(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】眼鏡レンズ、眼鏡、及び眼鏡レンズ製造方法
(51)【国際特許分類】
G02C 7/10 20060101AFI20231222BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20231222BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20231222BHJP
G02C 7/02 20060101ALI20231222BHJP
G02C 7/12 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
G02C7/10
G02B5/22
G02B5/30
G02C7/02
G02C7/12
(21)【出願番号】P 2019168414
(22)【出願日】2019-09-17
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】308024801
【氏名又は名称】三好興業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504449273
【氏名又は名称】株式会社サンレーコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】三好 和之
(72)【発明者】
【氏名】宗像 芳一
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0046927(US,A1)
【文献】特開2004-276354(JP,A)
【文献】特開平9-179076(JP,A)
【文献】実開昭62-41125(JP,U)
【文献】特開2002-122825(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0285613(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0046888(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0132943(US,A1)
【文献】実開昭60-80419(JP,U)
【文献】特開2016-206264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
G02B 5/30
G02C 1/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と偏光シートとを含む偏光部と、
前記偏光部と隣接する非偏光部と、
前記偏光シートと前記非偏光部とを覆い、光の一部を反射し、前記光の一部を透過する反射層と
を備え、
前記非偏光部の透過率に対する前記偏光部の透過率の割合は、
28%以上
72%以下であり、
前記偏光シートは、離隔不能に前記ベース部と面接触しており、
前記非偏光部の厚みは、前記ベース部の厚みよりも厚く、
前記ベース部と前記非偏光部とは、単一の部材である光透過部材を構成し、
前記光透過部材は、有色の樹脂である、眼鏡レンズ。
【請求項2】
前記光透過部材の内部は着色されている、請求項1に記載の眼鏡レンズ。
【請求項3】
前記非偏光部は、前記光透過部材の上部及び下部のうち、前記下部において前記偏光部と隣接して配置される、請求項1又は請求項2に記載の眼鏡レンズ。
【請求項4】
前記非偏光部は、前記偏光シートの外周縁の一部に接触しており、前記外周縁の他の一部には接触しない、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項5】
前記偏光シートは、孔を有し、
前記非偏光部は、前記孔に配置される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項6】
前記反射層は、前記ベース部から前記偏光シートに向かう方向の前面側において、前記偏光シートと前記非偏光部とを覆っている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項7】
前記偏光シートは、偏光膜と、第1カバー層と、第2カバー層とを含み、
前記第1カバー層は、前記偏光膜の第1面を覆い、
前記第2カバー層は、前記第1面の裏面である第2面を覆い、前記ベース部と面接触しており、
前記第2カバー層と前記ベース部とは、同じ材料で構成される、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項8】
近景に対応する屈折力を有する近用部を更に備え、
前記近用部は、前記ベース部から前記偏光シートに向かう方向における前記非偏光部の後面に配置される、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項9】
前記ベース部から前記偏光シートに向かう方向における前記偏光シートの前面は、前記ベース部から前記偏光シートに向かう方向における前記非偏光部の前面と面一である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項10】
前記非偏光部の透過率に対する前記偏光部の透過率の割合は
、60%以上
72%以下である、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項11】
前記反射層は、青系色のミラーコート層である、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項12】
前記近用部は、前記偏光シートから前記ベース部に向かう方向に突出している、請求項8に記載の眼鏡レンズ。
【請求項13】
ベース部と偏光シートとを含む偏光部と、
前記偏光部と隣接する非偏光部と
を備え、
前記非偏光部の透過率は50%以下であり、
前記偏光シートは、離隔不能に前記ベース部と面接触しており、
前記非偏光部の厚みは、前記ベース部の厚みよりも厚く、
前記ベース部と前記非偏光部とは、単一の部材である光透過部材を構成し、
前記光透過部材は、有色の樹脂であり、
前記偏光シートと前記非偏光部とを覆う反射層を有しない、眼鏡レンズ。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の眼鏡レンズと、
前記眼鏡レンズを支持する支持部と
を備える、眼鏡。
【請求項15】
眼鏡レンズを製造する眼鏡レンズ製造方法であって、
前記眼鏡レンズが備える偏光部に含まれる偏光シートを用意する工程と、
前記偏光シートを金型内に配置する工程と、
前記偏光シートが配置された前記金型内に有色の樹脂を射出することによって、前記偏光部に隣接する非偏光部と前記偏光部に含まれるベース部とから構成される単一の部材である光透過部材を、前記偏光シートと前記ベース部とを面接触させるように射出成型する工程と
を包含し、
前記非偏光部の厚みは、前記ベース部の厚みよりも厚く、
前記非偏光部の透過率に対する前記偏光部の透過率の割合が、前記有色の樹脂の色の種類と、前記有色の樹脂の色の濃度と、前記光透過部材の厚みとの少なくとも1つに基づいて決定され、
前記非偏光部の透過率に対する前記偏光部の透過率の割合は、前記偏光部と前記非偏光部との境目の目立ち具合を表す、眼鏡レンズ製造方法。
【請求項16】
用意する前記工程は、
前記眼鏡レンズの外縁の形状に対応するように前記偏光シートを加工する工程と、
所定のレンズカーブに対応するように前記偏光シートを湾曲させる工程と
を含む、請求項15に記載の眼鏡レンズ製造方法。
【請求項17】
光の一部を反射し前記光の一部を透過する反射層によって前記偏光シートと前記非偏光部とを覆う工程を更に包含し、
前記非偏光部の透過率に対する前記偏光部の透過率の割合は
28%以上
72%以下の範囲である、請求項15又は請求項16に記載の眼鏡レンズ製造方法。
【請求項18】
射出成型する前記工程は、近景に対応する屈折力を有する近用部を前記非偏光部に配置する工程を含み、
配置する前記工程において、前記近用部は、前記ベース部から前記偏光シートに向かう方向における前記非偏光部の後面に配置される、請求項15から請求項17のいずれか1項に記載の眼鏡レンズ製造方法。
【請求項19】
互いに異なる4つのカテゴリーに基づいて、前記偏光部の透過率と前記非偏光部の透過率との組合せを決定する工程を更に包含し、
前記偏光部の透過率は、前記4つのカテゴリーに分類されており、
前記非偏光部の透過率は、前記4つのカテゴリーに分類されており、
前記4つのカテゴリーは、第1カテゴリーと、第2カテゴリーと、第3カテゴリーと、第4カテゴリーとを含み、
前記第1カテゴリーに分類される透過率は、43%よりも大きく80%以下の範囲であり、
前記第2カテゴリーに分類される透過率は、18%よりも大きく43%以下の範囲であり、
前記第3カテゴリーに分類される透過率は、8%よりも大きく18%以下の範囲であり、
前記第4カテゴリーに分類される透過率は、3%よりも大きく8%以下の範囲である、請求項15から請求項18のいずれか1項に記載の眼鏡レンズ製造方法。
【請求項20】
前記非偏光部の透過率は50%よりも大きい、請求項15から請求項19のいずれか1項に記載の眼鏡レンズ製造方法。
【請求項21】
前記非偏光部の透過率は50%以下である、請求項15から請求項19のいずれか1項に記載の眼鏡レンズ製造方法。
【請求項22】
前記偏光部の透過率及び前記非偏光部の透過率の各々が前記第2カテゴリーの範囲であ
り、
前記偏光部の透過率と前記非偏光部の透過率とが等しいか、
前記偏光部の透過率及び前記非偏光部の透過率の各々が前記第3カテゴリーの範囲であ
り、
前記偏光部の透過率と前記非偏光部の透過率とが等しいか、又は、
前記偏光部の透過率が前記第3カテゴリーの範囲であり、かつ、前記非偏光部の透過率が前記第2カテゴリーの範囲である
、請求項19に記載の眼鏡レンズ製造方法。
【請求項23】
前記偏光部の透過率と前記非偏光部の透過率との前記組合せにおいて、前記偏光部の透過率は、前記非偏光部の透過率を超えない、請求項19または請求項22に記載の眼鏡レンズ製造方法。
【請求項24】
暗い場所に居ながら、明るい対象物と暗い対象物とをそれぞれ目視するための前記眼鏡レンズを製造する場合、前記偏光部の透過率が前記第4カテゴリーの範囲であり、かつ、前記非偏光部の透過率が前記第1カテゴリーの範囲である、請求項19に記載の眼鏡レンズ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡レンズ、眼鏡、及び眼鏡レンズ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の視覚エレメント(眼鏡レンズ)は、3つの領域に区画されたレンズである。詳細には、特許文献1に記載の視覚エレメントは、垂直に配向された偏光フィルターを伴う第1領域と、水平に配向された偏光フィルターを伴う第2領域と、非偏光フィルターを伴う第3領域とを備える。第1領域は、ビルディングの窓のような垂直面からの反射光を減衰する。第2領域は、水面のような水平面からの反射光を減衰する。ユーザーは、第3領域を通して、液晶ディスプレーによる偏光に依存することなく液晶ディスプレーを視認できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の視覚エレメントでは、第1領域と第2領域と第3領域との各々が異なる偏光機能を有するため、各々の領域を隣接して配置するように第1領域と第2領域と第3領域とを接着剤で接着する必要がある。従って、レンズ全体のうち偏光部分と非偏光部分との各々の透過率を接着剤の有無に依存して調整しなければならない。その結果、偏光部分と非偏光部分との各々の透過率を精度良く調整することが困難であった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、偏光部分と非偏光部分との各々の透過率を精度良く調整できる眼鏡レンズ、眼鏡、及び眼鏡レンズ製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面によれば、眼鏡レンズは、偏光部と、非偏光部とを備える。前記偏光部は、ベース部と偏光シートとを含む。前記非偏光部は、前記偏光部と隣接する。前記偏光シートは、離隔不能に前記ベース部と面接触している。前記非偏光部の厚みは、前記ベース部の厚みよりも厚い。前記ベース部と前記非偏光部とは、単一の部材である光透過部材を構成する。前記光透過部材は、有色の樹脂である。
【0007】
本発明の眼鏡レンズにおいて、前記光透過部材の内部は着色されていることが好ましい。
【0008】
本発明の眼鏡レンズにおいて、前記非偏光部は、前記光透過部材の上部及び下部のうち、前記下部において前記偏光部と隣接して配置されることが好ましい。
【0009】
本発明の眼鏡レンズにおいて、前記非偏光部は、前記偏光シートの外周縁の一部に接触しており、前記外周縁の他の一部には接触しないことが好ましい。
【0010】
本発明の眼鏡レンズにおいて、前記偏光シートは、孔を有することが好ましい。前記非偏光部は、前記孔に配置されることが好ましい。
【0011】
本発明の眼鏡レンズは、反射層を更に備えることが好ましい。前記反射層は、光の一部を反射し、前記光の一部を透過することが好ましい。前記反射層は、前記ベース部から前記偏光シートに向かう方向の前面側において、前記偏光シートと前記非偏光部とを覆っていることが好ましい。
【0012】
本発明の眼鏡レンズにおいて、前記非偏光部の透過率に対する前記偏光部の透過率の割合は、略30%以上略70%以下であることが好ましい。
【0013】
本発明の眼鏡レンズにおいて、前記偏光シートは、偏光膜と、第1カバー層と、第2カバー層とを含むことが好ましい。前記第1カバー層は、前記偏光膜の第1面を覆うことが好ましい。前記第2カバー層は、前記第1面の裏面である第2面を覆い、前記ベース部と面接触していることが好ましい。前記第2カバー層と前記ベース部とは、同じ材料で構成されることが好ましい。
【0014】
本発明の眼鏡レンズは、近用部を更に備えることが好ましい。前記近用部は、近景に対応する屈折力を有することが好ましい。前記近用部は、前記ベース部から前記偏光シートに向かう方向における前記非偏光部の後面に配置されることが好ましい。
【0015】
本発明の眼鏡レンズにおいて、前記ベース部から前記偏光シートに向かう方向における前記偏光シートの前面は、前記ベース部から前記偏光シートに向かう方向における前記非偏光部の前面と面一であることが好ましい。
【0016】
本発明の他の局面によれば、眼鏡は、上記に記載の眼鏡レンズと、支持部とを備える。前記支持部は、前記眼鏡レンズを支持する。
【0017】
本発明の更に他の局面によれば、眼鏡レンズ製造方法は、眼鏡レンズを製造する。前記眼鏡レンズ製造方法は、用意する工程と、配置する工程と、射出成型する工程とを包含する。用意する前記工程は、前記眼鏡レンズが備える偏光部に含まれる偏光シートを用意する。配置する前記工程は、前記偏光シートを金型内に配置する。射出成型する前記工程は、前記偏光シートが配置された前記金型内に有色の樹脂を射出することによって、前記偏光部に隣接する非偏光部と前記偏光部に含まれるベース部とから構成される単一の部材である光透過部材を、前記偏光シートと前記ベース部とを面接触させるように射出成型する。前記非偏光部の厚みは、前記ベース部の厚みよりも厚い。
【0018】
本発明の眼鏡レンズ製造方法において、用意する前記工程は、前記眼鏡レンズの外縁の形状に対応するように前記偏光シートを加工する工程と、所定のレンズカーブに対応するように前記偏光シートを湾曲させる工程とを含むことが好ましい。
【0019】
本発明の眼鏡レンズ製造方法は、覆う工程を更に包含することが好ましい。覆う前記工程は、前記ベース部から前記偏光シートに向かう方向の前面側において、光の一部を反射し前記光の一部を透過する反射層によって前記偏光シートと前記非偏光部とを覆うことが好ましい。射出成型する前記工程において、前記非偏光部の透過率に対する前記偏光部の透過率の割合を略30%以上略70%以下の範囲に決定することが好ましい。
【0020】
本発明の眼鏡レンズ製造方法において、射出成型する前記工程は、近景に対応する屈折力を有する近用部を前記非偏光部に配置する工程を含むことが好ましい。配置する前記工程において、前記近用部は、前記ベース部から前記偏光シートに向かう方向における前記非偏光部の後面に配置されることが好ましい。
【0021】
本発明の眼鏡レンズ製造方法において、射出成型する前記工程は、前記偏光部の透過率と前記非偏光部の透過率との比率を、前記有色の樹脂の色の種類と、前記有色の樹脂の色の濃度と、前記光透過部材の厚みとの少なくとも1つに基づいて決定することが好ましい。
【0022】
本発明の眼鏡レンズ製造方法は、決定する工程を更に包含することが好ましい。決定する前記工程は、互いに異なる4つのカテゴリーに基づいて、前記偏光部の透過率と前記非偏光部の透過率との組合せを決定することが好ましい。前記偏光部の透過率は、前記4つのカテゴリーに分類されていることが好ましい。前記非偏光部の透過率は、前記4つのカテゴリーに分類されていることが好ましい。前記4つのカテゴリーは、第1カテゴリーと、第2カテゴリーと、第3カテゴリーと、第4カテゴリーとを含むことが好ましい。前記第1カテゴリーに分類される透過率は、43%よりも大きく80%以下の範囲であることが好ましい。前記第2カテゴリーに分類される透過率は、18%よりも大きく43%以下の範囲であることが好ましい。前記第3カテゴリーに分類される透過率は、8%よりも大きく18%以下の範囲であることが好ましい。前記第4カテゴリーに分類される透過率は、3%よりも大きく8%以下の範囲であることが好ましい。
【0023】
本発明の眼鏡レンズ製造方法において、射出成型する前記工程は、前記非偏光部の透過率を50%よりも大きく決定することが好ましい。
【0024】
本発明の眼鏡レンズ製造方法において、射出成型する前記工程は、前記非偏光部の透過率を50%以下に決定することが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の眼鏡レンズ、眼鏡、及び眼鏡レンズ製造方法によれば、偏光部分と非偏光部分との各々の透過率を精度良く調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】(a)は、本発明の実施形態1に係る眼鏡レンズを眼鏡レンズの表(おもて)面側から見た状態を示す表面図であり、(b)は、
図1(a)のIB-IB線に沿った断面図である。
【
図2】(a)は、
図1(a)のIIB-IIB線に沿った断面図であり、(b)は、
図2(a)の一部拡大図である。
【
図3】実施形態1に係る眼鏡レンズにおける、偏光部の透過率のカテゴリーと、非偏光部の透過率のカテゴリーとの関係を示すグラフである。
【
図4】本発明の実施例に係る眼鏡レンズの表面側から見た偏光部と非偏光部との境目の目立ち具合と、非偏光部の透過率との関係を示すグラフである。
【
図5】実施形態1に係る眼鏡レンズを示す断面図である。
【
図6】本発明の実施例に係る眼鏡レンズの表面側から見た偏光部と非偏光部との境目の目立ち具合と、非偏光部の透過率に対する偏光部の透過率の割合との関係を示すグラフである。
【
図7】(a)は、実施形態1に係る眼鏡レンズを眼鏡レンズの表面側から見た状態を示す表面図であり、(b)は、
図7(a)のVIIB-VIIB線に沿った断面図である。
【
図8】(a)は、実施形態1の変形例に係る眼鏡レンズを眼鏡レンズの表面側から見た状態を示す表面図であり、(b)は、
図8(a)のVIIIB-VIIIB線に沿った断面図である。
【
図9】実施形態1に係る眼鏡レンズの製造方法を示すフローチャートである。
【
図10】実施形態1に係る眼鏡レンズの偏光シートを用意する工程を示すフローチャートである。
【
図11】実施形態1に係る眼鏡レンズの光透過部材を有色の樹脂で射出成型する工程を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の実施形態2に係る眼鏡を眼鏡レンズの表面側から見た状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。また、図面の簡略化のため、断面を示す斜線を適宜省略する。また、図面の理解を容易にするため、本実施形態において、三次元直交座標系のX軸、Y軸、及びZ軸を適宜記載する。Y軸に沿った方向は、本発明に係る眼鏡レンズ1の装着者の視野における左右方向の一例である。装着者の視野における左右方向は、例えば、装着者の左目から右目に向かう方向に沿った方向を示す。以下、眼鏡レンズ1の装着者の視野における左右方向を単に「左右方向」と記載することがある。Z軸に沿った方向は、本発明に係る眼鏡レンズ1の装着者の視野における上下方向の一例である。装着者の視野における上下方向は、例えば、左右方向と直交する方向を示す。以下、眼鏡レンズ1の装着者の視野における上下方向を単に上下方向と記載することがある。また、本実施形態において、上下方向における「上」は、例えば、装着者の口から鼻に向かう方向を示し、「下」は、例えば、装着者の鼻から口に向かう方向を示す。
【0028】
[実施形態1]
図1~
図11を参照して、本発明の実施形態1に係る眼鏡レンズ1を説明する。まず、
図1を参照して眼鏡レンズ1の実施形態を説明する。
図1(a)は、実施形態1に係る眼鏡レンズ1を眼鏡レンズ1の表(おもて)面側から見た状態を示す表面図である。眼鏡レンズ1の表面は、眼鏡レンズ1の2つの面のうち、眼鏡レンズ1の装着者から遠い側の面を示す。
図1(b)は、
図1(a)のIB-IB線に沿った断面図である。
図1(a)に示すように、眼鏡レンズ1は、偏光部10と、非偏光部20とを備える。なお、図中、偏光部10と非偏光部20との各々に粗密の異なるドットパターンによるハッチングを付しているが、ドットパターンによるハッチングは、図において単に偏光部10と非偏光部20とを判別し易くするために便宜上付すものである。眼鏡レンズ1は、眼鏡に使用されるレンズである。眼鏡レンズ1は、例えば、偏光レンズ、ソリッドタイプのカラーレンズ、コート付きレンズ、保護レンズ、及び/又は、二重焦点レンズである。なお、眼鏡については、
図12を参照して後述する。
【0029】
偏光部10は、非偏光部20と隣接する。詳細には、偏光部10は、眼鏡レンズ1の厚み方向Dと交差する方向に沿って、非偏光部20と隣接する。すなわち、偏光部10と非偏光部20とは、厚み方向Dに沿って互いに重ならない。厚み方向Dは、例えば、眼鏡レンズ1の光軸に沿った方向である。また、眼鏡レンズ1の厚み方向Dは、例えば、偏光部10の厚み方向又は非偏光部20の厚み方向と一致する。例えば、偏光部10と非偏光部20とは、互いに隣接するように射出成型される。偏光部10は、偏光機能を有する。具体的には、偏光部10は、ベース部11と、偏光シート12とを含む。
図1(b)に示すように、ベース部11と偏光シート12とは、厚み方向Dに互いに対向して配置される。
【0030】
ベース部11は、光透過部材である。ベース部11は、ベース部11に入射する光に含まれる偏光成分の有無に依存することなく光を透過する。ベース部11は、有色の樹脂である。具体的には、有色の樹脂は、着色剤を含有している。有色は、例えば、有色透明である。有色透明は、有色で透けていることを示す。有色透明は、例えば、黒系色、茶系色、又は紺系色に着色された透明である。ベース部11を構成する材料は、例えば、合成樹脂である。合成樹脂は、例えば、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、トリアセテート、又はポリウレタンである。ベース部11は、例えば、熱可塑性を有する。
【0031】
偏光シート12は、偏光部材である。偏光シート12は、例えば、層状である。偏光シート12は、偏光シート12に入射する光に含まれる特定の偏光成分を遮断する。特定の偏光成分は、例えば、S偏光である。偏光シート12の厚みW3は、例えば、0.3mm~0.6mmである。
【0032】
偏光シート12は、偏光シート12を用意する工程において、眼鏡レンズ1の外縁の形状に対応するように加工される。例えば、偏光シート12は、略円形状、又は略半円形状に加工される。さらに、偏光シート12を用意する工程において、偏光シート12は、所定のレンズカーブの形状に対応するように湾曲される。例えば、偏光シート12は、装着者に対して近い側から遠い側へ向けて凸となるように、断面円弧状に所定の曲率で曲げられる。
【0033】
偏光シート12は、用意されると、偏光シート12を金型内に配置する工程において、例えば、射出成型装置(図示せず)の金型内に配置される。射出成型装置は、例えば、射出部、金型、型締め部、及び制御部を備える。射出部は、例えば、ホッパー、シリンダー、及び噴射ノズルを含む。
【0034】
偏光シート12が配置された金型内に有色の樹脂を溶解して射出することによって、非偏光部20とベース部11とから構成される光透過部材2を、偏光シート12とベース部11とを面接触させるように射出成型する。光透過部材2は、単一の部材である。
【0035】
偏光シート12は、離隔不能にベース部11と面接触している。偏光シート12とベース部11とは、例えば、射出成型時に境界面で融着して一体化される。その結果、偏光シート12は、ベース部11から離隔できない。そして、眼鏡レンズ1は、金型から取り出される。
【0036】
非偏光部20は、偏光部10と隣接する。非偏光部20は、光透過部材である。非偏光部20は、非偏光部20に入射する光に含まれる偏光成分の有無に依存することなく光を透過する。非偏光部20は、有色の樹脂である。具体的には、有色の樹脂は、着色剤を含有している。有色は、例えば、有色透明である。有色透明は、例えば、黒系色、茶系色、又は紺系色に着色された透明である。非偏光部20を構成する材料は、例えば、合成樹脂である。合成樹脂は、例えば、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、トリアセテート、又はポリウレタンである。非偏光部20は、例えば、熱可塑性を有する。
【0037】
ベース部11と非偏光部20とは、単一の部材である光透過部材2を構成する。従って、光透過部材2は、有色の樹脂である。具体的には、有色の樹脂は、着色剤を含有している。有色は、例えば、有色透明である。有色透明は、例えば、黒系色、茶系色、又は紺系色に着色された透明である。光透過部材2を構成する材料は、例えば、合成樹脂である。合成樹脂は、例えば、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、トリアセテート、又はポリウレタンである。非偏光部20は、例えば、熱可塑性を有する。有色の樹脂は、例えば、金型内に射出(充填)される前に、有色のペレットが溶融可塑化されることによって生成される。有色のペレットは、例えば、着色ペレット、ナチュラルペレット、及びマスターバッチを含む。偏光シート12の配置された金型内に有色の樹脂が充填されると、偏光シート12がベース部11と離隔不能に面接触するように、光透過部材2が有色の樹脂で射出成型される。従って、光透過部材2の内部が着色され、好ましくは、光透過部材2全体が均質に着色される。さらに、偏光シート12と光透過部材2とが境界面で融着して一体化される。
【0038】
非偏光部20の厚みW1は、ベース部11の厚みW2よりも厚い。例えば、非偏光部20の厚みW1は、ベース部11の厚みW2と偏光シート12の厚みW3との和に等しい。非偏光部20の厚みW1は、例えば、2.0mmである。ベース部11の厚みW2は、例えば、1.4mmである。偏光シート12の厚みW3は、例えば、0.6mmである。光透過部材2が有色の樹脂であるため、非偏光部20の色の濃度は、非偏光部20の厚みW1の大きさに比例する。同様に、ベース部11の色の濃度は、ベース部11の厚みW2の大きさに比例する。すなわち、非偏光部20の色の濃度は、ベース部11の色の濃度よりも高い。
【0039】
例えば、眼鏡レンズ1の製造者は、有色の樹脂で光透過部材2を射出成型する工程において、有色の樹脂の色の種類と、有色の樹脂の色の濃度と、光透過部材2の厚みとの少なくとも1つに基づいて非偏光部20の透過率と偏光部10の透過率との比率を決定する。有色の樹脂の色の種類は、例えば、黒系色、茶系色、又は紺系色である。有色の樹脂の色の濃度は、例えば、有色のペレットの色の濃度に依存する。光透過部材2の厚みは、具体的には、非偏光部20の厚みW1と、ベース部11の厚みW2との各々である。透過率は、例えば、視感透過率である。以下、「非偏光部20の透過率」を「非偏光透過率」と、「偏光部10の透過率」を「偏光透過率」と、それぞれ記載することがある。
【0040】
実施形態1によれば、偏光シート12が金型内に配置され、単一の部材である光透過部材2が有色の樹脂で射出成型される。射出成型の結果、非偏光部20の厚みW1がベース部11の厚みW2よりも厚くなるとともに、偏光シート12は、ベース部11と離隔不能に面接触する。従って、偏光シート12とベース部11との間に接着材のような接着層を要しない。その結果、接着層に起因する透過率の変動を低減できる。さらに、光透過部材2が有色の樹脂であるため、非偏光部20の色の濃度は、例えば、非偏光部20の厚みW1の大きさに比例する。また、同様に、光透過部材2が有色の樹脂であるため、ベース部11の色の濃度は、例えば、ベース部11の厚みW2の大きさに比例する。従って、非偏光部20の色の濃度と、偏光部10の色の濃度とを、それぞれ、非偏光部20の厚みW1と、ベース部11の厚みW2とによって調整できる。その結果、偏光部分と非偏光部分との各々の透過率を精度良く調整できる。
【0041】
また、実施形態1によれば、光透過部材2は、有色の樹脂である。例えば、有色の樹脂が金型内に充填されることによって、光透過部材2が成型される。すなわち、光透過部材2の内部は着色されている。従って、光透過部材2全体は、略均質に着色され得る。その結果、眼鏡レンズ1の表(ひょう)面の擦れ等に起因した眼鏡レンズ1の色ムラを低減できる。よって、色ムラによる眼鏡レンズ1の透過率の変動を低減できる。
【0042】
さらに、実施形態1によれば、偏光シート12は、用意される工程において、眼鏡レンズ1の外縁の形状に対応するように加工され、さらに、眼鏡レンズ1のレンズカーブの形状に対応するように曲げられる。光透過部材2は、光透過部材2を射出成型する工程において、偏光シート12の形状に沿って成型される。従って、眼鏡レンズ1の全体形状に応じて光透過部材2を容易に成型できる。
【0043】
さらに、実施形態1によれば、光透過部材2を射出成型する工程において、有色の樹脂の色の種類と、有色の樹脂の色の濃度と、光透過部材2の厚みとの少なくとも1つに基づいて、偏光透過率と非偏光透過率との比率を決定する。従って、偏光透過率と非偏光透過率との様々な組み合わせを有する眼鏡レンズ1の製造工数を低減できる。
【0044】
また、偏光シート12は、外周縁12Aを有する。外周縁12Aは、例えば、外周縁12Aの一部と、外周縁12Aの他の一部とから構成される。以下、「偏光シート12の外周縁12Aの一部」を「第1外周縁部12A1」と記載し、「偏光シート12の外周縁12Aの他の一部」を「第2外周縁部12A2」と記載することがある。第1外周縁部12A1は、例えば、非偏光部20と接合することによって非偏光部20との境目を構成する。第1外周縁部12A1は、例えば、装着者の視野における上下方向と交差する方向に沿った直線状である。装着者の視野における上下方向と交差する方向は、例えば、装着者の視野における左右方向である。第1外周縁部12A1が直線状である場合、偏光シート12は、例えば、欠円状である。なお、第1外周縁部12A1は、例えば、曲線状であってもよいし、折れ線状であってもよい。
【0045】
例えば、偏光シート12が欠円状である場合、非偏光部20は、弓型状である。換言すれば、偏光シート12の外周縁12Aが、例えば、第1外周縁部12A1と第2外周縁部12A2とから構成される場合、非偏光部20は、第1外周縁部12A1に接触しており、第2外周縁部12A2には接触しない。従って、実施形態1によれば、非偏光部20をより広く設定できる。その結果、非偏光部20からの視野が制限されにくい。さらに、装着者に接した看者が偏光部10と非偏光部20との境目を視認した際に、非偏光部20の形状が眼鏡レンズ1全体のデザイン性の高さに寄与する印象を看者に想起させ得る。従って、眼鏡レンズ1のデザイン性を向上させることができる。
【0046】
続いて、
図2を参照して、眼鏡レンズ1の構成の詳細について説明する。
図2(a)は、
図1(a)のIIB-IIB線に沿った断面図である。
図2(b)は、
図2(a)の一部拡大図である。
【0047】
図2(a)に示すように、非偏光部20は、光透過部材2の上部2A及び下部2Bのうち下部2Bにおいて偏光部10と隣接して配置される。詳細には、光透過部材2の上部2Aは、装着者の視野VFの上部に対応する。また、光透過部材2の下部2Bは、装着者の視野VFの下部に対応する。視野VFは、眼鏡レンズ1を装着した状態における装着者の眼EYの位置からの視野を示す。
【0048】
非偏光部20は、偏光部10に対して上下方向の下側に配置される。すなわち、偏光シート12の第1外周縁部12A1は、偏光シート12の下部に位置する。従って、本実施形態によれば、非偏光部20を通る光は主に視野VFの下部に入る。その結果、装着者は、視野VFの上部及び中央部の眩しさが軽減されるとともに、非偏光部20を通して視野VFの下部を偏光部10よりも明るい状態で視認できる。非偏光部20は、非偏光部20に入射する光に含まれる偏光成分の有無に依存することなく光を透過するため、特に、装着者は、手元の液晶ディスプレーを容易に視認できる。
【0049】
図2(b)に示すように、偏光シート12は、偏光膜12Bと、第1カバー層12Cと、第2カバー層12Dとを含む。偏光膜12Bと、第1カバー層12Cと、第2カバー層12Dとは、積層されている。
【0050】
偏光膜12Bは、偏光子であり、例えば、無偏光の光から偏光成分を取り出す。偏光膜12Bは、例えば、ポリビニルアルコール樹脂のようなヒドロキシ基を有する樹脂を一軸延伸するとともに、ヨウ素系化合物又は二色性染料等を含浸させることによって形成される。偏光膜12Bは、第1面12B1と、第1面12B1に対する裏面である第2面12B2とを有する。偏光膜12Bは、第1カバー層12Cと、第2カバー層12Dとによって挟まれている。
【0051】
偏光シート12において、第1カバー層12Cと、第2カバー層12Dとは、偏光膜12Bを保護する。第1カバー層12Cと、第2カバー層12Dとは、例えば、保護フィルムである。第1カバー層12Cと、第2カバー層12Dとを構成する材料は、例えば、ポリカーボネート、又はポリアミドのような合成樹脂である。第1カバー層12Cと、第2カバー層12Dとは、例えば、無着色の透明である。
【0052】
第1カバー層12Cは、偏光膜12Bの第1面12B1を覆う。詳細には、第1カバー層12Cは、第1カバー面12C1と、第1カバー面12C1に対向する第2カバー面12C2とを有する。第1カバー面12C1は、ベース部11から偏光シート12に向かう方向における偏光シート12の前面、つまり下流側の面を示す。第2カバー面12C2と、偏光膜12Bの第1面12B1とは、互いに対向して接する。例えば、第2カバー面12C2と、第1面12B1とは、密着している。
【0053】
第2カバー層12Dは、偏光膜12Bの第2面12B2を覆う。詳細には、第2カバー層12Dは、第3カバー面12D1と、第3カバー面12D1に対向する第4カバー面12D2とを有する。第3カバー面12D1と、偏光膜12Bの第2面12B2とは、互いに対向して接する。例えば、第3カバー面12D1と、第2面12B2とは、密着している。
【0054】
ベース部11は、第1ベース面11Aと、第2ベース面11Bとを有する。第1ベース面11Aと、第2ベース面11Bとは、眼鏡レンズ1の厚み方向Dに互いに対向する。以下、眼鏡レンズ1の厚み方向Dのうち、ベース部11から偏光シート12に向かう方向を第1方向D1と、偏光シート12からベース部11に向かう方向を第2方向D2と、それぞれ記載することがある。なお、第1方向D1は、例えば、眼鏡レンズ1の裏面から表面に向かう方向、又は、眼鏡レンズ1の装着時に装着者から眼鏡レンズ1へ向かう方向であってもよい。
【0055】
第2カバー層12Dは、ベース部11と面接触している。詳細には、第2カバー層12Dの第4カバー面12D2は、ベース部11の第1ベース面11Aと面接触している。例えば、ベース部11を構成する材料がポリカーボネートである場合、第2カバー層12Dを構成する材料もまたポリカーボネートであることが好ましい。すなわち、第2カバー層12Dとベース部11とは、同じ材料で構成されることが好ましい。実施形態1によれば、第2カバー層12Dとベース部11とが同じ材料で構成されるため、光透過部材2を射出成型する際、第2カバー層12Dとベース部11とは、境界面で融着して一体化され易い。従って、偏光シート12と、ベース部11とを容易に面接触できる。
【0056】
さらに、実施形態1によれば、第2カバー層12Dとベース部11とに加えて、第1カバー層12Cもまた同じ材料で構成されることが好ましい。すなわち、第1カバー層12Cと第2カバー層12Dと光透過部材2とが同じ材料で構成されることにより、光透過部材2と偏光シート12とを境界面で容易に融着できる。さらに、偏光部10及び非偏光部20の表(ひょう)面全体を硬質層でコーティングする際に、硬質層が第1カバー層12Cから離隔しにくい。硬質層は、例えば、ハードコート加工によって設定される硬質膜である。従って、眼鏡レンズ1に対する各種のコーティングによる効果をより長く持続できる。
【0057】
また、非偏光部20は、第1非偏光面20Aと、第2非偏光面20Bとを有する。第1非偏光面20Aと、第2非偏光面20Bとは、眼鏡レンズ1の厚み方向Dに互いに対向する。第1非偏光面20Aは、第1方向D1における非偏光部20の前面、つまり下流側の面を示す。第2非偏光面20Bは、第1方向D1における非偏光部20の後面、つまり上流側の面を示す。
【0058】
非偏光部20の第2非偏光面20Bは、ベース部11の第2ベース面11Bとともに、光透過部材2の2つの主面のうちの一方の主面を構成する。詳細には、光透過部材2は、第1主面2Cと、第1主面2Cに対向する第2主面2Dとを有する。非偏光部20の第2非偏光面20Bは、ベース部11の第2ベース面11Bとともに、光透過部材2の第2主面2D、すなわち、眼鏡レンズ1の裏面を構成する。好ましくは、第2非偏光面20Bと、第2ベース面11Bとは、面一である。
【0059】
非偏光部20の第1非偏光面20Aと、偏光シート12の第1カバー面12C1とは、眼鏡レンズ1の表(おもて)面を構成する。第1非偏光面20Aと、第1カバー面12C1とは、面一であることが好ましい。例えば、金型内に偏光シート12を配置して光透過部材2を射出成型することによって、第1非偏光面20Aと、第1カバー面12C1とを面一に成型し得る。本実施形態によれば、第1カバー層12Cと非偏光部20とが面一であることにより、眼鏡レンズ1の表(おもて)面のデザイン性を向上させることができる。さらに、眼鏡レンズ1の表(おもて)面への各種のコーティング加工が容易である。特に、第1カバー層12Cと光透過部材2とが同じ材料で構成される場合に、第1カバー層12Cと非偏光部20とが面一であることにより、光透過部材2を射出成型する工程において、非偏光部20の第1非偏光面20Aと第1カバー面12C1とが容易に一体的に融着する。その結果、第1非偏光面20Aと第1カバー面12C1との連続性が向上する。
【0060】
続いて、
図1~
図3を参照して、偏光部10の透過率と非偏光部20の透過率との比率の決定方法の一例について説明する。
図3は、実施形態1に係る眼鏡レンズ1における偏光部10の透過率のカテゴリーと、非偏光部20の透過率のカテゴリーとの関係を示すグラフである。
【0061】
例えば、
図3は、偏光部10の透過率と非偏光部20の透過率との比率を決定する際における、偏光部10の透過率と非偏光部20の透過率との様々な組合せの一例を示す。横軸は、非偏光部20の透過率(非偏光透過率)(単位:%)を示し、縦軸は、偏光部10の透過率(偏光透過率)(単位:%)を示す。各透過率は、例えば、視感透過率を示す。透過率は、大きさごとに複数のカテゴリーに分類される。複数のカテゴリーは、例えば、国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)、又は日本産業規格(JIS:Japanese Industrial Standards)で規定されるカテゴリーを採用し得る。例えば、ISO規格の「ISO8980-3:2013」で規定されるカテゴリーを採用する場合、複数のカテゴリーは、5つのカテゴリーである。
【0062】
例えば、眼鏡レンズ1の製造者は、異なる5つのカテゴリーのうち4つのカテゴリーに基づいて、偏光透過率と非偏光透過率との組合せを決定し得る。偏光透過率は、4つのカテゴリーのいずれか1つに分類されている。非偏光透過率もまた、4つのカテゴリーのいずれか1つに分類されている。4つのカテゴリーは、第1カテゴリーと、第2カテゴリーと、第3カテゴリーと、第4カテゴリーを含む。
【0063】
第1カテゴリーは、ISO規格で規定される「カテゴリー1」に相当する。第1カテゴリーの色合いは、例えば、薄い色合いである。第1カテゴリーに分類される透過率は、例えば、43%よりも大きく80%以下の範囲である。以下、便宜上、第1カテゴリーである非偏光透過率のカテゴリーを「第1カテゴリーCX1」と、第1カテゴリーである偏光透過率のカテゴリーを「第1カテゴリーCY1」と、それぞれ記載することがある。
【0064】
第2カテゴリーは、ISO規格で規定される「カテゴリー2」に相当する。第2カテゴリーの色合いは、例えば、中間の色合いである。第2カテゴリーに分類される透過率は、例えば、18%よりも大きく43%以下の範囲である。以下、便宜上、第2カテゴリーである非偏光透過率のカテゴリーを「第2カテゴリーCX2」と、第2カテゴリーである偏光透過率のカテゴリーを「第2カテゴリーCY2」と、それぞれ記載することがある。
【0065】
第3カテゴリーは、ISO規格で規定される「カテゴリー3」に相当する。第3カテゴリーの色合いは、例えば、濃い色合いである。第3カテゴリーに分類される透過率は、例えば、8%よりも大きく18%以下の範囲である。以下、便宜上、第3カテゴリーである非偏光透過率のカテゴリーを「第3カテゴリーCX3」と、第3カテゴリーである偏光透過率のカテゴリーを「第3カテゴリーCY3」と、それぞれ記載することがある。
【0066】
第4カテゴリーは、ISO規格で規定される「カテゴリー4」に相当する。第4カテゴリーの色合いは、例えば、とても濃い色合いである。第4カテゴリーに分類される透過率は、例えば、3%よりも大きく8%以下の範囲である。以下、便宜上、第4カテゴリーである非偏光透過率のカテゴリーを「第4カテゴリーCX4」と、第4カテゴリーである偏光透過率のカテゴリーを「第4カテゴリーCY4」と、それぞれ記載することがある。
【0067】
なお、5つのカテゴリーのうち、第1カテゴリー、第2カテゴリー、第3カテゴリー、及び第4カテゴリーを除いた残りのカテゴリーは、例えば、ISO規格で規定される「カテゴリー0(ゼロ)」に相当する。「カテゴリー0」の色合いは、例えば、透明又はとても薄い色合いである。「カテゴリー0」に分類される透過率は、例えば、80%よりも大きく100%以下の範囲である。眼鏡レンズ1の製造者は、4つのカテゴリーと「カテゴリー0」とに基づいて、非偏光透過率と偏光透過率との組合せを決定してもよい。以下、便宜上、「カテゴリー0」である非偏光透過率のカテゴリーを「カテゴリーCX0(ゼロ)」と、「カテゴリー0」である偏光透過率のカテゴリーを「カテゴリーCY0(ゼロ)」と、それぞれ記載することがある。
【0068】
非偏光透過率と偏光透過率との組合せを決定する工程において決定される組合せは、例えば、組合せP1~組合せP13を含む。組合せP1~組合せP13は、それぞれ、カテゴリーCX0と第1カテゴリーCY1との組合せ、カテゴリーCX0と第2カテゴリーCY2との組合せ、カテゴリーCX0と第3カテゴリーCY3との組合せ、カテゴリーCX0と第4カテゴリーCY4との組合せ、第1カテゴリーCX1と第1カテゴリーCY1との組合せ、第1カテゴリーCX1と第2カテゴリーCY2との組合せ、第1カテゴリーCX1と第3カテゴリーCY3との組合せ、第1カテゴリーCX1と第4カテゴリーCY4との組合せ、第2カテゴリーCX2と第2カテゴリーCY2との組合せ、第2カテゴリーCX2と第3カテゴリーCY3との組合せ、第2カテゴリーCX2と第4カテゴリーCY4との組合せ、第3カテゴリーCX3と第3カテゴリーCY3との組合せ、及び、第3カテゴリーCX3と第4カテゴリーCY4との組合せを示す。なお、組合せP1~組合せP13の各々において、偏光透過率は、非偏光透過率を超えないことが好ましい。
【0069】
実施形態1によれば、非偏光透過率と偏光透過率との組合せが、例えば、組合せP9(第2カテゴリーCX2と第2カテゴリーCY2との組合せ)、組合せP10(第2カテゴリーCX2と第3カテゴリーCY3との組合せ)、又は組合せP12(第3カテゴリーCX3と第3カテゴリーCY3との組合せ)である場合、非偏光透過率と偏光透過率とを精度良く調整可能にしつつ、一般的用途(General Purpose)に好適な眼鏡レンズ1を構成できる。さらに、偏光部10に対して非偏光部20を目立たなくすることができる。特に、眼鏡レンズ1の非偏光透過率と偏光透過率とが略等しい組合せである場合、偏光部10に対して非偏光部20をより目立たなくすることができる。
【0070】
また、実施形態1によれば、非偏光透過率と偏光透過率との組合せが、例えば、組合せP11(第2カテゴリーCX2と第4カテゴリーCY4との組合せ)、又は組合せP13(第3カテゴリーCX3と第4カテゴリーCY4との組合せ)である場合、非偏光透過率と偏光透過率とを精度良く調整可能にしつつ、各種の特殊用途(Special Purpose)に好適な眼鏡レンズ1を構成できる。特殊用途は、例えば、溶接作業の用途、又は、特殊な紫外線及びレーザー光線等から目を保護する用途を含む。
【0071】
さらに、実施形態1によれば、非偏光透過率と偏光透過率との組合せが、例えば、組合せP8(第1カテゴリーCX1と第4カテゴリーCY4との組合せ、)である場合、暗い場所に居ながら、明るい対象物と暗い対象物とをそれぞれ目視し易い。例えば、溶鉱炉付近での作業において、偏光部10で明るい炉を目視したり、手暗がりの中で非偏光部20で手元のマニュアルを目視したり、非偏光部20で手元の液晶ディスプレーを目視したりすることを容易にする。また、例えば、ボートの暗い室内の窓から明るい外界を目視したり、手元のスマートフォンの液晶ディスプレーを目視したりすることを容易にする。さらに、非偏光透過率と偏光透過率とを精度良く調整可能にしつつ、偏光部10の形状と非偏光部20の形状との対比による外観のファッション性をアピールできる。
【0072】
また、偏光部10のカテゴリーと非偏光部20のカテゴリーとの組合せに関わらず、眼鏡レンズ1において、非偏光部20の透過率が高くなるにつれて、偏光部10と非偏光部20との境目は目立ちやすくなる。従って、実施形態1によれば、例えば、非偏光部20の透過率が50%以下である場合、装着者に接する看者に対し、非偏光部20の存在を目立たなくすることができる。一方、実施形態1によれば、例えば、非偏光部20の透過率が50%よりも大きい場合、看者に対し、偏光部10と非偏光部20とのコントラストを強調できる。
【0073】
続いて、
図4を参照して、本発明が実施例に基づき具体的に説明されるが、本発明は以下の実施例によって限定されない。なお、実験条件は、次の通りであった。
・被験者は、複数の眼鏡レンズ1に対して官能テストを実施した。被験者数は6人であった。
・被験者は、台に眼鏡レンズ1を置いた状態で表面側から眼鏡レンズ1を見て、3段階評価した。また、被験者は、眼鏡レンズ1を眼前に配置した状態で鏡に映った眼鏡レンズ1を見て、3段階評価した。3段階評価の点数は、1点、2点、又は3点のいずれかであった。
・互いに透過率の異なる複数種類の偏光シート12の各々と、互いに透過率の異なる複数種類の光透過部材2の各々とが組み合わせられた複数の眼鏡レンズ1を評価した。複数の眼鏡レンズ1のいずれも、偏光シート12の厚みは0.6mmであり、ベース部11の厚みは1.4mmであり、非偏光部20の厚みは2.0mmであった。
【0074】
図4は、本発明の実施例に係る眼鏡レンズ1の表面側から見た偏光部10と非偏光部20との境目の目立ち具合と、非偏光透過率との関係を示すグラフである。横軸は、非偏光透過率(単位:%)を示し、縦軸は、眼鏡レンズ1の表面側から見た偏光部10と非偏光部20との境目の目立ち具合(単位:点)を示す。
図4は、複数の眼鏡レンズ1の各々に対する、各被験者による評価の平均値を黒丸で示す。
【0075】
図4に示すように、非偏光透過率が高くなるにつれて、偏光部10と非偏光部20との境目は、目立ちやすくなった。例えば、非偏光透過率が50%以下である場合、境目の目立ち具合は、境目の目立ち具合の中間値である1.5点以上であるため、境目は目立ちにくかった。従って、非偏光透過率を50%以下にすることにより、装着者に接する看者に対し、非偏光部20の存在を目立たなくできることを確認できた。
【0076】
一方、例えば、非偏光透過率が50%よりも大きい場合、境目の目立ち具合は、境目の目立ち具合の中間値である1.5点よりも小さくなるため、境目は目立ちやすかった。従って、非偏光部20の透過率を50%よりも大きくすることにより、装着者に接する看者に対し、偏光部10と非偏光部20とのコントラストを強調できることが確認できた。その結果、偏光部10の形状と非偏光部20の形状との対比による外観のファッション性をアピールできることが確認できた。
【0077】
続いて、
図5を参照して、実施形態1に係る眼鏡レンズ1の構成の詳細を説明する。
図5は、実施形態1に係る眼鏡レンズ1を示す断面図である。
図5に示すように、眼鏡レンズ1は、反射層30を更に備えていてもよい。反射層30は、第1方向D1の前面側、つまり下流側において、偏光シート12と非偏光部20とを覆っている。すなわち、反射層30は、眼鏡レンズ1の表(おもて)面側をコーティングしている層を示す。反射層30は、眼鏡レンズ1に入射する光の一部を反射し、光の一部を透過する。例えば、反射層30は、ミラーコート層を示す。ミラーコート層は、例えば、青系色のミラーコート層(例えば、ブルーミラー)、又は銀系色のミラーコート層(例えば、シルバーミラー)である。
【0078】
実施形態1によれば、偏光シート12と非偏光部20とに反射層30が設けられることにより、反射層30は、光の一部を反射しつつ偏光シート12と非偏光部20とを面一に覆うことができる。従って、装着者に接する看者にとって、偏光シート12と非偏光部20との境目が識別しにくい。その結果、非偏光部20のエッジを更に目立ちにくくできる。
【0079】
さらに、実施形態1によれば、看者にとって偏光シート12と非偏光部20との境目を特に識別しにくい範囲として、非偏光透過率に対する偏光透過率の割合は、例えば、略30%以上略70%以下であることが好ましい。例えば、偏光シート12を金型内に配置して光透過部材2を有色の樹脂で射出成型する工程に置いて、有色の樹脂の色の濃度を加減したり、又は光透過部材2の厚みを加減したりすることによって、非偏光透過率に対する偏光透過率の割合を略30%以上略70%以下である範囲に決定できる。非偏光透過率に対する偏光透過率の割合をこのように設定することにより、非偏光部20のエッジを効果的に目立ちにくくできる。
【0080】
続いて、
図6を参照して、本発明が実施例に基づき具体的に説明されるが、本発明は以下の実施例によって限定されない。なお、実験条件は、次の通りであった。
・被験者は、複数の眼鏡レンズ1に対して官能テストを実施した。被験者数は6人であった。
・被験者は、台に眼鏡レンズ1を置いた状態で表面側から眼鏡レンズ1を見て、3段階評価した。また、被験者は、眼鏡レンズ1を眼前に配置した状態で鏡に映った眼鏡レンズ1を見て、3段階評価した。3段階評価の点数は、1点、2点、又は3点のいずれかであった。
・眼鏡レンズ1が反射層30を備えない場合について、互いに透過率の異なる複数種類の偏光シート12の各々と、互いに透過率の異なる複数種類の光透過部材2の各々とが組み合わせられた複数の眼鏡レンズ1を評価した。複数の眼鏡レンズ1のいずれも、偏光シート12の厚みW3は0.6mmであり、ベース部11の厚みW2は1.4mmであり、非偏光部20の厚みW1は2.0mmであった。
・また、眼鏡レンズ1が反射層30を備える場合について、互いに色の異なる2種類の反射層30の各々と、互いに透過率の異なる複数種類の偏光シート12の各々と、互いに透過率の異なる複数種類の光透過部材2の各々とが組み合わせられた複数の眼鏡レンズ1を評価した。2種類の反射層30は、ブルーミラー、及びシルバーミラーであった。複数の眼鏡レンズ1のいずれも、偏光シート12の厚みW3は0.6mmであり、ベース部11の厚みW2は1.4mmであり、非偏光部20の厚みW1は2.0mmであった。
【0081】
図6は、本発明の実施例に係る眼鏡レンズ1の表面側から見た偏光部10と非偏光部20との境目の目立ち具合と、非偏光部20の透過率に対する偏光部10の透過率の割合との関係を示すグラフである。横軸は、非偏光部20の透過率に対する偏光部10の透過率の割合を示し、縦軸は、眼鏡レンズ1の表面側から見た偏光部10と非偏光部20との境目の目立ち具合を示す。眼鏡レンズ1が反射層30を備える場合と、反射層30を備えない場合とに分けて実験を行った。
図6は、複数の眼鏡レンズ1の各々に対する、各被験者による評価の平均値を丸、四角、又は三角で示す。なお、
図6は、反射層30を備える場合として、ブルーミラーを備える場合を丸で、シルバーミラーを備える場合を四角で、それぞれ示す。また、反射層30を備えない場合を三角で示す。
【0082】
図6に示すように、非偏光透過率に対する偏光透過率の割合が略30%以上略70%以下である範囲において、同一の非偏光透過率に対する偏光透過率の割合で比較した場合、反射層30を備えた眼鏡レンズ1は、反射層30を備えない眼鏡レンズ1よりも評価の点数が高かった。なお、略30%は、図からも明らかなように、例えば、28%を含む。また、略70%は、図からも明らかなように、例えば、72%を含む。従って、非偏光透過率に対する偏光透過率の割合が略30%以上略70%以下である範囲において、反射層30を備えない場合よりも反射層30を備える場合の方が、偏光部10と非偏光部20との境目が目立ちにくいことを確認できた。さらに、反射層30は、ブルーミラーの方がシルバーミラーよりも更に目立ちにくいことを確認できた。
【0083】
続いて、
図7を参照して、実施形態1に係る眼鏡レンズ1の構成の更なる詳細を説明する。
図7(a)は、眼鏡レンズ1を眼鏡レンズ1の表面側から見た状態を示す表面図である。
図7(b)は、
図7(a)のVIIB-VIIB線に沿った断面図である。
図7(a)及び(b)に示すように、偏光シート12は、孔12Eを有していてもよい。具体的には、孔12Eは、偏光シート12の抜き部分を示す。非偏光部20は、孔12Eに配置される。詳細には、偏光シート12を用意する工程において、偏光シート12に孔12Eを形成する。偏光シート12が孔12Eを有する実施形態において、非偏光部20は、偏光シート12の孔12E、すなわち偏光シート12の内周縁に接触しており、偏光シート12の外周縁12Aには接触しない。
【0084】
従って、実施形態1によれば、非偏光部20を偏光シート12の孔12Eに配置することにより、非偏光部20に入射する光の眩しさを軽減するように偏光部10に対する非偏光部20の割合を設定し易い。その結果、装着者の利便性を更に向上させるとともに、非偏光部20を目立たなくすることができる。
【0085】
続いて、
図8を参照して、実施形態1の変形例に係る眼鏡レンズ1の構成を説明する。
図8(a)は、実施形態1の変形例に係る眼鏡レンズ1を眼鏡レンズ1の表面側から見た状態を示す表面図である。
図8(b)は、
図8(a)のVIIIB-VIIIB線に沿った断面図である。
図8(a)及び(b)に示すように、眼鏡レンズ1は、近用部40を更に備えていてもよい。近用部40は、近景に対応する屈折力を有する。近景とは、例えば、装着者の手元、又は、装着者の着席時の机上を示す。詳細には、近用部40は、老眼等による遠視を矯正するための屈折力を有する。第2方向D2から近用部40を見た場合、近用部40は、例えば、欠円状である。なお、近用部40は、例えば、矩形状であってもよい。
【0086】
近用部40は、第1方向D1における非偏光部20の後面、すなわち第2非偏光面20Bに配置される。例えば、射出成型する工程において、近用部40は非偏光部20に配置される。例えば、近用部40は、光透過部材2とともに単一の部材として成型される。実施形態1によれば、装着者が老眼であっても、偏光部10によって眩しさを低減しつつ、手元の液晶ディスプレーを容易に視認できる。
【0087】
なお、
図8は、非偏光部20が第1外周縁部12A1に接触しており第2外周縁部12A2に接触しない実施形態を示しているが、偏光シート12が孔12Eを有する実施形態(
図7(a)及び(b))においても、近用部40が非偏光部20に配置されていてもよい。例えば、近用部40は、孔12Eに沿って非偏光部20の第2非偏光面20Bに配置され得る。
【0088】
続いて、
図1から
図9を参照して、眼鏡レンズ1の製造方法の一例について説明する。
図9は、眼鏡レンズ1の製造方法を示すフローチャートである。ステップS101~ステップS111の処理が実行されることによって、眼鏡レンズ1は製造される。具体的には、以下の通りである。
【0089】
ステップS101において、異なる5つのカテゴリーのうち4つのカテゴリーに基づいて、偏光部10の透過率と非偏光部20の透過率との組合せを決定する。処理は、ステップS103に進む。
【0090】
次に、ステップS103において、偏光シート12を用意する。処理は、ステップS105に進む。
【0091】
次に、ステップS105において、偏光シート12を金型内に配置する。処理は、ステップS107に進む。
【0092】
次に、ステップS107において、偏光シート12が配置された金型内に有色の樹脂を溶解して射出することによって、単一の部材である光透過部材2を偏光シート12とベース部11とを面接触させるように射出成型する。そして、眼鏡レンズ1は、金型から取り出される。処理は、ステップS109に進む。
【0093】
次に、ステップS109において、偏光部10及び非偏光部20の表面全体を硬質層でコーティングする。処理は、ステップS111に進む。
【0094】
次に、ステップS111において、第1方向D1の前面側において偏光シート12と非偏光部20とを反射層30でコーティングする。そして、処理は終了する。
【0095】
なお、
図9に示す処理のうちステップS101、ステップS109、及びステップS111の処理は、省略され得る。
【0096】
ここで、
図1から
図10を参照して、偏光シート12を用意する工程の詳細について説明する。
図10は、偏光シート12を用意する工程の一例を示すフローチャートである。ステップS1031~ステップS1035の処理が実行されることによって、偏光シート12を用意する工程が実行される。具体的には、以下の通りである。
【0097】
ステップS1031において、眼鏡レンズ1の外縁の形状に対応するように偏光シート12を加工する。処理は、ステップS1033に進む。
【0098】
次に、ステップS1033において、所定のレンズカーブに対応するように偏光シート12を湾曲させる。処理は、ステップS1035に進む。
【0099】
次に、ステップS1035において、偏光シート12に孔12Eを形成する。そして、処理は終了する。
【0100】
なお、
図10に示す処理のうち、ステップS1031の処理において、偏光シート12は、第1外周縁部12A1と第2外周縁部12A2と有するように加工されてもよい。その場合、ステップS1035の処理は省略され得る。
【0101】
引き続き、ここで、
図1から
図11を参照して、光透過部材2を有色の樹脂で射出成型する工程の詳細について説明する。
図11は、光透過部材2を有色の樹脂で射出成型する工程の一例を示すフローチャートである。ステップS1071及びステップS1073の処理が実行されることによって、光透過部材2を有色の樹脂で射出成型する工程が実行される。具体的には、以下の通りである。
【0102】
ステップS1071において、偏光シート12が配置された金型内に有色の樹脂を溶解して射出する。処理は、ステップS1073に進む。
【0103】
次に、ステップS1073において、非偏光部20に近用部40が配置される。そして、処理は終了する。
【0104】
なお、
図11に示す処理のうちステップS1073の処理は省略され得る。
【0105】
[実施形態2]
続いて、
図1~
図12を参照して、実施形態1に係る眼鏡レンズ1を備える眼鏡100について説明する。
図12は、本発明の実施形態2に係る眼鏡100を眼鏡レンズ1の表面側から見た状態を示す斜視図である。
図12に示すように、眼鏡100は、眼鏡レンズ1と、支持部110とを備える。眼鏡100は、例えば、サングラス、近視用眼鏡、遠視用眼鏡、遠近両用眼鏡、又は遮光保護具である。眼鏡レンズ1は、偏光部10と、非偏光部20とを備える。また、眼鏡レンズ1は、反射層30(
図5参照)を更に備えていてもよいし、近用部40(
図8参照)を更に備えていてもよい。
【0106】
支持部110は、眼鏡レンズ1を支持する。支持部110は、例えば、一対の眼鏡レンズ1を支持する。なお、支持部110は、単独の眼鏡レンズ1を支持する構造であってもよい。支持部110は、例えば、リム111、ブリッジ112、及びテンプル113を含む。
【0107】
実施形態2によれば、眼鏡100が眼鏡レンズ1と支持部110とを備えることにより、偏光部分と非偏光部分との各々の透過率が精度良く調整された眼鏡レンズ1を容易に装着できる。
【0108】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。また、上記の各実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明の形成が可能である。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質、形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の構成から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0109】
(1)
図1~
図12を参照して説明したように、ベース部11と非偏光部20とは、熱可塑性を有していた。しかしながら、本発明はこれに限られない。ベース部11と非偏光部20とは、有色の樹脂で単一の部材である光透過部材を構成しさえすればよい。例えば、ベース部11と非偏光部20とは、熱硬化性を有していてもよい。ベース部11と非偏光部20とが熱硬化性樹脂である場合、ベース部11と非偏光部20とは、例えば、圧縮成形によって、有色の樹脂で単一の部材である光透過部材を構成し得る。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、眼鏡レンズ、眼鏡、及び眼鏡レンズ製造方法の分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0111】
1 眼鏡レンズ
10 偏光部
11 ベース部
12 偏光シート
2 光透過部材
20 非偏光部
W1、W2 厚み