(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】伝送装置及びアンテナ
(51)【国際特許分類】
H01P 5/08 20060101AFI20231222BHJP
H01Q 13/08 20060101ALI20231222BHJP
H01R 12/57 20110101ALI20231222BHJP
【FI】
H01P5/08 A
H01Q13/08
H01R12/57
(21)【出願番号】P 2022567309
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2022036461
【審査請求日】2022-11-04
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond 5Gのレジリエンスを実現するネットワーク制御技術の研究開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000232287
【氏名又は名称】日本電業工作株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149113
【氏名又は名称】加藤 謹矢
(72)【発明者】
【氏名】東 右一郎
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-262380(JP,A)
【文献】特開平06-096813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 5/08
H01Q 13/08
H01R 12/57
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の誘電体基板の一方の面に設けられた給電線路、及び容量結合導体と、当該誘電体基板の他方の面に設けられた接地導体とを備え、信号を伝送する伝送基板と、
内導体と当該内導体の外側に設けられた外導体とを備え、信号を入出力するコネクタと、を備え、
前記コネクタは、前記伝送基板の前記給電線路及び前記容量結合導体が設けられた前記一方の面に設けられ、当該コネクタの前記内導体が当該給電線路に接続され、前記外導体が当該容量結合導体と接続され、当該伝送基板の前記接地導体と当該コネクタの当該外導体とが接続されていない伝送装置。
【請求項2】
前記伝送基板において、前記容量結合導体と前記接地導体とは、前記誘電体基板を介して対向していることを特徴とする請求項1に記載の伝送装置。
【請求項3】
前記伝送基板の前記接地導体と、前記コネクタの前記外導体とは、容量結合していることを特徴とする請求項2に記載の伝送装置。
【請求項4】
前記容量結合導体は、中央部に開口と、外縁から当該開口までに至る間隙とを有し、当該間隙に前記給電線路の端部が位置することを特徴とする請求項
1に記載の伝送装置。
【請求項5】
前記容量結合導体は、中央部に開口と、外縁から当該開口までに至る間隙とを有し、当該間隙に前記給電線路の端部が位置することを特徴とする請求項2に記載の伝送装置。
【請求項6】
前記容量結合導体は、中央部に開口と、外縁から当該開口までに至る間隙とを有し、当該間隙に前記給電線路の端部が位置することを特徴とする請求項3に記載の伝送装置。
【請求項7】
前記容量結合導体の外縁を囲む形状が、多角形、円形、楕円形のいずれかであることを特徴とする請求項
1に記載の伝送装置。
【請求項8】
前記容量結合導体の外縁を囲む形状が、多角形、円形、楕円形のいずれかであることを特徴とする請求項2に記載の伝送装置。
【請求項9】
前記容量結合導体の外縁を囲む形状が、多角形、円形、楕円形のいずれかであることを特徴とする請求項3に記載の伝送装置。
【請求項10】
前記容量結合導体の外縁を囲む形状が、多角形、円形、楕円形のいずれかであることを特徴とする請求項4に記載の伝送装置。
【請求項11】
前記容量結合導体の外縁を囲む形状が、多角形、円形、楕円形のいずれかであることを特徴とする請求項5に記載の伝送装置。
【請求項12】
前記容量結合導体の外縁を囲む形状が、多角形、円形、楕円形のいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の伝送装置。
【請求項13】
前記コネクタの中心から前記容量結合導体の外縁までの寸法が前記誘電体基板における実効波長の1/4超、且つ1/2未満であることを特徴とする請求項1乃至
12のいずれか1項に記載の伝送装置。
【請求項14】
前記コネクタの中心から前記容量結合導体の外縁までの寸法の内、最小の寸法が実効波長の1/4に対応する周波数を下限とし、最大の寸法が実効波長の1/2に対応する周波数を上限とした信号を伝送することを特徴とする請求項1乃至
12のいずれか1項に記載の伝送装置。
【請求項15】
電波を送受信する放射素子と、
前記放射素子が接続され、当該放射素子が送受信した電波に基づく信号を伝送する、請求項1乃至
12のいずれか1項に記載の伝送装置と、
を備えるアンテナ。
【請求項16】
電波を送受信する放射素子と、
前記放射素子が接続され、当該放射素子が送受信した電波に基づく信号を伝送する、請求項13に記載の伝送装置と、
を備えるアンテナ。
【請求項17】
電波を送受信する放射素子と、
前記放射素子が接続され、当該放射素子が送受信した電波に基づく信号を伝送する、請求項14に記載の伝送装置と、
を備えるアンテナ。
【請求項18】
前記コネクタの中心から前記容量結合導体の外縁までの寸法の内、最小の寸法が実効波長の1/4に対応する周波数を下限とし、最大の寸法が実効波長の1/2に対応する周波数を上限とした電波を送受信することを特徴とする請求項
15に記載のアンテナ。
【請求項19】
前記コネクタの中心から前記容量結合導体の外縁までの寸法の内、最小の寸法が実効波長の1/4に対応する周波数を下限とし、最大の寸法が実効波長の1/2に対応する周波数を上限とした電波を送受信することを特徴とする請求項16に記載のアンテナ。
【請求項20】
前記コネクタの中心から前記容量結合導体の外縁までの寸法の内、最小の寸法が実効波長の1/4に対応する周波数を下限とし、最大の寸法が実効波長の1/2に対応する周波数を上限とした電波を送受信することを特徴とする請求項17に記載のアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送装置及びアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板の一方の面に配設された所定の幅を有する中心導体と、基板の他方の面に配設された接地導体とを備えたマイクロストリップ線路の接続構造において、前記基板の中心導体が配設された導体配設面に前記接地導体と接続するアースパターンを形成し、コネクタ内部導体とコネクタ外導体とを備えたコネクタを前記導体配設面に取り付け、コネクタ内部導体を前記マイクロストリップ線路の中心導体に接続するとともに、コネクタ外導体を前記アースパターンに接続するマイクロストリップ線路の接続構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実願平1-140181号(実開平3-79510号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、マイクロストリップアンテナなどでは、誘電体基板の一方の面に電波を送受信する放射素子が接続された給電線路が設けられ、他方の面に接地導体が設けられた伝送基板(いわゆるプリント基板)と、同軸ケーブルが接続されて信号の入出力端子となるコネクタとを備えた伝送装置が用いられる。SMPM(Sub Miniature Push-on Mini)などの外寸の小さいコネクタは、伝送基板の給電線路が設けられた側に実装される。このため、誘電体基板に内側が導体で覆われたスルーホールなどを介して、コネクタの外導体と伝送基板の接地導体とを接続することが行われてきた。しかし、スルーホールなどを設けると、伝送装置の製造費が高くなる。このため、コネクタの外導体と伝送基板の接地導体とを接続するスルーホールなどを設けないことが求められている。
本発明は、伝送基板の接地導体とコネクタの外導体とを接続しなくとも動作する伝送装置などを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、板状の誘電体基板の一方の面に設けられた給電線路、及び容量結合導体と、当該誘電体基板の他方の面に設けられた接地導体とを備え、信号を伝送する伝送基板と、内導体と当該内導体の外側に設けられた外導体とを備え、信号を入出力するコネクタと、を備え、前記コネクタは、前記伝送基板の前記給電線路及び前記容量結合導体が設けられた前記一方の面に設けられ、当該コネクタの前記内導体が当該給電線路に接続され、前記外導体が当該容量結合導体と接続され、当該伝送基板の前記接地導体と当該コネクタの当該外導体とが接続されていない伝送装置である。
請求項2に記載の発明は、前記伝送基板において、前記容量結合導体と前記接地導体とは、前記誘電体基板を介して対向していることを特徴とする請求項1に記載の伝送装置である。
請求項3に記載の発明は、前記伝送基板の前記接地導体と、前記コネクタの前記外導体とは、容量結合していることを特徴とする請求項2に記載の伝送装置である。
請求項4に記載の発明は、前記容量結合導体は、中央部に開口と、外縁から当該開口までに至る間隙とを有し、当該間隙に前記給電線路の端部が位置することを特徴とする請求項1に記載の伝送装置である。
請求項5に記載の発明は、前記容量結合導体は、中央部に開口と、外縁から当該開口までに至る間隙とを有し、当該間隙に前記給電線路の端部が位置することを特徴とする請求項2に記載の伝送装置である。
請求項6に記載の発明は、前記容量結合導体は、中央部に開口と、外縁から当該開口までに至る間隙とを有し、当該間隙に前記給電線路の端部が位置することを特徴とする請求項3に記載の伝送装置である。
請求項7に記載の発明は、前記容量結合導体の外縁を囲む形状が、多角形、円形、楕円形のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の伝送装置である。
請求項8に記載の発明は、前記容量結合導体の外縁を囲む形状が、多角形、円形、楕円形のいずれかであることを特徴とする請求項2に記載の伝送装置である。
請求項9に記載の発明は、前記容量結合導体の外縁を囲む形状が、多角形、円形、楕円形のいずれかであることを特徴とする請求項3に記載の伝送装置である。
請求項10に記載の発明は、前記容量結合導体の外縁を囲む形状が、多角形、円形、楕円形のいずれかであることを特徴とする請求項4に記載の伝送装置である。
請求項11に記載の発明は、前記容量結合導体の外縁を囲む形状が、多角形、円形、楕円形のいずれかであることを特徴とする請求項5に記載の伝送装置である。
請求項12に記載の発明は、前記容量結合導体の外縁を囲む形状が、多角形、円形、楕円形のいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の伝送装置である。
請求項13に記載の発明は、前記コネクタの中心から前記容量結合導体の外縁までの寸法が前記誘電体基板における実効波長の1/4超、且つ1/2未満であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の伝送装置である。
請求項14に記載の発明は、前記コネクタの中心から前記容量結合導体の外縁までの寸法の内、最小の寸法が実効波長の1/4に対応する周波数を下限とし、最大の寸法が実効波長の1/2に対応する周波数を上限とした信号を伝送することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の伝送装置である。
請求項15に記載の発明は、電波を送受信する放射素子と、前記放射素子が接続され、当該放射素子が送受信した電波に基づく信号を伝送する、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の伝送装置と、を備えるアンテナである。
請求項16に記載の発明は、電波を送受信する放射素子と、前記放射素子が接続され、当該放射素子が送受信した電波に基づく信号を伝送する、請求項13に記載の伝送装置と、を備えるアンテナである。
請求項17に記載の発明は、電波を送受信する放射素子と、前記放射素子が接続され、当該放射素子が送受信した電波に基づく信号を伝送する、請求項14に記載の伝送装置と、を備えるアンテナである。
請求項18に記載の発明は、前記コネクタの中心から前記容量結合導体の外縁までの寸法の内、最小の寸法が実効波長の1/4に対応する周波数を下限とし、最大の寸法が実効波長の1/2に対応する周波数を上限とした電波を送受信することを特徴とする請求項15に記載のアンテナである。
請求項19に記載の発明は、前記コネクタの中心から前記容量結合導体の外縁までの寸法の内、最小の寸法が実効波長の1/4に対応する周波数を下限とし、最大の寸法が実効波長の1/2に対応する周波数を上限とした電波を送受信することを特徴とする請求項16に記載のアンテナである。
請求項20に記載の発明は、前記コネクタの中心から前記容量結合導体の外縁までの寸法の内、最小の寸法が実効波長の1/4に対応する周波数を下限とし、最大の寸法が実効波長の1/2に対応する周波数を上限とした電波を送受信することを特徴とする請求項17に記載のアンテナである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1、15、16、17に記載の発明によれば、伝送基板の接地導体とコネクタの外導体とを接続しなくとも動作する。
請求項2に記載の発明によれば、対向していない場合に比べ、結合容量を大きくできる。
請求項3に記載の発明によれば、直流的な接続を要しない。
請求項4、5、6に記載の発明によれば、一層の導電体層で構成できる。
請求項7、8、9、10、11、12に記載の発明によれば、用途に合わせた形状にできる。
請求項13に記載の発明によれば、容量結合導体の形状が実効波長に基づいて設定できる。
請求項14、18、19、20に記載の発明によれば、容量結合導体の形状が周波数帯域に基づいて設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】ミリ波帯のマイクロストリップアンテナを説明する図である。(a)は、外寸の小さいコネクタを用いたマイクロストリップアンテナ、(b)は、外寸の大きいコネクタを用いたマイクロストリップアンテナである。
【
図2】第1の実施の形態が適用される伝送装置を説明する図である。(a)は、伝送基板とコネクタとを近接させた状態の斜視図、(b)は、コネクタの斜視図、(c)は、伝送基板にコネクタを実装した状態の斜視図である。
【
図3】第1の実施の形態が適用される伝送装置を説明する図である。(a)は、平面図、(b)は、側面図、(c)は、シミュレーションに用いた実施例1のパラメータを示す。
【
図4】シミュレーションによって求めた実施例1と比較例のSパラメータである。(a)は、S11、(b)は、S21である。
【
図5】誘電体基板の厚さを異ならせた実施例1、2のパラメータを示す。
【
図6】シミュレーションによって求めた実施例1、実施例2のSパラメータである。(a)は、S11、(b)は、S21である。
【
図7】第2の実施の形態が適用される伝送装置を説明する図である。(a)は、平面図、(b)は、シミュレーションに用いた実施例3のパラメータを示す。
【
図8】シミュレーションによって求めた実施例3のSパラメータである。(a)は、S11、(b)は、S21である。
【
図9】第3の実施の形態が適用される伝送装置を説明する図である。(a)は、平面図、(b)は、シミュレーションに用いた実施例4のパラメータを示す。
【
図10】シミュレーションによって求めた実施例4のSパラメータである。(a)は、S11、(b)は、S21である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本実施の形態では、マイクロストリップアンテナを例に、伝送装置を説明するが、伝送装置は、信号を伝送する装置であって、信号の入出力にコネクタを介して同軸ケーブルが接続されるものである。伝送装置は、アンテナ素子を含まない。よって、伝送装置は、アンテナ素子が接続されてマイクロストリップアンテナとして用いられてもよく、信号から特定の周波数の信号を取り出すフィルタ素子が接続されてフィルタとして用いられてもよい。さらに、他の機能を有する素子が接続されてもよい。
【0009】
図1は、ミリ波帯のマイクロストリップアンテナを説明する図である。
図1(a)は、外寸の小さいコネクタ120を用いたマイクロストリップアンテナ1、
図1(b)は、外寸の大きいコネクタ220を用いたマイクロストリップアンテナ2である。
図1(a)において、紙面の上側にマイクロストリップアンテナ1を、紙面の下側にコネクタ120の斜視図を示す。同様に、
図1(b)において、紙面の上側にマイクロストリップアンテナ2を、紙面の下側にコネクタ220の斜視図を示す。
図1(a)のマイクロストリップアンテナ1において、紙面の右方向をx方向、紙面の上方向をy方向、紙面の表面方向をz方向とする。
図1(b)のマイクロストリップアンテナ2においても同様とする。ここでは、マイクロストリップアンテナ1及びマイクロストリップアンテナ2は、ミリ波帯の電波を送受信するとする。
【0010】
図1(a)に示すマイクロストリップアンテナ1は、伝送装置100と、放射素子300とを備える。伝送装置100は、伝送基板110とコネクタ120とを備える。伝送基板110は、板状の誘電体基板111と、誘電体基板111の一方の面(以下では、表面と表記する。)に設けられた給電線路112と、誘電体基板111の他方の面(以下では、裏面と表記する。)に設けられた接地導体113(符号のみを表記する)と、を備える。なお、伝送基板110は、表面に容量結合導体114(後述する
図2(a)など参照)を備えるが、
図1(a)では、省略する。そして、放射素子300は、誘電体基板111の給電線路112に接続されるように設けられている。なお、マイクロストリップアンテナ1の放射素子300は、電波を送受信するが、ここでは、放射素子300と表記する。
【0011】
誘電体基板111は、例えば、ガラス布基材にエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂などを含浸させて構成されている。給電線路112、接地導体113は、銅(Cu)箔などの導電体で構成されている。ここでは、導体とは、電気の良導体である導電体を意味する。給電線路112は、誘電体基板111の表面に予め定められた幅の帯状に設けられている。給電線路112の幅は、伝送される信号に対する特性インピーダンスによって設定される。接地導体113は、誘電体基板111の裏面の全面を覆うように設けられている。なお、接地導体113は、必ずしも誘電体基板111の裏面の全面を覆わなくてもよく、給電線路112に対向するように設けられていればよい。ここでは、伝送基板110は、両面に銅(Cu)箔などの導電体が設けられ、銅箔が給電線路112、接地導体113などに加工された誘電体基板111である。つまり、伝送基板110は、誘電体基板111に加え、給電線路112や接地導体113などを含む。伝送基板110は、プリント基板と表記されることがある。また、誘電体基板111の表面に給電線路112、裏面に接地導体113を設けた構成は、マイクロストリップ線路と表記されることがある。
【0012】
図1(a)に示す放射素子300は、いわゆるパッチアンテナであって、放射部と地板とを備える。放射部は、誘電体基板111の表面の導電体により構成される。
図1(a)では、放射部の平面形状は、一例として正方形である。そして、誘電体基板111の裏面に設けられ接地導体113が地板として機能する。接地導体113は、放射部と対向するように設けられている。なお、放射部は、給電線路112と同じ導電体を加工して構成されている。以下では、放射部を放射素子300とし、地板については説明を省略する。なお、放射素子300は、パッチアンテナでなくともよく、給電線路112に接続されて給電されるものであればよい。
【0013】
図1(a)に示すマイクロストリップアンテナ1は、誘電体基板111の表面に紙面の右方向(x方向)に3個、紙面の上方向(y方向)に3個が配列された9個の放射素子300を備える。給電線路112は、紙面の上方向(y方向)に3個の放射素子300を順に接続する。
図1(a)に示すマイクロストリップアンテナ1では、3個の給電線路112を備える。そして、それぞれの給電線路112の一端部(紙面の下方であって-y方向の端部)がコネクタ120に接続されている。ここで、コネクタ120は、外寸が小さい、例えばSMPMである。コネクタ120の外寸が小さければ、コネクタ120は、紙面の左右方向(±x方向)における放射素子300の配列のピッチで配列される。
【0014】
マイクロストリップアンテナ1のように、複数の放射素子を備えるアンテナは、送信側の複数の放射素子から同時に信号を送信し、その信号を受信側の複数の放射素子で受信して通信を高速化するMIMO(Multiple Input Multiple Output)方式の無線通信や、放射する電波の形状の整形(ビームフォーミングなど)などに使用される。
【0015】
図1(b)に示すマイクロストリップアンテナ2は、伝送装置200と、放射素子300とを備える。伝送装置200は、伝送基板210とコネクタ220とを備える。伝送基板210は、誘電体基板211と、誘電体基板211の表面に設けられた給電線路212と、誘電体基板211の裏面に設けられた接地導体213(符号のみを表記する)と、を備える。そして、放射素子300は、誘電体基板211の給電線路212に接続されるように設けられている。
【0016】
マイクロストリップアンテナ2は、誘電体基板211の表面に配列された9個の放射素子300を備える。そして、マイクロストリップアンテナ2は、紙面の上方向において3個の放射素子300を接続する3個の給電線路212を備える。そして、3個の給電線路212は、一端部(紙面の下方であって-y方向の端部)がコネクタ220に接続されている。マイクロストリップアンテナ1及びマイクロストリップアンテナ2は、同じミリ波帯の電波を送受信することから、9個の放射素子300の形状及び配列は、マイクロストリップアンテナ1と同様である。ここで、コネクタ220は、例えば、外寸が上記のSMPMに比べ大きいSMA(Sub Miniature Type A)である。コネクタ220の外寸が大きい場合、
図1(b)に示すように、コネクタ220は、紙面の左右方向(±x方向)における放射素子300の配列のピッチで配列されない。このため、コネクタ220は、紙面の横方向(x方向)において、放射素子300の配列のピッチより大きいピッチで配列される。よって、給電線路212は、ピッチの違いを吸収するため、折り曲げられて構成される。
【0017】
上述したことから、外寸が大きいコネクタ220を用いたマイクロストリップアンテナ2の誘電体基板211は、外寸が小さいコネクタ120を用いたマイクロストリップアンテナ1の誘電体基板111に比べ大きくなる。また、外寸が大きいコネクタ220を用いたマイクロストリップアンテナ2の給電線路212は、外寸が小さいコネクタ120を用いたマイクロストリップアンテナ1の給電線路112に比べ長くなって損失が大きくなる。したがって、ミリ波帯のような波長が短い電波を送受信するアンテナでは、外寸が小さいコネクタを用いることがよい。
【0018】
次に、コネクタ120、220について説明する。
SMAなどの外寸が大きいコネクタ220は、
図1(b)の下側に示す斜視図から分かるように、誘電体基板211に貫通孔を設け、誘電体基板211の接地導体213が設けられる裏面から挿入して実装される。つまり、コネクタ220の外導体が接地導体213に接触し、コネクタ220の内導体(心線)は、貫通孔を通って給電線路212に接続される。
【0019】
一方、SMPMなどの外寸が小さいコネクタ120は、
図1(a)の下側に示す斜視図から分かるように、誘電体基板111の表面、つまり給電線路112が設けられる表面に実装される。すなわち、コネクタ120の外導体と誘電体基板111に設けられた接地導体113とが、伝送基板110の異なる面に配置される。このため、コネクタ120の外導体と、伝送基板110の接地導体113とは、誘電体基板111に内側に導体が設けられた(例えば、金属メッキされた)スルーホールなどを介して接続されていた。しかし、このようなスルーホールを形成すると、マイクロストリップアンテナ1の製造費が高くなる。
【0020】
そこで、本実施の形態が適用される伝送装置100は、伝送基板110の接地導体113とコネクタ120の外導体123(後述する
図2(b)参照)とを接続しなくとも(非接触であっても)動作するようになっている。つまり、本実施の形態が適用される伝送装置100では、スルーホールを設けることを要しない。
【0021】
[第1の実施の形態]
図2は、第1の実施の形態が適用される伝送装置100を説明する図である。
図2(a)は、伝送基板110とコネクタ120とを近接させた状態の斜視図、
図2(b)は、コネクタ120の斜視図、
図2(c)は、伝送基板110にコネクタ120を実装した状態の斜視図である。
図2(a)、(b)、(c)において、図示のようにx方向、y方向、及びz方向を設定する。
【0022】
図2(a)に示すように、伝送基板110は、誘電体基板111と、給電線路112と、接地導体113と、容量結合導体114とを備える。給電線路112及容量結合導体114は、誘電体基板111の表面(+x方向の面)に設けられている。給電線路112及び容量結合導体114は、誘電体基板111の表面に設けられた導体(銅箔など)で構成されている。給電線路112と容量結合導体114とは、接続されていない。
【0023】
給電線路112の平面形状(+z方向から見た形状)は、前述したように帯状である。給電線路112は、誘電体基板111の比誘電率などで幅Wが決められ、信号の伝送に対する特性インピーダンスに設定される。特性インピーダンスは、例えば50Ωである。
【0024】
容量結合導体114は、平面形状がU字状の導体である。容量結合導体114は、外縁を囲む形状が四角形115(
図3(b)参照。ここでは、長方形)であるが、中央部に円形の開口α、上方(+y方向)に外縁から開口αに至る空隙βを有している。つまり、容量結合導体114は、外縁を囲む形状が四角形で、上方に開いたU字状である。そして、給電線路112の下方の端部(-y方向の端部)が容量結合導体114の空隙βに位置する。さらに、容量結合導体114は、右下部(-y方向且つ+x方向の端部)と、左下部(-y方向且つ-x方向の端部)とにおいて、四角形115から一部が除去されている。このように、容量結合導体114の外縁を囲む形状は、四角形や、後述する円、五角形などでに限定されるものでなく、これらの形状から一部が除去された形状、他の形状を付加した形状であってもよい。そして、容量結合導体114の外縁を囲む形状とは、間隙が設けられていないとして容量結合導体114の外側の縁に沿って囲んだ(繋いだ)形状であって、さらに除去された一部を含むように囲む形状である。容量結合導体114の平面形状をU字状にすることにより、給電線路112と容量結合導体114とが1層の導電体で構成される。
【0025】
接地導体113は、符号のみを表記するが、誘電体基板111の裏面の全面に設けられている。よって、給電線路112及び容量結合導体114と接地導体113とは、誘電体基板111を挟んで対向している。
【0026】
コネクタ120はSMPMであって、
図2(b)に示すように、絶縁体121と、内導体122と、外導体123とを備える。内導体122は、信号が通る導体であって、心線と表記されることがある。内導体122は、L字状に曲げられている。つまり、内導体122は、誘電体基板111に垂直である部分と、誘電体基板111に平行である部分とを備える。そして、内導体122は、誘電体基板111に平行である部分の先端部が、伝送基板110の給電線路112に接続される。
【0027】
外導体123は、伝送基板110に実装される実装部123aと、同軸ケーブルに接続される接続される接続部123bとを備える。実装部123aは、伝送基板110側の面(-z方向の面)である底面123a1が平坦になっている。そして、コネクタ120の実装部123aの底面123a1が、伝送基板110の容量結合導体114に接続される。接続部123bは、同軸ケーブル側のコネクタとプッシュオンロック機構で接続が容易になっていてもよい。
【0028】
内導体122と外導体123との間に、絶縁体121が設けられている。絶縁体121は、内導体122と外導体123との間において直流に対する絶縁を行う。なお、内導体122及び外導体123は、銅又は銅合金で構成されている。絶縁体121は、高周波の信号に対する損失が小さい、ポリテトラフルオロエチレンなどの樹脂で構成されている。なお、
図2(b)に示したコネクタ120(絶縁体121、内導体122、及び外導体123)の形状は、一例であって、他の形状であってもよい。
【0029】
図2(c)に示すように、コネクタ120は、誘電体基板111に実装される。内導体122と給電線路112との接続、及び外導体123と容量結合導体114との接続は、はんだなどで行えばよい。コネクタ120の内導体122をPort1とし、給電線路112の上方の端部(+y方向の端部)をPort2とする。
【0030】
図3は、第1の実施の形態が適用される伝送装置100を説明する図である。
図3(a)は、平面図、
図3(b)は、側面図、
図3(c)は、シミュレーションに用いた実施例1のパラメータを示す。
図3(a)において、紙面の右方向をx方向、紙面の上方向をy方向、紙面の表面方向をz方向とする。
図3(b)では、紙面の右方向がz方向、紙面の上方向がy方向、紙面の裏面方向がz方向である。なお、コネクタ120は、オス型である。
【0031】
図3(a)の平面図は、伝送基板110上に実装されたコネクタ120側から見た図である。コネクタ120は、伝送基板110上の給電線路112及び容量結合導体114に重なって設けられている。
図3(a)では、給電線路112及び容量結合導体114を太線、コネクタ120を細線で示している。そして、コネクタ120で隠れた容量結合導体114を破線で示している。ここでは、コネクタ120の内導体122において、誘電体基板111に垂直な部分の中心、つまり同軸ケーブルが接続される側の内導体122の中心をコネクタ120の中心Oとする。そして、コネクタ120の中心Oから、容量結合導体114の+x方向の端部までをRx+、容量結合導体114の-x方向の端部までをRx-、容量結合導体114の+y方向の端部までをRy+、容量結合導体114の-y方向の端部までをRy-とする。
【0032】
図3(b)の側面図は、
図3(a)に示した伝送装置100を-x方向側から見た図である。伝送基板110は、前述したように、誘電体基板111と、誘電体基板111の表面(+z方向側の面)に設けられた給電線路112、容量結合導体114と、誘電体基板111の裏面(-z方向側の面)に設けられた接地導体113とを備える。そして、容量結合導体114にコネクタ120の外導体123における実装部123aが接続され、給電線路112にコネクタ120の内導体122が接続されている。なお、
図3(b)では、コネクタ120の外導体123で隠れた内導体122の部分を破線で示している。
【0033】
図3(b)から分かるように、コネクタ120の外導体123と、伝送基板110の接地導体113とは、誘電体基板111を介して対向している。そして、コネクタ120の外導体123と、伝送基板110の接地導体113とは、直流的に接続されていない。つまり、コネクタ120の外導体123と、伝送基板110の接地導体113とを、容量結合導体114を介して容量結合させている。容量結合導体114と接地導体113とを対向させることにより、結合容量を大きくできる。
【0034】
給電線路112は、コネクタ120の内導体122と接続が容易になるように先端部(コネクタ120の内導体122と接続される部分)の形状が定められている。容量結合導体114の面積は、コネクタ120の外導体123における実装部123aの底面123a1の形状ばかりでなく、信号の波長、容量結合量などに応じて設定される。
【0035】
図3(c)は、28GHz帯で整合させた場合における容量結合導体114のパラメータの寸法を示している。なお、誘電体基板111の比誘電率εrを2.19、誘電体基板111の厚さtを0.127mmとした。28GHzは、自由空間での周波数である。誘電体基板111内の実効波長λgは、自由空間での波長λと誘電体基板111の比誘電率εrとから、λ/sqrt(εr)で求められる。28GHzの場合、実効波長λgは、7.24mmとなる。ここでは、給電線路112は、特性インピーダンスを50Ωとし、幅Wを0.37mmとした。そして、
図3(c)に示すように、容量結合導体114のパラメータ(Rx+、Rx-、Ry+、Ry-)の寸法を設定すると、容量結合導体114のパラメータ(Rx+、Rx-、Ry+、Ry-)の寸法と実効波長λgとの比の値(寸法/λg)は、1/4λg(0.25λg)を超え、1/2λg(0.5λg)未満となるように設定されている。上記の伝送装置100を実施例1とする。なお、
図3(c)では、
図3(a)に示したように、伝送装置100が左右方向(±x方向)で対称であることから、Rx+とRx-とを同じ値にしたが、同じでなくてもよい。
【0036】
図4は、シミュレーションによって求めた実施例1と比較例のSパラメータである。
図4(a)は、S11、
図4(b)は、S21である。S11は、
図2(c)に示したPort1における反射特性、S21は、
図2(c)に示したPort1からPort2への透過特性である。
図4(a)において、横軸は周波数(Frequency [GHz])、縦軸はS11[dB]である。
図4(b)において、横軸は周波数(Frequency [GHz])、縦軸はS21[dB]である。なお、
図4(a)、(b)には、比較例として、コネクタ120の外導体123と誘電体基板111の接地導体113とを直流的に接続した伝送基板を用いた場合におけるS11、S12を破線で示す。
【0037】
図4(a)に示すように、実施例1のS11は、27GHz~30GHzの周波数範囲において-20dB以下である。しかも、実施例1のS11は、比較例のS11より小さい。そして、
図4(b)に示すS21から分かるように、実施例1は、27GHz~30GHzの周波数範囲において、比較例と同様に損失が少ない。実施例1の伝送装置100では、コネクタ120の外導体123は、伝送基板110の接地導体113と容量結合導体114を介して容量結合し、直流的に接続されていない。しかし、実施例1の伝送装置100の伝送特性(S11及びS21)は、コネクタ120の外導体123を伝送基板110の接地導体113と直流的に接続した伝送装置と差が小さい(同等である)。すなわち、実施例1の伝送装置100では、容量結合導体114を設けてコネクタ120の外導体123と伝送基板110の接地導体113とを容量結合させることで、誘電体基板111にスルーホールを設けてコネクタ120の外導体123と伝送基板110の接地導体113とを直流的に接続することを要しない。よって、伝送装置100の製造費が抑制される。
【0038】
以上において、コネクタ120の中心Oと容量結合導体114の外縁までの寸法(Rx+、Rx-、Ry+、Ry-)は、実効波長λgの1/4超、且つ1/2未満であると説明した。これは、コネクタ120の中心Oと容量結合導体114の外縁までの寸法(Rx+、Rx-、Ry+、Ry-)が実効波長λgの1/4以下であると、コネクタ120の外導体123と伝送基板110の接地導体113との容量結合量が小さくて、コネクタ120の外導体123が接地電位に保持されにくくなる。一方、コネクタ120の中心Oと容量結合導体114の外縁までの寸法(Rx+、Rx-、Ry+、Ry-)が実効波長λgの1/2となると、励振が生じて電波を放射する(アンテナになる)。よって、コネクタ120の中心Oと容量結合導体114の外縁までの寸法(Rx+、Rx-、Ry+、Ry-)は、実効波長λgの1/4超、且つ1/2未満に設定されるとよい。コネクタ120の中心Oと容量結合導体114の外縁までの寸法が2.3mmの場合(Rx+、Rx-の場合)、1/4λgに対応する対応する周波数は約16GHz、1/2λgに対応する周波数は約32GHzである。コネクタ120の中心Oと容量結合導体114の外縁までの寸法が2.6mmの場合(Ry+の場合)、1/4λgに対応する対応する周波数は約20GHz、1/2λgに対応する周波数は約39GHzである。コネクタ120の中心Oと容量結合導体114の外縁までの寸法が3.0mmの場合(Ry-の場合)、1/4λgに対応する対応する周波数は約17GHz、1/2λgに対応する周波数は約33GHzである。よって、
図4(a)、(b)の実施例1に示すように、27GHzから30GHzの周波数範囲において、伝送特性(S11、S21)は、コネクタ120の外導体123を伝送基板110の接地導体113と直流的に接続した伝送装置と差が小さい(同等である)ことになる。このようにすれば、実施例1のように、実効波長λgに基づいて容量結合導体114の形状が設定できる。
なお、後述するが、nを2以上の整数とした場合、n×1/2λgとなる周波数を除けば、コネクタ120の外導体123を伝送基板110の接地導体113と直流的に接続した伝送装置と差が小さく(同等に)なる。
【0039】
次に、誘電体基板111の厚さtについて説明する。
図5は、誘電体基板111の厚さtを異ならせた実施例1、2のパラメータを示す。実施例1は、誘電体基板111の厚さtが0.127mmの場合、実施例2は、誘電体基板111の厚さtが0.254mmの場合である。実施例1は、
図3、
図4に示した実施例1である。実施例2は、28GHz帯で整合するように容量結合導体114のパラメータ(Rx+、Rx-、Ry+、Ry-)の寸法を調整した。実施例2では、実施例1に比べて誘電体基板111を大きくしたことから、特性インピーダンスを50Ωに設定するため給電線路112の幅Wを0.6mmとしている。
【0040】
図6は、シミュレーションによって求めた実施例1、実施例2のSパラメータである。
図6(a)は、S11、
図6(b)は、S21である。
図6(a)、(b)における横軸及び縦軸は、
図4(a)、(b)と同様である。なお、
図6(a)、(b)に示す実施例1は、
図4(a)、(b)に示したものと同じである。
【0041】
図6(a)に示すように、誘電体基板111の厚さtを0.254mmと2倍にした実施例2では、誘電体基板111の厚さtが0.127mmの実施例1に比べ、S11が小さくなる。一方、
図6(b)に示すように、実施例2では、実施例1に比べ、通過特性が若干低下していることから、放射損失が増加していることが分かる。しかし、実施例1と実施例2とで、伝送特性(S11、S21)の差が小さく、同等の特性が得られる。すなわち、誘電体基板111の厚さtを変更しても、容量結合導体114の形状を調整することにより、同等の特性が得られる。
【0042】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態が適用される伝送装置100では、容量結合導体114は、平面形状がU字状であって、外縁を囲む形状が四角形115であった。第2の実施の形態が適用される伝送装置100′では、容量結合導体114′の平面形状はU字状であるが、外縁を囲む形状を円形115′とした。
【0043】
図7は、第2の実施の形態が適用される伝送装置100′を説明する図である。
図7(a)は、平面図、
図7(b)は、シミュレーションに用いた実施例3のパラメータを示す。
図7(a)に示す、x方向、y方向、及びz方向は、
図4(a)と同様である。
【0044】
図7(a)に示すように、容量結合導体114′は、外縁を囲む形状が半径Rの円形115′である。容量結合導体114′は、中央部に円形の開口αを備え、外縁(円形115′)から開口αに至る空隙βを備える。他の構成は、
図4(a)、(b)で説明した伝送装置100と同様である。よって、同じ符号を付して説明を省略する。
【0045】
図7(b)に示す容量結合導体114′のパラメータは、コネクタ120の中心から容量結合導体114′の外縁までの寸法である、円形115′の半径Rである。なお、誘電体基板111の比誘電率εrは2.19である。よって、実効波長λgは、7.24mmである。そして、誘電体基板111の厚さtは実施例1と同様に0.127mmとした。よって、給電線路112の幅Wは、実施例1と同様に0.37mmである。半径Rは、28.5GHzにおいて特性が良好と思われる2.9mmとした。この場合であっても、コネクタ120の中心Oから容量結合導体114′の縁辺までの寸法(半径R)と実効波長λgとの比の値(R/λg)は、0.4であり、1/4λgを超え、且つ1/2λg未満である。
【0046】
図8は、シミュレーションによって求めた実施例3のSパラメータである。
図8(a)は、S11、
図8(b)は、S21である。
図8(a)、(b)における横軸及び縦軸は、
図4(a)、(b)と同様である。なお、誘電体基板111は、比誘電率εrが2.19である。
【0047】
図8(a)に示すように、実施例3のS11は、29GHz近傍において、
図4(a)に示した実施例1と同様に小さいが、29GHzより低い周波数、29GHzより高い周波数になると大きい。これは、半径Rが28.5GHzにおいて特性が良好と思われる値に設定されていること加え、同軸ケーブルの伝送モードとマイクロストリップ線路を構成する伝送基板110の伝送モードとの間で生じる不整合に起因すると考えられる。このことから、容量結合導体114の外縁を囲む形状は、実施例1の四角形115が好ましい。
【0048】
また、
図8(b)に示すように、実施例3のS21は、34.7GHz近傍において、大きく低下している。これは、コネクタ120の中心から容量結合導体114′の外縁までの寸法が2.9mm(半径R)において、1/2λgに対応する周波数が約35GHzであることによる。一方、コネクタ120の中心から容量結合導体114′の外縁までの寸法が2.9mm(半径R)において、1/4λgに対応する周波数は、約17GHzである。よって、17GHz超、且つ35GHz未満の周波数帯域において、伝送装置100′は動作する。なお、前述したように、35GHzの近傍を除けば、さらに高い周波数帯域において動作する。
【0049】
[第3の実施の形態]
第1の実施の形態が適用される伝送装置100では、容量結合導体114は、平面形状がU字状であって、外縁を囲む形状が四角形115であった。第3の実施の形態が適用される伝送装置100″では、容量結合導体114″の平面形状はU字状であるが、外縁を囲む形状を五角形(ここでは、正五角形)115″とした。
【0050】
図9は、第3の実施の形態が適用される伝送装置100″を説明する図である。
図9(a)は、平面図、
図9(b)は、シミュレーションに用いた実施例4のパラメータを示す。
図9(a)に示す、x方向、y方向、及びz方向は、
図4(a)と同様である。
【0051】
図9(a)に示すように、容量結合導体114″は、外縁を囲む形状が五角形115″である。そして、コネクタ120の中心から五角形115″の頂点までの寸法がRmaxである。容量結合導体114″は、中央部に円形の開口αを備え、外縁(五角形115″)から開口αに至る空隙βを備える。なお、空隙βは、五角形115″の一つの辺に設けられている。他の構成は、
図4(a)、(b)で説明した伝送装置100と同様である。よって、同じ符号を付して説明を省略する。
【0052】
図9(b)に示す容量結合導体114″のパラメータは、コネクタ120の中心から容量結合導体114′の外縁までの寸法である、五角形115″の中心から頂点までの寸法がRmaxである。なお、誘電体基板111の比誘電率εrは2.19である。よって、実効波長λgは、7.24mmである。そして、誘電体基板111の厚さtは、実施例1と同様に0.127mmとした。よって、給電線路112の幅Wは、実施例1と同様に0.37mmである。Rmaxは、28.5GHzにおいて特性が良好と思われる3.2mmとした。この場合であっても、コネクタ120の中心O(五角形115″の中心)から容量結合導体114″の縁辺までの最大寸法(Rmax)と実効波長λgとの比の値(Rmax/λg)は、0.44であり、1/4λgを超え、且つ1/2λg未満である。
【0053】
図10は、シミュレーションによって求めた実施例4のSパラメータである。
図10(a)は、S11、
図10(b)は、S21である。
図10(a)、(b)における横軸及び縦軸は、
図4(a)、(b)と同様である。なお、誘電体基板111は、比誘電率εrが2.19である。
【0054】
図10(a)に示すように、実施例4のS11は、29GHz近傍において、
図4(a)に示した実施例1と同様に小さいが、29GHzより低い周波数、29GHzより高い周波数になると大きい。なお、34.4GHz近傍において、S11が再び小さくなっている。
【0055】
また、
図10(b)に示すように、実施例4では、S21が33.5GHz近傍において大きく低下している。五角形115″の中心から頂点までのRmax(3.2mm)において、1/2λgに対応する周波数は、約32GHzである。しかし、32GHzにおいて、S21の低下が少ない。一方、五角形115″の中心から辺までの寸法がRmin(2.6mm)において、1/2λgに対応する周波数は、約39GHzである。S21が低下する周波数である33.5GHzは、これらの周波数の間にある。
【0056】
実施例3で示した容量結合導体114′の外縁を囲む形状が円形115′の場合には、コネクタ120の中心から容量結合導体114′の外縁までの寸法が変化しない。よって、1/2λgに対応する周波数は、算出された周波数と一致した。しかし、容量結合導体114″の外縁を囲む形状が五角形115″である場合には、コネクタ120の中心から容量結合導体114″の外縁までの寸法が変化する。Rmaxは、五角形115″の中心から外縁までの最大の寸法であり、Rminは、五角形115″の中心から外縁までの最小の寸法である。寸法が大きいほど、1/2λgに対応する周波数が低くなり、寸法が小さいほど、1/2λgに対応する周波数が高くなる。よって、容量結合導体114″の外縁を囲む形状が五角形115″である場合には、S21が低下する周波数は、コネクタ120の中心から容量結合導体114″の外縁までの最大寸法(Rmax)と最小寸法(Rmin)との間で決まることになる。よって、周波数帯域において、S21の低下を抑制するためには、コネクタ120の中心から容量結合導体114″の外縁までの最大寸法(Rmax)が1/2λgに対応する周波数を上限として使用するのがよい。なお、コネクタ120の中心から容量結合導体114″の外縁までの最小寸法(Rmin)が1/4λgに対応する周波数を下限として使用するのがよい。このようにすると、下限の周波数と上限の周波数との間において、S21の低下が抑制される。そして、容量結合導体の形状は、求める周波数帯域に基づいて設定できる。なお、コネクタ120の中心から容量結合導体114″の外縁までの最大寸法とコネクタ120の中心から容量結合導体114″の外縁までの最小寸法とが同じ場合には、最大寸法と最小寸法とが同じであるとすればよい。
【0057】
なお、
図10(b)に示すように、S21は、33.5GHzを超えると再び大きくなり、
図10(a)に示すように、S11も低下している。よって、nを2以上の整数とした場合、n×1/4λgとなる周波数を除けば、より広い周波数帯域において伝送装置として動作する。よって、周波数帯域に合わせて容量結合導体114″の形状を設定すればよい。
【0058】
第1の実施の形態、第2の実施の形態、及び第3の実施の形態において、容量結合導体114、114′、114″について説明した。容量結合導体114、114′、114″は、接地導体113との間で容量(キャパシタ)を構成する。このため、容量結合導体114、114′、114″の面積は、コネクタ120の外導体123と伝送基板110の接地導体113とで結合容量に依存する。一方、コネクタ120の中心から容量結合導体114、114′、114″の縁辺までの寸法は、信号の周波数に影響する。よって、容量結合導体114、114′、114″の形状を、コネクタ120の外導体123と伝送基板110の接地導体113との間の結合容量と、伝送する信号の周波数によって設定すればよい。このようすることで、誘電体基板111にスルーホールなどを設けることを要しないため、伝送装置100、100′、100″の製造費が抑制される。
【0059】
第1の実施の形態、第2の実施の形態、及び第3の実施の形態において説明した容量結合導体114、114′、114″の外縁を囲む形状は、四角形、円形、五角形(正五角形)であった。容量結合導体の外縁を囲む形状は、多角形(四角形、五角形を含む)、円形、楕円形などでよい。また、第1の実施の形態で示した容量結合導体114のように、一部が除去されていてもよく、他の形状が付加されていてもよい。なお、
図1(a)に示したマイクロストリップアンテナ1において、放射素子300の左右方向(±x方向)のピッチは、放射素子300の送受信する電波の波長によって決まる。電波の波長が短くなると、放射素子300の左右方向(±x方向)のピッチも短くなる。このため、容量結合導体の縁辺を囲む形状は、四角形や楕円形など、左右方向(±x方向)に狭い形状であることが好ましい。このように、容量結合導体114の形状は、用途に合わせられる。
【0060】
以上、第1の実施の形態から第3の実施の形態を説明したが、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な変形を行っても構わない。
【符号の説明】
【0061】
1、2…マイクロストリップアンテナ、100、100′、100″、200…伝送装置、110、210…伝送基板、111、211…誘電体基板、112、212…給電線路、113、213…接地導体、114、114′、114″…容量結合導体、120、220…コネクタ、121…絶縁体、122…内導体、123…外導体、123a…実装部、123a1…底面、123b…接続部、300…放射素子、α…開口、β…空隙、εr…比誘電率、λ…自由空間波長、λg…実効波長
【要約】
板状の誘電体基板の一方の面に設けられた給電線路、及び容量結合導体と、誘電体基板の他方の面に設けられた接地導体とを備え、信号を伝送する伝送基板と、内導体と内導体の外側に設けられた外導体とを備え、信号を入出力するコネクタと、を備え、コネクタは、伝送基板の給電線路及び容量結合導体が設けられた一方の面に設けられ、コネクタの内導体が給電線路に接続され、外導体が容量結合導体と接続され、伝送基板の接地導体とコネクタの外導体とが接続されていない伝送装置。