(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】ネイルシール、ネイルシール用組成物、及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
A45D 29/00 20060101AFI20231222BHJP
A61Q 3/02 20060101ALI20231222BHJP
A61K 8/11 20060101ALI20231222BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20231222BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20231222BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20231222BHJP
A61K 8/89 20060101ALI20231222BHJP
A61K 8/85 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
A45D29/00
A61Q3/02
A61K8/11
A61K8/35
A61K8/41
A61K8/36
A61K8/89
A61K8/85
(21)【出願番号】P 2022517431
(86)(22)【出願日】2021-08-03
(86)【国際出願番号】 CN2021110180
(87)【国際公開番号】W WO2023010264
(87)【国際公開日】2023-02-09
【審査請求日】2023-03-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522106031
【氏名又は名称】上海慧姿化粧品有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HUIZI COSMETICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Area A,2nd Floor,Building 2 No.166-1 Fengjin Road,Fengxian District Shanghai 201401(CN)
(74)【代理人】
【識別番号】100149870
【氏名又は名称】芦北 智晴
(74)【代理人】
【識別番号】100207022
【氏名又は名称】小島 弘之
(72)【発明者】
【氏名】デン ジンビャオ
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-023468(JP,A)
【文献】特開2016-220733(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0022834(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0329041(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111035575(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 29/00
A61K 8/85
A61Q 3/02
A61K 8/11
A61K 8/35
A61K 8/41
A61K 8/36
A61K 8/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネイルシール用組成物において、その原料は糊剤を含み、
前記糊剤が、以下の重量部、即ち、
UV熱硬化性樹脂45~85部、
光開始剤2~9部、
硬化剤1.5~2部、
熱促進剤0.1~1部、
及び
レベリング剤0.1~1部、を含む原料により作製されて
おり、
前記UV熱硬化性樹脂が、以下の重量部、即ち、
メタクリル酸ヒドロキシエチル10~15部、
エポキシ樹脂15~35部、
イソシアネート8~12部、
ポリエステルポリオール10~15部、
重合禁止剤0.05~0.3部、
シランカップリング剤0.5~1部、及び
アクリル酸エステル系モノマー10~20部、を含む原料により作製されていることを特徴とする、
ネイルシール用組成物。
【請求項2】
前記UV熱硬化性樹
脂が、(1)メタクリル酸ヒドロキシエチル、エポキシ樹脂、イソシアネート、重合禁止剤及びシランカップリング剤を混合した後、均一に撹拌し、30~50℃の条件下で2~4時間反応させ、75~85℃に昇温して1~2時間反応させて、物質Aを得るステップと、(2)物質Aとポリエステルポリオールを混合し、60~65℃まで昇温し、1~1.5h反応させ、さらにアクリル酸エステル系モノマーを加え、70~80℃まで昇温し、1~2時間反応させて、UV熱硬化性樹脂を得るステップと、を含
む方法によって調製されることを特徴とする、
請求項
1に記載のネイルシール用組成物。
【請求項3】
ネイルシール用組成物において、その原料は糊剤を含み、
前記糊剤が、以下の重量部、即ち、
UV熱硬化性樹脂45~85部、
光開始剤2~9部、
硬化剤1.5~2部、
熱促進剤0.1~1部、及び
レベリング剤0.1~1部、を含む原料により作製されており、
その原料はさらに感温性徐放性精油マイクロカプセルを含み、前記糊剤と感温性徐放性精油マイクロカプセルの重量比は100
:1~
100:5
の範囲であり、前記感温性徐放性精油マイクロカプセルは、カプセルコアと、カプセルコアを包むカプセル壁とを含み、前記カプセルコアは植物精油を含み、前記カプセル壁が、以下の重量部、即ち、
N-イソプロピルアクリルアミド40~60部、
エポキシ樹脂10~20部、
過硫酸カリウム0.001~0.002部、
ドデシル硫酸ナトリウム2~4部、
及び
N-イソプロピルアクリルアミド、エポキシ樹脂、過硫酸カリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、及びポリウレタン樹脂の総量が100
重量部となる量のポリウレタン樹脂、を含む原料により作製されていることを特徴とする
、
ネイルシール用組成物。
【請求項4】
前記感温性徐放性精油マイクロカプセ
ルが、植物精油と
或る量のエチルアルコールを均一に混合し、均質化してカプセルコア液を取得し、N-イソプロピルアクリルアミド、エポキシ樹脂、過硫酸カリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、
及びポリウレタン樹脂を混合した後
、均一に撹拌してカプセル壁プレポリマーを取得し、カプセルコア液をカプセル壁プレポリマーの中に加え、均一に撹拌し、吸引濾過し、乾燥させて、感温性徐放性精油マイクロカプセルを得るという
方法によって調製されることを特徴とする、
請求項
3に記載のネイルシール用組成物。
【請求項5】
UV熱硬化性樹脂、光開始剤、硬化剤、熱促進剤、及びレベリング剤を均一に混合して、ネイルシール用組成物を得るというステップを含むことを特徴とする、
請求項1~
4のいずれかに記載のネイルシール用組成物の調製方法。
【請求項6】
担体と
、粘着層とを含み、前記担体が多層で構成されて
多層構造を成し、前記粘着層が前記多層構造の1つの表面上にあるネイルシールにおいて、前記担体の少なくとも1層が請求項1~4のいずれかに記載のネイルシール用組成物を有することを特徴とする、ネイルシール。
【請求項7】
前記粘着層内には微孔性粒子があり、前記粘着層は微孔性構造を有しており、前記微孔性粒子が前記粘着層の微孔性構造を通して外部環境と連通することを特徴とする、請求項
6に記載のネイルシール。
【請求項8】
前記担体と前記粘着層との間に隔離層が設けられていることを特徴とする、請求項
7に記載のネイルシール。
【請求項9】
前記微孔性粒子は、活性炭顆粒、二酸化ケイ素顆粒、サンゴ砂顆粒、またはゼオライト顆粒中の1種または数種であることを特徴とする、請求項
7または
8に記載のネイルシール。
【請求項10】
前記微孔性粒子は前記粘着層内に均等に分散しており、または、
前記微孔性粒子が層を形成して前記粘着層内に位置していることを特徴とする、
請求項
7に記載のネイルシール。
【請求項11】
前記粘着層の前記担体から遠い方の面に通気性基材が設置されていることを特徴とする、請求項
7に記載のネイルシール。
【請求項12】
前記担
体は、パターン層、色層、フォイル層、メッキ層、ワニス層、
及び装飾層のうちの1種または数種を含み、前記担体の最表面層がさらにトップコート層を有することを特徴とする、請求項
7~
8、
10~
11のいずれかに記載のネイルシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネイルアート材料の技術分野に関し、特に、ネイルシール、ネイルシール用組成物、及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
社会の発展、科学技術の進歩、人々の生活水準の絶え間ない向上に伴い、精神的な追求もより多くなり、美容業界も人々の生活水準の向上に伴って大きく発展してきた。ネイルアートは、年齢や性別に関係のない美容方法として、近年かなり注目を集めている。従来のネイルアートは、主に様々な色のマニキュアの顔料などを使用して手の爪や足の爪をコーティングするというものであるが、長時間乾燥させなければならないため、体験性が悪かった。しかし、ネイルシールはマニキュアより使いやすいので、近年、流行のネイルアクセサリーとなっている。
【0003】
特許文献1の韓国発明特許では、UV硬化ジェルネイルパッチ及び紫外線硬化ジェルの製造方法並びにその使用が開示されており、該UV硬化ジェルネイルパッチは、UV硬化後の紫外線硬化パッチ及びベースの粘着層を含み、紫外線硬化パッチはユーザの爪の曲面に貼り付ける弧度を有している。使用時には、紫外線硬化パッチはベースの粘着層を介して直接ユーザの爪に貼り付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0111293号公報
【0005】
上記の特許に対して、発明者は、上記の特許における紫外硬化パッチの弧度ではすべてのユーザの爪の曲面に合致させることができず、ユーザの爪表面に完璧に貼り付けることができないので、見た目に影響すると同時に、隙間が生じて貼合度に影響しやすいと考えた。
【発明の概要】
【0006】
ネイルシールと爪表面の合致性を向上させ、ネイルシールと爪の粘着性を強化するために、本願は、ネイルシール用組成物及びその調製方法を提供している。
【0007】
第一の態様によれば、本願は、ネイルシール用組成物を提供し、以下の技術的解決手段を採用している。
ネイルシール用組成物であって、その原料は糊剤を含み、前記糊剤は、以下の重量部、即ち、
UV熱硬化性樹脂45~85部、
光開始剤2~9部、
硬化剤1.5~2部、
熱促進剤0.1~1部、
レベリング剤0.1~1部を含む原料により作製されている。
【0008】
上記の技術的解決手段を採用することにより、粘着式のネイルシールを作製することができ、ネイルシールは硬化前に柔らかい状態でユーザの爪に貼り付けられるので、爪表面の曲面弧度と完璧に合致させることができ、爪表面との間に発生する可能性のある隙間や気泡などを低減させ、ネイルシールと爪の粘着性を強化することができる。ネイルシールは、爪に貼り付けてからUV熱硬化を行うので、硬化後は、光沢のある硬い状態で爪にしっかりと貼り付く。
【0009】
また、組成物の中にUV熱硬化性樹脂が含まれているので、UV硬化、熱硬化を行うことができ、さらにUV硬化と熱硬化を同時に行い、ネイルシール用組成物の硬化を加速させて、硬化効率を高めることもできる。上記の技術的解決手段の中の独自性を有する糊類原料及びその配合比によって、組成物中に体現される粘度を改善して、硬化後のネイルシールの靭性、硬度、及び耐候性を向上させることで、硬化後の被膜は、硬度及び光沢度が高く、耐熱性がよく、辺縁が皺になりにくく、粘着力が高くなる。
【0010】
前記UV熱硬化性樹脂は、以下の重量部を含む原料により作製することが選択可能である。
メタクリル酸ヒドロキシエチル10~15部、
エポキシ樹脂15~35部、
イソシアネート8~12部、
ポリエステルポリオール10~15部、
重合禁止剤0.05~0.3部、
シランカップリング剤0.5~1部、
アクリル酸エステル系モノマー10~20部。
【0011】
上記の技術的解決手段を採用すると、メタクリル酸ヒドロキシエチル、エポキシ樹脂、ポリエステルポリオール、及びアクリル酸エステル系モノマーが樹脂バインダーとして用いられ、イソシアネートの構造内には不飽和結合が含まれているので、その活性の高さを利用して、上記原料中の活性基と反応させる。重合禁止剤は重合作用の進行を防止することができ、重合過程で誘導期が生じ、シランカップリング剤がUV熱硬化性樹脂の粘着性能を向上させることができる。
【0012】
前記UV熱硬化性樹脂の調製方法は、以下のステップを含むことが選択可能である。(1)メタクリル酸ヒドロキシエチル、エポキシ樹脂、イソシアネート、重合禁止剤及びシランカップリング剤を混合した後、均一に撹拌し、30~50℃の条件下で2~4時間反応させ、75~85℃に昇温して1~2時間反応させて、物質Aを得るステップ。(2)物質Aとポリエステルポリオールを混合し、60~65℃まで昇温し、1~1.5h反応させ、さらにアクリル酸エステル系モノマーを加え、70~80℃まで昇温し、1~2時間反応させて、UV熱硬化性樹脂を得るステップ。
【0013】
上記の技術的解決手段を採用すると、得られたUV熱硬化性樹脂は、UV硬化を行うことができるだけでなく、熱硬化も行うことができるので、使いやすく、しかも硬化後の力学的性能がかなり良い。
【0014】
その原料は感温性徐放性精油マイクロカプセルをさらに含み、前記糊剤と感温性徐放性精油マイクロカプセルの重量比は100:(1~5)であり、前記感温性徐放性精油マイクロカプセルは、カプセルコアと、カプセルコアを包むカプセル壁とを含み、前記カプセルコアは植物精油を含み、前記カプセル壁が、以下の重量部、即ち、
N-イソプロピルアクリルアミド40~60部、
エポキシ樹脂10~20部、
過硫酸カリウム0.001~0.002部、
ドデシル硫酸ナトリウム2~4部、
全体が100部となる量のポリウレタン樹脂、を含む原料により作製されることが選択可能である。
【0015】
糊剤には樹脂の臭いが存在し、ユーザの使用体験に影響するおそれがあるので、この問題を解決するために、本願では、組成物中に感温性徐放性精油マイクロカプセルを添加している。上記の技術的解決手段を採用すると、N-イソプロピルアクリルアミドは感温型の重合体であり、それをエポキシ樹脂及びポリウレタン樹脂と組み合わせ、過硫酸カリウムを開始剤とし、ドデシル硫酸ナトリウムを乳化剤として、感温性徐放性カプセル壁を調製し、カプセルコアとしての植物精油をその中に包み込む。常温下では、カプセル壁上の微孔が比較的小さく、または閉鎖状態にあり、温度が上昇すると、カプセル壁上の微孔が大きくなり、または開放状態になって、カプセル壁内部の植物精油がカプセル壁上の微孔を通ってゆっくりと放出される。本願では、感温性の材料を採用して徐放効果を有するカプセル壁を作製しており、生産時に、植物精油をカプセル壁内部に包み込み、さらにネイルシールの組成物中に投入すると、組成物がステンレス鋼平板上に塗布されて温度が徐々に上がり、香りをゆっくりと放出することができる。組成物の中にUV熱硬化性樹脂が含まれているので、UV硬化を行うことができる上に、熱硬化も行うことができ、使いやすい。
【0016】
ここでの感温性徐放性精油マイクロカプセルは、ナノレベルのマイクロカプセルであり、その粒径は1~100nmの間であり、さらには、10~50nmの間である。本発明の感温性徐放性精油マイクロカプセルは、樹脂適応性材料を利用して作製されており、樹脂類材料の中に安定的に混在することができ、それ自身の作用を発揮するだけでなく、樹脂類材料の性能の低下を引き起こさない。
【0017】
また、感温性徐放性精油マイクロカプセルと糊剤の中に、特にUV熱硬化性樹脂を配合することで、UV熱硬化性樹脂の光硬化及び/または熱硬化に影響しないだけでなく、マイクロカプセル中のカプセルコア内の精油放出とUV熱硬化性樹脂の光硬化及び/または熱硬化が同時に行われるので、精油分子を糊剤内部に放出することを助け、精油をより大きな範囲に、より均等に拡散させて、香りを長持ちさせ、人々の快適さを向上させる。
【0018】
前記感温性徐放性精油マイクロカプセルの調製方法は、以下のような選択が可能である。植物精油と適量のエチルアルコールを均一に混合し、均質化してカプセルコア液を取得し、N-イソプロピルアクリルアミド、エポキシ樹脂、過硫酸カリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリウレタン樹脂を混合した後、加熱条件下で均一に撹拌し、カプセル壁プレポリマーを取得し、カプセルコア液をカプセル壁プレポリマーの中に加え、均一に撹拌し、吸引濾過し、乾燥させて、感温性徐放性精油マイクロカプセルを得る。
【0019】
上記の技術的解決手段を採用すると、植物精油はエチルアルコールに溶解し、均質化されると微小な液滴を形成し、N-イソプロピルアクリルアミド、エポキシ樹脂、過硫酸カリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリウレタン樹脂が加熱条件で反応してカプセル壁プレポリマーを形成し、その後、植物精油の液滴がカプセル壁プレポリマーに被包され、乾燥、硬化を経て感温性徐放性精油マイクロカプセルが得られる。
【0020】
前記植物精油は、カモミール精油、モクセイ精油、クローブ精油、ティーツリー精油、ジャスミン精油、レモン精油、バラ精油、ラベンダー精油、ユリ精油、緑茶精油の中の少なくとも1種を選択可能である。
【0021】
上記の技術的解決手段を採用することにより、上記の植物精油を本願のカプセル壁材料と組み合わせて感温性徐放性精油マイクロカプセルを作製することができ、人々の好みに基づいて様々な香りの植物精油を選択することができ、異なる香りを有する組成物を得て、組成物の適用性を向上させることができる。
前記カプセルコアとカプセル壁の原料重量比を(100~150):100とすることが選択可能である。
【0022】
上記の技術的解決手段を採用すると、上記の原料配合比において、香りの評価点と香りの総放出時間のバランスがかなり良くなるので、カプセルコアとカプセル壁の原料重量比は、(100~150):100が好ましい。
【0023】
前記カプセルコア液内に、さらにホワイトカーボンを加えることも選択可能であり、ホワイトカーボンと植物精油の重量比は(12~24):120である。
【0024】
上記の技術的解決手段を採用すると、ホワイトカーボン内部には多くの微孔があり、吸油性を有しているので、植物精油の一部を吸着することができ、カプセル壁と組み合わせると、さらに植物精油の緩やかな放出も制御することができ、また、ホワイトカーボンは組成物の色に対する影響が比較的小さい。ホワイトカーボンの投入量が多すぎると、植物精油の放出速度が遅くなりすぎるし、ホワイトカーボンの投入量が少なすぎると、香りの評価点と香りの総放出時間の向上値が小さすぎて、所期の効果を達成することが難しい。よって、ホワイトカーボンと植物精油の重量比は、(12~24):120が好ましい。
【0025】
前記均質化ステップでは、均質時の回転速度を10000~12000r/min、均質化時間を2~5min、圧力を600~800barとすることが選択可能である。
【0026】
上記の技術的解決手段を採用すると、均質化圧力が低すぎると植物精油分子の粒径が大きくなりすぎて、カプセル壁上の微孔を通過しにくくなり、香りの放出速度が非常に遅くなる。均質化圧力が高すぎると、植物精油分子の粒径が小さくなりすぎて、香りの放出速度が非常に速くなる。均質化時間が短すぎると、植物精油の均質化が不完全になり、均質化時間が長すぎると、組成物に対する香りの評価点と香りの総放出時間の向上値が非常に小さくなり、しかもコストが増加する。そのため、均質化ステップにおける均質化時間は2~5min、圧力は600~800barが好ましい。
【0027】
第二の態様によれば、本願はネイルシール用組成物の調製方法を提供しており、以下の技術的解決手段を採用している。
ネイルシール用組成物の調製方法であって、UV熱硬化性樹脂、光開始剤、硬化剤、熱促進剤、及びレベリング剤を均一に混合した後、ネイルシール用組成物を得るというステップを含む。
【0028】
上記の技術的解決手段を採用すると、組成物の中にUV熱硬化性樹脂が含まれているので、UV硬化、熱硬化を行うことができ、さらにUV硬化と熱硬化を同時に行い、ネイルシールの組成物の硬化を加速して、硬化効率を高めることもできる。上記の技術的解決手段の中の独自性を有する糊類原料及びその配合比によって、組成物中に体現される粘度を改善して、硬化後のネイルシールの靭性、硬度及び耐候性を向上させることで、硬化後の被膜は、硬度及び光沢度が高く、耐熱性がよく、辺縁が皺になりにくく、粘着力が高くなる。本願中の組成物は、ネイルシールの保護膜層、光沢層、コロイド層、または粘着層などとすることができる。
【0029】
第三の態様によれば、本願は、以下の技術的解決手段を用いるネイルシールを提供している。
担体と、担体の1つの表面上にある粘着層とを含み、前記担体が層構造であるネイルシールであって、前記担体の少なくとも1層が、前述のいずれかの技術的解決手段に記載のネイルシール用組成物を有する。
【0030】
上記の技術的解決手段を採用すると、担体の少なくとも1層は前記ネイルシール用組成物を含み、ネイルシールはUV熱硬化前に柔らかい状態でユーザの爪に貼り付けられるので、爪表面の曲面弧度と完璧に合致させることができ、爪表面との間に発生する可能性のある隙間や気泡などを低減させ、ネイルシールと爪の粘着性を強化することができる。ネイルシールは爪に貼り付けてからUV熱硬化を行うので、硬化後は、光沢のある硬い状態で爪にしっかりと貼り付く。
【0031】
前記粘着層内には微孔性粒子があり、前記粘着層は微孔性構造を有しており、前記微孔性粒子が前記粘着層の微孔性構造を通して外部環境と連通することが選択可能である。
【0032】
上記の技術的解決手段を採用すると、人体組織表面と外部の空気が粘着層上の微孔性構造及び微孔性粒子上の微孔を介して流通することができるので、粘着層の通気性が良い。粘着層の通気性が良いと、人体組織表面の分泌物の蒸発や揮発後の排出に役立ち、人体組織表面及び粘着層表面の清潔さと乾燥、及び粘着層の粘性の強さを保つので、担体を人体組織表面に長く有効に付着させることができる。
【0033】
特に、UV熱硬化を行う過程で、人体組織表面では、熱などの作用により油脂、脂質、汗、剥離した角質細胞などの分泌が加速され、これらの分泌物が粘着層と人体組織表面の粘着性に影響を及ぼすことがある。通気性のある粘着層は分泌物の蒸発や揮発を助け、さらに分泌物を排出する通路も提供して、人体組織表面の清潔さと乾燥を保持し、ネイルシールの耐久性を強化する。
【0034】
前記担体と前記粘着層との間に隔離層を設置することが選択可能である。
【0035】
上記の技術的解決手段を採用すると、隔離層は担体の支持作用を果たし、担体と粘着層の間の連結力を向上させ、さらに担体層中の材料や色の滲出を防止し、担体内の形状、パターン、及び色の安定を保つ。
【0036】
前記微孔性粒子は、活性炭顆粒、二酸化ケイ素顆粒、サンゴ砂顆粒、またはゼオライト顆粒の中の1種または数種を選択可能である。
【0037】
前記微孔性粒子が均等に前記粘着層内に分散し、または、
前記微孔性粒子が層を形成して前記粘着層内に位置することが選択可能である。
【0038】
上記の技術的解決手段を採用すると、微孔性粒子が粘着層内に均等に分散し、粘着層全体の構造が均等であることを確保し、その微孔性構造の分布が均等で、通気性が均等であることにより、優れた通気性を発揮し、分泌物の蒸発や揮発などに役立つ。
【0039】
前記粘着層の前記担体から遠い方の面に、通気性基材を設置することが選択可能である。
【0040】
上記の技術的解決手段を採用すると、粘着層を通気性基材に塗布した後、空気は通気性基材自体が有する微孔及び塗布の過程で粘着層上に形成される通気微孔を直接通過して通気性基材の裏面に達し、通気の目的を実現する。
【0041】
前記担体の層構造は、パターン層、色層、フォイル層、メッキ層、ワニス層、装飾層のうちの1種または数種を含み、前記担体の最表面層はさらにトップコート層を有することが選択可能である。
【0042】
上記の技術的解決手段を採用すると、パターン層、色層、フォイル層、メッキ層、ワニス層、装飾層を任意に組み合わせて担体を形成し、様々な機能を実現することができる。
【0043】
以上をまとめると、本願には以下のような有益な効果がある。
【0044】
1、本願の組成物により作製されるネイルシールは、硬化前に柔らかい状態でユーザの爪に貼り付けられるので、爪表面の曲面弧度と完璧に合致させることができ、爪表面との間に生じる可能性のある隙間や気泡などを低減させ、ネイルシールと爪の粘着性を強化することができる。ネイルシールは爪に貼り付けてからUV熱硬化を行うので、硬化後は、光沢のある硬い状態で爪にしっかりと貼り付く。
【0045】
2、本願の組成物の中にはUV熱硬化性樹脂が含まれているので、UV硬化、熱硬化を行うことができ、さらにUV硬化と熱硬化を同時に行い、ネイルシールの組成物の硬化を加速して、硬化効率を高めることもできる。上記の技術的解決手段の中の独自性を有する糊類原料及びその配合比によって、組成物中に体現される粘度を改善して、硬化後のネイルシールの靭性、硬度、及び耐候性を向上させることで、硬化後の被膜は、硬度及び光沢度が高く、耐熱性がよく、辺縁が皺になりにくく、粘着力が高くなる。
【0046】
3、本願の組成物中のN-イソプロピルアクリルアミドは、エポキシ樹脂及びポリウレタン樹脂と組み合わせて使用され、過硫酸カリウムを開始剤とし、ドデシル硫酸ナトリウムを乳化剤として、感温性徐放性カプセル壁を調製し、カプセルコアとしての植物精油をその中に包み込む。常温下では、カプセル壁上の微孔が比較的小さく、または閉鎖状態にあり、温度が上昇すると、カプセル壁上の微孔が大きくなり、または開放状態になって、カプセル壁内部の植物精油がカプセル壁上の微孔を通ってゆっくりと放出される。本願では、感温性の材料を採用して徐放効果を有するカプセル壁を作製しており、生産時に、植物精油をカプセル壁内部に包み込み、さらにネイルシールの組成物中に投入すると、組成物がステンレス鋼平板上に塗布されて温度が徐々に上がる際に、香りをゆっくりと放出することができる。
【0047】
4、本願のネイルシール中の粘着層は微孔性構造であり、さらに微孔のある微孔性粒子を有しており、人体組織表面と外部の空気が該微孔性構造及び微孔性粒子中の微孔を通って流通できるので、通気性が良い。人体組織表面から外部に分泌される物質が、蒸発または揮発後、微孔性構造を通って排出されることで、人体組織表面及び粘着層表面の清潔さと乾燥、及び粘着層の粘性の強さを保つことができるので、担体を人体組織表面に長く有効に付着させることができる。
【0048】
5、本願ではネイルシール内に隔離層を設置して担体を支える支持作用を果たさせることで、担体と粘着層の間の連結力を向上させ、さらに担体層中の材料や色の滲出を防止し、担体の形状、パターン及び色の安定を保っている。
【図面の簡単な説明】
【0049】
本発明の実施例における技術的解決手段をより明確に説明するために、以下では、実施例の記述において使用する必要がある添付の図面について簡単に紹介するが、以下の記述における図面は本発明のいくつかの実施例にすぎず、当業者であれば、創造的な労働を行わないことを前提に、これらの図面に基づいてその他の図面を得ることができることは自明である。
【0050】
【
図1】
図1は、本願の実施例23におけるネイルシールの構造概略図である。
【
図2】
図2は、本願の実施例23におけるネイルシールの断面図である。
【
図3】
図3は、本願の実施例24におけるネイルシールの断面図である。
【
図4】
図4は、本願の実施例25におけるネイルシールの断面図である
【
図5】
図5は、本願の実施例26におけるネイルシールの断面図(一)である。
【
図6】
図6は、本願の実施例26におけるネイルシールの断面図(二)である。
【符号の説明】
【0051】
1 担体
2 粘着層
3 微孔性粒子
4 通気性基材
5 隔離層
6 離型保護膜
7 離型膜
1a ワニス層
1b 色層
1c フォイル層
1d 装飾層
1e ラッカー層
10 離型膜。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下では、実施例と結び付けて、本願に対するさらに詳しい説明を行う。
【0053】
原料の調製例
調製例1
カプセルコアと、カプセルコアを包むカプセル壁とを含む感温性徐放性精油マイクロカプセルであって、カプセルコアは80部の植物精油を含み、植物精油はカモミール精油である。カプセル壁は以下の重量部を含む原料により作製される。
N-イソプロピルアクリルアミド40部、
ビスフェノールA型エポキシ樹脂E-44 20部、
過硫酸カリウム0.001部、
ドデシル硫酸ナトリウム2部、
ポリウレタン樹脂37.999部。上記各部の重量は1gであり、ポリウレタン樹脂はダウ社から購入したポリウレタン樹脂エマルジョンSYNTEGRA YB-2000である。
【0054】
感温性徐放性精油マイクロカプセルの調製方法:植物精油を適量のエチルアルコールと均一に混合し、高圧ホモジナイザで均質化し、カプセルコア液を得る。均質化の回転速度は9000r/min、時間は6min、圧力は600barである。N-イソプロピルアクリルアミド、エポキシ樹脂、過硫酸カリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリウレタン樹脂を混合した後、50℃まで加熱して2h撹拌し、カプセル壁プレポリマーを得る。カプセルコア液をカプセル壁プレポリマーの中に加え、均一に撹拌し、吸引濾過し、乾燥させ、感温性徐放性精油マイクロカプセルを得る。
【0055】
調製例2
カプセルコアと、カプセルコアを包むカプセル壁とを含む感温性徐放性精油マイクロカプセルであって、カプセルコアは80部の植物精油を含み、植物精油はカモミール精油である。カプセル壁は以下の重量部を含む原料により作製される。
N-イソプロピルアクリルアミド50部、
ビスフェノールA型エポキシ樹脂E-44 15部、
過硫酸カリウム0.0015部、
ドデシル硫酸ナトリウム3部、
ポリウレタン樹脂31.985部。上記各部の重量は1gであり、ポリウレタン樹脂はダウ社から購入したポリウレタン樹脂エマルジョンSYNTEGRA YB-2000である。
【0056】
感温性徐放性精油マイクロカプセルの調製方法:植物精油を適量のエチルアルコールと均一に混合し、高圧ホモジナイザで均質化し、カプセルコア液を得る。均質化の回転速度は9000r/min、時間は6min、圧力は600barである。N-イソプロピルアクリルアミド、エポキシ樹脂、過硫酸カリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリウレタン樹脂を混合した後、55℃まで加熱して1.5h撹拌し、カプセル壁プレポリマーを得る。カプセルコア液をカプセル壁プレポリマーの中に加え、均一に撹拌し、吸引濾過し、乾燥させ、感温性徐放性精油マイクロカプセルを得る。
【0057】
調製例3
カプセルコアと、カプセルコアを包むカプセル壁とを含む感温性徐放性精油マイクロカプセルであって、カプセルコアは80部の植物精油を含み、植物精油はカモミール精油である。カプセル壁は以下の重量部を含む原料により作製される。
N-イソプロピルアクリルアミド60部、
ビスフェノールA型エポキシ樹脂E-44 10部、
過硫酸カリウム0.002部、
ドデシル硫酸ナトリウム4部、
ポリウレタン樹脂25.998部。上記各部の重量は1gであり、ポリウレタン樹脂はダウ社から購入したポリウレタン樹脂エマルジョンSYNTEGRA YB-2000である。
【0058】
感温性徐放性精油マイクロカプセルの調製方法:植物精油を適量のエチルアルコールと均一に混合し、高圧ホモジナイザで均質化し、カプセルコア液を得る。均質化の回転速度は9000r/min、時間は6min、圧力は600barである。N-イソプロピルアクリルアミド、エポキシ樹脂、過硫酸カリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリウレタン樹脂を混合した後、60℃まで加熱して1h撹拌し、カプセル壁プレポリマーを得る。カプセルコア液をカプセル壁プレポリマーの中に加え、均一に撹拌し、吸引濾過し、乾燥させ、感温性徐放性精油マイクロカプセルを得る。
【0059】
調製例4
感温性徐放性精油マイクロカプセルの調製例2との違いは、カプセルコアが100部の植物精油を含むことにある。
【0060】
調製例5
感温性徐放性精油マイクロカプセルの調製例2との違いは、カプセルコアが120部の植物精油を含むことにある。
【0061】
調製例6
感温性徐放性精油マイクロカプセルの調製例2との違いは、カプセルコアが150部の植物精油を含むことにある。
【0062】
調製例7
感温性徐放性精油のマイクロカプセルの調製例2との違いは、カプセルコアが170部の植物精油を含むことである。
【0063】
調製例8
感温性徐放性精油マイクロカプセルであって、カプセルコアと、カプセルコアを包むカプセル壁とを含み、カプセルコアは120部の植物精油を含み、植物精油はカモミール精油である。カプセル壁は以下の重量部を含む原料により作製される。
N-イソプロピルアクリルアミド50部、
ビスフェノールA型エポキシ樹脂E-44 15部、
過硫酸カリウム0.0015部、
ドデシル硫酸ナトリウム3部、
ポリウレタン樹脂31.985部。各部の重量は1gであり、ポリウレタン樹脂はダウ社から購入したポリウレタン樹脂エマルジョンSYNTEGRA YB-2000である。
【0064】
感温性徐放性精油マイクロカプセルの調製方法:植物精油を適量のエチルアルコールと均一に混合し、高圧ホモジナイザで均質化した後、12部のホワイトカーボンを加え、均一に撹拌してカプセルコア液を得る。均質化の回転速度は9000r/min、均質化時間は6min、圧力は600barである。N-イソプロピルアクリルアミド、エポキシ樹脂、過硫酸カリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリウレタン樹脂を混合した後、55℃まで加熱して1.5h撹拌し、カプセル壁プレポリマーを得る。カプセルコア液をカプセル壁プレポリマーの中に加え、均一に撹拌し、吸引濾過し、乾燥させ、感温性徐放性精油マイクロカプセルを得る。
【0065】
調製例9
感温性徐放性精油マイクロカプセルの調製例8との違いは、植物精油を適量のエチルアルコールと均一に混合し、高圧ホモジナイザで均質化した後、18部のホワイトカーボンを加え、均一に撹拌してカプセルコア液を得ることにある。
【0066】
調製例10
感温性徐放性精油マイクロカプセルの調製例8との違いは、植物精油を適量のエチルアルコールと均一に混合し、高圧ホモジナイザで均質化した後、24部のホワイトカーボンを加え、均一に撹拌してカプセルコア液を得ることにある。
【0067】
調製例11
感温性徐放性精油マイクロカプセルの調製例8との違いは、植物精油を適量のエチルアルコールと均一に混合し、高圧ホモジナイザで均質化した後、6部のホワイトカーボンを加え、均一に撹拌し、カプセルコア液を得ることにある。
【0068】
調製例12
感温性徐放性精油マイクロカプセルの調製例8との違いは、植物精油を適量のエチルアルコールと均一に混合し、高圧ホモジナイザで均質化した後、36部のホワイトカーボンを加え、均一に撹拌し、カプセルコア液を得ることにある。
【0069】
調製例13
感温性徐放性精油マイクロカプセルの調製例9との違いは、均質化時間が6min、圧力が600barであることにある。
【0070】
調製例14
感温性徐放性精油マイクロカプセルの調製例9との違いは、均質化時間が6min、圧力が800barであることにある。
【0071】
調製例15
感温性徐放性精油マイクロカプセルの調製例9との違いは、均質化時間が6min、圧力が1000barであることにある。
【0072】
調製例16
感温性徐放性精油マイクロカプセルの調製例9との違いは、均質化時間が5min、圧力が600barであることにある。
【0073】
調製例17
感温性徐放性精油マイクロカプセルの調製例9との違いは、均質化時間が2minであり、圧力が800barであることにある。
【0074】
比較調製例1
感温性徐放性精油マイクロカプセルの調製例2との違いは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂E-44を等重量のポリウレタン樹脂に置き換えていることにある。
【0075】
比較調製例2
感温性徐放性精油マイクロカプセルの調製例2との違いは、N-イソプロピルアクリルアミドの使用量が30部、ポリウレタン樹脂の使用量が51.985部であることにある。
実施例
【0076】
実施例1
ネイルシール用組成物であって、その原料は、糊剤と、感温性徐放性精油マイクロカプセルとを含み、糊剤と感温性徐放性精油マイクロカプセルの重量比は100:1であり、
糊剤は以下の重量部を含む原料により作製される。
UV熱硬化性樹脂45部、
光開始剤2部、
硬化剤1.5部、
熱促進剤0.1部、
レベリング剤0.1部。前記の各部の重量は1gである。
【0077】
粘着式のネイルシールを作製することができ、ネイルシールは硬化前に柔らかい状態でユーザの爪に貼り付けられるので、爪表面の曲面弧度と完璧に合致させることができ、爪表面との間に発生する可能性のある隙間や気泡などを低減させ、ネイルシールと爪の粘着性を強化することができる。ネイルシールは爪に貼り付けてからUV熱硬化を行うので、硬化後は、光沢のある硬い状態で爪にしっかりと貼り付く。
【0078】
具体的には、光開始剤は、UV開始剤または可視光開始剤であってよく、具体的には、ベンゾイン及びその誘導体、ベンゾフェノン及びその誘導体などの中の1種または数種であってよく、需要の違いに基づいてしかるべき光開始剤の添加を行う。具体的には、光開始剤は、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクミル、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソヘプトニトリル、N,N-ジメチルアニリン、過硫酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウムの中の1種または数種から選択される。本発明ではその供給源を限定しておらず、当業者がよく知っている市販品でよい。本発明の上記の光開始剤は、糊剤に光を照射して硬化させる際に、光硬化の反応を促進させ、硬化の度合いを向上させることができる。
【0079】
硬化剤は、アミン系硬化剤、エポキシ系硬化剤などの中の1種または数種であってよく、具体的には、硬化剤は、トリエチレンジアミン、ビス(2-エチルヘキサン酸)亜鉛、アセチルアセトン酸アルミニウムの中の1種または数種から選択され、需要の違いに基づいて、しかるべき硬化剤の添加を行う。本発明ではその供給源を限定しておらず、当業者がよく知っている市販品でよい。本発明の上記硬化剤は、糊剤硬化反応に不可欠な添加物として硬化反応に関与し、かつ硬化後のネイルシールの力学性能、耐熱性、耐水性、耐腐食性などを変化させる。
【0080】
熱促進剤は、脂肪族アミン類、芳香族アミン類、またはカルボン酸金属塩などの1種または数種であり、需要の違いに基づいて、しかるべき熱促進剤の添加を行う。本発明ではその供給源を限定しておらず、当業者がよく知っている市販品でよい。本発明の上記熱促進剤は、加熱硬化時に、糊剤に熱硬化の反応を促進させ、硬化温度を下げて、硬化の度合いを向上させることができる。
【0081】
レベリング剤は、BYK333型レベリング剤、ドイツMOK8217、テゴ(迪高)432、Glide450、Lencolo3109、ECO-3750の中から選択される1種または数種である。本発明ではその供給源を限定しておらず、当業者がよく知っている市販品でよい。本発明の上記レベリング剤は、糊剤の流れを均一に、滑らかにすることができる。
【0082】
前記糊剤には、需要に基づいて、例えば、熱重合抑制剤、酸化防止剤、紫外線増感剤、防腐剤、リン酸エステル系及びその他の難燃剤、界面活性剤、帯電防止剤、顔料、染料などの着色剤、香料、消泡剤、充填剤、シランカップリング剤、表面張力調整剤、可塑剤、表面潤滑剤、軟化剤、有機充填物、無機充填物などの各種の添加剤を加えることができる、これらのその他の成分の添加量は、本発明のネイルシール用組成物が体現する特性に不利な影響を引き起こさない程度であればよく、特に限定されない。
【0083】
具体的には、本実施例1では、光開始剤は1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、硬化剤はトリエチレンジアミン、熱促進剤はビスオクタン酸亜鉛、レベリング剤はBYK333型レベリング剤である。
【0084】
UV熱硬化性樹脂は以下の重量部を含む原料により作製される。
メタクリル酸ヒドロキシエチル12部、
エポキシ樹脂25部、
イソシアネート10部、
ポリエステルポリオール12部、
重合禁止剤0.2部、
シランカップリング剤0.8部、
アクリル酸エステル系モノマー15部。
【0085】
メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA、2-Hydroxyethyl methacrylate)は有機物で、分子式はC6H10O3、分子量は130.1418で、無色透明で流動しやすい液体であり、医療用高分子材料、熱硬化性塗料、粘着剤などの合成によく用いられる。
【0086】
エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びその同族体、フェノールエポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などの中の1種または数種である。
イソシアネートは、モノイソシアネートR-N=C=O、ジイソシアネートO=C=N-R-N=C=O及びポリイソシアネートであってよく、よく見られるジイソシアネートには、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、p-フェニレンジイソシアネート(PPDI)などがある。
ポリエステルポリオールは、一般的なポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートジオールの中の1種または数種であり、より具体的には、ポリエステルポリオールの分子量は1500~2400で、側基はブチル基である。
【0087】
重合禁止剤は、p-ヒドロキシアニソール、ヒドロキノン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2-tert-ブチルヒドロキノン、p-ベンゾキノン、メチルヒドロキノンなどの中の1種または数種である。
【0088】
シランカップリング剤は、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシランなどの中の1種または数種である。
【0089】
アクリル酸エステル系モノマーは、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸2-エトキシエチル、アクリル酸2-シアノエチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ボルニルなどの中の1種または数種である。
【0090】
具体的には、本実施例1では、エポキシ樹脂はビスフェノールA型エポキシ樹脂E-44であり、
イソシアネートはイソホロンジイソシアネートであり、
ポリエステルポリオールは分子量2000のポリカプロラクトンポリオールであり、
重合禁止剤は2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールであり、
シランカップリング剤はメチルトリス(トリフルオロアセトキシ)シランであり、
アクリル酸エステル系モノマーはアクリル酸n-ブチルである。
【0091】
UV熱硬化性樹脂の調製方法は、以下のステップを含む。(1)メタクリル酸ヒドロキシエチル、エポキシ樹脂、イソシアネート、重合禁止剤、及びシランカップリング剤を混合した後、均一に撹拌し、40℃の条件下で3時間反応させ、80℃まで昇温して1.5時間反応させて、物質Aを得るステップ。(2)物質Aとポリエステルポリオールを混合し、60℃まで昇温し、1.5h反応させ、さらにアクリル酸エステル系モノマーを加え、75℃まで昇温し、1.5時間反応させて、UV熱硬化性樹脂を得るステップ。
【0092】
ネイルシール用組成物の調製方法であって、UV熱硬化性樹脂、光開始剤、硬化剤、熱促進剤、及びレベリング剤を均一に混合した後、調製例1で得られた感温性徐放性精油マイクロカプセルを加え、均一に混合して、ネイルシール用組成物を得るというステップを含む。
【0093】
実施例2~17
ネイルシール用組成物であって、実施例1との違いは、感温性徐放性精油マイクロカプセルが、調製例2~17の順で作製されることにある。
【0094】
実施例18
ネイルシール用組成物であって、実施例1との違いは、糊剤が以下の重量部を含む原料により作製されることにある。
UV熱硬化性樹脂60部、
光開始剤6部、
硬化剤1.8部、
熱促進剤0.5部、
レベリング剤0.5部。
【0095】
実施例19
ネイルシール用組成物であって、実施例1との違いは、糊剤が以下の重量部を含む原料により作製されることにある。
UV熱硬化性樹脂85部、
光開始剤9部、
硬化剤2部、
熱促進剤1部、
レベリング剤1部。
【0096】
実施例20
ネイルシール用組成物であって、実施例1との違いは、その原料に感温性徐放性精油マイクロカプセルを加えず、かつUV熱硬化性樹脂の重量部が65部であることにある。
【0097】
実施例21
ネイルシール用組成物であって、実施例1との違いは、その原料に感温性徐放性精油マイクロカプセルを加えず、かつUV熱硬化性樹脂の重量部が85部であることにある。
【0098】
実施例22
ネイルシール用組成物であって、実施例1との違いは、前記糊剤が以下の重量部を含む原料により作製されることにある。
UV熱硬化性樹脂45部、
光開始剤9部、
硬化剤2部、
熱促進剤1部、
レベリング剤1部。
【0099】
比較例
比較例1
ネイルシール用組成物であって、実施例1との違いは、その原料に感温性徐放性精油マイクロカプセルを加えないことにある。
【0100】
比較例2
ネイルシール用組成物であって、その原料は糊剤100部及びカモミール精油1部を含み、糊剤は以下の重量部を含む原料により作製される。
UV熱硬化性樹脂45部、
光開始剤2部、
硬化剤1.5部、
熱促進剤0.1部、
レベリング剤0.1部。前記の各部の重量は1gである。
【0101】
そのうち、光開始剤は1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、硬化剤はトリエチレンジアミン、熱促進剤はビスオクタン酸亜鉛、レベリング剤はBYK333型レベリング剤である。
【0102】
UV熱硬化性樹脂は、以下の重量部を含む原料により作製される。
メタクリル酸ヒドロキシエチル12部、
エポキシ樹脂25部、具体的にはビスフェノールA型エポキシ樹脂E-44、
イソシアネート10部、具体的にはイソホロンジイソシアネート、
ポリエステルポリオール12部、具体的には分子量2000のポリカプロラクトンポリオール、
重合禁止剤0.2部、具体的には2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、
シランカップリング剤0.8部、具体的にはメチルトリス(トリフルオロアセトキシ)シラン、
アクリル酸エステル系モノマー15部、具体的にはアクリル酸n-ブチル。
【0103】
UV熱硬化性樹脂の調製方法は、以下のステップを含む。(1)メタクリル酸ヒドロキシエチル、エポキシ樹脂、イソシアネート、重合禁止剤及びシランカップリング剤を混合した後、均一に撹拌し、40℃の条件下で3時間反応させ、80℃まで昇温して1.5時間反応させて、物質Aを得るステップ。(2)物質Aとポリエステルポリオールを混合し、60℃まで昇温し、1.5h反応させ、さらにアクリル酸エステル系モノマーを加え、75℃まで昇温し、1.5時間反応させて、UV熱硬化性樹脂を得るステップ。
【0104】
ネイルシール用組成物の調製方法であって、UV熱硬化性樹脂、光開始剤、硬化剤、熱促進剤及びレベリング剤を均一に混合した後、カモミール精油を加え、均一に混合して、ネイルシール用組成物を得るというステップを含む。
【0105】
比較例3
ネイルシール用組成物であって、実施例1との違いは、感温性徐放性精油マイクロカプセルが比較調製例1によって得られることにある。
【0106】
比較例4
ネイルシール用組成物であって、実施例1との違いは、感温性徐放性精油マイクロカプセルが比較調製例2によって得られることにある。
【0107】
比較例5
ネイルシール用組成物であって、比較例1との違いは、糊剤が以下の重量部を含む原料により作製されることにある。
UV硬化樹脂45部、UV硬化樹脂はウレタンアクリレート樹脂であり、上海凱摯新材料科技有限公司から購入したDSM6官能性ウレタンアクリレートAgiSyn230A2、
光開始剤2部、
硬化剤1.5部、
熱促進剤0.1部、
レベリング剤0.1部。
【0108】
比較例6
ネイルシール用組成物であって、比較例1との違いは、糊剤が以下の重量部を含む原料により作製されることにある。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂E-44 45部、
硬化剤1.5部、
熱促進剤0.1部、
レベリング剤0.1部。
【0109】
性能測定試験
(1)物理・化学性能測定
フィルムアプリケータを用いて実施例1~3、実施例20~22、比較例1、比較例5~6で得られた組成物をステンレス鋼平板上にそれぞれ均等に塗布し、以下の基準に基づいて塗布性を目視で評価し、結果を表1に示す。
【0110】
1、塗布性
85~100点:塗布時に糸引きがなく、塗布後に塗布跡がなく、平らで滑らかな塗膜が形成されている。
60~84点:塗布時にわずかな糸引きが確認され、または塗布後にわずかな塗布跡が確認されたが、30秒静置すると、塗布跡は消失し、平らで滑らかな塗膜が形成された。
30~59点:塗布時に少量の糸引きが確認され、または塗布後に少量の塗布跡が確認された、30秒静置しても、塗布跡の残留が確認された。
0~29点:塗布時に糸引きが確認され、または塗布後に塗布跡が確認され、均一な塗膜が得られなかった。
【0111】
2、硬化性
フィルムアプリケータを用いて実施例1~3、比較例1、比較例5~6で得られた組成物をステンレス鋼平板にそれぞれ均等に塗布し、マニキュア用UVライトで光を1min照射した後、指で硬化膜の表面に触れて、粘つきの度合いを評価し、未硬化の成分の有無を確認した。
85~100点:粘つきは全く存在しない(完全硬化)。
60~84点:少量の粘つきが存在したが、表面には指痕は残らなかった(ほぼ完全に硬化しており、未硬化の成分を拭き取る必要がない)。
30~59点:粘つきがあり、表面に指の跡が残った(硬化が不完全で、未硬化の成分を拭き取る必要がある)。
0~29点:粘つきがひどく、指が表面に貼り付いた(未硬化成分がかなり多く残り、硬化膜として使用できない)。
【0112】
3、光沢性
前記硬化性評価で得られた硬化膜(ジェルネイル)を目視で観察することにより、光沢性を確認した。
85~100点:表面が光沢を有する。
60~84点:光の反射は確認できたが、ぼんやりと曇りが観察された。
30~59点:表面全体に少し曇りがある。
0~29点:表面が曇っている。
【0113】
4、粘着性(表面硬度)
硬度Fの鉛筆を用いて、前記硬化性評価で得られた硬化膜(ジェルネイル)を一定の荷重で引っかき、以下の評価基準に基づいて、剥離の有無及び引っかき傷の有無を評価した。
85~100点:引っかき傷や剥離はない。表面硬度は鉛筆の硬度F以上である。
60~84点:剥離はなく、引っかき傷が発生していたが、時間の経過とともに自然に修復された。
30~59点:剥離はなく、引っかき傷があり、修復されていない。
0~29点:剥離が発生。
【0114】
5、耐久性
前記硬化性評価で得られた硬化膜(ジェルネイル)について、2週間の日常生活を行った後、硬化膜の外観変化を目視で確認した。
85~100点:外観に変化なし。
60~84点:わずかに損傷があったが、依然としてステンレス鋼平板上に貼り付いていた。
30~59点:損傷が生じた部分、またはステンレス鋼平板上からわずかに剥離した部分があった。
0~29点:著しい損傷または剥離があった。
【0115】
6、保存安定性
実施例1~3、比較例1、比較例5~6で得られた組成物を、それぞれ遮光性螺旋管に入れて、蓋を閉め、40℃で1ヶ月、及び80℃で2週間という2つの条件で保管した。保管後の液体粘度の増加の有無を確認し、保存安定性を評価した。
85~100点:40℃で1ヶ月、及び80℃で2週間の両条件ともに、保管後の粘度は増加していなかった。
60~84点:40℃で1ヶ月、または80℃で2週間のいずれかの条件下で、保管後の粘度の増加が確認された。
0~59点:40℃で1ヶ月、及び80℃で2週間の2つの条件下で、保管後の粘度の増加が確認された。
【0116】
【0117】
実施例1~3、実施例20~22、比較例1、比較例5~6を結び付け、かつ表1と結び付けると、本発明の糊剤が前述のUV熱硬化性樹脂を含む場合、塗布性、硬化性及び保存安定性のすべてに満足できるネイルシールの組成物を獲得することができることがわかる。また、該UV熱硬化性樹脂の光硬化または熱硬化によって、柔軟性と強靱性を兼備するジェルネイルシールを形成することができ、該ジェルネイルシールは、光沢性、粘着性、表面硬度及び耐久性のいずれにも優れている。
【0118】
本発明の糊剤が前述のUV熱硬化性樹脂を含む場合、前述の感温性徐放性精油マイクロカプセルを添加すると、UV熱硬化性樹脂の光硬化及び/または熱硬化に悪影響を及ぼさないだけでなく、硬化後に形成されるジェルネイルシールの光沢性、表面硬度、耐久性、及び剥離性などがさらに高められる。
【0119】
(2)香り性能測定
無水アルコールでステンレス鋼平板を擦り洗いし、乾燥させて準備しておき、実施例1~19と比較例1~4の組成物を順に取って、それぞれをステンレス鋼平板上に均等に塗布し、ネイル用UVライトの照射エリアに置き、2min照射して取り出した後、恒温に入れて取り出し、恒温の35℃のガラス瓶に入れ、10名のプロの香り評定員を選び、実施例1~19及び比較例1~4の組成物を順に採点して、平均点を計算した。
【0120】
香り性能の採点基準は以下の通りである。
70~100点:精油特有の香りがあり、香りが適度で、調和している。
30~69点:精油の香りはあるが、その香りがかなり濃い、またはかなり薄い。
0~29点:香りが調和しておらず、樹脂の臭いが顕著である。
【0121】
無水アルコールでステンレス鋼平板を擦り洗いし、乾燥させて準備しておき、実施例1~19と比較例1~4の組成物を順に取って、それぞれをステンレス鋼平板上に均等に塗布し、ネイル用UVライトの照射エリアに置き、2min照射して取り出した後、恒温35℃のガラス瓶に入れて、カウントを開始し、プロの香り評定員を選んで、ステンレス鋼平板上の組成物にまだはっきりとした香りがあるかどうかを評価した。8時間毎に評価を行い、組成物がほぼ香りを放出しなくなった時点で、香りの総放出時間を記録した。実施例1~19及び比較例1~4の組成物に対して、順次テストを行った。
【0122】
【0123】
実施例1~3及び比較例1~2を結び付け、かつ表2を結び付けると、感温性徐放性精油マイクロカプセルを添加しなかった比較例1の場合、香りの評価点が29点を下回り、香りが調和しておらず、樹脂の臭いが顕著であることがわかる。比較例2で、比較例1を基礎として植物精油を直接添加すると、香りの評価点は67.8点まで上がり、精油の香りを有するが、香りの総放出時間が72Hしかなく、香りの散逸速度が速すぎる。実施例1~3で植物精油とカプセル壁を感温性徐放性精油マイクロカプセルとして作製した後、さらに組成物中に加えると、香りの評価点が88点を超える。これは、実施例1~3の組成物が精油特有の香りを有し、香りが適度で、調和していることを意味している。一般的に、ネイルシールを貼った後の使用期間は半月前後であり、したがって本願では香りの総放出時間を15日より長く制御する必要があるが、香りの総放出時間が長すぎると、必要とする温度敏感放出精油マイクロカプセルが多くなり、ネイルシールのコストが上昇する。香りの総放出時間が短すぎると、ネイルシールはまだ使用寿命に達していないのに、香りが完全に放出され、覆い隠されていた樹脂の臭いが再び放出される。本願の実施例1~3は、恒温35℃の条件下で、香りの総放出時間が360H以上であり、その中で、香りの評価点が最も高く、かつ、香りの総放出時間が最も長いのは実施例2である。
【0124】
実施例2と比較例3~4を結び付け、かつ表2を結び付けると、比較例3でエポキシ樹脂をポリウレタン樹脂に入れ換えた場合、香りの評価点と香りの総放出時間が明らかに低下することがわかる。これは、カプセル壁の原料の、感温性徐放性精油マイクロカプセルの性能に対する影響がかなり大きいことを意味している。比較例4でN-イソプロピルアクリルアミドの使用量を減らすと、香りの評価点と香りの総放出時間が明らかに下がる。これは、カプセル壁の原料使用量の、感温性徐放性精油マイクロカプセルの性能に対する影響がかなり大きいことを意味している。
【0125】
実施例2、4~7を結び付け、かつ表2を結び付けると、カプセル壁原料の使用量が100部で、実施例2のカモミール精油の使用量が100部を下回る場合、香りの評価点と香りの総放出時間が下がり、実施例7のカモミール精油の使用量が150部を上回ると、香りの評価点及び香りの総放出時間は実施例2より高いが、実施例4~6よりは低くなる。これは、カプセルコアとカプセル壁の原料重量比が好適には(100~150):100であることを意味しており、その中では、実施例5の香りの評価点と香りの総放出時間が最も高い。
【0126】
実施例5、8~12を結び付け、かつ表2を結び付けると、実施例11でカプセルコアに少量のホワイトカーボンを加えると、香りの評価点と香りの総放出時間が向上することがわかる。これは、カプセル壁を単独で用いて精油の放出を制御すると、精油の放出速度が比較的速くなるが、ホワイトカーボンは精油の一部を吸着することができるので、カプセル壁と組み合わせることで精油の放出速度を低下させ、精油の放出時間を延長し、精油の放出速度と放出時間のバランスを取っているためと思われる。また、ホワイトカーボンは組成物の色に対する影響が比較的小さい。実施例12でカプセルコアにホワイトカーボンを大量に添加した場合、香りの総放出時間は増加したが、反対に香りの評価点は低下している。これは、比較的多くの精油がホワイトカーボンの微孔内部に入り込んでしまい、精油の放出速度が遅くなり、香りがかなり薄くなったためと思われる。実施例8~10でホワイトカーボンと植物精油の重量比を(12~24):120に制御すると、香りの評価点と香りの総放出時間がかなり高くなり、その中では、実施例9の香りの評価点と香りの総放出時間が最も高い。これは、ホワイトカーボンと植物精油の重量比が好適には(12~24):120であることを意味している。
【0127】
実施例9、13~17を結び付け、かつ表2を結び付けると、実施例13~15で均質化圧力を徐々に増加させたところ、実施例13と14では香りの評価点と香りの総放出時間が順に増加し、実施例15では香りの評価点は上昇したものの、香りの総放出時間が明らかに低下したことがわかる。これは、均質化圧力が高すぎると精油分子の粒径が小さくなりすぎて、香りの放出速度が非常に速くなるためと思われる。実施例16で、600barの圧力を維持しながら均質化時間を短くすると、香りの評価点及び香りの総放出時間はわずかに低下したが、影響は小さかった。実施例17で圧力800barを保持しながら均質化時間を短くすると、香りの評価点及び香りの総放出時間はわずかに低下するが、影響は小さかった。均質化圧力が大きく、均質化時間が長いと、生産コストが上昇することから、均質化のステップにおける均質化時間は2~5min、圧力は600barが好ましい。
【0128】
実施例23
本実施形態では、さらにネイルシールを提供しており、
図1及び
図2に示すように、ネイルシールは担体1及び粘着層2を含み、粘着層2は担体1の底面に設置され、担体1は形状、パターン及び色のうちの1種または数種を有して、ネイルシールの外観を構成している。使用する前に、担体1を粘着層2を介して離型膜10上に接着する。使用する際には、担体1を粘着層2を介して人体組織表面に接着する。担体1は層構造であり、担体1の少なくとも1層は前記実施例1~22のいずれかに記載のネイルシール用組成物を有する。
【0129】
従来の技術に較べて、本実施例のネイルシールは、担体1の少なくとも1層が前記のネイルシール用組成物を含み、ネイルシールはUV熱硬化前に柔らかい状態でユーザの爪に貼り付けられ、爪表面の曲面弧度と完璧に合致させることができ、爪表面との間に発生する可能性のある隙間や気泡などを低減させ、ネイルシールと爪の粘着性を強化することができる。ネイルシールは、爪に貼り付けてからUV熱硬化を行うので、硬化後は、光沢のある硬い状態で爪にしっかりと貼り付く。
【0130】
特に、ここでの粘着層2は微孔性粒子3を有しており、粘着層2は微孔性構造を有しているので、少なくとも一部の微孔性粒子3の微孔が粘着層2の微孔性構造と連通することで、該粘着層2の微孔性構造を通して外部環境と連通する。
【0131】
ここで留意すべきは、ここでの人体組織とは、主に上皮組織や結合組織であり、具体的には皮膚、手の爪、足の爪などである、ということである。
【0132】
また、本願の実施例における粘着層2は微孔性構造なので、人体組織表面と外部の空気が該微孔性構造を通して流通できるため、通気性がよい。UV熱硬化を行う過程で、人体組織表面は、熱などの作用を受けて油脂、脂質、汗、剥離した角質細胞などの分泌が促進され、これらの分泌物が粘着層2と人体組織表面の粘着性に影響を及ぼすことがある。通気性のある粘着層2は、分泌物の蒸発や揮発を助け、さらに分泌物を排出する通路を提供して、人体組織表面の清潔さと乾燥を保持し、ネイルシールの耐久性を強化している。
【0133】
ネイルシールがUV熱硬化を経て人体組織表面に貼り付けられた後、人体組織表面から外部に物質が分泌された場合、粘着層2の通気性がよいので、これらの分泌物を蒸発または揮発によって微孔性構造を通して排出することができ、人体組織表面及び粘着層2表面の清潔さと乾燥、及び粘着層2の粘性の強さを保つことができるので、担体1を人体組織表面に長く有効に付着させることができる。
【0134】
また、微孔性粒子3は、粘着層2の微孔性構造を強化して、空気の流通及び分泌物の蒸発または揮発などのためにより多くの微孔の隙間を提供している。それと同時に、微孔性粒子3はネイルシールの吸水、吸油、吸音、衝撃吸収などの作用を高めることにも役立つ。
【0135】
ネイルシールの使用特徴に合わせて、粘着層2の厚さを10~100μmとし、粘着層2の微孔性構造を10~200nmの空洞として設定する。このような構造の微孔の隙間は、人体の分泌物を蒸発または揮発によって外部の空気に排出するための通路を有効に提供している。
【0136】
図2に示すように、微孔性粒子3は粘着層2内に均等に分散し、粘着層2全体の構造が均等であることを確保しており、その微孔性構造は分布が均等で、通気性も均等なので、優れた通気性を発揮し、分泌物の蒸発や揮発などに役立つ。
【0137】
微孔性粒子3は、活性炭顆粒、二酸化ケイ素顆粒、サンゴ砂顆粒、またはゼオライト顆粒の中の1種または数種である。これらの物質は、微孔性粒子3として、多孔質の特徴を兼ね備えて前に挙げた作用を発揮すると同時に、吸塵、脱臭、消臭などの作用も有し、人体組織表面の清潔さ及び無臭を保持することができるので、粘着層2が担体1を人体組織表面に長く有効に付着させることができる。
【0138】
ネイルシールの使用特徴及び粘着層2の構造特徴に対応して、微孔性粒子3の粒径を5~20μm、微孔性粒子3のポアを2~50nmに設定する。微孔性粒子3の体積が比較的小さいので、粘着層2内の微孔性粒子3がもたらす顆粒感を減少させ、粘着層2の表面を平坦に保持することができ、微孔性粒子3のポアは、人体の分泌物を有効的に吸着し、蒸発または揮発によって排出することができる。
【0139】
実施例24
本願の実施例24はネイルシールを提供しており、該ネイルシールはいずれも実施例23におけるネイルシールの設計及び実施に基づいて提供される。その実際のプロセスまたは構造は類似しているが、いくつかの違いもある。以下では、その違いの部分に重きを置いて説明しており、違いに対する詳細な説明以外は、すべて実施例23と同じと見なすことができるので、ここでは繰り返し述べない。
【0140】
本実施例24では、
図3に示すように、微孔性粒子3が層を形成して粘着層2内に位置している。このように、微孔性粒子3は粘着層2内に層として分散し、粘着層2全体の構造が均等であることを確保しており、その微孔性構造は、分布が均等で、通気性も均等なので、優れた通気性を発揮し、分泌物の蒸発や揮発などに役立つ。
【0141】
該層の微孔性粒子3は、粘着層2の最上層位置、底層位置または中間位置に設置することができ、本実施例では中間位置に設置され、構造を強化する役割も兼ねている。
【0142】
実施例25
本願の実施例25はネイルシールを提供しており、該ネイルシールはいずれも実施例23~24におけるネイルシールの設計及び実施に基づいて提供される。その実際のプロセスまたは構造は類似しているが、いくつかの違いもある。以下では、その違いの部分に重きを置いて説明しており、違いに対する詳細な説明以外は、すべて実施例23~24と同じと見なすことができるので、ここでは繰り返し述べない。
【0143】
本実施例25では、
図4に示すように、粘着層2の担体1から遠い方の面に通気性基材4を設けている。粘着層2を通気性基材4に塗布すると、空気は通気性基材4自体が有する微孔及び塗布の過程で粘着層2上に形成された微小な通気孔を直接通過して通気性基材4の裏面に達し、通気の目的を実現する。また、通気性基材4は粘着層2の構造強度を向上させ、担体1を支持する作用を果たすこともできる。
【0144】
そのうち、通気性基材4は機織織物、不織布、ニット、及び紙でもよいし、また多孔質フィルムや通気性フィルムでもよい。
【0145】
さらに、担体1と粘着層2の間には隔離層5が設置されている。隔離層5の設置により支持作用を果たすことができ、担体1を支え、担体1と粘着層2の間の連結力を向上させている。同時に、隔離層5は、担体1に与える多くの可能性を有しており、隔離層5によって妨害されることで、担体1の層構造、形状設計、パターン設計などを行う際に、材料や色が通気性のよい粘着層2を通って人体組織の表面に浸透することを懸念する必要がなく、隔離層5は、形状、パターン、及び色の担体1内での固定に役立ち、それによってその形状、パターン、及び色の安定が保持される。
【0146】
絶縁層5は、PE層、PU層、プラスチックシート、プラスチックフィルム、またはプラスチックペーパーなどであってよい。
【0147】
実施例26
本願の実施例26はネイルシールを提供しており、該ネイルシールはいずれも実施例23~25におけるネイルシールの設計及び実施に基づいて提供される。その実際のプロセスまたは構造は類似しているが、いくつかの違いもある。以下では、その違いの部分に重きを置いて説明しており、違いに対する詳細な説明以外は、すべて実施例23~25と同じと見なすことができるので、ここでは繰り返し述べない。
【0148】
本実施例26において、担体1の多層構造は、前述の隔離層5、パターン層、色層、フォイル層、メッキ層、ワニス層、装飾層、及び最表面層に位置するトップコート層である。
【0149】
これらの担体1中のパターン層、色層、フォイル層、メッキ層、ワニス層、及び装飾層は、1層または多層であってよく、かつ任意に組み合わせて積層され、少なくともそのうちの1層の隔離層5、パターン層、色層、フォイル層、メッキ層、ワニス層、及び装飾層は、実施例1~22で言及しているネイルシール用組成物によって作製され、または該ネイルシール用組成物と樹脂またはその他の添加剤を混合して作製される。
【0150】
担体1の粘着層2から遠い方の側には、さらに離型保護膜6を設置することができ、未使用時の担体1を外部の水、空気、光、熱から遮断して、担体1及び粘着層2の老化を遅らせる。
【0151】
粘着層2の担体1から遠い方の側には、さらに離型膜7を設置することができ、未使用時の粘着層2を外部の水、空気、光、熱から遮断して、粘着層2の粘性を保持する。
【0152】
本実施例26の担体は、
図5に示すように、粘着層2からワニス層1a、色層1b、ワニス層1a、フォイル層1c、ワニス層1a、装飾層1d、及び最表面層に位置するトップコート層1eに一括して積層され、トップコート層1eは担体1の外囲に包まれている。もちろん、他の実施例では、トップコート層1eは、
図6のように担体1及び粘着層2の外囲に包まれたものであってもよい。担体1は各層の作用により相応の機能を実現することができ、同時に、前述のネイルシールの組成物を含有することで、爪の曲面表面に貼り付き、硬化後には、光沢のある硬い状態でユーザの爪にしっかりと固定され、ネイルシールの形態の美しさを保持し、ネイルシールの使用期間を引き延ばすことを実現することもできる。
【0153】
ワニス層1a、色層1b、フォイル層1c、修飾層1d及びトップコート層1eでは、添加されている可能性のある前述のネイルシール用組成物以外の成分は、すべてマニキュア、ネイルシール、ネイルチップの分野で常用される成分が用いられている。
【0154】
ワニス層1aは透明ワニスであり、層と層の間の連結を強化し、UV熱硬化の前後において担体1が層に分かれず、一体であることを保証している。
【0155】
色層1bは、樹脂に顔料を添加したものでもよいし、色を有するシートによって形成されたものであってもよい。
【0156】
フォイル層1cは、金箔、銀箔、レーザー及び各種の色を採用しており、フォイル層1cに対して保護作用を果たすことができるだけでなく、輝きの効果も向上させることができる。
【0157】
装飾層1dは、スパンコール、グリッターダイヤモンド、グリッターパウダー、マグネットパウダーなどの中の1種または数種であってよい。
【0158】
トップコート層1eは透明ワニスであり、トップコート層1eは担体1の外囲に設置され、硬化後のネイルシールにつやを与え、引っ掻き抵抗性を付与し、担体1内の他の層構造を保護することができる。
【0159】
本具体的実施例は本願についての解釈にすぎず、本願に対する限定ではない。当業者であれば、本明細書を閲読すれば、必要に応じて本実施例に対して創造的貢献のない修正を行うことはできるが、本願の特許請求の範囲内でなければ、特許法の保護を受けることはできない。