(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 39/02 20060101AFI20231222BHJP
【FI】
D06F39/02
(21)【出願番号】P 2019124828
(22)【出願日】2019-07-03
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】米澤 孝昭
(72)【発明者】
【氏名】三觜 紳平
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103334268(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105369877(CN,A)
【文献】特開2019-042184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 39/02-39/10
A47L 15/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体部と、当該胴体部の上面を覆う上面板とを含む筐体と、
前記筐体内に配置され、洗濯物の洗濯が行われる洗濯槽と、
前記洗濯槽内に洗濯用の液剤を自動投入するための自動投入機構と、を備え、
前記自動投入機構は、
前記筐体内に配置され、前記液剤が貯留されるタンクと、
前記タンクに設けられ、前記タンク内から排出される前記液剤が流れる流路を有する排出口部と、
前記筐体の外部から前記タンク内に出し入れ可能に挿入され、挿入状態で、その先端部が前記流路内に入り込むとともに、その先端部に前記流路内で固化した前記液剤が捕獲される詰まり防止部材と、
前記タンクの上面に設けられた、前記液剤を投入するための投入口と、を含み、
前記上面板には、前記投入口の真上に開口部が設けられ、
前記排出口部は、前記投入口の真下に設けられ、
前記詰まり防止部材は、前記開口部および前記投入口から前記タンク内に挿入され、
前記詰まり防止部材が前記タンク内に挿入されると、前記先端部が前記流路内に入り込む、
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記詰まり防止部材は、
前記投入口に着脱可能に装着され、前記投入口から前記タンク内へ侵入する異物を捕獲するフィルタ部と、
前記先端部を含み、前記フィルタ部と一体化された詰まり防止部と、を含む、
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の洗濯機において、
前記排出口部は、前記タンクの底部に設けられ、当該底部から下方に延びた後に横方向に屈曲するように形成され、前記流路に含まれる、上下方向の第1流路と横方向の第2流路とを有し、
前記先端部は、上方から前記第1流路内に入り込み、その先端に前記第1流路の下端面を上から覆う受部を有する、
ことを特徴とする洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体洗剤、液体仕上げ剤等の洗濯用の液剤を自動投入するための自動投入機構を備える洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯兼脱水槽内に液体洗剤を自動投入できる洗濯機が、たとえば、特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1の洗濯機は、外郭カバー内に設けられ、液体洗剤が収容される洗剤タンクを備える。洗剤タンクは、液体洗剤を補給する補給口が洗剤タンク蓋により閉じられることにより内部が密閉されるとともに、空気流入口と液体排出口とを有している。空気流入口には、空気ポンプが繋がる。空気ポンプが動作すると、密閉された洗剤タンク内の空気圧が高まり、洗剤タンク内の液体洗剤が液体排出口から押し出され、洗濯兼脱水槽内に投入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の洗濯機では、液体排出口に残留した液体洗剤が経年変化によりゲル状に固化し、固化した液体洗剤が蓄積されていくと、液体排出口が詰まる虞がある。こうなると、液体洗剤が適正に供給されなくなり得る。
【0006】
そこで、固化した液体洗剤を液体排出口から除去する必要があるが、洗剤タンクは、外郭カバー内、即ち、洗濯機の内部に設けられている。よって、外部からユーザが液体排出口を清掃して、固化した液体洗剤を除去することが難しい。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、タンクの排出口部で固化した洗濯用の液剤を、外部から容易に除去でき得る洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主たる態様に係る洗濯機は、胴体部と、当該胴体部の上面を覆う上面板とを含む筐体と、前記筐体内に配置され、洗濯物の洗濯が行われる洗濯槽と、前記洗濯槽内に洗濯用の液剤を自動投入するための自動投入機構と、を備える。ここで、前記自動投入機構は、前記筐体内に配置され、前記液剤が貯留されるタンクと、前記タンクに設けられ、前記タンク内から排出される前記液剤が流れる流路を有する排出口部と、前記筐体の外部から前記タンク内に出し入れ可能に挿入され、挿入状態で、その先端部が前記流路内に入り込むとともに、その先端部に前記流路内で固化した前記液剤が捕獲される詰まり防止部材と、前記タンクの上面に設けられた、前記液剤を投入するための投入口と、を含む。前記上面板には、前記投入口の真上に開口部が設けられ、前記排出口部は、前記投入口の真下に設けられる。前記詰まり防止部材は、前記開口部および前記投入口から前記タンク内に挿入され、前記詰まり防止部材が前記タンク内に挿入されると、前記先端部が前記流路内に入り込む。
【0009】
上記の構成によれば、流路内で固化した洗濯用の洗剤が、固化の際に固着するなどにより、詰まり防止部材の先端部に捕獲される。詰まり防止部材がタンク内から外部に出されると、その先端部が、固化した液剤ごと外部に出される。これにより、流路内から固化した液剤を除去できる。その後、詰まり防止部材の先端部が洗浄されることにより、先端部から固化した液体洗剤が除去される。
【0010】
このように、上記の構成によれば、排出口部の流路内に固化した液剤が蓄積したときに、その固化した液剤を、洗濯機の外部から容易に除去することができ、排出口部の詰まりを容易に防止できる。
【0011】
本態様に係る洗濯機において、前記詰まり防止部材は、前記投入口に着脱可能に装着され、前記投入口から前記タンク内へ侵入する異物を捕獲するフィルタ部と、前記先端部を含み、前記フィルタ部と一体化された詰まり防止部と、を含む。
【0012】
上記の構成によれば、投入口からのタンク内への異物の侵入を防止できる。また、投入口にフィルタ部を装着するだけで、詰まり防止部の先端部を排出口部の流路内にセットできる。さらに、液剤を投入するための投入口を、タンク内への詰まり防止部材の挿入口として利用できる。
【0013】
本態様に係る洗濯機において、前記排出口部は、前記タンクの底部に設けられ、当該底部から下方に延びた後に横方向に屈曲するように形成され、前記流路に含まれる、上下方向の第1流路と横方向の第2流路とを有するような構成とされ得る。この場合、前記先端部は、上方から前記第1流路内に入り込み、その先端に前記第1流路の下端面を上から覆う受部を有する。
【0014】
上記の構成によれば、第1流路内で固化した液剤を、下方から受部で受けることができ、詰まり防止部材の先端部が第1流路内で上方へ引き上げられるときに、固化した液剤が先端部から抜け落ちにくい。よって、固化した液剤が、詰まり防止部材により回収されやすくなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、タンクの排出口部で固化した洗濯用の液剤を、外部から容易に除去でき得る洗濯機を提供できる。
【0016】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明によりさらに明らかとなろう。ただし、以下の実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る、全自動洗濯機の側面断面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る、給水ユニットの構成を示す概略図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る、洗剤タンクに詰まり防止部材が装着される前の状態を示すタンクユニットの斜視図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る、洗剤タンクに詰まり防止部材が装着された状態を示すタンクユニットの斜視断面図である。
【
図5】
図5(a)および(b)は、それぞれ、実施の形態に係る、洗剤タンクの平面図および側面断面図である。
【
図6】
図6(a)ないし(c)は、それぞれ、実施の形態に係る、詰まり防止部材の正面図、側面断面図および平面図である。
【
図7】
図7(a)および(b)は、変更例に係る、タンクユニットの側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の洗濯機の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
【0020】
全自動洗濯機1は、外郭を構成する筐体10を備える。筐体10は、上下の面が開放された方形筒状の胴体部11と、胴体部11の上面を覆う上面板12と、胴体部11を支持する脚台13とを含む。上面板12には、洗濯物の投入口14が形成される。投入口14は、開閉自在な上蓋15により覆われる。上面板12の前部には、内部に制御部16が配置される。制御部16は、全自動洗濯機1による洗濯運転を制御する。
【0021】
筐体10内には、上面が開口する外槽20が、防振装置を有する4本の吊棒21により弾性的に吊り下げ支持される。外槽20内には、上面が開口する洗濯脱水槽22が配される。洗濯脱水槽22は、鉛直方向に延びる回転軸を中心に回転する。洗濯脱水槽22の内周面には、全周に亘って多数の脱水孔22aが形成される。洗濯脱水槽22の上部には、バランスリング23が設けられる。洗濯脱水槽22の底部には、パルセータ24が配される。パルセータ24の表面には、放射状に複数の羽根24aが設けられる。なお、外槽20と洗濯脱水槽22とによって、本発明の洗濯槽が構成される。
【0022】
外槽20の外底部には、洗濯脱水槽22およびパルセータ24を駆動するトルクを発生させる駆動ユニット30が配される。駆動ユニット30は、駆動モータ31と、伝達機構部32とを含む。伝達機構部32は、クラッチ機構32aを有し、当該クラッチ機構32aによる切替操作により、洗い工程およびすすぎ工程では、駆動モータ31のトルクをパルセータ24のみに伝達してパルセータ24のみを回転させ、脱水工程では、駆動モータ31のトルクをパルセータ24および洗濯脱水槽22に伝達してパルセータ24および洗濯脱水槽22を一体的に回転させる。
【0023】
外槽20の外底部には、排水口部20aが形成される。排水口部20aには、排水バルブ40が設けられる。排水バルブ40は、排水ホース41に接続される。排水バルブ40が開放されると、洗濯脱水槽22および外槽20に溜められた水が排水ホース41を通じて機外へ排出される。
【0024】
上面板12の後部には、洗濯脱水槽22内に水道水を供給するための給水ユニット50が配される。
【0025】
図2は、給水ユニット50の構成を示す概略図である。
【0026】
給水ユニット50は、給水バルブ51を有する。給水バルブ51は、いわゆる2連バルブであり、電磁バルブであるメインバルブ52とサブバルブ53とを有する。給水バルブ51の入水口51aは、図示しない給水ホースを介して水道栓に接続される。給水バルブ51のメインバルブ52の出口には、メイン給水路54が接続される。メイン給水路54は、洗濯脱水槽22の上部に位置する注水口54aを有する。
【0027】
給水ユニット50には、洗濯脱水槽22内に洗濯用の液剤の一つである液体洗剤を自動投入するための自動投入機構60が含まれる。
【0028】
自動投入機構60は、タンクユニット61と、三方バルブ62と、サブ給水路63と、供給ポンプ64と、洗剤供給路65とを備える。給水バルブ51のサブバルブ53も、自動投入機構60に含まれる。タンクユニット61は、洗剤タンク100と、供給パイプ200とを含む。洗剤タンク100には、液体洗剤が原液の状態で貯留される。供給パイプ200は、洗剤タンク100の液体洗剤を三方バルブ62の一方の入口へと導く。
【0029】
サブ給水路63は、サブバルブ53の出口と三方バルブ62の他方の入口とに接続される。
【0030】
三方バルブ62の出口に供給ポンプ64が接続され、供給ポンプ64に洗剤供給路65が接続される。洗剤供給路65は、洗濯脱水槽22の上部に位置する供給口65aを有する。供給ポンプ64は、たとえば、ピストン式ポンプとすることができる。
【0031】
三方バルブ62は、供給パイプ200を供給ポンプ64に連通させる状態と、サブ給水路63を供給ポンプ64に連通させる状態との間で切り替えることができる。
【0032】
図1に示すように、自動投入機構60の洗剤タンク100は、筐体10、即ち上面板12の内部に配置される。上面板12には、洗剤タンク100の上面に形成された投入口101の上方に開口部12bが設けられる。開口部12bは、図示しないカバーで覆われ、そのカバーの上から上蓋15により覆われる。ユーザは、上蓋15およびカバーを開放することにより、開口部12bおよび投入口101を通じて洗剤タンク100内に液体洗剤を投入できる。
【0033】
次に、洗剤タンク100を含むタンクユニット61の構成について、詳細に説明する。
【0034】
図3は、洗剤タンク100に詰まり防止部材300が装着される前の状態を示すタンクユニット61の斜視図である。
図4は、洗剤タンク100に詰まり防止部材300が装着された状態を示すタンクユニット61の斜視断面図である。
図5(a)および(b)は、それぞれ、洗剤タンク100の平面図および側面断面図である。
図6(a)ないし(c)は、それぞれ、詰まり防止部材300の正面図、側面断面図および平面図である。なお、
図4には、固化した液体洗剤が、模式的に一点鎖線の楕円で示されている。また、
図5(b)には、供給パイプ200の一部が、一点鎖線により示されている。
【0035】
タンクユニット61は、洗剤タンク100と、供給パイプ200と、フィルタ一体型の詰まり防止部材300とにより構成される。洗剤タンク100は、本発明のタンクに相当する。
【0036】
図3、
図4、
図5(a)および(b)を参照して、洗剤タンク100は、たとえば樹脂材料により形成され、前後に長い箱状を有する。洗剤タンク100の上面には、前側に、円形の投入口101が形成される。また、洗剤タンク100の上面には、投入口101の周囲に、環状のリブ102が2重に形成される。2つのリブ102の間に、上面板12の上面裏側に形成された、図示しない環状のリブが入り込むことにより、ラビリンスのシール構造が形成される。このシール構造により、上面板12の内部への液体洗剤の侵入が防止される。
【0037】
投入口101の内側には、ほぼ有底の円筒状を有するフィルタ収容部103が形成される。フィルタ収容部103の周面は、前部が上端部を残して後方に凹んで平坦面を形成するとともに、上方に向かって僅かに拡がるテーパ形状を有する。また、フィルタ収容部103の周面には、下部の左右両側に、複数の縦長スリット状の孔104が形成される。フィルタ収容部103の底面には、前部が欠けた円形の開口部105が形成される。
【0038】
洗剤タンク100の底面には、投入口101およびフィルタ収容部103のほぼ真下位置に、円形の排出孔106と、この排出孔106に繋がる排出口部107とが設けられる。排出口部107は、排出孔106から下方に延びた後に後方に屈曲する形状を有し、有底円筒状の第1管部108と、第1管部108の周面の後側から後方に突出する円筒状の第2管部109とで構成される。第1管部108の内部には、上下方向の第1流路108aが形成され、第2管部109の内部には、前後方向、即ち横方向の第2流路109aが形成される。第1流路108aおよび第2流路109aは、排出口部107の流路107aを構成する。
図5(b)に示すように、排出口部107の第2管部109に供給パイプ200が接続される。
【0039】
洗剤タンク100の前側面、右側面および後側面には、取付孔110aを有する取付タブ110が形成される。取付タブ110は、洗剤タンク100を上面板12に固定する際に用いられる。
【0040】
図3、
図4、
図6(a)、(b)および(c)を参照して、詰まり防止部材300は、たとえば樹脂材料により形成され、フィルタ部310と、フィルタ部310と一体化された詰まり防止部320とを含む。
【0041】
フィルタ部310は、ほぼ有底の円筒状に形成され、その周面の前部が上端部を残して後方に凹むことにより、前部に平坦な前面310aと前面310aと直交する平坦な段差面310bとが形成される。フィルタ部310の前面310aには、上部に、指を掛けるための取っ手孔311が形成される。フィルタ部310の周面は、上方に向かって僅かに拡がるテーパ形状を有し、その上端部では、液体洗剤を受けやすいように、拡がる角度が大きくなっている。
【0042】
フィルタ部310における、周面と底面との間の角部には、周方向に並ぶように複数の縦長スリット状の第1孔312が形成される。また、フィルタ部310の底面には、複数の円形の小さな第2孔313が形成される。
【0043】
詰まり防止部320は、フィルタ部310の底面から下方に延びる、断面が十字形状のリブ321と、リブ321の先端に形成された円板状の受部322とを含む。リブ321の先端部には、前後方向に貫通する左右2つの方形の流通口323が形成される。
【0044】
図3に示すように、詰まり防止部材300は、投入口101から洗剤タンク100内に挿入される。この際、詰まり防止部320は、フィルタ収容部103の開口部105を通されて、洗剤タンク100の内部に進入する。
【0045】
詰まり防止部材300が洗剤タンク100内に最後まで挿入されると、即ち、詰まり防止部材300の洗剤タンク100への装着が完了すると、
図4に示すように、フィルタ部310がフィルタ収容部103に収容されるとともに、詰まり防止部320の先端部が排出口部107の流路107a、即ち第1流路108a内に入り込む。詰まり防止部320の受部322によって、第1流路108aの下端面が上から覆われる。排出口部107の第2流路109aへの入口の前方に詰まり防止部320の2つの流通口323が位置する。
【0046】
予め、ユーザによって、投入口101から洗剤タンク100内に液体洗剤が投入される。投入された液体洗剤は、フィルタ部310の第1孔312および第2孔313とフィルタ収容部103の孔104および開口部105を通って洗剤タンク100の内部に流れ込む。
【0047】
投入口101は、液体洗剤を投入しやすいよう、比較的大きな開口面積を有する。このため、液体洗剤の投入時などに、誤って、投入口101から洗剤タンク100内へ異物が侵入し得る。洗剤タンク100内へ侵入した異物は、フィルタ部310の第1孔312や第2孔313を通ることができず、フィルタ部310に捕獲される。
【0048】
全自動洗濯機1では、各種運転コースの洗濯運転が行われる。洗濯運転では、洗い工程、中間脱水工程、すすぎ工程および最終脱水工程が順番に実行される。
【0049】
洗い工程およびすすぎ工程では、洗濯脱水槽22内に水が溜められた状態で、パルセータ24が右方向および左方向に回転する。パルセータ24の回転により洗濯脱水槽22内に水流が発生する。洗い工程では、発生した水流と水に含まれる洗剤とにより洗濯物が洗われる。すすぎ工程では、発生した水流により洗濯物がすすがれる。
【0050】
中間脱水工程および最終脱水工程では、洗濯脱水槽22およびパルセータ24が一体となって高速回転する。洗濯脱水槽22に発生する遠心力の作用により、洗濯物が脱水される。
【0051】
洗い工程での給水時には、自動投入機構60により、洗濯脱水槽22内に液体洗剤が自動投入される。この際、まず、三方バルブ62が、供給パイプ200を供給ポンプ64に連通させる状態に切り替えられる。供給ポンプ64が作動すると、ポンプ作用によって洗剤タンク100内の液体洗剤が排出口部107から排出される。このとき、排出口部107の第1流路108aにおいてリブ321の流通口323よりも前方を流れる液体洗剤は、流通口323を通って第2流路109aの入口へと至る。
【0052】
排出口部107から排出された液体洗剤は、
図2の破線矢印に示すように、供給パイプ200、三方バルブ62および供給ポンプ64を通って、洗剤供給路65に送られる。供給ポンプ64は、予め決められた時間だけ動作し、これにより、予め決められた量の液体洗剤が、洗剤供給路65に溜められる。
【0053】
次に、三方バルブ62が、サブ給水路63を供給ポンプ64に連通させる状態に切り替えられ、サブバルブ53が開かれる。
図2の実線矢印に示すように、水道栓からの水が、サブ給水路63、三方バルブ62および供給ポンプ64を通って洗剤供給路65へと流れ、液体洗剤を押し流す。水に押し流された液体洗剤は、
図2の一点鎖線矢印に示すように、水とともに洗剤供給路65の供給口65aから洗濯脱水槽22内へ投入される。洗濯脱水槽22内への液体洗剤の投入が完了すると、サブバルブ53が閉じられる。
【0054】
その後、洗濯脱水槽22内への給水が行われる。メインバルブ52が開かれ、水道栓からの水がメイン給水路54を流れて注水口54aから洗濯脱水槽22内に放出される。洗濯脱水槽22内の水位が所定の洗い水位に到達すると、メインバルブ52が閉じられて、給水が終了する。
【0055】
さて、全自動洗濯機1が使用されている間に、洗剤タンク100の排出口部107の流路107a内、即ち第1流路108a内に固化した液体洗剤が蓄積されていく虞がある。たとえば、洗剤タンク100内が空となった状態で長く放置されると、第1流路108a内に残留した液体洗剤が空気に長く触れることによりゲル状に固化しやすく、このような状況が繰り返されると、固化した液体洗剤が次第に増えて第1流路108a内が詰まってくる。
【0056】
本実施の形態では、詰まり防止部320の先端部が第1流路108a内に入り込んでいる。このため、
図4の一点鎖線で示すように、固化した液体洗剤は、リブ321に付着したり受部322上に堆積したりすることにより、詰まり防止部320の先端部で捕獲される。つまり、詰まり防止部320の先端部は、固化した液体洗剤の捕獲部として機能する。
【0057】
このように、排出口部107の流路107a内、即ち第1流路108a内に固化した液体洗剤が詰まってきた場合、ユーザは、詰まり防止部材300を上方へ持ち上げて、洗剤タンク100から取り外す。このとき、ユーザは、取っ手孔311に指を掛けるようにしてフィルタ部310の上端部を摘まむことで、詰まり防止部材300を把持できる。
【0058】
詰まり防止部材300が洗剤タンク100から取り外されると、詰まり防止部320の先端部が、固化した液体洗剤ごと外部に出される。これにより、第1流路108a内から固化した液体洗剤が除去される。その後、詰まり防止部320の先端部が洗浄されることにより、先端部から固化した液体洗剤が除去される。
【0059】
ユーザは、詰まり防止部材300の洗浄が終わると、洗浄された詰まり防止部材300を洗剤タンク100に装着する。
【0060】
<実施の形態の効果>
以上、本実施の形態によれば、自動投入機構60が詰まり防止部材300を有する。詰まり防止部材300は、筐体10の外部から洗剤タンク100内に出し入れ可能に挿入され、挿入状態で、その先端部が排出口部107の流路107a内に入り込むとともに、その先端部に流路107a内で固化した液体洗剤が捕獲される。これにより、排出口部107の流路107a内に固化した液体洗剤が蓄積したときに、その固化した液体洗剤を、全自動洗濯機1の外部から容易に除去することができ、排出口部107の詰まりを容易に防止できる。
【0061】
また、本実施の形態によれば、詰まり防止部材300が、投入口101に着脱可能に装着され、投入口101から洗剤タンク100内へ侵入する異物を捕獲するフィルタ部310と、フィルタ部310と一体化され、その先端部に固化した液体洗剤が捕獲される詰まり防止部320とにより構成される。これにより、投入口101からの洗剤タンク100内への異物の侵入を防止できる。また、投入口101にフィルタ部310を装着するだけで、詰まり防止部320の先端部を排出口部107の流路107a内にセットできる。さらに、液体洗剤を投入するための投入口101を、洗剤タンク100内への詰まり防止部材300の挿入口として利用できる。
【0062】
さらに、本実施の形態によれば、排出口部107が、洗剤タンク100の底面から下方に延びた後に横方向に屈曲するように形成されて、上下方向の第1流路108aと横方向の第2流路109aとを有する構成とされるとともに、詰まり防止部320の先端部が、上方から第1流路108a内に入り込み、その先端に第1流路108aの下端面を上から覆う受部322を有する構成とされる。これにより、第1流路108a内で固化した液体洗剤を、下方から受部322で受けることができるので、詰まり防止部320の先端部が第1流路108a内で上方へ引き上げられるときに、固化した液体洗剤が先端部から抜け落ちにくい。よって、固化した液体洗剤が、詰まり防止部材300により回収されやすくなる。
【0063】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態によって何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も、上記以外に種々の変更が可能である。
【0064】
たとえば、上記実施の形態では、詰まり防止部材300の詰まり防止部320が、断面が十字形状のリブ321と、リブ321の先端に形成された円板状の受部322とを含むような構成とされた。しかしながら、詰まり防止部320は、その先端部に固化した液体洗剤が捕獲されれば、上記の構成と異なる構成であってもよい。
【0065】
たとえば、
図7(a)の構成例では、詰まり防止部材300Aが、フィルタ部310と一体化された詰まり防止部330を有する。詰まり防止部330は、円筒状の胴部331と、胴部331の底面の開口を塞ぐ円板状の底部332とで構成される。底部332は、本発明の受部に相当する。胴部331の下端部の後側には、開口部333が形成される。開口部333は、第2流路109aの入口に対向する。胴部331には、複数の長方形の流通口334が形成される。投入口101から投入されてフィルタ部310の第2孔313から詰まり防止部330の内部へ流れ出た液体洗剤は、流通口334を通って洗剤タンク100の内部へ流れる。また、洗剤タンク100内の一部の液体洗剤は、流通口334を通って詰まり防止部330の内部へ流れ、開口部333を通って第2流路109aへと流れる。
【0066】
図7(a)の詰まり防止部材300Aにおいても、詰まり防止部330の先端部により、第1流路108a内で固化した液体洗剤を捕獲できる。
【0067】
また、上記実施の形態では、詰まり防止部材300は、詰まり防止部320がフィルタ部310と一体化された構成とされた。しかしながら、たとえば、
図7(b)の構成例に示すように、詰まり防止部材300Bが、フィルタ部を備えない構成とされてもよい。
【0068】
図7(b)の構成例では、フィルタ部310が、単独のフィルタ部材310として設けられ、洗剤タンク100Aのフィルタ収容部103に収容される。洗剤タンク100Aでは、排出口部107が、フィルタ収容部103よりも後方に形成される。また、洗剤タンク100Aの上面には、投入口101の後方に円形の挿入口111が形成される。
【0069】
詰まり防止部材300Bは、詰まり防止部340と、挿入口111を塞ぐキャップ部350とにより構成される。詰まり防止部340は、キャップ部350の底面から下方に延びる、断面が十字形状のリブ341と、リブ341の先端に形成された円板状の受部342とを含む。リブ341の先端部には、前後方向に貫通する左右2つの方形の流通口343が形成される。キャップ部350の上面には、摘み351が設けられる。詰まり防止部材300Bが挿入口111から洗剤タンク100に挿入されると、詰まり防止部340の先端部が、排出口部107の第1流路108a内に入り込む。
【0070】
図7(b)の詰まり防止部材300Bにおいても、詰まり防止部340の先端部により、第1流路108a内で固化した液体洗剤を捕獲できる。
【0071】
さらに、上記実施の形態では、洗剤タンク100が、上面板12の内部における後左端部に配置されたが、他の位置に配置されてもよい。また、洗剤タンク100が、上面板12以外の筐体10の内部に配置されてもよい。
【0072】
さらに、上記実施の形態では、自動投入機構60は、タンクユニット61に洗剤タンク100を含み、洗剤タンク100内に溜められた液体洗剤を自動投入する構成とされた。しかしながら、自動投入機構60は、タンクユニット61に、洗剤タンク100に替えて、あるいは洗剤タンク100とともに、洗剤タンク100と同様に詰まり防止部材300を有する構成を有し、洗濯用の液剤の一つである液体仕上げ剤が溜められる仕上げ剤タンクを含み、仕上げ剤タンク内の液体仕上げ剤を自動投入する構成とされてもよい。
【0073】
さらに、上記実施の形態では、排出口部107がL字状に屈曲する構成とされ、その流路107aもL字状に屈曲する構成、即ち上下方向の第1流路108aと横方向の第2流路109aとを含む構成とされた。しかしながら、排出口部107とその流路107aが、直線形状とされてもよい。この場合、詰まり防止部材300、即ち詰まり防止部320の先端部に受部322が設けられると、受部322により流路107aが塞がれやすくなる。よって、この場合、詰まり防止部320の先端部に受部322が設けられなくてもよい。
【0074】
さらに、上記実施の形態では、自動投入機構60を備える洗濯機として、全自動洗濯機1が例示された。しかしながら、本発明は、全自動洗濯機1以外の洗濯機、たとえば、全自動洗濯乾燥機、ドラム式洗濯機、ドラム式洗濯乾燥機などに適用することができる。ドラム式洗濯機およびドラム式洗濯乾燥機では、外槽と、外槽内に配置されるドラムとによって洗濯槽が構成される。
【0075】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 全自動洗濯機(洗濯機)
10 筐体
20 外槽(洗濯槽)
22 洗濯脱水槽(洗濯槽)
60 自動投入機構
100 洗剤タンク(タンク)
101 投入口
107 排出口部
107a 流路
108a 第1流路
109a 第2流路
300 詰まり防止部材
310 フィルタ部
320 詰まり防止部
322 受部