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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】木質積層板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27D 3/00 20060101AFI20231222BHJP
   B32B 21/14 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
B27D3/00 Z
B32B21/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021561172
(86)(22)【出願日】2020-09-08
(86)【国際出願番号】 JP2020033877
(87)【国際公開番号】W WO2021106308
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2019216864
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】田村 俊樹
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-124801(JP,A)
【文献】特開2018-051837(JP,A)
【文献】特開2003-205503(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02944461(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27D 3/00
B32B 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖類を含む植物から糖類含有単板を製造する単板製造工程と、
前記糖類含有単板に多価カルボン酸を供給して触媒含有単板を得る触媒供給工程と、
材の両面又は片面に前記芯材の含水率よりも含水率が高い前記触媒含有単板を重ね、熱圧処理を行って前記触媒含有単板と前記芯材とを接着する接着工程と、を含み、
前記糖類含有単板が、前記芯材よりも圧縮されやすい、
木質積層板の製造方法。
【請求項2】
前記芯材が、前記糖類含有単板を複数含み、
前記複数の糖類含有単板に多価カルボン酸又は接着剤が供給されている、
請求項1に記載の木質積層板の製造方法。
【請求項3】
前記芯材が、単板を複数含み、
前記複数の単板に接着剤が供給されている、
請求項1に記載の木質積層板の製造方法。
【請求項4】
前記芯材が、板材を含み、
前記板材は、合板及び/又は単板積層材を含む、
請求項1に記載の木質積層板の製造方法。
【請求項5】
前記触媒含有単板が重ねられる前記芯材の面が研磨されている、
請求項1~のいずれか1項に記載の木質積層板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に木質積層板の製造方法に関し、より詳細には糖類を含む植物を用いた木質積層板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複合圧密合板が開示されている。複合圧密合板は、内部積層材と、外表面材とを積層して圧密化されている。内部積層材は、オイルパーム材から形成した複数の単板を積層したものである。外表面材は、オイルパーム材以外の樹種から形成した他の単板である。外表面材は、内部積層材の最外層の外表面のうち少なくとも一方の面に積層されている。これにより、表面品位に優れた複合圧密合板が得られる旨が特許文献1に開示されている。
【0003】
一方、特許文献2には、積層板が開示されている。積層板は、複合板の表面に表面板が積層接着されて形成されている。複合板は、天然木材からなる単板を貼着して形成されている。表面板は、針葉樹材より得られる木質繊維板又は木削片板からなる。これにより、積層板は、建築物の内装や家具等における表面材又は化粧材として好適に用いられる旨が特許文献2に開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の複合圧密合板、及び特許文献2に記載の積層板には、化粧用単板として針葉樹又は広葉樹が使用されているが、近年、針葉樹及び広葉樹は、世界的規模で減少する傾向にある。そのため、現在では、針葉樹及び広葉樹を使用せずに木質積層板を製造することが検討されている。
【0005】
しかしながら、例えば、特許文献1において、針葉樹及び広葉樹以外の樹種から外表面材を形成した場合には、複合圧密合板の表面品位が低下するおそれがあり、更には耐水性にも改良の余地があり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-122461号公報
【文献】実開平5-076702号公報
【発明の概要】
【0007】
本開示の目的は、表層に針葉樹及び広葉樹の単板を用いなくても耐水性が優れる木質積層板を製造することができる木質積層板の製造方法を提供することにある。
【0008】
本開示の一態様に係る木質積層板の製造方法は、単板製造工程と、触媒供給工程と、接着工程と、を含む。前記単板製造工程では、糖類を含む植物から糖類含有単板を製造する。前記触媒供給工程では、前記糖類含有単板に多価カルボン酸を供給して触媒含有単板を得る。前記接着工程では、前記触媒含有単板を芯材の両面又は片面に重ね、熱圧処理を行って前記触媒含有単板と前記芯材とを接着する。前記糖類含有単板が、前記芯材よりも圧縮されやすい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1A及び図1Bは、第1実施形態に係る木質積層板の製造方法を示す概略断面図である。
図2図2A図2Cは、第2実施形態に係る木質積層板の製造方法を示す概略断面図である。
図3図3A及び図3Bは、第3実施形態に係る木質積層板の製造方法を示す概略断面図である。
図4図4A図4Cは、第4実施形態に係る木質積層板の製造方法を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)概要
近年、化粧用単板として使用可能な針葉樹及び広葉樹が減少している。本実施形態では、美観に優れた針葉樹及び広葉樹に代替し得る化粧用単板を備えた木質積層板1を提供する。
【0011】
本実施形態に係る木質積層板1の製造方法は、単板製造工程と、触媒供給工程と、接着工程と、を含む。単板製造工程では、糖類を含む植物から糖類含有単板4を製造する。触媒供給工程では、糖類含有単板4に多価カルボン酸を供給して触媒含有単板7を得る。接着工程では、触媒含有単板7を芯材3の両面又は片面に重ね、熱圧処理を行って触媒含有単板7と芯材3とを接着する(図1A及び図1B参照)。
【0012】
上記のようにして、図1Bに示すような木質積層板1が得られる。糖類含有単板4は、触媒含有単板7を経て表層70となる。芯材3は、芯層30となる。上記のように、糖類含有単板4は、最終的に木質積層板1の表層70を形成する。
【0013】
本実施形態の特徴の1つは、糖類含有単板4が、芯材3よりも圧縮されやすい点である。糖類含有単板4は、触媒含有単板7となっても、芯材3よりも圧縮されやすい。接着工程において、熱圧処理を行う際、触媒含有単板7は、熱圧プレスの加熱板(熱盤)と芯材3との間に位置する。触媒含有単板7は、芯材3よりも圧縮されやすいので、熱圧処理を行うと、触媒含有単板7に集中的に圧力が加えられる。これにより、触媒含有単板7が高度に圧密化され、水分を浸透させにくくなる。そのため、木質積層板1においては、表面に位置する表層70から、内部に位置する芯層30への水分の浸入を抑制することができる。また表層70が高度に圧密化されていることで、木質積層板1の表面硬さを向上させることもできる。さらに木質積層板1の表面のきめが細かくなり、美観も向上し得る。なお、熱圧処理時には、芯材3も圧密化されるが、その程度は、触媒含有単板7に比べて低い。
【0014】
以上のように、本実施形態によれば、表層70に針葉樹及び広葉樹の単板を用いなくても耐水性が優れる木質積層板1を製造することができる。
【0015】
上述のように、本実施形態の特徴の1つは、糖類含有単板4(触媒含有単板7)が、芯材3よりも圧縮されやすい点であるが、このような特徴を採用しないと、以下のような問題が発生し得る。
【0016】
例えば、糖類含有単板4(触媒含有単板7)と芯材3とが同じ程度に圧縮されやすい場合、表層70を高度に圧密化しようとすると、芯層30も高度に圧密化する必要がある。この場合、熱圧プレスの圧力を上げなければならないので、製造設備の大型化を招き、製造コストの増加が懸念される。
【0017】
また、表層70及び芯層30の両方が高度に圧密化されることで、木質積層板1の重量が増加しやすくなり、木質積層板1の取り扱いがしにくくなる。
【0018】
また、本実施形態に係る木質積層板1と同じ厚さの木質積層板1を得ようとする場合には、芯層30が高度に圧密化されることで芯層30の厚さが減少するので、その減少分を見越して、芯層30の厚さをあらかじめ調整しておかなければならない。例えば、芯層30を複数の単板で形成する場合には、上記の減少分を見越して、単板を更に追加しなければならない。
【0019】
これに対して、本実施形態では、糖類含有単板4(触媒含有単板7)が、芯材3よりも圧縮されやすいので、以上のような問題は発生しにくい。
【0020】
(2)詳細
(2.1)第1実施形態
図1Bは、本実施形態に係る木質積層板1を示す。木質積層板1は、表層70と、芯層30と、を備える。表層70は、芯層30の両面又は片面に接着されている(本実施形態では両面)。木質積層板1において、表層70は外側の層であり、芯層30は内側の層である。
【0021】
表層70は、触媒含有単板7で形成される。触媒含有単板7は、糖類含有単板4に触媒(多価カルボン酸)が供給されて得られる。このように、糖類含有単板4は、最終的に木質積層板1の表層70を形成する。なお、糖類含有単板4は、木質積層板1の芯層30を形成してもよい。
【0022】
本実施形態に係る木質積層板1の製造方法は、単板製造工程と、触媒供給工程と、接着工程と、を含む。以下、木質積層板1の製造方法の各工程について説明する。
【0023】
≪単板製造工程≫
単板製造工程は、糖類を含む植物から糖類含有単板4を製造する工程である。
【0024】
〔糖類含有単板〕
糖類含有単板4は、糖類を含む植物から得られる単板である。糖類を含む植物は、木本であり、木質の茎(木幹)を有する。植物は、ヤシ(椰子)が好ましく、ヤシの中でもアブラヤシ及びココヤシが好ましい。ヤシは、他の植物に比べて糖類を比較的多く含むためである。これにより、木質積層板1の耐水性及び強度が向上する。
【0025】
東南アジアではパーム油産業が盛んであるが、ヤシは20~30年で実の付きが悪くなるため、このようなパームヤシの古木(OPT)をいかに処理するかが問題となっている。それというのも、温室効果ガスの放出を防ぐなどという目的で古木の焼却処分が禁止されており、それに加えてヤシは含水率が高いため、木材としての再利用が難しいからである。このようなことから、伐採されたヤシの古木などを有効利用することが望まれており、木質積層板1の原料として容易に入手することができる。このように、本実施形態において、植物がヤシであれば、ヤシの古木などを有効利用することができる。
【0026】
植物に含まれる糖類は、単糖、二糖及び多糖(オリゴ糖を含む)である。二糖及び多糖は、複数の単糖がグリコシド結合して構成されている。糖類は、植物に1種のみ含有されていても2種以上含有されていてもよい。単糖及び二糖の合計含有量は、単板(固形分)の質量に対して、好ましくは5質量%以上である。
【0027】
単糖として、例えば、フルクトース、リボース、アラビノース、ラムノース、キシルロース及びデオキシリボースが挙げられる。
【0028】
二糖として、例えば、スクロース、マルトース、トレハロース、ツラノース、ラクツロース、マルツロース、パラチノース、ゲンチオビウロース、メリビウロース、ガラクトスクロース、ルチヌロース及びプランテオビオースが挙げられる。
【0029】
多糖として、例えば、デンプン、アガロース、アルギン酸、グルコマンナン、イヌリン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、グリコーゲン及びセルロースが挙げられる。オリゴ糖として、例えば、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖及びスタキオースが挙げられる。
【0030】
上記の糖類を含む植物から単板(糖類含有単板4)を得る。糖類含有単板4は、植物の原木を切削機械により切削して得ることができる。切削機械として、例えば、ロータリーレース及びスライサーが挙げられる。
【0031】
糖類含有単板4の厚さは、特に限定されないが、例えば2mm以上8mm以下の範囲内である。
【0032】
糖類含有単板4の密度は、特に限定されないが、好ましくは300kg/m以上500kg/m以下の範囲内であり、より好ましくは350kg/m以上450kg/m以下の範囲内である。
【0033】
≪触媒供給工程≫
触媒供給工程は、糖類含有単板4に多価カルボン酸を供給して触媒含有単板7を得る工程である。
【0034】
〔触媒含有単板〕
触媒含有単板7は、糖類含有単板4に触媒として多価カルボン酸が供給された単板である。触媒含有単板7は、糖類と、多価カルボン酸と、を含む。
【0035】
多価カルボン酸は、複数のカルボキシ基を有する化合物であれば、特に限定されない。多価カルボン酸として、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、セバシン酸、イタコン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、マロン酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸(1,5-ペンタン二酸)、グルタコン酸及びペンテン二酸が挙げられる。多価カルボン酸として、酸無水物も使用できる。
【0036】
上記に列挙した多価カルボン酸のうち、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、セバシン酸、及びイタコン酸は、植物を原料として製造することが可能なため、特に好ましい。このように植物を原料としている場合、化石資源の使用が抑制されるため、環境へ負担をかけずに木質積層板1を得ることができる。なお、多価カルボン酸は、ポリカルボン酸と同義である。
【0037】
好ましくは、多価カルボン酸を多価カルボン酸溶液(例えば多価カルボン酸水溶液)として供給する。これにより、多価カルボン酸が糖類含有単板4に含浸されやすくなる。その結果、木質積層板1の耐水性を更に向上させることができる。
【0038】
具体的には、多価カルボン酸は、次のようにして糖類含有単板4に供給することができる。すなわち、多価カルボン酸水溶液をスプレー等で糖類含有単板4に向けて散布することができる。また糖類含有単板4を多価カルボン酸水溶液中に浸漬することができる。またロール又は刷毛等で多価カルボン酸水溶液を糖類含有単板4に塗布することができる。また多価カルボン酸の粉末を直接、糖類含有単板4に散布することができる。
【0039】
上述のように、多価カルボン酸を糖類含有単板4に供給する際に、多価カルボン酸は、水溶液の状態であってもよいし、粉末の状態であってもよい。水溶液の状態である場合には、多価カルボン酸水溶液の濃度は、特に限定されないが、例えば1質量%以上50質量%以下の範囲内である。
【0040】
多価カルボン酸の供給量は、特に限定されない。多価カルボン酸の供給量は、例えば、糖類含有単板4の単位体積当たりに存在する多価カルボン酸の質量で規定される。好ましくは、多価カルボン酸の供給量は、固形分比率で0.5質量%以上5質量%以下の範囲内である。
【0041】
≪接着工程≫
図1A及び図1Bは、接着工程の様子を示す。接着工程は、触媒含有単板7を芯材3の両面又は片面に重ね(本実施形態では両面)、熱圧処理(ホットプレス)を行って触媒含有単板7と芯材3とを接着する工程である。これにより、触媒含有単板7と芯材3とが一体化されて、図1Bに示すような木質積層板1が得られる。
【0042】
ここで、図1Aに示すように、芯材3は、糖類含有単板4を複数含む。複数の糖類含有単板4は積層される。複数の糖類含有単板4に多価カルボン酸又は接着剤が供給されている。熱圧処理を行う前は、芯材3に含まれる複数の糖類含有単板4は、まだ接着されていない。なお、以下では、芯材3において最も外側に位置する糖類含有単板4を最外単板40という場合がある。
【0043】
芯材3に含まれる複数の糖類含有単板4の各々の繊維方向(木目の方向)は、特に限定されない。隣り合う糖類含有単板4同士の繊維方向は、非平行でも平行でもよい。表層70となる糖類含有単板4(触媒含有単板7)及び最外単板40の繊維方向は、非平行でも平行でもよい。なお、本明細書において、非平行には、直交が含まれる。
【0044】
芯材3に含まれる複数の糖類含有単板4に多価カルボン酸を供給すると、これらの糖類含有単板4は、触媒含有単板7となる。糖類含有単板4に多価カルボン酸を供給する方法、及び触媒含有単板7については、上述のとおりである。糖類含有単板4に多価カルボン酸を供給しておくことで、糖類と多価カルボン酸との反応物が接着剤として機能し得る。
【0045】
一方、複数の糖類含有単板4に接着剤を供給してもよい。接着剤としては、特に限定されないが、例えば、ユリア・メラミン系接着剤及びフェノール系接着剤などが挙げられる。接着剤の供給方法としては、特に限定されないが、例えば塗布が挙げられる。
【0046】
接着剤の供給量(塗布量)は、特に限定されない。接着剤の供給量は、例えば、糖類含有単板4の単位面積当たりに存在する接着剤の質量で規定される。好ましくは、接着剤の供給量は、200g/m以上500g/m以下の範囲内である。
【0047】
芯材3に含まれる複数の糖類含有単板4に多価カルボン酸又は接着剤のいずれを供給しても、木質積層板1の剥離強さを向上させることができる。
【0048】
本実施形態の特徴の1つは、表層70となる糖類含有単板4(触媒含有単板7)が、芯層30となる芯材3よりも圧縮されやすい点である。糖類含有単板4は、触媒含有単板7となっても、芯材3よりも圧縮されやすい。特に芯材3が複数の糖類含有単板4を含む場合には、表層70となる糖類含有単板4(触媒含有単板7)が、これと隣接する最外単板40よりも圧縮されやすい。
【0049】
圧縮性は、比較する2つの試験片を同一圧力で厚さ方向に圧縮した場合の、それぞれの圧縮後の密度で比較することができる。圧縮後の密度が高い試験片ほど圧縮されやすい。この圧縮性は、比較する2つの試験片の含水率で調整することができる。含水率が高い試験片ほど圧縮されやすい。したがって、表層70となる糖類含有単板4の含水率を、芯材3の含水率よりも高くすることにより、上記の糖類含有単板4を芯材3よりも圧縮されやすくすることができる。これにより、糖類含有単板4が、芯材3よりも圧縮されやすくなる。含水率は、乾燥条件(温度及び時間など)により調整したり、加湿により調整したりすることが可能である。
【0050】
含水率は、次のようにして算出することができる。まず比較する2つの試験片の質量(W:乾燥前の質量)を測定する。次にこれらを乾燥器中で103±2℃で乾燥し、恒量に達したと認められるときの質量(W:全乾質量)を測定する。そして、以下の式(1)により2つの試験片の含水率を算出することができる。
【0051】
【数1】
【0052】
そして、表層70となる糖類含有単板4(触媒含有単板7)が、芯層30となる芯材3よりも圧縮されやすいと、以下の理由で有利である。接着工程において、熱圧処理を行う際、触媒含有単板7は、熱圧プレスの加熱板(熱盤)と芯材3との間に位置する。上述のように、触媒含有単板7は、芯材3よりも圧縮されやすいので、熱圧処理を行うと、触媒含有単板7に集中的に圧力が加えられる。このとき芯材3も圧縮されるが、この芯材3と熱盤とで挟まれた触媒含有単板7は、芯材3よりも更に圧縮される。これにより、触媒含有単板7が高度に圧密化され、水分を浸透させにくくなる。そのため、木質積層板1においては、表面に位置する表層70から、内部に位置する芯層30への水分の浸入を抑制することができる。また表層70が高度に圧密化されていることで、木質積層板1の表面硬さを向上させることもできる。さらに木質積層板1の表面のきめが細かくなり、美観も向上し得る。
【0053】
したがって、本実施形態によれば、表層70に針葉樹及び広葉樹の単板を用いなくても耐水性が優れる木質積層板1を製造することができる。
【0054】
以下、熱圧処理について説明する。熱圧処理は、加熱しながら圧締する処理である。熱圧処理では、公知の圧締装置(プレス)が使用可能である。熱源としては、特に限定されないが、蒸気、熱水、電熱、及び高周波が挙げられる。プレス方式としては、特に限定されないが、平板(1段、多段)プレス方式、及びロール(連続)プレス方式が挙げられる。
【0055】
熱圧処理の温度は、特に限定されないが、例えば140℃以上230℃以下の範囲内である。熱圧処理の圧力は、好ましくは0.5MPa以上4MPa以下の範囲内である。この範囲内で高圧であるほど、木質積層板1の表面の平滑性を向上させることができる。熱圧処理の時間は、好ましくは10秒以上30分以下の範囲内である。
【0056】
ここで、熱圧処理の際に触媒含有単板7内で起こる硬化反応について説明する。硬化反応は、糖類と多価カルボン酸との反応を意味する。触媒含有単板7は、加熱処理されると2段階の反応を経て完全に硬化すると推測される。
【0057】
すなわち、加熱処理により第1段階の反応が進行し、更なる加熱処理により第2段階の反応が進行して完了する。触媒含有単板7は、第2段階の反応の完了により、硬化物となる。第2段階の反応に近づくにつれて、糖類と多価カルボン酸との反応物(例えば糖クエン酸反応物)は、熱硬化性を有するようになる。この反応物の硬化により、触媒含有単板7の内部の繊維同士が接着される。なお、本明細書において、反応物には、反応前の物質と、反応後の物質(生成物)と、が含まれる。
【0058】
第1段階の反応により、植物に含まれる糖類が加水分解し、加水分解生成物が生成される。さらに加水分解生成物は、脱水縮合して糖変性物の反応生成物が生成される。このとき発生する縮合水は適宜の方法で除去される。
【0059】
例えば、糖類がスクロースの場合、以下のように硬化反応が進行すると推測される。まず、スクロースが加水分解してグルコースとフルクトースとが生成される。次にフルクトースの脱水反応により、フルフラール(具体的には5-(ヒドロキシメチル)フルフラール)が生成される。糖変性物であるフルフラールは、更なる加熱処理により熱硬化性樹脂であるフラン樹脂となり、多価カルボン酸の存在下で硬化する。一方、グルコースは、脱水縮合反応により糖エステルポリマーとなって硬化する。
【0060】
加圧する段階は特に限定されない。例えば、加圧は、第1段階の開始から第2段階の終了まで行ってもよいし、第1段階では行わずに第2段階の開始から第2段階の終了まで行ってもよい。
【0061】
(2.2)第2実施形態
第2実施形態では、第1実施形態と同様の構成要素には第1実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する場合がある。
【0062】
本実施形態に係る木質積層板1の製造方法は、単板製造工程と、触媒供給工程と、接着工程と、を含む。好ましくは、木質積層板1の製造方法は、研磨工程を更に含む。単板製造工程及び触媒供給工程は、第1実施形態と同様である。第1実施形態では接着工程が1回のみであるが、本実施形態では接着工程を2回に分けている。
【0063】
≪接着工程≫
接着工程は、第1接着工程(図2A図2B)と、第2接着工程(図2B図2C)と、に大別される。
【0064】
〔第1接着工程〕
第1接着工程は、複数の糖類含有単板4を重ねて接着して芯材3を得る工程である。複数の糖類含有単板4には、接着剤又は多価カルボン酸を供給する。例えば、隣り合う糖類含有単板4間に接着剤又は多価カルボン酸を介在させる。
【0065】
ここで、複数の糖類含有単板4に接着剤を供給する場合と、複数の糖類含有単板4に多価カルボン酸を供給する場合とで、その後の処理が異なるので、以下、場合を分けて説明する。
【0066】
まず、複数の糖類含有単板4に接着剤を供給する場合について説明する。この場合、第1接着工程では、冷圧処理(コールドプレス)と熱圧処理とを行う。冷圧処理は、加熱しないで常温で圧締する処理である。熱圧処理は、上述のとおりである。このように、冷圧処理及び熱圧処理により、複数の糖類含有単板4が一体化して、板材6としての芯材3が得られる。
【0067】
更に詳細に説明する。まず複数の糖類含有単板4を重ねて積層体とする。このとき複数の糖類含有単板4に接着剤を供給する。複数の糖類含有単板4の各々の繊維方向は、特に限定されない。隣り合う糖類含有単板4同士の繊維方向は、非平行でも平行でもよい。
【0068】
次に上記の積層体に冷圧処理を行う。これにより、複数の糖類含有単板4が仮接着される。冷圧処理では、公知の圧締装置が使用可能である。プレス方式としては、特に限定されないが、平板(1段、多段)プレス方式、及びロール(連続)プレス方式が挙げられる。
【0069】
冷圧処理の圧力は、特に限定されないが、例えば0.5MPa以上4MPa以下の範囲内である。冷圧処理の時間は、特に限定されないが、例えば10秒以上20分以下の範囲内である。
【0070】
次に冷圧処理後の積層体に熱圧処理を行う。これにより、板材6としての芯材3が得られる。板材6は、合板及び/又は単板積層材を含む。これにより、板材6の種類に応じて様々な木質積層板1が得られる。
【0071】
熱圧処理の温度は、特に限定されないが、上述のように複数の糖類含有単板4に接着剤を供給した場合には、好ましくは80℃以上150℃以下の範囲内であり、より好ましくは105℃以上150℃以下の範囲内である。熱圧処理の圧力は、特に限定されないが、例えば0.5MPa以上4MPa以下の範囲内である。熱圧処理の時間は、特に限定されないが、例えば10秒以上15分以下の範囲内である。
【0072】
次に、複数の糖類含有単板4に多価カルボン酸を供給する場合について説明する。この場合、第1接着工程では、冷圧処理を行わずに、熱圧処理のみを行う。熱圧処理は、上述のとおりである。このように、熱圧処理により、複数の糖類含有単板4が一体化して、板材6としての芯材3が得られる。
【0073】
更に詳細に説明する。まず複数の糖類含有単板4を重ねて積層体とする。このとき複数の糖類含有単板4に多価カルボン酸を供給する。複数の糖類含有単板4の各々の繊維方向は、特に限定されない。隣り合う糖類含有単板4同士の繊維方向は、非平行でも平行でもよい。
【0074】
次に上記の積層体に熱圧処理を行う。これにより、板材6としての芯材3が得られる。板材6は、合板及び/又は単板積層材を含む。これにより、板材6の種類に応じて様々な木質積層板1が得られる。
【0075】
熱圧処理の温度は、特に限定されないが、上述のように複数の糖類含有単板4に多価カルボン酸を供給した場合には、好ましくは140℃以上230℃以下の範囲内である。熱圧処理の圧力は、特に限定されないが、例えば0.5MPa以上4MPa以下の範囲内である。熱圧処理の時間は、特に限定されないが、例えば10秒以上15分以下の範囲内である。
【0076】
〔第2接着工程〕
第2接着工程は、第1接着工程で得られた板材6としての芯材3の両面又は片面に触媒含有単板7を接着する工程である。第2接着工程では、熱圧処理(2回目)のみを行う。
【0077】
まず芯材3と触媒含有単板7とを重ねて積層体とする。図2Bでは、芯材3の両面に触媒含有単板7を配置しているが、芯材3の片面だけに触媒含有単板7を配置してもよい。
【0078】
芯材3の表面に位置する最外単板40と触媒含有単板7との繊維方向は、非平行でも平行でもよい。
【0079】
次に上記の積層体に熱圧処理を行う。これにより、木質積層板1が得られる。
【0080】
熱圧処理の温度は、特に限定されないが、好ましくは140℃以上230℃以下の範囲内である。熱圧処理の圧力は、特に限定されないが、例えば0.5MPa以上4MPa以下の範囲内である。熱圧処理の時間は、特に限定されないが、例えば10秒以上30分以下の範囲内である。
【0081】
本実施形態においても、表層70となる糖類含有単板4(触媒含有単板7)が、芯材3よりも圧縮されやすいので、熱圧処理を行うと、触媒含有単板7に集中的に圧力が加えられる。このとき芯材3も圧縮されるが、この芯材3と熱盤とで挟まれた触媒含有単板7は、芯材3よりも更に圧縮される。これにより、触媒含有単板7が高度に圧密化され、水分を浸透させにくくなる。そのため、木質積層板1においては、表面に位置する表層70から、内部に位置する芯層30への水分の浸入を抑制することができる。また表層70が高度に圧密化されていることで、木質積層板1の表面硬さを向上させることもできる。さらに木質積層板1の表面のきめが細かくなり、美観も向上し得る。
【0082】
したがって、本実施形態によれば、表層70に針葉樹及び広葉樹の単板を用いなくても耐水性が優れる木質積層板1を製造することができる。
【0083】
≪研磨工程≫
研磨工程は、第1接着工程と、第2接着工程と、の間に位置する。研磨工程は、第1接着工程で得られた板材6としての芯材3の両面又は片面を研磨する工程である。触媒含有単板7は、芯材3の研磨された面に重ねられる。このように、触媒含有単板7が重ねられる芯材3の面が研磨されていることで、表層70と芯層30との密着性を向上させることができる。したがって、木質積層板1の剥離強さを向上させることができる。
【0084】
研磨(サンディング)には、公知の研磨布紙(研磨布及び研磨紙)が使用可能である。研磨布紙に使用される研磨材の材質及び粒度は特に限定されない。
【0085】
(2.3)第3実施形態
第3実施形態では、第1~2実施形態と同様の構成要素には第1~2実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する場合がある。
【0086】
本実施形態に係る木質積層板1の製造方法は、単板製造工程と、触媒供給工程と、接着工程と、を含む。単板製造工程及び触媒供給工程は、第1実施形態と同様である。本実施形態と第1実施形態とは、接着工程で使用する芯材3が相違する。
【0087】
≪接着工程≫
図3A及び図3Bは、接着工程の様子を示す。接着工程は、触媒含有単板7を芯材3の両面又は片面に重ね(本実施形態では両面)、熱圧処理(ホットプレス)を行って触媒含有単板7と芯材3とを接着する工程である。これにより、触媒含有単板7と芯材3とが一体化されて、図3Bに示すような木質積層板1が得られる。
【0088】
ここで、図3Aに示すように、芯材3は、単板5を複数含む。この場合の単板5は、特に限定されない。単板5は、糖類含有単板4でもよいし、糖類含有単板4以外の単板でもよい。単板5は、針葉樹(例えばスギ)から得られる単板でもよいし、広葉樹(例えばラワン)から得られる単板でもよい。複数の単板5は積層される。複数の単板5に接着剤が供給されている。熱圧処理を行う前は、芯材3に含まれる複数の単板5は、まだ接着されていない。なお、以下では、芯材3において最も外側に位置する単板5を最外単板50という場合がある。
【0089】
芯材3に含まれる複数の単板5の各々の繊維方向(木目の方向)は、特に限定されない。隣り合う単板5同士の繊維方向は、非平行でも平行でもよい。表層70となる糖類含有単板4(触媒含有単板7)及び最外単板50の繊維方向は、非平行でも平行でもよい。
【0090】
複数の単板5に供給される接着剤としては、特に限定されないが、例えば、ユリア・メラミン系接着剤及びフェノール系接着剤などが挙げられる。接着剤の供給方法としては、特に限定されないが、例えば塗布が挙げられる。
【0091】
接着剤の供給量(塗布量)は、特に限定されない。接着剤の供給量は、例えば、単板5の単位面積当たりに存在する接着剤の質量で規定される。好ましくは、接着剤の供給量は、200g/m以上500g/m以下の範囲内である。
【0092】
芯材3に含まれる複数の単板5に接着剤が供給されると、木質積層板1の剥離強さを向上させることができる。
【0093】
本実施形態においても、表層70となる糖類含有単板4(触媒含有単板7)が、芯材3よりも圧縮されやすいので、熱圧処理を行うと、触媒含有単板7に集中的に圧力が加えられる。このとき芯材3も圧縮されるが、この芯材3と熱盤とで挟まれた触媒含有単板7は、芯材3よりも更に圧縮される。これにより、触媒含有単板7が高度に圧密化され、水分を浸透させにくくなる。そのため、木質積層板1においては、表面に位置する表層70から、内部に位置する芯層30への水分の浸入を抑制することができる。また表層70が高度に圧密化されていることで、木質積層板1の表面硬さを向上させることもできる。さらに木質積層板1の表面のきめが細かくなり、美観も向上し得る。
【0094】
したがって、本実施形態によれば、表層70に針葉樹及び広葉樹の単板を用いなくても耐水性が優れる木質積層板1を製造することができる。
【0095】
(2.4)第4実施形態
第4実施形態では、第1~3実施形態と同様の構成要素には第1~3実施形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する場合がある。
【0096】
本実施形態に係る木質積層板1の製造方法は、単板製造工程と、触媒供給工程と、接着工程と、を含む。好ましくは、木質積層板1の製造方法は、研磨工程を更に含む。単板製造工程及び触媒供給工程は、第1実施形態と同様である。接着工程は、第2実施形態とほぼ同様であるが、本実施形態と第2実施形態とは、接着工程で使用する芯材3が相違する。研磨工程は、第2実施形態と同様である。
【0097】
≪接着工程≫
接着工程は、第1接着工程(図4A図4B)と、第2接着工程(図4B図4C)と、に大別される。
【0098】
〔第1接着工程〕
第1接着工程は、複数の単板5を重ねて接着して芯材3を得る工程である。単板5は、第3実施形態と同様である。第1接着工程では、冷圧処理と熱圧処理とを行う。冷圧処理及び熱圧処理は、上述のとおりである。このように、冷圧処理及び熱圧処理により、複数の単板5が一体化して、板材6としての芯材3が得られる。
【0099】
まず複数の単板5を重ねて積層体とする。このとき複数の単板5に接着剤を供給する。具体的には、隣り合う単板5間に接着剤を介在させる。複数の単板5の各々の繊維方向は、特に限定されない。隣り合う単板5同士の繊維方向は、非平行でも平行でもよい。
【0100】
次に上記の積層体に冷圧処理を行う。これにより、複数の単板5が仮接着される。冷圧処理では、公知の圧締装置が使用可能である。プレス方式としては、特に限定されないが、平板(1段、多段)プレス方式、及びロール(連続)プレス方式が挙げられる。
【0101】
冷圧処理の圧力は、特に限定されないが、例えば0.5MPa以上4MPa以下の範囲内である。冷圧処理の時間は、特に限定されないが、例えば10秒以上20分以下の範囲内である。
【0102】
次に冷圧処理後の積層体に熱圧処理を行う。これにより、板材6としての芯材3が得られる。板材6は、合板及び/又は単板積層材を含む。これにより、板材6の種類に応じて様々な木質積層板1が得られる。
【0103】
熱圧処理の温度は、特に限定されないが、好ましくは80℃以上150℃以下の範囲内であり、より好ましくは105℃以上150℃以下の範囲内である。熱圧処理の圧力は、特に限定されないが、例えば0.5MPa以上4MPa以下の範囲内である。熱圧処理の時間は、特に限定されないが、例えば10秒以上15分以下の範囲内である。
【0104】
〔第2接着工程〕
第2接着工程は、第1接着工程で得られた芯材3の両面又は片面に触媒含有単板7を接着する工程である。第2接着工程では、熱圧処理(2回目)のみを行う。
【0105】
まず芯材3と触媒含有単板7とを重ねて積層体とする。図4Bでは、芯材3の両面に触媒含有単板7を配置しているが、芯材3の片面だけに触媒含有単板7を配置してもよい。
【0106】
芯材3の表面に位置する最外単板50と触媒含有単板7との繊維方向は、非平行でも平行でもよい。
【0107】
次に上記の積層体に熱圧処理を行う。これにより、木質積層板1が得られる。
【0108】
熱圧処理の温度は、特に限定されないが、好ましくは140℃以上230℃以下の範囲内である。熱圧処理の圧力は、特に限定されないが、例えば0.5MPa以上4MPa以下の範囲内である。熱圧処理の時間は、特に限定されないが、例えば10秒以上30分以下の範囲内である。
【0109】
本実施形態においても、表層70となる糖類含有単板4(触媒含有単板7)が、芯材3よりも圧縮されやすいので、熱圧処理を行うと、触媒含有単板7に集中的に圧力が加えられる。このとき芯材3も圧縮されるが、この芯材3と熱盤とで挟まれた触媒含有単板7は、芯材3よりも更に圧縮される。これにより、触媒含有単板7が高度に圧密化され、水分を浸透させにくくなる。そのため、木質積層板1においては、表面に位置する表層70から、内部に位置する芯層30への水分の浸入を抑制することができる。また表層70が高度に圧密化されていることで、木質積層板1の表面硬さを向上させることもできる。さらに木質積層板1の表面のきめが細かくなり、美観も向上し得る。
【0110】
したがって、本実施形態によれば、表層70に針葉樹及び広葉樹の単板を用いなくても耐水性が優れる木質積層板1を製造することができる。
【0111】
(3)変形例
第4実施形態において、第1接着工程で得られた芯材3の代わりに、市販の板材を用い、第1接着工程を省略し、第2接着工程での処理のみを行うようにしてもよい。
【0112】
上記の板材には、針葉樹から得られる板材、及び広葉樹から得られる板材が含まれる。
【0113】
さらに上記の板材には、合板、単板積層材(LVL)、及びランバーコアー合板が含まれる。
【0114】
(4)態様
第1の態様は、木質積層板(1)の製造方法であって、単板製造工程と、触媒供給工程と、接着工程と、を含む。前記単板製造工程では、糖類を含む植物から糖類含有単板(4)を製造する。前記触媒供給工程では、前記糖類含有単板(4)に多価カルボン酸を供給して触媒含有単板(7)を得る。前記接着工程では、前記触媒含有単板(7)を芯材(3)の両面又は片面に重ね、熱圧処理を行って前記触媒含有単板(7)と前記芯材(3)とを接着する。前記糖類含有単板(4)が、前記芯材(3)よりも圧縮されやすい。
【0115】
この態様によれば、表層に針葉樹及び広葉樹の単板を用いなくても耐水性が優れる木質積層板(1)を製造することができる。
【0116】
第2の態様は、第1の態様に基づく木質積層板(1)の製造方法である。第2の態様では、前記糖類含有単板(4)の含水率が、前記芯材(3)の含水率よりも高い。
【0117】
この態様によれば、糖類含有単板(4)が、芯材(3)よりも更に圧縮されやすくなる。
【0118】
第3の態様は、第1又は第2の態様に基づく木質積層板(1)の製造方法である。第3の態様では、前記芯材(3)が、前記糖類含有単板(4)を複数含む。前記複数の糖類含有単板(4)に多価カルボン酸又は接着剤が供給されている。
【0119】
この態様によれば、木質積層板(1)の剥離強さを向上させることができる。
【0120】
第4の態様は、第1又は第2の態様に基づく木質積層板(1)の製造方法である。第4の態様では、前記芯材(3)が、単板(5)を複数含む。前記複数の単板(5)に接着剤が供給されている。
【0121】
この態様によれば、木質積層板(1)の剥離強さを向上させることができる。
【0122】
第5の態様は、第1又は第2の態様に基づく木質積層板(1)の製造方法である。第5の態様では、前記芯材(3)が、板材(6)を含む。前記板材(6)は、合板及び/又は単板積層材を含む。
【0123】
この態様によれば、板材(6)の種類に応じて様々な木質積層板(1)が得られる。
【0124】
第6の態様は、第1~第5の態様のいずれか一つに基づく木質積層板(1)の製造方法である。第6の態様では、前記触媒含有単板(7)が重ねられる前記芯材(3)の面が研磨されている。
【0125】
この態様によれば、木質積層板(1)の剥離強さを向上させることができる。
【実施例
【0126】
以下、本開示を実施例によって具体的に説明する。ただし、本開示は、実施例に限定されない。
【0127】
(実施例1)
<糖類含有単板>
糖類含有単板としてヤシ単板(OPT)を使用した。糖類含有単板の厚さ、及び密度を表1の表層の欄に示す。
【0128】
<触媒含有単板>
糖類含有単板の両面に触媒(濃度3質量%のクエン酸水溶液)を塗布し、触媒含有単板を得た。触媒は、触媒及びヤシ単板の合計質量(固形分)に対して1質量%となるように調整して塗布した。その後、触媒含有単板を80℃で乾燥して含水率が10質量%となるように調整した。
【0129】
<芯材>
糖類含有単板としてヤシ単板(OPT)を使用した。糖類含有単板の厚さ、密度、及び芯材の層数を表1の芯層の欄に示す。
【0130】
次に糖類含有単板の両面に触媒(濃度8質量%のクエン酸水溶液)を塗布した。触媒は、触媒及びヤシ単板の合計質量(固形分)に対して3質量%となるように調整して塗布した。その後、触媒を塗布した糖類含有単板を80℃で乾燥して含水率が3質量%以下となるように調整した。
【0131】
<木質積層板>
次に上記の芯材の両面に触媒含有単板を重ねて、圧締装置を用いて熱圧処理を行った。熱圧処理の条件を表2に示す。なお、圧締装置の上下の熱板間にはディスタンスバーが取り付けられており、このディスタンスバーの間隔を12mmに設定することで、木質積層板の厚さを一定(12mm)にした。
【0132】
上記のようにして木質積層板を製造した。木質積層板の厚さ及び密度を表2に示す。
【0133】
(実施例2)
表層に使用する触媒含有単板の含水率を、乾燥時間を調整して12質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして木質積層板を製造した。
【0134】
(実施例3)
熱圧処理の条件を変更した以外は、実施例2と同様にして木質積層板を製造した。
【0135】
(実施例4)
<糖類含有単板>
実施例1と同様である。
【0136】
<触媒含有単板>
実施例1と同様である。
【0137】
<芯材>
糖類含有単板として実施例1と同様のヤシ単板(OPT)を使用した。糖類含有単板の両面に接着剤を塗布した。接着剤としてユリア・メラミン系接着剤を使用した。接着剤の塗布量を表1の芯層の欄に示す。
【0138】
次に上記の糖類含有単板を5枚重ね、圧締装置を用いて冷圧処理及び熱圧処理を行って、板材としての芯材を製造した。冷圧処理及び熱圧処理の条件は、比較例2と同様である。冷圧処理及び熱圧処理を行う際、ディスタンスバーの間隔を9mmに設定することで、芯材の厚さを一定(9mm)にした。得られた芯材の厚さ、密度、層数、及び含水率を表1の芯層の欄に示す。さらに芯材の両面を研磨した。研磨布紙の番手を表1のサンディングの欄に示す。
【0139】
<木質積層板>
上記の芯材を実施例1の芯材の代わりに用い、さらに熱圧処理の条件(時間)を変更した以外は、実施例1と同様にして木質積層板を製造した。
【0140】
(実施例5)
芯材の両面を研磨しなかった以外は、実施例4と同様にして木質積層板を製造した。
【0141】
(実施例6)
<糖類含有単板>
実施例1と同様である。
【0142】
<触媒含有単板>
実施例1と同様である。
【0143】
<芯材>
芯材として市販の針葉樹合板を使用した。この針葉樹合板の厚さ、及び含水率を表1の芯層の欄に示す。針葉樹合板の両面を研磨した。研磨布紙の番手を表1のサンディングの欄に示す。針葉樹合板の両面に接着剤を塗布した。接着剤としてユリア・メラミン系接着剤を使用した。接着剤の塗布量を表1の芯層の欄に示す。
【0144】
<木質積層板>
上記の芯材を実施例4の芯材の代わりに用いた以外は、実施例4と同様にして木質積層板を製造した。
【0145】
(比較例1)
表層に使用する触媒含有単板の含水率を、乾燥時間を調整して3質量%以下(芯材の含水率と同じ)に変更した以外は、実施例1と同様にして木質積層板を製造した。
【0146】
(比較例2)
糖類含有単板としてヤシ単板(OPT)を使用した。糖類含有単板の厚さ、密度、層数、及び含水率を表1の芯層の欄に示す。糖類含有単板の両面に接着剤を塗布した。接着剤としてユリア・メラミン系接着剤を使用した。接着剤の塗布量を表1の芯層の欄に示す。
【0147】
次に上記の糖類含有単板を7枚重ね、圧締装置を用いて冷圧処理及び熱圧処理を行って、木質積層板を製造した。冷圧処理及び熱圧処理の条件を表2に示す。冷圧処理及び熱圧処理を行う際、ディスタンスバーの間隔を12mmに設定することで、木質積層板の厚さを一定(12mm)にした。
【0148】
(比較例3)
<芯材>
実施例4と同様である。
【0149】
<木質積層板>
次に上記の芯材の両面にユリア・メラミン系接着剤を介してMLH(MixedLight Hardwoods)を重ねて、圧締装置を用いて冷圧処理及び熱圧処理を行った。MLHは、従来、化粧用単板として用いられている広葉樹から得られた単板である。冷圧処理及び熱圧処理の条件を表2に示す。このようにして木質積層板を製造した。
【0150】
<性能評価>
[平滑性]
平滑性を評価するため、木質積層板の表面の算術平均粗さ(Ra)を測定した。以下の基準で性能を評価した。
【0151】
A:算術平均粗さ(Ra)が3.2μm以下
B:算術平均粗さ(Ra)3.2μm超6.3μm以下
C:算術平均粗さ(Ra)6.3μm超。
【0152】
[表面硬さ(耐おもり落下性)]
表面硬さを評価するため、JIS K 5600-5-3に準拠して、木質積層板についてデュポン式試験を行った。先端が丸い500gのおもりを、その先端を下にして、30cmの高さから木質積層板の表面に落とした。おもりの先端径は0.5インチ(約1.27cm)である。おもりの衝突によって形成された凹みの深さを測定した。以下の基準で性能を評価した。
【0153】
A:凹みの深さが0.2mm以下
B:凹みの深さが0.2mm超0.3mm以下
C:凹みの深さが0.3mm超0.5mm以下
D:凹みの深さが0.5mm超0.8mm以下
E:凹みの深さが0.8mm超。
【0154】
[耐水性(吸水厚さ膨張率)]
耐水性を評価するため、JIS A 5908に準拠して、木質積層板について吸水厚さ膨張率試験を行った。以下の基準で性能を評価した。
【0155】
A:吸水厚さ膨張率が3%以下
B:吸水厚さ膨張率が3%超5%以下
C:吸水厚さ膨張率が5%超12%以下
D:吸水厚さ膨張率が12%超。
【0156】
[剥離強さ]
強度を評価するため、JIS A 5908に準拠して剥離強さ試験を行った。以下の基準で性能を評価した。
【0157】
A:剥離強さが0.4MPa以上
B:剥離強さが0.4MPa未満。
【0158】
【表1】
【0159】
【表2】
【符号の説明】
【0160】
1 木質積層板
3 芯材
4 糖類含有単板
5 単板
6 板材
7 触媒含有単板
図1
図2
図3
図4