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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】遠隔診療システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 80/00 20180101AFI20231222BHJP
【FI】
G16H80/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019136093
(22)【出願日】2019-07-24
(65)【公開番号】P2021021969
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】517140181
【氏名又は名称】株式会社ウィンメディックス
(74)【代理人】
【識別番号】100133411
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 龍郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067677
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 彰司
(72)【発明者】
【氏名】白木 茂
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-215158(JP,A)
【文献】特開2002-024406(JP,A)
【文献】特開2018-032263(JP,A)
【文献】特開2017-146914(JP,A)
【文献】株式会社インサイトイメージ,できるOffice 365,第1版,株式会社インプレス 土田 米一,2019年04月21日,第96-118ページ
【文献】リンクアップ,ゼロからはじめる Skype スマートガイド,第1版,株式会社技術評論社 片岡 巌,2017年01月20日,第28-50ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の国の少なくとも一人の医師の情報が予め記憶されたサーバ装置と、
前記第1の国の医師が用いる第1の端末装置と、
前記第1の国とは異なる第2の国の医師が用いる第2の端末装置とを備え、
前記第2の端末装置が、前記サーバ装置に記憶された前記第1の国の医師の情報を表示して前記第2の国の医師に対して提示し、かつ前記第1の国の医師の選択を受け付け、
前記サーバ装置が、前記第2の端末装置において前記第1の国の医師の選択が受け付けられた場合には、該選択された第1の国の医師が用いる第1の端末装置と前記第2の端末装置とを通信可能に接続し、
通訳者が用いる第3の端末装置を備え、
前記サーバ装置が、前記第2の端末装置において前記第1の国の医師の選択が受け付けられた場合、前記第1の端末装置と前記第3の端末装置とを通信可能に接続し、かつ前記第2の端末装置と前記第3の端末装置とを通信可能に接続する遠隔診療システム。
【請求項2】
前記サーバ装置が、前記第2の端末装置において前記第2の国の医師により前記通訳者の要求指示が受け付けられた場合または前記第1の端末装置において前記第1の国の医師により前記通訳者の要求指示が受け付けられた場合に、前記第1の端末装置と前記第3の端末装置とを通信可能に接続し、かつ前記第2の端末装置と前記第3の端末装置とを通信可能に接続する請求項1記載の遠隔診療システム。
【請求項3】
前記サーバ装置が、前記第1の端末装置と前記第2の端末装置と前記第3の端末装置の3者同時通話を可能とする請求項1記載の遠隔診療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一人の患者を異なる国の医師が診療することができる遠隔診療システムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、患者が使用する端末装置と医師が使用する端末装置との間をインターネット回線などで接続することによって、患者が病院などの医療施設に出向くことなく、遠隔地で診察を受けることができるシステムが提案されている。
【0003】
たとえば特許文献1には、患者が端末装置を用いて診察予約を行ったり、問診情報を端末装置に対して設定入力したりして、ビデオ通話によって医師の診察を受けるシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017―146914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、患者と医師がそれぞれ端末装置を用いて対話するシステムが提案されているが、医師同士が対話することを想定したシステムではない。
【0006】
すなわち、たとえば日本以外の外国の医師が、その外国の医療機関などで患者の診療を行う際、日本の医師の意見を聞きたい場合がある。また、患者側から日本の医師の診察や薬の処方を受けたいとの申し出がある場合もある。特許文献1に記載のシステムは、このような場面を想定したシステムではない。
【0007】
また、上述したような場合に、たとえば外国の医師が、日本の医師の連絡先を調べて電話を掛けたり、端末装置を使って電子メールを送ったりしたのでは手間と時間がかかる。
【0008】
さらに、日本の医師と外国の医師とで話す言語が異なる場合、互いに正確な情報を伝えることができないことも考えられる。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑み、一人の患者を異なる国の医師が診療する際、簡易かつ迅速に医師同士を繋ぐことができる遠隔診療システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の遠隔診療システムは、第1の国の少なくとも一人の医師の情報が予め記憶されたサーバ装置と、第1の国の医師が用いる第1の端末装置と、第1の国とは異なる第2の国の医師が用いる第2の端末装置とを備え、第2の端末装置が、サーバ装置に記憶された第1の国の医師の情報を表示して第2の国の医師に対して提示し、かつ第1の国の医師の選択を受け付け、サーバ装置が、第2の端末装置において第1の国の医師の選択が受け付けられた場合には、その選択された第1の国の医師が用いる第1の端末装置と第2の端末装置とを通信可能に接続する。
【0011】
また、上記本発明の遠隔診療システムにおいては、通訳者が用いる第3の端末装置を備えることができ、サーバ装置は、第2の端末装置において第1の国の医師の選択が受け付けられた場合、第1の端末装置と第3の端末装置とを通信可能に接続し、かつ第2の端末装置と第3の端末装置とを通信可能に接続することができる。
【0012】
また、上記本発明の遠隔診療システムにおいて、サーバ装置は、第2の端末装置において第2の国の医師により通訳者の要求指示が受け付けられた場合または第1の端末装置において第1の国の医師により通訳者の要求指示が受け付けられた場合に、第1の端末装置と第3の端末装置とを通信可能に接続し、かつ第2の端末装置と第3の端末装置とを通信可能に接続することができる。
【0013】
また、上記本発明の遠隔診療システムにおいて、サーバ装置は、第1の端末装置と第2の端末装置と第3の端末装置の3者同時通話を可能とすることができる。
【0014】
また、上記本発明の遠隔診療システムにおいて、第2の端末装置は、第1の端末装置に対して患者の検査結果を出力することができる。
【0015】
また、上記本発明の遠隔診療システムにおいて、第1の端末装置は、第1の医師のよって作成された薬の処方箋をサーバ装置に出力することができる。
【0016】
また、上記本発明の遠隔診療システムにおいて、サーバ装置は、複数の国の処方箋の料金体系データを有し、第1の端末装置から出力された処方箋を受け付けた際、その受け付けた処方箋と第1の国の前記料金体系データとに基づいて、薬の料金を算出し、その算出した料金を患者が用いる第4の端末装置に出力することができる。
【0017】
また、上記本発明の遠隔診療システムにおいて、第4の端末装置は、薬の料金の決済処理を行うことができる。
【0018】
また、上記本発明の遠隔診療システムにおいて、サーバ装置は、処方箋に記載された薬品の注文情報を出力することができる。
【0019】
また、上記本発明の遠隔診療システムにおいて、サーバ装置は、処方箋に記載された薬品の発送依頼を出力することができる。
【0020】
また、上記本発明の遠隔診療システムにおいて、第1の国の医師の情報は、第1の国の医師の専門分野、第1の国の医師が属する医療機関および第1の国の医師の連絡先の少なくとも1つを含むことができる。
【0021】
また、上記本発明の遠隔診療システムにおいて、サーバ装置は、患者個人の情報および医師のサポート情報のうちの少なくとも1つの情報を暗号化して記憶することができ、第1の端末装置または第2の端末装置は、暗号化された情報を複合化し、表示することができる。
【0022】
また、上記本発明の遠隔診療システムにおいて、サーバ装置は、患者の問診結果および患者の検査情報の少なくとも1つを含む患者情報と患者の診断情報との関係を入力情報として、機械学習して得られた学習済みモデルを記憶し、第1の端末装置または第2の端末装置は、学習済みモデルに対して、診断対象の患者の患者情報を入力することによって診断対象の患者の診断情報を取得することができる。
【0023】
本発明の遠隔診療方法は、第1の国の少なくとも一人の医師の情報が予め記憶されたサーバ装置と、第1の国の医師が用いる第1の端末装置と、第1の国とは異なる第2の国の医師が用いる第2の端末装置とを用い、サーバ装置に記憶された第1の国の医師の情報を第2の端末装置に表示させることによって第2の国の医師に対して提示した後、第2の端末装置において第1の国の医師の選択を受け付け、その第1の国の医師の選択を受け付けた際、サーバ装置が、選択された第1の国の医師が用いる第1の端末装置と第2の端末装置とを通信可能に接続し、第2の国の医師が、第2の端末装置と第1の端末装置とを介して第1の国の医師と対話する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の遠隔診療システムおよび方法によれば、第2の端末装置が、サーバ装置に記憶された第1の国の医師の情報を表示して第2の国の医師に対して提示し、かつ第1の国の医師の選択を受け付け、サーバ装置が、第2の端末装置において第1の国の医師の選択が受け付けられた場合には、その選択された第1の国の医師が用いる第1の端末装置と第2の端末装置とを通信可能に接続するようにしたので、一人の患者を異なる国(第1の国と第2の国)の医師が診療する際、簡易かつ迅速に医師同士を繋ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の遠隔診療システムの一実施形態の概略構成を示すブロック図
図2】医師の情報のリスト表示の一例を示す図
図3】遠隔診療システムを用いた遠隔診療方法を説明するためのフローチャート
図4】遠隔診療システムを用いた遠隔診療方法を説明するためのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の遠隔診療システムの一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態の遠隔診療システム1の概略構成を示すブロック図である。
【0027】
本実施形態の遠隔診療システム1は、たとえば日本以外の外国において、現地の医師またはその医師の診察を受けた患者が、日本の医師の診察結果も聞きたいような場合に、現地の医師が簡易かつ迅速に日本の医師と連絡をとることができ、現地での検査結果などを日本の医師に知らせることによって日本の医師の診察結果を聞くことができるシステムである。
【0028】
本実施形態の遠隔診療システム1は、具体的には、図1に示すように、第1の端末装置10と、第2の端末装置20と、第3の端末装置30と、サーバ装置40とを備えている。
【0029】
第1の端末装置10、第2の端末装置20および第3の端末装置30は、それぞれ表示部および入力部を備えており、デスクトップパソコンやノートパソコンなどでもよいし、タブレット端末やスマートフォンなどの携帯電話などといった携帯端末であってもよい。
【0030】
第1の端末装置10、第2の端末装置20および第3の端末装置30は、インターネット回線、電話回線およびLAN(Local Area Network)などの通信回線を用いて、サーバ装置40を介して互いに通信可能に構成されている。本実施形態においては、第1の端末装置10と第2の端末装置20の間の通信、第1の端末装置10と第3の端末装置30の間の通信、第2の端末装置20と第3の端末装置30との間の通信は、全てサーバ装置40を介して行われる。ただし、一部の装置間について、サーバ装置40を介することなく、直接通信するように構成してもよい。
【0031】
また、第1の端末装置10、第2の端末装置20および第3の端末装置30は、マイクおよびスピーカーなどの通話機能を有し、この通話機能を用いることによって各端末装置の使用者が互いに通話できるように構成されている。
【0032】
また、第1の端末装置10、第2の端末装置20および第3の端末装置30は、カメラ機能を有し、そのカメラ機能によって各端末装置の使用者が撮影され、撮影された顔映像情報は、第1の端末装置10、第2の端末装置20および第3の端末装置30の間で、サーバ装置40を介して相互に送信されて表示可能に構成されている。顔映像情報は、顔を撮影した動画でもよいし、静止画でもよい。
【0033】
また、第1の端末装置10、第2の端末装置20および第3の端末装置30には、本実施形態の遠隔診療方法を実施するための専用アプリケーションがインストールされている。専用アプリケーションは、たとえば第1~第3の端末装置10,20,30の各ユーザのIDおよびパスワードの入力を受け付けて、サーバ装置40へのログインを受け付けるログイン画面や、上述した顔映像情報を表示したり、所定の指示入力を受け付ける通話画面などを第1~第3の端末装置10,20,30の表示部に表示させる。
【0034】
本実施形態においては、日本が、本発明の第1の国に相当し、外国が、本発明の第2の国に相当するものとする。
【0035】
第1の端末装置10は、たとえば日本の医師が用いるものであり、サーバ装置40からの呼び出し発信を受信することによって第2の端末装置20と通信可能に接続される。日本の医師は、第1の端末装置10の通話機能およびカメラ機能を用いて、第2の端末装置20を用いる外国の医師または第3の端末装置30を用いる通訳者と通話する。これにより、日本の医師は、外国の医師の患者の検査結果などを取得し、その患者の診察を行い、外国の医師にその診察結果を伝える。
【0036】
第2の端末装置20は、たとえば外国の医師が用いるものである。第2の端末装置20は、サーバ装置40に予め記憶された日本の医師の情報を表示部に表示することによって、日本の医師の情報を外国の医師に対して提示する。
【0037】
また、第2の端末装置20は、表示部に表示した日本の医師の選択を受け付ける。外国の医師は、第2の端末装置20の表示部に複数の日本の医師の情報が表示されている場合には、その複数の日本の医師のうち、連絡を取りたい医師を選択する。
【0038】
第2の端末装置20は、複数の日本の医師のうちのいずれかの医師が選択された場合には、その選択情報をサーバ装置40に出力する。サーバ装置40は、第2の端末装置20から出力された選択情報を受信した場合には、その選択された医師が用いる第1の端末装置10に発信し、第1の端末装置10において応答指示が入力された場合には、サーバ装置40を介して第1の端末装置10と第2の端末装置20とが接続され、通信可能な状態となる。
【0039】
図2は、第2の端末装置20に表示される日本の医師の情報の一例を示す図である。第2の端末装置20は、図2に示すように、複数の日本の医師の情報をリスト表示する。図2に示す例では、医師の情報として、医師が属する医療機関名、医師名、医師の専門分野および医師の連絡先が表示されている。第2の端末装置20を用いる外国の医師は、第2の端末装置20の入力部を用いて、図2に示す医師の情報の中からいずれか一人の医師を選択する。
【0040】
このように、第2の端末装置20において表示されたリストの中から、所望の日本の医師の選択を受け付けることによって第1の端末装置10と第2の端末装置20とを接続することにより、一人の患者を異なる国の医師が診療する際、簡易かつ迅速に医師同士を繋ぐことができる。
【0041】
また、日本の医師の情報として図2に示すような内容をリスト表示することによって、外国の医師は、日本の医師を容易に選択することができる。
【0042】
外国の医師は、第2の端末装置20の通話機能およびカメラ機能を用いて第1の端末装置10を用いる日本の医師と通話するとともに、外国の医師の患者の検査結果を第2の端末装置20から第1の端末装置10に送信する。検査結果は、第2の端末装置20に記憶された検査結果を送信するようにしてもよいし、複数の患者の検査結果を記憶した検査データサーバ装置(図示省略)から読み出して送信するようにしてもよい。
【0043】
第1の端末装置10は、受信した検査結果を表示し、日本の医師は、その検査結果を見て診察を行う。そして、日本の医師は、その診察結果を第1の端末装置10を用いて外国の医師に伝える。
【0044】
第3の端末装置30は、通訳者が用いるものである。第2の端末装置20を用いる外国の医師と第1の端末装置10を用いる日本の医師が対話する際、互いの言語で対話するよりは、通訳者を介して対話した方が正確な情報が伝わりやすい。
【0045】
そこで、本実施形態においては、第2の端末装置20において通訳者の要求指示が入力された場合または第1の端末装置10において通訳者の要求指示が入力された場合、サーバ装置40は、その要求指示に応じて、第1の端末装置10と第3の端末装置30とを通信可能に接続し、第2の端末装置20と第3の端末装置30とを通信可能に接続する。
【0046】
通訳者は、第3の端末装置30の通話機能およびカメラ機能を用いて、日本の医師および外国の医師と対話し、その内容を日本語から外国語または外国語から日本語に通訳してそれぞれの医師に伝える。
【0047】
なお、本実施形態においては、第1の端末装置10または第2の端末装置20において通訳者の要求指示があった場合に、サーバ装置40が、第1の端末装置10および第2の端末装置20を第3の端末装置30に接続するようにしたが、これに限らず、通訳者の要求指示の有無に関わらず、第2の端末装置20において日本の医師の選択が受け付けられた場合には、第1の端末装置10および第2の端末装置20を第3の端末装置30に接続するようにしてもよい。
【0048】
サーバ装置40は、少なくとも一人の日本の医師の情報が予め記憶されたものである。サーバ装置40は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random access memory)などの半導体メモリ、ハードディスクなどのストレージ、並びに通信I/Fを備えている。
【0049】
サーバ装置40のハードディスクには、上述した日本の医師の情報が記憶されるとともに、制御プログラムがインストールされている。サーバ装置40のCPUによって上記制御プログラムが実行されることによって、第1~第3の端末装置10,20,30間の通信が制御される。
【0050】
また、サーバ装置40の制御プログラムは、第2の端末装置20から日本の医師の情報の送信要求を受信した場合に、予め記憶した日本の医師の情報を第2の端末装置20に送信する。第2の端末装置20の専用アプリケーションは、サーバ装置40から送信された日本の医師の情報を受信し、これをリスト表示する。
【0051】
また、サーバ装置40の制御プログラムは、第2の端末装置20においていずれかの日本の医師が選択された場合には、その選択された医師の連絡先に基づいて、その医師が用いる第1の端末装置10に呼び出し発信する。第1の端末装置10の専用アプリケーションは、サーバ装置40からの呼び出し発信を受信して日本の医師に知らせ、日本の医師の所定の応答指示の入力に応じてサーバ装置40に応答する。サーバ装置40は、第1の端末装置10からの応答に応じて第1の端末装置10と第2の端末装置20とを通信可能とする。
【0052】
また、サーバ装置40の制御プログラムは、第2の端末装置20において通訳者の要求指示が受け付けられた場合には、予め記憶された通訳者の連絡先に基づいて、通訳者が用いる第3の端末装置30に呼び出し発信する。第3の端末装置30の専用アプリケーションは、サーバ装置40からの呼び出し発信を受信して通訳者に知らせ、通訳者の所定の応答指示の入力に応じてサーバ装置40に応答する。サーバ装置40は、第3の端末装置30からの応答に応じて第1の端末装置10および第2の端末装置20と第3の端末装置30とを通信可能とする。
【0053】
また、サーバ装置40の制御プログラムは、第1の端末装置10、第2の端末装置20または第3の端末装置30において、3者同時通話の指示入力が受け付けられた場合には、第1~第3の端末装置10,20,30に3者同時通話を行うための画面を表示させ、3者同時通話を可能とする。
【0054】
次に、上述した第1の端末装置10、第2の端末装置20、第3の端末装置30およびサーバ装置40を備えた遠隔診療システム1を用いた遠隔診療方法の流れについて、図3および図4に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、図3および図4のフローチャートは上から下に向かって時間が進み、図3に示す処理の後に図4に示す処理が行われる。
【0055】
まず、サーバ装置40に対して、予め日本の医師の情報が記憶される(S10)。サーバ装置40に日本の医師の情報を記憶する方法としては、日本の医師が、第1の端末装置10の専用アプリケーションを用いて自らの情報を入力して記憶するようにしてもよいし、サーバ装置40の管理者が、名簿などを元に日本の医師の情報を入力して記憶するようにしてもよい。
【0056】
そして、外国の医師が、日本の医師と連絡をとる際には、第2の端末装置20の専用アプリケーションを立ち上げ、ログインした後(S12)、日本の医師の情報のリストを表示させる(S14)。外国の医師は、第2の端末装置20に表示されたリストの中から連絡を取りたい医師を選択する(S16)。第2の端末装置20は、その選択情報をサーバ装置40に出力する。
【0057】
サーバ装置40は、第2の端末装置20から出力された医師の選択情報を受信した場合には、その選択された医師の連絡先に基づいて、その医師が用いる第1の端末装置10に呼び出し発信する。第1の端末装置10の専用アプリケーションは、サーバ装置40からの呼び出し発信を受信して日本の医師に知らせる。
【0058】
日本の医師は、第1の端末装置10が呼び出し発信を受信したことを確認すると、第1の端末装置10の専用アプリケーションのログイン画面からログインし(S18)、応答指示を入力する(S20)。第1の端末装置10は、日本の医師によって応答指示が入力された場合には、サーバ装置40に応答信号を出力する。
【0059】
サーバ装置40は、第1の端末装置10からの応答信号に応じて第1の端末装置10と第2の端末装置20とを通信可能とする(S22)。
【0060】
第1の端末装置10と第2の端末装置20とが通信可能となった場合には、それぞれの専用アプリケーションの通話画面において、日本の医師と外国の医師の顔映像情報が表示され、日本の医師と外国の医師とが顔を見ながら通話し、患者の診察を行う(S24)。
【0061】
外国の医師は、日本の医師に対して患者の状況などを説明し、日本の医師の診察結果を得る。また、この際、外国の医師は、必要に応じて、患者の検査結果を日本の医師に送信する。具体的には、外国の医師は、第2の端末装置20の専用アプリケーションを用いて患者の検査結果の電子データをサーバ装置40にアップロードする。サーバ装置40のアップロードされた検査結果の電子データは、日本の医師によって第1の端末装置10の専用アプリケーションを用いてダウンロードされ、日本の医師が閲覧可能となる(S26)。
【0062】
また、外国の医師が日本の医師と通話をする際、通訳が必要であると考えた場合には、外国の医師は、第2の端末装置20に表示された通話画面において、通訳要求指示を入力する(S28)。第2の端末装置20において通訳要求指示が入力された場合には、その通訳要求信号がサーバ装置40に出力される。
【0063】
サーバ装置40は、第2の端末装置20から出力された通訳要求信号を受信した場合には、予め記憶された通訳者の連絡先に基づいて、第3の端末装置30に呼び出し発信する。第3の端末装置30の専用アプリケーションは、サーバ装置40からの呼び出し発信を受信して通訳者に知らせる。
【0064】
通訳者は、第3の端末装置30が呼び出し発信を受信したことを確認すると、第3の端末装置30の専用アプリケーションのログイン画面からログインし(S30)、応答指示を入力する(S32)。第3の端末装置30は、通訳者によって応答指示が入力された場合には、サーバ装置40に応答信号を出力する。
【0065】
サーバ装置40は、第3の端末装置30からの応答信号に応じて第1の端末装置10および第2の端末装置20と第3の端末装置30とを通信可能とする(S34)。そして、第1~第3の端末装置10,20,30の専用アプリケーションによって各表示部に3者同時通話画面が表示され、3者同時通話が可能となる(S36)。
【0066】
これにより、外国の医師が第2の端末装置20を用いて話した内容が、第3の端末装置30によって通訳者に伝達される。通訳者は、外国の医師の話を日本語に通訳し、その日本語訳を第3の端末装置30を用いて第1の端末装置10に送信する。これにより日本の医師は、第1の端末装置10を用いて日本語訳を聞くことができる。
【0067】
一方、日本の医師が第1の端末装置10を用いて話した内容が、第3の端末装置30によって通訳者に伝達される。通訳者は、日本の医師の話を外国語に通訳し、その外国語訳を第3の端末装置30を用いて第2の端末装置20に送信する。外国の医師は、第2の端末装置20を用いて外国語訳を聞くことができる。
【0068】
そして、外国の医師と日本の医師との両方で診察を終了した際には、日本の医師が、患者に対する薬の処方箋を作成する(S38)。そして、日本の医師は、第1の端末装置10の専用アプリケーションを用いて、作成した処方箋の電子データをサーバ装置40にアップロードする。
【0069】
サーバ装置40の制御プログラムは、処方箋の電子データがアップロードされた場合には、その処方箋に記載された薬の発注情報を作成し(S40)、その発注情報を製薬会社の受注装置に送信する。そして、製薬会社は、受信した発注情報に基づいて薬を準備し(S42)、物流会社に薬の配送を依頼する。物流会社は、製薬会社からの指示にしたがって薬を外国の患者に配送する(S44)。なお、薬の配送先については、発注情報の中に含まれているものとする。
【0070】
このように、日本の医師が薬の処方箋を作成し、日本から外国の患者に薬を配送することによって、外国の患者は、日本の品質の良い薬を得ることができる。また、上述したようにサーバ装置40において、薬の発注情報を作成するようにしたので、人手を介することなく迅速に薬の発注および配送を行うことができる。
【0071】
なお、上記実施形態の遠隔診療システム1においては、サーバ装置40が、処方箋に記載された薬の発注情報を作成し、これを製薬会社に送信するようにしたが、これに限らず、たとえば物流会社が薬の配送を取り扱っている場合には、サーバ装置40が、処方箋に記載された薬の発送依頼を作成し、その発送依頼を物流会社の受注装置に送信するようにしてもよい。物流会社は、受信した発送依頼に基づいて薬を準備し、その薬を患者に配送する。なお、薬の配送先については、発送依頼の中に含まれているものとする。このようにサーバ装置40において、薬の発送依頼を作成するようにした場合も、人手を介することなく迅速に薬の配送を行うことができる。
【0072】
また、上記実施形態の遠隔診療システム1において、第2の端末装置20から第1の端末装置10に対して、患者の電子カルテの情報を送信するようにしてもよい。このように第1の端末装置10および第2の端末装置20の両方において、患者の電子カルテの情報を表示するようにすれば、患者の過去の病歴などをさらに詳細に確認することができるので、より正確な問診および診察を行うことができる。
【0073】
また、上記実施形態の遠隔診療システム1において、第2の端末装置20から第1の端末装置10に対して、患者の健康保険証の情報を送信するようにしてもよい。これにより、日本の医師が薬の請求書を作成する際、健康保険適用の金額とすることができる。なお、薬の処方箋および請求書については、薬とともに、患者に配送される。
【0074】
また、上記実施形態の遠隔診療システム1の説明においては、外国の医師が日本の医師を選択し、その日本の医師の診察結果および薬の処方を得るようにしたが、これに限らず、逆に、日本の医師が外国の医師を選択し、その外国の医師の診察結果および薬の処方を受けるようにしてもよい。すなわち、第1の端末装置10を用いる医師が外国の医師で、第2の端末装置20を用いる医師が日本の医師でもよい。この場合、第2の端末装置20には、外国の医師の情報がリスト表示され、日本の医師がそのリスト表示の中から所望の外国の医師を選択することになる。
【0075】
また、上記実施形態の遠隔診療システム1においては、サーバ装置40に、複数の国の処方箋の料金体系データを記憶しておくようにしてもよい。処方箋の料金体系データとは、処方箋で処方される薬の料金をまとめたデータである。
【0076】
そして、サーバ装置40が、第1の端末装置10から出力された処方箋を受け付けた際、その受け付けた処方箋とその処方箋を作成した医師の国の料金体系データとに基づいて、薬の料金を算出し、その算出した料金を患者が用いる第4の端末装置(図示省略)に出力するようにしてもよい。これにより、患者は速やかに薬の料金を知ることができる。
【0077】
第4の端末装置は、第1~3の端末装置10,20,30と同様に、表示部および入力部を備えており、デスクトップパソコンやノートパソコンなどでもよいし、タブレット端末やスマートフォンなどの携帯電話などといった携帯端末であってもよい。また、第4の端末装置は、専用アプリケーションによって薬の料金を表示するようにしてもよいし、サーバ装置40が、薬の料金を電子メールで送信し、そのメールを第4の端末装置が受信するようにしてもよい。また、サーバ装置40から第4の端末装置に対して薬の料金を出力する際、処方箋の薬の品名、数量および在庫の有無も出力し、患者に知らせることが好ましい。薬の在庫については、サーバ装置40が、たとえば調剤薬局に設置された端末装置と通信を行い、その端末装置から薬の在庫の情報を取得するようにすればよい。
【0078】
さらに、第4の端末装置において、薬の料金の決済処理を行うようにしてもよい。決済処理については、クレジットカード、サードパーティペイメント決済またはそれに類する手段を用いることが可能なように第4の端末装置を構成することが好ましい。これにより、患者は、薬の料金の支払いを即座に行うことができる。
【0079】
また、上記実施形態の遠隔診療システム1の説明は、患者が外国の病院に通院し、外国の医師の目の前に患者がいることを想定しているが、これに限らず、患者が、自宅において第4の端末装置を用いて外国の医師の第2の端末装置20と通信することによって、遠隔で診察を受けるようにしてもよい。この際、患者、日本の医師および外国の医師の顔画像を第1の端末装置10、第2の端末装置20および第4の端末装置に表示させ、3者同時通話できるようにすることが好ましい。さらに、通訳者による通訳を利用する場合には、通訳者の顔画像もさらに含めて表示させ、4者同時通話できるようにすることが好ましい。これにより、互いの顔を認識しながら診察を進めることができるので、安心感を得ることができる。また、遠方にいる患者の顔を確認しながらの診察が可能となる。
【0080】
また、上記実施形態の遠隔診療システム1において、サーバ装置40が、患者個人の情報や医師をサポートするための、サポート情報を暗号化して記憶するようにしてもよい。暗号化の手法としては、公知な手法を用いることができるが、ブロックチェーン化することによって、中央管理者を介せず、特定の権限が与えられた医師の第1の端末装置10または第2の端末装置20でのみ表示及び閲覧できるようにすることが好ましい。これにより、医師の診療を支援することができるとともに、上記情報の漏洩及び第三者による詐取を防止することができる。
【0081】
患者個人の情報としては、患者個人カルテ情報、病歴、処方履歴、投薬記録、おくすり手帳情報、医療費情報、医師の診断結果履歴などがある。また、医師のサポート情報としては、医薬品情報、製薬開発情報、医療技術情報、検査記録、レントゲン画像、3D画像、画像診断報告書などがある。
【0082】
また、上記実施形態の遠隔診療システム1において、サーバ装置40が、患者の問診結果および患者の検査情報の少なくとも1つを含む患者情報と患者の診断情報との関係を入力として機械学習して得られた学習済みモデルを記憶するようにしてもよい。
【0083】
患者の問診結果とは、医師が患者に対して行った問診の結果である。たとえば胃癌に関係する問診結果としては、胃部不快感、嘔気、嘔吐または胸焼けなどの明らかな消化器症状の有無および時期や、食道、胃、十二指腸の疾患で現在治療を受けているか否かもしくは既往歴の有無などがある。さらに、胃薬の内服の有無、胃薬の種類および内服開始時期や、胃の切除手術の有無、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌治療の経験の有無、腎不全または腎機能の低下と診断されたことがあるか否かなどがある。
【0084】
胃癌に関係する検査情報としては、たとえばヘリコバクター・ピロリ菌の感染の有無(たとえばヘリコバクター・ピロリ菌IgG抗体検査の結果)や胃粘膜の萎縮度(たとえばペプシノゲン検査の結果)などがある。
【0085】
また、たとえば大腸癌に関係する問診結果としては、現在の病状、大腸の既往歴、家族の既往歴、過去の検診の受診状況などがある。また、大腸癌に関係する検査情報としては、たとえば便潜血検査の結果、S状結腸内視鏡検査の結果、S状結腸内視鏡検査の結果と便潜血検査の結果の組み合わせ、全大腸内視鏡検査の結果および注腸X線検査の結果などがある。
【0086】
上述したような患者の問診結果または検査情報と診断情報との関係を多数入力して機械学習を行うことによって、上述した学習済みモデルが生成される。なお、診断情報としては、上述した胃癌および大腸癌のような診断結果だけでなく、治療計画、処方箋例または手術などの処置の有無を診断情報としてもよい。また、患者の問診結果や検査情報の他に、患者のプロフィールなども入力に含めるようにしてもよい。
【0087】
また、問診結果については、たとえば患者の回答の音声データを録音し、その音声データを文字データに変換して取得するようにしてもよい。また、学習済みモデルに問診結果や検査情報を入力する際には、問診結果や検査情報を所定の数値や記号などに変換して入力するようにしてもよい。
【0088】
また、検査情報として、患者の検査画像を用いるようにしてもよい。たとえば患者の皮膚表面の画像を撮影し、その画像から色、温度および特殊波長域光などを読み取り、その読み取った情報と皮膚疾患との関係を入力して学習済みモデルを生成するようにしてもよい。
【0089】
また、患者の問診結果および患者の検査情報の少なくとも1つを含む患者情報と患者の診断情報との関係について重回帰分析を行って機械学習することによって学習済みモデルを生成するようにしてもよい。
【0090】
機械学習の方法としては、公知な手法を用いることができ、ディープニューラルネットワーク(DNN)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、リカレントニューラルネットワーク(RNN)、およびデノイジングスタックオートエンコーダ(DSA)などを用いることができる。
【0091】
そして、第1の端末装置10または第2の端末装置10において、医師が、診断対象の患者の上述した患者情報を入力し、第1の端末装置10または第2の端末装置20が、サーバ装置40の学習済みモデルに対して、上記患者情報を入力することによって診断対象の患者の診断情報を取得し、表示するようにしてもよい。これにより、医師は診断の多くをAI(人工知能)に依存することができ、また、基礎的な問診や診断に関しては、人的に行うより、はるかに正確な診断を実施することができる。そのため、医師の鑑別診断の質を大幅に向上することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 遠隔診療システム
10 第1の端末装置
20 第2の端末装置
30 第3の端末装置
40 サーバ装置

図1
図2
図3
図4