(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】ラメルテオン含有固形製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/343 20060101AFI20231222BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20231222BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20231222BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20231222BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
A61K31/343
A61P25/20
A61K9/20
A61K47/38
A61K47/12
(21)【出願番号】P 2019034921
(22)【出願日】2019-02-12
【審査請求日】2021-12-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】306020438
【氏名又は名称】日本ジェネリック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆久
(72)【発明者】
【氏名】藤垣 泉
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/137443(WO,A1)
【文献】特表2014-528395(JP,A)
【文献】国際公開第2009/084023(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤全体に対して3~30重量%のラメルテオン、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース、および滑沢剤としてフマル酸ステアリルナトリウ
ムを含有する錠剤であって、ラメルテオンの消化管吸収のための錠剤
(口腔内崩壊錠を除く)。
【請求項2】
錠剤全体に対して0.5~3重量%の滑沢剤を含有する請求項1記載の錠剤。
【請求項3】
タルクを含有する、請求項1
または2に記載の錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラメルテオンを含有し、ばらつきがなく速やかな溶出性を示す錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ラメルテオンは難溶性の睡眠誘発作用を示すメラトニン受容体作動薬である。難溶性の有効成分は錠剤からの溶出挙動にばらつきを生じやすく、このばらつきは消化管からの有効成分の吸収に影響する。したがって、ばらつきがなく速やかな溶出性を示すラメルテオン含有錠剤の提供は、医薬品の有効性および安全性を保証する上でも極めて重要である。
【0003】
この点を考慮したラメルテオンの錠剤が既に上市されている。特許文献1はこの上市錠剤関連の特許であり、ラメルテオン含有錠剤にステアリン酸マグネシウムおよび粘度2~3.4mPa・sのヒドロキシプロピルセルロ-スを使用することの有用性が示されている。
【0004】
しかしながら、ステアリン酸マグネシウムおよび粘度2~3.4mPa・sのヒドロキシプロピルセルロ-スの組合わせ以外については、いかなる添加剤の組合わせがラメルテオン含有錠剤のばらつきを抑え、速やかな溶出性を発揮するか知られておらず、ラメルテオン含有錠剤の製造において、課題となっていた。
【0005】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ラメルテオンを含有し、ばらつきがなく速やかな溶出性を示す錠剤に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、驚くべきことに、ヒドロキシプロピルセルロースとフマル酸ステアリルナトリウムまたはステアリン酸カルシウムを組合わせることで、ばらつきがなく速やかな溶出性を示すことを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は<1>錠剤全体に対して3~30重量%のラメルテオン、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース、および滑沢剤としてフマル酸ステアリルナトリウムもしくはステアリン酸カルシウムを含有する錠剤を提供する。
<2>錠剤全体に対して0.5~3重量%の滑沢剤を含有する前記<1>記載の錠剤を提供する。
<3>滑沢剤がフマル酸ステアリルナトリウムである前記<1>~<2>記載の錠剤を提供する。
<4>滑沢剤がステアリン酸カルシウムである前記<1>~<2>記載の錠剤を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ラメルテオンのばらつきが抑制された、ラメルテロン含有錠剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、ラメルテオン(N-{2-[(8S)-1,6,7,8-Tetrahydro-2H-indeno[5,4-b]furan-8-yl]ethyl}propanamide)は、以下の化学式により表される化合物である。ラメルテオンは、例えば、特許第2884153号公報に記載の方法によって製造されうる。また、ラメルテオンの含有量は、1錠剤あたり1~20重量%が好ましく、5~10重量%がより好ましい。
【化1】
【0012】
本発明において、ヒドロキシプロピルセルロ-スは、当技術分野で用いられているものであれば何でもよい。
【0013】
本発明において、滑沢剤とは、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸カルシウムを言う。また、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸カルシウムは、当技術分野で用いられているものであれば何でもよい。含有量は、1錠剤当たり0.5~3重量%が好ましい。
【0014】
本発において、錠剤とは、素錠、コーティング錠、口腔内崩壊錠の形態をとりうる。また、コーティング錠は、素錠をコーティング剤で被覆したものをいう。
【0015】
本発明において、コーティング剤とは、例えば、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プロピレングリコール、ポリビニルアルコールポリエチレングリコールグラフトコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールアクリル酸メタクリル酸メチル共重合体およびポリエチレングリコールなどが挙げられるが、ラメルテオンの安定性の観点から、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プロピレングリコール、ポリビニルアルコールポリエチレングリコールグラフトコポリマーが好ましく、ヒプロメロース、プロピレングリコールがより好ましい。
【0016】
本発明において、遮光剤とは、例えば、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黒酸化鉄、食用黄色5号、食用赤色102号が挙げられ、酸化チタン、黄色三二酸化鉄が好ましい。
【0017】
本発明において、添加剤とは、賦形剤、結合剤、崩壊剤を言うが、特にこれらに制限されない。当該添加剤以外に、当技術分野で用いられる着色剤、抗酸化剤、増粘剤、緩衝化剤、甘味付与剤、フレーバー付与剤、又はパフューム剤などを本発明のフィルムコーティング錠剤に配合してもよい。甘味付与剤としては、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ステビア、マルチトール、グリセリン、ラクチトール、ガラクチトールなどが挙げられる。
【0018】
本発明において、賦形剤とは、例えばD-マンニトール、乳糖(乳糖水和物、噴霧乾燥乳糖、流動層造粒乳糖、異性化乳糖、還元乳糖等)、トウモロコシデンプン、ショ糖、エリスリトール、ソルビトール、キシリトールなどが挙げられる。本発明においては、乳糖、トウモロコシデンプンが好ましい。
【0019】
本発明において、崩壊剤とは、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、アルギン酸、部分アルファー化デンプン、ベントナイト等が挙げられる。
【0020】
本発明の錠剤は、通常の錠剤製造方法により製造することが可能である。
【0021】
具体的には、本発明のラメルテオン含有錠剤は、例えば、ラメルテオンと賦形剤を混合し、結合剤を溶解した液を噴霧しながら、流動層造粒機で造粒後、ステンレス篩で整粒し、その整粒品に滑沢剤を混合後、打錠し、素錠を得えた後、その素錠に、被覆剤を噴霧することで、得られる。
【0022】
以下に、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
ラメルテオン32g、乳糖水和物388g、トウモロコシデンプン80gを混合し、ヒドロキシプロピルセルロース(粘度2~2.9mPa・s)16gを精製水250.7gに溶解した液を噴霧しながら流動層造粒機で造粒後、目開き850μmのステンレス篩で整粒する。この整粒品193.5gにステアリン酸カルシウム1.5gを混合後、打錠する。さらに、ヒプロメロース104.7g、ヒドロキシプロピルセルロース(粘度2~2.9mPa・s)21gを精製水1350gに溶解した、酸化チタン15g、クラウンタルク9g、黄色三二酸化鉄0.3gが分散された液を噴霧しながらフィルムコーティング機で一錠当たり5mgのコーティングを行い本発明の錠剤を得た(1錠当たりの重量:135mg)。これを各3回行い、各3ロット(Lot No.JG1809-2-1、Lot No.JG1809-3-3、Lot No.JG1809-3-4)の錠剤を得た。
【実施例2】
【0024】
ラメルテオン32g、乳糖水和物376g、トウモロコシデンプン80gを混合し、ヒドロキシプロピルセルロース(粘度2~2.9mPa・s)16gを精製水250.7gに溶解した液を噴霧しながら流動層造粒機で造粒後、目開き850μmのステンレス篩で整粒する。この整粒品252gにフマル酸ステアリルナトリウム8gを混合後、打錠する。さらに、ヒプロメロース104.7g、ヒドロキシプロピルセルロース(粘度2~2.9mPa・s)21gを精製水1350gに溶解した、酸化チタン15g、クラウンタルク9g、黄色三二酸化鉄0.3gが分散された液を噴霧しながらフィルムコーティング機で一錠当たり5mgのコーティングを行い本発明の錠剤を得た(1錠当たりの重量:135mg)。これを各3回行い、各3ロット(Lot No.JG1809-1-1-1、Lot No.JG1809-3-1、Lot No.JG1809-3-2)の錠剤を得た。
【0025】
実施例1~2の組成は表1の通り。
【0026】
【0027】
(試験例1)
実施例1(JG1809-2-1、JG1809-3-3、JG1809-3-4の3ロット)および実施例2(JG1809-1-1-1、JG1809-3-1、JG1809-3-2の3ロット)の錠剤からのラメルテオンの溶出性を溶出試験(水900mL、37℃、パドル法、回転数50rpm、n=6)により評価した。その結果を下記グラフに示す。また、表2および表3に、それぞれの類似因子の計算結果を示す。
【0028】
【0029】
【0030】
溶出試験の結果、上記グラフに示す通り、実施例1~2は、速やかな溶出性を示した。
【0031】
<類似因子の計算方法>
本明細書で溶出挙動の同等性の評価は、同一処方製剤の任意に選択した異なる2ロットにおける類似因子(f2関数)において行う。この類似因子(f2関数)の値が、100に近づくほど2製剤の溶出挙動にばらつきが少ないとされ、50以上のとき同等とされる。なお、類似因子(f2関数)は,次式で表わされる.次式:
【数1】
【0032】
式中のTiおよびRiは各製剤の平均溶出率、nは平均溶出率を比較する時点の数である。溶出率比較時点とは、基準となる製剤が15分~30分に平均85%以上溶出する場合は、15分、30分、45分とする。基準となる製剤が30分以降、規定された試験時間以内に平均85%以上溶出する場合は、基準となる製剤の平均溶出率が約85%となる適当な時点をTaとするとき、Ta/4、2Ta/4、3Ta/4、Taとする。規定された試験時間において基準となる製剤の平均溶出率が約85%に達しない場合は、規定された試験時間における基準となる製剤の平均溶出率の約85%となる適当な時点をTaとするとき、Ta/4、2Ta/4、3Ta/4、Taとする。
【0033】
【0034】
【0035】
また、類似因子より、表2および表3に示す通り、実施例1~2は、ロット間で溶出にばらつきの少ない錠剤であることが示された。