(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】芳香液含浸用シール、芳香液含浸用シールの使用方法、芳香性シール、及び芳香性シールの使用方法
(51)【国際特許分類】
B65D 83/00 20060101AFI20231222BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20231222BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231222BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20231222BHJP
A61M 21/02 20060101ALI20231222BHJP
B65D 85/00 20060101ALI20231222BHJP
A61L 9/12 20060101ALN20231222BHJP
【FI】
B65D83/00 F
B32B27/18 F
B32B27/00 M
C09J7/38
A61M21/02 H
B65D85/00 A
A61L9/12
(21)【出願番号】P 2020014722
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】515325494
【氏名又は名称】アグライア・クリニカルアロマティックラボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】玉野 純子
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-105009(JP,A)
【文献】特開2011-072609(JP,A)
【文献】特開2020-005884(JP,A)
【文献】特開2000-144169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00
B65D 85/00
B32B 1/00-43/00
C09J 7/38
A61M 21/02
A61L 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状に形成された保持層と、
前記保持層を被粘着対象に対して粘着可能とする粘着層と、
疎油性を有し、前記保持層と前記粘着層との間に設けられた中間層と、
を有し、
前記粘着層は、疎油性を有する基材層を有し、前記基材層の両面が粘着性を有しており、
前記中間層は、前記粘着層より通気性が高い素材によって構成されており、
前記保持層及び前記粘着層を含む複数の層を積層したものであり、
前記保持層に、芳香液を含浸させ得るものであり、
前記保持層の表面が露出されて、裏面側に前記粘着層を含む他の層が積層されて
いることを特徴とする芳香液含浸用シール。
【請求項2】
シート状に形成された保持層と、
前記保持層を被粘着対象に対して粘着可能とする粘着層と、
疎油性を有し、前記保持層と前記粘着層との間に設けられた中間層と、
を有し、
前記粘着層は、疎油性を有する基材層を有し、前記基材層の両面が粘着性を有しており、
前記中間層は、前記粘着層より通気性が高い素材によって構成されており、
前記保持層及び前記粘着層を含む複数の層を積層したものであり、
前記保持層に、芳香液を含浸させ得るものであり、
前記保持層の表面が露出されて、裏面側に前記粘着層を含む他の層が積層されることにより形成された芳香液含浸用シールであり、
前記芳香液含侵用シールの中心部から水平方向に50cm離間した位置において、前記芳香液の香りが検知されるものであり、前記芳香液含侵用シールの中心部から水平方向に1m離間した位置において、前記芳香液の香りが検知されないものであることを特徴とする芳香液含侵用シール。
【請求項3】
前記保持層が、不織布により形成されていることを特徴とする請求項1
又は2に記載の芳香液含浸用シール。
【請求項4】
前記保持層は、サーマルボンド法又は水流絡合法により形成された不織布により構成されていることを特徴とする請求項1
~3のいずれか一項に記載の芳香液含浸用シール。
【請求項5】
前記粘着層の片面が、前記被粘着対象に粘着される糊面とされており、
未使用状態において前記糊面を保護する保護シートが設けられており、
前記保持層及び前記粘着層を含むシール片を貼付するための貼付面が、前記保護シートに設けられており、
前記シール片を前記保護シートから剥離することにより、前記糊面が露出し、前記被粘着対象に対して粘着可能になるものであり、
前記保護シートが、少なくとも前記貼付面において疎油性を有することを特徴とする請求項1~
4のいずれか一項に記載の芳香液含浸用シール。
【請求項6】
前記シール片が、前記保護シートに対して複数配置されており、
隣接する前記シール片同士の間に所定の間隔が設けられていることを特徴とする請求項
5に記載の芳香液含浸用シール。
【請求項7】
前記保持層及び前記粘着層を含む複数の層が、積層方向への圧力を加えることにより、それぞれ積層形成されていることを特徴とする請求項1~
6のいずれか一項に記載の芳香液含浸用シール。
【請求項8】
前記保護シートが、前記保持層よりも疎油性が高い素材によって構成されていることを特徴とする請求項
5に記載の芳香液含浸用シール。
【請求項9】
前記中間層は、ポリエチレンから構成されることを特徴とする請求項
1~
8のいずれか一項に記載の芳香液含浸用シール。
【請求項10】
少なくとも前記保持層が、円状に形成されていることを特徴とする請求項1~
9のいずれか一項に記載の芳香液含浸用シール。
【請求項11】
前記芳香液が前記保持層に滴下により含浸されることを特徴とする請求項1~
10のいずれか一項に記載の芳香液含浸用シール。
【請求項12】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の芳香液含浸用シールに前記芳香液を含浸させると共に、前記芳香液を含浸させた芳香液含浸用シールを前記保持層が大気に露出するように衣服の表面又は裏面のいずれか一方又は双方、あるいは物品に貼付して使用することを特徴とする芳香液含浸用シールの使用方法。
【請求項13】
前記物品が、ベッド、布団、カーテン、部屋の内装品、車両の内装品、テーブル及び椅子から選ばれた少なくとも1つのものであることを特徴とする請求項
12に記載の芳香液含浸用シールの使用方法。
【請求項14】
請求項1~
11のいずれか一項に記載の芳香液含浸用シールの前記保持層に、芳香液が含浸されていることを特徴とする芳香性シール。
【請求項15】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の芳香液含浸用シールの前記保持層に、芳香液を含浸させると共に、前記芳香液を含浸させた芳香液含浸用シールを前記保持層が大気に露出するように衣服あるいは物品に衣服の表面又は裏面のいずれか一方又は双方、あるいは物品に貼付して使用することを特徴とする芳香性シールの使用方法。
【請求項16】
請求項
14に記載の芳香性シールを前記保持層が大気に露出するように衣服の表面又は裏面のいずれか一方又は双方、あるいは物品に貼付して使用することを特徴とする芳香性シールの使用方法。
【請求項17】
請求項
15又は
16に記載の物品が、ベッド、布団、カーテン、部屋の内装品、車両の内装品、テーブル及び椅子から選ばれた少なくとも1つのものであることを特徴とする芳香性シールの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アロマセラピーあるいはアロマセラピーと呼ばれるもの(以下、「アロマセラピー」と総称する)に用いる芳香液や香料等の液体を含浸させて使用するための芳香液含浸用シールや、芳香液含浸用シールの使用方法、この芳香液含浸用シールを用いた芳香性シール、芳香性シールの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アロマセラピー用の芳香液を使用する場合には、芳香液が入ったボトルからティッシュペーパーや、下記特許文献1に開示されているアロマペンダントに芳香液を滴下させて使用する方法や、アロマポッドなどの機器を用いて使用する方法が採られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、アロマセラピーは、単に香りを楽しむという趣味的なものだけでなく、医療分野や介護分野などにおいても香りによる効用を治療に利用しようとする試みがなされつつある。そのため、アロマセラピーを趣味とする、いわばアロマセラピーに精通した人だけでなく、アロマセラピーについての知識を持たない人や、老人、年少者などもアロマセラピーを利用する機会が生まれつつある。
【0005】
ここで、上述したように医療分野や介護分野などにおいて芳香液を使用する場合、個室で使用するには問題はなかったが、共同部屋で前記芳香液を使用する場合は、他人まで香りが届く、いわゆる香害(スメルハラスメント又はスメハラとも称する)の問題がある。このような香害を軽減すべく、芳香液の使用量を減じることも考えられるが、芳香液の使用量を減じた場合、アロマセラピーとしての効果が得られにくいという問題がある。また、従来用いられているアロマポッドなどの機器類には、芳香液を加熱するための熱源を備えたものなど、取り扱いに注意を要するものが多いという問題があった。さらに、従来のようにティッシュペーパーに芳香液を滴下して使用する方法では見栄えが悪いという問題もあった。
【0006】
そこで本発明は、香害を抑制しつつ、アロマセラピーを安全かつ手軽に利用可能とし、見栄えについても改善可能な芳香液含浸用シール、芳香液含浸用シールの使用方法、芳香性シール、及び芳香性シールの使用方法の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明の芳香液含浸用シールは、シート状に形成された保持層と、前記保持層を被粘着対象に対して粘着可能とする粘着層とを有し、前記保持層及び前記粘着層を含む複数の層を積層したものであり、前記保持層に、芳香液を含浸させ得るものであり、前記保持層の表面が露出されて、裏面側に前記粘着層を含む他の層が積層されており、裏面側に積層される層の一部又は全部が疎油性を有することを特徴とするものである。
【0008】
本発明の芳香液含浸用シールは、例えばアロマセラピーに用いられる芳香液を保持層に含浸させた状態とし、粘着層を用いて任意の場所に貼付して使用できる。本発明の芳香液含浸用シールのようにシート状とすることにより、家具などの形状が固定した構造物はもちろんのこと、衣服やタオルなどのリネン類のように屈曲する場所にも貼付して使用することができる。そのため、本発明の芳香液含浸用シールを用いれば、装着する場所を選ばず使用することができる。従って、本発明の芳香液含浸用シールを用いることにより、アロマセラピーが手軽に利用できる。また、本発明の芳香液含浸用シールは、例えば虫除け用の芳香液を保持層に含浸させ、衣服等に貼付することにより、虫除け対策を手軽に利用できる。
【0009】
また、本発明の芳香液含浸用シールは、保持層の表面が露出しており、加熱等しなくても芳香液を揮発させることができる。そのため、本発明の芳香液含浸用シールを用いることにより、老人や年少者などであってもアロマセラピーが安全に利用できる。また、本発明の芳香液含浸用シールは、保持層の表面が露出されて、裏面側に前記粘着層を含む他の層が積層されており、裏面側に積層される層の一部又は全部が疎油性を有するものである。これにより、含浸させた芳香液が、複数の層の積層方向へ染み込むのを抑制できるので、衣服等に貼り付けても、衣服等を汚染することを抑制できる。これにより、衣服やタオルなどのリネン類、家具などの被粘着対象にまで芳香液が染み出したり、粘着層の粘着力が低下したりするのを抑制できる。また、前述のような構成とすることで芳香液が保持層の面方向に拡散する効果が期待できるので、保持層に含浸させた芳香液が保持層の表面から自然に揮発し、程よく安定した揮発速度で芳香液を揮発させることができ、効果的に香りを持続的に発生させることができる。さらに、芳香液含浸用シールが配置された空間内で適度に芳香液が拡散するので、香害が抑制される。また、保持層の全体を均等に使用して芳香液を保持できるので、芳香液の拡散が持続される。従って、本発明の芳香液含浸用シールを用いれば、長期に亘って安定した香りの効果が得られる。
【0010】
また、本発明の芳香液含浸用シールは、例えば衣服やタオルなどのリネン類の裏側に貼り付けるなどして使用できる。そのため、従来のようにティッシュペーパーに芳香液を滴下して使用する場合などに比べて見栄え良くアロマセラピーが利用できる。
【0011】
(2)上述した本発明の芳香液含浸用シールは、前記保持層が、不織布により形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の芳香液含浸用シールのように、保持層を不織布により形成することにより、保持層の略全体に亘って芳香液をスムーズかつ略均一に含浸させることができる。不織布の形成は、乾式法によるものや湿式法によるもの、レジンボンド法、スパンレース法、サーマルボンド法、スパンボンド法等の各種の製法を用いて行うと良い。
【0013】
ここで、本発明の芳香液含浸用シールにおいて保持層に芳香液を滴下した場合、芳香液は滴下位置から放射状に拡散するものと考えられる。そのため、芳香液を保持層の略全体に亘って略均一に含浸させるためには、少なくとも保持層について、このような拡散特性を考慮した構成とすることが望ましい。
【0014】
(3)また、本発明の芳香液含浸用シールは、前記保持層が、サーマルボンド法又は水流絡合法法により形成された不織布により構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
かかる構成によれば、不織布がサーマルボンド法又は水流絡合法により、保持性良く形成されているので、芳香液が保持層に安定に保持される。これにより、芳香液の拡散が穏やかになり、持続性の高い香りの拡散が行える。また、香りが一気に拡散しないので、香害をより一層抑制することができる。
【0016】
(4)上述した本発明の芳香液含浸用シールは、前記粘着層の片面が、前記被粘着対象に粘着される糊面とされており、未使用状態において前記糊面を保護する保護シートが設けられており、前記保持層及び前記粘着層を含むシール片を貼付するための貼付面が、前記保護シートに設けられており、前記シール片を前記保護シートから剥離することにより、前記糊面が露出し、前記被粘着対象に対して粘着可能になるものであり、前記保護シートが、少なくとも前記貼付面において疎油性を有することを特徴とするものである。
【0017】
本発明の芳香液含浸用シールは、粘着層の糊面が保護シートにより保護されており、必要に応じて保護シートからシール片を剥離して使用することができる。また、保護シートが疎油性を有する素材によって形成されているため、保護シートを介して芳香液が染み出す等の問題を回避し得る。
【0018】
ここで、保護シートに複数のシール片を並べて配置した場合、そのうちの一つのシール片に滴下した芳香液が、シール片からはみ出し、隣接する他のシール片に向けて染み出す懸念がある。
【0019】
(5)かかる懸念を解消すべく提供される本発明の芳香液含浸用シールは、前記シール片が、前記保護シートに対して複数配置されており、隣接する前記シール片同士の間に所定の間隔が設けられていることを特徴とするものである。
【0020】
かかる構成によれば、シール片に滴下した芳香液が、隣接する他のシール片に向けて染み出すのを抑制できる。
【0021】
ここで、上述したように、芳香液を保持層の略全体に亘って略均一に含浸させるためには、少なくとも保持層について、このような拡散特性を考慮した構成とすることが望ましい。
【0022】
(6)かかる知見に基づいて、本発明の芳香液含浸用シールは、前記保持層及び前記粘着層を含む複数の層が、積層方向への圧力を加えることにより、それぞれ積層形成されていることを特徴とするものである。
【0023】
かかる構成によれば、前記保持層及び前記粘着層を含む複数の層が、積層方向への圧力の付加により圧縮され、保持層における不織布の気孔が、保持層の面方向に広がる。これにより、保持層に含浸された芳香液が、保持層の面方向に拡散しやすいと考えられるので、保持層に含浸させた芳香液が保持層の表面から自然に揮発し、程よく安定した揮発速度で芳香液を揮発させる効果が期待できる。また、効果的に香りを持続的に発生させる効果が期待できる。さらに、芳香液含浸用シールが配置された空間内において、適度に芳香液が拡散するので、香害が抑制できる。また、保持層の全体を均等に使用して芳香液を保持できるので、芳香液の拡散が持続できる。従って、本発明の芳香液含浸用シールを用いれば、長期に亘って安定した香りの効果が得られる。
【0024】
(7)上述した本発明の芳香液含浸用シールは、前記保護シートが、前記保持層よりも疎油性が高い素材によって構成されていることを特徴とするものである。
【0025】
かかる構成によれば、保持層に滴下された芳香液が保護シートから染み出して拡散してしまうのを抑制できる。
【0026】
(8)上述した本発明の芳香液含浸用シールは、前記保持層と前記粘着層との間に中間層が設けられていることを特徴とするものである。
【0027】
本発明の芳香液含浸用シールは、保持層と粘着層との間に中間層が設けられているので、含浸させた芳香液が、粘着層に到達することを抑制できる。また、芳香液の浸透によって粘着層の粘着力が低下することを抑制できる。また、芳香液が粘着層を浸透することにより、被粘着対象である衣服等が汚染されることを抑制できる。中間層には例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等を用いることができる。
【0028】
(9)上述した本発明の芳香液含浸用シールは、前記中間層が、疎油性を有するものであることを特徴とするものである。
【0029】
かかる構成によれば、保持層に含浸させた芳香液が、粘着層に浸透することを抑制できる。これにより、芳香液が保持層中で、面方向に拡散しやすくなるので、保持層に含浸させた芳香液が保持層の表面から自然に揮発し、程よく安定した揮発速度で芳香液を揮発させることができる。また、効果的に香りを持続的に発生させることができる。さらに、芳香液含浸用シールが配置された空間内で適度に芳香液が拡散するので、香害を抑制できる。また、保持層の全体を均等に使用して芳香液が保持されるので、芳香液の拡散が持続できる。従って、本発明の芳香液含浸用シールを用いれば、長期に亘って安定した香りの効果が得られる。また、芳香液が粘着層を浸透することにより、被粘着対象である衣服等が汚染されることを抑制できる。
【0030】
(10)上述した本発明の芳香液含浸用シールは、前記中間層が、前記粘着層より通気性が高い素材によって構成されていることを特徴とするものである。
【0031】
かかる構成によれば、保持層に含浸させた芳香液の香りが、保持層と中間層との間で拡散しつつ、さらに中間層と粘着層との間においても徐々に拡散する。これにより、芳香液が保持層の面方向に徐々に広がるので、香りが一気に広がることを抑制でき、香害を抑制することができる。ここで、中間層は、例えば多孔性を有する材料を用い、粘着層24は、例えば非多孔性の材料を用いれば良い。
【0032】
(11)上述した本発明の芳香液含浸用シールは、前記中間層が、ポリエチレンから構成されることを特徴とするものである。
【0033】
かかる構成によれば、芳香液が粘着層に浸透することを抑制できる。また、ポリエチレンが有する僅かな通気性により、芳香液の香りが徐々に中間層と粘着層との間で拡散する。これにより、芳香液が保持層の面方向に徐々に広がるので、香りが一気に広がることを抑制でき、香害を抑制することができる。また、ポリエチレンの疎油性により、芳香液が中間層を浸透して粘着層に達することを抑制できる。このように、中間層は、通気性を有し、かつ、疎油性を有するものであることが望ましい。
【0034】
(12)上述した本発明の芳香液含浸用シールは、前記粘着層が、基材層を有し、前記基材層の両面が粘着性を有していることを特徴とするものである。
【0035】
かかる構成によれば、粘着層が基材層を有しているので、基材層により、芳香液が粘着層の貼付面に浸透することを抑制することができる。また、基材層の両面が粘着性を有しているので、貼付面と反対側の面が保持層又は中間層に貼り付けされることにより、積層構造が形成される。
【0036】
(13)上述した本発明の芳香液含浸用シールは、前記基材層が疎油性を有することを特徴とするものである。
【0037】
かかる構成によれば、粘着層が基材層を有しているので、基材層により、芳香液が粘着層の貼付面に浸透することを抑制することができる。また、本発明の芳香液含浸用シールが、中間層を有しない場合であっても、芳香液が粘着層の貼付面に浸透することを抑制することができる。
【0038】
ここで、本発明の芳香液含浸用シールにおいて保持層に芳香液を滴下した場合、芳香液は滴下位置から放射状に拡散するものと考えられる。そのため、芳香液を保持層の略全体に亘って略均一に含浸させるためには、少なくとも保持層について、このような拡散特性を考慮した形状とすることが望ましい。
【0039】
(14)かかる知見に基づいて提供される本発明の芳香液含浸用シールは、少なくとも前記保持層が、円状に形成されていることを特徴とするものである。
【0040】
かかる構成によれば、保持層に滴下された芳香液を保持層の略全体に亘って略均一に含浸させることができる。
【0041】
(15)上述した本発明の芳香液含浸用シールは、前記芳香液が前記保持層に滴下により含浸されることを特徴とするものである。
【0042】
かかる構成によれば、例えば使用者の好みの芳香液を購入し、当該芳香液を使用する際に、保持層に芳香液を滴下させて含浸させることができる。これにより、使用者が手軽にアロマセラピー等を利用できる。また、香りの効果が薄れてきた際に、使用者が、再度、保持層に芳香液を滴下するようにすれば、本発明の芳香液含浸用シールを複数回繰り返して利用することができる。
【0043】
(16)上述した本発明の芳香液含浸用シールの使用方法は、上述の芳香液含浸用シールに前記芳香液を含浸させると共に、前記芳香液を含浸させた芳香液含浸用シールを前記保持層が大気に露出するように衣服の表面又は裏面のいずれか一方又は双方、あるいは物品に貼付して使用することを特徴とするものである。
【0044】
本発明の芳香液含浸用シールの使用方法では、予め芳香液を含浸させた芳香液含浸用シールが用いられる。そのため、例えば、利用者が高齢者や年少者の場合であったとしても、難なく芳香液含浸用シールを利用できる。また、利用者が芳香液を含浸させた芳香液含浸用シールを、衣服等に貼付して保持層を大気中に露出させるだけで虫除けやアロマセラピーの施行を行うことができる。本発明の芳香液含浸用シールは、衣服の表面又は裏面のいずれか一方又は双方に貼付することが可能である。従って、衣服の裏面に前記芳香液含浸用シールを貼付することで、外部から見えないようにすることができる。
【0045】
(17)また、上述した芳香液含浸用シールの使用方法は、上述の物品が、ベッド、布団、カーテン、部屋の内装品、車両の内装品、テーブル及び椅子から選ばれた少なくとも1つのものであることを特徴とするものである。
【0046】
かかる構成によれば、例えば芳香液含浸用シールが、バス等の車両の内装品に貼付されることで、バスの一定の空間内でアロマセラピーを施行できる。また、本発明の芳香性シールは、一気に香りが拡散することがなく、また、香りの拡散が広範ではないので、例えば、病院の共同部屋で使用する場合であっても香害が発生することがない。
【0047】
(18)本発明の芳香性シールは、芳香液含浸用シールの保持層に、芳香液が含浸されていることを特徴とするものである。
【0048】
本発明の芳香性シールは、上述した本発明の芳香液含浸用シールに対して精油又は香料などの芳香液を含浸させた状態のものである。そのため、芳香液を保持層に含浸させる作業を行うことなく、衣服やタオルなどのリネン類、家具などの被粘着対象に貼付するだけで手軽かつ安全にアロマセラピーなどに利用することができる。また、本発明の芳香性シールは、上述した芳香液含浸用シールを用いたものであるため、衣服等の裏側に貼り付けるなどして見栄え良く利用できる。また、本発明の芳香性シールでは、予め精油や香料などの芳香液が含浸されているため、利用者が芳香液を選ぶ手間や、芳香液の含浸量が適量となるように滴下量を調整する等の手間を省くことができる。これにより、例えばアロマセラピーの初心者や、老人、年少者等のように、効果的な芳香液の選択や最適な芳香液の滴下量の判断が難しい人であっても、簡単かつ安全にアロマセラピーを施行できる。
【0049】
(19)本発明の芳香性シールの使用方法は、上述した芳香液含浸用シールの前記保持層に、芳香液を含浸させると共に、前記芳香液を含浸させた芳香液含浸用シールを前記保持層が大気に露出するように衣服あるいは物品に衣服の表面又は裏面のいずれか一方又は双方、あるいは物品に貼付して使用することを特徴とするものである。
【0050】
本発明の芳香性シールの使用方法では、芳香液を含浸させるための芳香液含浸用シールが用いられる。そのため、利用者が選択した芳香液を用いてアロマセラピーを施行できる。また、利用者が芳香液を含浸させた芳香液含浸用シールを、保持層が大気中に露出した状態になるように衣服等に貼付するだけで、アロマセラピーを施行できる。従って、本発明によれば、安全かつ手軽にアロマセラピーなどに利用可能な芳香性シールの使用方法を提供することができる。
【0051】
(20)本発明の芳香性シールの使用方法は、上述の芳香性シールを前記保持層が大気に露出するように衣服の表面又は裏面のいずれか一方又は双方、あるいは物品に貼付して使用することを特徴とするものである。
【0052】
本発明の芳香性シールの使用方法では、芳香液を予め含浸させた芳香性シールが用いられる。そのため、利用者がアロマセラピーに不慣れな人であったとしても、難なくアロマセラピーを施行できる。また、利用者が芳香液を含浸させた芳香性シールを、衣服等に貼付して保持層を大気中に露出させるだけでアロマセラピーを施行できる。従って、本発明によれば、安全かつ手軽にアロマセラピーなどに利用可能な芳香性シールの使用方法を提供することができる。
【0053】
(21)また、上述した芳香性シールの使用方法は、上述の物品が、ベッド、布団、カーテン、部屋の内装品、車両の内装品、テーブル及び椅子から選ばれた少なくとも1つのものであることを特徴とするものである。
【0054】
かかる構成によれば、例えば芳香液含浸用シールが、バス等の車両の内装品に貼付されることで、バスの一定の空間内でアロマセラピーを施行できる。また、本発明の芳香性シールは、一気に香りが拡散することがなく、また、香りの拡散が広範ではないので、例えば、病院の共同部屋で使用する場合であっても香害が発生することがない。
【発明の効果】
【0055】
本発明によれば、共有空間であっても香害を発生させることなく、芳香液を用いることが可能となるので、アロマセラピーなどを安全かつ手軽に利用可能である。また、見栄えについても改善が可能な芳香液含浸用シール、芳香液含浸用シールの使用方法、芳香性シール、及び芳香性シールの使用方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】(a)は本発明の一実施形態に係る芳香液含浸用シール及び芳香性シールを示す平面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図2】(a)から(c)はそれぞれ本発明の別の実施形態に係る芳香液含浸用シール及び芳香性シールを示す断面図である。
【
図3】(a)は
図1の芳香性シールを包装袋内に収容した状態を示す断面図、(b)は(a)のB部拡大図である。
【
図4】表1は、積層方向への圧力を加えずに作製した芳香液含侵用シールの評価結果である。
【
図5】表2は、積層方向へ所定の圧力を加えて作成した芳香液含侵用シールの評価結果である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明の芳香液含浸用シール10及び芳香性シール100と、芳香液含浸用シール10の使用方法及び芳香性シールの使用方法について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0058】
≪芳香液含浸用シール10について≫
図1に示すように、芳香液含浸用シール10は、シール片20が保護シート30に貼付されたシート状のものである。
図1に示す例では、複数(本実施形態では6枚)のシール片20が一枚の保護シート30に所定の配列で配置されている。芳香液含浸用シール10は、例えばアロマセラピーに用いられる精油や香料等の芳香液をシール片20に含浸させた後、シール片20を保護シート30から剥離して衣服や帽子等の着衣、タオルなどのリネン類、ベッドあるいはタンスなどの家具等の構造物などの被粘着対象に粘着することにより、アロマセラピー効果を得るために使用することができる。芳香液は、アロマセラピー用に用いられるものだけではなく、例えば合成香料、天然香料などの各種香料、その他の薬剤などの各種の芳香性を有する液体材料を用いると良い。また、芳香液は、油性のものの他、水溶性のものであっても良い。
【0059】
図1(a)に示すように、シール片20は、略円形の形状に形成され、自由に屈曲可能なシート状のものである。
図1(b)に示すように、シール片20は、保持層22、中間層25、基材層27及び粘着層24を含む複数の層を貼り合わせて積層した積層構造とされている。なお、図示において理解が容易なように、各層の厚みは、実際よりも誇張して描いていることに留意されたい。
【0060】
保持層22は、各種の芳香液を含浸させるために設けられた層である。保持層22は、芳香液を含浸可能なものであればいかなるものであっても良いが、滴下した芳香液をスムーズかつ略均一に拡散可能であると共に、含浸させた芳香液を大気環境下において揮発させることが可能なものであることが望ましい。本実施形態では、保持層22は、シート状の不織布により形成されている。また、保持層22は、シール片20の最も外側に配されており、表面が外部に露出されている。保持層22を待機中に晒すことにより、保持層22に含浸された芳香液を揮発させることができる。保持層22の厚みや大きさについては、例えばアロマセラピーに用いる場合、芳香液の含浸量や、芳香液の揮発によりアロマセラピー効果を得る期間の長さ等によって適宜調整が可能である。
【0061】
ここで、保持層22を構成する不織布は、芳香液に含まれる化学成分に対して不活性であればいかなるものであっても良い。具体的には、保持層22を構成する不織布には、天然繊維及び化学繊維、合成繊維を含む広範囲の繊維が使用可能であり、例えば化学的安定性が高いポリエステル繊維及びセルローズ系繊維などを好適に利用可能である。また、芳香液の裏抜け抑制や香りの持続時間向上等の面から不織布には、コットンなどの天然繊維よりもレーヨンなどの化学繊維を用いることがより一層望ましい。また、不織布の構造や製造方法についても特に限定されるものではないが、例えば不織布は、乾式法、湿式法などの各種方式で形成されたフリースを、サーマルボンド法、水流絡合法(スパンレース法とも称する)、レジンボンド法などの各種方式で結合させて作製したものが使用可能である。ここで、不織布は、保持層22の面方向に沿って、芳香液が拡散することが芳香液を均一に拡散する上で望ましい。かかる知見に基づいて、保持層22に用いる不織布は、サーマルボンド法又は水流絡合法で作製されたものを使用することが望ましい。また、保持層22の芳香液の保持力をより高めるためには、サーマルボンド法で作製されたものを使用することが望ましい。不織布をサーマルボンド法又は水流絡合法で作製することにより、不織布への芳香液の保持力が高まり、含浸させた芳香液が不織布の全体に均一に拡散しやすくなる。そのため、芳香液が不織布の面方向に沿って拡散しやすくなる効果が期待できる。これにより、芳香液が均一に拡散し、香りも均一に拡散するので、一気に香りが拡散することがなく、香害を抑制することができる。
【0062】
中間層25は、必須のものではないが、後述する粘着層24へ芳香液が染み込んで粘着性が損なわれないようにする観点から、保持層22と粘着層24との間に設けられるものである。中間層25は、例えば
図2(b)及び(c)に示すように、保持層22にポリエチレン(PE)系等の疎油性の粘着剤を塗布等することで形成することができる。また、
図1(b)における実施形態では、中間層25は、PET層25b(ポリエチレンテレフタレート層25b)上にPE層25aを形成することでシート状に形成されている。PE層25aは、例えばPE系等の疎油性の熱可塑性粘着剤を塗布等することにより形成されている。中間層25は、保持層22の裏面側に貼り合わされることで、保持層22の下層に形成されている。中間層25は、PE等の疎油性のシート材を例えば両面粘着テープなどによって、それぞれを貼り合わせて形成しても良い。
【0063】
また、中間層25は、例えば疎油性を有するポリエチレン(PE)のような層で形成することが望ましい。中間層25に疎油性を有する素材を用いることにより、芳香液が染み込んで粘着層24に達することを抑制できる。これにより、粘着層24の粘着性が維持されると共に含浸させた芳香液が、中間層25の面方向に拡散しやすくなる。また、芳香液が均一に拡散し、香りも均一に拡散するので、一気に香りが拡散することがなく、香害を抑制することができる。
【0064】
また、中間層25は、疎油性と併せて通気性を有する素材で形成することが望ましい。ここで、中間層25は、例えば多孔性の素材で形成し、粘着層24は、例えば非多孔性の材料で形成さすると中間層25が粘着層24よりも通気性を有するものとすることができる。上述したように中間層25が通気性を有することにより、芳香液の香りのみが、中間層25の面方向にゆっくりと拡散するので、香りが必要以上に拡散することがない。これにより、香害を抑制することが可能である。また、中間層25の疎油性が異なる素材を用いることにより、保持層22に保持された芳香液の拡散度合いを制御することが可能である。
【0065】
図1(b)に示すように、中間層25の下層(保持層22側と反対側)には、粘着層24が形成されている。粘着層24は、保持層22を衣服やタオルなどのリネン類、家具、バスなどの車両のシートといった各種の被粘着対象に対して粘着可能とするために設けられた層である。粘着層24は、保持層22側に向く面(固定面24a)と、固定面24aとは反対側に向く面(糊面24b)とを有する。粘着層24は、例えば基材層27の両面に粘着剤を塗布するなどして形成されている。
図2(b)に示すように、基材層27が設けられていない場合は、中間層25の裏面(保持層22とは反対側の面)に粘着剤を塗布するなどして粘着層24が形成される。糊面24bは、シール片20を貼付する際に被粘着対象に接触する面であり、粘着性を有する。粘着層24は、被粘着対象に応じて粘着力を調整することが可能である。例えば、芳香液含浸用シール10を高齢者や認知症患者などに使用する場合は、剥がれて口に入れないように粘着層24を厚く形成するなどして粘着力を高めるようにすれば良い。また、糊残り無く再剥離させたい用途への使用は、例えば、粘着層24の厚みを薄く形成するなどして、粘着力を弱めるようにすれば良い。
【0066】
上述したように基材層27は、粘着層24の固定面24aと糊面24bとの間に設けられるものである。本実施形態では、基材層27の両面に粘着剤が塗布等されることにより、粘着層24が3層構造として形成されている。基材層27の中間層25側は、粘着層24の固定面24aが形成され、固定面24aが中間層25に貼り付けて固定されている。また、基材層27の中間層25側と反対側の面には、糊面24bが形成されている。基材層27は、含浸させた芳香液が染み込んで糊面24bの粘着性が損なわれないようにするため、疎油性を有するシートを用いることが望ましい。ここで、
図2(a)に示すように、基材層27は、中間層25を設けずに、保持層22の下層に直接設けられるものであっても良い。また、
図2(b)に示すように、基材層27を設けずに上述した中間層25が保持層22の下層に設けられるものであっても良い。基材層27を設けない場合は、中間層25の下層(保持層22側と反対側)に粘着剤を塗布等して粘着層24が形成される。上述のように、粘着層24側に芳香液が染み込まないようにする観点から、芳香液含浸用シール10は、中間層25又は基材層27のいずれか一方を有するものとすることが望ましい。また、芳香液の拡散や保持力を向上させる観点からは、
図1(b)及び
図2(c)に示すように中間層25と基材層27との双方を備えたものとすることが、より望ましい。
【0067】
基材層27は、疎油性を有する素材として例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂素材を用いることができる。また、基材層27は、紙などのシートの表面を樹脂素材等の疎油性を有する素材でコーティングしたものなどを用いても良い。これにより、例えば中間層25を備えない芳香液含浸用シール10であっても、粘着層24の粘着性を損なうことがない。なお、中間層25が設けられていない場合は、基材層27と保持層22とを粘着層24の固定面24aによって貼り合わせるようにすれば良い。
【0068】
保護シート30は、シール片20の未使用状態において糊面24bの粘着力が損なわれないように保護するためのシート状の部材である。保護シート30は、芳香液に含まれるオイル成分に対し、疎油性を有する素材により形成されている。また、保護シート30は、シール片20の保持層22よりも芳香液の拡散しにくい素材により形成されている。これらの特性を有する素材として、具体的にはポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂素材や、紙などのシートの表面を樹脂素材等の疎油性を有する素材でコーティングしたものなどを用いることができる。
【0069】
保護シート30は、表面側が貼付面30aとされ、裏面側が非貼付面30bとされている。シール片20は、保護シート30の貼付面30aにのみシール片20が貼付されており、非貼付面30bにはシール片20が貼付されていない。シール片20は、非貼付面30b側が平滑とされている。貼付面30aは、シール片20をなす粘着層24の糊面24bが面接触する面である。シール片20は、糊面24bを構成する粘着成分を殆ど残存させることなく、貼付面30aから剥離できる。
【0070】
上述した芳香液含浸用シール10は、保持層22、中間層25及び粘着層24等の複数の層が、それぞれ貼り合わされて積層形成されている。ここで、本発明の別の実施形態として、上述した複数の層に積層方向と交差する方向への圧力を加えることにより、複数の層を圧着して、各層が貼り付けられるようにしても良い。具体的には、保持層22等の各層を順番に積層し、積層方向と交差する方向からプレス機によりプレスして圧力が加えられることで積層形成される。このとき、保持層22等の各層は粘着剤や粘着層24の固定面24aによって固定される。上述の圧力は、任意のものであるが、保持層22に用いる不織布の気孔が平面方向に適度に広がる程度の圧力を加えることが望ましい。また、プレスの圧力は、例えば、圧力解放後に保持層22が一定量復元できる程度に加えると良い。すなわち、プレスの圧力は、保持層22の弾性により復元可能な圧力を下回る大きさとすることが望ましい。上述の圧力が強すぎると、不織布の気孔が潰れ過ぎて、復元できず、結果として芳香液の保持ができなくなるからである。
【0071】
上述したように芳香液含浸用シール10が形成されると、保持層22に例えば、滴下で芳香液が含浸される。このように、滴下により芳香液を含浸させるようにすることで、例えば、芳香液含浸用シール10の香りの効果がなくなったときに芳香液を再度保持層22に滴下することで、香りの効果を再生できる。高齢者や年少者が芳香液含浸用シール10を使用する場合は、予め保持層22に芳香液を含浸させておくようにすれば良い。これにより、高齢者や年少者が安全に芳香液含浸用シール10を使用することができる。また、自分の好みに応じて調製した香料や薬剤などを含浸させて作用や目的毎の芳香液含浸用シール10を作製することもできる。
【0072】
次に芳香液含浸用シール10の製法及び構造について、表1及び表2を参照しながら、各実施形態における効果の詳細を説明する。なお、表1及び表2の評価結果は、本発明の一実施形態を例示したものであり、本発明は、表1及び表2の製造条件に限定されるものではない。
【0073】
〔表1の実施例1~実施例6,比較例1及び比較例2の作製〕
図6に示すように表1は、芳香液含浸用シール10を積層方向への圧力を加えずに作製(各層が貼り付く程度の圧力で積層して作製)した場合の各製造条件における評価結果である。実施例と比較例の芳香液含浸用シールは、表1の製造条件に基づいて作製した。
【0074】
保持層22は、湿式法で作製されたレーヨン素材のフリースをサーマルボンド法又は水流絡合法で結合させることにより作製された不織布(厚み:約280μm)を直径29mmの円形に形成したものをそれぞれ用いた。実施例1~実施例3及び実施例5において中間層25は、保持層22にPE素材の粘着剤(厚み:0.04mm)を塗布等して形成した。また、実施例1,2,4,6において、基材層27は、保持層22と同径に形成されたPET(厚み:0.075mm)を用いて形成した。粘着層24は、基材層27の両面に粘着剤を塗布することにより形成した。また、中間層25と粘着層24とは、粘着層24の固定面24aにより貼り合わせた。比較例1及び2は、保持層22として、上述の実施例と同様の不織布を用い、当該不織布のみで形成したものである。芳香液は、D-リモネンを主成分とし所定の比率でその他の添加物を混合したものを用いた。
【0075】
〔芳香液の裏抜け〕
芳香液の裏抜けについての評価は、作製した芳香液含浸用シールの中心部に芳香液を0.025ml滴下し、3時間後に粘着層24における糊面24bに芳香液が浸透しているか否かを目視確認することにより行った。上述した評価は、裏抜け無し:無、やや裏抜け有り:やや有、裏抜け有り:有を基準として行った。
【0076】
〔芳香液の広がり〕
芳香液の広がりについての評価は、作製した芳香液含浸用シールの中心部に芳香液を0.025ml滴下し、3時間後に保持層22の表面に広がる芳香液を目視確認することにより行った。上述した評価は、横方向への広がりが非常に大きい:◎、横方向への広がりが大きい:○、横方向への広がりが小さい:△、横方向への広がりがほとんど無い:×を基準として行った。
【0077】
〔香りの強さ〕
香りの強さについての評価は、作製した芳香液含浸用シールの中心部に芳香液を0.025ml滴下し、3時間後に芳香液含浸用シールから50cm離れた地点で感じる臭気の強さを官能評価することにより行った。なお、当該評価は、ばらつきを少なくするために47人で同じ評価を行った。上述した評価は、非常に強い:◎、強い:○、やや弱い:△、弱い:×を基準として行った。
【0078】
〔香りの持続時間〕
香りの持続時間についての評価は、作製した芳香液含浸用シールの中心部に芳香液を0.025ml滴下し、所定の時間毎に芳香液含浸用シールから50cm離れた地点で感じる臭気の有無を官能評価することにより行った。なお、当該評価は、ばらつきを少なくするために47人で同じ評価を行った。上述した評価は、5時間以上:◎、3時間以上5時間未満:○、1時間以上3時間未満:△、1時間未満:×を基準として行った。
【0079】
〔香りの到達距離(1m)〕
香りの到達距離(1m)についての評価は、作製した芳香液含浸用シールの中心部に芳香液を0.025ml滴下し、所定の時間毎に芳香液含浸用シールから水平方向に1m離れた地点で感じる臭気の有無を官能評価することにより行った。なお、当該評価は、ばらつきを少なくするために47人で同じ評価を行った。上述した評価は、臭気を感じない:無し、臭気を僅かに感じた:僅かに有り、臭気を感じた:有り、を基準として行った。本評価では、香害を抑制するために、臭気を感じないようにすることが望ましい。
【0080】
〔香りの到達距離(50cm)〕
香りの到達距離(50cm)についての評価は、作製した芳香液含浸用シールの中心部に芳香液を0.025ml滴下し、所定の時間毎に芳香液含浸用シールから水平方向に50cm離れた地点で臭気を官能評価することにより行った。上述した評価は、臭気を感じない:無し、臭気を僅かに感じた:僅かに有り、臭気を感じた:有り、として評価を行った。なお、当該評価は、ばらつきを少なくするために30人で同じ評価を行った。本評価では、芳香液含浸用シールとしての香りの効果が発揮できるように、臭気を感じるようにすることが望ましい。
【0081】
〔実施例1及び実施例2について〕
表1の製造条件に基づいて、湿式法で作製されたレーヨン素材のフリースをサーマルボンド法又は水流絡合法のいずれかで結合させた不織布からなる保持層22と、PETで形成された基材層27を有する粘着層24とが用意される。保持層22の表面が露出されるように保持層22の裏面側にPE系の粘着剤を塗布等して中間層25を形成する。続いて、中間層25の下層に粘着層24が積層され、それぞれを貼り合わせることで、実施例1及び実施例2のサンプルを作製した。作製したサンプルは、上述した評価方法に基づいて評価を行った。表1の通り、サーマルボンド法で作製された保持層22を備えた実施例1は、水流絡合法で作製された保持層22を備えた実施例2よりも香りの強さ及び持続時間でやや良い結果が得られた。これは、保持層22の芳香液の保持力の差によるものと推定される。なお、実施例2は、香りの強さ及び香りの持続時間において、実施例1に劣るものの、使用可能な範囲のものであった。
【0082】
〔実施例3及び実施例5について〕
表1の製造条件に基づいて、上述した実施例1及び実施例2と同様にサーマルボンド法又は水流絡合法のいずれかで作製されたレーヨン素材の不織布からなる保持層22が用意される。保持層22の表面が露出されるように保持層22の裏面側にPE系の粘着剤を塗布等して中間層25を形成する。続いて、中間層25の裏面側に粘着剤が塗布された基材層27を有しない粘着層24を形成することにより、実施例3及び実施例5のサンプルを作製した。作製したサンプルは、上述した評価方法に基づいて評価を行った。表1の通り、実施例3及び実施例5は、芳香液の裏抜けについて、実施例1及び実施例2よりもやや劣るものの、使用可能な範囲のものであった。また、実施例5は、実施例1及び実施例3よりも香りの強さ及び香りの持続時間がやや劣るものの、使用可能な範囲のものであった。
【0083】
〔実施例4及び実施例6について〕
表1の製造条件に基づいて、上述した実施例1及び実施例2と同様にサーマルボンド法又は水流絡合法のいずれかで作製されたレーヨン素材の不織布からなる保持層22と、PETで形成された基材層27を有する粘着層24とが用意される。保持層22の表面が露出されるように保持層22の裏面側に、粘着層24を積層して貼り合わせることで、実施例4及び実施例6のサンプルを作製した。作製したサンプルは、上述した評価方法に基づいて評価を行った。表1の通り、実施例4及び実施例6は、芳香液の裏抜けについて、実施例1及び実施例2よりもやや劣るものの、使用可能な範囲のものであった。また、実施例6において、芳香液の広がり、香りの強さ及び香りの持続時間が実施例1,3,4よりもやや劣るものの、使用可能な範囲のものであった。
【0084】
〔比較例1及び比較例2について〕
比較例1及び比較例2は、上述した実施例1~実施例6と同様にサーマルボンド法又は水流絡合法で作製したレーヨン素材の不織布(保持層22)のみで形成されたものである。表1に示すように、中間層25及び基材層27を用いない場合、芳香液が裏抜けするため、粘着層24に芳香液が侵入する。そのため、粘着層24の粘着性を阻害したり、被着物を汚染したりする問題が生じる。従って、比較例1及び比較例2は、使用に適さない。
【0085】
〔表2の実施例7~実施例15,比較例3及び比較例4の作製〕
図6に示すように表2は、芳香液含浸用シール10を積層方向への圧力を加えて作製した場合の各条件における評価結果である。圧力は、保持層22が弾性により復元可能な圧力を下回る大きさの所定の圧力としている。表2は、積層方向への圧力を加えて、積層形成を行った点が表1の製造条件と異なっており、その他の製造条件は表1と同様である。なお、表1における実施例1~実施例6のサンプルは、プレス機を用いずに軽度の力で貼り合わせたものである。評価方法及び評価基準は、表1と同様の方法で行った。
【0086】
〔実施例7及び実施例8について〕
表2の製造条件に基づいて、上述した実施例1及び実施例2と同様にサーマルボンド法又は水流絡合法のいずれかで作製されたレーヨン素材の不織布からなる保持層22と、PETで形成された基材層27を有する粘着層24とが用意される。保持層22の表面が露出されるように保持層22の裏面側にPE系の粘着剤を塗布等して中間層25を形成する。続いて、中間層25の下層に粘着層24が積層され、積層方向と交差する方向に所定の圧力を加えて、それぞれを貼り合わせることで、実施例7及び実施例8のサンプルを作製した。作製したサンプルは、以下の評価方法に基づいて評価を行った。表2の通り、サーマルボンド法で作製された保持層22を備えた実施例7は、水流絡合法で作製された保持層22を備えた実施例8よりも香りの強さ及び持続時間で良い結果が得られた。これは、保持層22の芳香液の保持力の差によるものと推定される。また、作製の際に積層方向に圧力を加えることにより、保持層22が圧縮され、芳香液の保持力が表1のサンプルよりも高まったものと推定される。なお、実施例8は、香りの強さ及び香りの持続時間において、実施例7に劣るものの、使用可能な範囲のものであった。
【0087】
〔実施例9及び実施例11について〕
表2の製造条件に基づいて、上述した実施例1及び実施例2と同様にサーマルボンド法又は水流絡合法のいずれかで作製されたレーヨン素材の不織布からなる保持層22が用意される。保持層22の表面が露出されるように保持層22の裏面側にPE系の粘着剤を塗布等して中間層25を形成する。続いて、中間層25の裏面側に粘着剤が塗布されて粘着層24が形成され、積層方向と交差する方向に所定の圧力を加えて、それぞれを貼り合わせることで実施例9及び実施例11のサンプルを作製した。作製したサンプルは、上述した評価方法に基づいて評価を行った。表2の通り、実施例9及び実施例11は、芳香液の裏抜けについて、実施例7及び実施例8よりもやや劣るものの、使用可能な範囲のものであった。また、実施例11は、芳香液の裏抜け、香りの強さ及び香りの持続時間が実施例7,9,10よりやや劣るものの、使用可能な範囲のものであった。
【0088】
〔実施例10及び実施例12について〕
表2の製造条件に基づいて、上述した実施例1及び実施例2と同様にサーマルボンド法又は水流絡合法のいずれかで作製されたレーヨン素材の不織布からなる保持層22と、PETで形成された基材層27を有する粘着層24とが用意される。保持層22の表面が露出されるように保持層22の裏面側に粘着層24を積層し、積層方向と交差する方向に所定の圧力を加えて、それぞれを貼り合わせることで、実施例10及び実施例12のサンプルを作製した。作製したサンプルは、上述した評価方法に基づいて評価を行った。表2の通り、実施例10及び実施例12は、芳香液の裏抜けについて、実施例7及び実施例8よりもやや劣るものの、使用可能な範囲のものであった。また、実施例12は、芳香液の広がり及び香りの強さが実施例7,9,10よりやや劣るものの、使用可能な範囲のものであった。
【0089】
〔比較例3及び比較例4について〕
比較例3及び比較例4は、上述した実施例1~実施例12と同様にサーマルボンド法又は水流絡合法で作製したレーヨン素材の不織布(保持層22)のみで形成されたものである。表2に示すように、中間層25及び基材層27を用いない場合、芳香液が裏抜けするため、粘着層24に芳香液が侵入する。そのため、粘着層24の粘着性を阻害したり、被着物を汚染したりする問題が生じる。従って、比較例3及び比較例4は、使用に適さない。
【0090】
次に、芳香液含浸用シール10に芳香液を含浸させて作製した芳香性シール100について以下に詳細を説明する。
【0091】
芳香性シール100は、上述した芳香液含浸用シール10の各シール片20において、保持層22に精油や香料などからなる芳香液を含浸させたものである。本実施形態では、例えばアロマセラピーに用いられる芳香液が保持層22に含浸された芳香性シール100を例に以下に詳細を説明する。芳香性シール100によれば、必要に応じてシール片20を保護シート30から剥がし、衣服などの任意の場所に貼り付けるだけで、アロマセラピー効果を得ることができる。
【0092】
芳香性シール100は、保持層22に含浸させた芳香液の揮発を抑制すべく、例えば
図6に示すような包装袋110等の袋や容器に収容した状態で保管されることが望ましい。また、芳香液含浸用シール10の状態で販売等し、使用者自身で芳香液含浸用シール10に芳香液を含浸させて使用できるようにする場合についても、衛生面等の観点から包装袋110等の袋や容器に収容した状態とされることが望ましい。ここで一般的に、アロマセラピー用の芳香液は、光の作用により酸化等して品質が劣化する特性を有するものが多い。また、アロマセラピー用の芳香液の大半は、気化して揮発しやすい特性を有する。そのため、芳香性シール100を保管するための袋や容器は、遮光性を有し、気密状態で保持可能なものであることが望ましい。また、芳香液含浸用シール10についても、使用者自身で芳香液を含浸させて芳香性シール100の状態にした後、保管しておきたい場合が想定される。そのため、芳香液含浸用シール10を保管するための袋や容器についても、遮光性を有し、気密状体で保持可能なものであることが望ましい。
図6に示した包装袋110は、アルミ蒸着などの手法により形成された遮光性を有するシートを平袋状に形成した袋本体112の口にチャック(図示しない)を設け、チャックを閉じることにより気密状態となるように封止できるものである。上述したように、包装袋110等の袋に芳香液含浸用シール10を収容することで、外出時に持ち出して使用することができる。また、本発明の芳香性シール100は、香害を抑制する効果を有するので、例えば、バス、電車、エレベーターなどの公共の乗り物内で使用することが可能である。また、会社等の職場で使用する場合でも、周りの者に香害を及ぼさずに使用することが可能である。
【0093】
また、包装袋110は、袋本体112の表面に、ラベル(図示しない)が貼付されている。上述したラベルに芳香性シール100を使用することにより期待できる効能や、香りの種類、芳香液の名称などを付しておくことが好ましい。これにより、包装袋110に収容されている芳香性シール100の種類の確認等のために、必要以上に包装袋110が開封されるのを抑制し、芳香液の揮発や劣化を最小限に抑制できる。
【0094】
芳香性シール100は、一枚の保護シート30に設けられた複数のシール片20に対して、異なる芳香液を含浸させたものとしても良いが、包装袋110等によって気密状態とされた環境下で保管することを想定すると、全てのシール片20に同一の芳香液を含浸させたものであることが望ましい。また、包装袋110に複数の芳香性シール100を収容する場合についても、同様の観点から、一緒に収容される全ての芳香性シール100が同一の芳香液を含浸させたものであることが好ましい。
【0095】
続いて、芳香液含浸用シール10あるいは芳香性シール100を利用したアロマセラピーの施行方法について詳細に説明する。
【0096】
上述したように、本実施形態の芳香液含浸用シール10や芳香性シール100は、アロマセラピー用の芳香液を保持層22に含浸させた状態とし、粘着層24を用いて任意の場所に貼付して使用できる。本実施形態の芳香液含浸用シール10のようにシート状とすることにより、家具などの形状が固定した構造物はもちろんのこと、衣服やタオルなどのリネン類のように屈曲する場所にも貼付して使用することができる。そのため、本実施形態の芳香液含浸用シール10や芳香性シール100を用いれば、装着する場所を選ばず手軽にアロマセラピーが利用できる。
【0097】
また、上述したように、シール片20の保持層22が、表面を露出させた状態とされており、加熱等しなくても芳香液を揮発させることができる。そのため、芳香液含浸用シール10や芳香性シール100によれば、老人や年少者などのアロマセラピーに詳しくない人たちであってもアロマセラピーを安全に利用することができる。また、上述したように保持層22に含浸させた芳香液を保持層22の表面から自然に揮発させることにより、程よく安定した揮発速度で芳香液を揮発させ、長期に亘って安定したアロマセラピー効果を得ることができる。
【0098】
また、本実施形態の芳香液含浸用シール10や芳香性シール100は、例えば衣服やタオルなどのリネン類の裏側に貼り付けるなどして使用できる。そのため、従来のようにティッシュペーパーに芳香液を滴下して使用する場合などに比べて見栄え良くアロマセラピーが利用できる。また、本実施形態の芳香液含浸用シール10や芳香性シール100は、ベッド、布団、カーテン、部屋の各種の内装品、バス、自動車、電車など車両の内装品、その他テーブル及び椅子から選ばれた少なくとも一つのものとすることができる。また、本実施形態の芳香液含浸用シール10や芳香性シール100は、上述以外の各種の物品に貼付して使用することができる。また、本実施形態の芳香液含浸用シール10は、主にアロマセラピー用の芳香液を含浸させるものであったが、例えば虫除け用の芳香液を含浸させることにより、虫除け効果を期待できる。この場合は、衣服の表裏や、カーテン、その他の部屋の内装品、タンス等の引き出し、あるいは、窓、ドア、壁面などの建物の内外装にも広く利用することができる。また、例えば合成香料、天然香料、試薬などの各種の香料又はこれらを混合した香料を芳香液含浸用シール10に含浸させることにより、芳香剤的に使用することも可能である。また、各種薬剤を芳香液含浸用シール10に含浸させて、薬剤が拡散するようにしても良い。
【0099】
また、本実施形態において例示したように、保持層22として、不織布のように織り目がランダムな素材により形成されたものを用いることにより、保持層22の略全体に亘って芳香液をスムーズかつ略均一に含浸させることができる。なお、本実施形態では、保持層22を不織布により形成した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の素材によって形成されていてもよい。保持層22を不織布以外の素材によって形成する場合についても、織り目がランダムなもの等、芳香液をスムーズかつ略全域に亘って略均一に含浸させることが可能なものであることが望ましい。また、本実施形態においては、保持層22に用いられる不織布の製法として、湿式法のサーマルボンド法又は湿式法の水流絡合法を用いたが、本発明はこれらに限定されるものではなく、乾式法によって作製されたものやフェルト化法、スパンボンド法、サーマルボンド法等の各種の製法を用いて作製されたものであっても良い。
【0100】
本実施形態では、保持層22を無地の素材で形成した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、印刷等の適宜の手法により文字や図形、模様等を保持層22に表示したものであっても良い。
【0101】
また、本実施形態において例示したように、保持層22の裏面側に積層される層の一部又は全部が疎油性を有する素材によって形成することにより、保持層22に含浸させた芳香液が粘着層24側に染み込むのを抑制できる。これにより、衣服やタオルなどのリネン類、家具などの被粘着対象にまで芳香液が染み出したり、粘着層24の粘着力が低下したりするのを抑制できる。本実施形態では、保持層22の裏面側に疎油性を有するポリエチレンで形成された中間層25を設ける構成としたが、中間層25は、各種の素材で形成することができる。中間層25は、例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等で形成しても良い。また、本実施形態では、疎油性を有する素材とした中間層25を設ける構成としたが、中間層25は、芳香液の疎油性を考慮せず適宜の素材によって形成しても良い。また、中間層25は、省略することも可能である。中間層25を省略する場合は、粘着層24に疎油性を有する基材層27を設けることが望ましい。また、中間層25は、1層構造だけではなく2層以上の中間層25が設けられるものであっても良い。また、中間層25は、複数の素材の組合せによるものであっても良い。中間層25を複数設ける場合は、層毎に疎油性が異なる素材のものを用いるようにしても良い。例えば、保持層22に近い層を疎油性が小さい素材とし、粘着層24に近づくにつれて疎油性が高い素材を用いるようにしても良い。これにより、保持層22における芳香液の拡散度合いを制御することも可能である。また、中間層25は、保持層22と一体的に形成されたものであっても良い。また、上述した中間層25と同様に基材層27が複数層設けられるものであっても良い。
【0102】
また、本実施形態においては、中間層25が、粘着層24より通気性が高い素材によって構成されている例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、中間層25が通気性を有しない素材で形成されていても良い。
【0103】
また、本実施形態においては、中間層25や基材層27を設けて、粘着層24に芳香液が染み込みにくい素材を用いる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、例えば保持層22に含浸させた芳香液を経皮吸収させたい場合のように、中間層25や粘着層24側が芳香液を染み込みやすいものであることが好ましい場合には、中間層25や粘着層24を保持層22と同等以上に芳香液が拡散しやすい素材によって形成しても良い。また、本実施形態では粘着層24が、基材層27の両面に粘着剤を塗布することにより三層構造で形成される例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、粘着層24を二層構造とし、保持層22側(固定面24a側)の層を芳香液の拡散しにくい素材で形成し、糊面24b側の層が芳香液の拡散しやすさを考慮せず適宜の素材によって形成されていても良い。また、本実施形態では、基材層27が粘着層24に含まれるものとしたが、基材層27を単独で設け、基材層27の両面に両面粘着テープ等を設けるような構成であっても良い。また、基材層27を用いない構成とする場合は、中間層25の裏面側に粘着剤を塗布して粘着層24が形成されたものとしても良い。
【0104】
本実施形態においては、保持層22及び粘着層24を含む複数の層が、積層方向への圧力を加えることにより、それぞれ積層形成されているが、それぞれの層は、一括で全ての層に圧力を加えるものだけではなく、2つ以上の層に個別に圧力を加えるものであっても良い。また、予めそれぞれの層に単独で積層方向への圧力を加え、後の行程でそれぞれの層が貼り合わせなどにより積層形成されるものであっても良い。また、本実施形態においてはプレス機により圧力を加える方法を例示したが、プレス機以外で圧力が加えられるものであっても良い。
【0105】
本実施形態の芳香液含浸用シール10や芳香性シール100は、保護シート30が疎油性を有する素材によって形成されているため、保護シート30を介して芳香液が染み出す等の問題を回避し得る。なお、本実施形態では、保護シート30として疎油性を有する素材によって形成した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、疎油性を考慮することなく適宜の素材からなるシートを保護シート30として採用しても良い。
【0106】
また、上述したように、保護シート30上に配置されたシール片20同士の間に所定の間隔を設けることにより、シール片20に滴下した芳香液が、隣接する他のシール片20に向けて染み出すのを抑制できる。これにより、芳香性シール100の製造不良を最小限に抑制することができる。なお、本実施形態では、シール片20同士の間に間隔を設けた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、略隙間なくシール片20を配置しても良い。
【0107】
本実施形態の芳香液含浸用シール10や芳香性シール100は、保護シート30が保持層22よりも芳香液の拡散しにくい疎油性を有する素材によって形成されている。そのため、保持層22に滴下された芳香液が保護シート30から染み出して拡散してしまうのを抑制できる。なお、本実施形態では保護シート30として芳香液が拡散しにくい疎油性を有する素材で形成した例を示したが、芳香液の拡散特性を考慮せず任意の素材によって形成されたものであっても良い。
【0108】
また、本実施形態において例示したように、シール片20を円状に形成することにより、保持層22に滴下された芳香液を保持層22の略全体に亘って略均一に含浸させることができる。なお、本実施形態では、シール片20の全体を略円形に形成した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば保持層22を略円形としつつ、粘着層24等を非円形としたものであっても良い。また、シール片20は、略円形の形状に限定されず、例えば三角形や四角形、五角形、六角形などの多角形の形状や星形、ハート型などの形状とされても良い。なお、シール片20は、芳香液を滴下した場合に放射状に拡散することを考慮し、少なくとも保持層22を円形や楕円形などの円状の形状に形成することが望ましい。また、保持層22を多角形とする場合には、正多角形とすることが望ましい。
【0109】
本実施形態の芳香性シール100は、上述した本実施形態の芳香液含浸用シール10に対して芳香液を含浸させた状態のものである。そのため、芳香液を保持層22に含浸させる作業を行うことなく、衣服やタオルなどのリネン類、家具などの被粘着対象に貼付するだけで手軽かつ安全にアロマセラピーが利用できる。また、本実施形態の芳香性シール100は、上述した芳香液含浸用シール10を用いたものであるため、衣服の裏側に貼り付けるなどして見栄え良くアロマセラピーを利用できる。
【0110】
さらに、芳香性シール100は、予め芳香液を適量含浸させたものであるため、利用者が芳香液を選ぶ手間や、芳香液の滴下量を調整する等の手間を省くことができる。これにより、例えばアロマセラピーの初心者や、老人、年少者等のように、効果的な芳香液の選択や最適な芳香液の滴下量の判断が難しい人や、手間なくアロマセラピーを利用したい人などであっても、簡単かつ安全にアロマセラピーを施行できる。
【0111】
また、本実施形態では、予め保持層22に芳香液を含浸させて芳香性シール100の状態とし、包装袋110などに保管しておき、適宜使用可能とする例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。具体的には、芳香液含浸用シール10に芳香液を含浸させることなくそのままの状態で保管しておき、使用者がアロマセラピーを行う直前など任意のタイミングで芳香液を保持層22に滴下させて使用するようにしても良い。また、芳香液含浸用シール10や芳香性シール100の香りの効果が薄れた際に、再度、保持層22に芳香液を滴下させて使用するようにしても良い。これにより、芳香液含浸用シール10や芳香性シール100を複数回繰り返して使用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の芳香液含浸用シールは、アロマセラピーを行うためのアロマセラピーグッズとして好適に利用できる。また、本発明の芳香性シールは、アロマセラピーに精通した人だけでなく、老人や若年者などのアロマセラピーに馴染みのない人でも安全かつ手軽に利用可能とするためのものとして好適に利用可能である。また、本発明の芳香液含浸用シールや芳香性シールは、病院の共同部屋やバス、自動車、電車等の車両に利用することができる。また、芳香液含浸用シールは、芳香液としてアロマセラピー用のものの他、合成香料、その他の各種薬剤を含浸させることで、芳香剤や薬剤の拡散などにも利用可能である。
【符号の説明】
【0113】
10 芳香液含浸用シール
20 シール片
22 保持層
24 粘着層
24a 固定面
24b 糊面
25 中間層
25a PE層(ポリエチレン層)
25b PET層(ポリエチレンテレフタレート層)
27 基材層
30 保護シート
100 芳香性シール
110 包装袋