(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】病原体検出システム、病原体検出方法、病原体検出器、及び、制御装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20231222BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20231222BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20231222BHJP
G01N 21/64 20060101ALN20231222BHJP
【FI】
C12M1/34 B
C12Q1/02
G01N33/569 G
G01N21/64 F
G01N21/64 G
(21)【出願番号】P 2017248356
(22)【出願日】2017-12-25
【審査請求日】2020-12-18
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 修
(72)【発明者】
【氏名】塩井 正彦
(72)【発明者】
【氏名】福本 訓明
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】福井 悟
【審判官】長井 啓子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-206670(JP,A)
【文献】特開2007-006931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
G01N 1/00-1/44
F24F 11/00-11/89
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAPLUS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内における病原体を検出するための病原体検出システムであって、
前記建物内の異なる空間に配置された複数の病原体検出器を備え、
前記複数の病原体検出器のそれぞれは、当該病原体検出器が配置されている空間の広さに応じて、前記病原体を検出するための動作モードを変更可能に構成されて
おり、
前記動作モードには、前記病原体の検出が行われる時間間隔が互いに異なる複数のモードが含まれる、
病原体検出システム。
【請求項2】
前記複数の病原体検出器のうちの一の病原体検出器は、第1の空間に配置されており、
前記複数の病原体検出器のうちの他の病原体検出器は、前記第1の空間よりも広い第2の空間に配置されており、
前記一の病原体検出器は、第1の時間間隔で前記病原体の検出を行う第1のモードの動作を行い、
前記他の病原体検出器は、前記第1の時間間隔よりも短い第2の時間間隔で前記病原体の検出を行う第2のモードの動作を行う、
請求項
1に記載の病原体検出システム。
【請求項3】
さらに、前記第1の空間及び前記第2の空間の連続状態または非連続状態を検知する検知装置を備え、
前記検知装置の検知結果が、前記第1の空間及び前記第2の空間が非連続状態から連続状態に切り替わったことを示す場合、前記一の病原体検出器の前記動作モードは、前記第1のモードから前記第2のモードに変更される、
請求項
2に記載の病原体検出システム。
【請求項4】
さらに、前記第1の空間及び前記第2の空間の連続状態または非連続状態を検知する検知装置を備え、
前記検知装置の検知結果が前記第1の空間及び前記第2の空間が非連続状態から連続状態に切り替わったことを示す場合、前記一の病原体検出器の前記動作モードは、前記第1のモードから前記病原体の検出を停止する停止モードに変更される、
請求項
2に記載の病原体検出システム。
【請求項5】
前記検知装置は、前記第1の空間と前記第2の空間との間に設けられた建具の開閉状態を検知することにより、前記第1の空間及び前記第2の空間の連続状態または非連続状態を検知する
請求項
3または4に記載の病原体検出システム。
【請求項6】
前記一の病原体検出器は、
前記検知装置の検知結果を受信する第1通信部と、
受信された検知結果に基づいて前記一の病原体検出器の動作モードを変更する第1制御部とを備える、
請求項
3~5のいずれか1項に記載の病原体検出システム。
【請求項7】
さらに、前記複数の病原体検出器を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、
前記検知装置の検知結果を受信する第2通信部と、
受信された検知結果に基づいて前記一の病原体検出器の動作モードを変更する指令を前記第2通信部に送信させる第2制御部とを備える、
請求項
3~5のいずれか1項に記載の病原体検出システム。
【請求項8】
建物内における病原体を検出する病原体検出器が配置されている空間の広さを検知し、
検知された前記空間の広さに応じて、前記病原体検出器の前記病原体を検出するための動作モードを変更
し、
前記動作モードには、前記病原体の検出が行われる時間間隔が互いに異なる複数のモードが含まれる、
病原体検出方法。
【請求項9】
建物内における病原体を検出する病原体検出器であって、
前記病原体を検出する検出部と、
前記病原体検出器が配置されている空間の広さに応じて、前記病原体検出器の前記病原体を検出するための動作モードを変更する制御部とを備え
、
前記動作モードには、前記病原体の検出が行われる時間間隔が互いに異なる複数のモードが含まれる、
病原体検出器。
【請求項10】
建物内における病原体を検出する病原体検出器と通信を行う通信部と、
前記病原体検出器が配置されている空間の広さに応じて、前記病原体検出器の前記病原体を検出するための動作モードを変更する指令を前記通信部に送信させる制御部とを備え
、
前記動作モードには、前記病原体の検出が行われる時間間隔が互いに異なる複数のモードが含まれる、
制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気中を浮遊するウイルスなどの病原体を検出するための病原体検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザなどの感染症の流行を予防するために、空気中を浮遊するウイルス等の病原体を捕集して検出する技術が開発されている。さらに、病原体の検出結果に基づいて、地域における感染症の拡大状況をマップ化して提供する技術も開発されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-52866号公報
【文献】特開2005-275708号公報
【文献】国際公開第2015/136695号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、病原体の検出の効率化を図ることができる病原体検出システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る病原体検出システムは、建物内における病原体を検出するための病原体検出システムであって、前記建物内の異なる空間に配置された複数の病原体検出器を備え、前記複数の病原体検出器のそれぞれは、当該病原体検出器が配置されている空間の広さに応じて、前記病原体を検出するための動作モードを変更可能に構成されている。
【0006】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本開示の病原体検出システムによれば、病原体の検出の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る病原体検出システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る病原体検出システムを構成する機器の配置を示す間取り図である。
【
図3】
図3は、表示装置に表示される画像の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、病原体検出器の機能構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、第2記憶部に記憶される検出結果の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、病原体検出器の病原体の検出動作のフローチャートである。
【
図8】
図8は、病原体検出器の動作モード変更時の通信シーケンス図である。
【
図9】
図9は、実施の形態1に係る病原体検出システムにおける病原体検出器の動作モードの変更例1のシーケンス図である。
【
図10】
図10は、実施の形態1に係る病原体検出システムにおける病原体検出器の動作モードの変更例2のシーケンス図である。
【
図11】
図11は、実施の形態1に係る病原体検出システムにおける病原体検出器の動作モードの変更例3のシーケンス図である。
【
図12】
図12は、実施の形態2に係る病原体検出システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図13】
図13は、実施の形態2に係る病原体検出システムの動作の変形例の通信シーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の基礎となった知見)
インフルエンザなどの感染症の流行を予防するために、空気中を浮遊するウイルス等の病原体を捕集して検出する技術が開発されている。さらに、病原体の検出結果に基づいて、地域における感染症の拡大状況をマップ化して提供する技術も開発されている。
【0010】
例えば、特許文献1には、空気中に浮遊するウイルスを捕集して、ウイルスの存在状況を連続的かつリアルタイムにモニタする技術が開示されている。
【0011】
また、特許文献2には、ウイルス検知機能が付いた携帯情報端末で得られたウイルス情報を、通信ネットワークを用いて蓄積し、感染症予防のための情報を伝達する技術が開示されている。
【0012】
さらに、特許文献3には、公共交通機関や学校などの人の多い場所に、病原体を検出することが可能な検出装置を設置し、病原体に関する検出データを広範囲で取得して、感染拡大マップを生成する技術が開示されている。
【0013】
ところで、国内においてある感染症が流行する時期は、毎年ある程度同じ時期であり、また、流行する期間としては、数ヶ月間であることが多い。例えば、インフルエンザが流行する時期は、日本では、およそ12月から3月の間であることが知られている。
【0014】
よって、特定の地域における特定の感染症の流行を把握するために、設置された全ての検出器を用いて、1年中を通じて絶えず病原体を検出し続けるのでは、検出器の運用上の無駄が極めて大きく、効率的ではない。
【0015】
一方で、病原体は国外の流行地域から持ち込まれることも多く、国内での流行が予想される時期以外に病原体の検出を一切行わないのでは、感染症の流行を的確に把握することができない。
【0016】
加えて、病原体の検出に抗体などの試薬を用いる場合、かかる試薬は1回の検出で消費される消耗品であるため、必要な時期以外はなるべく病原体の検出を行うのを控えて、試薬の消耗を抑えたいという要請もある。
【0017】
そこで、本開示の一態様に係る病原体検出システムは、建物内における病原体を検出するための病原体検出システムであって、前記建物内の異なる空間に配置された複数の病原体検出器を備え、前記複数の病原体検出器のそれぞれは、当該病原体検出器が配置されている空間の広さに応じて、前記病原体を検出するための動作モードを変更可能に構成されている。
【0018】
例えば、広い空間に配置された病原体検知器ほど病原体の検出の時間間隔が短い動作モードが採用されることにより、このような病原体検出システムは、病原体の検出の効率化を図ることができる。また、病原体検出システムは、病原体の検出に用いられる試薬などの消耗を抑制することができる。
【0019】
また、例えば、前記動作モードには、前記病原体の検出が行われる時間間隔が互いに異なる複数のモードが含まれる。
【0020】
このような病原体検出システムは、動作モードの変更により、病原体検出器による病原体の検出の時間間隔を変更することができる。つまり、病原体検出システムは、病原体検出器による病原体の検出頻度を変更することができる。
【0021】
また、例えば、前記複数の病原体検出器のうちの一の病原体検出器は、第1の空間に配置されており、前記複数の病原体検出器のうちの他の病原体検出器は、前記第1の空間よりも広い第2の空間に配置されており、前記一の病原体検出器は、第1の時間間隔で前記病原体の検出を行う第1のモードの動作を行い、前記他の病原体検出器は、前記第1の時間間隔よりも短い第2の時間間隔で前記病原体の検出を行う第2のモードの動作を行う。
【0022】
このような病原体検出システムにおいては、人から病原体が排出される可能性が高いと考えられる広い空間に配置された病原体検出器ほど、短い時間間隔で病原体の検出が行われる。このため、病原体検出システムは、病原体の検出を効率的に行うことができる。
【0023】
また、例えば、前記病原体検出システムは、さらに、前記第1の空間及び前記第2の空間の連続状態または非連続状態を検知する検知装置を備え、前記検知装置の検知結果が、前記第1の空間及び前記第2の空間が非連続状態から連続状態に切り替わったことを示す場合、前記一の病原体検出器の前記動作モードは、前記第1のモードから前記第2のモードに変更される。
【0024】
このような病原体検出システムにおいては、第1の空間及び第2の空間が連続することにより病原体検出器が配置された空間の大きさが大きくなると、当該空間において人から病原体が排出される可能性が高いため、短い時間間隔で病原体の検出が行われる。このため、病原体検出システムは、病原体の検出を効率的に行うことができる。
【0025】
また、例えば、前記病原体検出システムは、さらに、前記第1の空間及び前記第2の空間の連続状態または非連続状態を検知する検知装置を備え、前記検知装置の検知結果が前記第1の空間及び前記第2の空間が非連続状態から連続状態に切り替わったことを示す場合、前記一の病原体検出器の前記動作モードは、前記第1のモードから前記病原体の検出を停止する停止モードに変更される。
【0026】
このような病原体検出システムにおいては、第1の空間及び第2の空間が連続することにより第1の空間から第2の空間に病原体が伝播し、第1の空間において病原体を検出する必要性が低いとも考えられる場合に、病原体検出器による病原体の検出が停止される。このため、病原体検出システムは、病原体の検出を効率的に行うことができる。
【0027】
また、例えば、前記検知装置は、前記第1の空間と前記第2の空間との間に設けられた建具の開閉状態を検知することにより、前記第1の空間及び前記第2の空間の連続状態または非連続状態を検知する。
【0028】
このような病原体検出システムは、建具の開閉状態を検知することにより、第1の空間及び第2の空間の連続状態または非連続状態を検知することができる。
【0029】
また、例えば、前記一の病原体検出器は、前記検知装置の検知結果を受信する第1通信部と、受信された検知結果に基づいて前記一の病原体検出器の動作モードを変更する第1制御部とを備える。
【0030】
このような病原体検出システムは、検知装置の検知結果を病原体検出器が直接受信することにより、当該病原体検出器の動作モードを変更することができる。
【0031】
また、例えば、前記病原体検出システムは、さらに、前記複数の病原体検出器を制御する制御装置を備え、前記制御装置は、前記検知装置の検知結果を受信する第2通信部と、受信された検知結果に基づいて前記一の病原体検出器の動作モードを変更する指令を前記第2通信部に送信させる第2制御部とを備える。
【0032】
このような病原体検出システムは、制御装置から送信される指令に基づいて、病原体検出器の動作モードを変更することができる。
【0033】
また、例えば、前記病原体検出システムは、さらに、前記複数の病原体検出器を制御する制御装置を備え、前記複数の病原体検出器のそれぞれは、前記病原体を検出する検出部と、前記検出部による前記病原体の検出結果を前記制御装置に送信する第1通信部とを備え、前記制御装置は、前記病原体検出器のそれぞれから当該病原体検出器における前記病原体の検出結果を受信する第2通信部と、受信された前記複数の病原体検出器のそれぞれの検出結果を記憶する記憶部とを備える。
【0034】
このような病原体検出システムは、記憶された検出結果に基づいて、例えば、建物内の病原体の濃度、または、建物内の病原体の伝播状況を表示することができる。そうすると、ユーザは、建物内の病原体の濃度、または、建物内の病原体の伝播状況を把握することができる。
【0035】
また、本開示の一態様に係る病原体検出方法は、建物内における病原体を検出する病原体検出器が配置されている空間の広さを検知し、検知された前記空間の広さに応じて、前記病原体検出器の前記病原体を検出するための動作モードを変更する。
【0036】
また、本開示の一態様に係る病原体検出器は、建物内における病原体を検出する病原体検出器であって、前記病原体を検出する検出部と、前記病原体検出器が配置されている空間の広さに応じて、前記病原体検出器の前記病原体を検出するための動作モードを変更する制御部とを備える。
【0037】
また、本開示の一態様に係る制御装置は、建物内における病原体を検出する病原体検出器と通信を行う通信部と、前記病原体検出器が配置されている空間の広さに応じて、前記病原体検出器の前記病原体を検出するための動作モードを変更する指令を前記通信部に送信させる制御部とを備える。
【0038】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。例えば、本開示は、上記のような、コンピュータ等が実行する病原体検出方法として実現されてもよい。本開示は、病原体検出方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現されてもよいし、このようなプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現されてもよい。
【0039】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0040】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付し、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0041】
(実施の形態1)
[構成]
以下、実施の形態1に係る病原体検出システムの構成について説明する。
図1は、実施の形態1に係る病原体検出システムの全体構成を示すブロック図である。
図2は、実施の形態1に係る病原体検出システムを構成する機器の配置を示す間取り図である。
【0042】
図1及び
図2に示されるように、実施の形態1に係る病原体検出システム100は、介護施設50に設けられ、介護施設50内の空気中の病原体を検出するためのシステムである。介護施設50は、建物の一例である。
【0043】
病原体検出システム100は、複数の病原体検出器10a~10pと、制御装置20と、表示装置30と、検知装置90とを備える。なお、病原体検出システム100は、少なくとも2つの病原体検出器を備えればよく、病原体検出システム100が備える病原体検出器の数は特に限定されない。
【0044】
複数の病原体検出器10a~10pのそれぞれは、例えば、一定の時間間隔で病原体の検出動作を行う。病原体は、例えば、インフルエンザウイルスなどのウイルスであるが、カビまたは細菌であってもよい。
【0045】
複数の病原体検出器10a~10pは、介護施設50内における異なる地点に配置されている。例えば、病原体検出器10a~10eのそれぞれは、個室に配置されている。病原体検出器10f、10h、10o、及び、10pは、廊下に配置されている。病原体検出器10gは、スタッフルームに配置されている。病原体検出器10i及び10jは、居間に配置されている。病原体検出器10kは、炊事場に配置されている。病原体検出器10l及び10mのそれぞれは、トイレに配置されている。病原体検出器10nは、脱衣所に配置されている。
【0046】
複数の病原体検出器10a~10pは、スタッフルームに配置された制御装置20と通信ネットワーク40によって接続されている。通信ネットワーク40は、例えば、LAN(Local Area Network)である。通信ネットワーク40は、有線通信ネットワークであってもよいし、無線通信ネットワークであってもよい。
【0047】
複数の病原体検出器10a~10pのそれぞれは、通信ネットワーク40を介して検出結果を制御装置20に送信する。制御装置20は、取得した検出結果を記憶し、記憶した検出結果に基づいて表示装置30に介護施設50内の空気中の病原体の濃度を示す画像を表示させる。
図3は、表示装置30に表示される画像の一例を示す図である。
図3に示されるような画像によれば、介護施設50のスタッフ等は、介護施設50内の空気中の病原体の濃度、及び、病原体の伝播状況を把握することができる。つまり、病原体検出システム100は、病原体の伝播状況を把握するための伝播状況把握システムとしても機能する。
【0048】
また、複数の病原体検出器10a~10pのそれぞれは、当該病原体検出器が配置されている空間の広さに応じて、病原体を検出するための動作モードを変更可能に構成されている。例えば、複数の病原体検出器10a~10pのそれぞれは、当該病原体検出器が配置された空間の大きさに応じて病原体の検出を行う時間間隔が異なる。具体的には、広い空間に配置された病原体検出器ほど、短い時間間隔で病原体の検出を行うように制御する。
【0049】
広い空間は、滞在する人の数が多く、人から病原体が排出される可能性が高い。つまり、病原体の検出を行う必要性が高い。したがって、広い空間に配置された病原体検出器ほど、短い時間間隔で病原体の検出を行うことで病原体の効率的な検出が実現される。
【0050】
また、検知装置90は、空間の連続状態または非連続状態を検知し、制御装置20は、検知装置90の検知結果に基づいて病原体検出器の動作モードを変更する。このような動作モードの変更の詳細については後述される。
【0051】
[病原体検出器]
次に、病原体検出システム100が備える各装置の詳細な構成について説明する。まず、病原体検出器10aの機能構成について説明する。
図4は、病原体検出器10aの機能構成を示すブロック図である。なお、病原体検出システム100が備える他の病原体検出器は、病原体検出器10aと同様の構成であるため詳細な説明が省略される。
【0052】
病原体検出器10aは、周辺の空気中の微粒子に含まれる病原体の検出動作を行う。
図4に示されるように、病原体検出器10aは、捕集部11と、検出部12と、第1通信部13と、第1制御部14と、第1記憶部15とを備える。
【0053】
捕集部11は、空気中に浮遊している微粒子を吸引し、捕集する。捕集部11は、具体的には、例えば、吸気用のファンまたはポンプを有し、吸気口から吸気した空気中の微粒子を捕集する。
【0054】
検出部12は、病原体を検出する。例えば、検出部12は、例えば、表面プラズモン励起増強蛍光分光を利用した検出技術を用いて、捕集部11によって捕集された微粒子中の病原体を検出するセンサである。また、検出部12は、病原体の濃度を検出することもできる。
【0055】
第2通信部21は、制御装置20、及び、検知装置90と通信を行う。第1通信部13は、例えば、第1制御部14の制御に基づいて、検出部12による病原体の検出結果を制御装置20に送信する。第1通信部13は、具体的には、通信ネットワーク40を介した通信が可能な通信回路である。
【0056】
第1制御部14は、捕集部11、検出部12、及び、第1通信部13などを制御する制御装置である。第1制御部14は、例えば、マイクロコンピュータなどによって実現されるが、プロセッサまたは専用回路によって実現されてもよい。
【0057】
第1記憶部15は、第1制御部14によって実行される制御プログラムが記憶される記憶装置である。第1記憶部15は、具体的には、半導体メモリなどによって実現される。
【0058】
[制御装置、表示装置、及び、検知装置]
次に、制御装置20の機能構成について説明する。
図5は、制御装置20の機能構成を示すブロック図である。なお、
図5では、表示装置30及び検知装置90も図示されている。
【0059】
制御装置20は、介護施設50内の異なる地点に配置された複数の病原体検出器10a~10pを制御する。制御装置20は、例えば、パーソナルコンピュータまたはサーバ装置等の情報通信端末である。
図5に示されるように、制御装置20は、第2通信部21と、第2記憶部22と、第2制御部23と、入力受付部24とを備える。
【0060】
第2通信部21は、複数の病原体検出器10a~10p、及び、検知装置90と通信を行う。第2通信部21は、例えば、複数の病原体検出器10a~10pのそれぞれから当該病原体検出器における病原体の検出結果を受信する。また、第2通信部21は、第2制御部23の制御に基づいて、複数の病原体検出器10a~10pに動作モードを変更する指令を送信する。第2通信部21は、具体的には、通信ネットワーク40を介した通信が可能な通信回路である。
【0061】
第2記憶部22は、第2通信部21によって受信された、複数の病原体検出器10a~10pのそれぞれの検出結果を記憶する。
図6は、第2記憶部22に記憶される検出結果の一例を示す図である。
図6に示されるように、検出結果は、具体的には、病原体検出器のID、及び、検出時刻を含む。また、第2記憶部22には、及び、後述の複数の病原体検出器10a~10pの対応関係を示したテーブル情報、及び、第2制御部23によって実行される制御プログラムなども記憶される。第2記憶部22は、具体的には、半導体メモリなどによって実現される。
【0062】
第2制御部23は、第2通信部21などを制御する制御する制御装置である。例えば、第2制御部23は、第2通信部21に動作モードを変更する指令を送信させることにより、複数の病原体検出器10a~10pの少なくとも一部の動作モードを制御する。また、第2制御部23は、第2記憶部22への検出結果の記憶処理、及び、入力受付部24が受け付けたユーザの操作に基づいて表示装置30に画像を表示させる画像表示処理なども行う。第1制御部14は、例えば、マイクロコンピュータなどによって実現されるが、プロセッサまたは専用回路によって実現されてもよい。
【0063】
入力受付部24は、複数の病原体検出器10a~10pによる病原体の検出に関するユーザの操作を受け付けるユーザインターフェース装置である。入力受付部24は、例えば、
図3に示されるような画像を表示するためのユーザの操作を受け付ける。入力受付部24は、具体的には、マウスまたはキーボードなどの入力デバイスである。
【0064】
表示装置30は、第2制御部23の制御に基づいて、複数の病原体検出器10a~10pにおける病原体の検出結果を表示する。表示装置30は、例えば、
図3に示されるような、検出結果を示す画像を表示する。表示装置30は、液晶パネルまたは有機EL(Electro Luminescence)パネルなどの表示パネルによって実現される。
【0065】
検知装置90は、介護施設50内における病原体検出器10dが配置されている空間の広さを検知する。検知装置90は、具体的には、第1の空間A及び第2の空間Bの連続状態または非連続状態を検知する。
【0066】
図2に示されるように、第1の空間Aは、例えば、病原体検出器10dが配置された個室内の閉空間であり、第2の空間Bは、廊下及び居間を含む閉空間である。ドア95は、第1の空間A及び第2の空間Bの間に設けられ、第1の空間A及び第2の空間Bを仕切る建具である。
【0067】
上記連続状態は、言い換えれば、病原体検出器10dが配置された個室のドア95が開くことにより第1の空間A及び第2の空間Bが空間的につながっている状態である。上記非連続状態は、言い換えれば、ドア95が閉じることにより第1の空間A及び第2の空間Bがドア95によって仕切られ、第1の空間A及び第2の空間Bが空間的に分離されている状態である。
【0068】
検知装置90は、より具体的には、ドア95の開閉状態を検知するドアセンサである。つまり、検知装置90は、ドア95の開閉状態を検知することにより、第1の空間A及び第2の空間Bの連続状態または非連続状態を検知する。なお、検知装置90は、病原体検出器10dが配置されている空間の大きさ、または、空間の大きさの変化を検知できるのであれば、どのようなセンサであってもよい。検知装置90は、例えば、レーザ距離計などであってもよい。
【0069】
また、図示されないが、検知装置90は、通信ネットワーク40を介した通信が可能な通信回路を有し、検知結果を複数の病原体検出器10a~10pまたは制御装置20に送信することができる。検知結果は、言い換えれば、病原体検出器10dが配置される空間の広さを示す情報である。検知結果は、動作モードを変更するか否かの判定に用いられる。
【0070】
なお、病原体検出システム100は、検知装置90を少なくとも1つ備えればよいが、介護施設50内の複数のドアに対応して複数の検知装置90を備えてもよい。
【0071】
[病原体検出器の病原体の検出動作]
次に、病原体検出器10aの病原体の検出動作について説明する。
図7は、病原体検出器10aの病原体の検出動作のフローチャートである。
【0072】
まず、捕集部11は、吸気用のファンまたはポンプによって空気中の微粒子を捕集する(S11)。次に、検出部12は、吸引された微粒子を空気から分離する(S12)。検出部12は、例えば、サイクロン構造を有し、遠心力を利用して微粒子を空気から分離する。
【0073】
次に、検出部12は、分離された微粒子から病原体を抽出する(S13)。検出部12は、具体的には、分離された微粒子を抽出液と混合する。抽出液によって病原体が微粒子から抽出される。
【0074】
そして検出部12は、抽出液のサンプルであるサンプル液を、病原体に特異的に結合する抗体が固定化された金属微細構造体に導入する。さらに、検出部は、病原体に特異的に結合し、かつ蛍光物質によって標識された抗体を金属微細構造体に導入する(S14)。これにより、サンプル液中の病原体は、抗体を介して金属微細構造対と結合すると共に、蛍光物質によって標識された抗体とも結合する。
【0075】
次に、検出部12は、検出部12が有する光源によって金属微細構造体に励起光を照射する(S15)。これにより、金属微細構造体に生じた表面プラズモンによって、病原体の量に応じた表面増強蛍光が発せられる。検出部12は、このような蛍光を検出部12が有する受光素子によって受光し、蛍光の強さに基づいて、サンプル液中の病原体の濃度を検出することができる。
【0076】
なお、以下の実施の形態1では、
図7の検出動作は、単に検出とも記載される。例えば、検出が一定の時間間隔で行われる、とは、
図7のフローチャートで示される検出動作が一定の時間間隔で行われることを意味する。ここでいう時間間隔は、例えば、
図7の検出動作における微粒子を捕集するステップ(S11)の開始時刻と、その次の検出動作における微粒子を捕集するステップ(S11)の開始時刻との間の時間に相当する。
【0077】
[病原体の検出結果の収集動作]
次に、制御装置20による病原体の検出結果の収集動作について説明する。
図8は、制御装置20の病原体の検出結果の収集動作の通信シーケンス図である。なお、以下の収集動作の変更の説明においては、一例として、制御装置20が複数の病原体検出器10a~10pのうち病原体検出器10d及び病原体検出器10pの検出結果を収集する例について説明する。
【0078】
図8の例では、病原体検出器10d及び病原体検出器10pは、当初は、第1のモードの動作を行っている。第1のモードの動作中の病原体検出器10d及び病原体検出器10pは、第1の時間間隔T1で病原体の検出を行い、検出を行うごとに検出結果を制御装置20に送信する(S21)。制御装置20の第2通信部21は、病原体検出器10d及び病原体検出器10pのそれぞれから検出結果を受信する。つまり、制御装置20は、検出結果を収集する。
【0079】
ここで、制御装置20の第2通信部21が動作モードの変更指令を送信すると(S22)、病原体検出器10d及び病原体検出器10pのそれぞれは、動作モードの変更指令を受信し、動作モードを第1のモードから第2のモードに変更する。第2のモードの動作中の病原体検出器10d及び病原体検出器10pは、第1の時間間隔T1よりも短い第2の時間間隔T2で病原体の検出を行う(S23)。つまり、第1のモード及び第2のモードは、病原体の検出が行われる時間間隔が互いに異なる。
【0080】
このように、制御装置20は、複数の病原体検出器10a~10pのそれぞれから検出結果を収集することができる。また、制御装置20は、動作モードの変更指令を送信することにより、複数の病原体検出器10a~10pの動作モードを変更することができる。
【0081】
[動作モードの変更例1]
次に、病原体検出器10dの動作モードの変更例1について、
図2に加えて
図9を参照しながら説明する。
図9は、病原体検出システム100における病原体検出器10dの動作モードの変更例1のシーケンス図である。
図9は、閉じた状態のドア95が開いた状態になる場合のシーケンス図である。
【0082】
ドア95が閉じた状態において、第1の空間Aに配置された病原体検出器10dは、第1のモードの動作を行っている。第1のモードは、第1の時間間隔T1で病原体の検出を行うモードである。つまり、第1のモードの動作中において、病原体検出器10dの検出部12は、第1の時間間隔T1で病原体を検出している(S31)。
【0083】
一方、ドア95が閉じた状態において、第2の空間Bに配置された病原体検出器10pは、第2のモードの動作を行っている。第2のモードは、第1の時間間隔T1よりも短い第2の時間間隔T2で病原体の検出を行うモードである。つまり、第2のモードの動作中において、病原体検出器10pの検出部12は第2の時間間隔T2で病原体を検出している(S32)。
【0084】
検知装置90は、ドア95の開閉状態を検知しており、検知結果を制御装置20に送信する(S33)。制御装置20の第2通信部21は、検知装置90から検知結果を受信する(S34)。
【0085】
ここで、当初は、検知装置90の検知結果は、ドア95が閉じた状態であることを示している。つまり、検知結果は、第1の空間A及び第2の空間Bが非連続状態であることを示している。この状態で、制御装置20の第2制御部23は、受信された検知結果が、ドア95が開いた状態であって、第1の空間A及び第2の空間Bが連続状態であることを示すか否かを判定する(S35)。つまり、第2制御部23は、検知装置90の検知結果が、第1の空間A及び第2の空間Bが非連続状態から連続状態に切り替わったことを示すか否かを判定する。
【0086】
第1の空間A及び第2の空間Bが非連続状態から連続状態に切り替わっていないと判定された場合には(S35でNo)、病原体検出器10dの動作モードの変更は行われない。一方、第1の空間A及び第2の空間Bが非連続状態から連続状態に切り替わったと判定された場合(S35でYes)、第2制御部23は、第2通信部21に動作モードの変更指令を送信させる(S36)。動作モードの変更指令は、言い換えれば、動作モードを第1のモードから第2のモードへの変更するための指令である。
【0087】
第1の空間A及び第2の空間Bが非連続状態から連続状態になることは、病原体検出器10dが配置されている空間が広くなることに相当する。つまり、ステップS36において、第2制御部23は、病原体検出器10dが配置されている空間の広さに応じて、病原体を検出するための動作モードを変更する指令を第2通信部21に送信させる。
【0088】
病原体検出器10dの第1通信部13は、動作モードの変更指令を受信する(S37)。動作モードの変更指令が受信されると、病原体検出器10dは、第2のモードの動作を開始する。病原体検出器10dの第1制御部14は、具体的には、検出部12に第2の時間間隔T2で病原体を検出させる(S38)。
【0089】
このように、動作モードの変更例1においては、検知装置90の検知結果が、第1の空間A及び第2の空間Bが非連続状態から連続状態に切り替わったことを示す場合、病原体検出器10dの動作モードは、第1のモードから第2のモードに変更される。なお、病原体検出器10dの動作モードは、病原体の検出を停止する停止モードから一定の時間間隔で検出を行うモードに変更されてもよい。
【0090】
ドア95が開放されて病原体検出器10dが第1の空間A及び第2の空間Bが連続する広い空間に配置されているとみなせる場合には、当該空間に人から病原体が排出される可能性が高くなる。動作モードの変更例1においては、このような場合に病原体検出器10dの検出の時間間隔が短縮される。言い換えれば、病原体検出器10dが配置される空間が狭く、当該空間に人から病原体が排出される可能性が低いときには、病原体検出器10dによる病原体の検出頻度が下げられる。したがって、病原体検出システム100は、介護施設50内の空気中の病原体の検出を効率的に行うことができる。
【0091】
なお、上記動作モードの変更例1では、閉じた状態のドア95が開いた状態になる例について説明された。これとは逆に、開いた状態のドア95が閉じた状態になる場合には、病原体検出器10dの病原体の検出の時間間隔は、例えば、第2の時間間隔T2から第1の時間間隔T1に延長される。言い換えれば、検知装置90の検知結果が、第1の空間A及び第2の空間Bが連続状態から非連続状態に切り替わったことを示す場合、病原体検出器10dの動作モードは、第2のモードから第1のモードに変更される。この場合、病原体検出器10dの動作モードは、一定の時間間隔で検出を行うモードから停止モードに変更されてもよい。
【0092】
このように、病原体検出器10dが配置される空間が狭くなり、当該空間に人から病原体が排出される可能性が低くなったときには、病原体検出器10dによる病原体の検出頻度が下げられる。したがって、病原体検出システム100は、介護施設50内の空気中の病原体の検出を効率的に行うことができる。
【0093】
[動作モードの変更例2]
次に、病原体検出器の動作モードの変更例2について、
図2に加えて
図10を参照しながら説明する。
図10は、病原体検出システム100における病原体検出器10dの動作モードの変更例2のシーケンス図である。
【0094】
図10は、閉じた状態のドア95が開いた状態になる場合のシーケンス図であり、
図10のステップS31~ステップS35は、上述の動作モードの変更例1と同様である。
【0095】
ステップS35において、第1の空間A及び第2の空間Bが非連続状態から連続状態に切り替わったと判定された場合(S35でYes)、第2制御部23は、動作モードを第1のモードから病原体の検出を停止する停止モードへの変更するための動作モードの変更指令を第2通信部21に送信させる(S36)。
【0096】
病原体検出器10dの第1通信部13は、このような動作モードの変更指令を受信し(S37)、病原体検出器10dは、停止モードの動作を開始する。つまり、病原体検出器10dの検出部12は、病原体の検出を停止する(S41)。
【0097】
このように、動作モードの変更例2においては、検知装置90の検知結果が、第1の空間A及び第2の空間Bが非連続状態から連続状態に切り替わったことを示す場合、病原体検出器10dの動作モードは、第1のモードから停止モードに変更される。なお、病原体検出器10dの動作モードは、第1のモードから第1の時間間隔T1よりも長い第3の時間間隔T3で病原体の検出を行う第3のモードに変更されてもよい。
【0098】
病原体検出器10dが配置される第1の空間Aが第2の空間Bと連続すると、第1の空間Aから第2の空間Bに病原体が伝播し、病原体検出器10dが配置される第1の空間Aにおいて病原体を検出する必要性が低いとも考えられる。動作モードの変形例2では、このような場合に病原体検出器10dによる病原体の検出が停止される。したがって、病原体検出システム100は、介護施設50内の空気中の病原体の検出を効率的に行うことができる。
【0099】
なお、上記動作モードの変更例2では、閉じた状態のドア95が開いた状態になる例について説明された。これとは逆に、開いた状態のドア95が閉じた状態になる場合には、病原体の検出を停止した状態の病原体検出器10dが病原体の検出を開始する。言い換えれば、検知装置90の検知結果が、第1の空間A及び第2の空間Bが連続状態から非連続状態に切り替わったことを示す場合、病原体検出器10dの動作モードは、停止モードから第1のモードに変更される。この場合、病原体検出器10dの動作モードは、第3のモードから第1のモードに変更されてもよい。
【0100】
このように、病原体検出器10dが配置される第1の空間A及び第2の空間Bがドア95によって仕切られ、第1の空間Aから第2の空間Bに病原体が伝播しないと考えられるときには、病原体検出器10dによる病原体の検出が開始される。つまり、病原体検出器10dが配置される第1の空間Aにおいて病原体を検出する必要性が高いときに、病原体検出器10dによる病原体の検出が開始される。したがって、病原体検出システム100は、介護施設50内の空気中の病原体の検出を効率的に行うことができる。
【0101】
[動作モードの変更例3]
次に、病原体検出器の動作モードの変更例3について、
図2に加えて
図11を参照しながら説明する。
図11は、病原体検出システム100における病原体検出器10dの動作モードの変更例3のシーケンス図である。
【0102】
図11は、閉じた状態のドア95が開いた状態になる場合のシーケンス図であり、
図11のステップS31~ステップS33は、上述の動作モードの変更例1と同様である。
【0103】
ステップS33において検知装置90が送信した検知結果は、病原体検出器10dの第1通信部13によって受信される(S51)。
【0104】
ここで、当初は、検知装置90の検知結果は、ドア95が閉じた状態であることを示している。つまり、検知結果は、第1の空間A及び第2の空間Bが非連続状態であることを示している。この状態で、病原体検出器10dの第1制御部14は、受信された検知結果がドア95が開いた状態であって、第1の空間A及び第2の空間Bが連続状態であることを示すか否かを判定する(S52)。つまり、第1制御部14は、検知装置90の検知結果が、第1の空間A及び第2の空間Bが非連続状態から連続状態に切り替わったことを示すか否かを判定する。
【0105】
第1の空間A及び第2の空間Bが非連続状態から連続状態に切り替わっていないと判定された場合には(S52でNo)、病原体検出器10dの動作モードの変更は行われない。一方、第1の空間A及び第2の空間Bが非連続状態から連続状態に切り替わったと判定された場合(S52でYes)、第1制御部14は、病原体検出器10dの動作モードを第2のモードに変更する。具体的には、第1制御部14は、検出部12に第2の時間間隔T2で病原体を検出させる(S53)。
【0106】
第1の空間A及び第2の空間Bが非連続状態から連続状態になることは、病原体検出器10dが配置されている空間が広くなることに相当する。つまり、第1制御部14は、病原体検出器10dが配置されている空間の広さに応じて、病原体を検出するための動作モードを変更する。
【0107】
このように、動作モードの変更例3においては、検知装置90の検知結果が、直接病原体検出器10dによって受信され、制御装置20を介さずに、病原体検出器10dの動作モードが変更される。
【0108】
このような動作モードの変更例3によっても、病原体検出システム100は、介護施設50内の空気中の病原体の検出を効率的に行うことができる。なお、動作モードの変更例3において、病原体検出器10dの動作モードは、第2のモードから第1のモードに変更されてもよいし、停止モードから一定の時間間隔で検出を行うモードに変更されてもよいし、一定の時間間隔で検出を行うモードから停止モードに変更されてもよい。検知装置90の検知結果が、第1の空間A及び第2の空間Bが連続状態から非連続状態に切り替わったことを示す場合についても同様である。
【0109】
(実施の形態2)
[構成及び動作]
上記実施の形態1では、介護施設50に設けられた制御装置20が介護施設50に設けられた任意の病原体検出器に動作モードの変更指令を送信する例について説明された。しかしながら、介護施設50の外に設置された制御装置が介護施設50に設けられた任意の病原体検出器に動作モードの変更指令を送信してもよい。
図12は、このような実施の形態2に係る病原体検出システムの全体構成を示すブロック図である。
【0110】
図12に示されるように、実施の形態2に係る病原体検出システム100aは、介護施設50に設けられた複数の病原体検出器10a~10p、制御装置20、表示装置30、検知装置90に加えて、介護施設50外に位置する管理センター70に設けられた、管理制御装置71、表示装置72、及び、ルータ73を備える。また、病原体検出システム100aは、介護施設50にルータ60を備えている。
【0111】
介護施設50に設けられたルータ60、及び、管理センター70に設けられたルータ73のそれぞれは、IPネットワーク80に接続されている。これにより、管理センター70に設けられた管理制御装置71は、介護施設50に設けられた複数の病原体検出器10a~10p、及び、検知装置90と通信を行うことができる。
【0112】
管理制御装置71は、例えば、サーバ装置であり、制御装置20と同様の機能構成を有する。つまり、管理制御装置71は、介護施設50に設けられた複数の病原体検出器10a~10pのそれぞれから当該病原体検出器における病原体の検出結果を受信し、受信された複数の病原体検出器10a~10pのそれぞれの検出結果を記憶部に記憶することができる。また、管理制御装置71は、検知装置90の検知結果に基づいて、複数の病原体検出器10a~10pの動作モードを変更する指令を行うことができる。
【0113】
また、
図12には、介護施設50以外に、介護施設50a及び介護施設50bも図示されている。図示されないが、介護施設50a及び介護施設50bのそれぞれには、介護施設50と同様に、複数の病原体検出器と、制御装置と、表示装置とが設けられる。これにより、管理制御装置71は、介護施設50aに設けられた複数の病原体検出器、または、介護施設50bに設けられた複数の病原体検出器を対象として動作モードの変更を指令することもできる。
【0114】
また、管理制御装置71は、介護施設単位で動作モードの変更を指令してもよい。例えば、管理制御装置71は、各介護施設の全体の大きさ(言い換えれば、規模)を病原体検出器が配置される空間の大きさとみなし、複数の介護施設のうち大きい介護施設に設けられた病原体検出器ほど短い時間間隔で病原体の検出を行うように指令してもよい。また、管理制御装置71は、収容人数が多い介護施設に設けられた病原体検出器ほど短い時間間隔で病原体の検出を行うように指令してもよい。
【0115】
[実施の形態2の動作の変形例]
病原体検出システム100aにおいては、管理制御装置71からの指示に基づいて、介護施設50に設けられた制御装置20が介護施設50に設けられた複数の病原体検出器10a~10pの動作モードを変更してもよい。
図13は、このような病原体検出システム100aの動作の変形例の通信シーケンス図である。
【0116】
図13に示されるように、介護施設50に設けられた複数の病原体検出器10a~10pは、当初は、第1のモードの動作を行っている。複数の病原体検出器10a~10pのそれぞれは、第1の時間間隔T1で病原体の検出を行い、検出を行うごとに検出結果を制御装置20に送信する(S71)。
【0117】
一方、管理制御装置71は、外部装置から配信されるアウトブレイク情報を受信すると(S72)、制御装置20に動作モードの変更指示を送信する(S73)。アウトブレイク情報は、病原体に起因する感染症が集団発生したことを通知するための情報であり、アウトブレイク情報が配信されること、及び、配信されたアウトブレイク情報に基づいて動作モードの変更指示が送信されることは、病原体の検出を行う必要性が高いことを意味する。
【0118】
そこで、制御装置20は、動作モードの変更指示を受信すると、動作モードの変更指令を複数の病原体検出器10a~10pに送信する(S74)。複数の病原体検出器10a~10pのそれぞれは、動作モードの変更指令を受信すると、動作モードを第1のモードから第2のモードに変更する。第2のモードの動作中の複数の病原体検出器10a~10pのそれぞれは、第1の時間間隔T1よりも短い第2の時間間隔T2で病原体の検出を行う(S75)。
【0119】
このように、病原体検出システム100aは、アウトブレイク情報に基づき病原体を検出する必要性が高いときに、複数の病原体検出器による病原体の検出の時間間隔を短縮する。言い換えれば、病原体を検出する必要性が低いときには、複数の病原体検出器による病原体の検出の時間間隔が延長される。したがって、病原体検出システム100aは、介護施設50内の空気中の病原体の検出を効率的に行うことができる。
【0120】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態について説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0121】
例えば、上記実施の形態では、第1のモード及び第2のモードは、病原体の検出が行われる時間間隔が互いに異なるモードであったが、第1のモード及び第2のモードは、病原体の検出能力が互いに異なるモードであればよい。例えば、第1のモード及び第2のモードは、1回の検出において病原体を捕集する捕集時間が互いに異なるモードであってもよい。この場合、例えば、病原体検出装置が配置される空間が比較的狭い場合に捕集時間が短縮されるが、病原体検出装置が配置される空間が比較的広い場合に捕集期間が短縮されてもよい。
【0122】
例えば、上記実施の形態では、病原体検出システムが介護施設において使用される例について説明されたが、病原体検出システムは、介護施設以外の建物において使用されてもよい。例えば、病原体検出システムは、病院、学校、または、空港等の他の建物において使用されてもよい。
【0123】
また、上記実施の形態では、制御装置は、複数の病原体検出器とは別の装置として説明された。しかしながら、複数の病原体検出器のうちの1つが制御装置を内蔵することにより、制御装置の機能を備えてもよい。
【0124】
また、上記実施の形態で説明した装置間の通信方法は、一例である。装置間の通信方法については特に限定されるものではない。装置間では、例えば、特定小電力無線、ZigBee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、または、Wi-Fi(登録商標)などの通信規格を用いた無線通信が行われる。また、装置間においては、無線通信に代えて、電力線搬送通信(PLC:Power Line Communication)または有線LANを用いた通信など、有線通信が行われてもよい。
【0125】
また、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、上記実施の形態において説明された病原体検出システムの動作における複数の処理の順序は一例である。複数の処理の順序は、変更されてもよいし、複数の処理は、並行して実行されてもよい。
【0126】
また、上記実施の形態において、制御部などの構成要素は、当該構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0127】
また、制御部などの構成要素は、ハードウェアによって実現されてもよい。制御部等の構成要素は、具体的には、回路または集積回路によって実現されてもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0128】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、または、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本開示の病原体検出システムは、室内の空気中を浮遊するインフルエンザウイルスなどの病原体を検出することができる。本開示の病原体検出システムは、特に、病院、老人介護施設などに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0130】
10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10h、10i、10j、10k、10l、10m、10n、10o、10p 病原体検出器
11 捕集部
12 検出部
13 第1通信部
14 第1制御部
15 第1記憶部
20 制御装置
21 第2通信部
22 第2記憶部
23 第2制御部
24 入力受付部
30 表示装置
40 通信ネットワーク
60 ルータ
70 管理センター
71 管理制御装置
72 表示装置
73 ルータ
80 IPネットワーク
90 検知装置
95 ドア
100、100a 病原体検出システム
A 第1の空間
B 第2の空間