(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】作業管理システム及び管理装置
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20231222BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20231222BHJP
B25B 23/14 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
B25F5/00 C
B25B23/14 620Z
(21)【出願番号】P 2022073597
(22)【出願日】2022-04-27
(62)【分割の表示】P 2020011034の分割
【原出願日】2015-09-30
【審査請求日】2022-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 浩治
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-067911(JP,A)
【文献】特開2008-213086(JP,A)
【文献】特開2014-188662(JP,A)
【文献】特開2010-194661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00 - 5/02
B25B 23/14
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理装置と、複数の動力工具とを備え、
前記管理装置は、第1通信部と、管理部とを有し、
前記複数の動力工具の各々は、第2通信部と、制御部とを有し、
前記制御部は、前記第2通信部が前記管理装置から送信された監視信号を受信した場合に、前記監視信号に対する応答信号を前記第2通信部から前記管理装置へ送信させるように構成されており、
前記制御部は、作業開始前の状態で、前記第2通信部から前記管理装置に登録要求信号と識別情報とを送信させ、
前記管理部は、
前記登録要求信号の送信元の前記動力工具から送信された前記識別情報をもとに重点監視対象の動力工具であるか否かを判断し、前記複数の動力工具のうち
前記重点監視対象の動力工具に対して、他の動力工具と異なる通信設定を行う
作業管理システム。
【請求項2】
前記管理部は、前記複数の動力工具のうち前記重点監視対象の動力工具の再送回数を前記他の動力工具の再送回数よりも多い回数に設定する
請求項1に記載の作業管理システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2通信部が前記管理装置から送信された前記監視信号を受信した場合に、作業内容を示す情報を前記監視信号に対する応答信号と一緒に前記第2通信部から前記管理装置へ送信させる
請求項1又は2に記載の作業管理システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の作業管理システムに用いられる管理装置であって、
前記第1通信部と、前記管理部とを有し、
前記管理部は、
前記動力工具から送信された前記識別情報をもとに前記重点監視対象の動力工具であるか否かを判断し、前記複数の動力工具のうち
前記重点監視対象の動力工具に対して、他の動力工具と異なる通信設定を行う
管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業管理システム及び管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボルト等の締結部品を対象物の予め決められた位置に締め付ける作業において、締め忘れを防ぐための機器や機構を備えた締付工具や締付位置管理システムが提案されており、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の締付位置管理システムは、締付工具であるトルクレンチと、締付位置情報を管理する管理装置とを備えている。
【0004】
トルクレンチは、締結部品を締め付けた締付トルクを無線通信により管理装置に出力する。また、トルクレンチは、トルクレンチを移動させた場合に、加速度センサ、ジャイロセンサ、地磁気センサから出力される信号に基づいて締付位置を特定し、その締付位置を示す締付位置情報を管理装置に出力する。管理装置は、トルクレンチから出力された締付位置情報及び締付トルクを受信すると、受信した締付位置情報及び締付トルクを管理する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
工場や建設現場などの作業現場では複数の作業者にそれぞれ複数の締付工具が割り当てられ、複数の作業者が、作業工程にしたがって、それぞれ自分に割り当てられた締付工具を用い、並行して作業を行う場合がある。このような作業現場では、複数の作業者が行う作業を管理するために、各々の作業者が使用する締付工具(動力工具)の工具種別を取得したいという要望があった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされ、動力工具の工具種別を読み取ることが可能な作業管理システム及び管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様の作業管理システムは、管理装置と、複数の動力工具とを備える。前記管理装置は、第1通信部と、管理部とを有し、前記複数の動力工具の各々は、第2通信部と、制御部とを有し、前記制御部は、前記第2通信部が前記管理装置から送信された監視信号を受信した場合に、前記監視信号に対する応答信号を前記第2通信部から前記管理装置へ送信させるように構成されており、前記制御部は、作業開始前の状態で、前記第2通信部から前記管理装置に登録要求信号と識別情報とを送信させ、前記管理部は、前記登録要求信号の送信元の前記動力工具から送信された前記識別情報をもとに重点監視対象の動力工具であるか否かを判断し、前記複数の動力工具のうち前記重点監視対象の動力工具に対して、他の動力工具と異なる通信設定を行う。
本発明の管理装置は、上記の作業管理システムに用いられる管理装置であって、前記第1通信部と、前記管理部とを有し、前記管理部は、前記動力工具から送信された前記識別情報をもとに前記重点監視対象の動力工具であるか否かを判断し、前記複数の動力工具のうち前記重点監視対象の動力工具に対して、他の動力工具と異なる通信設定を行う。
【発明の効果】
【0009】
本発明の作業管理システム及び管理装置によれば、動力工具の工具種別を読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の作業管理システムのブロック図である。
【
図2】実施形態の作業管理システムのシステム構成図である。
【
図3】実施形態の作業管理システムに用いられる動力工具の一例を模式的に示した説明図である。
【
図4】実施形態の作業管理システムに用いられる動力工具の動作を示すフローチャートである。
【
図5】実施形態の作業管理システムに用いられる管理装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態の作業管理システムの動作を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態は、作業管理システム及び管理装置に関し、より詳細には、動力工具を用いた作業内容を管理するための作業管理システム及び管理装置に関する。
【0012】
(1.1)全体概要
以下、本実施形態の作業管理システム及び管理装置について図面を参照して説明する。ただし、以下に説明する構成は本発明の一例にすぎない。本発明は、以下の実施形態に限定されず、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0013】
本実施形態では、管理装置の管理対象である動力工具が電動工具である場合を例に説明する。本実施形態の作業管理システムは、例えばボルトなどの締付け部品の締付け作業を行う電動工具を用いた締付け作業の作業内容を、複数の作業工程の各々で管理するために用いられる。この作業管理システムが用いられる作業現場は、予め決められた作業工程にしたがって作業者が動力工具を用いた作業を行うような作業現場(工場や建設現場など)であり、例えば発電容量がメガワット級の太陽光発電施設の建設現場を想定している。このような太陽光発電施設の建設現場では、太陽電池パネルを設置するための架台が複数列に分かれて並べられており、太陽電池パネルを架台に載せた状態で1枚の太陽電池パネルにつき複数個のボルトを締付ける作業が行われる。発電容量がメガワット級の太陽光発電施設では、使用される太陽電池パネルの枚数が数万枚から数十万枚になり、締付け作業を行うボルトの本数も膨大になる。このように、膨大な本数の締付け部材の締付け作業が必要な場合、複数の作業者で作業を分担し、複数の作業者がそれぞれ電動工具を用いて決められた箇所のネジ締め作業を行うよう作業工程が決められている。複数の作業者が作業を分担する場合、ネジ締め作業のし忘れが発生する可能性が高くなり、また締付け力のばらつきなどが発生する可能性があるため、全ての締付け部材について適切に締付け作業が行われたことを管理したいという要求がある。そこで、本実施形態の作業管理システムでは、管理装置が、各作業工程で使用される複数の電動工具の各々から締付け作業の作業内容(例えば、ネジ締め作業の回数や各作業での締付けトルクなど)を収集し、蓄積するように構成されている。
【0014】
本実施形態の作業管理システム10は、
図1及び
図2に示すように、管理装置1と、複数の電動工具2(2a~2f)とを備えている。なお、
図2の例では、電動工具2の台数が6台であるが、電動工具2の台数は6台に限定されず、作業内容に応じた台数があればよい。以下の説明において、個々の電動工具について説明する場合は電動工具2a,2b,2c,2d,2e,2fと記載し、6台の電動工具2a~2fに共通する説明を行う場合は電動工具2と記載する。
【0015】
(1.2)動力工具の説明
本実施形態では、管理装置1の管理対象である動力工具が電動工具2であり、電動工具2の構成を
図1及び
図2に基づいて説明する。電動工具2は、例えば工場や建設現場などで使用される事業者向けの動力工具である。電動工具2は、設計図面や作業指図書にしたがって、複数の締め付け部材(例えばネジやボルトなど)で作業対象(例えば太陽電池パネルなど)を被取付部材(例えば架台など)に締め付ける作業を行うために使用される。
この種の電動工具2としては、締付け部材を回転させて衝撃力を加えることによって締め付けるインパクトドライバーがある。なお、電動工具2は、電動式のインパクトドライバーに限定されず、電動式のインパクトレンチでもよいし、打撃力を与えるタイプではない電動式のドリルドライバーや電動式のトルクレンチでもよい。また、動力工具は電動工具2に限定されず、例えば空圧ポンプを動力源とし空圧ポンプから供給される圧縮空気で駆動される空圧式の動力工具(例えばドライバーや釘打ち機など)でもよいし、油圧ポンプを動力源として油圧源から供給される油圧で駆動される油圧式の動力工具でもよい。
【0016】
電動工具2は、制御部21と、通信部(第2通信部)22と、記憶部23と、操作部24と、駆動部25と、測定部26と、電源部27と、表示ランプ29とを備える。
【0017】
また、
図3に示すように、電動工具2のボディ200は、筒形状の胴体部201と、胴体部201の周面から径方向に突出する握り部202とを備える。胴体部201の軸方向における一端側からは出力軸253が突出している。出力軸253には、作業対象の締付け部材に合わせた先端工具256(例えばドライバービットなど)が着脱自在に取り付けられるソケット254が設けられている。握り部202の一端(
図3における下端)には、樹脂製のケース内に電源部27を収納した電池パック203が着脱自在に取り付けられている。
【0018】
制御部21は主なハードウェア要素としてマイクロコンピュータを備える。本実施形態では、制御部21が備えるマイクロコンピュータが、記憶部23に記憶されたプログラムを実行することによって電動工具2が備える各種の機能が実現される。なお、制御部21などを構成する回路が実装された回路基板28は握り部202に収納されている。
【0019】
通信部22は、無線免許が不要な通信方式で近距離(約十m)の無線通信を行う通信モジュールである。この種の通信方式には米国電気電子学会(IEEE: The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)で標準化されたIEEE802.15.1
の規格に準拠した通信方式などがある。通信部22は、この種の通信方式で、管理装置1との間で無線通信を行う。なお、通信部12,22の通信距離に比べて建設現場が広い場合は、通信部12と通信部22との間の通信を中継する中継機を使用すればよい。
【0020】
記憶部23は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)からなる。記憶部23は、制御部21が実行する制御プログラムを記憶している。また記憶部23は、個々の電動工具2に割り当てられた識別情報や、個々の電動工具2の品種(例えば製造メーカとその製造メーカで決められた品番とを含む情報)などの情報(工具種別の情報)を記憶している。
【0021】
操作部24は、握り部202に設けられたトリガスイッチ241を有する。トリガスイッチ241が操作されると、トリガスイッチ241の引き込み量(操作量)に比例した大きさの操作信号が、制御部21に入力される。
【0022】
駆動部25は、モータ251と、制御部21から入力される制御信号に応じてモータ251の回転を制御する駆動回路とを備える。モータ251の出力軸の回転は、インパクト機構252を介して出力軸253に伝達される。出力トルクが所定レベル以下であれば、インパクト機構252は、モータ251の出力軸の回転を減速して出力軸253に伝達するように構成されている。出力トルクが所定レベルを超えると、インパクト機構252は、出力軸253に打撃力を加えて、作業対象のネジやボルトをねじ込むように構成されている。モータ251およびインパクト機構252は胴体部201内に収納されている。
【0023】
測定部26は、駆動部25による締付け部材の締め付け力を測定する。測定部26は、
出力軸253に取り付けられた磁歪式のトルクセンサ255で出力軸253に加わったトルクを測定し、トルクセンサ255の測定値から締め付け力を求めている。なお、測定部26は、インパクト機構252が出力軸253に加えた打撃の回数を、打撃によって発生する振動を振動センサで測定したり、打撃によって発生する打撃音をマイクで検出したりすることで計数し、打撃の計数結果から締め付け力を求めてもよい。
【0024】
電源部27は、電池パック203内に収納されている。電源部27は充電池を備えており、握り部202から取り外した電池パック203を充電器に接続することによって、電源部27内の充電池が充電されるように構成されている。電源部27は、充電池に充電された電力で、制御部21を含む電気回路とモータ251とに動作に必要な電力を供給する。
【0025】
表示ランプ29は、ボディ200の表面に露出して設けられた発光ダイオードからなり、例えば青色発光の発光ダイオードと赤色発光の発光ダイオードとを有している。
【0026】
(1.3)管理装置
管理装置1は、作業現場の現場監督が使用するコンピュータであり、現場監督が携帯する携帯端末(例えばタブレット型のコンピュータ、スマートフォンなど)でもよいし、現場事務所などに設置されたパーソナルコンピュータでもよい。
【0027】
管理装置1は、
図1に示すように、信号処理部11と、通信部(第1通信部)12と、記憶部13と、表示部14と、操作部15とを有している。また、管理装置1にはバーコードリーダ3(読取部)が接続されている。
【0028】
信号処理部11は例えばマイクロコンピュータで構成される。本実施形態では、信号処理部11が記憶部13に記憶されたプログラムを実行することによって管理装置1が備える各種の機能(例えば管理部111の機能)が実現される。
【0029】
管理部111は、複数の作業工程の各々で、当該作業工程で使用される2以上の電動工具2に対して通信部12から監視信号を定期又は不定期に送信させている。そして、管理部111は、少なくとも1つの電動工具2からの応答信号を通信部12が受信できない場合、当該作業工程で使用される2以上の電動工具2の全てに作業停止信号を送信させ、電動工具2を使用不可の状態とする。
【0030】
また、管理部111は、次の作業工程の開始前に、次の作業工程での電動工具2の使用台数と同数の登録要求信号を通信部12が受信した場合、通信部12から登録要求信号の送信元の電動工具2に作業許可信号を送信させ、電動工具2を使用可能な状態とする。管理部111は、次の作業工程の開始前に、次の作業工程での使用台数と同数の登録要求信号を通信部12が受信できなかった場合、通信部12から作業許可信号を送信させず、電動工具2を使用不可の状態とする。ここで、次の作業工程の開始前とは、例えば1日の作業の始業時又は作業工程の切り替わり時である。
【0031】
通信部12は、電動工具2の通信部22と同じ通信方式で、近距離の無線通信を行う通信モジュールである。本実施形態ではマスタとなる通信部12に、複数の電動工具2の通信部22がスレーブとして登録され、通信部12と通信部22との間で無線通信が行われる。なお、本実施形態の作業管理システムでは、管理装置1と電動工具2との間で、IEEE802.15.1の規格に準拠した通信方式で通信を行っているが、他の通信方式で通信を行ってもよい。また、管理装置1と電動工具2との間の通信方式は無線通信に限定されず、有線通信でもよい。
【0032】
記憶部13は、ROM及びRAMと、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)のような電気的に書き換え可能な不揮発性メモリと、を備える。記憶部13には、信号処理部11が実行するプログラムが記憶されている。また、記憶部13には、複数の作業工程の各々で電動工具2の使用台数が記憶されている。ここで、記憶部13には、複数の作業工程の各々で使用される電動工具2の工具種別と、工具種別ごとの使用台数とが、作業工程ごとに記憶されていてもよい。また、記憶部13には、実施済みの作業工程において、当該作業工程で使用された電動工具2から収集した作業内容の情報も記憶される。なお、信号処理部11が実行するプログラムは、光学ディスク、ハードディスク、半導体メモリのような記録媒体に書き込まれた状態で提供されてもよいし、インターネット又は移動体通信網のような電気通信回線を通して提供されてもよい。記憶部13は、内蔵メモリでもよいし、コンピュータが備えるカードスロットに装着されるメモリカードでもよい。
【0033】
表示部14は、例えば液晶表示器又はOLED(Organic Light Emitting Diode)表示器のような表示器であり、信号処理部11によって表示内容が制御される。
【0034】
操作部15は、例えば、表示部14を構成する表示器に設けられた静電式又は感圧式のタッチパネルである。操作部15に触れると、操作部15から信号処理部11に操作内容に応じた操作信号が出力される。ここにおいて、操作部15に「触れる」とは、手の指で触れる操作や、入力用のペンなどで触れる操作を含んでいる。
【0035】
また、信号処理部11には、バーコードリーダ3が読み取った情報が入力される。電動工具2の駆動部25によって駆動される先端工具256には種々の工具があり、先端工具256には工具種別を表すバーコードが印刷されたラベル31(媒体)が貼り付けられている(
図3参照)。ここで、バーコードで記録された工具種別の情報とは、例えば、工具の種類(ドライバー、ソケット、ドリルなど)とサイズとを少なくとも含む情報である。信号処理部11は、先端工具256に設けられたラベル31のバーコードをバーコードリーダ3で読み取って得られた情報を、バーコードリーダ3から取得する。なお、本実施形態では管理装置1にバーコードリーダ3が接続されているが、管理装置1が内蔵するカメラと、管理装置1に組み込まれたアプリケーションソフトとで、バーコードを読み取る読取部が実現されてもよい。また、本実施形態では読取部がバーコードリーダ3であるが、先端工具256に工具種別を表す情報を記憶したRFID(Radio Frequency Identification)を埋め込んでもよい。この場合、RFIDタグから非接触で情報を読み取るリーダ装置を管理装置1に接続し、リーダ装置が先端工具256から読み取って得た工具種別の情報を信号処理部11がリーダ装置から取得してもよい。
【0036】
(2)動作説明
本実施形態の作業管理システム10の動作を
図4~
図7に基づいて説明する。
【0037】
まず、管理装置1に対して次の作業工程で使用する電動工具2の識別情報を登録するための登録処理について説明する。以下では、管理装置1での登録処理を
図4のフローチャートに基づいて説明し、電動工具2での登録処理を
図5のフローチャートに基づいて説明する。
【0038】
管理装置1での登録処理を
図4のフローチャートに基いて説明する。現場監督は、例えば1日の始業時又は作業工程の切り替わり時に、管理装置1の操作部15を操作して、複数の作業工程の中から、これから始める作業工程を選択した後、管理装置1の動作モードを登録モードに設定する(
図4のS11)。登録モードとは、次の作業工程(選択された作業工程)で使用される電動工具2から作業内容を示す情報を収集するため、次の作業工程で使用される電動工具2を管理装置1に対応付ける(登録する)動作モードである。
【0039】
管理装置1の動作モードが登録モードに設定されると、信号処理部11は、S11で選択された作業工程(次の作業工程)での電動工具2の使用台数を記憶部13から読み込む。
【0040】
また、信号処理部11は、内部タイマを起動し、登録モードに切り替わってから一定時間T2が経過するまでの間、電動工具2から送信されてくる登録要求信号の受信待ちを行う。この間に、通信部12が電動工具2から送信された登録要求信号と識別情報とを受信すると、管理部111は、登録要求信号を送信してきた電動工具2の識別情報を記憶部13に記憶させる(S12)。
【0041】
一定時間T2が経過するまでの間(S13のNo)、監視装置1は電動工具2からの登録要求信号の受信待ちを行う。そして、一定時間T2が経過するまでの間に、次の作業工程での使用台数と同数の登録要求情報を通信部12が受信できれば(S13のYes)、管理部111は、必要な台数の電動工具2が登録されたと判断し、この間に受信した識別情報を次の作業工程で使用する電動工具2の識別情報として確定する。そして、管理部111は、一定時間T2が経過するまでの間に登録要求情報を送信してきた電動工具2に対して、通信部12から作業許可信号を送信させた後(S14)、登録モードを終了する。これにより、一定時間T2が経過するまでの間に登録要求情報を送信してきた電動工具2は作業可能な状態となり、電動工具2を用いて作業が行える状態となる。
【0042】
なお、管理部111は、次の作業工程で使用される動力工具の工具種別ごとに、工具種別ごとの使用台数と同数の登録要求信号を受信した場合、登録要求信号の送信元の動力工具に作業許可信号を送信させてもよい。次の作業工程で複数種類の電動工具2が使用される場合、電動工具2の種類ごとに、登録要求信号を送信してきた電動工具2の台数と、種類ごとの使用台数とが一致した場合に、管理部111は、登録要求信号を送信してきた電動工具2に作業許可信号を送信する。これにより、管理部111は、適切な電動工具2が使用される場合のみ、電動工具2を使用可能な状態とすることができる。
【0043】
一方、登録モードに切り替わってから一定時間T2が経過するまでの間に、次の作業工程での使用台数と同数の登録要求情報を通信部12が受信できなければ、管理部111は、次の作業工程で必要な台数の電動工具2を登録できなかったと判断する。この場合、管理部111は、一定時間T2が経過するまでの間に登録要求情報を送信してきた電動工具2に対して、通信部12から作業許可信号を送信させず、登録モードを終了する。これにより、一定時間T2が経過するまでの間に登録要求情報を送信してきた電動工具2は作業不可の状態となり、電動工具2を用いた作業を行えない状態となる。
【0044】
次に、電動工具2での登録処理を
図5のフローチャートに基いて説明する。現場監督又は現場監督の監督のもとに作業を行う作業者は、管理装置1の動作モードが登録モードに設定された状態で、次の作業工程で使用する電動工具2を選択し、選択した電動工具2を管理装置1に登録する処理を行う。電動工具2から電池パック203が取り外された後(S21)、電動工具2に電池パック203が取り付けられると(S22)、電動工具2の制御部21はリセット動作を行う。
【0045】
制御部21がリセット動作を行ってから一定時間T1が経過するまでの間に(S23のNo)、トリガスイッチ241が操作されると(S24のYes)、制御部21は、登録要求信号と識別情報とを通信部22から管理装置1に送信させる(S25)。このとき、制御部21は、例えば赤色発光の表示ランプ29を点滅させることによって、管理装置1への登録待ちの状態であることを報知してもよい。これにより、電動工具2から管理装置1に登録要求信号と識別情報とが送信され、管理装置1において登録処理が行われる。ま
た、電動工具2は、登録要求信号の送信後に通信部22が管理装置1から作業許可信号を受信できれば、例えば赤色発光の表示ランプ29を消灯させ、緑色発光の表示ランプ29を点灯させることで、管理装置1への登録処理が完了したことを報知する。
【0046】
一方、トリガスイッチ241が操作されない状態(S24のNo)が、制御部21がリセット動作を行った時点より一定時間T1が経過すると(S23のYes)、制御部21は、管理装置1への登録処理を行わず、通常の動作を実行する。
【0047】
このように、管理装置1が登録モードに設定された状態で、次の作業工程で使用する電動工具2のトリガスイッチ241が操作されると、電動工具2は管理装置1に登録要求信号と識別情報とを送信する。そして、次の作業工程での使用台数と同数の登録要求信号が管理装置1に送信されれば、管理装置1は、登録要求信号を送信した電動工具2を次の作業工程で使用する電動工具2として登録し、これらの電動工具2に作業許可信号を送信する。
【0048】
ここで、登録要求信号を送信した電動工具2が、管理装置1から作業許可信号を受信できれば、トリガスイッチ241から入力される操作信号に応じて駆動部25による駆動動作を行える状態になり、例えば緑色発光の表示ランプ29を点灯させる。そして、トリガスイッチ241が操作されると、電動工具2は、トリガスイッチ241から入力される操作信号に応じて駆動部25による駆動動作を行い、作業内容を示す情報を管理装置1に送信する。
【0049】
一方、登録要求信号を送信した電動工具2が、管理装置1から作業許可信号を受信できなければ、トリガスイッチ241が操作されても駆動部25が動作しない状態となり、例えば赤色発光の表示ランプ29を点灯させて、使用不可の状態であることを報知する。
【0050】
上述のようにして、管理装置1に次の作業工程で使用する電動工具2が登録されると、管理装置1と、管理装置1に登録された電動工具2との間で定期的な通信が行われる(
図6参照)。
図6は、ある作業工程において管理装置1に4台の電動工具2a,2b,2c,2dが登録されている場合に、管理装置1と4台の電動工具2a,2b,2c,2dとの間で行われる通信の様子を示している。
【0051】
管理装置1は、一定の送信間隔t1が経過するごとに、作業許可信号を送信した電動工具2a,2b,2c,2dに監視信号A1を送信する。監視信号A1には、制御対象の電動工具2a,2b,2c,2dの識別情報と、作業内容を指示する作業情報(例えば締め付け回数及び締め付けトルクなどの情報)とを含めてもよい。
【0052】
電動工具2a,2b,2c,2dは、それぞれ、監視信号A1を受信すると、監視信号A1の送信タイミングに同期して設定された送信タイミングで、ACK信号B1,B2,B3,B4を管理装置1に送信する。なお、電動工具2a,2b,2c,2dは、ACK信号を前回送信した時点以後に駆動部25が例えばねじ締め作業を行っていれば、締め付けトルクや締め付け本数などの作業内容を示す情報をACK信号と一緒に管理装置1に送信してもよい。これにより、管理装置1は、電動工具2a,2b,2c,2dの各々で行われた作業内容を管理でき、指示した締め付け本数の作業が行われたか否か、締め付けトルクの実績値が指示した締め付けトルクの許容範囲に収まっているか否かを把握できる。
【0053】
ここにおいて、4台の電動工具2a,2b,2c,2dがACK信号を送信する順番は、例えば識別情報の表す番号の小さい順番に決められていればよく、ACK信号を送信するタイミングが重ならないように送信タイミングをずらしていればよい。なお、複数の電動工具2がACK信号を送信する送信間隔t2は、t2=t1/N2と表される。ここで
、t1は監視信号A1の送信間隔、N2は監視信号A1の送信間隔t1を分割する分割数であり、作業許可信号を与えた電動工具2の台数をN1とした場合に分割数N2はN1よりも大きな整数に設定されればよい。監視信号A1の送信間隔t1が例えば数百ミリ秒で、分割数N2が例えば一千であれば、ACK信号の送信間隔t2は数百マイクロ秒となる。
【0054】
このように、管理装置1は、各作業工程において、複数の電動工具2との間で定期的に通信を行うことで、個々の電動工具2の生存確認を行うことができ、また電動工具2から作業状態を収集することができる。なお、管理装置1と複数の電動工具2との間の通信は定期的に行われることに限定されず、各作業工程で1回又は複数回通信が行われればよい。
【0055】
ところで、管理装置1が現在の作業工程で使用される電動工具2a~2dと通信している状態で、電動工具2a~2dのうちの少なくとも1つから応答信号を受信できなくなると、管理部111は、通信部12から電動工具2a~2dに作業停止命令を送信させる。管理装置1が現在の作業工程で使用される電動工具2a~2dの一部と通信できない状態となった場合、管理装置1は通信不能の電動工具の動作状態を把握できなくなる。したがって、管理装置1の管理部111は、電動工具2a~2dの一部と通信できない状態になると、通信部12から電動工具2a~2dに作業停止命令を送信させている。これにより、現在の作業工程での作業を停止させることができ、管理装置1が電動工具2a~2dを用いた作業内容を把握できない状態を回避できる。
【0056】
ここにおいて、管理装置1の管理部111は、通信相手である電動工具2との間の通信状態に応じて、通信シーケンスを変更してもよい。
【0057】
たとえば、管理装置1の通信部12は、電動工具2から送信されるACK信号の受信信号強度を測定する機能を備えており、管理部111は、通信部12が受信したACK信号とその受信信号強度の情報を取得する。管理部111は、受信信号強度が低い電動工具2ほど信号の再送回数を増やすように、各電動工具2の再送回数を設定し、再送回数を設定する設定信号を通信部12から送信元の電動工具2に送信させる。これにより、受信信号強度が低いほど、つまり通信環境が悪いほど、電動工具2の再送回数がより多くの回数に設定されるから、電動工具2と管理装置1との通信が失敗した場合でも信号を再送信することで、通信が成功する可能性が向上する。
【0058】
なお、電動工具2の通信部22が、管理装置1から送信される監視信号A1の受信信号強度を測定する機能を備え、制御部21が、通信部22の測定した受信信号強度に応じて、受信信号強度が低いほど再送回数を増やすように、再送回数を設定してもよい。制御部21は、信号の再送回数を設定すると、再送回数の設定を通知する信号を通信部22から管理装置1に送信する。この場合も、受信信号強度が低いほど、つまり通信環境が悪いほど、電動工具2の再送回数が多めに設定されるから、電動工具と管理装置1との通信を確実に行うことができる。
【0059】
また、本実施形態において、各電動工具2の制御部21は、作業開始前の状態で、通信部22から管理装置1に登録要求信号と識別情報とを送信させているのであるが、この識別情報に応じて、電動工具2と管理装置1との間の通信シーケンスが変更されてもよい。たとえば、複数ある電動工具2のうち、重点的に監視したい電動工具2(以下、重点監視対象の電動工具2という。)については、当該電動工具2から送信される作業内容の情報を管理装置1が確実に受信したいという要求がある。ここにおいて、重点監視対象の電動工具2は、たとえば、施工ミスが多い作業者が主に使用する電動工具2や、品質管理が厳重な重要部位の作業に使用される電動工具2などである。
【0060】
そこで、管理装置1の管理部111は、電動工具2から送信されてくる識別情報をもとに重点監視対象の電動工具2であるか否かを判断する。そして、管理装置1の管理部111は、通信相手の電動工具2が重点監視対象の電動工具2であれば、この電動工具2の再送回数を重点監視対象以外の電動工具2に比べて増やすように再送回数を設定し、再送回数の設定信号を通信部12から電動工具2に送信する。これにより、重点監視対象の電動工具2と管理装置1との間では、他の電動工具2と管理装置1との間での通信シーケンスに比べて信号の再送回数を多めに設定でき、管理装置1は作業内容の情報を確実に受信できる。ここにおいて、管理部111は、重点監視対象の電動工具2の再送回数を、当該電動工具2との通信状態に応じて調整してもよく、受信信号強度が低い場合は再送回数をさらに多くするように、信号の再送回数を設定してもよい。
【0061】
以上説明したように、本実施形態の作業管理システム10は、管理装置1と、複数の動力工具(電動工具2)とを備える。管理装置1は、第1通信部(通信部12)と、管理部111とを有する。複数の動力工具の各々は、第2通信部(通信部22)と、制御部21とを有する。制御部21は、第2通信部が管理装置1から送信された監視信号を受信した場合に、監視信号に対する応答信号を第2通信部から管理装置1へ送信させるように構成されている。管理部111は、複数の動力工具に第1通信部から監視信号を送信させ、複数の動力工具のうちの少なくとも1つから応答信号を受信できない場合は複数の動力工具の全てに第1通信部から作業停止信号を送信させるように構成されている。
【0062】
これにより、複数の動力工具のうちの少なくとも1つと管理装置1とが通信できない状態になると、管理部111が第1通信部から複数の動力工具の全てに作業停止信号を送信することで、管理装置1が動力工具の動作状態を把握できない状態となるのを回避できる。したがって、複数の動力工具の各々と管理装置1との間で確実に通信を行える状態で、複数の動力工具を動作させることができる。
【0063】
また、本実施形態の管理装置1は、上記の作業管理システム10に用いられる管理装置であって、第1通信部(通信部12)と、管理部111とを有している。管理部111は、複数の動力工具(電動工具2)に第1通信部から監視信号を送信させ、複数の動力工具のうちの少なくとも1つから応答信号を受信できない場合は複数の動力工具の全てに第1通信部から作業停止信号を送信させる。
【0064】
これにより、複数の動力工具のうちの少なくとも1つと管理装置1とが通信できない状態になると、管理部111が第1通信部から複数の動力工具の全てに作業停止信号を送信することで、管理装置1が動力工具の動作状態を把握できない状態となるのを回避できる。したがって、複数の動力工具の各々と管理装置1との間で確実に通信を行える状態で、複数の動力工具を動作させることができる。
【0065】
本実施形態の作業管理システム10において、管理装置1は、複数の作業工程の各々で動力工具(電動工具2)の使用台数を記憶する記憶部13を更に有してもよい。複数の動力工具のうち次の作業工程で使用される動力工具の制御部21は、作業開始前の状態で、第2通信部(通信部22)から管理装置1に登録要求信号と当該動力工具の識別情報とを送信させることが好ましい。管理部111は、次の作業工程での使用台数と同数の登録要求信号を第1通信部(通信部12)が受信した場合、第1通信部から登録要求信号の送信元の動力工具に作業許可信号を送信させることが好ましい。
【0066】
このように、管理部111は、次の作業工程での使用台数と同数の登録要求信号を第1通信部が受信した場合、第1通信部から登録要求信号の送信元の動力工具に作業許可信号を送信させている。したがって、次の作業工程で使用される動力工具の各々と管理装置1
との間で確実に通信を行うことができる。
【0067】
本実施形態の作業管理システム10において、記憶部13は、複数の作業工程の各々で使用される動力工具(電動工具2)の工具種別と工具種別ごとの使用台数とを作業工程ごとに記憶してもよい。管理部111は、次の作業工程で使用される動力工具の工具種別ごとに、工具種別ごとの使用台数と同数の登録要求信号を受信した場合、登録要求信号の送信元の動力工具に作業許可信号を送信させてもよい。
【0068】
これにより、次の作業工程で複数種類の動力工具が使用される場合、工具種別ごとに記憶されている使用台数の動力工具が登録要求信号を送信した場合に、管理装置1は作業許可信号を送信することができる。
【0069】
本実施形態の作業管理システム10において、管理装置1は、動力工具(電動工具2)に設けられて動力工具の工具種別の情報を記録した媒体から工具種別の情報を読み取る読取部(例えばバーコードリーダ3、リーダ装置など)を更に有してもよい。管理装置1の管理部111は、第1通信部(通信部12)が動力工具から送信された登録要求信号を受信した場合に、当該動力工具に設けられた媒体(例えばラベル31、RFIDタグなど)から読取部が読み取った工具種別を、当該動力工具の工具種別とする。
【0070】
管理装置1は、読取部を用いて動力工具に設けられた媒体から、動力工具の工具種別の情報を読み取ることができる。
【0071】
本実施形態の作業管理システムにおいて、複数の動力工具(電動工具2)の各々は、当該動力工具と管理装置1との間の通信状態に応じて、信号の再送回数を設定するように構成されてもよい。
【0072】
複数の動力工具の各々は、通信状態に応じて信号の再送回数を設定することで、複数の動力工具の各々と管理装置1との間で確実に通信を行うことができる。
【0073】
また、管理装置1は、複数の動力工具(電動工具2)のうち重点監視対象の動力工具の再送回数を他の動力工具の再送回数よりも多い回数に設定してもよい。
【0074】
これにより、管理装置1は、重点監視対象の動力工具からの信号をより確実に受信することができる。
【0075】
なお、本実施形態では、締付工具としてトルクレンチを例示したが、締付工具としては所定のトルクでの締付が可能なトルク工具に限られず、ねじ部材を締付可能な締付工具であればどのような工具であっても本発明の適用が可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 管理装置
2 電動工具(動力工具)
3 バーコードリーダ(読取部)
111 管理部
12 通信部(第1通信部)
13 記憶部
21 制御部
22 通信部(第2通信部)
24 操作部
25 駆動部
31 ラベル(媒体)