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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】車両用冷凍サイクルユニット
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20231221BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
B60H1/00 101X
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023508492
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2022034516
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2022/008390
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 崇幸
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 徹三
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕之
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 克弘
(72)【発明者】
【氏名】森下 昌俊
(72)【発明者】
【氏名】野山 英人
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/153672(WO,A1)
【文献】特開2012-011927(JP,A)
【文献】特開2019-219133(JP,A)
【文献】特開2011-219048(JP,A)
【文献】特開2019-104394(JP,A)
【文献】特開2019-043262(JP,A)
【文献】特開2014-201224(JP,A)
【文献】特開2020-040429(JP,A)
【文献】特開2012-225637(JP,A)
【文献】特開2014-000946(JP,A)
【文献】特開2017-019486(JP,A)
【文献】特開平11-301254(JP,A)
【文献】特開2002-096621(JP,A)
【文献】特開2006-321389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次冷媒がそれぞれ流通する車室外熱交換器及び車室内熱交換器の間に介在され車両用冷凍サイクルユニットであって、
前記二次冷媒と熱交換する一次冷媒が順次流通する圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び蒸発器を有する冷凍サイクルと、
前記二次冷媒を前記蒸発器と前記車室外熱交換器との間で循環させる室外流路と、
前記二次冷媒を前記凝縮器と前記車室内熱交換器との間で循環させる室内流路と、
前記室外流路と前記室内流路との流通状態を切替可能にこれらを接続する一対の流路切替え弁と、
前記室外流路に併設され、前記蒸発器を迂回するように設けられた第一バイパス流路と、
前記第一バイパス流路、及び前記蒸発器に流れ込む前記二次冷媒の流量を調節する第一流量調節部と、
を備え、
前記第一流量調節部は、1つの流路から流入した前記二次冷媒を2つの流路に分配するとともに、これら2つの流路の間における前記二次冷媒の流量の比率を変化させることが可能な流路切替え弁であり、
前記一対の流路切替え弁、及び前記第一流量調節部の状態を切替える制御部をさらに備え、
該制御部は、前記室内流路を経て前記車室内熱交換器から流れ出た前記二次冷媒が、前記室外流路を経て前記蒸発器、及び前記第一バイパス流路の少なくとも一方に流れるように前記流路切替え弁の流通状態を切替え、
前記制御部は、車両用冷凍サイクルユニットの起動時に、前記室内流路を経た前記二次冷媒を、前記室外流路を経て前記蒸発器に流れ込むように、前記流路切替え弁、及び前記第一流量調節部の流通状態を切替え、車両用冷凍サイクルユニットの定常運転時に、前記二次冷媒が前記第一バイパス流路に流れ込むように前記第一流量調節部の流通状態を切替える車両用冷凍サイクルユニット。
【請求項2】
前記第一流量調節部は、前記第一バイパス流路に設けられた開閉弁、及び前記室外流路に設けられた第一ポンプである請求項1に記載の車両用冷凍サイクルユニット。
【請求項3】
前記冷凍サイクルにおける前記蒸発器の下流側で、前記一次冷媒の圧力に関連する物理量を計測する計測部をさらに備え、
前記制御部は、前記計測部の計測結果に基づいて、前記第一流量調節部の流通状態を調節する請求項1又は2に記載の車両用冷凍サイクルユニット。
【請求項4】
前記室内流路に併設され、前記凝縮器を迂回するように設けられた第二バイパス流路と、
前記第二バイパス流路、及び前記凝縮器に流れ込む前記二次冷媒の流量を調節する第二流量調節部と、
をさらに備える請求項1に記載の車両用冷凍サイクルユニット。
【請求項5】
前記第二流量調節部は、1つの流路から流入した前記二次冷媒を2つの流路に分配するとともに、これら2つの流路の間における前記二次冷媒の流量の比率を変化させることが可能な流路切替え弁である請求項に記載の車両用冷凍サイクルユニット。
【請求項6】
前記第二流量調節部は、前記第二バイパス流路に設けられた開閉弁、及び前記室内流路に設けられた第二ポンプである請求項に記載の車両用冷凍サイクルユニット。
【請求項7】
前記一対の流路切替え弁、及び前記第二流量調節部の状態を切替える制御部をさらに備え、
該制御部は、車両用冷凍サイクルユニットの起動時に、前記室外流路を経た前記二次冷媒を、前記室内流路を経て前記第二バイパス流路に流れ込むように、前記流路切替え弁、及び前記第二流量調節部の流通状態を切替え、車両用冷凍サイクルユニットの定常運転時に、前記二次冷媒が前記凝縮器に流れ込むように前記第二流量調節部の流通状態を切替える請求項に記載の車両用冷凍サイクルユニット。
【請求項8】
前記室外流路に併設され、前記車室外熱交換器を迂回するように設けられた室外接続流路と、
該室外接続流路の流通状態を切替える第一切替え弁と、
前記第一バイパス流路と前記室外流路との合流点よりも下流側における前記二次冷媒の温度を計測する第一温度計測部と、をさらに有し、
前記制御部は、車両用冷凍サイクルユニットの起動時に、前記第一温度計測部が計測した前記二次冷媒の温度が外気温よりも高い場合に、前記二次冷媒が前記室外接続流路に流れ込むように前記第一切替え弁の流通状態を切替え、前記第一温度計測部が計測した前記二次冷媒の温度が外気温よりも低い場合に、前記二次冷媒が前記車室外熱交換器に流れ込むように前記第一切替え弁の流通状態を切替える請求項1から7のいずれか一項に記載の車両用冷凍サイクルユニット。
【請求項9】
前記室内流路に併設され、前記車室内熱交換器を迂回するように設けられた室内接続流路と、
該室内接続流路の流通状態を切替える第二切替え弁と、
前記冷凍サイクルの前記圧縮機の入口における前記一次冷媒の温度を計測する第二温度計測部と、
をさらに有し、
前記制御部は、車両用冷凍サイクルユニットの起動時に、前記第二温度計測部が計測した前記一次冷媒の温度が予め定められた第一閾値よりも低い場合に、前記二次冷媒が前記室内接続流路に流れ込むように前記第二切替え弁の流通状態を切替え、前記第二温度計測部が計測した前記一次冷媒の温度が前記第一閾値よりも高い場合に、前記二次冷媒が前記車室内熱交換器に流れ込むように前記第二切替え弁の流通状態を切替える請求項1から7のいずれか一項に記載の車両用冷凍サイクルユニット。
【請求項10】
前記車室内熱交換器に併設され、該車室内熱交換器で熱交換した空気を車室内に送るブロワと、
前記室内流路と前記第二バイパス流路との合流点よりも下流側における前記二次冷媒の温度を計測する第三温度計測部と、
をさらに有し、
前記制御部は、車両用冷凍サイクルユニットの起動時に、前記第三温度計測部が計測した前記二次冷媒の温度が予め定められた第二閾値よりも低い場合に、前記ブロワを停止し、前記第三温度計測部が計測した前記二次冷媒の温度が前記第二閾値よりも高い場合に、前記ブロワを駆動する請求項に記載の車両用冷凍サイクルユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用冷凍サイクルユニットに関する。本願は、2022年2月28日に出願されたPCT/JP2022/008390に基づく優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車等のように発動機(エンジン)が搭載されていない車両では、空調装置(暖房)の熱源として、二次冷媒式のヒートポンプシステムが用いられている。二次冷媒式のヒートポンプシステムは、一次冷媒が流通する冷凍サイクルの蒸発器に接続されて、二次冷媒が流通する車室外熱交換器と、冷凍サイクルの凝縮器側に接続されて、二次冷媒が流通する車室内熱交換器と、を主に備えている。室外の空気によって加温された二次冷媒の熱が冷凍サイクルを介して車室内熱交換器に伝達される。これにより、室内の空気を温めることが可能とされている。
【0003】
ところで、上記のヒートポンプシステムでは、外気温が非常に低い条件下では、外気から吸熱しても一次冷媒の圧力が十分に得られない。その結果、冷凍サイクルの圧縮機で十分な冷媒流量を発生させられないという課題があった。そこで、下記特許文献1に係る装置では、車室内熱交換器側(つまり、凝縮器側)を流通する二次冷媒を、冷凍サイクルの蒸発器側に混合して流通させる構成が採られている。これにより、蒸発器を経て圧縮機に向かう一次冷媒の圧力を上げることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6083304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように二次冷媒を単に蒸発器側に混合して流通させるのみでは二次冷媒の温度を精緻にコントロールすることが難しい。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、より精緻に二次冷媒の温度を調節することが可能な車両用冷凍サイクルユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る車両用冷凍サイクルユニットは、二次冷媒がそれぞれ流通する車室外熱交換器及び車室内熱交換器の間に介在され車両用冷凍サイクルユニットであって、前記二次冷媒と熱交換する一次冷媒が順次流通する圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び蒸発器を有する冷凍サイクルと、前記二次冷媒を前記蒸発器と前記車室外熱交換器との間で循環させる室外流路と、前記二次冷媒を前記凝縮器と前記車室内熱交換器との間で循環させる室内流路と、前記室外流路と前記室内流路との流通状態を切替可能にこれらを接続する一対の流路切替え弁と、前記室外流路に併設され、前記蒸発器を迂回するように設けられた第一バイパス流路と、前記第一バイパス流路、及び前記蒸発器に流れ込む前記二次冷媒の流量を調節する第一流量調節部と、を備え、前記第一流量調節部は、1つの流路から流入した前記二次冷媒を2つの流路に分配するとともに、これら2つの流路の間における前記二次冷媒の流量の比率を変化させることが可能な流路切替え弁であり、前記一対の流路切替え弁、及び前記第一流量調節部の状態を切替える制御部をさらに備え、該制御部は、前記室内流路を経て前記車室内熱交換器から流れ出た前記二次冷媒が、前記室外流路を経て前記蒸発器、及び前記第一バイパス流路の少なくとも一方に流れるように前記流路切替え弁の流通状態を切替え、前記制御部は、車両用冷凍サイクルユニットの起動時に、前記室内流路を経た前記二次冷媒を、前記室外流路を経て前記蒸発器に流れ込むように、前記流路切替え弁、及び前記第一流量調節部の流通状態を切替え、車両用冷凍サイクルユニットの定常運転時に、前記二次冷媒が前記第一バイパス流路に流れ込むように前記第一流量調節部の流通状態を切替える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、より精緻に二次冷媒の温度を調節することが可能な車両用冷凍サイクルユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第一実施形態に係る車両用冷凍サイクルユニットの構成を示す回路図である。
図2】本開示の第一実施形態に係る車両用冷凍サイクルユニットの構成を示す回路図であって、ヒートポンプモードでの運転状態を示す図である。
図3】本開示の第一実施形態に係る車両用冷凍サイクルユニットの構成を示す回路図であって、ヒータモードでの運転状態を示す図である。
図4】ヒータモードとヒートポンプモードにおけるモリエル線図を比較して示すグラフである。
図5】本開示の第一実施形態に係る制御部の処理フローを示すフローチャートである。
図6】本開示の第二実施形態に係る車両用冷凍サイクルユニットの構成を示す回路図であって、ヒータモードでの運転状態を示す図である。
図7】本開示の第三実施形態に係る車両用冷凍サイクルユニットの構成を示す回路図であって、ヒータモード起動時の制御の一態様を示す図である。
図8】本開示の第三実施形態に係る車両用冷凍サイクルユニットの構成を示す回路図であって、ヒータモード起動時の制御の他の一態様を示す図である。
図9】本開示の第三実施形態に係る車両用冷凍サイクルユニットの構成を示す回路図であって、ヒータモード起動時の制御のさらなる一態様を示す図である。
図10】本開示の第三実施形態に係る制御部の処理フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第一実施形態>
(車両用冷凍サイクルユニットの構成)
以下、本開示の第一実施形態に係る車両用冷凍サイクルユニット1について、図1から図5を参照して説明する。
【0011】
本実施形態に係る車両用冷凍サイクルユニット1は、例えば電気自動車等のように、暖房時の熱源としての発動機(エンジン)を備えない輸送用車両に搭載される空調用設備である。この車両用冷凍サイクルユニット1は、車両の室外側に配置されている車室外熱交換器10、及び室内側に配置されている車室内熱交換器20の間に介在するように実装される。これら車室外熱交換器10、及び車室内熱交換器20を流通する冷媒(クーラント)を以下では「二次冷媒」と呼び、冷凍サイクル30(後述)を流通する冷媒を「一次冷媒」と呼ぶ。
【0012】
図1に示すように、車両用冷凍サイクルユニット1は、一次冷媒が流通する冷凍サイクル30と、室外側に配置された室外流路40と、室内側に配置された室内流路50と、これら室外流路40、及び室内流路50の相互の流通状態を切替える一対の流路切替え弁60と、室外流路40に併設された第一バイパス流路41と、第一流量調節部42と、室内流路50に併設された第二バイパス流路51と、第二流量調節部52と、室外流路40上に設けられた第一ポンプ43と、室内流路50上に設けられた第二ポンプ53と、室外接続流路44と、第一切替え弁45と、室内接続流路54と、第二切替え弁55と、計測部46と、制御部90と、を備えている。
【0013】
なお、図面上では、車両用冷凍サイクルユニット1が有する各種バルブが黒塗りであれば閉塞状態を示し、白塗りであれば開放状態を示している。また、各種の冷媒の流通する方向は、回路に沿って記された矢印によって表されている。
【0014】
(冷凍サイクルの構成)
冷凍サイクル30は、熱力学サイクルを実現する複数の装置によって構成されている。冷凍サイクル30は、熱媒体としての一次冷媒を二次冷媒と熱交換させるために、この一次冷媒を繰り返し圧縮及び膨張、並びに蒸発及び凝縮させながら複数の装置内を順次に流通させるとともに循環させる冷媒回路である。
【0015】
冷凍サイクル30は、冷凍サイクルライン31と、この冷凍サイクルライン31上に順に配置された圧縮機32、凝縮器33、膨張弁34、及び蒸発器35と、を有している。
【0016】
蒸発器35は、冷凍サイクル30を順次流通する一次冷媒と、冷凍サイクル30の外部から導入される二次冷媒とを熱交換させることで、この一次冷媒を蒸発(気化)させるプレート式熱交換器である。蒸発器35内部における一次冷媒は、二次冷媒から吸熱すると同時に、二次冷媒を冷やす。
【0017】
圧縮機32は、蒸発器35を経由することで吸熱するとともに気化した一次冷媒を圧縮する装置である。圧縮機32に導入された一次冷媒の圧力は、圧縮機32の圧縮動作によって圧縮前よりも高い所定の圧力まで高められる。これによって、一次冷媒の温度は、圧縮前よりも上昇する。
【0018】
凝縮器33は、圧縮機32を経由することで圧縮される前よりも高温高圧となった一次冷媒と、冷凍サイクル30の外部から導入される二次冷媒とを熱交換させることで、この一次冷媒を凝縮(液化)させるプレート式熱交換器である。
凝縮器33内部における一次冷媒は、二次冷媒によって冷やされると同時に、二次冷媒の温度を上昇させる。
【0019】
凝縮器33に導入された気体状態の一次冷媒は、二次冷媒によって冷却されることで気液混合の二相状態を経た後、液体状態に遷移する。
【0020】
膨張弁34は、凝縮器33を経て液体状態となった一次冷媒を受け入れて、この一次冷媒を断熱膨張させる装置である。膨張弁34に導入された一次冷媒の圧力は、膨張弁34の膨張作用によって膨張前よりも低い所定の圧力まで下げられる。これによって、一次冷媒の温度は、膨張前よりも低下する。
【0021】
(室外流路、第一切替え弁、第一ポンプ、室外接続流路の構成)
室外流路40は、冷凍サイクル30中の蒸発器35と、車室外熱交換器10との間を環状に接続する流路である。室外流路40中には二次冷媒が流通している。この室外流路40上には、第一ポンプ43、第一切替え弁45、及び室外接続流路44が設けられている。第一ポンプ43は、室外流路40中を流通する二次冷媒を圧送する。第一切替え弁45は3つの流路の間で流通状態を切替え可能な三方弁である。室外接続流路44は、この第一切替え弁45を起点として車室外熱交換器10を迂回するように延びている。第一切替え弁45は後述する制御部90に電気的に接続されており、当該制御部90から送られた電気信号によって二次冷媒の流通状態が切替えられる。
【0022】
(第一バイパス流路、第一流量調節部の構成)
第一バイパス流路41は、室外流路40に併設されて、蒸発器35を迂回するように延びている。第一バイパス流路41の一端には第一流量調節部42としての流量調整弁70が設けられている。この流量調整弁70は三方弁である。つまり、この流量調整弁70は、1つの流路から流入した二次冷媒を2つの流路に分配するとともに、これら2つの流路の間における二次冷媒の流量の比率を変化させることが可能である。
【0023】
具体的には、第一流量調節部42は、室外流路40を経て蒸発器35に流入する二次冷媒の流量と、第一バイパス流路41に流入する二次冷媒の流量の比率を変化させる。この流量の比率は、流量調整弁70の弁の内部構造が変化することで実現される。流量調整弁70は、制御部90(後述)に電気的に接続されている。制御部90から送られた電気信号に基づいて弁の内部構造がコントロールされる。
【0024】
(室内流路、第二切替え弁、第二ポンプ、室内接続流路の構成)
室内流路50は、冷凍サイクル30中の凝縮器33と、車室内熱交換器20との間を環状に接続する流路である。室内流路50中には二次冷媒が流通している。この室内流路50上には、第二ポンプ53、第二切替え弁55、及び室内接続流路54が設けられている。第二ポンプ53は、室内流路50中を流通する二次冷媒を圧送する。第二切替え弁55は、第一切替え弁45と同様に三方弁である。第二切替え弁55は後述する制御部90に電気的に接続されており、当該制御部90から送られた電気信号によって二次冷媒の流通状態が切替えられる。室内接続流路54は、この第二切替え弁55を起点として車室内熱交換器20を迂回するように延びている。
【0025】
(第二バイパス流路、第二流量調節部の構成)
第二バイパス流路51は、室内流路50に併設されて、凝縮器33を迂回するように延びている。第二バイパス流路51の一端には第二流量調節部52としての流量調整弁70が設けられている。この流量調整弁70は三方弁である。つまり、この流量調整弁70は、1つの流路から流入した二次冷媒を2つの流路に分配するとともに、これら2つの流路の間における二次冷媒の流量の比率を変化させることが可能である。
【0026】
具体的には、第二流量調節部52は、室内流路50を経て凝縮器33に流入する二次冷媒の流量と、第二バイパス流路51に流入する二次冷媒の流量の比率を変化させる。この流量の比率は、上述の第一流量調節部42と同様に、制御部90から送られた電気信号に基づいてコントロールされる。
【0027】
上述した室外流路40と室内流路50は、一対の流路切替え弁60(第一流路切替え弁61、及び第二流路切替え弁62)によって相互に接続されている。より具体的には、室外流路40における車室外熱交換器10と第一流量調節部42との間と、室内流路50における車室内熱交換器20と第二流量調節部52との間に第一流路切替え弁61が設けられている。さらに、室外流路40における第一切替え弁45と第一ポンプ43との間と、室内流路50における第二切替え弁55と第二ポンプ53との間に第二流路切替え弁62が設けられている。
【0028】
後述するように、これら第一流路切替え弁61、及び第二流路切替え弁62が設けられていることで、室外流路40と室内流路50との間における二次冷媒の流通状態を相互に切替えられるように構成されている。第一流路切替え弁61、及び第二流路切替え弁62は制御部90(後述)に電気的に接続されており、上記の流通状態の切替えは、制御部90から送られた電気信号に基づいて行われる。
【0029】
(計測部の構成)
計測部46は、冷凍サイクルライン31における蒸発器35の下流側で、一次冷媒の圧力に関連する物理量を計測する。なお、ここで言う物理量とは、一次冷媒の圧力自体であってもよいし、一次冷媒の温度であってもよい。つまり、計測部46は、圧力計や温度計である。計測部46が計測した物理量は、電気信号として制御部90に送られる。制御部90は、計測部46の計測結果に基づいて、第一流量調節部42の流通状態を調節する。
【0030】
(制御部の処理フロー)
続いて、図5を参照して、制御部90による第一流量調節部42の制御の処理フローについて説明する。まず、ステップS100で、制御部90による制御がオン状態にあるか否かが判定される。オフ状態である場合(ステップS100:No)、処理は終了する。オン状態である場合(ステップS100:Yes)、後続のステップS101で、制御部90が計測部46から上述の一次冷媒の圧力に関する物理量pを取得する。次いで、ステップS102では、制御部90が物理量pと閾値との大小関係を判定する。物理量pが閾値よりも大きいと判定された場合(ステップS102:Yes)、ステップS103に進む。ステップS103では、蒸発器35に流れ込む二次冷媒の流量が減少する方向に変化するように、制御部90が第一流量調節部42(流量調整弁70)に電気信号を送る。他方で、物理量pが閾値よりも小さいと判定された場合(ステップS102:No)、ステップS104に進む。ステップS104では、蒸発器35に流れ込む二次冷媒の流量が増大する方向に変化するように、制御部90が第一流量調節部42(流量調整弁70)に電気信号を送る。このように、蒸発器35から流れ出た一次冷媒の物理量に基づいて、第一流量調節部42の流通状態が制御される。
【0031】
(作用効果)
次いで、車両用冷凍サイクルユニット1の各種動作モードのうち、暖房運転時における2つの動作モードについて説明する。暖房運転時には、外気温が特に低い条件下(例えばマイナス20℃程度)で用いられるヒータモードと、外気温がそれよりも高い条件下で用いられるヒートポンプモードとの間で動作モードが適宜選択される。
【0032】
(ヒートポンプモードの動作について)
まず、暖房運転時におけるヒートポンプモードの動作について、図2を参照して説明する。同図に示すように、このモードでは、室外流路40と室内流路50とが互いに独立するように、第一流路切替え弁61、及び第二流路切替え弁62の流通状態が切替えられる。さらに、第一切替え弁45、及び第二切替え弁55によって、室外接続流路44、及び室内接続流路54はそれぞれ閉止される。第一流量調節部42、及び第二流量調節部52によって、第一バイパス流路41、及び第二バイパス流路51はそれぞれ閉止される。
【0033】
これにより、二次冷媒は、図2中の矢印で示す経路で流通する。具体的には、室外流路40では、第一ポンプ43を経て第二流路切替え弁62を通過した二次冷媒は、車室外熱交換器10に流入した後、第一流路切替え弁61に向かって流れる。その後、二次冷媒は第一流量調節部42を経て蒸発器35に流れ込む。蒸発器35で、冷凍サイクル30の一次冷媒と熱交換した二次冷媒は、低温状態となる。蒸発器35から流れ出た二次冷媒は再び第一ポンプ43に流入する。このような流れが連続的に生じる。
【0034】
室内流路50では、第二ポンプ53を経て第二流路切替え弁62を通過した二次冷媒は、車室内熱交換器20で室内の空気と熱交換する。これにより、二次冷媒は低温状態となって第一流路切替え弁61に向かって流れる。その後、二次冷媒は第二流量調節部52を経て凝縮器33に流れ込む。凝縮器33で一次冷媒と熱交換した二次冷媒は、高温状態となる。凝縮器33から流れ出た二次冷媒は再び第二ポンプ53に流入する。このような流れが連続的に生じる。
【0035】
上記のような状態とすることで、一次冷媒と二次冷媒との間で熱交換が行われる。具体的には、車室外熱交換器10で相対的に高温の外気と相対的に低温の二次冷媒との間で熱交換が行われる。外気との熱交換によって加温された二次冷媒の熱は、冷凍サイクル30を介して室内流路50中の二次冷媒に伝達される。室内流路50中の二次冷媒は、車室内熱交換器20で室内の空気と熱交換する。これにより、室内の温度が上昇する。
【0036】
(ヒータモードの動作について)
一方で、ヒータモードの定常運転時には、各種バルブの開閉状態、及び二次冷媒の流通状態は、図3に示す状態となる。具体的には、第一切替え弁45によって室外接続流路44が開通して、二次冷媒が車室外熱交換器10を迂回するように流通する。第一流路切替え弁61では、室内流路50を流れる二次冷媒が室外流路40に流れ込むとともに、室外流路40を流れる二次冷媒が室内流路50に流れ込むように、その流通状態が切替えられる。第二流路切替え弁62では、第一ポンプ43から吐出された二次冷媒は室外流路40を流れるとともに、第二ポンプ53から吐出された二次冷媒は室内流路50を流れるように、その流通状態が切替えられる。
【0037】
第一流量調節部42では、第一流路切替え弁61を経て室内流路50から室外流路40に流入した二次冷媒が、蒸発器35側と第一バイパス流路41側とに分配される。蒸発器35側を流れる二次冷媒の流量と第一バイパス流路41側を流れる二次冷媒の流量の比率は、上述した制御フローによってコントロールされる。
【0038】
第二流量調節部52では、第一流路切替え弁61を経て室外流路40から室内流路50に流入した二次冷媒が、第二バイパス流路51ではなく、凝縮器33側に流れるようにコントロールされる。
【0039】
これにより、二次冷媒は、図3中の矢印で示す経路で流通する。具体的には、蒸発器35側では、第一ポンプ43から吐出された二次冷媒は、第二流路切替え弁62を経て第一切替え弁45に向かって流れる。第一切替え弁45を経て室外接続流路44に流入した二次冷媒は、第一流路切替え弁61を経て、室内流路50に流入する。室内流路50に流入した二次冷媒は、第二流量調節部52を経て凝縮器33に流れ込む。凝縮器33で一次冷媒と熱交換した二次冷媒は、高温状態となって第二ポンプ53に流れ込む。第二ポンプ53から吐出された二次冷媒は、第二流路切替え弁62を経て再び室内流路50中を流れ、車室内熱交換器20に向かう。
【0040】
車室内熱交換器20で室内の空気と熱交換した二次冷媒は、低温状態となって室内流路50中を第一流路切替え弁61に向かう。第一流路切替え弁61を経て室外流路40に流入した二次冷媒は、第一流量調節部42を経て、蒸発器35に向かう流れと、第一バイパス流路41に向かう流れとに分配される。蒸発器35では二次冷媒と一次冷媒とが熱交換する。これにより、二次冷媒は低温状態となる。これら2つの流れは蒸発器35の下流側で合流した後、第一ポンプ43に向かう。以上のような二次冷媒の流れが連続的に生じる。
【0041】
上記のような状態とすることによって、室内流路50から蒸発器35に相対的に高温の二次冷媒が流入する。これにより、この二次冷媒と熱交換された冷凍サイクル30中の一次冷媒の温度が上昇する。温度上昇に伴って、当該一次冷媒の圧力と密度も増大する。一次冷媒の密度が上昇することで、圧縮機32の負荷も増加する。言い換えると、圧縮機32の仕事量が増加する。その結果、圧縮機32の動作に伴って発生する熱量が増える。この増加した熱量は、一次冷媒に伝達された後、圧縮機32の下流側の凝縮器33で、室内流路50を流れる二次冷媒に伝達される。これにより、二次冷媒の温度が上昇する。加温された二次冷媒は、車室内熱交換器20で室内の空気と熱交換される。その結果、室内の温度が上昇する(暖房される)。
【0042】
このように、圧縮機32の負荷が増えたことによる熱量によって一次冷媒を加温することが可能であることから、車室外熱交換器10による外気と二次冷媒との熱交換をせずとも暖房能力を確保することができる。したがって、外気温が非常に低い状態で二次冷媒と外気とを熱交換させる必要がなくなる。言い換えれば、室外流路40を流れる二次冷媒の温度を外気温よりも低くする必要がなくなる。その結果、一次冷媒の物性値によって決まる最低温度による制約を超えて、暖房運転をすることが可能となる。
【0043】
さらに、上記のように圧縮機32に流入する一次冷媒の圧力が上昇することで、圧縮機32の圧縮比が低下する。つまり、この場合のモリエル線図は、図4中の実線で示すグラフとなる。なお、図4中の破線はヒートポンプモードにおけるモリエル線図を示している。ヒータモードで運転した場合、縦軸に示す圧力がヒートポンプモードの場合に比べて上昇するとともに、上限値と下限値との差分が、ヒートポンプモードに比べて小さくなる。これにより、圧縮機32の吐出圧の上限値に近い圧力で当該圧縮機32を運転することが可能となる。その結果、圧縮機32の負荷がさらに増大し、圧縮機32でより大きな熱を発生させることができる。この圧縮機32で生じた熱は一次冷媒に伝達された後、凝縮器33で室内流路50を流れる二次冷媒に伝達される。これにより、二次冷媒の温度が上昇する。加温された二次冷媒は、車室内熱交換器20で室内の空気と熱交換される。その結果、車両用冷凍サイクルユニット1の暖房性能をさらに高めることができる。
【0044】
加えて、上記構成によれば、第一流量調節部42によって蒸発器35に流れ込む二次冷媒の流量を調節することで、冷凍サイクル30中の蒸発器35を流れる一次冷媒の温度を調節することができる。これにより、一次冷媒の圧力と密度が所望の値に変化するため、圧縮機32の負荷(仕事量)を精緻に調節することができる。つまり、圧縮機32から一次冷媒に伝達される熱量を精緻にコントロールすることが可能となる。その結果、暖房運転時における二次冷媒の温度調節をよりきめ細かく行うことができる。
【0045】
特に、上記構成によれば、蒸発器35の下流側における二次冷媒の圧力に関連する物理量に基づいて第一流量調節部42の流通状態を制御部90が適宜調節する。これにより、蒸発器35、及び第一バイパス流路41に流れ込む二次冷媒の流量の比率が自律的に変化する。したがって、圧縮機32から一次冷媒に伝達される熱量をより精緻にコントロールすることができる。
【0046】
なお、ヒータモードの起動時には、上記とは反対に、凝縮器33ではなく第二バイパス流路51側に二次冷媒が流れるように第二流量調節部52が制御される。これにより、冷凍サイクル30中で凝縮器33を流れる一次冷媒の圧力が上昇する。その後、上述の定常運転に移ると、凝縮器33に流れ込む二次冷媒の流量が次第に増加するように、第二流量調節部52が制御される。
【0047】
上記のような制御を行うことで、冷凍サイクル30中の凝縮器33を流れる一次冷媒の圧力、及び温度をコントロールすることが可能となる。特に、起動時には凝縮器33に流通する二次冷媒を極少量とし、主流を第二バイパス流路51に流通させる。これにより、室外流路40から室内流路50に向かう低温の二次冷媒が凝縮器33に流れ込む流通量を低減する。その結果、冷凍サイクル30中の一次冷媒の圧力、及び温度が早期に上昇する。したがって、この一次冷媒と熱交換する二次冷媒の温度も早期に上昇するため、暖房運転時に室内の空気の温度を早期に温めることが可能となる。
【0048】
さらに、上記構成によれば、第一流量調節部42、及び第二流量調節部52として流量調整弁70を用いることで、部品点数の増加を抑え、構成の複雑化を回避することができる。その結果、車両用冷凍サイクルユニット1の製造やメンテナンスをより容易かつ安価に行うことができる。
【0049】
以上、本開示の第一実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の各構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、上記第一実施形態では、ヒータモードにおいて、第一切替え弁45の切替えによって車室外熱交換器10に二次冷媒が全く流入しない例について説明した。しかしながら、外気温や運転状態によっては、わずかな流量の二次冷媒が車室外熱交換器10を流通するように第一切替え弁45をコントロールしてもよい。
【0050】
<第二実施形態>
続いて、本開示の第二実施形態について、図6を参照して説明する。なお、上記第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。本実施形態に係る車両用冷凍サイクルユニット101では、第一流量調節部142、及び第二流量調節部152の構成が第一実施形態とは異なっている。
【0051】
具体的には、本実施形態では、第一流量調節部142、及び第二流量調節部152は、流量調整弁70ではなく、開閉弁80、81によって構成されている。これら開閉弁80、81は、第一バイパス流路41、及び第二バイパス流路51上にそれぞれ設けられている。開閉弁80、81は、上述の制御部90に電気的に接続されており、制御部90から送られた電気信号によって開閉状態が切替えられる。
【0052】
さらに、第一バイパス流路41と室外流路40の合流点は、第一ポンプ43の下流側に位置している。同様に、第二バイパス流路51と室内流路50の合流点は、第二ポンプ53の下流側に位置している。
【0053】
第一ポンプ43、及び第二ポンプ53は、回転数が可変であり、吐出流量を変化させることができる。第一ポンプ43、及び第二ポンプ53は、制御部90に電気的に接続されており、制御部90の駆動部94から送られた電気信号によってその吐出流量が制御される。第一ポンプ43は第一流量調節部142の一部を構成し、第二ポンプ53は第二流量調節部152の一部を構成している。
【0054】
図6は、当該車両用冷凍サイクルユニット101をヒータモードで運転している状態を示している。ヒータモードでは、第一流量調節部142の一部としての開閉弁80は開いた状態とされる。この状態で第一流量調節部142の一部としての第一ポンプ43の吐出流量を変化させることで、蒸発器35に流れ込む二次冷媒の流量と、第一バイパス流路41に流れ込む二次冷媒の流量との比率が調節される。
【0055】
(作用効果)
上記の構成によれば、第一実施形態で説明した作用効果に加えて、流量調整弁70ではなく開閉弁80、81を用いていることから、装置の製造やメンテナンスに要するコストを削減することが可能となる。また、第一ポンプ43、及び第二ポンプ53の吐出流量を制御することによって二次冷媒の流量がコントロールされることから、流量調整弁70を用いて同様の流量制御を行う場合に比べて、より精緻に二次冷媒の温度を調節することが可能となる。
【0056】
以上、本開示の第二実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0057】
<第三実施形態>
次いで、本開示の第三実施形態について図7から図10を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0058】
本実施形態では、ヒータモードの起動を早めるための各種制御、及び構成について説明する。本実施形態に係る車両用冷凍サイクルユニット201は、第二実施形態で説明した各構成に加えて、第一温度計測部47、第二温度計測部48、第三温度計測部49、及び圧力計測部83をさらに備えている。第一温度計測部47は、第一バイパス流路41と室外流路40との合流点よりも下流側における二次冷媒の温度を計測する。第二温度計測部48は、圧縮機32の入口における一次冷媒の温度を計測する。第三温度計測部49は、室内流路50と第二バイパス流路51との合流点よりも下流側における二次冷媒の温度を計測する。これら第一温度計測部47、第二温度計測部48、及び第三温度計測部49は温度センサー又は温度計である。なお、図7中ではこれら第一温度計測部47、第二温度計測部48、及び第三温度計測部49の図示を省略している。圧力計測部83は、圧縮機32の下流側における一次冷媒の圧力(高圧側圧力)を計測する。圧力計測部83は圧力センサー又は圧力計である。また、本実施形態では、車室内熱交換器20に併設されているブロワ21を図示している。
【0059】
(ヒータモード起動時における制御1)
ヒータモードの起動時には、圧力計測部83が計測した一次冷媒の圧力(高圧側圧力)が予め定められた閾値よりも小さい場合に、図7に示すように、凝縮器33に流れ込む二次冷媒の流量を小さくする。
【0060】
上記の制御は、図10に示す制御フローのうち、ステップS21~S24によって実現される。ステップS21では、圧力計測部83が計測した一次冷媒の圧力が閾値より大きいかが判定される。圧力が閾値より大きいと判定された場合(ステップS21:Yes)、ステップS22で、凝縮器流量を増加させる。上述のステップS21でNoと判定された場合、ステップS23で、圧力計測部83が計測した一次冷媒の圧力が閾値未満であるかが判定される。ステップS23でYesと判定された場合、ステップS24で凝縮器流量を低下させる。
【0061】
このように、車両用冷凍サイクルユニット201の起動時に凝縮器33への二次冷媒の流通を低減することで、凝縮器33の一次冷媒の熱量を放熱するため二次冷媒との温度差が必要となり一次冷媒の温度が高くなる。その結果、一次冷媒の圧力、及び温度が早期に上昇する。これにより、室内の空気を早期に温めることが可能となる。
【0062】
(ヒータモード起動時における制御2)
上記の他、図9に示すように、ヒータモード起動時に制御部90は、第一温度計測部47が計測した二次冷媒の温度T1が外気温よりも高い場合に、二次冷媒が室外接続流路44に流れ込むように第一切替え弁45の流通状態を切替える。一方で、第一温度計測部47が計測した二次冷媒の温度が外気温よりも低い場合には、二次冷媒が車室外熱交換器10に流れ込むように第一切替え弁45の流通状態を切替える。
【0063】
上記の制御は、図10に示す制御フローのうち、ステップS51~S53によって実現される。ステップS51では、第一温度計測部47が計測した二次冷媒の温度T1が外気温よりも低いかが判定される。ステップS51でYesと判定された場合、ステップS52で、車室外熱交換器10に二次冷媒が流れ込むように第一切替え弁45の流通状態が切替えられる。他方で、ステップS51でNoと判定された場合、ステップS53で、車室外熱交換器10をバイパスして室外接続流路44に二次冷媒が流れ込むように第一切替え弁45の流通状態が切替えられる。
【0064】
ここで、二次冷媒の熱量が低下すると暖房性能が低下するため、二次冷媒の温度が外気温よりも高い場合は、車室外熱交換器10を室外接続流路44によってバイパスする。これにより、二次冷媒の熱量の低下を防止し、一次媒体の蒸発器35側の圧力(低圧側圧力)の低下を防止することができる。したがって、車両用冷凍サイクルユニット1の起動時に、早期に暖房効果を得ることができる。
【0065】
(ヒータモード起動時における制御3)
ヒータモードの起動を早めるための制御の他の一つとして、図8に示すように、制御部90は、車両用冷凍サイクルユニット1の起動時に、第二温度計測部48が計測した圧縮機32の入口における一次冷媒の温度T2が予め定められた第一閾値よりも低い場合に、蒸発器に流れ込む二次冷媒の流量を大きくする。
【0066】
上記の制御は、図10に示す制御フローのうち、ステップS31~S34によって実現される。ステップS31では、第二温度計測部48が計測した一次冷媒の温度が第一閾値より大きいかが判定される。温度が第一閾値より大きいと判定された場合(ステップS31:Yes)、ステップS32で、蒸発器流量を低下させる。他方、上述のステップS31でNoと判定された場合、ステップS33で、第二温度計測部48が計測した一次冷媒の温度が閾値未満であるかが判定される。ステップS33でYesと判定された場合、ステップS34で蒸発器流量を増加させる。
【0067】
上記構成によれば、蒸発器35に流れ込む二次冷媒の量を調節することで、当該蒸発器35を流れる一次冷媒の圧力、及び温度をコントロールすることが可能となる。特に、起動時には蒸発器35に二次冷媒を流通させることで、一次冷媒の圧力、及び温度が早期に上昇する。これにより、室内の空気を早期に温めることが可能となる。
【0068】
具体的には、凝縮器33から流出し蒸発器35を流れる二次冷媒の流量が増加すると、一次冷媒への二次冷媒からの吸熱量が増加し、一次冷媒の低圧側圧力が上昇する。一次冷媒の低圧側圧力が上昇すると、圧縮機32の入口における一次冷媒の温度が上昇し、これに伴って圧縮機32の入口における一次冷媒の冷媒密度も増加する。このため、圧縮機の回転数が同一であっても一次冷媒の循環量が増加するため、圧縮機32の動力が増加する。圧縮機32の動力が増加することで、当該圧縮機32で発生する熱によって一次冷媒の高圧側圧力も高くなる。すると、凝縮器33における二次冷媒の温度も高くなり、凝縮器33から流出し、車室内熱交換器20へ供給される二次冷媒の温度も高くなる。その結果、車室内に供給される空気温度の上昇を早めることができる。
【0069】
(ヒータモード起動時における制御4)
さらに、図9に示すように、ヒータモード起動時に制御部90は、第三温度計測部49が計測した二次冷媒の温度T3が予め定められた第二閾値よりも低い場合に、二次冷媒が室内接続流路54に流れ込むように第二切替え弁55の流通状態を切替える。一方で、第三温度計測部49が計測した二次冷媒の温度T3が予め定められた第二閾値よりも高い場合には、二次冷媒が車室内熱交換器20に流れ込むように第二切替え弁55の流通状態を切替える。
さらに、ヒータモード起動時に制御部90は、第三温度計測部49が計測した二次冷媒の温度T3が予め定められた第三閾値よりも低い場合に、ブロワ21を停止する。つまり、二次冷媒の温度が第三閾値よりも低い場合には、車室内への暖気の供給が停止した状態となる。他方で、その後二次冷媒の温度が上昇して、第三閾値よりも高くなった場合には、ブロワ21を駆動して車室内への暖気の供給を開始する。
【0070】
上記の制御は、図10に示す制御フローのうち、ステップS41~S46によって実現される。ステップS41では、第三温度計測部49が計測した二次冷媒の温度T3が予め定められた第二閾値よりも低いか否かが判定される。ステップS41でYesと判定された場合、ステップS42に進む。ステップS42で、車室内熱交換器20をバイパスして室内接続流路54に二次冷媒が流れ込むように第二切替え弁55の流通状態が切替えられる。他方、上述のステップS41でNoと判定された場合、ステップS43で、車室内熱交換器20に二次冷媒が流れ込むように第二切替え弁55の流通状態が切替えられる。さらに、ステップS44では第三温度計測部49が計測した二次冷媒の温度T3が予め定められた第三閾値よりも低いか否かが判定される。ステップS44でYesと判定された場合、ステップS45で、ブロワ21の駆動を停止する。他方、ステップS44でNoと判定された場合、ステップS46でブロワ21を駆動する。
【0071】
上記構成によれば、車両用冷凍サイクルユニット1の起動時に、室内流路50と第二バイパス流路51との合流点よりも下流側における二次冷媒の温度が第二閾値より低い場合は、車室内熱交換器20への二次冷媒の供給は行わず、室内接続流路54に流れ込むように第二切替え弁55を切替える。これにより、凝縮器33で温めるべき二次冷媒の量を減らすことができる。二次冷媒の熱容量が低下することで温度上昇が速くなり、当該二次冷媒の温度上昇が早くなる。したがって、車両用冷凍サイクルユニット1の起動時に早期に暖房効果を得ることができる。
さらに、上記構成によれば、車室内熱交換器20へのブロワ21による空気の供給を、室内流路50と第二バイパス流路51との合流点よりも下流側における二次冷媒の温度が第三閾値に到達するまで停止する。これにより、車室内熱交換器20における二次冷媒と空気との熱交換が抑えられる。その結果、二次冷媒の温度が早期に上昇する。したがって、最終的に車室内熱交換器20から車室内へ供給される空気温度が設定された温度になるまでの時間を短縮することができる。
【0072】
以上、本開示の各実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、上記の各実施形態における制御部90の処理フローは、適切な処理が行われる範囲において、処理の順番が入れ替わってもよい。
【0073】
また、「室外流路40」、及び「室内流路50」は、必ずしも車室外のみ、又は車室内のみに敷設されていることを意味するものではない。つまり、必要に応じて、室外流路40の一部が車室内に敷設されていてもよいし、室内流路50の一部が車室外に敷設されていてもよい。
【0074】
さらに、第三実施形態で説明した4つの制御フローは、全てを制御部90に実装し、全てを同時に実行してもよいし、適宜選択された4つ以下の制御フローのみを実装・実行してもよい。
【0075】
<付記>
各実施形態に記載の車両用冷凍サイクルユニット1は、例えば以下のように把握される。
【0076】
(1)第1の態様に係る車両用冷凍サイクルユニット1は、車室外熱交換器10及び車室内熱交換器20の間に介在されて、これら車室外熱交換器10と車室内熱交換器20とをそれぞれ流通する二次冷媒同士の熱交換をする車両用冷凍サイクルユニット1であって、一次冷媒が順次流通する圧縮機32、凝縮器33、膨張弁34、及び蒸発器35を有する冷凍サイクル30と、前記二次冷媒を前記蒸発器35と前記車室外熱交換器10との間で循環させる室外流路40と、前記二次冷媒を前記凝縮器33と前記車室内熱交換器20との間で循環させる室内流路50と、前記室外流路40と前記室内流路50との流通状態を切替え可能にこれらを接続する一対の流路切替え弁60と、前記室外流路40に併設され、前記蒸発器35を迂回するように設けられた第一バイパス流路41と、前記第一バイパス流路41、及び前記蒸発器35に流れ込む前記二次冷媒の流量を調節する第一流量調節部42と、を備え、前記第一流量調節部42は、1つの流路から流入した前記二次冷媒を2つの流路に分配するとともに、これら2つの流路の間における前記二次冷媒の流量の比率を変化させることが可能な流路切替え弁である。
【0077】
上記構成によれば、第一流量調節部42によって蒸発器35に流れ込む二次冷媒の量を調節することで、圧縮機32の負荷を精緻に調節することができる。これにより、圧縮機32から一次冷媒に伝達される熱量を精緻にコントロールすることが可能となる。
【0078】
(2)第2の態様に係る車両用冷凍サイクルユニット1は、(1)の車両用冷凍サイクルユニット1であって、前記第一流量調節部42は、前記第一バイパス流路41に設けられた開閉弁80、及び前記室外流路40に設けられた第一ポンプ43である。
【0079】
上記構成によれば、開閉弁80、及び第一ポンプ43のみによって第一流量調節部42を構成することで、より安価に装置を構成することができる。
【0080】
(3)第3の態様に係る車両用冷凍サイクルユニット1は、(1)又は(2)の車両用冷凍サイクルユニット1であって、前記一対の流路切替え弁60、及び前記第一流量調節部42の状態を切替える制御部90をさらに備え、該制御部90は、前記室内流路50を経て前記車室内熱交換器20から流れ出た前記二次冷媒が、前記室外流路40を経て前記蒸発器35、及び前記第一バイパス流路41の少なくとも一方に流れるように前記流路切替え弁60の流通状態を切替える。
【0081】
上記構成によれば、車室内熱交換器20から流れ出た高温の二次冷媒が蒸発器35に流れ込む。これにより、蒸発器35から圧縮機32に向かう一次冷媒の温度と密度が上がる。その結果、圧縮機32の負荷が増大し、当該圧縮機32から一次冷媒に伝達される熱量を増やすことができる。
【0082】
(4)第4の態様に係る車両用冷凍サイクルユニット1は、(3)の車両用冷凍サイクルユニット1であって、前記冷凍サイクル30における前記蒸発器35の下流側で、前記一次冷媒の圧力に関連する物理量を計測する計測部46をさらに備え、前記制御部90は、前記計測部46の計測結果に基づいて、前記第一流量調節部42の流通状態を調節する。
【0083】
上記構成によれば、蒸発器35の下流側における一次冷媒の圧力に関連する物理量に基づいて第一流量調節部42の流通状態を調節することで、蒸発器35、及び第一バイパス流路41に流れ込む二次冷媒の流量の比率が変化する。これにより、圧縮機32から一次冷媒に伝達される熱量をより精緻にコントロールすることができる。
【0084】
(5)第5の態様に係る車両用冷凍サイクルユニット1は、(1)から(4)のいずれか一態様に係る車両用冷凍サイクルユニット1であって、前記室内流路50に併設され、前記凝縮器33を迂回するように設けられた第二バイパス流路51と、前記第二バイパス流路51、及び前記凝縮器33に流れ込む前記二次冷媒の流量を調節する第二流量調節部52と、をさらに備える。
【0085】
上記構成によれば、第二流量調節部52によって凝縮器33に流れ込む二次冷媒の量を調節することで、当該凝縮器33を流れる一次冷媒の圧力、及び温度をコントロールすることが可能となる。
【0086】
(6)第6の態様に係る車両用冷凍サイクルユニット1は、(5)の車両用冷凍サイクルユニット1であって、前記第二流量調節部52は、1つの流路から流入した前記二次冷媒を2つの流路に分配するとともに、これら2つの流路の間における前記二次冷媒の流量の比率を変化させることが可能な流路切替え弁である。
【0087】
上記構成によれば、流量調節弁を用いることで、装置の製造やメンテナンスをより容易に行うことができる。
【0088】
(7)第7の態様に係る車両用冷凍サイクルユニット1は、(5)の車両用冷凍サイクルユニット1であって、前記第二流量調節部52は、前記第二バイパス流路51に設けられた開閉弁81、及び前記室内流路50に設けられた第二ポンプ53である。
【0089】
上記構成によれば、開閉弁81、及び第二ポンプ53のみによって第二流量調節部52を構成することで、より安価に装置を構成することができる。
【0090】
(8)第8の態様に係る車両用冷凍サイクルユニット1は、(5)から(7)のいずれか一態様に係る車両用冷凍サイクルユニット1であって、前記一対の流路切替え弁60、及び前記第二流量調節部52の状態を切替える制御部90をさらに備え、該制御部90は、車両用冷凍サイクルユニット1の起動時に、前記室外流路40を経た前記二次冷媒を、前記室内流路50を経て前記第二バイパス流路51に流れ込むように、前記流路切替え弁60、及び前記第二流量調節部52の流通状態を切替え、車両用冷凍サイクルユニット1の定常運転時に、前記二次冷媒が前記凝縮器33に流れ込むように前記第二流量調節部52の流通状態を切替える。
【0091】
上記構成によれば、第二流量調節部52によって凝縮器33に流れ込む二次冷媒の量を調節することで、当該凝縮器33を流れる一次冷媒の圧力、及び温度をコントロールすることが可能となる。特に、起動時には凝縮器33に二次冷媒を流通させないことで、一次冷媒の圧力、及び温度が早期に上昇する。これにより、室内の空気を早期に温めることが可能となる。
【0092】
(9)第9の態様に係る車両用冷凍サイクルユニット1は、(3)又は(4)の車両用冷凍サイクルユニット1であって、前記制御部90は、車両用冷凍サイクルユニット1の起動時に、前記室内流路50を経た前記二次冷媒を、前記室外流路40を経て前記蒸発器35に流れ込むように、前記流路切替え弁60、及び前記第一流量調節部42の流通状態を切替え、車両用冷凍サイクルユニット1の定常運転時に、前記二次冷媒が前記第一バイパス流路41に流れ込むように前記第一流量調節部42の流通状態を切替える。
【0093】
上記構成によれば、第一流量調節部42によって蒸発器35に流れ込む二次冷媒の量を調節することで、当該蒸発器35を流れる一次冷媒の圧力、及び温度をコントロールすることが可能となる。特に、起動時には蒸発器35に二次冷媒を流通させることで、一次冷媒の圧力、及び温度が早期に上昇する。これにより、室内の空気を早期に温めることが可能となる。
【0094】
(10)第10の態様に係る車両用冷凍サイクルユニット1は、(9)の車両用冷凍サイクルユニット1であって、前記室外流路40に併設され、前記車室外熱交換器10を迂回するように設けられた室外接続流路44と、該室外接続流路44の流通状態を切替える第一切替え弁45と、前記第一バイパス流路41と前記室外流路40との合流点よりも下流側における前記二次冷媒の温度を計測する第一温度計測部47と、をさらに有し、前記制御部90は、車両用冷凍サイクルユニット1の起動時に、前記第一温度計測部47が計測した前記二次冷媒の温度が外気温よりも高い場合に、前記二次冷媒が前記室外接続流路44に流れ込むように前記第一切替え弁45の流通状態を切替え、前記第一温度計測部47が計測した前記二次冷媒の温度が外気温よりも低い場合に、前記二次冷媒が前記車室外熱交換器10に流れ込むように前記第一切替え弁45の流通状態を切替える。
【0095】
二次冷媒の熱量が低下すると暖房性能が低下するため、二次冷媒の温度が外気温よりも高い場合は、車室外熱交換器10を室外接続流路44によってバイパスする。これにより、二次冷媒の熱量の低下を防止し、一次媒体の蒸発器35側の圧力(低圧側圧力)の低下を防止することができる。したがって、車両用冷凍サイクルユニット1の起動時に、早期に暖房効果を得ることができる。
【0096】
(11)第11の態様に係る車両用冷凍サイクルユニット1は、(9)又は(10)の車両用冷凍サイクルユニット1であって、前記室内流路50に併設され、前記車室内熱交換器20を迂回するように設けられた室内接続流路54と、該室内接続流路54の流通状態を切替える第二切替え弁55と、前記冷凍サイクル30の前記圧縮機32の入口における前記一次冷媒の温度を計測する第二温度計測部48と、をさらに有し、前記制御部90は、車両用冷凍サイクルユニット1の起動時に、前記第二温度計測部48が計測した前記一次冷媒の温度が予め定められた第一閾値よりも低い場合に、前記二次冷媒が前記室内接続流路54に流れ込むように前記第二切替え弁55の流通状態を切替え、前記第二温度計測部48が計測した前記一次冷媒の温度が前記第一閾値よりも高い場合に、前記二次冷媒が前記車室内熱交換器20に流れ込むように前記第二切替え弁55の流通状態を切替える。
【0097】
上記構成によれば、凝縮器33で温めるべき二次冷媒の量を減らすことができる。二次冷媒の熱容量が低下することで温度上昇が早くなり、当該二次冷媒の温度上昇が早くなる。したがって、車両用冷凍サイクルユニット1の起動時に、早期に暖房効果を得ることができる。
【0098】
(12)第12の態様に係る車両用冷凍サイクルユニット1は、(8)に係る車両用冷凍サイクルユニット1であって、前記車室内熱交換器20に併設され、該車室内熱交換器20で熱交換した空気を車室内に送るブロワ21と、前記室内流路50と前記第二バイパス流路51との合流点よりも下流側における前記二次冷媒の温度を計測する第三温度計測部49と、をさらに有し、前記制御部90は、車両用冷凍サイクルユニット1の起動時に、前記第三温度計測部49が計測した前記二次冷媒の温度が予め定められた第二閾値よりも低い場合に、前記ブロワ21を停止し、前記第三温度計測部49が計測した前記二次冷媒の温度が前記第二閾値よりも高い場合に、前記ブロワ21を駆動する。
【0099】
上記構成によれば、車室内熱交換器20へのブロワ21による空気の供給を、室内流路50と第二バイパス流路51との合流点よりも下流側における二次冷媒の温度が第二閾値に到達するまで停止する。これにより、車室内熱交換器20から車室内へ供給される空気温度の上昇を早めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
上記の車両用冷凍サイクルユニットでは、より精緻に二次冷媒の温度を調節することが可能となる。
【符号の説明】
【0101】
1…車両用冷凍サイクルユニット
10…車室外熱交換器
20…車室内熱交換器
21…ブロワ
30…冷凍サイクル
31…冷凍サイクルライン
32…圧縮機
33…凝縮器
34…膨張弁
35…蒸発器
40…室外流路
41…第一バイパス流路
42…第一流量調節部
43…第一ポンプ
44…室外接続流路
45…第一切替え弁
46…計測部
47…第一温度計測部
48…第二温度計測部
49…第三温度計測部
50…室内流路
51…第二バイパス流路
52…第二流量調節部
53…第二ポンプ
54…室内接続流路
55…第二切替え弁
60…流路切替え弁
61…第一流路切替え弁
62…第二流路切替え弁
70…流量調整弁
80…開閉弁
81…開閉弁
83…圧力計測部
90…制御部
101…車両用冷凍サイクルユニット
142…第一流量調節部
152…第二流量調節部
201…車両用冷凍サイクルユニット
【要約】
車両用冷凍サイクルユニットは、車室外熱交換器及び車室内熱交換器の間に介在されて、これら車室外熱交換器と車室内熱交換器とをそれぞれ流通する二次冷媒同士の熱交換をする車両用冷凍サイクルユニットであって、一次冷媒が順次流通する圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び蒸発器を有する冷凍サイクルと、二次冷媒を蒸発器と車室外熱交換器との間で循環させる室外流路と、二次冷媒を凝縮器と車室内熱交換器との間で循環させる室内流路と、室外流路と室内流路との流通状態を切替え可能にこれらを接続する一対の流路切替え弁と、室外流路に併設され、蒸発器を迂回する第一バイパス流路と、蒸発器に流れ込む二次冷媒の流量を調節する第一流量調節部と、を備える。
図1
図2
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図10