワーク300における各サブネットワーク301のUPF330およびUDM320の識別情報と、当該サブネットワーク301に物理的に一番近いWebサーバ600のIPアドレスとの組を1セットとする教師データが、あらかじめ用意される。例えば、教師データは、第1サブネットワーク301(#1)におけるUPF330の識別情報UPF#1およびUDM320の識別情報UDM#1と、第1サブネットワーク301(#1)に物理的に一番近い第1Webサーバ600(#1)のIPアドレスIPA#1とからなる第1組のデータ、第2サブネットワーク301(#2)におけるUPF330の識別情報UPF#2およびUDM320の識別情報UDM#2と、第2サブネットワーク301(#2)に物理的に一番近い第2Webサーバ600(#2)のIPアドレスIPA#2とからなる第2組のデータ、…、第Nサブネットワーク301(#N)におけるUPF330の識別情報UPF#NおよびUDM320の識別情報UDM#Nと、第Nサブネットワーク301(#N)に物理的に一番近い第NWebサーバ600(#N)のIPアドレスIPA#Nとからなる第N組のデータを含む。出力層416がこの教師データと一致したIPアドレスを出力するように、ニューラルネットワーク410の各ノード間の重み付けパラメータが調整される。これにより、ニューラルネットワーク(機械学習モデル)410が事前に訓練(学習)される。
【0029】
なお、図2に示したニューラルネットワークの構成は一例であって、これに限定されるものではない。例えば、ニューラルネットワークの入力層にはUPF330の識別情報とUDM320の識別情報のいずれか一方が入力されるのであってよい。また、入力層に入力されるUPF330の識別情報とUDM320の識別情報は、同じサブネットワーク301に属するUPF330とUDM320のものであることから相関性が高いので、ニューラルネットワークとして、リカレントニューラルネットワークを使用することが好適であり得る。さらに、DNSサーバ400は、機械学習モデル410とは異なる適宜の方法、例えば、サブネットワーク301のネットワーク装置(UPF330および/またはUDM320)の識別情報と、そのサブネットワーク301に物理的に一番近いWebサーバ600のIPアドレスとの対応関係を記した管理テーブルを用いて、同様の機能を実現するのであってもよい。
【0030】
図3は、本発明の一実施形態に係るネットワークシステム10においてDNSサーバ400によって名前解決が行われる処理の流れを示す例示的なシーケンス図である。ステップ1002において、ユーザ端末100は、ユーザ端末100の加入者識別情報(IMSI:International Mobile Subscriber Identity)を含む位置登録要求信号を、自身が在圏する通信エリアの基地局へ送信する。位置登録要求信号は、その基地局(位置登録要求信号を受け取った基地局)に対応するサブネットワーク301(例えば第1サブネットワーク301(#1))のAMF310、UDM320を介して、UDR350へと転送される。なお位置登録要求信号には、それを転送するAMF310の識別情報が含まれてもよい。
【0031】
次にステップ1004において、UDR350は、ユーザ端末100の通信を受け持つUPF330を指定して、セッション確立指示を当該UPF330へ送信する。続くステップ1006において、UPF330は、セッション確立指示を確認して、セッション確立完了通知をUDR350へ返信する。UPF330からセッション確立完了通知を受け取ると、UDR350は、ステップ1008において、上記ステップ1004のセッション確立指示で指定したUPF330の識別情報(例えばUPF#1)と当該UPF330に対応するUDM320の識別情報(例えばUDM#1)とを含む位置登録完了通知を、ユーザ端末100へ送信する。これにより、ユーザ端末100とユーザ端末100が属する通信エリアに対応するサブネットワーク301のUPF330との間にデータ通信路(U-plane)が形成される(ステップ1010)。
【0032】
一方ユーザ端末100は、ステップ1008でUDR350から送られた位置登録完了通知を受信することにより、自分が属する通信エリアに対応するサブネットワーク301のUPF330とUDM320の識別情報(例えばUPF#1およびUDM#1)を取得することができる。ステップ1012において、ユーザ端末100は、アクセス希望先のWebサーバ600のIPアドレスを知るために、当該Webサーバ600のドメイン名と、ステップ1008で取得したUPF330およびUDM320の識別情報とを含む問い合わせを、DNSサーバ400へ送信する。
【0033】
続くステップ1014において、DNSサーバ400は、ユーザ端末100からの問い合わせに応答して、その問い合わせで指定されたドメイン名が設定されている複数のWebサーバ600のうち、ユーザ端末100が接続しているサブネットワーク301(例えば第1サブネットワーク301(#1))に物理的に一番近いWebサーバ600のIPアドレス(例えばIPA#1)を特定し、ユーザ端末100に回答する。DNSサーバ400におけるこの処理については前述したとおりである。こうして、ユーザ端末100は、アクセス希望先のWebサーバ600であってユーザ端末100が接続しているサブネットワーク301に物理的に一番近いWebサーバ600のIPアドレスを取得することができ、ステップ1016において、このIPアドレスを用いて目的のWebサーバ600(例えば第1Webサーバ600(#1))にアクセスする。
【0034】
このように、本開示によれば、ユーザ端末100は、自分が接続しているサブネットワーク301に物理的に一番近いWebサーバ600にアクセスすることができ、それにより、通信に要する遅延時間を最小化することができる。例えば、ユーザ端末100が車載無線通信機器でありWebサーバ600によってAI(人工知能)による自動運転支援サービスを提供するようなシステムにおいて、自動運転支援の対象車からの通信遅延時間が最小のWebサーバ600を自動的に選択することができるようになり、サービス品質向上に効果的である。なお本開示は上記の自動運転支援システムに限定されるものではなく、通信遅延時間の短縮が望まれる任意のシステムに適用可能である。
【0035】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されず、その要旨を逸脱しない範囲内において様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0036】
10 ネットワークシステム
100 ユーザ端末
200 モバイル通信システム
300 コアネットワーク
301 サブネットワーク
310 AMF
320 UDM(ユーザ情報管理装置)
330 UPF(ゲートウェイ装置)
340 SMF
350 UDR(加入者データベース管理装置)
400 DNSサーバ
500 外部ネットワーク
600 Webサーバ
【要約】
【課題】アクセス元からの通信遅延時間を最小化することが可能なサーバのIPアドレスを自動的に選択し提供することができるようにする。
【解決手段】モバイル通信システムのコアネットワークは、複数のサブネットワークを備え、DNSサーバは、ユーザ端末から、問い合わせ対象のドメイン名と、複数のサブネットワークのうち当該ユーザ端末の在圏エリアに対応するサブネットワークにおける1または複数のネットワーク装置の識別情報とを含む問い合わせであって、問い合わせ対象のドメイン名に対応するサーバ装置が複数存在する、問い合わせを受信し、問い合わせ対象のドメイン名に対応する複数のサーバ装置のIPアドレスのうち、問い合わせに含まれる1または複数のネットワーク装置の識別情報と対応付けられたIPアドレスを特定し、特定されたIPアドレスを問い合わせに対する回答としてユーザ端末へ送信する。
【選択図】図3
図1
図2
図3