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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-20
(45)【発行日】2023-12-28
(54)【発明の名称】圧力調整弁
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/317 20210101AFI20231221BHJP
   H01M 50/325 20210101ALI20231221BHJP
【FI】
H01M50/317 101
H01M50/325
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023517038
(86)(22)【出願日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 JP2022000254
(87)【国際公開番号】W WO2022230244
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】P 2021075908
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217102
【弁理士】
【氏名又は名称】冨永 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189289
【弁理士】
【氏名又は名称】北尾 拓洋
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 勝好
(72)【発明者】
【氏名】新地 祐晟
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-102323(JP,A)
【文献】国際公開第2019/064843(WO,A1)
【文献】特開2013-062120(JP,A)
【文献】米国特許第6645661(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有し内側に凹部が形成された筐体本体及び当該筐体本体の前記開口部を塞ぐ蓋体を有する筐体と、
前記筐体における前記筐体本体の前記凹部に収納される弾性部材である柱状の弁体と、
を備え、
前記筐体本体は、前記凹部の底部に、蓄電モジュールからの圧力が導入される貫通孔からなる圧力導入路を有し、当該圧力導入路は、前記筐体本体を貫通する柱状の空間である圧力導入部と、前記圧力導入部と連なり前記底部の表面に開口する溝部とを有し、
前記弁体は、前記圧力導入路における前記底部側の開口を覆うように配置され、
前記蓋体は、前記弁体の端面と接する突起部を有し、
前記筐体本体の前記開口部を前記蓋体で塞ぐことで、前記蓋体の前記突起部が前記弁体を加圧し、前記弁体が前記圧力導入路を気密に塞ぐ、蓄電モジュール用の圧力調整弁。
【請求項2】
前記溝部は、前記圧力導入部の一部から外方に延びる径方向溝部を有する、請求項1に記載の圧力調整弁。
【請求項3】
前記圧力導入部の延びる方向に直交する断面において、前記圧力導入部の形状が円形であり、
前記径方向溝部の一対の側壁が、前記圧力導入部の径方向と平行であるか、或いは、前記圧力導入部の径方向と平行でなく前記圧力導入部の径方向に対して斜めに形成されている、請求項2に記載の圧力調整弁。
【請求項4】
前記径方向溝部の開口形状が、多角状または扇状である、請求項2または3に記載の圧力調整弁。
【請求項5】
前記径方向溝部の底面は、前記圧力導入部から外方に向かって前記径方向溝部の深さが次第に浅くなる傾斜面である、請求項2~4のいずれか一項に記載の圧力調整弁。
【請求項6】
前記溝部が、前記径方向溝部と交差する交差方向溝部を有する、請求項2~5のいずれか一項に記載の圧力調整弁。
【請求項7】
前記圧力導入部の延びる方向に直交する断面において、前記圧力導入部の形状が円形であり、
前記交差方向溝部は、前記圧力導入部を構成する壁面との同心円の一部である円弧に沿って形成される円弧状溝部を有する、請求項6に記載の圧力調整弁。
【請求項8】
前記円弧の角度が、30~60°である、請求項7に記載の圧力調整弁。
【請求項9】
前記交差方向溝部が、環状であり、当該環状の前記交差方向溝部の外側に環状のビード部が形成されている、請求項6に記載の圧力調整弁。
【請求項10】
前記ビード部と前記突起部を当該突起部の中心軸方向から見たとき、前記突起部の全部が、環状の前記ビード部の内側の領域内に位置する、請求項9に記載の圧力調整弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力調整弁に関する。更に詳しくは、蓄電モジュールに用いられる圧力調整弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集電体の一方の面に正極が形成され、他方の面に負極が形成されたバイポーラ電極を備えるバイポーラ電池(蓄電モジュール)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この電池では、セパレータ、集電体、及びシール部材で画成された内部空間に、電解液が封入されている。そして、電解液を含浸したセパレータからなる電解質層を介して、バイポーラ電極が積層されている。更に、この電池には、シール部材を貫通するチューブが設けられている。即ち、チューブは、その一端が内部空間側に配置され、他端は電池から外部に突出している。
【0004】
電池を使用している間に、例えば、過放電等によって水素が発生し、これに起因して、電池の内部空間の圧力が上昇することがある。このように電池の内部空間の圧力が上昇した場合、上記チューブは開弁するので、圧力調整弁としての機能を果たすものである。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の構成では、内部空間ごとにチューブをそれぞれ取り付ける必要があり、圧力調整弁としてのチューブを含むバイポーラ電池の構成が煩雑になる傾向がある。そこで、簡素な構成で、バイポーラ電極間の複数の内部空間の圧力調整が可能な蓄電モジュールが報告されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-287451号公報
【文献】国際公開第2019/064843号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の蓄電モジュールにおける圧力調整弁であっても、精度良く所望の圧力で開弁させるという点において更なる改良の余地があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、精度良く所望の圧力で開弁させることができる圧力調整弁の開発を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以下に示す、圧力調整弁が提供される。
【0010】
[1] 開口部を有し内側に凹部が形成された筐体本体及び当該筐体本体の前記開口部を塞ぐ蓋体を有する筐体と、
前記筐体における前記筐体本体の前記凹部に収納される弾性部材である柱状の弁体と、
を備え、
前記筐体本体は、前記凹部の底部に、蓄電モジュールからの圧力が導入される貫通孔からなる圧力導入路を有し、当該圧力導入路は、前記筐体本体を貫通する柱状の空間である圧力導入部と、前記圧力導入部と連なり前記底部の表面に開口する溝部とを有し、
前記弁体は、前記圧力導入路における前記底部側の開口を覆うように配置され、
前記蓋体は、前記弁体の端面と接する突起部を有し、
前記筐体本体の前記開口部を前記蓋体で塞ぐことで、前記蓋体の前記突起部が前記弁体を加圧し、前記弁体が前記圧力導入路を気密に塞ぐ、蓄電モジュール用の圧力調整弁。
【0011】
[2] 前記溝部は、前記圧力導入部の一部から外方に延びる径方向溝部を有する、前記[1]請求項1に記載の圧力調整弁。
【0012】
[3] 前記圧力導入部の延びる方向に直交する断面において、前記圧力導入部の形状が円形であり、
前記径方向溝部の一対の側壁が、前記圧力導入部の径方向と平行であるか、或いは、前記圧力導入部の径方向と平行でなく前記圧力導入部の径方向に対して斜めに形成されている、前記[2]に記載の圧力調整弁。
【0013】
[4] 前記径方向溝部の開口形状が、多角状または扇状である、前記[2]または[3]に記載の圧力調整弁。
【0014】
[5] 前記径方向溝部の底面は、前記圧力導入部から外方に向かって前記径方向溝部の深さが次第に浅くなる傾斜面である、前記[2]~[4]のいずれかに記載の圧力調整弁。
【0015】
[6] 前記溝部が、前記径方向溝部と交差する交差方向溝部を有する、前記[2]~[5]のいずれかに記載の圧力調整弁。
【0016】
[7] 前記圧力導入部の延びる方向に直交する断面において、前記圧力導入部の形状が円形であり、
前記交差方向溝部は、前記圧力導入部を構成する壁面との同心円の一部である円弧に沿って形成される円弧状溝部を有する、前記[6]に記載の圧力調整弁。
【0017】
[8] 前記円弧の角度が、30~60°である、前記[7]に記載の圧力調整弁。
【0018】
[9] 前記交差方向溝部が、環状であり、当該環状の前記交差方向溝部の外側に環状のビード部が形成されている、前記[6]に記載の圧力調整弁。
【0019】
[10] 前記ビード部と前記突起部を当該突起部の中心軸方向から見たとき、前記突起部の全部が、環状の前記ビード部の内側の領域内に位置する、前記[9]に記載の圧力調整弁。
【0020】
本発明の圧力調整弁は、精度良く所望の圧力で開弁させることができ、工数を少なく製造できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の圧力調整弁の一の実施形態が接続された蓄電モジュールを模式的に示す斜視図である。
図2】本発明の圧力調整弁の一の実施形態を分解して模式的に示す分解斜視図である。
図3】本発明の圧力調整弁の一の実施形態を分解して模式的に示す分解斜視図である。
図4】本発明の圧力調整弁の一の実施形態における筐体本体を模式的に示す平面図である。
図5】本発明の圧力調整弁の一の実施形態における蓋体を模式的に示す平面図である。
図6図5に示す蓋体におけるA-A断面を模式的に示す断面図である。
図7】本発明の圧力調整弁の一の実施形態を厚さ方向に切断した断面を模式的に示す断面図である。
図8】本発明の圧力調整弁の一の実施形態における筐体本体の凹部の底部を模式的に示す平面図である。
図9】本発明の圧力調整弁の他の実施形態における筐体本体の凹部の底部を模式的に示す平面図である。
図10】本発明の圧力調整弁の更に他の実施形態における筐体本体の凹部の底部を模式的に示す平面図である。
図11】本発明の圧力調整弁の更に他の実施形態における図7に示す断面に対応する断面を模式的に示す断面図である。
図12】本発明の圧力調整弁の更に他の実施形態における筐体本体の凹部の底部を模式的に示す平面図である。
図13】本発明の圧力調整弁の更に他の実施形態における筐体本体の凹部の底部を模式的に示す平面図である。
図14】本発明の圧力調整弁の一の実施形態において、弁体、突起部、及び圧力導入路の位置関係を、一部を透視して模式的に示す説明図である。
図15】本発明の圧力調整弁の一の実施形態における使用状態を模式的に示す説明図である。
図16】本発明の圧力調整弁の一の実施形態における使用状態を模式的に示す説明図である。
図17】本発明の圧力調整弁の更に他の実施形態における筐体本体の凹部の底部を模式的に示す平面図である。
図18図17に示す筐体本体におけるB-B断面を模式的に示す断面図である。
図19図17に示す圧力調整弁において、弁体、突起部、及び圧力導入路の位置関係を、一部を透視して模式的に示す説明図である。
図20】第二の発明の圧力調整弁の一の実施形態における図7に示す断面に対応する断面を模式的に示す断面図である。
図21図20に示す圧力調整弁を構成する弁体を模式的に示す斜視図である。
図22】第二の発明の圧力調整弁の他の実施形態における図7に示す断面に対応する断面を模式的に示す断面図である。
図23】第二の発明の圧力調整弁の更に他の実施形態における図7に示す断面に対応する断面を模式的に示す断面図である。
図24図23に示す圧力調整弁を構成する弁体を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0023】
(1)圧力調整弁:
本発明の圧力調整弁の一の実施形態は、図2図3に示す圧力調整弁100である。図1は、2つの圧力調整弁100を水平方向に横並びに配置して接続した蓄電モジュール200を示している。なお、この蓄電モジュール200は、正極、集電体及び負極を有するバイポーラ電極、及び、セパレータを備えるセル60を複数有し、これらの複数のセル60は、垂直方向に積層されている。そして、バッテリー(電池スタック)には、この蓄電モジュール200が垂直方向に複数層積層された状態で配置されている。
【0024】
図2図3に示すように、圧力調整弁100は、開口部15を有し内側に凹部13が形成された筐体本体11及び当該筐体本体11の開口部15を塞ぐ蓋体12を有する筐体10と、この筐体10における筐体本体11の凹部13に収納される弾性部材である柱状の弁体20と、を備えている。そして、筐体本体11は、図4に示すように、凹部13の底部17に、蓄電モジュール200(図1参照)からの圧力が導入される貫通孔からなる圧力導入路19を有し、当該圧力導入路19は、図7に示すように、筐体本体11を貫通する柱状の空間である圧力導入部31と、この圧力導入部31と連なり底部17の表面に開口する溝部33とを有している。更に、弁体20は、図7に示すように、圧力導入路19における底部17側の開口35を覆うように配置されている。更に、蓋体12は、図5図6に示すように、弁体20の端面と接する突起部14を有している。そして、この圧力調整弁100は、筐体本体11の開口部15を蓋体12で塞ぐことで、蓋体12の突起部14が弁体20を加圧し、弁体20が圧力導入路19を気密に塞ぐ、蓄電モジュール用の圧力調整弁である。なお、図6は、図5に示す蓋体におけるA-A断面を模式的に示す断面図である。
【0025】
このような圧力調整弁100は、精度良く所望の圧力で作動(即ち、開弁)させることができ、工数を少なく製造できるものである。
【0026】
具体的には、まず、圧力調整弁100は、圧力を受けた際にその圧力の大きさによって開弁するか否かが決まる。ここで、どの程度の圧力を受けた場合に開弁するかを制御することは重要となる。開弁する圧力を精度よく調整することはより重要であり、特許文献2に記載のような従来の圧力調整弁では更なる改良の余地がある。
【0027】
即ち、特許文献2に記載のような従来の圧力調整弁では、その調整弁としての機能は、弾性部材の弾性特性(即ち、バネ要素)に拠るところが大きく、弾性部材を製作するにあたり、硬度のばらつきの影響が大きい。更に、従来の圧力調整弁における調整弁としての機能は、弾性部材のへたりや経時変化の影響を受けやすい。つまり、圧力調整弁は、上記のように所望の圧力が加わった際に開弁することが望まれるが、従来の圧力調整弁では、上記の要素により、所望の圧力で精度よく開弁させることは簡単でない傾向がある。
【0028】
更に、特許文献2に記載のような従来の圧力調整弁は、これを構成する弾性部材についてその軸方向の長さを一定程度設ける必要があり、製作工法上において、工法が限定され工程が掛かる(即ち、安価に製作し難い)という傾向がある。
【0029】
そこで、本発明の圧力調整弁の構成を採用することにより、弁体20が弾性部材であることに起因して開弁のための圧力にばらつきが生じることを抑制し、更に溝部33を設けることにより、受けた圧力に応じてより精度よく開弁させることができる。更には、所望の大きさを満たす弾性部材とすることで、一括製作が可能となり、工数を少なく製造できる。その結果、安価に製作することができる。
【0030】
(1-1)筐体:
筐体10は、図2図3に示すように、開口部15を有し内側に凹部13が形成された筐体本体11及び当該筐体本体11の開口部15を塞ぐ蓋体12を有するものである。このような筐体10は、蓄電モジュール200に連結され(図1参照)、凹部13の底部17に形成された貫通孔である圧力導入路19を介して蓄電モジュール200の内部と連通することになる。
【0031】
筐体10の形状は、特に制限はなく、略四角柱状などとすることができる。
【0032】
筐体10の大きさは、特に制限はなく、蓄電モジュールの大きさとの関係で適宜設定することができる。
【0033】
(1-1-1)筐体本体:
筐体本体11は、開口部15を有する箱状のものであり、その内側に凹部13が形成されている。そして、この凹部13の底部17には、蓄電モジュール200からの圧力が導入される貫通孔からなる圧力導入路19を有しているものである。この筐体本体11は、例えば、内部が空洞の多角柱であり、その側壁の1つが無く開口部15を形成しているものを挙げることができる。
【0034】
筐体本体11の材料は、特に制限はないが、例えば、合成樹脂などを挙げることができる。
【0035】
筐体本体11は、その形状について特に制限はないが、例えば、四角柱状、六角柱状などとすることができる。
【0036】
(1-1-1a)凹部:
凹部13は、図7に示すように、箱状の筐体本体11の深さ方向に延びる有底状の穴であり、その底部17に、蓄電モジュール200からの圧力が導入される貫通孔からなる圧力導入路19を有してものである。この凹部13には、弾性部材である柱状の弁体20が収納され、弁体20の収納用の空間と言うこともできる。なお、図7は、本発明の圧力調整弁の一の実施形態を厚さ方向に切断した断面(即ち、略四角柱状の圧力調整弁をその中心軸方向(弁体20が並ぶ軸方向)に直交する平面で切断した断面)を模式的に示す断面図である。
【0037】
凹部13の形状は、特に制限はなく弁体20を適切に収納することができる限り、例えば、略円柱状とすることができる。凹部13は、その内壁面から凸部16が突出していてもよい(図8参照)。このように凸部16を形成することで、凹部13と弁体との間に隙間が形成され、弁体20が開弁した際に、この隙間を介して蓄電モジュール200からの圧力が解放される(即ち、この隙間が蓄電モジュール200から排出されるガスの流路となる)。
【0038】
凹部13の大きさは、特に制限はなく、凹部13が略円柱状の空間である場合、その開口における最大外径及び軸方向の長さ(筐体本体11の深さ方向の長さ)を適宜設定することができる。
【0039】
凹部13は、1つの筐体本体11に1つであってもよいし、図2に示すように、複数設けることでもよい。複数の凹部13を設けること(即ち、各凹部13に収納された弁体20を複数用いること)で、蓄電モジュール200が複数個のパッケージを有する場合にも対応することができ、蓄電モジュール200からの圧力を速やかに減少させることができる。
【0040】
(1-1-1b)圧力導入路:
圧力導入路19は、図7図8に示すように、筐体本体11を貫通する柱状の空間である圧力導入部31と、この圧力導入部31と連なり底部17の表面に開口する空間である溝部33と、を有している。この圧力導入路19を介して、圧力調整弁100と蓄電モジュール200が連通し、蓄電モジュール200内の圧力が上昇した際には、圧力調整弁100も同様の圧力を受けることになる。そして、所定の圧力を超えた場合に、圧力調整弁100が開弁し、蓄電モジュール200内の圧力を低下させることができる。
【0041】
(1-1-1b-1)圧力導入部:
圧力導入部31は、蓄電モジュール200と連通する貫通孔である(図7参照)。即ち、この圧力導入部31は、筐体本体11の表面側に開口するとともに、凹部13の底部17側にも開口している。この圧力導入部31の外径は、特に制限はなく、従来公知の蓄電モジュール用の圧力調整弁に形成される圧力導入部と同様とすることができる。
【0042】
圧力導入部31は、通常、円柱状の空間であるが、この形状については特に制限はなく、楕円柱状の空間とすることでもよく、多角状(多角形状)の空間とすることもできる。
【0043】
(1-1-1b-2)溝部:
溝部33は、圧力導入部31と連なり底部17の表面に開口する空間である(図7図8参照)。この溝部33は、これを設けることにより、圧力導入路19における底部17側の開口面積を、圧力導入部31の底部17側の開口面積よりも大きくすることができる。つまり、圧力導入部31のみを形成した場合に比べて、溝部33を設けた分だけ圧力導入路19の開口面積が大きくなる。そして、この溝部33の開口面積を適宜調節すると、弁体20が圧力を受ける面積の大きさ(受圧面積の大きさ)を調節することができる。つまり、弁体20が受ける圧力の単位面積当たりの大きさによって開弁するか否かが決定されるので、蓄電モジュール200からの圧力が一定である場合、受圧面積を調節することで、開弁するタイミングを精度よく制御することができる。別言すれば、圧力調整弁における所望の動作圧力を実現することができ、特定の圧力を受けたときに開弁する精度のよい圧力調整弁を得ることができる。
【0044】
溝部33の開口面積は、上述の通り、蓄電モジュール200の状態などに応じて適宜設定することができる。
【0045】
溝部33は、その形状について特に制限はないが、図8に示すように、圧力導入部31の一部から外方に延びる径方向溝部40を有する形状であることが好ましい。この径方向溝部40を有する構造とすることによって、更に精度よく開弁させることができる。即ち、溝部33が、圧力導入部31の全部から外方に延びる場合(溝部33が圧力導入部31の全周に沿って形成されている場合)、弾性部材である弁体20が撓んで溝部33に過剰に入り込み圧力導入部31を塞いでしまう懸念もある。これを回避するために、溝部33を深くすることが考えられるが、この場合、弁体20の状態を不安定化してしまう傾向がある。そこで、溝部33が圧力導入部31の一部から外方に延びるようにすると(溝部33が径方向溝部40を有する形状とすると)、弁体20に明確なつぶしを与えつつ、溝部33で部分的に圧力を導入することができることから、上記懸念を解消することができる。
【0046】
径方向溝部40は、図9に示すように1箇所形成されてもよいし、図8図10に示すように複数個形成されても良い。複数個形成される場合、各径方向溝部40の位置関係は特に制限はないが、圧力導入部31の周方向に等間隔で配置されることができる。このようにすることで、弁体20に加わる圧力が均一になり、より精度よく所望のタイミングで弁体20を開弁させることができる。
【0047】
複数個の径方向溝部40を形成する場合、その数には特に制限はないが、例えば、2~6個程度とすることができる。
【0048】
径方向溝部40は、圧力導入部31の一部から外方に延びる限り、延びる方向や開口の形状について特に制限はなく、例えば、開口の形状としては、四角形や六角形などの多角形状(多角状)、扇状、半円状、半楕円状などとすることができる。径方向溝部40の開口の形状は、例えば図8図10のように、凹部13の底部17を上方から見た平面図において描かれる径方向溝部40の閉じられた空間の形状をいう。
【0049】
図8図9には、径方向溝部40の開口の形状が、四角形である例を示し、図10には、径方向溝部40の開口の形状が、扇状である例を示している。
【0050】
ここで、蓄電モジュール200内が高温になり、弁体20が高温に曝されると、弁体20が軟化して溝部33に食い込む傾向がある。そして、その状態で弁体20が冷却されると、溝部33に弁体20が食い込んだままの状態となり易い。この場合、弁体20に再び圧力が加えられると、溝部33に食い込んでいることに起因して、開弁に必要な圧力が上昇してしまう傾向がある。また、冷却された後だけでなく、高温時における弁体20の極端な食込みが生じる傾向がある。そのため、所望の圧力で精度よく開弁させることができないことが懸念される。このような懸念があるが、開口の形状が扇状等の径方向溝部40であると、冷却された後だけでなく高温時においても、更に精度よく開弁させることができるという利点がある。なお、この利点は、開口の形状が扇状等の場合に限らず、図11に示すように底面43が傾斜面である場合、図12に示すように径方向溝部40と交差方向溝部45を有する形状(T字状)である場合、図13に示すように環状溝部49(連通溝)を有する場合にも発揮される。
【0051】
径方向溝部40は、以下のように形成されていることが好ましい。即ち、圧力導入部31の延びる方向に直交する断面において、圧力導入部31の形状が円形である場合、径方向溝部40の一対の側壁41が、圧力導入部31の径方向と平行であるか、或いは、圧力導入部31の径方向と平行でなく圧力導入部31の径方向に対して斜めに形成されていることが好ましい。一対の側壁41が、圧力導入部31の径方向と平行であると(長方形の開口形状であると)、長さと幅の2つの特性だけであるため管理が容易である。また、一対の側壁41が、圧力導入部31の径方向に対して斜めに形成されていると、弁体20のつぶしが発生している中央部(底部17の中央部)において受圧面積(投影面積)を抑えつつ、中央部よりも外方の外周側で受圧面積を拡大させることができる。
【0052】
例えば、図8では、圧力導入部31の延びる方向に直交する断面において、圧力導入部31の形状が円形である場合を示し、各径方向溝部40の一対の側壁41が、圧力導入部31の径方向と平行である例を示している。図10では、圧力導入部31の延びる方向に直交する断面において、圧力導入部31の形状が円形である場合を示し、各径方向溝部40の一対の側壁41が、圧力導入部31の径方向と平行でなく圧力導入部31の径方向に対して斜めに形成されている例を示している。なお、図10では、各径方向溝部40の一対の側壁41が、外方に向かうに従って互いの距離が離れる態様を示しているが、外方に向かうに従って互いの距離が近づく態様としてもよい。
【0053】
径方向溝部40の一対の側壁41は、その間の距離(最小距離)Xは特に制限はなく適宜設定することができる。距離Xを適切に設定すると、弁体20が径方向溝部40に更に食い込み難くなり、更に精度よく開弁させることができる。
【0054】
径方向溝部40は、その底面43が、凹部13の底部17の表面と平行となる平面であってもよいし、圧力導入部31から外方に向かって径方向溝部40の深さが次第に浅くなる傾斜面であってもよい。ここで、底面43を上記のような傾斜面とすると、例えば開口形状が扇状のように径方向溝部40の面積が大きい場合、この径方向溝部40に弾性部材である弁体が食い込む程度(食い込み量)が大きくなる傾向が有り、物理的な食い込み量を抑制することができる。
【0055】
図7には、径方向溝部40の底面43が、凹部13の底部17の表面と平行となる平面である例を示している。また、図11には、径方向溝部40の底面43が傾斜面であり、この傾斜面が、圧力導入部31から外方に向かって径方向溝部40の深さが次第に浅くなるものである例を示している。
【0056】
溝部33は、図12に示すように、径方向溝部40以外に、この径方向溝部40と交差する交差方向溝部45を更に有することができる。そして、圧力導入部31の延びる方向に直交する断面において、圧力導入部31の形状が円形である場合、交差方向溝部45は、圧力導入部31を構成する壁面31aとの同心円の一部である円弧に沿って形成される円弧状溝部47を有することができる。なお、円弧状溝部47に限らず、開口形状が多角形状の溝であってもよい。
【0057】
交差方向溝部45(特に円弧状溝部47)を有すると、弁体20が径方向溝部40に更に食い込み難くなり、更に精度よく開弁させることができる。つまり、径方向溝部40は、弁体20の食い込みが生じ難いものではあるが、例えば開口形状が四角形などのように、径方向溝部40の一対の側壁41が、圧力導入部31の径方向と平行である場合、径方向溝部40の自由端部側(即ち、圧力導入部側)において食い込みやすい傾向がある。そこで、この径方向溝部40と交差する交差方向溝部45を更に設けることによって、弁体20が径方向溝部40の自由端部に食い込む力が低減され、当該部分における弁体20の食い込みの発生を抑制することができる。
【0058】
円弧状溝部47は、その円弧の角度(中心角)が、30~60°であることがよい。このような範囲とすることによって、径方向溝部40の自由端部側における弁体20の食い込みの発生を更に抑制することができる。なお、円弧の角度において、「円弧」は、一対の側壁のそれぞれによって描かれる円弧を言うものとする。つまり、一対の隔壁によって描かれる円弧のそれぞれが、上記中心角の範囲を満たすものであることがよい。
【0059】
交差方向溝部45は、円弧状溝部47の他に、図13に示すように、環状の溝である環状溝部49を有することでもよい。図13では、各径方向溝部40が環状溝部49によって互いに連通している例を示しているが、全ての径方向溝部40が互いに連通しないものでもよい。環状溝部49を設けることで、更に精度よく開弁させることができる。即ち、上述したように、溝部33に弁体20が食い込んだままの状態であることに起因して、開弁に必要な圧力が上昇してしまう懸念があるが、これを解消し、所望の圧力で精度よく開弁させることができる。
【0060】
交差方向溝部45の一対の側壁41は、その間の距離Yについて特に制限はなく、例えば径方向溝部40の一対の側壁41の間の距離Xと同じとすることができる。
【0061】
(1-1-1b-3)ビード部:
凹部13の底部17には、図17図18に示すようにビード部50を設けてもよい。具体的には、図17に示すように、交差方向溝部45が、環状であり、この環状の交差方向溝部45の外側に環状のビード部50が形成されている態様とすることもできる。このようにビード部50を設けることによって、弁体20と凹部13の底部17とが張り付く状態の発生を抑制し、開弁圧の増加を抑えることができる。特に高温放置後での開弁圧の増加を抑制することができる。即ち、長時間、高温環境に曝された場合、弁体20と凹部13の底部17とが固着し、開弁圧が増加する傾向がある。このような固着の要因は、材料同士の相性(表面エネルギーなど)、温度環境、接触面積などがある。このうちの接触面積に着目し、ビード部50を設けることができる。そして、このビード部50を設ける際には、接触面積を低減させるために、底部17の面積に対して溝部33が占める面積を増加させることがよい。なお、ビード部50は、上述の通り、環状であり、より具体的には、途中で途切れた部分がなく連続したリング状である。このビード部50は、環状であればその形状(図17のように平面視した際の形状)は特に制限はなく、円環状、楕円環状、多角環状などとすることができる。
【0062】
ビード部50は、その高さについて特に制限はなく適宜設定することができ、ビード部50のいずれの位置においても同じ高さとすることができる。また、ビード部50の高さは、図18に示すように、底部17の他の部分よりも高くなっていることができる。
【0063】
ビード部50を設ける際、底部17の面積に対して溝部33が占める面積は、材料や環境温度によって適宜設定できる。
【0064】
ビード部50は、その高さ方向に沿った断面における形状について、特に制限はなく、例えば、長方形状、台形状、半円状などとすることができる。
【0065】
ビード部50の形成位置は、交差方向溝部45の外側である限り特に制限は無く適宜決定することができるが、突起部14の外周縁との関係としては以下のようにすることができる。即ち、ビード部50と突起部14とをこの突起部14の中心軸方向から見たとき(図19参照)、突起部14の全部が、環状のビード部50の内側の領域内に位置することがよい。このようにすると、より確実に開弁圧の増加を抑えることができる。
【0066】
図19では、ビード部50は、交差方向溝部45の外縁部分に形成されており、このような位置に形成すると、開弁圧の低下を抑制することができる。つまり、粘着を抑制するにはゴムからなる弁体の接触面積を必要最低限にする必要があるが、その場合、受圧面積が増加するため開弁圧が低下する傾向がある。そのため、外縁部分にビード部を設けることで、ゴムである弁体のたわみ量を増加させ、その結果、開弁圧の低下を抑制することができる。
【0067】
(1-1-2)蓋体:
蓋体12は、筐体本体11の開口部15を塞ぐものであり、弁体20の端面21と接する突起部14を有している(図5図6参照)。この蓋体12は、筐体本体11の開口部15と溶着などの方法によって筐体本体11に固定される。この蓋体12には、圧力排出孔が形成されており、圧力調整弁100内で圧力が上昇した場合、この圧力排出孔から圧力調整弁100内のガスが排出され、圧力調整弁100内の圧力が低下する。
【0068】
蓋体12の材料は、特に制限はなく筐体本体11の材料と同様の材料を適宜採用することができ、例えば、合成樹脂などを挙げることができる。
【0069】
(1-1-2a)突起部:
突起部14は、図7に示すように、弁体20の端面21と接するものであり、筐体本体11の開口部15を蓋体12で塞ぐことで、弁体20を加圧する。そして、この弁体20が圧力導入路19を気密に塞ぐことになる。
【0070】
突起部14は、筐体本体11の開口部15を蓋体12で塞ぐことで、弁体20を加圧することができる限り、その形状や寸法については特に制限はなく、例えば、円柱状、楕円柱状、多角柱状などとすることができる。
【0071】
突起部14は、弁体20と接する頂面が、圧力導入路19における、凹部13の底部17側の開口の全部を覆わない大きさであることがよい。即ち、図14に示すように、突起部14の軸方向から、突起部14の頂面の外縁Aと、圧力導入路19における、凹部13の底部17側の開口の外縁Bとの位置関係を見ると、外縁Bの少なくとも一部が、外縁Aの外側に位置していることがよい。即ち、外縁Bが外縁Aから食み出していることがよい。このように突起部14の径(断面積)よりも圧力導入路19が外側に飛び出すように設定することで、突起部14が弁体20を押しつぶす量が寸法バラツキ等に起因して増加した場合にも、開弁圧に対する影響が小さくなる。
【0072】
突起部14の高さは、弁体20の厚さとの関係等に基づいて適宜設定することができる。突起部14の高さを調節することにより、筐体本体11の開口部15を蓋体12で塞いだ際に弁体20を良好に加圧することができ、この弁体20によって圧力導入路19を気密に塞ぐことができる。
【0073】
(1-2)弁体:
弁体20は、筐体10における筐体本体11の凹部13に収納される弾性部材である柱状のものである。そして、この弁体20は、圧力導入路19における、凹部13の底部17側の開口を覆うように配置される。更には、弁体20は、その外径に比べて軸方向の長さの方が短いものである。この弁体20によって、圧力導入路19の開口を塞ぐことで、圧力調整弁100を蓄電モジュール200に連通させた後にも、蓄電モジュール200内が所望の圧力に到達するまでは、圧力導入路19の気密状態が維持される。そして、蓄電モジュール200内の圧力が所望の値まで上昇した際には、この弁体20が凹部13の底部17から離間し、弁体20と凹部13の底部17との間に隙間を生じさせ、この隙間から、蓄電モジュール200内の圧縮ガスを、蓄電モジュール200から圧力調整弁100内に導入し、蓄電モジュール200内の圧力を低下させる。蓄電モジュール200内の圧力低下後は、弁体20の弾性力により弁体20が元の位置に戻り、凹部13の底部17と接して圧力導入路19を気密に塞ぐことになる。
【0074】
弁体の材料は、弾性部材である限り特に制限はなく、例えば、ゴムなどを挙げることができる。
【0075】
弁体20は、上述したように、その外径に比べて軸方向の長さの方が短いものである。このようにすると、特許文献2に示すような従来の圧力調整弁のように弁体20の軸方向の長さに起因して開弁圧がばらつくことを回避することができる。つまり、従来の圧力調整弁の弁体は、この弁体を収納する凹部の深さよりも長いものであり、このような長さとすることにより、凹部に収納された際に、弁体がその弾性力を発揮し、圧力導入路19を気密に塞いでいる。しかし、弁体は、長いほどその作製精度によって弾性力にばらつきが生じることになる。そのため、蓄電モジュール200内から、開弁すべき所望の圧力を受けたにもかかわらず開弁動作をしない傾向があった。そこで、本発明のように、弁体について、その軸方向の長さに比べて外径が小さいものとすることで、弁体の長さに起因する開弁動作のばらつきを抑制することができる。
【0076】
弁体20は、図2図3図7に示すように、柱状のものであるが、上述の通り、外径に比べて軸方向の長さの方が短いものであり、この「柱状」とは、板状、盤状と言うこともできる。より具体的には、弁体20は、略円盤状などとすることができる。
【0077】
(2)圧力調整弁の使用方法:
本発明の圧力調整弁の一の実施形態である圧力調整弁100は、例えば、以下のように使用することができる。まず、圧力調整弁100を蓄電モジュール200に接続し固定して(図1参照)、圧力調整弁100内部と蓄電モジュール200内部とを圧力導入路19を介して連通させる。
【0078】
蓄電モジュール200を使用した際、例えばニッケル水素電池においてこの電池内で、過放電等により水素が発生することがあり、これによって電池内部の圧力が上昇することがある。この場合、図15に示すように圧力調整弁100(圧力導入路19)内の圧力も同様に上昇する。そして、圧力調整弁100(圧力導入路19)内の圧力が、所定の圧力を超えると、この圧力によって開弁動作が行われる。即ち、図16に示すように、圧力調整弁100の弁体20が凹部13の底部17から離間して、弁体20と凹部13の底部17との間に隙間を生じさせる。そして、この隙間を通して、蓄電モジュール200内の圧縮ガス(黒い矢印で示す)が圧力調整弁100内に導入される。このように圧縮ガスが圧力調整弁100内に導入されると、蓄電モジュール200内の圧力は低下し、蓄電モジュール200が破損するような事態を回避することができる。圧力調整弁100内に導入された圧縮ガスは、凹部13を通り、蓋体12の排出孔から排出される。
【0079】
弁体20の開弁動作の開始のタイミングは、蓄電モジュール200内の圧縮ガスから弁体20が受ける圧力の大きさによって定まるものである。つまり、弁体20が受ける単位面積当たりの圧力が所定以上の値となると、開弁動作が行われるように設計されている。本発明では、溝部33を形成し、更にその開口面積を調節することにより、弁体20が受ける単位面積当たりの圧力の大きさを調整している。このとき、弁体20を所定の寸法とすることにより、弾性材料からなる弁体20の作製誤差等による弾性力のばらつきによる影響を低減させている。
【0080】
なお、弁体20を所定の寸法とすることにより、弁体20の単位当たりのコストを低減することができ、交換におけるコストを下げることができる。
【0081】
(3)圧力調整弁の他の実施形態:
圧力調整弁の他の態様としては、図20示す圧力調整弁101を挙げることができる。この圧力調整弁101は、開口部15を有し内側に凹部13が形成された筐体本体110及び当該筐体本体110の開口部15を塞ぐ蓋体12を有する筐体10と、筐体10における筐体本体110の凹部13に収納される弾性部材である盤状の弁体20と、を備えている。そして、筐体本体110は、凹部13の底部17に、蓄電モジュールからの圧力が導入される貫通孔からなる圧力導入路190を有している。弁体20は、その厚さ方向の長さが、凹部13の深さよりも短く、且つ、外径に比べて厚さが小さいものであって、筐体本体110の凹部13の内壁面13aと接して密封構造を形成するリップ部23を有している。そして、この圧力調整弁101は、弁体20が凹部13内を気密にするものであり、蓄電モジュール用のものである。
【0082】
なお、「凹部の深さ」は、内壁面及び底部を有する凹部における内壁面の高さ(凹部の軸方向の長さ)を意味する。そのため、例えば、凹部の底部がテーパー状である場合には、内壁面と底部との境界部分までが「凹部の深さ」となる。
【0083】
このような圧力調整弁101は、精度良く所望の圧力で作動させること(即ち、蓄電モジュール内の圧力を低下させる動作をすること)ができ、工数を少なく製造できるものである。
【0084】
具体的には、まず、圧力調整弁101は、圧力を受けた際にその圧力の大きさによって作動するか否かが決まる。ここで、どの程度の圧力を受けた場合に作動するかを制御することは重要となる。作動する圧力を精度よく調整することはより重要であり、特許文献2に記載のような従来の圧力調整弁では更なる改良の余地がある。
【0085】
即ち、特許文献2に記載のような従来の圧力調整弁では、その調整弁としての機能は、弾性部材の弾性特性(即ち、バネ要素)に拠るところが大きく、弾性部材を製作するにあたり、硬度のばらつきの影響が大きい。更に、従来の圧力調整弁における調整弁としての機能は、弾性部材のへたりや経時変化の影響を受けやすい。つまり、圧力調整弁は、上記のように所望の圧力が加わった際に作動することが望まれるが、従来の圧力調整弁では、上記の要素により、所望の圧力で精度よく作動させることは簡単でない傾向がある。
【0086】
更に、特許文献2に記載のような従来の圧力調整弁は、これを構成する弾性部材についてその軸方向の長さを一定程度設ける必要があり、製作工法上において、工法が限定され工程が掛かる(即ち、安価に製作し難い)という傾向がある。
【0087】
また、圧力調整弁としてリップ付のゴムが知られている(例えば、特開2020-102541号公報、特開2006-156868号公報)。しかし、特開2020-102541号公報では、リップ部が接触する相手面(弁座)の角度やゴムである弁本体の偏心等により特性が変化する懸念がある。また、特開2006-156868号公報では、位置決め用ゴムの寸法バラツキなどの影響により、リップ部(シールリップ)の接触状態が不安定化する懸念がある。
【0088】
そこで、本発明の圧力調整弁の構成を採用することにより、弁体20が弾性部材であることに起因して作動するための圧力にばらつきが生じることを抑制し、受けた圧力に応じて精度よく作動させることができる。更には、所望の大きさを満たす弾性部材とすることで、一括製作が可能となり、工数を少なく製造できる。その結果、安価に製作することができる。また、上述の通り、特開2020-102541号公報では、上記懸念がある一方、本発明では、弁体が接触する面は外周のみであり、弾性部材である弁体単品にて調芯する機能を持つため、開弁圧の安定化が期待できる。また、特開2006-156868号公報には、上記懸念がある一方、本発明では、位置決めを目的とした圧縮が必要でないため、上記のような懸念を軽減できる。
【0089】
(3-1)筐体:
筐体10は、図20に示すように、開口部15を有し内側に凹部13が形成された筐体本体110及び当該筐体本体110の開口部15を塞ぐ蓋体12を有している。このような筐体10は、蓄電モジュール200に連結され(図1参照)、凹部13の底部17に形成された貫通孔である圧力導入路190を介して蓄電モジュール200の内部と連通することになる。
【0090】
筐体10の形状は、特に制限はなく、上述した圧力調整弁100と同様に、略四角柱状などとすることができる。
【0091】
筐体10の大きさは、特に制限はなく、蓄電モジュールの大きさとの関係で適宜設定することができる。
【0092】
(3-1-1)筐体本体:
筐体本体110は、図20に示すように、開口部15を有する箱状のものであり、その内側に凹部13が形成されている。そして、この凹部13の底部17には、蓄電モジュール200からの圧力が導入される貫通孔からなる圧力導入路190を有しているものである。この筐体本体110は、例えば、内部が空洞の多角柱であり、その側壁の1つが無く開口部15を形成しているものを挙げることができる。
【0093】
筐体本体110の材料は、特に制限はないが、例えば、合成樹脂などを挙げることができる。
【0094】
筐体本体110は、その形状について特に制限はないが、例えば、四角柱状、六角柱状などとすることができる。
【0095】
(3-1-1a)凹部:
凹部13は、図20に示すように、箱状の筐体本体110の深さ方向に延びる有底状の穴であり、その底部17に、蓄電モジュール200からの圧力が導入される貫通孔からなる圧力導入路190を有してものである。この凹部13には、弾性部材である盤状の弁体20が収納され、弁体20の収納用の空間と言うこともできる。
【0096】
凹部13の形状は、特に制限はなく弁体20を適切に収納することができる限り、例えば、略円柱状とすることができる。
【0097】
凹部13の大きさは、特に制限はなく、凹部13が略円柱状の空間である場合、その開口における最大外径及び軸方向の長さ(筐体本体110の深さ方向の長さ)を適宜設定することができる。
【0098】
凹部13は、1つの筐体本体110に1つであってもよいし、複数設けることでもよい。複数の凹部13を設けること(即ち、各凹部13に収納された弁体20を複数用いること)で、蓄電モジュール200が複数個のパッケージを有する場合にも対応することができ、蓄電モジュール200からの圧力を速やかに減少させることができる。
【0099】
(3-1-1b)圧力導入路:
圧力導入路190は、図20に示すように、凹部13の底部17に形成され、蓄電モジュールからの圧力が導入される貫通孔である。この圧力導入路190を介して、圧力調整弁101と蓄電モジュール200が連通し、蓄電モジュール200内の圧力が上昇した際には、圧力調整弁101も同様の圧力を受けることになる。そして、所定の圧力を超えた場合に、圧力調整弁101が作動し、蓄電モジュール200内の圧力を低下させることができる。
【0100】
(3-1-2)蓋体:
蓋体12は、筐体本体110の開口部15を塞ぐものである(図20参照)。この蓋体12は、筐体本体110の開口部15と溶着などの方法によって筐体本体110に固定される。この蓋体12には、圧力排出孔が形成されており、圧力調整弁101内で圧力が上昇した場合、この圧力排出孔から圧力調整弁101内のガスが排出され、圧力調整弁101内の圧力が低下する。
【0101】
蓋体12の材料は、特に制限はなく筐体本体11の材料と同様の材料を適宜採用することができ、例えば、合成樹脂などを挙げることができる。
【0102】
(3-1-2a)突起部:
蓋体12は、図22に示すように、弁体20の端面21と接する突起部14を有していることでもよい。弁体20の端面に窪み20aを設けることで、この窪みと突起部14とを係合させて、弁体20に位置決めの機能を持たせることもできる。なお、突起部14のうち、弁体20と接する部分は、蓋体12の裏面12aには該当しない。
【0103】
突起部14は、その形状や寸法については特に制限はなく、例えば、円柱状、楕円柱状、多角柱状などとすることができる。
【0104】
突起部14の高さは、弁体20の厚さとの関係等に基づいて適宜設定することができる。このようにすると、筐体本体110の開口部15を蓋体12で塞ぐ際に弁体20の位置がずれることを良好に防止することができる。
【0105】
(3-2)弁体:
弁体20は、図21に示すように、筐体10における筐体本体110の凹部13に収納される弾性部材である盤状のものである。そして、この弁体20は、その厚さ方向の長さが、凹部13の深さよりも短く、且つ、外径に比べて厚さが小さいものである。この弁体20によって、凹部13を気密にすることで、圧力調整弁101を蓄電モジュール200に連通させた後にも、蓄電モジュール200内が所望の圧力に到達するまでは、圧力導入路190の気密状態が維持される。そして、蓄電モジュール200内の圧力が所望の値まで上昇した際には、この弁体20のリップ部23が変形して、リップ部23と凹部13の内壁面13aとの間に隙間が生じ、気密性が破られる。これにより、蓄電モジュール200内の圧力が低下される。なお、蓋体12に突起部14を設けると、蓄電モジュール200内の圧力低下後は、弁体20の弾性力により弁体20が元の位置に戻ることになる。なお、凹部13の深さとは、凹部13の側面の幅(軸方向の長さ)のことである。
【0106】
弁体20は、上記の通り、厚さ方向の長さが、凹部13の深さよりも短く、このような構成を採用することで作製時におけるばらつきを低減することができ、より精度よく所望の圧力で作動させることができる。
【0107】
更に言うと、弁体20を上記構成とすることで特許文献2に示すような従来の圧力調整弁のように弁体20の軸方向の長さに起因して作動圧力がばらつくことを回避することができる。つまり、従来の圧力調整弁の弁体は、この弁体を収納する凹部の深さよりも長いものであり、このような長さとすることにより、凹部に収納された際に、弁体がその弾性力を発揮し、圧力導入路190を気密に塞いでいる。しかし、弁体は、長いほどその作製精度によって弾性力にばらつきが生じることになる。そのため、蓄電モジュール200内から、作動すべき所望の圧力を受けたにもかかわらず作動しない傾向があった。そこで、本発明のように、弁体について、その外径に比べて厚さを小さくすることで、弁体の長さに起因する作動開始のタイミングのばらつきを抑制することができる。
【0108】
弁体の材料は、弾性部材である限り特に制限はなく、例えば、ゴムなどを挙げることができる。
【0109】
弁体20は、柱状のものであるが、上述の通り、外径に比べて厚さ方向の長さが小さいものであるため、この「柱状」とは、板状、盤状と言うこともできる。より具体的には、弁体20は、略円盤状などとすることができる。
【0110】
弁体20は、その厚さ方向の長さが、凹部13の深さよりも短いことから、図20に示すように、蓋体12の裏面12aから離間して配置することができる。このように蓋体12の裏面12aから離間して配置する場合、蓋体12に接していないことから、相手部(蓋体12)に溝を設置する必要がなくなり、構造の単純化を図ることができる。また、上下の拘束を最小限にすることができるため、弁体20の作動が阻害されない。
【0111】
(3-2a)リップ部:
リップ部23は、筐体本体110の凹部13の内壁面13aと接して密封構造を形成するものである。このようなリップ部23は従来公知の密封構造に使用されるリップ部と同様の構造のものを適宜採用することができる。
【0112】
リップ部23は、図23図24に示すように、2つのリング状の突起が隣り合うような二段のものとしてもよい。このようにすることで、弁体20により凹部13の気密状態を更に良好に確保することができる。図23は、第二の発明の圧力調整弁の更に他の実施形態における図7に示す断面に対応する断面を模式的に示す断面図である。また、図24は、図23に示す圧力調整弁101を構成する弁体20を模式的に示す斜視図である。
【0113】
(4)圧力調整弁の使用方法:
第二の発明である圧力調整弁の一の実施形態である圧力調整弁101は、例えば、以下のように使用することができる。まず、圧力調整弁101を蓄電モジュール200に接続し固定して、圧力調整弁101内部と蓄電モジュール200内部とを圧力導入路190を介して連通させる。
【0114】
蓄電モジュール200を使用した際、例えばニッケル水素電池においてこの電池内で、過放電等により水素が発生することがあり、これによって電池内部の圧力が上昇することがある。この場合、圧力調整弁101(圧力導入路190)内の圧力も同様に上昇する。そして、圧力調整弁101(圧力導入路190)内の圧力が、所定の圧力を超えると、この圧力によって減圧動作が行われる。即ち、弁体20のリップ部23と凹部13の側面との間に隙間が形成される。これにより蓄電モジュール200内の圧縮ガスが圧力調整弁101外に導入され、蓄電モジュール200内の圧力が低下し、蓄電モジュール200が破損するような事態を回避することができる。
【0115】
弁体20の減圧動作は、蓄電モジュール200内の圧縮ガスから弁体20が受ける圧力の大きさによって開始のタイミングが決まる。つまり、弁体20が受ける単位面積当たりの圧力が所定以上の値となると、減圧動作が行われるように設計されている。本発明では、弁体20を所定の寸法とする(厚さ方向の長さを短くして、蓋体12から離間させる寸法とする)ことにより、弾性材料からなる弁体20の作製誤差等による弾性力のばらつきによる影響を低減させて、減圧動作の開始のタイミングをより精度よく制御している。
【0116】
なお、弁体20を所定の寸法とすることにより、弁体20の単位当たりのコストを低減することができ、交換におけるコストを下げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の圧力調整弁は、車両などに用いられる蓄電モジュールに用いられる圧力調整弁として利用することができる。
【符号の説明】
【0118】
10:筐体
11,110:筐体本体
12:蓋体
12a:裏面
13:凹部
13a:内壁面
14:突起部
15:開口部
16:凸部
17:底部
19,190:圧力導入路
20:弁体
20a:窪み
21:端面
23:リップ部
31:圧力導入部
31a:壁面
33:溝部
35:開口
40:径方向溝部
41:側壁
43:底面
45:交差方向溝部
47:円弧状溝部
49:環状溝部
50:ビード部
60:セル
100,101:圧力調整弁
200:蓄電モジュール
図1
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