(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】流体加熱装置
(51)【国際特許分類】
F24H 1/10 20220101AFI20231222BHJP
F22B 1/28 20060101ALI20231222BHJP
F22G 1/16 20060101ALI20231222BHJP
H05B 6/10 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
F24H1/10 J
F22B1/28 Z
F22G1/16
H05B6/10 311
H05B6/10 371
(21)【出願番号】P 2019159872
(22)【出願日】2019-09-02
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000110158
【氏名又は名称】トクデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 深
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-191680(JP,A)
【文献】特開2016-219376(JP,A)
【文献】特開2019-113282(JP,A)
【文献】特開2016-075426(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0097529(US,A1)
【文献】国際公開第2015/041240(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/10
F22B 1/28
F22G 1/16
H05B 6/10
H05B 6/44
F16L 53/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次コイルである二次側導体管を誘導加熱することによって前記二次側導体管内に通流した流体を加熱する流体加熱装置であって、
閉磁路鉄心と、
交流電圧が印加される一次コイルであり、前記閉磁路鉄心の周りに同心状に配置される螺旋状の
1つの第1導体管及び
1つの第2導体管とを備え、
前記二次側導体管は、
前記第1導体管及び前記第2導体管の間に配置された複数の導体管ユニットと、
前記第1導体管及び前記第2導体管の間に配置され、前記複数の導体管ユニットを連結する連結管とを有し、
前記複数の導体管ユニットは、
互いに逆向きに螺旋状に巻回された内側管要素及び外側管要素と、
前記内側管要素及び前記外側管要素の軸方向一端部同士及び軸方向他端部同士を流体的に接続するとともにそれらを短絡接続する接続管要素とを備える、流体加熱装置。
【請求項2】
前記複数の導体管ユニットは、それらを構成する管要素の巻数が互いに異なる、請求項1記載の流体加熱装置。
【請求項3】
前記複数の導体管ユニットは、互いに直列となるように接続されている、請求項1又は2記載の流体加熱装置。
【請求項4】
前記各導体管は径方向内側から前記第2導体管、前記二次側導体管及び前記第1導体管の順に配置されるとともに、前記第1導体管、前記第2導体管及び前記二次側導体管の順に直列に接続されており、
前記第1導体管に設けられた導入ポートから水又は水蒸気を導入して、前記第2導体管を介して、前記二次側導体管に設けられた導出ポートから過熱水蒸気を導出するものである、請求項1乃至3の何れか一項に記載の流体加熱装置。
【請求項5】
前記第1導体管と前記二次側導体管との間及び前記第2導体管及び前記二次側導体管との間に断熱材が充填されている、請求項1乃至4の何れか一項に記載の流体加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば過熱水蒸気生成装置などの流体加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の流体加熱装置としては、特許文献1に示すように、二次コイルである導体管を誘導加熱することによって導体管内に通流した流体を加熱するものにおいて、導体管が、螺旋状に巻回した内側管要素と、当該内側管要素の外側に設けられ、螺旋状に巻回した外側管要素と、内側管要素及び外側管要素を流体的に接続するとともにそれらを短絡接続する接続管要素とを備えたものが考えられている。
【0003】
上記のように構成した導体管は、内側管要素及び外側管要素が接続管要素により電気的に並列接続される構成である。そして、誘導コイルにより生じる磁束によって、内側管要素及び外側管要素から構成される閉回路に短絡電流が流れる。つまり、内側管要素には、軸方向一端部から軸方向他端部に向かって短絡電流が流れ、外側管要素には、軸方向他端部から軸方向一端部に向かって短絡電流が流れる。
【0004】
しかしながら、上記の過熱水蒸気生成装置では、導体管が1つの短絡回路(閉回路)を形成するため、導体管全体に流れる短絡電流が同じとなり、導体管がほぼ均一にジュール発熱することになる。このことから、例えば導体管の導入口側ではジュール熱が無駄になってしまい、流体加熱の効率が悪くなってしまう。また、導体管において入口側と出口側とで温度差が大きくなってしまい、熱応力が大きくなり、導体管が劣化しやすくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、二次側導体管による流体の加熱効率を向上するとともに、導体管の熱応力による劣化を低減することをその主たる課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る流体加熱装置は、二次コイルである二次側導体管を誘導加熱することによって前記二次側導体管内に通流した流体を加熱する流体加熱装置であって、前記二次側導体管導体管は、互いに逆向きに螺旋状に巻回された内側管要素及び外側管要素と、前記内側管要素及び前記外側管要素の軸方向一端部同士及び軸方向他端部同士を流体的に接続するとともにそれらを短絡接続する接続管要素とを備える複数の導体管ユニットを有し、それら複数の導体管ユニットは、前記流体が通流できるように接続されていることを特徴とする。
【0008】
このような流体加熱装置によれば、二次側導体管が内側管要素及び外側管要素が短絡接続された複数の導体管ユニットを有するので、各導体管ユニットに流れる短絡電流を調整して、各導体管ユニットのジュール発熱量を調整することができる。その結果、各導体管ユニットにおいて流体を段階的に昇温することができ、二次側導体管による流体の加熱効率を向上することができる。また、各導体管ユニットの入口側と出口側との温度差を小さくすることができ、導体管の熱応力による劣化を低減することができる。
なお、各導体管ユニットは、互いに逆向きに螺旋状に巻回された内側管要素及び外側管要素と、前記内側管要素及び前記外側管要素の軸方向一端部同士及び軸方向他端部同士を流体的に接続するとともにそれらを短絡接続する接続管要素とを有するので、短絡回路を構成するための接続構造を簡単にすることができる。
【0009】
各導体管ユニットに流れる短絡電流を調整するための具体的構成としては、前記複数の導体管ユニットは、それらを構成する管要素の巻数が互いに異なることが望ましい。この構成であれば、導体管ユニットの管要素の巻数を変更するだけで、各導体管ユニットに流れる短絡電流を調整することができる。
【0010】
二次側導体管による流体の加熱を段階的に行うためには、前記複数の導体管ユニットは、互いに直列となるように接続されていることが望ましい。
例えば、直列接続された複数の導体管ユニットにおいて、下流側の導体管ユニットに行くほど管要素の巻数を多くすることにより、下流側の導体管ユニットに行くほど誘導電流を大きくでき、ジュール発熱量を大きくして、流体を高温に加熱しやすくできる。
なお、直列接続された複数の導体管ユニットにおいて、下流側の導体管ユニットに行くほど管要素の巻数を少なくしてもよい。
【0011】
また、本発明の流体加熱装置は、前記二次側導体管の内側に配置された閉磁路鉄心と、交流電圧が印加される一次コイルであり、前記閉磁路鉄心の周りに同心状に配置される螺旋状の第1導体管及び第2導体管とを備えていてもよい。
そして、前記各導体管は径方向内側から前記第2導体管、前記二次側導体管及び前記第1導体管の順に配置されるとともに、前記第1導体管、前記第2導体管及び前記二次側導体管の順に直列に接続されており、前記第1導体管に設けられた導入ポートから水又は水蒸気を導入して、前記第2導体管を介して、前記二次側導体管に設けられた導出ポートから過熱水蒸気を導出するものであることが望ましい。
この構成であれば、一次コイルとして第1導体管及び第2導体管を用いているとともに、当該第1導体管及び第2導体管の間に二次コイルである二次側導体管を設けているので、第1導体管及び第2導体管は通電加熱されるとともに、二次側導体管の放熱を利用して加熱されるので、二次側導体管からの装置外部への放熱を低減でき、熱効率を上げることができる。
また、第1導体管、第2導体管及び二次側導体管の順に直列に接続し、第1導体管に設けられた導入ポートから水又は水蒸気を導入して、第2導体管を介して、二次側導体管に設けられた導出ポートから過熱水蒸気を導出するので、過熱水蒸気生成装置の簡略化及び小型化することができる。
また、一次コイルを形成する第1導体管及び第2導体管は、それぞれの巻数、導体管の通電断面積、導体管の通流孔径の設定により、発熱比や流体への熱伝達面積比、流体の流速比を調整することができる。
【0012】
二次側導体管の放熱が装置外部へ漏れること及び二次側導体管の放熱による第1導体管及び第2導体管の加熱を安全に実現するためには、前記第1導体管と前記二次側導体管との間及び前記第2導体管及び前記二次側導体管との間に断熱材が充填されていることが望ましい。
この構成であれば、第1導体管と二次側導体管との間の断熱材の厚み、及び、第2導体管と二次側導体管との間の断熱材の厚みにより、二次側導体管から第1導体管及び第2導体管への熱伝達比を調整することができる。
【発明の効果】
【0013】
このように構成した本発明によれば、二次側導体管による流体の加熱効率を向上するとともに、導体管の熱応力による劣化を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る流体加熱装置の構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】同実施形態の流体加熱装置の径方向における配置を模式的に示す図である。
【
図3】同実施形態の閉磁路鉄心の構成を示す図である。
【
図4】同実施形態の二次側導体管の構成を模式的に示す側面図である。
【
図5】同実施形態のコイル接続及び流体の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明に係る過熱水蒸気生成装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
<1.装置構成>
本実施形態に係る過熱水蒸気生成装置100は、導体管を電磁誘導により発熱させて当該導体管を流れる水を加熱して過熱水蒸気を生成するものである。その他、過熱水蒸気生成装置100としては、例えば、外部で生成された飽和水蒸気を加熱して過熱水蒸気を発生するものであっても良い。
【0017】
具体的に過熱水蒸気生成装置100は、
図1及び
図2に示すように、閉磁路鉄心2と、交流電圧が印加される一次コイルであり、閉磁路鉄心2の周りに同心状に配置される螺旋状(コイル状)の第1導体管31及び第2導体管32と、誘導電流が流れる二次コイルであり、閉磁路鉄心2の周りに配置される螺旋状(コイル状)の二次側導体管4とを備えている。
【0018】
閉磁路鉄心2は、特に
図3に示すように、2つの矩形環状の鉄心要素21、22を有し、当該2つの鉄心要素21、22の脚鉄心部21a、22aを互いに密着するように組み合わせて構成されている。2つの鉄心要素21、22は互いに同一形状をなすものであり、各鉄心要素21、22は、外側から内側に行くにしたがって幅が小さくなるように磁性鋼板を積層して構成された、矩形環状に変形された巻鉄心である。なお磁性鋼板には、方向性電磁鋼板を用いている。これらの鉄心要素21、22を用いることで、閉磁路鉄心2の断面形状は、多段形状となる。
【0019】
第1導体管31及び第2導体管32は、それぞれ単層巻きであり、径方向内側に第2導体管32が配置され、径方向外側に第1導体管31が配置されている。また、第1導体管31の軸方向一端部に導入ポートP1が設けられており、第1導体管31の軸方向他端部が第2導体管32の軸方向他端部に接続されている。なお、導入ポートP1又はその近傍には、第1導体管31に流入する水の流量を調整するための流量調整バルブ5が設けられている。さらに、交流電圧を印加する交流電源(不図示)は、第1導体管31の軸方向一端部に設けられた給電端子61及び第2導体管32の軸方向一端部に設けられた給電端子62に接続されている。
【0020】
そして、第1導体管31及び第2導体管32は、各導体管31、32の巻回部分が互いに短絡しないように構成されている。なお、巻回部分とは螺旋1巻き部分のことである。具体的には、第1導体管31においては、その外側周面に絶縁体(不図示)が巻かれる等の絶縁処理が施されることにより、第1導体管31の巻回部分が互いに短絡しないように構成されている。また、第2導体管32においては、各巻回部分の外側周面が互いに接触しないように隙間を持って巻回されることにより、第2導体管32の巻回部分が互いに短絡しないように構成されている。
【0021】
二次側導体管4は、第1導体管31及び第2導体管32の間に配置されている。また、二次側導体管4の軸方向一端部が第2導体管32の一端部に接続されており、二次側導体管4の軸方向他端部に導出ポートP2が設けられている。なお、導出ポートP2又はその近傍には、過熱水蒸気の温度を制御するための温度センサ7が設けられている。このような構成により、各導体管31、32、4は、径方向内側から第2導体管32、二次側導体管4及び第1導体管31の順に配置されるとともに、第1導体管31、第2導体管32及び二次側導体管4の順に直列に接続されることになる。
【0022】
そして、二次側導体管4は、
図4に示すように、複数(例えば2つ)の導体管ユニット4A、4Bを有しており、それら複数の導体管ユニット4A、4Bは水又は水蒸気が通流できるように接続されている。なお、以下では、一方の導体管ユニット4Aを第1導体管ユニット4Aといい、他方の導体管ユニット4Bを第2導体管ユニット4Bという。
【0023】
各導体管ユニット4A、4Bは、互いに逆向きに螺旋状に巻回された内側管要素41及び外側管要素42と、内側管要素41及び外側管要素42の軸方向一端部同士及び軸方向他端部同士を流体的に接続するとともにそれらを短絡接続する接続管要素43、44とを有している。内側管要素41及び外側管要素42は、軸方向から見て径方向の隙間が形成されている。また、各管要素41、42は、各巻回部分の外側周面が互いに接触しないように隙間を持って巻回されている。
【0024】
複数の導体管ユニット4A、4Bは、それらを構成する管要素41、42の巻数が互いに異なる。本実施形態では、第1導体管ユニット4Aの内側管要素41は、第2導体管ユニット4Bの内側管要素41よりも巻数が少なく、第1導体管ユニット4Aの外側管要素42は、第2導体管ユニット4Bの外側管要素42よりも巻数が少ないように構成されている。
【0025】
そして、複数の導体管ユニット4A、4Bは、互いに直列となるように接続されている。具体的には、第1導体管ユニット4Aの他方の接続管要素44が、第2導体管ユニット4Bの一方の接続管要素43に接続されることにより、直列に接続されている。ここで、第1導体管ユニット4Aの他方の接続管要素44と第2導体管ユニット4Bの一方の接続管要素43とは、第1導体管ユニット4A及び第2導体管ユニット4Bを連結する連結管45により構成されている。
【0026】
また、第1導体管ユニット4Aの一方の接続管要素43には、第2導体管32の軸方向一端部が接続され、第2導体管ユニット4Bの他方の接続管要素44には、導出ポートP2が設けられている。この構成により、第1導体管ユニット4Aの一方の接続管要素43から流入した流体は、当該接続管要素43により第1導体管ユニット4Aの内側管要素41及び外側管要素42に分岐して流れ、内側管要素41及び外側管要素42を流れた流体は、第1導体管ユニット4Aの接続管要素44で合流する。合流した流体は、連結管45を流れて、第2導体管ユニット4Bの一方の接続管要素43に流入する。第2導体管ユニット4Bの一方の接続管要素43から流入した流体は、当該接続管要素43により第2導体管ユニット4Bの内側管要素41及び外側管要素42に分岐して流れ、内側管要素41及び外側管要素42を流れた流体は、第2導体管ユニット4Bの接続管要素44を介して、導出ポートP2から流出する。
【0027】
また、このように構成した二次側導体管4は、各導体管ユニット4A、4Bにおいて、内側管要素41及び外側管要素42が接続管要素43、44により電気的に並列接続される構成となる。つまり、本実施形態の二次側導体管4では、2つの並列回路が直列接続された構成となる。そして、一次コイルである第1導体管31及び第2導体管32により生じる磁束によって、第1導体管ユニット4Aにおいて、内側管要素41及び外側管要素42により1つの閉回路が形成されて短絡電流が流れ、第2導体管ユニット4Bにおいて、内側管要素41及び外側管要素42により1つの閉回路が形成されて短絡電流が流れる。つまり、内側管要素41には、軸方向一端部から軸方向他端部に向かって短絡電流が流れ、外側管要素42には、軸方向他端部から軸方向一端部に向かって短絡電流が流れる。
【0028】
また、本実施形態の過熱水蒸気生成装置100では、
図1及び
図2に示すように、第1導体管31と二次側導体管4との間及び第2導体管32と二次側導体管4との間に断熱材8が充填されている。この断熱材8は、第2導体管32の巻回部分間の隙間にも充填されており、二次側導体管4の内側管要素41及び外側管要素42の間にも充填される。本実施形態では、第1導体管31の外周にケーシング9が設けられており、第1導体管31とケーシング9との間に断熱材8が設けられている。その他、閉磁路鉄心2の脚鉄心部21a、22aと第2導体管32との間に断熱材8を充填しても良い。
【0029】
このように構成した本実施形態の過熱水蒸気生成装置100において、第1導体管31に設けられた給電端子61及び第2導体管32に設けられた給電端子62に交流電源により交流電圧を印加することで、第1導体管31及び第2導体管32に交流電流が流れて閉磁路鉄心2に磁束が流れる。当該磁束によって二次側導体管4の各導体管ユニット4A、4Bに個別に短絡電流が流れて、二次側導体管4の各導体管ユニット4A、4Bが個別にジュール発熱する。また、第1導体管31及び第2導体管32は、交流電圧が印加されることで通電によりジュール発熱するとともに、二次側導体管4からの伝熱により加熱される。
【0030】
ここで、第1導体管ユニット4Aの各管要素41、42は、第2導体管ユニット4Bの各管要素41、42よりも巻数が少ないので、第1導体管ユニット4Aの誘導起電力は、第2導体管ユニット4Bの誘導起電力よりも小さくなる。その結果、第1導体管ユニット4Aを流れる短絡電流は、第2導体管ユニット4Bを流れる短絡電流よりも小さい。これにより、第1導体管ユニット4Aから第2導体管ユニット4Bに段階的に加熱温度を上昇させている。
【0031】
これにより、
図5に示すように、第1導体管31の導入ポートP1から導入された水は、第1導体管31及び第2導体管32を流れることにより、第1導体管31及び第2導体管32により加熱されて高温の水又は飽和水蒸気となる。その後、第2導体管32から二次側導体管4に流入した高温の水又は飽和水蒸気は、二次側導体管4の各導体管ユニット4A、4Bにより段階的に加熱されて過熱水蒸気となり、導出ポートP2から導出される。
【0032】
<2.本実施形態の効果>
このように構成した過熱水蒸気生成装置100によれば、二次側導体管4が内側管要素41及び外側管要素42が短絡接続された複数の導体管ユニット4A、4Bを有するので、各導体管ユニット4A、4Bに流れる短絡電流を調整して、各導体管ユニット4A、4Bのジュール発熱量を調整することができる。その結果、各導体管ユニット4A、4Bにおいて流体を段階的に昇温することができ、二次側導体管4による流体の加熱効率を向上することができる。また、各導体管ユニット4A、4Bの入口側と出口側との温度差を小さくすることができ、管要素41、42の熱応力による劣化を低減することができる。
【0033】
なお、各導体管ユニット4A、4Bは、互いに逆向きに螺旋状に巻回された内側管要素41及び外側管要素42の軸方向一端部同士及び軸方向他端部同士を流体的に接続するとともにそれらを短絡接続しているので、短絡回路を構成するための接続構造を簡単にすることができる。
【0034】
また、複数の導体管ユニット4A、4Bは、それらを構成する管要素41、42の巻数が互いに異なる構成としているので、導体管ユニット4A、4Bの管要素41、42の巻数を変更するだけで、各導体管ユニット4A、4Bに流れる短絡電流を調整することができる。
【0035】
さらに、直列接続された複数の導体管ユニット4A、4Bにおいて、下流側の導体管ユニット4Bほど管要素41、42の巻数を多くすることにより、下流側の導体管ユニット4Bほど誘導電流を大きくでき、ジュール発熱量を大きくして、流体を段階的に高温に加熱しやすくできる。
【0036】
その他、一次コイルとして第1導体管31及び第2導体管32を用いているとともに、当該第1導体管31及び第2導体管32の間に二次コイルである二次側導体管4を設けているので、第1導体管31及び第2導体管32は通電加熱されるとともに、二次側導体管4の放熱を利用して加熱されるので、二次側導体管4からの装置外部への放熱を低減でき、熱効率を上げることができる。また、第1導体管31、第2導体管32及び二次側導体管4の順に直列に接続し、第1導体管31に設けられた導入ポートP1から水又は水蒸気を導入して、第2導体管32を介して、二次側導体管4に設けられた導出ポートP2から過熱水蒸気を導出するので、過熱水蒸気生成装置100の簡略化及び小型化することができる。ここで、一次コイルを形成する第1導体管31及び第2導体管32において、それぞれの巻数、導体管の通電断面積、導体管の通流孔径の設定により、発熱比や流体への熱伝達面積比、流体の流速比を調整することができる。
【0037】
第1導体管31と二次側導体管4との間及び第2導体管32及び二次側導体管4との間に断熱材8が充填されているので、二次側導体管4の放熱が装置外部へ漏れること及び二次側導体管4の放熱による第1導体管31及び第2導体管32の加熱を安全に実現することができる。ここで、第1導体管31と二次側導体管4との間の断熱材8の厚み、及び、第2導体管32と二次側導体管4との間の断熱材8の厚みにより、二次側導体管4から第1導体管31及び第2導体管32への熱伝達比を調整することができる。
【0038】
二次側導体管4を複数回巻きの二次コイルとすることで励磁電流を小さくするとともに漏れインピーダンスを減少できるので、閉磁路鉄心2の断面積を小さくして鉄心の使用量を少なくし、鉄損を低減でき熱効率を上げることができる。また、閉磁路鉄心2を多段形状として鉄心の表面積を増やしているので、冷却効果を大きくすることができる。
【0039】
さらに、交流電圧を印加する交流電源を第1導体管31の軸方向一端部及び第2導体管32の軸方向一端部に接続する構成としているので、電源配線の取り回しを容易にすることができる。
【0040】
<3.本発明の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、前記実施形態では、第1導体管31及び第2導体管32がそれぞれ単層巻きのものであったが、第1導体管31又は第2導体管32の少なくとも一方が、二層巻き以上のものであっても良い。
【0041】
また、前記実施形態では、二次側導体管4は2つの導体管ユニット4A、4Bを直列接続する構成であったが、3つ以上の導体管ユニットを直列接続する構成であっても良い。その他、二次側導体管4は、複数の導体管ユニットを並列接続する構成であっても良い。
【0042】
さらに、前記実施形態では、各導体管ユニットの巻回径が互いに同じであったが、互いに異なるようにしても良い。
【0043】
その上、前記実施形態の各導体管ユニット4A、4Bは、2重管構造をなすものであったが、4重管又はそれ以上の偶数重の管要素を有するものであっても良い。この場合、2つの管要素毎にそれぞれ接続管要素で接続する。例えば、前記実施形態の二次側導体管4を同心円状に複数配置した構成とすることが考えられる。
【0044】
前記実施形態では、一次コイルに導体管31、32を用いていたが、中実コイルを用いても良い。
【0045】
前記実施形態では、流体として水又は水蒸気を加熱する装置について説明したが、その他の液体又は気体を加熱するものであっても良い。
【0046】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0047】
100・・・過熱水蒸気生成装置
2・・・閉磁路鉄心
21、22・・・鉄心要素
21a、22a・・・脚鉄心部
31・・・第1導体管
32・・・第2導体管
4・・・二次側導体管
4A・・・導体管ユニット
4B・・・導体管ユニット
41・・・内側管要素
42・・・外側管要素
43、44・・・接続管要素
P1・・・導入ポート
P2・・・導出ポート
8・・・断熱材