(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】乗物用アシストグリップ
(51)【国際特許分類】
B60N 3/02 20060101AFI20231222BHJP
【FI】
B60N3/02 A
(21)【出願番号】P 2017110047
(22)【出願日】2017-06-02
【審査請求日】2020-02-04
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上角 好孝
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 新介
(72)【発明者】
【氏名】小原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】永田 昌之
【合議体】
【審判長】筑波 茂樹
【審判官】中村 則夫
【審判官】八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5285551(US,A)
【文献】特開2008-13155(JP,A)
【文献】特開平9-66764(JP,A)
【文献】特開2004-276889(JP,A)
【文献】特開平1-197138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物室内
のピラーガーニッシュの乗物前方であってウインドウの上方に配されるヘッドライニングのうち
、乗物前後方向における中央部分よりも前記ピラーガーニッシュ
側に配される乗物用アシストグリップであって、
前記ピラーガーニッシュを構成する樹脂に比して相対的に軟質の樹脂から構成されるグリップ基材と、
合成繊維からなる帯状のウェビングと、を少なくとも備え、
前記グリップ基材は、有端環状に構成されてなるとともに、内周側が外周側よりも先細る形をなした断面視卵型であり、
前記ウェビングは、前記グリップ基材の前記外周側に沿って配され、
当該乗物用アシストグリップは、乗物の外郭をなすボデーに対し取付部材を介して乗物前後方向に回動可能に取り付けられるものとされ、
前記グリップ基材は、その端部同士が前記取付部材において1点で固定される吊下式とされ、
前記取付部材は、
前記グリップ基材における前記端部同士を乗物前後方向に重畳するように固定するグリップ基材固定部と、
前記グリップ基材固定部を前記ボデーに対して乗物幅方向に取り付ける取付部とを備え、
当該乗物用アシストグリップは、前記取付部を支点として乗物前後方向に回動可能に構成され、
前記取付部材は、前記グリップ基材の前記端部同士を固定するためのブラケットを備え、
前記ブラケットは、
乗物前後方向に延びた平板部と、
前記平板部の乗物前端から乗物室内側に延びた乗物前方壁と、
前記平板部の乗物後端から乗物室内側に延びた乗物後方壁と、を備え、
前記グリップ基材の前記端部同士は、
一方の端部が、前記乗物前方壁の乗物後方側に固定され、
他方の端部が、前記乗物後方壁の乗物前方側に固定されていることで、
当該端部同士が乗物前後方向に重畳するように固定されていることを特徴とする乗物用アシストグリップ。
【請求項2】
前記取付部材は、前記グリップ基材固定部を覆うカバー部材を備え、
前記カバー部材は、蛇腹状とされ、
前記取付部材は、
前記カバー部材を有する第1カバーと、
前記ブラケットの乗物室外側に配された第2カバーと、を備え、
前記第2カバーは、平板状とされていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用アシストグリップ。
【請求項3】
前記グリップ基材の前記内周側と前記外周側との間の部分に沿って配されたクッション材を備えることを特徴とする請求項1に記載の乗物用アシストグリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用アシストグリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員室に臨むピラーガーニッシュやヘッドライニングなどの乗物内装部材に配される乗物用アシストグリップとして、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載のアシストグリップは、ポリエステルで形成されたベルトを中途部で折り返し車幅方向に重畳するループ状とされている。また、折り返し部分をスエードトリコット材で被覆されたウレタンフォームで包囲して握り部を形成する構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のようなアシストグリップの場合、ベルトがポリエステルで形成されているため、折り曲げ自在に構成されている反面、柔らかいが故に垂れ下がりやすい傾向にあり、乗員の頭部付近に位置して視界を遮る要因ともなる。また、握り部は、帯状部材が車幅方向に重畳するようなループ状に形成されているため、当該ループ状部分を把持するのか、又はループ内に手指を挿入するのか、その使用方法が分かりにくい等の課題があった。また、経年劣化や繰り返しの使用により、ベルトが切れるとアシストグリップ自体が落下してしまう、という懸念があった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、快適な乗り心地に寄与する乗物用アシストグリップを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の乗物用アシストグリップは、乗物室内に配される乗物用アシストグリップであって、軟質樹脂製のグリップ基材と、合成繊維からなる帯状のウェビングと、を少なくとも備え、前記ウェビングは、前記グリップ基材に沿って配されていることを特徴とする。
【0007】
このような乗物用アシストグリップによると、グリップ基材が軟質樹脂により構成されているため、乗員の力が加わった際に変形することで力を吸収し、例えばグリップ基材が硬質樹脂により構成されている場合に比べて、特にアシストグリップ取付箇所への入力が軽減され、強度や耐久性を備えたものとなる。また、例えば硬質樹脂のグリップ基材により構成されるアシストグリップのように内部に補強板材を配することが難しいところ、本願発明では、合成繊維からなる帯状のウェビングを軟質樹脂製のグリップ基材に沿って配することで、アシストグリップ自体の耐久性を向上させている。また、このような構成としたことで、仮にグリップ基材が経年劣化や消耗により破断した場合でも、当該グリップ基材に沿ってウェビングが配されているため、アシストグリップ自体の落下を防止することができ、快適な乗り心地を提供することが可能となる。
【0008】
上記乗物用アシストグリップにおいて、当該乗物用アシストグリップは、乗物の外郭をなすボデーに対し取付部材を介して乗物前後方向に回動可能に取り付けられるものとされ、前記グリップ基材は、有端環状に構成されてなるとともに、その端部同士が前記取付部材において1点で固定される吊下式とされているものとすることができる。
【0009】
このような乗物用アシストグリップによると、グリップ基材が環状をなすものの、軟質樹脂により構成されているため、例えば繊維やポリエステルで構成されたアシストグリップに比べてそのループ形状(環状)を維持しやすく、乗員にとって使用態様が分かりやすいものとなる。また、例えば略U字状の2点固定によるアシストグリップの場合、グリップ基材にかかる力が2点に分散されるが、本願発明のような1点固定の場合は取付箇所に荷重が集中してしまうところ、グリップ基材を軟質樹脂で構成しているため、取付箇所への荷重が緩和される。
【0010】
また、グリップ基材を軟質樹脂としたことで、アシストグリップの乗物幅方向における移動も、当該グリップ基材のたわみによって可能となる。例えばグリップ基材が硬質樹脂により構成されている場合、乗物前後方向に回動可能に取り付けられているアシストグリップに、幅方向における動きも持たせようとすると、通常は前後方向とは別の回転機構を取付箇所に持たせる必要があるが、本願発明によればそのような複雑な機構を排除することができ好適である。また、本願発明に係る乗物用アシストグリップは吊下式かつ回動可能であるため、乗員が好みの姿勢・位置でアシストグリップを使用することが可能となるだけでなく、様々な体格の乗員に幅広く利用可能となり、快適な乗り心地を提供することができる。
【0011】
上記乗物用アシストグリップにおいて、前記取付部材は、前記グリップ基材における前記端部同士を乗物前後方向に重畳するように固定するグリップ基材固定部と、前記グリップ基材固定部を前記ボデーに対して乗物幅方向に取り付ける取付部とを備え、当該乗物用アシストグリップは、前記取付部を支点として乗物前後方向に回動可能に構成されているものとすることができる。
【0012】
通常、有端環状のグリップをボデーに対して取り付ける場合、効率を考えて端部同士をボデーに対して共締めにより取り付けることが多い。この場合、グリップの取付方向とグリップの端部同士の重畳方向が同じものとなる。つまり、アシストグリップを乗物室内から乗物室外に向けて締結するため、グリップの端部同士も乗物幅方向に重畳することとなり、ループ形状が乗物室内の乗員に視認されにくいものとなる。ところが、本願発明によれば、アシストグリップの取付部材が、グリップ基材の端部同士を乗物前後方向に重畳するように固定するグリップ基材固定部と、当該グリップ基材固定部をボデーに対して取り付ける取付部と、を備えるため、取付箇所において固定方向と取付方向とをそれぞれ異なる向きとすることができる。つまり、ボデーへの取付方向(乗物幅方向)とは異なる向き(乗物前後方向)に端部同士を重畳させ、乗員がそのループ形状を視認しやすいアシストグリップを提供することができる。また、そのような向きのループ形状でありながら、取付部材における取付部を支点として乗物前後方向に回動可能となり、使用性に優れる。
【0013】
上記乗物用アシストグリップにおいて、前記取付部材は、前記グリップ基材固定部を覆うカバー部材を備え、前記カバー部材は、蛇腹状とされているものとすることができる。このような乗物用アシストグリップによると、カバー部材がグリップ基材固定部を遮蔽しつつ、グリップ基材の乗物幅方向への動きを許容する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、快適な乗り心地に寄与する乗物用アシストグリップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る乗物用アシストグリップを備えた車室内図
【
図2】乗物用アシストグリップの使用時における回動態様を示す図
【
図3】乗物用アシストグリップにおけるグリップ部の内部構造を示す分解図
【
図4】乗物用アシストグリップの取付態様を示す分解斜視図
【
図5】乗物用アシストグリップの断面を模式的に示す図
【
図7】グリップ部の断面図(
図5におけるA-A線切断箇所に相当)
【
図8】他の実施形態にかかる乗物用アシストグリップを備えた車室内図
【
図9】他の実施形態にかかる乗物用アシストグリップの取付箇所断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態を
図1ないし
図7によって説明する。本実施形態では本発明に係る乗物用アシストグリップを自動車の後部座席用アシストグリップに適用した例を示す。なお、
図1及び
図2において、紙面右側を車両前方とし、紙面左側を車両後方として説明する。また、
図4において、INとは車室内側方向を、OUTとは車室外側方向(ボデー側方向)を、Fとは車両前方を、Rとは車両後方を、それぞれ意味するものとする。
図1に示すように、車両10の車室内には乗物用アシストグリップ(以下、単に「アシストグリップ」とする)100が配されている。詳しくは、車両ルーフに配されるヘッドライニング11のうち、後部座席ドア12の上方かつピラーガーニッシュ14の近傍にアシストグリップ100が設けられている。
図2に示すように、アシストグリップ100は乗員Pの手が届く位置に設けられており、乗員Pが車両に乗降する際や、車両走行中に車両が揺れたりする際に当該アシストグリップ100を把持可能とされている。
【0017】
アシストグリップ100は、車両の外郭をなすボデー1に対して取り付けるための取付部材20と、乗員が把持するグリップ部30とを備えて構成されている。アシストグリップ100は、
図2に示すように、取付部材20を介して車両前後方向に回動可能に取り付けられている。グリップ部30は、
図3に示すように、軟質樹脂製のグリップ基材40と、ナイロンに代表される合成繊維を織ってなる帯状のウェビング50と、表皮60とを備えて構成されている。ウェビング50は、グリップ基材40の外周に沿って配され、グリップ基材40と表皮60とで挟み込まれるように配されている(
図5,6,7参照)。ここで、グリップ基材40を構成する樹脂は、ピラーガーニッシュ14を構成する樹脂に比して相対的に軟質のものとされ、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル、ポリエステルエラストマー、低密度ポリエチレン等で構成されている。
【0018】
グリップ基材40は、有端環状に構成されてなるとともに、その端部41,42同士が取付部材20において1点で固定される吊下式とされている。ウェビング50は、このグリップ基材40の環状に沿って配されている(
図5参照)。表皮60は、第1表皮61と第2表皮62とからなり、グリップ基材40とウェビング50とを包み込むように配され、手縫い縫製によって第1表皮61と第2表皮62とを縫い合わせており、グリップ部30の質感や握り心地を配慮したものとされている。ウェビング50は、グリップ部30の内部に挟み込まれるように配されている、と言うこともできる(
図5~7参照)。なお、
図3に示すように、第1表皮61の内側には軟質発泡ゴムに代表されるクッション材70が配されており、グリップ部30の握り心地向上に寄与している。
【0019】
グリップ基材40の一方の端部41及び他方の端部42には、固定ビス21,21,22,22を挿通するための挿通孔41H,41H及び42H,42Hがそれぞれ2つずつ設けられており、ウェビング50の一方の端部51及び他方の端部52にも、固定ビス21,21,22,22を挿通するための挿通孔51H,51H及び52H,52Hがそれぞれ2つずつ設けられている。これにより、各固定ビス21,22によってグリップ基材40とウェビング50とを、後述するブラケット80に対し共締めすることが可能とされている。なお、表皮60は、グリップ基材40とウェビング50のうち端部41,42,51,52を除く箇所を覆う形状とされている。
図3,4に示すように、グリップ基材40とウェビング50とクッション材70と表皮60とで予めグリップ部30を組み付けておき、当該グリップ部30を取付部材20をもってボデー1へ取り付けている。
【0020】
続いて、取付部材20について説明する。取付部材20は、グリップ基材40における端部41,42同士を車両前後方向に重畳するように固定するグリップ基材固定部240と、このグリップ基材固定部240をボデー1に対して車幅方向に取り付けるボデー取付部(本願発明の「取付部」に相当)210とを備えている(
図4参照)。グリップ基材固定部240においては、グリップ基材40における端部41,42同士及びウェビング50における端部51,52同士が、ブラケット80に共締めされている。具体的には、ブラケット80は取付部材20の一部を構成しており、ボデー1と略平行に配される平板部83の車両前後端にフランジ状の車両前後壁81,82を備えている。車両前後壁81,82には各固定ビス21,22を挿通するための挿通孔81H,81H及び82H,82Hがそれぞれ2つずつ設けられている。
【0021】
ブラケット80における車両前方壁81に、予め組み付けられたグリップ部30の一方の端部31(ウェビング50の一方の端部51、及びグリップ基材40の一方の端部41により構成されている)を配し、これらの各挿通孔81H,51H,41Hに対して各ビス21をそれぞれ挿通させ、ナット21N,21Nをそれぞれ用いて、グリップ基材40の一方の端部41ひいてはグリップ部30の一方の端部31を、相対的に車両前方側で固定している。他方、ブラケット80における車両後方壁82にも同様に、予め組み付けられたグリップ部30の他方の端部32(ウェビング50の他方の端部52、及びグリップ基材40の他方の端部42により構成されている)を配し、これらの各挿通孔82H,52H,42Hに対して各ビス22をそれぞれ挿通させ、ナット22N,22Nをそれぞれ用いて、グリップ基材40の他方の端部42ひいてはグリップ部30の他方の端部32を、相対的に車両後方側で固定している。これにより、グリップ基材40における端部41,42同士(ひいてはグリップ部30における端部31,32同士)が車両前後方向に重畳するように固定されることとなる。なお、グリップ基材40における一方の端部と41他方の端部42は互いに離間してそれぞれ固定されるものの、ブラケット80という一部材において固定されるため、「1点で固定される」と言える。
【0022】
ボデー取付部210は、
図4に示すように、主にブッシュ27、ブラケット80、スプリング90、ベゼル23により構成されている。具体的には、スプリング90をベゼル23における回動支持部24に外嵌させるように配し、更にブラケット80の取付孔84をベゼル23の回動支持部24に回動可能に外嵌させるように組み付ける。このとき、ブッシュ27をブラケット80の取付孔84内に圧入するように行われる。そして、これらブッシュ27、ブラケット80、スプリング90、ベゼル23の回動支持部24内にボルト211を挿通させ、ボデーパネル1に対して取り付けられている。これにより、ブラケット80及び当該ブラケット80に固定されたグリップ部30が車両前後方向に回動可能となる。つまり、アシストグリップ100は、ボデー取付部210を支点として車両前後方向に回動可能に構成されている、と言える。なお、ベゼル23が備えるストッパ25にはストッパピン26が挿入される構造とされ、ベゼル23とボデー1との間には、ワッシャ28が介在している。
【0023】
また、取付部材20は、グリップ基材固定部240及びボデー取付部210を車室内側から覆う樹脂製の第1カバー190を備えている。第1カバー190のうち、下方を構成する下カバー部195(本願発明における「カバー部材」に相当)は蛇腹状とされており、その蛇腹形状が車両前後方向に延びる構成とされている。これにより、下カバー部195が車室内側に湾曲可能とされ、軟質樹脂により構成されるグリップ基材40ひいてはグリップ部30の車幅方向(特に車室内側方向)への動きを許容する。
【0024】
また、ブラケット80の車室外側には樹脂製の第2カバー290がビス29を用いて配されている。具体的には、ビス29をブラケット80のカバー取付孔89に車室内側から挿通させ、第2カバー290におけるカバー取付孔299に挿入させることで、第2カバー290がブラケット80の車室外側に配され、グリップ基材固定部240を車室外側から遮蔽する構成とされている。この第2カバー290は、例えば後部座席ドア12のウィンドウ13が開状態の際に、アシストグリップ100(グリップ部30)が必要以上に車室外側へとたわんでしまう事態を抑制する(
図2参照)。
【0025】
<作用・効果>
以上、説明したようなアシストグリップ100によれば、グリップ基材40が軟質樹脂により構成されているため、乗員Pの力が加わった際に変形することで力を吸収し、例えばグリップ基材40が硬質樹脂により構成されている場合に比べて、特にアシストグリップ取付箇所20への入力が軽減され、強度や耐久性を備えたものとなる。また、例えば硬質樹脂のグリップ基材により構成されるアシストグリップのように内部に補強板材を配することが難しいところ、本願発明では、合成繊維からなる帯状のウェビング50を軟質樹脂製のグリップ基材40に沿って配することで、アシストグリップ100自体の耐久性を向上させている。また、このような構成としたことで、仮にグリップ基材40が経年劣化や消耗により破断した場合でも、当該グリップ基材40に沿ってウェビング50が配されているため、アシストグリップ100自体の落下を防止することができ、快適な乗り心地を提供することが可能となる。
【0026】
また、グリップ基材40が環状をなすものの、軟質樹脂により構成されているため、例えば繊維やポリエステルで構成されたアシストグリップに比べてそのループ形状(環状)を維持しやすく、乗員Pにとって使用態様が分かりやすいものとなる。また、例えば略U字状の2点固定によるアシストグリップの場合、グリップ基材にかかる力が2点に分散されるが、本願発明のような1点固定の場合は取付箇所20に荷重が集中してしまうところ、グリップ基材40を軟質樹脂で構成しているため、取付箇所20への荷重が緩和される。
【0027】
また、グリップ基材40を軟質樹脂としたことで、アシストグリップ100の車幅方向における移動も、当該グリップ基材40のたわみによって可能となる。例えばグリップ基材40が硬質樹脂により構成されている場合、車両前後方向に回動可能に取り付けられているアシストグリップ100に、車幅方向における動きも持たせようとすると、通常は前後方向とは別の回転機構を取付箇所20に持たせる必要があるが、本願発明によればそのような複雑な機構を排除することができ好適である。また、本願発明に係るアシストグリップ100は吊下式かつ回動可能であるため、乗員Pが好みの姿勢・位置でアシストグリップ100を使用することが可能となるだけでなく、様々な体格の乗員に幅広く利用可能となり、快適な乗り心地を提供することができる。
【0028】
また、通常、有端環状のグリップ30をボデー1に対して取り付ける場合、効率を考えて端部同士31,32をボデー1に対して共締めにより取り付けることが多い。この場合、グリップ30の取付方向とグリップ30の端部同士31,32の重畳方向が同じものとなる。つまり、アシストグリップ100を車室内から車室外に向けて締結するため、グリップ30の端部同士31,32も車幅方向に重畳することとなり、ループ形状が車室内の乗員Pに視認されにくいものとなる。ところが、本願発明によれば、アシストグリップ100の取付部材20が、グリップ基材40の端部同士41,42を車両前後方向に重畳するように固定するグリップ基材固定部240と、当該グリップ基材固定部240をボデー1に対して取り付ける取付部(ボデー取付部)210と、を備えるため、取付箇所20において固定方向と取付方向とをそれぞれ異なる向きとすることができる。つまり、ボデー1への取付方向(車幅方向)とは異なる向き(車両前後方向)に端部同士31,32を重畳させ、乗員Pがそのループ形状を視認しやすいアシストグリップ100を提供することができる。また、そのような向きのループ形状でありながら、取付部材20における取付部210を支点として車両前後方向に回動可能となり、使用性に優れる。また、グリップ基材固定部240を覆う第1カバー190の下カバー部195が、グリップ基材固定部240を遮蔽しつつ、グリップ基材40(グリップ部30)の車幅方向(特に車室内側方向)への動きを許容する。
【0029】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0030】
上記実施形態では、グリップ基材は有端環状に構成されてなるとともに、その端部同士が取付部材において1点で固定される吊下式とされているが、このような環状をなす吊下式に限らず、例えば
図8に示すような略U字状のアシストグリップ200とし、そのグリップ基材2040を軟質樹脂製とし、合成繊維からなる帯状のウェビング2050を当該グリップ基材2040に沿って配する構成としても良い。この場合も、アシストグリップ200の固定箇所において、
図9に示すように、グリップ基材2040とボデー2001との間にウェビング2050を配し、固定ビス2021を用いてこれらを共締めする。
【符号の説明】
【0031】
40...グリップ基材、50...ウェビング、100...アシストグリップ(乗物用アシストグリップ)