(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】構造がフィットする経カテーテル大動脈弁植え込み装置
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20231222BHJP
【FI】
A61F2/24
(21)【出願番号】P 2022551425
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(86)【国際出願番号】 CN2020121635
(87)【国際公開番号】W WO2021139301
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】202010021982.8
(32)【優先日】2020-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522170386
【氏名又は名称】南京聖徳医療科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】馬▲チェン▼明
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/055262(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107890382(CN,A)
【文献】国際公開第2019/224577(WO,A1)
【文献】特表2013-539391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁ステント、弁葉、内スカート及び外スカートを含む、
既存の血管との間の構造がフィットする経カテーテル大動脈弁植え込み装置であって、
前記弁ステントは、カテーテル装置によって植え込むように径方向に圧縮及び再膨張可能であり、前記弁ステントは、円周を有すると共に縦方向軸線に沿って延伸する管状体
を含み、前記管状体は、
植え込み状態で原大動脈弁の上行大動脈側に面する第1縦方向端部と、
植え込み状態で原大動脈弁の心室側に面する第2縦方向端部と、
第1縦方向端部と第2縦方向端部を互いに接続する中間部と、を含み、
前記管状体は、内周面及び外周面を有し、基本的に少なくとも縦方向軸線と同心に延伸し、前記内周面は、前記管状体のキャビティを画定し、前記外周面は、前記管状体の外表面を画定し、
前記管状体の前記第1縦方向端部、前記第2縦方向端部及び前記中間部は、いずれもグリッド状構造で製造され、前記管状体の中間部には、複数の支持アームが設置され、前記支持アームは、前記管状体の円周周りに互いに離れて設置され、前記支持アームは
、前記管状体に直接成形され、
前記弁葉は、前記管状体のキャビティの中間部に固定され、前記内スカートは、前記管状体のキャビティの前記第2縦方向端部に固定されると共に、前記弁葉に固定接続され、前記外スカートは、前記管状体の外部キャビティの前記第2縦方向端部に固定されると共に、前記内スカートに固定接続され、前記支持アームは、一体成形され、完全に開いた後に
、周方向に見た際に「D」字形を呈し、心臓に近い大動脈の最も狭い部位と大動脈弁輪より上の最も狭い部位との間に固定され、支持アームの外表面と周囲組織との間の十分なフィットを実現し、
前記支持アームは、プラットフォーム部分、上支持アーム及び下支持アームを含み、前記上支持アーム及び前記下支持アームは、いずれも接線
方向に滑らかに形成され
、前記プラットフォーム部分は、
血管と弁との移行領域における解剖学的構造と平行
に接触し、
前記上支持アーム、前記下支持アーム及び前記プラットフォーム部分のいずれにも、ランディングゾーンが設置され、
3つのランディングゾーンの間に2つの湾曲部が設置され、前記2つの湾曲部の長さが同じであり、且つその幅が前記ランディングゾーンの幅よりも小さくなり、前記支持アームの湾曲がより容易となり、前記支持アームが周方向に見た際に「D」字形構造を形成し、
前記湾曲部は、中間部が比較的細く、且つ前記ランディングゾーンに向かって徐々に広くなる態様を呈し、
経大動脈又は経心尖の経路を使用して植え込み過程を完了する場合、前記支持アームは、大動脈弁輪に水平に開き、その拡張した状態で管状体を上行大動脈の方向に移動させ、押圧力の作用によって大動脈弁輪の上方に移動させ、且つ心臓に近い大動脈の最も狭い部位に固定することを特徴とする、構造がフィットする経カテーテル大動脈弁植え込み装置。
【請求項2】
前記支持アームの3つのランディングゾーンの最大幅が等しいことを特徴とする、請求項
1に記載の構造がフィットする経カテーテル大動脈弁植え込み装置。
【請求項3】
前記支持アームは、前記管状体の円周周りに等間隔に分布し、又は不等間隔に分布していることを特徴とする、請求項
2に記載の構造がフィットする経カテーテル大動脈弁植え込み装置。
【請求項4】
前記支持アームと前記管状体との接続部は、
前記管状体側の底辺が比較的細く、且つ前記ランディングゾーンに向かって徐々に広くなる態様を呈することを特徴とする、請求項
3に記載の構造がフィットする経カテーテル大動脈弁植え込み装置。
【請求項5】
前記管状体は、複数のグリッド結合点を含み、前記グリッド結合点の間の接続部分は、グリッドユニットであり、前記中間部において、前記管状体の軸線方向に沿った位置の違いに応じて、第1結合点、第2結合点及び第3結合点に区分され、前記支持アームの両端は、前記第1結合点と前記第2結合点にそれぞれ接続され、前記第3結合点は、前記第1結合点と前記第2結合点との間に位置し、前記支持アームが接続された前記第1結合点と前記第2結合点との間のグリッドユニットの長さは、前記支持アームが接続されていない前記第1結合点と前記第2結合点との間のグリッドユニットの長さよりも長いことを特徴とする、請求項1~
4のいずれか1項に記載の構造がフィットする経カテーテル大動脈弁植え込み装置。
【請求項6】
レーザ切断を行う場合、前記支持アームとその隣接するグリッドユニットとの間の最小幅は、1つのレーザビームの通過のみを許容するため、前記支持アームの前記ランディングゾーンの面積を最大化させることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか1項に記載の構造がフィットする経カテーテル大動脈弁植え込み装置。
【請求項7】
前記支持アームはそれぞれ、下角αの範囲が45度~55度の間にあり、当該角度の選択は、支持アームがD型構造を得ると同時に最大支持力を得られるために重要である、請求項6に記載の構造がフィットする経カテーテル大動脈弁植え込み装置。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2020年1月9日に中国国家知識産権局に提出され、特許出願番号が202010021982.8であり、発明名称が「構造がフィットする経カテーテル大動脈弁植え込み装置」である先行出願の優先権を主張する。この出願の全文は、援用により本願に組み込まれている。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、医療機器の分野に属し、特に大動脈を通過する経路又は経心尖の経路を介して植え込むことができる、構造がフィットする経カテーテル大動脈弁植え込み装置に関する。
【0003】
〔背景技術〕
世界中で毎年約30万人が心臓弁症の影響を受けている。これらの疾患は、異常な弁葉組織に係っており、例えば、多過ぎる組織が成長し、組織が分解又は破裂し、組織が硬化又は石灰化し、又は心周期全体に亘って異常な組織変位、即ち環状拡張、心室リモデリングが発生して、漏れ又は血液還流(即ち、弁閉鎖不全)が発生し、又は順方向の血液の流れに対して抵抗を与える(即ち、弁狭窄)等、弁の機能を低下させる。
【0004】
従来の経カテーテル大動脈弁植え込み弁は、いずれもステント材質の独特な特性に依存し、植え込まれた心臓弁を単に摩擦力によって既有の大動脈弁の位置に固定する。例えば、CN107890382Aには、位置決め及び回収可能な経カテーテル植え込み型大動脈弁装置が開示され、弁ステントの第1ベルマウス構造は、左室流出路及び大動脈弁輪と接触して、支持の役割を果たし、弁ステントの位置決めロッド構造は、軸方向における位置決めのために用いられ、その原理として、弁ステントの下部と周囲組織との間の摩擦力によって固定することである。しかし、疾患構造の複雑性のため、摩擦力のみによって弁ステントの位置決め及び固定を行うと、弁が植え込まれた後に既有の構造によって引っ張られたり押圧されたりして同軸ではなくなり、変位、脱落又は弾き出しのリスクをもたらして、弁植え込み手術に失敗してしまう。
【0005】
〔発明の概要〕
従って、本発明の目的は、カテーテルを経由して搬送され、単に摩擦力によって固定されることではない大動脈弁植え込み装置を提供することである。独特な設計によって、既存の血管との間の構造がフィットするように形成され、弁が大動脈弁輪の位置に解放されるように正確に制御することによって、従来のように単に摩擦力によって固定されることに起因する不具合を回避し、大動脈弁の病変を解決する。本発明は、以下の技術案によって実現される。
【0006】
本発明によれば、弁ステント、弁葉、内スカート及び外スカートを含む、構造がフィットする経カテーテル大動脈弁植え込み装置を提供しており、前記弁ステントは、カテーテル装置によって植え込むように径方向に圧縮及び再膨張可能であり、前記弁ステントは、円周を有すると共に縦方向軸線に沿って延伸する管状体と、植え込み状態で原大動脈弁の上行大動脈側に面する第1縦方向端部と、植え込み状態で原大動脈弁の心室側に面する第2縦方向端部と、第1縦方向端部と第2縦方向端部を互いに接続する中間部と、を含み、前記管状体は、内周面及び外周面を有し、基本的に少なくとも縦方向軸線と同心に延伸し、前記内周面は、前記管状体のキャビティを画定し、前記外周面は、前記管状体の外表面を画定し、前記管状体の前記第1縦方向端部、前記第2縦方向端部及び前記中間部は、いずれもグリッド状構造で製造され、前記管状体の中間部には、複数の支持アームが設置され、前記支持アームは、前記管状体の円周周りに互いに離れて設置され、前記支持アームは、溶接又は他の機械的接続方式によって前記管状体に接続する必要がなく、前記管状体に直接成形され、前記弁葉は、前記管状体のキャビティの中間部に固定され、前記内スカートは、前記管状体のキャビティの前記第2縦方向端部に固定されると共に、前記弁葉に固定接続され、前記外スカートは、前記管状体の外部キャビティの前記第2縦方向端部に固定されると共に、前記内スカートに固定接続され、前記支持アームは、一体成形され、完全に開いた後に「D」字形を呈し、心臓に近い大動脈の最も狭い部位と大動脈弁輪より上の最も狭い部位との間に固定され、支持アームの外表面と周囲組織との間の十分なフィットを実現し、前記支持アームは、プラットフォーム部分、上支持アーム及び下支持アームを含み、前記上支持アーム及び前記下支持アームは、いずれも接線方式で形成され、滑らかな移行を有し、前記プラットフォーム部分は、血液の流れと平行であり、血管と弁との移行領域における解剖学的構造と平行に接触して、血液の流れへの影響を最大限に減少させることができる。
【0007】
本発明の大動脈弁植え込み装置によれば、経大動脈又は経心尖の経路を使用して植え込み過程を完了する場合、前記支持アームは、大動脈弁輪に水平に開き、その拡張した状態で管状体を上行大動脈の方向に移動させ、押圧力の作用によって大動脈弁輪の上方に移動させ、且つ心臓に近い大動脈の最も狭い部位に固定する。
【0008】
本発明の大動脈弁植え込み装置によれば、前記上支持アーム、前記下支持アーム及び前記プラットフォーム部分のいずれにも、心臓、血管とフィットする時により大きな張力及び/又は圧力を得るためのランディングゾーンが設置される。
【0009】
本発明の大動脈弁植え込み装置によれば、3つのランディングゾーンの間に2つの湾曲部が設置され、前記2つの湾曲部の長さが同じであり、且つその幅が前記ランディングゾーンの幅よりも小さくなり、前記支持アームの湾曲がより容易となり、「D」字形構造を形成する。
【0010】
本発明の大動脈弁植え込み装置によれば、前記支持アームの3つのランディングゾーンの最大幅が等しい。
【0011】
本発明の大動脈弁植え込み装置によれば、前記支持アームは、前記管状体の円周周りに等間隔に分布し、又は不等間隔に分布している。
【0012】
本発明の大動脈弁植え込み装置によれば、前記支持アームと前記管状体との接続部は、底部が比較的細く、且つ前記ランディングゾーンに向かって徐々に広くなる態様を呈する。
【0013】
本発明の大動脈弁植え込み装置によれば、前記湾曲部は、中間部が比較的細く、前記ランディングゾーンに向かって徐々に広くなる態様を呈する。
【0014】
本発明の大動脈弁植え込み装置によれば、前記管状体と前記支持アームは、レーザ切断によって加工される。
【0015】
本発明の大動脈弁植え込み装置によれば、前記管状体は、複数のグリッド結合点を含み、前記グリッド結合点の間の接続部分は、グリッドユニットであり、前記中間部において、前記管状体の軸線方向に沿った位置の違いに応じて、第1結合点、第2結合点及び第3結合点に区分され、前記支持アームの両端は、前記第1結合点と前記第2結合点にそれぞれ接続され、前記第3結合点は、前記第1結合点と前記第2結合点との間に位置し、前記支持アームが接続された前記第1結合点と前記第2結合点との間のグリッドユニットの長さは、前記支持アームが接続されていない前記第1結合点と前記第2結合点との間のグリッドユニットの長さよりも長い。
【0016】
本発明の大動脈弁植え込み装置によれば、レーザ切断を行う場合、前記支持アームとその隣接するグリッドユニットとの間の最小幅は、1つのレーザビームの通過のみを許容するため、前記支持アームの前記ランディングゾーンの面積を最大化させる。
【0017】
本願で説明する弁ステントに用いられるサイズ及び/又は大きさは通常、弁ステントの自由な拡張状態、即ちいずれの収縮環境以外の広がり状態を指すと注意すべきである。従って、周囲組織が提供する収縮によって、新たに拡張した植え込み状態でのサイズ及び/又は部位が異なる可能性がある。
【0018】
本発明は、以下の有益な効果を有する。
【0019】
本発明の利点は、ステント管状体の中間部に位置する支持アーム構造によって、手術過程における大動脈弁植え込み装置の構造フィットを実現し、植え込み過程での脱落、変位又は弾き出しのリスクを減少させ、弁植え込みの成功性を増加させた。
【0020】
〔図面の簡単な説明〕
図1:本発明の大動脈弁植え込み装置の構成図である。
図2:本発明の大動脈弁植え込み装置の具体的な実施形態を示す図である。
図3:本発明の大動脈弁植え込み装置の支持アームの詳細図である。
図4:本発明の大動脈弁植え込み装置の支持アームの別の詳細図である。
図5:本発明の大動脈弁植え込み装置の複数の支持アームで形成された全体機能を示す図である。
図6:本発明の経カテーテル大動脈弁植え込み装置に用いられる搬送装置を示す図である。
図7:本発明の大動脈弁植え込み装置の中間部及び支持アームの2次元平面加工プロセスを示す図である。
【0021】
〔発明を実施するための形態〕
以下、具体的な実施例を参照しながら本発明を更に説明する。実施例は、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の請求範囲を制限するものではないと理解すべきである。また、本発明に開示された内容を読んだ後、当業者は、本発明に対して様々な変更や修正を行うことができ、これらの等価の形態も本発明が限定する請求範囲に含まれると理解すべきである。
【0022】
図1に示すように、弁ステント100は、管状体105を含み、管状体105は、第1縦方向端部101、中間部102及び第2縦方向端部103の3つの部分で構成され、上記の3つの部分はいずれも網状構造で製造される。管状体105の材料としては、例えば鉄、ニッケル、アルミニウム、チタン及び/又はこれらの金属の合金、及び他の元素とすることができる。符号111は、透明な人工弁葉を示し、各人工弁葉111は、管状体105のキャビティ90に接続される。縦方向に管状体105の軸線60に沿って互いに離れる2つの軸方向弁葉水平面111aと111bとの間の領域は、弁葉固定領域であり、そのうち、軸方向弁葉水平面111aは、第1縦方向端部101に向かい、軸方向弁葉水平面111bは、第2縦方向端部103に向かう。軸方向弁葉水平面111aは、第1縦方向端部101と中間部102とを隔てる。人工弁葉111を管状体105に固定するように対応するグリッドユニット80に接続される人工弁葉流出支持部分111cを設置することができる。軸方向弁葉水平面111bは、第2縦方向端部103の近傍に位置することができる。弁ステント100は、外スカート及び内スカート(図示せず)を含んでもよく、外スカート及び内スカートは、動物の心膜又は人工材料で製造される。
【0023】
図2は、弁ステント100がヒト又は動物の心臓の天然大動脈弁の置換に用いられる具体的な実施形態を示す。即ち、弁ステント100は、人工弁として用いることができ、血液が通常1つの方向のみに沿って接続通路を流れることを許容し、本実施例では、血液は、左心室21から大動脈16に流れ、且つ、血液が大動脈16から左心室21への方向に沿った漏れを防止することができる。仮想縦軸30は、血管全体の縦軸方向である。弁ステント100が植え込まれた場合、即ち植え込まれた状態では、第1縦方向端部101は、大動脈16に面すると共に上行大動脈72と同じ側に位置し、第2縦方向端部103は、左心室21に面すると共に天然大動脈弁輪70と同じ側に位置する。
【0024】
植え込まれた弁ステント100は、その拡張した状態で大動脈側16の方向に移動することができ、その支持アーム50が管状体105の外表面91に向かって突起する。これにより、支持アーム50は、その径方向に押圧された状態で天然大動脈弁輪70に縦方向に沿って移動する。特定の輪郭を有し、且つ、フック、バーブ、キンクなどがないため、支持アーム50は、縦方向に移動する時に人体の固有組織と纏わり付くことがなく、組織の損傷を引き起こすこともない。
【0025】
図3に示すように、弁ステント100は、例えば3つ、6つ、9つ、12つ又はそれ以上の、複数の支持アーム50を含むことができる。支持アーム50は、溶接又は他の合成プロセスによって接合されるものではなく、一体成形されるものである。弁ステント100が膨張する時、支持アーム50は、周方向に互いに離れることができる。各支持アーム50同士は、同じ周方向距離を有し、即ち、管状体105の円周周りに等間隔に分布してもよく、又は、各支持アーム50同士は、異なる周方向距離を有してもよい。各支持アーム50の全体形状は、「D」字形を呈しており、いずれもプラットフォーム部分51、上支持アーム53及び下支持アーム52の3つの部分で構成される。「D」字形に設計することにより、より良好な一体性を提供し、且つ、血管と弁との移行領域において構造をフィットさせるアンカー機能を提供する。上支持アーム53及び下支持アーム52は、プラットフォーム部分51に対して中心対称となっている。そのうち、上支持アーム53は、第1縦方向端部101に向かう中間部102に接続され、下支持アーム52は、第2縦方向端部103に向かう中間部102に接続され、上下支持アームはいずれも接線方式で形成され、滑らかな移行を有する。プラットフォーム部分51は、水平面に垂直に設置されるものではなく、血液の流れ方向に平行に設置され、血管と弁との移行領域における解剖学的構造と平行に接触して、血液の流れへの影響を最大限に減少させることができる。
【0026】
図3に示すように、支持アームの立体構造は、大きさが異なる2つの角度、即ち上角と下角に係わっており、下角αの範囲が45度~55度の間にあり、当該角度の選択は、支持アームがD型構造を得ると同時に最大支持力を得られるために重要である。
【0027】
図4に示すように、構造フィット機能の形成をよりよく説明するために、支持アーム50をさらに拡大させている。上支持アーム53、下支持アーム52及びプラットフォーム部分は、いずれも心臓、血管とフィットする時により大きな張力及び/又は圧力を得るためのランディングゾーン54を有することが分かる。支持アーム50と植え込まれた弁ステント100との接続部56は、底部が比較的細く、且つランディングゾーン54に向かって徐々に広くなるようになっている。3つのランディングゾーン54の間に2つの湾曲部59があり、この2つの部分の長さが同じであるため、支持アーム50の湾曲がより容易になり、支持アームのD型構造を形成する。
【0028】
図5は、複数の支持アーム50によって形成される全体機能を模式的に示している。弁ステント(図示せず)は、上支持アーム53のランディングゾーン54と心臓に近い大動脈の最も狭い部位73(例えば、バルサルバ洞・上行大動脈移行部(sino-tubular junction)、又は上行大動脈の他の部分)によって上部の構造フィットを形成する。弁ステント(図示せず)は、下支持アーム52のランディングゾーン54と大動脈弁輪より上の最も狭い部位74(例えば、大動脈弁葉の自由縁又は弁葉の狭い構造)によって下部の構造フィットを形成する。これは、単に摩擦力によって固定するという従来のプロステーシス植え込みの植え込み原理とは明らかに異なる。構造をフィットさせることによって、変位、脱落及び弾き出しなど、固定問題による手術失敗の巨大なリスクを回避する。
【0029】
図6は、本発明の経カテーテル植え込み型大動脈弁装置に用いられる搬送装置200を示す図である。本発明の実施例に係る搬送装置80は、搬送ヘッド部81と、プロステーシス搭載領域82と、搭載点83と、搬送カテーテル84と、回転ハンドル85とを含む。搭載点83と搬送ヘッド部81との協力によって、弁ステント100をプロステーシス搭載領域82に収容する。回転ハンドル85をゆっくりと回転して解放することによって、回転ハンドルを送り出して(又は取り戻して)、搬送カテーテル84がゆっくりと前進(又は後退)し、弁ステントのプロステーシス搭載領域82からの収容(又は解放)を完了する。
【0030】
図7は、管状体の中間部102及び支持アーム50の2次元平面加工プロセスを示す図であり、管状体105及び支持アーム50は、レーザ切断によって加工されるものである。管状体105の中間部102には、複数のグリッド結合点が設置され、グリッド結合点の間の接続部分は、グリッドユニットであり、軸方向位置の違いに応じて第1結合点61、第2結合点62及び第3結合点63に分けられ、支持アーム50の両端は、それぞれ第1結合点61と第2結合点62に接続され、第3結合点63は、第1結合点と第2結合点との間に位置し、支持アームが接続された第1結合点61と第2結合点62との間のグリッドユニットの長さは、支持アームが接続されていない第1結合点61と第2結合点62との間のグリッドユニットの長さよりも長く、当該プロセス設計によって、弁ステント100が展開した後に、その支持アーム50が「D」字形に自然に湾曲することがより容易となる。
【0031】
そして、レーザ切断を行う場合、支持アーム50とその隣接するグリッドユニットとの間の最小幅は、1つのレーザビームの通過のみを許容するため、支持アーム50のランディングゾーン54の面積を最大化させる。ランディングゾーン54の面積が大きいほど、血管と弁との移行領域における解剖学的構造との間の接触面積が大きくなり、張力を適切に分布させることができ、構造のフィットを実現するのに有利である。
【0032】
3つのランディングゾーン54の最大幅を等しくする支持アーム50の設計によって、弁ステント100が展開した後に、その支持アームが「D」字形に自然に湾曲することがより容易となる。
【0033】
管状体のグリッド構造において、受けた径方向の力によって、異なるグリッド結合点に異なる構造幅を設計している。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明した。但し、本発明は上記の実施形態に限定されない。本発明の精神や原則を逸脱せず行った修正、同等な置き換え、改良などは、いずれも本発明の請求範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の大動脈弁植え込み装置の構成図である。
【
図2】本発明の大動脈弁植え込み装置の具体的な実施形態を示す図である。
【
図3】本発明の大動脈弁植え込み装置の支持アームの詳細図である。
【
図4】本発明の大動脈弁植え込み装置の支持アームの別の詳細図である。
【
図5】本発明の大動脈弁植え込み装置の複数の支持アームで形成された全体機能を示す図である。
【
図6】本発明の経カテーテル大動脈弁植え込み装置に用いられる搬送装置を示す図である。
【
図7】本発明の大動脈弁植え込み装置の中間部及び支持アームの2次元平面加工プロセスを示す図である。