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7407385溶接ティーチング装置および溶接ティーチングシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】溶接ティーチング装置および溶接ティーチングシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20231222BHJP
   B23K 9/127 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
B25J9/22 A
B23K9/127 509C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023028555
(22)【出願日】2023-02-27
【審査請求日】2023-07-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138771
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 将明
(72)【発明者】
【氏名】大石 幸夫
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-055344(JP,A)
【文献】特開2009-119579(JP,A)
【文献】特開2000-246440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/22
B23K 9/127
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状のトーチを備える溶接ロボットの溶接中の動作を規定する溶接プログラムを作成する溶接プログラム作成装置と直接あるいは間接的に接続可能な溶接ティーチング装置であって、
操作者により把持される棒状の把持部と、
前記把持部の一端側に配置され、前記溶接ティーチング装置の周囲に配置される複数の投光器から投光される赤外光を受光する少なくともn(n:1以上の整数)個の受光部と、
前記受光部を覆うように配置され、前記複数の投光器から投光される前記赤外光の強度を減衰するm(m:n以下の整数)個のフィルタと、を備え
m=nのとき、前記受光部と前記フィルタとは1対1で対応して配置され、
m<nのとき、前記フィルタのうち少なくとも1つが複数の前記受光部を覆うように配置される、
溶接ティーチング装置。
【請求項2】
前記把持部の前記一端側に、前記トーチと同一形状を有するアタッチメントが固定され、
前記受光部および前記フィルタは、前記アタッチメントと接触せずに配置される、
請求項1に記載の溶接ティーチング装置。
【請求項3】
前記受光部および前記フィルタは、前記トーチの前記動作のティーチング中、前記操作者により把持されずに露出する、
請求項1または2に記載の溶接ティーチング装置。
【請求項4】
前記受光部および前記フィルタは、それぞれ複数設けられ、前記一端側において離間して配置される、
請求項1に記載の溶接ティーチング装置。
【請求項5】
棒状のトーチを備える溶接ロボットの溶接中の動作を規定する溶接プログラムを作成する溶接プログラム作成装置と、
前記溶接プログラム作成装置との間で直接あるいは間接的に接続可能な溶接ティーチング装置と、を備え、
前記溶接ティーチング装置は、
操作者により把持される棒状の把持部と、
前記把持部の一端側に配置され、前記溶接ティーチング装置の周囲に配置される複数の投光器から投光される赤外光を受光する少なくともn(n:1以上の整数)個の受光部と、
前記受光部を覆うように配置され、前記複数の投光器から投光される前記赤外光の強度を減衰するm(m:n以下の整数)個のフィルタと、を備え
m=nのとき、前記受光部と前記フィルタとは1対1で対応して配置され、
m<nのとき、前記フィルタのうち少なくとも1つが複数の前記受光部を覆うように配置される、
溶接ティーチングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶接ティーチング装置および溶接ティーチングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、赤外線を検出して撮像する赤外線撮像装置が開示されている。この赤外線撮像装置は、対物レンズと、赤外線検出素子と、赤外線吸収特性を有するガスが収容されたガスタンクと、ガスタンク内のガスの排出を行うポンプと、対物レンズと赤外線検出素子の間の光路上に配置され、ガスタンクから排出されたガスが封入される気密化された封入空間を有したガス封入フィルタと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-232583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、周囲に金属等の反射物が多く発生する環境下においても誤動作を抑制し、正確なティーチング操作を実現する溶接ティーチング装置、溶接ティーチング方法および溶接ティーチングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、棒状のトーチを備える溶接ロボットの溶接中の動作を規定する溶接プログラムを作成する溶接プログラム作成装置と直接あるいは間接的に接続可能な溶接ティーチング装置であって、操作者により把持される棒状の把持部と、前記把持部の一端側に配置され、前記溶接ティーチング装置の周囲に配置される複数の投光器から投光される赤外光を受光する少なくともn(n:1以上の整数)個の受光部と、前記受光部を覆うように配置され、前記赤外光の一部を透過して受光可能な特性を有するm(m:n以下の整数)個のフィルタと、を備え、m=nのとき、前記受光部と前記フィルタとは1対1で対応して配置され、m<nのとき、前記フィルタのうち少なくとも1つが複数の前記受光部を覆うように配置される、溶接ティーチング装置を提供する。
【0006】
また、本開示は、棒状のトーチを備える溶接ロボットの溶接中の動作を規定する溶接プログラムを作成する溶接プログラム作成装置と、前記溶接プログラム作成装置との間で直接あるいは間接的に接続可能な溶接ティーチング装置と、を備え、前記溶接ティーチング装置は、操作者により把持される棒状の把持部と、前記把持部の一端側に配置され、前記溶接ティーチング装置の周囲に配置される複数の投光器から投光される赤外光を受光する少なくともn(n:1以上の整数)個の受光部と、前記受光部を覆うように配置され、前記赤外光の一部を透過して受光可能な特性を有するm(m:n以下の整数)個のフィルタと、を備え、m=nのとき、前記受光部と前記フィルタとは1対1で対応して配置され、m<nのとき、前記フィルタのうち少なくとも1つが複数の前記受光部を覆うように配置される、溶接ティーチングシステムを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、周囲に金属等の反射物が多く発生する環境下においても誤動作を抑制でき、正確なティーチング操作を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】溶接ロボットシステムの一例を示すシステム構成図
図2】溶接ティーチングシステムと溶接ロボットシステムとの連携例を示すシステム構成図
図3】複数の溶接教示点による教示経路上の溶接トーチの位置例を示す図
図4】複数の溶接教示点による教示経路上の溶接トーチの他の位置例を示す図
図5】本実施の形態に係るコントローラの構成に至る経緯例を概念的に示す図
図6】本実施の形態に係るコントローラを把持部の長手方向に沿って見た第1外観例を示す図
図7】本実施の形態に係るコントローラをアタッチメント取付面の表面側から見た第2外観例を示す図
図8】本実施の形態に係るコントローラをアタッチメント取付面の背面側から見た第3外観例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示に至る経緯)
溶接ロボットにより先端側の溶接トーチの動きを制御し金属等の実ワークに対して溶接を施す溶接ロボットシステムが普及している。従来、実ワークに対する溶接トーチの動きを溶接ロボットに教え込む、つまり、そのような動き情報を入力するティーチング(教示)作業には特別なスキル(つまり、熟練技能)が必要で時間がかかることが知られている。
【0010】
一方で、ティーチング作業の一例として、昨今溶接ロボットの溶接トーチをVR(Virtual Reality)機器に見立て、実ワークに対する溶接トーチの動きをVR機器の位置情報によって教え込むオフラインティーチングが登場している。このオフラインティーチングでは、オフラインティーチング用のコンピュータアプリケーション(以下、単に「アプリケーション」と称する場合がある)において仮想的に構築された仮想空間内に溶接ロボットを仮想的に配置し、作業者はVR機器(コントローラ)を把持して溶接過程における溶接トーチの動きをなぞる直感的操作を行う。これにより、オフラインティーチングにおいて、実ワークに対する溶接過程における溶接トーチの動き(言い換えると、溶接トーチの移動経路)が入力(つまりティーチング)されて保存される。したがって、特別なスキルの無い作業者にとっても、ティーチングに要する時間の短縮が可能となることが期待されている。
【0011】
オフラインティーチングでは、コントローラは自機の位置を正確に認識するために、コントローラの周囲から投光される赤外光を受光する必要がある。しかし、周囲に存在している自然光あるいは反射光等の外乱光の影響により、コントローラが赤外光を適切に受光できず、コントローラの操作時に誤動作が発生する。つまり、コントローラが自機の位置を正確に認識することができないという課題がある。このような課題が存在するため、VR機器をコントローラとして使用する際、操作者(作業者)の周囲を黒地の専用ブースで覆うという大掛かりな対策がとられていた。
【0012】
ここで、VR機器を用いてゲームを行う環境下では、上述した専用ブースに加えて非反射材等を用いて赤外光の受光を低減する対策を行うことが可能である。しかしながら、VR機器(コントローラ)を用いて溶接ロボットの溶接トーチの動きを教え込むオフラインティーチングを行う際、実際の溶接現場(工場)においては金属等の反射物が実ワークとして使用されることが多いため、周囲環境に影響されないコントローラの誤動作抑制対策が必要と考えられている。
【0013】
そこで、以下の実施の形態では、周囲に金属等の反射物が多く発生する環境下においても誤動作を抑制し、正確なティーチング操作を実現する溶接ティーチング装置および溶接ティーチングシステムの例を詳述する。
【0014】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る溶接ティーチング装置および溶接ティーチングシステムを具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0015】
1.溶接ロボットシステム100のシステム概要
まず、図1を参照して、本実施の形態に係る溶接ロボットシステム100のシステム概要について説明する。図1は、溶接ロボットシステム100の一例を示すシステム構成図である。溶接ロボットシステム100は、溶接ロボット1と、溶接ロボット1が備えるトーチ2と、ロボット制御装置3と、を備える。溶接ロボットシステム100は、溶接ロボット1の溶接中のトーチ2の挙動を溶接開始前に予め教示(言い換えると、入力)するためのティーチペンダント4をさらに備えてよい。溶接ロボットシステム100は、ロボット制御装置3に対する各種の操作を入力するための操作ボックス5をさらに備えてよい。
【0016】
溶接ロボット1は、ワーク(例えば赤外光を反射する特性を有する金属)に対して溶接を行うロボットである。溶接の種別(例えば融合、圧接、ろう接)はここでは限定しない。溶接ロボット1は、多関節(例えば5軸あるいは6軸)のロボットアーム11を備えてよい。ロボットアーム11の先端部には、エンドエフェクタ12が接続される。エンドエフェクタ12は、典型的には1本以上のフィンガを有するロボットハンドであるが、指を持たないエンドエフェクタであってもよい。
【0017】
ロボットアーム11上や、ロボットアーム11とエンドエフェクタ12との接続部分近傍等に、カメラ等の撮像手段が設けられてよい。ロボットアーム11の3次元上の動きは、ロボットアーム11に接続されたロボット制御装置3によって制御される。ロボットアーム11やエンドエフェクタ12の動きは、カメラ等の撮像手段によって撮像された画像に基づいて制御されてよい。
【0018】
トーチ2は、例えばアーク溶接等の溶接において、ワーク(上述参照)に対して溶接を行う際に用いられる。ガス溶接やレーザー溶接等の溶接の種類や、溶接の種類に応じたトーチの種類については、ここでは限定しない。
【0019】
ロボット制御装置3は、ケーブルを介して溶接ロボット1に接続され、溶接ロボット1の挙動を制御する。ロボット制御装置3は、操作者がティーチペンダント4を操作することにより、溶接ロボット1の挙動を制御してよい。ロボット制御装置3は、操作者が操作ボックス5を操作することにより、溶接ロボット1の挙動を制御してよい。ロボット制御装置3は、溶接ロボット1の挙動を規定するための制御プログラム(つまり、溶接ロボット制御プログラム)に基づいて、溶接ロボット1の挙動を制御してよい。
【0020】
ティーチペンダント4は、操作者がティーチペンダント4を操作して、溶接ロボット1のトーチ2の挙動への教示を行うユーザインタフェースとしての役割を有する入力装置である。ティーチペンダント4として、従来技術のティーチペンダントが用いられてよく、ここでは限定しない。操作ボックス5は、操作者がロボット制御装置3を制御するスイッチやボタン等を備える入力装置である。操作ボックス5も、従来技術のものが用いられてよく、ここでは限定しない。
【0021】
2.溶接システム300のシステム概要
次に、図2を参照して、本実施の形態に係る溶接システム300のシステム概要について説明する。図2は、溶接ティーチングシステム200と溶接ロボットシステム100との連携例を示すシステム構成図である。図2中において、図1で示した要素と同一のものには同一の符号を付与して説明を簡略化あるいは省略し、異なる内容について説明する。
【0022】
溶接システム300は、図1を参照して説明した溶接ロボットシステム100と、溶接ティーチングシステム200と、を備える。溶接ティーチングシステム200は、ヘッドマウントディスプレイHMDと、コントローラCTRと、1台以上(例えば2台)のベースステーションIRと、溶接プログラム作成装置Tと、を備えている。
【0023】
コントローラCTRは、機械装置のモーション制御に用いられる機器である。本実施の形態では、コントローラCTRは、図1に示されたトーチ2のモーション制御(つまり、溶接ロボット1による溶接中においてトーチ2のワークに対する挙動を教示する処理)に用いられる。
【0024】
コントローラCTRは、詳細は後述するが(図6から図8参照)、操作者が把持可能な外形形状を有している。本実施の形態では、操作者は、コントローラCTRを、溶接ロボットシステム100の溶接ロボット1が備えるトーチ2に見立てて把持する。操作者がコントローラCTRを把持しながら溶接ロボット1のトーチ2が通過する溶接教示点(図3および図4参照)を直感的に指定できるように、コントローラCTRは、トーチ2と同一形状の先端部を有してよい。コントローラCTRは、各種のボタンやスイッチ、レバー等のユーザインタフェースとして機能する入力部を備えている(図6参照)。操作者は、トーチ2の先端に対応するコントローラCTRの先端を、溶接対象物であるワーク(図示省略)に実際に当接させた状態で、上述のボタンを押下する等して、溶接教示点(図3および図4参照)の位置情報(言い換えると、3次元の座標情報)をコントローラCTRに記憶させる。
【0025】
コントローラCTRは、ヘッドマウントディスプレイHMDとの間でデータの入出力が可能となるように接続される。なお、コントローラCTRとヘッドマウントディスプレイHMDとの間のデータ通信は無線を介して行われてもよく、有線を介して行われてもよい。さらに、ヘッドマウントディスプレイHMDは、溶接ティーチングシステム200の構成として省略されてもよい。この場合、コントローラCTRは、溶接プログラム作成装置Tとの間で、直接に無線接続した上でデータ信号等の無線通信を行う。
【0026】
コントローラCTRは、操作者が指定した溶接教示点の位置情報と後述の姿勢情報とを、ヘッドマウントディスプレイHMD経由で溶接プログラム作成装置Tに送信してよい。溶接教示点には、ワークに対する溶接の溶接開始点W1(図3および図4参照)および溶接終了点W2(図3および図4参照)が含まれてよい。なお、ヘッドマウントディスプレイHMDが用いられない場合、コントローラCTRは、溶接教示点の位置情報と後述の姿勢情報とを、ヘッドマウントディスプレイHMDを介さずに溶接プログラム作成装置Tに直接送信してよい。
【0027】
姿勢情報は、溶接開始点W1(図3および図4参照)と溶接終了点W2(図3および図4参照)とを結ぶ溶接線上の溶接教示点での、溶接ロボット1が備えるトーチ2の溶接線に対する姿勢を特定可能な情報である。例えば、溶接教示点に先端を向けたコントローラCTRの姿勢を示す情報であるコントローラ姿勢情報は、姿勢情報の一例である。コントローラCTRをトーチ2に見立ててティーチングに用いる場合、3次元空間上のコントローラCTRの先端の向きと、トーチ2の先端の3次元空間上の向きとが一致するように、ロボット制御装置3が溶接ロボット1を制御する。そのため、溶接プログラム作成装置Tは、コントローラ姿勢情報に基づいて、トーチ2の溶接線に対する姿勢を特定可能である。溶接プログラム作成装置Tは、溶接教示点に向けたコントローラCTRの姿勢を示すコントローラ姿勢情報を、姿勢情報として取得してよい。
【0028】
なお、操作者は、コントローラCTRではなく、トーチ2そのものを用いて溶接教示点を指定することもできる。この場合、ティーチペンダント4等からの操作入力に応じて変動するトーチ2の姿勢を示す情報を、例えばロボット制御装置3が取得可能である。溶接プログラム作成装置Tは、トーチ2の姿勢を示す情報を姿勢情報としてロボット制御装置3から取得してよい。なお、溶接プログラム作成装置Tは、上述の位置情報もロボット制御装置3から取得してよい。
【0029】
ヘッドマウントディスプレイHMDは、ヘッドマウントディスプレイHMDを装着した者(以下、装着者)にVR画像を表示することができる。装着者は、上述の操作者とは異なる人物であってもよいし、同一の人物であってもよい。ヘッドマウントディスプレイHMDは、溶接プログラム作成装置Tとの間でデータの入出力が可能となるように接続される。例えば、ヘッドマウントディスプレイHMDと溶接プログラム作成装置Tとは、ディスプレイケーブルやUSBケーブル等によって接続されてよい。ただし、接続の態様はこれには限られず、ヘッドマウントディスプレイHMDと溶接プログラム作成装置Tとが相互に無線通信を行ってもよい。
【0030】
ここで、本実施の形態においては、コントローラCTRと溶接プログラム作成装置Tとの間のデータ交換を中継する為の機器として、ヘッドマウントディスプレイHMDが用いられている。しかし、溶接ティーチングシステム200では、ヘッドマウントディスプレイHMDを備えずに、コントローラCTRと溶接プログラム作成装置Tとの間のデータ通信が直接行われてもよい。
【0031】
ベースステーションIRは、溶接プログラム作成装置TがコントローラCTRの位置情報および姿勢情報を取得するために用いられる。本実施の形態に係る溶接ティーチングシステム200は、2台のベースステーションIRを備えている。ベースステーションIRは、溶接プログラム作成装置Tとの間でデータ信号の入出力が可能となるように接続されてよい。2台のベースステーションIRのそれぞれは、コントローラCTRへ向けて赤外線レーザー(赤外光の一例)を照射する。例えば、それぞれのベースステーションIRは、同期してフラッシュを点灯させ、次に、下から上に赤外線レーザーを照射し、次に、フラッシュを点灯させ、次に、左から右に赤外線レーザーを照射する。それぞれのベースステーションIRは、上記の4種類の処理を繰り返し行う。一方、コントローラCTRは、受光部(後述参照)を備える。コントローラCTRは、受光部によってベースステーションIRから受光した光の到達時間や角度情報等に基づいて、溶接教示点の位置情報(言い換えると、操作者によりコントローラCTRのボタンが押下された時のコントローラCTRの先端部(後述するアタッチメントAtt1参照)の位置情報等)およびコントローラ姿勢情報を算出する。なお、コントローラCTRの代わりに、ヘッドマウントディスプレイHMDや溶接プログラム作成装置Tが、コントローラCTRから送られたデータ信号に基づいて、溶接教示点の位置情報(上述参照)およびコントローラ姿勢情報を算出してもよい。
【0032】
溶接教示点の位置情報およびコントローラ姿勢情報の取得方法は、上述の例には限られない。例えばベースステーションIRが構造光の投影機能と赤外線カメラの機能とを備え、コントローラCTRに投影された構造光を赤外線カメラで撮像して、撮像された画像を画像処理すれば、溶接プログラム作成装置Tが上述の位置情報およびコントローラ姿勢情報を取得できる。また、複数台のベースステーションIRの代わりに複数台のカメラを設け、ワークとコントローラCTRとをカメラが撮像し、撮像画像に含まれる特徴点等に基づいて上述の位置情報およびコントローラ姿勢情報を算出してもよい。溶接プログラム作成装置Tは、これら以外の方式で、上述の位置情報およびコントローラ姿勢情報を取得してもよい。
【0033】
溶接プログラム作成装置Tは、ヘッドマウントディスプレイHMD、ベースステーションIR、およびロボット制御装置3との間でデータ信号の入出力が可能となるように接続される。ヘッドマウントディスプレイHMDが用いられない場合、溶接プログラム作成装置Tは、コントローラCTRとの間でデータ信号の入出力が可能となるように接続されてもよい。溶接プログラム作成装置Tと他の機器との接続は、例えばLAN(Local Area Network)ケーブルにより行われてよく、その他の接続ケーブルやあるいは無線を介して接続されてもよい。溶接プログラム作成装置Tは、例えばゲーミングPC等であってよいが、これには限られない。
【0034】
溶接プログラム作成装置Tは、処理部101と、記憶部102と、入力部103と、表示部104を備えてよい。溶接プログラム作成装置Tは、それ以外の構成要素を備えてもよい。
【0035】
処理部101は、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて構成される。処理部101は、溶接プログラム作成装置Tの各部の動作を全体的に統括するための制御処理、溶接プログラム作成装置Tの各部との間のデータもしくは情報の入出力処理、データの計算処理、およびデータもしくは情報の記憶処理を行う。
【0036】
記憶部102は、HDD(Hard Disk Drive)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含んでいてよく、処理部101によって実行される各種プログラム(OS(Operating System)、アプリケーションソフト等)や各種データを格納している。記憶部102は、溶接ロボット1による溶接開始から溶接終了までの挙動を規定するための制御プログラムを作成するプログラム(以下、「溶接プログラム」と称する場合がある)を格納していてよい。この溶接プログラム1021は、処理部101によって実行されてよい。
【0037】
入力部103は、トラックパッドやキーボードやマウス等を含んでいてよく、操作者との間のヒューマンインターフェースとしての機能を有し、操作者の操作を入力する。言い換えると、入力部103は、処理部101により実行される各種の処理における、入力または指示に用いられる。
【0038】
表示部104は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)または有機EL(Electroluminescence)等の表示用デバイスを用いて構成されてよい。表示部104は、例えば処理部101が溶接プログラム1021と、上述の溶接教示点の位置情報およびコントローラ姿勢情報とに基づいて、どのような溶接プログラムを作成するかを表示してよい。
【0039】
3.溶接教示点の概要
次に、図3および図4を参照して、コンピュータ上の仮想空間における複数の溶接教示点により構成される教示経路の入力(ティーチング)について説明する。図3は、複数の溶接教示点による教示経路上の溶接トーチの位置例を示す図である。図4は、複数の溶接教示点による教示経路上の溶接トーチの他の位置例を示す図である。図3および図4の説明において、重複する要素には同一の符号を付与して説明を簡略化あるいは省略する。
【0040】
図3および図4のそれぞれは、溶接ロボット1のトーチ2がワークへの溶接過程において移動する経路を教示するための教示経路TCPH1に対応する表示部104での表示例である。図3および図4のそれぞれの表示例は、溶接プログラム作成装置Tの処理部101が溶接プログラム1021を実行する際に、表示部104に表示されるアプリケーション画面の画像に相当する。ただし、これらの画像が、ヘッドマウントディスプレイHMDや、それ以外の機器が備える画面に表示されてもよい。操作者は、表示部104等に表示された画像を見ながら、コントローラCTRを操作して、溶接ロボット1に対するティーチングを行う。
【0041】
本実施の形態において、表示部104等に表示されたウィンドウWは、第1ペインPA1、第2ペインPA2および第3ペインPA3の3つのペインに分割されている。ただし、ウィンドウWのペイン分割はあくまで一例であり、他の表示態様が採用されてもよい。
【0042】
第1ペインPA1には、トーチ2を備えた溶接ロボット1の仮想モデルが表示される。ここでいう仮想モデルとは、実際の溶接ロボット1を仮想空間上に配置したモデルをアプリケーション画面であるウィンドウWで示したものである。第1ペインPA1には、溶接ロボット1が備えたトーチ2の動作軌跡(つまり、教示経路TCPH1)が併せて表示されてよい。第1ペインPA1に図示されているx軸、y軸およびz軸は、互いに直交した座標軸である。本例においては、トーチ2の向きがx軸の方向と一致している。
【0043】
第2ペインPA2には、トーチ2の動作軌跡(つまり、教示経路TCPH1)を構成する1つ以上の溶接教示点に係る各種の情報が表示されている。具体的には、
(1)トーチ2を移動させる移動コマンドの種類(MOVEL、MOVEP等)
(2)溶接教示点の識別子(P001等)
(3)トーチ2の移動速度
が示されている。なお、図3では溶接教示点P0に対応する各種の情報が示され、図4では溶接教示点P1に対応する各種の情報が示されている。
【0044】
第3ペインPA3には、第2ペインPA2で選択されている1つの溶接教示点に対応する1つ以上の制御パラメータの値が表示されている。具体的には、
(1)溶接(ONなら溶接を行う、OFFなら溶接を行わない)
(2)トーチ2の移動スピード(AUTOなら溶接プログラムがトーチ2の移動スピードを自動設定。数値指定ならその数値に従ったトーチ2の移動スピードを設定)
(3)トーチ姿勢固定(ONなら姿勢固定モード、OFFなら姿勢非固定モード、AUTOならONまたはOFFが自動設定される)
【0045】
ここで、教示経路TCPH1は、溶接教示点P0→溶接教示点P1→溶接教示点P2→溶接教示点(溶接開始点W1)→溶接教示点(溶接終了点W2)→溶接教示点P3→溶接教示点P4→溶接教示点P0に至る経路である。つまり、教示経路TCPH1を構成する各種の溶接教示点およびその位置情報は、操作者が棒状のトーチ2(図1参照)に見立てられたアタッチメントAtt1が取り付けられたコントローラCTRを動かすことにより教示(入力)されてコントローラCTRにおいて保持される。その後、各種の溶接教示点およびその位置情報のデータ信号が、コントローラCTRから溶接プログラム作成装置Tに直接、あるいはヘッドマウントディスプレイHMDを介して溶接プログラム作成装置Tに間接的に送信される。
【0046】
図3では、トーチ2の先端が第1番目となる溶接教示点P0を指している状態を示す。溶接教示点P0は、例えば溶接ロボット1が待機姿勢にある場合のトーチ2の先端位置に相当する。溶接ロボット1の待機姿勢は、溶接ロボット1が溶接を始める際の初期位置にある場合の姿勢である。
【0047】
図4では、トーチ2の先端が第2番目となる溶接教示点P1を指している状態を示す。溶接教示点P1は、いわゆる空走点である。空走とは、トーチ2がワークに対して溶接を行わずに移動することである。つまり、溶接教示点P1は、例えば周囲の障害物等の有無に鑑みて、トーチ2がワークに対して溶接を開始するための位置(より具体的には、溶接開始点W1)に移動する前に通過する位置となる。
【0048】
4.本実施の形態に係るコントローラCTRに至る経緯
次に、図5を参照して、本実施の形態に係るコントローラCTRの構成に至る経緯について説明する。図5は、本実施の形態に係るコントローラの構成に至る経緯例を概念的に示す図である。
【0049】
(1)誤動作発生状態
従来のコントローラCTRzを用いてオフラインティーチングにおいて、金属等の光沢ある反射物が溶接対象となるワークWkとして配置されている場合、例えばベースステーションIRから投光される赤外光IR1がワークWkで反射する。この反射光IR1r1が、コントローラCTRzが備える受光部(つまり、ベースステーションIRからの直接光である赤外光IR1、あるいは反射光IR1r1を受光するセンサ)において減衰することなく受光される。したがって、コントローラCTRzは、自機の位置を正しく計算することができない。つまり、オフラインティーチングにおいて、コントローラCTRzの正しい位置情報が得られず、誤動作が発生する状態となる。
【0050】
(2)考えられ得る環境対策
(1)で説明した誤動作が発生する事態に対する対策として、考えられ得る環境対策があり得る。具体的には、ワークWkの周囲を黒地BLKの物質で覆うことにより、ベースステーションIRからの直接光である赤外光IR1を黒地BLKで反射させ、その反射光IR1r2の強度を減衰させてコントローラCTRzで受光させるという方法である。しかしながら、溶接現場において、ワークWkの周囲を黒地BLKの物質で覆うことは現実的に困難である。
【0051】
(3)実施の形態
そこで、(1)および(2)を踏まえて、本実施の形態に係るコントローラCTRの筐体の一部分に、赤外光の減衰用のフィルタFLT(つまり、入射した赤外光の一部の成分のみ透過させる特性を有するフィルタFLT)が直接的に貼り付けられる。図5では、図5が概念的に説明した図面であるため、フィルタFLTがコントローラCTRから離間して配置されているように示されているが、フィルタFLTはコントローラCTRに貼り付けられている。
【0052】
具体的には、(2)のようにワークWkに黒地BLKの物質を覆うことはせず、ベースステーションIRからの赤外光IR1のワークWk表面での反射光IR1r3をフィルタFLTに入射させる。これにより、フィルタFLTで反射光IR1r3が減衰し、減衰後の減衰反射光IR1r3wがコントローラCTRが備える受光部(上述参照)に入射する。しかし、コントローラCTRが備える受光部(上述参照)に入射した減衰反射光IR1r3wは、直接光である赤外光IR1に比べてかなり強度が減衰している。したがって、コントローラCTRは、減衰反射光IR1r3wが受光部(上述参照)に入射したとしても、その減衰反射光IR1r3wの強度がコントローラCTRが予め保有している所定の閾値未満となるため、減衰反射光IR1r3wを受光したと認識しない。ここでいう所定の閾値とは、コントローラCTRが赤外光を受光したと認識する時の赤外光の強度を示す。つまり、コントローラCTRは、所定の閾値以上となる強度の赤外光(例えばベースステーションIRからの直接光である赤外光IR1)を受光部(上述参照)で入射した時に限り、その赤外光を受光したと認識することができる。これにより、本実施の形態に係るコントローラCTRは、VR機器としての本来の性能(つまり、ベースステーションIRからの赤外光IR1の受光に基づく自機の位置情報の計算を実行できること)を満たし、誤動作の発生を抑制することができる。
【0053】
5.本実施の形態に係るコントローラCTRの受光部およびフィルタの配置
次に、図6から図8を参照して、本実施の形態に係るコントローラCTRの受光部およびフィルタの配置について説明する。図6は、本実施の形態に係るコントローラCTRを把持部31の長手方向に沿って見た第1外観例を示す図である。図7は、本実施の形態に係るコントローラCTRをアタッチメント取付部IN1の表面側から見た第2外観例を示す図である。図8は、本実施の形態に係るコントローラCTRをアタッチメント取付部IN1の背面側から見た第3外観例を示す図である。図6から図8のそれぞれの説明において、重複する要素には同一の符号を付与して説明を簡略化あるいは省略する。
【0054】
図6に示すように、コントローラCTRは、長手方向Kに沿った把持部31と、把持部31の一端側に配置されたアタッチメント取付部IN1とを備える。つまり、把持部31とアタッチメント取付部IN1とが構造的に連結してコントローラCTRの筐体として形成されている。
【0055】
把持部31は、棒状に形成され、各種のボタンあるいはスイッチが設けられている。把持部31は、操作者がコントローラCTRを用いてオフラインティーチングする際に、操作者の手によって把持される。
【0056】
アタッチメント取付部IN1は、把持部31と連結され、例えば棒状のトーチ2の形状とほぼ同一形状を有するアタッチメントAtt1(例えば棒状のアタッチメントAtt1)を固定する(図7参照)。アタッチメントAtt1の固定方法については、図7および図8を参照して後述する。アタッチメント取付部IN1は、その中央に、把持部31に向かって徐々に幅狭となる円錐状の取付用穴HL1を有している。アタッチメント取付部IN1の取付用穴HL1の周囲に、1つ以上の赤外光の受光部(例えば受光センサ)がそれぞれ離間して設けられている。具体的には、受光部RS1L、RS2L、RS3L、RS4L、RS5L、RS6L、RS1R、RS2R、RS3R、RS4R、RS5R、RS6Rのそれぞれが取付用穴HL1を把持部31に向かう方向に見た時の略周方向に沿って配置されている。一方で、把持部31のボタンあるいはスイッチの付近には、受光部が配置されていない。これは、操作者の指あるいは手によって受光部を覆うことによってベースステーションIRからの直接光である赤外光IR1の受光が遮られることを防ぐためである。なお、図6には図示が省略されているが、アタッチメント取付部IN1の取付用穴HL1の内周面に複数(例えば4つ)の受光部が設けられてもよい。
【0057】
そして、図6に示す受光部RS1L、RS2L、RS3L、RS4L、RS5L、RS6L、RS1R、RS2R、RS3R、RS4R、RS5R、RS6Rのそれぞれを覆うように、フィルタFLT1L、FLT2L、FLT3L、FLT4L、FLT5L、FLT6L、FLT1R、FLT2R、FLT3R、FLT4R、FLT5R、FLT6Rのそれぞれが貼り付けられている。これらのフィルタFLT1L、FLT2L、FLT3L、FLT4L、FLT5L、FLT6L、FLT1R、FLT2R、FLT3R、FLT4R、FLT5R、FLT6Rは、赤外光(例えばベースステーションIRからの赤外光IR1)の一部を透過して(言い換えると、強度を減衰して)受光可能な特性を有する。なお、以下の説明においても、受光部とフィルタとは、1対1で対応するように設けられてもよいし、N対1(例えばN:2以上の整数)で対応するように設けられてもよい。つまり、後者の場合、1つのフィルタが複数の受光部を覆うように貼り付けられる。
【0058】
図7に示すように、本実施の形態に係るコントローラCTRのアタッチメント取付部INの表面側において、把持部31と反対側(言い換えると、把持部31から遠のく方向)にアタッチメントAtt1が固定されている。アタッチメントAtt1は、例えばアタッチメント固定上プレートUP1とアタッチメント固定下プレートLP1(図8参照)とが挟み込みネジNJ1によってアタッチメント取付部IN1に対して固定され、さらに、アタッチメント固定上プレートUP1に対して接着材等によって固定される。これにより、アタッチメントAtt1は、コントローラCTRに対して固定可能となる。
【0059】
また、コントローラCTRのアタッチメント取付部IN1の周囲には、図6で図示されていない受光部RS7R、RS8が設けられている。これらの受光部RS7R、RS8のそれぞれを覆うように、フィルタFLT7R、FLT8のそれぞれが貼り付けられている。フィルタFLT7R、FLT8のそれぞれは、赤外光(例えばベースステーションIRからの赤外光IR1)の一部を透過して(言い換えると、強度を減衰して)受光可能な特性を有する。
【0060】
図8に示すように、本実施の形態に係るコントローラCTRのアタッチメント取付部INの背面側において、受光部RS9、RS10L、RS3L、RS5L、RS11L、RS12L、RS10R、RS3R、RS5R、RS11R、RS12Rのそれぞれがアタッチメント固定下プレートLP1から見た時の略周方向に沿って配置されている。
【0061】
そして、図8に示す受光部RS9、RS10L、RS3L、RS5L、RS11L、RS12L、RS10R、RS3R、RS5R、RS11R、RS12Rのそれぞれを覆うように、フィルタFLT9、FLT10L、FLT3L、FLT5L、FLT11L、FLT12L、FLT10R、FLT3R、FLT5R、FLT11R、FLT12Rのそれぞれが貼り付けられている。これらのフィルタFLT9、FLT10L、FLT3L、FLT5L、FLT11L、FLT12L、FLT10R、FLT3R、FLT5R、FLT11R、FLT12Rは、赤外光(例えばベースステーションIRからの赤外光IR1)の一部を透過して(言い換えると、強度を減衰して)受光可能な特性を有する。
【0062】
以上により、本実施の形態に係る溶接ティーチング装置(例えばコントローラCTR)は、棒状のトーチ2を備える溶接ロボット1の溶接中の動作(挙動)を規定する溶接プログラムを作成する溶接プログラム作成装置Tと直接あるいは間接的に接続可能である。溶接ティーチング装置(例えばコントローラCTR)は、操作者により把持される棒状の把持部31と、把持部31の一端側に配置され、溶接ティーチング装置の周囲に配置される複数の投光器(例えばベースステーションIR)から投光される赤外光を受光する少なくともn(n:1以上の整数)個の受光部(図6から図8参照)と、受光部を覆うように配置され、赤外光の一部を透過して受光可能な特性を有するm(m:n以下の整数)個のフィルタ(図6から図8参照)と、を備える。これにより、溶接ティーチング装置(例えばコントローラCTR)は、仮想空間内において溶接ロボット1のトーチ2の挙動を教示(入力)するためのオフラインティーチングを行う際に、コントローラCTRの周囲に金属等の反射物(例えばワーク)が多く発生する環境下においても誤動作(つまり、コントローラCTRによる正しくない自機の位置情報の算出)を抑制し、正確なティーチング操作を実現することができる。
【0063】
また、溶接ティーチング装置(例えばコントローラCTR)では、把持部31の一端側に、トーチ2と同一形状を有するアタッチメントAtt1が固定される。受光部(図6から図8参照)およびフィルタ(図6から図8参照)は、アタッチメントAtt1と接触せずに配置される。これにより、溶接ティーチング装置(例えばコントローラCTR)は、アタッチメントAtt1と接触しない位置に受光部およびフィルタを設けることで、オフラインティーチング中に1つ以上の溶接教示点を教示する際にベースステーションIRからの赤外光の受光を受光部およびフィルタが阻害しなくすることができる。
【0064】
また、溶接ティーチング装置(例えばコントローラCTR)では、受光部(図6から図8参照)およびフィルタ(図6から図8参照)は、トーチ2の動作のティーチング(オフラインティーチング)中、操作者により把持されずに露出する。これにより、溶接ティーチング装置(例えばコントローラCTR)は、オフラインティーチングの際に、受光部(図6から図8参照)およびフィルタ(図6から図8参照)が操作者により把持されなくなるので、自機の位置情報を正しく計算するための赤外光を適正に受光できる。
【0065】
また、溶接ティーチング装置(例えばコントローラCTR)では、受光部(図6から図8参照)およびフィルタ(図6から図8参照)は、それぞれ複数設けられ、把持部31の一端側において離間して配置される。これにより、溶接ティーチング装置(例えばコントローラCTR)は、受光部(図6から図8参照)およびフィルタ(図6から図8参照)を把持部31の一端側において満遍なく配置することができ、ベースステーションIRからの赤外光を受光し易くできる。
【0066】
また、本実施の形態に係る溶接ティーチングシステム200は、棒状のトーチ2を備える溶接ロボット1の溶接中の動作を規定する溶接プログラムを作成する溶接プログラム作成装置Tと、溶接プログラム作成装置Tとの間で直接あるいは間接的に接続可能な溶接ティーチング装置(例えばコントローラCTR)と、を備える。溶接ティーチング装置(例えばコントローラCTR)は、操作者により把持される棒状の把持部31と、把持部31の一端側に配置され、溶接ティーチング装置(例えばコントローラCTR)の周囲に配置される複数の投光器(例えばベースステーションIR)から投光される赤外光を受光する少なくともn(n:1以上の整数)個の受光部(図6から図8参照)と、受光部(図6から図8参照)を覆うように配置され、赤外光の一部を透過して受光可能な特性を有するm(m:n以下の整数)個のフィルタ(図6から図8参照)と、を備える。これにより、溶接ティーチングシステム200は、仮想空間内において溶接ロボット1のトーチ2の挙動を教示(入力)するためのオフラインティーチングを行う際に、コントローラCTRの周囲に金属等の反射物(例えばワーク)が多く発生する環境下においても誤動作(つまり、コントローラCTRによる正しくない自機の位置情報の算出)を抑制し、正確なティーチング操作を実現することができる。
【0067】
以上、図面を参照して、本開示について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本開示は、周囲に金属等の反射物が多く発生する環境下においても誤動作を抑制し、正確なティーチング操作を実現する溶接ティーチング装置および溶接ティーチングシステムとして有用である。
【符号の説明】
【0069】
1 溶接ロボット
2 トーチ
3 ロボット制御装置
4 ティーチペンダント
5 操作ボックス
11 ロボットアーム
12 エンドエフェクタ
31 把持部
100 溶接ロボットシステム
101 処理部
102 記憶部
1021 溶接プログラム
103 入力部
104 表示部
200 溶接ティーチングシステム
300 溶接システム
CTR コントローラ
HMD ヘッドマウントディスプレイ
IN1 アタッチメント取付部
IR ベースステーション
T 溶接プログラム作成装置
【要約】
【課題】周囲に金属等の反射物が多く発生する環境下においても誤動作を抑制し、正確なティーチング操作を実現する。
【解決手段】溶接ティーチング装置は、棒状のトーチを備える溶接ロボットの溶接中の動作を規定する溶接プログラムを作成する溶接プログラム作成装置と直接あるいは間接的に接続可能である。溶接ティーチング装置は、操作者により把持される棒状の把持部と、把持部の一端側に配置され、溶接ティーチング装置の周囲に配置される複数の投光器から投光される赤外光を受光する少なくともn(n:1以上の整数)個の受光部と、受光部を覆うように配置され、赤外光の一部を透過して受光可能な特性を有するm(m:n以下の整数)個のフィルタと、を備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8