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特許7407380電源インピーダンス推定及び電源電圧低下検知装置
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  • 特許-電源インピーダンス推定及び電源電圧低下検知装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】電源インピーダンス推定及び電源電圧低下検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/165 20060101AFI20231222BHJP
   G01F 3/22 20060101ALN20231222BHJP
【FI】
G01R19/165 M
G01F3/22 B
G01F3/22 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020109223
(22)【出願日】2020-06-25
(65)【公開番号】P2022022510
(43)【公開日】2022-02-07
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 純平
(72)【発明者】
【氏名】豊田 興一
(72)【発明者】
【氏名】堀池 良雄
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-120253(JP,A)
【文献】特開平04-136774(JP,A)
【文献】特開平08-271597(JP,A)
【文献】特開2004-125569(JP,A)
【文献】特開2001-158546(JP,A)
【文献】特開2015-061341(JP,A)
【文献】実開昭62-067277(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 27/00-27/32、
31/36-31/44、
19/00-19/32、
31/50-31/74、
G01F 1/00-1/30、
1/34-1/54、
3/00-9/02、
F16K 31/00-31/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源部と、前記電源部からの出力で駆動される回路部と、前記電源部からの出力を所定
時間保持する保持部と、判定部を有し、
前記判定部は前記回路部の動作がONからOFFあるいはOFFからONに変化したときに前記保持部からの出力と前記電源部からの出力の差を用いて電源インピーダンスあるいは電源電圧低下を検知するものであって、前記電源部からの出力を基準電圧として前記保持部からの出力をデジタル信号に変換するアナログ・デジタル変換部を有し、前記デジタル信号の大きさに対応した前記電源インピーダンスあるいは前記電源電圧低下を検知し、
前記アナログ・デジタル変換部は、回路部を構成する双方向弁を駆動するステッピングモータの異常を判定するためのアナログ・デジタル変換部と共用する構成とした電源インピーダンス推定及び電源電圧低下検知装置。
【請求項2】
前記保持部は、前記電源部からの出力を抵抗を介してコンデンサにより保持する構成とした請求項1記載の電源インピーダンス推定及び電源電圧低下検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池電圧などの回路を駆動する電源部の内部インピーダンスの推定及び電源電圧の低下を検知する電源インピーダンス推定及び電源電圧低下検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マイコンなどの回路を駆動する電源電圧の低下を検知する方法として、電源電圧低下検出ICが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、電池の内部インピーダンスを検出する方法として、電池とGND間に抵抗とスイッチを直列接続し、前記SWをON/OFFさせてON時の電池電圧測定とOFF時の電池電圧測定を行い、それぞれの電圧値をRAMに記憶させ、記憶させたRAM値から電圧差を算出して内部インピーダンスを推定している。この内部インピーダンスを検出する方法においても電池電圧を検出するための電圧検出装置が必要である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-174975号公報
【文献】特開平8-115147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記電源電圧低下検出ICや電圧検出装置は、ICや装置内部に電源電圧の変動に影響されない安定化した電圧を出力する安定化電源回路を有し、安定化した電圧を比較電圧として電源電圧を分圧した電圧と比較電圧をコンパレータにより比較する構成が一般的である。すなわち、安定化した電圧を出力する安定化電源回路が必要であり回路構成が複雑であるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために本発明における電源インピーダンス推定及び電源電圧低下検知装置は、電源部と、前記電源部からの出力で駆動される回路部と、前記電源部からの出力を所定時間保持する保持部と、判定部を有し、前記判定部は前記回路部の動作がONからOFFあるいはOFFからONに変化したときに前記保持部からの出力と前記電源部からの出力の差を用いて電源インピーダンスを推定し、電源電圧低下を検知する構成としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明における電源インピーダンス推定及び電源電圧低下検知装置は、基準電圧としての安定化された電圧を必要としない。そのため簡単な構成で電圧低下を検知することができることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1における電源インピーダンス推定及び電源電圧低下検知装置の構成を示すブロック図
図2】実施の形態2における電圧低下検知装置の構成を示すブロック図
図3】実施の形態1における判定部に入力する信号図
図4】実施の形態2における判定部に入力する信号図
図5】実施の形態2におけるステッピングモータ及び双方向弁の動作異常を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0010】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における電源インピーダンス推定及び電源電圧低下検知装置の構成の一例を示すブロック図、図3は、実施の形態1における判定部に入力する信号図である。
【0011】
[1-1.構成]
実施の形態1の構成について図1を参照しながら説明する。電源部1の出力電圧aは回路部であるガスメータ計量計測部2に供給されると同時に保持部3及び判定部4にも供給される。さらに、判定部4には保持部3からの出力電圧bも入力される。
【0012】
保持部3は、抵抗31とコンデンサ32で構成されている。判定部4は、抵抗41、抵抗42及びコンパレータ43で構成されている。そして、電源部1はリチウム電池で構成されている。
【0013】
[1-2.動作]
上記のように構成された本発明の実施の形態1の動作について、図3を参照しながら説明する。電源部1からの出力電圧aは、抵抗31を介してコンデンサ32に供給される。抵抗31とコンデンサ32で構成される回路は、いわゆる積分回路と呼ばれる回路である。図3において、縦軸は電圧レベル、横軸は時間の経過を示している。実線は、電源部1の出力電圧aを示し、点線は、コンデンサ32からの出力電圧bを示している。
【0014】
ガスメータ計量計測部2は、例えば無線通信部(図示せず)を有し無線通信時には大きな電流が流れる。図3は、ガスメータ計量計測部2に上記に示すような無線通信部の動作がタイミング(イ)でONし、タイミング(ロ)でOFFして電流が大きく変化した状態の電圧変化を示している。
【0015】
出力電圧bは、コンデンサ32の働きにより電圧変化が緩やかになっている。出力電圧aは、判定部4を構成する抵抗41及び抵抗42で分圧され電圧dが出力される。コンパレータ43では、電圧dと出力電圧bを比較する。比較する電圧レベルは図3におけるタイミング(ロ)の直後のA点の出力電圧aとB点の出力電圧bである。A点の電圧は、無線通信部がOFF状態の時の電源部1の出力電圧aであり、B点の電圧は無線通信部がON状態の時の電源部1の出力電圧bが保持された状態を示している。
【0016】
ガスメータ計量計測部2は、無線通信部がOFFの時には非常に小さな電流しか流れず、電源部1のA点での出力電圧aは無負荷時の電圧に等しい。電源部1を構成するリチウム電池の無負荷時の出力電圧は、電池容量の大小にかかわらず例えば3Vとほぼ一定である。
【0017】
しかしながら、電池の内部インピーダンスは、電池容量が少なくなるにつれて大きくなるため、無線通信部がONの時のように大きな電流が流れると電池の出力電圧a及び出力電圧bは大きく下降する。そして、B点の出力電圧bは無線通信部がON時の下降した電圧を保持している。すなわち、A点の出力電圧aとB点の出力電圧bの差は電池の内部イ
ンピーダンスによる電圧降下を示している。
【0018】
以上の動作より、出力電圧aを分圧した電圧と出力電圧bをコンパレータ43で比較し、出力電圧bのほうが上記分圧した電圧より小さくなった時、所定の電圧以下になったと判定できる。
【0019】
さらに、動作ON時の無線通信部の負荷インピーダンスをRa、電源部1の内部インピーダンスをRoとすると、
B点の出力電圧b/A点の出力電圧a=Ra/(Ro+Ra) (1)
の関係が成り立つ。一方、コンパレータ43において電圧低下と検知する基準は、抵抗41、抵抗42の抵抗をそれぞれ、R41、R42とすると、
B点の出力電圧b/A点の出力電圧a=R42/(R41+R42) (2)
である。よって、上記式(1)、(2)より負荷インピーダンスRaがわかっている場合、電圧低下検知時における電源部1の内部インピーダンスRoを推定することができる。
【0020】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態1において、電圧測定のための安定化電源回路を用いることなく簡単な構成で電圧が所定の電圧以下に低下したことを検知できるとともに、電源部1の内部インピーダンスである電源インピーダンスを推定することができる。
【0021】
(実施の形態2)
以下、図2及び図4を用いて、実施の形態2を説明する。
【0022】
[2-1.構成]
図2は、実施の形態2の構成を示す図である。図1の構成と同じ機能を有するブロックには同一の番号を付与している。図1の構成と重複する部分については説明を省略する。抵抗5とステッピングモータ駆動部6とステッピングモータ7及び双方向弁8は、図1におけるガスメータ計量計測部2を構成する機能ブロックである。
【0023】
双方向弁8は、ガスメータを流れるガス流量を遮断したり、開放したりするものである。ステッピングモータ駆動部6で生成された駆動パルスによりステッピングモータ7が回転し、回転の方向により双方向弁8が閉じたり開いたりする構成である。
【0024】
抵抗5は、ステッピングモータ駆動部6に流れる瞬時電流を電圧変化に変換するためのものである。抵抗31には電源部1からの出力電圧aではなく、抵抗5の出力である出力電圧cが入力される。判定部4は、アナログ・デジタル変換部44と論理部45で構成されている。
【0025】
[2-2.動作]
上記のように構成された本発明の実施の形態2の動作について図4を参照しながら説明する。電源部1からの出力電圧aは、抵抗5を介して出力電圧cとして抵抗31を介してコンデンサ32に供給される。抵抗31とコンデンサ32で構成される回路はいわゆる積分回路と呼ばれる回路である。
【0026】
図4において、縦軸は電圧レベル、横軸は時間の経過を示している。実線は、電源部1の出力電圧aを示し、点線はコンデンサ32からの出力電圧bを示している。ステッピングモータ駆動部6の動作がONになると抵抗5には大きな電流が流れる。ステッピングモータ駆動部6がOFFの時には抵抗5に電流が流れないので出力電圧cと出力電圧aは同じ電圧値となる。
【0027】
図4は、ステッピングモータ駆動部6の動作がタイミング(イ)でONし、タイミング(ハ)で双方向弁8が全開あるいは全閉状態となりステッピングモータ7の回転が止まり、タイミング(ロ)でステッピングモータ駆動部6の動作がOFFし電流が大きく変化した状態の電圧変化を示している。タイミング(ハ)での変化は、ステッピングモータ7の回転が止まると負荷が重くなるのでステッピングモータ駆動部6に流れる電流が若干増大することを示している。
【0028】
出力電圧cは、コンデンサ32の働きにより電圧変化が緩やかになった出力電圧bとしてアナログ・デジタル変換部44に入力される。出力電圧aの電圧変化は電源部1の内部インピーダンスRoによる電圧降下によるものであり、出力電圧bの電圧変化は電源部1の内部インピーダンスRoによる電圧降下に加え抵抗5の抵抗値R5による電圧降下を加えたものである。
【0029】
そして、A点の電圧はステッピングモータ駆動部6がOFF状態の時の電源部1の出力電圧aであり、B点の電圧はステッピングモータ駆動部6がON状態の時の出力電圧bを保持した状態を示している。ステッピングモータ駆動部6及びステッピングモータ7の合計負荷インピーダンスをRbとすると、アナログ・デジタル変換部44においてタイミング(ロ)の直後のA点の出力電圧aを基準電圧として、タイミング(ロ)の直後のB点の出力電圧bがデジタル信号に変換されるため、B点の出力電圧bのデジタル信号値Xは、
X=B点の出力電圧b/A点の出力電圧a=Rb/(Ro+R5+Rb)
Ro=(1/X)×(Rb×(1-X)-X×R5)
である。
【0030】
一方、タイミング(ロ)の直前のD点の出力電圧bは、C点の出力電圧aを基準電圧としてアナログ・デジタル変換部44においてデジタル信号に変換されるため、D点の出力電圧bのデジタル値Yは、
Y= D点の出力電圧b/C点の出力電圧a=Rb/(R5+Rb)
Rb=R5×Y/(1-Y)
よって上記2つの式より
Ro=(1/X)×R5×(Y-X)/(1-Y)
以上より、抵抗5の抵抗値R5及びデジタル信号値X及びYは既知であるため、電源部1の内部インピーダンスRo、すなわち電源インピーダンスを計算できることとなる。
【0031】
また、デジタル信号値Xの値から動作OFF時から動作ON時の変化で電源部1の出力電圧aがどれだけの比率で低下したのか知ることができる。
【0032】
次に、図5を参照しながらステッピングモータ駆動部6及びステッピングモータ7及び双方向弁8の動作に異常が生じた場合の動作について説明する。動作異常としてステッピングモータ7の断線と双方向弁の固着を考える。ステッピングモータ7は複数のコイルを有している。ここではステッピングモータ7は2つのコイルを有しているとして説明する。
【0033】
図5は、抵抗5の電圧降下に対応する値(出力電圧c/出力電圧a)を示したものである。図5の断線時で示す点線が2つのコイルのうち1つが断線した場合である。実線で示す正常動作時はステッピングモータ7が正常に動作している場合である。一点鎖線で示す固着時は双方向弁が固着しステッピングモータ7が回転しない場合である。断線時は抵抗5の電圧降下が小さくなり、固着時は抵抗5の電圧降下が大きくなる。
【0034】
よって、タイミング(ハ)の直前のE、F、G点の値を取得し、正常動作時のF点の値に対して所定以上大きければ断線、所定以上小さければ固着と判定する。ここで、E、F
、G点の値は(出力電圧c/出力電圧a)で計算された値であるが、E、F、G点では出力電圧c=出力電圧bである。よって、出力電圧b/出力電圧aは、アナログ・デジタル変換部44で変換されたデジタル値Zに等しい。すなわち、正常動作時のデジタル値Zに対してE、F、G点のデジタル値が所定以上大きければ断線、所定以上小さければ固着と判定することができる。また、タイミング(ハ)においてデジタル値Zに変化がない場合も異常と判定することができる。
【0035】
以上説明したように抵抗5を挿入することにより電源インピーダンスを正確に推定できるとともに、ステッピングモータ7及び双方向弁8の断線や固着などの動作異常検知を同一の回路構成で実現できる。
【0036】
[2-3.効果等]
以上のように、本実施の形態2において、電圧測定のための安定化電源回路を用いることなく電源部1の電源インピーダンスを推定できる。そのため電源部1がリチウム電池のような電池を用いている場合、電池容量が残り少なくなり電池の内部インピーダンスが大きくなったことを推定して電池電圧低下の警報を発することができることとなる。
【0037】
さらに、電池の内部インピーダンスと電池容量の関係をあらかじめ表として記憶させておくことにより推測した電源部1の内部インピーダンスから残りの電池容量を正確に推定することができる。そして、ステッピングモータ7及び双方向弁8の断線や固着などの動作異常検知を同一の回路構成で実現できコストダウンに貢献できる。
【0038】
なお、実施の形態1及び実施の形態2において、タイミング(ロ)の前後の電圧値を用いたが、タイミング(イ)の前後の電圧値を用いても構わない。
【0039】
また、実施の形態2において、保持部3としてD点の出力電圧bをアナログ・デジタル変換部44でデジタル値としてRAMに記憶し、B点の出力電圧bの代わりに記憶していたD点の出力電圧bを使用しても構わないが、保持部3として出力電圧aをアナログ電圧値の状態で保持する構成とすることにより、RAMが不要になるという効果が追加される。
【0040】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、ガスメータに内蔵された双方向弁や無線通信装置を駆動する電池の電圧低下検出装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 電源部
2 ガスメータ計量計測部(回路部)
3 アナログ出力保持部(保持部)
4 判定部
5 抵抗
6 ステッピングモータ駆動部
7 ステッピングモータ
8 双方向弁
31 抵抗
32 コンデンサ
41 抵抗
42 抵抗
43 コンパレータ
44 アナログ・デジタル変換部
45 論理部
図1
図2
図3
図4
図5