(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-21
(45)【発行日】2024-01-04
(54)【発明の名称】IL-2Rβ選択的作動薬と長時間作用型IL-15作動薬との併用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/20 20060101AFI20231222BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20231222BHJP
A61K 47/56 20170101ALI20231222BHJP
A61K 47/59 20170101ALI20231222BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20231222BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231222BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
A61K38/20
A61K47/54
A61K47/56
A61K47/59
A61K47/60
A61P35/00
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2018517898
(86)(22)【出願日】2016-10-07
(86)【国際出願番号】 US2016056088
(87)【国際公開番号】W WO2017062832
(87)【国際公開日】2017-04-13
【審査請求日】2019-10-03
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-29
(32)【優先日】2015-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597148884
【氏名又は名称】ネクター セラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】チャリッチ, デボラ エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】カーク, ピーター
【合議体】
【審判長】光本 美奈子
【審判官】齋藤 恵
【審判官】星 功介
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-514770(JP,A)
【文献】国際公開第2015/125159(WO,A1)
【文献】Wei C et al.,The CIK cells stimulated with combination of IL-2 and IL-15 provide an improved cytotoxic capacity against human lung adenocarcinoma,Tumor Biology,2014年,Vol.35, No.3,p.1997-2007,doi:10.1007/s13277-013-1265-22.
【文献】Shibata H et al.,Optimization of protein therapies by polymer-conjugation as an effective DDS,Molecules,2005年,Vol.10, No.1,p.162-180,doi:10.3390/10010162
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K45/00-08
A61K38/00-58
A61K 9/00-72
A61K47/00-69
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌に罹患している患者の治療のための組み合わせ物であって、IL-2Rβ活性化量の、水溶性ポリマーに共有結合したIL-2部分から構成される長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬またはその薬学的に許容可能な塩;及びIL-15受容体活性化量の、少なくとも1つの水溶性ポリマーに共有結合したIL-15タンパク質から構成される長時間作用型IL-15作動薬またはその薬学的に許容可能な塩を含み、
前記長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬が式:
【化1】
を有し、式中、各nは、3~4000の整数であり;
前記長時間作用型IL-15作動薬が、
【化4】
および
【化5】
から選択される式を有し、式中、各式についてnは、3~4000の整数であることを特徴とする、組み合わせ物。
【請求項2】
前記患者がヒトである、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項3】
前記癌が固形癌である、請求項1又は2に記載の組み合わせ物。
【請求項4】
前記固形癌が、乳癌、卵巣癌、結腸癌、前立腺癌、結腸直腸癌、胃癌、悪性黒色腫、肝癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、甲状腺癌、腎癌、胆管癌、脳癌、子宮頸癌、上顎洞癌、膀胱癌、食道癌、ホジキン病及び副腎皮質癌からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の組み合わせ物。
【請求項5】
前記癌が結腸癌である、請求項3に記載の組み合わせ物。
【請求項6】
前記癌が乳癌である、請求項3に記載の組み合わせ物。
【請求項7】
前記IL-2Rβ選択的作動薬が前記IL-15作動薬の投与の前に投与されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組み合わせ物。
【請求項8】
前記IL-2Rβ選択的作動薬が前記IL-15作動薬の投与の後に投与されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組み合わせ物。
【請求項9】
前記IL-2Rβ選択的作動薬及び前記IL-15作動薬が同時に投与されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組み合わせ物。
【請求項10】
前記組み合わせ物が
さらに、モル量基準で25%以下の、式:
【化2】
を有する化合物を含み、式中、各nは、3~4000の整数であり、n’は、1、2、3、7または>7から選択される整数であることを特徴とする、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項11】
両方のポリ(エチレングリコール)アームを含めた前記IL-2Rβ選択的作動薬化合物の前記ポリマー部分が、15,000ダルトン~50,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有することを特徴とする、請求項1または10に記載の組み合わせ物。
【請求項12】
両方のポリ(エチレングリコール)アームを含めた前記IL-2Rβ選択的作動薬化合物の前記ポリマー部分が、20,000ダルトンの重量平均分子量を有することを特徴とする、請求項1または10に記載の組み合わせ物。
【請求項13】
前記IL-2部分がアルデスロイキンであることを特徴とする、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項14】
両方のポリ(エチレングリコール)アームを含めた前記IL-15作動薬の前記ポリマー部分が、15,000ダルトン~50,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有するようにnが選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項15】
IL-2Rβ活性化量の、水溶性ポリマーに共有結合したIL-2部分からそれぞれ構成される長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬化合物またはその薬学的に許容可能な塩と、IL-15受容体活性化量の、少なくとも1つの水溶性ポリマーに共有結合したIL-15タンパク質から構成される長時間作用型IL-15作動薬またはその薬学的に許容可能な塩とを含む、癌を有する対象の治療のための組成物であって、
前記長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬が式:
【化1】
を有し、式中、各nは、3~4000の整数であり;
前記長時間作用型IL-15作動薬が、
【化4】
および
【化5】
から選択される式を有し、式中、各式についてnは、3~4000の整数であることを特徴とする、組成物。
【請求項16】
前記組成物が
さらに、モル量基準で25%以下の、式:
【化2】
を有する化合物を含み、式中、各nは、3~4000の整数であり、n’は、1、2、3、7または>7から選択される整数であることを特徴とする、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
両方のポリ(エチレングリコール)アームを含めた前記IL-2Rβ選択的作動薬化合物の前記ポリマー部分が、15,000ダルトン~50,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有することを特徴とする、請求項15または16に記載の組成物。
【請求項18】
両方のポリ(エチレングリコール)アームを含めた前記IL-2Rβ選択的作動薬化合物の前記ポリマー部分が、20,000ダルトンの重量平均分子量を有することを特徴とする、請求項15または16に記載の組成物。
【請求項19】
前記IL-2部分がアルデスロイキンであることを特徴とする、請求項15に記載の組成物。
【請求項20】
両方のポリ(エチレングリコール)アームを含めた前記IL-15作動薬の前記ポリマー部分が、15,000ダルトン~50,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有するようにnが選択されることを特徴とする、請求項15に記載の組成物。
【請求項21】
癌を有する対象の治療のためのキットであって、癌を有する前記対象の治療への使用に関する説明書が添付された、水溶性ポリマーに共有結合したIL-2部分から構成される長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬またはその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1つの水溶性ポリマーに共有結合したIL-15タンパク質から構成される長時間作用型IL-15作動薬またはその薬学的に許容可能な塩とを含み、
前記長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬が式:
【化1】
を有し、式中、各nは、3~4000の整数であり;
前記長時間作用型IL-15作動薬が、
【化4】
および
【化5】
から選択される式を有し、式中、各式についてnは、3~4000の整数であることを特徴とする、キット。
【請求項22】
IL-2Rβ活性化量の前記IL-2Rβ選択的作動薬とIL-15受容体活性化量の前記長時間作用型IL-15作動薬とを含む、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
前記IL-2Rβ選択的作動薬及び前記長時間作用型IL-15作動薬が単一の組成物中に含まれる、請求項21又は22に記載のキット。
【請求項24】
前記単一の組成物が薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含む、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
前記IL-2Rβ選択的作動薬と前記長時間作用型IL-15作動薬とが別個の容器に提供される、請求項21又は22に記載のキット。
【請求項26】
前記説明書が、ヒト対象における使用について記載している、請求項21~25のいずれか一項に記載のキット。
【請求項27】
前記説明書が、癌を有するヒト対象の治療への使用について記載しており、前記癌が固形癌である、請求項21~25のいずれか一項に記載のキット。
【請求項28】
前記説明書が、乳癌、卵巣癌、結腸癌、前立腺癌、結腸直腸癌、胃癌、悪性黒色腫、肝癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、甲状腺癌、腎癌、胆管癌、脳癌、子宮頸癌、上顎洞癌、膀胱癌、食道癌、ホジキン病及び副腎皮質癌からなる群から選択される癌を有するヒト対象の治療への使用について記載している、請求項21~25のいずれか一項に記載のキット。
【請求項29】
癌に罹患している患者の治療のための組成物であって、IL-2Rβ活性化量の、水溶性ポリマーに共有結合したIL-2部分から構成される長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬またはその薬学的に許容可能な塩を含み、前記組成物は、IL-15受容体活性化量の、少なくとも1つの水溶性ポリマーに共有結合したIL-15タンパク質から構成される長時間作用型IL-15作動薬またはその薬学的に許容可能な塩と組み合わせて前記患者に投与され、
前記長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬が式:
【化1】
を有し、式中、各nは、3~4000の整数であり;
前記長時間作用型IL-15作動薬が、
【化4】
および
【化5】
から選択される式を有し、式中、各式についてnは、3~4000の整数であることを特徴とする組成物。
【請求項30】
癌に罹患している患者の治療のための組成物であって、IL-15受容体活性化量の、少なくとも1つの水溶性ポリマーに共有結合したIL-15タンパク質から構成される長時間作用型IL-15作動薬またはその薬学的に許容可能な塩を含み、前記組成物は、IL-2Rβ活性化量の、水溶性ポリマーに共有結合したIL-2部分から構成される長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬またはその薬学的に許容可能な塩と組み合わせて前記患者に投与され、
前記長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬が式:
【化1】
を有し、式中、各nは、3~4000の整数であり;
前記長時間作用型IL-15作動薬が、
【化4】
および
【化5】
から選択される式を有し、式中、各式についてnは、3~4000の整数であることを特徴とする組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2015年10月8日に出願された“COMBINATION OF AN IL-2RBETA-SELECTIVE AGONIST AND A LONG-ACTING IL-15 AGONIST”と題される米国仮特許出願第62/239,207号明細書に対する優先権、及びその利益を主張するものであり、この仮特許出願の内容は参照によって本明細書に援用される。
【0002】
本発明は(特に)癌免疫療法の分野に関し、長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬を別の薬理活性剤と併用して患者に投与することによる、癌に罹患している個体の治療を含む。
【背景技術】
【0003】
癌に罹患している患者の治療における薬理学的介入という文脈では、併用療法に多くの利点があり得る。例えば、併用療法は薬剤耐性の発生を抑えることができる。加えて、併用療法は単剤療法よりも効果的(全生存率の上昇をもたらすことを含む)であり得る。さらに、より効果的な場合、併用治療では全治療回数が少なくなり、従って治療費の低下がもたらされ得る。
【0004】
併用療法に関連する課題の一つは、有益であると予想される組み合わせの特定である。
【0005】
IL-2Rβ選択的作動薬の投与は、そうすることにより調節性T細胞の免疫抑制効果が低下する一方でCD8+メモリーT細胞が増加し、それによって患者自身の免疫系が癌細胞の排除に動員されると予想されるため、ある種の癌に罹患している患者に有益であることが提案されている。Charych et al.AACR 2013,Abstract #482を参照のこと。
【0006】
癌の治療におけるIL-2Rβ選択的作動薬の投与による癌患者の免疫系の動員(これは直接の免疫活性化であり得る)は、他の薬剤を投与することによってさらに増強し得る。
サイトカインとして、IL-15は、自然免疫系及び適応免疫系の両方に効果を及ぼす。DiSabitino et al.(2011)Cytokine Growth Factor Rev.22:19-33。IL-15は、宿主にとって外来性(又は「非自己」)に見える細胞と闘うことのできる免疫系内の多数の細胞の増殖及び維持を刺激するため、癌に罹患している個体の治療への使用が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Charych et al.AACR 2013,Abstract #482
【文献】DiSabitino et al.(2011)Cytokine Growth Factor Rev.22:19-33
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は(特に)IL-2Rβ選択的作動薬(本明細書ではIL-2Rβバイアス作動薬とも称される)とIL-15作動薬とを含む有益な併用療法を特定しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この及び当該技術分野における他の必要性が本発明によって対処される。幾つもの態様及び実施形態が本明細書に記載される。このように、本明細書に記載される特徴及び実施形態の各々は、明記されていないとしても、反する旨が示されない限り、任意の他の態様、実施形態又は特徴又は特徴の組み合わせに適用可能であることが意図される(しかし適用可能である必要はない)。
【0010】
1つ以上の態様において、方法が提供され、この方法は、(a)IL-2Rβ活性化量の長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬;及び(b)IL-15R活性化量の長時間作用型IL-15部分を癌患者に投与するステップを含む。明確にしておくと、この方法におけるステップの順序に関して、特に指示されない限り本方法はこのステップの順序に限定されず、ステップ(a)がステップ(b)の実施前、その後又はそれと同時に実施されてもよい。1つ以上の実施形態において、ステップ(a)はステップ(b)の前に実施される。
【0011】
さらに1つ以上の別の態様において、組成物が提供され、この組成物は、IL-2Rβ活性化量の長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬とIL-15R活性化量の長時間作用型IL-15部分とを含む。
【0012】
さらに別の態様において、キットが提供され、このキットは、使用説明書が添付された、長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬と長時間作用型IL-15部分とを含む。概して、本キットはIL-2Rβ活性化量のIL-2Rβ選択的作動薬とIL-15R活性化量の長時間作用型IL-15部分とを含む。IL-2Rβ選択的作動薬及び長時間作用型IL-15部分は単一の組成物中に提供されてもよく、或いは別個の容器に、例えば癌と診断された患者による使用に関する適切な説明書と共に提供されてもよい。
【0013】
さらなる態様及び関連する実施形態が以下の説明及び特許請求の範囲に示される。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
癌に罹患している患者の治療方法であって、(a)IL-2Rβ活性化量の長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬を患者に投与するステップ;及び(b)IL-15活性化量の長時間作用型IL-15作動薬を投与するステップを含む方法。
(項目2)
前記患者がヒトである、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記癌が固形癌である、項目1又は2に記載の方法。
(項目4)
前記固形癌が、乳癌、卵巣癌、結腸癌、前立腺癌、結腸直腸癌、胃癌、悪性黒色腫、肝癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、甲状腺癌、腎癌、胆管癌、脳癌、子宮頸癌、上顎洞癌、膀胱癌、食道癌、ホジキン病及び副腎皮質癌からなる群から選択される、項目1又は2に記載の方法。
(項目5)
前記癌が結腸癌である、項目3に記載の方法。
(項目6)
前記癌が乳癌である、項目3に記載の方法。
(項目7)
ステップ(a)がステップ(b)を行う前に行われる、項目1又は2に記載の方法。
(項目8)
(a)がステップ(b)を行った後に行われる、項目1又は2に記載の方法。
(項目9)
ステップ(a)及び(b)が同時に行われる、項目1又は2に記載の方法。
(項目10)
IL-2Rβ活性化量の長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬とIL-15R活性化量の長時間作用型IL-15部分とを含む組成物。
(項目11)
癌を有する対象の治療への使用に関する説明書が添付された、長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬と長時間作用型IL-15部分とを含むキット。
(項目12)
IL-2Rβ活性化量の前記IL-2Rβ選択的作動薬とIL-15R活性化量の前記長時間作用型IL-15部分とを含む、項目11に記載のキット。
(項目13)
前記IL-2Rβ選択的作動薬及び前記長時間作用型IL-15部分が単一の組成物中に含まれる、項目11又は12に記載のキット。
(項目14)
前記単一の組成物が薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含む、項目13に記載のキット。
(項目15)
前記IL-2Rβ選択的作動薬と前記長時間作用型IL-15部分とが別個の容器に提供される、項目11又は12に記載のキット。
(項目16)
前記説明書が、ヒト対象における使用について記載している、項目11~15のいずれか一項に記載のキット。
(項目17)
前記説明書が、癌を有するヒト対象の治療への使用について記載しており、前記癌が固形癌である、項目11~15のいずれか一項に記載のキット。
(項目18)
前記説明書が、乳癌、卵巣癌、結腸癌、前立腺癌、結腸直腸癌、胃癌、悪性黒色腫、肝癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、甲状腺癌、腎癌、胆管癌、脳癌、子宮頸癌、上顎洞癌、膀胱癌、食道癌、ホジキン病及び副腎皮質癌からなる群から選択される癌を有するヒト対象の治療への使用について記載している、項目11~15のいずれか一項に記載のキット。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1A、
図1B及び
図1Cは、マウス結腸癌モデルにおける様々な介入によって治療したマウスの生存パーセント及び日数を示すプロットを提供し、このモデル及び試験については実施例1にさらに記載する。
図1Aは、試験群A、C、D、F、G、及びHについてのプロットを提供する。
図1Bは、試験群A、C、E、I、J、及びKについてのプロットを提供する。
図1Cは、試験群A、B、C、L、M、及びNについてのプロットを提供する。試験群の詳細は表1に記載する。
【
図2】
図2A、
図2B及び
図2Cは、マウス転移性黒色腫モデルにおける様々な介入によって治療したマウスの生存パーセント及び日数を示すプロットを提供し、このモデル及び試験については実施例1にさらに記載する。
図2Aは、試験群A、C、D、F、G、及びHについてのプロットを提供する。
図2Bは、試験群A、C、E、I、J、及びKについてのプロットを提供する。
図2Cは、試験群A、B、C、L、M、及びNについてのプロットを提供する。試験群の詳細は表1に記載する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」には、文脈上特に明確に指示されない限り複数の指示対象が含まれる。
【0016】
本発明の記載及び特許請求の範囲においては、以下に記載する定義に従い以下の用語を使用する。
【0017】
「水溶性非ペプチドポリマー」は、室温で水に対して少なくとも35%(重量基準)可溶であり、好ましくは70%超(重量基準)、より好ましくは95%超(重量基準)可溶であるポリマーを指す。典型的には、「水溶性」ポリマーの未ろ過水溶液調製物は、ろ過後の同じ溶液によって透過される光の量の少なくとも75%、より好ましくは少なくとも95%を透過する。しかしながら、水溶性ポリマーは水に対して少なくとも95%(重量基準)可溶であるか又は水に対して完全に可溶であることが最も好ましい。「非ペプチド性」であることに関して、ポリマーは、それが有するアミノ酸残基が35%未満(重量基準)であるとき非ペプチド性である。
【0018】
用語「単量体」、「単量体サブユニット」及び「単量体ユニット」は、本明細書では同義的に使用され、ポリマーの基本構造単位の1つを指す。ホモポリマーの場合、単一の繰り返し構造単位がポリマーを形成する。コポリマーの場合、2つ以上の構造単位が-あるパターンで又はランダムに-繰り返すことでポリマーを形成する。本発明との関連において使用される好ましいポリマーはホモポリマーである。水溶性非ペプチドポリマーは、連続的に結合された1つ以上の単量体を含んで単量体の鎖を形成する。
【0019】
「PEG」又は「ポリエチレングリコール」は、本明細書で使用されるとき、任意の水溶性ポリ(エチレンオキシド)を包含することが意図される。特に指示されない限り、「PEGポリマー」又はポリエチレングリコールは、実質的に全ての(好ましくは全ての)単量体サブユニットがエチレンオキシドサブユニットであるものであり、しかしながらポリマーは、例えば反応又はコンジュゲーション用に、個別のエンドキャッピング部分又は官能基を含有してもよい。本発明で使用されるPEGポリマーは、1つ又は複数の末端酸素が例えば合成変換中に置換されたか否かに応じて、以下の2つの構造のうちの一方を含み得る:「-(CH2CH2O)n-」又は「-(CH2CH2O)n-1CH2CH2-」。前述のとおり、PEGポリマーについては、変量(n)は(特に明記しない限り)約3~4000の範囲であり、末端基及びPEG全体の構造は様々であり得る。
【0020】
ポリマーの幾何学的配置又は全体構造に関して「分枝状」は、分岐点から延在する2つ以上のポリマー「アーム」を有するポリマーを指す。
【0021】
「生理学的に切断可能な」又は「加水分解性の」又は「分解性の」結合とは、生理学的条件下で水と反応する(即ち加水分解される)比較的不安定な結合である。結合が水中で加水分解する傾向は、所与の分子内で2つの原子をつなぐ一般的な種類の結合に依存するのみならず、それらの原子に結合した置換基にもまた依存し得る。加水分解に不安定な又は弱い適切な結合としては、限定はされないが、カルボン酸エステル、リン酸エステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、ペプチド、オリゴヌクレオチド、チオエステル、及びカーボネートが挙げられる。
【0022】
「酵素分解性の結合」は、1つ以上の酵素により分解を受ける結合を意味する。
【0023】
「安定な」結合(linkage)又は結合(bond)は、水中で実質的に安定な化学結合、即ち、長期間にわたり生理学的条件下でいかなる認め得る程度の加水分解も受けない結合を指す。加水分解に安定な結合の例としては、限定はされないが、以下が挙げられる:炭素-炭素結合(例えば脂肪族鎖中の)、エーテル類、アミド類、ウレタン類、アミン類など。概して、安定な結合は、生理学的条件下で1日約1~2%未満の加水分解速度を呈するものである。代表的な化学結合の加水分解速度は、多くの標準的な化学テキストブックを参照することができる。
【0024】
「実質的に」又は「本質的に」とは、ほぼ全体的にまたは完全に、例えば、ある所与の分量の95%以上、より好ましくは97%以上、さらにより好ましくは98%以上、さらにより好ましくは99%以上、なおもさらにより好ましくは99.9%以上を意味し、99.99%以上が最も好ましい。即ち、「実質的に」又は「本質的に」は、ある所与の分量の最低でも95%又はそれ以上を意味する。
【0025】
「薬学的に許容可能な賦形剤」又は「薬学的に許容可能な担体」は、本明細書に提供される医薬組成物中に含まれ得る成分であって、患者に重大な有害毒性効果を引き起こさない成分を指す。
【0026】
用語「患者」は、本明細書に記載されるとおりの化合物又は化合物の組み合わせ、又は組成物の投与によって予防又は治療することのできる病態に罹患している又はそれに罹り易い生物を指し、ヒト及び動物の両方が含まれる。
【0027】
本開示は、少なくとも一部には、長時間作用型IL-2R作動薬、より具体的にはIL-2Rβ選択的作動薬と長時間作用型IL-15作動薬とを含む特に有益な療法薬併用の発見に基づく。興味深いことに、添付の実施例に例示されるとおりの前述の免疫療法薬併用は、特に、いずれの単一の長時間作用型薬剤と比べても2つの異なるマウス腫瘍モデルにおいて生存期間中央値の増加の点で有効性が高く、また長時間作用型IL-2Rβ作動薬と天然IL-15(即ち非長時間作用型IL-15作動薬)との併用と比べても有効性が高かったことが発見された。特に、長時間作用型IL-15作動薬の共投与は、長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬の免疫系活性化機能を弱める又は抑制するようには見えず、むしろその抗癌能力を例えばCD8+T細胞産生の刺激によって増強し、CD8:調節性T細胞比の増加をもたらすように思われた。例えば、本明細書において実施例に提供される裏付けデータを参照のこと。
【0028】
ここで上記に示したとおりの本方法、組成物、キット、及び関連する実施形態について見ると、1つ以上の態様において、本明細書には(特に)癌に罹患している患者の治療方法が提供される。この方法は、(a)IL-2Rβ活性化量の長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬を患者に投与するステップ;及び(b)IL-15R活性化量の長時間作用型IL-15作動薬を患者に投与するステップを含む。投与ステップ(a)及び(b)に関して、これらの投与ステップはいずれの順序でも(並びに同時に)実施することができ、この点で本方法は限定されない。1つ以上の関連する実施形態では、投与ステップ(a)が投与ステップ(b)の前に行われる。さらに1つ以上の代替的実施形態では、投与ステップ(b)が投与ステップ(a)の前に行われる。さらに1つ以上のさらなる実施形態において、投与ステップ(a)及び(b)の両方が同時に行われる。本方法が長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬と長時間作用型IL-15作動薬との同時投与を含む例では、投与は、治療量、即ちIL-2Rβ活性化量(即ち治療量)の長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬又はIL-15R活性化量(即ち治療量)の長時間作用型IL-15作動薬を各々含む別個の組成物の投与であってもよく、又は各々が上記に記載したとおりの治療有効量の、長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬及び長時間作用型IL-15作動薬の両方を含む単一の組成物の投与であってもよい。さらに、1つ以上の実施形態において、ステップ(a)及び/又は(b)は治療過程にわたって繰り返し投与されることになる。或いは、又はそれ以上の実施形態において、ステップ(a)及び(b)は1回のみ行われることになる。長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬と長時間作用型IL-15作動薬とは、別個に投与されるとき、必ずしも必須というわけではないが、同じ投与(即ち投薬)プロトコルに従い投与され得る。即ち、1つの治療サイクルが長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬を1回又は複数回投与することを含んでもよく、一方で治療有効用量の長時間作用型IL-15作動薬が長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬よりも高頻度又は低頻度のいずれかで投与されてもよい。一部の実施形態では、長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬を長時間作用型IL-15作動薬の前に投与することが好ましい。
【0029】
本明細書に記載される治療方法は、典型的には、患者ケアを監督する臨床医がその治療方法を有効である、即ち患者が治療に応答していると見なす限り継続される。治療方法が有効であることの指標となる非限定的なパラメータには、以下の1つ以上が含まれ得る:腫瘍縮小(重量及び/又は容積及び/又は外観の点で);個別の腫瘍コロニーの数の減少;腫瘍消失;無進行生存;好適な腫瘍マーカーによる適切な応答(該当する場合)、NK(ナチュラルキラー)細胞数の増加、T細胞数の増加、メモリーT細胞数の増加、及びセントラルメモリーT細胞数の増加。
【0030】
特許請求される方法における治療過程に関連する例示的時間の長さには、約1週間;2週間;約3週間;約4週間;約5週間;約6週間;約7週間;約8週間;約9週間;約10週間;約11週間;約12週間;約13週間;約14週間;約15週間;約16週間;約17週間;約18週間;約19週間;約20週間;約21週間;約22週間;約23週間;約24週間;約7ヵ月;約8ヵ月;約9ヵ月;約10ヵ月;約11ヵ月;約12ヵ月;約13ヵ月;約14ヵ月;約15ヵ月;約16ヵ月;約17ヵ月;約18ヵ月;約19ヵ月;約20ヵ月;約21ヵ月;約22ヵ月;約23ヵ月;約24ヵ月;約30ヵ月;約3年;約4年;約5年;永久(例えば、進行中の維持療法)が含まれる。前述の期間は1回又は複数回の治療ラウンド/サイクルを伴い得る。
【0031】
長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬の投与頻度に関して、当業者は適切な頻度を決定することが可能であろう。例えば、臨床医は、長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬を比較的低頻度で(例えば2週間に1回)投与し、患者が忍容性を示すことに伴い投薬間の期間を徐々に短縮することに決めてもよい。長時間作用型IL-15作動薬の投与頻度に関して、これらの薬剤の頻度も同様にして決定することができる。加えて、一部の長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬及び長時間作用型IL-15作動薬に関しては詳細情報が分かっている(及び、一部の例では、臨床試験における特定の作動薬の使用から導き出される)ことに伴い、文献を参照して適切な投与頻度を把握することもまた可能である(治療レジメンの併用効果を考慮して幾らかの調整が必要となり得ることに留意する)。
【0032】
1つ以上のさらなる態様において、組成物が提供され、この組成物は、IL-2Rβ活性化量の長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬とIL-15R活性化量の長時間作用型IL-15部分とを含み、その特徴については以下にさらに詳細に記載する。
【0033】
加えて、本明細書には、IL-2Rβ活性化量の長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬と;IL-15R活性化量の長時間作用型IL-15部分と;IL-2Rβ選択的作動薬及び長時間作用型IL-15部分の例えば癌の治療への使用に関する説明書とを含むキットが提供される。一実施形態において、説明書には、本明細書に記載されるとおりの、IL-2Rβ活性化量の長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬及びIL-15R活性化量の長時間作用型IL-15部分を投与することが記載される。少なくとも1回の治療ラウンド又はサイクルにわたって、IL-2Rβ選択的作動薬及び長時間作用型IL-15部分の両方が投与される。例えば、一実施形態において、本キットは、本明細書に記載されるとおりの、IL-2Rβ活性化量の長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬とIL-15R活性化量の長時間作用型IL-15部分とを含む組成物を含む。1つ以上の関連する実施形態において、本組成物又は併用は活性成分として長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬及び長時間作用型IL-15作動薬のみを含む。さらに1つ以上のさらなる実施形態において、本組成物又は併用は1つ以上の追加の活性薬剤を含む。本キットはまた、長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬と長時間作用型IL-15作動薬とが、別個の異なる組成物として投与されるように別個の容器に入っていてもよい。例えば、IL-2Rβ選択的作動薬及び長時間作用型IL-15作動薬の各々が、例えば1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含む薬学的に許容可能な組成物内に含まれてもよく、ここでは各別個の異なる組成物が使用に好適な容器に収容されている。特定の実施形態において、長時間作用型インターロイキンの各々は、添付の説明書に従う再構成及び続く投与に好適な固体形態で提供される。
【0034】
本明細書に記載される方法、組成物、及びキットは、長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬を含む。これに関連して、本発明は、その作動薬がIL-2が呈するより少なくとも5倍高い(より好ましくは少なくとも10倍高い)IL-2Rαβへの結合親和性に対するIL-2Rβへの結合親和性の比を呈する限り、いかなる特定の長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬にも限定されない。例として、IL-2に対する結合親和性を基準として計測することが可能である。例えば、例示的な長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬RSAIL-2のIL-2Rα及びIL-2Rβへの結合親和性を表面プラズモン共鳴(Biacore T-100)によって直接計測し、臨床的に利用可能なIL-2(アルデスロイキン)と比較した。より具体的には、EDC/NHS化学を用いて抗ヒト抗体(Invitrogen)をCM-5センサーチップの表面に結合させた。次にヒトIL-2Rα-Fc又はIL-2Rβ-Fc融合タンパク質のいずれかをこの表面にわたって捕捉リガンドとして使用した。酢酸塩緩衝液pH4.5に、5mMから始まるRSAIL-2の段階希釈物を作成した。次にこれらの希釈物をリガンドに5分間結合させて、結合した反応単位(RU)を濃度に対してプロットし、EC50値を決定した。次に各IL-2受容体サブタイプに対する各アイソフォームの親和性をIL-2と比べた倍数変化として計算した。
【0035】
これに関連して、国際公開第2015/125159号パンフレットの実施例1に言及されるRSLAIL-2は、IL-2と比べてIL-2Rαβへの親和性の約60倍の低下を呈するが、IL-2Rβへの親和性はIL-2と比べて約5倍の低下に過ぎない-これによりIL-2β受容体に対するその選択性又はバイアスが示される。
【0036】
長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬の非限定的な例が国際公開第2012/065086号パンフレット及び同第2015/125159号パンフレットに記載されている。例示的な長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬は、国際公開第2015/125159号パンフレットの実施例1に言及されるRSLAIL-2である。これに関連して、RSLAIL-2は、以下の式:
【化1】
[式中、IL-2はIL-2の残基であり、及び「n」は約3~約4000の整数である]に包含される化合物、及びその薬学的に許容可能な塩を含む組成物である。1つ以上の実施形態において、この組成物は、以下の式
【化2】
[式中、IL-2はIL-2の残基であり、「n」は約3~約4000の整数であり、「n’」は、1、2、3、7及び>7からなる群から選択される整数である]に包含される化合物、及びその薬学的に許容可能な塩を25%以下(モル量基準)、好ましくは10%以下(モル量基準)、又はより好ましくは5%以下(モル量基準)含有する。RSLAIL-2のさらなる例示的な組成物は、両方のポリエチレングリコールアームを含めた分子のポリマー部分が約250ダルトン~約90,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する上記の式に係る化合物を含む。さらなる好適な範囲としては、約1,000ダルトン~約60,000ダルトンから選択される範囲、約5,000ダルトン~約60,000ダルトンの範囲、約10,000ダルトン~約55,000ダルトンの範囲、約15,000ダルトン~約50,000ダルトンの範囲、及び約20,000ダルトン~約50,000ダルトンの範囲の重量平均分子量が挙げられる。
【0037】
ポリエチレングリコールポリマー部分のさらなる例示的な重量平均分子量としては、約200ダルトン、約300ダルトン、約400ダルトン、約500ダルトン、約600ダルトン、約700ダルトン、約750ダルトン、約800ダルトン、約900ダルトン、約1,000ダルトン、約1,500ダルトン、約2,000ダルトン、約2,200ダルトン、約2,500ダルトン、約3,000ダルトン、約4,000ダルトン、約4,400ダルトン、約4,500ダルトン、約5,000ダルトン、約5,500ダルトン、約6,000ダルトン、約7,000ダルトン、約7,500ダルトン、約8,000ダルトン、約9,000ダルトン、約10,000ダルトン、約11,000ダルトン、約12,000ダルトン、約13,000ダルトン、約14,000ダルトン、約15,000ダルトン、約20,000ダルトン、約22,500ダルトン、約25,000ダルトン、約30,000ダルトン、約35,000ダルトン、約40,000ダルトン、約45,000ダルトン、約50,000ダルトン、約55,000ダルトン、約60,000ダルトン、約65,000ダルトン、約70,000ダルトン、及び約75,000ダルトンが挙げられる。
【0038】
長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬及び長時間作用型IL-15部分は薬学的に許容可能な塩の形態であってもよい。典型的には、かかる塩は薬学的に許容可能な酸又は酸等価物との反応によって形成される。これに関連して用語「薬学的に許容可能な塩」は、概して、比較的非毒性の無機酸及び有機酸付加塩を指し得る。これらの塩は、投与媒体又は剤形製造過程においてインサイチューで、又は別途本明細書に記載されるとおりの長時間作用型インターロイキンを好適な有機酸又は無機酸と反応させて、そのようにして形成された塩を単離することにより調製し得る。代表的な塩としては、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩(napthylate)、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、及びラウリルスルホン酸塩などが挙げられる。(例えば、Berge et al.(1977)「薬学的塩(Pharmaceutical Salts)」,J.Pharm.Sci.66:1-19を参照のこと)。従って、記載されるとおりの塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸に由来してもよく;又は酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸(salicyclic)、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸(isothionic)などの有機酸から調製されてもよい。
【0039】
前述のIL-2Rβ選択的作動薬に関して、用語「IL-2」は、本明細書で使用されるとき、ヒトIL-2活性を有する部分を指す。用語、「残基」は、IL-2の残基の文脈では、上記の式に示されるとおり、IL-2分子のうち1つ以上の共有結合部位においてポリエチレングリコールなどのポリマー剤との共有結合後に残る部分を意味する。非修飾IL-2がポリエチレングリコールなどのポリマーに結合すると、その1つ又は複数のポリマーとの連結に付随する1つ以上の共有結合の存在によってIL-2は僅かに変化することが理解されるであろう。この僅かに変化した形態の、別の分子に結合したIL-2が、IL-2の「残基」と称される。
【0040】
例えば、国際公開第2012/065086号パンフレットに記載される配列番号1~4のいずれか一つに対応するアミノ酸配列を有するタンパク質が、それらと実質的に相同な任意のタンパク質又はポリペプチドと同様に、例示的IL-2タンパク質である。用語の実質的に相同とは、特定の対象配列、例えば突然変異配列が1つ以上の置換、欠失、又は付加だけ参照配列と異なるが、その正味の効果は参照配列と対象配列との間に有害な機能的相違をもたらさないものであることを意味する。本明細書の目的上、95パーセントより高い相同性、等価な生物学的活性(必須ではないが等価な生物学的活性強度)、及び等価な発現特性を有する配列が、実質的に相同と見なされる。相同性を決定する目的上、成熟配列のトランケーションは無視しなければならない。本明細書で使用されるとき、用語「IL-2」には、例えば部位特異的突然変異誘発によるとおり意図的に修飾されるか、又は突然変異を通じて偶発的に修飾されたタンパク質が含まれる。これらの用語にはまた、1~6つのさらなるグリコシル化部位を有する類似体、タンパク質のカルボキシ端側末端に少なくとも1つのさらなるアミノ酸を有する類似体であって、そのさらなる1つ又は複数のアミノ酸が少なくとも1つのグリコシル化部位を含む類似体、及び少なくとも1つのグリコシル化部位を含むアミノ酸配列を有する類似体も含まれる。この用語には、天然の部分及び組換え生成された部分の両方が含まれる。加えて、IL-2は、ヒト供給源、動物供給源、及び植物供給源に由来し得る。一つの例示的IL-2は、アルデスロイキンと称される組換えIL-2である。
【0041】
本明細書に記載される方法、組成物、及びキットは、長時間作用型IL-15作動薬をさらに含む。これに関連して、本発明は、-患者への投与後に-その作動薬がIL-15を投与した場合よりも長い時間にわたってインビボでIL-15アゴニスト性を呈する限り、いかなる特定の長時間作用型IL-15作動薬にも限定されない。
【0042】
長時間作用型IL-15作動薬の非限定的な例が国際公開第2015/153753号パンフレットに記載される。かかる例としては、以下:
【化3】
[式中、各構造について、各IL-15はIL-15の残基であり、各(n)は約3~約4000の整数である]、及びその薬学的に許容可能な塩が挙げられる。加えて、この段落中の前述の構造の各々はモノPEG化形態で描かれるが、例示的な長時間作用型IL-15作動薬には、対応するジPEG化、トリPEG化、クアトロPEG化が含まれ、さらに高級なPEG化形態も同様に含まれる。さらなる例示的な長時間作用型IL-15作動薬は、両方のポリエチレングリコールアームを含めた分子のポリマー部分が約250ダルトン~約90,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する上記の式に係る化合物を含む。さらなる好適な範囲としては、約1,000ダルトン~約60,000ダルトンから選択される範囲、約5,000ダルトン~約60,000ダルトンの範囲、約10,000ダルトン~約55,000ダルトンの範囲、約15,000ダルトン~約50,000ダルトンの範囲、及び約20,000ダルトン~約50,000ダルトンの範囲の重量平均分子量が挙げられる。
【0043】
長時間作用型IL-15作動薬のポリエチレングリコールポリマー部分のさらなる例示的な重量平均分子量としては、約200ダルトン、約300ダルトン、約400ダルトン、約500ダルトン、約600ダルトン、約700ダルトン、約750ダルトン、約800ダルトン、約900ダルトン、約1,000ダルトン、約1,500ダルトン、約2,000ダルトン、約2,200ダルトン、約2,500ダルトン、約3,000ダルトン、約4,000ダルトン、約4,400ダルトン、約4,500ダルトン、約5,000ダルトン、約5,500ダルトン、約6,000ダルトン、約7,000ダルトン、約7,500ダルトン、約8,000ダルトン、約9,000ダルトン、約10,000ダルトン、約11,000ダルトン、約12,000ダルトン、約13,000ダルトン、約14,000ダルトン、約15,000ダルトン、約20,000ダルトン、約22,500ダルトン、約25,000ダルトン、約30,000ダルトン、約35,000ダルトン、約40,000ダルトン、約45,000ダルトン、約50,000ダルトン、約55,000ダルトン、約60,000ダルトン、約65,000ダルトン、約70,000ダルトン、及び約75,000ダルトンが挙げられる。
【0044】
長時間作用型IL-15部分に関して、用語「IL-15」は、本明細書で使用されるとき、ヒトIL-15活性を有するペプチド又はタンパク質部分を指す。当業者は、任意の所与の部分がIL-15活性を有するかどうかを決定することができる。国際公開第2015/153753号パンフレットに提供されるとおりの配列番号1~3のいずれか一つに対応するアミノ酸配列を含む代表的なタンパク質が、上記に提供される説明に係るそれらと実質的に相同な任意のタンパク質又はポリペプチドと同様に、例示的IL-15タンパク質である。本明細書で使用されるとき、用語「IL-15」には、例えば部位特異的突然変異誘発によるとおり意図的に修飾されるか、又は突然変異を通じて偶発的に修飾されたペプチド及びタンパク質が含まれる。この用語にはまた、1~6つのさらなるグリコシル化部位を有する類似体、ペプチド又はタンパク質のカルボキシ端側末端に少なくとも1つのさらなるアミノ酸を有する類似体であって、そのさらなる1つ又は複数のアミノ酸が少なくとも1つのグリコシル化部位を含む類似体、及び少なくとも1つのグリコシル化部位を含むアミノ酸配列を有する類似体も含まれる。この用語には、天然に、組換え的に及び合成的に生成された部分が含まれる。
【0045】
所与の化合物がIL-15作動薬として作用し得るかどうかを決定するためのアッセイは、当業者がルーチンの実験によって決定することができる。IL-15作動薬活性をインビトロで決定する様々な方法が当該技術分野において記載されている。例示的手法はpSTATアッセイに基づく。簡潔に言えば、IL-15依存性CTLL-2細胞がIL-15活性を有する被験物質に曝露された場合、定量的に計測することのできるチロシン残基694(Tyr694)におけるSTAT5のリン酸化を含むシグナル伝達カスケードの惹起が起こる。アッセイプロトコル及びキットは公知であり、例えば、MSD Phospho(Tyr694)/Total STATa,b全細胞ライセートキット(Meso Scal Diagnostics,LLC、Gaithersburg,MD)が挙げられる。本明細書における使用上、5分間又は10分間の少なくとも一方で約300ng/mL未満(より好ましくは約150ng/mL未満)のpSTAT5 EC50値を呈する提案されるIL-15部分が、本発明との関連における「IL-15作動薬」と見なされる。しかしながら、本発明で使用するIL-15作動薬はより強力である(例えば、5分又は10分の少なくとも一方の時点で約1ng/mL未満、さらにはより好ましくは約0.5ng/mL未満など、少なくとも5分又は10分の一方の時点で150ng/mL未満のpSTAT5 EC50値を有する)ことが好ましい。1つ以上の実施形態において、長時間作用型IL-15作動薬はIL-15Rα依存性を保持していることが好ましい。
【0046】
長時間作用型IL-15作動薬であると提案される化合物は、-患者への投与後に-その作動薬がIL-15を投与した場合よりも長い時間にわたってインビボでIL-15アゴニスト性を呈する限り、本発明に係る長時間作用型であると決定され得る。化合物の放射標識、そのインビボ投与、及びそのクリアランスの決定が関わるものなどの従来手法を用いて、長時間作用型IL-15作動薬であると提案される化合物が「長時間作用型」である(即ち、同じインビボ系で投与されるIL-15と比べて長いクリアランスを有する)かどうかを決定することができる。本明細書における目的上、長時間作用型IL-15作動薬の長時間作用する性質又はIL-2Rβ選択的作動薬の長時間作用する性質は、典型的には、マウスにおいて評価しようとする作動薬の投与後の様々な時点でフローサイトメトリーを用いてリンパ球のSTAT5リン酸化を計測することにより決定される。参考として、IL-15又はIL-2では約24時間までにシグナルが失われるが、長時間作用型IL-15又はIL-2Rβ選択的作動薬についてはそれより長い期間持続する。例示として、RSAIL-2及びLAIL-15バージョン1及びバージョン2の両方の組成物についてシグナルは数日間持続する。
【0047】
本明細書に記載される方法、組成物、及びキットによれば、長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬はIL-2Rβ活性化量で提供される。当業者は、どのくらいの所与の長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬がIL-2Rβにおける臨床的に有意味なアゴニスト活性をもたらすのに十分であるかを決定することができる。例えば、当業者は文献を参照してもよく、及び/又は一連の漸増量の長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬を投与して、どの1つ又は複数の量がIL-2Rβの臨床的に有意味なアゴニスト活性をもたらすかを決定してもよい。或いは、長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬及び長時間作用型IL-15作動薬の両方の活性化量を、上記に記載されるインビボSTAT5リン酸化アッセイを用いて決定する(投与後にインビボで決定する)ことができ、ここではピーク時点でNK細胞の10%を上回るSTAT5リン酸化を誘導するのに十分な量が活性化量と見なされる。
【0048】
しかしながら、1つ以上の例において、IL-2Rβ活性化量は、タンパク質の量で表される以下の範囲の1つ以上に包含される量である:約0.01~1mg/kg;約0.01mg/kg~約0.1mg/kg;約1mg/kg~約1000mg/kg;約2mg/kg~約900mg/kg;約3mg/kg~約800mg/kg;約4mg/kg~約700mg/kg;約5mg/kg~約600mg/kg;約6mg/kg~約550mg/kg;約7mg/kg~約500mg/kg;約8mg/kg~約450mg/kg;約9mg/kg~約400mg/kg;約5mg/kg~約200mg/kg;約2mg/kg~約150mg/kg;約5mg/kg~約100mg/kg;約10mg/kg~約100mg/kg;及び約10mg/kg~約60mg/kg。
【0049】
本明細書に記載される方法、組成物、及びキットによれば、IL-15R活性化量の長時間作用型IL-15作動薬が提供される。当業者は、IL-15受容体(「IL-15R」)における臨床的に有意味なアゴニスト活性をもたらすのに十分な長時間作用型IL-15作動薬の量を決定することができる。
【0050】
しかしながら、1つ以上の例において、IL-15R活性化量は以下の範囲の1つ以上に包含される(Il-15含有量を基準とした量):約0.001mg/kg~約1000mg/kg;約0.01mg/kg~約1000mg/kg;約0.1mg/kg~約1000mg/kg;約1mg/kg~約1000mg/kg;約2mg/kg~約900mg/kg;約3mg/kg~約800mg/kg;約4mg/kg~約700mg/kg;約5mg/kg~約600mg/kg;約6mg/kg~約550mg/kg;約7mg/kg~約500mg/kg;約8mg/kg~約450mg/kg;約9mg/kg~約400mg/kg;約5mg/kg~約200mg/kg;約2mg/kg~約150mg/kg;約5mg/kg~約100mg/kg;約10mg/kg~約100mg/kg;及び約10mg/kg~約60mg/kg。
【0051】
確認のために言えば、長時間作用型IL-15作動薬のIL-15R活性化量に関して本明細書で使用されるとき、活性化の量及び程度は大きく異なり得るとともに、長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬との併用がなおも有効であり得る。例えば、IL-15Rをごく最小限だけ活性化する長時間作用型IL-15作動薬の量は、本明細書に記載される方法、組成物、及びキットが臨床的に意味のある応答を可能にする限りはなおも本明細書で使用されるとおりの活性化量であり得る。同様に、IL-2Rβでごく最小限のアゴニスト活性を十分に長期間にわたり呈する長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬の量は、本明細書に記載される方法、組成物、及びキットが臨床的に意味のある応答を可能にする限りはなおも長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬であり得る。一部の例では、(例えば)相乗的反応に起因して、長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬の存在下ではIL-15R経路の活性化は最小限だけ要求され得るに過ぎない。さらに他の例では、(例えば)相乗的反応に起因して、IL-15R活性化の存在下ではIL-2Rβのアゴニスト活性は最小限だけ要求され得る。
【0052】
本明細書に記載される方法、組成物、及びキットで提供される実際の用量は、対象の年齢、体重、及び全身状態並びに治療下の病態の重症度、医療専門家の判断、並びに本方法、組成物、及びキットの化合物に応じて異なり得る。
【0053】
本併用、及びその関連する方法、組成物、キットなどを裏付けるデータが、実施例1に提供される。実施例1は、結腸癌及び転移性黒色腫の両方のマウス腫瘍モデルにおける長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬と長時間作用型IL-15作動薬との例示的な且つ特定の好ましい併用の評価について記載する。より具体的には、RSAIL-2とLAIL-15バージョン1又はLAIL-15バージョン2のいずれかとの併用をCT-26マウス結腸癌モデル及びマウスB16F10転移性黒色腫モデルの両方で評価した。種々の投与プロトコルを調べ、ここで変数には、投薬プロトコル、2つの長時間作用型サイトカイン組成物の投与順序、及び用いられる詳細な長時間作用型IL-15作動薬組成物が含まれた。表1は、種々の試験群及び治療スケジュールの概要を提供する。表2は、表1に記載する併用及びプロトコルに従い治療した皮下結腸癌腫瘍を担持するマウスの試験群の各々に関する生存期間中央値の概要を提供する。
図1A、
図1B、及び
図1Cは、例示的な試験群の各々についての経時的なパーセント生存率を示すプロットである。見て分かるとおり、群Gは、RSAIL-2を天然(非長時間作用型)IL-15と併用する対応する群(群M)と比べて有意に高い生存期間中央値を呈し、結腸癌などの癌の治療におけるRSAIL-2とLAIL-15、バージョン1との例示的併用の特に顕著で有益な効果が示唆された。両方のモデルとも、単一の長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬、RSAIL-2は、単独投与したときのLAIL-15(対照として)のいずれのバージョンと比べても腫瘍成長の阻害における有効性が高いように思われ、しかしながら、特定の併用では、LAIL-15はRSAIL-2の抗腫瘍効果の増強に特に有効であるように思われる。従って、LAIL-15を加えると、RSAIL-2の免疫刺激性の抗癌効果を阻害するのでなく、むしろ、恐らくはこれらの2つの長時間作用型サイトカインの補完的免疫活性化機構に起因してRSAIL-2が補完されるように思われる。表3に提供するとおり、転移性黒色腫マウスモデルにおいても同様の結果が見られる。見て分かるとおり、幾つかの治療群F、G、I及びJは、併用に用いた長時間作用型インターロイキンの各々を単剤として投与したときと比較すると、及びRSAIL-2と天然(又は非長時間作用型)IL-15との対応する併用と比較すると、有意に長い生存時間を呈した。
図2A、
図2B、及び
図2Cも参照のこと。これらの結果は、これらの例示的な長時間作用型IL-2Rβ選択的作動薬、RSAIL-2と、LAIL-15、バージョン1及び2によって例示される長時間作用型IL-15作動薬との間の相乗的相互作用を強力に示唆しており、癌の治療に対する主題の免疫療法薬併用の意外な有効性が指摘される。
【0054】
本開示は、(特に)本併用の化合物による治療に応答性の病態に罹患している患者を治療するのに有用な方法、組成物、及びキットを提供する。例えば、患者は、個々の薬剤単独にも、また薬剤併用にも応答し得るが、薬剤併用に対する応答性がより高い。さらなる例として、患者は個別の薬剤の一つに対して非反応性であり得るが、薬剤併用には応答する。さらに別の例として、患者はいずれの個別の薬剤単独に対しても非応答性であり得るが、薬剤併用には応答する。
【0055】
特定の実施形態において、本明細書に記載される方法、組成物、及びキットは、注射による治療有効量の活性薬剤の送達に有用である。肺内、鼻内、頬側、直腸、舌下及び経皮など、他の投与方法もまた企図される。本明細書で使用されるとき、用語「非経口」には、皮下、静脈内、動脈内、腹腔内、心臓内、くも膜下腔内、及び筋肉内注射、並びに点滴注射が含まれる。本方法の各薬理成分は別々に投与することができる。或いは、2つの薬理成分の投与が同時であることが所望される(及び2つの薬理成分が互いに及び所与の製剤で適合する)場合、単一剤形/製剤の投与(例えば、両方の薬理活性剤を含有する静脈内製剤の静脈内投与)によって同時投与を実現することができる。例えば、患者への投与は、IL-2Rβ選択的作動薬と希釈剤とを含む組成物を注射することによって達成し得る。加えて、患者への投与は、長時間作用型IL-15作動薬と希釈剤とを含む組成物を注射することによって達成し得る。さらに、投与は、IL-2Rβ選択的作動薬と長時間作用型IL-15作動薬と希釈剤とを含む組成物を注射することによって達成し得る。可能な希釈剤に関して、希釈剤は、注射用静菌水、水中デキストロース5%、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル溶液、乳酸加リンゲル溶液、生理食塩水、滅菌水、脱イオン水、及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。当業者は、2つの所与の薬理成分が所与の製剤中で共に適合するかどうかをルーチンの試験で決定することができる。
【0056】
ここに記載した方法、組成物、及びキットは、本方法、組成物、及びキットによって治癒又は予防し得る任意の病態に罹患している患者の治療に用いることができる。例示的病態は、癌、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胚性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫(例えば、ぶどう膜黒色腫、粘膜黒色腫、及び軟膜黒色腫を含む)、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、及び白血病である。
【0057】
本明細書において参照される全ての論文、書籍、特許、特許公報及び他の刊行物は、全体として参照により援用される。本明細書の教示と参照によって援用される技術との間に不一致が生じた場合、その教示の意味及び本明細書の定義が(特に本明細書に添付される特許請求の範囲で用いられる用語に関して)優先するものとする。例えば、本願及び参照によって援用される刊行物が同じ用語を別様に定義する場合、定義が載せられている文書の教示の範囲内でその用語の定義が維持されるものとする。
【実施例】
【0058】
本発明は特定の好ましい具体的な実施形態と併せて説明されているが、前述の説明並びに以下の例は例示を意図するもので、本発明の範囲を限定する意図はないことが理解されるべきである。本発明が関係する技術分野の当業者には、本発明の範囲内の他の態様、利点及び変形例が明らかであろう。
【0059】
本明細書に提供される実施例との関連において、以下の材料を使用した。
【0060】
「RSLAIL-2」は、国際公開第2015/125159号パンフレットの実施例1の手順に従うと得ることが可能な組成物を指し、概してマルチPEG化形態のIL-2を含む組成物であって、ここでコンジュゲートの形成に用いられるPEG試薬の結合は投与後に遊離可能な結合である。RSLAIL-2は以下のとおり調製した。1.44mg/mlの精製rIL-2(106.4mL)を第1の容器に入れ、続いて53.6mLの製剤化緩衝液(10mM酢酸ナトリウム、pH4.5、5%トレハロース)を加えた。pHを測ると4.62であり、温度を測ると21.2℃であった。PEG試薬のC2-PEG2-FMOC-NHS-20K(国際公開第2006/138572号パンフレットに記載されるとおり利用可能)(13.1g)を第2の容器に入れ、続いて73.3mLの2mM HClを加えた。得られた溶液を手動で25分間かき混ぜた。第1の容器にホウ酸ナトリウム(0.5M、pH9.8)を加えてpHを約9.1に上昇させ、次にPEG試薬が入った第2の容器を1~2分間かけて第1の容器に加えた。次に8.1mLの2mM HClを第2の容器に入れることによってリンスステップを行い、第1の容器に加えた。コンジュゲーション反応では、最終的なrIL-2濃度は0.6mg/mLであり、ホウ酸ナトリウム濃度は120mMであり、pHは9.1±0.2であり、温度は20~22℃であった。試薬の活性(置換レベル)を調整した後のPEG試薬とrIL-2とのモル比は35:1である。コンジュゲーション反応を30分間進行させ、次に75mLの2N酢酸を使用した酸性化反応(ここではpHが4.01に降下する)で停止させた。反応の生成物を水で希釈し、希釈したPEG化rIL-2溶液を0.2ミクロンフィルタを使用してろ過した。ろ過した生成物は滅菌容器に入れる。
【0061】
SPセファロースFF樹脂(GE Healthcare)を充填したクロマトグラフィーカラムに溶液をロードすることにより、希釈したPEG化rIL-2溶液を精製した。洗浄ステップ後、塩化ナトリウム勾配を用いてPEG化rIL-2を溶出させる。1mer、2mer又は3merを含む画分は取り除き、一方、4mer、5mer、6mer、7mer及び任意のそれより高度なPEG化を含む画分はプールし、それにより主として4mer、5mer及び6merを有する組成物を得る(8mer及びそれより高度なPEG化は、クロマトグラフィーに関連する洗浄ステップの間に取り除かれることが分かった)。この得られた組成物は、「RSLAIL-2」と称する。
【0062】
「LAIL-15バージョン1」は、国際公開第2015/153753号パンフレットの実施例3の手順に従うと得ることが可能な組成物を指し、概してマルチPEG化形態のIL-15を含む組成物であって、ここでコンジュゲートの形成に用いられるPEG試薬の結合は投与後に遊離可能な結合である。モノPEG化形態の「LAIL-15バージョン1」の構造を以下に図示する:
【化4】
式中、IL-15は天然IL-15の残基であり、及び各「n」は、コンジュゲートの形成に用いられるポリマー試薬の重量平均分子量が約20,000ダルトンとなるような値を有する整数である。より具体的には、「LAIL-15バージョン1」は以下のとおり調製した。-80℃でアルゴン下に保存されているmPEG2-C2-fmoc-20K-NHS(IL-15とのコンジュゲーション前の~O-N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル反応物)を窒素パージ下で周囲温度に加温した。mPEG2-C2-fmoc-20K-NHSのストック溶液(200mg/mL)を2mM HCl中に調製し、5:1~100:1の範囲のmPEG
2-C2-fmoc-20K-NHS対rIL-15のモル比でmPEG2-C2-fmoc-20K-NHSをrIL-15に加えた。混合物中のrIL-15の最終濃度は0.5mg/mL(0.031mM)であった。この混合物に重炭酸ナトリウム緩衝液(1M、pH8.0)を100mMの最終濃度に達するように加え、コンジュゲーションを30分間進行させると、[mPEG2-C2-fmoc-20K]-[rIL-15]コンジュゲートが提供された。30分後、反応混合物に1Mグリシン(pH6.0)を100mMの最終濃度が実現するように加えてクエンチを達成した。次にクエンチした反応混合物のpHを氷酢酸を用いて4.0に調整した後、カラムクロマトグラフィー精製及び特徴付けを行った。
【0063】
「LAIL-15バージョン2」は、国際公開第2015/153753号パンフレットの実施例4の手順に従うと得ることが可能な組成物を指し、概してマルチPEG化形態のIL-15を含む組成物であって、ここでコンジュゲートの形成に用いられるPEG試薬の結合は投与後に遊離可能な結合である。モノPEG化形態の「LAIL-15バージョン2」の構造を以下に図示する:
【化5】
式中、IL-15は天然IL-15の残基であり、及び各(n)は、コンジュゲートの形成に用いられるポリマー試薬の重量平均分子量が約20,000ダルトンとなるような値を有する整数である。より具体的には、「LAIL-15バージョン2」は以下のとおり調製した。-80℃でアルゴン下に保存されているmPEG2-CAC-fmoc-20K-NHS(IL-15とのコンジュゲーション前の~O-N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル反応物)を窒素パージ下で周囲温度に加温した。mPEG2-CAC-fmoc-20K-NHSのストック溶液(200mg/mL)を2mM HCl中に調製し、5:1~100:1の範囲のmPEG
2-CAC-fmoc-20K-NHS対rIL-15のモル比でmPEG2-CAC-fmoc-20K-NHSをrIL-15に加えた。混合物中のrIL-15の最終濃度は0.5mg/mL(0.031mM)であった。この混合物に重炭酸ナトリウム緩衝液(1M、pH8.0)を100mMの最終濃度に達するように加え、コンジュゲーションを30分間進行させると、[mPEG2-CAC-fmoc-20K]-[rIL-15]コンジュゲートが提供された。30分後、反応混合物に1Mグリシン(pH6.0)を100mMの最終濃度が実現するように加えてクエンチを達成した。次にクエンチした反応混合物のpHを氷酢酸を用いて4.0に調整した後、カラムクロマトグラフィー精製及び特徴付けを行った。
【0064】
実施例1
それぞれBalb/C及びC57BL/6マウスのCT26誘導及びB16F10誘導皮下腫瘍モデルにおけるRSLAIL-2とLAIL-15バージョン1及びバージョン2の各々との併用の抗腫瘍活性の評価
6~8週齢雌Balb/C又はC57BL/6マウスにおいて同系腫瘍を誘導した。皮下、後腹部腹側に、マウス結腸癌細胞又は転移性黒色腫細胞を100μL容積の無血清細胞培養培地中それぞれ2又は1×106細胞mL-1の密度で注入した。マウスにおいてCT26腫瘍が8~9日までに約200mm3、及びB16F10腫瘍が6~7日までに100mm3の腫瘍に成長した。マウス(別個にCT26又はB16F10のいずれかの腫瘍を有するBalb/C及びC57BL/6マウス)を14群に分けた;各群が10匹の動物からなった。各群を以下のとおり1つの介入に割り付けた:媒体(群A);天然IL-15単独(群B);RSLAIL-2単独(群C);LAIL-15バージョン1単独(群D);LAIL-15バージョン2単独(群E);RSLAIL-2感作及びLAIL-15バージョン1:同時(群F);RSLAIL-2感作及びLAIL-15バージョン1:後感作(群G);RSLAIL-2感作及びLAIL-15バージョン1:前感作(群H);RSLAIL-2感作及びLAIL-15バージョン2:同時(群I);RSLAIL-2感作及びLAIL-15バージョン2:後感作(群J);RSLAIL-2感作及びLAIL-15バージョン1:前感作(群K);RSLAIL-2感作及び天然IL-15:同時(群L);RSLAIL-2感作及び天然IL-15:後感作(群M);及びRSLAIL-2感作及び天然IL-15:前感作(群N)。表1は、これらの2つのモデルの各々について使用した試験群及び治療スケジュールの概要を提供する。
【0065】
【0066】
介入の投与後、皮下結腸癌腫瘍又は転移性黒色腫腫瘍の成長の変化に関してマウスを週3回デジタルノギスによって適宜計測した。毎日臨床徴候もモニタした。
【0067】
皮下結腸腫瘍担持マウスにおいては、
図1A、
図1B及び
図1Cに示されるとおり、媒体対照が9日目までに試験エンドポイントに達した一方、他の群は全て継続した。
【0068】
さらに、表2に示されるとおり、ログランク(マンテル・コックス)検定により、全ての治療群の生存期間中央値が媒体と比較して統計学的に有意であることが分かる。詳細には、「群G」に関して記載される手法におけるRSAIL-2とLAIL-15バージョン1との併用が、RSAIL-2単独と比べて有意な生存期間中央値を呈し、相乗効果が示唆された。
【0069】
【0070】
さらに、全ての薬理活性介入群が良好に忍容され、マウスは大幅な体重減少又は有害な臨床徴候のいずれも示さなかった。
【0071】
皮下転移性黒色腫腫瘍担持マウスにおいては、
図2A、
図2B及び
図2Cに示されるとおり、媒体対照が10日目までに試験エンドポイントに達した一方、他の群は全て継続した。
【0072】
さらに、表3に示されるとおり、ログランク(マンテル・コックス)検定により、全ての治療群の生存期間中央値が媒体と比較して統計学的に有意であることが分かる。
【0073】
【0074】
天然IL-15、LAIL-15バージョン1、LAIL-15バージョン2、及びRSLAIL-2で治療したマウスは、大幅な体重減少も有害な臨床徴候も示さなかった。しかしながら、RSLAIL-2とLAIL-15バージョン1(前感作及び同時感作)との併用投与は、5日目までに約10%の平均体重の減少を呈した。この減少した体重は7日目までに回復し、可逆的な性質のものであることが示された。
【0075】
実施例2
マウスでの代替的な皮下腫瘍モデルにおけるRSLAIL-2とLAIL-15バージョン2との併用の抗腫瘍活性の評価
実施例1の腫瘍モデルと異なるマウスでの腫瘍モデルにおいてRSLAIL-2とLAIL-15バージョン2との併用を評価した。RSLAIL-2とLAIL-15バージョン2との併用は、新生腫瘍及び樹立腫瘍に対する有効性に関して評価した。新生腫瘍及び樹立腫瘍の両方ともに、RSLAIL-2とLAIL-15バージョン2との併用は腫瘍サイズの低減に有効であった。
【0076】
新生及び樹立マウス腫瘍モデルにおいてRSLAIL-2とLAIL-15バージョン2との併用投与後に特定の免疫系細胞の数、及び関連する比が増加した。
【0077】
これらの結果は、RSLAIL-2とLAIL-15バージョン2との併用が有望な見込みのあるイムノオンコロジー治療であることを示唆している。