(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】虫への物理的ダメージが少ない化合物処理システム
(51)【国際特許分類】
A01M 1/06 20060101AFI20231222BHJP
【FI】
A01M1/06
(21)【出願番号】P 2020120096
(22)【出願日】2020-07-13
【審査請求日】2023-05-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年(令和元年)度、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター、「イノベーション創出強化研究推進事業」「害虫内部の必須共生機能を標的とした低環境負荷型防除資材の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 亜希子
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-263875(JP,A)
【文献】特開平11-056194(JP,A)
【文献】特開2008-208060(JP,A)
【文献】特開平09-224540(JP,A)
【文献】登録実用新案第3116542(JP,U)
【文献】特開2003-235427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に吸汁性飛翔害虫を吸い込むための吸引口が形成され、他端に気流発生源と接続するための接続部が設けられた中空の部材であって、前記中空部分に前記吸汁性飛翔害虫の通過を妨げるフィルタが設けられたノズル部と、
第一の端部が前記ノズル部の吸引口側端部と接続する筒状の本体部と、
前記本体部の前記第一の端部とは反対側の第二の端部と接続する筒状の部材であって、前記本体部と接続する側の端部に前記筒状の部材の中空部分を閉塞するフィルムが設けられ、前記フィルムで仕切られた前記中空部分に、前記吸汁性飛翔害虫へ投与する化合物を含む薬液を保持する化合物保持部と、
を備える吸汁性飛翔害虫に対する化合物処理システム。
【請求項2】
前記化合物保持部が、前記本体部の第二の端部に対して取り外し可能に接続され、
前記化合物保持部を取り外した場合に、前記化合物を投与した後の前記吸汁性飛翔害虫を移送する試験容器に接続可能な接続部を前記本体部の第二の端部が備えた請求項1に記載の化合物処理システム。
【請求項3】
前記吸汁性飛翔害虫が、タバココナジラミである請求項1又は2に記載の化合物処理システム。
【請求項4】
一端に吸汁性飛翔害虫を吸い込むための吸引口が形成され、他端に気流発生源と接続するための接続部が設けられた中空の部材であって、前記中空部分に前記吸汁性飛翔害虫の通過を妨げるフィルタが設けられたノズル部を前記気流発生源と接続し、前記吸引口から前記フィルタ側へ気流を発生させて、前記吸汁性飛翔害虫を吸い込む工程と、
筒状の本体部における第一の端部の中空部に対し、前記ノズル部の吸引口側端部を挿入し、前記本体部の第一の端部と前記ノズル部とを接続する工程と、
前記本体部の前記第一の端部とは反対側の第二の端部と接続された筒状の化合物保持部であって、前記本体部と接続する側の端部に前記筒状の部材の中空部分を閉塞するフィルムが設けられた化合物保持部の前記フィルムで仕切られた前記中空部分に、前記吸汁性飛翔害虫へ投与する化合物を含む薬液を保持させることで、前記フィルムを介して前記吸汁性飛翔害虫に前記薬液を吸汁させる工程と、
を含む吸汁性飛翔害虫に対する化合物投与方法。
【請求項5】
前記吸汁性飛翔害虫に前記薬液を吸汁させる工程の後、前記化合物保持部を前記本体部の第二の端部から取り外し、前記本体部の第二の端部を試験容器に接続して、前記吸汁性飛翔害虫を前記試験容器へ移送する工程を更に含む請求項4に記載の化合物投与方法。
【請求項6】
前記吸汁性飛翔害虫が、タバココナジラミである請求項4又は5に記載の化合物投与方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小な吸汁性飛翔害虫等の虫への物理的ダメージが少ない化合物処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
タバココナジラミは、トマトやキュウリなど600種以上の植物に対して吸汁や植物病ウイルスの媒介を行い、収穫量の減少や商品価値の低下などの多大な経済的被害を引き起こす農業害虫である。特に近年、殺虫剤抵抗性系統の蔓延から、従来農薬に代わる効果的かつ安全性の高い、新しい防除法の開発が急務となっている。新規の害虫防除剤となりうるシード化合物のスクリーニングを行う場合、虫生体を用いての実験が不可欠である。
【0003】
特許文献1には、吸引装置に接続するための装置接続口を一端側に有し、害虫を吸引するための害虫吸引口を他端側に有する筒状本体と、筒状本体の内部空間を装置接続口側と害虫吸引口側とに仕切るように、筒状本体の内部に装着する消臭フィルタを備える害虫用捕獲具が提案されている。
【0004】
特許文献2には、薬剤の気中濃度が飛翔害虫の誘引行動に及ぼす効果を把握可能な誘引阻害活性試験装置が記載されている。当該誘引阻害活性試験装置は、飛翔害虫に対する誘引阻害活性を有する薬剤が基材に保持されてなる薬剤保持体を設置可能な薬剤保持体設置部と、飛翔害虫を収容可能な試験部と、試験部に対して上流側から下流側に向けて気流を発生させることが可能な気流発生手段とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-263875号公報
【文献】特開2008-208060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タバココナジラミは、体長0.8mm以下と微小かつ飛翔する。このため殺虫剤などの薬剤スクリーニング等を行う際の取り扱いが困難であった。例えば、タバココナジラミを飼育容器から吸汁用容器へ移し、評価対象の薬剤を与えた後、試験容器へ移すといった作業を行う場合、静電気による影響やハンドリングに伴う物理的ダメージによって実験途中の個体が死んでしまうことが多々生じていた。また、このような取り扱いの難しさから多数の候補化合物の生体実験を行うには多大な時間的・人的なコストがかかることが新規防除剤スクリーニングを行う上での大きな問題となっている。
【0007】
そこで本発明の目的は、吸汁性飛翔害虫を移送する場合に、当該虫への物理的ダメージを抑え、且つ移送を容易にする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の化合物処理システムは、
一端に吸汁性飛翔害虫を吸い込むための吸引口が形成され、他端に気流発生源と接続するための接続部が設けられた中空の部材であって、前記中空部分に前記吸汁性飛翔害虫の通過を妨げるフィルタが設けられたノズル部と、
第一の端部が前記ノズル部の吸引口側端部と接続する筒状の本体部と、
前記本体部の前記第一の端部とは反対側の第二の端部と接続する筒状の部材であって、
前記本体部と接続する側の端部に前記筒状の部材の中空部分を閉塞するフィルムが設けられ、前記フィルムで仕切られた前記中空部分に、前記吸汁性飛翔害虫へ投与する化合物を含む薬液を保持する化合物保持部と、
を備える。
【0009】
前記化合物処理システムは、前記化合物保持部が、前記本体部の第二の端部に対して取り外し可能に接続され、
前記化合物保持部を取り外した場合に、前記化合物を投与した後の前記吸汁性飛翔害虫を移送する試験容器に接続可能な接続部を前記本体部の第二の端部が備えてもよい。
【0010】
前記化合物処理システムにおいて、前記吸汁性飛翔害虫は、タバココナジラミであってもよい。
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の化合物投与方法は、
一端に吸汁性飛翔害虫を吸い込むための吸引口が形成され、他端に気流発生源と接続するための接続部が設けられた中空の部材であって、前記中空部分に前記吸汁性飛翔害虫の通過を妨げるフィルタが設けられたノズル部を前記気流発生源と接続し、前記吸引口から前記フィルタ側へ気流を発生させて、前記吸汁性飛翔害虫を吸い込む工程と、
筒状の本体部における第一の端部の中空部に対し、前記ノズル部の吸引口側端部を挿入し、前記本体部の第一の端部と前記ノズル部とを接続する工程と、
前記本体部の前記第一の端部とは反対側の第二の端部と接続された筒状の化合物保持部であって、前記本体部と接続する側の端部に前記筒状の部材の中空部分を閉塞するフィルムが設けられた化合物保持部の前記フィルムで仕切られた前記中空部分に、前記吸汁性飛翔害虫へ投与する化合物を含む薬液を保持させることで、前記フィルムを介して前記吸汁性飛翔害虫に前記薬液を吸汁させる工程と、
を含む。
【0012】
前記化合物投与方法は、前記吸汁性飛翔害虫に前記薬液を吸汁させる工程の後、前記化合物保持部を前記本体部の第二の端部から取り外し、前記本体部の第二の端部を試験容器に接続して、前記吸汁性飛翔害虫を前記試験容器へ移送する工程を更に含んでもよい。
【0013】
前記化合物投与方法において、前記吸汁性飛翔害虫は、タバココナジラミであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、吸汁性飛翔害虫を移送する場合に、当該虫への物理的ダメージを抑え、且つ移送を容易にする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】本体部及び化合物保持部を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)に係る化合物処理システム1について説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
図1は、化合物処理システム1の概略構成図である。
【0017】
〈システム構成〉
図1に示すように、化合物処理システム1は、飼育容器2と、化合物投与装置3と、真空ポンプ(気流発生部)4と、ラック5と、試験容器6とを有している。
【0018】
飼育容器2は、吸汁性の飛翔害虫7と、当該飛翔害虫7が吸汁するための植物8を収容している。本実施形態では、プラスチック製の広口瓶を倒立させたものが、飼育容器2として用いられている。即ち、飼育容器2の瓶本体21が開口部21Aを下に向けて配置され、この開口部21Aを成すネジ口に対して螺合する蓋22が底部として用いられている。なお、飼育容器2は、
図1の構成に限定されるものではなく、飛翔害虫7を収容し、飼育できるものであればよい。本実施形態の瓶本体21は、透明な材料で形成され、外側から飛翔害虫7の様子が観察でき、また、植物8に光を当てることができるようになっている。瓶本体21の側面には、飛翔害虫7を捕集する際に利用するため、容器の内外に貫通した穴21Bが形成され、開閉可能なカバー21Cが取り付けられている。加えて、空気を通すための穴21Dが形成され、こちらは飛翔害虫7の大きさよりも目開きが小さいメッシュ21Eにより覆われており開閉はできない。本実施形態において、吸汁性の飛翔害虫7は、例えばタバココナジラミである。これに限らず、飛翔害虫7は、オンシツコナジラミなどのコナジラミ類や、他の吸汁性飛翔害虫であってもよい。
【0019】
化合物投与装置3は、ノズル部31、本体部32、及び化合物保持部33を有している。
図2は、ノズル部31の分解斜視図である。ノズル部31は、一端に吸汁性飛翔害虫を吸い込むための吸引口311が形成され、他端に気流発生源と接続するための接続部312が設けられた中空の部材である。また、ノズル部31は、中空部分に飛翔害虫7の通過を妨げるフィルタ317が設けられている。ノズル部31の材質は、例えばプラスチック等が用いられる。ノズル部31の材質は、特に限定されるものではないが、吸引した飛翔害虫7を視認できるように透明なものが望ましい。ノズル部31は、
図2に示すように、吸引口側が先細り形状となっているパーツ313と、パーツ313の吸引口311と反対側の端部314から中空部315へ嵌入されるパーツ316とを有している。パーツ316の先端側には、フィルタ317が取り付けられている。パーツ316のフィルタ317と反対側の端部は、真空ポンプ4と接続される接続部312となっている。
【0020】
フィルタ317は、真空ポンプ4によって吸引される空気を通過させつつ、飛翔害虫7の通過を妨げ、吸引口311から吸引した飛翔害虫7を中空部315内に留めるものである。本実施形態のフィルタ317は、飛翔害虫7の大きさよりも目開きが小さいメッシュである。なお、フィルタ317は、メッシュに限らず、布や、格子、不織布、綿、スポンジ等であってもよい。本実施形態では、このフィルタ317で仕切られた吸引口311側の中空部315の容積が1000μlとなっている。これに限らず、中空部315の容積は、吸引する飛翔害虫7の大きさや数に応じて設定され得る。
【0021】
図3は、本体部32及び化合物保持部33を示す分解斜視図である。本体部32は、第一の端部321がノズル部31の吸引口側端部と接続する筒状の部材である。化合物保持部33は、本体部32の第一の端部321とは反対側の第二の端部322と接続する筒状の部材であって、本体部32と接続する側の端部331に前記筒状の部材の中空部分を閉塞するフィルム332が設けられている。化合物保持部33は、本体部32に対して取り外し可能に接続されている。化合物保持部33は、フィルム332で仕切られた中空部分に、吸汁性の飛翔害虫7へ投与する化合物を含む薬液を保持する。フィルム332は、例えば、パラフィンフィルムである。これに限らず、フィルム332は、後述のように、飛翔害虫7が、口針を刺して薬液を吸汁可能なものであれば良く、例えば、ポリエチレンフィルム等、他の材料で形成されてもよい。
【0022】
本体部32と、化合物保持部33は、ほぼ同径であり、本実施形態では、これらの外径が12mmとなっている。また、本体部32の長さは50mm、化合物保持部33の長さ
は、10mmである。なお、これらのサイズは、特に限定されるものではなく、捕獲する飛翔害虫7の大きさや数、薬液の量などに応じて設定され得る。
【0023】
真空ポンプ(気流発生部)4は、チューブ41を介してノズル部31の接続部312と接続し、空気を吸引することで、吸引口311側から接続部312側へ向けて気流を発生させ、飛翔害虫7を吸引させる。なお、気流発生部は、真空ポンプ4に限らず、シリンジやピペッター等であってもよい。
【0024】
ラック5は、化合物投与装置3を立てた状態で保持する台であり、化合物投与装置3が挿入される縦穴51が列設されている。
【0025】
試験容器6は、化合物を投与した後の飛翔害虫7と、当該飛翔害虫7が吸汁するための植物8を収容し、化合物を投与した結果を確認するための容器である。本実施形態では、飼育容器2と同様に、プラスチック製の広口瓶を倒立させたものが、試験容器6として用いられている。即ち、試験容器6の瓶本体61が開口部61Aを下に向けて配置され、この開口部61Aを成すネジ口に対して螺合する蓋62が底部として用いられている。なお、試験容器6は、
図1の構成に限定されるものではなく、飛翔害虫7を収容し、飼育できるものであればよい。本実施形態の瓶本体61は、透明な材料で形成され、外側から飛翔害虫7の様子が観察でき、また、植物8に光を当てることができるようになっている。瓶本体61の側面には、飛翔害虫7を捕集する際に利用するため、容器の内外に貫通した穴61Bが形成され、開閉可能なカバー61Cが取り付けられている。加えて、通気のための空気穴61Dが形成され、こちらは飛翔害虫7の大きさよりも目開きが小さいメッシュ61Eにより覆われている。瓶本体61の上面には、化合物投与装置3を挿入するための穴61Fが形成され、開閉可能なカバー61Gが取り付けられている。
【0026】
〈化合物投与方法〉
図4は、化合物投与方法の手順を示す図である。
【0027】
工程S1では、飼育容器から所定数の飛翔害虫7を捕獲する。この場合、ノズル部31の接続部312に真空ポンプ4のチューブ41を接続し、ノズル部31を飼育容器2の側面の穴21Bから挿入し、吸引口311を飛翔害虫7に近づけて飛翔害虫7を吸引することで捕獲する。
【0028】
工程S2では、飛翔害虫7を捕獲したノズル部31を本体部32に接続し、接続部312からチューブ41を外す。このとき、吸引口311の先細り形状となっている先端部分を切断して開口部を広げてから本体部32に接続することで、飛翔害虫7がよりノズル部31から出やすくしてもよい。このように、ノズル部31を本体部32に接続したことで、飛翔害虫7が、ノズル部31と本体部32の中空部分内であって、ノズル部31のフィルタ317と化合物保持部33のフィルム332との間に留められる。
【0029】
工程S3では、化合物投与装置3の接続部312をラック5の縦穴51に挿入することで、化合物投与装置3を立てて並べ、化合物保持部33に化合物を含む薬液(例えばスクロースなどの糖溶液に例示される飛翔害虫を誘引できる物質の溶液)をいれ、上端をフィルム324又はキャップで封止する。なお、あらかじめ化合物を含む薬液が充填され、上端をフィルム324等で封止された化合物保持部33を本体部32に接続しておいてもよい。このように、化合物投与装置3を立てて静置し、しばらくすると、飛翔害虫7が自然に上部へ移動し、口針をフィルム332へ差して化合物を含むスクロース溶液を吸汁する。このとき、化合物保持部33の上部に飛翔害虫7が好む色(例えば黄色)のキャップや光源を配置することで、飛翔害虫7を上部に誘導してもよい。
【0030】
工程S4では、化合物保持部33からスクロース溶液を回収し、化合物保持部33を下にして化合物投与装置3を立て、静置する。しばらくすると、飛翔害虫7が上部へ移動する。このとき、本体部32の上部(接続部312側)に飛翔害虫7が好む色(例えば黄色)の紙や光源を配置することで、飛翔害虫7を本体部32上部に誘導してもよい。
【0031】
工程S5では、本体部32から化合物保持部33を取り外して、化合物投与装置3を試験容器6の上部の穴61Fに嵌入し、化合物投与装置3内の中空部と試験容器6の内部空間とを連通させた状態で化合物投与装置3と試験容器6とを接続する。しばらくすると、飛翔害虫7は、化合物投与装置3内から試験容器6内の植物8へ自然に移動する。なお、化合物投与装置3の本体部32を試験容器6に接続する際、本体部32の先端から所定距離後方に、Oリングなどを設けて拡径部323を形成することで、本体部32を瓶本体61の上面に所定距離挿入した位置で拡径部323が瓶本体61の上面に突き当たって化合物投与装置3が保持される構成としてもよい。
【0032】
〈実施形態の効果〉
上述のように、本実施形態によれば、飛翔害虫7を吸引したノズル部31を本体部32に接続し、化合物保持部33を上に向けて静置することで、飛翔害虫7が自然に化合物保持部33側へ移動する。従来は、回収した虫を一旦冷蔵庫で冷やしたり、CO2麻酔を行
ったりして逃げないように動きを抑えてから吸汁用容器へ移し変えていたが、本手法ではその工程を行う必要が無いので短時間かつ飛翔害虫7にダメージを与えずに移動させることが可能である。
【0033】
さらに、スクロース溶液が入れる化合物保持部33と飛翔害虫7が保持される本体部32とがフィルム332を介して隔てられているため、飛翔害虫7を逃すことなく溶液の交換や継ぎ足し、虫の吐き出し液の回収などが可能である。
【0034】
更に、本実施形態では、工程S4で、化合物保持部33からスクロース溶液を回収し、化合物保持部33を下にして静置すると、飛翔害虫7が上部へ移動し、化合物保持部33のフィルム332から離れたところで化合物保持部33を取り外し、化合物投与装置3を試験容器6に接続する。これにより、飛翔害虫7は、化合物投与装置3内から試験容器6内の植物8へ自然に移動する。従来は吸汁用容器から吸虫管で飛翔害虫7を吸い取って強制的に植物上へ移していたのに対して、本手法では飛翔害虫7を自然に移動させるため、移動による物理的ダメージを軽減させることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 化合物処理システム
2 飼育容器
3 化合物投与装置
4 真空ポンプ
5 ラック
6 試験容器
7 飛翔害虫
8 植物
21 瓶本体
21A 開口部
21B 穴
21C カバー
21D 空気穴
21E メッシュ
22 蓋
31 ノズル部
32 本体部
33 化合物保持部
311 吸引口
312 接続部
313 パーツ
314 端部
315 中空部
316 パーツ
317 フィルタ
321 端部
322 端部
331 端部
332 フィルム
41 チューブ
51 縦穴
61 瓶本体
61A 開口部
61B 穴
61C カバー
61D 空気穴
61E メッシュ
61F 穴
61G カバー
62 蓋
324 フィルム