IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-抵抗器 図1
  • 特許-抵抗器 図2
  • 特許-抵抗器 図3
  • 特許-抵抗器 図4
  • 特許-抵抗器 図5
  • 特許-抵抗器 図6
  • 特許-抵抗器 図7
  • 特許-抵抗器 図8
  • 特許-抵抗器 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】抵抗器
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/00 20060101AFI20231222BHJP
   H01C 1/08 20060101ALI20231222BHJP
   H01C 1/012 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
H01C7/00 110
H01C1/08 Z
H01C1/012
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020510740
(86)(22)【出願日】2019-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2019011420
(87)【国際公開番号】W WO2019188584
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2018063269
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018063270
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 孝彦
(72)【発明者】
【氏名】薄田 真
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 弘志
(72)【発明者】
【氏名】大山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 正治
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-251535(JP,A)
【文献】特開2000-299201(JP,A)
【文献】特開2016-171306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/00
H01C 1/08
H01C 1/012
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
抵抗体と、
保護膜と、をこの順に積層して備え、
前記基材と前記抵抗体との間に介在し、前記抵抗体と直接触れ、かつ、窒化アルミニウム層であるベース中間層を更に備え、
前記ベース中間層の厚みが、3μm以上20μm以下であり、
前記保護膜に、Ni、Co,Zn、及びTiの全てが含まれる、
抵抗器。
【請求項2】
基材と、
抵抗体と、
保護膜と、をこの順に積層して備え、
前記基材と前記抵抗体との間に介在し、前記抵抗体と直接触れ、かつ、窒化アルミニウム層であるベース中間層と、
前記抵抗体と電気的に接続された一対の電極と、を更に備え、
前記ベース中間層の厚みが、3μm以上20μm以下であり、
前記保護膜に、Ni、Co、Zn、及びTiのうち一種以上が含まれ、
前記一対の電極間に1Vの電圧を印加された場合に、平面視で、前記抵抗体の前記一対の電極間に位置する部分の面積に対する、前記抵抗体の電力密度が1×10 pW/μm 以上である部分の面積の比率が、30%以上である、
抗器。
【請求項3】
基材と、
抵抗体と、
保護膜と、をこの順に積層して備え、
前記基材と前記抵抗体との間に介在し、前記抵抗体と直接触れ、かつ、窒化アルミニウム層であるベース中間層を更に備え、
前記ベース中間層の厚みが、3μm以上20μm以下であり、
前記保護膜は樹脂組成物の硬化物であり、
前記樹脂組成物はNi、Co、Zn、及びTiのうち一種以上を含み、
前記樹脂組成物に対するNi、Co,Zn、及びTiの合計の割合は15重量%以上である、
抵抗器。
【請求項4】
前記抵抗体と電気的に接続されている電極を更に備え、
前記ベース中間層が前記電極と直接触れている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の抵抗器。
【請求項5】
前記ベース中間層の1/2以上が、単結晶の窒化アルミニウムで構成されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の抵抗器。
【請求項6】
前記ベース中間層が、スパッタ層である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の抵抗器。
【請求項7】
基材と、
抵抗体と、
保護膜と、をこの順に積層して備え、
前記抵抗体と前記保護膜との間に介在し、前記抵抗体と直接触れ、かつ、窒化アルミニウム層であるカバー中間層を更に備え、
前記カバー中間層の厚みが、3μm以上20μm以下であり、
前記保護膜に、Ni、Co,Zn、及びTiの全てが含まれる、
抵抗器。
【請求項8】
基材と、
抵抗体と、
保護膜と、をこの順に積層して備え、
前記抵抗体と前記保護膜との間に介在し、前記抵抗体と直接触れ、かつ、窒化アルミニウム層であるカバー中間層と、
前記抵抗体と電気的に接続された一対の電極と、を更に備え、
前記カバー中間層の厚みが、3μm以上20μm以下であり、
前記保護膜に、Ni、Co、Zn、及びTiのうち一種以上が含まれ、
前記一対の電極間に1Vの電圧を印加された場合に、平面視で、前記抵抗体の前記一対の電極間に位置する部分の面積に対する、前記抵抗体の電力密度が1×10 pW/μm 以上である部分の面積の比率が、30%以上である、
抵抗器。
【請求項9】
基材と、
抵抗体と、
保護膜と、をこの順に積層して備え、
前記抵抗体と前記保護膜との間に介在し、前記抵抗体と直接触れ、かつ、窒化アルミニウム層であるカバー中間層を更に備え、
前記カバー中間層の厚みが、3μm以上20μm以下であり、
前記保護膜は樹脂組成物の硬化物であり、
前記樹脂組成物はNi、Co、Zn、及びTiのうち一種以上を含み、
前記樹脂組成物に対するNi、Co,Zn、及びTiの合計の割合は15重量%以上である、
抵抗器。
【請求項10】
前記抵抗体と電気的に接続されている電極を更に含み、
前記カバー中間層が前記電極と直接触れている、
請求項7~9のいずれか一項に記載の抵抗器。
【請求項11】
前記カバー中間層の1/2以上が、単結晶の窒化アルミニウムで構成されている、
請求項7~10のいずれか一項に記載の抵抗器。
【請求項12】
前記カバー中間層が、スパッタ層である、
請求項7~11のいずれか一項に記載の抵抗器。
【請求項13】
前記抵抗体のトリミング率が二分の一以下である、
請求項1~12のいずれか一項に記載の抵抗器。
【請求項14】
前記抵抗体と前記保護膜とが直接触れている、
請求項1~13のいずれか一項に記載の抵抗器。
【請求項15】
音響機器が備えるアナログ回路に実装される、
請求項1~14のいずれか一項に記載の抵抗器。
【請求項16】
前記基材がアルミナ製である、
請求項1~15のいずれか一項に記載の抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般には抵抗器に関し、詳細には、電子機器に使用される抵抗器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器には抵抗器が実装されることがある。特許文献1及び特許文献2には、この抵抗器の一例が開示されている。特許文献1に開示されたチップ抵抗器は、アルミナ基板と、アルミナ基板の表面全体を覆う平坦化層と、平坦化層の表面上に設けられた抵抗体と、抵抗体の両端部に接続する一対の表電極と、抵抗体を被覆する絶縁性の保護層と、を備える。特許文献2に開示されている薄膜チップ抵抗器は、絶縁性の基板と、基板上に形成された薄膜抵抗体と、薄膜抵抗体と接続された一対の電極と、少なくとも、一対の電極間における薄膜抵抗体を覆う保護膜と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-168749号公報
【文献】特開2017-135234号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の目的は、電子機器に使用される抵抗器を提供することにある。
【0005】
本開示の一態様に係る抵抗器は、基材と、抵抗体と、保護膜と、をこの順に積層して備える。前記抵抗器は、ベース中間層を更に備える。前記ベース中間層は、前記基材と前記抵抗体との間に介在し、前記抵抗体と直接触れ、かつ、窒化アルミニウム層である。前記ベース中間層の厚みが、3μm以上20μm以下である。前記保護膜に、Ni、Co,Zn、及びTiの全てが含まれる。
本開示の一態様に係る抵抗器は、基材と、抵抗体と、保護膜と、をこの順に積層して備える。前記抵抗器は、ベース中間層と、一対の電極と、を更に備える。前記ベース中間層は、前記基材と前記抵抗体との間に介在し、前記抵抗体と直接触れ、かつ、窒化アルミニウム層である。前記一対の電極は、前記抵抗体と電気的に接続されている。前記ベース中間層の厚みが、3μm以上20μm以下である。前記保護膜に、Ni、Co、Zn、及びTiのうち一種以上が含まれる。前記一対の電極間に1Vの電圧を印加された場合に、平面視で、前記抵抗体の前記一対の電極間に位置する部分の面積に対する、前記抵抗体の電力密度が1×10 pW/μm 以上である部分の面積の比率が、30%以上である。
本開示の一態様に係る抵抗器は、基材と、抵抗体と、保護膜と、をこの順に積層して備える。前記抵抗器は、ベース中間層を更に備える。前記ベース中間層は、前記基材と前記抵抗体との間に介在し、前記抵抗体と直接触れ、かつ、窒化アルミニウム層である。前記ベース中間層の厚みが、3μm以上20μm以下である。前記保護膜は樹脂組成物の硬化物である。前記樹脂組成物はNi、Co、Zn、及びTiのうち一種以上を含む。前記樹脂組成物に対するNi、Co,Zn、及びTiの合計の割合は15重量%以上である。
本開示の一態様に係る抵抗器は、基材と、抵抗体と、保護膜と、をこの順に積層して備える。前記抵抗器は、カバー中間層を更に備える。前記カバー中間層は、前記抵抗体と前記保護膜との間に介在し、前記抵抗体と直接触れ、かつ、窒化アルミニウム層である。前記カバー中間層の厚みが、3μm以上20μm以下である。前記保護膜に、Ni、Co,Zn、及びTiの全てが含まれる。
本開示の一態様に係る抵抗器は、基材と、抵抗体と、保護膜と、をこの順に積層して備える。前記抵抗器は、カバー中間層と、一対の電極と、を更に備える。前記カバー中間層は、前記抵抗体と前記保護膜との間に介在し、前記抵抗体と直接触れ、かつ、窒化アルミニウム層である。前記一対の電極は、前記抵抗体と電気的に接続されている。前記カバー中間層の厚みが、3μm以上20μm以下である。前記保護膜に、Ni、Co、Zn、及びTiのうち一種以上が含まれる。前記一対の電極間に1Vの電圧を印加された場合に、平面視で、前記抵抗体の前記一対の電極間に位置する部分の面積に対する、前記抵抗体の電力密度が1×10 pW/μm 以上である部分の面積の比率が、30%以上である。
本開示の一態様に係る抵抗器は、基材と、抵抗体と、保護膜と、をこの順に積層して備える。前記抵抗器は、カバー中間層を更に備える。前記カバー中間層は、前記抵抗体と前記保護膜との間に介在し、前記抵抗体と直接触れ、かつ、窒化アルミニウム層である。前記カバー中間層の厚みが、3μm以上20μm以下である。前記保護膜は樹脂組成物の硬化物である。前記樹脂組成物はNi、Co、Zn、及びTiのうち一種以上を含む。前記樹脂組成物に対するNi、Co,Zn、及びTiの合計の割合は15重量%以上である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1Aは、本開示の第一実施形態の第一例に係る抵抗器の概略の平面図である。図1Bは、図1Aに示す抵抗器のZ-Z線の断面図である。
図2図2Aは、抵抗体で発生した熱が放出される様子を示す概略の断面図である。図2Bは、ベース中間層の厚みに対する抵抗体の温度下降率を示すグラフである。
図3図3Aは、本開示の第一実施形態の第二例に係る抵抗器の概略の断面図である。図3Bは、抵抗体で発生した熱が放出される様子を示す概略の断面図である。
図4図4Aは、本開示の第一実施形態の第三例に係る抵抗器の概略の断面図である。図4Bは、抵抗体で発生した熱が放出される様子を示す概略の断面図である。
図5図5Aは、本開示の第二実施形態に係る抵抗器の概略の平面図である。図5Bは、図5Aに示す抵抗器のZ-Z線の断面図である。
図6図6Aは、トリミングの形状が直線カットである場合の抵抗体を示す概略の平面図である。図6Bは、トリミングの形状がダブルカットである場合の抵抗体を示す概略の平面図である。図6Cは、トリミングの形状がLカットである場合の抵抗体を示す概略の平面図である。図6Dは、トリミングの形状がUカットである場合の抵抗体を示す概略の平面図である。
図7図7は、本開示の第二実施形態の変形例1の抵抗器を示す概略の断面図である。
図8図8Aは、抵抗器に起因するノイズを測定するための回路図である。図8B及び図8Cは、抵抗器に印加された電圧に対するノイズを示すグラフである。
図9図9Aから図9Eは、抵抗体の電力密度の分布をシミュレーションした結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
1.本開示の抵抗器の概要
本開示の第一実施形態に係る抵抗器1は、図1A及び図1Bに示すように、基材10と、抵抗体11と、保護膜12と、をこの順に積層して備える。
【0008】
また本開示の第二実施形態に係る抵抗器1も、図5A及び図5Bに示すように、基材10と、抵抗体11と、保護膜12と、をこの順に積層して備える。
【0009】
まずは、第一実施形態に係る抵抗器1及び第二実施形態に係る抵抗器1の共通の構成である基材10、抵抗体11、及び保護膜12について説明する。なお、下記の第一実施形態及び第二実施形態は、抵抗器1の構成の例であり、抵抗器1の構成は、第一実施形態及び第二実施形態に限定されない。例えば第一実施形態の抵抗器1の構成と、第二実施形態に係る抵抗器1の構成とを、適宜組み合わせても良い。
【0010】
また以下の説明では、図面に示すように、抵抗器1の厚み方向を上下方向、抵抗器1の長手方向を左右方向、抵抗器1の短手方向を前後方向と規定するが、これらの方向は抵抗器1の使用方向を規定する趣旨ではない。また、図面中の「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」を示す矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0011】
(基材について)
基材10は板状であり、基材10の平面視の形状(抵抗器1を上方から見た際の形状)は左右方向に長い矩形状である。このため、抵抗器1は、所謂、チップ型抵抗器である。なお、本明細書において平面視とは、基材10と抵抗体11とが重なる方向から見ることを意味する。
【0012】
基材10の平面視の寸法は、抵抗器1を実装する対象に応じて適宜設定されるため、特に限定されない。基材10の厚みは、例えば、0.1mm以上0.6mm以下であることが好ましい。
【0013】
基材10の材質は、例えばAl(アルミナ)である。すなわち、基材10は、例えばアルミナ基材である。基材10の材質には、Al以外の成分が含まれていていもよい。
【0014】
(抵抗体について)
抵抗体11は、基材10上にある。抵抗体11は、基材10の上面全体に形成されている。抵抗体11の材質については以下で詳細に説明するが、金属製である。抵抗体11は、例えばスパッタリング法により形成することができる。
【0015】
(保護膜について)
保護膜12は、抵抗体11上にある。保護膜12は、抵抗体11を覆っている。保護膜12によって抵抗体11を保護することができる。保護膜12の材質については以下で詳細に説明するが、樹脂組成物の硬化物である。保護膜12の平面視の形状は、左右方向に長い矩形状であるが、抵抗体11の形状に合わせて任意の形状を採用することができる。
【0016】
2.第一実施形態について
2-1.第一実施形態の概要
上記特許文献1に記載のチップ抵抗器では、電圧が印加された際に抵抗体で発生する熱を、十分に放出することができなかった。第一実施形態の抵抗器1の利点は、抵抗体で発生する熱を放出しやすいことである。
【0017】
第一実施形態に係る抵抗器1は、上述の通り、基材10と、抵抗体11と、保護膜12と、をこの順に積層して備える。抵抗器1は、ベース中間層110及びカバー中間層111のうち少なくとも一方を更に備える。ベース中間層110は、基材10と抵抗体11との間に介在し、抵抗体11と直接触れ、かつ、窒化アルミニウム層である。カバー中間層111は、抵抗体11と保護膜12との間に介在し、抵抗体11と直接触れる、かつ、窒化アルミニウム層である。
【0018】
第一実施形態に係る抵抗器1では、ベース中間層110及びカバー中間層111のうち少なくとも一方が抵抗体11と直接触れ、かつ、ベース中間層110及びカバー中間層111は窒化アルミニウム層である。窒化アルミニウムは優れた熱伝導性を有するため、抵抗体11で発生する熱を窒化アルミニウム層に放出しやすい。このため抵抗器1では、抵抗体11で発生する熱を放出しやすい。
【0019】
2-2.第一実施形態の詳細
2-2-1.第一例
以下、第一実施形態の第一例に係る抵抗器1の詳細を説明する。図1A及び図1Bに示す抵抗器1には、基材10、抵抗体11、及び保護膜12を備える。抵抗器1では、基材10、抵抗体11、保護膜12の順で積層されている。第一例の抵抗器1は、ベース中間層110を備える。抵抗器1は、中間層120及び電極13を更に備える。以下、第一例の抵抗器1の各構成を更に詳しく説明する。
【0020】
(1)基材
第一例の抵抗器1では、基材10がアルミナ製であることが好ましい。アルミナ基材である基材10と抵抗体11とが直接接していると、抵抗体11で発生した熱はアルミナ基材に放出されにくい。しかし抵抗体11の下面と後述のベース中間層110とが直接触れていることにより、抵抗体11で発生した熱をベース中間層110に放出することができる。
【0021】
(2)抵抗体
第一例の抵抗器1では、抵抗体11が、基材10の上面全体に形成されている。この場合、抵抗体11で発生した熱を、抵抗体11の下面からベース中間層110に放出することができる。第一中間層110については後述する。
【0022】
第一例の抵抗体11の材質は、例えば、Ni及びCrを含む合金(NiCr系合金)である。抵抗体11は、例えば、基材10に対してスパッタリング等を行うことで形成することができる。
【0023】
(3)電極
第一例の抵抗体11は、電極13を含む。電極13は抵抗体11と電気的に接続されている。抵抗体11と電極13とが直接触れることにより、抵抗体11と電極13とが電気的に接続されている。第一例の電極13には、上面電極130、再上面電極131、端面電極132、裏面電極133、中間電極134、及び外部電極136が含まれる。
【0024】
図1Bに示すように、上面電極130は抵抗体11上に位置している。上面電極130は、抵抗体11と直接触れている。また抵抗器1には、一対の上面電極130が含まれる。一対の上面電極130は、抵抗体11の左右方向の両端部にそれぞれ形成されている。第一例の上面電極130の平面視の形状は、矩形状であるが、円形状であってもよく、三角形状であってもよく、その他の形状であってもよい。
【0025】
上面電極130の材質は、例えば、Ni系合金である。このNi系合金の例には、NiCu合金が含まれる。上面電極130は、例えばスパッタリング法により形成することができる。具体的には、抵抗体11の上面全体を対象にスパッタリング法によってCuNi合金の膜を形成した後、この膜の不要部分をフォトリソグラフィ法、エッチング法等の方法で取り除くことにより、一対の上面電極130を形成することができる。
【0026】
再上面電極131は、上面電極130上に位置している。第一例の再上面電極131は、上面電極130と直接触れている。このため、再上面電極131は上面電極130と電気的に接続されている。一対の再上面電極131は、上面電極130と同様に、抵抗体11の左右方向の両端部にそれぞれ形成されている。
【0027】
再上面電極131の材質は、例えば、Ni系合金である。このNi系合金の例には、NiCu合金が含まれる。再上面電極131は、例えば、スパッタリング法により形成することができる。具体的には、抵抗体11及び上面電極130を対象に、スパッタリング法でNiCu合金の膜を形成し、この膜の不要部分をフォトリソグラフィ法、エッチング法等で取り除くことにより、一対の再上面電極131を形成することができる。
【0028】
一対の端面電極132は、基材10の左右方向の両端面にそれぞれ形成されている。第一例の端面電極132は、上面電極130及び再上面電極131と直接触れている。このため、端面電極132は、上面電極130及び再上面電極131と電気的に接続されている。
【0029】
端面電極132は、例えば、エポキシ樹脂及びCu系合金から形成される。このCu系合金の例には、CuNi合金が含まれる。具体的には、一対の上面電極130及び一対の再上面電極131が形成された基材10の左右方向の両端面に、エポキシ樹脂及びCu系合金からなる膜を形成した後、硬化させることによって、一対の端面電極132を形成することができる。
【0030】
裏面電極133は、基材10の下面上に位置している。第一例では、裏面電極133は、基材10の下面と直接触れている。また抵抗器1には、一対の裏面電極133が含まれる。裏面電極133は端面電極132と電気的に接続されている。このため、裏面電極133は、端面電極132を介して、上面電極130及び再上面電極131と電気的に接続されている。
【0031】
裏面電極133の材質は、例えば、Cu系合金である。このCu系合金の例には、CuNi合金が含まれる。裏面電極133は、例えばスパッタリング法により形成することができる。具体的には、基材10の下面全体を対象にスパッタリング法でCuNi合金の膜を形成し、この膜の左右方向の中央部分をフォトリソグラフィ法、エッチング法等で取り除くことにより、一対の裏面電極133を形成することができる。
【0032】
一対の中間電極134は、基材10の左右方向の両端部に形成されている。中間電極134は、再上面電極131、端面電極132、及び裏面電極133を覆っている。本実施形態では、中間電極134は、再上面電極131、端面電極132、及び裏面電極133と直接触れている。このため、中間電極134は、上面電極130、再上面電極131、端面電極132、及び裏面電極133と電気的に接続されている。中間電極134の材質は、例えばNiである。中間電極134は、例えば、Niめっきによって形成され得る。
【0033】
一対の外部電極136は、基材10の左右方向の両端部に形成されている。外部電極136は、中間電極134を覆っている。本実施形態では、外部電極136は、中間電極134と直接触れている。このため外部電極136は、中間電極134を介して、上面電極130、再上面電極131、端面電極132、及び裏面電極133と電気的に接続されている。外部電極136の材質は、例えばSnである。外部電極136は、例えば、Snめっきによって形成され得る。
【0034】
(4)保護膜
第一例の保護膜12は、上述の通り、樹脂組成物の硬化物である。保護膜12を形成するための樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含んでいてもよく、紫外線硬化性樹脂を含んでいてもよい。このため保護膜12は、樹脂組成物の塗膜を加熱硬化させる、或いは、樹脂組成物の塗膜に紫外線を照射して硬化させることによって、形成することができる。第一例では、保護膜12の平面視の形状が、左右方向に長い矩形状であるが、抵抗体11の形状に合わせて任意の形状を採用することができる。
【0035】
(5)中間層
第一例の中間層120は、抵抗体11と保護膜12との間に介在している。第一例の中間層120は、抵抗体11の上面と直接触れ、かつ、保護膜12の下面と直接触れている。
【0036】
第一例の中間層120は、金属酸化物製又は金属窒化物製であることが好ましい。この場合、抵抗体11が腐食しにくくなる。抵抗器1が中間層120を備えることにより、抵抗体11が腐食されやすい環境に晒される車載用途等に、抵抗器1を適用することができる。
【0037】
(6)ベース中間層
ベース中間層110は、上述の通り、基材10と抵抗体11との間に介在し、抵抗体11の下面と直接触れている。ベース中間層110は窒化アルミニウム層である。窒化アルミニウムは優れた熱伝導性を有することから、図2Aに示すように、抵抗体11で発生した熱を、抵抗体11の下面と直接触れているベース中間層110に放出することができる。したがって、第一例の抵抗器1は、抵抗体11で発生した熱を放出しやすい。ベース中間層110を構成する窒化アルミニウムはAlの式で示される。この式中のX及びYは正数である。
【0038】
第一例では、ベース中間層110の1/2以上が、単結晶の窒化アルミニウムで構成されていることが好ましい。この場合、ベース中間層110を容易に薄膜化することができる。ベース中間層110は、4/5以上が単結晶の窒化アルミニウムで構成されていることがより好ましく、9/10以上が単結晶の窒化アルミニウムで構成されていることが特に好ましい。なお、ベース中間層110を構成する単結晶の窒化アルミニウムの割合は、X線回折法(XRD:X‐ray diffraction)、X線ロッキングカーブ法(XRC:X-ray Rocking Curve)等によって測定することができる。
【0039】
第一例では、ベース中間層110の厚みが3μm以上20μm以下であることが好ましい。この場合、ベース中間層110を薄膜化しながら、抵抗体11で発生した熱をベース中間層110に放出しやすくすることができる。さらに、ベース中間層110の厚みは、5μm以上10μm以下であることがより好ましい。この場合、抵抗体11で発生した熱をベース中間層110により放出しやすい。図2Bは、図1A及び図1Bに示す抵抗器1に電流を流した場合に、抵抗体11で発生した熱がベース中間層110に放出されることによる、抵抗体11の温度下降率を、シミュレーションによって算出した結果を示している。抵抗体11の温度下降率は、ベース中間層110を備えないこと以外は抵抗器1と同様の構成を備える抵抗器に電流を流した場合の、抵抗体の平面視での中心部の温度を基準とした。図2Bにおいて、横軸はベース中間層110の厚みを示し、縦軸は温度下降率を示している。図2Bによれば、ベース中間層110の厚みが3μm以上20μm以下である場合には、ベース中間層110の厚みが3μm未満である場合よりも、温度下降率が大きい。すなわち、ベース中間層110の厚みが3μm以上20μm以下である場合、抵抗体11で発生した熱がベース中間層110に放出されやすい。
【0040】
第一例では、ベース中間層110がスパッタ層であることが好ましい。すなわち、ベース中間層110が、スパッタリング法によって作製されることが好ましい。この場合、ベース中間層110を単結晶の窒化アルミニウムで構成しやすい。例えばベース中間層110は、基材10上にTi及びMoで構成された電極膜を形成した後、この電極膜上に窒化アルミニウムからなる圧電膜を形成することによって、作製することができる。
【0041】
第一例では、ベース中間層110が電極13と直接触れていることが好ましい。この場合、抵抗体11からベース中間層110に放出された熱が、ベース中間層110から電極13に放出されやすい(図2A参照)。第一例では、図1Bに示すように、ベース中間層110が基材10の全面に形成されることで、基材10の左右方向の両端部に形成された一対の端面電極132とベース中間層110とが直接触れている。このため、ベース中間層110から端面電極132に熱を放出することができる。また抵抗器1が電子機器の回路に実装される場合、電極13と回路とがはんだで接続されることから、ベース中間層110から電極13に放出された熱を、はんだに放出することができる。
【0042】
2-2-2.第二例
本実施形態の第二例に係る抵抗器1を図3Aに示す。第二例の抵抗器1における、第一例の抵抗器1と同じ構成については、同じ記号を付することによって、説明を省略することがある。
【0043】
第二例の抵抗器1は、抵抗体11と保護膜12との間に介在し、窒化アルミニウム層からなるカバー中間層111を備えるが、抵抗体11と保護膜12との間に介在するベース中間層110を備えていない。
【0044】
具体的には、第二例の抵抗器1では、抵抗体11の上面とカバー中間層111とが直接触れ、抵抗体11の下面と基材10とが直接触れている。窒化アルミニウムは優れた熱伝導性を有することから、抵抗体11で発生した熱を、抵抗体11の上面と直接触れているカバー中間層111に放出することができる(図3B参照)。
【0045】
また第一例の抵抗器1では、抵抗体11と保護膜12との間に中間層120が介在しているが、第二例の抵抗器1は、中間層120に代わって、カバー中間層111を備えている。このため、カバー中間層111によって、抵抗体11を保護することができ、抵抗体11を腐食しにくくすることができる。抵抗器1がカバー中間層111を備えることにより、抵抗体11が腐食されやすい環境に晒される車載用途等に、抵抗器1を適用することができる。
【0046】
カバー中間層111は、第一例のベース中間層110と同様の構成を有することができる。このため、カバー中間層111は、1/2以上が単結晶の窒化アルミニウムで構成されていることが好ましい。またカバー中間層111は、4/5以上が単結晶の窒化アルミニウムで構成されていることがより好ましく、9/10以上が単結晶の窒化アルミニウムで構成されていることが特に好ましい。この場合、カバー中間層111を容易に薄膜化することができる。
【0047】
またカバー中間層111の厚みは、ベース中間層110と同様に、3μm以上20μm以下であることが好ましく、5μm以上10μm以下であることがより好ましい。この場合、抵抗体11で発生した熱をカバー中間層111に放出しやすく、かつ、カバー中間層111を薄膜化することができる。
【0048】
またカバー中間層111は、第一中間層110と同様に、スパッタ層であることが好ましい。すなわち、カバー中間層111が、スパッタリング法によって作製されることが好ましい。この場合、カバー中間層111を単結晶の窒化アルミニウムで構成しやすい。
【0049】
第二例では、カバー中間層111が電極13と直接触れていることが好ましい。この場合、抵抗体11からカバー中間層111に放出された熱を、カバー中間層111から電極13に放出することができる(図3B参照)。第二例では、カバー中間層111が左側の上面電極130上から右側の上面電極130上まで連続的に設けられていることにより、上面電極130とカバー中間層111とが直接触れている(図3A参照)。このため、カバー中間層111から上面電極130に熱を放出することができる。また抵抗器1が電子機器の回路に実装される場合、電極13と回路とがはんだで接続されることから、カバー中間層111から電極13に放出された熱を、はんだに放出することができる。
【0050】
2-2-3.第三例
第三例の抵抗器1を図4Aに示す。第三例の抵抗器1における、第一例に係る抵抗器1と同じ構成については、同じ記号を付することによって、説明を省略することがある。
【0051】
第三例の抗器1では、基板10と抵抗体11との間にベース中間層110が介在し、かつ、抵抗体11と保護膜12との間にカバー中間層111が介在している。
【0052】
具体的には、抵抗体11の下面とベース中間層110とが直接触れ、かつ、抵抗体11の上面とカバー中間層111とが直接触れている。すなわち抵抗体11は、ベース中間層110とカバー中間層111の間に介在している。窒化アルミニウムは優れた熱伝導性を有することから、抵抗体11で発生した熱をベース中間層110及びカバー中間層111に放出することができる(図4B参照)。
【0053】
また第三例では、ベース中間層110及びカバー中間層111は、電極13と直接触れている。このため、抵抗体11で発生してベース中間層110に放出された熱、及び抵抗体11で発生してカバー中間層111に放出された熱を、電極13に放出することができる(図4B参照)。抵抗器1が電子機器の回路に実装される場合、電極13と回路とがはんだで接続されることから、ベース中間層110から電極13に放出された熱、及びカバー中間層111から電極13に放出された熱を、はんだに放出することができる。
【0054】
第三例のベース中間層110及びカバー中間層111は、第一例の抵抗器1が備えるベース中間層110、及び第二例の抵抗器1が備えるカバー中間層111と同様の構成を有することができる。
【0055】
2-3.第一実施形態の変形例
第一実施形態の抵抗器1の構成は、第一例、第二例、及び第三例の構成に限られない。
【0056】
第一例及び第三例の抵抗器1では、基材10とベース中間層110とが直接触れているが、これに限定されない。例えば、基材10とベース中間層110との間に他の層が介在していてもよい。この他の層は樹脂製であってもよく、金属製であってもよい。
【0057】
第二例及び第三例の抵抗器1では、カバー中間層111と保護膜12とが直接触れているが、これに限定されない。例えば、カバー中間層111と保護膜12との間に他の層が介在していてもよい。この他の層は、樹脂製であってもよく、金属製であってもよい。
【0058】
第一例、第二例、及び第三例の抵抗器1では、基材10がアルミナ製であるが、これに限定されない。例えば、基材10が、樹脂製であってもよく、ガラス製であってもよく、セラミック製であってもよく、シリコン製であってもよく、窒化アルミニウム製であってもよい。
【0059】
第一例及び第三例の抵抗器1では、ベース中間層110が、スパッタリング法によって形成されたスパッタ層であるが、これに限定されない。例えば、ベース中間層110がスパッタ層以外の層であってもよい。すなわち、ベース中間層110がスパッタリング法以外の方法によって作製されてもよい。例えば窒化アルミニウム製の薄膜を基材10の上面に貼り付けることによってベース中間層110を形成してもよい。
【0060】
第二例及び第三例の抵抗器1では、カバー中間層111が、スパッタリング法によって形成されたスパッタ層であるが、これに限定されない。例えば、カバー中間層111がスパッタ層以外の層であってもよい。すなわち、カバー中間層111がスパッタリング法以外の方法によって作製されてもよい。例えば窒化アルミニウム製の薄膜を抵抗体11の上面に貼り付けることによってカバー中間層111を形成してもよい。
【0061】
3.第二実施形態について
3-1.第二実施形態の概要
音響機器のアナログ回路に特許文献2に記載の抵抗器が実装された場合に、この抵抗器にアナログ信号が流れることにより、抵抗器に起因するノイズが発生することがあった。このノイズによって、音響機器と接続されたスピーカ、イヤホン等の出力機器から発せられる音の音質が低下することがある。第二実施形態の抵抗器1の利点は、ノイズが生じにくいことである。
【0062】
第二実施形態に係る抵抗器1は、図5Bに示すように、基材10と、基材10上に位置する抵抗体11と、抵抗体11上に位置する保護膜12とを備える。保護膜12には、Ni、Co、Zn、及びTiのうち少なくとも一種が含まれる。
【0063】
第二実施形態に係る抵抗器1では、保護膜12にNi、Co、Zn、及びTiのうち一種以上が含まれることにより、抵抗器1にアナログ信号が流れても、抵抗器1に起因するノイズが生じにくい。このため、音響機器が備えるアナログ回路に抵抗器1が実装をされることにより、この音響機器と接続されたスピーカ、イヤホン等の出力機器から発せられる音の音質が良くなる。
【0064】
3-2.第二実施形態の詳細
以下、第二実施形態に係る抵抗器1の詳細を説明する。図5A及び図5Bに示す抵抗器1には、基材10、抵抗体11、及び保護膜12が含まれ、基材10、抵抗体11、保護膜12の順に積層されている。第二実施形態の抵抗器1は、更に電極13を含む。以下、抵抗器1の各構成を更に詳しく説明する。
【0065】
(1)基材
本実施形態の基材10の材質は、例えばAl(アルミナ)であり、基材10の材質は、例えば99重量%以上がAlであることが好ましい。
【0066】
(2)抵抗体
本実施形態の抵抗体11は、一部トリミングされている。そのため抵抗体11は、トリミングされている部分を除いて、基材10の上面全体に形成されている。本実施形態では、抵抗体11が基材10と直接触れている。本実施形態の抵抗体11は膜状である。
【0067】
抵抗体11の電気抵抗値(以下、単に抵抗値ともいう)は、抵抗体11の厚み、抵抗体11の材質、及び抵抗体11のトリミング量などによって定まる。
【0068】
本実施形態では、抵抗体11の厚みが、500nm以上であることが好ましい。この場合、抵抗器1に起因するノイズを生じにくくすることができる。
【0069】
抵抗体11の材質は、抵抗体11の抵抗値が比較的小さい場合(例えば抵抗値が10Ω以上47Ω未満の場合)には、例えば、Ni、Cr及びAlを含む合金(NiCrAl合金)である。また抵抗体11の材質は、抵抗体11の抵抗値が比較的大きい場合(例えば抵抗値が47Ω以上20kΩ未満の場合)には、例えば、Ni、Cr、Al及びSiを含む合金(NiCrAlSi合金)である。抵抗体11は、例えば、スパッタリング法により形成することができる。
【0070】
抵抗体11のトリミングは、抵抗体11にYAGレーザ等のレーザを照射して、レーザが照射された部分を取り除くことによって行われる。抵抗体11のトリミング量については後述する。
【0071】
(3)電極
電極13は、一対の上面電極130、一対の再上面電極131、一対の端面電極132、一対の裏面電極133、一対の第一中間電極134、一対の第二中間電極135、及び一対の外部電極136を含む。
【0072】
(i)上面電極
図5Bに示すように、上面電極130は抵抗体11上に位置している。本実施形態の上面電極130は、抵抗体11と直接触れている。また抵抗器1には、一対の上面電極130が含まれる。一対の上面電極130は、抵抗体11の左右方向の両端部にそれぞれ形成されている。上面電極130の平面視の形状は、図5Bに示すように、矩形状であるが、円形状であってもよく、三角形状であってもよく、その他の形状であってもよい。
【0073】
上面電極130の材質は、例えば、Cu系合金である。このCu系合金の例には、CuNi合金が含まれる。上面電極130は、例えばスパッタリング法により形成することができる。
【0074】
具体的には、抵抗体11の上面全体を対象にスパッタリング法によってCuNi合金の膜を形成した後、この膜の不要部分をフォトリソグラフィ法、エッチング法等の方法で取り除くことにより、一対の上面電極130を形成することができる。
【0075】
(ii)再上面電極
図5Bに示すように、再上面電極131は、上面電極130上に位置している。本実施形態の再上面電極131は、上面電極130と直接触れている。このため、再上面電極131は上面電極130と電気的に接続されている。一対の再上面電極131は、上面電極130と同様に、抵抗体11の左右方向の両端部にそれぞれ形成されている。
【0076】
再上面電極131の材質は、例えば、Cu系合金又はCrである。このCu系合金の例には、CuNi合金が含まれる。再上面電極131は、例えば、スパッタリング法により形成することができる。
【0077】
具体的には、抵抗体11及び上面電極130を対象に、スパッタリング法でCuNi合金又はCrの膜を形成し、この膜の不要部分をフォトリソグラフィ法、エッチング法等で取り除くことにより、一対の再上面電極131を形成することができる。
【0078】
(iii)端面電極
本実施形態の抵抗器1には、一対の端面電極132が含まれる。一対の端面電極132は、基材10の左右方向の両端面にそれぞれ形成されている(図5B参照)。本実施形態の端面電極132は、上面電極130及び再上面電極131と直接触れている。このため、端面電極132は、上面電極130及び再上面電極131と電気的に接続されている。
【0079】
端面電極132の材質は、例えば、Cr又はCu系合金である。このCu系合金の例には、CuNi合金が含まれる。端面電極132は、例えばスパッタリング法により形成することができる。
【0080】
具体的には、一対の上面電極130及び一対の再上面電極131が形成された基材10の左右方向の両端面を対象にして、スパッタリング法でCr又はCuNi合金の膜を形成することで、一対の端面電極132を形成することができる。
【0081】
(iv)裏面電極
図5Bに示すように、裏面電極133は、基材10の下面上に位置している。本実施形態では、裏面電極133は、基材10の下面と直接触れている。また抵抗器1には、一対の裏面電極133が含まれる。裏面電極133は端面電極132と電気的に接続されている。このため、裏面電極133は、端面電極132を介して、上面電極130及び再上面電極131と電気的に接続されている。
【0082】
裏面電極133の材質は、例えば、Cu系合金である。このCu系合金の例には、CuNi合金が含まれる。裏面電極133は、例えばスパッタリング法により形成することができる。具体的には、基材10の下面全体を対象にスパッタリング法でCuNi合金の膜を形成し、この膜の左右方向の中央部分をフォトリソグラフィ法、エッチング法等で取り除くことにより、一対の裏面電極133を形成することができる。
【0083】
また裏面電極133の材質が、Agを含有させたエポキシ樹脂製であってもよい。この場合、Agを含有させたエポキシ樹脂の塗膜を硬化させることにより、裏面電極133を形成することができる。
【0084】
(v)第一中間電極
本実施形態の抵抗器1には、一対の第一中間電極134が含まれる。一対の第一中間電極134は、基材10の左右方向の両端部に形成されている(図5B参照)。第一中間電極134は、再上面電極131、端面電極132、及び裏面電極133を覆っている。本実施形態では、第一中間電極134は、再上面電極131、端面電極132、及び裏面電極133と直接触れている。このため、第一中間電極134は、上面電極130、再上面電極131、端面電極132、裏面電極133と電気的に接続されている。第一中間電極134の材質は、例えばCuである。第一中間電極134は、例えば、Cuめっきによって形成され得る。
【0085】
(vi)第二中間電極
本実施形態の抵抗器1には、一対の第二中間電極135が含まれる。一対の第二中間電極135は、基材10の左右方向の両端部に形成されている(図5B参照)。第二中間電極135は、第一中間電極134を覆っている。本実施形態では、第二中間電極135は、第一中間電極134と直接触れている。このため、第二中間電極135は、第一中間電極134を介して、上面電極130、再上面電極131、端面電極132、及び裏面電極133と電気的に接続されている。第二中間電極135の材質は、例えばNiである。第二中間電極135は、例えば、Niめっきによって形成され得る。
【0086】
(vii)外部電極
本実施形態の抵抗器1には、一対の外部電極136が含まれる。一対の外部電極136は、基材10の左右方向の両端部に形成されている(図5A及び図5B参照)。外部電極136は、第二中間電極135を覆っている。本実施形態では、外部電極136は、第二中間電極135と直接触れている。このため外部電極136は、第一中間電極134及び第二中間電極135を介して、上面電極130、再上面電極131、端面電極132、及び裏面電極133と電気的に接続されている。外部電極136の材質は、例えばSnである。外部電極136は、例えば、Snめっきによって形成され得る。
【0087】
(4)保護膜
本実施形態では、保護膜12によって抵抗体11を保護することができ、抵抗体11の酸化を抑制することができる。本実施形態では、保護膜12上に、再上面電極131、第一中間電極134、第二中間電極135、及び外部電極136の一部が重ねられている。このため本実施形態の保護膜12は、上面電極130を形成した後に形成され、また再上面電極131は、保護膜12が形成された後に形成される。
【0088】
本実施形態の保護膜12は、樹脂組成物の硬化物である。保護膜12を作製するための樹脂組成物には、樹脂成分、溶剤、体質顔料、及び低ノイズ成分などが含まれる。
【0089】
樹脂成分は、熱硬化性樹脂を含んでいてもよく、紫外線硬化性樹脂を含んでいてもよい。樹脂成分が熱硬化性樹脂を含む場合には、樹脂組成物の塗膜を加熱して硬化させることによって保護膜12を形成することができる。また樹脂成分が紫外線硬化性樹脂を含む場合には、樹脂組成物の塗膜に紫外線を照射して硬化させることによって保護膜12を形成することができる。樹脂成分の例には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂、トリアジン樹脂等が含まれる。樹脂成分は、これらの樹脂のうち一種以上を含有することができる。樹脂成分は、例えば、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂を含有することができる。また樹脂成分は、例えば、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、及びトリアジン樹脂を含有することもできる。樹脂組成物全量に対する樹脂成分の割合は、30重量%以上50重量%以上であることが好ましく、35重量%以上45重量%以下であることがより好ましい。
【0090】
溶剤の例には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、キシレン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、1-(2-メトキシ-2-メチルエトキシ)-2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が含まれる。本実施形態では、樹脂組成物全量に対する溶剤の割合は、15重量%以上35重量%以上であることが好ましく、20重量%以上30重量%以下であることが好ましい。
【0091】
体質顔料の例には、二酸化ケイ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が含まれる。体質顔料は、これらの成分のうち一種以上を含有することができる。樹脂組成物全量に対する体質顔料の割合は、10重量%以上25%以下であることが好ましい。
【0092】
樹脂組成物に低ノイズ成分が含まれることにより、すなわち保護膜12の低ノイズ成分が含まれることで、抵抗器1に起因するノイズが生じにくくなる。これは、保護膜12に低ノイズ成分が含まれることで、抵抗器1に起因する電気ノイズが小さくなるためと推定される。低ノイズ成分は、Ni、Co、Zn、Tiのうち一種以上が含まれる。このため、樹脂組成物はNi、Co、Zn、及びTiのうち一種以上を含み、樹脂組成物から形成される保護膜12にも、Ni、Co、Zn、及びTiのうち一種以上が含まれる。本実施形態では、保護膜12に、Ni、Co、Zn、及びTiのうち全てが含まれることが好ましい。この場合、抵抗器1に起因するノイズが特に生じにくくなる。このため、低ノイズ成分には、Ni、Co、Zn、及びTiのうち全てが含まれることが好ましい。
【0093】
低ノイズ成分には、金属Ni、金属Co、金属Zn、及び金属Tiのうち一種以上が含まれていてもよく、Ni、Co、Zn、及びTiのうち一種以上の成分の酸化物が含まれていてもよく、これらの両方が含まれていてもよい。低ノイズ成分には、Ni酸化物、Co酸化物、及びZn酸化物うち一種以上が含まれていてもよく、Ni、Co、Zn、及びTiうち二種以上の成分の複合酸化物が含まれていてもよい。特に低ノイズ成分には、Ni,Co,Zn、及びTiの全てを含む複合酸化物が含まれることが好ましい。この場合、抵抗器1に起因するノイズが特に生じにくくなる。
【0094】
樹脂組成物に対する低ノイズ成分の割合は、15重量%以上であることが好ましい。すなわち樹脂組成物に対するNi、Co、Zn、及びTiの合計の割合は15重量%以上であることが好ましい。この場合、抵抗器1に起因するノイズが生じにくくなりやすい。樹脂組成物に対する低ノイズ成分の割合は、27重量%以下であることが好ましい。この場合、樹脂組成物を塗布しやすく、保護膜12を作製しやすい。なお、低ノイズ成分にNi、Co、Zn、及びTiのうち一種以上の酸化物が含まれる場合、樹脂組成物に対する低ノイズ成分の割合は、樹脂組成物中のNi元素、Co元素、Zn元素、及びTi元素の合計の含有率に換算して計算される。また低ノイズ成分として、金属Ni、金属Co等が含まれる場合、樹脂組成物に対する金属Niの割合は2.5重量%以上4.5重量%以下であることが好ましい。また樹脂組成物に対する金属Coの割合は0.5重量%以上2.5重量%以下であることが好ましい。この場合、抵抗器1に起因するノイズが生じにくくなりやすい。
【0095】
樹脂組成物には、樹脂成分、溶剤、体質顔料、及び低ノイズ成分以外の成分が含まれていてもよい。例えば樹脂組成物には、添加剤、不可避的な不純物が含まれていてもよい。
【0096】
本実施形態の保護膜12は、例えば、抵抗体11及び上面電極130の上面全体に、上述の樹脂組成物を塗布して硬化させて膜を形成した後、この膜の不要部分をフォトリソグラフィ法、エッチング法等で取り除くことにより、保護膜12を形成することができる。この場合の保護膜12は、抵抗体11と直接触れている。抵抗体11と保護膜12とが直接触れている場合、抵抗器1に起因するノイズが特に生じにくくなる。また上述の樹脂組成物から形成される保護膜12の厚みは、650μm以上であることが好ましく、680μm以上であることがより好ましい。また保護膜12の厚みは、800μm以下であることが好ましく、750μm以下であることがより好ましい。この場合、抵抗器1に起因するノイズを効果的に生じにくくすることができる。
【0097】
(5)抵抗体のトリミングについて
抵抗体11の一部を取り除くこと(トリミング)により、抵抗体11の抵抗値を調整することができる。抵抗体11のトリミングは、例えば、抵抗体11に対して、YAGレーザ等のレーザーを照射して、照射された部分を取り除くことで行うことができる。本実施形態では、抵抗体11のトリミングは、一対の電極13(上面電極130)が並ぶ方向と直行する方向に沿って行うことが好ましい。
【0098】
抵抗体11のトリミングは、一箇所のみ行ってもよく、複数箇所行ってもよい。本実施形態の抵抗体11は、図5Bに示すように、複数箇所トリミングされている。本実施形態の抵抗体11は、図5Bに示すように、前端から後端に向かって後端に達しないようにトリミングされ、かつ、後端から前端に向かって前端に達しないようにトリミングされている。図5Bに示すようなトリミングの形状は、サーペンタインカットともいう。
【0099】
本実施形態では、抵抗体11のトリミング率が二分の一以下であることが好ましい。この場合、抵抗体11に電圧が印加された際の、電力密度が高くなる部分の割合を大きくすることができる。抵抗体11は、一対の電極13間に1Vの電圧を印加した場合に、平面視で、抵抗体11の一対の電極13間に位置する部分の面積に対する、抵抗体11の電力密度が1×10pW/μm以上である部分の面積の比率が、30%以上であることが好ましい。これにより、音響機器が備えるアナログ回路に抵抗器1を実装した場合に、この音響機器と接続されたイヤホン、スピーカ等の出力機器から発せられる音の音質がよくなる。これは、抵抗体11のトリミング率を二分の一以下にすることで、抵抗器1に起因する熱ノイズが小さくなるためと推定される。なお、本実施形態における抵抗体11のトリミング率とは、抵抗体11の一対の電極13が並ぶ方向と直行する方向の長さに対する、トリミングされた部分の一対の電極13が並ぶ方向と直行する方向の長さの割合を示す。例えば、図5Bに示すようにトリミングの形状がサーペンタインカットである場合、抵抗体11のトリミング率は、図5Bに示す長さXに対する、長さYの割合を意味する。また抵抗体11の複数個所に異なる長さでトリミングが施されている場合には、最も長くトリミングが施されている箇所に基づいてトリミング率を規定することができる。
【0100】
(6)音響機器について
本実施形態の抵抗器1は、音響機器のアナログ回路に実装される。抵抗器1は、例えば音響機器が備えるデジタルアナログコンバータ(DAC:digital to analog converter)のアナログ回路に実装される。アナログ回路としては、例えば、フィードバック回路、電流制御回路、増幅回路等が挙げられる。例えば本実施形態の抵抗器1をDACのアナログ回路に実装する場合には、DACに入力されたデジタル信号をアナログ信号に変換して出力する回路における出力端の部分に実装することができる。
【0101】
3-3.第二実施形態の変形例
第二実施形態の抵抗器1の構成は、上述の構成に限定されない。
【0102】
上述の第二実施形態の抵抗器1では、抵抗体11のトリミングの形状は、図5Bに示すようにサーペンタインカットであるが、これに限定されない。例えば、抵抗体11のトリミングの形状が、図6Aに示すような直線カットでもよく、図6Bに示すようなダブルカットでもよく、図6Cに示すようなLカットでもよく、図6Dに示すようなUカットでもよい。
【0103】
上述の第二実施形態の抵抗器1では、抵抗体11と保護膜12とが直接触れているがこれに限定されない。例えば、図7に示す変形例1の抵抗体1のように、抵抗体11と保護膜12とが直接触れずに、抵抗体11と保護膜12とが中間層14を介して間接的に触れていてもよい。すなわち抵抗体11と保護膜12との間に中間層14が介在していてもよい。中間層14は、例えば、金属酸化物合金製の無機保護膜である。この中間層14によって抵抗体11の酸化を抑制することができる。
【0104】
上述の第二実施形態の抵抗器1では、電極13に再上面電極131が含まれるが、抵抗器1が再上面電極131を備えていなくてもよい。すなわち、上面電極130と第一中間電極134が直接触れていてもよい。
【0105】
上述の第二実施形態の抵抗器1では、基材10が平面視矩形状であり、抵抗器1がチップ抵抗器であるが、これに限定されない。例えば、基材10が円筒状であってもよい。すなわち抵抗器1が円筒状であってもよい。この場合、抵抗器1は、基材10と、抵抗体11と、保護膜12とを備える。また抵抗器1は、上面電極130、再上面電極131、端面電極132、裏面電極133、第一中間電極134、第二中間電極135、外部電極136を備えず、抵抗体11と電気的に接続された一対の電極を備えていてもよい。
【0106】
3-4.第二実施形態の実施例
以下、第二実施形態の実施例及び比較例について説明する。
【0107】
(実施例1)
図5A及び図5Bに示す抵抗器1と同様の構造を備え、抵抗値が22Ωである実施例1の抵抗器を作製した。実施例1の抵抗器の保護膜を形成する際に使用した樹脂組成物には、低ノイズ成分として、Ni、Co、Zn、Tiのうち全てが含まれている。このため、実施例1の抵抗器の保護膜には、Ni、Co、Zn、Tiのうち全てが含まれている。
【0108】
(比較例1)
図5A及び図5Bに示す抵抗器1と同様の構造を備え、抵抗値が22Ωである比較例1の抵抗器を作製した。比較例1の抵抗器の保護膜を形成する際に使用した樹脂組成物には、Ni、Co、Zn、及びTiが含まれておらず、カーボンブラックが含まれている。このため、比較例1の抵抗器の保護膜には、Ni、Co、Zn、及びTiが含まれず、カーボンブラックが含まれている。
【0109】
(抵抗器に起因するノイズの測定)
実施例1及び比較例1の抵抗器に起因するノイズを測定した。
【0110】
図8Aは、抵抗器に起因するノイズを測定するための回路を示す回路図である。図8Aに示す回路には、ノイズ測定器20及び抵抗器1が含まれる。ノイズ測定器20は、出力部21、入力部22、発振器23、検出部24、及び判定部25を含む。出力部21は、抵抗器1が備える一対の外部電極136(図5A参照)のうち一方と同軸ケーブルで接続されている。また入力部22は、抵抗器1が備える一対の外部電極136(図5A参照)のうち一方と、同軸ケーブルで接続されている。このため、出力部21と抵抗器1とは電気的に接続され、入力部22と抵抗器1とは電気的に接続されており、抵抗器1に電流が流れる。発振器23は、出力部21と電気的に接続され、出力部21から正弦波を送信することができる。このため、出力部21から送信された正弦波は、抵抗器1を流れて、入力部22で受信される。検出部24は、入力部22と電気的に接続され、入力部22で受信した正弦波を検出することができる。判定部25は、発振器23及び検出部24と電気的に接続されている。判定部25は、発振器23から送信した正弦波と、検出部24で検出された正弦波とを比較して、抵抗器1に起因するノイズを測定することができる。
【0111】
図8B及び図8Cは、実施例1及び比較例1の抵抗器1に印加された電圧に対するノイズを示すグラフである。図8Bは、正弦波の周波数が100Hz(低周波帯)である場合を示している。図8Cは、正弦波の周波数が20kHz(高周波帯)である場合を示している。図8B及び図8Cに示すグラフにおいて、抵抗器1に印加された電圧を示し、縦軸は抵抗器に起因するノイズの値を示す。図8B及び図8Cのグラフにおいて、実線は実施例1の抵抗器1を示し、破線は比較例1の抵抗器を示す。
【0112】
図8Bによると、保護膜にNi、Co、Zn、Tiのうち全てが含まれる実施例1の方が、保護膜12にカーボンブラックが含まれる比較例1よりも、抵抗器1に起因するノイズが生じにくい傾向がある。特に抵抗器1に印加された電圧が0.2V以上である場合に、実施例1の方が比較例1よりも、抵抗器1に起因するノイズが小さい。また図8Cによると、保護膜にNi、Co、Zn、Tiのうち全てが含まれる実施例1の方が、保護膜にカーボンブラックが含まれる比較例1よりも、抵抗器1に起因するノイズが生じにくい傾向がある。特に抵抗器1に印加された電圧が0.05V以上である場合に、実施例1の方が比較例1よりも、抵抗器に起因するノイズが小さい。
【0113】
(実施例2から実施例6)
抵抗体11のトリミング量を、以下の表1のようにしたこと以外は、実施例1と同様の構成を備える、実施例2から実施例6の抵抗器を作製した。
【0114】
【表1】
【0115】
(電力密度の分布)
図9Aから図9Eは、実施例2から実施例6の抵抗器1の電力密度の分布のシミュレーション結果を示している。抵抗器1において、抵抗体11の平面視の寸法は1.0mm×0.5mmであった。また一対の電極13間に印加された電圧は1Vであった。図9Aから図9Eにおいて、電力密度が1×10pW/um以上である部分は、コントラストを高くしている。
【0116】
図9Aから図9Eに示すように、平面視で、抵抗体11の一対の電極13間に位置する部分の面積に対する、抵抗体11の電力密度が1×10pW/um以上である部分の面積の比率が、実施例5、6の抵抗器1よりも実施例2から4の抵抗器1の方が大きい。これは、実施例2から4の抵抗器1のトリミング率が50%以下であり、実施例5、6の抵抗器1のトリミング率が50%よりも大きいためである。
【0117】
4.まとめ
第一の態様に係る抵抗器(1)は、基材(10)と、抵抗体(11)と、保護膜(12)と、をこの順に積層して備える。
【0118】
第二の態様に係る抵抗器(1)は、第一の態様において、ベース中間層(110)及びカバー中間層(111)のうち少なくとも一方を更に備える。ベース中間層(110)は、基材(10)と抵抗体(11)との間に介在し、抵抗体(11)と直接触れ、かつ、窒化アルミニウム層である。カバー中間層(111)は、抵抗体(11)と保護膜(12)との間に介在し、抵抗体(11)と直接触れ、かつ、窒化アルミニウム層である。
【0119】
この構成によれば、ベース中間層(110)及びカバー中間層(111)のうち少なくとも一方を通じて、抵抗体(11)で発生する熱を放出することができる。このため抵抗器(1)では、抵抗体(11)で発生する熱を放出しやすい。
【0120】
第三の態様に係る抵抗器(1)は、第一又は第二の態様において、基材(10)がアルミナ製である。
【0121】
この構成によれば、抵抗体(11)の下面とベース中間層(110)とが接していることで、抵抗体(11)で発生した熱をベース中間層(110)に放出することができ、基材(10)がアルミナ製であっても、抵抗体(11)で発生した熱を放出しやすい。
【0122】
第四の態様に係る抵抗器(1)は、第一~第三のいずれか一の態様において、ベース中間層(110)を備える。
【0123】
この構成によれば、抵抗体(11)で発生した熱を、抵抗体(11)の下面と直接触れているベース中間層(110)に放出することができる。
【0124】
第五の態様に係る抵抗器(1)は、第四の態様において、抵抗体(11)と電気的に接続されている電極(13)を更に備える。ベース中間層(110)は、電極(13)と直接触れている。
【0125】
この構成によれば、ベース中間層(110)に放出された熱を電極(13)に放出することができる。抵抗器(1)が電子機器の回路に実装される場合、電極(13)と回路とがはんだで接続されることから、ベース中間層(110)から電極(13)に放出された熱をはんだに放出することができる。
【0126】
第六の態様に係る抵抗器(1)は、第四又は第五の態様において、ベース中間層(110)の1/2以上が、単結晶の窒化アルミニウムで構成されている。
【0127】
この構成によれば、ベース中間層(110)の厚みを小さくすることができ、抵抗器(1)の厚みを小さくすることができる。
【0128】
第七の態様に係る抵抗器(1)は、第四~第六のいずれか一の態様において、ベース中間層(110)の厚みが3μm以上20μm以下である。
【0129】
この構成によれば、抵抗体(11)で発生した熱をベース中間層(110)に放出しやすく、かつ、ベース中間層(110)を薄膜化しやすい。
【0130】
第八の態様に係る抵抗器(1)は、第四~第七のいずれか一の態様において、ベース中間層(110)がスパッタ層である。
【0131】
この構成によれば、ベース中間層(110)を単結晶の窒化アルミニウムで構成しやすく、かつ、ベース中間層(110)の厚みを小さくしやすい。
【0132】
第九の態様に係る抵抗器(1)は、第二~第八のいずれか一の態様において、カバー中間層(111)を備える。
【0133】
この構成によれば、抵抗体(11)で発生した熱を、抵抗体(11)の上面と直接触れているカバー中間層(111)に放出することができる。
【0134】
第十の態様に係る抵抗器(1)は、第九の態様において、抵抗体(11)と電気的に接続されている電極(13)を更に備える。カバー中間層(111)は、電極(13)と直接触れている。
【0135】
この構成によれば、カバー中間層(111)に放出された熱を電極(13)に放出することができる。抵抗器(1)が電子機器の回路に実装される場合、電極(13)と回路とがはんだで接続されることから、カバー中間層(111)から電極(13)に放出された熱をはんだに放出することができる。
【0136】
第十一の態様に係る抵抗器(1)は、第九又は第十の態様において、カバー中間層(111)の1/2以上が、単結晶の窒化アルミニウムで構成されている。
【0137】
この構成によれば、カバー中間層(111)の厚みを小さくすることができ、抵抗器(1)の厚みを小さくすることができる。
【0138】
第十二の態様に係る抵抗器(1)は、第九から第十一のいずれか一の態様において、カバー中間層(111)の厚みが3μm以上20μm以下である。
【0139】
この構成によれば、抵抗体(11)で発生した熱をカバー中間層(111)に放出しやすく、かつ、カバー中間層(111)を薄膜化することができる。
【0140】
第十三の態様に係る抵抗器(1)は、第九から第十二のいずれか一の態様において、カバー中間層(111)がスパッタ層である。
【0141】
この構成によれば、カバー中間層(111)を単結晶の窒化アルミニウムで構成しやすく、かつ、カバー中間層(111)の厚みを小さくしやすい。
【0142】
第十四の態様に係る抵抗器(1)は、第一~第十三のいずれか一の態様において、保護膜12に、Ni、Co、Zn、及びTiのうち一種以上が含まれる。
【0143】
この構成によれば、抵抗器(1)に起因するノイズが生じにくくなる。これにより、音響機器が備えるアナログ回路に抵抗器(1)を実装した場合に、この音響機器と接続されたスピーカ、イヤホン等の出力機器から発せられる音の音質が良くなる。
【0144】
第十五態様に係る抵抗器(1)は、第一~第十四のいずれか一の態様において、保護膜(12)に、Ni、Co,Zn、及びTiの全てが含まれる。
【0145】
この構成によれば、抵抗器(1)に起因するノイズが特に生じにくくなる。
【0146】
第十六の態様に係る抵抗器(1)は、第一~第十五のいずれか一の態様において、抵抗体(11)のトリミング率が二分の一以下である。
【0147】
この構成によれば、抵抗体(11)に電圧が印加された際の、電力密度が高くなる部分の割合を大きくすることができる。
【0148】
第十七の態様に係る抵抗器(1)は、第一~第十六のいずれか一の態様において、抵抗体(11)と電気的に接続された一対の電極(13、13)更に備える。抵抗器(1)では、一対の電極(13、13)間に1Vの電圧が印加された場合に、平面視で、抵抗体(11)の一対の電極(13)間に位置する部分の面積に対する、抵抗体(11)の電力密度が1×10pW/μm以上である部分の面積の比率が、30%以上である。
【0149】
この構成によれば、音響機器が備えるアナログ回路に抵抗器(1)を実装した場合に、この音響機器と接続されたスピーカ、イヤホン等の出力機器から発せられる音の音質が良くなる。
【0150】
第十八の態様に係る抵抗器(1)は、第一~第十七のいずれか一の態様において、抵抗体(11)と保護膜(12)とが直接触れている。
【0151】
この構成によれば、抵抗器(1)に起因するノイズが特に生じにくくなる。
【0152】
第十九の態様に係る抵抗器(1)は、第一~第十八のいずれか一の態様において、保護膜(12)は樹脂組成物の硬化物である。この樹脂組成物はNi、Co、Zn、及びTiのうち一種以上を含み、この樹脂組成物に対するNi、Co,Zn、及びTiの合計の割合は15重量%以上である。
【0153】
この構成によれば、抵抗器(1)に起因するノイズが特に生じにくい。
【0154】
第二十の態様に係る抵抗器(1)は、第一~第十九のいずれか一の態様において、音響機器に用いられ、この音響機器が備えるアナログ回路に実装される。
【0155】
この構成によれば、抵抗器(1)に起因するノイズが生じにくいため、音響機器が備えるアナログ回路に抵抗器(1)を実装した場合に、この音響機器と接続されたスピーカ、イヤホン等の出力機器から発せられる音の音質が良くなる。
【符号の説明】
【0156】
1 抵抗器
10 基材
11 抵抗体
110 ベース中間層
111 カバー中間層
12 保護膜
13 電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9