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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】部品実装装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/02 20060101AFI20231222BHJP
【FI】
H05K13/02 V
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020024816
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2021132052
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】森田 敬太
(72)【発明者】
【氏名】石本 憲一郎
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-295776(JP,A)
【文献】国際公開第2005/107354(WO,A1)
【文献】特開平10-032376(JP,A)
【文献】特開2014-041873(JP,A)
【文献】特開2003-218595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/30;
13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業位置に位置した基板を下受けする下受け部と、前記下受け部によって下受けされた前記基板に部品を装着する部品装着手段とを備えた部品実装装置であって、
前記下受け部は、前記作業位置に位置した前記基板の下方で昇降する下受けベースと、下受けベースの上面に着脱自在に取り付けられて前記基板の下面に上端部を当接させる下受けピンとを有して成り、
前記下受け部によって下受けされた前記基板の部品装着対象領域内に設定された複数の計測点それぞれの高さを計測する高さ計測部と、
前記高さ計測部によって高さが計測された前記複数の計測点それぞれの高さに基づいて、前記基板の下受けが必要な部位を下受け部位に設定する下受け部位設定部と、
前記下受け部位設定部により設定された前記下受け部位が前記下受けピンによって下受けされるように前記下受けベースに前記下受けピンを設置するピン設置部とを備え
前記下受け部位は、前記高さ計測部によって計測された高さが最も低い計測点である最低高さ計測点を含む複数の計測点である、部品実装装置。
【請求項2】
前記高さ計測部は、前記下受けピンが設置された前記下受け部によって前記基板が下受けされた状態で前記最低高さ計測点を含む複数の計測点それぞれの高さを計測し、前記下受け部位設定部は、前記高さ計測部によって計測された高さが前記最低高さ計測点の高さよりも低い計測点があった場合にその計測点を新たな下受け部位に設定し、前記ピン設置部は、前記下受け部位設定部により設定された前記新たな下受け部位が前記下受けピンによって下受けされるように前記下受けベースに前記下受けピンを設置する請求項に記載の部品実装装置。
【請求項3】
作業位置に位置した基板を下受けする下受け部と、前記下受け部によって下受けされた前記基板に部品を装着する部品装着手段とを備えた部品実装装置であって、
前記下受け部は、前記作業位置に位置した前記基板の下方で昇降する下受けベースと、下受けベースの上面に着脱自在に取り付けられて前記基板の下面に上端部を当接させる下受けピンとを有して成り、
前記下受け部によって下受けされた前記基板の部品装着対象領域内に設定された複数の計測点それぞれの高さを計測する高さ計測部と、
前記高さ計測部によって高さが計測された前記複数の計測点それぞれの高さに基づいて、前記基板の下受けが必要な部位を下受け部位に設定する下受け部位設定部と、
前記下受け部位設定部により設定された前記下受け部位が前記下受けピンによって下受けされるように前記下受けベースに前記下受けピンを設置するピン設置部とを備え、
前記下受け部位は、前記高さ計測部によって計測された前記複数の計測点それぞれの高さに基づいて算出される前記基板の下反り形状の中の高さが最も低い部位を含む複数の部位である部品実装装置。
【請求項4】
前記ピン設置部はピン設置用ノズルを備えた前記部品装着手段を含み、前記部品装着手段は前記ピン設置用ノズルにより吸着した前記下受けピンを前記下受けベースに設置する請求項1~のいずれかに記載の部品実装装置。
【請求項5】
前記下受けピンは下端部に磁石を有し、前記下受けベースの上面は前記下受けピンの前記磁石と引き合う磁性体から構成されている請求項1~のいずれかに記載の部品実装装置。
【請求項6】
前記基板を前記作業位置に搬送する搬送手段を備え、前記搬送手段は、前記ピン設置部によって前記下受けピンが前記下受けベースに設置される前に前記基板を前記作業位置から移動させ、前記ピン設置部によって前記下受けピンが前記下受けベースに設置された後に前記基板を前記作業位置に戻す請求項1~のいずれかに記載の部品実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業位置において下受け部によって下受けされた基板に部品を装着する部品実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
部品実装装置は、搬送コンベアによって作業位置に位置された基板に対し、ノズルを備えた装着ヘッドから成る部品装着手段が部品をピックアップして基板に装着するようになっている。ここで、作業位置に位置された基板は下受け部によって下受けされ、基板の下反りが解消された状態で部品の装着作業がなされるようになっている(例えば、下記の特許文献1参照)。
【0003】
下受け部は、作業位置に位置した基板の下方で昇降する下受けベースと、下受けベースの上面に取り付けられて上方に延び、上端部を基板の下面に当接させる下受けピンとを有して構成される。下受けピンは下端部に磁石を有しており、上面が磁性体から構成される下受けベースに対して着脱できるようになっている。このため下受けピンは下受けベースの上面の任意の位置に取り付けることができ、基板の下反りを解消するために下面側を下受けする必要がある基板上の部位を下受けピンによって下受けすることができる。
【0004】
また、部品実装装置の中には、下受けピンの設置作業を自動で行うことができるようになっているものが知られている。これは、下受けピンを吸着するための専用のノズルを備えた装着ヘッドがその専用ノズルによって下受けピンの上端を吸着し、下受けベースに設定した下受けピンの設置位置(ピン設置位置)に下受けピンを降ろすことで、下受けピンを下受けベースに取り着ける(磁力により結合させる)ことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-45785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の部品実装装置において、基板の下反りが解消されるようにするために基板を下受けするべき部位を見つける作業は難しく、作業者の経験が少ない場合には設置した下受けピンによっては基板の下反りが十分に解消されず、部品の装着精度が低下するおそれがあるという問題点があった。
【0007】
そこで本発明は、作業者の作業経験によらず基板の下反りを解消して基板に対する部品の装着精度を向上させることができる部品実装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の部品実装装置は、作業位置に位置した基板を下受けする下受け部と、前記下受け部によって下受けされた前記基板に部品を装着する部品装着手段とを備えた部品実装装置であって、前記下受け部は、前記作業位置に位置した前記基板の下方で昇降する下受けベースと、下受けベースの上面に着脱自在に取り付けられて前記基板の下面に上端部を当接させる下受けピンとを有して成り、前記下受け部によって下受けされた前記基板の部品装着対象領域内に設定された複数の計測点それぞれの高さを計測する高さ計測部と、前記高さ計測部によって高さが計測された前記複数の計測点それぞれの高さに基づいて、前記基板の下受けが必要な部位を下受け部位に設定する下受け部位設定部と、前記下受け部位設定部により設定された前記下受け部位が前記下受けピンによって下受けされるように前記下受けベースに前記下受けピンを設置するピン設置部とを備え、前記下受け部位は、前記高さ計測部によって計測された高さが最も低い計測点である最低高さ計測点を含む複数の計測点である
もうひとつの本発明の部品実装装置は、作業位置に位置した基板を下受けする下受け部と、前記下受け部によって下受けされた前記基板に部品を装着する部品装着手段とを備えた部品実装装置であって、前記下受け部は、前記作業位置に位置した前記基板の下方で昇降する下受けベースと、下受けベースの上面に着脱自在に取り付けられて前記基板の下面に上端部を当接させる下受けピンとを有して成り、前記下受け部によって下受けされた前記基板の部品装着対象領域内に設定された複数の計測点それぞれの高さを計測する高さ計測部と、前記高さ計測部によって高さが計測された前記複数の計測点それぞれの高さに基づいて、前記基板の下受けが必要な部位を下受け部位に設定する下受け部位設定部と、前記下受け部位設定部により設定された前記下受け部位が前記下受けピンによって下受けされるように前記下受けベースに前記下受けピンを設置するピン設置部とを備え、前記下受け部位は、前記高さ計測部によって計測された前記複数の計測点それぞれの高さに基づいて算出される前記基板の下反り形状の中の高さが最も低い部位を含む複数の部位である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業者の作業経験によらず基板の下反りを解消して基板に対する部品の装着精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態1における部品実装装置の要部側面図
図2】本発明の実施の形態1における部品実装装置の一部の平面図
図3】本発明の実施の形態1における部品実装装置が備える基板搬送保持部を装着ヘッドとともに示す側面図
図4】本発明の実施の形態1における部品実装装置の制御系統を示すブロック図
図5】本発明の実施の形態1における部品実装装置が実行する下受けピン設置作業で基板に設定される高さ計測点の一例を示す基板の平面図
図6】本発明の実施の形態1における部品実装装置が基板搬送保持部によって保持した基板上の高さ計測点の高さを計測している状態を示す側面図
図7】本発明の実施の形態1における部品実装装置が設定する下受け部位とピン設置位置との対応を示す図
図8】本発明の実施の形態1における部品実装装置が備える下受けベースに下受けピンを設置している状態を示す側面図
図9】本発明の実施の形態1における部品実装装置が実行する部品実装作業のメインルーチンのフローチャート
図10】本発明の実施の形態1における部品実装装置が実行する部品実装作業のサブルーチンのフローチャート
図11】本発明の実施の形態1における部品実装装置が基板を作業位置から移動させた状態を示す平面図
図12】本発明の実施の形態1における部品実装装置が備える下受けベースに下受けピンを設置している状態を示す側面図
図13】本発明の実施の形態1における部品実装装置が基板を作業位置に戻した状態を示す平面図
図14】本発明の一実施の形態における部品実装装置により(a)計測点の高さ計測している状態を示す図(b)計測した計測点の高さに基づいて新たに設定したピン設置位置に下受けピンを設置した状態を示す図
図15】本発明の実施の形態1における部品実装装置が基板搬送保持部により保持した基板に部品を装着している状態を示す側面図
図16】本発明の実施の形態2における部品実装装置が実行する下受けピン設置作業で設定される最低高さ部位と複数の周辺部位の一例を示す基板の平面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
図1および図2は本発明の実施の形態1における部品実装装置1を示している。部品実装装置1は上流工程側から搬入した基板KBに部品BHを装着して下流工程側に搬出する部品装着作業を繰り返し実行する装置である。ここでは説明の便宜上、部品実装装置1における基板KBの搬送方向(作業者OPから見た左右方向)をX軸方向とし、X軸方向と直交する水平方向(作業者OPから見た前後方向)をY軸方向とする。また、上下方向をZ軸方向とする。
【0012】
図1において、部品実装装置1は、基台11、基板搬送保持部12、テープフィーダ13、装着ヘッド14、ヘッド移動機構15、部品カメラ16、高さセンサ17および制御装置18を備えている。基台11は床面FL上に設置されており、基板搬送保持部12は基台11上に設けられている。
【0013】
図2および図3において、基板搬送保持部12は一対の搬送コンベア21および下受け部22を備えている。一対の搬送コンベア21は基台11上に設けられており、基板KBの両端部を下方から支持してX軸方向に搬送して、所定の作業位置に基板KBを位置させる。すなわち本実施の形態において、基板搬送保持部12は、基板KBを作業位置に搬送する搬送手段となっている。
【0014】
図2および図3において、一対の搬送コンベア21はY軸方向に対向して配置された一対のフレーム21Fに支持されている。一対のフレーム21Fの上端それぞれには、互いに対向する方向(Y軸方向)に張り出した一対の基板押え部21Pが設けられている。基板搬送保持部12は上流工程側から送られてきた基板KBを一対の搬送コンベア21によって受け取って搬入し、作業位置の上方に基板KBを移動させて保持する。
【0015】
図3において、下受け部22は、平板状の下受けベース31と、下受けベース31の上面に立設された複数の下受けピン32を有して構成されている。下受けベース31は作業位置に位置した基板KBの下方に位置しており、昇降シリンダ33によって作業位置に位置した基板KBの下方を昇降されるようになっている(図3中に示す矢印A)。
【0016】
図3において、下受けピン32の下端部32Bには磁石32Mが設けられている。一方、下受けベース31の上面は磁性体31Jから成っている。このため下受けピン32は下端部を下受けベース31の上面に近づけると、その下端部に設けられている磁石32Mが下受けベース31の磁性体31Jとが磁力によって引き合い、下受けピン32が下受けベース31の上面に設置される。このように下受けピン32と下受けベース31とは磁力によって結合されるため、下受けピン32は下受けベース31の上面の任意の位置に取り付けることができ、その着脱も(従って移動も)自在である。
【0017】
下受け部22は、搬送コンベア21によって基板KBが作業位置に位置された状態で、昇降シリンダ33に駆動されて上昇すると、複数の下受けピン32の上端を基板KBの下面に当接させて、基板KBを押し上げる。これにより基板KBの両端部はそれぞれ2つの基板押さえ部21Pに下方から押し付けられ、基板KBは基板搬送保持部12に保持(詳細にはフレーム21Fに固定)された状態となる(図3)。
【0018】
このように本実施の形態において、下受け部22は、作業位置に位置した基板の下方で昇降する下受けベース31と、下受けベース31の上面に着脱自在に取り付けられて基板の下面に上端部を当接させる下受けピン32とを有した構成となっている。
【0019】
図1において、基台11の手前側(作業者OP側)の端部にはフィーダ台車DSが連結されている。フィーダ台車DSの上部にはフィーダベースFBが設けられており、テープフィーダ13はフィーダベースFBに着脱自在に取り付けられている。図2に示すように、フィーダベースFBには、複数のテープフィーダ13をX軸方向に並べて取り付けることができる。フィーダ台車DSを基台11に連結させると、フィーダベースFBに取り付けられている複数のテープフィーダ13が一括して基台11に接続される。
【0020】
図1において、フィーダ台車DSにはキャリアテープCTが巻き付けられたリールRLが保持されている。リールRLはテープフィーダ13ごとに用意されており、リールRLから引き出されたキャリアテープCTは対応するテープフィーダ13に取り付けられる。キャリアテープCTには部品BHが一定間隔おきに収納されている。テープフィーダ13は取り付けられたキャリアテープCTを前方(基板搬送保持部12に向かう側)に搬送し、所定の部品供給位置13K(図2も参照)に部品BHを供給する。
【0021】
図1および図3において、装着ヘッド14は下方に延びた複数のノズル14Nを備えている。各ノズル14Nは装着ヘッド14に対する昇降動作とZ軸まわりの回転動作が可能である。装着ヘッド14は、テープフィーダ13が部品供給位置13Kに供給する部品BHを各ノズル14Nの下端に吸着させてピックアップする。ヘッド移動機構15は例えばXY移動機構から成り、装着ヘッド14を水平面内方向に移動させる。
【0022】
図1および図2において、部品カメラ16は基台11上の基板搬送保持部12とテープフィーダ13の間の領域に設けられている。部品カメラ16は撮像光軸を上方に向けており、複数のノズル14Nそれぞれに部品BHを吸着させた装着ヘッド14が部品カメラ16の上方領域をX軸方向に通過するように移動したとき、各部品BHを下方から撮像する。
【0023】
図1および図3において、高さセンサ17は装着ヘッド14に取り付けられている。高さセンサ17は下方に位置する計測点に向けて投光した検査光の反射光を受光することで、計測点の高さを計測する。
【0024】
図1において、制御装置18は基台11内に設けられている。制御装置18は、図4に示すように、記憶部41と装着動作制御部42を備えている。記憶部41には部品装着プログラムのほか種々のデータが記憶されている。装着動作制御部42は、記憶部41に記憶された部品装着プログラムに従って部品実装装置1の各部を動作させることにより、基板KBに部品BHを装着する部品装着作業を実行する。
【0025】
具体的には、装着動作制御部42は、基板搬送保持部12が備える一対の搬送コンベア21による基板KBの搬送動作と昇降シリンダ33による下受けベース31の昇降動作を制御する。また装着動作制御部42は、各テープフィーダ13による部品BHの供給動作を制御し、ヘッド移動機構15による装着ヘッド14の移動の動作と、装着ヘッド14のノズル14Nによる部品BHの吸着の動作を制御する。
【0026】
また、装着動作制御部42は、部品カメラ16による部品BHの撮像動作を制御する。部品カメラ16の撮像によって得られた画像データはそれぞれ装着動作制御部42に送信され、装着動作制御部42は得られた画像データに基づいて画像認識処理を行う。また制御装置18は、高さセンサ17を制御する。高さセンサ17によって得られる計測点の高さ情報は、制御装置18に送信される。
【0027】
部品実装装置1が行う部品装着作業では、先ず基板搬送保持部12の搬送コンベア21が作動し、上流工程側から送られてきた基板KBを受け取って作業位置に位置させる。基板KBが作業位置に位置したら、下受け部22が上昇して基板KBを下受けし、基板KBの両端部を2つの基板押さえ部21Pに下方から押し付けて基板KBを保持する。
【0028】
基板KBが下受け部22によって下受けされ、基板搬送保持部12に保持されたら、装着ヘッド14は装着ターンを繰り返し実行する。装着ヘッド14はひとつの装着ターンにおいて、テープフィーダ13が供給する部品BHをピックアップする動作、部品カメラ16の上方をX軸方向に通過するように移動して部品カメラ16に部品BHを撮像させる動作、基板KB上に定められた部品装着位置に部品BHを装着する動作をこの順で行う。このように本実施の形態において、装着ヘッド14は、下受け部22によって下受けされた基板KBに部品BHを装着する部品装着手段となっている。
【0029】
装着ヘッド14が基板KBに部品BHを装着する際の各部品BHの装着高さSH(図3)は記憶部41に予め記憶されており、装着動作制御部42は、部品BHを装着するごとに、その部品BHの装着高さSHを記憶部41から読み出すようになっている。制御装置18は、部品カメラ16が部品BHを撮像して得られた画像に基づいて部品認識を行い、装着ヘッド14が部品BHを基板KBに装着するとき、部品の認識結果を利用して、部品BHの基板KBに対する位置補正等を行う。
【0030】
上記の装着ターンが繰り返し実行されることによって、基板KBに装着すべき部品BHが全て装着されたら、基板搬送保持部12の搬送コンベア21は、基板KBを下流工程側に搬出する。これにより、部品実装装置1が行う基板KBの1枚当たりの部品装着作業が終了する。
【0031】
実施の形態1における部品実装装置1では下受け部22に下受けピン32を設置する手順に特徴があり、以下にその説明を行う。図4において、制御装置18は、前述の記憶部41と装着動作制御部42のほか、高さ計測制御部43、下受け部位設定部44、ピン設置位置設定部45およびピン設置制御部46を備えている。
【0032】
図5において、基板KBの上面の部品装着対象領域TR内には複数の計測点Kが設定されている。ここで「部品装着対象領域TR」とは、基板KBの上面のうち、装着ヘッド14によって部品BHが装着され得る領域のことをいう。実施の形態1では、図5に示すように、計測点Kは、部品装着対象領域TR内に、X軸方向に5個、Y軸方向に5個のマトリクス状に配置された25個の計測点Kが設定されている。
【0033】
高さ計測制御部43は、作業位置に位置され、下受け部22によって下受けされた基板KBの部品装着対象領域TR内に設定された複数の計測点Kそれぞれの高さHCを、高さセンサ17を制御することによって計測する(図6)。高さ計測制御部43は、計測点Kの高さを計測するときには、基板KBの上方に高さセンサ17(装着ヘッド14)を移動させ、高さを計測しようとしている計測点Kの上方に高さセンサ17を位置させる。そして、高さセンサ17から下方に検査光を投光させ、前述の要領により、計測対象となっている計測点Kの高さHCを計測する。
【0034】
ここで、高さセンサ17によって計測される計測点Kの高さHCは高さセンサ17からの下方距離である(図6)。従って、高さセンサ17によって検出される計測点Kは、検出される高さHCの値が大きい程低い位置に位置していることになる。
【0035】
このように実施の形態1において、制御装置18の高さ計測制御部43と高さセンサ17は、下受け部22によって下受けされた基板KBの部品装着対象領域TR内に設定された複数の計測点Kそれぞれの高さHCを計測する高さ計測部51となっている(図4)。
【0036】
下受け部位設定部44は、高さ計測部51によって計測された複数の計測点Kそれぞれの高さHCに基づいて、基板KBの下受けが必要な部位を(詳細には、基板KBの下反りを解消するために下面側の下受けが必要な基板KB上の部位を)下受け部位T(図7)に設定する。実施の形態1では、下受け部位設定部44は、高さ計測部51によって計測された高さHCが最も低い計測点K(「最低高さ計測点」と称する)を含む複数の計測点Kを下受け部位Tに設定する。
【0037】
例えば、図5において、25個の計測点Kのうち、計測された高さHCが最も低い計測点Kが符号「K1」で示す計測点であった場合(以下、「最低高さ計測点K1」と記す)には、その最低高さ計測点K1を含む複数の計測点Kを下受け部位Tに設定する(図7)。図7では、設定した複数の下受け部位Tのうち、最低高さ計測点K1に対応する下受け部位Tを符号「TM」で示している。
【0038】
ピン設置位置設定部45は、下受け部位設定部44により設定された下受け部位Tの下方の下受けベース31上の位置にピン設置位置Pを設定する(図7)。図7では、複数の下受け部位Tに対応して設定された複数のピン設置位置Pのうち、最低高さ計測点K1に対応する下受け部位T(TM)の下方に設定されたピン設置位置Pを符号「PM」で示している(図6も参照)。
【0039】
ピン設置制御部46は、ピン設置位置設定部45によって設定されたピン設置位置Pに下受けピン32が設置されるように装着ヘッド14を制御する。これには先ず、図8に示すように、装着ヘッド14に、下受けピン32を吸着するための専用のノズル14N(「ピン設置用ノズル14NS」と称する)を装着させておく。そして、装着ヘッド14を作動させて、ピン設置用ノズル14NSの下端に下受けピン32の上端部を吸着させ、下受けベース31の上方に装着ヘッド14を移動させた後、設定されたピン設置位置Pの上方で下受けピン32を降ろし(図8中に示す矢印B)、ピン設置用ノズル14NSによる下受けピン32の吸着を解除する(図8)。この状態において、下受けピン32側の磁石32Mと下受けベース31側の磁性体31Jとは磁力によって引き合っているので、下受けピン32は下受けベース31上のピン設置位置Pに設置される。
【0040】
このように実施の形態1において、ピン設置位置設定部45、ピン設置制御部46および装着ヘッド14は、下受け部位設定部44により設定された下受け部位Tが下受けピン32によって下受けされるように下受けベース31に下受けピン32を設置するピン設置部52となっている(図4)。
【0041】
次に、部品実装装置1により基板KBに部品BHを装着する部品装着作業を行う手順を説明する。図9は部品装着作業のメインルーチンのフローチャートであり、図10はメインルーチンの一部を構成するサブルーチンのフローチャートである。
【0042】
部品装着作業では先ず、搬送コンベア21が、上流工程側から送られてきた基板KBを搬入して作業位置に位置させる(図9に示すステップST1)。そして、昇降シリンダ33が作動して下受けベース31を上昇させ、下受け部22によって基板KBを下受けする(ステップST2)。なお、ここで基板KBを下受けする下受けピン32は、基板KBの両端部を2つの基板押さえ部21Pに押し付ける役目が果たされればよく、下受けベース31における下受けピン32の配置(設置位置)は、基板KBの下反りを解消することを考慮しないで設定されたものであって構わない。
【0043】
基板KBが下受け部22によって下受けされたら、制御装置18は、下受け部22による基板KBの下受け状態の修正を実行する(ステップST3)。基板KBの下受け状態の修正を行うには、制御装置18は先ず、高さ計測部51により、基板KBに設定されている複数の計測点K(図5)それぞれの高さHCを計測する(図6図10に示すステップST11)。そして、計測された複数の計測点Kそれぞれの高さHCに基づいて、下受け部位設定部44により、下受け部位Tを設定する(ステップST12)。具体的には、計測された高さHCが最も引き計測点Kである最低高さ計測点K1を含む基板KB上の複数の部位を下受け部位Tに設定する。
【0044】
制御装置18は、下受け部位Tを設定したら、ピン設置位置設定部45によりピン設置位置Pを設定する(ステップST13)。具体的には、下受け部位Tの下方の下受けベース31上の位置にピン設置位置Pを設定する。制御装置18は、ピン設置位置Pを設定したら、昇降シリンダ33を作動させて下受け部22を下降させ、下受け部22による基板KBの下受けを解除する。そして、搬送コンベア21を作動させて、基板KBを作業位置から移動させる(図11中に示す矢印C。ステップST14)。なお、ここでは基板KBを上流側に移動させているが、下流側の移動させるのであってもよい。
【0045】
制御装置18は、基板KBを移動させたら、ステップST13で設定したピン設置位置Pに下受けピン32を設置する(ステップST15)。これは、ピン設置部52により、ピン設置用ノズル14NSを装着させた装着ヘッド14を作動させて行う(図12。図中に示す矢印B)。ここで行う下受けピン32の設置は、既に下受けベース31に設置されているものとは別に新たに用意した下受けピン32を設置するのであってもよいし、既に下受けベース31に設定されている下受けピン32を移動するのであってもよい。
【0046】
このように、本実施の形態1において、高さ計測部51は、下受け部22によって下受けされた基板KBの部品装着対象領域TR内に設定された複数の計測点Kそれぞれの高さHCを計測し、下受け部位設定部44は、高さ計測部51によって高さHCが計測された複数の計測点Kそれぞれの高さHCに基づいて、基板KBの下受けが必要な部位を下受け部位Tに設定し、ピン設置部52は、下受け部位設定部44により設定された下受け部位Tが下受けピン32によって下受けされるように下受けベース31に下受けピン32を設置する(新たに用意した下受けピン32を設置あるいは既に設置してある下受けピン32を移動)ようになっている。
【0047】
下受けベース31に下受けピン32が設置されたら、制御装置18は、搬送コンベア21を作動させて基板KBを作業位置に戻したうえで(図13中に示す矢印D)、昇降シリンダ33を作動させ、下受け部22によって基板KBを下受けする(ステップST16)。そして、下受け状態の修正を終了するかどうかを判断する(ステップST17)。
【0048】
ステップST16が終了した時点で、基板KBは、下受けピン32によって下反りが解消され得るように下受けされた状態となっている。このためステップST17で下受け状態の修正を終了し、サブルーチンを抜けてメインルーチンに戻ってもよいが、より確実に基板KBの下反りを解消するようにするためには、下受状態の修正を続行すべく、ステップST17からステップST18に進む。
【0049】
ステップST18に進んだ場合には、制御装置18は、下受け状態の修正を経た下受け部22(設定された下受け部位Tが下受けされるように下受けピン32が設置された下受け部22)によって基板KBが下受けされた状態で、高さ計測部51により、ステップST12で最低高さ計測点K1とした計測点Kを含む複数の計測点Kそれぞれの高さを計測する(図14(a))。ここで、高さHCが計測される複数の計測点Kのうち、最低高さ計測点K1とは異なる計測点Kは、予め設定された前述の25個の計測点K(図5)の一部であってもよいし、25個の計測点Kとは異なる計測点であってもよい。図14(a)は、最低高さ計測点K1の高さHCを符号「HC1」で示しており、最低高さ計測点K1とは異なる計測点Kの高さHCを符号「HC2」で示している。
【0050】
制御装置18は、最低高さ計測点K1を含む複数の計測点Kそれぞれの高さHCを計測したら、今回計測した最低高さ計測点K1の高さHC(HC1)よりも高さHCが低い計測点Kがあるかどうかを判断する(ステップST19)。そして、最低高さ計測点K1の高さHC(HC1)よりも高さHCが低い計測点Kがあった場合には(図14(a))、そのうち高さHCが最も低い計測点Kを新たな下受け部位TNに設定する(ステップST20)。一方、最低高さ計測点K1の高さHC(HC1)よりも高さHCが低い計測点Kがなかった場合には、サブルーチンを抜けてメインルーチンに戻る。
【0051】
制御装置18は、ステップST20において新たな下受け部位TNを設定したら、ピン設置位置設定部45により、新たな下受け部位TNの下方の下受けベース31上の位置に新たなピン設置位置(図14(a)において符号「PN」で表す)を設定する(ステップST21)。制御装置18は、新たなピン設置位置PNを設定したら、昇降シリンダ33を作動させて下受け部22を下降させ、下受け部22による基板KBの下受けを解除する。そして、搬送コンベア21を作動させて、基板KBを作業位置から移動させる(図11。ステップST22)。
【0052】
制御装置18は、ステップST22で基板KBを移動させたら、ステップST15と同様の要領で、新たなピン設置位置PNに下受けピン32を設置する(図14(b)。ステップST23)。図14(b)では、既に下受けベース31に設置されているものとは別に新たに用意した下受けピン32を設置した状態を示しているが、既に下受けベース31に設定されている下受けピン32を新たなピン設置位置PNに移動するのであってもよい。
【0053】
このように、実施の形態1において、高さ計測部51は、下受けピン32が設置された下受け部22によって基板KBが下受けされた状態で最低高さ計測点K1を含む複数の計測点Kそれぞれの高さHCを計測し、下受け部位設定部44は、高さ計測部51によって計測された高さHCが最低高さ計測点K1の高さHCよりも低い計測点Kがあった場合にその計測点Kを新たな下受け部位TNに設定し、ピン設置部52は、下受け部位設定部44により設定された新たな下受け部位TNが下受けピン32によって下受けされるように下受けベース31に下受けピン32を設置(下受けピン32を新たに設置あるいは既に設置してある下受けピン32を移動)するようになっている。
【0054】
制御装置18は、ステップST23において、設定した新たな下受け部位TNに下受けピン32を設置したら、搬送コンベア21を作動させて基板KBを作業位置に戻したうえで(図13)、下受け部22によって基板KBを下受けする(ステップST24)。そして、ステップST17に戻って、下受け状態の修正を終了するかどうかを判断する。ここで、更に下受け状態の修正を行うと判断した場合にはステップST18に進み、下受け状態の修正を終了すると判断した場合には、サブルーチンを抜けてメインルーチンに戻る。
【0055】
制御装置18は、メインルーチンに戻ったら、下受け部22により下受けした状態となっている基板KBに対し、装着ヘッド14に前述の装着ターンを行わせて部品BHを装着する(図15図9に示すステップST4)。そして、基板KBに装着すべき部品BHを全て装着したら、昇降シリンダ33を作動させて下受け部22を下降させ、下受け部22による基板KBの下受けを解除する(ステップST5)。下受け部22による基板KBの下受けを解除したら、搬送コンベア21を作動させて、基板KBを下流工程側に搬出する(ステップST6)。これにより基板KBの1枚当たりの部品装着作業が終了する。
【0056】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2における部品実装装置1を説明する。実施の形態2における部品実装装置1は、実施の形態1における部品実装装置1に対し、制御装置18の下受け部位設定部44の機能のみが異なっている。
【0057】
実施の形態2において、下受け部位設定部44は、高さ計測部51によって計測された複数の計測点Kそれぞれの高さHCに基づいて基板KBの下反り形状を算出し、基板KBのうち算出した基板KBの下反りの形状の中の高さが最も低い部位を含む基板KB上の複数の部位を下受け部位Tに設定するようになっている。すなわち実施の形態2において、下受け部位Tは、高さ計測部51によって計測された複数の計測点Kそれぞれの高さHCに基づいて算出される基板KBの下反り形状の中の高さが最も低い部位を含む複数の部位となっている。
【0058】
例えば、図16に示す25個の計測点Kに基づいて算出された下反り形状(数式)において、符号「Q」で示す部位(「最低高さ部位Q」と称する)の高さが最も低かった場合には、その最低高さ部位Qを含む複数の部位を下受け部位Tに設定する。このようにして下受け部位Tを設定すると、その設定した下受け部位Tの中に下反り形状の最も高さが低い部位が必ず含まれるので、高さ計測を反復してより高さの低い部位を求める必要はなく、実施の形態1におけるステップST18~ステップST24に相当する工程は不要となる。
【0059】
以上説明したように、本実施の形態1および2における部品実装装置1では、下受け部22によって下受けされた基板KBの部品装着対象領域TR内に設定された複数の計測点Kそれぞれの高さHCを計測することによって、基板KBの下反りを解消するために下受けが必要な部位を下受け部位Tに設定するようになっている。そして、その設定した下受け部位の下方の下受けベース31上の位置をピン設置位置Pとして設定し、その設定したピン設置位置Pに下受けピン32を設置(下受けピン32を新たに設置あるいは既に設置してある下受けピン32を移動)するようになっている。このように本実施の形態における部品実装装置1では、基板KBを下受けする下受けピン32の設置位置の設定から下受けピン32の設置までが全て自動でなされるので、作業者OPの経験によらずに基板KBの下反りを適切に解消することができ、基板KBに対する部品BHの装着精度を向上させることができる。
【0060】
これまで本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上述したものに限定されず、種々の変形等が可能である。例えば、上述の実施の形態では、計測点Kは、部品装着対象領域TR内にX軸方向に5個、Y軸方向に5個のマトリクス状に配置された25個の計測点Kが設定されたものとなっていたが、これは一例であり、計測点の数および配置は任意に設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
作業者の作業経験によらず基板の下反りを解消して基板に対する部品の装着精度を向上させることができる部品実装装置を提供する。
【符号の説明】
【0062】
1 部品実装装置
12 基板搬送保持部(搬送手段)
14 装着ヘッド(部品装着手段)
14NS ピン設置用ノズル
22 下受け部
31 下受けベース
31J 磁性体
32 下受けピン
32M 磁石
44 下受け部位設定部
51 高さ計測部
52 ピン設置部
HC 高さ
SH 装着高さ
K 計測点
K1 最低高さ計測点
TR 部品装着対象領域
T 下受け部位
TN 新たな下受け部位
BH 部品
KB 基板
図1
図2
図3
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図11
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図16